説明

硫黄原子を含有するレジスト下層膜形成用組成物及びレジストパターンの形成方法

【課題】レジスト膜に対するドライエッチング速度の選択比が大きく、ArFエキシマレーザーのような短波長でのk値が低く且つn値が高い値を示し、レジストパターンが所望の形状に形成されるレジスト下層膜を形成するための組成物を提供することを課題とする。その組成物を製造する際及び使用する際、原料モノマーに起因する臭気が問題にならないことを要する。
【解決手段】硫黄原子を主鎖に有するポリマー及び溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物によって、上記課題は解決される。前記ポリマーは、2つのエポキシ基を含む少なくとも1種の化合物(ジエポキシ化合物)と、硫黄原子を含む少なくとも1種のジカルボン酸との反応生成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸露光装置を用いるリソグラフィー工程に適した、基板とその上に形成されるレジスト膜(レジスト層)との間に設けられるレジスト下層膜を形成するための組成物に関する。レジスト膜を露光する際に、反射波がそのレジスト膜へ及ぼす影響をレジスト下層膜が抑制する場合、そのレジスト下層膜を反射防止膜と称することができる。
【背景技術】
【0002】
硫黄原子を所定の割合で含有するポリマーを含む反射防止膜形成組成物が、下記特許文献1に開示されている。また、グリシジル基を二つ有するエポキシ化合物とチオール基を二つ有する含窒素芳香族化合物との重付加反応によって得られる反応生成物を含むリソグラフィー用反射防止膜形成組成物が、下記特許文献2に開示されている。
【0003】
しかしながら、従来の、硫黄原子を含有するポリマーを含む反射防止膜形成組成物は、当該ポリマーを合成する際の臭気が問題になる場合があった。臭気が問題になる代表的な例は、硫黄原子を含有するポリマーの原料モノマーとして、チオール基(−SH)を有する化合物を用いる場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/088398号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/040918号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レジスト下層膜は、溶液状のレジスト下層膜形成用組成物を塗布し、硬化させることにより、容易に成膜できることが求められる。したがって、当該組成物は、加熱等によって容易に硬化すると共に、所定の溶剤に対する溶解性が高い化合物(ポリマー)を含むことが必要である。このような化合物(ポリマー)を合成する際及び反応生成物を使用する際に、悪臭が発生することは、作業員、取扱者等にとって好ましくない。
【0006】
さらに、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンは、基板に垂直な方向の断面形状が概略矩形状(いわゆるアンダーカット、裾引き等のないストレートな裾形状)であることが望ましい。例えば、レジストパターンがアンダーカット形状又は裾引き形状になると、レジストパターンの倒壊、リソグラフィー工程の際に被加工物(基板、絶縁膜等)を所望の形状又はサイズに加工できない、という問題が発生する。
【0007】
また、レジスト下層膜には、上層のレジスト膜よりもドライエッチング速度が大きい、すなわちドライエッチング速度の選択比が大きいことが求められる。
【0008】
近年、半導体装置の製造において、液浸露光装置を用いるリソグラフィー工程の採用が検討されている。その場合、液浸露光装置の投影レンズの開口数(NA)が大きいほど、入射波の反射を制御するために、k値(減衰係数又は吸光係数)が高いレジスト下層膜は望ましくなく、むしろk値が低い方が有効と考えられている。ポリマーの側鎖に導入する芳香族化合物によって吸収波長をシフトさせて、特定の波長でのk値を低くすることができる。例えばナフタレンは、波長193nmでのk値を低くすることができるが、波長193nmでのk値が低いレジスト下層膜は、同波長での屈折率(n値)も低くなってしま
う問題がある。
【0009】
本発明は、ドライエッチング速度のレジスト膜に対する選択比が大きく、ArFエキシマレーザー(波長約193nm)のような短波長でのk値が低く且つn値が高い値を示す、レジスト下層膜を形成するための組成物を提供することを目的とする。また、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンが、上記のような所望の形状となる、レジスト下層膜を形成するための組成物を提供することを目的とする。さらに、ポリマー成分の合成時等における原料モノマーに起因する臭気が問題にならない、レジスト下層膜を形成するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様は、ジスルフィド結合すなわち“S−S結合”を主鎖に有するポリマー及び溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である。本発明の第1態様においてポリマーの意味は、重合体であって必ずしも高分子化合物に限定されず、したがってモノマーは排除されるがオリゴマーは排除されない。
【0011】
前記ポリマーは、2つのエポキシ基を含む少なくとも1種の化合物(以下、化合物Aという。)と、ジスルフィド結合を含む少なくとも1種のジカルボン酸 (以下、化合物Bという。)との反応生成物である。すなわち、化合物Aと化合物Bを、適切なモル比になるよう溶剤へ溶解させ、エポキシ基を活性化させる触媒の存在のもと、重合させることによって得られる。2つのエポキシ基を含む化合物は、ジエポキシ化合物とも表現される。エポキシ基を活性化させる触媒とは、例えばトリフェニルモノエチルホスホニウムブロミドのような第4級ホスホニウム塩、又はベンジルトリエチルアンモニウムクロリドのような第4級アンモニウム塩であり、原料モノマーである化合物A及び化合物Bの全質量に対して0.1質量%乃至10質量%の範囲から適量を選択して用いることができる。重合反応させる温度及び時間は、80℃乃至160℃、2時間乃至50時間の範囲から、最適な条件が選択される。化合物Bにおいて、ジカルボン酸とは、2つのカルボキシル基を有する化合物を意味する。したがって、化合物Bは、ジスルフィド結合及び2つのカルボキシル基を含む少なくとも1種の化合物、と換言されうる。そして、化合物Bは、2つのカルボキシル基を含むためチオール基を含む必要はない。
【0012】
2つのエポキシ基を含む化合物を以下の式(a)乃至式(h)に、ジスルフィド結合を含むジカルボン酸を以下の式(i)乃至(k)に例示するが、これらの例に限定されるわけではない。式(h)において、Rは炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表す。
【化1】

【化2】

【0013】
本発明の第1態様のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーは、例えば下記式(1):
【化3】

〔上記式中、Xは下記式(2)、式(3)又は式(4):
【化4】

(上記式中、R乃至Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよく、またRとR、RとRは互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよい。)で表される基を表し、A乃至Aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Qはジスルフィド結合を含む2価の基を表し、nは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕
で表される繰り返し単位構造を有する。
【0014】
前記式(1)は、例えば下記式(5):
【化5】

〔上記式中、Xは前記式(2)、式(3)又は式(4)で表される基を表し、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1乃至3のアルキレン基又は直接結合を表し、pは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕で表される。
【0015】
本発明の第2態様は、下記式(1’):
【化6】

〔上記式中、Xは下記式(2)、式(3)又は式(4):
【化7】

(上記式中、R乃至Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよく、またRとR、RとRは互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよい。)で表される基を表し、A乃至Aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Qは硫黄原子を有する2価の基を表し、qは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、及び溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である。
【0016】
本発明の第2態様においてポリマーの意味は、必ずしも高分子化合物に限定されない重合体であり、したがってモノマーは排除されるがオリゴマーは排除されない。また、Qで表される前記2価の基に含まれる硫黄原子数は限定されないが、例えば1個又は2個とすることができる。
【0017】
前記ポリマーは、少なくとも1種のジエポキシ化合物と、硫黄原子を有する少なくとも1種のジカルボン酸との反応生成物である。すなわち、原料モノマーであるジエポキシ化合物及びジカルボン酸を、適切なモル比になるよう溶剤へ溶解させ、エポキシ基を活性化させる触媒の存在のもと、重合させることによって得られる。エポキシ基を活性化させる触媒とは、例えばトリフェニルモノエチルホスホニウムブロミドのような第4級ホスホニウム塩、又はベンジルトリエチルアンモニウムクロリドのような第4級アンモニウム塩であり、原料モノマーであるジエポキシ化合物及びジカルボン酸の全質量に対して0.1質量%乃至10質量%の範囲から適量を選択して用いることができる。重合反応させる温度及び時間は、80℃乃至160℃、2時間乃至50時間の範囲から、最適な条件が選択される。ジエポキシ化合物とは2つのエポキシ基を有する化合物を意味し、ジカルボン酸とは2つのカルボキシル基を有する化合物を意味する。そして、本発明の第2態様の場合、原料モノマーはチオール基を含まない。
【0018】
硫黄原子を有するジカルボン酸を以下の式(l)乃至式(p)に例示するが、これらの例に限定されるわけではない。ジエポキシ化合物の例は、本明細書に既に式(a)乃至式(h)として示した。
【化8】

【0019】
前記式(1’)は、例えば下記式(6):
【化9】

〔上記式中、Xは前記式(2)、式(3)又は式(4)で表される基を表し、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1乃至3のアルキレン基又は直接結合を表し、Rは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、mは0又は1を表し、rは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕で表される。
【0020】
本発明の第1及び第2態様に係るレジスト下層膜形成組成物は、半導体装置の製造過程におけるリソグラフィー工程に適用することができる。当該リソグラフィー工程は、本発明の第1及び第2態様に係るレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程と、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト下層膜と前記レジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程と、露光後の前記レジスト膜を現像する工程とを含み、前記レジスト下層膜上にレジストパターンが形成される。
【0021】
また上記半導体基板は、代表的にはシリコンウエハーであるが、SOI(Silicon on Insulator)基板、または砒化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)などの化合物半導体ウエハーを用いてもよい。酸化珪素膜、窒素含有酸化珪素膜(SiON膜)、炭素含有酸化珪素膜(SiOC膜)などの絶縁膜が形成された半導体基板を用いてもよく、その場合、当該絶縁膜上にレジスト下層膜形成組成物を塗布する。
【0022】
上記露光は、光源としてArFエキシマレーザーを用いることができる。ArFエキシマレーザーにかえて、EUV(波長13.5nm)または電子線を用いてもよい。“EUV”は極端紫外線の略称である。レジスト膜を形成するためのレジストは、ポジ型、ネガ型いずれでもよい。ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線に感光する化学増幅型レジストを用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、波長193nmにおいて高n値且つ低k値という特性を有する硫黄原子を効率的に導入できる、ジスルフィド結合を主鎖に有するポリマー、又は前記式(1’)で表されるような繰り返し単位構造を有するポリマーを含み、原料モノマーに起因する臭気が問題にならない程度に少ないことを特徴とする。そのような組成物から形成されるレジスト下層膜は、液浸露光装置を採用しArFエキシマレーザー等の短波長の照射光を用いるリソグラフィー工程において、反射光防止効果が高く、しかも好適な値に調整されたk値が得られる。そして、そのレジスト下層膜上に、レジスト膜とのインターミキシングを起こさずに良好な形状のレジストパターンを形成することができる。さらに、そのレジスト下層膜は、CF、CHF等のガスによるドライエッチングによって、レジストパターンよりもはるかに短時間で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は実施例2のレジスト下層膜形成組成物を用い、最終的に基板上に形成されたフォトレジストパターンの断面を撮影したSEM像であり、(B)は実施例4のレジスト下層膜形成組成物を用い、最終的に基板上に形成されたフォトレジストパターンの断面を撮影したSEM像であり、(C)は実施例5のレジスト下層膜形成組成物を用い、最終的に基板上に形成されたフォトレジストパターンの断面を撮影したSEM像であり、(D)は実施例6のレジスト下層膜形成組成物を用い、最終的に基板上に形成されたフォトレジストパターンの断面を撮影したSEM像であり、(E)は実施例8のレジスト下層膜形成組成物を用い、最終的に基板上に形成されたフォトレジストパターンの断面を撮影したSEM像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる溶剤の具体例として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、これらの溶剤から選択された2種以上の混合物などが挙げられる。本発明のレジスト下層膜形成組成物に対する溶剤の割合は、例えば90質量%以上99.9質量%以下である。
【0026】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、架橋性化合物及びスルホン酸化合物をさらに含むことができる。本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーに対するスルホン酸化合物の割合は、例えば0.1質量%以上13質量%以下、好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。架橋性化合物は架橋剤とも表現され、例えばメチロール基またはアルコキシメチル基で置換された窒素原子を2乃至4つ有する含窒素化合物である。本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーに対する架橋性化合物の割合は、例えば5質量%以上50質量%以下である。
【0027】
上記スルホン酸化合物の具体例として、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、5−スルホサリチル酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、ピリジニウム−1−ナフタレンスルホン酸などが挙げられる。上記架橋性化合物(架橋剤)の具体例として、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素などが挙げられる。
【0028】
スルホン酸化合物は、架橋促進剤として作用すると共に、例えば4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸(p−フェノールスルホン酸ともいう)は、基板に垂直方向のレジストパターン断面がフッティング形状になることを抑制し、所望の形状(概略矩形状)になることに寄与する添加物である。
【0029】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、フェノール誘導体が含まれてもよい。フェノール誘導体は、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸と同様、基板に垂直方向のレジストパターン断面がフッティング形状になることを抑制し、所望の形状(概略矩形状)になることに寄与する添加物である。フェノール誘導体の具体例として、4−メチルスルフォニルフェノール、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、4−シアノフェノール、3,4,5−トリフルオロフェノール、4−ヒドロキシベンゾトリフルオライド、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェノール、2,6−ジクロロ−4−(メチルスルフォニル)フェノールなどが挙げられる。本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーに対するフェノール誘導体の割合は、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。
【0030】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、界面活性剤が含まれてもよい。界面活性剤は、基板に対する塗布性を向上させるための添加物である。ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤のような公知の界面活性剤を用いることができ、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーに対し例えば0.1質量%以上5質量%以下の割合で添加することができる。
【0031】
本発明のレジスト下層膜形成組成物において、溶剤を除いた成分を固形分と定義すると、固形分には、ポリマー及び必要に応じて添加される前述のような各種添加物が含まれる。
【実施例】
【0032】
本明細書の下記合成例に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕・Asahipak〔登録商標〕(昭和電工(株))
カラム温度:40℃
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
流量:0.6ml/min
標準試料:ポリスチレン(東ソー(株))
【0033】
<合成例1>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)、商品名:MADGIC)5.0g、3,3’−ジチオジプロピオン酸(堺化学工業(株)、商品名:DTDPA)3.8g、及び触媒として第4級ホスホニウム塩であるトリフェニルモノエチルホスホニウムブロミド0.3gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.8gに溶解させた後、120℃に加温し、窒素雰囲気下で4時間撹拌した。原料化合物の臭い及び反応生成物の臭いは、ほとんど気にならないレベルである。得られた反応生成物を、プロピレングリコールモノメチルエーテル23.0gにて希釈したワニス溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約7800であった。この反応生成物は、下記式(7)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化10】

【0034】
<合成例2>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)、商品名:MADGIC)14.0g、モノアリルイソシアヌル酸(四国化成工業(株))2.6g、3,3’−ジチオジプロピオン酸(堺化学工業(株)製、商品名:DTDPA)7.4g、及び触媒として第4級アンモニウム塩であるベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.6gをプロピレングリコールモノメチルエーテル57.3gに溶解させた後、120℃に加温し、窒素雰囲気下で4時間撹拌した。原料化合物の臭い及び反応生成物の臭いは、ほとんど気にならないレベルである。得られた反応生成物をプロピレングリコールモノメチルエーテル40.9gにて希釈したワニス溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約8800であった。この反応生成物は、下記式(8)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化11】

【0035】
<合成例3>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)、商品名:MADGIC)10.00g、エタンジチオール(四国化成工業(株))4.98g、及び触媒として第4級アンモニウム塩であるベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.40gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル61.52gに溶解し、還流下24時間反応させた。原料化合物(モノマー)のうち特にエタンジチオールは、本明細書の他の合成例で使用する含硫黄化合物と比較して強い悪臭が感じられた。悪臭の原因は、エタンジチオールがチオール基を有するためである。得られた反応生成物を含むワニス溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約16800であった。この反応生成物は、下記式(9)で表される、ジスルフィド結合(S−S結合)を含有しない繰り返し単位構造を有する。
【化12】

【0036】
<合成例4>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)、商品名:MADGIC)5.0g、COOH(CHCOOHで表されるスベリン酸(東京化成工業(株))3.1g、及び触媒として第4級ホスホニウム塩であるトリフェニルモノエチルホスホニウムブロミド0.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル8.5gに溶解させた後、120℃に加温し、窒素雰囲気下で4時間撹拌した。得られた反応生成物をプロピレングリコールモノメチルエーテル25.40gにて希釈したワニス溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約6800であった。この反応生成物は、下記式(10)で表される、硫黄原子を含有しない繰り返し単位構造を有する。
【化13】

【0037】
<合成例5>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)、商品名:MADGIC)5.201g、3,3’−チオジプロピオン酸(東京化成工業(株))3.335g、及び触媒として第4級ホスホニウム塩であるトリフェニルモノエチルホスホニウムブロミド0.3764gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.087gに溶解させた後、120℃で4時間反応させ反応生成物を含む溶液を得た。当該反応生成物を含む溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約4500であった。この反応生成物は、下記式(11)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化14】

【0038】
<合成例6>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)、商品名:MADGIC)5.009g、メチレンビス(チオグリコール酸)(東京化成工業(株))3.537g、及び第4級ホスホニウム塩であるトリフェニルモノエチルホスホニウムブロミド0.3625gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.091gに溶解させた後、120℃で4時間反応させ反応生成物を含む溶液を得た。当該反応生成物を含む溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約9200であった。この反応生成物は、下記式(12)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化15】

【0039】
<合成例7>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)、商品名:MADGIC)5.000g、(エチレンジチオ)二酢酸(東京化成工業(株))3.790g、及び第4級ホスホニウム塩であるテトラエチルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株))0.3058gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル36.384gに溶解させた後、120℃で4時間反応させ反応生成物を含む溶液を得た。当該反応生成物を含む溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約5200であった。この反応生成物は、下記式(13)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化16】

【0040】
<合成例8>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)、商品名:MADGIC)5.000g、2,2’−チオジグリコール酸(東京化成工業(株))2.707g、及び第4級ホスホニウム塩であるテトラエチルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株))0.3058gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル32.049gに溶解させた後、120℃で4時間反応させ反応生成物を含む溶液を得た。当該反応生成物を含む溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約4500であった。この反応生成物は、下記式(14)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化17】

【0041】
〔実施例1〕
合成例1で得られた反応生成物0.234gを含む溶液1.459gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.566g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.910g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.059g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.001gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0042】
〔実施例2〕
合成例1で得られた反応生成物0.217gを含む溶液1.353gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.655g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.910g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックイン
ダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.054g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.027g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.001gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0043】
〔実施例3〕
合成例1で得られた反応生成物0.223gを含む溶液1.391gにプロピレングリコールモノメチルエーテル19.623g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.910g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.056g、4−メチルスルフォニルフェノール(Acros Organics社)0.014g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.001gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0044】
〔実施例4〕
合成例1で得られた反応生成物0.233gを含む溶液1.504gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル25.460g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.970g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.058g、4−メチルスルフォニルフェノール(Acros Organics社)0.002g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.005gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0045】
〔実施例5〕
合成例1で得られた反応生成物0.223gを含む溶液1.391gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.623g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.910g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.056g、ビスフェノールS(東京化成工業(株))0.014g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.005gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0046】
〔実施例6〕
合成例1で得られた反応生成物0.223gを含む溶液1.391gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.623g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.910g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.056g、ビスフェノールAF(東京化成工業(株))0.014g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.005gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0047】
〔実施例7〕
合成例1で得られた反応生成物0.223gを含む溶液1.391gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.623g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.910g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.056g、4−シアノフェノール(東京化成工業(株))0.014g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.001gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0048】
〔実施例8〕
合成例1で得られた反応生成物0.223gを含む溶液1.391gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.623g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.910g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.056g、3,4,5−トリフルオロフェノール(東京化成工業(株))0.014g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.005gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0049】
〔実施例9〕
合成例2で得られた反応生成物0.234gを含む溶液1.412gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル27.038g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.485g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.059g、5−スルホサリチル酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.001gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0050】
〔実施例10〕
合成例2で得られた反応生成物0.234gを含む溶液1.412gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル27.038g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.485g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.059g、p−フェノールスルホン酸(東京化成工業(株))0.006g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.001gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0051】
〔実施例11〕
合成例5で得られた反応生成物0.927gを含む溶液3.433gにプロピレングリコールモノメチルエーテル23.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.88g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.23g、p−フェノールスルホン酸0.023g、界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.018gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0052】
〔実施例12〕
合成例5で得られた反応生成物0.884gを含む溶液3.275gにプロピレングリコールモノメチルエーテル23.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.88g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.22g、ビスフェノールS(東京化成工業(株))0.055g、p−フェノールスルホン酸0.022g、界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.018gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0053】
〔実施例13〕
合成例6で得られた反応生成物0.927gを含む溶液3.358gにプロピレングリコールモノメチルエーテル23.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.88g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.23g、p−フェノールスルホン酸0.023g、界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:R−30)0.018gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0054】
〔実施例14〕
合成例6で得られた反応生成物0.884gを含む溶液3.204gにプロピレングリコールモノメチルエーテル23.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.88g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.22g、ビスフェノールS(東京化成工業(株))0.055g、p−フェノールスルホン酸0.022g、界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.018gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0055】
〔実施例15〕
合成例7で得られた反応生成物0.235gを含む溶液1.293gにプロピレングリコールモノメチルエーテル19.7g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.91g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.059g、ピリジニウム−p−トルエンスルホネート0.006gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0056】
〔実施例16〕
合成例8で得られた反応生成物0.235gを含む溶液1.265gにプロピレングリコールモノメチルエーテル19.76g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.91g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.059g、ピリジニウム−p−トルエンスルホネート0.006gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0057】
〔比較例1〕
合成例3で得られた反応生成物を含む溶液3.92g(ポリマー濃度20質量%)に、
テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.20g、ピリジニウム−p−トルエンスルホネート(東京化成工業(株))0.02g、プロピレングリコールモノメチルエーテル6.36g、及び乳酸エチル9.5gを加え、溶液とした。その後、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0058】
〔比較例2〕
合成例4で得られた反応生成物0.172gを含む溶液0.960gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル18.003g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.989g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.043g、5−スルホサリチル酸(東京化成工業(株))0.004g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)、商品名:R−30)0.001gを加え、溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0059】
(光学パラメーターの試験)
本明細書に記載の実施例1乃至16及び比較例1,2で調製されたレジスト下層膜形成用組成物を、それぞれスピナーによりシリコンウエハー上に塗布した。ホットプレート上、205℃で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.06μm)を形成した。そして、これらのレジスト下層膜を分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、VUV−VASE VU−302)を用い、波長193nmでのn値(屈折率)及びk値(減衰係数又は吸光係数)を測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
(ドライエッチング速度の測定)
本明細書に記載の実施例1乃至16及び比較例1,2で調製されたレジスト下層膜形成用組成物を、それぞれスピナーによりシリコンウエハー上に塗布した。ホットプレート上、205℃で1分間ベークし、レジスト下層膜を形成した。そして、日本サイエンティフィック(株)製RIEシステムES401を用い、ドライエッチングガスとしてCFを使用する条件下でドライエッチング速度(単位時間当たりの膜厚の減少量)を測定した。
【0061】
フォトレジスト溶液(住友化学(株)製、商品名:PAR710)を、スピナーによりシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上、90℃で1分間ベークし、フォトレジスト膜を形成した。そして日本サイエンティフィック(株)製、RIEシステムES401を用い、ドライエッチングガスとしてCFを使用した条件下で、ドライエッチング速度を測定した。
【0062】
本明細書に記載の実施例1乃至16及び比較例1,2で調製されたレジスト下層膜形成用組成物から得られたレジスト下層膜のドライエッチング速度と、住友化学(株)製フォトレジスト溶液(PAR710)から形成されたフォトレジスト膜のドライエッチング速度との比較を行った。表1に、前記フォトレジスト膜のドライエッチング速度を1.00としたときの、各実施例及び各比較例のレジスト下層膜形成用組成物から得られたレジスト下層膜のドライエッチング速度を、“選択比”として示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示す結果から、本発明のレジスト下層膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜は、波長193nmの光に対して、十分に高いn値と低いk値を有していることが分かる。さらに、本発明のレジスト下層膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜は、フォトレジストと比較して大きなドライエッチング速度の選択比を有していることが分かる。そのため、レジスト下層膜のドライエッチングによる除去に要する時間を短縮することができ、レジスト下層膜のドライエッチングによる除去に伴う、フォトレジスト膜の膜厚が
減少する好ましくない現象を抑制することができる。
【0065】
一方、比較例1で調製されたレジスト下層膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜は、本発明のレジスト下層膜形成用組成物から得られるいずれのレジスト下層膜よりも、k値が大きい。また、比較例2で調製されたレジスト下層膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜は、本発明のレジスト下層膜形成用組成物から得られるいずれのレジスト下層膜よりも、ドライエッチング速度の選択比が小さい。さらに、比較例1で調製されたレジスト下層膜形成用組成物では、本発明のレジスト下層膜形成用組成物では問題にならない、原料モノマーに起因する悪臭が感じられる。
【0066】
(レジストパターンの形成)
レジスト下層膜を形成し、その上にレジストパターンを形成する例を次に示す。本明細書に記載の各実施例で調製されたレジスト下層膜形成用組成物を、スピナーにより、シリコンウエハー上にSiON膜(窒素含有酸化珪素膜)のような絶縁膜又はlow−k(低誘電率)膜が例えば0.05μmの厚さに形成された基板上に塗布する。それから、ホットプレート上でベーク(例えば205℃、1分間)し、膜厚20nm乃至30nmのレジスト下層膜を形成する。このレジスト下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(例えば住友化学(株)製、商品名:PAR855S75)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上でベーク(例えば115℃、1分間)して、フォトレジスト膜を形成する。
【0067】
次いで、スキャナー、例えば(株)ニコン製、NSRS307E(波長193nm、NA:0.85,σ:0.65/0.93(ANNULAR))を用い、現像後にフォトレジストのライン幅及びそのフォトレジストのライン間の幅が0.08μmであり、すなわち0.08μmL/S(デンスライン)であって、そのようなラインが9本形成されるように設定されたフォトマスクを通して露光を行う。その後、ホットプレート上、例えば105℃で60秒間露光後加熱(PEB)をおこない、冷却後、工業規格の60秒シングルパドル式工程にて、現像液として0.26規定のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像する。以上の過程を経て、レジストパターンを形成することができる。
【0068】
(フォトレジストパターン形状の評価)
本明細書に記載の実施例1、2、4乃至8で調製されたレジスト下層膜形成用組成物を、スピナーにより、シリコンウエハー上にSiON膜(窒素含有酸化珪素膜)が0.05μmの厚さに蒸着された基板上に塗布した。それから、ホットプレート上で205℃1分間ベークし、膜厚20nm乃至30nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(住友化学(株)製、商品名:PAR855S75)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上で115℃にて60秒間ベークして、フォトレジスト膜(膜厚0.12μm)を形成した。
【0069】
次いで、(株)ニコン製スキャナー、NSRS307E(波長193nm、NA:0.85,σ:0.65/0.93(ANNULAR))を用い、現像後にフォトレジストのライン幅及びそのフォトレジストのライン間の幅が0.08μmであり、すなわち0.08μmL/S(デンスライン)であって、そのようなラインが9本形成されるように設定されたフォトマスクを通して露光を行った。その後、ホットプレート上、105℃で60秒間露光後加熱(PEB)をおこない、冷却後、工業規格の60秒シングルパドル式工程にて、現像液として0.26規定のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像した。
【0070】
得られたフォトレジストパターンについて、基板すなわちシリコンウエハーと垂直方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、得られたフォトレジスト
パターンの断面形状は、いずれも良好なストレートの裾形状で、ほぼ矩形状であることが観察された。実施例2、4、5、6及び8のレジスト下層膜形成組成物を用い、最終的に基板上に形成されたフォトレジストパターンの断面を撮影したSEM像を、図1(A)ないし(E)にそれぞれ示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1’):
【化1】


〔上記式中、Xは下記式(2)、式(3)又は式(4):
【化2】


(上記式中、R乃至Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよく、またRとR、RとRは互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよい。)で表される基を表し、A乃至Aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Qは硫黄原子を有する2価の基を表し、qは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕
で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、及び溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
前記ポリマーは、少なくとも1種のジエポキシ化合物と、硫黄原子を有する少なくとも1種のジカルボン酸との反応生成物である、請求項1に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記式(1’)で表される繰り返し単位構造は下記式(6):
【化3】


〔上記式中、Xは前記式(2)、式(3)又は式(4)で表される基を表し、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1乃至3のアルキレン基又は直接結合を表し、Rは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、mは0又は1を表し、rは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕
で表される、請求項1又は請求項2に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
架橋性化合物及びスルホン酸化合物をさらに含む請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
界面活性剤をさらに含む請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像する工程を含む、半導体装置の製造に用いるレジストパターンの形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−33276(P2013−33276A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230776(P2012−230776)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2009−551498(P2009−551498)の分割
【原出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】