硫黄濃度センサ
【課題】排気ガスに含まれる硫黄濃度を適切に検知する。
【解決手段】硫黄濃度センサ(100)は、固体電解質からなる基板(221)と、基板の排気ガスと接する側の面である第1基板面上に配置された第1排気側電極(222)と、第1基板面上に配置され、第1排気側電極の硫黄吸着性能とは異なる硫黄吸着性能を有する第2排気側電極(223)と、基板の大気と接する側の面である第2基板面上に配置された大気側電極(224)と、第1排気側電極及び大気側電極間の第1電圧と、第2排気側電極及び大気側電極間の第2電圧と、の差に応じて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する硫黄濃度検出手段(21)と、を備える。
【解決手段】硫黄濃度センサ(100)は、固体電解質からなる基板(221)と、基板の排気ガスと接する側の面である第1基板面上に配置された第1排気側電極(222)と、第1基板面上に配置され、第1排気側電極の硫黄吸着性能とは異なる硫黄吸着性能を有する第2排気側電極(223)と、基板の大気と接する側の面である第2基板面上に配置された大気側電極(224)と、第1排気側電極及び大気側電極間の第1電圧と、第2排気側電極及び大気側電極間の第2電圧と、の差に応じて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する硫黄濃度検出手段(21)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載されたエンジンから排出される排気ガス等に含まれる硫黄酸化物(Sulfur Oxide:SOx)を検出する硫黄濃度センサの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサとして、例えば、酸化物イオン導電性を有する固体電解質と、該固体電解質の表面の一部に形成された硫酸塩層と、該硫酸塩層と電気的に接する電極と、固体電解質と電気的に接する電極と、を備えるSOxセンサが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、酸素イオン伝導性を有する固体電解質基体の表面に電気的に接続された(i)白金を含む基準極、及び(ii)金又は金合金とガラス成分とを併用した検知極を備える二酸化硫黄ガスセンサが提案されている。ここでは特に、基準極と検知極との間に一定電流を流したときの起電力変化、或いは、基準極と検知極との間の電圧を一定に保持したときの検知極の電流値を測定することにより二酸化硫黄を定量することが記載されている。また、酸素濃度測定用の電極を設けることにより、二酸化硫黄に含まれる酸素の影響を除外することが記載されている(特許文献2参照)。
【0004】
或いは、排気ガス中の硫黄を捕獲し硫酸塩に変化する検出用金属化合物の物性と、硫酸塩からなる参照用金属化合物の物性との差異から、排気ガス中の硫黄成分を検出する硫黄濃度検出装置が提案されている。ここでは特に、硫黄濃度検出装置が、検出用金属化合物から硫黄を放出させて該検出用金属化合物を再生させるヒータを備えることが記載されている(特許文献3参照)。
【0005】
或いは、酸素イオンが移動可能な固体電解質材料で形成された基板の硫黄含有ガスと接する一面側に形成された作用極と、該基板の酸素含有ガスと接触する多面側に形成された対極と、該作用極及び該対極を電気的に接続するワイヤからなる外部回路と、を備える硫黄検出センサが提案されている。ここでは特に、銀からなる作用極において、該作用極を形成する銀と、ガス流中の硫黄成分及び基板内を移動する酸素イオンと、が反応して硫酸銀が形成されると、作用極の電気抵抗値が変化するので、電気抵抗値の今回測定値と前回測定値との差からガス流中の硫黄成分の積算量を測定することが記載されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−239706号公報
【特許文献2】特開平11−223617号公報
【特許文献3】特開2009−019966号公報
【特許文献4】特開2003−130832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した背景技術では、例えば、SOx検出に用いられている硫酸塩層の高温環境下における熱劣化の影響が比較的大きく、リッチ雰囲気下において還元反応が生じる可能性がある。すると、硫黄(濃度)の検出機能が低下する可能性があるという技術的問題点がある。
【0008】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、硫黄濃度を適切に検知可能な硫黄濃度センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硫黄濃度センサは、上記課題を解決するために、エンジンの排気通路に設置され、前記排気通路中を流れる排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出可能な硫黄濃度センサであって、固体電解質からなる基板と、前記基板の前記排気ガスと接する側の面である第1基板面上に配置された第1排気側電極と、前記第1基板面上に配置され、前記第1排気側電極の硫黄吸着性能とは異なる硫黄吸着性能を有する第2排気側電極と、前記基板の大気と接する側の面である第2基板面上に配置された大気側電極と、前記第1排気側電極及び前記大気側電極間の第1電圧と、前記第2排気側電極及び前記大気側電極間の第2電圧と、の差に応じて、前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する硫黄濃度検出手段と、を備える。
【0010】
本発明の硫黄濃度センサによれば、当該硫黄濃度センサは、エンジンの排気通路に設置されている。当該硫黄濃度センサにより検出された排気ガスに含まれる硫黄濃度に応じて、例えばガソリン等の燃料中に含まれる硫黄成分による触媒被毒やエンジン部品の劣化等を評価することが可能である。
【0011】
当該硫黄濃度センサは、固体電解質からなる基板と、該基板の排気ガスと接する側の面である第1基板面上に配置された第1排気側電極及び第2排気側電極と、該基板の大気と接する側の面である第2基板面上に配置された大気側電極と、を備える。ここで、第1排気側電極及び第2排気側電極は、第1排気側電極の硫黄吸着性能と、第2排気側電極の硫黄吸着性能とが互いに異なるように構成されている。
【0012】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる硫黄濃度検出手段は、第1排気側電極及び大気側電極間の電圧である第1電圧と、第2排気側電極及び大気側電極間の電圧である第2電極と、の差(即ち、酸素分圧差に相当)に応じて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0013】
上述の如く、本発明では特に、第1排気側電極の硫黄吸着性能と、第2排気側電極の硫黄吸着性能とが互いに異なっている。すると、第1排気側電極及び第2排気側電極のうち、硫黄吸着性能が高い排気側電極と大気側電極との間の電圧(即ち、第1電圧及び第2電圧の一方)は、排気ガスに含まれる硫黄濃度の変化に対して、比較的良好な応答性を示すこととなる。他方で、第1排気側電極及び第2排気側電極のうち、硫黄吸着性能が低い排気側電極と大気側電極との間の電圧(即ち、第1電圧及び第2電圧の他方)は、排気ガスに含まれる硫黄濃度の変化に対して所定の応答遅れを生じるが、該所定の応答遅れは、硫黄濃度に変化に比例することが本願発明者の研究により判明している。
【0014】
このため、第1電圧及び第2電圧間の差を用いれば、硫黄濃度を適切に検出することができる。加えて、第1排気側電極及び第2排気側電極のいずれにも、硫酸塩層を用いる必要がないため、例えばリッチ雰囲気下においても、適切に、硫黄濃度を検出することができ、実用上非常に有利である。
【0015】
本発明の硫黄濃度センサの一態様では、当該硫黄濃度センサを加熱可能な加熱手段と、前記エンジンに係る空燃比を検出する空燃比検出手段と、前記硫黄濃度検出手段により前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、前記検出された空燃比に応じて、当該硫黄濃度センサを加熱するように前記加熱手段を制御する制御手段と、を更に備える。
【0016】
この態様によれば、当該硫黄濃度センサは、当該硫黄濃度センサを加熱可能な、例えばヒータ等である加熱手段と、エンジンに係る空燃比を検出する、例えば空燃比センサ等である空燃比検出手段と、を備える。
【0017】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、空燃比がリッチであるかリーンであるかに応じて排気ガスの温度が変化することに起因して、当該硫黄濃度センサの温度が変化する。すると、当該硫黄濃度センサの第1排気側電極及び第2排気側電極各々に対する、例えばSOx等の吸着量が不安定となり、当該硫黄濃度センサによる硫黄濃度の検出結果が不適切になる可能性がある。
【0018】
そこで、この態様では、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段により、硫黄濃度検出手段により排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、検出された空燃比に応じて、当該硫黄濃度センサを加熱するように加熱手段が制御される。このため、第1排気側電極及び第2排気側電極各々に対する、例えばSOx等の吸着量が安定し、等体硫黄濃度センサによる硫黄濃度の検出結果の信頼性を向上させることができる。
【0019】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記硫黄濃度検出手段により前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、前記排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、前記エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値、を算出する算出手段と、前記算出された前記排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、前記エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値に応じて前記検出された硫黄の濃度を補正する補正手段と、を更に備える。
【0020】
この態様によれば、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる算出手段は、硫黄濃度検出手段により排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値を算出する。
【0021】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる補正手段は、算出された排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値に応じて検出された硫黄の濃度を補正する。
【0022】
ここで、エンジンから排出される排気ガス中の雰囲気は、エンジンを使用するユーザ(例えば、自動車の運転者等)の意思により逐次変化することが、本願発明者の研究により判明している。
【0023】
従って、補正手段により、上述の如く、排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値に応じて検出された硫黄の濃度が補正されることにより、排気ガスに含まれる硫黄の濃度の検出精度を向上させることができる。具体的には例えば、補正手段は、排気ガスの時間平均値若しくは積算値が比較的大きければ、検出された硫黄の濃度を低濃度側に補正する。或いは、補正手段は、空燃比の時間平均値若しくは積算値が比較的大きければ、検出された硫黄の濃度を低濃度側に補正する。
【0024】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記硫黄濃度検出手段は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に差が生じてから、前記差が解消されるまでの期間における、前記差の積算値に基づいて、前記前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0025】
この態様によれば、比較的容易にして排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出することができ、実用上非常に有利である。
【0026】
或いは、本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記硫黄濃度検出手段は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に差が生じてから、所定時間経過後の前記差に基づいて、前記前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0027】
この態様によれば、比較的容易にして排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出することができ、実用上非常に有利である。
【0028】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記第1排気側電極上に積層された第1コーティング層と、前記第2排気側電極上に積層された第2コーティング層と、を更に備え、前記第1コーティング層は、前記第2コーティング層に比べて、(i)気孔率が低い、(ii)厚い、又は(iii)気孔率が低く且つ厚い。
【0029】
この態様によれば、比較的容易にして、第1排気側電極の硫黄吸着性能と、第2排気側電極の硫黄吸着性能とを互いに異ならしめることができる。
【0030】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記第1排気側電極及び前記第2排気側電極は、白金族元素のみにより構成されている。
【0031】
この態様によれば、例えば金(Au)等の貴金属で構成された排気側電極や、硫酸塩層を有する排気側電極を備える硫黄濃度センサに比べて、還元性ガスが存在するリッチ雰囲気下における還元反応の低下を防止することができ、実用上非常に有利である。
【0032】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記第1排気側電極は、パラジウムからなり、前記第2排気側電極は、プラチナからなり、前記第2電圧に基づいて、前記排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出する酸素濃度検出手段を更に備える。
【0033】
この態様によれば、硫黄濃度と酸素濃度とを同時に比較的精度良く検出することができ、実用上非常に有利である。
【0034】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係るエンジンの概略構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態に係る硫黄濃度センサの構成を示す構成図である。
【図3】第1実施形態に係る硫黄濃度センサにおける排気側電極及び大気側電極間の電圧の時間変動の一例である。
【図4】2つのセルの起電力が一致するまでの時間と、2つのセルの出力差又は該出力差の積算値と、の関係の一例を示す概念図である。
【図5】第1実施形態の変形例に係る硫黄濃度センサの構成を示す構成図である。
【図6】第2実施形態に係る硫黄濃度センサの温度制御の一例を示すタイムチャートである。
【図7】第2実施形態に係るECUが実行する硫黄濃度検出処理を示すフローチャートである。
【図8】2つのセルの起電力が一致するまでの時間と、ガス量の平均値と、補正係数と、の関係を示すマップの一例である。
【図9】第2実施形態の第1変形例に係るECUが実行する硫黄濃度検出処理を示すフローチャートである。
【図10】2つのセルの起電力が一致するまでの時間と、空燃比の平均値と、補正係数と、の関係を示すマップの一例である。
【図11】第2実施形態の第2変形例に係るECUが実行する硫黄濃度検出処理を示すフローチャートである。
【図12】空燃比の平均値と、硫黄濃度の空燃比補正係数と、の関係を示すマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の硫黄濃度センサに係る実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、以降の図では、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0037】
<第1実施形態>
本発明の硫黄濃度センサに係る第1実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るエンジンの概略構成を示す概略図である。
【0038】
図1において、エンジン10は、エンジン本体(気筒群)11と、該エンジン本体11に接続された吸気通路12及び排気通路13と、該排気通路13に配置された、例えば三元触媒等の触媒14と、を備えて構成されている。
【0039】
排気通路13における触媒14の上流側には空燃比センサ23が配置されている。他方、排気通路13における触媒14の下流側には空燃比センサ24が配置されている。ECU(Electronic Control Unit)21は、空燃比センサ23及び24各々の出力に基づいて、エンジン10を制御する。
【0040】
硫黄濃度センサ100は、排気通路13における触媒14の上流側に配置されたセンサ素子22と、ECU21とを備えて構成されている。
【0041】
次に、本実施形態に係る硫黄濃度センサ100のセンサ素子22について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る硫黄濃度センサの構成を示す構成図である。
【0042】
図2において、センサ素子22は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の固体電解質からなる基板221と、該基板221の排気ガスと接する側の基板面221a上に配置された排気側電極222及び223と、該基板221の大気と接する側の基板面221b上に配置された大気側電極224と、当該センサ素子22を加熱可能なヒータ225と、を備えて構成されている。
【0043】
ここで、排気側電極222は、例えばプラチナ(Pt)から構成されており、排気側電極223は、例えばパラジウム(Pd)から構成されている。大気側電極224は、例えばプラチナから構成されている。パラジウムのほうがプラチナに比べて、硫黄吸着性能が高いので、排気側電極223のほうが排気側電極222に比べて硫黄吸着性能が高い。
【0044】
尚、排気側電極223は、Pdに限らず、例えばPd/Pt等のパラジウム合金により構成されていてもよいし、例えばPt層の上にPd層が積層された2層構造電極であってもよい。
【0045】
ECU21は、排気側電極222及び大気側電極224間の電圧V1と、排気側電極223及び大気側電極224間の電圧V2と、の差に応じて、排気通路13を流れる排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0046】
ここで、センサ素子22の出力について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る硫黄濃度センサにおける排気側電極及び大気側電極間の電圧の時間変動の一例である。図3上段は、排気ガスに含まれるSOx濃度の時間変動であり、図3下段は、排気側電極222及び大気側電極224間の電圧V1(図中の“排気側Pt電極”)と、排気側電極223及び大気側電極224間の電圧V2(図中の“排気側Pd電極”)との時間変動である。
【0047】
図3に示すように、時刻t1においてSOx濃度が上昇すると、先ず、硫黄吸着性能の比較的高い排気側電極223及び大気側電極224間の電圧V2が変化する。その後、所定の時間遅れを伴って、硫黄吸着性能の比較的低い排気側電極222及び大気側電極224間の電圧V1が変化する。ここでは、時刻t2において、電圧V1と電圧V2とが等しくなる。
【0048】
ECU21は、時刻t1から時刻t2までの期間(つまり、電圧V1及び電圧V2の間に差が生じてから、該生じた差が無くなるまでの期間)に応じて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0049】
尚、ECU21は、(i)時刻t1から所定時間経過後の電圧V1及び電圧V2の差に応じて、或いは、(ii)電圧V1及び電圧V2の差の時刻t1から時刻t2までの積算値に応じて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出してもよい。
【0050】
ここで、2つのセルの起電力が一致するまでの時間(即ち、電圧V1及び電圧V2の間に差が生じてから、該生じた差が無くなるまでの期間)と、時刻t1から所定時間経過後の電圧V1及び電圧V2の差、又は、電圧V1及び電圧V2の差の時刻t1から時刻t2までの積算値と、の間には、図4に示すような相関関係があることが本願発明者の研究により判明している。
【0051】
このため、電圧V1及び電圧V2の間に差が生じてから、該生じた差が無くなるまでの期間に限らず、(i)時刻t1から所定時間経過後の電圧V1及び電圧V2の差に応じて、或いは、(ii)電圧V1及び電圧V2の差の時刻t1から時刻t2までの積算値に応じて、硫黄の濃度を検出することが可能である。図4は、2つのセルの起電力が一致するまでの時間と、2つのセルの出力差又は該出力差の積算値と、の関係の一例を示す概念図である。
【0052】
尚、本実施形態に係る「基板面221a」、「基板面221b」、「排気側電極222」、「排気側電極223」、「ヒータ225」、「ECU21」、「電圧V1」及び「電圧V2」は、夫々、本発明に係る「第1基板面」、「第2基板面」、「第1排気側電極」、「第2排気側電極」、「加熱手段」、「硫黄濃度検出手段」、「第1電圧」及び「第2電圧」の一例である。本実施形態では、各種電子制御用のECU21の機能の一部を、硫黄濃度センサ100の一部として用いている。
【0053】
<変形例>
次に、第1実施形態に係る硫黄濃度センサの変形例について、図5を参照して説明する。図5は、図2と同趣旨の、第1実施形態の変形例に係る硫黄濃度センサの構成を示す構成図である。
【0054】
図5において、センサ素子22の基板面221a上に配置された排気側電極222及び223は、夫々、コーティング層226及び227により覆われている。排気側電極222を覆うコーティング層226は、排気側電極223を覆うコーティング層227に比べて厚くなるように形成されている。また、コーティング層226の気孔率は、コーティング層227の気孔率に比べて低くなるように形成されている。
【0055】
このように構成すれば、排気側電極222の硫黄吸着性能がより低くなることに起因して、排気側電極222及び223各々への単位時間当たりの硫黄成分(例えばSOx)の吸着量の差が拡大し、排気ガスに含まれる硫黄の濃度が比較的低い場合であっても、硫黄濃度の検出精度を向上させることができる。
【0056】
本実施形態に係る「コーティング層226」及び「コーティング層227」は、夫々、本発明に係る「第1コーティング層」及び「第2コーティング層」の一例である。
【0057】
<第2実施形態>
本発明の硫黄濃度センサに係る第2実施形態を、図6乃至図8を参照して説明する。第2実施形態では、硫黄濃度センサの温度制御等が実施される以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図6乃至図8を参照して説明する。
【0058】
本実施形態では、硫黄濃度センサ100により、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を繰り返し検出するために、ヒータ225(図2参照)を用いてセンサ素子22(図2参照)を加熱することによって硫黄成分の脱離反応を生じさせる。
【0059】
ここで、センサ素子22の温度制御について、図6のタイムチャートを参照して具体的に説明する。
【0060】
図6最下段の「出力モニターフラグ」が“ON”である場合(即ち、時刻t2から時刻t3までの期間)に、ECU21は、センサ素子22からの出力に基づいて排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。このため、少なくとも時刻t2から時刻t3までの期間は、硫黄成分がセンサ素子22に適切に吸着するように、図6中段に示すように、センサ素子22の温度が比較的低く(例えば、摂氏500度等)なるようにヒータ225が制御される。
【0061】
他方、「出力モニターフラグ」が“OFF”である場合(即ち、時刻t2までの期間、及び時刻t3以降の期間)は、センサ素子22に吸着された硫黄成分が脱離されるように、図6中段に示すように、センサ素子22の温度が比較的高く(例えば、摂氏700度等)なるようにヒータ225が制御される。
【0062】
この結果、センサ素子22に吸着した硫黄成分の脱離を適切なタイミングで確実に実行することができる。
【0063】
次に、本実施形態においてECU21が実行する硫黄濃度検出処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0064】
図7において、ECU21は、(i)エンジン11の始動後であるか否か、及び(ii)硫黄濃度センサ100が故障していないか否か、を判定する(ステップS101)。尚、硫黄濃度センサ100の故障判定には、公知の各種態様を適用可能であるので、ここでは説明を割愛する。
【0065】
エンジン11の始動前と判定された場合、又は硫黄濃度センサ100が故障していると判定された場合(ステップS101:No)、ECU22は処理を終了する。他方、エンジン11の始動後、且つ、硫黄濃度センサ100が故障していないと判定された場合(ステップS101:Yes)、ECU21は、センサ素子22の温度が、例えば摂氏700度以上になるように、ヒータ225を制御する(ステップS102)。
【0066】
次に、ECU21は、例えば温度センサ(図示せず)等により検出された触媒14の温度等に基づいて、空燃比のストイキフィードバック制御を開始する条件が成立したか否かを判定する(ステップS103)。ストイキフィードバック制御を開始する条件が成立していないと判定された場合(ステップS103:No)、ECU21は処理を終了する。
【0067】
他方、フィードバック制御を開始する条件が成立したと判定された場合(ステップS103:Yes)、ECU21は、ストイキフィードバック制御開始フラグを“ON”にして(例えば、図6における時刻t1参照)、ストイキフィードバック制御を開始する。尚、ストイキフィードバック制御には、公知の各種態様を適用可能であるので、ここでは説明を割愛する。
【0068】
続いて、ECU21は、センサ素子22の温度が、例えば摂氏500度以下になるように、ヒータ225を制御する(ステップS104)。この際、空燃比センサ23及び24の出力に基づいて、センサ素子22の温度を制御するようにECU21を構成することが望ましい。具体的には例えば、空燃比がリーンである場合、センサ素子22の温度が摂氏500度以下になるようにヒータ225が制御されることが望ましい。また、空燃比がストイキ又はリッチである場合、センサ素子22の温度が摂氏500度〜摂氏700度になるようにヒータ225が制御されることが望ましい。
【0069】
次に、ECU21は、センサ素子22の温度が目標温度に到達したか否かを判定する(ステップS105)。センサ素子22の温度が目標温度に到達していないと判定された場合(ステップS105:No)、ECU21は、ステップS105の処理を実行する(即ち、ECU21は、センサ素子22の温度が目標温度に到達するまで待機状態となる)。
【0070】
センサ素子22の温度が目標温度に到達したと判定された場合(ステップS105:Yes)、ECU21は、センサ素子22からの出力に基づいて、2つのセルの起電力が一致するまでの時間Te(即ち、電圧V1及び電圧V2の間に差が生じてから、該生じた差が無くなるまでの期間(図3参照))を検出する(ステップS106)。続いて、ECU21は、検出された時間Teに基づいて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を算出する。
【0071】
ステップS106の処理と並行して、ECU21は、2つのセルの起電力が一致するまでの期間におけるガス量(空気量)の平均値Ag又は積算値Sgを、例えばエアフロメータ(図示せず)等の出力に基づいて算出する(ステップS107)。
【0072】
次に、ECU21は、(i)検出された時間Teと、(ii)算出されたガス量の平均値Ag又は積算値Sgと、(iii)例えば図8に示すようなマップと、に基づいて補正係数を算出する(ステップS108)。続いて、ECU21は、算出された硫黄の濃度を算出された補正係数により補正して、最終的な硫黄の濃度を算出する。
【0073】
図8は、時間Teとガス量の平均値Agと補正係数との関係を示すマップの一例である。尚、ガス量の平均値Agに代えて、積算値Sgを用いる場合は、時間Teとガス量の積算値Sgと補正係数との関係を示すマップ(図示せず)を用いればよい。
【0074】
次に、ECU21は、センサ素子22に吸着した硫黄成分を脱離させるために、センサ素子22の温度が、例えば摂氏700度以上になるように、ヒータ225を制御する(ステップS109)。
【0075】
次に、ECU21は、センサ素子22の温度を摂氏700度以上で所定時間保持したか否かを判定する(ステップS110)。所定時間保持したと判定された場合(ステップS110:Yes)、ECU21は処理を終了する。他方、所定時間保持していないと判定された場合(ステップS110:No)、ECU21は、ステップS110の処理を実行する。ここで、「所定時間」は、センサ素子22に吸着した硫黄成分を適切に脱離させることが可能な時間として設定すればよい。
【0076】
センサ素子22により酸素濃度を、硫黄濃度と同時に検出する場合には、硫黄成分が吸着しにくい排気側電極222に係る起電力(即ち、電圧V1)を用いればよい。尚、酸素濃度の検出方法には、公知の各種態様を適用可能であるので、ここでは説明を割愛する。
【0077】
尚、本実施形態に係る「ECU21」は、本発明に係る「算出手段」及び「補正手段」の一例である。本実施形態に係る「空燃比センサ23及び24」は、「空燃比検出手段」の一例である。
【0078】
<第1変形例>
次に、第2実施形態に係る硫黄濃度センサの第1変形例について、図9及び図10を参照して説明する。
【0079】
本変形例では、上述したステップS106の処理(図7参照)と並行して、ECU21は、2つのセルの起電力が一致するまでの期間における空燃比の平均値Aaf又は積算値Safを、空燃比センサ23及び24の出力に基づいて算出する(ステップS201)。
【0080】
次に、ECU21は、(i)検出された時間Teと、(ii)算出された空燃比の平均値Aaf又は積算値Safと、(iii)例えば図10に示すようなマップと、に基づいて補正係数を算出する(ステップS202)。続いて、ECU21は、算出された硫黄の濃度を算出された補正係数により補正して、最終的な硫黄の濃度を算出する。
【0081】
図10は、時間Teと空燃比の平均値Aafと補正係数との関係を示すマップの一例である。尚、空燃比の平均値Aafに代えて、積算値Safを用いる場合は、時間Teと空燃比の積算値Safと補正係数との関係を示すマップ(図示せず)を用いればよい。
【0082】
<第2変形例>
次に、第2実施形態に係る硫黄濃度センサの第2変形例について、図11及び図12を参照して説明する。
【0083】
本変形例では、上述したステップS106の処理(図7参照)と並行して、ECU21は、2つのセルの起電力が一致するまでの期間におけるガス量(空気量)の平均値Ag又は積算値Sgを算出する(ステップS301)。
【0084】
次に、ECU21は、(i)検出された時間Teと、(ii)算出されたガス量の平均値Ag又は積算値Sgと、(iii)例えば図8に示すようなマップと、に基づいて補正係数を算出する。続いて、ECU21は、算出された硫黄の濃度を算出された補正係数により補正して、硫黄成分濃度Csiを算出する(ステップS302)。
【0085】
ECU21は、上述したステップS106の処理と並行して、2つのセルの起電力が一致するまでの期間における空燃比の平均値Aaf又は積算値Safを算出する。続いて、ECU21は、算出された空燃比の平均値Aaf又は積算値Safと、例えば図12に示すようなマップと、に基づいて硫黄濃度の空燃比補正係数Ckを算出する(ステップS303)。
【0086】
図12は、空燃比の平均値Aafと、硫黄濃度の空燃比補正係数Ckとの関係を示すマップの一例である。尚、空燃比の平均値Aafに代えて、積算値Safを用いる場合は、空燃比の積算値Safと、硫黄濃度の空燃比補正係数Ckとの関係を示すマップ(図示せず)を用いればよい。
【0087】
次に、ECU21は、上記ステップS302の処理において算出された硫黄成分濃度Csiと、上記ステップS303の処理において算出された硫黄濃度の空燃比補正係数Ckと、に基づいて最終硫黄成分濃度Csrを算出する。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う硫黄濃度センサもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
10…エンジン、11…エンジン本体、12…吸気通路、13…排気通路、14…触媒、21…ECU、22…センサ素子、23、24…空燃比センサ、100…硫黄濃度センサ、221…基板、222、223…排気側電極、224…大気側電極、225…ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載されたエンジンから排出される排気ガス等に含まれる硫黄酸化物(Sulfur Oxide:SOx)を検出する硫黄濃度センサの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサとして、例えば、酸化物イオン導電性を有する固体電解質と、該固体電解質の表面の一部に形成された硫酸塩層と、該硫酸塩層と電気的に接する電極と、固体電解質と電気的に接する電極と、を備えるSOxセンサが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、酸素イオン伝導性を有する固体電解質基体の表面に電気的に接続された(i)白金を含む基準極、及び(ii)金又は金合金とガラス成分とを併用した検知極を備える二酸化硫黄ガスセンサが提案されている。ここでは特に、基準極と検知極との間に一定電流を流したときの起電力変化、或いは、基準極と検知極との間の電圧を一定に保持したときの検知極の電流値を測定することにより二酸化硫黄を定量することが記載されている。また、酸素濃度測定用の電極を設けることにより、二酸化硫黄に含まれる酸素の影響を除外することが記載されている(特許文献2参照)。
【0004】
或いは、排気ガス中の硫黄を捕獲し硫酸塩に変化する検出用金属化合物の物性と、硫酸塩からなる参照用金属化合物の物性との差異から、排気ガス中の硫黄成分を検出する硫黄濃度検出装置が提案されている。ここでは特に、硫黄濃度検出装置が、検出用金属化合物から硫黄を放出させて該検出用金属化合物を再生させるヒータを備えることが記載されている(特許文献3参照)。
【0005】
或いは、酸素イオンが移動可能な固体電解質材料で形成された基板の硫黄含有ガスと接する一面側に形成された作用極と、該基板の酸素含有ガスと接触する多面側に形成された対極と、該作用極及び該対極を電気的に接続するワイヤからなる外部回路と、を備える硫黄検出センサが提案されている。ここでは特に、銀からなる作用極において、該作用極を形成する銀と、ガス流中の硫黄成分及び基板内を移動する酸素イオンと、が反応して硫酸銀が形成されると、作用極の電気抵抗値が変化するので、電気抵抗値の今回測定値と前回測定値との差からガス流中の硫黄成分の積算量を測定することが記載されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−239706号公報
【特許文献2】特開平11−223617号公報
【特許文献3】特開2009−019966号公報
【特許文献4】特開2003−130832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した背景技術では、例えば、SOx検出に用いられている硫酸塩層の高温環境下における熱劣化の影響が比較的大きく、リッチ雰囲気下において還元反応が生じる可能性がある。すると、硫黄(濃度)の検出機能が低下する可能性があるという技術的問題点がある。
【0008】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、硫黄濃度を適切に検知可能な硫黄濃度センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硫黄濃度センサは、上記課題を解決するために、エンジンの排気通路に設置され、前記排気通路中を流れる排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出可能な硫黄濃度センサであって、固体電解質からなる基板と、前記基板の前記排気ガスと接する側の面である第1基板面上に配置された第1排気側電極と、前記第1基板面上に配置され、前記第1排気側電極の硫黄吸着性能とは異なる硫黄吸着性能を有する第2排気側電極と、前記基板の大気と接する側の面である第2基板面上に配置された大気側電極と、前記第1排気側電極及び前記大気側電極間の第1電圧と、前記第2排気側電極及び前記大気側電極間の第2電圧と、の差に応じて、前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する硫黄濃度検出手段と、を備える。
【0010】
本発明の硫黄濃度センサによれば、当該硫黄濃度センサは、エンジンの排気通路に設置されている。当該硫黄濃度センサにより検出された排気ガスに含まれる硫黄濃度に応じて、例えばガソリン等の燃料中に含まれる硫黄成分による触媒被毒やエンジン部品の劣化等を評価することが可能である。
【0011】
当該硫黄濃度センサは、固体電解質からなる基板と、該基板の排気ガスと接する側の面である第1基板面上に配置された第1排気側電極及び第2排気側電極と、該基板の大気と接する側の面である第2基板面上に配置された大気側電極と、を備える。ここで、第1排気側電極及び第2排気側電極は、第1排気側電極の硫黄吸着性能と、第2排気側電極の硫黄吸着性能とが互いに異なるように構成されている。
【0012】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる硫黄濃度検出手段は、第1排気側電極及び大気側電極間の電圧である第1電圧と、第2排気側電極及び大気側電極間の電圧である第2電極と、の差(即ち、酸素分圧差に相当)に応じて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0013】
上述の如く、本発明では特に、第1排気側電極の硫黄吸着性能と、第2排気側電極の硫黄吸着性能とが互いに異なっている。すると、第1排気側電極及び第2排気側電極のうち、硫黄吸着性能が高い排気側電極と大気側電極との間の電圧(即ち、第1電圧及び第2電圧の一方)は、排気ガスに含まれる硫黄濃度の変化に対して、比較的良好な応答性を示すこととなる。他方で、第1排気側電極及び第2排気側電極のうち、硫黄吸着性能が低い排気側電極と大気側電極との間の電圧(即ち、第1電圧及び第2電圧の他方)は、排気ガスに含まれる硫黄濃度の変化に対して所定の応答遅れを生じるが、該所定の応答遅れは、硫黄濃度に変化に比例することが本願発明者の研究により判明している。
【0014】
このため、第1電圧及び第2電圧間の差を用いれば、硫黄濃度を適切に検出することができる。加えて、第1排気側電極及び第2排気側電極のいずれにも、硫酸塩層を用いる必要がないため、例えばリッチ雰囲気下においても、適切に、硫黄濃度を検出することができ、実用上非常に有利である。
【0015】
本発明の硫黄濃度センサの一態様では、当該硫黄濃度センサを加熱可能な加熱手段と、前記エンジンに係る空燃比を検出する空燃比検出手段と、前記硫黄濃度検出手段により前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、前記検出された空燃比に応じて、当該硫黄濃度センサを加熱するように前記加熱手段を制御する制御手段と、を更に備える。
【0016】
この態様によれば、当該硫黄濃度センサは、当該硫黄濃度センサを加熱可能な、例えばヒータ等である加熱手段と、エンジンに係る空燃比を検出する、例えば空燃比センサ等である空燃比検出手段と、を備える。
【0017】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、空燃比がリッチであるかリーンであるかに応じて排気ガスの温度が変化することに起因して、当該硫黄濃度センサの温度が変化する。すると、当該硫黄濃度センサの第1排気側電極及び第2排気側電極各々に対する、例えばSOx等の吸着量が不安定となり、当該硫黄濃度センサによる硫黄濃度の検出結果が不適切になる可能性がある。
【0018】
そこで、この態様では、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段により、硫黄濃度検出手段により排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、検出された空燃比に応じて、当該硫黄濃度センサを加熱するように加熱手段が制御される。このため、第1排気側電極及び第2排気側電極各々に対する、例えばSOx等の吸着量が安定し、等体硫黄濃度センサによる硫黄濃度の検出結果の信頼性を向上させることができる。
【0019】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記硫黄濃度検出手段により前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、前記排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、前記エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値、を算出する算出手段と、前記算出された前記排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、前記エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値に応じて前記検出された硫黄の濃度を補正する補正手段と、を更に備える。
【0020】
この態様によれば、例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる算出手段は、硫黄濃度検出手段により排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値を算出する。
【0021】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる補正手段は、算出された排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値に応じて検出された硫黄の濃度を補正する。
【0022】
ここで、エンジンから排出される排気ガス中の雰囲気は、エンジンを使用するユーザ(例えば、自動車の運転者等)の意思により逐次変化することが、本願発明者の研究により判明している。
【0023】
従って、補正手段により、上述の如く、排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値に応じて検出された硫黄の濃度が補正されることにより、排気ガスに含まれる硫黄の濃度の検出精度を向上させることができる。具体的には例えば、補正手段は、排気ガスの時間平均値若しくは積算値が比較的大きければ、検出された硫黄の濃度を低濃度側に補正する。或いは、補正手段は、空燃比の時間平均値若しくは積算値が比較的大きければ、検出された硫黄の濃度を低濃度側に補正する。
【0024】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記硫黄濃度検出手段は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に差が生じてから、前記差が解消されるまでの期間における、前記差の積算値に基づいて、前記前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0025】
この態様によれば、比較的容易にして排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出することができ、実用上非常に有利である。
【0026】
或いは、本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記硫黄濃度検出手段は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に差が生じてから、所定時間経過後の前記差に基づいて、前記前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0027】
この態様によれば、比較的容易にして排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出することができ、実用上非常に有利である。
【0028】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記第1排気側電極上に積層された第1コーティング層と、前記第2排気側電極上に積層された第2コーティング層と、を更に備え、前記第1コーティング層は、前記第2コーティング層に比べて、(i)気孔率が低い、(ii)厚い、又は(iii)気孔率が低く且つ厚い。
【0029】
この態様によれば、比較的容易にして、第1排気側電極の硫黄吸着性能と、第2排気側電極の硫黄吸着性能とを互いに異ならしめることができる。
【0030】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記第1排気側電極及び前記第2排気側電極は、白金族元素のみにより構成されている。
【0031】
この態様によれば、例えば金(Au)等の貴金属で構成された排気側電極や、硫酸塩層を有する排気側電極を備える硫黄濃度センサに比べて、還元性ガスが存在するリッチ雰囲気下における還元反応の低下を防止することができ、実用上非常に有利である。
【0032】
本発明の硫黄濃度センサの他の態様では、前記第1排気側電極は、パラジウムからなり、前記第2排気側電極は、プラチナからなり、前記第2電圧に基づいて、前記排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出する酸素濃度検出手段を更に備える。
【0033】
この態様によれば、硫黄濃度と酸素濃度とを同時に比較的精度良く検出することができ、実用上非常に有利である。
【0034】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係るエンジンの概略構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態に係る硫黄濃度センサの構成を示す構成図である。
【図3】第1実施形態に係る硫黄濃度センサにおける排気側電極及び大気側電極間の電圧の時間変動の一例である。
【図4】2つのセルの起電力が一致するまでの時間と、2つのセルの出力差又は該出力差の積算値と、の関係の一例を示す概念図である。
【図5】第1実施形態の変形例に係る硫黄濃度センサの構成を示す構成図である。
【図6】第2実施形態に係る硫黄濃度センサの温度制御の一例を示すタイムチャートである。
【図7】第2実施形態に係るECUが実行する硫黄濃度検出処理を示すフローチャートである。
【図8】2つのセルの起電力が一致するまでの時間と、ガス量の平均値と、補正係数と、の関係を示すマップの一例である。
【図9】第2実施形態の第1変形例に係るECUが実行する硫黄濃度検出処理を示すフローチャートである。
【図10】2つのセルの起電力が一致するまでの時間と、空燃比の平均値と、補正係数と、の関係を示すマップの一例である。
【図11】第2実施形態の第2変形例に係るECUが実行する硫黄濃度検出処理を示すフローチャートである。
【図12】空燃比の平均値と、硫黄濃度の空燃比補正係数と、の関係を示すマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の硫黄濃度センサに係る実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、以降の図では、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0037】
<第1実施形態>
本発明の硫黄濃度センサに係る第1実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るエンジンの概略構成を示す概略図である。
【0038】
図1において、エンジン10は、エンジン本体(気筒群)11と、該エンジン本体11に接続された吸気通路12及び排気通路13と、該排気通路13に配置された、例えば三元触媒等の触媒14と、を備えて構成されている。
【0039】
排気通路13における触媒14の上流側には空燃比センサ23が配置されている。他方、排気通路13における触媒14の下流側には空燃比センサ24が配置されている。ECU(Electronic Control Unit)21は、空燃比センサ23及び24各々の出力に基づいて、エンジン10を制御する。
【0040】
硫黄濃度センサ100は、排気通路13における触媒14の上流側に配置されたセンサ素子22と、ECU21とを備えて構成されている。
【0041】
次に、本実施形態に係る硫黄濃度センサ100のセンサ素子22について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る硫黄濃度センサの構成を示す構成図である。
【0042】
図2において、センサ素子22は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の固体電解質からなる基板221と、該基板221の排気ガスと接する側の基板面221a上に配置された排気側電極222及び223と、該基板221の大気と接する側の基板面221b上に配置された大気側電極224と、当該センサ素子22を加熱可能なヒータ225と、を備えて構成されている。
【0043】
ここで、排気側電極222は、例えばプラチナ(Pt)から構成されており、排気側電極223は、例えばパラジウム(Pd)から構成されている。大気側電極224は、例えばプラチナから構成されている。パラジウムのほうがプラチナに比べて、硫黄吸着性能が高いので、排気側電極223のほうが排気側電極222に比べて硫黄吸着性能が高い。
【0044】
尚、排気側電極223は、Pdに限らず、例えばPd/Pt等のパラジウム合金により構成されていてもよいし、例えばPt層の上にPd層が積層された2層構造電極であってもよい。
【0045】
ECU21は、排気側電極222及び大気側電極224間の電圧V1と、排気側電極223及び大気側電極224間の電圧V2と、の差に応じて、排気通路13を流れる排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0046】
ここで、センサ素子22の出力について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る硫黄濃度センサにおける排気側電極及び大気側電極間の電圧の時間変動の一例である。図3上段は、排気ガスに含まれるSOx濃度の時間変動であり、図3下段は、排気側電極222及び大気側電極224間の電圧V1(図中の“排気側Pt電極”)と、排気側電極223及び大気側電極224間の電圧V2(図中の“排気側Pd電極”)との時間変動である。
【0047】
図3に示すように、時刻t1においてSOx濃度が上昇すると、先ず、硫黄吸着性能の比較的高い排気側電極223及び大気側電極224間の電圧V2が変化する。その後、所定の時間遅れを伴って、硫黄吸着性能の比較的低い排気側電極222及び大気側電極224間の電圧V1が変化する。ここでは、時刻t2において、電圧V1と電圧V2とが等しくなる。
【0048】
ECU21は、時刻t1から時刻t2までの期間(つまり、電圧V1及び電圧V2の間に差が生じてから、該生じた差が無くなるまでの期間)に応じて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。
【0049】
尚、ECU21は、(i)時刻t1から所定時間経過後の電圧V1及び電圧V2の差に応じて、或いは、(ii)電圧V1及び電圧V2の差の時刻t1から時刻t2までの積算値に応じて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出してもよい。
【0050】
ここで、2つのセルの起電力が一致するまでの時間(即ち、電圧V1及び電圧V2の間に差が生じてから、該生じた差が無くなるまでの期間)と、時刻t1から所定時間経過後の電圧V1及び電圧V2の差、又は、電圧V1及び電圧V2の差の時刻t1から時刻t2までの積算値と、の間には、図4に示すような相関関係があることが本願発明者の研究により判明している。
【0051】
このため、電圧V1及び電圧V2の間に差が生じてから、該生じた差が無くなるまでの期間に限らず、(i)時刻t1から所定時間経過後の電圧V1及び電圧V2の差に応じて、或いは、(ii)電圧V1及び電圧V2の差の時刻t1から時刻t2までの積算値に応じて、硫黄の濃度を検出することが可能である。図4は、2つのセルの起電力が一致するまでの時間と、2つのセルの出力差又は該出力差の積算値と、の関係の一例を示す概念図である。
【0052】
尚、本実施形態に係る「基板面221a」、「基板面221b」、「排気側電極222」、「排気側電極223」、「ヒータ225」、「ECU21」、「電圧V1」及び「電圧V2」は、夫々、本発明に係る「第1基板面」、「第2基板面」、「第1排気側電極」、「第2排気側電極」、「加熱手段」、「硫黄濃度検出手段」、「第1電圧」及び「第2電圧」の一例である。本実施形態では、各種電子制御用のECU21の機能の一部を、硫黄濃度センサ100の一部として用いている。
【0053】
<変形例>
次に、第1実施形態に係る硫黄濃度センサの変形例について、図5を参照して説明する。図5は、図2と同趣旨の、第1実施形態の変形例に係る硫黄濃度センサの構成を示す構成図である。
【0054】
図5において、センサ素子22の基板面221a上に配置された排気側電極222及び223は、夫々、コーティング層226及び227により覆われている。排気側電極222を覆うコーティング層226は、排気側電極223を覆うコーティング層227に比べて厚くなるように形成されている。また、コーティング層226の気孔率は、コーティング層227の気孔率に比べて低くなるように形成されている。
【0055】
このように構成すれば、排気側電極222の硫黄吸着性能がより低くなることに起因して、排気側電極222及び223各々への単位時間当たりの硫黄成分(例えばSOx)の吸着量の差が拡大し、排気ガスに含まれる硫黄の濃度が比較的低い場合であっても、硫黄濃度の検出精度を向上させることができる。
【0056】
本実施形態に係る「コーティング層226」及び「コーティング層227」は、夫々、本発明に係る「第1コーティング層」及び「第2コーティング層」の一例である。
【0057】
<第2実施形態>
本発明の硫黄濃度センサに係る第2実施形態を、図6乃至図8を参照して説明する。第2実施形態では、硫黄濃度センサの温度制御等が実施される以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図6乃至図8を参照して説明する。
【0058】
本実施形態では、硫黄濃度センサ100により、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を繰り返し検出するために、ヒータ225(図2参照)を用いてセンサ素子22(図2参照)を加熱することによって硫黄成分の脱離反応を生じさせる。
【0059】
ここで、センサ素子22の温度制御について、図6のタイムチャートを参照して具体的に説明する。
【0060】
図6最下段の「出力モニターフラグ」が“ON”である場合(即ち、時刻t2から時刻t3までの期間)に、ECU21は、センサ素子22からの出力に基づいて排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する。このため、少なくとも時刻t2から時刻t3までの期間は、硫黄成分がセンサ素子22に適切に吸着するように、図6中段に示すように、センサ素子22の温度が比較的低く(例えば、摂氏500度等)なるようにヒータ225が制御される。
【0061】
他方、「出力モニターフラグ」が“OFF”である場合(即ち、時刻t2までの期間、及び時刻t3以降の期間)は、センサ素子22に吸着された硫黄成分が脱離されるように、図6中段に示すように、センサ素子22の温度が比較的高く(例えば、摂氏700度等)なるようにヒータ225が制御される。
【0062】
この結果、センサ素子22に吸着した硫黄成分の脱離を適切なタイミングで確実に実行することができる。
【0063】
次に、本実施形態においてECU21が実行する硫黄濃度検出処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0064】
図7において、ECU21は、(i)エンジン11の始動後であるか否か、及び(ii)硫黄濃度センサ100が故障していないか否か、を判定する(ステップS101)。尚、硫黄濃度センサ100の故障判定には、公知の各種態様を適用可能であるので、ここでは説明を割愛する。
【0065】
エンジン11の始動前と判定された場合、又は硫黄濃度センサ100が故障していると判定された場合(ステップS101:No)、ECU22は処理を終了する。他方、エンジン11の始動後、且つ、硫黄濃度センサ100が故障していないと判定された場合(ステップS101:Yes)、ECU21は、センサ素子22の温度が、例えば摂氏700度以上になるように、ヒータ225を制御する(ステップS102)。
【0066】
次に、ECU21は、例えば温度センサ(図示せず)等により検出された触媒14の温度等に基づいて、空燃比のストイキフィードバック制御を開始する条件が成立したか否かを判定する(ステップS103)。ストイキフィードバック制御を開始する条件が成立していないと判定された場合(ステップS103:No)、ECU21は処理を終了する。
【0067】
他方、フィードバック制御を開始する条件が成立したと判定された場合(ステップS103:Yes)、ECU21は、ストイキフィードバック制御開始フラグを“ON”にして(例えば、図6における時刻t1参照)、ストイキフィードバック制御を開始する。尚、ストイキフィードバック制御には、公知の各種態様を適用可能であるので、ここでは説明を割愛する。
【0068】
続いて、ECU21は、センサ素子22の温度が、例えば摂氏500度以下になるように、ヒータ225を制御する(ステップS104)。この際、空燃比センサ23及び24の出力に基づいて、センサ素子22の温度を制御するようにECU21を構成することが望ましい。具体的には例えば、空燃比がリーンである場合、センサ素子22の温度が摂氏500度以下になるようにヒータ225が制御されることが望ましい。また、空燃比がストイキ又はリッチである場合、センサ素子22の温度が摂氏500度〜摂氏700度になるようにヒータ225が制御されることが望ましい。
【0069】
次に、ECU21は、センサ素子22の温度が目標温度に到達したか否かを判定する(ステップS105)。センサ素子22の温度が目標温度に到達していないと判定された場合(ステップS105:No)、ECU21は、ステップS105の処理を実行する(即ち、ECU21は、センサ素子22の温度が目標温度に到達するまで待機状態となる)。
【0070】
センサ素子22の温度が目標温度に到達したと判定された場合(ステップS105:Yes)、ECU21は、センサ素子22からの出力に基づいて、2つのセルの起電力が一致するまでの時間Te(即ち、電圧V1及び電圧V2の間に差が生じてから、該生じた差が無くなるまでの期間(図3参照))を検出する(ステップS106)。続いて、ECU21は、検出された時間Teに基づいて、排気ガスに含まれる硫黄の濃度を算出する。
【0071】
ステップS106の処理と並行して、ECU21は、2つのセルの起電力が一致するまでの期間におけるガス量(空気量)の平均値Ag又は積算値Sgを、例えばエアフロメータ(図示せず)等の出力に基づいて算出する(ステップS107)。
【0072】
次に、ECU21は、(i)検出された時間Teと、(ii)算出されたガス量の平均値Ag又は積算値Sgと、(iii)例えば図8に示すようなマップと、に基づいて補正係数を算出する(ステップS108)。続いて、ECU21は、算出された硫黄の濃度を算出された補正係数により補正して、最終的な硫黄の濃度を算出する。
【0073】
図8は、時間Teとガス量の平均値Agと補正係数との関係を示すマップの一例である。尚、ガス量の平均値Agに代えて、積算値Sgを用いる場合は、時間Teとガス量の積算値Sgと補正係数との関係を示すマップ(図示せず)を用いればよい。
【0074】
次に、ECU21は、センサ素子22に吸着した硫黄成分を脱離させるために、センサ素子22の温度が、例えば摂氏700度以上になるように、ヒータ225を制御する(ステップS109)。
【0075】
次に、ECU21は、センサ素子22の温度を摂氏700度以上で所定時間保持したか否かを判定する(ステップS110)。所定時間保持したと判定された場合(ステップS110:Yes)、ECU21は処理を終了する。他方、所定時間保持していないと判定された場合(ステップS110:No)、ECU21は、ステップS110の処理を実行する。ここで、「所定時間」は、センサ素子22に吸着した硫黄成分を適切に脱離させることが可能な時間として設定すればよい。
【0076】
センサ素子22により酸素濃度を、硫黄濃度と同時に検出する場合には、硫黄成分が吸着しにくい排気側電極222に係る起電力(即ち、電圧V1)を用いればよい。尚、酸素濃度の検出方法には、公知の各種態様を適用可能であるので、ここでは説明を割愛する。
【0077】
尚、本実施形態に係る「ECU21」は、本発明に係る「算出手段」及び「補正手段」の一例である。本実施形態に係る「空燃比センサ23及び24」は、「空燃比検出手段」の一例である。
【0078】
<第1変形例>
次に、第2実施形態に係る硫黄濃度センサの第1変形例について、図9及び図10を参照して説明する。
【0079】
本変形例では、上述したステップS106の処理(図7参照)と並行して、ECU21は、2つのセルの起電力が一致するまでの期間における空燃比の平均値Aaf又は積算値Safを、空燃比センサ23及び24の出力に基づいて算出する(ステップS201)。
【0080】
次に、ECU21は、(i)検出された時間Teと、(ii)算出された空燃比の平均値Aaf又は積算値Safと、(iii)例えば図10に示すようなマップと、に基づいて補正係数を算出する(ステップS202)。続いて、ECU21は、算出された硫黄の濃度を算出された補正係数により補正して、最終的な硫黄の濃度を算出する。
【0081】
図10は、時間Teと空燃比の平均値Aafと補正係数との関係を示すマップの一例である。尚、空燃比の平均値Aafに代えて、積算値Safを用いる場合は、時間Teと空燃比の積算値Safと補正係数との関係を示すマップ(図示せず)を用いればよい。
【0082】
<第2変形例>
次に、第2実施形態に係る硫黄濃度センサの第2変形例について、図11及び図12を参照して説明する。
【0083】
本変形例では、上述したステップS106の処理(図7参照)と並行して、ECU21は、2つのセルの起電力が一致するまでの期間におけるガス量(空気量)の平均値Ag又は積算値Sgを算出する(ステップS301)。
【0084】
次に、ECU21は、(i)検出された時間Teと、(ii)算出されたガス量の平均値Ag又は積算値Sgと、(iii)例えば図8に示すようなマップと、に基づいて補正係数を算出する。続いて、ECU21は、算出された硫黄の濃度を算出された補正係数により補正して、硫黄成分濃度Csiを算出する(ステップS302)。
【0085】
ECU21は、上述したステップS106の処理と並行して、2つのセルの起電力が一致するまでの期間における空燃比の平均値Aaf又は積算値Safを算出する。続いて、ECU21は、算出された空燃比の平均値Aaf又は積算値Safと、例えば図12に示すようなマップと、に基づいて硫黄濃度の空燃比補正係数Ckを算出する(ステップS303)。
【0086】
図12は、空燃比の平均値Aafと、硫黄濃度の空燃比補正係数Ckとの関係を示すマップの一例である。尚、空燃比の平均値Aafに代えて、積算値Safを用いる場合は、空燃比の積算値Safと、硫黄濃度の空燃比補正係数Ckとの関係を示すマップ(図示せず)を用いればよい。
【0087】
次に、ECU21は、上記ステップS302の処理において算出された硫黄成分濃度Csiと、上記ステップS303の処理において算出された硫黄濃度の空燃比補正係数Ckと、に基づいて最終硫黄成分濃度Csrを算出する。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う硫黄濃度センサもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
10…エンジン、11…エンジン本体、12…吸気通路、13…排気通路、14…触媒、21…ECU、22…センサ素子、23、24…空燃比センサ、100…硫黄濃度センサ、221…基板、222、223…排気側電極、224…大気側電極、225…ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に設置され、前記排気通路中を流れる排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出可能な硫黄濃度センサであって、
固体電解質からなる基板と、
前記基板の前記排気ガスと接する側の面である第1基板面上に配置された第1排気側電極と、
前記第1基板面上に配置され、前記第1排気側電極の硫黄吸着性能とは異なる硫黄吸着性能を有する第2排気側電極と、
前記基板の大気と接する側の面である第2基板面上に配置された大気側電極と、
前記第1排気側電極及び前記大気側電極間の第1電圧と、前記第2排気側電極及び前記大気側電極間の第2電圧と、の差に応じて、前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する硫黄濃度検出手段と、
を備えることを特徴とする硫黄濃度センサ。
【請求項2】
当該硫黄濃度センサを加熱可能な加熱手段と、
前記エンジンに係る空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記硫黄濃度検出手段により前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、前記検出された空燃比に応じて、当該硫黄濃度センサを加熱するように前記加熱手段を制御する制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項3】
前記硫黄濃度検出手段により前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、前記排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、前記エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値、を算出する算出手段と、
前記算出された前記排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、前記エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値に応じて前記検出された硫黄の濃度を補正する補正手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項4】
前記硫黄濃度検出手段は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に差が生じてから、前記差が解消されるまでの期間における、前記差の積算値に基づいて、前記前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項5】
前記硫黄濃度検出手段は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に差が生じてから、所定時間経過後の前記差に基づいて、前記前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項6】
前記第1排気側電極上に積層された第1コーティング層と、
前記第2排気側電極上に積層された第2コーティング層と、
を更に備え、
前記第1コーティング層は、前記第2コーティング層に比べて、(i)気孔率が低い、(ii)厚い、又は(iii)気孔率が低く且つ厚い、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項7】
前記第1排気側電極及び前記第2排気側電極は、白金族元素のみにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項8】
前記第1排気側電極は、パラジウムからなり、
前記第2排気側電極は、プラチナからなり、
前記第2電圧に基づいて、前記排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出する酸素濃度検出手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項1】
エンジンの排気通路に設置され、前記排気通路中を流れる排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出可能な硫黄濃度センサであって、
固体電解質からなる基板と、
前記基板の前記排気ガスと接する側の面である第1基板面上に配置された第1排気側電極と、
前記第1基板面上に配置され、前記第1排気側電極の硫黄吸着性能とは異なる硫黄吸着性能を有する第2排気側電極と、
前記基板の大気と接する側の面である第2基板面上に配置された大気側電極と、
前記第1排気側電極及び前記大気側電極間の第1電圧と、前記第2排気側電極及び前記大気側電極間の第2電圧と、の差に応じて、前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出する硫黄濃度検出手段と、
を備えることを特徴とする硫黄濃度センサ。
【請求項2】
当該硫黄濃度センサを加熱可能な加熱手段と、
前記エンジンに係る空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記硫黄濃度検出手段により前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、前記検出された空燃比に応じて、当該硫黄濃度センサを加熱するように前記加熱手段を制御する制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項3】
前記硫黄濃度検出手段により前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度が検出される際に、前記排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、前記エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値、を算出する算出手段と、
前記算出された前記排気ガスの時間平均値若しくは積算値、又は、前記エンジンに係る空燃比の時間平均値若しくは積算値に応じて前記検出された硫黄の濃度を補正する補正手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項4】
前記硫黄濃度検出手段は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に差が生じてから、前記差が解消されるまでの期間における、前記差の積算値に基づいて、前記前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項5】
前記硫黄濃度検出手段は、前記第1電圧と前記第2電圧との間に差が生じてから、所定時間経過後の前記差に基づいて、前記前記排気ガスに含まれる硫黄の濃度を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項6】
前記第1排気側電極上に積層された第1コーティング層と、
前記第2排気側電極上に積層された第2コーティング層と、
を更に備え、
前記第1コーティング層は、前記第2コーティング層に比べて、(i)気孔率が低い、(ii)厚い、又は(iii)気孔率が低く且つ厚い、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項7】
前記第1排気側電極及び前記第2排気側電極は、白金族元素のみにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【請求項8】
前記第1排気側電極は、パラジウムからなり、
前記第2排気側電極は、プラチナからなり、
前記第2電圧に基づいて、前記排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出する酸素濃度検出手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の硫黄濃度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−19749(P2013−19749A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152780(P2011−152780)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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