説明

硬化性樹脂組成物及び室温硬化性接着剤組成物

【課題】硬化性シリコーン系樹脂とエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物のプラスチック類に対する密着性の向上。
【解決手段】分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)と、分子内に特定の五員環カーボネート基を有する化合物(C)と、下記の化合物(D)〜化合物(G)からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含有する硬化性樹脂組成物。化合物(D):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物、化合物(E):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物、化合物(F):分子内にC=N結合を有するケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物、化合物(G):分子内にC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有するケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びそれを主体的成分とする室温硬化性接着剤組成物に関し、特定の化学構造・硬化機構を有する硬化性樹脂組成物からなる接着性に優れた硬化性樹脂組成物及びそれを用いた室温硬化性接着剤組成物に関する。より詳細には、分子内に五員環カーボネート基を有する硬化性樹脂を配合した硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂とを配合した接着剤が提案されている(特許文献1〜5)。該接着剤は、硬化性シリコーン系樹脂の強度不足をエポキシ樹脂で補うことによって、可撓性、耐衝撃性、強靱性、強度などが改善されており、金属パネルのはり合わせ、あるいは、タイルのはり合わせなどに使用されている。
【0003】
【特許文献1】特公平3−31726号公報
【特許文献2】特開平2−140269号公報
【特許文献3】特開平2−145674号公報
【特許文献4】特開平2−145675号公報
【特許文献5】特開平2−228365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、該接着剤は、エポキシ樹脂が配合されているため金属に対する密着性は比較的高いが、一方でエポキシ樹脂はプラスチックに対する密着性がほとんどなく、さらには、元来接着性の乏しい硬化性シリコーン系樹脂を主の硬化性樹脂として配合していることから、特にABSなどに代表されるプラスチック類に対する密着性が十分ではなかった。そのため、該接着剤の使用範囲は金属やタイル等の無機物に限定されており、該接着剤の優れた皮膜性能を活かし切れていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような問題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、硬化性シリコーン系樹脂とエポキシ樹脂にくわえ、さらに特定の五員環カーボネート基を有する化合物を配合することにより、プラスチックに対する密着性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜8の発明から構成される。
【0006】
すなわち、第1の発明は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)と、分子内に下記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物(C)と、下記の化合物(D)〜化合物(G)からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関するものである。
化合物(D):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物。
化合物(E):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物。
化合物(F):分子内にC=N結合を有するケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物。
化合物(G):分子内にC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有するケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物。
【化1】

・・・(1)
(ただし、式中のXは化合物(C)の残基を表す)
【0007】
また、第2の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)が、分子内に活性水素が置換されていてもよいウレタン結合及び/又は活性水素が置換されていてもよい尿素結合を有することを特徴とする、第1の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0008】
また、第3の発明は、五員環カーボネート基を有する化合物(C)が、分子内に下記一般式(2)で示される基を有することを特徴とする、第1又は第2の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【化2】

・・・(2)
(ただし、式中のRは分子量1,000未満の2価の有機基であり、Yは化合物(C)の残基を表す)
【0009】
また、第4の発明は、五員環カーボネート基を有する化合物(C)の主鎖がオキシアルキレン重合体であることを特徴とする、第1〜第3のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0010】
また、第5の発明は、五員環カーボネート基を有する化合物(C)の残基X又はYの分子量が500以上であることを特徴とする、第1〜第4のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0011】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物を主体とする室温硬化性接着剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、硬化性シリコーン系樹脂とエポキシ樹脂とからなる硬化性樹脂組成物に、特定の五員環カーボネート基を有する化合物を配合することにより、プラスチック(特にABS樹脂)に対する密着性が向上するという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0014】
[分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)について]
本発明における硬化性シリコーン系樹脂(A)は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂である。上記反応性珪素基とは、珪素原子における主鎖との結合手以外に加水分解性基が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基が2〜0個結合しているものである。珪素原子に結合している加水分解性基としては、ヒドロキシル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基が一般的に用いられる。その他、ハロゲン基やメルカプト基等の従来公知の加水分解性基も用いることができる。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基としては、メチル基やエチル基等のアルキル基が一般的に用いられる。主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられているものが採用される。
【0015】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、株式会社カネカ製のサイリルシリーズ、MSポリマーシリーズ、MAシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、エピオンシリーズ;旭硝子株式会社製のESシリーズ;デグサジャパン株式会社製のベストプラスト206、信越化学工業株式会社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ;東亞合成株式会社製のXPRシリーズ;綜研化学株式会社製のアクトフローシリーズ等が挙げられる。
【0016】
また、本発明では、硬化性シリコーン系樹脂(A)として、分子内にウレタン結合、尿素結合等の極性基(これらのうちウレタン結合、尿素結合については、ウレタン結合又は尿素結合が有する活性水素が有機基で置換されているものも含む)を含有する硬化性シリコーン系樹脂を好適に用いることができる。このような極性基を架橋可能な反応性珪素基の近傍に導入すると、硬化性シリコーン系樹脂の硬化がさらに促進されるため好ましい。硬化が促進する理由としては、硬化性シリコーン系樹脂の分子内に存在する極性基同士が水素結合等の相互作用によってドメインを形成し、それによって架橋可能な反応性珪素基同士の分子的な距離が近くなり、架橋可能な反応性珪素基同士のカップリング反応(縮合反応)が起こりやすくなるためであると考えられる。
【0017】
分子内に極性基を含有する硬化性シリコーン系樹脂は、従来公知の方法で合成すればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物(あるいはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物)を反応させる方法や、水酸基末端ポリオールにイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。より具体的には、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特開2005−54174号公報、特表2004−518801号公報、特表2004−536957号公報、特表2005−501146号公報等に記載の方法で容易に合成することができる。
【0018】
[分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)について]
本発明におけるエポキシ樹脂(B)は、分子内にオキシラン環を有する従来公知のエポキシ化合物である。具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミンをエポキシ化したエポキシ樹脂、複素環を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂等の一分子中に一個以上のオキシラン環を含有する化合物等の従来公知のエポキシ基含有化合物が挙げられる。また、市販品としては、大日本インキ化学工業株式会社製のエピクロンシリーズ;ダイセル化学工業株式会社製のセロキサイドシリーズ、エポリードシリーズ、EHPEシリーズ、サイクロマーシリーズ;ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコートシリーズ、ダウケミカル日本株式会社製のD.E.R.シリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。エポキシ樹脂(B)の配合量は、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して1.0〜500質量部が好ましく、5.0〜200質量部がおり好ましく、10〜100質量部が特に好ましい。
【0019】
[五員環カーボネート基を有する化合物(C)について]
本発明における、五員環カーボネート基を有する化合物(C)(以下、単に「化合物(C)」と表記することがある)は、上記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物である。
化合物(C)は、例えば、ジオールとホスゲンとの反応(参考文献、B.M.Trost and D.M.T.Chan.,J.Org.Chem.,48,3346(1983)他)、オキシランとβラクトンとの反応(T.Nishikubo,T.Iizuka,M.Iida and N.Isobe,Tetrahedron Lett.,27,3741(1986))、オキシランと二酸化炭素による反応(W.J.Peppel,Ind.Eng.Chem.,50,767(1958)、N.Kihara and T.Endo,Macromolecules,25,4824(1992))等の反応を用いて合成することができる。
【0020】
また、化合物(C)のうち、上記一般式(2)で示される、分子内にウレタン結合及び五員環カーボネート基を有するものは、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(c1)とグリセリンカーボネート(下記一般式(3))との反応により、合成することもできる。
【化3】

・・・(3)
【0021】
[イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(c1)について]
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(c1)は、ポリオール化合物(i)とポリイソシアネート化合物(ii)から従来公知の定法により合成することができる。
【0022】
[ポリオール化合物(i)について]
ポリオール化合物(i)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等の従来公知のポリオール化合物が例示される。これらポリオールは、一種単独を用いてもよく、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0023】
さらに具体的に説明すれば、ポリエーテルポリオールとしては、数平均分子量500〜30,000のものが好ましく、1,000〜20,000のものが特に好ましい。また、官能基数が2以上のポリエーテルポリオールが好ましく、その具体例としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシヘキシレン、ポリオキシテトラメチレン等の単独重合体、並びにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキシレンオキシド及びテトラヒドロフランよりなる群から選ばれた二種以上のモノエポキシドを開環共重合させてなる共重合体が挙げられる。特に、官能基数が2〜6のポリオキシプロピレンポリオールが好ましく、その具体例としては、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオールが挙げられる。
【0024】
ポリエーテルポリオールの市販品としては、株式会社ADEKA製;アデカポリエーテルシリーズ、旭硝子株式会社製;PMLシリーズ、住化バイエルウレタン株式会社製;スミフェンシリーズ、三井化学ポリウレタン株式会社製;アクトコールシリーズ(以上、いずれも商品名)等が例示される。
【0025】
ポリエステルポリオールとしては、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸類の一種又は二種以上と、ジオール類の一種又は二種以上とを重縮合して得られる重合体、ε−カプロラクタム、バレロラクトン等を開環重合させてなる開環重合物、活性水素を2個以上有するひまし油等の活性水素化合物が例示される。通常、分子量50〜25,000のものが用いられる。
【0026】
ポリオレフィンポリオールとしては、エチレン・α−オレフィン骨格を有するポリオール、ポリイソブチレン骨格を有するポリオール等が例示される。
【0027】
この他、ポリオール化合物(i)の主鎖骨格は、アクリル骨格を有するポリオール化合物、フッ素原子、珪素原子、硫黄原子又はロジン骨格を有する有機基を含有するポリオール化合物、ジエン系モノマーを重合して得られるポリブタジエン骨格及び/又はポリイソプレン骨格などを有するポリオール化合物が挙げられ、使用目的や求める性能に応じて、適宜のポリオール化合物を用いればよい。
【0028】
以上例示したポリオール化合物の中でも、化合物(C)の主鎖骨格(すなわち残基X又はY)としては、ポリオキシアルキレンであることが、得られる硬化皮膜の柔軟性を向上させ、さらに各種基材との密着性が向上するため、好ましい。さらに、ポリエチレンオキサイド、すなわち、エチレンオキサイドの開環重合体(具体的には、オキシエチレン基(−OCHCH−))をその繰り返し構成単位として含有するものであることによって、アクリル系基材等への接着性が大幅に向上するため、特に好ましい。
また、化合物(C)の主鎖骨格(すなわち残基X又はY)の分子量が500以上となるようなポリオール化合物(i)を選択することが、これらの効果をさらに明確するのでさらに好ましい。
【0029】
[ポリイソシアネート化合物(ii)について]
ポリイソシアネート化合物(ii)としては、分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基(あるいはイソチオシアネート基)を有する化合物及びその変性物である。具体例としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物等が例示される。さらに具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−若しくは1,4−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、フェニルジイソチオシアネート、及び、それらの変性三量体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
五員環カーボネート基を有する化合物(C)の配合量は、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して1.0〜500質量部が好ましく、5.0〜200質量部がおり好ましく、10〜100質量部が特に好ましい。
【0031】
[分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物(D)について]
本発明におけるポリアミン化合物(D)(以下、単に「化合物(D)」と表記することがある)は、分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を複数有する化合物であり、従来公知のポリアミン化合物を使用することができる。具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ノルボルナンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、式 HN(CNH)H(n≧5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー株式会社製)、サンテクノジャパン株式会社製商品名ジェファーミンシリーズ等の分子末端に第1級アミノ基を有するポリオキシプロピレン、日本触媒株式会社製商品名エポミンシリーズ等のポリエチレンイミン、日本触媒株式会社製商品名ポリメントシリーズ等のアミノエチル化アクリルポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
上記化合物(D)のアミノ基は、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基と反応することから、硬化物の皮膜凝集力をさらに一段と向上させることができ、硬化性樹脂組成物を効果的に硬化させる。上記化合物(D)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよく、さらにこれらは1種又は2種以上使用してもよい。上記化合物(D)の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基1モルに対して、上記化合物(D)中の第1級及び/又は第2級アミノ基が0.01〜3.0モルであるのが好ましく、0.1〜2.0モルであるのがさらに好ましく、0.2〜1.0モルであるのが特に好ましい。上記化合物(D)の添加量が、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基1モルに対して0.01モルを下回ると化合物(C)を添加する効果が十分でないことがあり、3.0モルを上回ると上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)が十分硬化しないことがある。
【0033】
[分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基、並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(E)について]
本発明における、アミノシラン化合物(E)(以下、単に「化合物(E)」と表記することがある)は、分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基、並びに架橋可能な反応性珪素基を有する化合物である。
【0034】
上記化合物(E)としては、下記一般式(5)で示される化合物(e1)、化合物(e1)の縮合生成物、又は、化合物(e1)と下記一般式(6)で示される化合物(e2)との縮合反応生成物が挙げられる。これらの中では、化合物(e1)の縮合生成物、及び、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合反応生成物がより好ましく、化合物(e1)の縮合生成物、及び、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合反応生成物のうち2個以上の化合物(e1)と1個以上の化合物(e2)との縮合反応生成物が特に好ましい。その理由は、上記縮合生成物はその分子内に第1級アミノ基を複数個有しているため、上記エポキシ樹脂(B)や上記化合物(C)との反応確率が向上するからである。
【0035】
【化4】

・・・(5)
(ただし、式中、R1はフェニル基及び炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる一種以上の官能基を、Rは第2級アミノ基を含んでいてもよい二価の有機基を、Wはフェノキシ基及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる一種以上の基を、nは0、1又は2を、それぞれ表す)
【化5】

・・・(6)
(ただし、式中、R、R、Rは、フェニル基、分子量500以下のアルキル基、フェノキシ基、及び、炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる一種以上の基をそれぞれ表し、Rは、フェニル基、及び、炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる一種以上の基をそれぞれ表す)
【0036】
[化合物(e1)について]
化合物(e1)の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、[N−(2−アミノエチル)アミノメチル]メチルジメトキシシラン、[N−(2−アミノエチル)アミノメチル]トリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、[2−アミノエチル−(2′−アミノエチル)]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級アミノ基含有アミノシラン化合物等が例示される。また、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等のケチミンシラン化合物も、湿気により第1級アミノ基が生成するため実質的に含まれる。なかでも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、又は、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシランを用いることが、入手が容易であるという観点から好ましい。
【0037】
[化合物(e2)について]
化合物(e2)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が例示される。なかでも、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランを用いることが、化合物(e1)との縮合反応の容易性の観点から好ましい。
【0038】
化合物(e1)単独、あるいは、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合生成物は、従来公知の定法により合成すればよい。具体的には、化合物(e1)を水と反応させる方法、あるいは、化合物(e1)及び化合物(e2)を水と反応させる方法が挙げられる。化合物(e1)単独、あるいは、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合生成物は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)等のアミノシランのシリル基を単独あるいはその他のアルコキシシラン化合物と一部縮合させた化合物が挙げられる。
【0039】
本発明においては、上記化合物(E)を配合しなくともプラスチック(特にABS樹脂)に対する密着性が向上するが、上記化合物(E)を配合することでよりその効果が高まる。その理由としては、上記化合物(E)のアミノ基は、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基と反応するうえ、上記化合物(E)の反応性珪素基が架橋するため、上記化合物(E)はいわば上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)の硬化剤として働き、硬化性樹脂組成物を効果的に硬化させるからである。また、上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)と反応せずに残った上記化合物(E)は、金属や無機材料への密着性付与剤として働くことができ、各種被着材に対する密着性を向上させるのである。
【0040】
上記化合物(E)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよい。また、上記化合物(E)は1種単独又は2種以上併用してもよい。上記化合物(E)の配合量は特に限定されないが、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。
【0041】
[分子内にC=N結合を有するケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物(F)について]
本発明における、ケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物(F)(以下、単に「化合物(F)」と表記することがある)は、分子内に加水分解性のC=N結合を有する化合物であり、上記化合物(D)のうち第1級アミノ基を有する化合物と、ケトン化合物又はアルデヒド化合物との脱水縮合反応によって合成することができる。
【0042】
上記ケトン化合物の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記アルデヒド化合物としては、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0043】
上記化合物(F)は、上記化合物(F)中のC=N結合が分解した後に生成する第1級アミノ基が、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基と反応することから、硬化物の皮膜凝集力をさらに一段と向上させることができ、硬化性樹脂組成物を効果的に硬化させる。上記化合物(F)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよく、さらにこれらは1種又は2種以上使用してもよい。また、上記化合物(F)は分子中のC=N結合が分解して第1級アミノ基が生成するが、該反応に水(空気中の水分)が必要であるため潜在性硬化剤として利用できることから、配合した硬化性樹脂組成物を水(空気中の水分)が混入しないような密閉容器に充填することで、本発明にかかる硬化性樹脂組成物を一液型とすることができる。
【0044】
上記化合物(F)の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基1モルに対して、上記化合物(F)中のC=N結合が0.01〜3.0モルであるのが好ましく、0.1〜2.0モルであるのがさらに好ましく、0.2〜1.0モルであるのが特に好ましい。上記化合物(F)の添加量が、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基1モルに対して0.01モルを下回ると化合物(C)を添加する効果が十分でないことがあり、3.0モルを上回ると上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)が十分硬化しないことがある。
【0045】
[分子内にC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有するケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物(G)について]
本発明における、ケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物(G)(以下、単に「化合物(G)」と表記することがある)は、分子内に加水分解性のC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有する化合物であり、上記化合物(E)のうち第1級アミノ基を有する化合物と、上記ケトン化合物又は上記アルデヒド化合物との脱水反応によって合成することができる。
【0046】
本発明においては、上記化合物(G)を配合しなくともプラスチック(特にABS樹脂)に対する密着性が向上するが、上記化合物(G)を配合することでよりその効果が高まる。その理由としては、上記化合物(G)のC=N結合が分解することで生成する第1級アミノ基が、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基と反応するうえ、上記化合物(G)の反応性珪素基が架橋するため、上記化合物(G)はいわば上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)の硬化剤として働き、硬化性樹脂組成物を効果的に硬化させるからである。また、上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)と反応せずに残った上記化合物(G)は、金属や無機材料への密着性付与剤として働くことができ、各種被着材に対する密着性を向上させるのである。特に、上記化合物(F)と同様に、上記化合物(G)は分子中のC=N結合が分解して第1級アミノ基が生成するが、該反応に水(空気中の水分)が必要であるため潜在性硬化剤として利用できることから、本発明にかかる硬化性樹脂組成物を一液型とする際に好適に用いられる。
【0047】
上記化合物(G)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよい。また、上記化合物(G)は1種単独又は2種以上併用してもよい。上記化合物(G)の配合量は特に限定されないが、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。
【0048】
[その他の成分について]
本発明に係る硬化性樹脂組成物中には、従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。例えば、有機金属系化合物、三フッ化ホウ素系化合物等の硬化促進剤、親水性又は疎水性シリカ系粉体、炭酸カルシウム粉体、クレイ粉体、アクリル系等の有機系粉体、有機系・無機系のバルーン等の充填材、フェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、機能性オリゴマー、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、3−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジ−4−イルオキシ)プロピルトリエトキシシラン等の老化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ブロックドポリイソシアネート等の耐水性向上剤、乾性油等を配合することができる。
【0049】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)が硬化してネットワークを形成する上、上記エポキシ樹脂(B)のオキシラン環と上記化合物(D)のアミノ基との反応による反応生成物で形成されるネットワーク(NA)、及び、上記化合物(C)の五員環カーボネート基と上記化合物(D)のアミノ基との反応による反応生成物で形成されるネットワーク(NB)が相互に入り組んだ高次構造を取っていると推察される。さらには、例えば下記式(7)で示されるように、上記エポキシ樹脂(B)のオキシラン環と上記化合物(C)の五員環カーボネート基とが上記化合物(D)のアミノ基との反応によって連結されることにより、上記ネットワーク(NA)と上記ネットワーク(NB)とが架橋されていると推察される。このような理由から、本発明における硬化性樹脂組成物が硬化後に非常に強靱な硬化物を形成するものと考えられる。そのうえ、上記化合物(C)の五員環カーボネート基と上記化合物(D)のアミノ基とが反応した際には、密着性付与効果の高いウレタン結合及び水酸基が生成するため、金属への密着性及びプラスチックに対する密着性が十分確保されるものと推察される。さらに、上記化合物(E)が配合されている場合には、上記化合物(E)の密着性付与効果だけでなく、化合物(E)が有するアミノ基は、化合物(D)が有するアミノ基と同様、化合物(C)と化合物(D)とも反応する。このため、上記化合物(C)と上記化合物(E)との反応生成物と、上記化合物(D)と上記化合物(E)との反応生成物とが、反応性珪素基の縮合反応により相互にネットワークを形成することにより、より強靱かつ密着性が高くなる効果が得られるものと推察される。つまり、本発明は、従来公知の硬化性シリコーン系樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とから構成されるものとは全く異なり、従来に類を見ない硬化機構並びに硬化ネットワーク(いわば「シリコーン・ウレタン・エポキシ・ハイブリッド」)を形成するものであると認識されるべきである。なお、上記化合物(F)又は上記化合物(G)に関しても、加水分解した後に上記化合物(F)は上記化合物(D)に、上記化合物(G)は上記化合物(E)になるため、効果が発現する機構は上記と同様である。
【0050】
【化6】

・・・(7)
【0051】
また、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、一液型としても二液型としても、場合によっては三液以上を混合して使用することもできる。一液型として使用される場合は、互いに密封状態では不活性な化合物を選択し、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すればよい。
また、二液型(又は三液以上)として使用される場合には、適宜、硬化性シリコーン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、化合物(C)、化合物(D)〜化合物(G)とが、第一液及び第二液(又はさらに第三液)として個別に包装されて提供されるが、その組み合わせは任意である。そして、使用時にこれら第一液と第二液(又はさらに第三液以上)とを混合して任意の箇所に適用すればよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0053】
[硬化性シリコーン系樹脂(A)の調製]
(化合物A−1)
化合物A−1として、SAT400(カネカ株式会社製商品名、メチルジメトキシシリル基を有するポリエーテルポリオール)を準備した。
【0054】
(化合物A−2の合成)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(222.4g、1.0mol)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2g、2.0mol)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にトリメトキシシリル基及び第2級アミノ基を有するシラン化合物SE−1を得た。別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子ウレタン株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000、950質量部)、イソホロンジイソシアネート(46.3質量部)及びジオクチルスズジバーサテート(PMLS4012に対して50ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂を得た。反応の進行度はイソシアネート含有率で追跡し、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらにここに上記シラン化合物SE−1(82.3質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン結合、活性水素が置換された尿素結合、トリメトキシシリル基を有する化合物A−2を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0055】
(化合物A−3)
化合物A−3として、SAT200(カネカ株式会社製商品名、メチルジメトキシシリル基を有するポリエーテルポリオール)を準備した。
【0056】
[分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)]
化合物B−1として、エピコート828(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を準備した。
【0057】
[五員環カーボネート基を有する化合物(C)の調製]
(化合物C−1の合成)
エクセノール420(ポリプロピレンオキサイド、分子量400、旭硝子株式会社製商品名、100質量部)及びイソホロンジイソシアネート(110.5質量部)を、窒素雰囲気下にて撹拌しながら、エクセノール420に対して50ppmのジオクチルスズジバーサテートの存在下80℃で4時間反応させた。さらに、エクセノール420に対して50ppmのジオクチルスズジバーサテートを加え、80℃で4時間反応させることで、分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂を得た。反応の進行度はイソシアネート含有率で追跡し、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。その後、グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製、64.6質量部)を添加し、80℃で7時間反応させ、五員環カーボネート基を有する化合物C−1を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0058】
(化合物C−2の合成)
アクトコールP−28(ポリプロピレンオキサイド、分子量4,000、三井化学ポリウレタン株式会社製商品名、100質量部)及びイソホロンジイソシアネート(11.8質量部)を、窒素雰囲気下にて撹拌しながら、アクトコールP−28に対して50ppmのジオクチルスズジバーサテートの存在下85℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂を得た。反応の進行度はイソシアネート含有率で追跡し、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。その後、グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製、6.6質量部)を添加し、85℃で12時間反応させ、五員環カーボネート基を有する化合物C−2を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0059】
(化合物C−3の合成)
アクトコールP−21(ポリプロピレンオキサイド、分子量2,000、三井化学ポリウレタン株式会社製商品名、100質量部)及びイソホロンジイソシアネート(22.1質量部)を、窒素雰囲気下にて撹拌しながら、アクトコールP−21に対して50ppmのジオクチルスズジバーサテートの存在下85℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂を得た。反応の進行度はイソシアネート含有率で追跡し、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。その後、グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製、12.4質量部)を添加し、85℃で12時間反応させ、五員環カーボネート基を有する化合物C−3を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0060】
(化合物C−4の合成)
PMLS4006(ポリプロピレンオキサイド、分子量5,500、旭硝子株式会社製商品名、100質量部)及びイソホロンジイソシアネート(8.2質量部)を、窒素雰囲気下にて撹拌しながら、PMLS4006に対して50ppmのジオクチルスズジバーサテートの存在下85℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂を得た。反応の進行度はイソシアネート含有率で追跡し、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。その後、グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製、4.7質量部)を添加し、85℃で8時間反応させ、五員環カーボネート基を有する化合物C−4を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0061】
(化合物C−5の合成)
PMLS4012(ポリプロピレンオキサイド、分子量10,000、旭硝子株式会社製商品名、100質量部)及びイソホロンジイソシアネート(4.6質量部)を、窒素雰囲気下にて撹拌しながら、PMLS4012に対して50ppmのジオクチルスズジバーサテートの存在下85℃で3時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂を得た。反応の進行度はイソシアネート含有率で追跡し、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。その後、グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製、2.7質量部)を添加し、85℃で10時間反応させ、五員環カーボネート基を有する化合物C−5を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0062】
[分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物(D)]
化合物D−1として、分子内に第1級アミノ基を2個有するノルボルナンジアミンを準備した。
【0063】
[分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(E)]
化合物E−1として、分子内に第1級アミノ基、第2級アミノ基及びトリメトキシシリル基をそれぞれ1個ずつ有するN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを準備した。
【0064】
[硬化性樹脂組成物の調製]
(実施例1)
化合物A−1(100質量部)、化合物B−1(50質量部)、化合物C−1(30質量部)、化合物D−1(10質量部)、化合物E−1(6.0質量部)、ジブチルスズジメトキシド(DBTDM、硬化性シリコーン系樹脂の硬化触媒、1.0質量部)、及び、アンカミンK−54(エアープロダクツジャパン株式会社製商品名、エポキシ樹脂の3級アミン触媒、5.0質量部)を混ぜ合わせ、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0065】
(実施例2)
化合物A−1(100質量部)を化合物A−2(100質量部)に変えた以外は実施例1と同様に、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0066】
(比較例1)
化合物C−1を配合しない以外は実施例1と同様に、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0067】
(比較例2)
化合物C−1を配合しない以外は実施例2と同様に、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0068】
[接着強さ測定]
各硬化性樹脂組成物の接着強さを測定した。被着材として、アルミニウム板(厚さ2.0mm、幅25mm、長さ100mm)、ABS板(厚さ3mm、幅25mm、長さ100mm)、木材(アサダ材、厚さ5mm、幅25mm、長さ100mm)を準備した。アルミニウム板又はABS板に、各硬化性樹脂生成物(約0.1g)を25mm×25mmの面積に均一に塗布し、12.5mm×25mmの面積で木材をはり合わせた。各はり合わせ試験体を23℃相対湿度50%で6時間養生した後、さらに80℃で12時間養生した。その後、23℃相対湿度50%で1日間静置し、引張りせん断接着強さをJIS K 6850に準じて測定した。それぞれの引張せん断接着強さの測定結果を表1に示す。なお、引張りせん断接着強さの単位はN/mmである。破壊状態の評価は凝集破壊(密着性が高く被着材に接着剤の硬化物が残る状態)を「CF」、薄層凝集破壊(密着性は凝集破壊よりは低いが被着材に接着剤の硬化物が薄く残る状態)を「TF」、界面破壊(密着性が低く被着材に接着剤の硬化物が残らない状態)を「AF」で示す。さらに、それぞれの破壊状態の割合をCF、TF、AFの後ろに数値(パーセンテージ)で示す。なお、一般的に、破壊状態は凝集破壊(CF)、薄層凝集破壊(TF)、界面破壊(AF)の順で好ましく、接着強さが同じであっても凝集破壊(CF)、薄層凝集破壊(TF)、界面破壊(AF)の順で接着性能の信頼性が高い。
【0069】
【表1】

【0070】
表1の結果から明らかなように、本発明に係る硬化性樹脂組成物(実施例1及び2)は、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合していない比較例1及び2の硬化性樹脂組成物に対して、ABS樹脂に対する密着性が非常に高く、接着強さの値も向上していることが分かる。
【0071】
[硬化性樹脂組成物の調製]
(実施例3〜13、比較例3〜9)
化合物A−2又は化合物A−3、化合物B−1、化合物C−1〜C−5、化合物D−1、化合物E−1、ジブチルスズジメトキシド(DBTDM、硬化性シリコーン系樹脂の硬化触媒)、及び、アンカミンK−54(エアープロダクツジャパン株式会社製商品名、エポキシ樹脂の3級アミン触媒)を表2〜5に示す配合割合(質量比)で混ぜ合わせ、各硬化性樹脂組成物を調製した。
【0072】
[接着強さ測定]
各硬化性樹脂組成物の接着強さを測定した。被着材として、ABS板(厚さ3mm、幅25mm、長さ100mm)、木材(アサダ材、厚さ5mm、幅25mm、長さ100mm)を準備した。ABS板に各硬化性樹脂生成物(約0.1g)を25mm×25mmの面積に均一に塗布し、12.5mm×25mmの面積で木材をはり合わせた。各はり合わせ試験体を23℃相対湿度50%で1日間養生した後、引張りせん断接着強さをJIS K 6850に準じて測定した。それぞれの引張せん断接着強さの測定結果を表2〜5に示す。破壊状態の評価は凝集破壊(密着性が高く被着材に接着剤の硬化物が残る状態)を「CF」、薄層凝集破壊(密着性は凝集破壊よりは低いが被着材に接着剤の硬化物が薄く残る状態)を「TF」、界面破壊(密着性が低く被着材に接着剤の硬化物が残らない状態)を「AF」で示す。さらに、それぞれの破壊状態の割合をCF、TF、AFの後ろに数値(パーセンテージ)で示す。なお、「AF」の場合における数値の後ろの「(W)」は木材側の界面で破壊したことを表し、記載のない場合はABS側の界面で破壊したことを表す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2における、比較例3に対して実施例3、比較例4に対して実施例4、比較例5に対して実施例5の結果から、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を用いることで、強度の向上又は破壊状態の改善が観察される。これらから明らかなように、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合することで、密着性が向上することが分かる。
【0075】
【表3】

【0076】
表3における、比較例6に対して実施例6の結果から、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を用いることで、破壊状態は変わらないが強度の向上が観察される。このことから明らかなように、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合することで、密着性が向上することが分かる。さらに、実施例6に対して実施例7の結果から、分子内に第1級アミノ基を2個有する化合物D−1を併用することで、さらなる強度の向上と破壊状態の改善が見られる。これは、化合物D−1によって、エポキシ樹脂(B)と五員環カーボネート基を有する化合物(C)が連結されることから、密着性がさらに向上したうえ硬化物に強靱性が付与されたためであると推察される。
【0077】
【表4】

【0078】
表4における、比較例7に対して実施例8、比較例8に対して実施例9、比較例9に対して実施例10の結果から、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を用いることで、強度の向上又は破壊状態の改善が観察される。これらから明らかなように、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合することで、密着性が向上することが分かる。
【0079】
【表5】

【0080】
表5における、実施例11〜13の結果から、分子量の異なる五員環カーボネート基を有する化合物(C)を用いても、破壊状態は良好であることが観察される。これらから明らかなように、従来からある、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂とを配合した接着剤に対して、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合することは、ABS樹脂に対する密着性を向上させる方法として非常に有用であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、従来、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂とを配合した接着剤が用いられてきた全ての用途に使用できる。たとえば、接着剤、シーリング材、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、
分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)と、
分子内に下記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物(C)と、
下記の化合物(D)〜化合物(G)からなる群より選ばれる1種以上の化合物と
を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
化合物(D):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物
化合物(E):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物
化合物(F):分子内にC=N結合を有するケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物
化合物(G):分子内にC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有するケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物
【化1】

・・・(1)
(ただし、式中のXは化合物(C)の残基を表す)
【請求項2】
硬化性シリコーン系樹脂(A)が、分子内に活性水素が置換されていてもよいウレタン結合及び/又は活性水素が置換されていてもよい尿素結合を有することを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
五員環カーボネート基を有する化合物(C)が、分子内に下記一般式(2)で示される基を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】

・・・(2)
(ただし、式中のRは分子量1,000未満の2価の有機基であり、Yは化合物(C)の残基を表す)
【請求項4】
五員環カーボネート基を有する化合物(C)の主鎖がオキシアルキレン重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
五員環カーボネート基を有する化合物(C)の残基X又はYの分子量が500以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を主体とする室温硬化性接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−173919(P2009−173919A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332810(P2008−332810)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】