説明

硬化性樹脂組成物及び硬化物

【課題】高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を有する硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の硬化性樹脂組成物は、互いに反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン(A)及び分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含むことを特徴とする。本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに、前記ラダー型シルセスキオキサン(A)及び/又は直鎖ポリシロキサン(B)と反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なイソシアヌル酸化合物(D)を含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びこれを含む封止剤、これらの硬化物、LED,並びに光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐熱・高耐電圧の半導体装置において半導体素子を被覆する材料として、150℃以上の耐熱性を有する材料が求められている。特にLED素子などの光学材料を被覆する材料としては、耐熱性に加えて、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を備えることが求められている。従来のエポキシ系や変性シリコーン樹脂では、封止剤として用いた場合に、Tj=180℃通電試験を行うと素子上が黒く焦げてしまうという問題があった。また、ジメチルシリコーン系の樹脂では、150℃までの耐熱性は有しているが180℃まで加熱すると脆化が進み、その結果、Tj=180℃通電試験を行うとクラックが発生すること、また、水蒸気等のバリア性が低く信頼性が低いという問題があった。
【0003】
耐熱性が高く熱放散性の良い材料として、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する少なくとも1種の第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する少なくとも1種の第2の有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合により連結させた、分子量が2万から80万である第3の有機珪素ポリマーの1種以上を含有する合成高分子化合物が報告されている(特許文献1)。しかしながら、これらの合成高分子化合物の具体的な合成方法は記載されておらず、また、これらの材料の物性は、未だ満足できるものではない。
【0004】
透明性、耐UV性、耐熱着色性に優れた光素子封止用樹脂組成物として、脂肪族炭素−炭素不飽和結合を含有しH−Si結合を含有しない籠型構造体の液状のシルセスキオキサン、及び、H−Si結合を含有し脂肪族炭素−炭素不飽和結合を含有しない籠型構造体の液状のシルセスキオキサンからなる群から選択される少なくとも1種のシルセスキオキサンを樹脂成分として含有する光素子封止用樹脂組成物が開示されている(特許文献2)。しかし、籠型のシルセスキオキサンの硬化物は比較的硬く、柔軟性に乏しいため、クラックやワレが生じやすい。
【0005】
また、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する、トリアリルイソシアヌレートなどの有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する、鎖状、及び/又は、環状ポリオルガノシロキサンなどの化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分として含有する硬化性組成物が開示されている(特許文献3)。しかしながら、これらの材料の耐クラック性等の物性は、未だ満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−206721号公報
【特許文献2】特開2007−31619号公報
【特許文献3】特開2002−314140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を有する硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、硬化後に、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性が得られる光半導体用封止剤を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を有する硬化物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を有するLEDを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の諸物性に優れた光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ラダー型シルセスキオキサンと、特定分子量を有する直鎖ポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒とを含む組成物を硬化させると、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れる硬化物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、互いに反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン(A)及び分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含む硬化性樹脂組成物を提供する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに、上記ラダー型シルセスキオキサン(A)及び/又は直鎖ポリシロキサン(B)と反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なイソシアヌル酸化合物(D)を含んでいてもよい。
【0010】
本発明は、また、上記硬化性樹脂組成物を含む光半導体用封止剤を提供する。
【0011】
本発明は、また、上記硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、上記硬化物を含むLED、及びそれを含む光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硬化性樹脂組成物が、ラダー型シルセスキオキサンと、特定分子量を有する直鎖ポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒とを含むので、これを熱硬化させると、ヒドロシリル化反応が進行し、透明性に優れ、高温耐熱黄変性、及び柔軟性に優れる硬化物が得られる。この硬化物は、150℃以上という高温下に長期間晒されても黄変せず、また柔軟性に優れるため、クラックや割れが生じにくい。そのため、本発明の硬化性樹脂組成物は次世代の光源用封止剤として有用である。また、本発明によれば、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の諸物性に優れたLED、ならびに光半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で得られた硬化物1の光線透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、互いに反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン(A)及び分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含んでいる。互いに反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン(A)及び分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)としては、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサン(以下、ビニル型ラダーシルセスキオキサンと称する)と分子内にSi−H結合を有する直鎖ポリシロキサン(以下、Si−H型直鎖ポリシロキサンと称する)との組み合わせ、又は、分子内にSi−H結合を有するラダー型シルセスキオキサン(以下、Si−H型ラダーシルセスキオキサンと称する)と分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する直鎖ポリシロキサン(以下、ビニル型直鎖ポリシロキサンと称する)との組み合わせが挙げられる。
【0016】
[ラダー型シルセスキオキサン(A)]
一般に、ラダー型シルセスキオキサンは、架橋された三次元構造を有するポリシロキサンである。ポリシロキサンは、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有する化合物であり、その基本構成単位は、下記式(M)、(D)、(T)、(Q)(以下、それぞれM単位、D単位、T単位、Q単位という)に分類される。
【0017】
【化1】

【0018】
上記式中、Rはケイ素原子に結合している原子又は原子団を示す。M単位は、ケイ素原子が1個の酸素原子と結合した1価の基からなる単位であり、D単位は、ケイ素原子が2個の酸素原子と結合した2価の基からなる単位であり、T単位は、ケイ素原子が3個の酸素原子と結合した3価の基からなる単位であり、Q単位は、ケイ素原子が4個の酸素原子と結合した4価の基からなる単位である。
【0019】
シルセスキオキサンは、上記T単位を基本構成単位とするポリシロキサンであり、その実験式(基本構造式)はRSiO3/2で表される。シルセスキオキサンのSi−O−Si骨格の構造としては、ランダム構造やラダー構造、カゴ構造が知られている。本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるラダー型シルセスキオキサンは、ラダー構造のSi−O−Si骨格を有するシルセスキオキサンである。
【0020】
ラダー型シルセスキオキサンは、例えば、下記式(L)で表わすことができる。
【0021】
【化2】

【0022】
上記式(L)において、pは1以上の整数(例えば、1〜5000、好ましくは1〜2000、さらに好ましくは1〜1000)である。各Rは、同一又は異なって、水素原子、置換又は無置換の炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基(チオール基)、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、エポキシ基、ハロゲン原子、下記式(1)で表される基などが挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
上記式(1)中の各Rは、同一又は異なっていてもよく、前記式(L)におけるRと同じである。
【0025】
前記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、イソオクチル、デシル、ドデシル基などのC1-20アルキル基(好ましくは、C1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基)などが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、メタリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくは、C2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基)などが挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロピニル基などのC2-20アルキニル基(好ましくは、C2-10アルキニル基、さらに好ましくはC2-4アルキニル基)などが挙げられる。
【0026】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロドデシル基などのC3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基などのC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル、ビシクロヘプテニル基などのC4-15の架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0027】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)などが挙げられる。
【0028】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基として、例えば、シクロへキシルメチル、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基として、ベンジル、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール−C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基などが挙げられる。
【0029】
前記炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基の炭素数は0〜20、好ましくは0〜10である。該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、(メタ)アクリロイルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メルカプト基;メチルチオ、エチルチオ基等のアルキルチオ基;アリルチオ基等のアルケニルチオ基;フェニルチオ基等のアリールチオ基;ベンジルチオ基等のアラルキルチオ基;カルボキシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基;アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。
【0030】
前記Rにおけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ基等のC1-6アルコキシ基(好ましくは、C1-4アルコキシ基)などが挙げられる。アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基(好ましくは、C2-4アルケニルオキシ基)などが挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、トリルオキシ、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシ基などが挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基などが挙げられる。アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のC1-12アシルオキシ基などが挙げられる。
【0031】
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基(好ましくは、C1-4アルキルチオ基)などが挙げられる。アルケニルチオ基としては、アリルチオ基等のC2-6アルケニルチオ基(好ましくは、C2-4アルケニルチオ基)などが挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ、トリルチオ、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールチオ基などが挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ、フェネチルチオ基等のC7-18アラルキルチオ基などが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基などが挙げられる。アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル、トリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ−カルボニル基などが挙げられる。アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基などのC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基などが挙げられる。モノ又はジアルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基などが挙げられる。アシルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ベンゾイルアミノ基等のC1-11アシルアミノ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0032】
前記式(1)で表される基において、各Rとしては、それぞれ、水素原子、C1-10アルキル基(特に、C1-4アルキル基)、C2-10アルケニル基(特に、C2-4アルキル基)、C3-12シクロアルキル基、C3-12シクロアルケニル基、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、C7-18アラルキル基、C6-10アリール−C2-6アルケニル基、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子であるのが好ましい。
【0033】
ラダー型シルセスキオキサンとしては、式(L)において、Rのうち、置換又は無置換の炭化水素基が50モル%以上(より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上)占めるのが好ましい。特に、置換又は無置換の、炭素数1〜10のアルキル基(特に、メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基(特に、フェニル基)、炭素数7〜10のアラルキル基(特に、ベンジル基)が合計で50モル%以上(より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上)占めるのが好ましい。
【0034】
ラダー型シルセスキオキサンは、公知の方法により製造できる。例えば、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンは、下記式(2)
【化4】

(式中、Rは前記に同じ。3つのXは、同一又は異なって、加水分解性基又はヒドロキシル基を示す)
で表される加水分解性シラン化合物の1種又は2種以上を、又は前記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の1種又は2種以上と下記式(3)若しくは(3′)
【化5】

(式中、R、Xは前記に同じ。複数個のRは、同一又は異なっていてもよい)
で表されるシラン化合物の1種又は2種以上とを、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)に付すことにより得ることができる。
【0035】
なお、式(2)で表される加水分解性シラン化合物はラダー型シルセスキオキサンのT単位の形成に用いられ、式(3)若しくは(3′)で表されるシラン化合物は、末端封止剤として機能し、ラダー型シルセスキオキサンのM単位の形成に用いられする。
【0036】
Xにおける加水分解性基としては、加水分解及びシラノール縮合によりシロキサン結合を形成しうる基であればよく、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-10アルコキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のC1-10アシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、塩素原子、C1-4アルコキシ基が好ましい。
【0037】
加水分解・縮合反応は、例えば、シラノール縮合触媒の存在下、水又は水と有機溶媒との混合溶媒中で、上記シラン化合物をシラノール縮合させ、反応中又は反応後に、溶媒及び/又は副生物(アルコールなど)を留去することにより行うことができる。反応温度は、−78℃〜150℃、好ましくは−20℃〜100℃である。水の使用量は、シラン化合物の合計1モルに対して、1モル以上(例えば、1〜20モル、好ましくは1〜10モル)である。
【0038】
前記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール;これらの混合溶媒などが挙げられる。有機溶媒の使用量は、シラン化合物の合計1容量部に対して、例えば、0.5〜30容量部である。
【0039】
シラノール縮合触媒としては、酸触媒、塩基触媒を用いることができる。酸触媒として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸などが挙げられる。塩基触媒として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;バリウムメトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドなどの第4級アンモニウムヒドロキシド;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド等のテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドなどの第4級ホスホニウムヒドロキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等の第3級アミンなどのアミン;ピリジン等の含窒素芳香族複素環化合物などが挙げられる。また、シラノール縮合触媒として、テトラブチルアンモニウムフルオライド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムなどのフッ素化合物を用いることもできる。
【0040】
反応生成物は、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0041】
<ビニル型ラダーシルセスキオキサン>
ビニル型ラダーシルセスキオキサンとしては、前記ラダー型シルセスキオキサンのうち、末端又は側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を持つ化合物であれば特に限定されず、例えば、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンにおいて、末端のRの少なくとも1つ及び/又は側鎖のRの少なくとも1つが脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である化合物が挙げられる。
【0042】
脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基としては、例えば、ビニル、アリル、メタリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基);シクロヘキセニル基などのC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプテニル基などのC4-15架橋環式不飽和炭化水素基;スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基;シンナミル基などが挙げられる。なお、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基には、前記式(1)で表される基において、3つのRのうち少なくとも1つが上記のC2-20アルケニル基、C3-12のシクロアルケニル基、C4-15の架橋環式不飽和炭化水素基、C2-4アルケニル置換アリール基、シンナミル基等である基も含まれる。
【0043】
ビニル型ラダーシルセスキオキサンの分子量としては、例えば100〜80万、好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜2万、特に好ましくは500〜4000である。ビニル型ラダーシルセスキオキサンの分子量がこの範囲にあると、液体且つ低粘度であるため、Si−H型の分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサンとの相溶性が高く、取り扱いやすい。ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、上記範囲の種々の分子量を有する混合物であってもよい。ビニル型ラダーシルセスキオキサン中の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、例えば、0.0010〜0.0040mmol/g、好ましくは0.0012〜0.0030mmol/gである。また、ビニル型ラダーシルセスキオキサンに含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合の割合(重量基準)は、ビニル基換算で、例えば、3.0〜9.0%、好ましくは3.7〜5.7%である。
【0044】
ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、前記ラダー型シルセスキオキサンの製造法において、式(2)で表される加水分解性シラン化合物として、Rが脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である化合物を少なくとも用いるか、式(3)若しくは(3′)で表されるシラン化合物として、Rの少なくとも1つが脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である化合物を少なくとも用いることにより製造できる。
【0045】
また、ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンのうち、Rとして加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサン(A1)(以下、単に「ラダー型シルセスキオキサン(A1)」と称する場合がある)と、下記式(4)
【化6】

(式中、Rは前記に同じ。3つのRは同一でも異なっていてもよい。但し、Rのうち少なくとも1つは脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である。Xは加水分解性基又はヒドロキシル基を示す)
で表されるシラン化合物(S1)の1種又は2種以上とを反応させることにより製造できる。
【0046】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)のRにおける加水分解性基、式(4)で表されるシラン化合物(S1)のXにおける加水分解性基及びRにおける脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基は、前述の加水分解性基、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基と同様のものが挙げられる。ラダー型シルセスキオキサン(A1)のRにおける加水分解性基としては、メトキシ、エトキシ基等のC1-4アルコキシ基が特に好ましい。
【0047】
前記式(4)で表されるシラン化合物(S1)において、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を除く残りのRとしては、同一又は異なって、置換又は無置換の、炭素数1〜10のアルキル基(特に、メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基(特に、フェニル基)、又は炭素数7〜10のアラルキル基(特に、ベンジル基)であるのが好ましい。
【0048】
式(4)で表されるシラン化合物(S1)として、より具体的には、モノハロゲン化ビニルシラン、モノハロゲン化アリルシラン、モノハロゲン化3−ブテニルシラン、モノアルコキシビニルシラン、モノアルコキシアリルシラン、モノアルコキシ3−ブテニルシランなどが挙げられる。
【0049】
モノハロゲン化ビニルシランの代表例としては、クロロジメチルビニルシラン、クロロエチルメチルビニルシラン、クロロメチルフェニルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、クロロエチルフェニルビニルシラン、クロロジフェニルビニルシランなどが挙げられる。
【0050】
モノハロゲン化アリルシランの代表例としては、アリルクロロジメチルシラン、アリルクロロエチルメチルシラン、アリルクロロメチルフェニルシラン、アリルクロロジエチルシラン、アリルクロロエチルフェニルシラン、アリルクロロジフェニルシランなどが挙げられる。
【0051】
モノハロゲン化3−ブテニルシランの代表例としては、3−ブテニルクロロジメチルシラン、3−ブテニルクロロエチルメチルシラン、3−ブテニルクロロメチルフェニルシラン、3−ブテニルクロロジエチルシラン、3−ブテニルクロロエチルフェニルシラン、3−ブテニルクロロジフェニルシランなどが挙げられる。
【0052】
モノアルコキシビニルシランの代表例としては、メトキシジメチルビニルシラン、エチルメトキシメチルビニルシラン、メトキシメチルフェニルビニルシラン、ジエチルメトキシビニルシラン、エチルメトキシフェニルビニルシラン、メトキシジフェニルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、エトキシエチルメチルビニルシラン、エトキシメチルフェニルビニルシラン、エトキシジエチルビニルシラン、エトキシエチルフェニルビニルシランなどが挙げられる。
【0053】
モノアルコキシアリルシランの代表例としては、アリルメトキシジメチルシラン、アリルエチルメトキシメチルシラン、アリルメトキシメチルフェニルシラン、アリルジエチルメトキシシラン、アリルエチルメトキシフェニルシラン、アリルメトキシジフェニルシラン、アリルエトキシジメチルシラン、アリルエトキシエチルメチルシラン、アリルエトキシメチルフェニルシラン、アリルエトキシジエチルシラン、アリルエトキシエチルフェニルシランなどが挙げられる。
【0054】
モノアルコキシ3−ブテニルシランの代表例としては、3−ブテニルメトキシジメチルシラン、3−ブテニルエチルメトキシメチルシラン、3−ブテニルメトキシメチルフェニルシラン、3−ブテニルジエチルメトキシシラン、3−ブテニルエチルメトキシフェニルシラン、3−ブテニルメトキシジフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジメチルシラン、3−ブテニルエトキシエチルメチルシラン、3−ブテニルエトキシメチルフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジエチルシラン、3−ブテニルエトキシエチルフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジフェニルシランなどが挙げられる。
【0055】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(4)で表されるシラン化合物(S1)との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0056】
式(4)で表されるシラン化合物(S1)の使用量は、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、1〜20モル、好ましくは2〜10モル、さらに好ましくは5〜9モル程度である。
【0057】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(4)で表されるシラン化合物(S1)との反応は、シラノール縮合触媒の存在下で行われる。シラノール縮合触媒としては、前記例示のものを使用できる。シラノール縮合触媒として、塩基触媒を用いるのが好ましい。
【0058】
シラノール縮合触媒の使用量は、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、0.1〜10モル、好ましくは0.1〜1.0モルである。シラノール縮合触媒の使用量は触媒量であってもよい。
【0059】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択できるが、通常、0〜200℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは30〜60℃である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0060】
上記方法では、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)と式(4)で表されるシラン化合物(S1)中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)が、加水分解・縮合(又は縮合)して、対応する分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するビニル型ラダーシルセスキオキサンが生成する。
【0061】
反応終了後、反応生成物は、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0062】
<Si−H型ラダーシルセスキオキサン>
Si−H型ラダーシルセスキオキサンとしては、前記ラダー型シルセスキオキサンのうち、末端又は側鎖にSi−H結合を有するものであれば特に限定されず、例えば、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンにおいて、末端のRの少なくとも1つ及び/又は側鎖のRの少なくとも1つが水素原子又はSi−H結合を有する基である化合物が挙げられる。Si−H結合を有する基としては、例えば、前記式(1)で表される基において、3つのRのうち少なくとも1つが水素原子である基などが挙げられる。
【0063】
Si−H型ラダーシルセスキオキサンの分子量としては、例えば100〜80万、好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜2万、特に好ましくは500〜4000である。Si−H型ラダーシルセスキオキサンの分子量がこの範囲にあると、ビニル型の分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサンとの相溶性に優れるため好ましい。Si−H型ラダーシルセスキオキサンは、上記範囲の種々の分子量を有する混合物であってもよい。Si−H型ラダーシルセスキオキサン中のSi−H結合の含有量は、例えば、0.0001〜0.005mmol/g、好ましくは0.0005〜0.002mmol/gである。また、Si−H型ラダーシルセスキオキサンに含まれるSi−H基の割合(重量基準)は、例えば、0.01〜0.30%、好ましくは0.1〜0.2%である。
【0064】
Si−H型ラダーシルセスキオキサンは、前記ラダー型シルセスキオキサンの製造法において、式(2)で表される加水分解性シラン化合物として、Rが水素原子である化合物を少なくとも用いるか、式(3)若しくは(3′)で表されるシラン化合物として、Rの少なくとも1つが水素原子である化合物を少なくとも用いることにより製造できる。
【0065】
また、Si−H型ラダーシルセスキオキサンは、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンのうち、Rとして加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサン(A1)[ラダー型シルセスキオキサン(A1)]と、下記式(5)
【化7】

(式中、Rは前記に同じ。3つのRは同一でも異なっていてもよい。但し、Rのうち少なくとも1つは水素原子である。Xは加水分解性基又はヒドロキシル基を示す)
で表される1種又は2種以上のシラン化合物(S2)とを反応させることにより製造できる。
【0066】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)のRにおける加水分解性基、式(5)で表されるシラン化合物(S2)のXにおける加水分解性基は、前述の加水分解性基と同様のものが挙げられる。ラダー型シルセスキオキサン(A1)のRにおける加水分解性基としては、メトキシ、エトキシ基等のC1-4アルコキシ基が特に好ましい。
【0067】
前記式(5)で表されるシラン化合物(S2)において、水素原子を除く残りのRとしては、同一又は異なって、置換又は無置換の、炭素数1〜10のアルキル基(特に、メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基(特に、フェニル基)、又は炭素数7〜10のアラルキル基(特に、ベンジル基)であるのが好ましい。
【0068】
式(5)で表されるシラン化合物(S2)として、より具体的には、モノハロゲン化シラン、モノアルコキシシランなどが挙げられる。
【0069】
モノハロゲン化シランの代表例としては、クロロジメチルシラン、クロロエチルメチルシラン、クロロメチルフェニルシラン、クロロジエチルシラン、クロロエチルフェニルシラン、クロロジフェニルシランなどが挙げられる。
【0070】
モノアルコキシシランの代表例としては、メトキシジメチルシラン、エチルメトキシメチルシラン、メトキシメチルフェニルシラン、ジエチルメトキシシラン、エチルメトキシフェニルシラン、メトキシジフェニルシラン、エトキシジメチルシラン、エトキシエチルメチルシラン、エトキシメチルフェニルシラン、エトキシジエチルシラン、エトキシエチルフェニルシランなどが挙げられる。
【0071】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(5)で表されるシラン化合物(S2)との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、前記ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(4)で表されるシラン化合物(S1)との反応に用いられる溶媒と同様のものを使用できる。
【0072】
式(5)で表されるシラン化合物(S2)の使用量は、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、1〜30モル、好ましくは1〜10モル、さらに好ましくは5〜9モル程度である。
【0073】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(5)で表されるシラン化合物(S2)との反応は、シラノール縮合触媒の存在下で行われる。シラノール縮合触媒としては、通常、前記シラノール縮合触媒のうち、酸触媒を使用する。塩基性触媒は式(5)で表されるシラン化合物(S2)と反応するので好ましくない。
【0074】
シラノール縮合触媒の使用量は、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、0.001〜1モル、好ましくは0.002〜0.01モルである。シラノール縮合触媒の使用量は触媒量であってもよい。
【0075】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択できるが、通常、−78℃〜120℃、好ましくは−30℃〜60℃、さらに好ましくは−10℃〜30℃である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0076】
上記方法では、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)と式(5)で表されるシラン化合物(S2)中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)が、加水分解・縮合(又は縮合)して、対応する分子内にSi−H結合を有するSi−H型ラダーシルセスキオキサンが生成する。
【0077】
反応終了後、反応生成物は、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0078】
ラダー型シルセスキオキサンとしては、末端に脂肪族炭素−炭素二重結合又はSi−H結合を有するものが組成物調製において相溶性に優れる傾向があり好ましい。また、側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合又はSi−H結合を有するものは、安価な傾向があるため好ましい。
【0079】
[分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)]
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)は、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有する分子量100〜9000の直鎖状シロキサン化合物であって、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する直鎖ポリシロキサン(ビニル型直鎖ポリシロキサン)と、分子内にSi−H結合を有する直鎖ポリシロキサン(Si−H型直鎖ポリシロキサン)が挙げられる。
【0080】
分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)は、例えば、下記式(6)で表わすことができる。
【0081】
【化8】

【0082】
上記式(6)において、Rは、前記と同じである。但し、Rのうち少なくとも1つは、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基又は水素原子である。qは1以上の整数(例えば、1〜15、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3)である。qが15を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(A)との相溶性が悪くなる場合があり、好ましくない。
【0083】
前記式(6)で表される基において、各Rとしては、それぞれ、水素原子、C1-10アルキル基(特に、C1-4アルキル基)、C2-10アルケニル基(特に、C2-4アルキル基)、C3-12シクロアルキル基、C3-12シクロアルケニル基、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、C7-18アラルキル基、C6-10アリール−C2-6アルケニル基、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子であるのが好ましい。
【0084】
直鎖ポリシロキサン(B)の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジビニルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ビニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−1,7−ジビニルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7−ノナメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7−ノナメチル−3−ビニルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−ノナメチル−3,5−ジビニルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチル−1,9−ジビニルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチル−3−ビニルペンタシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチル−1,9−ジビニルペンタシロキサンなどの、(Si−O)単位を1〜10個(好ましくは1〜5個)有するSi−H型又はビニル型の、直鎖状ポリジメチルシロキサン、ジメチルシリコーンなどの直鎖状ポリジアルキルシロキサン(好ましくは直鎖状ポリジC1-10アルキルシロキサン)などが挙げられる。
【0085】
上記直鎖ポリシロキサン(B)としては、さらに、上記例示の化合物のメチル基などのアルキル基の全部又は一部がフェニル基などのアリール基(好ましくはC6-20アリール基)で置換された化合物、例えば、Si−H型又はビニル型の直鎖状のポリジフェニルシロキサンなどのポリジアリールシロキサン(好ましくはポリジC6-20アリールシロキサン);Si−H型又はビニル型の直鎖状のポリフェニルメチルシロキサンなどのポリアルキルアリールシロキサン(好ましくはポリC1-10アルキルC6-20アリールシロキサン);前記ポリオルガノシロキサン単位で構成された共重合体[ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体など]などが例示できる。
【0086】
上記直鎖ポリシロキサン(B)の分子量は100〜9000であり、好ましくは100〜7000、さらに好ましくは100〜5000、特に好ましくは100〜4000である。分子量がこの範囲にあると、前記ラダー型シルセスキオキサン(A)との相溶性に優れ、耐クラック性に優れた硬化物が得られる。上記直鎖ポリシロキサン(B)は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0087】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記ラダー型シルセスキオキサン(A)及び分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)以外のポリシロキサンを含有していてもよい。
【0088】
[ヒドロシリル化触媒(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるヒドロシリル化触媒(C)としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が例示される。具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体などの白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体などの白金ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、ならびに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、白金ビニルメチルシロキサン錯体が、反応速度が良好であることから好ましい。
【0089】
[イソシアヌル酸化合物(D)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記ラダー型シルセスキオキサン(A)及び/又は直鎖ポリシロキサン(B)と反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なイソシアヌル酸化合物(D)を含んでいても良い。このようなイソシアヌル酸化合物(D)としては、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するイソシアヌル酸化合物が挙げられ、具体的には、ジアリルイソシアヌル酸;トリアリルイソシアヌル酸;及び、ジアリルメチルイソシアヌル酸、ジアリルエチルイソシアヌル酸、ジアリルメチルイソシアヌル酸などのジアリルC1-10アルキルイソシアヌル酸等のアリル基含有イソシアヌル酸が挙げられる。イソシアヌル酸化合物(D)は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジアリルイソシアヌル酸及びジアリルC1-10アルキルイソシアヌル酸が好ましい。
【0090】
本発明の硬化性樹脂組成物において、ラダー型シルセスキオキサン(A)の含有量は、例えば45〜98重量%、好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは65〜85重量%である。このような範囲とすることにより、特に、硬化した場合に耐クラック性に優れた硬化物を得ることができる。
【0091】
ラダー型シルセスキオキサン(A)と分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)との比率としては、ビニル型ラダーシルセスキオキサン中の脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対して、Si−H型直鎖ポリシロキサン中のSi−H結合が0.2〜2モル、特に0.3〜1.5モル、とりわけ0.8〜1.2モル、又は、Si−H型ラダーシルセスキオキサン中のSi−H結合1モルに対して、ビニル型直鎖ポリシロキサン中の脂肪族炭素−炭素二重結合が0.2〜2モル、特に0.3〜1.5モル、とりわけ0.8〜1.2モルとなるような比率が好ましい。また、重量比としては、ラダー型シルセスキオキサン(A)100重量部に対して、直鎖ポリシロキサン(B)は、例えば、3〜200重量部、好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部である。
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物において、イソシアヌル酸化合物(D)の含有量としては、ラダー型シルセスキオキサン(A)100重量部に対し、例えば0〜10重量部、好ましくは0〜8重量部、さらに好ましくは0.1〜6重量部である。イソシアヌル酸化合物(D)の含有量がこのような範囲にあると、特に、硬化性樹脂組成物の相溶性に優れ、硬化した場合に耐クラック性に優れた硬化物を得ることができる。
【0093】
本発明の硬化性樹脂組成物において、ラダー型シルセスキオキサン(A)と直鎖ポリシロキサン(B)の総量は、硬化性樹脂組成物中に含まれるポリシロキサンの総量に対して、例えば、20重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上であり、特に90重量%以上であるのが好ましい。ラダー型シルセスキオキサン(A)と直鎖ポリシロキサン(B)の総量がこの範囲にあると、特に、柔軟性に優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物において、ラダー型シルセスキオキサン(A)と直鎖ポリシロキサン(B)を含むポリシロキサンの総量の占める割合は、例えば、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。ポリシロキサンの総量の占める割合がこの範囲にあると、特に耐熱性の高い硬化物を得ることができる。
【0094】
本発明の硬化性樹脂組成物において、前記ヒドロシリル化触媒(C)の含有量は、触媒中の白金、パラジウム、又はロジウムが重量単位で0.01〜1,000重量ppmの範囲内となる量であることが好ましく、0.1〜500重量ppmの範囲内であることがさらに好ましい。ヒドロシリル化触媒(C)の含有量がこのような範囲にあると、架橋速度が著しく遅くなることがなく、架橋物に着色等の問題を生じる恐れが少なく好ましい。
【0095】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、ヒドロシリル化反応の速度を調整するために、ヒドロシリル化反応抑制剤を含有していてもよい。このヒドロシリル化反応抑制剤としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールなどが例示される。このヒドロシリル化反応抑制剤の含有量としては、上記組成物の架橋条件により異なるが、実用上、硬化性樹脂組成物中の含有量として、0.00001〜5重量%の範囲が好ましい。
【0096】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、その他任意の成分として、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、溶剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、架橋剤、補強材(他の充填剤など)、核剤、カップリング剤、シランカップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤などの慣用の添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0097】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記の各成分を、例えば室温で、撹拌・混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物は、多液系の組成物も含み、1液系でもよく、2液系または多液系として別個に保存しておき使用前に混合してもよい。
【0098】
[封止剤]
本発明の封止剤は、上記硬化性樹脂組成物を含んでいる。本発明の封止剤は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れ、光半導体素子等の封止剤として好適に使用できる。
【0099】
[硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記ヒドロシリル化触媒(C)を使用したヒドロシリル化反応により硬化できる。ヒドロシリル化反応の条件は特に限定されず、上記触媒を使用して従来公知の条件で行なえばよいが、脱泡を効率よく行い、さらに表面の凹凸を低減するために40〜100℃[好ましくは、60〜100℃]でプリベークを1〜5時間行い、100〜180℃[好ましくは、120〜150℃]で3時間〜10時間程度硬化を行なうのが好ましい。得られた硬化物は、Tj=180℃通電試験を行っても、透明性が変わらずさらにクラックも入らず、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れている。また、水蒸気バリア性も、従来のジメチルシリコーン樹脂と比較して約1/3と優れている。
【0100】
[LED,ならびに光半導体装置]
本発明のLEDは、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れた上記硬化物によって封止されているため、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れている。また、本発明の光半導体装置は、前記の、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れたLEDを含むため、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れている。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、1H−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。
【0102】
合成例1[ラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサンの合成]
300ml四つ口フラスコに、ラダー型末端エトキシ基フェニルメチルシルセスキオキサン(重量平均分子量はMw2200、1分子当たりのエトキシ基の含有重量は1.5wt%、フェニル/メチル(モル比)=1/1)10gと、10重量%水酸化テトラメチルアンモニウム3.0g、メチルイソブチルケトン200g、ジメチルエトキシビニルシラン5.5gを仕込んだ。45℃で1時間加熱し、反応終了とした。酢酸エチル100gを加えた後に、500gの水で、5回水洗浄を行った。洗浄後の上層をエバポレータで濃縮した後に真空ポンプで30分減圧に引いた。得量7.8gで、液体のラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン(ビニル型ラダーシルセスキオキサンに相当する化合物)が得られた。重量平均分子量はMw1700、1分子当たりのビニル基の含有量(平均)は4.6wt%であった。
[ラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル]
1H−NMR(CDCl3)δ: 0.1( br), 5.4-6.2( br), 6.8-7.8( br)
【0103】
なお、原料として用いたラダー型末端エトキシ基フェニルメチルシルセスキオキサンは、トリエトキシメチルシランとトリエトキシフェニルシラン(モル比1:1)を、常法により加水分解・縮合することで調製した。
【0104】
実施例1[イソシアヌル酸を含有するラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物1及びその硬化物1の製造]
合成例1で得られたラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン6.00gとジアリルメチルイソシアヌル酸0.30g(四国化成製)と1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン1.41g(Gelest製)とを6mlのスクリュー管に秤量し、2時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(和光純薬製;白金1.6wt%)を3μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物1を得た。
得られた硬化性樹脂組成物1をガラスプレートに塗布し、オーブン中、60℃で1時間、150℃で5時間加熱すると無色透明な硬化物1が得られた。硬化物1の物性を表1に、光線透過率を図1に示した。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例2[イソシアヌル酸を含有するラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物2及びその硬化物2の製造]
合成例1で得られたラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン0.60gとジアリルメチルイソシアヌル酸0.030g(四国化成製)と1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン0.14g(fluorochem製)とを6mlのスクリュー管に秤量し、2時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(和光純薬製;白金1.6wt%)を0.6μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物2を得た。
得られた硬化性樹脂組成物2をガラスプレートに塗布し、オーブン中、60℃で1時間、150℃で5時間加熱すると無色透明な硬化物2が得られた。
【0107】
実施例3[ラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物3及びその硬化物3の製造]
合成例1で得られたラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン(6.00g)と1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(1.53g、fluorochem)とを6mlのスクリュー管に秤量し、2時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(和光純薬製;白金1.6wt%)を6μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物3を得た。
得られた硬化性樹脂組成物3をガラスプレートに塗布し、オーブン中、60℃で1時間、150℃で5時間加熱すると無色透明な硬化物3が得られた。
【0108】
実施例4[ラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物4及びその硬化物4の製造]
合成例1で得られたラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン(0.60g)と1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.10g(東京化成製)とを6mlのスクリュー管に秤量し、2時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(和光純薬製;白金1.6wt%)を0.6μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物4を得た。
得られた硬化性樹脂組成物4をガラスプレートに塗布し、オーブン中、60℃で1時間、120℃で3時間加熱すると無色透明な硬化物4が得られた。
【0109】
実施例5[ラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物5及びその硬化物5の製造]
合成例1で得られたラダー型フェニルメチルシルセスキオキサンビニル誘導体A(0.60g)とSi−H末端ポリシロキサン0.28g(Gelest製、分子量400〜500)とを6mlのスクリュー管に秤量し、2時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(和光純薬製;白金1.6wt%)を0.6μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物5を得た。
得られた硬化性樹脂組成物5をガラスプレートに塗布し、オーブン中、60℃で1時間、120℃で3時間加熱すると無色透明な硬化物5が得られた。
【0110】
実施例6[ラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物6及びその硬化物6の製造]
ラダー型末端トリメチルシリル基フェニルメチルビニルシルセスキオキサン(0.60g)と1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.14g(東京化成製)とを6mlのスクリュー管に秤量し、2時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(和光純薬製;白金1.6wt%)を0.6μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物6を得た。
得られた硬化性樹脂組成物6をガラスプレートに塗布し、オーブン中、60℃で1時間、120℃で3時間加熱すると無色透明な硬化物6が得られた。
【0111】
なお、実施例6の原料として用いたラダー型末端トリメチルシリル基フェニルメチルビニルシルセスキオキサンは、トリエトキシメチルシランとトリエトキシフェニルシランとトリエトキシビニルシラン(モル比35:35:30)を常法により加水分解・縮合し、クロロトリメチルシランで末端保護することで調製した(ビニル基含有量平均8.0wt%、分子量Mw4200)。
【0112】
[Tj=180℃LED通電試験]
実施例7
パッケージには3×2Al2O3パッケージ(京セラ製)、LED素子にはOBL−CH2424(ジェネライツ製)、ダイボンド材にはKJR−3000M2(信越シリコーン製)、金線にはSR−30(田中貴金属製)を使用してLEDパッケージを組み立てた。
実施例1〜6で得られた硬化性樹脂組成物1〜6をそのパッケージの中で硬化(60℃で1時間、150℃で5時間)させ、ユニバーサル基板のリード線上に半田で固定し、通電試験用試料(樹脂1〜6)を作製した。
【0113】
比較例
硬化性樹脂組成物をエポキシ樹脂(CELVENUS W0910、ダイセル化学工業株式会社製)に変えた以外は実施例7と同様にして、通電試験用試料(エポキシ樹脂)を作製した。
【0114】
評価条件はTj=180℃を想定した環境温度(90℃)、電流条件(150mA)とし、定電流電源を回路につけて、上記実施例7で得られた樹脂1〜6及び比較例で得られたエポキシ樹脂に連続通電した。1週間後(168時間後)の樹脂の変色、光出力の変化、Vf(素子の劣化レベル)、硬化物(樹脂)のクラック、剥離の有無を目視で確認した。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
樹脂1〜6は1週間の通電を行ってもクラック、剥離が発生しなかった。エポキシ樹脂は52時間で不灯となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン(A)及び分子量100〜9000の直鎖ポリシロキサン(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、前記ラダー型シルセスキオキサン(A)及び/又は直鎖ポリシロキサン(B)と反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なイソシアヌル酸化合物(D)を含む、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を含む光半導体用封止剤。
【請求項4】
請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項5】
請求項4記載の硬化物を含むLED。
【請求項6】
請求項5記載のLEDを含む光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111875(P2012−111875A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262919(P2010−262919)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】