説明

硬化性組成物

【課題】常温や高温高湿度の環境下での基材密着性が高く、透明性、耐光性、耐水性に優れた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)と、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と酸素を含む複素環構造とを有する化合物(B)とを含有することを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ等の画像表示装置、CDやDVD等の光記録媒体、光学部材、太陽電池部材、接着剤、異方性導電膜(ACF)等に用いることができる硬化性組成物に関するものである
【背景技術】
【0002】
画像表示装置、光記録媒体、光学部材、太陽電池部材等に用いられる硬化性組成物は、透明性や基材密着性に優れることが要求され、そのような硬化性組成物として、従来、ウレタンアクリレートやブチラール樹脂等が知られている。また、特許文献1には、光ディスク用に好適な樹脂組成物として、エポキシ(メタ)アクリレートとトリメチロールオクタンの(メタ)アクリル酸エステルを含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、接着剤、塗料、合わせガラスの中間層等に用いることができる化合物として、アセタール結合を介して(メタ)アクリロイル基を有するポリビニルアセタール化合物が開示されている。
【特許文献1】特開平10−7751号公報
【特許文献2】特開2004−269687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ウレタンアクリレートや特許文献1に開示された樹脂組成物は、製造直後は透明性に優れるものの、耐光性に劣り、太陽光線や紫外線等の光源にさらされると、透明性が低下してしまう。ブチラール樹脂は、水分の少ない環境下では基材密着性に優れるものの、耐水性に劣り、水分の多い環境下では基材密着性が低下してしまう。特許文献2に開示された化合物は、常温で水分の少ない環境での基材密着性や耐溶剤性に優れるものの、高温高湿下での基材密着性に関しては改善の余地を残していた。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、常温および高温高湿度の環境下での基材密着性が高く、透明性、耐光性、耐水性に優れた硬化物を得ることのできる硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することができた本発明の硬化性組成物とは、エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)と、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と酸素を含む複素環構造とを有する化合物(B)とを含有するところに特徴を有する。化合物(A)を含有することにより、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物は、透明性と耐光性に優れ、高い基材密着性を有するようになる。また、化合物(A)がエチレン性二重結合を有することにより、本発明の硬化性組成物は、加熱や活性エネルギー線の照射等により重合反応が容易に起こるようになり、硬化しやすくなる。さらに、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と酸素を含む複素環構造とを有する化合物(B)を含有することにより、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物は、高温高湿度の環境下でも基材密着性が高く保たれるようになる。
【0006】
前記化合物(B)は、酸素を含む複素環構造が、1,3−ジオキソラン環、2−オキソ−1,3−ジオキソラン環、およびテトラヒドロフラン環よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらに、前記化合物(B)は、下記式(1)で表される化合物、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、およびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0007】
【化1】

(R1とR2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R1とR2は結合して環を形成してもよい。R3は、水素原子またはメチル基を表す。)
【0008】
前記化合物(A)は、下記式(2)で表される繰り返し単位を必須として有することが好ましく、式(2)における繰り返し単位のk/m/nの構成比率は、k,m,nの総和を100とした場合に、20〜86.5/5〜30/1〜50の範囲であることがより好ましい。k/m/nの構成比率を前記範囲とすることで、得られる硬化物の耐水性、透明性、常温および高温高湿度下での基材密着性が向上する。
【0009】
【化2】

(Xは、エチレン性二重結合を有する置換基を表す。R4は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルケニル基を表す。k,m,nは1以上の整数を表す。)
【0010】
前記式(2)において、エチレン性二重結合を有する置換基を表すXは、下記式(3)で表されるα,β−不飽和カルボキシラート基を有する置換基であることが好ましい。
【0011】
【化3】

(R5とR6とR7は、それぞれ独立して水素原子または有機基を表す。)
【0012】
本発明の硬化性組成物は、さらに重合開始剤を含有してもよい。
また、本発明は、前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物、および前記硬化性組成物を含有する接着剤をも開示する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物は、常温や高温高湿度の環境下での基材密着性が高く、透明性、耐光性、耐水性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の硬化性組成物は、エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)と、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と酸素を含む複素環構造とを有する化合物(B)とを含有する。
【0015】
まず、本発明の硬化性組成物に含まれるエチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)について説明する。本発明の硬化性組成物に含まれるポリビニルアセタール化合物(A)は、下記式(4)で表される構造とエチレン性二重結合とを有する化合物であれば特に限定されない。下記式(4)で表される構造を有することにより、透明性と耐光性に優れ、高い基材密着性を有する硬化物が得られるようになる。また、エチレン性二重結合を有することにより、本発明の硬化性組成物は、加熱や活性エネルギー線の照射等により重合反応が容易に起こるようになり、硬化しやすくなる。
【0016】
【化4】

(R4は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルケニル基を表す。kとmは1以上の整数を表す。)
【0017】
ポリビニルアセタール化合物(A)に含まれるエチレン性二重結合は、上記式(4)のR4に含まれていてもよく、エチレン性二重結合を有する置換基がポリビニルアセタール化合物の主鎖に結合することにより、化合物(A)に含まれるようにしてもよい。エチレン性二重結合を有する置換基がポリビニルアセタール化合物の主鎖に結合する場合、エチレン性二重結合を有する置換基は、ポリビニルアセタール化合物の主鎖に直接結合してもよく、他の原子団を介して間接的に結合してもよい。前記化合物(A)としては、合成の容易性から、エチレン性二重結合を有する置換基がポリビニルアセタール化合物の主鎖に結合していることが好ましい。なお、主鎖とは、上記式(4)の繰り返し単位どうしが結合して形成される炭素鎖、または上記式(4)の繰り返し単位が他の繰り返し単位と結合して形成される炭素鎖を意味する。
【0018】
従って、エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物としては、下記式(2)で表される繰り返し単位を必須として有するものであることが好ましい。
【0019】
【化5】

(Xは、エチレン性二重結合を有する置換基を表す。R4は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルケニル基を表す。k,m,nは1以上の整数を表す。)
【0020】
なお、上記式(2)で表される繰り返し単位中の3つの構成単位は、式(2)で示した順で並んでいなくてもよい。
【0021】
式(2)中、R4は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルケニル基を表すが、好ましくは、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、エテニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が示される。これらの中でも、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基がより好ましく、水素原子、ブチル基がさらに好ましい。
【0022】
従って、ポリビニルアセタール化合物(A)としては、前記R4が水素原子であるポリビニルホルマール構造および/または前記R4がブチル基であるポリビニルブチラール構造を有することが好ましい。ポリビニルホルマール構造とは、主鎖に、ポリビニルアルコールとホルムアルデヒドとのアセタール化反応により得られる環構造と、水酸基とを有する構造である。ポリビニルブチラール構造とは、主鎖に、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとのアセタール化反応により得られる環構造と、水酸基とを有する構造である。
【0023】
式(2)中、エチレン性二重結合を有する置換基を表すXとしては、重合反応し得る炭素−炭素二重結合を有する置換基であれば特に限定されず、具体的には、ビニル基、ハロゲン化ビニル基、酢酸ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アリル基、α,β−不飽和カルボキシラート基等が示される。
【0024】
エチレン性二重結合を有する置換基を表すXとしては、合成の容易性や原料の入手のしやすさから、下記式(3)で表されるα,β−不飽和カルボキシラート基を有する置換基が好ましい。
【0025】
【化6】

(R5とR6とR7は、それぞれ独立して水素原子または有機基を表す。)
【0026】
式(3)中、R5とR6とR7は、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表すが、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、カルボキシル基、−Ra−COORb(Raは炭素数1〜4のアルキレン基、Rbは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)等が示される。
【0027】
α,β−不飽和カルボキシラート基としては、具体的には、(メタ)アクリロイル基、マレエート(maleate)基、フマレート(fumarate)基、イタコネート(itaconate)基、シンナメート(cinnamate)基等が示され、これらの中でも、ラジカル重合性が高いことから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、マレエート基とは、例えばポリビニルアセタール化合物の有する水酸基とマレイン酸とを縮合反応させて得られる置換基であり、フマレート基、イタコネート基、シンナメート基とは、各々、例えばポリビニルアセタール化合物の有する水酸基とフマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸とを縮合反応させて得られる置換基である。
【0028】
式(2)中、エチレン性二重結合を有する置換基は、ポリビニルアセタール化合物の主鎖への導入を容易にするために、他の原子団を介してポリビニルアセタール化合物の主鎖に結合してもよい。他の原子団としては、特に制限されるものではないが、アセタール結合を有する原子団、ウレタン結合を有する原子団、およびアロハネート結合を有する原子団よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0029】
エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)における繰り返し単位の形態としては、ランダム、ブロック等が挙げられる。
【0030】
式(2)に示したエチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物において、各繰り返し単位の構成比率(モル比率)k,m,nは特に限定されない。しかし、k,m,nの総和を100とした場合、k/m/nの構成比率は20〜86.5/5〜30/1〜50の範囲であることが好ましく、40〜80/5〜30/5〜30の範囲であることがより好ましく、55〜80/13〜23/5〜30の範囲であることがさらに好ましい。kが20以上であれば、硬化物の耐水性が向上し、mが5以上であれば、硬化性組成物や硬化物の基材密着性や透明性が向上し、nが1以上であれば、硬化物の耐水性が向上し、高温高湿度下での基材密着性が向上しやすくなる。
【0031】
エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)の数平均分子量は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、3,000以上がさらに好ましく、また1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。数平均分子量が1,000以上であれば、硬化性組成物の硬化性が十分発現し、得られる硬化物の透明性、耐光性、基材密着性等の効果が確保されやすくなり、1,000,000以下であれば、硬化性組成物の粘度が高くなりすぎず、作業性が向上する。
【0032】
エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)の粘度としては、トルエンとメタノールが質量比で1:5の混合溶媒95質量部に化合物(A)5質量部を溶解させた溶液の25℃の粘度が、0.1mPa・s以上であることが好ましく、0.5mPa・s以上がより好ましく、1.0mPa・s以上がさらに好ましい。また、前記粘度は、10,000mPa・s以下が好ましく、1,000mPa・s以下がより好ましく、500mPa・s以下がさらに好ましい。粘度が0.1mPa・s以上であれば、硬化性組成物の硬化性が十分発現し、得られる硬化物の透明性、耐光性、基材密着性等の効果が確保されやすくなり、10,000mPa・s以下であれば、硬化性組成物の粘度が高くなりすぎず、作業性が向上する。
【0033】
次に、エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)の製造方法について説明する。以下には、化合物(A)の製造方法として、(I)エチレン性二重結合を有する置換基としてα,β−不飽和カルボキシラート基を有し、かつ水酸基と反応性を有する官能基を有する化合物と、ポリビニルアセタール化合物とを反応させる方法、(II)エチレン性二重結合を有するイソシアネート化合物と、ポリビニルアセタール化合物とを反応させる方法、の2つの方法を例に挙げて説明するが、化合物(A)の製造方法はこれに限定されるものではない。なお、前記製造方法(I)によれば、エチレン性二重結合を有する置換基がアセタール結合を有する原子団を介してポリビニルアセタール化合物に結合した化合物(A)が得られる。前記製造方法(II)によれば、エチレン性二重結合を有する置換基がウレタン結合またはアロハネート結合を有する原子団を介してポリビニルアセタール化合物に結合した化合物(A)が得られる。
【0034】
化合物(A)の製造方法(I)として、まず、エチレン性二重結合を有する置換基としてα,β−不飽和カルボキシラート基を有し、かつ水酸基と反応性を有する官能基を有する化合物と、ポリビニルアセタール化合物とを反応させる方法について説明する。
【0035】
α,β−不飽和カルボキシラート基を有し、かつ水酸基と反応性を有する官能基を有する化合物としては、α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物を用いることが好ましい。この場合、化合物(A)の製造方法としては、水酸基を有するポリビニルアセタール化合物と、α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物とを反応させる方法となる。より具体的には、ポリビニルアセタール化合物の水酸基にα,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物を反応させる方法、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル)のケン化の後のアルデヒドによるアセタール化と同時に、α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物を反応させる方法等が示される。α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物を用いることにより、α,β−不飽和カルボキシラート基が、アセタール結合を有する原子団を介してポリビニルアセタール化合物に容易に導入できるようになる。
【0036】
ポリビニルアセタール化合物は、例えば下記反応式(1)に示すように、ポリビニルアルコールとアルデヒドとをアセタール化反応させることにより得ることができる。なお、式中のRは、有機基を表す。また、原料となるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステルをケン化(加水分解)することにより得られる。
【0037】
【化7】

【0038】
ポリビニルアルコールとアルデヒドとをアセタール化反応させる際のポリビニルアルコールとアルデヒドとの使用比率は、前記式(2)に示したエチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物の構成比率kが所望する値となるように、適宜調整すればよい。すなわち、ポリビニルアルコールに含まれる水酸基のモル量と前記構成比率kの所望する値に応じて、アルデヒドの使用量を適宜調整すればよい。なお、アルデヒドの使用比率が高くなるほど、前記構成比率kの値は大きくなる。
【0039】
ポリビニルアセタール化合物としては、ポリビニルホルマール(ホルマール樹脂)、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)、ポリビニルグルタール(グルタール樹脂)等が好適である。好ましくは、ポリビニルホルマールおよび/またはポリビニルブチラールである。なお、ホルマール樹脂やブチラール樹脂は市販されており、例えば、ホルマール樹脂はチッソ株式会社等から、ブチラール樹脂は積水化学工業株式会社、株式会社クラレ等から入手できる。
【0040】
α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物としては、入手容易性や合成容易性、また化合物(A)のラジカル重合性を高めやすくできる点から、(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基とを有する化合物を用いることが好ましく、下記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステル類等が好適である。これらは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
【化8】

(R8は、水素原子またはメチル基を表す。R9は、2価の有機基を表す。R10は、水素原子または有機基を表す。)
【0042】
式(5)中、R9で表される有機基としては、炭素数2〜18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、炭素数2〜20のアルコキシアルキレン基、炭素数2〜8のハロゲン化(例えば、塩素化、臭素化、フッ素化)アルキレン基、末端水酸基を除くポリエチレングリコール骨格、末端水酸基を除くポリプロピレングリコール骨格、末端水酸基を除くポリブチレングリコール骨格、アリーレン基等が好適である。これらの中でも、重合度が2〜10,000のポリエチレングリコールから末端の水酸基を除く骨格、重合度が2〜10,000のポリプロピレングリコールから末端の水酸基を除く骨格、重合度が2〜10,000のポリブチレングリコールから末端の水酸基を除く骨格、炭素数2〜4のアルキレン基が好適に用いられる。より好ましくは、重合度が2〜100のポリエチレグリコールから末端の水酸基を除く骨格、重合度が2〜100のポリプロピレングリコールから末端の水酸基を除く骨格、重合度が2〜100のポリブチレングリコールから末端の水酸基を除く骨格、炭素数2のアルキレン基(−CH2−CH2−)、炭素数3のアルキレン基(−CH2−CH2−CH2−)、炭素数4のアルキレン基(−CH2−CH2−CH2−CH2−)である。さらに好ましくは、重合度が2〜15のポリエチレグリコールから末端の水酸基を除く骨格、重合度が2〜15のポリプロピレングリコールから末端の水酸基を除く骨格、重合度が2〜15のポリブチレングリコールから末端の水酸基を除く骨格、炭素数2のアルキレン基(−CH2−CH2−)、炭素数3のアルキレン基(−CH2−CH2−CH2−)、炭素数4のアルキレン基(−CH2−CH2−CH2−CH2−)である。
【0043】
前記R10で表される有機基としては特に限定されず、例えば、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0044】
前記式(5)で表される化合物としては、例えば、2−ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ビニロキシブチル(メタ)アクリレート、1−メチル−3−ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ビニロキシメチルプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−3−ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ビニロキシブチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ビニロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ビニロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、6−ビニロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−(または3−、または4−)ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニロキシメチルフェニルメチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノビニルエーテル(メタ)アクリレート等が示される。これらの中でも、2−ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0045】
ポリビニルアセタール化合物が有する水酸基に、α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物のビニルエーテル基をアセタール化反応させる一例を、下記反応式(2)に示す。なお、式中のRおよびR’は、有機基を表す。
【0046】
【化9】

【0047】
前記アセタール化反応において、α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物の使用量は、前記式(2)に示したエチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物の構成比率m,nが所望する値となるように、適宜調整すればよい。従って、α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物の使用量は、ポリビニルアセタール化合物が有する水酸基に対する、α,β−不飽和カルボキシラート基とビニルエーテル基とを有する化合物が有するビニルエーテル基のモル比(ビニルエーテル基/水酸基)が、0.3以上1.65以下(好ましくは、0.6以上1.3以下)の範囲となるように定めればよい。
【0048】
前記アセタール化反応の反応温度は、−40℃以上が好ましく、−30℃以上がより好ましく、−20℃以上がさらに好ましく、また150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましい。
【0049】
前記アセタール化反応においては、触媒を用いることが好ましく、このような触媒としては、酸が好適である。酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ピルビン酸、グリコール酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、マロン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;安息香酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸キノリニウム塩等の芳香族スルホン酸またはその塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸ジルコニウム等の硫酸塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩;硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸;リンバナジドモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸等のヘテロポリ酸;酸性ゼオライト;ベースレジンがフェノール系樹脂またはスチレン系樹脂であり、ゲル型、ポーラス型またはマクロポーラス型のいずれかの形態を示し、かつスルホン酸基および/またはアルキルスルホン酸基を有する酸性イオン交換樹脂等が好適である。これらは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シュウ酸、マレイン酸、硫酸水素カリウム、塩酸が好ましい。他の酸触媒の場合、アセタール化反応の触媒として作用するほか、ビニルエーテル基におけるカチオン重合開始剤として作用することがあり、この場合、温度コントロールを厳密に行う必要がある。しかし、塩酸の場合、カチオン重合開始剤としては作用せず、アセタール化反応にのみ選択的に効くため、反応時の至適温度範囲が広くなり、製造面で有利となる。
【0050】
前記アセタール化反応においては、必要に応じて、重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤としては、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系重合禁止剤;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤等が示される。これらの中でも、キノン系やN−オキシル類の重合禁止剤が好ましく、ベンゾキノン、フェノチアジンや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等が好適に用いられる。
【0051】
前記アセタール化反応においては溶媒を用いてもよく、溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類:クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が好適である。
【0052】
次に、化合物(A)の製造方法(II)として、エチレン性二重結合を有するイソシアネート化合物と、ポリビニルアセタール化合物とを反応させる方法について説明する。
【0053】
エチレン性二重結合を有するイソシアネート化合物としては、重合反応し得る炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート;(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルプロピルイソシアネート等の(メタ)アクリロイルアルキルイソシアネート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート;3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート等が示される。
【0054】
化合物(A)の製造方法(II)において用いられるポリビニルアセタール化合物は、上述した化合物(A)の製造方法(I)において用いられるポリビニルアセタール化合物を用いればよい。
【0055】
エチレン性二重結合を有するイソシアネート化合物は、イソシアネート基がポリビニルアセタール化合物の水酸基と付加反応し、その結果、エチレン性二重結合が、ウレタン結合またはアロハネート結合を有する原子団を介してポリビニルアセタール化合物に導入される。
【0056】
エチレン性二重結合を有するイソシアネート化合物とポリビニルアセタール化合物との付加反応において、エチレン性二重結合を有するイソシアネート化合物の使用量は、前記式(2)に示したエチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物の構成比率m,nが所望する値となるように適宜調整すればよい。従って、エチレン性二重結合を有するイソシアネート化合物の使用量は、ポリビニルアセタール化合物が有する水酸基に対する、エチレン性二重結合を有するイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基)が、0.3以上1.65以下(好ましくは、0.6以上1.3以下)の範囲となるように定めればよい。
【0057】
前記付加反応においては、触媒は用いなくても構わないが、効率よく反応を進行させるために、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫−2−エチルヘキソエート、DABCO等のウレタン化触媒を用いてもよい。
【0058】
前記付加反応においては、必要に応じて、重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、フェノチアジン、レゾルシン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、Cu粉末等が示される。
【0059】
前記付加反応においては溶媒を用いてもよく、溶媒としては、非プロトン性有機溶剤が好適に用いられる。なお、使用する溶剤は事前に十分に脱水しておくことが好ましい。
【0060】
次に、本発明の硬化性組成物に含まれる1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と酸素を含む複素環構造とを有する化合物(B)について説明する。化合物(B)は酸素を含む構造を有するため、得られる硬化物の基材密着性、とりわけガラスへの密着性を高くすることができる。一般的には、酸素を含む構造は水との親和性が高いため、得られる硬化物の耐水性は悪化する傾向にある。しかし、本発明の硬化性組成物は、化合物(B)が酸素を含んでいるにも関わらず、複素環構造という特別な構造を有するために、得られる硬化物の吸水性を低くすることができ、高湿度下でも硬化物の基材密着性を良好に保ち、耐水性が向上する。また、化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基を有しているため、得られる硬化性組成物は良好な硬化性を発現できる。
【0061】
前記化合物(B)は、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と酸素を含む複素環構造とを有するものであれば特に制限されず、1分子中に(メタ)アクリレート基と酸素を含む複素環構造とがそれぞれ1つずつ存在していてもよく、いずれかまたは両方が2つ以上存在していてもよい。
【0062】
前記化合物(B)に含まれる酸素を含む複素環構造としては、環構造に少なくとも1つの酸素原子を有していればよく、例えば、1,3−ジオキソラン環、2−オキソ−1,3−ジオキソラン環、テトラヒドロフラン環、1,2−ジオキサン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、モルホリン環、オキサゾリドン環、オキサゾリン環、ピロリドン環、ピラン環、シクロヘキサノン環、イミド環等が挙げられる。これらの中でも、合成の容易性や原料の入手のしやすさから、酸素を含む複素環構造としては、1,3−ジオキソラン環、2−オキソ−1,3−ジオキソラン環、およびテトラヒドロフラン環よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0063】
前記1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と酸素を含む複素環構造とを有する化合物(B)において、1,3−ジオキソラン環を有する化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。2−オキソ−1,3−ジオキソラン環を有する化合物としては、下記式(6)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレートが好ましい。テトラヒドロフラン環を有する化合物としては、下記式(7)で表されるテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0064】
【化10】

【0065】
式(1)、式(6)、および式(7)において、R1とR2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R1とR2は結合して環を形成してもよく、R3は、水素原子またはメチル基を表す。好ましくは、R1とR2は、それぞれ独立してメチル、エチル、t−ブチル、または、R1およびR2が結合してシクロヘキシル構造を形成している。
【0066】
式(1)で表される1,3−ジオキソラン環を有する化合物としては、例えば、下記式(8)で表される(2,2’−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、下記式(9)で表される(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、下記式(10)で表される(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デシ−2−イル)メチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート等が示される。
【0067】
【化11】

【0068】
また、前記化合物(B)として、(2−メチル−2−アセトニル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメチルカーボネート、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオネート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキサゾリドン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルピロリドン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキサゾリン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸イミド等を用いてもよい。
【0069】
化合物(B)の具体例として挙げた前記化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0070】
前記式(1)で表される化合物を製造する方法は、ジアルキルケトンまたはシクロアルカノンと、グリシジル(メタ)アクリレートとを、酸触媒の存在下で反応させる方法(特開昭52−71470号公報)や、ジアルキルケトンまたはシクロアルキルケトンにグリセリンを反応させ、得られた生成物をメチル(メタ)アクリレートでエステル交換する方法(特開昭61−266404号公報)等、従来公知の方法を採用することができる。式(6)で表される(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレートは、市販の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンをメチル(メタ)アクリレートでエステル交換する方法により製造することができる。式(7)で表されるテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートは市販されている。
【0071】
本発明の硬化性組成物における前記化合物(A)と前記化合物(B)の使用量としては、化合物(B)に対する化合物(A)の質量の比(化合物(A)の質量/化合物(B)の質量)で、5/95以上とすることが好ましく、10/90以上とすることがより好ましく、また70/30以下とすることが好ましく、50/50以下とすることがより好ましい。化合物(B)に対する化合物(A)の質量の比が5/95以上であれば、硬化収縮を抑えて、得られる硬化物の基材密着性を高めやすくなり、70/30以下であれば、粘度の上昇抑えられやすくなるため、取り扱い性が容易となる。
【0072】
本発明の硬化性組成物は、さらに、重合開始剤(C)をも含有することが好ましい。重合開始剤(C)としては、例えば、紫外線等の光エネルギーを照射することにより重合開始ラジカルを発生する光重合開始剤、熱エネルギーを付与することにより重合開始ラジカルを発生する熱重合開始剤を用いることができる。
【0073】
前記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;キサントン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類;等が示される。これらは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類が好適に用いられ、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1オンが好適に用いられる。
【0074】
前記熱重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;等が示される。これらは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0075】
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射により速やかに硬化させることができるため、生産面から、重合開始剤(C)として光重合開始剤を用いることが特に好ましい。
【0076】
本発明の硬化性組成物に含まれる重合開始剤(C)の量は、化合物(A)と化合物(B)と後述するその他の重合性単量体との合計質量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、また20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0077】
本発明の硬化性組成物は、さらにその他の重合性単量体を含有していてもよい。その他の重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル等の(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等のアルカンジオールのモノおよびジ(メタ)アクリレート;1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のアルカンジオールへのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシド等のアルキレンオキシド付加物のモノ(メタ)アクリレートならびにジ(メタ)アクリレート;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、ジビニルベンゼン等のビニル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、モノメチルマレエート、モノエチルマレエート、フマル酸、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、無水イタコン酸、イタコン酸、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、メチレンマロン酸、ジメチルメチレンマロネート、モノメチルメチレンマロネート、ケイ皮酸、メチルシンナメート、エチルシンナメート、クロトン酸、メチルクロトネート、エチルクロトネート等のα,β−不飽和化合物;ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等のビニルエーテル類;等が示される。これらは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0078】
本発明の硬化性組成物は、さらにラジカル重合性基を有するマクロモノマーやプレポリマーを含有していてもよい。このようなマクロモノマーやプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリシロキサン(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート等が示される。これらは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0079】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、染料、顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤、および分散剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0080】
次に、本発明の硬化性組成物の硬化方法について説明する。本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、硬化性組成物の製造の分野で公知の方法を適用することができ、例えば、加熱や、活性エネルギー線の照射等により行うことができる。中でも、電磁波、紫外線、可視光線、赤外線、電子線またはガンマー線などの活性エネルギー線や、熱エネルギーを用いることが好ましい。特に、活性エネルギー線を用いることが、本発明の硬化性組成物を速やかに硬化させることができる点で、より好ましい。
【0081】
具体的には、紫外線を用いて硬化させる場合、波長150nm〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いて硬化させることが好ましい。このような光源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯およびカーボンアーク灯などが挙げられる。また、これらの光源とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、および/または高周波加熱などを用いて熱エネルギーを加えてもよい。
【0082】
電子線を用いて硬化させる場合には、加速電圧の下限を10kV以上、好ましくは20kV以上、より好ましくは30kV以上に設定し、上限を500kV以下、好ましくは300kV以下、より好ましくは200kV以下に設定した電子線を用いてもよい。電子線の照射量は、2kGy以上とすることが好ましく、3kGy以上とすることがより好ましく、5kGy以上とすることがさらに好ましく、また500kGy以下とすることが好ましく、300kGy以下とすることがより好ましく、200kGy以下とすることがさらに好ましい。また、電子線とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、および/または高周波加熱などを用いて熱エネルギーを同時に付与してもよい。
【0083】
本発明における光硬化性の硬化性組成物を硬化させる場合、その温度は−20℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、また50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。硬化温度が−20℃以上であれば、十分な硬化速度が得られ生産性が向上するとともに、硬化反応が完全に進行しやすくなる。硬化温度が50℃以下であれば、硬化反応の急激な進行を抑えやすくなり、硬化時の発泡やクラック等の発生、得られる硬化物が反るなどの不具合の発生を防止しやすくなる。
【0084】
熱硬化性の硬化性組成物を硬化させる場合、その温度は40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましく、また180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましい。硬化温度を上記範囲とすることで、前述と同様な理由から、得られる硬化物の不具合発生を防止しやすくなる。
【0085】
本発明の硬化性組成物は、そのまま、接着剤として用いることができる。本発明の接着剤を硬化させる方法としては、上記の本発明の硬化性組成物の硬化方法を採用できる。本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射により速やかに硬化させることができるため、本発明の接着剤を硬化させる場合も、活性エネルギー線を用いることが特に好ましい。本発明の接着剤によって接着する被着体としては、特に限定されるものではなく、紙、木材、化粧板、ガラス、プラスチック成型品、金属板等、幅広く適用することができる。本発明の接着剤は、これら示した被着体の中でも、特にガラス、プラスチック成型品、金属板の接着に有効に用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0087】
<化合物(A)の合成>
[合成例1]
撹拌装置、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、エスレック(登録商標)BL−1、分子量19,000、ブチラール化度(前記式(2)における繰り返し単位の構成比率kに相当)63mol%、水酸基36mol%、未ケン化1mol%)321g、2−(ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート(日本触媒社製、VEEA)186g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「4H−TEMPO」と称する)0.17g、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ビス(2−メトキシエチル)エーテル)1183gとを仕込み、50℃で撹拌して、溶解させた。そこに、塩酸2.41g(35%水溶液、HCl成分で0.845g)をジエチレングリコールジメチルエーテル50gで希釈した溶液を、発熱に注意しながらゆっくり滴下した。発熱が緩やかになったところで60℃に昇温し、同温度で1時間保持した後、イオン交換樹脂(オルガノ社製、IRA 96SB AG)46gを添加して、塩酸を除去した。イオン交換樹脂をろ過により分離して、得られた溶液を、大量のn−へキサンの中に滴下して、沈殿生成させた。沈殿物を取り出し、これを乾燥し、化合物(A)に相当するVBL−1を得た。VBL−1の分子中の水酸基の比率(前記式(2)における繰り返し単位の構成比率mに相当)をFT−IRにより測定したところ、18mol%であった。
【0088】
[合成例2]
2−(ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート186gの代わりに、2−(ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート(日本触媒社製、VEEM)200gを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物(A)に相当するVBL−2を得た。VBL−2の分子中の水酸基の比率をFT−IRにより測定したところ、18mol%であった。
【0089】
[合成例3]
2−(ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート186gの代わりに、2−(ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート(日本触媒社製、VEEM)300gを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物(A)に相当するVBL−3を得た。VBL−2の分子中の水酸基の比率をFT−IRにより測定したところ、9mol%であった。
【0090】
[合成例4]
2−(ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート186gの代わりに、2−(ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート(日本触媒社製、VEEM)100gを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物(A)に相当するVBL−2を得た。VBL−2の分子中の水酸基の比率をFT−IRにより測定したところ、27mol%であった。
【0091】
[合成例5]
2−(ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート186gの代わりに、2−(ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート(日本触媒社製、VEEM)360gを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物(A)に相当するVBL−2を得た。VBL−2の分子中の水酸基の比率をFT−IRにより測定したところ、3.6mol%であった。
【0092】
[合成例6]
2−(ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート186gの代わりに、2−(ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート(日本触媒社製、VEEM)40gを用いた以外は、合成例1と同様の操作を行い、化合物(A)に相当するVBL−2を得た。VBL−2の分子中の水酸基の比率をFT−IRにより測定したところ、32.4mol%であった。
【0093】
[合成例7]
撹拌装置、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、エスレックBL−1、分子量19,000、ブチラール化度63mol%、水酸基36mol%、未ケン化1mol%)321g、4H−TEMPO 0.052g、ジブチル錫ジラウレート0.522g、ビス(2−メトキシエチル)エーテル1000gとを仕込み、70℃で撹拌して、溶解させた。そこに、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(シグマアルドリッチ社製)201gをビス(2−メトキシエチル)エーテル250gで希釈した溶液を、発熱に注意しながらゆっくり滴下した。発熱が緩やかになったところで90℃に昇温し、同温度で4.5時間保持した後、得られた溶液を、大量のn−へキサンの中に滴下して、沈殿生成させた。沈殿物を取り出し、これを乾燥し、化合物(A)に相当するVBL−7を得た。VBL−7の分子中の水酸基の比率をFT−IRにより測定したところ、18mol%であった。
【0094】
<化合物(B)の合成>
[合成例8]
撹拌装置、温度計、および凝縮器を備えた反応器に、アセトン87質量部、グリセリン92質量部、p−トルエンスルホン酸1質量部、ベンゼン175質量部とを仕込み、この反応溶液を沸点まで加熱し、撹拌した。生成した水をベンゼンとともに蒸留して凝縮し、分離器で水のみを取り除いた後、ベンゼンは反応器に戻した。水が18質量部生成した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液から、アセトンとベンゼンをエバポレーターで留去した後、蒸留によって中間体を得た。撹拌機、温度計、10段オルダーショウ蒸留塔を備えた反応器に、前記中間体132質量部、メチルアクリレート258質量部、フェノチアジン(重合禁止剤)3質量部、テトラn−ブチルチタネート(エステル交換触媒)10質量部とを仕込み、撹拌しながら沸騰するまで加熱した。反応で生成したメタノールは、メチルアクリレートとの共沸混合物として留出させ、系外に除去した。共沸混合物が留出しなくなった時点で加熱を止め、反応溶液を室温まで冷却し、減圧蒸留することにより、化合物(B)に相当する4−アクリロイルオキシメチル−2,2’−ジメチル−1,3−ジオキソラン(AOMMMDO)を得た。
【0095】
[合成例9]
合成例8で得た中間体の代わりに4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(シグマアルドリッチ社製)を用いた以外は、合成例8と同様の操作を行い、化合物(B)に相当する4−アクリロイルオキシメチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン(AOMODO)を得た。
【0096】
[合成例10]
アセトン87質量部の代わりにシクロヘキサノン147質量部を用い、得られた中間体を172質量部用いた以外は、合成例8と同様の操作を行い、化合物(B)に相当する(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デシ−2−イル)メチルアクリレート(DOSDMA)を得た。
【0097】
<ウレタンアクリレートを含む樹脂(UA含有樹脂)の合成>
[合成例11]
温度計、冷却管、ガス導入管、および撹拌機を備えた反応器に、トリレンジイソシアネート4.0質量部、ジブチル錫ジラウリレート0.025質量部、2,6−ジt−ブチル−4−ヒドロヒシトルエン0.05質量部、4−アクリロイルオキシメチル−2,2’−ジメチル−1,3−ジオキソラン(AOMMMDO)120質量部とを仕込み、反応器内を空気で置換しつつ、撹拌しながら60℃に昇温した。次に、平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール34.6質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間反応させた後、2−ヒドロキシアクリレート1.4質量部を30分かけて滴下した。滴下終了後、70℃に昇温し、全てのイソシアネート基がほぼ消失するのを化学分析により確認し、反応を終了し、目的のウレタンアクリレートを含む樹脂(UA含有樹脂)を得た。ウレタンアクリレートが20質量% 、AOMMMDOが80質量%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるウレタンアクリレートのポリスチレン換算の重量平均分子量は34,000であった。
【0098】
<硬化性組成物の作製>
化合物(A)、化合物(B)、重合開始剤(C)、その他の化合物を、表1、2に示した割合で配合することにより、硬化性組成物である組成物1〜16を得た。表1、2中、化合物(B)の「THF−A」とは、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート(共栄社化学社製、THF−A)を表す。重合開始剤(C)の「D−1173」とは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ダロキュア(登録商標)1173)を表す。その他の化合物の「HEMA」とは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを表す。
【0099】
<シート状成形体の作製>
離型剤を塗布してからよく拭いたガラス板上にシリコーンゴム製スペーサ(厚さ:1mm)を配置し、スペーサで囲まれた部位に組成物1〜18を各々注入した。その上にPETフィルム(厚さ:250μm)をかぶせ、250W超高圧水銀ランプを用いて紫外線(主波長:365nm、照射強度:43mJ/cm2・秒)を46.5秒間照射し、組成物を硬化させた。室温まで自然冷却後、ガラス板を取り外して、シート状成形体を得た。
【0100】
<性能評価試験方法>
[透明性]
上記シート状成形体の作製方法で作製したシート状成形体の400nmにおける光の透過率(%)を、分光光度計(島津製作所製、UV−3100)により測定した。結果を表1、2に示した。
【0101】
[耐光性]
上記シート状成形体の作製方法で作製したシート状成形体の試験前の400nmにおける光の透過率を、分光光度計(島津製作所製、UV−3100)により測定した。このシート状成形体を用い、紫外線オートフェードメーター(スガ試験機社製、FAL−AU−B)による連続照射試験を63℃で48時間行い、試験後の400nmにおける透過率を測定した。これらの測定値から、透過率保持率(%)を次式により求めた。結果を表1、2に示した。
透過率保持率(%) =(試験後の400nmにおける透過率)/(試験前の400nmにおける光の透過率)×100
【0102】
[吸水率]
上記シート状成形体の作製方法で作製したシート状成形体を3cm角に切断し、試験前の質量を測定した。この試験試料を25℃のイオン交換水に24時間浸漬した後、試験試料の試験後の質量を測定した。これらの測定値から、吸水率(%)を次式により求めた。結果を表1、2に示した。
吸水率(%) =[(試験後の質量)−(試験前の質量)]/(試験前の質量)×100
【0103】
[ガラス密着性]
アセトンで表面を脱脂したガラス板上にシリコーンゴム製スペーサ(厚さ:1mm)を配置し、スペーサで囲まれた部位に硬化性組成物を注入した。その上にPETフィルム(厚さ:250μm)をかぶせ、250W超高圧水銀ランプを用いて紫外線(主波長:365nm、照射強度:43mJ/cm2・秒)を46.5秒間照射し、組成物を硬化させた。室温まで自然冷却後、ガラス板を取り外して、硬化物を得た。カッターを硬化物とガラスの間に挿入し、ガラスからの硬化物の剥がれやすさを評価した。
◎:剥がれず硬化物が破壊
○:一部剥がれるが硬化物一部破壊
△:硬化物にクラックが入るが全面剥がれる
×:きれいに剥がれる
【0104】
[高温高湿度下のガラス密着性]
アセトンで表面を脱脂したガラス板上にシリコーンゴム製スペーサ(厚さ:1mm)を配置し、スペーサで囲まれた部位に硬化性組成物を注入した。その上にPETフィルム(厚さ:250μm)をかぶせ、250W超高圧水銀ランプを用いて紫外線(主波長:365nm、照射強度:43mJ/cm2・秒)を46.5秒間照射し、組成物を硬化させた。室温まで自然冷却後、ガラス板を取り外して、硬化物を得た。この試験体を60℃、90%Rhの恒温器に入れ、100時間放置した。試験体を恒温器より取り出し、室温まで戻した後、カッターを硬化物とガラスの間に挿入し、ガラスからの硬化物の剥がれやすさを評価した。
◎:剥がれず硬化物が破壊
○:一部剥がれるが硬化物一部破壊
△:硬化物にクラックが入るが全面剥がれる
×:きれいに剥がれる
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
<性能評価結果>
組成物1〜16について、各々上記性能評価試験を行った。化合物(A)の種類を変えた組成物1,2,12を比較すると、いずれの組成物の硬化物も、透明性や耐光性、ガラス密着性に優れ、吸水率が低く抑えられた。また、化合物(B)の種類を変えた組成物2,5,6を比較した場合も、いずれの組成物の硬化物も、透明性や耐光性、ガラス密着性に優れ、吸水率が低く抑えられた。
【0108】
一方、化合物(B)を有さない組成物13の硬化物は、室温ではガラス密着性に優れるものの、吸水性が高く、高温高湿下ではガラス密着性に劣るものとなった。ウレタンアクリレートを含む樹脂である組成物16の硬化物は、耐光性に劣り、透過率保持率が極めて悪いものとなった。
【0109】
化合物(A)のブチラール化度(前記式(2)における繰り返し単位の構成比率kに相当)を固定し、水酸基の比率(前記式(2)における繰り返し単位の構成比率mに相当)とエチレン性二重結合を有する置換基の結合比率(前記式(2)における繰り返し単位の構成比率nに相当)を変化させることの影響を見た組成物2〜4,14,15を比較すると、水酸基の比率が9mol%〜27mol%の範囲にある組成物2〜4の硬化物は、透明性や耐光性、ガラス密着性に優れ、吸水率が低く抑えられた。水酸基の比率が3.6mol%と低い値を有する組成物14と、水酸基の比率が32.4mol%と高い値を有する組成物15では、組成物2〜4よりも、硬化物のガラス密着性が低下した。
【0110】
化合物(A)と化合物(B)の使用比率を変える影響を見た組成物1,8〜11を比較すると、いずれの組成物の硬化物も、透明性や耐光性、ガラス密着性に優れ、吸水率が低く抑えられた
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の硬化性組成物は、フラットパネルディスプレイ等の画像表示装置、CDやDVD等の光記録媒体、光学部材、太陽電池部材、接着剤、異方性導電膜(ACF)等の様々な用途への適用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)と、
1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と酸素を含む複素環構造とを有する化合物(B)とを含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記化合物(B)が有する酸素を含む複素環構造が、1,3−ジオキソラン環、2−オキソ−1,3−ジオキソラン環、およびテトラヒドロフラン環よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記化合物(B)が、下記式(1)で表される化合物、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、およびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の硬化性組成物。
【化1】

(R1とR2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R1とR2は結合して環を形成してもよい。R3は、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項4】
前記エチレン性二重結合を有するポリビニルアセタール化合物(A)が、下記式(2)で表される繰り返し単位を必須として有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【化2】

(Xは、エチレン性二重結合を有する置換基を表す。R4は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルケニル基を表す。k,m,nは1以上の整数を表す。)
【請求項5】
前記式(2)における繰り返し単位のk/m/nの構成比率が、k,m,nの総和を100とした場合に、20〜86.5/5〜30/1〜50の範囲である請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記式(2)におけるエチレン性二重結合を有する置換基を表すXが、下記式(3)で表されるα,β−不飽和カルボキシラート基を有する置換基である請求項4または5に記載の硬化性組成物。
【化3】

(R5とR6とR7は、それぞれ独立して水素原子または有機基を表す。)
【請求項7】
さらに、重合開始剤(C)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含有することを特徴とする接着剤。

【公開番号】特開2009−84432(P2009−84432A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256058(P2007−256058)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】