説明

硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法

【課題】厚さの寸法精度が長期にわたって安定であり、裁断ロスの発生の少ない硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】下面材15をコンベアに供給する下面材供給工程、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合した発泡原液組成物をミキサー21のノズルから下面材15上に供給する原液供給工程、発泡原液組成物上に上面材14を供給する上面材供給工程、上面材14を押さえるニップ工程、発泡原液組成物を加熱して発泡硬化させて連続硬質ポリウレタンフォーム10とする発泡工程、及び連続硬質ポリウレタンフォームを所定長さに裁断する裁断工程を有し、発泡工程は、スラットコンベア27にて上面と下面とを押圧しつつ加熱する工程である硬質ポリウレタンフォームパネル12の製造方法とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法としては、原反から巻き戻してコンベア上に供給される下面材上に発泡原液組成物をミキサーより供給撒布し、次いで上面材を原反から巻き戻して供給し、ニップロール等により発泡原液組成物を上面材と下面材とになじませると共に厚さを均一化し、加熱オーブン内にて該発泡原液組成物を発泡硬化させた後に所定寸法に裁断することにより、両面に面材が積層された硬質ポリウレタンフォームパネルを製造する連続生産法が公知である(非特許文献1)。
【0003】
係る非特許文献1開示の連続生産法においては、製造する硬質ポリウレタンフォームパネルの厚さを所定値に設定するために、上下の面材を金属製ベルトを使用したダブルコンベアにて押圧しつつ加熱する方法が使用されていた。
【0004】
【非特許文献1】岩田敬治編「ポリウレタン樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社(昭和62年9月25日)第233頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の公知技術において、金属製エンドレスベルトを使用したダブルコンベアは、上下面材として紙面材、フィルム面材、金属箔面材などの柔軟性の大きな面材(ソフト面材)を使用した場合であっても表面性に優れた硬質ポリウレタンフォームパネルを製造することができるが、該金属製、一般にはスチール製のエンドレスベルトは厚さが1.5mm程度であり、長期の使用で幅方向の両端部において、上側のベルトが下がる変形を、また下側のベルトは反り上がる変形を生じて、幅の広い製品を製造すると両端部の厚さが薄くなるという問題を有するものであった。このために、ダブルコンベアの幅に近い幅を有する硬質ポリウレタンフォームパネルを製造しようとしても、端部に厚さの薄い部分が多くなって裁断ロスが多く発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記公知技術の問題点に鑑み、厚さの寸法精度が長期にわたって安定であり、裁断ロスの発生の少ない硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法であって、
下面材をコンベアに供給する下面材供給工程、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合した発泡原液組成物をミキサーから前記下面材上に供給する原液供給工程、前記発泡原液組成物上に上面材を供給する上面材供給工程、前記上面材を押さえるニップ工程、前記発泡原液組成物を加熱して発泡硬化させて連続硬質ポリウレタンフォームとする発泡工程、及び前記連続硬質ポリウレタンフォームを所定長さに裁断する裁断工程を有し、
前記発泡工程は、スラットコンベアにて上面と下面とを押圧しつつ加熱する工程であることを特徴とする。
【0008】
係る構成の製造方法は、厚さを規制するためのコンベアの幅方向端部の変形が起こらないので厚さの寸法精度が長期にわたって安定した硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法である。 スラットコンベアは、無端状チェーンの長さ方向に堅牢な板状のスラットが連続して設けられたものである。
【0009】
上述の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法においては、前記発泡工程は、さらに両端部をサイドブロックにて押圧することが好ましい。
【0010】
係る構成の製造方法によれば、幅方向端部まで厚さと密度が均一であり、裁断ロスの発生が少ない硬質ポリウレタンフォームパネルを製造することができる。
【0011】
即ち、非特許文献1等において公知の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造において、寸法精度が高く裁断によるロス発生の少ないパネルを製造しようとして、サイドブロックにて端部を押圧して規制しようとしても、金属製エンドレスベルトが蛇行を起こすために両端部のサイドブロックによる規制が行えないという問題があったが、本発明の製造方法においては、スラットコンベアが走行中に蛇行しないため、サイドブロックの使用が可能となった。
【0012】
また上述の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法においては、前記上面材、下面材の少なくとも一方はしぼを有することが好ましい。
【0013】
スラットコンベアはスラットを連接したものであるためにスラット間に隙間が発生し、平坦な面材を使用すると、得られる硬質ポリウレタンフォームの表面に該スラットの隙間に起因する筋状の凹凸が発生するが、しぼを有する面材の使用により該筋状の凹凸の発生を防止することができ、外観の良好な硬質ポリウレタンフォームパネルを製造することができる。しぼを有する面材は、硬質ポリウレタンフォームパネルの施工後の表面となる面へ使用してもよく、両面に使用してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造において使用する原料は、公知のポリウレタンフォーム形成用の原料を使用することができ、いわゆるイソシアヌレートフォームであってもよい。パネルを構成する硬質ポリウレタンフォームの密度は20〜50kg/m、より好ましくは25〜45kg/mである。本発明により製造する硬質ポリウレタンフォームパネルの大きさは特に限定されるものではないが、幅が1500mm以下,厚さが10〜200mmであることが好ましい。
【0015】
本発明の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法において使用する面材としては、クラフト紙等の紙、樹脂フィルム、アルミフォイル等が使用可能であり、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルムやアルミ箔とクラフト紙ないし樹脂フィルムとをラミネートした積層面材等が好適な面材として例示できる。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法の好適な態様を例示した概略正面図である。下面材15はロール状の原反13から巻き戻されて供給される(下面材供給工程)。上面材15は、好ましくはしぼ加工ロール17にてしぼ加工され、しぼ付き下面材19としてコンベア20上に供給される。コンベア20上において、しぼ付き下面材19上にミキサー21のノズルからイソシアネート成分とポリオール化合物、発泡剤などを含むポリオール組成物とを混合した発泡原液組成物が、幅方向に均一な原液厚さになるように撒布、供給される(原液供給工程)。コンベア20は、発泡原液組成物供給後においても下面材15を平坦に支持するものであり、ベルトコンベア、ローラーコンベア等が使用できる。
【0017】
発泡原液組成物を供給したしぼ付き下面材19の上に上面材が供給される。上面材14はロール状の原反12から巻き戻されて供給される(上面材供給工程)。上面材14は、好ましくはしぼ加工ロール16にてしぼ加工され、しぼ付き下面材18として発泡原液組成物を供給したしぼ付き下面材19の上に供給される。発泡原液組成物をサンドイッチした状態で上下の面材はニップローラー23を通過し、発泡原液組成物の厚さを均一にすると共に面材とのなじみの向上によるフォームと面材との接着性の改善が行われ(ニップ工程)、発泡原液組成物の発泡を行いつつ加熱オーブン25内に設置された上下1対のスラットコンベア27(27a,27b)の間に送られる。
【0018】
しぼ加工された上面材18としぼ加工された下面材19の間にサンドイッチされた発泡原液組成物はスラットコンベアの間で一定の厚さとなるように規制を受けつつ発泡硬化を完了し(発泡工程)、サンドイッチパネル10が形成される。連続状の硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネル10は、加熱オーブン25を出た後にカッター30にて所定長さに裁断され(裁断工程)、硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネル12となる。
【0019】
上記の製造方法の例においては、上下の可とう性面材としてしぼを有しない面材を使用し、巻き戻した後にしぼ加工ロールにてしぼ加工を施した例であるが、予めしぼ加工を施した面材を使用してもよい。面材に形成するしぼは、製造後の硬質ポリウレタンフォームパネルの表面に筋状の凹凸が発生しなければ特に限定されるものではないが、単純に金型表面にサンドブラストにより形成されるような凹凸でよく、山と谷の高さの差の平均値が10μmより粗い凹凸であることが好ましい。
【実施例2】
【0020】
図2には、スラットコンベアと発泡工程において両端部を押圧するサイドブロックを斜視図にて、また図3には図2に例示したスラットコンベアを使用した硬質ポリウレタンフォームパネルの製造状態を上面図にて例示した。スラットコンベア27は、上部スラットコンベア27aと下部スラットコンベア27bとから構成されており、各スラットコンベア27a,27bは平坦な押圧面を形成するスラット33が連接され、上部スラットコンベア27aは少なくとも1方が駆動されるローラー35a,37aにより、また下部スラットコンベア27bは少なくとも1方が駆動されるローラー35b,37bにより、それぞれ支持されている。硬質ポリウレタンの発泡工程においては、発泡原液組成物をサンドイッチした上下の面材は矢印Aの方向に移動する。
【0021】
スラット33は、鉄やアルミニウム、ステンレスなどの金属にて形成してもよいが、金属の表面をポリエチレン、ポリ四フッ化エチレンなどの樹脂にて被覆して構成することが好ましい。スラットコンベアは、スラットをチェーンに装着、連接して構成することが好適である。加熱オーブン内において発泡硬化する発泡原液組成物をサンドイッチした上下の面材を押圧する部分のスラットコンベア27a,27bは、発泡工程中、全体としての平坦性を確保するために直線状のガイド部材を通過するように構成することが好ましい。
【0022】
スラットコンベア27の幅方向の両端部には、製造する硬質ポリウレタンフォームパネルの幅を規制するサイドブロック41a,41bが配設されている。サイドブロック41a,41bにより、製造される硬質ポリウレタンフォームパネルの端部が高粘性液の流れた端部のように湾曲して端部ほど厚さが薄くなることが防止され、端部まで厚さと密度が均一な硬質ポリウレタンフォームパネルを製造することができる。このようにして製造された連続状の硬質ポリウレタンフォームパネルは、裁断ロスが小さなものである。
【0023】
スラットコンベアは、従来のダブルコンベアと比較すると、全体の長さが可変であり、また幅の異なるスラットと交換することにより、コンベアの幅の変更も可能であるという特徴を有する。
【0024】
図2並びに図3においては、サイドブロック41は、上下のスラットコンベア27の端部に当接する構成のものが例示されているが、上下のスラットコンベア27の間に少なくとも先端部が入り込んで上下のスラットコンベアと当接して硬質ポリウレタンフォームパネルの端部を規制する構成であってもよい。係る構成によれば、サイドブロックの間隔を調整することによって、異なる幅の硬質ポリウレタンフォームパネルを製造することができるという効果が得られる。サイドブロック41(41a,41b)を構成するブロックは、スラットコンベアと同様に鉄やアルミニウム、ステンレスなどの金属もしくは、金属の表面をポリエチレン、ポリ四フッ化エチレンなどの樹脂にて被覆したものであってもよく、樹脂製であってもよい。サイドブロック41は、個々のブロックをチェーンなどにて連接してエンドレスの状態にして使用する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法の好適な態様を例示した概略正面図
【図2】スラットコンベアと発泡工程において両端部を押圧するサイドブロックを例示した斜視図
【図3】図2に例示したスラットコンベアを使用した硬質ポリウレタンフォームパネルの製造状態を例示した上面図
【符号の説明】
【0026】
10 硬質ポリウレタンフォーム
14 上面材
15 下面材
27 スラットコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法であって、
下面材をコンベアに供給する下面材供給工程、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合した発泡原液組成物をミキサーから前記下面材上に供給する原液供給工程、前記発泡原液組成物上に上面材を供給する上面材供給工程、前記上面材を押さえるニップ工程、前記発泡原液組成物を加熱して発泡硬化させて連続硬質ポリウレタンフォームとする発泡工程、及び前記連続硬質ポリウレタンフォームを所定長さに裁断する裁断工程を有し、
前記発泡工程は、スラットコンベアにて上面と下面とを押圧しつつ加熱する工程であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法。
【請求項2】
前記発泡工程は、さらに両端部をサイドブロックにて押圧することを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法。
【請求項3】
前記上面材、下面材の少なくとも一方はしぼを有することを特徴とする請求項1又は2に硬質ポリウレタンフォームパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−112056(P2007−112056A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307337(P2005−307337)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】