説明

磁性シート組成物、磁性シート、及び磁性シートの製造方法

【課題】電子機器から放出される不要電磁波の低減、及び電子機器に生じる電磁障害の抑制が可能で、低温―速硬化性であり、臭気を発生させることなく、さらに、腐食が生じることない磁性シート組成物、磁性シート、及び磁性シートの製造方法の提供。
【解決手段】本発明の磁性シート組成物は、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、下記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物と、エポキシ樹脂と、アクリル樹脂と、磁性粉とを含有することを特徴とする。
【化10】
(Ar)Si(OR) 式(A)
(式中、mは2及び3のいずれかであり、mとnとの和は4である。Arは置換されてもよいアリール基であり、Rは水素原子及びメチル基のいずれかである。nが複数である場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器から放出される不要電磁波の低減、及び電子機器に生じる電磁障害の抑制が可能な磁性シートの材料としての磁性シート組成物、磁性シート、及び磁性シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性シートの使用される用途としては、ノイズ抑制用途あるいは、RFID用途が挙げられる。ノイズ抑制用途としては、パソコンや携帯電話に代表される電子機器の小型化、高周波数化の急速な進展に伴い、これらの電子機器において、外部からの電磁波によるノイズ干渉及び電子機器内部で発生するノイズ同士の干渉を抑制するために、種々のノイズ対策が行われており、例えば、ノイズ発信源又は受信源近傍に、磁性シート(ノイズ抑制シート)を設置することが行われている。
【0003】
前記磁性シートは、Fe−Si−Al等の合金(磁性粉)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂と、揮発性溶剤とを含む磁性塗料(磁性シート組成物)をPETや剥離処理されたPETなどの絶縁性支持体(基材)の表面に塗布し、加熱プレスにより硬化させてシート状に成形したものであり、前記磁性粉が、ノイズを抑制する、所謂ノイズ抑制体としての機能を有する。前記磁性シートのノイズ抑制効果は透磁率の虚数部であるμ’’が大きい方が好ましい。
【0004】
一方、RFID用途としては、近年、RFID(Radio Frequency Identification)と称されるICタグ機能を有する携帯情報端末機に代表されるように、電磁誘導方式によるコイルアンテナを用いる無線通信が普及している。例えば、携帯情報端末機では、その小型化により、送受信用のアンテナ素子の近傍には、例えば、金属筐体、金属部品などの種々の導電体(金属)が配置されている。この場合、前記アンテナ素子近傍の金属の存在により、通信に用いることができる磁界が大きく減衰し、電磁誘導方式におけるRFID通信距離が短くなったり、共振周波数がシフトすることにより無線周波数を送受信することが困難になることがある。そこで、このような電磁障害を抑制するため、前記アンテナ素子と前記導電体との間に、磁性シートを配置することが行われている。RFIDとしての機能としては、透磁率の実数部であるμ’が大きく、虚数部であるμ’’の小さい方が好ましい。
【0005】
前記磁性シートの材料としての磁性シート組成物には、一般的に熱硬化性有機樹脂を硬化させる硬化剤(架橋剤)を添加することが行われている。このように、磁性シート組成物に硬化剤を含有させることによって磁性シートを硬化しているが、特に、磁性シートにおける高分子材料が吸湿しやすい場合には、温度や湿度の環境変化によって磁性シートの厚みが変化してしまうという問題がある。ここで、磁性シートの硬化を十分に進行させるために、硬化温度を高く硬化時間を長くすると、冷却時間が長くなるため水を浪費すると共に生産性が劣るという問題が発生する。この問題に対応するために、硬化温度を高くして、硬化時間を短くすると、絶縁性支持体の耐熱性の点で問題がある。
従来の硬化剤としては、スルホニウム系カチオン硬化剤が多用されているが、このスルホニウム系カチオン硬化剤には、毒性を有するアンチモンが含有されていることから、環境に悪影響を及ぼすという問題がある。さらに、このアンチモン型のスルホニウム系カチオン硬化剤は、カウンターアニオンが、結合力が弱いSb−F結合を有することから、F−1イオンが遊離し易い。よって、アンチモン型のカチオン硬化剤を含有する磁性シートを配線周りに用いた場合には、遊離したF−1イオンが水と反応してフッ酸を生成し、配線腐食が多発するという問題があった。また、硬化反応後、磁性シートに不快臭が残り、この不快臭を取り除くためには熱処理が必要であった。
また、イミダゾール系硬化剤を用いた磁性シートは、硬化温度が高いので、プレス時間が長く、生産性が劣るという問題があるとともに、腐食が発生しやすいという問題があった。
また、例えば、特許文献1には、光硬化性カチオン硬化剤を含有した磁性バインダーの光硬化について記載され、磁性フィラーが表面から厚み方向に沿って変化する濃度分布を有する電磁波吸収シートが開示されている。この電磁波吸収シートの硬化はドラム式装置を用いて行われるものである。
上記のような事情に鑑みて、以下に示すような、アルミキレートを用いたカチオン硬化システムが検討されている。
ルイス酸であるアルミニウムキレート(下記式(1))の空配座に、シラノールの酸素の孤立電子対が配位することにより複合体(下記式(2))が形成される。続けて、複合体(下記式(2))とモノマーであるエポキサイドが相互作用することにより、カチオン重合活性種(下記式(3))が形成され、このカチオン重合活性種(下記式(3))及びエポキサイド間でカチオン重合反応が進行することにより、ポリエチレンオキサイド(エポキシ樹脂)(下記式(4))が得られる。
【化1】

しかし、前記カチオン重合反応の反応速度は非常に速く、アルミニウムキレート(上記式(1))を、例えば、1液型の接着剤やフィルムに用いた場合、室温においても硬化反応が進行してしまい、要求されるフィルムライフを得ることができず(フィルムを使用する時に硬化してしまっている)、アルミニウムキレート(上記式(1))の潜在性化が必要であった。斯かる潜在化の必要に対し、アルミニウムキレートをカプセル化し、潜在性硬化剤として使用することが特許文献2に開示されている。このアルミニウムキレートのカプセル化によって、硬化剤の潜在性化を成し遂げることができ、硬化剤にフィルムライフの安定化や耐溶剤性を付与することができたものの、反応性が低下することとなり、硬化不良等が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−95829号公報
【特許文献2】特開2006−70051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、電子機器から放出される不要電磁波の低減、及び電子機器に生じる電磁障害の抑制が可能で、低温―速硬化性であり、臭気を発生させることなく、さらに、腐食が生じることない磁性シートの材料としての磁性シート組成物、磁性シート、及び磁性シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。即ち、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、下記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物と、エポキシ樹脂と、アクリル樹脂と、磁性粉とを含有する磁性シート組成物を用いると、低温―速硬化性であり、臭気を発生させることなく、さらに、腐食が生じることない磁性シートを作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(化2)
(Ar)Si(OR) 式(A)
(式中、mは2及び3のいずれかであり、mとnとの和は4である。Arは置換されてもよいアリール基であり、Rは水素原子及びメチル基のいずれかである。nが複数である場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
【0009】
本発明は、本発明者の前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、下記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物と、エポキシ樹脂と、アクリル樹脂と、磁性粉とを含有することを特徴とする磁性シート組成物である。
(化3)
(Ar)Si(OR) 式(A)
(式中、mは2及び3のいずれかであり、mとnとの和は4である。Arは置換されてもよいアリール基であり、Rは水素原子及びメチル基のいずれかである。nが複数である場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
<2> Arが、フェニル基である前記<1>に記載の磁性シート組成物である。
<3> シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物が、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、及びジフェニルジメトキシシランのいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の磁性シート組成物である。
<4> アルミニウムキレート系潜在性硬化剤が、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時にジビニルベンゼンをラジカル重合させて得た多孔性樹脂にアルミニウムキレート剤を保持してなるアルミニウム潜在性硬化剤である前記<1>から<3>のいずれかに記載の磁性シート組成物である。
<5> エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の合計量106.1質量部に対し、磁性粉が500質量部〜1,250質量部であり、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤及びシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物の合計量が2質量部〜15質量部である前記<1>から<4>のいずれかに記載の磁性シート組成物である。
<6> アルミニウムキレート系潜在性硬化剤及びシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物の合計量が6.9質量部〜10質量部である前記<1>から<5>のいずれかに記載の磁性シート組成物である。
<7> アルミニウムキレート系潜在性硬化剤とシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物との質量比(アルミニウムキレート系潜在性硬化剤/シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物)が、1.0以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の磁性シート組成物である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の磁性シート組成物からなる磁性層を有することを特徴とする磁性シートである。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の磁性シート組成物を、成形して磁性層を形成する磁性層形成工程と、前記磁性層の厚み方向における少なくとも一方の面に、凹凸形成層及び転写材を、前記磁性層側からこの順に積層配置した後、加熱プレスすることにより、前記転写材の表面形状を、前記凹凸形成層及び前記磁性層の表面に転写すると共に、前記凹凸形成層と前記磁性層とを接合する形状転写工程と、を含むことを特徴とする磁性シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決でき、電子機器から放出される不要電磁波の低減、及び電子機器に生じる電磁障害の抑制が可能で、低温―速硬化性であり、臭気を発生させることなく、さらに、腐食が生じることない磁性シートの材料としての磁性シート組成物、磁性シート、及び磁性シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の磁性シートの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(磁性シート組成物)
本発明の磁性シート組成物は、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、下記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物と、エポキシ樹脂と、アクリル樹脂と、磁性粉とを少なくとも含有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の成分を含有してなる。
(化4)
(Ar)Si(OR) 式(A)
(式中、mは2及び3のいずれかであり、mとnとの和は4である。Arは置換されてもよいアリール基であり、Rは水素原子及びメチル基のいずれかである。nが複数である場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
【0013】
−アルミニウムキレート系潜在性硬化剤−
前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤としては、種々の公知の手法、例えば、マイクロカプセル化法にて、アルミニウムキレート系硬化剤を潜在化したものが挙げられる。中でも、多官能イソシアネート化合物を界面重合させて得た多孔性樹脂にアルミニウムキレート剤を保持させたものが好ましい。より具体的には、アルミニウムキレート系硬化剤のコアの周囲を多孔性樹脂のシェルで被覆した単純な構造のマイクロカプセルではなく、多孔性樹脂マトリックス中に存在する微細な多数の孔にアルミニウムキレート剤が保持された構造のものが挙げられる。以下、このアルミニウムキレート系潜在性硬化剤について説明する。
【0014】
前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、界面重合法を利用して製造されるため、その形状は球状であり、その粒子径は、硬化性及び分散性の点から、0.5μm〜100μmであることが好ましく、また、孔の大きさは、硬化性及び潜在性の点から、5nm〜150nmであることが好ましい。
【0015】
また、前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、使用する多孔性樹脂の架橋度が小さすぎるとその潜在性が低下し、大きすぎるとその熱応答性が低下する傾向があるので、使用目的に応じて、架橋度が調整された多孔性樹脂を使用することが好ましい。ここで、多孔性樹脂の架橋度は、微少圧縮試験により計測することができる。
【0016】
前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、その界面重合時に使用する有機溶剤を実質的に含有していないこと、具体的には、1ppm以下であることが、硬化安定性の点で好ましい。
【0017】
また、前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤における多孔性樹脂とアルミニウムキレート剤との含有量は、アルミニウムキレート剤含量が少なすぎると熱応答性が低下し、多すぎると潜在性が低下するので、多孔性樹脂100質量部に対するアルミニウムキレート剤の含有量が、10質量部〜200質量部であることが好ましく、10質量部〜150質量部であることがより好ましい。
【0018】
前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤において、アルミニウムキレート剤としては、下記式(5)に表される、3つのβ―ケトエノラート陰イオンがアルミニウムに配位した錯体化合物が挙げられる。
【0019】
【化5】

【0020】
ここで、R1、R2及びR3は、それぞれ独立的にアルキル基又はアルコキシル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、オレイルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
前記式(5)で表されるアルミニウムキレート剤の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0022】
前記多官能イソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましく、3個のイソシアネート基を有する化合物がより好ましい。このような3官能イソシアネート化合物としては、トリメチロールプロパン1モルにジイソシアネート化合物3モルを反応させた式(6)のTMPアダクト体、ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させた式(7)のイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3モルのうちの2モルから得られるジイソシアネートウレアに残りの1モルのジイソシアネートが縮合した式(8)のビュウレット体などが挙げられる。
【0023】
【化6】

【0024】
上記(6)〜(8)において、置換基Rは、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた部分である。このようなジイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン2,4―ジイソシアネート、トルエン2,6―ジイソシアネート、m―キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ―m―キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニル―4,4’―ジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
このような多官能イソシアネート化合物を界面重合させて得られる多孔性樹脂は、界面重合の間にイソシアネート基の一部が加水分解を受けてアミノ基となり、そのアミノ基とイソシアネート基とが反応して尿素結合を生成してポリマー化するものであり、多孔性ポリウレアである。このような多孔性樹脂とその孔に保持されたアルミ二ウムキレート剤とからなるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、硬化のために加熱されると、明確な理由は不明であるが、保持されているアルミニウムキレート剤が、潜在性硬化剤と併存している式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物や熱硬化型樹脂と接触できるようになり、硬化反応を進行させることができる。
【0026】
なお、多官能イソシアネート化合物を界面重合させる際に、ジビニルベンゼン等のラジカル重合性モノマーとラジカル重合開始剤とを共存させて共重合させ、マイクロカプセル壁の機械的性質を改善してもよい。これにより、エポキシ樹脂の硬化時の熱応答速度を増大させることができる。
【0027】
なお、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の構造上、その表面にもアルミニウムキレート剤が存在することになると思われるが、界面重合の際に系内に存在する水により不活性化し、アルミニウムキレート剤は多孔性樹脂の内部で保持されたものだけが活性を保持していることになり、結果的に得られる硬化剤は潜在性を獲得できたものと考えられる。
【0028】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、アルミニウムキレート剤と多官能イソシアネート化合物とを揮発性有機溶剤に溶解させ、得られた溶液を、分散剤を含有する水相に投入し、加熱撹拌することにより界面重合させることを特徴とする製造方法により製造することができる。
【0029】
この製造方法においては、まず、アルミニウムキレート剤と多官能イソシアネート化合物とを揮発性有機溶剤に溶解させ、界面重合における油相となる溶液を調製する。ここで、揮発性有機溶剤を使用する理由は以下の通りである。即ち、通常の界面重合怯で使用するような沸点が300℃を超える高沸点浴剤を用いた場合、界面重合の間に有機溶剤が揮発しないために、イソシアネート―水との接触確率が増大せず、それらの間での界面重合の進行度合いが不十分となるからである。そのため、界面重合させても良好な保形性の重合物が得られ難く、また、得られた場合でも重合物に高沸点溶剤が取り込まれたままとなり、磁性シート組成物に配合した場合に、高沸点溶剤が磁性シート組成物の硬化物の物性に悪影響を与えるからである。このため、この製造方法においては、油相を調製する際に使用する有機溶剤として、揮発性のものを使用する。
【0030】
このような揮発性有機溶剤としては、アルミニウムキレート剤と多官能イソシアネート化合物との良溶媒(それぞれの溶解度が好ましくは0.1g/ml(有機溶剤)以上)であって、水に対しては実質的に溶解せず(水の溶解度が0.5g/ml(有機溶剤)以下)、大気圧下での沸点が100℃以下のものが好ましい。このような揮発性有機溶剤の具体例としては、アルコール類、酢酸エステル類、ケトン類等が挙げられる。中でも、高極性、低沸点、貧水溶性の点で、酢酸エチルが好ましい。
【0031】
揮発性有機溶剤の使用量は、アルミニウムキレート剤と多官能イソシアネート化合物の合計量100質量部に対し、少なすぎると潜在性が低下し、多すぎると熱応答性が低下するので、100質量部〜500質量部であることが好ましい。
【0032】
なお、揮発性有機溶剤の使用量範囲内において、揮発性有機溶剤の使用量を比較的多く使用すること等により、油相となる溶液の粘度を下げることができるが、粘度を下げると撹拌効率が向上するため、反応系における油相滴をより微細化かつ均一化することが可能になり、結果的に得られる潜在性硬化剤粒子径をサプミクロン〜数ミクロン程度の大きさに制御しつつ、粒度分布を単分散とすることが可能となる。油相となる溶液の粘度は1mPa・s〜25mPa・sに設定することが好ましい。
【0033】
また、多官能イソシアネート化合物を乳化分散する際にPVAを用いた場合、PVAの水酸基と多官能イソシアネート化合物が反応してしまうため、副生成物が異物として潜在性硬化剤粒子の周囲を付着してしまったり、および粒子形状そのものが異形化してしまったりする。この現象を防ぐためには、多官能イソシアネート化合物と水との反応性を促進すること、あるいは多官能イソシアネート化合物とPVAとの反応性を抑制することが挙げられる。
【0034】
多官能イソシアネート化合物と水との反応性を促進するためには、アルミニウムキレート剤の配合量を多官能イソシアネート化合物の重量で好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下とする。これにより、多官能イソシアネート化合物と水とが接触する確率が高くなり、PVAが油相滴表面に接触する前に多官能イソシアネート化合物と水とが反応し易くなる。
【0035】
また、多官能イソシアネート化合物とPVAとの反応性を抑制するためには、油相中のアルミニウムキレート剤の配合量を増大させることが挙げられる。具体的には、アルミニウムキレート剤の配合量を多官能イソシアネート化合物の重量で好ましくは等倍以上、より好ましくは、1.0倍〜2.0倍とする。これにより、油相滴表面におけるイソシアネート濃度が低下する。さらに、多官能イソシアネート化合物は、水酸基よりも加水分解により形成されるアミンとの反応(界面重合)速度が大きいため、多官能イソシアネート化合物とPVAとの反応確率を低下させることができる。
【0036】
アルミニウムキレート剤と多官能イソシアネート化合物とを揮発性有機溶剤に溶解させる際には、大気圧下、室温で混合撹拌するだけでもよいが、必要に応じ、加熱してもよい。
【0037】
次に、この製造方法においては、アルミニウムキレート剤と多官能イソシアネート化合
物が揮発性有機溶剤に溶解した油相溶液を、分散剤を含有する水相に投入し、加熱撹拌す
ることにより界面重合させる。ここで、分散剤としては、ポリビニルアルコール、カルボ
キシメチルセルロース、ゼラチン等の通常の界面重合法において使用されるものを使用す
ることができる。分散剤の使用量は、通常、水相の0.1質量%〜10.0質量%である。
【0038】
油相溶液の水相に対する配合量は、油相溶液が少なすぎると多分散化し、多すぎると微
細化により凝集が生ずるので、水相100質量部に対し、5質量部〜50質量部であることが好ましい。
【0039】
界面重合における乳化条件としては、油相の大きさが好ましくは0.5μm〜100μmとなるような撹拌条件(撹拌装置ホモジナイザー;撹拌速度8,000rpm以上)で、通常、大気圧下、温度30℃〜80℃、撹拌時間2時間〜12時間、加熱撹絆する条件を挙げることができる。
【0040】
界面重合終了後に、重合体微粒子を濾別し、自然乾燥することにより本発明で使用できるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を得ることができる。ここで、多官能イソシアネ一ト化合物の種類や使用量、アルミニウムキレート剤の種類や使用量、界面重合条件を変化させることにより、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の硬化特性をコントロールすることができる。例えば、重合温度を低くすると硬化温度を低下させることができ、反対に、重合温度を高くすると硬化温度を上昇させることができる。
【0041】
本発明の磁性シート組成物におけるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の含有量は、少なすぎると十分に硬化せず、多すぎるとその組成物の硬化物の樹脂特性(例えば、可撓性)が低下するので、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の含有量は、磁性シート組成物100質量部に対し、1質量部〜70質量部がであることが好ましく、1質量部〜50質量部であることがより好ましい。
【0042】
なお、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤が、多官能イソシアネート化合物を界面重合させて得た多孔性樹脂に、又は多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時にジビニルベンゼンをラジカル重合させて得た多孔性樹脂にアルミニウムキレート剤を保持してなるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤である場合、低温速硬化性の向上のために、後述する式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物を含浸させてもよい。含浸の方法としては、そのような多孔性樹脂に保持されたアルミニウムキレート系硬化剤からなるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を、有機溶媒(例えば、エタノール)中に分散させ、その分散液に式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物(例えば、トリフェニルシラノール)及び必要に応じてアルミニウムキレート系硬化剤(例えば、モノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)のイソプロパノール溶液)を投入し、室温〜50℃程度の温度で数時間〜一晩撹拌を続ける方法を挙げることができる。
【0043】
−シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物−
前記シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物は、トリアルコキシ基を有している従来のシランカップリング剤とは異なり、以下の式(A)の化学構造を有する。
【0044】
(化7)
(Ar)Si(OR) 式(A)
【0045】
式中、Rは水素原子及びメチル基のいずれかであり(nが複数である場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)、mは2又は3であり、但しmとnとの和は4である。従って、式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物は、1つ又は2つのOR(水酸基又はメトキシ基)を有する化合物となる。“Ar”は、置換されてもよいアリール基であるが、アリ一ル基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、フロオレニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基等が挙げられる。中でも、入手容易性、入手コストの観点からフェニル基が好ましい。m個のArは、いずれも同一でもよく異なっていてもよいが、入手容易性の点から同一であることが好ましい。
【0046】
これらのアリール基は、1〜3個の置換基を有することができ、例えば、クロロ、ブロモ等のハロゲン;トリフルオロメチル;ニトロ;スルホ;カルポキシル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル;ホルミル等の電子吸引基、メチル、エチル、プロピルなどのアルキル;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ;ヒドロキシ;アミノ;モノメチルアミノ等のモノアルキルアミノ;ジメチルアミノ等のジアルキルアミノ等の電子供与基などが挙げられる。なお、置換基として電子吸引基を使用することによりシラノールの水酸基の酸度を上げることができ、逆に、電子供与基を使用することにより酸度を下げることができるので、硬化活性のコントロールが可能となる。ここで、m個のAr毎に、置換基が異なっていてもよいが、m個のArについて入手容易性の点から置換基は同一であることが好ましい。また、一部のArだけに置換基があり、他のArに置換基が無くてもよい。
【0047】
式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物の中でも、トリフェニルシラノール、ジフェニルシラノール、ジフェニルジメトキシシランが好ましく、トリフェニルシラノールがより好ましい。
【0048】
本発明の磁性シート組成物において、シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物とエポキシ樹脂との合計に対する当該シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物の含有割合は、少なすぎると硬化不足となり、多すぎると樹脂特性(可撓性等)が低下するので、5質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。
【0049】
また、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の合計量106.1質量部に対し、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤及びシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物の合計量が2質量部〜15質量部であることが好ましく、6.9質量部〜15質量部であることがより好ましい。
さらに、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤とシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物との質量比(アルミニウムキレート系潜在性硬化剤/シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物)が、1.0以下であることが好ましい。
【0050】
−エポキシ樹脂−
前記エポキシ樹脂は、成膜成分として使用されているものである。このようなエポキシ樹脂としては、液状でも固体状でもよく、エポキシ当量が通常100〜4,000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エステル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、樹脂特性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく使用できる。また、これらのエポキシ樹脂にはモノマーやオリゴマーも含まれる。
【0051】
−アクリル樹脂−
前記アクリル樹脂は、エポキシ基を有しているのが好ましい。この場合、該エポキシ基と前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤とが反応することにより、信頼性が向上する。また、前記アクリル樹脂は、更に水酸基を有しているのが好ましい。該水酸基を有することにより、接着性を向上させることができる。
前記アクリル樹脂の重量平均分子量としては、塗布性に優れる点で、10,000〜850,000が好ましい。
前記重量平均分子量が、10,000未満であると、前記磁性シート組成物の粘度が小さくなり、重量の大きな磁性粉を塗布するのが困難となることがあり、850,000を超えると、前記磁性シート組成物の粘度が大きくなり、塗布し難くなることがある。
また、前記アクリル樹脂のガラス転移温度としては、信頼性の点で、−5℃〜+15℃が好ましい。
前記ガラス転移温度が、−5℃未満であると、高温あるいは高温高湿環境下での信頼性が悪くなることがあり、+15℃を超えると、前記磁性シートが硬くなる傾向がある。
【0052】
本発明の磁性シート組成物は、樹脂成分として、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の他に、発熱ピークをシャープにするために、オキセタン化合物を併用することもできる。オキセタン化合物としては、3―エチル―3―ヒドロキシメチルオキセタン、1,4―ビス{[(3―エチル―3―オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4´―ビス[(3―エチル―3―オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4―ベンゼンジカルボン酸ビス[(3―エチル―3―オキセタニル)]メチルエステル、3―エチル―3―(フェノキシメチル)オキセタン、3―エチル―3―(2―エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ジ[1―エチル(3―オキセタニル)]メチルエーテル、3―エチル―3―{[3―(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン等が好ましい。オキセタン化合物を使用する場合、その使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、10質量部〜100質量部が好ましく、20質量部〜70質量部がより好ましい。
【0053】
−磁性粉−
前記磁性粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、その形状としては、例えば、扁平形状、塊状、繊維状、球状、不定形状などが挙げられる。これらの中でも、前記磁性粉を所定の方向に容易に配向させることができ、高透磁率化を図ることができる点で、扁平形状が好ましい。
前記磁性粉としては、例えば、軟磁性金属、フェライト、純鉄粒子などが挙げられる。
前記軟磁性金属としては、例えば、磁性ステンレス(Fe−Cr−Al−Si合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素銅(Fe−Cu−Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金、Fe−Ni−Cr−Si合金、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al−Ni−Cr合金などが挙げられる。
前記フェライトとしては、例えば、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Mnフェライト、Cu−Znフェライト、Cu−Mg−Znフェライト等のソフトフェライト、永久磁石材料であるハードフェライトなどが挙げられる。
前記磁性粉は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記磁性粉の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の合計量106.1質量部に対して、前記磁性粉が、500質量部〜1,250質量部であるのが好ましい。なお、磁性シート中に含まれる磁性粉は60wt%〜95wt%であることが好ましい。
【0055】
前記磁性粉の含有量が、前記エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の合計量106.1質量部に対して、500質量部未満であると、優れた磁気特性が得られないことがあり、前記エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の合計量106.1質量部に対して、1,250質量部を超えると、前記磁性粉を前記エポキシ樹脂及びアクリル樹脂で繋ぎとめておくのが困難となり、高温高湿環境下にて、前記磁性シートの厚み変化が大きくなったり、脆くなり、前記磁性シートの端面だけでなく表面からも前記磁性粉が落ちる(粉落ちする)ことがある。
【0056】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、公知の各種添加剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、前記磁性シート組成物の塗布性の向上(粘度の調整)を目的とした場合には、溶剤を添加することができ、該溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチルグリコールアセテート等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロフォルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。その他、必要に応じて、分散剤、安定剤、潤滑剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリカ、マイカなどの充填剤、可塑剤、老化防止剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤等、各種添加剤を添加してもよい。
【0057】
−−難燃剤−−
前記難燃剤を添加することにより、前記磁性シートの難燃性を向上させることができる。
前記難燃剤として、例えば、カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートが挙げられる。
従来の難燃剤としては、ハロゲン系化合物が主に用いられているが、燃焼すると有害物質を生成し、環境への負荷が大きいという問題がある。また、ハロゲンフリーの難燃剤としては、例えば、何ら表面処理がされていないメラミンシアヌレートが知られているが、該メラミンシアヌレートは、樹脂成分との親和性が悪く、樹脂成分中に分散し難いため、硬い磁性シートを得ることを意図する場合において、成形(プレス)直後の磁性シートの機械的強度を低下させる(軟化する)という問題がある。また、機械的強度が大幅に低下してしまうため、前記メラミンシアヌレートの添加量を増大させることは困難であり、充分な難燃性を得ることができない。更に、磁性シートの表面から、磁性粉が脱落する所謂「粉落ち」が生じ易い。
【0058】
ここで、前記メラミンシアヌレートは、メラミン・イソシアヌレート酸付加物であり、メラミンと、イソシアヌレートとが、下記反応式に示すように、付加反応を繰り返すことにより、オリゴマー付加物として形成されたものである。
【0059】
【化8】

【0060】
前記メラミンシアヌレートは、メラミン骨格による剛直性を有し、また、前記付加反応により、水酸基(OH)が発生するため、該水酸基による極性を有することにより、難燃性を発現すると考えられる。しかし、前記水酸基は、分子間で水素結合を形成することが多く、この水酸基による水素結合が、イソシアヌレートの凝集の発生の原因となると推認される。従って、この水素結合を、遮断すること、即ち、一部の水酸基が保護されたメラミンシアヌレートを用いることにより、凝集の発生を抑制し、樹脂成分中への分散性が改善されると考えられる。
そこで、前記難燃剤として、カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレート(脂肪酸を用いて表面処理されたメラミンシアヌレート)を用いたところ、メラミンシアヌレート(表面処理されていないもの)に比して、より高い難燃性が発現され、また、磁性シート表面からの粉落ちが生じ難く、しかも、樹脂成分として、例えば、アクリルゴムを用いた場合に、プレス時の樹脂成分の硬化を促進させ、高温高湿環境下での厚み変化が抑制された表面平滑性が良好な磁性シートが得られることが判った。
【0061】
−−−カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレート−−−
前記カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートにおける、該カルボン酸アミドの存在は、例えば、熱分解ガスクロマトグラフィー(Py−GC−MS)を用いて確認することができる。
【0062】
前記カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートの個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以下が好ましい。
前記個数平均粒径が、1μmを超えると、前記磁性粉が密に配向するのを阻害し、磁性シートの磁気特性を低下させることがあり、高温あるいは高温高湿環境下での厚み変化が大きくなることがある。
前記個数平均粒径は、例えば、レーザー回折を用いて測定した粒度分布より測定することができる。
【0063】
前記カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートは、市販品であってもよいし、適宜作製したものであってもよい。
前記市販品としては、例えば、MC−5F(堺化学工業製)などが挙げられる。
前記カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートの作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、脂肪酸を用いてメラミンシアヌレートを表面処理する方法が好適に挙げられる。
【0064】
前記表面処理の方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記メラミンシアヌレートと前記脂肪酸とを混合攪拌する方法が挙げられる。
なお、前記脂肪酸を用いて前記メラミンシアヌレートを表面処理すると、下記式(1)に示すように、前記メラミンシアヌレート中のアミノ基と、前記脂肪酸とが反応して、アミド化合物に変換されると考えられる。このため、前記熱分解ガスクロマトグラフィー(Py−GC−MS)を用いて分析すると、前記カルボン酸アミドの存在を確認することができる。
−NH+R−COOH→R−CONH−・・・式(1)
【0065】
前記脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、疎水性が高く、分散性が良好な点で、ラウリン酸が好ましい。
【0066】
前記カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートの含有量としては、、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の合計量106.1質量部に対して35質量部〜150質量部である。
【0067】
−−−赤リン−−−
前記難燃剤は、前記カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートに加えて、更に赤リンを含んでいるのが好ましい。この場合、前記磁性シートの難燃性を、更に向上させることができる点で、有利である。
前記赤リンとしては、特に制限はなく、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよいが、耐湿性に優れ、混合時に自然発火せず、安全性が良好である点で、その表面が、コーティングされているのが好ましい。
前記表面がコーティングされた赤リンとしては、例えば、赤リンの表面を、水酸化アルミニウムを用いて表面処理したものが挙げられる。
【0068】
前記赤リンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の合計量106.1質量部に対して6質量部〜20質量部であるのが好ましい。
前記含有量が、6質量部未満であると、難燃性向上効果が得られないことがあり、20質量部を超えると、前記樹脂成分に対する前記磁性粉と前記難燃剤との合計量が大きくなり、前記樹脂成分により前記磁性粉及び前記難燃剤を繋ぎとめておくのが困難となるほか、前記磁性シート中の前記磁性粉の含有比率が低下し、透磁率が低下することがある。
【0069】
−−シランカップリング剤−−
前記シランカップリング剤は、特開2002―212537号公報の段落0007〜0010に記載されているように、アルミニウムキレート剤と共働して熱硬化性樹脂(例えば、熱硬化性エポキシ樹脂)のカチオン重合を開始させる機能を有する。従って、このような、シランカップリング剤を少量併用することにより、エポキシ樹脂の硬化を促進するという効果が得られる。このようなシランカップリング剤としては、分子中に1〜3の低級アルコキシ基を有するものであり、分子中に熱硬化性樹脂の官能基に対して反応性を有する基、例えば、ビニル基、スチリル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等を有していてもよい。なお、アミノ基やメルカプト基を有するカップリング剤は、本発明の潜在性硬化剤がカチオン型硬化剤であるため、アミノ基やメルカプト基が発生カチオン種を実質的に捕捉しない場合に使用することができる。
【0070】
このようなシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリス(β―メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ―スチリルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N―β―(アミノエチル)―γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―β―(アミノエチル)―γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N―フェニル―γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0071】
シランカップリング剤を少量併用する場合、その含有量は、少なすぎると添加効果が望めず、多すぎるとシランカップリング剤から発生するシラノレートアニオンによる重合停止反応の影響が生じてくるので、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤100質量部に対し1質量部〜300質量部、好ましくは1質量部〜100質量部である。
【0072】
本発明の磁性シート組成物は、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤、式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、磁性粉、更に必要に応じて添加剤を常怯に従って均一に混合撹拌することにより製造することができる。また、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物とを別々に混合せずに、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤に式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物を含浸させておいたものを使用してもよい。含浸の方法としては、式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物のアルコール(エタノール、プロパノール等)溶液に、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤を数時間程度分散混合する方法が挙げられる。混合後は、液中から引き上げ乾燥すればよい。
【0073】
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤、前記シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物、前記エポキシ樹脂、前記アクリル樹脂、及び前記磁性粉の含有量に応じて適宜決定することができる。
【0074】
このようにして得られた本発明の磁性シート組成物は、硬化剤としてアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を使用しているので、一剤型であるにも関わらず、保存安定性に優れている。また、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤で十分に硬化させることができなかったエポキシ樹脂を含有しているにも関わらず、高立体障害性の特定のシラノールを含有しているので、磁性シート組成物を低温速硬化でカチオン重合させることができる(シラノールは非常に不安定な物質であり、トリメチルシラノール等は空気中の水分で簡単にカップリングし、硬化活性が失活するが、嵩高いフェニル基が存在しているので、シラノレートアニオンのエポキシへの付加反応を抑制することで、副反応の進行を抑えられカップリング反応を回避できる)。
また、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、磁性粉(例えば、アルミニウム合金)との配合時における混合性がよく、塗布を良好に行うことができる。
【0075】
(磁性シート)
【0076】
本発明の磁性シートは、本発明の磁性シート組成物からなる磁性層を有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の層を有してなる。
【0077】
−磁性層−
前記磁性層は、電子機器から放出される不要電磁波の低減、及び電子機器内の不要電磁波の干渉によって生じる、電磁障害を抑制する機能を有する。
【0078】
前記磁性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高い透磁率が得られる点で、厚いのが好ましく、25μm〜500μmが好ましい。
前記厚みが、25μm未満であると、透磁率が低くなり、500μmを超えると、狭小部位に適さず、近年における電子機器の小型化の技術動向に沿わなくなるほか、前記厚みの透磁率への影響が小さくなってしまうことがある。なお、前記厚みは、70μm以下になると、透磁率が急激に低くなる傾向がある。
【0079】
−その他の層−
前記その他の層としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凹凸形成層等が挙げられる。
【0080】
−−凹凸形成層−−
前記凹凸形成層は、本発明の前記磁性シートの使用時に、例えば、電子機器内にて、前記磁性シートを、これと接触する部材から剥離する機能を有する。
【0081】
前記凹凸形成層としては、その構造、厚み、材質(材料)については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記厚みとしては、2μm〜100μmが好ましい。
前記厚みが、2μm未満であると、作業性が悪くなることがあり、100μmを超えると、加熱プレス時に、熱が前記磁性層に伝わり難く、信頼性が低下することがある。
前記材質としては、合成樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好適に挙げられる。
【0082】
前記凹凸形成層は、市販品であってもよいし、適宜作製したものであってもよいが、前記市販品としては、例えば、マット処理PET(「ルミラーX44−#25」;東レ(株)製)、マット処理PET(「ルミラー44−#38」;東レ(株)製)、剥離処理されていないPET(「エンブレッド」;ユニチカ(株)製)、ノンシリコーン剥離処理PET(「「フルオロージュRL」;三菱樹脂製)、シリコーン剥離処理PET(「25GS」;リンテック(株)製)などが挙げられる。前記凹凸形成層には文字が印刷されたものを用いてもよい。文字の印刷面は前記磁性層と接する面でもよいし、前記磁性層と接しない面(反対の面)でもよい。
【0083】
−使用−
本発明の前記磁性シートの使用方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記磁性シートを、所望の大きさに裁断し、これを電子機器のノイズ源に、前記磁性層側が近接するように配設することができる。
【0084】
−用途−
本発明の前記磁性シートは、電磁ノイズ抑制体、電波吸収体、磁気シールド材、RFID(Radio Frequency Identification)等のICタグ機能を有する電子機器、非接触ICカードなどに好適に使用することができ、特に、RFID機能付携帯電話に好適に使用することができる。
【0085】
本発明の磁性シートは、低温短時間プレスにより製造することができ、タクトタイムの短縮が図れる。また、従来のカチオン硬化剤には、スルホニウム塩が用いられ、硬化後、スルホニウム塩特有の匂いがあったが、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は無臭であり、磁性シート製造時の作業環境が向上したと共に、臭気に敏感な部位(例えば、車載用途等)にも使用することができる。
【0086】
本発明の前記磁性シートは、従来の磁性シートと異なり、粘着層を有していなくてもよい。粘着層を有さないと、電子機器内での高温での使用の際に生じる、粘着剤の漏れによる前記電子機器の故障の発生を防止することができる。また、従来の磁性シートに比して、前記粘着層の厚みの分だけ、磁性層の厚みを大きく設けることができるため、比重が大きく、透磁率が高い。
【0087】
本発明の前記磁性シートの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の本発明の磁性シートの製造方法により好適に製造することができる。
【0088】
(磁性シートの製造方法)
本発明の磁性シートの製造方法は、磁性層形成工程と、形状転写工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0089】
<磁性層形成工程>
前記磁性層形成工程は、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、下記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物と、エポキシ樹脂と、アクリル樹脂と、磁性粉とを少なくとも含有してなる磁性シート組成物を、成形して磁性層を形成する工程である。
(化9)
(Ar)Si(OR) 式(A)
(式中、mは2及び3のいずれかであり、mとnとの和は4である。Arは置換されてもよいアリール基であり、Rは水素原子及びメチル基のいずれかである。nが複数である場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
なお、前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤、前記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物、前記エポキシ樹脂、前記アクリル樹脂、前記磁性粉及び前記その他の成分の詳細については、上述した通りであるが、前記エポキシ樹脂及び前記アクリル樹脂としては、後述する加熱プレス前は、未硬化状態であるのが好ましい。ここで、加熱プレス前に硬化が進んでいると、前記磁性層の圧縮が充分に行われず、透磁率を大きくすることができない。また、硬化している磁性層を圧縮すると、歪が残り、室温、高温乃至高温高湿環境下にて、繰返し暴露された際に、厚みが厚くなる方向に変化したり、磁気特性が低下したりする。これに対し、前記加熱プレス前の前記エポキシ樹脂及び前記アクリル樹脂が未硬化状態であると、これらの不具合の発生が抑制される。
【0090】
前記磁性シート組成物の調製は、前記エポキシ樹脂及び前記アクリル樹脂に前記磁性粉、前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤、前記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物を添加し、混合することにより行うことができる。
前記磁性シート組成物の成形は、例えば、基材上に前記磁性シート組成物を塗布し、乾燥することにより行うことができる。
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、形成した前記磁性層を容易に剥離可能な点で、剥離処理が施されたポリエステルフィルム(剥離PET)などが好適に挙げられる。
また、前記基材としては、マットPET、剥離処理されていないPET、ノンシリコーン剥離処理PET(磁性層が形成される面が剥離処理されていない)、シリコーン剥離処理PET(磁性層が形成される面が剥離処理されていない)を用いてもよい。
以上の工程により、前記磁性シート組成物が成形されて前記磁性層が形成される。
【0091】
<形状転写工程>
前記形状転写工程は、前記磁性層の厚み方向における一方の面に、凹凸形成層及び転写材を、前記磁性層側からこの順に積層配置した後、加熱プレスすることにより、前記転写材の表面形状を、前記凹凸形成層及び前記磁性層の表面に転写すると共に、前記凹凸形成層と前記磁性層とを接合する工程である。
【0092】
−凹凸形成層−
前記凹凸形成層としては、その構造、厚み、材質(材料)については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、これらの詳細については、上述した通りである。
【0093】
前記凹凸形成層の表面状態としては、特に制限はなく、その厚み方向における一方の面に、表面処理が施されていてもよいし、何ら表面処理が施されていなくてもよいが、マット処理、シリコーン樹脂を用いない剥離処理、などが施されているのが好ましい。これらの場合、何ら表面処理が施されていないものに比して、滑り性が向上する。また、これらの表面処理の場合、前記シリコーン樹脂を用いないので、高温乃至高温高湿環境下にて、シリコーンオリゴマーがブリードアウトすることがなく、電子機器内部での使用に好適である。
前記マット処理としては、前記凹凸形成層の表面を粗面化することができる限り特に制限はなく、目的に応じて選択することができ、例えば、サンドマット処理、ケミカルマット処理、表面エンボス加工処理などが挙げられる。これらの処理により、前記凹凸形成層の表面に凹凸が形成され、滑り性を向上する。
【0094】
−転写材−
前記転写材としては、その構造、厚み、材質(材料)については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表面に凹凸を有しており、通気性が良好であるのが好ましい。この場合、前記転写材の表面の凹凸が、前記凹凸形成層に転写されると、該凹凸形成層の表面に前記凹凸が形成され、滑り性が向上する。
【0095】
前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記厚みとしては、25μm〜200μmが好ましい。
前記厚みが、25μm未満であると、滑り性が向上した磁性シートを得ることができないことがあり、200μmを超えると、前記加熱プレス時に、熱が前記磁性層に伝わり難く、信頼性が低下することがある。
前記材質としては、例えば、紙、合成繊維、天然繊維などが挙げられる。
【0096】
前記転写材は、市販品であってもよいし、適宜作製したものであってもよいが、前記市販品としては、例えば、上質紙(「OKプリンス上質70」;王子製紙(株)製)、クッション紙(「TF190」;東洋ファイバー(株)製)、ナイロンメッシュ(「N−NO.110S」;東京スクリーン(株)製)、綿布(「かなきん3号」;日本規格協会製)、粘着材用原紙(「SO原紙18G」;大福製紙(株)製)、両面剥離紙(「100GVW(高平滑面)」;王子製紙(株)製)、両面剥離紙(「100GVW(低平滑面)」;王子製紙(株)製)、などが挙げられる。
【0097】
−積層配置−
前記積層配置の方法としては、前記磁性層の厚み方向における一方の面に、前記凹凸形成層及び前記転写材を、前記磁性層側からこの順に積層する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記磁性層の厚み方向における他方の面に、剥離層及び前記転写材を、前記磁性層側からこの順に更に積層するのが好ましい。前記剥離層を介することにより、後述する加熱プレスの際に、前記磁性層の他方の面を保護して、前記転写材との密着を防止し、前記加熱プレス後に、前記転写材を、前記剥離層と共に前記磁性層から容易に剥離することができる。また、前記転写材の表面形状が、前記剥離層側に位置する前記磁性層の表面にも転写されるが、このとき、前記磁性層における前記樹脂組成物中に存在する気泡が抜け易く、得られる磁性シートの信頼性が向上する。前記剥離層側の転写材を用いない場合は、磁性シートの透磁率を向上させることができる。
【0098】
前記剥離層としては、前記加熱プレスの際に、前記磁性層の厚み方向における他方の面と、前記転写材との密着を防止する機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記加熱プレス後に、前記磁性層から容易に剥離することができる点で、表面に剥離処理が施されたポリエステルフィルム(剥離PET)が好ましい。
【0099】
−加熱プレス−
前記加熱プレスの方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図1に示すように、前記磁性層、前記凹凸形成層及び前記転写材を積層体として、これらを両側からラミネーターやプレスで挟みこんで加熱及び加圧することにより行うことができる。
前記加熱プレスにより、前記凹凸形成層及び前記磁性層の表面に、前記転写材の表面形状(凹凸形状)が転写されると共に、粘着剤等を使用しなくても、前記凹凸形成層と前記磁性層とが、直接接合される。
【0100】
前記加熱プレスの条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、プレス温度としては、例えば、80℃〜190℃が好ましく、プレス圧力としては、例えば、5MPa〜20MPaが好ましく、プレス保持時間としては、例えば、1分間〜20分間が好ましい。
【0101】
以上の工程により、前記転写材の表面形状が、前記凹凸形成層及び前記磁性層の表面に転写されると共に、前記凹凸形成層と前記磁性層とが接合される。その結果、前記磁性層と前記凹凸形成層とを有してなる磁性シートが得られる。
このようにして得られた磁性シートは、前記凹凸形成層の表面に、前記転写材の表面形状(表面の凹凸)が転写されて、粗面化されているので、滑り性に優れる。
【0102】
本発明の前記磁性シートの製造方法によると、前記加熱プレスにより前記転写材の表面形状が、前記凹凸形成層及び前記磁性層の表面に転写されるので、前記凹凸形成層の表面が粗面化されて、滑り性を向上させることができる。
また、前記加熱プレスにより、前記凹凸形成層と前記磁性層とが直接接合されるので、粘着層が不要であり、簡易かつ低コストで効率よく磁性シートを製造することができる。
【0103】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
(実施例1)
−アルミニウムキレート系潜在性硬化剤(1)の作製−
蒸留水800質量部と、界面活性剤(ニューレックスR−T、日本油脂(株))0.05質量部と、分散剤としてポリビニルアルコール(PVA−205、(株)クラレ)4質量部とを、温度計を備えた3リットルの界面重合容器に入れ、均一に混合した。この混合液に、更に、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24%イソプロパノール溶液(アルミキレートD、川研ファインケミカル(株))100質量部と、メチレンジフェニル−4,4´−ジイソシアネート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物(D−109、三井武田ケミカル(株))70質量部と、ジビニルベンゼン(メルク社)30質量部と、ラジカル重合開始剤(パーロイルL、日本油脂社)0.30質量部とを、酢酸エチル100質量部に溶解した抽相溶液を投入し、ホモジナイザー(10,000rpm/5分)で乳化混合後、80℃で6時間界面重合させた。
【0105】
反応終了後、重合反応液を室温まで放冷し、界面重合粒子を濾過により濾別し、自然乾燥することにより粒径2μm程度の球状のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤(1)を100質量部得た。
【0106】
−磁性シートの作製−
まず、溶剤としてのトルエン270質量部及び酢酸エチル120質量部に、アクリル樹脂(「SG80H−3」;ナガセケムテックス(株)製、数平均分子量150,000、重量平均分子量350,000)83質量部、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(「エピコート1031S」;ジャパンエポキシレジン(株)製)23.1質量部、作製されたアルミニウムキレート系潜在性硬化剤(1)6.21質量部、シラノール化合物としてのトリフェニルシラノール(TPS)(東京化成工業(株)製)0.69質量部を溶解させて樹脂組成物を調製した。これに、前記磁性粉としての扁平磁性粉末(「JEM−S」;三菱マテリアル(株)製)550質量部を添加し、これらを混合して磁性シート組成物を調製した。
【0107】
次に、得られた磁性シート組成物を、前記基材(凹凸形成層)としての、剥離処理が表面に施されたポリエステルフィルム(剥離PET)(「38GS」;リンテック製、厚み38μm)上に、バーコーターにより、厚みが100μm〜200μmとなるように塗布した(剥離処理されている面に磁性シート組成物を塗布した)。
次いで、室温で10分間乾燥させ、さらに60℃で10分間乾燥し、剥離処理されている面に磁性シート組成物からなる層(磁性層)が形成された剥離PETを250mm×250mmに裁断し、剥離処理されている面に250mm×250mmの磁性層が形成された剥離PETを3枚得た。
次に、得られた磁性シート組成物を、前記基材(凹凸形成層)としての、剥離処理が表面に施されたポリエステルフィルム(剥離PET)(「38GS」;リンテック製、厚み38μm)上に、バーコーターにより、厚みが100μm〜200μmとなるように塗布した(剥離処理されていない面に磁性シート組成物を塗布した)。
次いで、室温で10分間乾燥させ、さらに60℃で10分間乾燥し、剥離処理されていない面に磁性シート組成物からなる層(磁性層)が形成された剥離PETを250mm×250mmに裁断し、剥離処理されていない面に250mm×250mmの磁性層が形成された剥離PETを1枚得た。
次に、剥離処理されている面に250mm×250mmの磁性層が形成された剥離PET2枚について、剥離PETを磁性層から剥離して、250mm×250mmの磁性層を2枚得た。次に、剥離処理されている面に250mm×250mmの磁性層が形成された剥離PETの磁性層側に、250mm×250mmに裁断された磁性層を2枚重ねて、更に、剥離処理されていない面に250mm×250mmの磁性層が形成された剥離PETを1枚重ね(磁性層と磁性層が向き合うように)、両面を剥離PETで挟持され、且つ磁性層が4枚積層された剥離PETを得た。
次いで、4枚積層された磁性層を挟持するように配置された剥離PETの両面に、それぞれ前記緩衝材として、上質紙(「OKプリンス上質70」;王子製紙(株)製、厚み100μm、ベック平滑度6.2秒/mL)を積層した。そして、真空プレス(北川精機(株)製)を用いて、プレス保持温度170℃、プレス保持時間(プレス保持温度で保持した時間)5分間、プレス時間(90℃からプレス保持温度まで到達した後90℃まで下がってくるまでの時間)38分間、プレス圧力9MPaの条件で、前記緩衝材を介してプレス板により加熱プレスし、剥離PET(剥離処理されている面に磁性層が形成される剥離PET)1枚を4枚積層された磁性層から剥離して、磁性シートを得た。
【0108】
(実施例2〜24)
−磁性シートの作製−
実施例1において、前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤(1)の配合量、前記トリフェニルシラノール(TPS)の配合量、前記プレス保持温度、前記プレス保持時間、及び前記プレス時間の少なくともいずれかを、表1〜4に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、磁性シートを作製した。
【0109】
(実施例25)
−磁性シートの作製−
実施例17において、前記シラノール化合物としてのトリフェニルシラノール(TPS)(東京化成工業(株)製)を、前記アルコキシシラン化合物としてのジフェニルジメトキシシラン(KBM−202SS)(信越化学工業(株)製)に代えた以外は、実施例17と同様にして、磁性シートを作製した。
【0110】
(実施例26)
−磁性シートの作製−
実施例17において、前記シラノール化合物としてのトリフェニルシラノール(TPS)(東京化成工業(株)製)を、ジフェニルシランジオール(DPSD)(東京化成工業(株)製)に代えた以外は、実施例17と同様にして、磁性シートを作製した。
【0111】
(実施例27〜31)
−磁性シートの作製−
実施例17において、前記磁性粉としての扁平磁性粉末(「JEM−S」;三菱マテリアル(株)製)を扁平磁性粉末(「EMS10」;三菱マテリアル(株)製)に代え、さらに、その扁平磁性粉末(「EMS10」;三菱マテリアル(株)製)の配合量を表5に示すように変えた以外は、実施例17と同様にして、磁性シートを作製した。
【0112】
(実施例32)
−磁性シートの作製−
実施例1において、前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤(1)の配合量、前記トリフェニルシラノール(TPS)の配合量を、表9に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、磁性シートを作製した。
【0113】
(実施例33)
−磁性シートの作製−
実施例27において、赤燐及びカルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートを、表9に示す量添加した以外は、実施例27と同様にして、磁性シートを作製した。
【0114】
(実施例34)
−磁性シートの作製−
実施例33において、前記磁性粉としての扁平磁性粉末(「EMS10」;三菱マテリアル(株)製)を扁平磁性粉末(「JEM−S」;三菱マテリアル(株)製)に代え、さらに、その扁平磁性粉末(「JEM−S」;三菱マテリアル(株)製)の配合量を表9に示すように変えた以外は、実施例33と同様にして、磁性シートを作製した。
【0115】
(参考例1〜7)
−磁性シートの作製−
実施例1において、前記アルミニウムキレート系潜在性硬化剤(1)の配合量、前記トリフェニルシラノール(TPS)の配合量、前記プレス保持温度、前記プレス保持時間、及び前記プレス時間の少なくともいずれかを、表6に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、磁性シートを作製した。
【0116】
(比較例1)
−磁性シートの作製−
実施例10において、作製されたアルミニウムキレート系潜在性硬化剤(1)3.45質量部及びシラノール化合物としてのトリフェニルシラノール(TPS)(東京化成工業(株)製)3.45質量部を、スルホニウム系(アンチモン系)カチオン硬化剤(サンエイドSI−100L;三新化学工業(株)製)6.9質量部に代えた以外は、実施例10と同様にして、磁性シートを作製した。
【0117】
(比較例2)
−磁性シートの作製−
比較例1において、スルホニウム系(アンチモン系)カチオン硬化剤(サンエイドSI−100L;三新化学工業(株)製)を、スルホニウム系(アンチモン系)カチオン硬化剤(サンエイドSI−150;三新化学工業(株)製)に代えた以外は、比較例1と同様にして、磁性シートを作製した。
【0118】
(比較例3)
−磁性シートの作製−
比較例1において、スルホニウム系(アンチモン系)カチオン硬化剤(サンエイドSI−100L;三新化学工業(株)製)6.9質量部を、イミダゾール系硬化剤(「ノバキュアHX3748」;旭化成ケミカルズ(株)製)1.0質量部に代えた以外は、比較例1と同様にして、磁性シートを作製した。
【0119】
(比較例4〜8)
−磁性シートの作製−
比較例3において、イミダゾール系硬化剤(「ノバキュアHX3748」;旭化成ケミカルズ(株)製)の配合量、前記プレス保持温度、前記プレス保持時間、及び前記プレス時間の少なくともいずれかを、表7〜8に示すように変えた以外は、比較例3と同様にして、磁性シートを作製した。
【0120】
(比較例9)
−磁性シートの作製−
実施例17において、前記シラノール化合物としてのトリフェニルシラノール(TPS)(東京化成工業(株)製)を、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A187)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)に代えた以外は、実施例17と同様にして、磁性シートを作製した。
【0121】
(比較例10)
−磁性シートの作製−
実施例17において、前記シラノール化合物としてのトリフェニルシラノール(TPS)(東京化成工業(株)製)を、フェニルトリメトキシシラン(KBM−103)(信越化学工業(株)製)に代えた以外は、実施例17と同様にして、磁性シートを作製した。
【0122】
(比較例11)
−磁性シートの作製−
実施例1において、作製されたアルミニウムキレート系潜在性硬化剤(1)及びシラノール化合物としてのトリフェニルシラノール(TPS)(東京化成工業(株)製)を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、磁性シートを作製した。
【0123】
得られた磁性シートについて、下記の評価を行った。
〔透磁率〕
まず、外径7.05mm、内径2.945mmに抜き加工したリング状サンプル(磁性層サンプル)を作製し、これに導線を5ターン巻き、端子に半田付けした。ここで、前記端子の根元から前記リング状サンプル(磁性層サンプル)の下までの長さを20mmとした。そして、インピーダンスアナライザー(「4294A」;アジレントテクノロジー社製)を用いて、1MHzにおけるインダクタンスと抵抗値とを測定し、透磁率(磁性層の透磁率)に換算した。
なお、μ’は、複素透磁率の実数部を表す。
μ’の特性は、磁性シートの使用目的によって異なり、例えば、RFIDデバイスの通信改善の場合には、20MHz以下の周波数で、高μ’かつ低μ’’(複素透磁率の虚数部)であるのが好ましい。
なお、本発明の磁性シートは、KHz〜GHz帯において使用可能な磁性シートである。
【0124】
〔信頼性試験〕
−厚み変化−
まず、磁性シートにおける磁性層の厚み(PETを含まない厚み)を測定した。次いで、磁性シートをオーブンに入れ、85℃/60%の条件で96時間加熱し、オーブンから取り出した後の磁性シートにおける磁性層の厚み(PETを含まない厚み)を測定し、加熱前後の磁性シートにおける磁性層の厚み(PETを含まない厚み)変化率を測定した。
【0125】
〔不快臭〕
得られた磁性シートについて、不快臭の有無について判定した。
【0126】
〔腐食試験〕
実施例20及び比較例6から得られた磁性シートサンプル(PET付き)約0.2gを、それぞれ、50mLの水道水が入ったデスカップに投入し、これを85℃/85%に設定されたオーブンに30時間放置し、磁性シートサンプル(PET付き)を取り出して目視で評価した。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
【表4】

【0131】
【表5】

【0132】
【表6】

【0133】
【表7】

【0134】
【表8】

【0135】
【表9】

【0136】
表1〜表9の結果より、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤及び上記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物を用いて作製した実施例1〜31の磁性シートは、低温―速硬化性であり、臭気を発生させることなく、さらに、腐食が生じることないことが判った。
磁性シートの作製条件において、実施例17、25、26及び比較例9〜10の組合せについて注目したところ、上記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物を用いた実施例の信頼性試験における厚み変化率が、上記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物を用いていない比較例の厚み変化率よりも小さくなっていることから判る。
なお、イミダゾール系硬化剤(ノバキュア)を用いた比較例6では、低い信頼性試験前後の厚み変化(0.79%)が得られているが、腐食が発生するという問題があり、また、スルホニウム系(アンチモン系)カチオン硬化剤を用いた比較例1及び2では、低い信頼性試験前後の厚み変化(0.39%、0.80%)が得られているが、硬化後の磁性シートに不快臭が残るので、熱処理して不快臭を取り除く必要があるという問題がある。
また、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤(ノバキュア)を用いた場合、低い信頼性試験前後の厚み変化を得るためには、比較例6に示すように、プレス保持温度170℃、プレス保持時間10分間、プレス時間43分間が必要であるが、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤及び上記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物を用いた場合は、実施例24に示すように、プレス保持温度150℃、プレス保持時間5分間、プレス時間20分間のプレス条件であっても、低い信頼性試験前後の厚み変化を得ることができることが判った。
なお、参考例1〜7は、プレス温度が低く、プレス時間が短いため、硬化不良が起こり、信頼性試験が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の磁性シートは、例えば、電磁ノイズ抑制体、電波吸収体、磁気シールド材、RFID等のICタグ機能を有する電子機器、非接触ICカードなどに好適に使用することができ、特に、RFID機能付携帯電話に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0138】
10 磁性層
20 凹凸形成層
22 剥離層
30 転写材
40 積層体
50 プレス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、下記式(A)で表されるシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物と、エポキシ樹脂と、アクリル樹脂と、磁性粉とを含有することを特徴とする磁性シート組成物。
(化9)
(Ar)Si(OR) 式(A)
(式中、mは2及び3のいずれかであり、mとnとの和は4である。Arは置換されてもよいアリール基であり、Rは水素原子及びメチル基のいずれかである。nが複数である場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
Arが、フェニル基である請求項1に記載の磁性シート組成物。
【請求項3】
シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物が、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、及びジフェニルジメトキシシランのいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の磁性シート組成物。
【請求項4】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤が、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時にジビニルベンゼンをラジカル重合させて得た多孔性樹脂にアルミニウムキレート剤を保持してなるアルミニウム潜在性硬化剤である請求項1から3のいずれかに記載の磁性シート組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂及びアクリル樹脂の合計量106.1質量部に対し、磁性粉が500質量部〜1,250質量部であり、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤及びシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物の合計量が2質量部〜15質量部である請求項1から4のいずれかに記載の磁性シート組成物。
【請求項6】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤及びシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物の合計量が6.9質量部〜15質量部である請求項1から5のいずれかに記載の磁性シート組成物。
【請求項7】
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤とシラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物との質量比(アルミニウムキレート系潜在性硬化剤/シラノール化合物乃至アルコキシシラン化合物)が、1.0以下である請求項1から6のいずれかに記載の磁性シート組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の磁性シート組成物からなる磁性層を有することを特徴とする磁性シート。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の磁性シート組成物を、成形して磁性層を形成する磁性層形成工程と、
前記磁性層の厚み方向における少なくとも一方の面に、凹凸形成層及び転写材を、前記磁性層側からこの順に積層配置した後、加熱プレスすることにより、前記転写材の表面形状を、前記凹凸形成層及び前記磁性層の表面に転写すると共に、前記凹凸形成層と前記磁性層とを接合する形状転写工程と、
を含むことを特徴とする磁性シートの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−77405(P2010−77405A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189319(P2009−189319)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】