説明

磁性試料の観察方法、観察装置およびその観察用治具

【課題】着磁した永久磁石の磁区構造等を示す観察像が得られる磁性試料の観察方法を提供する。
【解決手段】本発明の磁性試料の観察方法は、磁化された磁性試料に放射光等の入射ビームを照射し、磁性試料から放出された放出電子を検出して、磁性試料の微細状況を示す観察像を形成する磁性試料の観察方法であって、磁性試料の磁化方向の両端が磁性試料の配置される雰囲気の透磁率よりも高い透磁率を有する連結具により磁気的に連結された状態で磁性試料が観察されることを特徴とする。この連結具により、磁性試料の両端には磁気閉回路が形成され、磁性試料からの漏洩磁場が抑制される。その結果、放出電子の軌跡が歪められることが少なくなり、磁性試料の磁区構造等を示す鮮明な観察像を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着磁等による磁化された磁性試料の放出電子を介した観察を可能とする磁性試料の観察方法、観察装置およびその観察用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料の観察域に励起光または電子線からなる入射ビームを照射し、その試料の表面から放出される放出電子を介して、物質表面近傍の性状または構造を観察、解析、分析等することが従来よりなされている。代表的な装置としては、電子顕微鏡の一種である走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:以下「SEM」という。)がある。また、試料にある一定以上のエネルギー(E=hν/:ν:限界振動数、h:プランク定数)をもつ光を照射したときに試料から電子が放出される(外部)光電効果を利用した観察装置もある。この照射される光として、例えば、超高速で直進する電子の進行方向を偏向電磁石などによって変えた際に発生する電磁波(放射光)などが利用される。特に、大きな輝度(明るさ)の放射光が得られる装置として、SPring−8などが著名である。
【0003】
このSPring−8を利用し、磁気円2色性(X-ray Magnetic Circular Dichroism )と光電子顕微鏡(PhotoEmission Electron Microscope)を組み合わせたXMCD−PEEM法を用いて、希土類磁石(永久磁石)の磁区観察した例が下記の文献に報告されている。なお、XMCD−PEEM法自体に関連する記載は、例えば、下記の特許文献1または特許文献2にある。
【非特許文献1】SPring-8 User Experiment Report(課題番号:2005B0830、2006A0229、2006B0201)
【特許文献1】特開平5−45304号公報
【特許文献2】特開2008−66080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
永久磁石の磁区構造を観察するのであれば、着磁した状態の試料を用いて観察するのが本来望ましいはずである。ところが、上記文献では、熱消磁もしくは磁場消磁させた状態の試料を用いて観察しているに過ぎない。そして本発明者が調査した範囲では、異方性希土類磁石などの超強力な永久磁石を着磁した状態で、その磁区構造などを光電子顕微鏡などで観察した例は報告さていない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、着磁等により磁化された磁性試料の磁区などの観察を可能とする磁性試料の観察方法およびその観察装置を提供することを目的とする。また、そのような磁性試料の観察に有効な観察用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、試料となる着磁した永久磁石に軟磁性体を連結し閉ループの磁気回路を構成することで、永久磁石(特に強力な磁力を有する異方性希土類磁石)の磁区を、着磁した状態で観察することに初めて成功した。そしてこの成果を発展させることで、本発明者は以降に述べる種々の発明を完成させるに至った。
〈磁性試料の観察方法〉
【0007】
(1)すなわち、本発明の磁性試料の観察方法は、磁化された磁性体からなる磁性試料の観察域に励起光または電子線からなる入射ビームを照射する照射ステップと、該入射ビームが照射された該磁性試料の観察域から放出された放出電子を検出する検出ステップと、該検出ステップで検出された放出電子から得られた情報に基づき該磁性試料の観察域の微細状況を示す観察像を形成する観察像形成ステップと、を備える磁性試料の観察方法であって、
【0008】
前記磁性試料は、該磁性試料の磁化方向の両端が該磁性試料の配置される雰囲気の透磁率よりも高い透磁率を有する連結具により磁気的に連結された状態で観察されることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の観察方法によれば、着磁等により磁化され、両端の両極から磁力線が出ている磁性試料であっても、その磁区構造等を放出電子を介して適切に観察等することが可能となる。この理由は必ずしも明らかではないが、現状では次のように考えられる。
【0010】
先ず本発明者は、磁化された磁性試料を単独で放出電子を介して観察しようとしたが、望むような観察像は得られなかった。この理由を本発明者は、磁性試料からでる漏洩磁場によって放出電子の進路(軌道)が歪められ、適正な観察が困難になるためと考えた。それ故に従来は、わざわざ消磁した状態または着磁していない状態で、磁性試料の磁区構造を観察していたと考えた。
【0011】
しかし、本発明によれば、磁性試料の磁化方向の両端(いわゆるN極とS極)から流出および流入する磁力線は磁性試料の両端を連結する透磁率の高い連結具を主に通過するようになり、磁性試料の周囲に磁路を形成することが非常に少なくなる。つまり、磁化された磁性試料から出る磁束は、その多くが磁性試料と連結具とによって形成された閉ループの磁路を流れるようになり、磁性試料の周囲へ漏洩することが少なくなる。
【0012】
この結果、磁性試料から出た放出電子の軌道は、その漏洩磁場の影響を受けることが非常に少なくなり、ほとんど歪められなくなる。こうして、放出電子による適切な観察像の形成が可能となり、磁化されたままの磁性試料の磁区等の観察が可能になったと考えられる。
【0013】
〈磁性試料の観察装置〉
本発明は、上記の観察方法としてのみならず、その観察装置としても把握できる。
すなわち、本発明は、磁化された磁性体からなる磁性試料の観察域に励起光または電子線からなる入射ビームを照射する照射手段と、該入射ビームが照射された該磁性試料の観察域から放出された放出電子を検出する検出手段と、該検出ステップで検出された放出電子から得られた情報に基づき該磁性試料の観察域の微細状況を示す観察像を形成する観察像形成手段と、さらに、前記磁性試料の配置される雰囲気の透磁率よりも高い透磁率を有すると共に前記磁性試料の磁化方向の両端を磁気的に連結する連結具からなる観察用治具を備えることを特徴とする磁性試料の観察装置であってもよい。
【0014】
〈磁性試料の観察用治具〉
さらに本発明は、上記の観察方法や観察装置としてのみならず、それらを使用する際に必要となる観察用治具としても把握できる。この観察用治具は、主に前述した連結具からなるが、その他にも磁性試料を連結具に固定する固定部材や連結具を自立または保持されるための基台などの付属具を備えていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。
なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明に係る磁性試料の観察方法のみならず、その観察装置や観察用治具にも適宜適用できる。また、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。さらに、上述した構成に加えて、下記に記載する種々の形態から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成をさらに付加することができる。この際、選択された構成は、複数の発明に重畳的かつ任意的に付加可能であり、いずれの構成もカテゴリーを越えて相互に適宜組合わせ可能である。一見、「方法」または「物」に関する構成のように見えても、例えば「ステップ」を「手段」と解したり、またはその逆に解することで、いずれの構成も「方法」または「物」の限定要素となり得る。
【0016】
(1)照射ステップ(「手段」でもよい。これは以下同様である。)
照射ステップは、磁化された磁性体からなる磁性試料の観察域に励起光または電子線からなる入射ビームを照射するステップである。
この励起光には、偏光放射光、偏光電子線、偏光レーザー等がある。波長が1nm(10−8〜10−10m)前後の軟X線は、3d遷移金属磁性体で励起光偏光度を変化させたときの吸収差が大きく、磁性体観察に適している。このような発生源は放射光施設であり、日本国内では前述のSPring−8などあがり、世界各国に存在する。
【0017】
電子線は、電子銃などから放出される所定のエネルギーをもつ電子からなる。電子源である電子銃には、熱電子銃、電界放出電子銃、ショットキー電子銃などがある。磁性試料の観察が可能な限り、電子線の種類、強度、電子源などは問わない。電子線を利用するものとして前述したSEMなどがある。磁性試料の大きさ、観察域の大きさ、分解能などは、観察装置に適したものであれば足る。
【0018】
(2)検出ステップ
検出ステップは、入射ビームを照射した磁性試料の観察域から放出された放出電子を検出するステップである。
放出電子には、光電効果により放出された光電子の他、入射電子に対する反射電子、二次電子などがある。磁性試料の磁区を観察する場合であれば、光電子および低エネルギー二次電子が用いられる。
【0019】
放出電子の検出は、例えば、高電圧を印加して引き寄せた放出電子を光電子増倍管により増倍し、蛍光物質に衝突させ、電気信号として取り出す放出器等により行うことができる。SPring−8などから発生する軟X線を利用した場合においても、上述の通り、放出電子は倍増され、電気信号に変換され検出される。
【0020】
(3)観察像形成ステップ
観察像形成ステップは、検出された放出電子から得られた情報に基づき、磁性試料の観察域の微細状況を示す観察像を形成するステップである。具体的には、放出電子を検出して得られた電気信号に基づいて画像処理することで観察像が形成される。
【0021】
(4)連結具
連結具は、磁性試料の配置される雰囲気の透磁率よりも高い透磁率を有し、かつ磁性試料よりも高い磁束密度を有する部材からなり、磁性試料の磁化方向の両端を磁気的に連結する。要するに、磁性試料からの漏洩磁束を減少させるために、磁性試料と連結具とによって閉ループの磁気回路が形成されるものであればよい。連結具を設けない場合よりも、本発明の連結具を設けた場合に、磁性試料の周囲へ漏洩する磁束が少なくなる限り、連結具の材質や形態は問わない。
【0022】
ただし、磁性試料の両端から流出入する磁束が、磁性試料の周囲に自然に形成した磁路を通るか、連結具からなる経路を通るかは、本来、両磁路の磁気抵抗の問題である。とすると、本発明の連結具は、磁性試料の周囲に自然に形成される磁路よりも、磁気抵抗が低い磁路を形成するものとすべきかもしれない。ただ、比較対象となる磁性試料の周囲に自然に形成される磁路の磁気抵抗を具体的に特定することは難しい。ちなみに、磁気抵抗(R)は透磁率(μ)、磁路長(l)および磁路断面(S)によりR=l/μSで表される。
【0023】
そこで本発明では、上述したように、磁性試料の周囲の透磁率と連結具の透磁率との大小関係により連結具の磁気的特性を限定することにした。連結具は鉄等の軟磁性材から構成されることが多く、その透磁率は磁性試料の周囲の透磁率(通常は真空の透磁率)よりも遙かに大きいし、また、磁性試料も小さく形成される磁路長も短いため、結局は、磁気抵抗が小さいことが間接的に表現されているに等しいといえ、上記のような表現でも本発明を特定する上で実質的に問題はない。また、軟磁性体の飽和磁化は充分に大きいから、磁性試料と同程度の横断面積を有する限り、磁路の断面積も問題とはなり難い。
【0024】
このように連結具は軟磁性材からなるのが好ましい。軟磁性材は強磁性材であるFe、Co、Niなどが代表的であるが、特に、入手コスト、加工性等の点で、純FeまたはFe合金(例えば、Fe−Si合金)などが好ましい。
【0025】
また、連結具による磁路短縮や漏洩磁場を抑制するために、連結具は略円環状であったり、その横断面が略円状であると好ましい。もっとも、連結具の汎用性の確保や微調整を可能とするために、種々のサイズの角形ブロックを組み合わせて連結具を構成してもよい。
【0026】
(5)磁性試料および観察対象
磁性試料自体の材質、組成等は、観測装置に適合する限り、本発明では問題ではない。従って、着磁された永久磁石の他、永久磁石または電磁石等により磁化された軟磁石であってもよい。
【0027】
もっとも、本発明では、漏洩磁場による放出電子の軌道の歪みに帰因した観察障害を回避または抑制することに主眼がある。このように本発明は、磁性試料自体が強力な永久磁石であって、自ら強力な磁力線を放出している場合に特に有効である。このような磁性試料として、例えば、着磁後の希土類磁石、特に、磁化容易軸方向(c軸)に磁化された異方性希土類磁石が挙げられる。このような希土類磁石は、Nd−Fe−B系、Sm−Co系、Sm−Fe−N系等があるがいずれでもよい。また、水素化脱水素処理(HDDR処理)や急冷凝固法など、いずれの方法で製造された磁石でもよい。さらに磁性試料は、いわゆる焼結磁石でもよい。
【0028】
このような磁性試料の観察対象は、磁気的に飽和している磁性体または磁壁で囲まれた磁気モーメントのそろっている領域(スピンが同じ方向を向いた領域)からなる磁区を観察する場合を問わない。
【実施例】
【0029】
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
〈磁性試料〉
磁区構造を観察する対象となる磁性試料として、異方性をもつ希土類系焼結磁石(市販材)を用意した。以下の磁性試料の観察は、全て磁化容易軸方向に着磁されたNd−Fe−B系異方性焼結磁石の残留磁化状態で行った。磁性試料の着磁は全て10Tの磁場を印加して行った。
【0030】
〈XMCD−PEEM法による観察〉
(1)この磁性試料に対して前述したXMCD−PEEM法による観察を行った。この観察は、放射光施設SPring−8のビームラインBL25SUを用いて行った。XMCD−PEEM法の概要(原理)は図1に示すようである。
【0031】
すなわち、円偏光X線(励起光、放射光、入射ビーム)を磁性試料へ入射させた際に(照射ステップ、照射手段)、放出する光電子または二次電子(放出電子)の数は、X線偏光ベクトルと磁性試料の磁気スピンベクトルの内積に比例する。この光電子を検出し(検出ステップ、検出手段)、それを画像処理して結像させることで(観察像形成ステップ、観察像形成手段)、磁性試料の観察像(磁区像)を得ることができる。本観察では、ドイツ・エルミテック社製光電子放出顕微鏡を用いて行った。
【0032】
(2)先ず、着磁した磁性試料を単独で、XMCD−PEEM法により観察したところ、正常な観察像を得ることはできなかった。これは図2に示すように、着磁した磁性試料にX線を入射させた場合、その磁性試料の周囲に形成される強力な磁場によって、磁性試料から放出された光電子の軌道が歪められたためと思われる。
ちなみに、ここで用いた磁性試料のサイズは5x5x5mmであり、観察時の磁性試料の周囲の雰囲気は真空であった。
【0033】
(3)次に、着磁した磁性試料に、軟磁性材からなる軟磁性ブロックを組み合わせて作ったヨーク(連結具、観察用治具)を接続して閉ループ磁路を形成した。ここで用いた軟磁性ブロックは純鉄の溶製材からなる。このような状態の磁性試料に対して、XMCD−PEEM法により次の2つの観察を行った。
【0034】
(i)観察1
結晶のc軸が立方体の辺に平行になるように切り出した5x5x5mmのNd−Fe−B系異方性希土類磁石を磁性試料とした。軟磁性ブロックには、この磁性試料の大きさに合わせて、5x5x5mmの立方体1個と5x5x15mmの直方体2個を用意した。これら3つの軟磁性ブロックを略コの字型に配置してヨーク(継鉄)とした。3つの軟磁性ブロックと磁性試料とを図3に示すように組み付け、磁性試料からの磁力線が磁気閉回路を通過するようにした。
【0035】
SPring−8のビームラインBL25SUを用いたXMCD−PEEM法による観察は、室温下で、X線を磁性試料の柱面から30°で斜入射した。なお、この磁性試料の周囲の磁界を東陽テクニカ社製ガウスメータで測定したところ、漏洩磁場は80Gであった。こうして得られたXMCD−PEEM観察像を図4に示す。磁区像は磁気円二色性により得られ、円偏光放射光のエネルギーは、Fe−L3吸収端(708.6eV)に合わせ、右回り円偏光と左回り円偏光により結像された像の差をとり、それを両者の和で割ったものであった。
【0036】
(ii)観察2
磁性試料および軟磁性ブロックのサイズを変更して、上記の観察1と同様な観察を行った。用意した磁性試料のサイズは3x3x3mmであった。また、この磁性試料の大きさに合わせて、3x3x3mmの立方体状の軟磁性ブロック1個と3x3x9mmの直方体状の軟磁性ブロック2個を用意した。磁性試料と各軟磁性ブロックの配置、観察条件等は観察1の場合と基本的に同様である。但し、観察2では、磁性試料の観察面に酸化防止のためにPtコートを施した。
観察1の場合と同様に、漏洩磁場を測定したところ5Gであった。こうして得られたXMCD−PEEM観察像を図5に示す。
【0037】
〈評価〉
本発明の観察方法等を用いることで、着磁され強力な磁束を出すNd−Fe−B系異方性希土類磁石からなる磁性試料であっても、図4および図5に示すように、その磁区構造をXMCD−PEEM法により観察することが可能となった。
【0038】
そして、漏洩磁場の少ない観察2の方が、鮮明なXMCD−PEEM観察像を得ることができた。これは漏洩磁場を5Gまで低減させたことで、放出された光電子の軌道がほとんど歪めることなく検出され、磁区像を正しく結像できたためと思われる。
いずれにしても、本発明を用いることで、着磁状態の永久磁石(特に強力な異方性希土類磁石)の磁区構造の観察が可能になったことは画期的である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】磁区構造の観察に用いたXMCD−PEEM法の原理を示す模式図である。
【図2】着磁された磁性試料から周囲へ放出される磁力線を示す模式図である。
【図3】磁性試料と軟磁性ブロックからなるヨーク(連結具)を示す模式図である。
【図4】漏洩磁場80Gのときの着磁された磁性試料の磁区構造を示すXMCD−PEEM観察像である。
【図5】漏洩磁場5Gのときの着磁された磁性試料の磁区構造を示すXMCD−PEEM観察像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化された磁性体からなる磁性試料の観察域に励起光または電子線からなる入射ビームを照射する照射ステップと、
該入射ビームが照射された該磁性試料の観察域から放出された放出電子を検出する検出ステップと、
該検出ステップで検出された放出電子から得られた情報に基づき該磁性試料の観察域の微細状況を示す観察像を形成する観察像形成ステップと、を備える磁性試料の観察方法であって、
前記磁性試料は、該磁性試料の磁化方向の両端が該磁性試料の配置される雰囲気の透磁率よりも高い透磁率を有し、かつ磁束が該磁性試料より大きい連結具により磁気的に連結された状態で観察されることを特徴とする磁性試料の観察方法。
【請求項2】
前記連結具は、軟磁性材からなる請求項1に記載の磁性試料の観察方法。
【請求項3】
前記磁性試料は、前記磁化方向を磁化容易軸方向(c軸)とする異方性希土類磁石からなる請求項1または2に記載の磁性試料の観察方法。
【請求項4】
磁化された磁性体からなる磁性試料の観察域に励起光または電子線からなる入射ビームを照射する照射手段と、
該入射ビームが照射された該磁性試料の観察域から放出された放出電子を検出する検出手段と、
該検出ステップで検出された放出電子から得られた情報に基づき該磁性試料の観察域の微細状況を示す観察像を形成する観察像形成手段と、
さらに、前記磁性試料の配置される雰囲気の透磁率よりも高い透磁率を有すると共に前記磁性試料の磁化方向の両端を磁気的に連結する連結具からなる観察用治具を備えることを特徴とする磁性試料の観察装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の連結具からなることを特徴とする磁性試料の観察用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−151455(P2010−151455A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327002(P2008−327002)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】