説明

磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定方法と、それを利用したねじれ振動発生及び測定装置

【課題】磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定方法と、それを利用したねじれ振動発生及び測定装置を提供する。
【解決手段】任意の断面形状及び所定の長さを有するテスト対象部材にねじれ振動を伝達するねじれ振動発生部と、ねじれ振動発生部で発生したねじれ振動を測定するねじれ振動測定部と、を備え、ねじれ振動発生部及びねじれ振動測定部は、テスト対象部材2の周りに沿って付着され、磁性体から作られた磁気変形体1と、磁気変形体1の長手方向に垂直にテスト対象部材の周りに沿って磁場を形成する第1磁場形成部3と、磁気変形体1に対して第1磁場形成部3により形成された磁場の方向に実質的に垂直であり、テスト対象部材の長手方向と平行に磁場を形成する第2磁場形成部と、を備える磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置と、その方法とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸、梁及び配管などの部材を備える構造物において、構造物のねじれモーダル・テストを行えるねじれ振動発生及び測定装置と、その発生及び測定方法とに係り、さらに詳細には、磁気変形現象を利用してテスト対象の部材にねじれ振動を発生させると同時に、このねじれ振動を測定して構造物のモーダル・テスティングを行う磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管、梁、棒または軸などの部材を備える機械装置の設計において、多くの場合において構造的な安定性を検討するためには、モーダル・テストを行わねばならない。モーダル・テストによって得た固有振動数、モード形状などから、機械装置が作動中に起こす振動と機械装置の固有振動数とが類似した領域に属して共振を起こすことによって、機械装置の破損を誘発することを防止するなど、機械装置の構造的な安定性を図りうる。
【0003】
配管、梁、棒または軸などの部材のねじれ振動による振動特性を把握するためのモーダル・テストを行うためには、テスト対象の部材にねじれ振動を発生させ、これを測定せねばならない。これにより、テスト対象の部材にねじれ振動を発生させると同時に、これを測定できる装置及び方法を開発する必要性が大きく増加するようになった。
【0004】
一方、磁気変形、すなわち、マグネトストリクションとは、強磁性の材料が磁場の下に置かれるとき、機械的な変形が発生する現象を言い、ジュール効果とも言う。この逆現象として材料に応力が作用するとき、材料内部の磁気的な状態が変化する現象を逆磁気変形現象またはビラリ効果という。
【0005】
このような磁気変形効果を利用すれば、測定しようとする対象と機械的な接触なしに測定物の変形を測定できるため、接触式センサーやアクチュエータの適用が不可能な多様な分野に応用されている。磁気変形効果を利用すれば、非接触でも振動を発生させうるだけでなく、伝統的な圧電効果を利用した方式よりエネルギーの大きい振動を発生させうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような従来の問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、磁気変形及び逆磁気変形現象を利用して棒、配管、軸または梁のように、所定の断面形状を有して所定の長さに形成された部材に対してモーダル・テストを行える磁気変形を利用したねじれ振動の発生及び測定方法と、それを利用したねじれ振動の発生及び測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような本発明の目的は、任意の断面形状及び所定の長さを有するテスト対象部材にねじれ振動を伝達するねじれ振動発生部と、前記ねじれ振動発生部で発生したねじれ振動を測定するねじれ振動測定部と、を備え、前記ねじれ振動発生部及び/または前記ねじれ振動測定部は、前記テスト対象部材の周りに沿って付着され、磁性体から作られた磁気変形体と、前記磁気変形体の長手方向に垂直に前記テスト対象部材の周りに沿って磁場を形成する第1磁場形成部と、前記磁気変形体に対して前記第1磁場形成部により形成された磁場の方向に実質的に垂直であり、前記テスト対象部材の長手方向と平行に磁場を形成する第2磁場形成部と、を備える磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置を提供することによって達成される。
【0008】
ここで、前記磁気変形体は、前記部材の周りに沿って付着された一つの部材からなるか、または前記部材の周りに沿って所定間隔離れて付着された所定数の磁気変形体の断片からなりうる。
【0009】
ここで、前記磁気変形体の断片は、エポキシ、強力接着剤、テープなどの多様な方法により、前記テスト対象部材に強く付着することが望ましい。
【0010】
ここで、前記磁気変形体の断片は、互いに実質的に同じ大きさであり、実質的に同じ間隔で離れて付着されたことが望ましい。
【0011】
ここで、前記第1磁場形成部は、前記磁気変形体の断片の間の間隔に配置された磁石を備えるが、前記磁気変形体の断片の間に配置されて前記磁気変形体の断片を連結し、透磁率が空気より高い素材から作られたヨークをさらに備えうる。ここで、前記磁石は、電磁石でありうる。
【0012】
ここで、前記磁気変形体は、鉄、ニッケル、コバルトを含む強磁性体またはそれらの合金、または磁気変形量の大きな材質からなる群から選択された材料から作られることが望ましい。
【0013】
ここで、前記ねじれ振動発生部は、前記第1磁場形成部が形成する磁場は変化していない状態で、前記第2磁場形成部が形成する磁場の大きさが変化することによって、前記磁気変形体が、磁気変形現象により前記テスト対象部材の長手方向に対して傾斜した方向に変形されつつ、前記テスト対象部材にねじれ振動を発生させることが望ましい。
【0014】
ここで、前記ねじれ振動測定部は、前記第1磁場形成部が形成する磁場は変化していない状態で、前記ねじれ振動発生部で発生したねじれ振動による逆磁気変形現象によって、前記第2磁場形成部が形成する磁場の大きさが変化することを測定することによって、前記テスト対象部材のねじれ振動特性を測定することが望ましい。
【0015】
ここで、前記第2磁場形成部のうち前記ねじれ振動発生部側に配置された第2磁場形成部は、前記テスト対象部材と所定間隔離れて前記テスト対象部材を取り囲むように配置された絶縁体と、前記絶縁体の外周面に巻かれたコイルを備えて、前記コイルに流れる電流の量を調節して、前記第2磁場形成部が形成する磁場の大きさを変化させることが望ましい。
【0016】
ここで、前記第2磁場形成部のうち前記ねじれ振動測定部側に配置された第2磁場形成部は、前記テスト対象部材と所定間隔離れて前記テスト対象部材を取り囲むように配置された絶縁体と、前記絶縁体の外周面に巻かれたコイルを備えて、前記コイルに誘導される誘導電流の変化量によってねじれ振動を測定することが望ましい。
【0017】
また、前記のような本発明の目的は、テスト対象部材に振動発生位置及び振動測定位置を決め、二つの位置にそれぞれ磁気変形体を設置するステップ(a)と、設置された磁気変形体の周りに第1磁場を形成するステップ(b)と、第1磁場が形成された磁気変形体に前記第1磁場と実質的に直交する方向に第2磁場を形成するステップ(c)と、振動発生位置に付着された磁気変形体の周りの第2磁場の大きさを変化させて、テスト対象部材にねじれ振動を発生させるステップ(d)と、振動測定位置に付着された磁気変形体の周りの第2磁場の変化を測定してねじれ振動を測定するステップ(e)と、を含む磁気変形を利用したねじれ振動の発生及び測定方法を提供することによって達成される。
【0018】
ここで、前記ステップ(b)は、磁気変形体に沿って磁石を擦ることによって前記磁気変形体を予磁化させうる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、配管、梁、棒または軸などの機械装置を構成する部材において、安定的に磁気変形現象及び逆磁気変形現象を利用してねじれ振動を発生させると同時に、それを測定できるねじれ振動発生及び測定装置が提供される。
【0020】
この装置を利用して、配管、梁、棒または軸などの部材のねじれ振動に対するモーダル・テストを正確かつ便利に行え、これにより、配管、梁、棒または軸などの部材を備える機械装置の設計においてモーダル・テスト結果を利用できることによって、構造的な安定性が向上した機械装置を製作できる。
【0021】
また、本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置は、コイルに加えられる電流の大きさに関係なく常にねじれ振動を発生させうるので、再現性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付された図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。
【0023】
図1ないし図3は、本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定方法と、それを利用したねじれ振動発生及び測定装置並びに磁気変形の原理とを説明する図面である。
【0024】
図1に示すように、磁気変形体1の周りに第1磁場B及び第2磁場Bを実質的に直交する方向に加える場合、図2に示すように、前記磁気変形体1を剪断方向に変形させ得る。すなわち、第1磁場は、静磁場であって、磁場の強度の変化なしに維持し、第2磁場は、動磁場であって、磁場の強度を変化させれば、前記磁気変形体1は、第2磁場の磁場強度の変化によって図2に示すように変形される。第2磁場の磁場強度の変化の周期及び強度を調節すれば、前記磁気変形体1が変形する変形周期及び変形量を調節できる。
【0025】
このような原理を棒部材に適用した例が図3に示されている。図3のように、磁気変形体1を棒部材2の周りに沿って付着した状態で、磁気変形体1の周りに静磁場Bを加え、静磁場Bと実質的に直交する棒部材2の長手方向に動磁場Bを加えつつその磁場の強度を変化させれば、前記磁気変形体1が変形される。前記磁気変形体1が前記棒部材2に強く付着されていれば、前記磁気変形体1の変形によって前記棒部材2にねじれ振動を発生させうる。また、動磁場Bの周期の変化及び強度の変化を調節して、前記棒部材2に発生するねじれ振動の周期及び大きさを調節できる。
【0026】
図4は、本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置の概略的な構成を示す図面であり、図5は、図4のIV−IV線による断面図である。
【0027】
図4に示すように、本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置は、テスト対象部材2の第一の位置に配置されたねじれ振動発生部10と、これから所定距離離れたテスト対象部材2の第二の位置に配置されたねじれ振動測定部20と、を備える。
【0028】
前記テスト対象部材2は、任意の断面形状及び所定の長さに形成されたものであれば、いかなる部材でもよい。
【0029】
図5に示すように、前記ねじれ振動発生部及び前記ねじれ振動測定部は、それぞれ磁気変形体1、第1磁場形成部及び第2磁場形成部を備える。
【0030】
前記磁気変形体1は、前記テスト対象部材2の周りに沿って付着されるものであって、図5のように、前記部材の周りに沿って付着された一つの部材からなり得る。前記磁気変形体1は、磁性体、望ましくは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などの強磁性体またはそれらの合金または磁気変形量の大きい材質からなる群から選択された材料から作られる。
【0031】
前記第1磁場形成部は、前記磁気変形体1の長手方向に垂直に前記テスト対象部材2の周りに沿って磁場を形成する機能を行うものであって、図5に示すように、前記磁気変形体1の長手方向に置かれた磁石3からなり得る。
【0032】
前記第2磁場形成部は、前記テスト対象部材2の長手方向に磁場を形成する機能を行うものであって、図4及び図5に示すように、前記テスト対象部材の周りを所定間隔離れて取り囲む絶縁体4と、前記絶縁体4の周りに巻かれたコイル6と、を備える。
【0033】
一方、図4に示すように、前記ねじれ振動発生部10の第2磁場の強度及び周期を変化させるために、関数発生器、電力増幅器及び電流計が前記第2磁場形成部のコイル6と連結される。
【0034】
また、図4に示すように、前記ねじれ振動測定部の第2磁場に発生する磁場強度の変化及びその変化周期を測定し、測定データをディスプレイするために、前置増幅器、オシロスコープ及び電流計が前記ねじれ振動測定部の第2磁場形成部に設置されたコイル6と連結される。
【0035】
以上のような構成を有する本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置では、次のような方式でねじれ振動が発生し、それと同時に測定される。
【0036】
すなわち、前記ねじれ振動発生部10は、前記第1磁場形成部が形成する磁場は変化していない状態で、前記第2磁場形成部が形成する磁場の大きさが変化することによって、前記磁気変形体1が磁気変形現象により前記テスト対象部材2の長手方向に対して剪断方向に変形されつつ、前記テスト対象部材2にねじれ振動を発生させる。
【0037】
また、前記ねじれ振動測定部20は、前記第1磁場形成部が形成する磁場は変化していない状態で、前記ねじれ振動発生部から発生したねじれ振動による逆磁気変形現象によって前記磁気変形体の周りの磁場の大きさが変化することを測定することによって、前記テスト対象部材2のねじれ振動特性を測定する。
【0038】
一方、本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置を構成するねじれ振動発生部10及びねじれ振動測定部20に使用される磁気変形体1及び第1磁場形成部の形状は、図5に示すものに限定されず、多様に変形され得る。
【0039】
図6ないし図10は、本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置を構成する磁気変形体1及び第1磁場形成部の他の実施形態を示す図面である。
【0040】
図6に示すように、磁気変形体1は、図5に示すものとは異なり、二つの部分に分けられた状態で形成され得る。磁気変形体1は、実質的に同じ大きさの磁気変形体の断片1a、1bからなってもよく、互いに大きさを異ならせてもよい。第1磁場形成部を構成する磁石3は、前記磁気変形体の断片1a、1bの間ごとに配置されてもよく、磁気変形体の断片1a、1bの間の間隔の1箇所または一部にのみ設置されてもよい。ただし、磁気変形体1の変形によりテスト対象部材2に加えられるねじれ振動をテスト対象部材2の周り方向に均一に加えるためには、前記磁気変形体の断片1a、1bが実質的に同じ大きさを有して、実質的に同じ間隔で配置され、前記磁気変形体の断片1a、1bの間隔ごとに磁石3が磁場を形成するように配置されることが望ましい。
【0041】
テスト対象部材2の断面の直径が大きい場合には、磁気変形体の断片の数を増加させ、磁石3をその間隔ごとに配置して、磁場をテスト対象部材2の周りに沿って全体的に均一に形成させることが望ましい。一例として図7に示すように、磁気変形体1は、三つの部分1a、1b、1cに等分されて等間隔で設置されてもよい。このような配置は、テスト対象部材2の直径が大きい場合にさらに有利である。
【0042】
図8には、以前の実施形態と異なり、磁気変形体1の表面に磁石3が設置された実施形態が示されている。図8に示すように、磁気変形体1は、所定数(2個)の磁気変形体の断片1a、1bに分けられて付着され、磁気変形体の断片1a、1bの両端部にそれぞれ磁石3が一つずつ設置される。両端にそれぞれ設置される磁石3は、磁気変形体の断片1a、1bの表面に付着される方向の磁極が相異なるように配置される。それにより、前記磁気変形体の断片1a、1bを貫通する磁場を形成させる。
【0043】
一方、図8に示す実施形態で、前記磁石3が磁気変形体1の表面と接する部分を通過する磁場は、透磁率の高い磁気変形体1を貫通するが、その反対側は、透磁率が低い空気を通過するように磁場が形成されるため、漏れ磁束が比較的に多く発生しうる。
【0044】
図9には、図8に示す実施形態に比べて漏れ磁束を減少させた実施形態が示されている。漏れ磁束を減少させるために、磁石3が磁気変形体の断片1a、1b、1cとそれぞれ接する磁極の反対側の磁極を互いに連結するヨークを別途にさらに設置する。前記ヨークは、透磁率の大きい材料から作られることが望ましい。
【0045】
図10には、磁気変形体の断片1a、1bの間隔に磁石3及びヨーク7が設置された実施形態が示されている。前記磁石3は、テスト対象部材2の周りに沿って前記テスト対象部材2の断面の接線方向と平行に磁場を形成するように設置され、前記ヨーク7は、前記磁石3を支持しつつ前記磁石3及び前記磁気変形体の断片1a、1bを支持するように設置される。本実施形態では、図5または図6に示す実施形態のように、テスト対象部材と接するように磁石が設置されている。また、透磁率の大きな物質からなるヨーク7が、テスト対象部材と接した状態で磁石3と磁気変形体1との間に設置されている。このように、ヨークが追加的に設置されることによって、図5ないし図7の実施形態で発生した磁石3と磁気変形体1との間の空気による漏れ磁束を減少させうる。
【0046】
図11には、図10に示す実施形態とは異なり、ヨーク7により磁石3がテスト対象部材2と離れて設置されるように支持された場合が示されている。前記磁石3の位置は、図5ないし図7、または図10に示すように、テスト対象部材と接して設置されるものに限定されず、図11のように、所定間隔離れて設置されてもよい。
【0047】
図12には、図11のような実施形態で磁場を形成する磁石として、永久磁石の代りに電磁石8を使用した場合を示している。電磁石8を使用する場合、第1磁場を形成するために、磁石のコイルに連結される別途の配線が必要であるという短所があるが、電磁石8が形成する第1磁場の大きさを変化させうるので、ねじれ振動発生部で発生するねじれ振動の大きさをさらに多様に変化させうる。
【0048】
図13には、磁石3が直接的に絶縁体4と接して支持された例が示されている。直接的に絶縁体と接するように支持する場合には、接着剤、接着テープなどの接着手段が使用されうる。
【0049】
このように配置する場合には、テスト対象部材2にねじれ振動発生部10及びねじれ振動測定部20を設置するとき、テスト対象部材2に磁気変形体1のみを付着し、磁石3は、絶縁体4の内側に付着された状態で絶縁体4を設置する作業のみで磁石3を設置させうる。それにより、前記磁石3を一々テスト対象部材2に付着する困難さを減らすためである。
【0050】
ところが、図13の様に、絶縁体4の内側に磁石3を支持させる場合、絶縁体4の内径とテスト対象部材2の外径との間の距離によって、前記磁石3とテスト対象部材2との間の距離を十分に近く設置できない恐れがある。
【0051】
図14には、位置調節手段9を介して磁石3を絶縁体4に支持した実施形態が示されており、図15には、図9に示すように、ヨーク7により磁石3が連結された状態で配置された場合に、ヨーク及び位置調節手段9を介して磁石3を絶縁体4に支持した実施形態が示されている。
【0052】
図13に示す実施形態であり得る問題点を考慮して、図14及び図15に示す実施形態のように、絶縁体4に位置調節手段9をさらに備えれば、ユーザが、その必要に応じて磁石3とテスト対象部材2との距離、または磁石3と絶縁体4との距離を容易に調節できる。前記位置調節手段9は、多様な方式で具現できるが、例えば、図面に示すように、ボルトとナットとの結合を利用しても簡単に具現できる。
【0053】
以上のような構成を有する本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置を利用して、次のような順序でモーダル・テストを行える。すなわち、テスト対象部材2に振動発生位置及び振動測定位置を決め、二つの位置にそれぞれ磁気変形体1を設置する。その後、設置された磁気変形体1の周りに第1磁場を形成し、前記第1磁場が形成された磁気変形体1に前記第1磁場と実質的に直交する方向に第2磁場を形成する。第1磁場及び第2磁場を形成することは、前述した多様な実施形態のうち一つの構造を選んで形成できる。その後、振動発生位置に付着された磁気変形体1の周りの第2磁場の大きさを変化させて、テスト対象部材2にねじれ振動を発生させる。発生した振動は、前記振動測定位置に付着された磁気変形体1の周りで、逆磁気変形効果により第2磁場の大きさを変化させる。振動測定位置に付着された磁気変形体1の周りの第2磁場の変化を測定して、ねじれ振動を測定する。この結果から、テスト対象部材2の固有振動数及びモード形状が得られる。
【0054】
一方、第1磁場を形成することは、前述した多様な構造の磁場形成構造を使用せずとも可能である。図16には、テスト対象部材2の周りに沿ってテストに必要な時にのみ磁場を形成できる方法が示されている。
【0055】
すなわち、図16に示すように、磁場を形成する別途の磁場形成部をテスト対象部材2に固定的に設置するのではなく、テストの前に磁気変形体1に沿って磁石3を擦ることによって予磁化した後にモーダル・テストを行う。
【0056】
以上の説明で、磁気変形体の断片の数が一つ、二つまたは三つである場合のみを示し、磁石の数も一断片につき二つまで使用された場合のみを例示的に説明したが、磁気変形体の断片の個数及び磁石の個数は図示されたものに限定されず、さらに多くの磁気変形体の断片を使用することも本発明の範囲に含まれるということが、以上の説明で明らかである。一方、本発明を説明しつつ言及した磁気変形体は、図面に示すように薄いストリップ状に使用されることが望ましいが、必ずしもストリップ状に限定されるものではない。
【0057】
以上で説明された本発明に係るねじれ振動発生及び測定装置と、その方法とを利用して配管、梁、棒または軸などの部材に対するモーダル・テストを行える。以下では、本発明に係るねじれ振動発生及び測定装置と、その方法とを利用して配管で曲げ振動を測定することによって、棒部材に対するモーダル・テストを行った結果を例示的に説明する。
【0058】
図17ないし図19には、本発明に係るねじれ振動発生及び測定装置及び方法を使用して配管に対してモーダル・テストを実施した結果を示す図面が図示されている。
【0059】
実験には、外径25mm、厚さ1.8mm、長さ1mのアルミニウム配管が使用された。アルミニウム配管は、両端が自由端で支持された状態で実験された。
【0060】
前記のような実験条件で、本発明に係るねじれ振動発生及び測定装置と、その方法とを利用すれば、図17に示すようなねじれ振動信号を測定できる。また、本発明に係るねじれ振動発生及び測定装置と、その方法とを使用すれば、図18に示すような周波数応答関数と、図19に示すようなねじれ振動に対するモード形状と、を求めうる。
【0061】
図18で、周波数応答関数を周波数によるログの大きさの強度で表している。図18で、周波数応答関数の大きさが最大である地点の振動数が、テスト対象部材の固有振動数となる。
【0062】
図19で、点で表示された部分は、曲げ振動に対するモード形状の実験値を表し、実線は、理論値を表す。図18及び図19に示すような結果から、測定対象部材(ここでは、アルミニウム配管)の固有振動数及びモード形状を求め、これに基づいて、測定対象部材を備える機械装置の設計時に反映する。すなわち、部材が機械装置を構成するとき、実際の作動状態で受ける振動が、実験結果から測定された固有振動数と異なるように設計する。固有振動数及びモード形状を考慮して、機械装置の作動中に部材が振動や振動の共振によって破損されることを未然に防止できる。
【0063】
本発明は、図面に示す実施形態を参考として説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということが理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的な保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まらねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、軸、梁及び配管などの部材を備える構造物に好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置に適用される磁気変形現象を説明する図面である。
【図2】図1のように、磁場が加えれるときに磁気変形体が変形される様相を示す図面である。
【図3】本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置で、磁気変形現象によりテスト対象部材にねじれ振動を発生させるために必要な構成を示す図面である。
【図4】本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置の概略的な構成を示す図面である。
【図5】図4のIV−IV線による断面図である。
【図6】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図7】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図8】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図10】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図11】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図12】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図13】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図14】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図15】図5に示す第1磁場形成部の他の実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明に係る磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定方法に適用できる磁気変形体の予磁化方法を示す図面である。
【図17】本発明に係るねじれ振動発生及び測定装置と、その方法とを用いてモーダル・テストを行うとき、測定したねじれ振動の一例を示すグラフである。
【図18】本発明に係るねじれ振動発生及び測定装置と、その方法とを用いてモーダル・テストを行った結果として、固有振動数を判別できる周波数応答関数を示すグラフである。
【図19】本発明に係るねじれ振動発生及び測定装置と、その方法とを使用してモーダル・テストを行った結果としてモード形状を示す図面である。
【符号の説明】
【0066】
1 磁気変形体
1a、1b、1c 磁気変形体の断片
2 テスト対象部材
3 磁石
4 絶縁体
6 コイル
7 ヨーク
8 電磁石
9 位置調節手段
10 ねじれ振動発生部
20 ねじれ振動測定部
30 電力増幅器
40 関数発生器
50 電流計
60 前置増幅器
70 オシロスコープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の断面形状及び所定の長さを有するテスト対象部材にねじれ振動を伝達するねじれ振動発生部と、前記ねじれ振動発生部で発生したねじれ振動を測定するねじれ振動測定部と、を備え、
前記ねじれ振動発生部及び前記ねじれ振動測定部は、
前記テスト対象部材の周りに沿って付着され、磁性体から作られた磁気変形体と、
前記磁気変形体の長手方向に垂直に前記テスト対象部材の周りに沿って磁場を形成する第1磁場形成部と、
前記磁気変形体に対して前記第1磁場形成部により形成された磁場の方向に実質的に垂直であり、前記テスト対象部材の長手方向と平行に磁場を形成する第2磁場形成部と、を備える磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項2】
前記磁気変形体は、前記部材の周りに沿って付着された一つの部材からなることを特徴とする請求項1に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項3】
前記磁気変形体は、前記部材の周りに沿って所定間隔離れて付着された所定数の磁気変形体の断片からなることを特徴とする請求項1に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項4】
前記磁気変形体の断片は、エポキシ、強力接着剤、テープなどを含む接着手段のうち選択される方法により、前記テスト対象部材に強く付着することを特徴とする請求項3に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項5】
前記磁気変形体の断片は、互いに実質的に同じ大きさであることを特徴とする請求項3に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項6】
前記磁気変形体の断片は、実質的に同じ間隔で離れて付着されたことを特徴とする請求項3に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項7】
前記第1磁場形成部は、前記磁気変形体の断片の間の間隔に配置された磁石を備えることを特徴とする請求項3に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項8】
前記磁石は、電磁石であることを特徴とする請求項7に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項9】
前記磁気変形体の断片の間に配置されて前記磁気変形体の断片を連結し、透磁率が空気より高い素材から作られたヨークと、
前記ヨークに設置された磁石と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項10】
前記磁石は、電磁石であることを特徴とする請求項9に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項11】
前記磁気変形体は、鉄、ニッケル、コバルトを含む強磁性体またはそれらの合金、または磁気変形量の大きな材質からなる群から選択された材料から作られたことを特徴とする請求項1に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項12】
前記ねじれ振動発生部は、
前記第1磁場形成部が形成する磁場は変化していない状態で、前記第2磁場形成部が形成する磁場の大きさが変化することによって、前記磁気変形体が、磁気変形現象により前記テスト対象部材の長手方向に対して傾斜した方向に変形されつつ、前記テスト対象部材にねじれ振動を発生させることを特徴とする請求項1に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項13】
前記ねじれ振動測定部は、
前記第1磁場形成部が形成する磁場は変化していない状態で、前記ねじれ振動発生部で発生したねじれ振動による逆磁気変形現象によって、前記第2磁場形成部が形成する磁場の大きさが変化することを測定することによって、前記テスト対象部材のねじれ振動特性を測定することを特徴とする請求項1に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項14】
前記第2磁場形成部のうち前記ねじれ振動発生部側に配置された第2磁場形成部は、
前記テスト対象部材と所定間隔離れて前記テスト対象部材を取り囲むように配置された絶縁体と、
前記絶縁体の外周面に巻かれたコイルを備えて、前記コイルに流れる電流の量を調節して、前記第2磁場形成部が形成する磁場の大きさを変化させることを特徴とする請求項1に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項15】
前記第2磁場形成部のうち前記ねじれ振動測定部側に配置された第2磁場形成部は、
前記テスト対象部材と所定間隔離れて前記テスト対象部材を取り囲むように配置された絶縁体と、
前記絶縁体の外周面に巻かれたコイルを備えて、前記コイルに誘導される誘導電流の変化量によってねじれ振動を測定することを特徴とする請求項1に記載の磁気変形を利用したねじれ振動発生及び測定装置。
【請求項16】
テスト対象部材に振動発生位置及び振動測定位置を決め、二つの位置にそれぞれ磁気変形体を設置するステップ(a)と、
設置された磁気変形体の周りに第1磁場を形成するステップ(b)と、
第1磁場が形成された磁気変形体に前記第1磁場と実質的に直交する方向に第2磁場を形成するステップ(c)と、
振動発生位置に付着された磁気変形体の周りの第2磁場の大きさを変化させて、テスト対象部材にねじれ振動を発生させるステップ(d)と、
振動測定位置に付着された磁気変形体の周りの第2磁場の変化を測定してねじれ振動を測定するステップ(e)と、を含む磁気変形を利用したねじれ振動の発生及び測定方法。
【請求項17】
前記ステップ(b)は、磁気変形体に沿って磁石を擦ることによって前記磁気変形体を予磁化させることを特徴とする請求項16に記載の磁気変形を利用したねじれ振動の発生及び測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−139745(P2007−139745A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157150(P2006−157150)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(503434302)財団法人ソウル大学校産学協力財団 (32)
【氏名又は名称原語表記】Seoul National University Industry Foundation
【住所又は居所原語表記】San 4−2, Bongchun−dong, Kwanak−gu, Seoul, Korea
【Fターム(参考)】