説明

神経系疾患のための治療薬としてのヒストンデアセチラーゼ阻害剤

本発明は、神経変性病または神経筋病の治療のための治療薬として用いてよいヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を提供する。本発明は、式I:


の化合物類を提供する。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬品組成物および製品、ならびに神経変性病または神経筋病を治療する方法および予防する方法もしくは発症を遅れさせる方法を提供する。さらに、本発明は、新規なHDAC阻害剤、ならびに該HDAC阻害剤の合成のための新規な方法も目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/735,483号、2005年11月11日出願;米国仮特許出願第60/838,908号、2006年8月18日出願;および米国仮特許出願第60/823.051号、2006年8月21日出願(これらは全て、本明細書中で参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(政府資金援助)
本発明は、NINDS/NIH契約番号R21 NS048989およびR21 NS055781の下の支援によって行われた。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と、治療法としてのHDAC阻害剤の使用とに関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
フリードライヒ運動失調症(FRDA)は、白人の間で最も多い遺伝性運動失調症である(非特許文献1参照)。FRDAの人にはフラタキシンをコードするmRNAが不足している。フラタキシンは、高度に保存された210アミノ酸残基の核コードミトコンドリア蛋白質であり、鉄のホメオスタシス、鉄−硫黄クラスターの貯蔵およびアコニターゼなどの提携蛋白質への移動に関与すると考えられている(非特許文献2、非特許文献3参照)。
【0005】
フラタキシンが不足すると進行性脊髄小脳神経変性となり、その結果、歩行および手の動きの共調運動失調、言葉のもつれ、筋肉の脱力および感覚の喪失が表れ、神経外脊柱側彎症、心筋症および糖尿病を伴う。一般的に、最初に症状が表れてから15年から20年後に、患者は車椅子生活を余儀なくされ、その後の段階では身体の自由を完全に失う。FRDAの人のほとんどは成年期の初めに心臓疾患で死亡する。FRDAを治療するために、酸化防止剤および鉄キレート化剤を利用する方策が用いられてきたが、これらの方策は、この疾患の症状を治療するだけであり、原因、すなわちフラタキシン欠損を治療するわけではない。従って、FRDAなどの神経学的状態の治療のために、フラタキシン蛋白質発現を回復させることができる分子を開発する必要がある。
【0006】
さらに、FRDA患者の98%に見いだされたDNAの異常が、フラタキシン遺伝子の最初のイントロン中のGAA3塩基繰り返しの一定でない超伸長である(非特許文献4参照)。ゲノムDNA中の3塩基繰り返し伸長は、筋緊張性異栄養症、脊髄筋肉萎縮症、脆弱性エックス症候群、ハンチントン病、脊髄小脳運動失調症、筋萎縮性側索硬化症、ケネディー病、脊髄および延髄筋肉萎縮症およびアルツハイマー病を含むがそれらに限定されない、多数の他の神経変性疾患および神経筋疾患と関連している。3塩基繰り返し伸張は、遺伝子発現を変化させて疾患の原因となることがある。例えば、ハンチントン病、脊髄小脳運動失調症、脆弱性エックス症候群および筋緊張性異栄養症では、伸長した繰り返しが遺伝子抑制を招く。従って、神経系疾患において遺伝子の正常な機能を回復させることができる分子を開発する必要がある。
【非特許文献1】Pandolfo (1999) Semin. Neurol. 19:311
【非特許文献2】Bulteauら、(2004) Science 305:242、Seznecら、(2005) Hum. Mol. Genet. 14:463
【非特許文献3】Calabreseら、(2005) J. Neurol. Sci. 233:145
【非特許文献4】Campuzanoら、Science 271:1423 (1996)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、FRDAなどの神経系疾患を治療するために用いることができる小分子を提供する。本発明は、遺伝子の正常な機能を回復させる、例えば、フラタキシンmRNAの転写を回復させるのに有効な小分子阻害剤を提供する。本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤とともにインキュベートされたFRDA患者由来のリンパ球がアセチル化ヒストンのレベルの増加を示すという発見を含む。さらに、本発明には、HDAC阻害剤BML−210および他の新規なHDAC阻害剤にはFRDA患者由来のリンパ球内のフラタキシンmRNAを増加させる効果があるという発見が関わっている。従って、本発明は、HDAC阻害剤の医薬品組成物と、例えばフリードライヒ運動失調症などの慢性および急性神経系疾患のための治療法としての該医薬品組成物の使用とを目的とする。本発明は、新規なHDAC阻害剤、ならびに該HDAC阻害剤の合成のための新規な方法も目的とする。
【0008】
従って、一実施態様では、本発明は、式Ia:
【0009】
【化16】

式中、
nは、2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、Rは、Hまたはアルキルであり、カルボキシエステルのエステル基は、アルキル基である、
の化合物またはその塩を提供し、
がフェニル、nが3〜6のとき、Rは、2−アミノフェニルでなく、Rが2−アミノフェニル、nが3〜6のとき、Rは、フェニルでないものとする。
【0010】
式Iaの化合物は、HDAC阻害剤である。
【0011】
別の実施態様では、本発明は、式I:
【0012】
【化17】

式中、
nは、2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、Rは、Hまたはアルキルであり、カルボキシエステルのエステル基は、アルキル基である、
の化合物またはその塩を合成するための方法を提供する。
【0013】
本発明の方法によれば、式Iの化合物は、式V:
【0014】
【化18】

の化合物を、1つ以上のカップリング剤および式VI:
−NH(R) (VI)
の化合物と接触させ、式Iの化合物を提供することによって合成してよい。式Vの化合物は、式III:
【0015】
【化19】

の化合物を、式IV:
−NH(R) (IV)
の化合物と接触させ、式Vの化合物を提供することによって合成してよい。式IIIの化合物は、式II:
【0016】
【化20】

の化合物を脱水剤と接触させ、式IIIの化合物を提供することによって合成してよい。
【0017】
別の実施態様では、本発明は、薬学的に許容されるキャリアと組み合わされた式Iの化合物を含む医薬品組成物を提供する。本医薬品組成物は、経口投与に適するものであってよい。経口投与に適する医薬品組成物は、錠剤、カプセルまたはエリキシル剤の形であってよい。本医薬品組成物は、静脈内投与、腹腔内投与または皮下投与によるなど、非経口投与に適するものであってもよい。本医薬品組成物は、持続型放出性調合物の形であってもよい。
【0018】
本医薬品組成物は、細胞中のフラタキシンmRNAレベルを増加させるのに有効な量の式Iの化合物を含んでよい。細胞は、哺乳類細胞であってよい。哺乳類細胞は、リンパ球、心筋細胞または神経細胞などのヒト細胞であってよい。
【0019】
本発明は、フリードライヒ運動失調症を治療するために式Iの化合物を用いてよい旨を表示するラベルを有するパッケージング材料中に内包された式Iの化合物を含む製品も提供する。
【0020】
別の実施態様では、本発明は、ヒトなどの哺乳類の神経変性病または神経筋病を治療し、予防し、または発症を遅れさせる方法を提供する。本方法は、該哺乳類に、該哺乳類中のヒストンアセチル化のレベルを変化させるのに有効な量の式Iの化合物を投与することを含む。式Iの化合物は、経口投与してよく、あるいは非経口投与してよい。本方法は、該哺乳類が神経変性病または神経筋病の患者であること、または患者になるおそれがあることを特定することも含んでよい。神経変性病は、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、フリードライヒ運動失調症、脆弱性X症候群、ケネディー病、脊髄萎縮症および延髄筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症およびアルツハイマー病であってよい。神経筋病は、脊髄筋肉萎縮症または筋緊張性異栄養症であってよい。従って、一態様では、本発明は、哺乳類におけるフリードライヒ運動失調症を治療し、予防し、または発症を遅れさせる方法を提供する。この方法は、該哺乳類に、該哺乳類中のフラタキシンmRNAを増加させるのに有効な量の式Iの化合物を投与することを含む。本方法は、該哺乳類がフリードライヒ運動失調症の患者であること、または患者になるおそれがあることを特定することを含んでよい。フリードライヒ運動失調症の患者であるかまたは患者になるおそれがある哺乳類は、フラタキシン遺伝子のイントロン1中のGAA3塩基繰り返しの長さ、伸長の程度または伸張の数を測定して特定してよい。フラタキシンmRNAまたは蛋白質のレベルを測定して該哺乳類を特定してもよい。
【0021】
(定義)
特に異なる定義を示さない限り、以下の定義を用いる。ラジカル、置換基および範囲に関して下記に列挙する特定の値および好ましい値は、例を示すためのものでしかなく、それらのラジカルおよび置換基について、他の定義された値も、定義された範囲内の他の値も除外しない。アルキル、アルコキシ、アルケニルおよび類似基は、直鎖基および分岐基を指す。
【0022】
本明細書中で参照される基「アルキル」は、任意選択として不飽和であり、任意選択として本明細書に記載される官能基で置換された直鎖または分岐炭化水素ラジカルを指す。アルキル基は、1から約20の炭素原子を含んでよい。例えば、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、ヘキシル、ヘプチルまたはオクチルであってよいが、本発明の範囲はそれらに限定されない。一実施態様では、アルキルは、好ましくは(C〜C)アルキルである。別の実施態様では、アルキルは、好ましくは(C〜C)アルキルである。
【0023】
アルキル基が不飽和の実施態様では、アルキル基は、アルケニル基である。アルケニル基は、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、7−オクテニルおよびそれらの分岐異性体であってよい。
【0024】
本明細書中で参照される基「アルコキシ」は、酸素ラジカルで置換された、任意選択として置換された、アルキル基を指す。アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシまたはヘキシルオキシであってよい。
【0025】
本明細書中で参照される「アリール」は、親の芳香環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去して誘導される6〜18の炭素原子の一価芳香族炭化水素ラジカルを指す。アリール基は、通常、6〜10の炭素原子からなり、さらに、本明細書に記載される任意選択の置換基を有してよい。一般のアリール基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルおよび類似物から誘導されるラジカルを含むが、それらに限定されない。
【0026】
本明細書中で参照される「ヘテロアリール」は、1つ、2つ、または3つの芳香環を含み、芳香環中に少なくとも1つ(通常1から約3)の窒素、酸素または硫黄原子を含む単環、2環または3環の環系を指す。ヘテロアリール基は、本明細書に記載される任意選択の置換基を有してよい。
【0027】
ヘテロアリール基の例は、2H−ピロリル、3H−インドリル、4H−キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β−カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリシニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリルおよびキサンテニルを含むがそれらに限定されない。
【0028】
一実施態様では、用語「ヘテロアリール」は、炭素と、非ペルオキシド酸素、硫黄およびN(Z)から独立に選ばれた1つ、2つ、3つまたは4つのヘテロ原子とを含む5つまたは6つの環原子を含む単環芳香環を示す。ここで、Zは、存在しないか、またはH、O、アルキル、フェニルまたはベンジルである。別の実施態様では、ヘテロアリールは、ヘテロアリールから誘導された約8から10の環原子のオルト縮合2環複素環、特にベンゾ誘導体、またはプロピレン、トリメチレンまたはテトラメチレンジラジカルをヘテロアリールに縮合して誘導したものを示す。
【0029】
本明細書中で参照される「任意選択として」置換された基は、1つ以上の水素原子がそれぞれ独立に非水素置換基で置換される場合の基の置換を指す。任意選択として置換される基は、通常、1つから5つの置換基で置換される。他の実施態様では、任意選択として置換される基は、1つから3つの置換基で置換される。一般的な置換基は、−X、−R、−O、=O、−OR、−S、−SR、−S(=O)R、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)OH、−OS(=O)OR、−S(=O)NR、−NR、−N、=NR、−N=C=O、−NCS、−NO、−NO、=N、−N、NC(=O)R、−CX、−C(O)O、−C(=O)R、−C(O)OR、−C(=O)X、−C(=O)NRR、−C(S)R、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(S)NRR、−C(NR)NRR、−CN、−OCN、−SCN、−OP(=O)(OR)、−P(=O)(OR)、−P(=O)(O、−P(=O)(OH)を含むがそれらに限定されない。式中、各Xは、独立に、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI)であり、各Rは、独立に、H、アルキル、アリール、複素環または保護基である。置換基が2つの結合によって(例えば、「二重結合」によって)基に結合しているとき、置換基によって2つの水素原子が置換されている。
【0030】
1つ以上の置換基を含む上記の任意の基に関して、もちろん、そのような基は、立体的に実際的でない、および/または合成的に実現可能でないいかなる置換も置換パターンも含まないと理解される。さらに、本発明の化合物は、これらの化合物の置換によって生じるあらゆる立体化学異性体を含む。
【0031】
本明細書で用いられる用語「窒素保護基」は、窒素基に結合したとき、この基で望ましくない反応が起こることを防ぐために用いることができ、後の段階で通常の化学的または酵素的工程によって除去し、遊離の窒素(例えば、−NH−基または−N=基)を復旧させることができる任意の基を指す。
【0032】
本明細書に記載される化合物のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基およびアミド基は、任意選択の保護基を含んでよい。適当な保護基は、当業者に既知である。参照によって本明細書に全体が組み込まれるProtective Groups in Organic Synthesis, Theodora W. Greene (John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991, ISBN 0−471−62301−6) に、本発明の化合物とともに用いることができる多数の保護基および対応する化学開裂反応が記載されている。この書物には、ヒドロキシル保護基、カルボン酸保護基およびアミド形成基が含まれている。特に、Chapter 1, Protecting Groups: An Overview, pages 1−20、Chapter 2, Hydroxyl Protecting Groups, pages 21−94、Chapter 4, Carboxyl Protecting Groups, pages 118−154 および Chapter 5, Carbonyl Protecting Groups, pages 155−184を参照すること。参照によって本明細書に全体が組み込まれる Kocienski, Philip J.; Protecting Groups (Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York, 1994) も参照すること。下記の保護基の使用を説明する節で、本発明の化合物を合成する際に使用することができるいくつかの特定の保護基を考察する。
【0033】
本明細書中で用いられる「塩基」は、プロトン受容体として作用する任意の分子、イオンまたは他の実体を指す。塩基は、非共有電子対を有する有機化合物またはイオンであってよい。一般的な塩基は、モノ、ジ、およびトリアルキル置換アミンを含む。塩基は、金属酸化物または金属水酸化物などの無機化合物またはイオンであってもよい。有機合成において用いられる塩基は、当業者に公知である。例えば、the Aldrich Handbook of Fine Chemicals, 2003−2004 (Milwaukee, WI)に多数の塩基が開示されている。
【0034】
本明細書中で用いられる「溶媒」は、別の物質、例えば固体物質、半固体物質または液体を溶解することができる物質、通常は液体を指す。一般的な溶媒は、水および有機溶媒を含む。使用される反応条件下で、溶媒は、反応混合物中に存在するいかなる出発原料または試薬とも、有意な程度には、化学的に反応しない必要があることは当業者に自明である。
【0035】
本明細書中で用いられる「溶媒系」は、1つ以上の溶媒を含む媒質を指す。溶媒系は、均一(相溶性の複数溶媒)であってよく、あるいは不均一(例えば、有機/水系)であってよい。
【0036】
本明細書中で用いられる「還流」は、容器、例えばコンデンサを取り付けた容器中で液体溶媒系を沸騰させ、溶媒系の蒸気が連続的に凝縮して再び沸騰するようなプロセスを指す。
【0037】
本明細書中で用いられる「精製」は、基質(例えば、結晶、非晶質固体、液体または油)から不純物を除去するプロセスを指す。適当な精製方法は、例えば、ろ過、洗浄、再結晶および乾燥、蒸留ならびにクロマトグラフィーを含む。
【0038】
本明細書で用いられる用語「単離された」および「精製された」は、他の試薬を実質的に含まない、例えば、重量基準で少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の純度の物質を指す。
【0039】
本明細書で用いられる「無水」は、約10重量%より少ない水、約1重量%より少ない水、約0.5重量%より少ない水、約0.1重量%より少ない水、または約0.01重量%より少ない水を含む物質を指す。無水条件は、約2重量%より少ない水、約1重量%より少ない水、約0.5重量%より少ない水、約0.1重量%より少ない水、または約0.01重量%より少ない水を有する反応条件を指す。
【0040】
本明細書で用いられる「接触させる」は、触れさせる、接触をさせる、またはすぐ近くに持って来る行為を指す。一般に、適当な溶媒系中に溶液を形成させることによって化合物を接触させる。
【0041】
化合物、組成物およびその他の限定条件の詳細を記載するにあたって、本明細書に示される数値範囲は、本組成物中に機能としての結果をもたらす数量である。従って、一般に、範囲は、その範囲の特定の柔軟性を示す用語「約」とともに導入される。例えば、用語「約」は、示された数、あるいは範囲上限または下限から±整数1を指してよい。他の実施態様では、用語「約」は、示された数、あるいは範囲上限または下限から±整数2を指してよい。用語「約」は、示された数または数値範囲の±20%を指してもよい。他の実施態様では、用語「約」は、示された数または数値範囲の±10%、あるいは±5%を指してよい。さらに他の実施態様では、用語「約」は、±1%を指す。さらに他の実施態様では、用語「約」は、厳密に示された数または数値範囲を指す。
【0042】
他の定義を示さない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解すると同じ意味を有する。適当な方法および物質を下記に記載するが、本明細書に記載する方法および物質と類似または同等な方法および物質を用いて本発明を実施してよい。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によって全体が組み込まれる。本明細書は、特定の用語の選ばれた定義を提供し、不一致がある場合、これらの定義が他の定義より優先する。さらに、物質、方法および実施例は、例を示すものでしかなく、限定を目的とするものではない。
【0043】
以下の詳細な説明によって、ならびに請求項によって、本発明の他の特徴および利点を明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(発明の詳細な説明)
本発明は、FRDAなどの神経学的病気を治療するのに用いることができる小分子を提供する。本発明には、FRDA患者由来のリンパ球が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤とインキュベートすると、アセチル化ヒストンのレベルの増加を示すという発見が関与している。さらに、本発明には、HDAC阻害剤であるスベロイルアニリドオルトアミノアニリド(SAOA、BML−210)およびピメロイルアニリドオルトアミノアニリド(PAOA)、ならびにSAOAおよびPAOAの新規な誘導体にはFRDA患者由来のリンパ球中のフラタキシンmRNAおよび蛋白質の発現を増加させる効果があるという発見が関与している。従って、本発明は、HDAC阻害剤の医薬品組成物と、例えばフリードライヒ運動失調症などの慢性および急性の神経疾患の治療法としての該医薬品組成物の使用とを提供する。本発明は、新規なHDAC阻害剤、ならびに該阻害剤の合成のための新規な方法も提供する。
【0045】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤
FRDA患者の98%に見いだされるDNA異常がフラタキシン遺伝子の最初のイントロン中のGAA3塩基繰り返しの一定でない超伸張であり、その結果、フラタキシン遺伝子の転写に欠損が生じる(Campuzanoら (1996) Science 271:1423−7参照)。FRDA患者には、フラタキシンmRNAが著しく欠損し、GAA3塩基繰り返しが長くなるほど、フラタキシン欠損が重くなることもある。FRDAは、典型的な3塩基繰り返し疾患である。すなわち、正常な対立遺伝子の繰り返しは6〜34であるが、FRDA患者の対立遺伝子の繰り返しは66〜1700である。GAA3塩基繰り返しが長くなるほど、発症が早くなり、疾患の重さが増大する。
【0046】
本発明は、FRDAなどの3塩基繰り返し伸張と関連する神経疾患において遺伝子機能を回復させることができるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を提供する。例えば、本発明のHDACは、FRDA患者由来のリンパ球中のフラタキシンmRNAおよび蛋白質を増加させることができる。「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」とは、1つ以上のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)と結合し、ヒストン、非ヒストン染色体蛋白質、およびその他の細胞蛋白質のアセチル化のレベルを調節する小分子である。本発明のHDAC阻害剤は、HDACと相互作用し、細胞標的のアセチル化のレベルを調節することができる。
【0047】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、アセチル化された標的蛋白質からのアセチル基の除去(脱アセチル化)を触媒するポリペプチドの特徴となる特性を有する任意のポリペプチドであってよい。HDACの特徴となる特性は、当分野で既知である。例えば、Finninら (1999) Nature 401:188を参照すること。従って、HDACは、ヌクレオソームを形成するヒストン、例えばH3、H4、H2AおよびH2BのN−末端に位置する保存されたリジン残基のε−アミノ基を脱アセチル化して遺伝子転写を抑制するポリペプチドであってよい。HDACは、p53、E2F、α−チューブリンおよびMyo Dなどの他の蛋白質を脱アセチル化してもよい。Annemiekeら (2003) Biochem. J. 370:737を参照すること。HDACは、核に局所化してもよく、あるいは、核と細胞質との両方に見いだされるものであってもよい。
【0048】
本発明のHDAC阻害剤は、任意のHDACと相互作用してよい。例えば、本発明のHDAC阻害剤は、3つの既知のクラスのHDACの1つに由来するHDACと相互作用してよい。本発明のHDAC阻害剤は、クラスIまたはクラスIIのHDACファミリーのHDACと相互作用してよい。クラスIのHDACは、酵母転写制御因子RPD3に最もよく似ているものである。クラスIのHDACの例は、HDAC1、2、3および8、ならびにアミノ酸配列がHDAC1、2、3および8と45%から93%の同一性を示すデアセチラーゼドメインを有する任意のHDACを含む。クラスIIのHDACは、酵母HDA1酵素に最もよく似ているものであり、クラスIIのHDACの例は、HDAC4、5、6、7、9および10を含む。本発明のHDAC阻害剤は、酵母SIR2蛋白質に最もよく似ているHDACのNAD+依存性ファミリーと相互作用してもよい。本発明のHDAC阻害剤は、上記クラスの1つに属さないHDACと相互作用してもよい。例えば、Gaoら (2002) J. Biol. Chem. 277:25748を参照すること。
【0049】
本発明の小分子量HDAC阻害剤は、SAOAおよびPAOA、本明細書に記載されるSAOAおよびPAOAの誘導体、ならびにそれらの塩を含む。従って、本発明のHDAC阻害剤は、式I:
【0050】
【化21】

式中、
nは、2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、Rは、Hまたはアルキルであり、カルボキシエステルのエステル基は、アルキル基である、
の化合物またはその塩を含む。
【0051】
式Iにおいて、アルキル置換基、アリール置換基またはヘテロアリール置換基は、カルボキシル、カルボキシエステルまたはカルボキサミド以外であってよい。
【0052】
一実施態様では、Rは、アリールであってよい。別の実施態様では、Rは、ヘテロアリールであってよい。他の実施態様では、Rは、フェニル、2−アミノフェニル、3−アミノフェニル、4−アミノフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニルまたは4−メトキシフェニルであってよい。他の実施態様では、Rは、2−メチルフェニル、3−メチルフェニルまたは4−メチルフェニルであってよい。他の実施態様では、Rは、2,4−ジメトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、2,4−ジアミノフェニル、3,5−ジアミノフェニルまたは3,4,5−トリアミノフェニルであってよい。さらに他の実施態様では、Rは、2−ピリジニル、3−キノリニルまたは8−キノリニルであってよい。
【0053】
一実施態様では、Rは、アリールであってよい。別の実施態様では、Rは、ヘテロアリールであってよい。特定の実施態様では、Rは、フェニル、2−アミノフェニル、3−アミノフェニル、4−アミノフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニルまたは4−メトキシフェニルであってよい。他の実施態様では、Rは、2−メチルフェニル、3−メチルフェニルまたは4−メチルフェニルであってよい。他の実施態様では、Rは、2,4−ジメトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、2,4−ジアミノフェニル、3,5−ジアミノフェニルまたは3,4,5−トリアミノフェニルであってよい。さらに別の実施態様では、Rは、2−ピリジニル、3−キノリニルまたは8−キノリニルであってよい。
【0054】
実施態様によっては、RとRとは同じであってよい。他の実施態様では、RとRとは同じでない。
【0055】
一実施態様では、Rは、Hである。別の実施態様では、Rは、Hである。さらに別の実施態様では、Rは、窒素保護基である。さらに別の実施態様では、Rは、窒素保護基であってよい。
【0056】
一実施態様では、nは、約3から約6である。別の実施態様では、nは、5である。さらに別の実施態様では、nは、6である。
【0057】
一実施態様では、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてよい。Rは、1から約5、または1から約3の置換基で置換されていてよい。一実施態様では、Rは、2つのアミノ基で置換されていてよい。別の実施態様では、Rは、2つのメトキシ基で置換されていてよい。
【0058】
一実施態様では、Rは、1つ以上の置換基で置換されていてよい。Rは、1から約5、または1から約3の置換基で置換されていてよい。一実施態様では、Rは、2つのアミノ基で置換されていてよい。別の実施態様では、Rは、2つのメトキシ基で置換されていてよい。
【0059】
HDAC阻害剤の合成方法
本発明は、HDAC阻害剤の合成のための新規な方法も提供する。例えば、式Iの化合物は、式V:
【0060】
【化22】

の化合物を、1つ以上のカップリング剤および式VI:
−NH(R) (VI)
の化合物と接触させ、式Iの化合物を提供することによって、合成してよい。カップリング剤は、1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)および1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)であってよい。式Vの化合物と式VIの化合物とのカップリングは、1つ以上の塩基性化合物の存在下で行ってよい。適当な塩基性化合物または「塩基」は、アルキルアミンを含む。アルキルアミンは、トリアルキル置換アミン、例えばトリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンであってよい。2,6−ルチジンおよび2,4,6−コリジンなどの立体障害アミンも、本発明の特定の実施態様で用いてよい。
【0061】
溶媒系の存在下で式Vの化合物と式VIの化合物とのカップリングを行ってよい。一般的な溶媒系は、1成分溶媒または2成分以上の溶媒であってよい。溶媒系は、1つ以上の有機溶媒であってよい。2成分溶媒系は、互いに相溶性の2つの溶媒を含む。溶媒系は、式Iの化合物を生成するまで反応が進行するのを可能にする程度に式Vの化合物とVIの化合物とを溶解するとよい。適当な溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロピラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジクロロメタンおよびその他の任意の適当な非プロトン溶媒を含む。
【0062】
式Iの化合物を単離し、精製してよい。用いてよい精製技法は、沈殿、ろ過、再結晶、ならびにGC、HPLC、逆相クロマトグラフィー、ゲルプレート、薄層クロマトグラフィーおよび類似技法を含むがそれらに限定されない他の形のクロマトグラフィーを含む。
【0063】
本発明は、式III:
【0064】
【化23】

の化合物を、式IV:
−NH(R) (IV)
の化合物と接触させ、式Vの化合物を提供することによって式Vの化合物を合成する方法も提供する。溶媒系の存在下で式IIIの化合物と式IVの化合物とを接触させてよい。溶媒系は、1つ以上の有機溶媒を含んでよい。適当な溶媒は、エーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサンを含む。一実施態様では、溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0065】
本発明は、式II:
【0066】
【化24】

の化合物を脱水剤と接触させ、式IIIの化合物を提供することによって式IIIの化合物を合成する方法も提供する。脱水剤は、カルボン酸無水物であってよい。一実施態様では、カルボン酸無水物は、無水酢酸である。他のアルキルまたはアリールカルボン酸無水物もこの反応で使用してよい。一般に、無水条件下で式IIIの化合物の形成を行う。反応体、試薬および装置の適当な乾燥によって無水条件を実現してよい。式IIの化合物と脱水剤とを加熱して式IIIの化合物の形成を促進してよい。反応の温度を、例えば、約35℃、約40℃、約50℃、約70℃または約100℃に上げてよい。溶媒系が還流を実現する温度によって反応の温度を定めてもよい。そのような場合、反応は、使用する溶媒系の還流温度までであってよい。
【0067】
式IIの化合物から式Vの化合物を合成するための合成プロトコルの例を、下の図式1のように示すことができる。
【0068】
【化25】

式IIIの化合物を単離し、精製してよい。あるいは、式IIIの化合物を精製しないでそのまま式Vの化合物に変換してよい。
【0069】
式Vの化合物から式Iの化合物を合成するための合成プロトコルの例を、下の図式2のように示すことができる。
【0070】
【化26】

これらの方法は、そのような合成の性質の例を示すことを意図し、利用可能な方法の範囲を限定するものではない。本発明のHDAC阻害剤は、本明細書に記載のように合成してよく、あるいは、任意の他の当分野で既知の有機合成の利用可能な技法を用いて合成してもよい。本明細書に記載されていない多数の利用可能な技法が当分野では公知である。しかし、Compendium of Organic Synthetic Methods (John Wiley & Sons, New York), Volumes 1−6 ならびにMarch, J., Advanced Organic Chemistry, 3rd Ed. (John Wiley & Sons, New York, 1985)、およびComprehensive Organic Synthesis. Selectivity, Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry, in 9 Volumes, Barry M. Trost, Ed.−in−Chief (Pergamon Press, New York, 1993 printing) に、既知の技法の多くが詳細に記載されている。
【0071】
一般に、温度、反応時間、溶媒、後処理手順および類似事項などの反応条件は、当分野において特定の反応を行う際に普通のものである。引用文献の事例は、文献中の引用事項とともに、そのような条件の詳細な説明を含む。一般に、温度は約−100℃から約200℃とし、溶媒は必要な条件によって非プロトン性またはプロトン性とし、反応時間は1分から10日とする。所望の変換を実現するために反応時間を調節する。反応の後処理は、粗生成物を提供する溶媒の除去、沈殿およびろ過、および/または任意の未反応試薬の不活性化とそれに続く水/有機層系の間の分配(抽出)ならびに生成物を含む層の分離を含んでよい。
【0072】
保護基 用語「保護基」は、ヒドロキシル、窒素または他のヘテロ原子に結合されると、望ましくない反応がこの基で起こることを防ぎ、通常の化学または酵素による工程によって除去し、ヒドロキシル基を復旧させることができる任意の基を指してよい。使用される特定の除去可能な保護基は、それほど重要ではなく、好ましい除去可能なヒドロキシルおよび窒素保護基は、例えば、アリル、ベンジル、アセチル、クロロアセチル、チオベンジル、ベンジリジン、フェナシル、メチル、メトキシ、シリルエーテル類(例えば、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチル−ジフェニルシリル(TBDPS)またはt−ブチルジメチルシリル(TBS)およびヒドロキシル基または窒素官能基上に化学的に導入することができ、後で生成物の性質と適合する温和な条件で化学的または酵素的方法のどちらかによって選択的に除去することができる任意のその他の基などの通常の置換基を含む。
【0073】
適当なヒドロキシル保護基は、当業者に既知であり、参照によってともに本明細書に全体が組み込まれるT.W. Greene, Protecting Groups In Organic Synthesis; Wiley: New York, 1981(「Greene」)およびその中の引用文献、ならびにKocienski, Philip J.; Protecting Groups (Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York, 1994)にさらに詳細に開示されている。
【0074】
保護基は、入手可能であり、普通に知られており、任意選択として合成手順、すなわち本発明の方法によって本化合物を合成する経路または方法において被保護基の副反応を防ぐために用いられる。ほとんどの場合、どの基を保護するか、いつ保護するか、どのような性質の化学保護基とするか、という決定は、保護する対象である反応の化学的性質(例えば酸性、塩基性、酸化性、還元性または他の条件)および意図する合成方針に依存する。
【0075】
化合物が複数の保護基で置換されている場合、保護基は同じである必要はないし、通常は同じでない。一般に、保護基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオ基またはアミノ基などの官能基を保護し、従って副反応を防ぐか、または他の方法で合成の効率を促進するために用いられる。遊離の、脱保護された基を生じさせる脱保護の順序は、意図する合成の方針および遭遇する反応条件に依存し、担当者が定める任意の順序で実行してよい。
【0076】
本発明の化合物のさまざまな官能基は、保護されていてよい。例えば、−OH基(ヒドロキシル、カルボン酸または他の官能基のどれか)用の保護基は、「エーテル形成基またはエステル形成基」を含む。エーテル形成基またはエステル形成基は、本明細書に示される合成図式において化学保護基として機能することができる。しかし、いくつかのヒドロキシル保護基およびチオ保護基は、当業者によって理解されるように、エーテル形成基でもエステル形成基でもない。いくつかは、例えば、下記で考察するアミドの考察に含まれる。
【0077】
カルボン酸保護基、および他の酸用保護基についてもっと知りたい場合は、下記に示すグリーン(Greene)を参照すること。そのような基は、例えば、エステル、アミド、ヒドラジドおよび類似物を含むがそれらに限定されない。
【0078】
エーテル、エステルおよびアミド形成保護基
エステルおよびアミド形成基は、(1)カルボキシルエステル/アミド形成基と、(2)スルホネート、サルフェートおよびスルフィネートなどの硫黄エステル形成基とを含む。エステルを形成するその役割を見ると、通常、保護基は、例えば−COH基などであるがそれに限定されない任意の酸性の基に結合し、それによって、結果としてCOとなる。ここでRは、本明細書に定義するとおりである。保護基の例は、以下を含む。
【0079】
複素環またはアリールラジカル。これらの基は、任意選択として、多環であっても単環であってもよい。例は、フェニル、スピリル、2−および3−ピロリル、2−および3−チエニル、2−および4−イミダゾリル、2−、4−および5−オキサゾリル、3−および4−イソオキサゾリル、2−、4−および5−チアゾリル、3−、4−および5−イソチアゾリル、3−および4−ピラゾリル、1−、2−、3−および4−ピリジニルおよび1−、2−、4−および5−ピリミジニルを含む。
【0080】
ハロ、R、アルキレン−O−R、アルコキシ、−CN、−NO、−OH、カルボキシ、カルボキシエステル、チオール、チオエステル、ハロアルキル(1〜6のハロゲン原子)、アルケニルまたはアルキニルで置換された複素環またはアリール。そのような基は、2−、3−および4−アルコキシフェニル(C〜C12アルキル)、2−、3−および4−メトキシフェニル、2−、3−および4−エトキシフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−および3,5−ジエトキシフェニル、2−および3−カルボエトキシ−4−ヒドロキシフェニル、2−および3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル、2−および3−エトキシ−5−ヒドロキシフェニル、2−および3−エトキシ−6−ヒドロキシフェニル、2−、3−および4−O−アセチルフェニル、2−、3−および4−ジメチルアミノフェニル、2−、3−および4−メチルメルカプトフェニル、2−、3−および4−ハロフェニル(2−、3−および4−フルオロフェニルならびに2−、3−および4−クロロフェニルを含む)、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−および3,5−ジメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−および3,5−ビスカルボキシエチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−および3,5−ジメトキシフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−および3,5−ジハロフェニル(2,4−ジフルオロフェニルおよび3,5−ジフルオロフェニルを含む)、2−、3−および4−ハロアルキルフェニル(1から5のハロゲン原子、4−トリフルオロメチルフェニルを含むC〜C12アルキル)、2−、3−および4−シアノフェニル、2−、3−、および4−ニトロフェニル、2−、3−および4−ハロアルキルベンジル(1から5のハロゲン原子、4−トリフルオロメチルベンジル、2−、3−および4−トリクロロメチルフェニルならびに2−、3−および4−トリクロロメチルフェニルを含むC〜C12アルキル)、4−N−メチルピペリジニル、3−N−メチルピペリジニル、1−エチルピペラジニル、ベンジル、アルキルサリチルフェニル(2−、3−および4−エチルサリチルフェニルを含むC〜Cアルキル)、2−, 3−および4−アセチルフェニル、1,8−ジヒドロキシナフチル(−C10−OH)およびアリールオキシエチル[C〜Cアリール(フェノキシエチルを含む)]、2,2′−ジヒドロキシビフェニル、2−、3−および4−N,N−ジアルキルアミノフェノール、−CCH−N(CH、トリメトキシベンジル、トリエトキシベンジル、2−アルキルピリジニル(C1〜4アルキル);2−カルボキシフェニルのC〜Cエステル;アリール部分において3から5のハロゲン原子、またはハロゲン、C〜C12アルコキシ(メトキシおよびエトキシを含む)、シアノ、ニトロ、−OH、C〜C12ハロアルキル(1から6のハロゲン原子、−CHCCl3を含む)、C〜C12アルキル(メチルおよびエチルを含む)、C〜C12アルケニルまたはC〜C12アルキニルから選ばれた1から2の原子または基によって置換されたC1〜4アルキレン−C〜Cアリール(ベンジル、−CH−ピロリル、−CH−チエニル、−CH−イミダゾリル、−CH−オキサゾリル、−CH−イソオキサゾリル、−CH−チアゾリル、−CH−イソチアゾリル、−CH−ピラゾリル、−CH−ピリジニルおよび−CH−ピリミジニルを含む)、;アルコキシエチル[−CH−CH−O−CH(メトキシエチル)を含むC〜Cアルキル];上記でアリールの場合に示した任意の基、特に−OH、によって置換されたアルキルまたは1から3のハロ原子によって置換されたアルキル(−CH、−CH(CH、−C(CH、−CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−CHCHF、−CHCHCl、−CHCFおよび−CHCClを含む);2−N−モルホリノ−エチル;−N−2−プロピルモルホリノ、2,3−ジヒドロ−6−ヒドロキシインデン、セサモール、カテコールモノエステル、−CH−C(O)−N(R、−CH−S(O)(R)、−CH−S(O)(R)、−CH−CH(OC(O)CH)−CH(OC(O)CH)、コレステリル、エノールピルベート(HOC−C(=CH)−)およびグリセロールを含む。
【0081】
保護基のさらに別の例は、エステル部分である。エステル部分は、例えば、本発明の化合物の酸素を介して−C(O)−O−PG′に結合してよい。ここで、PG′は、−CH−C(O)−N(R、−CH−S(O)(R)、−CH−S(O)(R)、−CH−O−C(O)−CH−C、3−コレステリル、3−ピリジル、N−エチルモルホリノ、−CH−O−C(O)−C、−CH−O−C(O)−CHCH、−CH−O−C(O)−C(CH、−CH−CCl、−C、−NH−CH−C(O)O−CHCH、−N(CH)−CH−C(O)O−CHCH、−NHR、−CH−O−C(O)−C1015、−CH−O−C(O)−CH(CHおよび−CH−CH(OC(O)CH)−CH−(OC(O)CH)である。これらのエステルの多数は、遊離のヒドロキシル(または酸基)を有する本明細書の化合物をDMF(あるいはアセトニトリルまたはN−メチルピロリドンなどの他の溶媒)中で対応するハロゲン化物(クロリドまたはアシルクロリドおよび類似物)ならびにN,N−ジシクロヘキシル−N−モルホリンカルボキサミジン(またはDBU、トリエチルアミン、CsCO、N,N−ジメチルアニリンおよび類似物などの別の塩基)と反応させることによって合成してよい。カップリング試薬を用いて化合物と保護基とのカップリングを容易にしてよい。グリーンによって記載されている方法によって、または当業者に公知の他の方法によって、他のエステルを合成してよい。
【0082】
保護基は、−CHOC(O)OCH、−CHSCOCH、−CHOCON(CH、ジヒドロ−フラン−2−オン−5−イル、あるいはアルキル−またはアリール−アシルオキシアルキル基(酸基の酸素に結合している)など、官能基前駆体を形成する「二重エステル」も含む(米国特許第4,968,788号を参照すること)。別の例は、ピバロイルオキシメチル基である。有用な保護基のその他の例は、2−(アダマンチン−1−カルボキシレート)−エチル、−CH(CHCHOCH)OC(O)C(CH、−CHOC(O)C1015、−CHOC(O)C(CH、−CH(CHOCH)OC(O)C(CH、−CH(CH(CH)OC(O)C(CH、−CHOC(O)CHCH(CH、−CHOC(O)C11、−CHOC(O)C、−CHOC(O)C1015、−CHOC(O)CHCH、−CHOC(O)CH(CH、−CHOC(O)C(CHおよび−CHOC(O)CHを含むアルキルアシルオキシメチルエステルおよびそれらの誘導体である。欧州特許第632048号には、本発明において使用するに適する他のエステルが記載されている。
【0083】
1つ以上の酸性ヒドロキシルを保護してよい。2つ以上の酸性ヒドロキシルを保護する場合、同じ保護基または異なる保護基を使用してよく、例えば、エステルは異なっていてもよく、同じであってもよく、あるいはアミデートとエステルとを混用してもよい。
【0084】
グリーンに記載されている一般的な窒素およびヒドロキシ保護基(14〜118頁)は、置換メチルおよびアルキルエーテル、置換ベンジルエーテル、シリルエーテルと、スルホン酸エステル、カーボネート、サルフェートおよびスルホネートを含むエステルを含む。例えば、
・エーテルメチル、t−ブチル、アリル)、
・置換メチルエーテル(メトキシメチル、メチルチオメチル、t−ブチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、p−メトキシベンジルオキシメチル、(4−メトキシフェノキシ)メチル、グアイヤコールメチル、t−ブトキシメチル、4−ペンテニルオキシメチル、シロキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、テトラヒドロピラニル、3−ブロモテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシテトラヒドロピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S−ジオキシド、1−[(2−クロロ−4−メチル)フェニル]−4−メトキシピペリジン−4−イル、1,4−ジオキサ−2−イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロ−7,8,8−トリメチル−4,7−メタノベンゾフラン−2−イル)、
・置換エチルエーテル(1−エトキシエチル、1−(2−クロロエトキシ)エチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、2−(フェニルセレニル)エチル、
・p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、2,4−ジニトロフェニル、ベンジル、
・置換ベンジルエーテル(p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、p−フェニルベンジル、2−および4−ピコリル、3−メチル−2−ピコリルN−オキシド、ジフェニルメチル、p,p′−ジニトロベンズヒドリル、5−ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、p−メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p−メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p−メトキシフェニル)メチル、4−(4′−ブロモフェナシルオキシ)フェニルジフェニルメチル、4,4′,4″−トリス(4,5−ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、4,4′,4″−トリス(レブリノイルオキシフェニ)メチル、4,4′,4″−トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3−(イミダゾール−1−イルメチル)ビス(4′,4″−ジメトキシフェニル)メチル、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−1′−ピレニルメチル、9−アントリル、9−(9−フェニル)キサンテニル、9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリル、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル、ベンゾイソチアゾリルS,S−ジオキシド)、
・シリルエーテル(シリルオキシ基)(トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリベンジルシリル、トリ−p−キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、t−ブチルメトキシフェニルシリル)、
・エステル(ギ酸エステル、ベンゾイルギ酸エステル、酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、ジクロロ酢酸エステル、トリクロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、フェノキシ酢酸エステル、p−クロロフェノキシ酢酸エステル、p−ポリ−フェニル酢酸エステル、3−フェニルプロピオン酸エステル、4−オキソペンタン酸エステル(レブリン酸エステル)、4,4−(エチレンジチオ)ペンタン酸エステル、ピバル酸エステル、アダマンタン酸エステル、クロトン酸エステル、4−メトキシクロトン酸エステル、安息香酸エステル、p−フェニル安息香酸エステル、2,4,6−トリメチル安息香酸エステル(メシト酸エステル)、
・炭酸エステル(メチル、9−フルオレニルメチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(フェニルスルホニル)エチル、2−(トリフェニルホスホニオ)エチル、イソブチル、ビニル、アリル、p−ニトロフェニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、S−ベンジルチオ炭酸エステル、4−エトキシ−1−ナフチル、メチルジチオ炭酸エステル)、
・支援開裂する基(2−ヨード安息香酸エステル、4−アジド酪酸エステル、4−ニトロ−4−メチルペンタン酸エステル、o−(ジブロモメチル)安息香酸エステル、2−ホルミルベンゼンスルホン酸エステル、2−(メチルチオメトキシ)エチル炭酸エステル、4−(メチルチオメトキシ)酪酸エステル、2−(メトキシチオメトキシメチル)安息香酸エステル)、その他の雑多なエステル(2,6−ジクロロ−4−メチルフェノキシ酢酸エステル、2,6−ジクロロ−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシ酢酸エステル、2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェノキシ酢酸エステル、クロロジフェニル酢酸エステル、イソ酪酸エステル、モノコハク酸エステル、(E)−2−メチル−2−ブテン酸エステル(チグロン酸エステル)、o−(メトキシカルボニル)安息香酸エステル、p−ポリ−安息香酸エステル、α−ナフトエ酸エステル、硝酸エステル、アルキルN,N,N′,N′−テトラメチルホスホロジアミデート、n−フェニルカルバメート、ホウ酸エステル、ジメチルホスフィノチオイル、2,4−ジニトロフェニルスルフェン酸エステル)、
・スルホン酸エステル(サルフェート、メタンスルホネート(メシレート)、ベンジルスルホネート、トシレート、トリフレート)。
【0085】
本発明のHDAC阻害剤の使用
本発明のHDAC阻害剤は、さまざまな神経変性病または神経筋病に対して、予防法として用いてもよく、治療法として用いてもよい。より詳しくは、本発明のHDAC阻害剤は、神経変性病または神経筋病の発症を遅れさせるかまたは予防するために用いてよく、同時に、神経変性病または神経筋病にかかっている哺乳類を治療するために用いてよい。神経変性病の非限定的な例は、脆弱エックス症候群、フリードライヒ運動失調症、ハンチントン病、脊髄小脳失調、筋萎縮性側索硬化症、ケネディー病、脊髄および延髄筋肉萎縮症およびアルツハイマー病を含むがそれらに限定されない。神経筋病の非限定的な例は、脊髄筋肉萎縮症および筋緊張性異栄養症を含む。
【0086】
HDAC阻害剤を投与してよい哺乳類、例えばヒトは、上記で考察した病気にかかっている哺乳類またはヒト、ならびに上記の病気にかかるおそれのある哺乳類またはヒトを含む。神経変性病にかかるおそれのある哺乳類は、例えば、最初に、(1)その個体のゲノム中の特定の核酸配列の繰り返しの長さ、程度または数、コアヒストンのアセチル化の度合い、あるいは特定のmRNAまたは蛋白質の発現レベルを測定し、次に、(2)それを正常な個体のものと比較することを含む多数の方法で特定してよい。神経変性病または神経筋病にかかるおそれのある個体は、特定の核酸配列の繰り返しの数、コアヒストンのアセチル化の度合い、または特定の遺伝子の発現が異常なものである。例えば、フリードライヒ運動失調症にかかるおそれのある哺乳類は、フラタキシン遺伝子の最初のイントロン中のGAA3塩基の繰り返しの長さ、程度または数を測定することによって特定してよい。上記の分析によって34を超えるGAA3塩基の繰り返しがあることが分れば、例えば哺乳類に66を超えるGAA3塩基の繰り返しがあれば、その哺乳類は、フリードライヒ運動失調症にかかるおそれがある。フリードライヒ運動失調症にかかるおそれのある哺乳類は、その哺乳類中のフラタキシンmRNAまたは発現された蛋白質のレベルを測定することによって特定してもよい。哺乳類は、フラタキシンmRNAまたは蛋白質のレベルが、例えば非感染同胞などの健康な個体中で通常観測されるレベルより低ければ、フリードライヒ運動失調症にかかるおそれがあると考えられる。
【0087】
哺乳類に投与されるHDAC阻害剤の量は、感染哺乳類中のヒストンアセチル化のレベル、あるいはmRNAまたは蛋白質発現のレベルを、非感染同胞などの健康な個体の通常のレベルに復帰させるのに適切な任意の量であってよい。投与されるHDAC阻害剤の量は、有効投与量またはその適切な割り合いであってよい。そのような量は、年齢、体調、体の大きさ、体重、治療される病気、病気の重さ、および任意の並行治療を含む個々の患者のパラメータに依存する。例えば、神経変性病の発症を防ぐかまたは遅れさせるために必要な有効投与量の範囲は、治療対象の病気の進行を阻害するための有効投与量範囲より著しく低くてよい。適切な用量を決定する因子は、当業者に公知であり、常識的な実験によって対処してよい。例えば、物理化学的性質、毒物学的性質および薬物動態学的性質の測定は、標準的な化学的および生物学的アッセイを用いて、および化学技術、薬理学技術および毒物学技術において既知の数学的モデル技法の使用によって行ってよい。治療有用性および投薬計画は、そのような技法の結果から、および適切な薬物動態学的モデルおよび/または薬力学的モデルを用いて外挿によって求めてよい。患者に投与するHDAC阻害剤の正確な量は、主治医の責任である。しかし、医学的理由、心理学的理由、または事実上任意の他の理由によって、患者が投与量または許容投与量を低くするよう主張することもある。
【0088】
本発明のHDAC阻害剤は、多数の方法によって投与してよい。例えば、本発明のHDAC阻害剤は、経口投与、直腸投与、経皮投与によって、あるいは筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射または静脈内注射によって投与してよい。好ましくは、本阻害剤は、経口投与または注射によって投与する。他の経路は、直接髄液への髄腔内投与および標的細胞、標的細胞近傍、または標的細胞内の直接導入を含む。治療される病気およびその重さによって、投与の経路を決めてよい。
【0089】
本発明のHDAC阻害剤は、経口または注射によって、哺乳類のkg体重あたり0.1から30mg、好ましくは2から15mg/kg哺乳類の体重の投与量で投与してよい。成人のヒトの投与量範囲は、一般に、8から2,400mg/日、好ましくは35から1,050mg/日である。本発明の特定のHDAC阻害剤は長期作用性なので、最初の日に70から2,400mgの初回投与量を投与し、次に、その後の日々は20から1,200mgと投与量を少なくすると有利なことがある。本化合物の塩を投与する場合、投与する塩の量は、塩基を基準として計算する。
【0090】
医薬品組成物
HDAC阻害剤は、そのまま、あるいは、好ましくは医薬品組成物として投与してよい。本発明の医薬品組成物は、適切なキャリアならびに他の有用な成分と組み合わされた適切な量のHDAC阻害剤を含む。
【0091】
本発明のHDAC阻害剤は、式Iの化合物を含み、当てはまる場合には、式Iの化合物の許容される塩を含む。許容される塩は、以下の酸、すなわち、任意選択として1から4のヒドロキシルで置換された1から20の炭素原子のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールおよびアルケニルアリールのモノ−、ジ−およびトリカルボン酸;任意選択として1から4のヒドロキシルで置換された1から20の炭素原子のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールおよびアルケニルアリールのモノ−、ジ−およびトリスルホン酸、および鉱酸から調製された塩を含むがそれらに限定されない。例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリシクリン酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸およびベンゼンスルホン酸を含む。薬学的に許容される塩は、アミン塩、アンモニウム塩またはカルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製してもよい。これらは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基から、またはアミン化合物から形成される。さらに、官能基の均等物として働く前述の化合物の類似体も均等物として、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0092】
経口投与に適するHDAC阻害剤の医薬品組成物は、(1)予め定められた量のHDAC阻害剤をそれぞれ含むカプセル剤、カシェ剤、錠剤またはトローチ剤などの離散的な単位、(2)粉体または顆粒、(3)ボーラス、舐剤またはペースト、(4)水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液、あるいは(4)水中油液体エマルジョンまたは油中水液体エマルジョンの形であってよい。従って、口中の局所投与、例えば経頬投与または舌下投与に適する組成物は、トローチ剤を含む。非経口投与にする組成物は、水性および非水性無菌懸濁液または注射溶液を含む。直腸投与に適する組成物は、坐薬として投与してよい。
【0093】
従って、固体または液体キャリアを用いてHDAC阻害剤の医薬品組成物を調合してよい。固体または液体キャリアは、調合物の他の成分と適合し、服用者に有害でないものとする。医薬品組成物が錠剤形なら、HDAC阻害剤は、必要な圧縮特性を有するキャリアと適当な比率で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。組成物が粉体形なら、キャリアは、微粉化された有効成分と混合された微粉化固体である。粉体および錠剤は、最大99%の有効成分を含んでよい。適当な固体キャリアは、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を含む。固体キャリアは、着香料、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、充填材、滑走剤、圧縮補助剤、バインダまたは錠剤崩壊剤として機能することがある1つ以上の物質を含んでよい。適当なキャリアは、カプセル化材料であってもよい。
【0094】
組成物が溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシルまたは加圧組成物なら、液体キャリアを用いてよい。この場合、HDAC阻害剤を、薬学的に許容される液体キャリア中に溶解または懸濁する。経口投与および非経口投与のための液体キャリアの適当な例は、(1)水、(2)アルコール、例えば一価アルコールおよびグリコールなどの多価アルコール、それらの誘導体、ならびに(3)油、例えば被分画椰子油および落花生油を含む。非経口投与の場合、キャリアは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであってもよい。加圧組成物のための液体キャリアは、ハロゲン化炭化水素またはその他の薬学的に許容される推進体を含む。液体キャリアは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、着香料、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤、浸透圧調節剤、カルボキシルメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、抗酸化剤および静菌薬など、その他の適当な医薬品添加物を含んでよい。他のキャリアは、スクロース、アカシア、トラガカンタ、ゼラチンおよびグリセリンなど、トローチ剤を調合するために用いられるもの、ならびにカカオバターまたはポリエチレングリコールなど、坐薬を調合する際に用いられるものを含む。
【0095】
本組成物が灌流または注射によって静脈内投与または腹膜内投与される場合、HDAC阻害剤の溶液は任意選択として、非毒性界面活性剤と混合して、水溶液として調製してよい。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびそれらの混合物および油の中で調製してもよい。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防ぐ防腐剤を含む。注射または灌流に適する組成物は、無菌注射用溶液または灌流可能溶液あるいは分散液を即座に調製するようになっている、任意選択としてリポソーム中にカプセル化された、有効成分を含む無菌水溶液または分散液、あるいは無菌粉体を含んでよい。いずれにしても、最終的な投薬形は、製造および貯蔵条件下で無菌、流動性および安定な必要がある。液体キャリアまたはビヒクルは、上記に記載した溶媒または液体分散媒であってよい。例えば、リポソームを形成させて、分散液の場合には必要な粒子サイズを保持して、または界面活性剤を用いて適切な流動性を保持してよい。微生物の作用の予防は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールおよび類似物によって実現してよい。多くの場合、等張剤、例えば砂糖、緩衝剤または塩化ナトリウムを含むと好ましい。吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に用いることによって、注射用組成物の吸収を長引かせてよい。必要に応じて、必要量のHDAC阻害剤を適切な溶媒中に組み込み、次にろ過滅菌することによって、上記で列挙した他の成分のさまざまなものとともに無菌注射用溶液を調製する。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉体の場合、好ましい調製法は、真空乾燥技法および凍結乾燥技法である。これらの技法によって、HDAC阻害剤プラス既に無菌ろ過した溶液中に存在する任意の別の所望の成分の粉体を作り出す。
【0096】
本発明の医薬品組成物は、単位投与形または多回投与形であってよく、あるいはHDAC阻害剤の遅い放出または制御された放出を可能にする形であってよい。各単位投与形は、錠剤、カプセル剤、または、例えばパッケージ化粉体、バイアル、アンプル、事前充填注射器または液体を含むサシェなどのパッケージ化組成物の形であってよい。単位投与形は、適切な数のパッケージ形の任意のそのような組成物であってよい。多回投与形の医薬品組成物は、密封アンプルおよびバイアルなどの容器中にパッケージ化してよい。この場合、HDAC阻害剤は、使用の直前に無菌液体キャリアを加えるだけでよい凍結乾燥(疎液化)状態で保存してよい。さらに、迅速注射溶液および懸濁液は、既に記載した種類の無菌粉体、顆粒および錠剤から調製してよい。
【0097】
以下の実施例中に本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、請求項に記載されている本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0098】
(実施例1 材料および方法)
細胞培養
FRDA患者由来のエプスタインバー(Epstein Barr)ウイルス変換リンパ芽球細胞系統GM15850(フラタキシン遺伝子中に650および1030のGAA繰り返しを有する対立遺伝子、Coriell Cell Repository, Camden, NJから)、および非感染同胞由来のGM15851(正常な繰り返しの範囲)をRPMI1640培地中で2mMのL−グルタミンおよび15%のウシ胎仔血清とともに37℃、5%CO中で増殖させた。位相差顕微鏡法によって細胞の成長および形態、トリパンブルー排除法によって生存率を追跡した。HDAC阻害剤をDMSOに溶かし、表および図の註に示した濃度で、表示の回数、培地に加えた。培養培地中の最終DMSO濃度は、0.5%(体積/体積)を超えなかった。すべての対照試料は、化合物を含まない同濃度のDMSOで処理した。HDAC阻害剤の販売業者は、バルプロン酸(VPA)がカルバイオケム(Calbiochem)(San Diego, CA);トリコスタチンA(TSA)、スベロイルビス−ヒドロキサム酸(SBHA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)およびBML−210がバイオ−モル(Bio−Mol)(Plymouth Meeting, PA)であり、それぞれ、図に示した、販売業者報告のIC50値で試験した。
【0099】
リアルタイム定量的RT−PCR
リアルタイム定量的RT−PCR分析は、フラタキシン遺伝子用の次のプライマー、すなわち5′−CAGAGGAAACGCTGGACTCT−3′および5′−AGCCAGATTTGCTTGTTTGG−3′を用い、基本的にChumaら、Hepatology 37:198−207(2003) に記載されているとおりに実行した。Pattynら、Nucl. Acids Res. 31:122−3 (2003) に記載されているように、GAPDHのmRNAの定量化によってRNAを標準化し、すべての値をGAPDHに対する相対値として表した。iScript一段RT−PCRキットをSYBRグリーン(BioRad)とともに用いて定量的リアルタイムRT−PCRを実行した。各RNA試料について、3回の独立な定量的RT−PCR実験を統計解析した。図に示した誤差バーは、平均値の標準誤差を表している。
【0100】
ウエスタンブロット分析
HDAC阻害剤で処理した細胞と処理していない細胞との蛋白質レベルを、ヒストンH3およびH4(Upstate Biotechnology)への抗体、またはこれらの蛋白質のアセチル化体への抗体を用いるウェスタンブロッティングによって追跡した。Upstate Biotechnologyから提供されたプロトコルに記載されていたように、酸抽出によってヒストンを精製した。ヒトフラタキシンへの抗体は、Mitoscience (Eugene, OR)から、抗アクチン抗体は、Santa Cruz Biotechnology (CA) から入手した。フラタキシンおよびアクチンのウェスタンブロットには全細胞抽出物を用いた。HRP−共役二次抗体(Supersignal West, Pierce)を用いてブロットを探測した後、化学ルミネセンスによって信号を検出した。蛋白質の相対レベルを定量化するために、オートラジオグラム(X線フィルムの線形応答範囲内)をディジタル画像に変換し、Molecular Dynamics ImageQuantソフトウェアを用いて信号を定量した。
【0101】
クロマチン免疫沈降
既に記載したようにクロマチン免疫沈降を行った(Luoら、Cell 92:463−73 (1998)を参照。各免疫沈降実験の場合、25〜50μgの全DNAに対応する量の溶解物を以下の抗体(それぞれUpsate Biotechnologyから入手、表示したカタログナンバーを有する)、すなわち、抗−アセチル−ヒストンH3(06−599)、抗−アセチル−ヒストンH4(06−598)、抗−アセチル−ヒストンH3−Lys9(07−352)、抗−アセチル−ヒストンH3−Lys14(07−353)、抗−アセチル−ヒストンH4−Lys5(07−327)、抗−アセチル−ヒストンH4−Lys8(07−328)、抗−アセチル−ヒストンH4−Lys12(07−595)、抗−アセチル−ヒストンH4−Lys16(07−329)の1つとインキュベートした。標準曲線法を用い、リアルタイムPCRによって3試料測定法で試料を定量した。図に示した誤差バーは、平均値の標準誤差を表している。この測定に用いたプライマーは、フラタキシンプロモーター用が5′−CCCCACATACCCAACTGCTG−3′および5′−GCCCGCCGCTTCTAAAATTC−3′、フラタキシン遺伝子のイントロン1中のGAA繰り返しの上流領域用が5′−GAAACCCAAAGAATGGCTGTG−3′および5′−TTCCCTCCTCGTGAAACACC−3′、フラタキシン遺伝子のイントロン1中のGAA繰り返しの下流領域用が5′−CTGGAAAAATAGGCAAGTGTGG−3′および5′−CAGGGGTGGAAGCCCAATAC−3′、GAPDH用が5′−CACCGTCAAGGCTGAGAACG−3′および5′−ATACCCAAGGGAGCCACACC−3′であった。
【0102】
ヒストンデアセチラーゼアッセイ
バイオモルのAK500キットを用いてヒストンデアセチラーゼ阻害剤のそれぞれをアッセイし、IC50値を測定した。バイオモル社の記載のとおりに試料を処理し、96ウェル蛍光プレートリーダーを用いて読み取った。カレイダグラフ(Kaleidagraph)ソフトウェアを用いてデータの半対数プロットを解析し、IC50値を求めた。
【0103】
ヒト被検者および一次リンパ球
フリードライヒ運動失調症研究協議会(The Friedreich’s Ataxia Research Alliance (Arlington, VA))が、感染した個人および兄弟または両親の家族の集団を募集して匿名の献血を受けた(適切なインフォームドコンセントの下、Scripps Clinic Human Subjects CommitteeおよびNINDSが承認したヒト被検者プロトコルに従って実施した)。ヘパリン化Vacutainer管(#364680, BD Biosciences)に血液を採取し、製造業者の指示に従い、Ficoll−Paque PLUS(Amersham Biosciences)を用いて密度遠心分離によってリンパ球を単離した。株化細胞系統と同じ培養培地および状態にリンパ球を保持し、上記に記載したとおりにHDAC阻害剤で処理した。16時間後、細胞をHDAC阻害剤で処理し、さらに48時間インキュベーションした後、RNAを単離した。これらの培養条件下では、細胞数の増加は観測されなかった。
【0104】
(実施例2 新規な二段階手順によるビス−アミドHDAC阻害剤の合成)
一般的な合成手順
HDAC阻害剤の合成のための出発原料として、アジピン酸1a(図式1、n=3)、ピメリン酸1b(n=4)またはスベリン酸1c(n=5)を用いた。合成の図式は、下に示したとおりである。
【0105】
【化27】

還流下、無水酢酸と反応させると、これらのジカルボン酸は、分子内閉環して化合物2a、2bおよび2cとなる。報告されている結果(Wongら、J. Am. Chem. Soc. 125:5586−7 (2003))と異なり、これらの無水物を精製せず、さらに開環条件下でアニリンと反応させ、約90%の収率で前駆体化合物3a、3bおよび3cとする。1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)と1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)とを用いる強力なカップリング条件によって、変換率が高くなる結果、高速の反応と高い収率とが得られる。33%(Wongら、J. Am. Chem. Soc. 125:5586−7 (2003))と比較すると、4bの収率は、これらの条件を用いることによって64%に増加した。4c(BML−210に相当する)の収率は、50〜60%(総括)であった。表4に挙げた各化合物について同程度の収率を得た。
【0106】
薄層クロマトグラフィー、分析HPLC、MALDI−TOF MS、13C−およびH−NMRによってすべての化合物の純度および特定を検証した。NMRスペクトルは、バリアン(Varian)のマーキュリー(Mercury)300、またはブルーカー(Bruker)のDRX−500で記録した。13Cスペクトルは、プロトンデカップリングを用いて測定した。テトラメチルシランを基準としてすべてのスペクトルを較正した。化合物によっては、HPLCシステム(日立L−6200Aポンプ、L4200可視紫外検出器、D−2500クロマトインテグレーター、およびスペルコ(Supelco)から購入したスペルコシル(Supelcosil)PLC−18カラム(25cm×21.2mm、12μm))を用いてさらに精製した。このRP−HPLCシステムでは、0〜60分は10%アセトニトリル/水/0.1%TFA−100%アセトニトリル/0.1%TFA、次に60〜75分は100%アセトニトリル/0.1%TFA−10%アセトニトリル/水/0.1%TFAを5mL/分の流速で流した。MALDI−ToFスペクトルはすべてアプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)のボイジャー(Voyager)システム1089で測定し、α−シアノヒドロキシケイ皮(CHCA)酸をマトリックスとして用いた。フラッシュカラムクロマトグラフィーには、ジェイティーベイカー(J.T. Baker)から購入したシリカゲル(60〜200メッシュ)を用いた。TLCプレートは、ジェイティーベイカー(J.T. Baker)から購入した(Si250F)。
【0107】
略語 CHCA(シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)、DCM(ジクロロメタン)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−エチル−N−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール水和物(HOBt)、MeOH(メタノール)、室温(r.t)、トリフルオロ酢酸(TFA)およびテトラヒドロフラン(THF)。
【0108】
各化合物の詳細な合成方法および分析データは以下のとおりである。前駆体化合物PAOA、SAOAおよびさまざまな誘導体の構造式を以下の表1、2および3に示す。各化合物は、単独または本明細書に記載されている他の成分および手順と組み合わされて、本発明の実施態様となる。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2−1】

【0111】
【表2−2】

前駆体化合物の合成
化合物P1 tert−ブチル−2−アミノフェニルカルバメート
50mLのDMF中の1,2−フェニレンジアミン(950mg、10.0mmol)の溶液を55℃で撹拌しながら、DMF(25ml)中のジ−tert−ブチルジカーボネート(2.00g、10.0mmol)の溶液を滴下して加えた。添加後、反応混合物を3時間撹拌した。真空下で溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル(150mL)に取り込んだ。有機相を飽和NaCl溶液(40mL)で3回洗い、MgSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残留物をクロロホルム/n−ヘキサンから再結晶した。
【0112】
この反応によって、1.03g(4.97mmol、49%)のP1を淡黄色の固体として得た。TLC R=0.49(DCM/MeOH 20:1)、H−NMR (300 MHz, CDCl): δ = 1.51 (s, 9H), 6.35 (m, 1H), 6.72−6.78 (m, 2H), 6.98 (m, 1H), 7.25 (m, 1H)。
【0113】
化合物3a 6−オキソ−6−(フェニルアミノ)ヘキサン酸
無水酢酸(10mL)中のアジピン酸(5.00g、34.0mmol)の溶液を1時間還流加熱した。室温に冷却した後、真空下で溶媒を除去した。粗生成物の黄色の油をそれ以上精製せず、次の段階に用いた。無水THF(10mL)中の無水物生成物の溶液を撹拌しながら、アニリン(3.00mL、28.7mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、溶媒を除去し、残留物を水/アセトニトリルから再結晶した。
【0114】
この反応によって2.28g(10.3mmol、36%)の3aを無色の固体として得た。TLC R=0.48(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=222.2(100、[M+H]、計算値222.2)、244.2(20、[M+Na]、計算値244.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.50−1.64 (m, 4H), 2.21−2.34 (m, 4H), 7.00−7.07 (m, 2H), 7.02 (m, J=7.2 Hz, 1H), 7.28 (m, J=7.5 Hz, 2H), 7.59−7.62 (m, 2H), 9.90 (s, 1H)。
【0115】
化合物3b 7−オキソ−7−(フェニルアミノ)ヘプタン酸
無水酢酸(10mL)中のピメリン酸(5.00g、31.2mmol)の溶液を1時間還流加熱した。室温に冷却した後、真空下で溶媒を除去した。粗生成物の黄色の油をそれ以上精製せず、次の段階に用いた。
【0116】
無水物生成物の溶液を撹拌しながら、無水THF(10mL)中のアニリン(3.00mL、28.7mmol)を加えた。30分間室温で撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物を水で希釈した。固体をろ過して集めた。水/アセトニトリルから再結晶して純粋な化合物を無色の固体として得た。
【0117】
この反応によって3.52g(15.0mmol、48%)の3aを無色の固体として得た。TLC R=0.68(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=236.3(100、[M+H]、計算値236.1)、258.4(20、[M+Na]、計算値258.1)、H−NMR (500 MHz, DMSO−D): δ = 1.28−1.34 (m, 2H), 1.49−1.62 (m, 4H), 1.55−1.58 (m, 2H), 2.20 (t, J=9.0 Hz, 2H), 2.30 (t, J=9.0 Hz, 2H), 7.00 (m, J=7.5 Hz, 1H), 7.26−7.29 (m, J=7.5 Hz, 2H), 7.57−7.59 (m, 2H), 9.83 (s, 1H)。
【0118】
化合物3b2 7−オキソ−7−(ピリジン−2−イルアミノ)ヘプタン酸
無水酢酸(15mL)中のピメリン酸(3.00g、18.7mmol)の溶液を1時間還流加熱した。室温に冷却した後、真空下で溶媒を除去した。粗生成物の黄色の油をそれ以上精製せず、次の段階に用いた。
【0119】
無水THF(5mL)中の無水物生成物の溶液を撹拌しながら、2−アミノピリジン(1.75g、18.7mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、真空下で溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル(200mL)でほぐした。有機相を水、飽和NaCl溶液で洗い、無水MgSO上で乾燥させた。溶媒を除去した後、残留物を水/トリフルオロ酢酸(1:100)から再結晶して無色の固体を得た。
【0120】
この反応によって1.12g(4.76mmol、25%)の3b2を無色の固体として得た。TLC R=0.12(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=237.0(100、[M+H]、計算値237.1)、H−NMR (300 MHz, methanol−D): δ = 1.41−1.50 (m, 2H), 1.60−1.81 (m, 4H), 2.31 (t, J=7.2 Hz, 2H), 2.56 (t, J=7.5 Hz, 2H), 7.45 (m, 1H), 7.64 (m, 1H), 8.21−8.28 (m, 1H), 8.32−8.35 (m, 1H)。
【0121】
化合物3b3 7−(2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニルアミノ)−7−オキソヘプタン酸
5mLの無水酢酸中のピメリン酸(160mg、1.00mmol)を1時間還流させた。溶媒を除去して乾固させた。残留物を10mLの乾燥THF中で希釈し、5mLの乾燥THF中のP1(200mg、0.96mmol)を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、水で希釈した。結果として得られた無色の固体をろ過して集め、エタノールから再結晶した。
【0122】
この反応によって275mg(0.78ミリモル、82%)の3b3を無色の固体として得た。TLC R=0.23(DCM/MeOH 20:1)、H−NMR (500 MHz, CDCl): δ = 1.50 (s, 9H), 1.37−1.42 (m, 2H), 1.67−1.72 (m, 4H), 2.31−2.34 (m, 4H), 7.00−7.07 (m, 2H), 7.13 (m, 1H), 7.36 (m, 1H), 8.25 (br. s, 1H)。
【0123】
化合物3c 8−オキソ−8−(フェニルアミノ)オクタン酸
無水酢酸(10mL)中のスベリン酸(5.00g、28.7mmol)の溶液を1時間還流加熱した。室温に冷却した後、真空下で溶媒を除去した。粗生成物の黄色の油をそれ以上精製せず、次の段階に用いた。
【0124】
無水物生成物の溶液を撹拌しながら、無水THF(10mL)中のアニリン(3.00mL、28.7mmol)を加えた。30分間室温で撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物を水で希釈した。固体をろ過して集めた。水/アセトニトリルから再結晶して純粋な化合物を無色の固体として得た。
【0125】
この反応によって2.74g(11.0mmol、39%)の3cを無色の固体として得た。TLC R=0.52(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=250.2(100、[M+H]、計算値250.1)、272.3(26、[M+Na]、計算値272.1)、H−NMR (500 MHz, DMSO−D): δ = 1.27−1.32 (m, 4H), 1.46−1.50 (m, 2H), 1.55−1.58 (m, 2H), 2.18 (t, J=7.5 Hz, 2H), 2.28 (t, J=7.5 Hz, 2H), 6.99 (m, J=7.5 Hz, 1H), 7.25−7.28 (m, J=7.5 Hz, 2H), 7.56−7.58 (m, J=7.5 Hz, 2H), 9.82 (m, 1H), 11.9 (s, 1H)。
【0126】
阻害剤の合成
化合物4a N−(2−アミノフェニル)−N−フェニルヘキサンジアミド
DMF(5mL)中の3a(88mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を撹拌しながら、DMF(5ml)中のP1(86mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで水を加えた。ろ過して固体を集め、水/アセトニトリルから再結晶した。固体を乾燥させ、DCM/TFA(10ml、1:1)を加え、この溶液を室温で2時間撹拌した。真空下で溶媒を除去し、残留物を凍結乾燥させた。この反応によって72mg(0.17mmol、43%)の4aを無色の固体として得た。TLC R=0.69(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=312.3(100、[M+H]、計算値312.2)、334.4(2、[M+Na]、計算値334.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.60−1.67 (m, 4H), 2.32−2.40 (m, 4H), 6.90−7.12 (m, 4H), 7.23−7.30 (m, 3H), 7.58−7.60 (m, 2H), 9.59 (s, 1H), 9.91 (s, 1H)。
【0127】
化合物4b N−(2−アミノフェニル)−N−フェニルヘプタンジアミド
DMF(3mL)中の1,2−フェニレンジアミン(432mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3b(94mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで水を加えた。ろ過して固体を集め、水/エタノールから再結晶した。調製規模のRP−HPLCによって生成物をさらに精製する。
【0128】
この反応によって60mg(0.17mmol、43%)の4bを無色の固体として得た。RP−HPLC R=32分、TLC R=0.46(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=326.2(100、[M+H]、計算値326.2)、348.2(40、[M+Na]、計算値348.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.34−1.38 (m, 2H), 1.58−1.69 (m, 4H), 2.29−2.39 (m, 4H), 6.95−7.15 (m, 4H), 7.23−7.30 (m, 3H), 7.54−7.60 (m, 2H), 9.68 (s, 1H), 9.89 (s, 1H).
化合物4c N−(2−アミノフェニル)−N−フェニルオクタンジアミド
DMF(3mL)中の1,2−フェニレンジアミン(432mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3c(100mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで水を加えた。ろ過して固体を集め、水/エタノールから再結晶した。
【0129】
この反応によって60mg(0.17mmol、43%)の4cを無色の固体として得た。TLC R=0.63(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=340.2(100、[M+H]、計算値340.2)、362.2(15、[M+Na]、計算値362.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.31−1.32 (m, 4H), 1.56−1.62 (m, 4H), 2.26−2.31 (m, 4H), 6.95−7.15 (m, 4H), 7.22−7.29 (m, 3H), 7.53−7.61 (m, 2H), 9.68 (s, 1H), 9.89 (s, 1H)。
【0130】
化合物5b N−フェニル−N−フェニルヘプタンジアミド
DMF(3mL)中のアニリン(37mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3b(94mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物に水を加えた。ろ過して組成生物を集め、水/エタノールから再結晶した。
【0131】
この反応によって52mg(0.17mmol、42%)の5bを無色の固体として得た。TLC R=0.46(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=311.1(100、[M+H]、計算値311.2)、333.1(90、[M+Na]、計算値333.3)、H−NMR (500 MHz, DMSO−D): δ = 1.32−1.35 (m, 2H), 1.59−1.64 (m, 4H), 2.31 (t, J=7.3 Hz, 4H), 7.00 (m, J=7.3 Hz, 2H), 7.27 (m, J=7.3 Hz, 4H), 7.57−7.59 (m, 4H), 9.86 (s, 2H)。
【0132】
化合物6b N−(3−アミノフェニル)−N−フェニルヘプタンジアミド
DMF(3mL)中の1,3−フェニレンジアミン(432mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3b(94mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、真空下で溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル/水でほぐした。二相を分液し、水相を酢酸エチル(50mL)で2回抽出した。有機相を合わせ、飽和NaCl溶液で1回洗い、MgSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、残留物をフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製した。
【0133】
この反応によって24mg(0.06mmol、15%)の6bを無色の固体として得た。TLC R=0.61(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=326.3(100、[M+H]、計算値326.2)、348.4(5、[M+Na]、計算値348.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.24−1.32 (m, 2H), 1.50−1.60 (m, 4H), 2.24 (t, J=7.5 Hz, 2H), 2.25 (t, J=7.5 Hz, 2H), 6.68 (m, 1H), 6.94 (m, 1H), 7.11−7.23 (m, 4H), 7.50−7.53 (m, 3H), 9.81 (s, 1H), 9.92 (s, 1H)。
【0134】
化合物6c N−(3−アミノフェニル)−N−フェニルオクタンジアミド
DMF(3mL)中の1,3−フェニレンジアミン(432mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3c(100mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで水を加えた。ろ過して固体を集め、水/エタノールから再結晶した。生成物をRP−HPLCによってさらに精製した。
【0135】
この反応によって52mg(0.15mmol、38%)の6cを無色の固体として得た。RP−HPLC R=36分、TLC R=0.66(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=340.3(100、[M+H]、計算値340.2)、362.3(30、[M+Na]、計算値362.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.32−1.33 (m, 4H), 1.51−1.65 (m, 4H), 2.26−2.31 (m, 4H), 6.60 (m, 1H), 6.98−7.06 (m, 2H), 7.11−7.17 (m, 1H), 7.23−7.30 (m, 2H), 7.41 (m, 1H), 7.56−7.59 (m, 2H), 9.86 (s, 1H), 9.87 (s, 1H)。
【0136】
化合物7b N−(4−アミノフェニル)−N−フェニルヘプタンジアミド
DMF(3mL)中の1,4−フェニレンジアミン(432mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3b(94mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、真空下で溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル/水でほぐした。二相を分液し、水相を酢酸エチル(50mL)で2回抽出した。有機相を合わせ、飽和NaCl溶液で1回洗い、MgSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、残留物を水/アセトニトリルから再結晶した。この化合物をさらにRP−HPLCによって精製した。
【0137】
この反応によって25mg(0.06mmol、15%)の7bを無色の固体として得た。RP−HPLC R=30分、TLC R=0.38(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=326.4(100、[M+H]、計算値326.2)、348.3(50、[M+Na]、計算値348.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.27−1.37 (m, 2H), 1.56−1.66 (m, 4H), 2.24 (m, 4H), 6.98−7.03 (m, 1H), 7.12−7.17 (m, 2H), 7.24−7.29 (m, 2H), 7.56−7.63 (m, 4H), 9.87 (s, 1H), 9.98 (s, 1H)。
【0138】
化合物7c N−(4−アミノフェニル)−N−フェニルオクタンジアミド
DMF(3mL)中の1,4−フェニレンジアミン(432mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3c(100mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、真空下で溶媒を除去し、スラリーを水と酢酸エチルとの間で分配した。二相を分液し、水相を酢酸エチル(20mL)でさらに2回抽出した。次に、水相を真空下で濃縮し、無色の固体が沈殿するまでアセトニトリル/水(1:4)で処理した。ろ過して生成物を単離し、RP−HPLCによって精製した。
【0139】
この反応によって25mg(0.07mmol、16%)の7cを無色の固体として得た。R=31分、TLC R=0.66(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=340.5(80、[M+H]、計算値340.2)、362.4(15、[M+Na]、計算値362.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.25−1.39 (m, 4H), 1.54−1.67 (m, 4H), 2.27 (m, 4H), 7.00−7.09 (m, 1H), 7.14−7.20 (m, 2H), 7.28−7.34 (m, 2H), 7.54−7.65 (m, 4H), 9.78 (s, 1H), 9.95 (s, 1H)。
【0140】
化合物8b N−フェニル−N−(ピリジン−2−イル)ヘプタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3b(94mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を冷却し、DMF(5mL)中の2−アミノピリジン(40mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物に水を加えた。ろ過して生成物を集め、水/アセトニトリルから再結晶した。
【0141】
この反応によって、80mg(0.25mmol、64%)の8bを無色の固体として得た。TLC R=0.49(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=312.3(100、[M+H]、計算値312.2)、334.3(18、[M+Na]、計算値334.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.29−1.38 (m, 2H), 1.59−1.64 (m, 4H), 2.30 (t, J=7.5 Hz, 2H), 2.43 (t, J=7.2 Hz, 2H), 7.00 (m, J=7.2 Hz, 1H), 7.17 (m, 1H) 7.24−7.29 (m, J=7.5 Hz, 2H), 7.56−7.59 (m, J=7.8 Hz, 2H), 7.85−7.98 (m, 2H), 8.30 (m, 1H), 9.86 (s, 1H), 10.8 (s, 1H)。
【0142】
化合物8c N−フェニル−N−(ピリジン−2−イル)オクタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3c(100mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を冷却し、DMF(5mL)中の2−アミノピリジン(40mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物に水を加えた。ろ過して生成物を集め、水/アセトニトリルから再結晶した。
【0143】
この反応によって、23mg(0.07mmol、18%)の8cを無色の固体として得た。TLC R=0.25(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=326.1(100、[M+H]、計算値326.2)、348.1(18、[M+Na]、計算値348.2)、H−NMR (300 MHz, methanol−D): δ = 1.39−1.46 (m, 4H), 1.59−1.78 (m, 4H), 2.28 (t, J=7.5 Hz, 2H), 2.54 (t, J=7.5 Hz, 2H), 7.06 (m, 1H), 7.25−7.30 (m, 2H) 7.42−7.47 (m, 1H), 7.51−7.54 (m, 2H), 7.60 (m, 1H), 8.23 (m, 1H), 8.31 (m, 1H)。
【0144】
化合物9b N−(2−メトキシフェニル)−N−フェニルヘプタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3b(94mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を冷却し、DMF(3mL)中の2−メトキシアニリン(50mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物に水を加えた。ろ過して粗生成物を集め、水/アセトニトリルから再結晶した。
【0145】
この反応によって、95mg(0.28mmol、70%)の9bを無色の固体として得た。TLC R=0.27(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=341.4(100、[M+H]、計算値341.2)、363.4(35、[M+Na]、計算値363.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.29−1.38 (m, 2H), 1.55−1.67 (m, 4H), 2.30 (t, J=7.4 Hz, 2H), 2.38 (t, J=7.4 Hz, 2H), 3.80 (s, 3H), 6.85 (m, 1H), 6.98−7.07 (m, 2H), 7.25−7.30 (m,J=7.5 Hz, 2H), 7.58−7.60 (m, 2H), 7.93 (m, 1H), 9.03 (s, 1H), 9.86 (s, 1H)。
【0146】
化合物9c N−(2−メトキシフェニル)−N−フェニルオクタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3c(100mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を冷却し、DMF(3mL)中の2−メトキシアニリン(50mg、0.40mmol)の溶液を滴下した。一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物に水を加えた。ろ過して粗生成物を集め、水/アセトニトリルから再結晶した。
【0147】
この反応によって、58mg(0.16mmol、41%)の9cを無色の固体として得た。TLC R=0.61(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=355.4(100、[M+H]、計算値355.2)、377.3(18、[M+Na]、計算値377.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.30−1.36 (m, 4H), 1.50−1.68 (m, 4H), 2.30−2.39 (m, 4H), 3.81 (s, 3H), 6.88 (m, 1H), 6.90−7.10 (m, 3H), 7.26−7.30 (m, 2H), 7.58−7.61 (m, 2H), 7.93 (m, 1H), 9.01 (s, 1H), 9.86 (s, 1H)。
【0148】
化合物10b N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニルヘプタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3b(94mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を冷却し、DMF(5mL)中の4−メトキシアニリン(50mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物に水を加えた。ろ過して粗生成物を集め、水/アセトニトリルから再結晶した。
【0149】
この反応によって、63mg(0.18mmol、46%)の10bを無色の固体として得た。TLC R=0.38(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=341.4(100、[M+H]、計算値341.2)、363.5(15、[M+Na]、計算値363.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.25−1.42 (m, 2H), 1.55−1.73 (m, 4H), 2.27−2.32 (m, 4H), 3.70 (s, 3H), 6.84−6.86 (m, 2H), 7.01 (m, 1H), 7.25−7.30 (m, 2H), 7.48−7.60 (m, 4H), 9.72 (s, 1H), 9.86 (s, 1H)。
【0150】
化合物11b N−フェニル−N−(キノリン−8−イル)ヘプタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3b(95mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、3mLのDMF中の8−アミノキノリン(58mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物を水で希釈した。ろ過して固体を集め、水で洗い、水/アセトニントリルから再結晶した。
【0151】
この反応によって、34mg(0.10mmol、25%)の11bを無色の固体として得た。TLC R=0.47(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=362.8(100、[M+H]、計算値362.2)、384.8(10、[M+Na]、計算値384.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.36−1.44 (m, 2H), 1.59−1.73 (m, 4H), 2.32 (t, J=7.4 Hz, 2H), 2.59 (t, J=7.4 Hz, 2H), 7.00 (m, 1H), 7.23−7.29 (m, 2H), 7.54−7.68 (m, 5H), 8.41 (m, 1H), 8.62 (m, 1H), 8.92 (m, 1H), 9.86 (s, 1H), 10.01 (s, 1H)。
【0152】
化合物12b N−フェニル−N−(キノリン−3−イル)ヘプタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3b(95mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、3mLのDMF中の3−アミノキノリン(58mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物を水で希釈した。ろ過して固体を集め、水で洗い、水/アセトニントリルから再結晶した。
【0153】
この反応によって、47mg(0.13mmol、32%)の12bを無色の固体として得た。TLC R=0.47(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=362.7(100、[M+H]、計算値362.2)、384.8(20、[M+Na]、計算値384.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.35−1.45 (m, 2H), 1.61−1.75 (m, 4H), 2.34 (t, J=7.2 Hz, 2H), 2.45 (t, J=7.5 Hz, 2H), 7.02 (m, 1H), 7.25−7.30 (m, 2H), 7.58−7.61 (m, 2H), 7.67 (m, 1H), 7.76 (m, 1H), 8.02−8.05 (m, 2H), 8.88 (m, 1H), 9.10 (m, 1H), 9.89 (s, 1H), 10.60 (s, 1H)。
【0154】
化合物13b N−(2−アミノフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)ヘプタンジアミド
DMF(3mL)中の1,2−フェニレンジアミン(432mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3b2(95mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、溶媒を除去し、残留物をそのままフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 80:1〜40:1)で精製した。
【0155】
この反応によって、86mg(0.27mmol、67%)の13bを無色の油として得た。TLC R=0.37(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=327.4(100、[M+H]、計算値327.2)、349.5(5、[M+Na]、計算値349.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.24−1.38 (m, 2H), 1.55−1.73 (m, 4H), 2.18−2.35 (m, 4H), 6.84−6.95 (m, 2H), 7.28−7.40 (m, 3H), 7.65 (m, 1H), 8.25 (m, 1H), 8.34 (m, 1H), 9.72 (s, 1H), 10.36 (s, 1H)。
【0156】
化合物14b N−(3−メトキシフェニル)−N−フェニルヘプタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3b(95mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を冷却し、DMF(3mL)中の3−メトキシアニリン(50mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、真空下で溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル/水(150mL/20mL)でほぐした。二相を分液し、有機相を飽和NaCl溶液で2回洗い、MgSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 20:1)で精製した。
【0157】
この反応によって、84mg(0.24mmol、62%)の14bを無色の油として得た。TLC R=0.32(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=341.2(60、[M+H]、計算値341.2)、363.2(70、[M+Na]、計算値363.2)、H−NMR (500 MHz, CDCl): δ = 1.38−1.42 (m, 2H), 1.69−1.72 (m, 4H), 2.31−2.35 (m, 4H), 3.74 (s, 3H), 6.63 (m, 1H), 7.00 (m, 1H), 7.06 (m, 1H), 7.10 (m, 1H), 7.15 (m, 1H), 7.24−7.27 (m, 2H), 7.30−7.51 (m, 2H), 7.82−7.86 (m, 2H)。
【0158】
化合物15b N−(2,4−ジメトキシフェニル)−N−フェニルヘプタンジアミド
DMF(5mL)中の化合物3b(95mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を冷却し、DMF(3mL)中の2,4−ジメトキシアニリン(48mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物を水で希釈した。ろ過して固体を集め、水で洗い、水/アセトニトリルから再結晶した。
【0159】
この反応によって、97mg(0.26mmol、65%)の15bを無色の油として得た。TLC R=0.36(DCM/MeOH 9:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=371.5(100、[M+H]、計算値371.2)、393.5(50、[M+Na]、計算値393.2)、H−NMR (500 MHz, CDCl): δ = 1.42−1.48 (m, 2H), 1.73−1.79 (m, 4H), 2.34−2.40 (m, 4H), 3.77 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 6.42−6.46 (m, 2H), 7.06 (m, 1H), 7.26−7.29 (m, 2H), 7.51−7.56 (m, 3H), 7.70 (m, 1H), 8.16 (m, 1H)。
【0160】
化合物16b N,N−ビス(2−アミノフェニル)ヘプタンジアミド
DMF(3mL)中のP1(82mg、0.40mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の化合物3b3(140mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μl、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル/水(150mL、2:1)でほぐした。二相を分液し、有機相を冷却した5%クエン酸(20mL)で2回、飽和NaHCO溶液(20mL)で2回、飽和NaCl溶液(20mL)で2回洗い、MgSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH 40:1)で精製した。
【0161】
この反応によって、186mg(0.34mg、86%)の無色の固体を得た。TLC R=0.21(DCM/MeOH 20:1)。
【0162】
DCM/TFA(5mL、3:2)の混合物を加え、室温で2時間撹拌してBoc保護基を開裂させた。溶媒を除去した後、生成物を凍結乾燥した。必要なら、生成物をさらに調製規模HPLCによって精製してよい。
【0163】
この反応によって185mg(0.32mmol、80%)の無色の固体を得た。RP−HPLC R=27.0分、TLC R=0.05(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=341.2(100、[M+H]、計算値341.2)、363.2(20、[M+Na]、計算値363.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.38−1.45 (m, 2H), 1.63−1.71 (m, 4H), 2.39−2.43 (m, 4H), 7.18−7.34 (m, 8H), 9.59−9.85 (br. s, 4H), 9.97 (s, 2H)。
【0164】
化合物22a N−フェニル−N−フェニルヘキサンジアミド
DMF(5mL)中の3a(88mg、0.40mmol)、EDC・HCl(78mg、0.41mmol)、HOBt(64mg、0.40mmol)およびDIPEA(68μL、0.40mmol)の溶液を撹拌し、DMF(5mL)中のアニリン(37mg、0.40mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで水を加えた。ろ過して粗生成物を集め、水/エタノールから再結晶した。
【0165】
この反応によって、64mg(0.21mmol、54%)の22aを無色の固体として得た。TLC R=0.35(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=297.4(80、[M+H]、計算値297.2)、319.4(20、[M+Na]、計算値319.2)、H−NMR (300 MHz, DMSO−D): δ = 1.60−1.67 (m, 4H), 2.33−2.41 (m, 4H), 6.99−7.03 (m, J=7.0 Hz, 2H), 7.26−7.30 (m, J=7.6 Hz, 4H), 7.58−7.60 (m, J=7.6 Hz, 4H), 9.88 (s, 2H)。
【0166】
追加の前駆体の合成
化合物P2 tert−ブチル−4−アミノフェニルカーバメート
50mLのDMF中の1,4−フェニレンジアミン(1.08g、10mmol)の溶液を55℃で撹拌しながら、DMF(25mL)中のジ−tert−ブチルジカーボネート(2.0g、10mmol)の溶液を滴下して加えた。添加後、反応混合物を2時間撹拌した。真空下で溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル(150mL)に取り込んだ。有機相を5%クエン酸で3回、飽和炭酸水素ナトリウムで3回、飽和NaCl溶液(40mL)で3回洗った。次に、有機相をMgSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残留物を酢酸エチルから再結晶した。
【0167】
この反応によって1.35g(6.50mmol、65%)のP2を無色の固体として得た。TLC R=0.39(DCM/MeOH 20:1)、H−NMR (500 MHz, CDCl): δ 1.50 (s, 9H), 3.50 (br. s, 2H), 6.33 (br. s, 1H), 6.60−6.64 (AA’BB’, 2H), 7.11−7.13 (AA’BB’, 2H). 13C−NMR (128 MHz, CDCl): δ 28.4, 80.0, 115.6, 116.7, 120.9, 129.7, 153.3。
【0168】
化合物P3 7−(4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニルアミノ)−7−オキソヘプタン酸
10mLの無水酢酸中のピメリン酸(200mg、1.25mmol)を30分間還流させた。溶媒を除去して乾固させた。残留物を5mLの乾燥THF中で希釈した後、5mLの乾燥THF中のP2(208mg、1.00mmol)を滴下して加えた。反応混合物を一夜撹拌した後、溶媒を蒸発させた。残留物を100mLの酢酸エチルに取り込んだ後、50mLの水で2回、飽和NaClで2回洗った。MgSO上で溶媒を乾燥させた後、溶媒を蒸発させた。粗残留物を、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 40:1)によって精製した。
【0169】
この反応によって140mg(0.4mmol、40%)のP3を無色の固体として得た。TLC R=0.14(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=351.3(15、[M+H]、計算値351.2)、373.4(100、[M+Na]、計算値373.2)、H−NMR (500 MHz, D−DMSO): δ 1.24−1.29 (m, 4H), 1.45 (s, 9H), 1.47−1.53 (m, 4H), 2.21−2.26 (m, 2H), 7.33 (AA’BB’, 2H), 7.44 (AA’BB’, 2H), 9.20 (s, 1H), 9.70 (s, 1H)。
【0170】
化合物80b 7−オキソ−7−(2−メトキシフェニルアミノ)ヘプタン酸
無水酢酸(10mL)中のピメリン酸(5.00g、31.2mmol)の溶液を1時間加熱還流した。室温に冷却した後、真空下で溶媒を除去した。粗生成物の黄色の油をそれ以上精製せずに、次の段階に用いた。無水THF(10mL)中の生成物無水物の溶液を撹拌し、o−アニシジン(2.10mL、28.7mmol)を加えた。r.t.で30分間撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物を水で希釈した。ろ過して固体を集めた。水/アセトニトリルから再結晶して純粋な化合物を無色の固体として得た。
【0171】
この反応によって1.86g(7.02mmol、25%)の80bを無色の固体として得た。TLC R=0.21(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=266.3(100、[M+H]、計算値266.1)、288.4(24、[M+Na]、計算値288.1)、H−NMR (500 MHz, D−MeOH): δ 1.31−1.36 (m, 2H), 1.58−1.64 (m, 4H), 2.28−2.41 (m, 4H), 3.86 (s, 3H), 6.91−7.02 (m, 1H), 7.07−7.12 (m, 2H), 7.94 (m, 1H)。
【0172】
化合物100b 7−オキソ−7−(o−トリルアミノ)ヘプタン酸
無水酢酸(10mL)中のピメリン酸(2.50g、16.4mmol)の溶液を還流下で20分間加熱した。室温に冷却後、真空下で溶媒を除去した。粗生成物の黄色の油をそれ以上精製せずに、次の段階に用いた。無水THF(10mL)中の生成物無水物の溶液を撹拌し、o−トルイジン(1.77mL、16.0mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、無色の固体が沈殿するまで反応混合物を水で希釈した。ろ過して固体を集めた。水/エタノールから再結晶して純粋な化合物を無色の固体として得た。
【0173】
この反応によって1.26g(5.1mmol、31%)の100bを無色の固体として得た。TLC R=0.16(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=250.3(73、[M+H]、計算値250.1)、272.4(56、[M+Na]、計算値272.1)、H−NMR (500 MHz, D−MeOH): δ 1.41−1.49 (m, 2H), 1.64−1.81 (m, 4H), 2.23 (s, 3H) 2.30 (d, J=7.6 Hz, 2H), 2.41 (d, J=7.6 Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 7.01−7.18 (m, 2H), 7.21−7.23 (m, 1H), 7.25−7.29 (m, 1H)。
【0174】
化合物101b 7−オキソ−7−(p−トリルアミノ)ヘプタン酸
合成方法は、o−トルイジンの代わりにp−トルイジンを用いた点を除けば、100bの合成方法と同じであった。
【0175】
この反応によって1.56g(6.3mmol、38%)の101bを無色の固体として得た。TLC R=0.17(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=250.3(100、[M+H]、計算値250.1)、272.4(24、[M+Na]、計算値272.1)、H−NMR (500 MHz, D−MeOH): δ 1.42−1.50 (m, 2H), 1.63−1.79 (m, 4H), 2.35 (s, 3H) 2.31 (d, J=7.5 Hz, 2H), 2.43 (d, J=7.6 Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 7.09−7.12 (AA’BB’, 2H), 7.48−7.51 (AA’BB’, 2H)。
【0176】
追加の阻害剤の合成
【0177】
【表3】

化合物81b N−(2−アミノフェニル)−N−(2−メトキシフェニル)ヘプタンジアミド
DMF(10mL)中の1,2−フェニレンジアミン(1.50g、14.0mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(10mL)中の80b(1.86g、7.00mmol)、EDC・HCl(1.33g、7.00mmol)、HOBt(1.071g、7.00mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、溶媒を除去し、残留物を150mLの酢酸エチルに取り込み、20mLの5%クエン酸で2回、20mLの飽和炭酸水素ナトリウムで2回、飽和NaClで2回洗った。MgSO上で乾燥させた後、溶媒を蒸発させ、粗生成物を水/エタノールから再結晶した。
【0178】
この反応によって1.366g(3.85mmol、55%)の81bを黄色の固体として得た。TLC R=0.53(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=356.0(100、[M+H]、計算値356.2)、378.0(20、[M+Na]、計算値378.2)、H−NMR (500 MHz, D−MeOH): δ 1.46−1.53 (m, 2H), 1.71−1.80 (m, 4H), 2.41−2.47 (m, 4H), 3.85 (s, 3H), 6.67−6.72 (m, 1H), 6.82−6.92 (m, 2H), 6.97−7.02 (m, 2H), 7.03−7.10 (m, 2H), 7.90 (m, 1H)。
【0179】
化合物82b N−(4−アミノフェニル)−N−(2−メトキシフェニル)ヘプタンジアミド
DMF(5mL)中のP3(100mg、286μmol)、EDC・HCl(55mg、286μmol)、HOBt(44mg、286μmol)の溶液を冷却し、DMF(5mL)中の2−メトキシアニリン(33μL、286μmol)の溶液を滴下して加えた。3時間撹拌した後、真空下で溶媒を除去し、残留物を10mLのDCM/TFAでほぐし、室温で2時間撹拌した。溶媒を除去し、残留物をアセトニトリル/水から再結晶した。
【0180】
この反応によって55mg(154μmol、54%)の82bを黄色の固体として得た。TLC R=0.26(DCM/MeOH 20:1)、RP−HPLC R=28分、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=356.3(100、[M+H]、計算値356.2)、378.2(28、[M+Na]、計算値378.2)、H−NMR (500 MHz, D−DMSO): δ 1.30−1.35 (m, 2H), 158−1.64 (m, 4H), 2.29−2.39 (m, 4H), 3.80 (s, 3H), 6.85−6.88 (m, 1H), 7.00−7.06 (m, 2H), 7.14 (AA’BB’, 2H), 7.62 (AA’BB’, 2H), 7.90 (m, 1H), 9.00 (s, 1H), 9.97 (s, 1H)。
【0181】
化合物102b N−(2−アミノフェニル)−N−o−トリルヘプタンジアミド
DMF(5mL)中の1,2−フェニレンジアミン(430mg、4.00mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(5mL)中の100b(200mg、0.79mmol)、EDC・HCl(152mg、0.79mmol)、HOBt(121mg、0.79mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、白色の固体が沈殿するまで水を加えた。ろ過して固体を集め、エタノール/水から再結晶した。
【0182】
この反応によって186g(0.55mmol、69%)の102bを無色の固体として得た。TLC R=0.21(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=340.4(95、[M+H]、計算値340.2)、362.4(43、[M+Na]、計算値362.2)、H−NMR (500 MHz, D−DMSO): δ 1.37−1.42 (m, 2H), 1.59−1.65 (m, 4H), 2.32−2.36 (m, 4H), 3.32 (s, 3H), 4.80 (br. s, 2H), 6.49−6.55 (m, 1H), 6.70−6.72 (m, 1H), 6.87−6.89 (m, 1H), 7.06−7.19 (m, 4H), 7.35−7.37 (m, 1H), 9.08 (s, 1H), 9.22 (s, 1H)。
【0183】
化合物106b N−(2−アミノフェニル)−N−p−トリルヘプタンジアミド
DMF(10mL)中の1,2−フェニレンジアミン(1.62mg、15.0mmol)の溶液を撹拌しながら冷却し、DMF(20mL)中の101b(750mg、3.00mmol)、EDC・HCl(573mg、3.00mmol)、HOBt(460mg、3.00mmol)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、白色の固体が沈殿するまで水を加えた。ろ過して固体を集め、エタノール/水から再結晶した。
【0184】
この反応によって742mg(2.19mmol、73%)の101bを無色の固体として得た。TLC R=0.53(DCM/MeOH 20:1)、MS(MALDI−ToF、CHCA) m/z(%)=340.3(100、[M+H]、計算値340.2)、362.4(24、[M+Na]、計算値362.2)、H−NMR (500 MHz, D−DMSO): δ 1.33−1.36 (m, 2H), 1.60−1.65 (m, 4H), 2.25−2.33 (m, 4H), 3.35 (s, 3H), 4.80 (br. s, 2H), 6.50−6.54 (m, 1H), 6.70−6.72 (m, 1H), 6.87−6.90 (m, 1H), 7.07−7.09 (AA’BB’, 2H), 7.13−7.16 (m, 1H), 7.45−7.47 (AA’BB’, 2H), 9.05 (s, 1H), 9.76 (s, 1H)。
【0185】
(実施例3 活性フラタキシン対立遺伝子および抑制フラタキシン対立遺伝子のヒストン組成物)
ヒストン改変がFRDAにおける遺伝子抑制に関与しているかを評価するために、アセチル化形のヒストンH3およびH4に対する抗体を用いるクロマチン免疫沈降(ChIP)によって、FRDA患者から誘導されたエプスタインバーウイルス変換リンパ球細胞系統(系統GM15850、フラタキシン遺伝子中に650および1030のGAA・TTC繰り返しのある対立遺伝子、NIGMS Human Genetic Cell Repository, Coriell Institute, Camden, NJから入手)中のフラタキシン遺伝子のヒストンアセチル化状態を測定した。比較のため、この患者の正常な同胞からの同様な細胞系統(系統GM15851、正常範囲の繰り返し)を用いた。予想したとおり、このFRDA患者由来の細胞系統のフラタキシンmRNAのレベルは、定量的リアルタイム/逆転写酵素PCR(qRT−PCR、下記参照)によって測定すると、非感染同胞由来の細胞系統と比較して著しく低い(13±6%、20回の測定からの範囲(Burnettら、P.N.A.S. 103:11497−502 (2006)))。このChIP実験では、フラタキシン遺伝子の最初のイントロン中のGAA・TTC繰り返しの上流または下流のクロマチン領域、ならびにプロモーター要素を調べるプライマーを用い、免疫沈降したDNAのレベルはリアルタイムPCR(図1A)によって定量した。2つの細胞系統の間でグリセルアルデヒド−3−ホスホデヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAの発現に差がなかったので、GAPDHをこのChIP実験における回収率の標準として用いた。GM15851細胞系統中の活性フラタキシン対立遺伝子のコード領域は、GM15850のFRDA細胞系統中の不活性対立遺伝子と比較すると、H3−K9、H3−K14、H4−K5、H4−K8、H4−K12およびH4−K16でアセチル化されたヒストンが多く、GM15850のFRDA細胞系統中の不活性対立遺伝子にはこれらのヒストン改変が明らかに少ない。これらの2つの細胞系統中のフラタキシンプロモーター上には、ヒストンアセチル化のレベルの有意差は見いだされなかった。さらに、モノ−、ジ−およびトリメチル化されたH3−K9に対する抗体を用いて、H3−K9のメチル化状態を調べた。FRDA細胞系統のH3−K9は、正常細胞系統と比較すると高度にトリメチル化されている(図1B)。アセチル化不足とともに、H3−K9のトリメチル化は、ヘテロクロマチンの特徴である(Elgin & Grewal, Curr. Biol. 13:R895−8 (2003))。従って、不活性フラタキシン対立遺伝子のコード領域内のヒストンの合成後改変状態は、FRDA中の遺伝子抑制の原因としてのクロマチン媒介機構(Savelievら、Nature 422:909−13 (2003))と矛盾しない。
【0186】
(実施例4 フラタキシン遺伝子発現に対するヒストンデアセチラーゼ阻害剤の効果)
伸長GAA・TTCフラタキシン対立遺伝子における遺伝子抑制がヒストン脱アセチル化およびヘテロクロマチン形成に起因する可能性をさらに評価するために、アセチル化形のヒストンH3およびH4に対する抗体を用いて、FRDAと正常なリンパ球細胞系統とにおけるヒストンアセチル化とフラタキシン転写とのレベルに対する一連の市販HDAC阻害剤の効果を測定した。試験した阻害剤は、ヒドロキサム酸トリコスタチンA、スベロイルビス−ヒドロキサム酸(SBHA)およびスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA);ベンゾアミド型SAHA誘導体BML−210(Wongら、J. Am. Chem. Soc. 125:5586−7 (2003));および小型カルボキシラートバルプロン酸を含んでいた。SAHA、PAOA(化合物4b)およびSAOA(化合物4c、BML−210)の構造を下:
【0187】
【化28】

に示す。
【0188】
図2Aの結果によると、HDAC阻害剤はすべて、HDAC阻害のIC50の報告値で用いたとき、FRDA細胞系統中の全アセチル化ヒストンのレベルを増加させた。環状ペプチド阻害剤も試験したが、リンパ球細胞に対して細胞毒性が高いことが分ったので、それ以上検討しなかった。qRT−PCRによって、FRDA細胞系統中のフラタキシンmRNAレベルに対する各HDAC阻害剤の効果(IC50値で)も試験したが、BML−210がフラタキシンmRNAのレベルを約2倍に増加させただけであった(図2B)。GAPDHのmRNAレベルは、HDAC阻害剤によって変化しなかったので、すべてのqRT−PCR実験において正規化に用いた。HDAC阻害に必要な濃度範囲(1から5μM)にわたって、BML−210は、リンパ球細胞系統に対して細胞毒(トリパンブルー除外で測定)でなく、細胞成長速度にあまり影響しない。構造的に関連する化合物SAHAにはフラタキシン転写に対する効果がなく、SBHAには負の効果(50%減少)があったが、両方の化合物ともBML−210より有効なHDAC阻害剤であった(図2A)。
【0189】
(実施例5 HDAC阻害剤の評価)
BML−210の活性を最適化するために、簡便な2段階プロトコル(実施例2参照)によって、化合物4c(N−(2−アミノフェニル)−N−フェニルオクタンジアミド、Wongら、J. Am. Chem. Soc. 125:5586−7 (2003))および一連の関連類似体(表4参照)を合成した。2つの環系の間のリンカー部分の長さ(4、5および6のメチレン)、環の性質(フェニル、ピリジン、キノリン)および環置換基の種類および位置(メチルおよびメトキシ基等、表4)を調べるように誘導体を設計した。
【0190】
【表4】

qRT−PCRによって、FRDA細胞系統中のフラタキシンmRNAレベルに対するこれらの化合物の効果を試験し、HeLa核抽出物中のHDAC阻害剤としての活性を試験した(表4)。IC50値は、これらの化合物の一般的なHDAC阻害活性を表し、14μM(化合物16b)から>1000μM(化合物14b、表4)の範囲にある。FRDAリンパ球細胞からの抽出物に対して、これらの化合物のいくつかで同じIC50値を得た(表には示していない)。転写の活性化について、これらの化合物のそれぞれを培地中5μMの濃度で96時間試験した。重要な点であり、SAHAおよびTSAなどの普通のHDAC阻害剤と対照的な点は、これらの化合物のどれもリンパ球細胞系統の生存率に影響を及ぼさなかった(転写活性化に必要な濃度で)ことである。リンカー部分に6つ(4cおよび誘導体)または4つ(4a)のメチレン基を有する化合物は、対応するピメロイルアニリド誘導体(4b、N−(2−アミノフェニル)−N−フェニルヘプタンジアミド(Wongら、J. Am. Chem. Soc. 125:5586−7 (2003))および誘導体、表4)より効力が低い転写活性化剤であり、フラタキシンmRNAのレベルを増加させるには、オルト−およびパラ−位をアミノ−またはメトキシ−で置換するのがもっとも効果がある。ピメロイルアニリドのキノリン誘導体(化合物11bおよび12b)も高活性である。対称形ジアミノ化合物16b、N,N−ビス(2−アミノフェニル)ヘプタンジアミドは、FRDA細胞系統において最も効果がある化合物である(フラタキシンmRNAは5μMで3.1倍の増加、10μMで3.5倍の増加)。HeLa核抽出物HDAC阻害アッセイにおいて、4cが87μM、4bが78μMのIC50であるのに対して、16bは14μMのIC50値を示す。全HDAC阻害活性と生細胞中のフラタキシン遺伝子の転写を活性化する化合物の能力との間に明らかな相関はない。これらの知見は、普通のクラスIおよびIIのHDAC阻害剤はフラタキシン転写に対して効果がないという観察(図2B)と一致する。核抽出物は、多くの異なる多蛋白質複合体中にいくつかのHDAC酵素を含むので、標準的なHDAC阻害アッセイは、これらの酵素活性のすべての和となる全体的な阻害活性の指標を提供するにすぎない。一般的なHDACアッセイは、フラタキシン遺伝子を抑制することに関与している真の標的酵素のIC50を反映しないことを示すものとしてこれらの結果を解釈する。
【0191】
(実施例6 HDAC阻害剤はフラタキシン蛋白質レベルを増加させる)
病原性のフラタキシン対立遺伝子の一次転写物は、長いGAA繰り返しのRNA配列を含むので、これらのRNAは正しく処理されず、HDAC阻害剤で処理してもフラタキシン蛋白質の増加が観測されないことがあり得る。HDAC阻害剤が、処理されたリンパ球細胞中のフラタキシン蛋白質のレベルを増加させたかを試験するために、全細胞蛋白質をSDS−PAGEと、抗フラタキシンまたは抗アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングとに付した(図3)。5μMの4c(BML−210)で約3倍のフラタキシン蛋白質の増加を観測し、2.5μMの4bで同様なFRDA細胞中のフラタキシン蛋白質の増加を観測した。これらのフラタキシン蛋白質の増加は、培養細胞中のフラタキシンmRNAの観測された増加以上である(表4)。
【0192】
(実施例7 HDAC阻害剤はFRDA患者由来の一次リンパ球中のフラタキシンmRNAを増加させる)
ヒト疾患におけるフラタキシン蛋白質の欠乏は、非増殖性細胞型(神経細胞および心筋細胞)に影響を及ぼす。これらのヒト細胞を実験用に入手するのは簡単でないが、一次リンパ球はドナー血液から入手することができ、サイトカインで処理していないリンパ球は、本発明者らの実験条件下で培養しても分裂しない。従って、FRDA患者およびキャリアまたはこれらの患者の正常な同胞から入手した一次リンパ球中のフラタキシンmRNAレベルに対するHDAC阻害剤の効果を試験した(承認されたヒト被検者プロトコルに従い、適切なインフォームドコンセントを遵守した)。フィコール勾配遠心分離によってリンパ球を単離し、細胞を培養物中で16時間インキュベートした後、2.5または5μMの4bまたは4cを培養培地に加えた。さらに48時間培養した後、細胞を集め、RNAを精製した。この時間では、HDAC阻害剤は、株化細胞と同様に一次リンパ球の生存率に影響しなかった。感染者S由来のリンパ球のフラタキシンmRNAのレベルは、該感染者の相同正常同胞A由来のリンパ球と比較すると33±2%であった(図4A)。どちらの化合物も、どちらの被検者由来の細胞中のGAPDHのmRNAのレベルには影響を及ぼさなかったが、4bおよび4cを有する培養物中で2日間インキュベーションすると、感染者由来のリンパ球中のフラタキシンmRNA合成が顕著に刺激された(図4A)。FRDAリンパ球中のフラタキシンmRNAの相対レベルは、5μMの4cで1.8倍(80%増加)、5μMの4bで2.3倍増加した(130%増加)。非感染同胞由来のリンパ球中で4bの効果は小さかった(38%増加)が、これらの細胞中のフラタキシンmRNAに対して4cには正の効果がなかった。重要な点は、4bが感染者由来のリンパ球中のフラタキシンmRNAレベルを非感染者由来のリンパ球中のものの〜80%に増加させた点である。
【0193】
次に、株化細胞で見分けた活性の最も高い5つのHDAC阻害剤の、ヘテロ接合キャリア(被検者C、フラタキシンmRNAを100%に規格化)およびFRDA患者AC由来の一次リンパ球における転写活性を比較した(図4B)。この場合にも、4bは、キャリアCおよび感染者ACから入手した細胞中のフラタキシンmRNAレベルを増加させる上で活性が高く、FRDAリンパ球中のフラタキシンmRNAレベルを無処理キャリアのリンパ球中に見いだされるものの〜160%にした。化合物13bおよび16bも活性があり、FRDAリンパ球中のフラタキシンmRNAレベルを非感染キャリア由来のリンパ球中に見いだされるレベルにした。株化FRDA細胞系統(表4)と異なり、化合物7bおよび8cは、一次リンパ球中では比較的非活性であった。同じく、16bの活性が最も高い株化細胞での結果と対照的に、一次リンパ球中で4bが最も活性の高い化合物であったので、その後の検討では4bを調べた。次に、2名の同胞のFRDA患者JおよびM、ならびにキャリアの親族D(キャリアリンパ球中のフラタキシンmRNAレベルを100%に規格化、図4C)由来のリンパ球中のフラタキシンmRNAレベルに対する4bの濃度を増大させる効果を試験した。4bは、試験したリンパ球ポピュレーションのそれぞれにおいて、フラタキシンmRNAのレベルを増加させ、FRDA患者リンパ球中のフラタキシンmRNAのレベルは、少なくともキャリアのレベルへ増加した。注目すべきことに、キャリア中のフラタキシンmRNAはほとんど2倍になり、不活性なフラタキシン対立遺伝子がほとんど完全に再活性化されたことを示唆した。さまざまなドナー由来の一次リンパ球中に4bを加えると、フラタキシンmRNAの倍数増加の差異が観測される(図4A〜Cを比較)が、この化合物は、12の家系のすべてから入手したFRDAおよびキャリアのリンパ球中のフラタキシンmRNAを確実に増加させ、それぞれの場合に、FRDAリンパ球中のフラタキシンmRNAレベルは、大体、キャリア親族由来の未処理リンパ球のレベルへ増加した。従って、治療として有用なフラタキシンmRNAの増加を表す遺伝子活性化のレベルを実現した。FRDA細胞系統中より一次リンパ球中の方がHDAC阻害剤の効果が大きい点に注意する。この差異は、FRDA細胞系統中で観測したフラタキシン遺伝子の抑制の方が強かったことに関連している可能性がある。
【0194】
(実施例8 HDAC阻害剤はフラタキシン遺伝子に直接作用する)
HDAC阻害剤がフラタキシン遺伝子のヒストンアセチル化状態に直接作用するか評価するために、FRDA細胞をHDAC阻害剤4bで処理(5μMで96時間)した後、ChIP実験を行い、GAA繰り返しの直ぐ上流のクロマチン領域上のヒストンアセチル化を分析した。細胞の収量が不十分であったため、ドナー血液由来のリンパ球を用いてこの実験を行うことはできなかった。ヒストンアセチル化において、GAA繰り返しの直ぐ上流の領域が2つの細胞系統の間で最も明白な差異を示した(図1A)ので、このプローブを用いてChIPアッセイを行った。これらの細胞に4bを用いると、フラタキシン転写(表4)ならびにH3−K14、H4−K5およびH4−K12のアセチル化(図5A)に約2.5から3倍の同程度の増加が観測される。H3−K9、H4−K8またはH4−K16では、アセチル化の顕著な変化は観測されない。フラタキシン遺伝子におけるヒストンアセチル化に対する4bの効果の特異性を示すために、フラタキシン転写に効果のなかった(図2B)2つの普通のHDAC阻害剤(TSAおよびSAHA)でFRDA細胞を処理した後、同様なChIP実験を行った。FRDA細胞をこれらの化合物とともに96時間インキュベートした後、フラタキシン遺伝子中のGAA繰り返しの直ぐ上流の領域を探測したところ、ヒストンアセチル化に対する顕著な効果は観測されなかった(図5B)。これらのデータは、4bがフラタキシン遺伝子と関連する未特定のHDAC酵素(単数または複数)を直接阻害し、従って、結果として関連するヒストンアセチルトランスフェラーゼの作用によってアセチル化ヒストンのレベルを増加させ、最終的にフラタキシン転写の増加に至ることを示唆している。
【0195】
(実施例9 追加の選ばれたHDAC阻害剤)
以下の追加のHDAC阻害剤を合成し、上記に記載したと同じように試験した。
【0196】
・KJ−81b N−(2−アミノフェニル)−N−(2−メトキシフェニル)ヘプタンジアミド
・KJ−82b N−(4−アミノフェニル)−N−(2−メトキシフェニル)ヘプタンジアミド
・KJ−102b N−(2−アミノフェニル)−N−o−トリルヘプタンジアミド
・KJ−106b N−(2−アミノフェニル)−N−p−トリルヘプタンジアミド
これらの化合物の構造式およびヒストンデアセチラーゼ阻害のIC50を表5にまとめる。
【0197】
【表5】

(参考文献)
背景の説明用にこれらの参考文献を提供する。
【0198】
【化29】

【0199】
【化30】

【0200】
【化31】

【0201】
【化32】

【0202】
【化33】

(他の実施態様)
本明細書中で参照または言及したすべての特許および刊行物は、本発明の関連分野の当業者の技術レベルを示し、そのような被参照特許または刊行物はそれぞれ、それぞれが参照によって個別に全体として組み込まれたか、または本明細書中に全体が示されたと同じ程度に、参照によって組み込まれる。原出願人らは、任意のそのような被引用特許または刊行物からの任意のおよびすべての参照物および情報を本明細書中に物理的に組み込む権利を留保する。
【0203】
本明細書中に記載した特定の方法および組成物は、好ましい実施態様を表わし、例を示すものであり、本発明の範囲に対する限定ではない。他の事物、態様および実施態様は、本明細書を考慮すれば当業者に想到され、請求項の範囲によって定義される本発明の技術思想の範囲内に包含される。本発明の範囲および技術思想から逸脱することなく、さまざまな置き換えおよび変更を本明細書に開示した本発明に施すことができることは、当業者に自明である。本明細書に説明のために例を記載した本発明は、本明細書に必須であるとして特に開示されていない任意の単数または複数の要素、あるいは単数または複数の限定条件なしに、適切に実行することができる。本明細書に説明として例を記載した方法およびプロセスは、工程の順序を変えて実行してよく、これらの方法およびプロセスは、本明細書または請求項に示す工程の順序に必ずしも制限されない。本明細書および添付の請求項中で用いられる単数形「a」、「an」および「the」は、状況によって明白に異なる場合を除いて、複数の参照を含む。従って、例えば、「抗体」を参照する場合、複数のそのような抗体(例えば、複数抗体の溶液または一連の抗体調製物)を含む、等々である。いかなる状況においても、本特許は、本明細書に特に開示した特定の実施例または実施態様あるいは方法に限定されると解釈してはならない。いかなる状況においても、本特許は、審査官または米国特許および商標庁の任意の他の係官によってなされるいかなる声明によっても限定されると解釈してはならないが、そのような声明が特になさ、原出願人らによる回答書面中に明示的に示された意見および留保を伴わない場合は、この限りでない。
【0204】
使用してきた用語および表現は、説明用語として用いたものであり、限定用語として用いたものではなく、そのような用語および表現の使用にあたって示し、記載した特徴、あるいはその一部のいかなる均等物も排除するものではないが、請求項に記載されている本発明の範囲内でさまざまな変更形が可能であると認識される。従って、好ましい実施態様および任意選択の特徴によって本発明を具体的に開示してきたが、本明細書に開示した概念の変更形および変化形は、当業者によって再構成され得ること、およびそのような変更形および変化形は添付の請求項によって定義される本発明の範囲に属すると考えられると理解される。
【0205】
本明細書においては、本発明を広義に、属のレベルで説明してきた。属開示の範囲内に分類されるもっと狭い種および亜属の分類のそれぞれも、本発明の一部を形成する。これは、任意の対象事物を、その事物が本明細書に具体的に挙げられているか否かにかかわらずある属から除外する旨の但し書きまたは否定的限定が付く本発明の属の記載を含む。
【0206】
以下の請求項の中に、他の実施態様がある。さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群によって記載されている場合、それによって、本発明がマーカッシュ群の任意の個々の構成員、あるいは構成員の部分群によっても記載されることは、当業者に自明である。
【0207】
詳細な説明とともに本発明を説明してきたが、以上の説明は、例を示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、添付の請求項の範囲によって定義される。以下の請求項の範囲内に、他の態様、利点および変更形がある。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1−A】図1は、フラタキシン遺伝子クロマチン上のヒストン改変の例を示す棒グラフである。(A)アセチル化形のヒトのヒストンH3およびH4(図に示したリジン残基の位置でアセチル化)に対する抗体を用いて、FRDA細胞系統(GM15850)および正常細胞系統(GM15851)のクロマチン免疫沈降(ChIP)実験を行った。フラタキシンプロモーター(Pro)、フラタキシン遺伝子の最初のイントロン中のGAA繰り返しの直ぐ上流の領域(Up)および下流の領域(Down)のプライマー対を用いた。リアルタイムPCRで測定した相対回収率をGAPDHと対比した相対値で表し、各抗体についてUpのGAA領域上の回収率を100の値に設定している。誤差バーは、2〜3回の独立した免疫沈降のs.e.m.(標準測定誤差)であり、各免疫沈降は、3回の測定結果によって定量化した。(B)FRDA細胞系統と正常細胞系統との両方について、K9の位置でモノメチル化、ジメチル化およびトリメチル化形のヒストンH3に対する抗体を用いて、GAA繰り返しの上流の領域のChIPを行った。回収率は、GAPDHのパーセントとして表してある。
【図1−B】図1は、フラタキシン遺伝子クロマチン上のヒストン改変の例を示す棒グラフである。(A)アセチル化形のヒトのヒストンH3およびH4(図に示したリジン残基の位置でアセチル化)に対する抗体を用いて、FRDA細胞系統(GM15850)および正常細胞系統(GM15851)のクロマチン免疫沈降(ChIP)実験を行った。フラタキシンプロモーター(Pro)、フラタキシン遺伝子の最初のイントロン中のGAA繰り返しの直ぐ上流の領域(Up)および下流の領域(Down)のプライマー対を用いた。リアルタイムPCRで測定した相対回収率をGAPDHと対比した相対値で表し、各抗体についてUpのGAA領域上の回収率を100の値に設定している。誤差バーは、2〜3回の独立した免疫沈降のs.e.m.(標準測定誤差)であり、各免疫沈降は、3回の測定結果によって定量化した。(B)FRDA細胞系統と正常細胞系統との両方について、K9の位置でモノメチル化、ジメチル化およびトリメチル化形のヒストンH3に対する抗体を用いて、GAA繰り返しの上流の領域のChIPを行った。回収率は、GAPDHのパーセントとして表してある。
【図2−A】図2は、FRDA細胞中のアセチル化およびフラタキシンmRNAに対するヒストンデアセチラーゼ阻害剤の効果の例を示す棒グラフである。(A)FRDAリンパ球細胞系統(15850B)中のH3およびH4アセチル化のレベルに対するヒストンデアセチラーゼ阻害剤の効果。細胞は無処理のままか、または図に示した化合物で12時間処理したものを、酸可溶性核蛋白質の単離、SDS−PAGE、および全ヒストンH4/H3またはアセチル化H4/H3に対する抗体を用いるウェスタンブロッティングに付した。全H4またはH3に対するAcH4またはAcH3の正規化された比の倍数変化を棒グラフに示す。(B)定量的RT−PCRによってフラタキシンmRNAレベルを測定した。すべての値は、HDAC阻害剤の影響を受けなかったGAPDHのmRNAレベルに規格化してある。市販品の販売業者が報告した、図に示したIC50値で、HDAC阻害剤のそれぞれを試験した。誤差バーは、s.e.m.である。
【図2−B】図2は、FRDA細胞中のアセチル化およびフラタキシンmRNAに対するヒストンデアセチラーゼ阻害剤の効果の例を示す棒グラフである。(A)FRDAリンパ球細胞系統(15850B)中のH3およびH4アセチル化のレベルに対するヒストンデアセチラーゼ阻害剤の効果。細胞は無処理のままか、または図に示した化合物で12時間処理したものを、酸可溶性核蛋白質の単離、SDS−PAGE、および全ヒストンH4/H3またはアセチル化H4/H3に対する抗体を用いるウェスタンブロッティングに付した。全H4またはH3に対するAcH4またはAcH3の正規化された比の倍数変化を棒グラフに示す。(B)定量的RT−PCRによってフラタキシンmRNAレベルを測定した。すべての値は、HDAC阻害剤の影響を受けなかったGAPDHのmRNAレベルに規格化してある。市販品の販売業者が報告した、図に示したIC50値で、HDAC阻害剤のそれぞれを試験した。誤差バーは、s.e.m.である。
【図3】図3は、HDAC阻害剤がFRDAリンパ球細胞系統中のフラタキシン蛋白質を増加させることを示すオートラジオグラムである。細胞を、図に示した濃度のHDAC阻害剤と4日間インキュベートした後、ヒトのフラタキシンまたはアクチンに対する抗体を用いてウェスタンブロット分析した。全細胞抽出蛋白質の均等量を各レーンに載せた。無処理の対照細胞(図では「Ctrl」としてある)と比較したフラタキシン蛋白質の倍数変化は、対アクチンシグナルで規格化すると、1.6(2.5μMの4c/BML−210)、3.4(5μMの4c)、および3.5(2.5μMの4b)である。
【図4−A】図4は、HDAC阻害剤がFRDA患者由来の一次リンパ球中のフラタキシンmRNAを増加させることを示す棒グラフである。非感染者A(正常な繰り返しの範囲)と、彼/彼女のFRDA同胞(906および88のGAA繰り返しを含むフラタキシン対立遺伝子を有する感染者S)とからのリンパ球(A)中、キャリアCと感染者AC(801および597の繰り返し)とからのリンパ球(B)中、ならびにキャリアDと、感染者J(550および530の繰り返し)およびM(1030および650の繰り返し)とからのリンパ球(C)中のフラタキシンmRNAのレベルを、qRT−PCRによってGAPDHのそれとの相対値として測定した。図に示した濃度のHDAC阻害剤を細胞培養培地中に含ませ、48時間の時点でのフラタキシンおよびGAPDHのmRNAレベルを測定した。データは、非感染者(aでは正常者、bおよびcではキャリア、=100%とする)由来のリンパ球中に見いだされるフラタキシンのmRNAレベルに対して規格化してある。3つの独立した測定値の平均および標準偏差を示してある。
【図4−B】図4は、HDAC阻害剤がFRDA患者由来の一次リンパ球中のフラタキシンmRNAを増加させることを示す棒グラフである。非感染者A(正常な繰り返しの範囲)と、彼/彼女のFRDA同胞(906および88のGAA繰り返しを含むフラタキシン対立遺伝子を有する感染者S)とからのリンパ球(A)中、キャリアCと感染者AC(801および597の繰り返し)とからのリンパ球(B)中、ならびにキャリアDと、感染者J(550および530の繰り返し)およびM(1030および650の繰り返し)とからのリンパ球(C)中のフラタキシンmRNAのレベルを、qRT−PCRによってGAPDHのそれとの相対値として測定した。図に示した濃度のHDAC阻害剤を細胞培養培地中に含ませ、48時間の時点でのフラタキシンおよびGAPDHのmRNAレベルを測定した。データは、非感染者(aでは正常者、bおよびcではキャリア、=100%とする)由来のリンパ球中に見いだされるフラタキシンのmRNAレベルに対して規格化してある。3つの独立した測定値の平均および標準偏差を示してある。
【図4−C】図4は、HDAC阻害剤がFRDA患者由来の一次リンパ球中のフラタキシンmRNAを増加させることを示す棒グラフである。非感染者A(正常な繰り返しの範囲)と、彼/彼女のFRDA同胞(906および88のGAA繰り返しを含むフラタキシン対立遺伝子を有する感染者S)とからのリンパ球(A)中、キャリアCと感染者AC(801および597の繰り返し)とからのリンパ球(B)中、ならびにキャリアDと、感染者J(550および530の繰り返し)およびM(1030および650の繰り返し)とからのリンパ球(C)中のフラタキシンmRNAのレベルを、qRT−PCRによってGAPDHのそれとの相対値として測定した。図に示した濃度のHDAC阻害剤を細胞培養培地中に含ませ、48時間の時点でのフラタキシンおよびGAPDHのmRNAレベルを測定した。データは、非感染者(aでは正常者、bおよびcではキャリア、=100%とする)由来のリンパ球中に見いだされるフラタキシンのmRNAレベルに対して規格化してある。3つの独立した測定値の平均および標準偏差を示してある。
【図5−A】図5は、フラタキシン遺伝子におけるヒストンアセチル化に対するHDAC阻害剤の効果の例を示す棒グラフである。(A)HDAC阻害剤4bは、フラタキシン遺伝子上の特定のH3およびH4リジンの位置のヒストンアセチル化を増加させる。FRDA細胞を4bで処理した(5μMで96時間)後、図に示した抗体を用いてChIPを行い、GAA繰り返しの上流領域用のプライマーでPCRを行った。無処理の細胞系統と4bで処理したFRDA細胞との両方のデータを示してある。回収率は、GAPDHのパーセントとして表し、すべての値は、GM15851細胞の値に対して規格化してある。(B)SAHAおよびTSAは、フラタキシン遺伝子上のヒストンアセチル化に影響を及ぼさない。FRDA細胞を2.5μMのSAHAまたは0.1μMのTSAと96時間インキュベートし、(A)におけるように処理してChIPを行った。回収率は、GAPDHに対して規格化し、無処理GM15850細胞に対する相対値で表してある。誤差バーは、s.e.m.である。
【図5−B】図5は、フラタキシン遺伝子におけるヒストンアセチル化に対するHDAC阻害剤の効果の例を示す棒グラフである。(A)HDAC阻害剤4bは、フラタキシン遺伝子上の特定のH3およびH4リジンの位置のヒストンアセチル化を増加させる。FRDA細胞を4bで処理した(5μMで96時間)後、図に示した抗体を用いてChIPを行い、GAA繰り返しの上流領域用のプライマーでPCRを行った。無処理の細胞系統と4bで処理したFRDA細胞との両方のデータを示してある。回収率は、GAPDHのパーセントとして表し、すべての値は、GM15851細胞の値に対して規格化してある。(B)SAHAおよびTSAは、フラタキシン遺伝子上のヒストンアセチル化に影響を及ぼさない。FRDA細胞を2.5μMのSAHAまたは0.1μMのTSAと96時間インキュベートし、(A)におけるように処理してChIPを行った。回収率は、GAPDHに対して規格化し、無処理GM15850細胞に対する相対値で表してある。誤差バーは、s.e.m.である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia
【化1】

(式中、
nは、2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、置換されていないか、あるいはヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRまたはそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、Rは、Hまたはアルキルであり、
がフェニルであり、nが3〜6のとき、Rは2−アミノフェニルでなく、
が2−アミノフェニルであり、nが3〜6のとき、Rはフェニルでない)
の化合物またはその塩。
【請求項2】
がフェニルのとき、Rは2−アミノフェニルでなく、Rが2−アミノフェニルのとき、Rはフェニルでない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、アリールまたはヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−アミノフェニル、3−アミノフェニル、4−アミノフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,4−ジメトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、2,4−ジアミノフェニル、3,5−ジアミノフェニル、3,4,5−トリアミノフェニル、2−ピリジニル、3−キノリニルまたは8−キノリニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
は、アリールまたはヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
は、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−アミノフェニル、3−アミノフェニル、4−アミノフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,4−ジメトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、2,4−ジアミノフェニル、3,5−ジアミノフェニル、3,4,5−トリアミノフェニル、2−ピリジニル、3−キノリニルまたは8−キノリニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
とRとが同じであるか、あるいは同じでない、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
はHであるか、RはHであるか、あるいは両方がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が窒素保護基であるか、Rが窒素保護基であるか、あるいは両方が窒素保護基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
nは3から6である、好ましくは、nは4または5である、より好ましくは、nは6である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
は、2つのアミノ基または2つのメトキシ基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
は、2つのアミノ基または2つのメトキシ基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
【化2】

【化3】

からなる群から選ばれた構造を有する、請求項1に記載の化合物、それらの塩基性化合物の塩、およびそれらの任意の組み合わせ。
【請求項14】
塩形成部分は、鉱酸、有機酸、アルカリ塩基またはアルカリ土類塩基、アミンまたはアンモニアである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
式I
【化4】

(式中、
nは2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキル、またはC(=O)ORであり、RはHまたはアルキルである)
の化合物またはその塩を合成するための方法であって、
式V:
【化5】

の化合物を一つ以上のカップリング剤および式VI:
−NH(R) (VI)
の化合物と接触させて式Iの前記化合物を提供することを含む方法。
【請求項16】
前記1つ以上のカップリング剤は、1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)および1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOBt)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記式Iの化合物は、1つ以上の塩基性化合物、好ましくはアルキルアミン、より好ましくはジイソプロピルエチルアミンの存在下で形成される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記式Iの化合物は、溶媒系、好ましくはジメチルホルムアミドの存在下で形成される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
好ましくは沈殿、ろ過、再結晶およびクロマトグラフィーの1つ以上によって前記式Iの化合物を精製することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
式III:
【化6】

の化合物を式IV:
−NH(R) (IV)
の化合物と接触させて前記式Vの化合物を提供することによって、前記式Vの化合物を形成することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記式IIIの化合物と前記式IVの化合物とを溶媒系の存在下で接触させ、前記溶媒系は、好ましくは有機溶媒を含み、前記有機溶媒は、より好ましくはエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサンの1つ以上を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式II:
【化7】

の化合物を脱水剤と接触させて前記式IIIの化合物を提供することによって前記式IIIの化合物を形成することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記脱水剤は、カルボン酸無水物、好ましくは無水酢酸を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記式IIIの化合物の前記形成を無水条件下で行う、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記式IIの化合物と前記脱水剤とを加熱する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
式I:
【化8】

(式中、
nは3から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、RはHまたはアルキルである)
の化合物を合成するための方法であって、
(a)式II:
【化9】

の化合物を脱水剤と接触させて式III:
【化10】

の化合物を提供すること、
(b)前記式IIIの化合物を式IV:
−NH(R) (IV)
の化合物と接触させて式V:
【化11】

の化合物を提供すること、
(c)前記式Vの化合物を1つ以上のカップリング剤および式VI:
−NH(R) (VI)
の化合物と接触させて前記式Iの化合物を提供すること
を含む方法。
【請求項27】
式I:
【化12】

(式中、
nは2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、RはHまたはアルキルである)
の化合物またはその塩を含み、薬学的に許容されるキャリアと組み合わされた医薬品組成物。
【請求項28】
前記式Iの化合物のRがフェニルのとき、Rは2−アミノフェニルでなく、Rが2−アミノフェニルのとき、Rはフェニルでない、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物は、経口投与、非経口投与または静脈内投与に適している、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物は、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤または持続放出調合物の形である、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記式Iの化合物は、細胞中のフラタキシンmRNAレベルを増加させるのに有効な量である、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記細胞は、哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞、より好ましくはヒトリンパ球、ヒト心筋細胞またはヒト神経細胞である、請求項27に記載の組成物。
【請求項33】
パッケージング材料と前記パッケージング材料の中に含まれた前記式Iの化合物とを含む製品であって、前記パッケージング材料は、フリードライヒ運動失調症を治療するために前記式Iの化合物を用いてよい旨を表示するラベルを含み、式Iは、
【化13】

であり、
式中、
nは2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、RはHまたはアルキルである、
またはその塩である製品。
【請求項34】
哺乳類中の神経変性病または神経筋病を治療し、予防し、あるいは哺乳類中の神経変性病または神経筋病の前記発症を遅れさせる方法であって、前記哺乳類に、前記哺乳類中のヒストンアセチル化の前記レベルを変化させるのに有効な量の式Iの化合物を投与することを含み、式Iは、
【化14】

であり、
式中、
nは2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
式中、任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、RはHまたはアルキルである、
またはその塩である方法。
【請求項35】
前記哺乳類が、神経変性病または神経筋病にかかっているか、または神経変性病または神経筋病にかかるおそれがあることを特定することをさらに含み、前記病は、好ましくは、ハンチントン病、脊髄小脳失調、フリードライヒ運動失調症、脆弱性X症候群、脊髄筋肉萎縮症、ケネディー病、脊髄および延髄筋肉萎縮症、筋緊張性異栄養症、筋萎縮性側索硬化症およびアルツハイマー病からなる群から選ばれる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
哺乳類のフリードライヒ運動失調症を治療し、予防し、あるいは哺乳類のフリードライヒ運動失調症の前記発症を遅れさせる方法であって、前記哺乳類に、前記哺乳類のフラキサチンmRNAを増加させるのに有効な量の式Iの化合物を投与することを含み、式Iは、
【化15】

であり、
式中、
nは2から約10であり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
は、アリールまたはヘテロアリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは窒素保護基であり、
任意のアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、任意選択として、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、アリール、カルボキシル、カルボキシエステル、カルボキサミドおよびNRからなる群から選ばれた1から3の置換基で置換され、
およびRは、それぞれ独立に、水素、アルキルまたはC(=O)ORであり、RはHまたはアルキルである、
またはその塩である方法。
【請求項37】
前記哺乳類は、ヒトである、請求項34または36に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物は、経口投与または非経口投与される、請求項34または36に記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳類がフリードライヒ運動失調症にかかっているか、またはフリードライヒ運動失調症にかかるおそれがあることを特定することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記フラタキシン遺伝子のイントロン1中のGAA3塩基繰り返しの伸張の前記程度、前記哺乳類中のフラタキシンmRNAの前記レベル、または前記哺乳類中のフラタキシン蛋白質の前記レベルを測定することによって、フリードライヒ運動失調症にかかっているか、またはフリードライヒ運動失調症にかかるおそれがある前記哺乳類を特定する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項1に記載の化合物。
【請求項42】
前記式Iの化合物は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項27に記載の医薬品組成物。
【請求項43】
前記式Iの化合物は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤である、請求項34または36に記載の方法。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【図3】
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【図4−A】
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【図4−B】
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【図4−C】
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【図5−A】
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【図5−B】
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【公表番号】特表2009−515887(P2009−515887A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540207(P2008−540207)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/043745
【国際公開番号】WO2007/058927
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(501244222)ザ スクリプス リサーチ インスティテュート (33)
【Fターム(参考)】