福祉機器の接地部材跳ね上げ機構およびこれを組み込んだキャリーカート
【課題】状況に応じて接地させる接地部材の数を簡単に変える。
【解決手段】福祉機器本体1に揺動自在に取り付けられた揺動ベース2と、揺動ベース2に設けられた接地部材3と、福祉機器本体1に揺動自在に取り付けられた操作リンク4と、操作リンク4と揺動ベース2とを連結する連結機構5と、操作リンク4を揺動させる操作手段21を備えている。連結機構5は、揺動ベース2と操作リンク4のいずれか一方に設けられた係合凸部5aと、いずれか他方に設けられた係合凹部5bを有しており、係合凸部5aと係合凹部5bとの位置関係は、揺動ベース2の接地位置Lと跳ね上げ位置Hとで揺動ベース2から操作リンク4に伝達される力が操作リンク4を揺動させるモーメントを生じさせない思案点を有している。
【解決手段】福祉機器本体1に揺動自在に取り付けられた揺動ベース2と、揺動ベース2に設けられた接地部材3と、福祉機器本体1に揺動自在に取り付けられた操作リンク4と、操作リンク4と揺動ベース2とを連結する連結機構5と、操作リンク4を揺動させる操作手段21を備えている。連結機構5は、揺動ベース2と操作リンク4のいずれか一方に設けられた係合凸部5aと、いずれか他方に設けられた係合凹部5bを有しており、係合凸部5aと係合凹部5bとの位置関係は、揺動ベース2の接地位置Lと跳ね上げ位置Hとで揺動ベース2から操作リンク4に伝達される力が操作リンク4を揺動させるモーメントを生じさせない思案点を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば酸素ボンベ等のキャリーカート,歩行補助車,歩行器,歩行車,車椅子,ストレッチャ等の車輪を有する福祉機器の接地部材跳ね上げ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器疾患患者等が外出時に酸素ボンベを携行するための福祉機器として、酸素ボンベ用キャリーカートがある。酸素ボンベ用キャリーカートは酸素ボンベを載せる本体に左右一対の車輪が取り付けられている2輪車であり、立てた状態で自立できるようにするために自立用ストッパが1つ設けられている(例えば特許文献1,特許文献2参照)。
【0003】
本体上部にはハンドルが設けられており、使用者がこのハンドルを掴んで酸素ボンベ用キャリーカートを前傾させると、自立用ストッパが地面から離れて2輪移動可能になる。使用者はハンドルを掴んで酸素ボンベ用キャリーカートを前傾させ、そのまま引き回すようにして酸素ボンベ用キャリーカートを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−247039号公報
【特許文献1】特開2008−87624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用者が利用する交通手段や移動場所の地形等は様々であり、2輪状態のものを前傾させて引き回したり、2輪と1つの自立用ストッパとの3点で自立させることが常に使い良いとは限らず、状況によっては使い勝手が悪くなる。そして、このような問題は、酸素ボンベ用キャリーカートに限られず、例えば酸素ボンベ用以外のキャリーカート,歩行補助車,歩行器,歩行車,車椅子,ストレッチャ等の車輪を有する福祉機器にも共通する。
【0006】
本発明は、状況に応じて接地させる接地部材の数を簡単に変えることが可能な福祉機器の接地部材跳ね上げ機構およびこれを組み込んだキャリーカートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体に揺動自在に取り付けられた揺動ベースと、揺動ベースに設けられた接地部材と、福祉機器本体に揺動自在に取り付けられた操作リンクと、操作リンクと揺動ベースとを連結し、操作リンクの揺動によって揺動ベースを揺動させる連結機構と、操作リンクを揺動させる操作手段を備え、揺動ベースは接地部材を地面に着ける接地位置と地面から離す跳ね上げ位置との間で揺動するものであり、連結機構は、揺動ベースと操作リンクのいずれか一方に設けられた係合凸部と、揺動ベースと操作リンクのいずれか他方に設けられ、係合凸部と回転自在に係合し、操作リンクの揺動に伴い係合凸部を線状に案内する係合凹部を有し、係合凸部と係合凹部との位置関係は、揺動ベースから操作リンクに伝達される力が操作リンクを揺動させるモーメントを生じさせない思案点を有しており、思案点は揺動ベースが跳ね上げ位置から接地位置又はその手前の位置に揺動された場合の位置関係と、接地位置から跳ね上げ位置又はその手前の位置に揺動された場合の位置関係とにそれぞれ設けられているものである。
【0008】
したがって、操作手段を操作して福祉機器本体に対して操作リンクを揺動させると、福祉機器本体に対して揺動ベースが揺動して接地部材を上げ下げする。操作リンクと揺動ベースとを連結する連結機構の係合凸部は係合凹部に対して回転しながら移動可能となっている。したがって、係合凸部が係合凹部に対して回転しながら移動することで操作リンクの揺動によって揺動ベースが揺動される。ここで、揺動ベースを接地位置から跳ね上げ位置に向けて揺動させる場合、揺動ベースが跳ね上げ位置又はその手前の位置に到達すると、係合凸部と係合凹部との位置関係は、揺動ベースから操作リンクに伝達される力が操作リンクを揺動させるモーメントを生じさせない思案点となる。したがって、揺動ベースが跳ね上げ位置に揺動されている状態では、外力を受けても揺動ベースは揺動しない。また、揺動ベースを跳ね上げ位置から接地位置に向けて揺動させる場合、揺動ベースが接地位置又はその手前の位置に到達すると、係合凸部と係合凹部との位置関係は、揺動ベースから操作リンクに伝達される力が操作リンクを揺動させるモーメントを生じさせない思案点となる。したがって、揺動ベースが接地位置に揺動されている状態では、外力を受けても揺動ベースは揺動しない。
【0009】
また、請求項2記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体と揺動ベース又は操作リンクとの間に設けられ、揺動ベースを跳ね上げ位置に向けて揺動させる方向の付勢力を発生させるアシスト手段を備えるものである。したがって、アシスト手段が発生させる付勢力が接地部材を地面から持ち上げる際の補助力として作用する。
【0010】
また、請求項3記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体には車輪が設けられており、接地部材は車輪であり、揺動ベースの揺動により接地する車輪の数が変化するものである。したがって、揺動ベースを接地位置に揺動させると、福祉機器本体に設けられている車輪と揺動ベースに設けられている車輪の両方が接地する。一方、揺動ベースを跳ね上げ位置に揺動させると、接地している車輪が福祉機器本体に設けられたもののみとなる。
【0011】
また、請求項4記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体には車輪が設けられており、接地部材は自立用ストッパであり、揺動ベースの揺動により接地点の数が変化するものである。したがって、揺動ベースを接地位置に揺動させると、福祉機器本体に設けられている車輪と揺動ベースに設けられている自立用ストッパの両方が接地する。一方、揺動ベースを跳ね上げ位置に揺動させると、揺動ベース側の自立用ストッパが持ち上げられて福祉機器本体側の車輪のみが接地する。
【0012】
また、請求項5記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体には自立用ストッパが設けられており、接地部材は車輪であり、揺動ベースの揺動により接地点の数が変化するものである。したがって、揺動ベースを接地位置に揺動させると、福祉機器本体に設けられている自立用ストッパと揺動ベースに設けられている車輪の両方が接地する。一方、揺動ベースを跳ね上げ位置に揺動させると、揺動ベース側の車輪が持ち上げられて福祉機器本体側の自立用ストッパのみが接地する。
【0013】
さらに、請求項6記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、操作手段が、使用者が手で操作するものである場合には福祉機器本体の上部に、使用者が足で操作するものである場合には福祉機器本体の下部に設けられている。したがって、使用者が体を屈める等しなくても操作手段を操作することかできる。
【0014】
また、請求項7記載のキャリーカートは、請求項1記載の接地部材跳ね上げ機構を組み込んだものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構では、操作手段の操作によって揺動ベースを揺動させることができるので、操作手段の操作によって接地部材の上げ下げをワンタッチで行うことができ、状況に応じて接地する接地部材の数を簡単に変えることができる。また、揺動ベースの跳ね上げ位置又はその手前の位置と接地位置又はその手前の位置には思案点が設けられているので、揺動ベースを跳ね上げ位置又は接地位置に揺動させるだけで揺動ベースをその位置に自動的にロックすることができ、わざわざロック操作を行う必要がなく便利である。
【0016】
この場合、請求項3記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構のように接地する車輪の数を変化させるようにしても良く、請求項4及び請求項5記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構のように接地点の数を変化させるようにしても良い。
【0017】
また、請求項2記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構では、アシスト手段の付勢力が揺動ベースを持ち上げる際の補助力として作用するので、接地部材を軽い力で持ち上げることができ、使い勝手を更に良くすることができる。
【0018】
さらに、請求項6記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構では、使用者が操作手段を手で操作する場合には福祉機器本体の上部に、足で操作する場合には福祉機器本体の下部に操作手段を設けているので、いずれの場合であっても操作しやすい位置に操作手段を配置することができる。そのため、使い勝手を更に良くすることができる。特に使用者が身体障害者や高齢者等である場合には操作手段を操作する動作は体に負担がかかるものであるが、本発明では操作しやすい位置に操作手段を配置することができるので、体にかかる負担を軽減することができる。
【0019】
また、請求項7記載のキャリーカートでは、請求項1記載の接地部材跳ね上げ機構を組み込んでいるので、接地する接地部材の数を簡単に切り替えることができると共に、切り替えた状態に自動的にロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第1の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを接地位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図2】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第1の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを跳ね上げ位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図3】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第1の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを接地位置から跳ね上げ位置に移動させる途中の状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図4】同接地部材跳ね上げ機構を適用した酸素ボンベ用キャリーカートの一例を示し、その4輪状態(揺動ベースを接地位置に移動させている状態)の斜視図である。
【図5】同接地部材跳ね上げ機構を適用した酸素ボンベ用キャリーカートの一例を示し、その2輪状態(揺動ベースを跳ね上げ位置に移動させている状態)の斜視図である。
【図6】同接地部材跳ね上げ機構の分解斜視図である。
【図7】同接地部材跳ね上げ機構の操作手段を示す側面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第2の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを接地位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図10】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第2の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを跳ね上げ位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図11】同接地部材跳ね上げ機構の第2のガイド溝を示す断面図である。
【図12】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第3の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを接地位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図13】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第3の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを跳ね上げ位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図14】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第3の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合のねじりコイルばねの取り付け状態を示す断面図である。
【図15】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第4の実施形態を示し、歩行車に適用した場合の4輪状態の斜視図である。
【図16】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第4の実施形態を示し、歩行車に適用した場合の2輪状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1〜図8に、本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の実施形態の一例を示す。福祉機器の接地部材跳ね上げ機構(以下、単に接地部材跳ね上げ機構という)は、福祉機器本体1に揺動自在に取り付けられた揺動ベース2と、揺動ベース2に設けられた接地部材3と、福祉機器本体1に揺動自在に取り付けられた操作リンク4と、操作リンク4と揺動ベース2とを連結し、操作リンク4の揺動によって揺動ベース2を揺動させる連結機構5と、操作リンク4を揺動させる操作手段21を備えている。本実施形態では、福祉機器として酸素ボンベ用キャリーカートを例に説明する。
【0023】
福祉機器(以下、酸素ボンベ用キャリーカートという)は、図4及び図5に示すように、福祉機器本体1を構成する支柱(以下、支柱1という)に図示しない酸素ボンベを載せるための籠7を取り付けたもので、支柱1の下部には左右一対の前輪8が取り付けられている。また、支柱1の上端には当該酸素ボンベ用キャリーカートを移動させる際に掴むハンドル9が設けられている。支柱1は例えば外筒1aと内筒1bより構成され、外筒1aの上端開口から内筒1bを引き出すことで支柱1全体が伸縮可能となっている。外筒1aの外周面には軸方向に沿って第1のガイド溝10が設けられている。第1のガイド溝10は外筒1aの左右両側部にそれぞれ設けられている。
【0024】
外筒1aの下部、即ち内筒1bが外筒1a内に収納されても届かない位置には、図6に示すように前輪車軸11を通す前輪用車軸孔12と、操作リンク4の支持軸13を通すリンク孔14と、操作手段21の動きを操作リンク4に伝える連結シャフト15を通す第1のスリット16が設けられている。これら前輪用車軸孔12,リンク孔14,第1のスリット16は外筒1aの左右両側部にそれぞれ設けられており、外筒1aに対して前輪車軸11,支持軸13,連結シャフト15を酸素ボンベ用キャリーカートの幅方向に貫通させている。前輪用車軸孔12及びリンク孔14は第1のガイド溝10よりも後の部分に設けられており、また、前輪用車軸孔12はリンク孔14よりも十分低い位置に設けられており、操作リンク4は前輪車軸11に干渉しないように配置される。第1のスリット16は第1のガイド溝10内に設けられており、その長さは操作手段21を上下に移動させる範囲に対応している。即ち、連結シャフト15が第1のスリット16内を移動できる範囲で操作手段21が第1のガイド溝10に沿って上下移動可能になっている。また、第1のスリット16の幅は連結シャフト15の直径とほぼ同じ寸法になっており、第1のスリット16を通り抜ける連結シャフト15が酸素ボンベ用キャリーカートの前後方向にがたつかないようになっている。前輪車軸11の両端には前輪8が取り付けられている。
【0025】
揺動ベース2は接地部材3を地面に着ける接地位置L(図1の位置)と地面から離す跳ね上げ位置H(図2の位置)との間で揺動する強度部材であり、本実施形態では接地部材3として後輪(以下、後輪3という)が取り付けられている。また、本実施形態では酸素ボンベ用キャリーカートを4輪車にするために揺動ベース2を左右に設けている。ただし、必ずしも揺動ベース2を左右に設ける必要はなく、酸素ボンベ用キャリーカートを3輪車(後輪3を1つ)にする場合や、1枚の揺動ベース2に左右の後輪3を取り付ける場合等には揺動ベース2を1枚だけ設けるようにしても良い。また、後輪3の数を更に増やす場合等には揺動ベース2の枚数を更に増やしても良い。
【0026】
本実施形態では揺動ベース2を板状に形成している。ただし、必ずしも揺動ベース2を板状に形成する必要はなく、例えば棒状,パイプ状,枠状等に形成しても良い。揺動ベース2の前部には前輪車軸11を通す前輪用車軸孔2aが設けられ、後部には後輪車軸17を通す後輪用車軸孔2bが設けられている。揺動ベース2は、酸素ボンベ用キャリーカートが4輪で安定して自立できる程度に後輪3を前輪8から離して配置でき且つ長過ぎて使い勝手を損ねることがない程度の長さに形成されている。
【0027】
本実施形態では、揺動ベース2の前部に斜め上方に延出する延出部2cが設けられており、左右の揺動ベース2の延出部2cの間には間隔を一定に維持するスペーサとしても機能する2輪時用自立ストッパ18が設けられている。この2輪時用自立ストッパ18は揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに移動させて酸素ボンベ用キャリーカートを2輪状態にした場合に接地するものであり、酸素ボンベ用キャリーカートは2輪状態でも自立可能になっている。ただし、必ずしも2輪時用自立ストッパ18は必要ではなく、2輪状態で自立可能にする必要がない場合等には2輪時用自立ストッパ18及び延出部2cを省略しても良い。
【0028】
揺動ベース2は支柱1と前輪8の間に配置され、前輪用車軸孔2aに前輪車軸11を通すことで支柱1に対して揺動自在に取り付けられている。このように揺動ベース2と前輪8を同じ軸に取り付けることで、酸素ボンベ用キャリーカートの組み付けを容易なものにすることができる。ただし、必ずしも揺動ベース2と前輪8を同じ軸に取り付ける必要はなく、同軸上に配置された別々の軸に取り付けても良く、あるいは異なる軸上に配置された別々の軸に取り付けても良い。揺動ベース2が揺動できる範囲は、操作リンク4及び連結機構5との連結によって決められる。また、本実施形態では、左右の揺動ベース2と支柱1の間にカラー19が挟み込まれており、左右の揺動ベース2と支柱1との干渉を防止すると共に、左右の揺動ベース2と支柱1の間に操作リンク4を配置するスペースを設けている。また、カラー19は揺動ベース2の軸受けとしても機能している。ただし、カラー19を省略しても良い。
【0029】
左右の揺動ベース2の後輪用車軸孔2bには1本の後輪車軸17が通されており、後輪車軸17の両端には後輪3がそれぞれ取り付けられている。後輪車軸17の左右の揺動ベース2の間の位置には円筒状のスペーサ20が被されており、左右の揺動ベース2の後部の間隔を一定に維持している。
【0030】
操作リンク4は各揺動ベース2毎に設けられている。本実施形態では揺動ベース2を左右に設けているので、操作リンク4も左右に設けられている。ただし、操作リンク4を揺動ベース2毎に設ける必要はなく、1つの操作リンク4で複数の揺動ベース2を揺動させるようにしても良い。
【0031】
本実施形態の操作リンク4はほぼL字形状を成しており、支柱1と左右の揺動ベース2の間に配置され、中央の折曲部が外筒1aのリンク孔14を貫通している支持軸13によって支持されている。これにより操作リンク4は支柱1に揺動自在に取り付けられている。操作リンク4の前部には連結シャフト15を通す第2のスリット4aが形成されている。第2のスリット4aの長さは連結シャフト15の移動によって操作リンク4を揺動させることができる最小の長さとなっている。また、第2のスリット4aの幅は連結シャフト15の直径とほぼ同じ寸法になっており、連結シャフト15ががたつかないようになっている。操作リンク4の後端には連結機構5の係合凸部5aが設けられている。なお、操作リンク4の形状はほぼL字形状に限るものではなく、操作手段21に操作されて揺動ベース2を接地位置Lと跳ね上げ位置Hとの間で揺動させることができ且つ後述する思案点を設けることができる形状であれば特に制限されない。操作リンク4が揺動できる範囲は、連結シャフト15及び連結機構5との連結によって決められる。
【0032】
連結機構5は、揺動ベース2と操作リンク4のいずれか一方に設けられた係合凸部5aと、揺動ベース2と操作リンク4のいずれか他方に設けられ、係合凸部5aと回転自在に係合し、操作リンク4の揺動に伴い係合凸部5aを線状に案内する係合凹部5bを有している。本実施形態では、操作リンク4に係合凸部5aを、揺動ベース2に係合凹部5bをそれぞれ設けている。ただし、揺動ベース2に係合凸部5aを、操作リンク4に係合凹部5bをそれぞれ設けても良い。係合凸部5aは操作リンク4の後部に揺動ベース2に向けて突出するように形成されている。また、係合凹部5bは揺動ベース2の前輪用車軸孔2aの近傍に形成されている。本実施形態の係合凹部5bは係合凸部5aの直径とほぼ同じ寸法の幅を有するスリットであり、係合凸部5aを挿入した場合にがたつきが発生せず、両者間で力の伝達が行われる。ただし、係合凹部5bはスリットに限るものではなく、係合凸部5aを回転自在に且つ線移動可能に係合するものであれば例えば長溝等でも良い。係合凹部5bの長さは係合凸部5aの移動によって揺動ベース2を揺動させることができる最小の長さとなっている。
【0033】
係合凸部5aと係合凹部5bとの位置関係には、揺動ベース2から操作リンク4に伝達される力が操作リンク4を揺動させるモーメントを生じさせない思案点が設けられている。本実施形態では揺動ベース2が揺動できる範囲の両端が思案点になっている。即ち、揺動ベース2が接地位置Lに揺動された場合の連結機構5の位置関係と、跳ね上げ位置Hに揺動された場合の連結機構5の位置関係がそれぞれ思案点になっている。これらの位置関係を思案点にすることで、揺動ベース2を接地位置L又は跳ね上げ位置Hに揺動させた状態で揺動ベース2に外力が作用しても揺動ベース2が意図せずに揺動してしまうのを防止することができる。即ち、揺動ベース2をロックすることができる。
【0034】
ただし、思案点となる位置関係はこれらに限るものではなく、揺動ベース2が揺動できる範囲の両端の手前位置を思案点にしても良い。即ち、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hから接地位置Lに向けて揺動される場合の手前の位置(接地位置Lの近傍であって、接地位置Lに到達する前に通る位置)に揺動された場合の位置関係と、接地位置Lから跳ね上げ位置Hに向けて揺動される場合の手前の位置(跳ね上げ位置Hの近傍であって、跳ね上げ位置Hに到達する前に通る位置)に揺動された場合の位置関係がそれぞれ思案点になるようにしても良い。これらの場合には、揺動ベース2を接地位置L又は跳ね上げ位置Hから揺動させるには思案点を一旦越えさせる必要があるので、揺動ベース2を接地位置L又は跳ね上げ位置Hに揺動させた状態で揺動ベース2に外力が作用しても揺動ベース2が意図せずに揺動してしまうのをより一層確実に防止することができる。
【0035】
本実施形態では、操作手段21として操作レバー(以下、操作レバー21という)を使用する。ただし、操作レバー以外のもの、例えば操作ボタン等でも良い。本実施形態では、操作レバー21の動きを細長い板状部材22によって操作リンク4に伝えている。ただし、操作レバー21の動きを伝える手段は板状部材22に限るものではなく、例えはワイヤ、棒状部材等の使用も可能である。本実施形態では、操作リンク4を左右に設けていることから板状部材22も左右にそれぞれ設けている。
【0036】
操作レバー21は使用者が操作し易い位置に設けられている。本実施形態では、使用者が操作レバー21を手で操作することを想定しているので、手で操作しやすい位置である支柱1の上部(通常の体格の使用者が屈むことなく手が届く福祉機器本体の位置)、例えば外筒1aの上端近傍に操作レバー21を設けている。ただし、操作レバー21の位置はこれに限るものではなく、例えばハンドル9、外筒1bの上端、内筒1bの上端又はその近傍等に設けても良い。また、操作レバー21を足で操作することを想定する場合には、例えば支柱1の下部に設けるようにしても良い。操作レバー21は例えばU字形状を成す板材であり、外筒1aの外周面の後半部を囲むように配置されている。操作レバー21の両端は板状部材22の上端に例えばねじ等によって接続されている。
【0037】
板状部材22は外筒1aの第1のガイド溝10内に摺動自在に配置されている。板状部材22の下端は外筒1aの下端近傍まで延びており、第1のスリット16に対向する位置には連結シャフト15を通す孔22aが設けられている。操作レバー21を操作して板状部材22を第1のガイド溝10に沿って移動させることで、操作リンク4を揺動させることができる。操作レバー21及び板状部材22は連結シャフト15が第1のスリット16内を移動できる範囲で移動可能である。
【0038】
次に、接地部材跳ね上げ機構の動作について説明する。左右の操作リンク4及び揺動ベース2は同時に同量だけ揺動する。
【0039】
図4に示す酸素ボンベ用キャリーカートの4輪状態では、揺動ベース2は接地位置Lに降ろされている(図1)。また、この状態では、操作レバー21は最も低い位置に操作されており、板状部材22の下部を貫通する連結シャフト15は第1のスリット16内の最も低い位置に降ろされている。即ち、操作レバー21を最も低い位置に操作すると、揺動ベース2は接地位置Lに揺動される。なお、4輪状態の酸素ボンベ用キャリーカートは後輪3側に支柱1を傾けている。
【0040】
この状態から使用者が操作レバー21を引き上げると、第1のスリット16内を連結シャフト15が上昇し、操作リンク4が支持軸13を中心に前端を持ち上げる方向に揺動される。このとき、連結シャフト15と支持軸13との距離が変化するが、この距離変化は連結シャフト15が第2のスリット4a内を移動することで吸収される。
【0041】
操作リンク4が揺動されると、その後端に設けられている係合凸部5aが前方に移動するので、揺動ベース2の揺動中心(前輪車軸11)よりも高い位置に設けられている係合凹部5bも前方に移動することになり、揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに向けて揺動させる(図3)。このとき、係合凸部5aと揺動ベース2の揺動中心との距離が変化するが、この距離変化は係合凸部5aが係合凹部5b内を回転しながら移動することで吸収される。
【0042】
揺動ベース2の揺動によって後輪3が持ち上げられ、酸素ボンベ用キャリーカートが2輪状態となる(図5)。そして、揺動ベース2が跳ね上げ位置H(図2)まで揺動されると、係合凸部5aと係合凹部5bの係合凸部5aから力を受ける部位とが揺動ベース2の揺動方向に並ぶ思案点となるので、外力を受けた揺動ベース2が揺動しようとしても操作リンク4を揺動させることができず、揺動ベース2は揺動することができない。即ち、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hに自動的にロックされる。この状態では、2輪時用自立ストッパ18が接地しており、酸素ボンベ用キャリーカートは左右の前輪8と2輪時用自立ストッパ18との3点で自立する。この2輪状態の酸素ボンベ用キャリーカートは支柱1をほぼ垂直に立てている。使用者はハンドル9を掴んで酸素ボンベ用キャリーカートを後に傾けることで2輪時用自立ストッパ18を地面から離し、そのまま酸素ボンベ用キャリーカートを引き回すことができる。なお、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hにまで持ち上げられている状態では、操作レバー21は最も高い位置に持ち上げられている。
【0043】
この状態から操作レバー21を下げると、第1のスリット16内を連結シャフト15が下降し、操作リンク4の前端を下げる。操作リンク4側から揺動ベース2側へと伝わる力に対しては思案点になっていないので、操作リンク4は前端を下げる方向に揺動し、係合凸部5aと係合凹部5bは上述の動きとは逆の動きを行って揺動ベース2を接地位置Lに向けて揺動させる。これにより、後輪3が降ろされ、酸素ボンベ用キャリーカートが4輪状態となる。そして、揺動ベース2が接地位置Lまで揺動されると、係合凸部5aと係合凹部5bの係合凸部5aから力を受ける部位とが揺動ベース2の揺動方向に並ぶ思案点となるので、外力を受けた揺動ベース2が揺動しようとしても操作リンク4を揺動させることができず、揺動ベース2は揺動することができない。即ち、揺動ベース2が接地位置Lに自動的にロックされる。この状態では、酸素ボンベ用キャリーカートは左右の前輪8と左右の後輪3との4点で自立する。使用者はハンドル9を掴んで酸素ボンベ用キャリーカートをそのまま引き回すことができる。
【0044】
このように、本発明では、操作レバー21の操作によって揺動ベース2を揺動させることができるので、後輪3の上げ下げをワンタッチで行うことができ、状況に応じて4輪車と2輪車との切り替えを簡単に行うことができる。しかも、揺動ベース2を跳ね上げ位置H又は接地位置Lに移動させた時の連結機構5の位置関係を思案点にすることで、揺動ベース2を跳ね上げ位置H又は接地位置Lに自動的にロックすることができる。これらのため、酸素ボンベ用キャリーカートが大変使い勝手の良いものとなる。
【0045】
また、操作レバー21を使用者が操作しやすい位置に設けているので、使用者が無理な姿勢をとらなくても後輪3の上げ下げを簡単に行うことができる。
【0046】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0047】
例えば、上述の説明では、接地部材3が車輪(後輪3)であったが、必ずしも車輪に限るものではなく、自立用ストッパでも良い。即ち、福祉機器本体としての支柱1に車輪を設けると共に、揺動ベース2に接地部材3としての自立用ストッパを設け、揺動ベース2の揺動により接地点の数を変化させるようにしても良い。なお、自立ストッパ18及び延出部2cは省略することが好ましい。この場合の酸素ボンベ用キャリーカートでは、引き回すときには揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに揺動させて自立用ストッパを持ち上げ、自立させるときには揺動ベース2を接地位置Lに揺動させて自立用ストッパを接地させるようにする。
【0048】
また、福祉機器本体としての支柱1に車輪に代えて自立用ストッパを設ける共に、揺動ベース2に接地部材3としての車輪を設け、揺動ベース2の揺動により接地点の数を変化させるようにしても良い。この場合の酸素ボンベ用キャリーカートでは、引き回すときには揺動ベース2を接地位置Lに揺動させて車輪を接地させると共に支柱1を傾けて自立用ストッパを持ち上げる。そして、車輪が邪魔になるとき等には揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに揺動させて車輪を持ち上げるようにする。
【0049】
また、揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに向けて揺動させる方向の付勢力を発生させるアシスト手段23を設けても良い。アシスト手段23の一例を図9〜図11に示す。本実施例では、アシスト手段23として圧縮コイルばねを使用している。ただし、圧縮コイルばね以外のばねやその他の弾性体を使用しても良い。また、本実施例では左右の揺動ベース2毎にアシスト手段23を設けているが、いずれか一方の揺動ベース2にのみアシスト手段23を設けるようにしても良い。
【0050】
アシスト手段23としての圧縮コイルばね(以下、圧縮コイルばね23という)は、ばね受け機構27に取り付けられ、福祉機器本体としての支柱1と揺動ベース2との間に設けられている。ばね受け機構27は、支柱1の外筒1aの下端に固定された受け部材24と、外筒1aに上下移動可能に設けられたスライダ25と、スライダ25に設けられて揺動ベース2に連結されている連結凸部28より構成されている。圧縮コイルばね23は受け部材24とスライダ25との間に設けられている。また、支柱1の外筒1aの外周面の後部には外筒1aの軸線方向に沿って第2のガイド溝26が形成されている。
【0051】
受け部材24は第2のガイド溝26の下端部に挿入されて固定されており、第2のガイド溝26からの突出部分24aにはスライダ25に向けて突出するガイドスリーブ29が設けられ、さらに突出部分24aにはガイドスリーブ29内の孔に連続するガイド用貫通孔24bが形成されている。スライダ25は第2のガイド溝26に摺動自在に挿入されており、第2のガイド溝26からの突出部分25aには受け部材24のガイドスリーブ29及びガイド用貫通孔24bに挿入されるガイド棒30が取り付けられている。ガイド棒30は外筒1aに対して平行に設けられている。また、スライダ25の突出部分25aには揺動ベース2に設けられた長孔31に挿入される連結凸部28が形成されている。ガイド棒30及びガイドスリーブ29の周囲には、受け部材24の突出部分24aとスライダ25の突出部分25aに挟まれてスライダ25を受け部材24から離す方向に付勢力を発生させる圧縮コイルばね23が設けられている。
【0052】
揺動ベース2が接地位置Lに移動している状態では、スライダ25が受け部材24に近づいており、圧縮コイルばね23は押し縮められている。この状態では揺動ベース2は思案点によるロックを受けており、圧縮コイルばね23の付勢力によって揺動されることはない。
【0053】
操作リンク4による操作によって揺動ベース2が接地位置Lから跳ね上げ位置Hに向けて揺動されると、スライダ25が第2のガイド溝26に沿って受け部材24から遠ざかる方向に移動する。このとき、スライダ25は圧縮コイルばね23によって押し進められる。即ち、圧縮コイルばね23に貯えられていたばね力(付勢力)が揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに向けて揺動させる方向に作用し、この力によって使用者が操作レバー21を操作する力が軽減され操作性が向上する。揺動ベース2が揺動する際、第2のガイド溝26に沿って移動する連結凸部28と揺動ベース2の揺動中心(前輪車軸11)との距離が変化するが、この距離変化は連結凸部28が長孔31内を移動することで吸収される。
【0054】
逆に、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hから接地位置Lに向けて揺動されると、スライダ25は第2のガイド溝26に沿って受け部材24に近づく方向に移動するので、圧縮コイルばね23が押し縮められてばね力が貯えられる。なお、この場合には圧縮コイルばね23のばね力は使用者が操作レバー21を操作する方向と逆方向に作用することになるが、揺動ベース2の揺動に重力を利用することができるので、操作に必要な力が極端に大きくなるようなことはなく、操作性が悪化することはない。
【0055】
なお、上述の例ではアシスト手段23として圧縮コイルばねを使用してしたが、必ずしも圧縮コイルばねに限られない。例えば、ねじりコイルばねを使用しても良い。図12〜図14に、ねじりコイルばねを使用したアシスト手段23の例を示す。この例でも、アシスト手段23としてのねじりコイルばね(以下、ねじりコイルばね23という)は福祉機器本体1としての支柱1と揺動ベース2との間に設けられている。
【0056】
ねじりコイルばね23は揺動ベース2の揺動中心軸(前輪車軸11)と同軸上に配置されている。本実施例では、ねじりコイルばね23をカラー19に組み込むことで揺動ベース2の揺動中心軸と同軸上に配置している。ねじりコイルばね23の一端は外筒1aに、他端は揺動ベース2にそれぞれ係止されている。
【0057】
揺動ベース2が接地位置Lに移動している状態では、ねじりコイルばね23の変形量は最大となっている。この状態では揺動ベース2は思案点によるロックを受けており、ねじりコイルばね23の付勢力によって揺動されることはない。
【0058】
操作リンク4による操作によって揺動ベース2が接地位置Lから跳ね上げ位置Hに向けて揺動されると、ねじりコイルばね23の変形量は減少する。即ち、ねじりコイルばね23に貯えられていたばね力(付勢力)が揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに向けて揺動させる方向に作用し、この力によって使用者が操作レバー21を操作する力が軽減される。
【0059】
逆に、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hから接地位置Lに向けて揺動されると、ねじりコイルばね23の変形量が増加し、ばね力が貯えられる。なお、この場合にはねじりコイルばね23のばね力は使用者が操作レバー21を操作する方向と逆方向に作用することになるが、揺動ベース2の揺動に重力を利用することができるので、操作に必要な力が極端に大きくなるようになことはなく、操作性が悪化することはない。
【0060】
ねじりコイルばね23を使用する場合には、上述の圧縮コイルばね23で必要とされたばね受け機構27が不要になり、アシスト手段23の構成を簡略化することができる。
【0061】
なお、上述の説明では、アシスト手段23を福祉機器本体1と揺動ベース2との間に設けていたが、福祉機器本体1と操作リンク4との間に設けるようにしても良い。即ち、上述の説明では、アシスト手段23の付勢力を揺動ベース2に伝達するようにしていたが、操作リンク4に伝達するようにしても良い。操作リンク4に伝達する場合も同様に、揺動ベース2を持ち上げる場合の操作力を軽くすることができて操作性を向上させることができる。
【0062】
また、上述の説明では、接地する車輪数を4輪と2輪との間で切り替えるようにしていたが、切り替える車輪数はこれに限るものではなく、例えば3輪と2輪との切り替えや、その他の車輪数の切り替えでも良い。
【0063】
また、上述の説明では、揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに揺動させる場合に操作レバー21を持ち上げ、接地位置Lに揺動させる場合に操作レバー21を降ろす構成であったが、逆に、揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに揺動させる場合に操作レバー21を降ろし、接地位置Lに揺動させる場合に操作レバー21を持ち上げるようにしても良い。
【0064】
また、上述の説明では、接地部材跳ね上げ機構を福祉機器としての酸素ボンベ用キャリーカートに適用していたが、適用できる福祉機器は酸素ボンベ用キャリーカートに限るものではなく、例えば歩行補助車、歩行器、歩行車、車椅子、ストレッチャー等の車輪を有する福祉機器であれば適用可能である。また、キャリーカートとしては、酸素ボンベ用のものに限らず、例えば点滴等、その他のもの用のキャリーカートについても適用可能である。
【0065】
図15及び図16に接地部材跳ね上げ機構を歩行車に組み込んだ実施形態を示す。なお、上述の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付してある。支柱フレーム1cの下端にはメインフレーム1dが接続されており、メインフレーム1dの左右には前輪8及び後輪3が取り付けられた脚フレーム2が接続されている。本実施形態では支柱フレーム1c及びメインフレーム1dが福祉機器本体1であり、脚フレーム2が揺動ベースである。
【0066】
操作リンク4はメインフレーム1に揺動自在に取り付けられ、連結機構5によって脚フレーム2に連結されている。操作レバー21が押し下げられている状態では、図15に示すように揺動ベース(脚フレーム)2が接地位置Lに揺動されており、4輪状態となっている。この状態では、連結機構5の係合凸部5aと係合凹部5bの位置関係が思案点となっており、脚フレーム2はロックされている。
【0067】
この状態から操作レバー21を持ち上げると、操作リンク4が揺動し、脚フレーム2の後端を持ち上げるように揺動させる。そして、脚フレーム2が図16に示す跳ね上げ位置Hまで揺動すると、連結機構5の係合凸部5aと係合凹部5bの位置関係が思案点となり、脚フレーム2はロックされる。この状態では、脚フレーム2の前端と左右の前輪8との3点で接地しており、自立することができる。
【0068】
この歩行車の場合にも、酸素ボンベ用キャリーカートの場合と同様に、操作手段21の操作によって後輪3の上げ下げをワンタッチで行うことができ、状況に応じて4輪車状態と自立状態との切り替えを簡単に行うことができる。また、脚フレーム2の跳ね上げ位置Hと接地位置Lには思案点が設けられているので、脚フレーム2を跳ね上げ位置H又は接地位置Lに揺動させるだけで脚フレーム2をその位置に自動的にロックすることができる。また、操作レバー21を使用者が操作しやすい位置に設けているので、使用者が無理な姿勢をとらなくても後輪3の上げ下げを簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 支柱(福祉機器本体)
2 揺動ベース
3 接地部材
4 操作リンク
5 連結機構
5a 係合凸部
5b 係合凹部
6 操作手段
8 前輪(福祉機器本体に設けられた車輪)
23 アシスト手段
L 接地位置
H 跳ね上げ位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば酸素ボンベ等のキャリーカート,歩行補助車,歩行器,歩行車,車椅子,ストレッチャ等の車輪を有する福祉機器の接地部材跳ね上げ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器疾患患者等が外出時に酸素ボンベを携行するための福祉機器として、酸素ボンベ用キャリーカートがある。酸素ボンベ用キャリーカートは酸素ボンベを載せる本体に左右一対の車輪が取り付けられている2輪車であり、立てた状態で自立できるようにするために自立用ストッパが1つ設けられている(例えば特許文献1,特許文献2参照)。
【0003】
本体上部にはハンドルが設けられており、使用者がこのハンドルを掴んで酸素ボンベ用キャリーカートを前傾させると、自立用ストッパが地面から離れて2輪移動可能になる。使用者はハンドルを掴んで酸素ボンベ用キャリーカートを前傾させ、そのまま引き回すようにして酸素ボンベ用キャリーカートを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−247039号公報
【特許文献1】特開2008−87624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用者が利用する交通手段や移動場所の地形等は様々であり、2輪状態のものを前傾させて引き回したり、2輪と1つの自立用ストッパとの3点で自立させることが常に使い良いとは限らず、状況によっては使い勝手が悪くなる。そして、このような問題は、酸素ボンベ用キャリーカートに限られず、例えば酸素ボンベ用以外のキャリーカート,歩行補助車,歩行器,歩行車,車椅子,ストレッチャ等の車輪を有する福祉機器にも共通する。
【0006】
本発明は、状況に応じて接地させる接地部材の数を簡単に変えることが可能な福祉機器の接地部材跳ね上げ機構およびこれを組み込んだキャリーカートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体に揺動自在に取り付けられた揺動ベースと、揺動ベースに設けられた接地部材と、福祉機器本体に揺動自在に取り付けられた操作リンクと、操作リンクと揺動ベースとを連結し、操作リンクの揺動によって揺動ベースを揺動させる連結機構と、操作リンクを揺動させる操作手段を備え、揺動ベースは接地部材を地面に着ける接地位置と地面から離す跳ね上げ位置との間で揺動するものであり、連結機構は、揺動ベースと操作リンクのいずれか一方に設けられた係合凸部と、揺動ベースと操作リンクのいずれか他方に設けられ、係合凸部と回転自在に係合し、操作リンクの揺動に伴い係合凸部を線状に案内する係合凹部を有し、係合凸部と係合凹部との位置関係は、揺動ベースから操作リンクに伝達される力が操作リンクを揺動させるモーメントを生じさせない思案点を有しており、思案点は揺動ベースが跳ね上げ位置から接地位置又はその手前の位置に揺動された場合の位置関係と、接地位置から跳ね上げ位置又はその手前の位置に揺動された場合の位置関係とにそれぞれ設けられているものである。
【0008】
したがって、操作手段を操作して福祉機器本体に対して操作リンクを揺動させると、福祉機器本体に対して揺動ベースが揺動して接地部材を上げ下げする。操作リンクと揺動ベースとを連結する連結機構の係合凸部は係合凹部に対して回転しながら移動可能となっている。したがって、係合凸部が係合凹部に対して回転しながら移動することで操作リンクの揺動によって揺動ベースが揺動される。ここで、揺動ベースを接地位置から跳ね上げ位置に向けて揺動させる場合、揺動ベースが跳ね上げ位置又はその手前の位置に到達すると、係合凸部と係合凹部との位置関係は、揺動ベースから操作リンクに伝達される力が操作リンクを揺動させるモーメントを生じさせない思案点となる。したがって、揺動ベースが跳ね上げ位置に揺動されている状態では、外力を受けても揺動ベースは揺動しない。また、揺動ベースを跳ね上げ位置から接地位置に向けて揺動させる場合、揺動ベースが接地位置又はその手前の位置に到達すると、係合凸部と係合凹部との位置関係は、揺動ベースから操作リンクに伝達される力が操作リンクを揺動させるモーメントを生じさせない思案点となる。したがって、揺動ベースが接地位置に揺動されている状態では、外力を受けても揺動ベースは揺動しない。
【0009】
また、請求項2記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体と揺動ベース又は操作リンクとの間に設けられ、揺動ベースを跳ね上げ位置に向けて揺動させる方向の付勢力を発生させるアシスト手段を備えるものである。したがって、アシスト手段が発生させる付勢力が接地部材を地面から持ち上げる際の補助力として作用する。
【0010】
また、請求項3記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体には車輪が設けられており、接地部材は車輪であり、揺動ベースの揺動により接地する車輪の数が変化するものである。したがって、揺動ベースを接地位置に揺動させると、福祉機器本体に設けられている車輪と揺動ベースに設けられている車輪の両方が接地する。一方、揺動ベースを跳ね上げ位置に揺動させると、接地している車輪が福祉機器本体に設けられたもののみとなる。
【0011】
また、請求項4記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体には車輪が設けられており、接地部材は自立用ストッパであり、揺動ベースの揺動により接地点の数が変化するものである。したがって、揺動ベースを接地位置に揺動させると、福祉機器本体に設けられている車輪と揺動ベースに設けられている自立用ストッパの両方が接地する。一方、揺動ベースを跳ね上げ位置に揺動させると、揺動ベース側の自立用ストッパが持ち上げられて福祉機器本体側の車輪のみが接地する。
【0012】
また、請求項5記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、福祉機器本体には自立用ストッパが設けられており、接地部材は車輪であり、揺動ベースの揺動により接地点の数が変化するものである。したがって、揺動ベースを接地位置に揺動させると、福祉機器本体に設けられている自立用ストッパと揺動ベースに設けられている車輪の両方が接地する。一方、揺動ベースを跳ね上げ位置に揺動させると、揺動ベース側の車輪が持ち上げられて福祉機器本体側の自立用ストッパのみが接地する。
【0013】
さらに、請求項6記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構は、操作手段が、使用者が手で操作するものである場合には福祉機器本体の上部に、使用者が足で操作するものである場合には福祉機器本体の下部に設けられている。したがって、使用者が体を屈める等しなくても操作手段を操作することかできる。
【0014】
また、請求項7記載のキャリーカートは、請求項1記載の接地部材跳ね上げ機構を組み込んだものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構では、操作手段の操作によって揺動ベースを揺動させることができるので、操作手段の操作によって接地部材の上げ下げをワンタッチで行うことができ、状況に応じて接地する接地部材の数を簡単に変えることができる。また、揺動ベースの跳ね上げ位置又はその手前の位置と接地位置又はその手前の位置には思案点が設けられているので、揺動ベースを跳ね上げ位置又は接地位置に揺動させるだけで揺動ベースをその位置に自動的にロックすることができ、わざわざロック操作を行う必要がなく便利である。
【0016】
この場合、請求項3記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構のように接地する車輪の数を変化させるようにしても良く、請求項4及び請求項5記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構のように接地点の数を変化させるようにしても良い。
【0017】
また、請求項2記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構では、アシスト手段の付勢力が揺動ベースを持ち上げる際の補助力として作用するので、接地部材を軽い力で持ち上げることができ、使い勝手を更に良くすることができる。
【0018】
さらに、請求項6記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構では、使用者が操作手段を手で操作する場合には福祉機器本体の上部に、足で操作する場合には福祉機器本体の下部に操作手段を設けているので、いずれの場合であっても操作しやすい位置に操作手段を配置することができる。そのため、使い勝手を更に良くすることができる。特に使用者が身体障害者や高齢者等である場合には操作手段を操作する動作は体に負担がかかるものであるが、本発明では操作しやすい位置に操作手段を配置することができるので、体にかかる負担を軽減することができる。
【0019】
また、請求項7記載のキャリーカートでは、請求項1記載の接地部材跳ね上げ機構を組み込んでいるので、接地する接地部材の数を簡単に切り替えることができると共に、切り替えた状態に自動的にロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第1の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを接地位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図2】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第1の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを跳ね上げ位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図3】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第1の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを接地位置から跳ね上げ位置に移動させる途中の状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図4】同接地部材跳ね上げ機構を適用した酸素ボンベ用キャリーカートの一例を示し、その4輪状態(揺動ベースを接地位置に移動させている状態)の斜視図である。
【図5】同接地部材跳ね上げ機構を適用した酸素ボンベ用キャリーカートの一例を示し、その2輪状態(揺動ベースを跳ね上げ位置に移動させている状態)の斜視図である。
【図6】同接地部材跳ね上げ機構の分解斜視図である。
【図7】同接地部材跳ね上げ機構の操作手段を示す側面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第2の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを接地位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図10】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第2の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを跳ね上げ位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図11】同接地部材跳ね上げ機構の第2のガイド溝を示す断面図である。
【図12】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第3の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを接地位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図13】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第3の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合の揺動ベースを跳ね上げ位置に移動させた状態の揺動ベース,操作リンク,連結機構の位置関係を示す図である。
【図14】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第3の実施形態を示し、酸素ボンベ用キャリーカートに適用した場合のねじりコイルばねの取り付け状態を示す断面図である。
【図15】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第4の実施形態を示し、歩行車に適用した場合の4輪状態の斜視図である。
【図16】本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の第4の実施形態を示し、歩行車に適用した場合の2輪状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1〜図8に、本発明の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構の実施形態の一例を示す。福祉機器の接地部材跳ね上げ機構(以下、単に接地部材跳ね上げ機構という)は、福祉機器本体1に揺動自在に取り付けられた揺動ベース2と、揺動ベース2に設けられた接地部材3と、福祉機器本体1に揺動自在に取り付けられた操作リンク4と、操作リンク4と揺動ベース2とを連結し、操作リンク4の揺動によって揺動ベース2を揺動させる連結機構5と、操作リンク4を揺動させる操作手段21を備えている。本実施形態では、福祉機器として酸素ボンベ用キャリーカートを例に説明する。
【0023】
福祉機器(以下、酸素ボンベ用キャリーカートという)は、図4及び図5に示すように、福祉機器本体1を構成する支柱(以下、支柱1という)に図示しない酸素ボンベを載せるための籠7を取り付けたもので、支柱1の下部には左右一対の前輪8が取り付けられている。また、支柱1の上端には当該酸素ボンベ用キャリーカートを移動させる際に掴むハンドル9が設けられている。支柱1は例えば外筒1aと内筒1bより構成され、外筒1aの上端開口から内筒1bを引き出すことで支柱1全体が伸縮可能となっている。外筒1aの外周面には軸方向に沿って第1のガイド溝10が設けられている。第1のガイド溝10は外筒1aの左右両側部にそれぞれ設けられている。
【0024】
外筒1aの下部、即ち内筒1bが外筒1a内に収納されても届かない位置には、図6に示すように前輪車軸11を通す前輪用車軸孔12と、操作リンク4の支持軸13を通すリンク孔14と、操作手段21の動きを操作リンク4に伝える連結シャフト15を通す第1のスリット16が設けられている。これら前輪用車軸孔12,リンク孔14,第1のスリット16は外筒1aの左右両側部にそれぞれ設けられており、外筒1aに対して前輪車軸11,支持軸13,連結シャフト15を酸素ボンベ用キャリーカートの幅方向に貫通させている。前輪用車軸孔12及びリンク孔14は第1のガイド溝10よりも後の部分に設けられており、また、前輪用車軸孔12はリンク孔14よりも十分低い位置に設けられており、操作リンク4は前輪車軸11に干渉しないように配置される。第1のスリット16は第1のガイド溝10内に設けられており、その長さは操作手段21を上下に移動させる範囲に対応している。即ち、連結シャフト15が第1のスリット16内を移動できる範囲で操作手段21が第1のガイド溝10に沿って上下移動可能になっている。また、第1のスリット16の幅は連結シャフト15の直径とほぼ同じ寸法になっており、第1のスリット16を通り抜ける連結シャフト15が酸素ボンベ用キャリーカートの前後方向にがたつかないようになっている。前輪車軸11の両端には前輪8が取り付けられている。
【0025】
揺動ベース2は接地部材3を地面に着ける接地位置L(図1の位置)と地面から離す跳ね上げ位置H(図2の位置)との間で揺動する強度部材であり、本実施形態では接地部材3として後輪(以下、後輪3という)が取り付けられている。また、本実施形態では酸素ボンベ用キャリーカートを4輪車にするために揺動ベース2を左右に設けている。ただし、必ずしも揺動ベース2を左右に設ける必要はなく、酸素ボンベ用キャリーカートを3輪車(後輪3を1つ)にする場合や、1枚の揺動ベース2に左右の後輪3を取り付ける場合等には揺動ベース2を1枚だけ設けるようにしても良い。また、後輪3の数を更に増やす場合等には揺動ベース2の枚数を更に増やしても良い。
【0026】
本実施形態では揺動ベース2を板状に形成している。ただし、必ずしも揺動ベース2を板状に形成する必要はなく、例えば棒状,パイプ状,枠状等に形成しても良い。揺動ベース2の前部には前輪車軸11を通す前輪用車軸孔2aが設けられ、後部には後輪車軸17を通す後輪用車軸孔2bが設けられている。揺動ベース2は、酸素ボンベ用キャリーカートが4輪で安定して自立できる程度に後輪3を前輪8から離して配置でき且つ長過ぎて使い勝手を損ねることがない程度の長さに形成されている。
【0027】
本実施形態では、揺動ベース2の前部に斜め上方に延出する延出部2cが設けられており、左右の揺動ベース2の延出部2cの間には間隔を一定に維持するスペーサとしても機能する2輪時用自立ストッパ18が設けられている。この2輪時用自立ストッパ18は揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに移動させて酸素ボンベ用キャリーカートを2輪状態にした場合に接地するものであり、酸素ボンベ用キャリーカートは2輪状態でも自立可能になっている。ただし、必ずしも2輪時用自立ストッパ18は必要ではなく、2輪状態で自立可能にする必要がない場合等には2輪時用自立ストッパ18及び延出部2cを省略しても良い。
【0028】
揺動ベース2は支柱1と前輪8の間に配置され、前輪用車軸孔2aに前輪車軸11を通すことで支柱1に対して揺動自在に取り付けられている。このように揺動ベース2と前輪8を同じ軸に取り付けることで、酸素ボンベ用キャリーカートの組み付けを容易なものにすることができる。ただし、必ずしも揺動ベース2と前輪8を同じ軸に取り付ける必要はなく、同軸上に配置された別々の軸に取り付けても良く、あるいは異なる軸上に配置された別々の軸に取り付けても良い。揺動ベース2が揺動できる範囲は、操作リンク4及び連結機構5との連結によって決められる。また、本実施形態では、左右の揺動ベース2と支柱1の間にカラー19が挟み込まれており、左右の揺動ベース2と支柱1との干渉を防止すると共に、左右の揺動ベース2と支柱1の間に操作リンク4を配置するスペースを設けている。また、カラー19は揺動ベース2の軸受けとしても機能している。ただし、カラー19を省略しても良い。
【0029】
左右の揺動ベース2の後輪用車軸孔2bには1本の後輪車軸17が通されており、後輪車軸17の両端には後輪3がそれぞれ取り付けられている。後輪車軸17の左右の揺動ベース2の間の位置には円筒状のスペーサ20が被されており、左右の揺動ベース2の後部の間隔を一定に維持している。
【0030】
操作リンク4は各揺動ベース2毎に設けられている。本実施形態では揺動ベース2を左右に設けているので、操作リンク4も左右に設けられている。ただし、操作リンク4を揺動ベース2毎に設ける必要はなく、1つの操作リンク4で複数の揺動ベース2を揺動させるようにしても良い。
【0031】
本実施形態の操作リンク4はほぼL字形状を成しており、支柱1と左右の揺動ベース2の間に配置され、中央の折曲部が外筒1aのリンク孔14を貫通している支持軸13によって支持されている。これにより操作リンク4は支柱1に揺動自在に取り付けられている。操作リンク4の前部には連結シャフト15を通す第2のスリット4aが形成されている。第2のスリット4aの長さは連結シャフト15の移動によって操作リンク4を揺動させることができる最小の長さとなっている。また、第2のスリット4aの幅は連結シャフト15の直径とほぼ同じ寸法になっており、連結シャフト15ががたつかないようになっている。操作リンク4の後端には連結機構5の係合凸部5aが設けられている。なお、操作リンク4の形状はほぼL字形状に限るものではなく、操作手段21に操作されて揺動ベース2を接地位置Lと跳ね上げ位置Hとの間で揺動させることができ且つ後述する思案点を設けることができる形状であれば特に制限されない。操作リンク4が揺動できる範囲は、連結シャフト15及び連結機構5との連結によって決められる。
【0032】
連結機構5は、揺動ベース2と操作リンク4のいずれか一方に設けられた係合凸部5aと、揺動ベース2と操作リンク4のいずれか他方に設けられ、係合凸部5aと回転自在に係合し、操作リンク4の揺動に伴い係合凸部5aを線状に案内する係合凹部5bを有している。本実施形態では、操作リンク4に係合凸部5aを、揺動ベース2に係合凹部5bをそれぞれ設けている。ただし、揺動ベース2に係合凸部5aを、操作リンク4に係合凹部5bをそれぞれ設けても良い。係合凸部5aは操作リンク4の後部に揺動ベース2に向けて突出するように形成されている。また、係合凹部5bは揺動ベース2の前輪用車軸孔2aの近傍に形成されている。本実施形態の係合凹部5bは係合凸部5aの直径とほぼ同じ寸法の幅を有するスリットであり、係合凸部5aを挿入した場合にがたつきが発生せず、両者間で力の伝達が行われる。ただし、係合凹部5bはスリットに限るものではなく、係合凸部5aを回転自在に且つ線移動可能に係合するものであれば例えば長溝等でも良い。係合凹部5bの長さは係合凸部5aの移動によって揺動ベース2を揺動させることができる最小の長さとなっている。
【0033】
係合凸部5aと係合凹部5bとの位置関係には、揺動ベース2から操作リンク4に伝達される力が操作リンク4を揺動させるモーメントを生じさせない思案点が設けられている。本実施形態では揺動ベース2が揺動できる範囲の両端が思案点になっている。即ち、揺動ベース2が接地位置Lに揺動された場合の連結機構5の位置関係と、跳ね上げ位置Hに揺動された場合の連結機構5の位置関係がそれぞれ思案点になっている。これらの位置関係を思案点にすることで、揺動ベース2を接地位置L又は跳ね上げ位置Hに揺動させた状態で揺動ベース2に外力が作用しても揺動ベース2が意図せずに揺動してしまうのを防止することができる。即ち、揺動ベース2をロックすることができる。
【0034】
ただし、思案点となる位置関係はこれらに限るものではなく、揺動ベース2が揺動できる範囲の両端の手前位置を思案点にしても良い。即ち、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hから接地位置Lに向けて揺動される場合の手前の位置(接地位置Lの近傍であって、接地位置Lに到達する前に通る位置)に揺動された場合の位置関係と、接地位置Lから跳ね上げ位置Hに向けて揺動される場合の手前の位置(跳ね上げ位置Hの近傍であって、跳ね上げ位置Hに到達する前に通る位置)に揺動された場合の位置関係がそれぞれ思案点になるようにしても良い。これらの場合には、揺動ベース2を接地位置L又は跳ね上げ位置Hから揺動させるには思案点を一旦越えさせる必要があるので、揺動ベース2を接地位置L又は跳ね上げ位置Hに揺動させた状態で揺動ベース2に外力が作用しても揺動ベース2が意図せずに揺動してしまうのをより一層確実に防止することができる。
【0035】
本実施形態では、操作手段21として操作レバー(以下、操作レバー21という)を使用する。ただし、操作レバー以外のもの、例えば操作ボタン等でも良い。本実施形態では、操作レバー21の動きを細長い板状部材22によって操作リンク4に伝えている。ただし、操作レバー21の動きを伝える手段は板状部材22に限るものではなく、例えはワイヤ、棒状部材等の使用も可能である。本実施形態では、操作リンク4を左右に設けていることから板状部材22も左右にそれぞれ設けている。
【0036】
操作レバー21は使用者が操作し易い位置に設けられている。本実施形態では、使用者が操作レバー21を手で操作することを想定しているので、手で操作しやすい位置である支柱1の上部(通常の体格の使用者が屈むことなく手が届く福祉機器本体の位置)、例えば外筒1aの上端近傍に操作レバー21を設けている。ただし、操作レバー21の位置はこれに限るものではなく、例えばハンドル9、外筒1bの上端、内筒1bの上端又はその近傍等に設けても良い。また、操作レバー21を足で操作することを想定する場合には、例えば支柱1の下部に設けるようにしても良い。操作レバー21は例えばU字形状を成す板材であり、外筒1aの外周面の後半部を囲むように配置されている。操作レバー21の両端は板状部材22の上端に例えばねじ等によって接続されている。
【0037】
板状部材22は外筒1aの第1のガイド溝10内に摺動自在に配置されている。板状部材22の下端は外筒1aの下端近傍まで延びており、第1のスリット16に対向する位置には連結シャフト15を通す孔22aが設けられている。操作レバー21を操作して板状部材22を第1のガイド溝10に沿って移動させることで、操作リンク4を揺動させることができる。操作レバー21及び板状部材22は連結シャフト15が第1のスリット16内を移動できる範囲で移動可能である。
【0038】
次に、接地部材跳ね上げ機構の動作について説明する。左右の操作リンク4及び揺動ベース2は同時に同量だけ揺動する。
【0039】
図4に示す酸素ボンベ用キャリーカートの4輪状態では、揺動ベース2は接地位置Lに降ろされている(図1)。また、この状態では、操作レバー21は最も低い位置に操作されており、板状部材22の下部を貫通する連結シャフト15は第1のスリット16内の最も低い位置に降ろされている。即ち、操作レバー21を最も低い位置に操作すると、揺動ベース2は接地位置Lに揺動される。なお、4輪状態の酸素ボンベ用キャリーカートは後輪3側に支柱1を傾けている。
【0040】
この状態から使用者が操作レバー21を引き上げると、第1のスリット16内を連結シャフト15が上昇し、操作リンク4が支持軸13を中心に前端を持ち上げる方向に揺動される。このとき、連結シャフト15と支持軸13との距離が変化するが、この距離変化は連結シャフト15が第2のスリット4a内を移動することで吸収される。
【0041】
操作リンク4が揺動されると、その後端に設けられている係合凸部5aが前方に移動するので、揺動ベース2の揺動中心(前輪車軸11)よりも高い位置に設けられている係合凹部5bも前方に移動することになり、揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに向けて揺動させる(図3)。このとき、係合凸部5aと揺動ベース2の揺動中心との距離が変化するが、この距離変化は係合凸部5aが係合凹部5b内を回転しながら移動することで吸収される。
【0042】
揺動ベース2の揺動によって後輪3が持ち上げられ、酸素ボンベ用キャリーカートが2輪状態となる(図5)。そして、揺動ベース2が跳ね上げ位置H(図2)まで揺動されると、係合凸部5aと係合凹部5bの係合凸部5aから力を受ける部位とが揺動ベース2の揺動方向に並ぶ思案点となるので、外力を受けた揺動ベース2が揺動しようとしても操作リンク4を揺動させることができず、揺動ベース2は揺動することができない。即ち、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hに自動的にロックされる。この状態では、2輪時用自立ストッパ18が接地しており、酸素ボンベ用キャリーカートは左右の前輪8と2輪時用自立ストッパ18との3点で自立する。この2輪状態の酸素ボンベ用キャリーカートは支柱1をほぼ垂直に立てている。使用者はハンドル9を掴んで酸素ボンベ用キャリーカートを後に傾けることで2輪時用自立ストッパ18を地面から離し、そのまま酸素ボンベ用キャリーカートを引き回すことができる。なお、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hにまで持ち上げられている状態では、操作レバー21は最も高い位置に持ち上げられている。
【0043】
この状態から操作レバー21を下げると、第1のスリット16内を連結シャフト15が下降し、操作リンク4の前端を下げる。操作リンク4側から揺動ベース2側へと伝わる力に対しては思案点になっていないので、操作リンク4は前端を下げる方向に揺動し、係合凸部5aと係合凹部5bは上述の動きとは逆の動きを行って揺動ベース2を接地位置Lに向けて揺動させる。これにより、後輪3が降ろされ、酸素ボンベ用キャリーカートが4輪状態となる。そして、揺動ベース2が接地位置Lまで揺動されると、係合凸部5aと係合凹部5bの係合凸部5aから力を受ける部位とが揺動ベース2の揺動方向に並ぶ思案点となるので、外力を受けた揺動ベース2が揺動しようとしても操作リンク4を揺動させることができず、揺動ベース2は揺動することができない。即ち、揺動ベース2が接地位置Lに自動的にロックされる。この状態では、酸素ボンベ用キャリーカートは左右の前輪8と左右の後輪3との4点で自立する。使用者はハンドル9を掴んで酸素ボンベ用キャリーカートをそのまま引き回すことができる。
【0044】
このように、本発明では、操作レバー21の操作によって揺動ベース2を揺動させることができるので、後輪3の上げ下げをワンタッチで行うことができ、状況に応じて4輪車と2輪車との切り替えを簡単に行うことができる。しかも、揺動ベース2を跳ね上げ位置H又は接地位置Lに移動させた時の連結機構5の位置関係を思案点にすることで、揺動ベース2を跳ね上げ位置H又は接地位置Lに自動的にロックすることができる。これらのため、酸素ボンベ用キャリーカートが大変使い勝手の良いものとなる。
【0045】
また、操作レバー21を使用者が操作しやすい位置に設けているので、使用者が無理な姿勢をとらなくても後輪3の上げ下げを簡単に行うことができる。
【0046】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0047】
例えば、上述の説明では、接地部材3が車輪(後輪3)であったが、必ずしも車輪に限るものではなく、自立用ストッパでも良い。即ち、福祉機器本体としての支柱1に車輪を設けると共に、揺動ベース2に接地部材3としての自立用ストッパを設け、揺動ベース2の揺動により接地点の数を変化させるようにしても良い。なお、自立ストッパ18及び延出部2cは省略することが好ましい。この場合の酸素ボンベ用キャリーカートでは、引き回すときには揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに揺動させて自立用ストッパを持ち上げ、自立させるときには揺動ベース2を接地位置Lに揺動させて自立用ストッパを接地させるようにする。
【0048】
また、福祉機器本体としての支柱1に車輪に代えて自立用ストッパを設ける共に、揺動ベース2に接地部材3としての車輪を設け、揺動ベース2の揺動により接地点の数を変化させるようにしても良い。この場合の酸素ボンベ用キャリーカートでは、引き回すときには揺動ベース2を接地位置Lに揺動させて車輪を接地させると共に支柱1を傾けて自立用ストッパを持ち上げる。そして、車輪が邪魔になるとき等には揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに揺動させて車輪を持ち上げるようにする。
【0049】
また、揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに向けて揺動させる方向の付勢力を発生させるアシスト手段23を設けても良い。アシスト手段23の一例を図9〜図11に示す。本実施例では、アシスト手段23として圧縮コイルばねを使用している。ただし、圧縮コイルばね以外のばねやその他の弾性体を使用しても良い。また、本実施例では左右の揺動ベース2毎にアシスト手段23を設けているが、いずれか一方の揺動ベース2にのみアシスト手段23を設けるようにしても良い。
【0050】
アシスト手段23としての圧縮コイルばね(以下、圧縮コイルばね23という)は、ばね受け機構27に取り付けられ、福祉機器本体としての支柱1と揺動ベース2との間に設けられている。ばね受け機構27は、支柱1の外筒1aの下端に固定された受け部材24と、外筒1aに上下移動可能に設けられたスライダ25と、スライダ25に設けられて揺動ベース2に連結されている連結凸部28より構成されている。圧縮コイルばね23は受け部材24とスライダ25との間に設けられている。また、支柱1の外筒1aの外周面の後部には外筒1aの軸線方向に沿って第2のガイド溝26が形成されている。
【0051】
受け部材24は第2のガイド溝26の下端部に挿入されて固定されており、第2のガイド溝26からの突出部分24aにはスライダ25に向けて突出するガイドスリーブ29が設けられ、さらに突出部分24aにはガイドスリーブ29内の孔に連続するガイド用貫通孔24bが形成されている。スライダ25は第2のガイド溝26に摺動自在に挿入されており、第2のガイド溝26からの突出部分25aには受け部材24のガイドスリーブ29及びガイド用貫通孔24bに挿入されるガイド棒30が取り付けられている。ガイド棒30は外筒1aに対して平行に設けられている。また、スライダ25の突出部分25aには揺動ベース2に設けられた長孔31に挿入される連結凸部28が形成されている。ガイド棒30及びガイドスリーブ29の周囲には、受け部材24の突出部分24aとスライダ25の突出部分25aに挟まれてスライダ25を受け部材24から離す方向に付勢力を発生させる圧縮コイルばね23が設けられている。
【0052】
揺動ベース2が接地位置Lに移動している状態では、スライダ25が受け部材24に近づいており、圧縮コイルばね23は押し縮められている。この状態では揺動ベース2は思案点によるロックを受けており、圧縮コイルばね23の付勢力によって揺動されることはない。
【0053】
操作リンク4による操作によって揺動ベース2が接地位置Lから跳ね上げ位置Hに向けて揺動されると、スライダ25が第2のガイド溝26に沿って受け部材24から遠ざかる方向に移動する。このとき、スライダ25は圧縮コイルばね23によって押し進められる。即ち、圧縮コイルばね23に貯えられていたばね力(付勢力)が揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに向けて揺動させる方向に作用し、この力によって使用者が操作レバー21を操作する力が軽減され操作性が向上する。揺動ベース2が揺動する際、第2のガイド溝26に沿って移動する連結凸部28と揺動ベース2の揺動中心(前輪車軸11)との距離が変化するが、この距離変化は連結凸部28が長孔31内を移動することで吸収される。
【0054】
逆に、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hから接地位置Lに向けて揺動されると、スライダ25は第2のガイド溝26に沿って受け部材24に近づく方向に移動するので、圧縮コイルばね23が押し縮められてばね力が貯えられる。なお、この場合には圧縮コイルばね23のばね力は使用者が操作レバー21を操作する方向と逆方向に作用することになるが、揺動ベース2の揺動に重力を利用することができるので、操作に必要な力が極端に大きくなるようなことはなく、操作性が悪化することはない。
【0055】
なお、上述の例ではアシスト手段23として圧縮コイルばねを使用してしたが、必ずしも圧縮コイルばねに限られない。例えば、ねじりコイルばねを使用しても良い。図12〜図14に、ねじりコイルばねを使用したアシスト手段23の例を示す。この例でも、アシスト手段23としてのねじりコイルばね(以下、ねじりコイルばね23という)は福祉機器本体1としての支柱1と揺動ベース2との間に設けられている。
【0056】
ねじりコイルばね23は揺動ベース2の揺動中心軸(前輪車軸11)と同軸上に配置されている。本実施例では、ねじりコイルばね23をカラー19に組み込むことで揺動ベース2の揺動中心軸と同軸上に配置している。ねじりコイルばね23の一端は外筒1aに、他端は揺動ベース2にそれぞれ係止されている。
【0057】
揺動ベース2が接地位置Lに移動している状態では、ねじりコイルばね23の変形量は最大となっている。この状態では揺動ベース2は思案点によるロックを受けており、ねじりコイルばね23の付勢力によって揺動されることはない。
【0058】
操作リンク4による操作によって揺動ベース2が接地位置Lから跳ね上げ位置Hに向けて揺動されると、ねじりコイルばね23の変形量は減少する。即ち、ねじりコイルばね23に貯えられていたばね力(付勢力)が揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに向けて揺動させる方向に作用し、この力によって使用者が操作レバー21を操作する力が軽減される。
【0059】
逆に、揺動ベース2が跳ね上げ位置Hから接地位置Lに向けて揺動されると、ねじりコイルばね23の変形量が増加し、ばね力が貯えられる。なお、この場合にはねじりコイルばね23のばね力は使用者が操作レバー21を操作する方向と逆方向に作用することになるが、揺動ベース2の揺動に重力を利用することができるので、操作に必要な力が極端に大きくなるようになことはなく、操作性が悪化することはない。
【0060】
ねじりコイルばね23を使用する場合には、上述の圧縮コイルばね23で必要とされたばね受け機構27が不要になり、アシスト手段23の構成を簡略化することができる。
【0061】
なお、上述の説明では、アシスト手段23を福祉機器本体1と揺動ベース2との間に設けていたが、福祉機器本体1と操作リンク4との間に設けるようにしても良い。即ち、上述の説明では、アシスト手段23の付勢力を揺動ベース2に伝達するようにしていたが、操作リンク4に伝達するようにしても良い。操作リンク4に伝達する場合も同様に、揺動ベース2を持ち上げる場合の操作力を軽くすることができて操作性を向上させることができる。
【0062】
また、上述の説明では、接地する車輪数を4輪と2輪との間で切り替えるようにしていたが、切り替える車輪数はこれに限るものではなく、例えば3輪と2輪との切り替えや、その他の車輪数の切り替えでも良い。
【0063】
また、上述の説明では、揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに揺動させる場合に操作レバー21を持ち上げ、接地位置Lに揺動させる場合に操作レバー21を降ろす構成であったが、逆に、揺動ベース2を跳ね上げ位置Hに揺動させる場合に操作レバー21を降ろし、接地位置Lに揺動させる場合に操作レバー21を持ち上げるようにしても良い。
【0064】
また、上述の説明では、接地部材跳ね上げ機構を福祉機器としての酸素ボンベ用キャリーカートに適用していたが、適用できる福祉機器は酸素ボンベ用キャリーカートに限るものではなく、例えば歩行補助車、歩行器、歩行車、車椅子、ストレッチャー等の車輪を有する福祉機器であれば適用可能である。また、キャリーカートとしては、酸素ボンベ用のものに限らず、例えば点滴等、その他のもの用のキャリーカートについても適用可能である。
【0065】
図15及び図16に接地部材跳ね上げ機構を歩行車に組み込んだ実施形態を示す。なお、上述の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付してある。支柱フレーム1cの下端にはメインフレーム1dが接続されており、メインフレーム1dの左右には前輪8及び後輪3が取り付けられた脚フレーム2が接続されている。本実施形態では支柱フレーム1c及びメインフレーム1dが福祉機器本体1であり、脚フレーム2が揺動ベースである。
【0066】
操作リンク4はメインフレーム1に揺動自在に取り付けられ、連結機構5によって脚フレーム2に連結されている。操作レバー21が押し下げられている状態では、図15に示すように揺動ベース(脚フレーム)2が接地位置Lに揺動されており、4輪状態となっている。この状態では、連結機構5の係合凸部5aと係合凹部5bの位置関係が思案点となっており、脚フレーム2はロックされている。
【0067】
この状態から操作レバー21を持ち上げると、操作リンク4が揺動し、脚フレーム2の後端を持ち上げるように揺動させる。そして、脚フレーム2が図16に示す跳ね上げ位置Hまで揺動すると、連結機構5の係合凸部5aと係合凹部5bの位置関係が思案点となり、脚フレーム2はロックされる。この状態では、脚フレーム2の前端と左右の前輪8との3点で接地しており、自立することができる。
【0068】
この歩行車の場合にも、酸素ボンベ用キャリーカートの場合と同様に、操作手段21の操作によって後輪3の上げ下げをワンタッチで行うことができ、状況に応じて4輪車状態と自立状態との切り替えを簡単に行うことができる。また、脚フレーム2の跳ね上げ位置Hと接地位置Lには思案点が設けられているので、脚フレーム2を跳ね上げ位置H又は接地位置Lに揺動させるだけで脚フレーム2をその位置に自動的にロックすることができる。また、操作レバー21を使用者が操作しやすい位置に設けているので、使用者が無理な姿勢をとらなくても後輪3の上げ下げを簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 支柱(福祉機器本体)
2 揺動ベース
3 接地部材
4 操作リンク
5 連結機構
5a 係合凸部
5b 係合凹部
6 操作手段
8 前輪(福祉機器本体に設けられた車輪)
23 アシスト手段
L 接地位置
H 跳ね上げ位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
福祉機器本体に揺動自在に取り付けられた揺動ベースと、前記揺動ベースに設けられた接地部材と、前記福祉機器本体に揺動自在に取り付けられた操作リンクと、前記操作リンクと前記揺動ベースとを連結し、前記操作リンクの揺動によって前記揺動ベースを揺動させる連結機構と、前記操作リンクを揺動させる操作手段を備え、前記揺動ベースは前記接地部材を地面に着ける接地位置と前記地面から離す跳ね上げ位置との間で揺動するものであり、前記連結機構は、前記揺動ベースと前記操作リンクのいずれか一方に設けられた係合凸部と、前記揺動ベースと前記操作リンクのいずれか他方に設けられ、前記係合凸部と回転自在に係合し、前記操作リンクの揺動に伴い前記係合凸部を線状に案内する係合凹部を有し、前記係合凸部と前記係合凹部との位置関係は、前記揺動ベースから前記操作リンクに伝達される力が前記操作リンクを揺動させるモーメントを生じさせない思案点を有しており、前記思案点は前記揺動ベースが前記跳ね上げ位置から前記接地位置又はその手前の位置に揺動された場合の位置関係と、前記接地位置から前記跳ね上げ位置又はその手前の位置に揺動された場合の位置関係とにそれぞれ設けられていることを特徴とする福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項2】
前記福祉機器本体と前記揺動ベース又は前記操作リンクとの間に設けられ、前記揺動ベースを前記跳ね上げ位置に向けて揺動させる方向の付勢力を発生させるアシスト手段を備えることを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項3】
前記福祉機器本体には車輪が設けられており、前記接地部材は車輪であり、前記揺動ベースの揺動により接地する車輪の数が変化することを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項4】
前記福祉機器本体には車輪が設けられており、前記接地部材は自立用ストッパであり、前記揺動ベースの揺動により接地点の数が変化することを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項5】
前記福祉機器本体には自立用ストッパが設けられており、前記接地部材は車輪であり、前記揺動ベースの揺動により接地点の数が変化することを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項6】
前記操作手段は、使用者が手で操作するものである場合には前記福祉機器本体の上部に、使用者が足で操作するものである場合には前記福祉機器本体の下部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項7】
請求項1記載の接地部材跳ね上げ機構を組み込んだことを特徴とするキャリーカート。
【請求項1】
福祉機器本体に揺動自在に取り付けられた揺動ベースと、前記揺動ベースに設けられた接地部材と、前記福祉機器本体に揺動自在に取り付けられた操作リンクと、前記操作リンクと前記揺動ベースとを連結し、前記操作リンクの揺動によって前記揺動ベースを揺動させる連結機構と、前記操作リンクを揺動させる操作手段を備え、前記揺動ベースは前記接地部材を地面に着ける接地位置と前記地面から離す跳ね上げ位置との間で揺動するものであり、前記連結機構は、前記揺動ベースと前記操作リンクのいずれか一方に設けられた係合凸部と、前記揺動ベースと前記操作リンクのいずれか他方に設けられ、前記係合凸部と回転自在に係合し、前記操作リンクの揺動に伴い前記係合凸部を線状に案内する係合凹部を有し、前記係合凸部と前記係合凹部との位置関係は、前記揺動ベースから前記操作リンクに伝達される力が前記操作リンクを揺動させるモーメントを生じさせない思案点を有しており、前記思案点は前記揺動ベースが前記跳ね上げ位置から前記接地位置又はその手前の位置に揺動された場合の位置関係と、前記接地位置から前記跳ね上げ位置又はその手前の位置に揺動された場合の位置関係とにそれぞれ設けられていることを特徴とする福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項2】
前記福祉機器本体と前記揺動ベース又は前記操作リンクとの間に設けられ、前記揺動ベースを前記跳ね上げ位置に向けて揺動させる方向の付勢力を発生させるアシスト手段を備えることを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項3】
前記福祉機器本体には車輪が設けられており、前記接地部材は車輪であり、前記揺動ベースの揺動により接地する車輪の数が変化することを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項4】
前記福祉機器本体には車輪が設けられており、前記接地部材は自立用ストッパであり、前記揺動ベースの揺動により接地点の数が変化することを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項5】
前記福祉機器本体には自立用ストッパが設けられており、前記接地部材は車輪であり、前記揺動ベースの揺動により接地点の数が変化することを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項6】
前記操作手段は、使用者が手で操作するものである場合には前記福祉機器本体の上部に、使用者が足で操作するものである場合には前記福祉機器本体の下部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の福祉機器の接地部材跳ね上げ機構。
【請求項7】
請求項1記載の接地部材跳ね上げ機構を組み込んだことを特徴とするキャリーカート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−225184(P2011−225184A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99287(P2010−99287)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】
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