移動体監視システム
【課題】任意の監視区域内に存在する移動局の任意の時刻での位置を求めて監視できるようにし、電波利用効率を高め、簡素な装置で構成できるようにする。
【解決手段】各移動局は、測位手段によって自局の位置を求め、管制局から送信された質問信号を受信するとともに、その質問信号に含まれる応答許可域を読み出し、自局がその応答許可域に入るとき、応答許可域内での自局の空間スロットに対応する時刻スロットに、自局の識別符号を含む応答信号を送信する。管制局は応答許可域を含む質問信号を送信した後、移動局からの応答信号を受信し、その時刻スロットに応じて移動局の位置を求める。
【解決手段】各移動局は、測位手段によって自局の位置を求め、管制局から送信された質問信号を受信するとともに、その質問信号に含まれる応答許可域を読み出し、自局がその応答許可域に入るとき、応答許可域内での自局の空間スロットに対応する時刻スロットに、自局の識別符号を含む応答信号を送信する。管制局は応答許可域を含む質問信号を送信した後、移動局からの応答信号を受信し、その時刻スロットに応じて移動局の位置を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動局の位置等を監視する管制局と移動局とで構成され、管制局で移動局の監視を行う移動体監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば湾岸等の輻輳地域で船舶の監視を行う場合、従来はAIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)等が利用されている。また船舶の運行管理に適した時分割多重通信システムが特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1の時分割多重通信システムは、複数の子局がGPS衛星からの電波の受信により生成した基準タイミング信号に同期するそれぞれ個別の時刻スロットで、送信データにより変調した電波を親局へ送信し、親局が各子局からの電波を受信して時刻スロットごとの各子局からの送信データを抽出するようにしたものである。
【0004】
ここで特許文献1の時分割多重通信システムの全体の構成を図1に示す。図1において情報センタは地理的には例えば大規模海上工事を行う区域に隣接する位置に設け、各種工事作業を行う作業船との間で時分割多重通信を行う。情報センタから作業船へのダウンリンクデータは入域順位、入出域指示、運航状況確認などの作業船を特定した情報と、気象・海象情報、安全情報、工事区域情報、土源情報などの全作業船に共通な情報であり、作業船から情報センタへのアップリンクデータは識別番号、現在位置、進路、速度、運航状況などの各種作業船ごとの情報である。
【0005】
前記AISの場合も特許文献1で開示されているシステムの場合でも移動局から管制局へ送信されるデータには移動局の位置情報が含まれている。
【特許文献1】特開平11−160411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがAISは各移動局が自船位置情報を含む航海情報を自発的に発信するものであるので、管制局が複数の移動局からのAISデータを受信し、そのデータに含まれている各移動局の位置情報を読み出して、その位置が監視区域内に存在するか否かを先ず判定することになる。そのため、監視対象でない位置に存在する移動局からの信号もその都度受信し、その移動局が監視対象であるか否かを判定しなければならない。特に輻輳地域では多数のAISデータを処理しなければならず、扱う情報量に比べてデータ処理量が大きなものになるという問題があった。
【0007】
また、一般的に監視対象となる移動体は空間に均一には存在しない。寧ろ存在確率(関数)は大きなダイナミックレンジをもつ。例えば、船舶では、岸壁・湾岸部・海峡などで輻輳するが、沖合では閑散としている。AIS等の従来システムによる監視方法では分解能が画一的(均一で変更不可)であり、この大きなダイナミックレンジに対応していないので、非常に非効率的な探索とならざるを得ない。
【0008】
また、AISは各移動局が所定時間間隔で自動的に航海の情報を発信するものであるので、管制局が任意の時刻における移動局の位置情報を得るためには、各移動局の位置情報の履歴、船首方位、速力等を基に推測しなければならず、任意の時刻での移動局の位置を直接的に求めることはできず、演算量も多くなるという問題があった。
【0009】
移動局が自発的に送信する方式ではなく、ポーリング方式によって管制局と移動局との間で所定のデータ伝送を行うように構成することも可能であるが、データ伝送ごとに所定の質問文と応答信号を送受信することになり、電波の利用効率が低くなるという問題があった。またプロトコルが単純化できず装置の規模も大きくなるという問題があった。
【0010】
一方、特許文献1に示されている時分割多重通信システムではポーリング方式とは異なり、親局から子局へ送信勧誘を行う必要がなく、親局と子局とで同期した時刻スロットで時分割にデータの伝送を行うため、限られた時間内に多数の子局からのデータを収集することができるが、管制局が定めた任意の監視区域に存在する移動局について選択的な監視を行うことができない。また、設定可能な時刻スロットの数には上限があり、その数を超える子局の監視を行うことができない。
【0011】
そこで、この発明の目的は、上述の各種課題を解決して任意の監視区域内に存在する移動局の任意の時刻での位置を求めて監視できるようにし、電波利用効率を高め、簡素な装置で構成できる移動体監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の移動体監視システムは移動局と管制局とで構成され、移動局に、自局の位置情報を得る測位手段と、管制局から送信された質問信号を受信するとともに該質問信号から、応答を許可する領域である応答許可域を指定する応答許可域情報を抽出し、前記測位手段が求めた自局の位置が前記応答許可域内であるとき、当該許可域内の位置に基づいて、応答すべき時刻スロットを定め、該時刻スロットに応答信号を無線送信する応答信号送信手段とを備え、
管制局に、前記応答許可域情報を含む質問信号を無線送信する質問信号送信手段と、前記移動局からの前記応答信号を受信し、該応答信号を受信した時刻スロットに応じた移動局の位置を求める移動局位置検知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
上記「時刻スロット」とは、応答信号の採り得る発生タイミングであり、ここでは質問信号の発生時刻を基準とする相対時刻である。
【0014】
また、この発明の移動体監視システムは移動局と管制局とで構成され、移動局に、自局の位置情報を得る測位手段と、管制局から送信された質問信号を受信するとともに該質問信号から、応答を許可する領域である応答許可域を指定する応答許可域情報を抽出し、前記測位手段が求めた自局の位置が前記応答許可域内であるとき、当該許可域内の位置に基づいて時刻スロットを定め、前記質問信号の受信時刻から時刻スロット分の時間の後に応答信号を無線送信する応答信号送信手段とを備え、
管制局に、前記応答許可域情報を含む質問信号を無線送信する質問信号送信手段と、前記移動局からの前記応答信号を受信し、前記質問信号の送信時刻から前記応答信号を受信するまでの時間に応じた時刻スロットに対応する移動局の位置を求める移動局位置検知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
またこの発明の移動体監視システムは、前記管制局に、前記応答信号を受信した時刻スロットに対応する前記応答許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して前記時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高め、前記質問信号送信手段により再び質問信号を送信する応答許可域設定手段を設けたことを特徴としている。
【0016】
またこの発明の移動体監視システムは、前記管制局に、前記応答信号のキャリアが検出でき且つ応答信号の復号化ができなかった時刻スロットに対応する前記応答許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して前記時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高め、前記質問信号送信手段により再び質問信号を送信する応答許可域設定手段を設けたことを特徴としている。
【0017】
またこの発明の移動体監視システムは、前記時刻スロットが前記応答許可域を2次元座標または3次元座標に従った等間隔の複数の区域に区分した時の該当区域に対応するものとする。
【0018】
またこの発明の移動体監視システムは、前記管制局は前記移動局に対して報告要求する情報の種別を表すコマンドを前記質問信号に含める手段を備え、前記移動局は前記コマンドに応じたコマンド回答情報を前記応答信号に含める手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、次のような効果を奏する。
(1)管制局は応答を許可する条件として応答許可域を指定するので、その応答許可域内の移動局からの応答信号のみを受信することができ、無駄なデータトラフィックが抑えられ電波利用効率が高まる。
【0020】
また、監視対象となる移動体の空間存在確率が大きなダイナミックレンジをもっていても対応できるので監視区域内の移動体の探索効率が非常に高い。
【0021】
(2)管制局は任意の時刻での移動局の位置情報を求めることができ、移動局の所定時刻での位置を推測するための演算も不要となりシステムの規模が増大することもない。
【0022】
(3)予め定めた時刻スロットを移動局に割り当てるのではなく、移動局の位置が時刻スロットに対応することになるので、時刻スロットの割当てが使い尽くされることによる問題も生じない。
【0023】
(4)移動局は自局の位置情報を応答信号に載せる必要がないので応答信号のデータ長が短くなり電波利用効率が高まる。
【0024】
また、この発明によれば、管制局は、応答信号を受信した時刻スロットに対応する許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して質問信号を送信することによって、時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高めることができ、例えば応答許可域を順次狭くしていくことによって少ない質問信号の送信で移動局の位置を効率良く高い分解能で求めることができる。
【0025】
ある1つの時刻スロットに対応する応答許可域内の位置に複数の移動局が存在する場合、それらの移動局が同じ時刻スロットに応答信号を送信することになるため衝突が生じる。この状態はキャリアが検出でき且つ応答信号の復号化ができなかった場合である。この発明によれば、前記応答信号のキャリアが検出でき且つ応答信号が復号化できなかった時刻スロットに対応する応答許可域内の領域を新たな応答許可域として指定し再び質問信号を送信することによって、高い分解能で移動局からの応答信号を受信することができる。また、応答許可域を順次狭めることによって、いずれはそれぞれの移動局からの応答信号を個別に復号化でき、各移動局の位置情報を求めることができる。初めから位置分解能を高めて質問信号を送信する場合に比べて質問信号と応答信号の全体のデータ量が削減でき電波利用効率が高まる。また全体の時刻スロットの個数が少なくなって短時間のうちに移動局の位置情報およびその他の情報が収集可能となる。
【0026】
またこの発明によれば、前記応答許可域を2次元座標または3次元座標に従った等間隔の複数の区域に区分した時の該当区域に対応するように前記時刻スロットを定めることによって、各移動局および管制局は時刻スロットと移動局の位置(区域)との対応関係を単純に変換することができ効率的な演算が可能となる。
【0027】
また、この発明によれば、管制局は移動局に対して報告要求する情報の種別を表すコマンドを質問信号に含め、移動局は前記コマンドに応じたコマンド回答情報を応答信号に含めることにより、管制局は移動局の位置情報だけでなく、例えば針路や速度の報告を要求して移動局からその回答を得ることができる。そのため、電波利用効率を低下することなく、任意の監視区域内に存在する移動局の任意の時刻での移動局の情報を収集・監視できるシステムを簡素な装置で構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
《第1の実施形態》
図2は第1の実施形態に係る移動体監視システムの構成を示すブロック図である。この移動体監視システムは1つの管制局10と複数の移動局20A,20B・・・で構成している。管制局10は例えば所定の監視区域が存在する湾を見渡せるビルの屋上等に設けられている。また移動局20A,20B等はそれぞれ移動体である船舶に設けられている。
【0029】
管制局10は所定の質問信号を送信するインタロゲータ(質問器)11、そのアンテナ12、管制局10の動作の制御や表示を行う操作・表示端末15、正確な時刻または時間経過を計時するために用いるGPS,GLONASS,GALILEO等の測位システムで用いられる信号を受信する測位用受信機13およびそのアンテナ14を備えている。
【0030】
各移動局は、管制局10からの質問信号を受信するとともに所定の応答信号を送信するトランスポンダ(応答器)21およびそのアンテナ22、移動局(自局)の位置を測位する測位用受信機23およびそのアンテナ24を備えている。測位用受信機23はGPS,GLONASS,GALILEO等の測位用信号を受信して受信点位置情報を得る。
【0031】
図3は前記質問信号および応答信号のフォーマットを示す図である。管制局10から送信される質問信号は図3(A)に示すように「同期信号」、「質問インデックス」、「応答許可域」、「エラー訂正符号」からなる。質問信号はこのように一文と見なせるので「質問文」と言うこともできる。
【0032】
「同期信号」は通信のビット/キャラクター/フレーム同期のための信号である。
「質問インデックス」は質問信号と応答信号の呼応関係を確認するために質問信号に埋め込まれる符号である。移動局のトランスポンダはこの質問信号に対して応答する場合にはその応答信号にこの質問インデックスと同じ符号を埋め込むので、管制局のインタロゲータは受信した応答信号が自身の発した質問信号に対する応答信号であるか否かを識別するために用いる。例えば監視区域内にインタロゲータがただ一つしかない場合など、この呼応関係が確実に確保できる場合や確保する必要が無い場合には質問インデックスは不要である。逆に、トランスポンダの誤応答によるインタロゲータでの誤検出を減らしたい場合には上記質問インデックスは有効である。
【0033】
「応答許可域」は移動局からの応答を許可する領域(管制局が照会したい領域)を指定する情報である。さらに「エラー訂正符号」はチェックサム等のエラー訂正検出のための情報であり、このエラー訂正符号によって移動局は質問信号のエラー訂正を行う。
【0034】
移動局が送信する応答信号は図3(B)に示すように「同期信号」、「応答インデックス」、「識別符号」、「エラー訂正符号」からなる。応答信号もこのように一文と見なせるので「応答文」と言うこともできる。
【0035】
ここで「同期信号」は通信のビット/キャラクター/フレーム同期のための信号である。
「応答インデックス」は前記質問信号に応答する場合に、その質問信号に含まれていた質問インデックスと同じ符号である。既に述べたように、管制局のインタロゲータは受信した応答信号が自身の発した質問信号に対する応答信号であるか否かを識別するために用いる。
【0036】
「識別符号」は各移動局に個別に割り当てられている固体識別符号である。管制局はこの識別符号を抽出することによって移動局(移動体)を識別する。「エラー訂正符号」はチェックサム等のエラー訂正検出のための情報であり、このエラー訂正符号によって管制局は応答信号のエラー訂正を行うとともに復号化が成功したか否かを検知する。
なお、応答信号には移動局(自局)の位置情報を含んでいない。
【0037】
また、インタロゲータおよびトランスポンダが上記質問信号および応答信号中の同期信号によらずに同期をとる他の手段があれば、この同期信号は不要である。例えばGPS等の測位系の基準時刻信号を同期信号として扱ってインタロゲータおよびトランスポンダがそれぞれ同期をとるようにしてもよい。
【0038】
図4は前記応答許可域と前記時刻スロットに対応する空間スロットの関係を示す図である。ここでは(緯度,経度)の2次元座標系を直交座標系で表している。この例では前記応答許可域の情報が図4(A)に示す矩形の領域の右上を基点BP(ベースポイント)とし、この起点BPの(緯度,経度)で与える。例えば(123.4E,67.89N)である。そして緯度・経度ともに0.001度単位(分解能0.001度)で、西方向と南方向に10単位ずつ合計100の領域を想定し、図4(A)に示すようにBPから南方向を主走査、西方向を副走査とする00〜99の空間スロットを与える。したがってBPが(123.45E,67.89N)のとき、空間スロット“18”のスロットは図4(B)に示すような位置に相当する。
【0039】
前記応答許可域の情報には上記BPの(緯度,経度)データと空間スロット1つ分に対応する緯度・経度の分解能(0.001度)の情報を含んでいる。そして例えば(緯度,経度)が図4(B)に示した領域内に存在するとき、空間スロット18に相当するタイミングで応答信号を送信することになる。管制局はこの空間スロット18のタイミングで応答信号を受信すれば、その応答信号から前記識別符号を抽出して移動局の識別を行うとともに空間スロット18に相当する位置(領域)をその移動局の位置(移動局が存在する領域)として求める。
【0040】
なお、上述の例では応答許可域の情報に空間スロット1つ分に対応する緯度・経度の分解能の情報を含むようにしたが、応答許可域情報の各軸(緯度,経度)の最小桁を基準として、その1/10(または1/100など)を分解能と理解するように予め定めておけば、分解能情報自体を伝送する必要はない。
【0041】
図5は管制局からの質問信号に応答する移動局の応答スケジューリングの2つの例を示す図である。図5(A)においてQは質問信号およびその時刻スロット、A18は図4に示した空間スロット18に対応して送信される応答信号およびその時刻スロットをそれぞれ示している。
【0042】
この例では12時34分00秒からの1秒間T1に質問信号Qが送信される。その後の質問信号送信ガード時間T2(9秒)を待ってそれ以降時刻スロット00から99までの全局応答時間T3(100秒)が続くことになる。したがって空間スロット18に対応する応答信号A18は12時34分28秒から1秒間に送信されることになる。
【0043】
移動局のトランスポンダは管制局のインタロゲータからの質問信号の受信、解読(復号)演算、および応答の送信準備に時間を要する。上記ガード時間T2はこのような準備のための時間を確保するためのものである。したがって上記送信ガード時間T2はトランスポンダ自身の応答スロットの決定(スケジューリング)処理に要する最大時間以上あればよい。
【0044】
この応答スケジューリングはGPS測位系の時刻に同期する秒の単位で実行されるものである。すなわち管制局のインタロゲータ11および移動局のトランスポンダ21はGPS受信機13,23によって求められるGPS測位系の時刻に同期して動作する。
【0045】
この例では110秒(1+9+100=110)の間に(123.45E,67.89N)〜(123.44E,67.88N)を対角とする矩形領域を0.001度の分解能で検出することができる。
【0046】
すなわち質問信号Qの送信時刻を基準とする時刻スロットによって移動局の位置を求めることができる。この時刻スロットは、管制局からの質問信号Qの送信時刻(=移動局にとっての受信時刻)から応答信号A18の受信時刻(=移動局にとっては送信時刻)までの経過時間であるので、管制局は自身が送信した質問信号の送信時刻と応答信号の受信時刻とに基づいて時刻スロットを検出し、その時刻スロットによって移動局の位置を求めることができる。
【0047】
図5(B)は、質問信号Qが送信される時刻を偶数正分(秒以下の桁が0であり且つ分の桁が偶数である時刻)に予め固定した例である。また、全局応答時間T3は図5(A)の場合と同様に100秒である。
【0048】
このように質問信号の発生タイミングが固定されている場合には、質問信号の送受信時刻を参照する必要はなく、秒の値をそのまま時刻スロットの番号として扱うことができる。移動局は現在時刻の秒の桁の値を時刻スロットの番号と見なして、応答信号を送信すべき時刻スロットに応答信号を送信すればよい。また、管制局は応答信号を受信した時刻の秒の桁の値を時刻スロットの番号と見なして、その時刻スロットに応じた移動局の位置を求めればよい。
【0049】
図4・図5に示した例で、ある1つのスロットに対応する領域に複数の移動局が存在する場合、それらの移動局はその領域に対応するスロットのタイミングで応答信号を送信することになるため信号の衝突が生じ、管制局では応答信号の復号化ができなくなる。但し、キャリアが存在することは検出可能である。そこで次の手順で上記信号の衝突の問題を回避する。
【0050】
(1)管制局はキャリアが存在することおよび応答信号の復号化ができないことの2点によってその空間スロットに相当する位置に複数の移動局が存在することを検知する。
【0051】
(2)1つの空間スロットに相当する位置に複数の移動局が存在することが分かれば、その空間スロットに対応する領域についてのみより高い分解能で質問信号を送信し、複数の移動局からの応答信号を受信する。分解能が十分であれば複数の移動局を個別に検出できる。
【0052】
(3)もし、まだ分解能が不十分であれば上記(1)と同様の状態であるので、さらに細かい(高い)分解能を設定して再度質問信号を送信する。
【0053】
上記の処理を繰り返すことによっていずれ全ての移動局の位置を検出することが可能となる。
【0054】
図6は上記処理の例を示す図である。図6(A)では図4(A)の場合と同様に空間スロット1スロット分が緯度・経度ともに0.001度の分解能で起点BP1の応答許可域を定めている。図6(B)はその条件での質問信号と応答信号の送信タイミングを時間軸上で表したものであり、Q1は質問信号およびその時刻スロット、A1_13_1,A1_13_2はそれぞれ2つの移動局から送信された応答信号およびその時刻スロットをそれぞれ示している。またA1_30は或る移動局から送信された応答信号およびその時刻スロットを示している。
【0055】
この例では時刻スロット30で応答信号を正しく復号化できるが、時刻スロット13ではキャリアが検出でき且つ応答信号が復号化できない。
【0056】
そこで、空間スロット13の右上の点BP2を新たな起点とし、図6(C)に示すように1スロット分の緯度・経度が0.0001度の分解能となるように定める。すなわちスロットの細かさを10倍(分解能を1/10)とする。
【0057】
図6(D)はその条件での質問信号と応答信号の送信タイミングを時間軸上で表したものであり、Q2は質問信号およびその時刻スロット、A2_12,A2_28はそれぞれ移動局から送信された応答信号およびその時刻スロットである。このように分解能を高めることによって、重なっていた2つの移動局からの応答信号が異なるスロット12,スロット28でそれぞれ送信され、管制局はそれぞれ独立に受信して2つの移動局の識別が可能となる。
【0058】
図7・図8は図2に示した管制局10のインタロゲータ11および操作・表示端末15の処理をフローチャートとして表した図である。図7はその管制局の処理手順を示している。まず分解能の初期値を設定し、さらに応答許可域の基点BPの(緯度,経度)を設定する。その後、以降に述べる移動体監視処理を行う。
【0059】
なお、この実施形態ではいずれの分解能においても空間スロットが00〜99の値(合計100スロット)を採るようにスロット数を固定的に定めたが、これを可変としてもよい。その場合には応答許可域の情報に緯度方向と経度方向のスロットの数のデータを含めればよい。
【0060】
図8は上記移動体監視処理の詳細な内容を示すフローチャートである。まず前記パラメータを基にして質問信号(質問文)を作成しそれを送信する(S1→S2)。その後9秒間のガード時間の時間待ちを行い(S3)、時刻スロットの番号の初期値“00”を設定する(S4)。
【0061】
続いて、その時刻スロットでのキャリアの有無を判定し、キャリアが存在すればその応答信号の復号化を行う(S5→S6→S7)。復号化に成功すれば時刻スロットの番号、分解能、応答許可域の基点BPに基づいてその移動局の位置を求めるとともに記憶する(S9)。
【0062】
また、キャリアが存在しても応答信号の復号化ができなければその時刻スロット(衝突スロット)の番号を一旦記憶する(S8→S12)。
以上の処理を全ての時刻スロットについて順次行う(S10→S11→S5→・・・)。
【0063】
その後、上記衝突スロットが存在すれば、その衝突スロットの番号、分解能、応答許可域の基点BP1に基づいて新たな応答許可域の基点BP2と分解能を定める(S13→S14)。続いて、同じ手順で質問信号の送信および応答信号の受信を行う(S1→S2→・・・)。衝突スロットが複数存在する場合は、各衝突スロットについて上記処理を行う。この処理は図6を基にして既に説明したとおりである。
【0064】
このように複数の移動局が存在する時刻スロットに対応する空間スロットについては信号の衝突がなくなるまで、次第に応答許可域を狭めるとともに分解能を高めていき、全ての移動局について応答信号の復号化を行う。
【0065】
図9は移動局の処理手順を示すフローチャートである。まず管制局から送信される質問信号のキャリアを検出し(S21)、キャリアが存在すればその質問信号(質問文)を復号化し(S22→S23)、質問信号中の応答許可域に対応する領域に自局が存在するか否かを判定する(S24)。すなわち、応答許可域の情報に基づいてその緯度・経度範囲を求め、GPS受信機23が求めた自局の(緯度,経度)がその範囲内に存在するか否かを判定する。自局が応答許可域内に存在すれば、自局の識別符号を含む応答信号を作成しそれを送信する(S25→S26→S27)。存在しなければ応答信号(応答文)の作成および送信は行わない。
【0066】
以上に示した管制局と移動局の処理によって、互いに近接する移動局についてはその位置が高い分解能で検知でき、逆に隣接する移動局との間隔が十分に離れている移動局については必要最低限の分解能で位置情報が検知できるので、全体として少ないデータ量で複数の移動局の監視を効果的に行うことができる。
【0067】
《第2の実施形態》
第1の実施形態では管制局が移動局の位置情報のみを収集する例を示したが、この第2の実施形態では、位置情報と共に所望の情報を得るようにしたものである。
【0068】
図10は第2の実施形態に係る移動体監視システムで用いる質問信号(質問文)および応答信号(応答文)のフォーマットを示す図である。管制局から送信される質問信号は図10(A)に示すように「同期信号」、「質問インデックス」、「応答許可域」、「コマンド」、「エラー訂正符号」からなる。図3(A)に示した例と異なり「コマンド」を備えている。この「コマンド」は管制局が移動局に対して報告要求する情報(例えば移動体の針路や速度等)の種別を表す符号である。
【0069】
移動局が送信する応答信号は図10(B)に示すように「同期信号」、「応答インデックス」、「識別符号」、「コマンド回答」、「エラー訂正符号」からなる。図3(B)に示した例と異なり「コマンド回答」を備えている。この「コマンド回答」は移動局が管制局から要求された情報(上記の例では移動体の針路や速度等の値)である。
【0070】
第2の実施形態に係る管制局の移動体監視処理についても図8に示したものと同様に表すことができる。第2の実施形態では図8にステップS1で所望の「コマンド」を含む応答信号を作成することになる。また、移動局処理についても図9に示したものと同様に表すことができる。第2の実施形態では質問信号に含まれていたコマンドに回答する情報を図9のステップS26で、「コマンド回答」として応答信号に含めることになる。
【0071】
《第3の実施形態》
第1・第2の実施形態では管制局が単一であることを前提としたが、管制局が複数存在していてもよい。或る質問信号とそれに伴ってスケジューリングされる応答信号の組み合わせを一つのセッションと数えると、個々のセッションが実施される時間が重ならない限り、システムは破綻しない。すなわち複数の管制局が共存できる。
【0072】
セッション実施時間の重複を避ける方法は、管制局同士の位置関係によって2つに分類される。この第3の実施形態ではその例について示す。
【0073】
図11は二つの管制局が存在する領域での管制局のサービスエリアの関係を示す図である。図11(A)は管制局同士が互いに相手の質問信号を受信できない場合である。この場合、管制局αとβは互いのサービスエリア外に存在するが、その両者のサービスエリアが重なるような場合、質問信号と応答信号の無線回線とは別に管制局αとβを接続する回線を設け、この回線を介して互いのセッションを認識できるようにする。これにより共通のサービスエリアに存在する移動局γへのセッションの重複を回避する。すなわち管制局αとβは互いのセッションの実施時間が重ならないようにセッションの実施時間を定める。
【0074】
図11(B)は管制局α・βが互いに相手の質問信号を受信できる場合である。この場合、相手の質問信号を直接受信し、互いのセッションを認識し、共通のサービスエリア外に存在する移動局δとのセッションとそれ以外のセッションの重複を回避する。すなわち管制局αとβは互いのセッションの実施時間が重ならないようにセッションの実施時間を定める。
【0075】
言うまでもなく以上の各実施形態に示した例以外にも、この発明の実施の形態としては様々な形態を採ることができる。
例えば、図8に示した例では応答信号の復号化ができた移動局についてはそれ以上分解能を高める処理を行っていないが、所定の監視区域内で最初は粗い分解能で応答許可域を定めて質問信号を送信することによって移動局の大まかな位置を求め、次の段階で各移動局に焦点を合わせるかのように、所定の移動局を含む領域に高い分解能で応答許可域を設定し、質問信号を送信するという処理を行う。またはこの分解能を高めていく操作を繰り返す。このように応答許可域を無駄なく順次狭めていくことによって各移動局についてそれぞれ等しい分解能で(位置精度で)位置を求めるようにしてもよい。
【0076】
また、以上に示した例では応答許可域を2次元座標に従った等間隔の複数の区画に区分したときの該当区画を時刻スロットに対応させるようにしたが、同様にして3次元座標の座標軸方向をそれぞれ等間隔で区分して3次元の区画を想定し、各区画を時刻スロットに対応させるようにしてもよい。
【0077】
また、以上に示した実施形態では、質問信号の送信・受信時刻からの経過時間または測位系の絶対時刻の所定桁の値を時刻スロットの番号として応答スケジューリングを定めたが、インタロゲータ11とトランスポンダ21とで共通のタイミングを基準とする経過時間に従って応答スケジューリングを定めてもよい。
【0078】
さらに、以上に示した例では船舶を移動体とするものであったが、陸上の車両に移動局を設けて、車両の位置を監視するシステムや、航空機・飛行体に移動局を設けて、それらの位置や運動状態を監視するシステムにも同様に適用できる。同様に、鯨・熊・犬などの動物や更に小型の動物に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】特許文献1に示されている運行監視システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の第1の実施形態である移動体監視システムの構成を示すブロック図である。
【図3】同移動体監視システムで用いる質問信号と応答信号の構成を示す図である。
【図4】応答許可域と空間スロットとの関係を示す図である。
【図5】質問信号および応答信号のタイミング関係を示す図である。
【図6】応答許可域の分解能を高める操作を示す図である。
【図7】管制局の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】管制局の行う移動体監視処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】移動局の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態に係る移動体監視システムで用いる質問信号と応答信号の構成を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る移動体監視システムでのセッションの重複を防止する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0080】
10−管制局
20−移動局
α,β−管制局
γ,δ−移動局
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動局の位置等を監視する管制局と移動局とで構成され、管制局で移動局の監視を行う移動体監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば湾岸等の輻輳地域で船舶の監視を行う場合、従来はAIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)等が利用されている。また船舶の運行管理に適した時分割多重通信システムが特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1の時分割多重通信システムは、複数の子局がGPS衛星からの電波の受信により生成した基準タイミング信号に同期するそれぞれ個別の時刻スロットで、送信データにより変調した電波を親局へ送信し、親局が各子局からの電波を受信して時刻スロットごとの各子局からの送信データを抽出するようにしたものである。
【0004】
ここで特許文献1の時分割多重通信システムの全体の構成を図1に示す。図1において情報センタは地理的には例えば大規模海上工事を行う区域に隣接する位置に設け、各種工事作業を行う作業船との間で時分割多重通信を行う。情報センタから作業船へのダウンリンクデータは入域順位、入出域指示、運航状況確認などの作業船を特定した情報と、気象・海象情報、安全情報、工事区域情報、土源情報などの全作業船に共通な情報であり、作業船から情報センタへのアップリンクデータは識別番号、現在位置、進路、速度、運航状況などの各種作業船ごとの情報である。
【0005】
前記AISの場合も特許文献1で開示されているシステムの場合でも移動局から管制局へ送信されるデータには移動局の位置情報が含まれている。
【特許文献1】特開平11−160411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがAISは各移動局が自船位置情報を含む航海情報を自発的に発信するものであるので、管制局が複数の移動局からのAISデータを受信し、そのデータに含まれている各移動局の位置情報を読み出して、その位置が監視区域内に存在するか否かを先ず判定することになる。そのため、監視対象でない位置に存在する移動局からの信号もその都度受信し、その移動局が監視対象であるか否かを判定しなければならない。特に輻輳地域では多数のAISデータを処理しなければならず、扱う情報量に比べてデータ処理量が大きなものになるという問題があった。
【0007】
また、一般的に監視対象となる移動体は空間に均一には存在しない。寧ろ存在確率(関数)は大きなダイナミックレンジをもつ。例えば、船舶では、岸壁・湾岸部・海峡などで輻輳するが、沖合では閑散としている。AIS等の従来システムによる監視方法では分解能が画一的(均一で変更不可)であり、この大きなダイナミックレンジに対応していないので、非常に非効率的な探索とならざるを得ない。
【0008】
また、AISは各移動局が所定時間間隔で自動的に航海の情報を発信するものであるので、管制局が任意の時刻における移動局の位置情報を得るためには、各移動局の位置情報の履歴、船首方位、速力等を基に推測しなければならず、任意の時刻での移動局の位置を直接的に求めることはできず、演算量も多くなるという問題があった。
【0009】
移動局が自発的に送信する方式ではなく、ポーリング方式によって管制局と移動局との間で所定のデータ伝送を行うように構成することも可能であるが、データ伝送ごとに所定の質問文と応答信号を送受信することになり、電波の利用効率が低くなるという問題があった。またプロトコルが単純化できず装置の規模も大きくなるという問題があった。
【0010】
一方、特許文献1に示されている時分割多重通信システムではポーリング方式とは異なり、親局から子局へ送信勧誘を行う必要がなく、親局と子局とで同期した時刻スロットで時分割にデータの伝送を行うため、限られた時間内に多数の子局からのデータを収集することができるが、管制局が定めた任意の監視区域に存在する移動局について選択的な監視を行うことができない。また、設定可能な時刻スロットの数には上限があり、その数を超える子局の監視を行うことができない。
【0011】
そこで、この発明の目的は、上述の各種課題を解決して任意の監視区域内に存在する移動局の任意の時刻での位置を求めて監視できるようにし、電波利用効率を高め、簡素な装置で構成できる移動体監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の移動体監視システムは移動局と管制局とで構成され、移動局に、自局の位置情報を得る測位手段と、管制局から送信された質問信号を受信するとともに該質問信号から、応答を許可する領域である応答許可域を指定する応答許可域情報を抽出し、前記測位手段が求めた自局の位置が前記応答許可域内であるとき、当該許可域内の位置に基づいて、応答すべき時刻スロットを定め、該時刻スロットに応答信号を無線送信する応答信号送信手段とを備え、
管制局に、前記応答許可域情報を含む質問信号を無線送信する質問信号送信手段と、前記移動局からの前記応答信号を受信し、該応答信号を受信した時刻スロットに応じた移動局の位置を求める移動局位置検知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
上記「時刻スロット」とは、応答信号の採り得る発生タイミングであり、ここでは質問信号の発生時刻を基準とする相対時刻である。
【0014】
また、この発明の移動体監視システムは移動局と管制局とで構成され、移動局に、自局の位置情報を得る測位手段と、管制局から送信された質問信号を受信するとともに該質問信号から、応答を許可する領域である応答許可域を指定する応答許可域情報を抽出し、前記測位手段が求めた自局の位置が前記応答許可域内であるとき、当該許可域内の位置に基づいて時刻スロットを定め、前記質問信号の受信時刻から時刻スロット分の時間の後に応答信号を無線送信する応答信号送信手段とを備え、
管制局に、前記応答許可域情報を含む質問信号を無線送信する質問信号送信手段と、前記移動局からの前記応答信号を受信し、前記質問信号の送信時刻から前記応答信号を受信するまでの時間に応じた時刻スロットに対応する移動局の位置を求める移動局位置検知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
またこの発明の移動体監視システムは、前記管制局に、前記応答信号を受信した時刻スロットに対応する前記応答許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して前記時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高め、前記質問信号送信手段により再び質問信号を送信する応答許可域設定手段を設けたことを特徴としている。
【0016】
またこの発明の移動体監視システムは、前記管制局に、前記応答信号のキャリアが検出でき且つ応答信号の復号化ができなかった時刻スロットに対応する前記応答許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して前記時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高め、前記質問信号送信手段により再び質問信号を送信する応答許可域設定手段を設けたことを特徴としている。
【0017】
またこの発明の移動体監視システムは、前記時刻スロットが前記応答許可域を2次元座標または3次元座標に従った等間隔の複数の区域に区分した時の該当区域に対応するものとする。
【0018】
またこの発明の移動体監視システムは、前記管制局は前記移動局に対して報告要求する情報の種別を表すコマンドを前記質問信号に含める手段を備え、前記移動局は前記コマンドに応じたコマンド回答情報を前記応答信号に含める手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、次のような効果を奏する。
(1)管制局は応答を許可する条件として応答許可域を指定するので、その応答許可域内の移動局からの応答信号のみを受信することができ、無駄なデータトラフィックが抑えられ電波利用効率が高まる。
【0020】
また、監視対象となる移動体の空間存在確率が大きなダイナミックレンジをもっていても対応できるので監視区域内の移動体の探索効率が非常に高い。
【0021】
(2)管制局は任意の時刻での移動局の位置情報を求めることができ、移動局の所定時刻での位置を推測するための演算も不要となりシステムの規模が増大することもない。
【0022】
(3)予め定めた時刻スロットを移動局に割り当てるのではなく、移動局の位置が時刻スロットに対応することになるので、時刻スロットの割当てが使い尽くされることによる問題も生じない。
【0023】
(4)移動局は自局の位置情報を応答信号に載せる必要がないので応答信号のデータ長が短くなり電波利用効率が高まる。
【0024】
また、この発明によれば、管制局は、応答信号を受信した時刻スロットに対応する許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して質問信号を送信することによって、時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高めることができ、例えば応答許可域を順次狭くしていくことによって少ない質問信号の送信で移動局の位置を効率良く高い分解能で求めることができる。
【0025】
ある1つの時刻スロットに対応する応答許可域内の位置に複数の移動局が存在する場合、それらの移動局が同じ時刻スロットに応答信号を送信することになるため衝突が生じる。この状態はキャリアが検出でき且つ応答信号の復号化ができなかった場合である。この発明によれば、前記応答信号のキャリアが検出でき且つ応答信号が復号化できなかった時刻スロットに対応する応答許可域内の領域を新たな応答許可域として指定し再び質問信号を送信することによって、高い分解能で移動局からの応答信号を受信することができる。また、応答許可域を順次狭めることによって、いずれはそれぞれの移動局からの応答信号を個別に復号化でき、各移動局の位置情報を求めることができる。初めから位置分解能を高めて質問信号を送信する場合に比べて質問信号と応答信号の全体のデータ量が削減でき電波利用効率が高まる。また全体の時刻スロットの個数が少なくなって短時間のうちに移動局の位置情報およびその他の情報が収集可能となる。
【0026】
またこの発明によれば、前記応答許可域を2次元座標または3次元座標に従った等間隔の複数の区域に区分した時の該当区域に対応するように前記時刻スロットを定めることによって、各移動局および管制局は時刻スロットと移動局の位置(区域)との対応関係を単純に変換することができ効率的な演算が可能となる。
【0027】
また、この発明によれば、管制局は移動局に対して報告要求する情報の種別を表すコマンドを質問信号に含め、移動局は前記コマンドに応じたコマンド回答情報を応答信号に含めることにより、管制局は移動局の位置情報だけでなく、例えば針路や速度の報告を要求して移動局からその回答を得ることができる。そのため、電波利用効率を低下することなく、任意の監視区域内に存在する移動局の任意の時刻での移動局の情報を収集・監視できるシステムを簡素な装置で構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
《第1の実施形態》
図2は第1の実施形態に係る移動体監視システムの構成を示すブロック図である。この移動体監視システムは1つの管制局10と複数の移動局20A,20B・・・で構成している。管制局10は例えば所定の監視区域が存在する湾を見渡せるビルの屋上等に設けられている。また移動局20A,20B等はそれぞれ移動体である船舶に設けられている。
【0029】
管制局10は所定の質問信号を送信するインタロゲータ(質問器)11、そのアンテナ12、管制局10の動作の制御や表示を行う操作・表示端末15、正確な時刻または時間経過を計時するために用いるGPS,GLONASS,GALILEO等の測位システムで用いられる信号を受信する測位用受信機13およびそのアンテナ14を備えている。
【0030】
各移動局は、管制局10からの質問信号を受信するとともに所定の応答信号を送信するトランスポンダ(応答器)21およびそのアンテナ22、移動局(自局)の位置を測位する測位用受信機23およびそのアンテナ24を備えている。測位用受信機23はGPS,GLONASS,GALILEO等の測位用信号を受信して受信点位置情報を得る。
【0031】
図3は前記質問信号および応答信号のフォーマットを示す図である。管制局10から送信される質問信号は図3(A)に示すように「同期信号」、「質問インデックス」、「応答許可域」、「エラー訂正符号」からなる。質問信号はこのように一文と見なせるので「質問文」と言うこともできる。
【0032】
「同期信号」は通信のビット/キャラクター/フレーム同期のための信号である。
「質問インデックス」は質問信号と応答信号の呼応関係を確認するために質問信号に埋め込まれる符号である。移動局のトランスポンダはこの質問信号に対して応答する場合にはその応答信号にこの質問インデックスと同じ符号を埋め込むので、管制局のインタロゲータは受信した応答信号が自身の発した質問信号に対する応答信号であるか否かを識別するために用いる。例えば監視区域内にインタロゲータがただ一つしかない場合など、この呼応関係が確実に確保できる場合や確保する必要が無い場合には質問インデックスは不要である。逆に、トランスポンダの誤応答によるインタロゲータでの誤検出を減らしたい場合には上記質問インデックスは有効である。
【0033】
「応答許可域」は移動局からの応答を許可する領域(管制局が照会したい領域)を指定する情報である。さらに「エラー訂正符号」はチェックサム等のエラー訂正検出のための情報であり、このエラー訂正符号によって移動局は質問信号のエラー訂正を行う。
【0034】
移動局が送信する応答信号は図3(B)に示すように「同期信号」、「応答インデックス」、「識別符号」、「エラー訂正符号」からなる。応答信号もこのように一文と見なせるので「応答文」と言うこともできる。
【0035】
ここで「同期信号」は通信のビット/キャラクター/フレーム同期のための信号である。
「応答インデックス」は前記質問信号に応答する場合に、その質問信号に含まれていた質問インデックスと同じ符号である。既に述べたように、管制局のインタロゲータは受信した応答信号が自身の発した質問信号に対する応答信号であるか否かを識別するために用いる。
【0036】
「識別符号」は各移動局に個別に割り当てられている固体識別符号である。管制局はこの識別符号を抽出することによって移動局(移動体)を識別する。「エラー訂正符号」はチェックサム等のエラー訂正検出のための情報であり、このエラー訂正符号によって管制局は応答信号のエラー訂正を行うとともに復号化が成功したか否かを検知する。
なお、応答信号には移動局(自局)の位置情報を含んでいない。
【0037】
また、インタロゲータおよびトランスポンダが上記質問信号および応答信号中の同期信号によらずに同期をとる他の手段があれば、この同期信号は不要である。例えばGPS等の測位系の基準時刻信号を同期信号として扱ってインタロゲータおよびトランスポンダがそれぞれ同期をとるようにしてもよい。
【0038】
図4は前記応答許可域と前記時刻スロットに対応する空間スロットの関係を示す図である。ここでは(緯度,経度)の2次元座標系を直交座標系で表している。この例では前記応答許可域の情報が図4(A)に示す矩形の領域の右上を基点BP(ベースポイント)とし、この起点BPの(緯度,経度)で与える。例えば(123.4E,67.89N)である。そして緯度・経度ともに0.001度単位(分解能0.001度)で、西方向と南方向に10単位ずつ合計100の領域を想定し、図4(A)に示すようにBPから南方向を主走査、西方向を副走査とする00〜99の空間スロットを与える。したがってBPが(123.45E,67.89N)のとき、空間スロット“18”のスロットは図4(B)に示すような位置に相当する。
【0039】
前記応答許可域の情報には上記BPの(緯度,経度)データと空間スロット1つ分に対応する緯度・経度の分解能(0.001度)の情報を含んでいる。そして例えば(緯度,経度)が図4(B)に示した領域内に存在するとき、空間スロット18に相当するタイミングで応答信号を送信することになる。管制局はこの空間スロット18のタイミングで応答信号を受信すれば、その応答信号から前記識別符号を抽出して移動局の識別を行うとともに空間スロット18に相当する位置(領域)をその移動局の位置(移動局が存在する領域)として求める。
【0040】
なお、上述の例では応答許可域の情報に空間スロット1つ分に対応する緯度・経度の分解能の情報を含むようにしたが、応答許可域情報の各軸(緯度,経度)の最小桁を基準として、その1/10(または1/100など)を分解能と理解するように予め定めておけば、分解能情報自体を伝送する必要はない。
【0041】
図5は管制局からの質問信号に応答する移動局の応答スケジューリングの2つの例を示す図である。図5(A)においてQは質問信号およびその時刻スロット、A18は図4に示した空間スロット18に対応して送信される応答信号およびその時刻スロットをそれぞれ示している。
【0042】
この例では12時34分00秒からの1秒間T1に質問信号Qが送信される。その後の質問信号送信ガード時間T2(9秒)を待ってそれ以降時刻スロット00から99までの全局応答時間T3(100秒)が続くことになる。したがって空間スロット18に対応する応答信号A18は12時34分28秒から1秒間に送信されることになる。
【0043】
移動局のトランスポンダは管制局のインタロゲータからの質問信号の受信、解読(復号)演算、および応答の送信準備に時間を要する。上記ガード時間T2はこのような準備のための時間を確保するためのものである。したがって上記送信ガード時間T2はトランスポンダ自身の応答スロットの決定(スケジューリング)処理に要する最大時間以上あればよい。
【0044】
この応答スケジューリングはGPS測位系の時刻に同期する秒の単位で実行されるものである。すなわち管制局のインタロゲータ11および移動局のトランスポンダ21はGPS受信機13,23によって求められるGPS測位系の時刻に同期して動作する。
【0045】
この例では110秒(1+9+100=110)の間に(123.45E,67.89N)〜(123.44E,67.88N)を対角とする矩形領域を0.001度の分解能で検出することができる。
【0046】
すなわち質問信号Qの送信時刻を基準とする時刻スロットによって移動局の位置を求めることができる。この時刻スロットは、管制局からの質問信号Qの送信時刻(=移動局にとっての受信時刻)から応答信号A18の受信時刻(=移動局にとっては送信時刻)までの経過時間であるので、管制局は自身が送信した質問信号の送信時刻と応答信号の受信時刻とに基づいて時刻スロットを検出し、その時刻スロットによって移動局の位置を求めることができる。
【0047】
図5(B)は、質問信号Qが送信される時刻を偶数正分(秒以下の桁が0であり且つ分の桁が偶数である時刻)に予め固定した例である。また、全局応答時間T3は図5(A)の場合と同様に100秒である。
【0048】
このように質問信号の発生タイミングが固定されている場合には、質問信号の送受信時刻を参照する必要はなく、秒の値をそのまま時刻スロットの番号として扱うことができる。移動局は現在時刻の秒の桁の値を時刻スロットの番号と見なして、応答信号を送信すべき時刻スロットに応答信号を送信すればよい。また、管制局は応答信号を受信した時刻の秒の桁の値を時刻スロットの番号と見なして、その時刻スロットに応じた移動局の位置を求めればよい。
【0049】
図4・図5に示した例で、ある1つのスロットに対応する領域に複数の移動局が存在する場合、それらの移動局はその領域に対応するスロットのタイミングで応答信号を送信することになるため信号の衝突が生じ、管制局では応答信号の復号化ができなくなる。但し、キャリアが存在することは検出可能である。そこで次の手順で上記信号の衝突の問題を回避する。
【0050】
(1)管制局はキャリアが存在することおよび応答信号の復号化ができないことの2点によってその空間スロットに相当する位置に複数の移動局が存在することを検知する。
【0051】
(2)1つの空間スロットに相当する位置に複数の移動局が存在することが分かれば、その空間スロットに対応する領域についてのみより高い分解能で質問信号を送信し、複数の移動局からの応答信号を受信する。分解能が十分であれば複数の移動局を個別に検出できる。
【0052】
(3)もし、まだ分解能が不十分であれば上記(1)と同様の状態であるので、さらに細かい(高い)分解能を設定して再度質問信号を送信する。
【0053】
上記の処理を繰り返すことによっていずれ全ての移動局の位置を検出することが可能となる。
【0054】
図6は上記処理の例を示す図である。図6(A)では図4(A)の場合と同様に空間スロット1スロット分が緯度・経度ともに0.001度の分解能で起点BP1の応答許可域を定めている。図6(B)はその条件での質問信号と応答信号の送信タイミングを時間軸上で表したものであり、Q1は質問信号およびその時刻スロット、A1_13_1,A1_13_2はそれぞれ2つの移動局から送信された応答信号およびその時刻スロットをそれぞれ示している。またA1_30は或る移動局から送信された応答信号およびその時刻スロットを示している。
【0055】
この例では時刻スロット30で応答信号を正しく復号化できるが、時刻スロット13ではキャリアが検出でき且つ応答信号が復号化できない。
【0056】
そこで、空間スロット13の右上の点BP2を新たな起点とし、図6(C)に示すように1スロット分の緯度・経度が0.0001度の分解能となるように定める。すなわちスロットの細かさを10倍(分解能を1/10)とする。
【0057】
図6(D)はその条件での質問信号と応答信号の送信タイミングを時間軸上で表したものであり、Q2は質問信号およびその時刻スロット、A2_12,A2_28はそれぞれ移動局から送信された応答信号およびその時刻スロットである。このように分解能を高めることによって、重なっていた2つの移動局からの応答信号が異なるスロット12,スロット28でそれぞれ送信され、管制局はそれぞれ独立に受信して2つの移動局の識別が可能となる。
【0058】
図7・図8は図2に示した管制局10のインタロゲータ11および操作・表示端末15の処理をフローチャートとして表した図である。図7はその管制局の処理手順を示している。まず分解能の初期値を設定し、さらに応答許可域の基点BPの(緯度,経度)を設定する。その後、以降に述べる移動体監視処理を行う。
【0059】
なお、この実施形態ではいずれの分解能においても空間スロットが00〜99の値(合計100スロット)を採るようにスロット数を固定的に定めたが、これを可変としてもよい。その場合には応答許可域の情報に緯度方向と経度方向のスロットの数のデータを含めればよい。
【0060】
図8は上記移動体監視処理の詳細な内容を示すフローチャートである。まず前記パラメータを基にして質問信号(質問文)を作成しそれを送信する(S1→S2)。その後9秒間のガード時間の時間待ちを行い(S3)、時刻スロットの番号の初期値“00”を設定する(S4)。
【0061】
続いて、その時刻スロットでのキャリアの有無を判定し、キャリアが存在すればその応答信号の復号化を行う(S5→S6→S7)。復号化に成功すれば時刻スロットの番号、分解能、応答許可域の基点BPに基づいてその移動局の位置を求めるとともに記憶する(S9)。
【0062】
また、キャリアが存在しても応答信号の復号化ができなければその時刻スロット(衝突スロット)の番号を一旦記憶する(S8→S12)。
以上の処理を全ての時刻スロットについて順次行う(S10→S11→S5→・・・)。
【0063】
その後、上記衝突スロットが存在すれば、その衝突スロットの番号、分解能、応答許可域の基点BP1に基づいて新たな応答許可域の基点BP2と分解能を定める(S13→S14)。続いて、同じ手順で質問信号の送信および応答信号の受信を行う(S1→S2→・・・)。衝突スロットが複数存在する場合は、各衝突スロットについて上記処理を行う。この処理は図6を基にして既に説明したとおりである。
【0064】
このように複数の移動局が存在する時刻スロットに対応する空間スロットについては信号の衝突がなくなるまで、次第に応答許可域を狭めるとともに分解能を高めていき、全ての移動局について応答信号の復号化を行う。
【0065】
図9は移動局の処理手順を示すフローチャートである。まず管制局から送信される質問信号のキャリアを検出し(S21)、キャリアが存在すればその質問信号(質問文)を復号化し(S22→S23)、質問信号中の応答許可域に対応する領域に自局が存在するか否かを判定する(S24)。すなわち、応答許可域の情報に基づいてその緯度・経度範囲を求め、GPS受信機23が求めた自局の(緯度,経度)がその範囲内に存在するか否かを判定する。自局が応答許可域内に存在すれば、自局の識別符号を含む応答信号を作成しそれを送信する(S25→S26→S27)。存在しなければ応答信号(応答文)の作成および送信は行わない。
【0066】
以上に示した管制局と移動局の処理によって、互いに近接する移動局についてはその位置が高い分解能で検知でき、逆に隣接する移動局との間隔が十分に離れている移動局については必要最低限の分解能で位置情報が検知できるので、全体として少ないデータ量で複数の移動局の監視を効果的に行うことができる。
【0067】
《第2の実施形態》
第1の実施形態では管制局が移動局の位置情報のみを収集する例を示したが、この第2の実施形態では、位置情報と共に所望の情報を得るようにしたものである。
【0068】
図10は第2の実施形態に係る移動体監視システムで用いる質問信号(質問文)および応答信号(応答文)のフォーマットを示す図である。管制局から送信される質問信号は図10(A)に示すように「同期信号」、「質問インデックス」、「応答許可域」、「コマンド」、「エラー訂正符号」からなる。図3(A)に示した例と異なり「コマンド」を備えている。この「コマンド」は管制局が移動局に対して報告要求する情報(例えば移動体の針路や速度等)の種別を表す符号である。
【0069】
移動局が送信する応答信号は図10(B)に示すように「同期信号」、「応答インデックス」、「識別符号」、「コマンド回答」、「エラー訂正符号」からなる。図3(B)に示した例と異なり「コマンド回答」を備えている。この「コマンド回答」は移動局が管制局から要求された情報(上記の例では移動体の針路や速度等の値)である。
【0070】
第2の実施形態に係る管制局の移動体監視処理についても図8に示したものと同様に表すことができる。第2の実施形態では図8にステップS1で所望の「コマンド」を含む応答信号を作成することになる。また、移動局処理についても図9に示したものと同様に表すことができる。第2の実施形態では質問信号に含まれていたコマンドに回答する情報を図9のステップS26で、「コマンド回答」として応答信号に含めることになる。
【0071】
《第3の実施形態》
第1・第2の実施形態では管制局が単一であることを前提としたが、管制局が複数存在していてもよい。或る質問信号とそれに伴ってスケジューリングされる応答信号の組み合わせを一つのセッションと数えると、個々のセッションが実施される時間が重ならない限り、システムは破綻しない。すなわち複数の管制局が共存できる。
【0072】
セッション実施時間の重複を避ける方法は、管制局同士の位置関係によって2つに分類される。この第3の実施形態ではその例について示す。
【0073】
図11は二つの管制局が存在する領域での管制局のサービスエリアの関係を示す図である。図11(A)は管制局同士が互いに相手の質問信号を受信できない場合である。この場合、管制局αとβは互いのサービスエリア外に存在するが、その両者のサービスエリアが重なるような場合、質問信号と応答信号の無線回線とは別に管制局αとβを接続する回線を設け、この回線を介して互いのセッションを認識できるようにする。これにより共通のサービスエリアに存在する移動局γへのセッションの重複を回避する。すなわち管制局αとβは互いのセッションの実施時間が重ならないようにセッションの実施時間を定める。
【0074】
図11(B)は管制局α・βが互いに相手の質問信号を受信できる場合である。この場合、相手の質問信号を直接受信し、互いのセッションを認識し、共通のサービスエリア外に存在する移動局δとのセッションとそれ以外のセッションの重複を回避する。すなわち管制局αとβは互いのセッションの実施時間が重ならないようにセッションの実施時間を定める。
【0075】
言うまでもなく以上の各実施形態に示した例以外にも、この発明の実施の形態としては様々な形態を採ることができる。
例えば、図8に示した例では応答信号の復号化ができた移動局についてはそれ以上分解能を高める処理を行っていないが、所定の監視区域内で最初は粗い分解能で応答許可域を定めて質問信号を送信することによって移動局の大まかな位置を求め、次の段階で各移動局に焦点を合わせるかのように、所定の移動局を含む領域に高い分解能で応答許可域を設定し、質問信号を送信するという処理を行う。またはこの分解能を高めていく操作を繰り返す。このように応答許可域を無駄なく順次狭めていくことによって各移動局についてそれぞれ等しい分解能で(位置精度で)位置を求めるようにしてもよい。
【0076】
また、以上に示した例では応答許可域を2次元座標に従った等間隔の複数の区画に区分したときの該当区画を時刻スロットに対応させるようにしたが、同様にして3次元座標の座標軸方向をそれぞれ等間隔で区分して3次元の区画を想定し、各区画を時刻スロットに対応させるようにしてもよい。
【0077】
また、以上に示した実施形態では、質問信号の送信・受信時刻からの経過時間または測位系の絶対時刻の所定桁の値を時刻スロットの番号として応答スケジューリングを定めたが、インタロゲータ11とトランスポンダ21とで共通のタイミングを基準とする経過時間に従って応答スケジューリングを定めてもよい。
【0078】
さらに、以上に示した例では船舶を移動体とするものであったが、陸上の車両に移動局を設けて、車両の位置を監視するシステムや、航空機・飛行体に移動局を設けて、それらの位置や運動状態を監視するシステムにも同様に適用できる。同様に、鯨・熊・犬などの動物や更に小型の動物に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】特許文献1に示されている運行監視システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の第1の実施形態である移動体監視システムの構成を示すブロック図である。
【図3】同移動体監視システムで用いる質問信号と応答信号の構成を示す図である。
【図4】応答許可域と空間スロットとの関係を示す図である。
【図5】質問信号および応答信号のタイミング関係を示す図である。
【図6】応答許可域の分解能を高める操作を示す図である。
【図7】管制局の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】管制局の行う移動体監視処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】移動局の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態に係る移動体監視システムで用いる質問信号と応答信号の構成を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る移動体監視システムでのセッションの重複を防止する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0080】
10−管制局
20−移動局
α,β−管制局
γ,δ−移動局
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局に、自局の位置情報を得る測位手段と、管制局から送信された質問信号を受信するとともに該質問信号から、応答を許可する領域である応答許可域を指定する応答許可域情報を抽出し、前記測位手段が求めた自局の位置が前記応答許可域内であるとき、当該許可域内の位置に基づいて、応答すべき時刻スロットを定め、該時刻スロットに応答信号を無線送信する応答信号送信手段とを備え、
管制局に、前記応答許可域情報を含む質問信号を無線送信する質問信号送信手段と、前記移動局からの前記応答信号を受信し、該応答信号を受信した時刻スロットに応じた移動局の位置を求める移動局位置検知手段と、を備えてなる移動体監視システム。
【請求項2】
移動局に、自局の位置情報を得る測位手段と、管制局から送信された質問信号を受信するとともに該質問信号から、応答を許可する領域である応答許可域を指定する応答許可域情報を抽出し、前記測位手段が求めた自局の位置が前記応答許可域内であるとき、当該許可域内の位置に基づいて時刻スロットを定め、前記質問信号の受信時刻から時刻スロット分の時間の後に応答信号を無線送信する応答信号送信手段とを備え、
管制局に、前記応答許可域情報を含む質問信号を無線送信する質問信号送信手段と、前記移動局からの前記応答信号を受信し、前記質問信号の送信時刻から前記応答信号を受信するまでの時間に応じた時刻スロットに対応する移動局の位置を求める移動局位置検知手段と、を備えてなる移動体監視システム。
【請求項3】
前記応答信号を受信した時刻スロットに対応する前記応答許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して前記時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高め、前記質問信号送信手段により再び質問信号を送信する応答許可域設定手段を前記管制局に設けた請求項1または2に記載の移動体監視システム。
【請求項4】
前記応答信号のキャリアが検出でき且つ応答信号が復号化できなかった時刻スロットに対応する前記応答許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して前記時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高め、前記質問信号送信手段により再び質問信号を送信する応答許可域設定手段を前記管制局に設けた請求項1または2に記載の移動体監視システム。
【請求項5】
前記時刻スロットは、前記応答許可域を2次元座標または3次元座標に従った等間隔の複数の区域に区分したときの該当区域に対応するものである請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の移動体監視システム。
【請求項6】
前記管制局は前記移動局に対して報告要求する情報の種別を表すコマンドを前記質問信号に含める手段を備え、
前記移動局は前記コマンドに応じたコマンド回答情報を前記応答信号に含める手段を備えた請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の移動体監視システム。
【請求項1】
移動局に、自局の位置情報を得る測位手段と、管制局から送信された質問信号を受信するとともに該質問信号から、応答を許可する領域である応答許可域を指定する応答許可域情報を抽出し、前記測位手段が求めた自局の位置が前記応答許可域内であるとき、当該許可域内の位置に基づいて、応答すべき時刻スロットを定め、該時刻スロットに応答信号を無線送信する応答信号送信手段とを備え、
管制局に、前記応答許可域情報を含む質問信号を無線送信する質問信号送信手段と、前記移動局からの前記応答信号を受信し、該応答信号を受信した時刻スロットに応じた移動局の位置を求める移動局位置検知手段と、を備えてなる移動体監視システム。
【請求項2】
移動局に、自局の位置情報を得る測位手段と、管制局から送信された質問信号を受信するとともに該質問信号から、応答を許可する領域である応答許可域を指定する応答許可域情報を抽出し、前記測位手段が求めた自局の位置が前記応答許可域内であるとき、当該許可域内の位置に基づいて時刻スロットを定め、前記質問信号の受信時刻から時刻スロット分の時間の後に応答信号を無線送信する応答信号送信手段とを備え、
管制局に、前記応答許可域情報を含む質問信号を無線送信する質問信号送信手段と、前記移動局からの前記応答信号を受信し、前記質問信号の送信時刻から前記応答信号を受信するまでの時間に応じた時刻スロットに対応する移動局の位置を求める移動局位置検知手段と、を備えてなる移動体監視システム。
【請求項3】
前記応答信号を受信した時刻スロットに対応する前記応答許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して前記時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高め、前記質問信号送信手段により再び質問信号を送信する応答許可域設定手段を前記管制局に設けた請求項1または2に記載の移動体監視システム。
【請求項4】
前記応答信号のキャリアが検出でき且つ応答信号が復号化できなかった時刻スロットに対応する前記応答許可域内の位置を新たな応答許可域として指定して前記時刻スロットに応じた移動局の位置分解能を高め、前記質問信号送信手段により再び質問信号を送信する応答許可域設定手段を前記管制局に設けた請求項1または2に記載の移動体監視システム。
【請求項5】
前記時刻スロットは、前記応答許可域を2次元座標または3次元座標に従った等間隔の複数の区域に区分したときの該当区域に対応するものである請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の移動体監視システム。
【請求項6】
前記管制局は前記移動局に対して報告要求する情報の種別を表すコマンドを前記質問信号に含める手段を備え、
前記移動局は前記コマンドに応じたコマンド回答情報を前記応答信号に含める手段を備えた請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の移動体監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−131520(P2008−131520A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316367(P2006−316367)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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