説明

移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法

【課題】リニアモータの固定子ユニットと可動子ユニットとの間の距離の変化を検知可能な移動体装置、この移動体装置を備える露光装置、及びこの露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法を提供すること。
【解決手段】移動体装置は、第1の方向に沿って設けられた固定体部と、第1の方向に沿って固体体部に対して相対移動可能に固定体部に対向して配置された移動体部と、第1の方向に沿って固定体部に配列された複数の第1ユニット、および複数の第1ユニットに対向するように移動体部に設けられた第2ユニットを有し、第1ユニットと第2ユニットとの間に相互に作用させる電磁力によって移動体部を相対移動させるリニアモータと、第1ユニットと第2ユニットとの間に張設された線状部材と、線状部材の動きを検出し、線状部材の動きの検出結果に基づいて第1ユニットと第2ユニットとの間の距離の変化を検知する検知部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータによって駆動される移動体装置、この移動体装置を備える露光装置、及びこの露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の電子デバイス又はマイクロデバイス(以下、デバイスと総称)は、マスク又はレチクル(以下、マスクと総称)上に形成されたパターンをガラスプレート又はウエハ(以下、基板と総称)上に転写するフォトリソグラフィ工程によって製造される。フォトリソグラフィ工程において使用される露光装置は、例えば、マスクを支持して2次元移動するマスクステージと、基板を支持して2次元移動する基板ステージとを有し、マスクステージと基板ステージとを逐次移動しながら投影光学系を介してマスク上に形成されたパターンを基板上に転写するものがある。
【0003】
このような露光装置では、マスクと基板との相対位置を高精度に制御して、マスク上に形成されたパターンを基板上に転写することが要求されるために、マスクステージ及び基板ステージ(以下、移動体装置と総称)の位置決め精度が重要な性能の一つになっている。
【0004】
従来の移動体装置として、Y軸方向へマスク又は基板を移動させる移動機構が、Y軸方向に直交するX軸方向へマスク又は基板を移動させる移動機構の上部に設けられた移動体装置が知られている。詳しくは、この移動体装置は、マスク又は基板を上面に保持するホルダ部と、ホルダ部をY軸方向に移動可能に下面から支持する第1のステージ部と、第1のステージ部をX軸方向に移動可能に下面から支持する第2のステージ部と、第1のステージ部をY軸方向に移動させる第1の移動機構と、第2のステージ部をX軸方向に移動させる第2の移動機構とを備える。
【0005】
このような移動体装置では、第2のステージ部をX軸方向に移動させるために必要な力は第1のステージ部をY軸方向に移動させるために必要な力より大きくなるために、第2の移動機構は第1の移動機構の駆動力よりも大きな駆動力を出力可能に構成する必要がある。このため、このような移動体装置では、第2の移動機構として、大きな推力を出力可能なコア付きリニアモータが採用されている。このコア付きリニアモータは、例えば、X軸方向に沿って極性が交互に異なるように配列された固定子としての複数の永久磁石と、永久磁石に対向配置された可動子としての電磁石とを備え、永久磁石と電磁石との間の隙間を1mm以下と極めて狭く設定することによって、X軸方向に大きな推力を出力可能に構成されている。なお、第2の移動機構としてリニアモータを備える移動体装置としては、特許文献1に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−254377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コア付きリニアモータでは、電磁石を構成する鉄心と永久磁石との間の磁気吸引作用によって、出力される推力の数倍もの大きさの磁気吸引力が推力方向に直交する方向に発生する。具体的には、例えば、大きさ4,000Nの推力を出力するコア付きリニアモータでは、10,000〜20,000N程度の大きさの磁気吸引力が推力方向に直交する方向に発生する。このため、従来の移動体装置では、磁気吸引力によって永久磁石と電磁石とが接触しないように、永久磁石及び電磁石はボルトによって強固に固定されている。
【0008】
しかしながら、移動体装置の移動距離が長い場合、移動方向に配置する永久磁石の数が増えるために、永久磁石を固定するために必要なボルト数が増える。このため、ボルトの締結不良によって永久磁石が強固に固定されていない状態が発生する可能性が高くなる。また、電磁石の移動に伴い永久磁石には磁気吸引力が作用している状態と作用してしない状態とが繰り返し発生する。この繰り返し応力によってボルトの締結不良が発生し、電磁石が強固に固定されていない状態が発生する可能性がある。
【0009】
永久磁石や電磁石が強固に固定されていない場合、磁気吸引力によって永久磁石と電磁石とが接触し、電磁石の移動に伴い永久磁石と電磁石との接触部において粉塵が発生する恐れがある。発生した粉塵は、露光装置内部の清浄度(クリーン度)を低下させ、露光装置の露光精度に影響を及ぼす可能性がある。このため、永久磁石と電磁石との間の距離の変化を検知可能な移動体装置の提供が期待されている。
【0010】
本発明の態様は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、リニアモータの固定子ユニットと可動子ユニットとの間の距離の変化を検知可能な移動体装置、この移動体装置を備える露光装置、及びこの露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る移動体装置は、第1の方向に沿って設けられた固定体部と、前記第1の方向に沿って前記固体体部に対して相対移動可能に前記固定体部に対向して配置された移動体部と、前記第1の方向に沿って前記固定体部に配列された複数の第1ユニット、および該複数の第1ユニットに対向するように前記移動体部に設けられた第2ユニットを有し、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に相互に作用させる電磁力によって前記移動体部を前記固定体部に対して前記第1の方向に沿って相対移動させるリニアモータと、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に張設された線状部材と、前記線状部材の動きを検出し、該線状部材の動きの検出結果に基づいて前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の変化を検知する検知部とを備える。
【0012】
本発明の第2の態様に係る露光装置は、マスクを支持するマスクステージと、基板を支持する基板ステージとを有し、前記マスクに形成されたパターンを投影光学系を介して前記基板に転写する露光装置であって、前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方は本発明の第1の態様に係る移動体装置を用いて構成される。
【0013】
本発明の第3の態様に係るデバイス製造方法は、本発明の第2の態様に係る露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成するステップと、前記パターンが形成された基板を処理するステップとを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、リニアモータの固定子ユニットと可動子ユニットとの間の距離の変化を検知することができる移動体装置、この移動体装置を備える露光装置、及びこの露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である露光装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示すベースフレーム及びXスライダの構成を説明するための部分拡大図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態である検知機構の構成を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態である検知機構の構成を示す側面図である。
【図5】図5は、図4のA−A線断面図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施形態である検知機構の動作を説明するための模式図である。
【図7】図7は、第1変形例の検知機構の構成を示す側面図である。
【図8】図8は、第2変形例の検知機構の構成を示す側面図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施形態である検知機構の構成を示す側面図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態である検知機構の動作を説明するための模式図である。
【図11】図11は、第3変形例の検知機構の構成を示す側面図である。
【図12】図12は、第4変形例の検知機構の構成を示す平面図である。
【図13】図13は、第4変形例の検知機構の構成を示す側面図である。
【図14】図14は、本発明の第3の実施形態である検知機構の構成を示す側面図である。
【図15】図15は、図14に示すXスライダの構成を示す断面図である。
【図16】図16は、デバイス製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である露光装置の構成について説明する。なお、図面は模式的なものを含み、図面相互間において互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0017】
〔露光装置の構成〕
始めに、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態である露光装置の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である露光装置の概略構成を示す模式図である。図2は、図1に示すベースフレーム及びXスライダの構成を説明するための部分拡大図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態である露光装置1は、液晶表示装置等に用いられる矩形形状のガラスプレートP(以下、基板Pと略記)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。この露光装置1は、照明系IOP,マスクMを保持するマスクステージMST,投影光学系PL,マスクステージMST及び投影光学系PLが搭載されたボディ2,基板Pを保持する基板ステージ装置PST,及びこれらの動作を制御する主制御装置Sを備える。
【0019】
以下、本明細書中では、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対しそれぞれ相対走査される方向をX軸方向として、水平面内でX軸方向に直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向と定義する。また、X軸方向,Y軸方向,及びZ軸方向周りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx方向,θy方向,θz方向と表現する。
【0020】
照明系IOPは、米国特許第5,729,331号明細書に開示されている照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、それぞれ図示しない反射鏡,ダイクロイックミラー,シャッター,波長選択フィルタ,各種レンズ等を介して、図示しない水銀ランプ等の光源から射出された光を露光用照明光(以下、照明光と略記)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、i線(波長365nm),g線(波長436nm),h線(波長405nm)等の光やi線,g線,h線の合成光を例示することができる。照明光ILの波長は、図示しない波長選択フィルタによって要求される解像度に応じて適宜切り替えることができる。
【0021】
マスクステージMSTには、回路パターンがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが真空吸着によって固定されている。マスクステージMSTは、ボディ2の一部を構成する鏡筒定盤23の上面に固定されたマスクステージガイド24上に図示しないエアベアリングを介して非接触状態で搭載されている。マスクステージMSTは、コアレスリニアモータを含む図示しないマスクステージ駆動系によって、マスクステージガイド24上で、X軸方向に所定のストロークで駆動されると共に、Y軸方向及びθz方向にそれぞれ適宜微小駆動される。θz方向の回転情報を含むマスクステージMSTのXY平面内の位置情報は、マスクステージMSTが有する図示しない反射面に測長ビームを照射するレーザ干渉計3を含むマスク干渉計システムによって計測される。
【0022】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの下方において、ボディ2の一部を構成する鏡筒定盤23によって支持されている。投影光学系PLは、米国特許第5,729,331号明細書に開示された投影光学系と同様に構成されている。すなわち、投影光学系PLは、レンズモジュール等を含む光学系を複数有し、複数の光学系は、Y軸方向にそって千鳥状に配列されている。複数の光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられる。
【0023】
照明系IOPは、複数の光学系に対応した複数の照明光ILをそれぞれマスクMに照射するように構成されている。このため、マスクM上には、千鳥状に配列された複数の照明光ILの照明領域が形成されると共に、投影光学系PLの下方に配置された基板P上には、複数の光学系それぞれに対応して、千鳥状に配列された複数の照明光ILの照明領域が形成される。この露光装置1では、基板P上に形成される複数の照明領域が合成されることによって、千鳥状に配置された複数の光学系からなる投影光学系PLが、Y軸方向を長手方向とする単一の長方形状(帯状)のイメージフィールドを有する投影光学系と同等に機能する。
【0024】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILによって、投影光学系PLを介して照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの像面側に配置される、表面にレジストが塗布された基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照明領域に形成される。そして、マスクステージMSTと基板ステージ装置PSTとの同期駆動によって、照明領域に対してマスクMをX軸方向に相対移動させると共に、露光領域に対して基板PをX軸方向に相対移動させることによって、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMの回路パターンが転写される。すなわち、この露光装置1では、照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMの回路パターンが生成され、照明光ILによる基板P上のレジスト層の露光によって基板P上にその回路パターンが形成される。
【0025】
ボディ2は、基板ステージ架台21,一対のサイドコラム22,及び鏡筒定盤23を備える。基板ステージ架台21は、Y軸方向に延びる部材によって構成され、X軸方向に所定の間隔で2つ設けられている(図1では、2つの基板ステージ架台21は紙面垂直方向に重なっている)。2つの基板ステージ架台21それぞれは、Y軸方向の両端部が床面4上に設置された空気バネを含む防振装置5によって下方から支持され、床面4に対して振動的に分離されている。
【0026】
一対のサイドコラム22は、X軸方向に延びる部材によって構成され、2つの基板ステージ架台21の+Y側(図1における左方向)の端部上、及び−Y側(図1における右方向)の端部上にそれぞれ架け渡された状態で搭載されている。鏡筒定盤23は、水平面に平行な平板状の部材によって構成され、投影光学系PLを支持している。
【0027】
鏡筒定盤23の上面にはマスクステージガイド24が固定され、マスクステージガイド24の上面には図示しないエアベアリングを介して非接触状態でマスクステージMSTが搭載されている。鏡筒定盤23は、一対のサイドコラム22によってY軸方向の両端部が下方から支持されている。従って、ボディ2及びボディ2に支持された投影光学系PLは、床面4に対して振動的に分離されている。
【0028】
基板ステージ装置PSTは、定盤6,本発明に係る固定体部としての一対のベースフレーム7,及び基板ステージ8を備える。定盤6は、例えば石材によって形成された平面視でX軸方向を長手方向とする矩形形状の板状部材によって構成され、その上面は平面度が非常に高く仕上げられている。定盤6は、2つの基板ステージ架台21上に架け渡された状態で搭載されている。
【0029】
一対のベースフレーム7は、一方が定盤6の+Y側に、他方が定盤6の−Y側に配置されている。一対のベースフレーム7は、X軸方向に延びる部材であり、基板ステージ架台21に非接触状態(基板ステージ架台21を跨いだ状態)で床面4上に設置されている。一対のベースフレーム7の床面4との設置面には、Z軸方向に進退可能な高さ調整ネジ71が設けられている。高さ調整ネジ71をZ軸方向に進退させることによって一対のベースフレーム7のZ軸方向位置を調整することができる。一対のベースフレーム7の+Y側及び−Y側の側面及び上端面には、それぞれX軸方向に平行に延びるXリニアガイド部材72が固定されている。
【0030】
図2に示すように、一対のベースフレーム7の+Y側及び−Y側の側面には、X軸方向に所定間隔で配列された複数の固定子ユニット73が固定されている。各固定子ユニット73は、支持部材73aと、支持部材73aの表面側に接合された永久磁石ユニット73bとを備える。支持部材73aの裏面側は、取付ボルト73cによって一対のベースフレーム7の側面に固定されている。永久磁石ユニット73bは、X軸方向に配列された本発明に係る第1の部材としての複数の永久磁石を含む。一対のベースフレーム7の長手方向の両端部近傍には、それぞれショックアブソーバを含む図示しないストッパ装置が固定されている。ストッパ装置は基板ステージ8のX軸方向に関する移動可能範囲を機械的に規定する。
【0031】
図1に戻る。基板ステージ8は、X粗動ステージ81,X粗動ステージ81上に搭載され、X粗動ステージ81と共にいわゆるガントリー式のXY2軸ステージ装置を構成するY粗動ステージ82、Y粗動ステージ82の上方に配置された微動ステージ83,及び定盤6上で微動ステージ83を下方から支持する重量キャンセル装置84を備える。X粗動ステージ81は、Y軸方向を長手方向とする平面視矩形形状の枠状部材によって構成され、その中央部にY軸方向を長手方向とする長孔状の開口部81aが形成されている。X粗動ステージ81の下面には、本発明に係る移動体部としての一対のXスライダ9が一対のベースフレーム7に対応する間隔で取り付けられている。
【0032】
図2に示すように、一対のスライダ9の一方(図2における左側)は、取付ボルト91によってX粗動ステージ81の下面に固定されている。一対のスライダ9の他方(図2における右側)は、X粗動ステージ81をY軸方向に微少量スライド可能なように取付ボルト91によってX粗動ステージ81の下面に固定されているガイド部材92に係合している。一対のXスライダ9は、X軸方向から見て断面逆U字状の部材によって構成され、その一対の対向面間にベースフレーム7が挿入されている。Xスライダ9の一対の対向面及び天井面には、Xリニアガイド部材72にスライド可能に係合するスライダ93が固定されている。
【0033】
Xスライダ9の一対の対向面それぞれには、固定子ユニット73に対向する2つの可動子ユニット94が固定されている(図2では、2つの可動子ユニット94は紙面垂直方向に重なっている)。可動子ユニット94は、鉄芯にコイルを巻回することによって形成された本発明に係る第2の部材としての電磁石を含む。固定子ユニット73と2つの可動子ユニット94とは、X粗動ステージ81をX軸方向に駆動するためのローレンツ電磁力駆動方式のXリニアモータ(コア付きリニアモータ)を構成する。Xリニアモータは、X粗動ステージの位置情報を計測する計測系(エンコーダヘッド95aとエンコーダスケール95b)の出力に基づいて主制御装置Sによって制御される。
【0034】
図1に戻る。X粗動ステージ81の上面には、Y軸方向に延びる複数のYリニアガイド部材81b(図1では、複数のYリニアガイド部材81bは紙面垂直方向に重なっている)、及びY軸方向に所定間隔で配列された複数の永久磁石からなる図示しない固定子ユニットが固定されている。X粗動ステージ81の上面であって、Yリニアガイド部材81bの長手方向近傍には、それぞれショックアブソーバを含むストッパ装置81cが固定されている。
【0035】
Y粗動ステージ82は、平面視略正方形状の枠状部材によって構成され、その中央部に平面視略正方形状の開口部82aが形成されている。Y粗動ステージ82の下面の四隅近傍には、Yリニアガイド部材81bにスライド可能に係合するスライダ82bが固定されている。Y粗動ステージ81の下面には、X粗動ステージ81の上面に固定された図示しない固定子ユニットに対向する電磁石を含む図示しない可動子ユニットが固定されている。図示しない固定子ユニットと図示しない可動子ユニットとは、Y粗動ステージ82をX粗動ステージ81上でY軸方向に駆動するためのローレンツ電磁力駆動方式のYリニアモータ(コア付きリニアモータ)を構成する。Yリニアモータは、Y粗動ステージ82の位置情報を計測する図示しない計測系の出力に基づいて、主制御装置Sによって制御される。Y粗動ステージ82のX軸方向に関する移動範囲はストッパ装置81cによって機械的に固定される。
【0036】
微動ステージ83は、平面視略正方形の高さの低い直方体状の部材からなるステージ本体83a、及びステージ本体83aの上面に固定された基板ホルダ83bを含む。微動ステージ83は、複数のボイスコイルモータを含む微動ステージ駆動系83cによって、Y粗動ステージ82に対して6自由度方向(X軸方向,Y軸方向,Z軸方向,θx方向,θy方向,θz方向)に微小駆動される。微動ステージ83は、微動ステージ駆動系を介してY粗動ステージ82に同期駆動されることによって、Y粗動ステージ82と一体的にX軸方向及び/又はY軸方向に所定のストロークで移動される。基板ホルダ83bは、図示しない真空吸着装置を有し、その上面に基板Pを吸着保持する。
【0037】
ステージ本体83aの−Y側の側面には、ミラーベース83dを介してY軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(バーミラー)83eが固定されている。ステージ本体83aの−X側の側面には、図示しないミラーベースを介してX軸方向に直交する反射面を有する図示しないX移動鏡が固定されている。ステージ本体83aのXY平面内の位置情報は、Y移動鏡83e及びX移動鏡それぞれに測長ビームを照射し、その反射光を受光するレーザ干渉計を含む図示しない基板干渉計システムによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。図示しない基板干渉計システムは、Y移動鏡83eに測長ビームを照射するYレーザ干渉計85、及び図示しないX移動鏡に測長ビームを照射する図示しないXレーザ干渉計を含む。図示しない基板干渉計システムの構成については、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0038】
重量キャンセル装置84は、Z軸方向に延びる一本の柱状部材によって構成され、レベリング装置86を介して微動ステージ83を下方から支持する。重量キャンセル装置84は、X粗動ステージ81の開口部81a内、及びY粗動ステージ82の開口部82a内に挿入されている。重量キャンセル装置84は、その下端に取り付けられた複数の気体静圧軸受、例えば3つのエアベアリング84aによって、定盤6上に所定のクリアランスを介して非接触状態で支持されている。重量キャンセル装置84は、その内部に設けられた図示しない空気バネ等が発生する上向きの力でその支持対象物、具体的には、微動ステージ83及び基板P、レベリング装置86等の重量(重力加速度による下向きの力)を打ち消す。
【0039】
重量キャンセル装置84は、板バネ又はバネ性を有さない薄い鋼板を含む図示しない複数の連結装置によってY粗動ステージ82に機械的に接続されている。これにより、重量キャンセル装置84は、Y粗動ステージ82と一体的にX軸及び/又はY軸方向に移動する。重量キャンセル装置84は、その上端に取り付けられた図示しないエアベアリングから噴出される気体の静圧によって、レベリング装置86を下方から所定のクリアランスを介して非接触支持している。
【0040】
従って、微動ステージ83と重量キャンセル装置84とは、X軸方向及びY軸方向に関して振動的に分離されている。レベリング装置86は、複数の気体静圧軸受を含み、微動ステージ83を水平面に対してチルト可能(水平面に平行な軸線周りに微小角度回転可能)に下方から非接触支持している。重量キャンセル装置84,レベリング装置86、及び図示しない連結装置の具体的構成は、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0041】
〔検知機構〕
このような構成を有する露光装置1では、X粗動ステージ81をX軸方向に駆動するための固定子ユニット73と可動子ユニット94との間のY軸方向の距離の変化を検知可能にするために、以下に示す検知機構がX粗動ステージ81に設けられている。以下、図面を参照して、本発明の第1乃至第3の実施形態である検知機構の構成について説明する。なお、以下に示す実施形態は、X粗動ステージ81に検知機構を設けたものであるが、Y粗動ステージ82やマスクステージMST等のX粗動ステージ81以外の移動体装置に同様の検知機構を設けるようにしてもよい。
【0042】
〔第1の実施形態〕
始めに、図3乃至図5を参照して、本発明の第1の実施形態である検知機構の構成について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態である検知機構の構成を示す平面図である。図4は、本発明の第1の実施形態である検知機構の構成を示す側面図である。図5は、図4のA−A線断面図である。
【0043】
図3乃至図5に示すように、本発明の第1の実施形態である検知機構は、ベースフレーム7のY軸方向両側面に設けられた、第1固定部材101,一対のローラ支持部材102,第2固定部材103,及びセンサ支持部材104を備える。第1固定部材101は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。第1固定部材101のX軸方向位置は、複数の固定子ユニット73の+X側端部近傍に設定されている。
【0044】
第1固定部材101の−X側側面部には、線状部材105の一方の端部が固定されている。線状部材105は、固定子ユニット73と可動子ユニット94との間のY軸方向の距離以下の直径(例えば0.05〜0.5mm)を有する非磁性材料によって形成されている。非磁性材料としては、ナイロン素材やフロロカーボンの釣り糸、あるいは高強度のケプラー(登録商標)を例示することができる。
【0045】
一対のローラ支持部材102は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成され、複数の固定子ユニット73の−X側端部近傍であって異なるZ軸方向位置に設けられている。一対のローラ支持部材102は、Y軸方向を回転軸とする一対のローラ106を支持する。一対のローラ106の−X側外周面には、第1固定部材101側から延伸された線状部材105が巻き掛けられている。
【0046】
第2固定部材103は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。第2固定部材103のZ軸方向位置は、第1固定部材101のZ軸方向位置より下方の位置に設定されている。第2固定部材103のX軸方向位置は、X軸方向に配列された複数の固定子ユニット73の+X側端部付近に設定されている。
【0047】
第2固定部材103の−X側側面部には、X軸方向に沿って伸縮可能な本発明に係る弾性部材としてのバネ部材107の一方の端部が固定されている。バネ部材107の他方の端部には、線状部材105の他方の端部が固定されている。第1固定部材101,一対のローラ支持部材102(一対のローラ106),及び第2固定部材103(バネ部材107)のZ軸方向位置は、線状部材105の延伸方向がX軸方向に対し平行になり、且つ、線状部材105のZ軸方向位置が固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間に位置するように調整されている。
【0048】
センサ支持部材104は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。センサ支持部材104のX軸方向位置は、X軸方向に配列された複数の固定子ユニット73の+X側端部と第2固定部材103のX軸方向位置との間に設定されている。センサ支持部材104の上面には、X軸方向に沿って平行な一対の対向面108a,108bを有するU字形状の検知センサ108が固定されている。一対の対向面108a,108bにはそれぞれ、赤外発光ダイオード等の発光素子108cとフォトトランジスタ等の受光素子108d(図6参照)とが対向するように配設されている。
【0049】
発光素子108cは、主制御装置Sの制御に従って受光素子108dの方向に向かって光を照射する。受光素子108dは、発光素子108cが照射した光を検出した場合に所定の制御信号を主制御装置Sに出力する。発光素子108c,受光素子108d,及び主制御装置Sは、本発明に係る検知部として機能する。
【0050】
一対の対向面108a,108b間には線状部材105が張設されている。一対の対向面108a,108b間に張設されている線状部材105は、付属部材109によって被覆されている。付属部材109は、遮光性を有する部材によって形成されている。付属部材109のX軸方向の長さ及び直径は、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触していない通常状態においては発光素子108cが発光した光が受光素子108d側に到達しないように調整されている。
【0051】
このように本検知機構では、線状部材105の一方及び他方の端部をそれぞれ第1固定部材101及びバネ部材107に固定すると共に、線状部材105を一対のローラ106に巻き掛けることによって、線状部材105は、固定子ユニット73と可動子ユニット74との間であって、固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間の異なる2つのZ軸方向位置に張設されている。
【0052】
〔検知機構の動作〕
次に、図6を参照して、本発明の第1の実施形態である検知機構の動作について説明する。図6は、本発明の第1の実施形態である検知機構の動作を説明するための模式図である。
【0053】
〔通常状態検知〕
図6(a)に示すように、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触していない通常状態においては、発光素子108cと受光素子108dとの間に付属部材109が介在するために、発光素子108cが発光した光Lは、付属部材109によって遮光され、受光素子108d側に到達しない。従って、主制御装置Sは、受光素子108dから所定の制御信号が出力されていないことを確認することによって、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触していないと判断する。
【0054】
〔接触状態検知〕
固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触している状態において可動子ユニット94が−X側に移動した場合、線状部材105が−X側に引きずられることによって、図6(b)に示すように、バネ部材107が−X方向に伸び、付属部材109は矢印D1方向に移動する。これにより、付属部材109は発光素子108cと受光素子108dとの間に介在しなくなる。また、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触している状態において可動子ユニット94が+X側に移動した場合も同様に、線状部材105が撓むことによって、バネ部材107が+X方向に縮み、発光素子108cと受光素子108dとの間に介在しなくなる。このため、発光素子108cが発光した光Lは受光素子108d側に到達し、受光素子108dは所定の制御信号を主制御装置Sに出力する。従って、主制御装置Sは、受光素子108dから所定の制御信号が出力されたことを確認することによって、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触したと判断することができる。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態である検知機構は、固定子ユニット73と可動子ユニット94との間に張設された線状部材105を備え、主制御装置Sが、線状部材105のX軸方向の動きに基づいて固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の距離の変化を検知する。これにより、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を速やかに検知することが可能となり、可動子ユニット94の移動に伴い固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触部において粉塵が発生し、発生した粉塵によって露光装置1内部の清浄度が低下することを抑制できる。そして、この結果、本露光装置1によれば、基板上にレチクルのパターンを忠実に転写することができる。
【0056】
本発明の第1の実施形態である検知機構は、線状部材105が挿通された付属部材109を備えるので、主制御装置Sは、線状部材105の直径が小さい場合であっても線状部材105のX軸方向の動きを精度よく検知することができる。
【0057】
本発明の第1の実施形態である検知機構は、線状部材105の端部に接続された、X軸方向に沿って伸縮可能なバネ部材107を備える。このような構成によれば、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触によって線状部材105が切れる前にバネ部材107がX軸方向に沿って伸縮することによって線状部材105の動きが検出されるので、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を速やかに検知することができる。また、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触によって線状部材105が切れることを抑制できるので、装置の復旧作業を容易にすることができる。
【0058】
本発明の第1の実施形態である検知機構では、線状部材105が、Z軸方向の異なる複数位置に張設されているので、固定子ユニット73と可動子ユニット94とがX軸方向に沿って平行に接触していない状態であっても、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を確実に検知することができる。
【0059】
本発明の第1の実施形態である検知機構では、線状部材105は、非磁性材料によって形成されているので、線状部材105が固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の電磁相互作用に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0060】
なお、本実施形態では、検知センサ108がU字型になるようにセンサ支持部材104上に配設されているが、検知センサ108が逆U字型になるようにセンサ支持部材104上に配設してもよい。このような構成によれば、線状部材105が切れた際、検知センサ108内に付属部材109が留まることによって、発光素子108cが発光した光Lが受光素子108d側に到達しなくなることを抑制できる。
【0061】
〔変形例〕
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第1の実施形態である検知機構の幾つかの変形例について説明する。
【0062】
〔第1変形例〕
図7は、第1変形例の検知機構の構成を示す側面図である。図7に示すように、第1変形例の検知機構は、第1固定部材101,一対のローラ支持部材102,第2固定部材103,及びセンサ支持部材104を備える。なお、本検知機構の構成は、第1固定部材101及び一対のローラ支持部材102の構成が第1の実施形態の検知機構における構成と異なるだけであるので、以下では第1固定部材101及び一対のローラ支持部材102の構成についてのみ説明する。
【0063】
第1固定部材101は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。第1固定部材101のX軸方向位置は、X軸方向に配列された複数の固定子ユニット73の−X側端部付近に設定されている。第1固定部材101の+X側側面部には線状部材105の一方の端部が固定されている。第1固定部材101のZ軸方向位置は、第2固定部材103のZ軸方向位置より上方の位置に設定されている。
【0064】
一対のローラ支持部材102は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成され、X軸方向に配列された複数の固定子ユニット73の−X側端部及び+X側端部付近にそれぞれ設けられている。+X側(図7における右側)に設けられたローラ支持部材102のZ軸方向位置は、−X側(図7における左側)に設けられたローラ支持部材102のX軸方向位置より上方に設定されている。一対のローラ支持部材102は、Y軸方向を回転軸とするローラ106を支持する。+X側のローラ支持部材102によって支持されるローラ106の+X側外周面には線状部材105が巻き掛けられ、−X側のローラ支持部材102によって支持されるローラ106の−X側外周面には線状部材105が巻き掛けられている。
【0065】
このようにして、本検知機構では、線状部材105の一方及び他方の端部をそれぞれ第1固定部材101及びバネ部材107に固定すると共に、線状部材105を一対のローラ106に巻き掛けることによって、線状部材105は、固定子ユニット73と可動子ユニット74との間であって、固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間の異なる3つのZ軸方向位置に張設されている。このような構成によれば、固定子ユニット73と可動子ユニット94とがX軸方向に沿って平行に接触していない状態であっても、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を確実に検知することができる。
【0066】
〔第2変形例〕
図8は、第2変形例の検知機構の構成を示す側面図である。図8に示すように、第2変形例の検知機構は、第1固定部材101,第2固定部材103,及び複数のローラ110を備える。なお、本検知機構における第1固定部材101,第2固定部材103の構成は第1変形例の検知機構における構成と同じであるので、以下では複数のローラ110の構成についてのみ説明する。
【0067】
複数のローラ110は、ベースフレーム7のY軸方向側面部からY軸方向に突出する図示しないローラ支持部材によって支持され、固定子ユニット73のZ軸方向端部近傍にX軸方向に沿って千鳥状に配列されている。各ローラ110の外周面には、線状部材105が巻き掛けられている。このようにして、第2変形例の検知機構では、線状部材105は、固定子ユニット73の配列方向であるX軸方向に対して斜めになるように固定子ユニット73と可動子ユニット94との間に張設されている。このような構成によれば、固定子ユニット73と可動子ユニット94とがX軸方向に沿って平行に接触していない状態であっても、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を確実に検知することができる。
【0068】
〔第2の実施形態〕
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施形態である検知機構の構成について説明する。
【0069】
図9は、本発明の第2の実施形態である検知機構の構成を示す側面図である。図9に示すように、本発明の第2の実施形態である検知機構は、第1固定部材101,第2固定部材103,及びセンサ支持部材104を備える。第1固定部材101は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。第1固定部材101のZ軸方向位置は、固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間に設定されている。第1固定部材101のX軸方向位置は、X軸方向に配列された複数の固定子ユニット73の−X側端部付近に設定されている。第1固定部材101の+X側側面部には、線状部材105の一方の端部が固定されている。線状部材105は、第1の実施形態における線状部材105と同じ構成を有する。
【0070】
第2固定部材103は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。第2固定部材103のZ軸方向位置は、固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間であって、第1固定部材101のZ軸方向位置と同じ位置に設定されている。第2固定部材103のX軸方向位置は、X軸方向に配列された複数の固定子ユニット73の+X側端部付近に設定されている。第2固定部材103の−X側側面部には線状部材105の他方の端部が固定されている。
【0071】
センサ支持部材104は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。センサ支持部材104のX軸方向位置は、X軸方向に配列された複数の固定子ユニット73の+X側端部と第2固定部材103のX軸方向位置との間に設定されている。センサ支持部材104の上面には、X軸方向に沿って平行な一対の対向面108a,108b(図10参照)を有するU字形状の検知センサ108が固定されている。一対の対向面108a,108bにはそれぞれ、発光素子108cと受光素子108d(図10参照)が対向して配設されている。発光素子108c及び受光素子108dは、第1の実施形態における発光素子108c及び受光素子108dと同じ構成を有する。発光素子108c,受光素子108d,及び主制御装置Sは、本発明に係る検知部として機能する。
【0072】
一対の対向面108a,108b間には線状部材105が張設されている。一対の対向面108a,108b間に張設されている線状部材105は、付属部材109によって被覆されている。付属部材109は、遮光性を有する部材によって形成されている。付属部材109のX軸方向の長さ及び直径は、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触していない通常状態においては発光素子108cが発光した光が受光素子108d側に到達しないように調整されている。
【0073】
このように本実施形態の検知機構では、線状部材105の一方及び他方の端部をそれぞれ第1固定部材101及び第2固定部材103に固定することによって、線状部材105は、固定子ユニット73と可動子ユニット74との間であって、固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間の位置に張設されている。
【0074】
〔検知機構の動作〕
次に、図10を参照して、本発明の第2の実施形態である検知機構の動作について説明する。図10は、本発明の第2の実施形態である検知機構の動作を説明するための模式図である。
【0075】
〔通常状態検知〕
図10(a)に示すように、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触していない通常状態においては、発光素子108cと受光素子108dとの間に付属部材109が介在するために、発光素子108cが発光した光Lは、付属部材109によって遮光され、受光素子108d側に到達しない。従って、主制御装置Sは、受光素子108dから所定の制御信号が出力されていないことを確認することによって、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触していないと判断する。
【0076】
〔接触状態検知〕
固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触している状態において可動子ユニット94が移動した場合、線状部材105が切れることによって、図6(b)に示すように付属部材109は発光素子108cと受光素子108dとの間に介在しなくなる。このため、発光素子108cが発光した光Lは、受光素子108d側に到達する。従って、主制御装置Sは、受光素子108dから所定の制御信号が出力されていることを確認することによって、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触したと判断する。
【0077】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態である検知機構は、固定子ユニット73と可動子ユニット94との間に張設された線状部材105を備え、主制御装置Sが、線状部材105の切れたか否かに基づいて固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の距離の変化を検知する。これにより、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を速やかに検知することが可能となり、可動子ユニット94の移動に伴い固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触部において粉塵が発生し、発生した粉塵によって露光装置1内部の清浄度が低下することを抑制できる。そして、この結果、本露光装置1によれば、基板上にレチクルのパターンを忠実に転写することができる。
【0078】
本発明の第2の実施形態である検知機構は、線状部材105が挿通された付属部材109を備えるので、主制御装置Sは、線状部材105の直径が細い場合であっても線状部材105が切れたか否かを精度よく検知することができる。
【0079】
本発明の第1の実施形態である検知機構では、線状部材105が、Z軸方向の異なる複数位置に張設されているので、固定子ユニット73と可動子ユニット94とがX軸方向に沿って平行に接触していない状態であっても、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を確実に検知することができる。
【0080】
本発明の第1の実施形態である検知機構では、線状部材105は、非磁性材料によって形成されているので、線状部材105が固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の電磁相互作用に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0081】
なお、本実施形態では、検知センサ108がU字型になるようにセンサ支持部材104上に配設されているが、検知センサ108が逆U字型になるようにセンサ支持部材104上に配設してもよい。このような構成によれば、線状部材105が切れた際、検知センサ108内に付属部材109が留まることによって、発光素子108cが発光した光Lが受光素子108d側に到達しなくなることを抑制できる。
【0082】
〔変形例〕
次に、図11乃至図13を参照して、本発明の第2の実施形態である検知機構の幾つかの変形例について説明する。
【0083】
〔第3変形例〕
図11は、第3変形例の検知機構の構成を示す側面図である。図11に示すように、第3変形例の検知機構は、第1変形例の検知機構におけるバネ部材107を省略し、線状部材105の端部を第2固定部材103の−X側側面に直接固定した構成を有する。このような構成によれば、線状部材105は、固定子ユニット73と可動子ユニット74との間であって、固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間の異なる3つのZ軸方向位置に張設されているので、固定子ユニット73と可動子ユニット94とがX軸方向に沿って平行に接触していない状態であっても、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を確実に検知することができる。
【0084】
〔第4変形例〕
図12は、第4変形例の検知機構の構成を示す上面図である。図13は、第4変形例の検知機構の構成を示す平面図である。図12及び図13に示すように、第4変形例の検知機構は、ベースフレーム7のY軸方向両側面に、一対のローラ支持部材102a,一対のローラ支持部材102b,及びセンサ支持部材104を備える。
【0085】
一対のローラ支持部材102aは、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成され、ベースフレーム7のX軸方向端部付近に設けられている。−X側のローラ支持部材102a(図12における左側)のZ軸方向位置は、+X側のローラ支持部材102a(図12における右側)のZ軸方向位置より上方に設定されている。一対のローラ支持部材102aは、Z軸方向に回転軸を有するローラ106aを支持する。ローラ106aには、ベースフレーム7の一方のY軸方向側面から延伸された線状部材105を他方のY軸方向側面側に延伸するように線状部材105が巻き掛けられている。
【0086】
一対のローラ支持部材102bは、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成され、ベースフレーム7のX軸方向端部付近に設けられている。−X側のローラ支持部材102b(図12における左側)のZ軸方向位置は、+X側のローラ支持部材102b(図12における右側)のZ軸方向位置より下方に設定されている。一対のローラ支持部材102aは、Y軸方向に回転軸を有するローラ106bを支持する。−X側のローラ支持部材102bによって支持されるローラ106bの−X側外周面には線状部材105が巻き掛けられ、+X側のローラ支持部材102bによって支持されるローラ106bの+X側外周面には線状部材105が巻き掛けられている。
【0087】
一対のローラ支持部材102a(一対のローラ106a),一対のローラ支持部材102b(一対のローラ106b),及びセンサ支持部材104のZ軸方向位置は、線状部材105の延伸方向がX軸方向に対し平行になり、且つ、線状部材105のZ軸方向位置が固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間に位置するように調整されている。
【0088】
センサ支持部材104は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。センサ支持部材104のX軸方向位置は、X軸方向に配列された複数の固定子ユニット73の+X側端部と+X側のローラ106aとの間に設定されている。センサ支持部材104の上面には、検知センサ108が固定されている。検知センサ108は、第1の実施形態における検知センサ108と同じ構成を有する。
【0089】
このように本検知機構は、一本の線状部材105によってベースフレーム7のY軸方向両側面における固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を検知するように構成されている。このような構成によれば、ベースフレーム7の一方及び他方のY軸方向側面それぞれに線状部材105を張設する必要が無くなるので、検知機構の低コスト化を実現することができる。
【0090】
〔第3の実施形態〕
次に、図14及び図15を参照して、本発明の第3の実施形態である検知機構の構成について説明する。図14は、本発明の第3の実施形態である検知機構の構成を示す側面図である。図15は、図14に示すXスライダの構成を示す断面図である。
【0091】
本発明の第3の実施形態である検知機構は、Xスライダ9の固定子ユニット73との両対向面に設けられた、第1固定部材111,ローラ支持部材112,第2固定部材113を備える。第1固定部材111は、Xスライダ9の+X側側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。第1固定部材111の−X側側面部には、線状部材105の一方の端部が固定されている。線状部材105は、第1の実施形態における線状部材105と同じ構成を有する。
【0092】
ローラ支持部材112は、ベースフレーム7のY軸方向側面から突出する直方体状の部材によって構成されている。ローラ支持部材112は、固定子ユニット73と対向するY軸方向側面においてY軸方向に回転軸を有する一対のローラ106を支持する。一対のローラ106は、異なるZ軸方向位置に設けられ、その−X側外周面には第1固定部材111側から延伸された線状部材105が巻き掛けられている。
【0093】
第2固定部材113は、Xスライダ9の+X側側面から突出するセンサ支持部材113aと、センサ支持部材113a上に立設された立設部材113bとを有する。センサ支持部材113aの上面には検知センサ108が固定されている。検知センサ108は、第1の実施形態における検知センサ108と同じ構成を有する。立設部材113bの−X側側面部には、線状部材105の一方の端部が固定されている。
【0094】
第1固定部材111,ローラ支持部材112(一対のローラ106),第2固定部材113(立設部材113b)のZ軸方向位置は、線状部材105の延伸方向がX軸方向に対し平行になり、且つ、線状部材105のZ軸方向位置が固定子ユニット73を構成する永久磁石ユニット73bの最上方位置Zmaxと最下方位置Zminとの間に位置するように調整されている。
【0095】
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態である検知機構は、第1及び第2の実施形態である検知機構の構成とは異なり、線状部材の動きを検知する機構がXスライダ9側に設けられた構成を有している。なお、本検知機構の動作は第2の実施形態である検知機構の動作と同じであるので、その説明は省略する。
【0096】
〔デバイス製造工程〕
最後に、図16を参照して、本発明の一実施形態である露光装置1を用いてデバイスを製造する場合のデバイス製造工程の流れについて説明する。
【0097】
図16は、デバイス製造工程の一例を示すフローチャートである。図16に示すように、デバイスは、デバイスの機能、性能、パターンを設計するステップS11、設計結果に基づいてマスクを製作するステップS12、デバイスの基材である基板を製造してレジストを塗布するステップS13、露光装置1によってマスクのパターンを基板に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱及びエッチング工程等を含む基板処理ステップS14、ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程等の加工プロセスを含むデバイス組立ステップS15,及び検査ステップS16等を経て製造される。つまり、このデバイス製造工程は、露光装置1を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成された基板を処理することとを含む。そして、この露光装置1によれば、基板上にレチクルのパターンを忠実に転写することができるので、このデバイス製造工程によれば、デバイスを高精度に製造することができる。
【0098】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、上記実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本実施形態では、固定子ユニット73を永久磁石、可動子ユニット94を電磁石として構成したが、固定子ユニット73を電磁石、可動子ユニット94を永久磁石として構成してもよい。また、本実施形態では、発光素子108cが照射した光が受光素子108dに到達するか否かに基づいて線状部材105の動きを検知したが、発光素子108cが照射した光が付属部材109によって反射されるか否かに基づいて付属部材109の動きを検知するようにしてもよい。すなわち、上記実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、実施形態の組み合わせ、及び運用技術等は、全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1 露光装置
7 ベースフレーム
8 基板ステージ
9 Xスライダ
73 固定子ユニット
81 X粗動ステージ
82 Y粗動ステージ
94 可動子ユニット
101 第1固定部材
102 一対のローラ支持部材
103 第2固定部材
104 センサ支持部材
105 線状部材
106 ローラ
107 バネ部材
108 検知センサ
108c 発光素子
108d 受光素子
109 付属部材
MST マスクステージ
S 主制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って設けられた固定体部と、
前記第1の方向に沿って前記固体体部に対して相対移動可能に前記固定体部に対向して配置された移動体部と、
前記第1の方向に沿って前記固定体部に配列された複数の第1ユニット、および該複数の第1ユニットに対向するように前記移動体部に設けられた第2ユニットを有し、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に相互に作用させる電磁力によって前記移動体部を前記固定体部に対して前記第1の方向に沿って相対移動させるリニアモータと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に張設された線状部材と、
前記線状部材の動きを検出し、該線状部材の動きの検出結果に基づいて前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の変化を検知する検知部と、
を備えることを特徴とする移動体装置。
【請求項2】
前記第1ユニットは、前記第2ユニットに対向するように前記第1の方向に沿って配列された複数の第1の部材を有し、
前記第2ユニットは、前記複数の第1の部材に対向するように前記第1の方向に沿って配列された複数の第2の部材を有し、
前記第1の部材および前記第2の部材は、相互に前記電磁力を作用させることを特徴とする請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記線状部材に一体的に付設された付属部材を備え、前記検知部は、前記付属部材の動きを検出し、該付属部材の動きの検出結果に基づいて前記線状部材の動きを検出することを特徴とする請求項1または2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記付属部材は、遮光性を有する部材によって構成され、前記検知部は、前記付属部材を挟んで対向配置された、光を発光する発光部及び該発光部が発光した光を受光する受光部を備え、前記発光部が発光した光を前記受光部が受光したか否かに基づいて前記付属部材の動きを検出することを特徴とする請求項3に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記第1の方向に沿って伸縮可能に前記線状部材の端部に接続された弾性部材を備えることを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか1項に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記線状部材が、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの対向面に対して平行な面内方向であって前記第1の方向に直交する方向の複数位置に張設されていることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか1項に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記線状部材は、前記固定体部の一方の側面に配列された前記第1ユニットと該第1ユニットに対向する前記第2ユニットとの間と、前記固定体部の他方の側面に配列された前記第1ユニットと該第1ユニットに対向する前記第2ユニットとの間とに連続的に張設されていることを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか1項に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記線状部材は、非磁性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1〜7のうち、いずれか1項に記載の移動体装置。
【請求項9】
マスクを支持するマスクステージと、基板を支持する基板ステージとを有し、前記マスクに形成されたパターンを投影光学系を介して前記基板に転写する露光装置であって、前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方は請求項1〜8のうち、いずれか1項に記載の移動体装置を用いて構成されることを特徴とする露光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成するステップと、前記パターンが形成された基板を処理するステップと、を含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−55063(P2012−55063A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194798(P2010−194798)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】