説明

移動体装置、露光装置、及びデバイス製造方法

【課題】リニアモータの固定子ユニットと可動子ユニットとの間の距離の変化を検知可能な移動体装置、この移動体装置を備える露光装置、及びこの露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法を提供すること。
【解決手段】移動体装置は、第1の方向に沿って設けられた固定体部と、第1の方向に沿って固体体部に対し相対移動可能に固定体部に対向配置された移動体部と、第1の方向に沿って固定体部に配列された複数の第1ユニット、および複数の第1ユニットに対向するように移動体部に設けられた第2ユニットを有し、第1ユニットと第2ユニットとの間に相互に作用させる電磁力によって移動体部を相対移動させるリニアモータと、第2ユニットに対し第1ユニット側へ突出するように移動体部に設けられた接触子を有し、接触子の端部と第1ユニットとの接触状態に基づいて第1ユニットと第2ユニットとの間の距離の変化を検知する検知部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータによって駆動される移動体装置、この移動体装置を備える露光装置、及びこの露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の電子デバイス又はマイクロデバイス(以下、デバイスと総称)は、マスク又はレチクル(以下、マスクと総称)上に形成されたパターンをガラスプレート又はウエハ(以下、基板と総称)上に転写するフォトリソグラフィ工程によって製造される。フォトリソグラフィ工程において使用される露光装置は、例えば、マスクを支持して2次元移動するマスクステージと、基板を支持して2次元移動する基板ステージとを有し、マスクステージと基板ステージとを逐次移動しながら投影光学系を介してマスク上に形成されたパターンを基板上に転写するものである。
【0003】
このような露光装置では、マスクと基板との相対位置を高精度に制御して、マスク上に形成されたパターンを基板上に転写することが要求されるために、マスクステージ及び基板ステージ(以下、移動体装置と総称)の位置決め精度が重要な性能の一つになっている。
【0004】
従来の移動体装置として、Y軸方向へマスク又は基板を移動させる移動機構が、Y軸方向に直交するX軸方向へマスク又は基板を移動させる移動機構の上部に設けられた移動体装置が知られている。詳しくは、この移動体装置は、マスク又は基板を上面に保持するホルダ部と、ホルダ部をY軸方向に移動可能に下面から支持する第1のステージ部と、第1のステージ部をX軸方向に移動可能に下面から支持する第2のステージ部と、第1のステージ部をY軸方向に移動させる第1の移動機構と、第2のステージ部をX軸方向に移動させる第2の移動機構とを備える。
【0005】
このような移動体装置では、第2のステージ部をX軸方向に移動させるために必要な力は第1のステージ部をY軸方向に移動させるために必要な力より大きくなるために、第2の移動機構は第1の移動機構の駆動力よりも大きな駆動力を出力可能に構成する必要がある。このため、このような移動体装置では、第2の移動機構として、大きな推力を出力可能なコア付きリニアモータが採用されている。このコア付きリニアモータは、例えば、X軸方向に沿って極性が交互に異なるように配列された固定子としての複数の永久磁石と、永久磁石に対向配置された可動子としての電磁石とを備え、永久磁石と電磁石との間の隙間を1mm以下と極めて狭く設定することによって、X軸方向に大きな推力を出力可能に構成されている。なお、第2の移動機構としてリニアモータを備える移動体装置としては、特許文献1に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−254377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コア付きリニアモータでは、電磁石を構成する鉄心と永久磁石との間の磁気吸引作用によって、出力される推力の数倍もの大きさの磁気吸引力が推力方向に直交する方向に発生する。具体的には、例えば、大きさ4,000Nの推力を出力するコア付きリニアモータでは、10,000〜20,000N程度の大きさの磁気吸引力が推力方向に直交する方向に発生する。このため、従来の移動体装置では、磁気吸引力によって永久磁石と電磁石とが接触しないように、永久磁石及び電磁石はボルトによって強固に固定されている。
【0008】
しかしながら、移動体装置の移動距離が長い場合、移動方向に配置する永久磁石の数が増えるために、永久磁石を固定するために必要なボルト数が増える。このため、ボルトの締結不良によって永久磁石が強固に固定されていない状態が発生する可能性が高くなる。また、電磁石の移動に伴い永久磁石には磁気吸引力が作用している状態と作用してしない状態とが繰り返し発生する。この繰り返し応力によってボルトの締結不良が発生し、電磁石が強固に固定されていない状態が発生する可能性がある。
【0009】
永久磁石や電磁石が強固に固定されていない場合、磁気吸引力によって永久磁石と電磁石とが接触し、電磁石の移動に伴い永久磁石と電磁石との接触部において粉塵が発生する恐れがある。発生した粉塵は、露光装置内部の清浄度(クリーン度)を低下させ、露光装置の露光精度に影響を及ぼす可能性がある。このため、永久磁石と電磁石との間の距離の変化を検知可能な移動体装置の提供が期待されている。
【0010】
本発明の態様は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、リニアモータの固定子ユニットと可動子ユニットとの間の距離の変化を検知可能な移動体装置、この移動体装置を備える露光装置、及びこの露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る移動体装置は、第1の方向に沿って設けられた固定体部と、前記第1の方向に沿って前記固体体部に対して相対移動可能に前記固定体部に対向して配置された移動体部と、前記第1の方向に沿って前記固定体部に配列された複数の第1ユニット、および該複数の第1ユニットに対向するように前記移動体部に設けられた第2ユニットを有し、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に相互に作用させる電磁力によって前記移動体部を前記固定体部に対して前記第1の方向に沿って相対移動させるリニアモータと、前記第2ユニットに対して前記第1ユニット側へ突出するように前記移動体部に設けられた接触子を有し、該接触子の端部と前記第1ユニットとの接触状態を検出し、該接触状態の検出結果に基づいて、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の変化を検知する検知部とを備える。
【0012】
本発明の第2の態様に係る露光装置は、マスクを支持するマスクステージと、基板を支持する基板ステージとを有し、前記マスクに形成されたパターンを投影光学系を介して前記基板に転写する露光装置であって、前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方は本発明の第1の態様に係る移動体装置を用いて構成される。
【0013】
本発明の第3の態様に係るデバイス製造方法は、本発明の第2の態様に係る露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成するステップと、前記パターンが形成された基板を処理するステップとを含む。
【0014】
本発明の第4の態様に係る移動体装置は、第1の方向に沿って設けられた固定体部と、前記第1の方向に沿って前記固体体部に対して相対移動可能に前記固定体部に対向して配置された移動体部と、前記第1の方向に沿って前記固定体部に配列された複数の第1ユニット、および該複数の第1ユニットに対向するように前記移動体部に設けられた第2ユニットを有し、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に相互に作用させる電磁力によって前記移動体部を前記固定体部に対して前記第1の方向に沿って相対移動させるリニアモータと、互いに隣接する2つの前記第1ユニットの外周部に配設された一対の第1の導電性部材と、前記一対の第1の導電性部材の一方の端部間を電気的に接続する配線部材と、前記一対の第1の導電性部材の他方の端部に設けられた、前記固定体部方向に向けて突出する端部を有する一対の導通部材と、前記固定体部に設けられた、前記一対の導通部材の端部が接触する第2の導電性部材と、前記一対の第1の導電性部材、前記配線部材、前記一対の導通部材、及び前記第2の導電性部材によって形成される電流経路に流れる電流を検出し、該電流の検出結果に基づいて、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の変化を検知する検知部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、リニアモータの固定子ユニットと可動子ユニットとの間の距離の変化を検知することができる移動体装置、この移動体装置を備える露光装置、及びこの露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である露光装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す固定子ユニットの構成を説明するための部分拡大図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態である検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図4は、固定子ユニットと可動子ユニットの位置関係を説明するための模式図である。
【図5】図5は、接触子と固定子ユニットとの接触範囲を示す図である。
【図6】図6は、接触子と固定子ユニットとの接触範囲を示す図である。
【図7】図7は、接触子と固定子ユニットとの接触範囲を示す図である。
【図8】図8は、接触子と固定子ユニットとの接触範囲を示す図である。
【図9】図9は、接触子と固定子ユニットとの接触範囲を示す図である。
【図10】図10は、固定子ユニット側に設けられた検知機構の構成を示す平面図である。
【図11】図11は、図10に示す検知機構の側面図である。
【図12】図12は、図10に示す検知機構の動作を説明するための部分拡大図である。
【図13】図13は、図10に示す検知機構の動作を説明するための部分拡大図である。
【図14】図14は、デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である露光装置の構成について説明する。なお、図面は模式的なものを含み、図面相互間において互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
〔露光装置の構成〕
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の一実施形態である露光装置の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である露光装置の概略構成を示す模式図である。図2は、図1に示す固定子ユニットの構成を説明するための部分拡大図である。図3は、図1に示す可動子ユニットの構成を説明するための模式図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態である露光装置1は、液晶表示装置等に用いられる矩形形状のガラスプレートP(以下、基板Pと略記)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。この露光装置1は、照明系IOP,マスクMを保持するマスクステージMST,投影光学系PL,マスクステージMST及び投影光学系PLが搭載されたボディ2,基板Pを保持する基板ステージ装置PST,及びこれらの動作を制御する主制御装置Sを備える。
【0020】
以下、本明細書中では、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対しそれぞれ相対走査される方向をX軸方向として、水平面内でX軸方向に直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向と定義する。また、X軸方向,Y軸方向,及びZ軸方向周りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx方向,θy方向,θz方向と表現する。
【0021】
照明系IOPは、米国特許第5,729,331号明細書に開示されている照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、それぞれ図示しない反射鏡,ダイクロイックミラー,シャッター,波長選択フィルタ,各種レンズ等を介して、図示しない水銀ランプ等の光源から射出された光を露光用照明光(以下、照明光と略記)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、i線(波長365nm),g線(波長436nm),h線(波長405nm)等の光やi線,g線,h線の合成光を例示することができる。照明光ILの波長は、図示しない波長選択フィルタによって要求される解像度に応じて適宜切り替えることができる。
【0022】
マスクステージMSTには、回路パターンがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが真空吸着によって固定されている。マスクステージMSTは、ボディ2の一部を構成する鏡筒定盤23の上面に固定されたマスクステージガイド24上に図示しないエアベアリングを介して非接触状態で搭載されている。マスクステージMSTは、コアレスリニアモータを含む図示しないマスクステージ駆動系によって、マスクステージガイド24上で、X軸方向に所定のストロークで駆動されると共に、Y軸方向及びθz方向にそれぞれ適宜微小駆動される。θz方向の回転情報を含むマスクステージMSTのXY平面内の位置情報は、マスクステージMSTが有する図示しない反射面に測長ビームを照射するレーザ干渉計3を含むマスク干渉計システムによって計測される。
【0023】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの下方において、ボディ2の一部を構成する鏡筒定盤23によって支持されている。投影光学系PLは、米国特許第5,729,331号明細書に開示された投影光学系と同様に構成されている。すなわち、投影光学系PLは、レンズモジュール等を含む光学系を複数有し、複数の光学系は、Y軸方向にそって千鳥状に配列されている。複数の光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられる。
【0024】
照明系IOPは、複数の光学系に対応した複数の照明光ILをそれぞれマスクMに照射するように構成されている。このため、マスクM上には、千鳥状に配列された複数の照明光ILの照明領域が形成されると共に、投影光学系PLの下方に配置された基板P上には、複数の光学系それぞれに対応して、千鳥状に配列された複数の照明光ILの照明領域が形成される。この露光装置1では、基板P上に形成される複数の照明領域が合成されることによって、千鳥状に配置された複数の光学系からなる投影光学系PLが、Y軸方向を長手方向とする単一の長方形状(帯状)のイメージフィールドを有する投影光学系と同等に機能する。
【0025】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILによって、投影光学系PLを介して照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの像面側に配置される、表面にレジストが塗布された基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照明領域に形成される。そして、マスクステージMSTと基板ステージ装置PSTとの同期駆動によって、照明領域に対してマスクMをX軸方向に相対移動させると共に、露光領域に対して基板PをX軸方向に相対移動させることによって、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMの回路パターンが転写される。すなわち、この露光装置1では、照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMの回路パターンが生成され、照明光ILによる基板P上のレジスト層の露光によって基板P上にその回路パターンが形成される。
【0026】
ボディ2は、基板ステージ架台21,一対のサイドコラム22,及び鏡筒定盤23を備える。基板ステージ架台21は、Y軸方向に延びる部材によって構成され、X軸方向に所定の間隔で2つ設けられている(図1では、2つの基板ステージ架台21は紙面垂直方向に重なっている)。2つの基板ステージ架台21それぞれは、Y軸方向の両端部が床面4上に設置された空気バネを含む防振装置5によって下方から支持され、床面4に対して振動的に分離されている。
【0027】
一対のサイドコラム22は、X軸方向に延びる部材によって構成され、2つの基板ステージ架台21の+Y側(図1における左方向)の端部上、及び−Y側(図1における右方向)の端部上にそれぞれ架け渡された状態で搭載されている。鏡筒定盤23は、水平面に平行な平板状の部材によって構成され、投影光学系PLを支持している。鏡筒定盤23の上面にはマスクステージガイド24が固定され、マスクステージガイド24の上面には図示しないエアベアリングを介して非接触状態でマスクステージMSTが搭載されている。鏡筒定盤23は、一対のサイドコラム22によってY軸方向の両端部が下方から支持されている。従って、ボディ2及びボディ2に支持された投影光学系PLは、床面4に対して振動的に分離されている。
【0028】
基板ステージ装置PSTは、定盤6,本発明に係る固定体部としての一対のベースフレーム7,及び基板ステージ8を備える。定盤6は、例えば石材によって形成された平面視でX軸方向を長手方向とする矩形形状の板状部材によって構成され、その上面は平面度が非常に高く仕上げられている。定盤6は、2つの基板ステージ架台21上に架け渡された状態で搭載されている。
【0029】
一対のベースフレーム7は、一方が定盤6の+Y側に、他方が定盤6の−Y側に配置されている。一対のベースフレーム7は、X軸方向に延びる部材であり、基板ステージ架台21に非接触状態(基板ステージ架台21を跨いだ状態)で床面4上に設置されている。一対のベースフレーム7の床面4との設置面には、Z軸方向に進退可能な高さ調整ネジ71が設けられている。高さ調整ネジ71をZ軸方向に進退させることによって一対のベースフレーム7のZ軸方向位置を調整することができる。一対のベースフレーム7の+Y側及び−Y側の側面及び上端面には、それぞれX軸方向に平行に延びるXリニアガイド部材72が固定されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、一対のベースフレーム7の+Y側及び−Y側の側面には、X軸方向に所定間隔で配列された複数の固定子ユニット73が固定されている。各固定子ユニット73は、支持部材73aと、支持部材73aの表面側に接合された本発明に係る第1の部材としての複数の永久磁石73bとを備える。支持部材73aの裏面側は、取付ボルト73cによって一対のベースフレーム7の側面に固定されている。一対のベースフレーム7の長手方向の両端部近傍には、それぞれショックアブソーバを含む図示しないストッパ装置が固定されている。ストッパ装置は基板ステージ8のX軸方向に関する移動可能範囲を機械的に規定する。
【0031】
図1に戻る。基板ステージ8は、X粗動ステージ81,X粗動ステージ81上に搭載され、X粗動ステージ81と共にいわゆるガントリー式のXY2軸ステージ装置を構成するY粗動ステージ82、Y粗動ステージ82の上方に配置された微動ステージ83,及び定盤6上で微動ステージ83を下方から支持する重量キャンセル装置84を備える。X粗動ステージ81は、Y軸方向を長手方向とする平面視矩形形状の枠状部材によって構成され、その中央部にY軸方向を長手方向とする長孔状の開口部81aが形成されている。X粗動ステージ81の下面には、本発明に係る移動体部としての一対のXスライダ9が一対のベースフレーム7に対応する間隔で取り付けられている。
【0032】
一対のXスライダ9は、X軸方向から見て断面逆U字状の部材によって構成され、その一対の対向面間にベースフレーム7が挿入されている。Xスライダ9の一対の対向面及び天井面には、Xリニアガイド部材72にスライド可能に係合するスライダ93が固定されている。Xスライダ9の一対の対向面それぞれには、固定子ユニット73に対向する可動子ユニット94が固定されている。可動子ユニット94は、鉄芯にコイルを巻回することによって形成された本発明に係る第2の部材としての電磁石を含む。固定子ユニット73と可動子ユニット94とは、X粗動ステージ81をX軸方向に駆動するためのローレンツ電磁力駆動方式のXリニアモータ(コア付きリニアモータ)を構成する。Xリニアモータは、X粗動ステージの位置情報を計測する計測系(エンコーダヘッド95aとエンコーダスケール95b)の出力に基づいて主制御装置Sによって制御される。
【0033】
図2に示すように、可動子ユニット94は、矩形形状の部材によって構成され、そのX軸方向両側面の異なるZ軸方向位置にはそれぞれ、接触子94a,94b及び接触子94c,94dが配設されている。すなわち、接触子は、可動子ユニット94の移動方向であるX軸方向に平行な第1及び第2の方向にそれぞれ複数配設(接触子94a,94c及び接触子94b,94d)されている。図3に示すように、各接触子は永久磁石73bの対向面に向けて突出しており、各接触子の可動子ユニット94の対向面からの突出長さdsは永久磁石73bと可動子ユニット94との間の距離dm以下の長さに調整されている。すなわち、通常状態では、各接触子の端部と永久磁石73bとは非接触状態となっている。各接触子は、端部が永久磁石73bと接触した際にオン又はオフされる接点素子によって構成されている。各接触子は、主制御装置Sに接続され、端部が永久磁石73bと接触した際にオン信号又はオフ信号(以下、制御信号と総称)を主制御装置Sに出力する。
【0034】
図1に戻る。X粗動ステージ81の上面には、Y軸方向に延びる複数のYリニアガイド部材81b(図1では、複数のYリニアガイド部材81bは紙面垂直方向に重なっている)、及びY軸方向に所定間隔で配列された複数の永久磁石からなる図示しない固定子ユニットが固定されている。X粗動ステージ81の上面であって、Yリニアガイド部材81bの長手方向近傍には、それぞれショックアブソーバを含むストッパ装置81cが固定されている。
【0035】
Y粗動ステージ82は、平面視略正方形状の枠状部材によって構成され、その中央部に平面視略正方形状の開口部82aが形成されている。Y粗動ステージ82の下面の四隅近傍には、Yリニアガイド部材81bにスライド可能に係合するスライダ82bが固定されている。Y粗動ステージ81の下面には、X粗動ステージ81の上面に固定された図示しない固定子ユニットに対向する電磁石を含む図示しない可動子ユニットが固定されている。図示しない固定子ユニットと図示しない可動子ユニットとは、Y粗動ステージ82をX粗動ステージ81上でY軸方向に駆動するためのローレンツ電磁力駆動方式のYリニアモータ(コア付きリニアモータ)を構成する。Yリニアモータは、Y粗動ステージ82の位置情報を計測する図示しない計測系の出力に基づいて、主制御装置Sによって制御される。Y粗動ステージ82のX軸方向に関する移動範囲はストッパ装置81cによって機械的に固定される。
【0036】
微動ステージ83は、平面視略正方形の高さの低い直方体状の部材からなるステージ本体83a、及びステージ本体83aの上面に固定された基板ホルダ83bを含む。微動ステージ83は、複数のボイスコイルモータを含む微動ステージ駆動系83cによって、Y粗動ステージ82に対して6自由度方向(X軸方向,Y軸方向,Z軸方向,θx方向,θy方向,θz方向)に微小駆動される。微動ステージ83は、微動ステージ駆動系を介してY粗動ステージ82に同期駆動されることによって、Y粗動ステージ82と一体的にX軸方向及び/又はY軸方向に所定のストロークで移動される。基板ホルダ83bは、図示しない真空吸着装置を有し、その上面に基板Pを吸着保持する。
【0037】
ステージ本体83aの−Y側の側面には、ミラーベース83dを介してY軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(バーミラー)83eが固定されている。ステージ本体83aの−X側の側面には、図示しないミラーベースを介してX軸方向に直交する反射面を有する図示しないX移動鏡が固定されている。ステージ本体83aのXY平面内の位置情報は、Y移動鏡83e及びX移動鏡それぞれに測長ビームを照射し、その反射光を受光するレーザ干渉計を含む図示しない基板干渉計システムによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。図示しない基板干渉計システムは、Y移動鏡83eに測長ビームを照射するYレーザ干渉計85、及び図示しないX移動鏡に測長ビームを照射する図示しないXレーザ干渉計を含む。図示しない基板干渉計システムの構成については、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0038】
重量キャンセル装置84は、Z軸方向に延びる一本の柱状部材によって構成され、レベリング装置86を介して微動ステージ83を下方から支持する。重量キャンセル装置84は、X粗動ステージ81の開口部81a内、及びY粗動ステージ82の開口部82a内に挿入されている。重量キャンセル装置84は、その下端に取り付けられた複数の気体静圧軸受、例えば3つのエアベアリング84aによって、定盤6上に所定のクリアランスを介して非接触状態で支持されている。重量キャンセル装置84は、その内部に設けられた図示しない空気バネ等が発生する上向きの力でその支持対象物、具体的には、微動ステージ83及び基板P、レベリング装置86等の重量(重力加速度による下向きの力)を打ち消す。
【0039】
重量キャンセル装置84は、板バネ又はバネ性を有さない薄い鋼板を含む図示しない複数の連結装置によってY粗動ステージ82に機械的に接続されている。これにより、重量キャンセル装置84は、Y粗動ステージ82と一体的にX軸及び/又はY軸方向に移動する。重量キャンセル装置84は、その上端に取り付けられた図示しないエアベアリングから噴出される気体の静圧によって、レベリング装置86を下方から所定のクリアランスを介して非接触支持している。
【0040】
従って、微動ステージ83と重量キャンセル装置84とは、X軸方向及びY軸方向に関して振動的に分離されている。レベリング装置86は、複数の気体静圧軸受を含み、微動ステージ83を水平面に対してチルト可能(水平面に平行な軸線周りに微小角度回転可能)に下方から非接触支持している。重量キャンセル装置84,レベリング装置86、及び図示しない連結装置の具体的構成は、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0041】
このような構成を有する露光装置1では、主制御装置Sが以下に示す検知処理を実行することによって、X粗動ステージ81をX軸方向に駆動するための固定子ユニット73と可動子ユニット94との間のY軸方向の距離の変化を検知する。以下、図4に示すフローチャートを参照して、この検知処理を実行する際の主制御装置Sの動作について説明する。なお、以下に示す検知処理は、X粗動ステージ81を駆動するコア付きリニアモータに対するものであるが、Y粗動ステージ82やマスクステージMST等のX粗動ステージ81以外の移動体装置を駆動するリニアモータに対しても、可動子ユニット側に接触子94a〜94dを配設することによって同様の検知処理を行うことができる。主制御装置Sは、本発明に係る検知部、出力部、及び制御部として機能する。
【0042】
〔検知処理〕
図4は、本発明の一実施形態である検知処理の流れを示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、露光装置1の電源がオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、検知処理はステップS1の処理に進む。なお、この検知処理は、露光装置1の電源がオン状態である間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0043】
ステップS1の処理では、主制御装置Sが、接触子94a〜94dのうちのいずれかから制御信号が入力されたか否かを判別することによって、接触子94a〜94dのうちのいずれかの端部が永久磁石73bと接触しているか否かを判別する。判別の結果、接触子94a〜94dのうちのいずれかから制御信号が入力されている場合、主制御装置Sは、制御信号を入力した接触子の端部と永久磁石73bとが接触していると判断し、検知処理をステップS2の処理に進める。
【0044】
ステップS2の処理では、主制御装置Sが、接触子から制御信号が入力された回数、接触子からの制御信号の読み込み周期、及びX粗動ステージ81の移動速度から接触子が永久磁石73bに接触している接触範囲Rの長さを算出する。なお、接触範囲Rの長さは、接触子から制御信号が入力されている時のX粗動ステージ81の位置座標やX粗動ステージ81の速度から算出するようにしてもよい。そして、主制御装置Sは、可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが所定の警告範囲R1の長さL1以上であるか否か、若しくは、可動子ユニット94の同じZ軸方向側面に配設されている接触子94a,94c又は接触子94b,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが固定子ユニット73の全長であるか否かを判別する。
【0045】
判別の結果、可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが所定の警告範囲R1の長さL1以上である場合、主制御装置Sは検知処理をステップS4の処理に進める。一方、図6(a)に示すように可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが所定の警告範囲R1の長さL1未満、若しくは、図6(b)に示すように可動子ユニット94の同じZ軸方向側面に配設されている接触子94a,94c又は接触子94b,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが固定子ユニット73の全長である場合、主制御装置Sは検知処理をステップS3の処理に進める。
【0046】
ステップS3の処理では、主制御装置Sが、固定子ユニット73の+Z側又は−Z側の取付ボルト73cの締結不良によって固定子ユニット73のZ軸方向端部と可動子ユニット94との間の距離が減少し、図5(a)に示すように永久磁石73bのZ軸方向端部が接触子に接触している状態、又は、固定子ユニット73の+X側側面近傍又は−X側側面近傍の取付ボルト73cの締結不良によって固定子ユニット73のX軸方向端部と可動子ユニット94との間の距離が減少し、図5(b)に示すように永久磁石73bのX軸方向端部が接触子に接触している状態にあると判断する。そして、主制御装置Sは、固定子ユニット73が緩み始めている旨の第1の警告情報を出力する。これにより、ステップS3の処理は完了し、一連の検知処理は終了する。
【0047】
ステップS4の処理では、主制御装置Sが、可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが所定の警告範囲R2の長さL2(>L1)以上であるか否かを判別する。判別の結果、可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが所定の警告範囲R2の長さL2以上である場合、主制御装置Sは検知処理をステップS6の処理に進める。一方、図7に示すように可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが所定の警告範囲R2の長さL2(>L1)未満である場合には、主制御装置Sは検知処理をステップS5の処理に進める。
【0048】
ステップS5の処理では、主制御装置Sが、固定子ユニット73の+X側側面近傍又は−X側側面近傍の取付ボルト73cの締結不良によって固定子ユニット73のX軸方向端部と可動子ユニット94との間の距離が減少し、図5(b)に示すように永久磁石73bのX軸方向端部が接触子に接触している状態にあると判断する。そして、主制御装置Sは、固定子ユニット73の緩み量が大きくなり、固定子ユニット73と可動子ユニット74とが接触する可能性がある旨の第2の警告情報を出力する。これにより、ステップS5の処理は完了し、一連の検知処理は終了する。
【0049】
ステップS6の処理では、主制御装置Sが、可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが固定子ユニット73のX軸方向の全長となっているか否かを判別する。判別の結果、図8に示すように可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが固定子ユニット73のX軸方向の全長となっていない場合、主制御装置Sは、検知処理をステップS8の処理に進める。一方、図9に示すように可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが固定子ユニット73のX軸方向の全長となっている場合には、主制御装置Sは検知処理をステップS7の処理に進める。
【0050】
ステップS7の処理では、主制御装置Sが、固定子ユニット73の+X側側面近傍又は−X側側面近傍の取付ボルト73cの締結不良によって固定子ユニット73のX軸方向端部と可動子ユニット94との間の距離が減少し、図5(b)に示すように永久磁石73bのX軸方向端部が接触子に接触している状態にあると判断する。そして、主制御装置Sは、固定子ユニット73と可動子ユニット74とが接触し始めていると判断し、X粗動ステージ81の駆動を即時停止し、確認作業をすることを促す第3の警告情報を出力する。これにより、ステップS7の処理は完了し、一連の検知処理は終了する。
【0051】
ステップS8の処理では、主制御装置Sが、固定子ユニット73の+Z側及び−Z側両方の取付ボルト73cの締結不良によって、図5(c)又は図5(d)に示すように固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触することによって粉塵が発生している状態にあると判断する。そして、主制御装置Sは、X粗動ステージ81の駆動を即時停止し、復旧作業をすることを促す第4の警告情報を出力する。なお、可動子ユニット94の同じX軸方向側面に配設されている接触子94a,94b又は接触子94c,94dが永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さが固定子ユニット73の全長より長い場合、換言すれば、接触範囲Rが隣接する固定子ユニット73間を跨っている場合には、主制御装置Sは、可動子ユニット94側の図示しない取付ボルトの締結不良によって固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の距離が減少していると判断し、その旨の情報を出力するようにしてもよい。これにより、ステップS8の処理は完了し、一連の検知処理は終了する。
【0052】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である検知処理によれば、主制御装置Sが、接触子94a〜94dの端部が永久磁石73bと接触している長さに基づいて、固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の距離の変化を検知する。これにより、固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を速やかに検知することが可能となり、可動子ユニット94の移動に伴い固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触部において粉塵が発生し、発生した粉塵によって露光装置1内部の清浄度が低下することを抑制できる。そして、この結果、本露光装置1によれば、基板上にレチクルのパターンを忠実に転写することができる。
【0053】
本発明の一実施形態である検知処理によれば、主制御装置Sが、接触子94a〜94dの端部が永久磁石73bと接触している接触範囲Rの長さに基づいて、固定子ユニット73と可動子ユニット94とが接触している旨の警告情報を出力するので、オペレータは、出力された警告情報に基づいて固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触を認識し、適切な作業を行うことができる。
【0054】
本発明の一実施形態である検知処理によれば、主制御装置Sが、接触子94a〜94dの端部が永久磁石73bと接触している長さに基づいて、X粗動ステージ81の駆動を即時停止するので、可動子ユニット94の移動に伴い固定子ユニット73と可動子ユニット94との接触部において粉塵が発生し、発生した粉塵によって露光装置1内部の清浄度が低下することを抑制できる。
【0055】
なお、主制御装置Sは、固定子ユニット73と接触している接触子94a〜94dの配設位置(X粗動ステージ81の中心位置座標からの接触子94a〜94dの位置座標のオフセット量)とX粗動ステージ81の中心位置座標とに基づいて、固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の距離が変化している位置を判定するようにしてもよい。
【0056】
〔変形例〕
上記実施形態は、固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の距離の変化を検知する検知機構を可動子ユニット94側に設けたものであるが、固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の距離の変化を検知する検知機構を固定子ユニット73側に設けてもよい。以下、図10乃至図14を参照して、固定子ユニット73側に設けられた検知機構の構成について説明する。
【0057】
図10は、固定子ユニット側に設けられた検知機構の構成を示す平面図である。図11は、図10に示す検知機構の側面図である。図12は、図10に示す検知機構の動作を説明するための部分拡大図である。図13は、図10に示す検知機構の動作を説明するための部分拡大図である。
【0058】
図10及び図11に示すように、本検知機構は、ベースフレーム7のY軸方向両側面に設けられた、第1の導電ブロック101,取付ボルト102,導線103,第2の導電ブロック104,及び導通部材105を備える。第1の導電ブロック101は、導電性部材によって形成され、各固定子ユニット73の+Z側及び−Z側の周縁部であって、隣接する固定子ユニット73との境界線近傍の位置に配設されている。第1の導電ブロック101の一方の端部間には取付ボルト102によって導線103が接続され、第1の導電ブロック101の一方の端部間は電気的に接続されている。
【0059】
第2の導電ブロック104は、導電性部材によって形成され、隣接する固定子ユニット73の境界線近傍のベースフレーム7側面に配設されている。導通部材105は、導電性部材によって形成されている。導通部材105は、第1の導電ブロック101の他方の端部に形成されたY軸方向に延びるネジ孔に螺合され、その端部は第2導電ブロック104表面に接触している。このように、本検知機構は、固定子ユニット73の境界線近傍に設けられた一対の第1の導電ブロック101,第2の導電ブロック104,及び一対の導通部材105を一構成単位として、各構成単位を導線103によって直列に接続することによって電流経路が形成された構成となっている。
【0060】
このような構成を有する検知機構では、固定子ユニット73の取付ボルト73cに締結不良が発生していない場合、図12に示すように、導通部材105の端部が第2の導電ブロック104の表面に接触しているために、第1の導電ブロック101と第2の導電ブロック104とは導通部材105を介して電気的に接続されている。従って、導線103に通電した場合、電流経路に電流が流れる。一方、固定子ユニット73の取付ボルト73cに締結不良が発生した場合には、図13に示すように、導通部材105が第1の導電ブロック101と共に図示しない可動子ユニット94側に動くことによって、固定子ユニット73とベースフレーム7との間に隙間Δdが形成される。このため、導通部材105の端部が第2の導電ブロック104の表面に接触しなくなり、導線103に通電したとしても電流経路に電流は流れなくなる。従って、主制御装置Sは、導線103に通電した際に電流が流れるか否かに基づいて、固定子ユニット73と可動子ユニット94との間の距離の変化を検知することができる。
【0061】
〔デバイス製造工程〕
最後に、図14を参照して、本発明の一実施形態である露光装置1を用いてデバイスを製造する場合のデバイス製造工程の流れについて説明する。
【0062】
図14は、デバイス製造工程の一例を示すフローチャートである。図14に示すように、デバイスは、デバイスの機能、性能、パターンを設計するステップS11、設計結果に基づいてマスクを製作するステップS12、デバイスの基材である基板を製造してレジストを塗布するステップS13、露光装置1によってマスクのパターンを基板に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱及びエッチング工程等を含む基板処理ステップS14、ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程等の加工プロセスを含むデバイス組立ステップS15,及び検査ステップS16等を経て製造される。つまり、このデバイス製造工程は、露光装置1を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成された基板を処理することとを含む。そして、この露光装置1によれば、基板上にレチクルのパターンを忠実に転写することができるので、このデバイス製造工程によれば、デバイスを高精度に製造することができる。
【0063】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、上記実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、実施形態の組み合わせ、及び運用技術等は、全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 露光装置
7 ベースフレーム
8 基板ステージ
9 Xスライダ
73 固定子ユニット
73a 支持部材
73b 永久磁石
73c 取付ボルト
81 X粗動ステージ
82 Y粗動ステージ
94 可動子ユニット
94a〜94d 接触子
101 第1の導電性ブロック
102 取付ボルト
103 導線
104 第2の導電ブロック
105 導通部材
MST マスクステージ
S 主制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って設けられた固定体部と、
前記第1の方向に沿って前記固体体部に対して相対移動可能に前記固定体部に対向して配置された移動体部と、
前記第1の方向に沿って前記固定体部に配列された複数の第1ユニット、および該複数の第1ユニットに対向するように前記移動体部に設けられた第2ユニットを有し、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に相互に作用させる電磁力によって前記移動体部を前記固定体部に対して前記第1の方向に沿って相対移動させるリニアモータと、
前記第2ユニットに対して前記第1ユニット側へ突出するように前記移動体部に設けられた接触子を有し、該接触子の端部と前記第1ユニットとの接触状態を検出し、該接触状態の検出結果に基づいて、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の変化を検知する検知部と、
を備えることを特徴とする移動体装置。
【請求項2】
前記第1ユニットは、前記第2ユニットに対向するように前記第1の方向に沿って配列された複数の第1の部材を有し、
前記第2ユニットは、前記複数の第1の部材に対向するように前記第1の方向に沿って配列された複数の第2の部材を有し、
前記第1の部材および前記第2の部材は、相互に前記電磁力を作用させることを特徴とする請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記第1の方向において前記接触子の端部が前記第1ユニットと接触している長さに基づいて、該第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離が変化している範囲を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記第1の方向において前記接触子の端部が前記第1ユニットと接触している長さに基づいて、前記第1ユニットと前記第2ユニットが接触している旨の警告情報を出力する出力部を備えることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか1項に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記第1の方向において前記接触子の端部が前記第1ユニットと接触している長さに基づいて、前記リニアモータの駆動を停止する制御部を備えることを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか1項に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記接触子は、前記第2ユニットの移動方向に平行な第1及び第2の方向にそれぞれ複数配設されていることを特徴とする特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか1項に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記第1ユニットと接触している接触子の配設位置に基づいて、該第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離が変化している位置を判定することを特徴とする請求項6に記載の移動体装置。
【請求項8】
マスクを支持するマスクステージと、基板を支持する基板ステージとを有し、前記マスクに形成されたパターンを投影光学系を介して前記基板に転写する露光装置であって、前記マスクステージと前記基板ステージとの少なくとも一方は請求項1〜7のうち、いずれか1項に記載の移動体装置を用いて構成されることを特徴とする露光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成するステップと、前記パターンが形成された基板を処理するステップと、を含むことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項10】
第1の方向に沿って設けられた固定体部と、
前記第1の方向に沿って前記固体体部に対して相対移動可能に前記固定体部に対向して配置された移動体部と、
前記第1の方向に沿って前記固定体部に配列された複数の第1ユニット、および該複数の第1ユニットに対向するように前記移動体部に設けられた第2ユニットを有し、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間に相互に作用させる電磁力によって前記移動体部を前記固定体部に対して前記第1の方向に沿って相対移動させるリニアモータと、
互いに隣接する2つの前記第1ユニットの外周部に配設された一対の第1の導電性部材と、
前記一対の第1の導電性部材の一方の端部間を電気的に接続する配線部材と、
前記一対の第1の導電性部材の他方の端部に設けられた、前記固定体部方向に向けて突出する端部を有する一対の導通部材と、
前記固定体部に設けられた、前記一対の導通部材の端部が接触する第2の導電性部材と、
前記一対の第1の導電性部材、前記配線部材、前記一対の導通部材、及び前記第2の導電性部材によって形成される電流経路に流れる電流を検出し、該電流の検出結果に基づいて、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の変化を検知する検知部と、
を備えることを特徴とする移動体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−55065(P2012−55065A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194800(P2010−194800)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】