説明

移動局測位システム

【課題】特定の周波数のノイズやマルチパスが生ずる場合であってもそれらの影響を低減することが可能な移動局測位システム8、およびその移動局測位システム8を構成する移動局10および基地局12を提供する。
【解決手段】受信強度測定部としてのRSSI測定回路82(SB7)によって測定された受信波強度値としてのRSSIのうち、周波数選択部84(SB8、SB9)によってRSSIの値が所定の受信波強度範囲(Rlow≦R≦Rup)となる周波数f(i’)が選択され、測位部96(SC3)により、周波数選択部84によって選択された周波数f(i’)の電波に対応するRSSIの値と、予め算出されるRSSIの値と移動局10および基地局12間の距離との関係とに基づいて、移動局10および各基地局12間の距離Lがそれぞれ推定され、推定された距離Lに基づいて移動局の位置(x,y)が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が送信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である各基地局における電波の受信強度に基づいて移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、マルチパスやノイズの影響を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が送信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける受信強度に基づいて移動局の位置の推定を行なう方法が提案されている。この方法においては、例えば、受信強度がRSSI値や受信電力などとして測定し、予め実験やシミュレーションにより得られる前記受信強度と電波の送信側である移動局と電波の受信側である基地局との距離との関係に基づいて、前記受信強度を測定した基地局と電波の送信源である移動局との距離を算出し、算出される前記複数の基地局と移動局との距離に基づいて移動局の位置が推定される。
【0003】
具体的には、RSSI値などによって得られる電波の受信強度の測定値と、予め実験的にあるいはシミュレーションなどによって得られるその測定値と距離との関係とを用いて、電波の送信源である移動局と受信局である基地局との距離を算出する。そして、これを3以上の基地局について行い、既知である各基地局の位置に関する情報と、算出された各基地局と移動局との距離に関する情報とに基づいて、例えば3点測量の原理などにより、移動局の位置を算出する。
【0004】
かかる手法においては、前記RSSI値などの電波の受信強度は、精度よく行なわれることが望まれる。しかしながら、電波の伝搬においては、シャドウイングやノイズ、あるいはマルチパスの影響を完全に取り除くことは困難であり、測定される受信強度はこれらの影響を含むものとなる。
【0005】
特許文献1には、例えば地形、建造物の配置などによって地域的な要因による電波の受信強度の変動による影響を除去するため、複数の受信信号強度に基づいて各基地局毎に受信強度の平均的な値を測定し受信強度として求め、移動局と基地局との距離と前記受信強度との地理的な変動を考慮した関係により移動局の位置を存在する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−313972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特定の周波数のノイズが発生したり、他のシステムによる通信により特定の周波数の電波が使用されている場合に、該特定の周波数が前記移動局が送信する電波の周波数帯に存在する場合には、前記移動局からの電波を受信する基地局において、このノイズの影響を受け、RSSI値が正確なものではなくなる。また、移動局から送信された電波が各基地局で受信される際に、移動局から直接各基地局に到達する直接波のみならず、例えば大地(地面)や、建造物の壁面などによって反射された反射波についても受信されるいわゆるマルチパスの影響は、前記特許文献1の方法によっては低減できないことがありうる。
【0008】
かかる場合には、前記RSSIなどの受信強度は誤差を含むものとなるので、その受信強度から算出される移動局と基地局との距離も誤差を含むものとなる。そのため、複数の基地局の位置に関する情報と、その各移動局との距離についての情報とに基づいて算出される移動局の位置についても、誤差を有するものとなる。
【0009】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、マルチパスや特定の周波数のノイズによる影響を低減したRSSIなどの電波の受信強度を測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局から送信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信結果に関する値と該複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、(b)前記移動局は、所定の複数の周波数の電波の送信が可能な送信部を備え、(c)前記基地局は、前記移動局が送信する所定の複数の周波数の電波を受信可能な受信部と、該受信部により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値を前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部とを備え、(d)前記複数の基地局のそれぞれについて、該受信強度測定部によって前記所定の複数周波数のそれぞれについて複数回測定された前記受信波強度値の平均および分散を算出する平均算出部と、(e)該平均算出部により算出された受信波強度値の平均および分散と、予め算出された前記受信波強度値と前記移動局および前記基地局間の距離との関係とに基づいて、前記移動局および前記基地局間の距離に対する前記移動局の存在確率分布を各基地局ごとに算出する存在確率算出部と、(f)該存在確率算出部により前記複数の基地局について測定された前記移動局および前記基地局間の距離に対する前記移動局の存在確率分布に基づいて、移動局の位置に対する該移動局の存在確率分布を算出する結合確率算出部と、(g)該結合確率算出部によって算出された存在確率分布に基づいて移動局の位置を算出する位置算出部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2にかかる発明は、前記位置算出部は、前記複数の基地局のうち3局以上の基地局のそれぞれと前記移動局との距離に関する確率分布に基づいて移動局の位置の算出を行なうことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3にかかる発明は、(a)複数の移動局の位置の候補から、前記受信波強度値と異なる情報に基づいて移動局の位置を選択する位置候補選択部を有し、(b)前記位置算出部が移動局の位置として複数の位置の候補を推定した場合に、前記位置候補選択部により該複数の位置の候補のいずれか1つを移動局の位置として選択することを特徴とする。
【0013】
好適には、請求項4にかかる発明は、前記位置候補選択部は、前記受信波強度値と異なる情報として移動局が移動可能な領域に関する情報に基づいて移動局の位置を選択することを特徴とする。
【0014】
また好適には、請求項5にかかる発明は、前記位置候補選択部は、前記受信波強度値と異なる情報として移動局の移動履歴に関する情報に基づいて移動局の位置を選択することを特徴とする。
【0015】
また、請求項6にかかる発明は、(a)前記受信強度測定部によって測定された受信波強度値のうち、該受信波強度値が所定の受信波強度範囲内となる周波数を選択する周波数選択部を有し、(b)前記平均算出部は、該周波数選択部によって選択された周波数の電波に対する受信波強度値の平均および分散を算出することを特徴とする。
【0016】
また、請求項7にかかる発明は、前記平均算出部は、前記複数の基地局のそれぞれについて、該受信強度測定部によって前記所定の複数周波数のそれぞれについて複数回測定された前記受信波強度値の分散を前記複数周波数ごとに算出し、算出された分散の値が所定の分散判定値よりも小さい周波数の電波についての受信波強度値の平均および分散を算出することを特徴とする。
【0017】
請求項8にかかる発明は、(a)移動局から送信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信結果に関する値と該複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、(b)前記移動局は、所定の複数周波数の電波の送信が可能な送信部を備え、(c)前記基地局は、前記移動局が送信する所定の複数周波数の電波を受信可能な受信部と、該受信部により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値を前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部とを備え、(d)前記受信強度測定部によって測定された受信波強度値のうち、該受信波強度値が所定の受信波強度範囲内となる周波数を選択する周波数選択部と、(e)該周波数選択部によって選択された周波数の電波に対応する受信波強度値と、予め算出される受信波強度値と前記移動局および基地局間の距離との関係とに基づいて、前記移動局および各基地局間の距離をそれぞれ推定し、該推定された距離に基づいて移動局の位置を算出する測位部とを有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項9にかかる発明は、(a)前記移動局が送信する複数の周波数の電波を受信可能な受信部と、(b)該受信部により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値を前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部とを備え、(c)請求項1乃至8のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能であることを特徴とする基地局である。
【0019】
また、請求項10にかかる発明は、(a)複数の周波数の電波の送信が可能な送信部を備え、(b)請求項1乃至8のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能であることを特徴とする移動局である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1にかかる移動局測位システムによれば、前記平均算出部は、前記複数の基地局のそれぞれについて、該受信強度測定部によって前記所定の複数周波数のそれぞれについて複数回測定された前記受信波強度値の平均および分散を算出するので、特定の周波数においてノイズやマルチパスによる干渉などが発生する場合であっても、これらの影響による前記受信波強度値の変動を低減することができる。そして、前記存在確率算出部は、前記平均算出部により算出された受信波強度値の平均および分散と、予め算出された前記受信波強度値と前記移動局および前記基地局間の距離との関係とに基づいて、前記移動局および前記基地局間の距離に対する前記移動局の存在確率分布を各基地局ごとに算出し、前記結合確率算出部は、前記存在確率算出部により前記複数の基地局について測定された前記移動局および前記基地局間の距離に対する前記移動局の存在確率分布に基づいて、移動局の位置に対する該移動局の存在確率分布を算出し、前記位置算出部は、前記結合確率算出部によって算出された存在確率分布に基づいて移動局の位置を算出するので、前記特定の周波数におけるノイズやマルチパスによる干渉などが発生する場合であっても、移動局の測位における誤差が低減される。
【0021】
また、請求項2にかかる移動局測位システムによれば、前記位置算出部は、前記複数の基地局のうち3局以上の基地局のそれぞれと前記移動局との距離に関する確率分布に基づいて移動局の位置の算出を行なうので、例えば平面を移動する移動局の位置を一意に算出することができるなど、移動局の位置の算出を好適に行なうことができる。
【0022】
また、請求項3にかかる移動局測位システムによれば、前記位置候補選択部により、前記複数の移動局の位置の候補から、前記受信波強度値と異なる情報に基づいて移動局の位置が選択されるので、前記位置算出部が移動局の位置として複数の位置の候補を推定した場合に、前記位置候補選択部により該複数の位置の候補のいずれか1つを移動局の位置として選択することができる。
【0023】
また、請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記位置候補選択部は、前記受信波強度値と異なる情報として移動局が移動可能な領域に関する情報に基づいて移動局の位置を選択するので、予め既知である移動局が移動可能な領域に関する情報に基づいて移動局の位置が選択される。
【0024】
また、請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記位置候補選択部は、前記受信波強度値と異なる情報として移動局の移動履歴に関する情報に基づいて移動局の位置を選択するので、移動局の測位が繰り返し行なわれる場合において繰り返し毎に算出される移動局の位置である移動履歴に基づいて移動局の位置が選択される。
【0025】
また、請求項6にかかる移動局測位システムによれば、前記周波数選択部は、前記受信強度測定部によって測定された受信波強度値のうち、該受信波強度値が所定の受信波強度範囲内となる周波数を選択し、前記平均算出部は、該周波数選択部によって選択された周波数の電波に対する受信波強度値の平均および分散を算出するので、前記所定の受信波強度範囲内となる周波数、すなわち、受信波強度値がノイズやマルチパスの影響を受けにくい周波数における受信波強度値を用いて受信波強度値の平均および分散が算出される。
【0026】
また、請求項7にかかる移動局測位システムによれば、前記平均算出部は、前記複数の基地局のそれぞれについて、該受信強度測定部によって前記所定の複数周波数のそれぞれについて複数回測定された前記受信波強度値の分散を前記複数周波数ごとに算出するので、前記分散が前記所定の分散判定値よりも小さい周波数、すなわち、受信波強度値がノイズやマルチパスの影響を受けない周波数における受信波強度値を用いて受信波強度値の平均および分散が算出される。
【0027】
請求項8にかかる移動局測位システムによれば、前記周波数選択部によって選択される、前記受信強度測定部によって測定された受信波強度値のうち、該受信波強度値が所定の受信波強度範囲となる周波数が選択され、前記測位部により、該周波数選択部によって選択された周波数の電波に対応する受信波強度値と、予め算出される受信波強度値と前記移動局および基地局間の距離との関係とに基づいて、前記移動局および各基地局間の距離がそれぞれ推定され、該推定された距離に基づいて移動局の位置が算出されるので、前記所定の受信波強度範囲内となる周波数、すなわち、受信波強度値がノイズやマルチパスの影響を受けにくい周波数における受信波強度値を用いて前記移動局および各基地局間の距離がそれぞれ推定され、比較的誤差の小さい移動局の測位を行なうことができる。
【0028】
また、請求項9にかかる基地局によれば、前記移動局が送信する複数の周波数の電波を受信可能な受信部と、該受信部により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値を前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部とを備えるので、前記移動局測位システムに好適に適用される。
【0029】
また、請求項10にかかる移動局によれば、複数の周波数の電波の送信が可能な送信部を備えるので、前記移動局測位システムに好適に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の測位システム8の構成の一例を示した図である。図1に示すように、測位システム8は、移動可能な移動局10、既知の位置に固定され、前記移動局10と無線による通信を行なう機能を有する第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cおよび第4基地局12Dの4つの基地局12(以下、第1基地局12A乃至第4基地局12Dを区別しない場合、基地局12という。)、および例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されるサーバ14を含んで構成される。また、基地局12はそれぞれ、通信ケーブル18によってサーバ14と接続され、例えば基地局12およびサーバ14によりLANが構築され、相互に通信可能とされている。
【0032】
図2は、移動局10の有する制御機能の一例を説明するブロック図である。移動局10はアンテナ24、送信部22、受信部26、送受信切換部28、PLL回路30、基準発振回路40、電子制御装置42、タイマ48、記憶部50などを含んで構成される。このうち、電子制御装置42は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、制御部44、周波数切換部46などの機能を実現するようになっている。
【0033】
送信部22および受信部26は、いわゆる無線通信機能を実現するものであって、アンテナ24を用いて電波の送受信を行なう。例えば送信部22は、後述するPLL回路30によって生成された所定の周波数の搬送波(電波)を所定の出力に増幅することによりアンテナ24から送信する。また、送信部22は、例えば電子制御装置42などによって発生される信号により前記搬送波を変調することにより、前記信号を含む電波を送信する。すなわち、送信部22は、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調し、またデジタル変調などの変調を行なう変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有して構成される。
【0034】
一方、受信部26は、基地局12によって送信される電波を受信し、その電波に含まれている信号を後述する電子制御装置42などに渡しその信号に含まれる処理を実行させる。すなわち、受信部26は、アンテナ24によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含んで構成される。このとき、送信部22および受信部26が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、送信部22および受信部26はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。
【0035】
また、アンテナ24は、前述の送信部22および受信部26が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、移動局10の位置にかかわらず、すなわち移動局10から見た基地局12の方向に関わらず移動局10からの距離が同じ位置に基地局12が存在する場合には同じ強さで電波を受信できるように、アンテナ24は水平面内で無指向特性であるアンテナ、例えば垂直ダイポールアンテナやスリーブアンテナが好適に用いられる。
【0036】
送受信切換器28は、前記受信部26と送信部22との何れかを作動状態とするかを切り換える。すなわち、移動局10が無線の受信状態にあるか送信状態にあるかを切り換える。好適には例えば、通常は移動局10を受信状態としておき、後述するPLL回路30において生成される所定の周波数の電波を測位のために送信する場合など、基地局12へ電波を送信する時においてのみ、移動局10が送信状態とされてもよい。
【0037】
PLL(Phase Locked Loop)回路30は、自励発振器出力を1つの安定な発振器である基準発振回路40の出力で位相ロックし、分周比を変更させることにより所望の周波数の出力を得られる高安定度の発振器である。PLL回路30は例えば図2に示すように、位相比較器32、ループフィルタ34、VCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御発振器)36、分周器38などを含んで構成される。位相比較器32は、基準発振回路40によって発生される周波数frの搬送波と後述する分周器38によって周波数が変更されf0/Nとされた波動の位相差および周波数の差に応じた電圧を発生させる。また、ループフィルタ34は位相比較器32の出力に含まれる高周波成分や雑音を除去し、後述するVCO36に入力される電圧を生成する。またVCO36は、入力電圧の変化により発振周波数が変化する自励発振器であり、frおよびf0の周波数と位相とが常に一致(同期、ロック)するように入力電圧で制御される。分周器38は、後述する電子制御装置42により分周比がNと設定された場合にVCO36の出力周波数f0を1/N倍にする。
【0038】
基準発振回路40は、例えば水晶発振器などの安定発振器であり、予め固定された周波数(例えばfr)の出力を行なう。
【0039】
タイマ48は時刻を計測するものであって、後述する電子制御装置42が時間とともにその制御作動を切り換える場合などにその時刻に関する情報を供給する。
【0040】
記憶部50はいわゆるメモリなどの記憶手段であって、例えば、移動局10が複数存在する場合に個々の移動局を識別するためのIDに関する情報や、後述する電子制御装置42の制御作動に関して予め記憶されたタイムチャートなどが記憶される。
【0041】
電子制御装置42は、前述のように所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、制御部44、周波数切換部46などの機能を実現するようになっている。このうち、制御部44は、移動局10の作動を制御するものであって、例えば、前記送信部22における送信の開始および終了、あるいは送信波に含める信号の生成、前記受信部26における受信の開始および終了、あるいは受信波に信号として含まれる指令の実行、前記送受信切換部28における送信および受信の切換などの制御を実行する。
【0042】
また、周波数切換部46は、例えば記憶部50に記憶されたタイムチャートに従って、前記分周器38に対して分周比Nを設定する。このように分周比Nを設定することにより、PLL回路30から得られる搬送波の周波数を変化させることができる。
【0043】
図3は、基地局12の有する機能の一例の概要を説明するブロック図である。図2および図3に示すように、移動局10および基地局12はその一部の構成が共通する。すなわち、基地局12は、送信部52、アンテナ54、受信部56、送受信切換部58、PLL回路60、基準発振回路70、電子制御装置72、タイマ78、記憶部80を有するが、これらは前述の移動局10における送信部22、アンテナ24、受信部26、送受信切換部28、PLL回路30、基準発振回路40、電子制御装置42、タイマ48、記憶部50に対応するものであり、その作動も同様である。
【0044】
送信部52および受信部56は、いわゆる無線通信機能を実現するものであって、アンテナ54を用いて電波の送受信を行なう。例えば送信部52は、後述するPLL回路60によって生成された所定の周波数の搬送波(電波)を所定の出力に増幅することによりアンテナ54から送信する。また、送信部52は、例えば電子制御装置72などによって発生される信号により前記搬送波を変調することにより、前記信号を含む電波を送信する。すなわち、送信部52は、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調し、またデジタル変調などの変調を行なう変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有して構成される。
【0045】
一方、受信部56は、移動局10によって送信される電波を受信し、その電波に含まれている信号を後述する電子制御装置72などに渡しその信号に含まれる処理を実行させる。すなわち、受信部56は、アンテナ54によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含んで構成される。このとき、送信部52および受信部56が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、送信部52および受信部56はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。このとき、受信部56においては、後述するPLL回路60において生成される周波数と同じ周波数の電波を受信するようにされている。
【0046】
また、アンテナ54は、前述の送信部52および受信部56が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、移動局10の位置にかかわらず、すなわち基地局12から見た移動局10の方向に関わらず基地局12からの距離が同じ位置に移動局10が存在する場合には同じ強さで電波を受信できるように、アンテナ54は水平面内で無指向特性であるアンテナ、例えば垂直ダイポールアンテナやスリーブアンテナが好適に用いられる。
【0047】
送受信切換器58は、前記受信部56と送信部52との何れかを作動状態とするかを切り換える。すなわち、移動局10が無線の受信状態にあるか送信状態にあるかを切り換える。好適には例えば、通常は移動局10を受信状態としておき、例えば移動局10へその制御作動に関する指令を情報として含む電波を送信する場合など、移動局10へ電波を送信する時においてのみ、基地局12が送信状態とされてもよい。
【0048】
PLL(Phase Locked Loop)回路60は、自励発振器出力を1つの安定な発振器である基準発振回路70の出力で位相ロックし、分周比を変更させることにより所望の周波数の出力を得られる高安定度の発振器である。PLL回路60は例えば図3に示すように、位相比較器62、ループフィルタ64、VCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御発振器)66、分周器68などを含んで構成される。位相比較器62は、基準発振回路70によって発生される周波数frの搬送波と後述する分周器68によって周波数が変更されf0/Nとされた波動の位相差および周波数の差に応じた電圧を発生させる。また、ループフィルタ64は位相比較器62の出力に含まれる高周波成分や雑音を除去し、後述するVCO66に入力される電圧を生成する。またVCO66は、入力電圧の変化により発振周波数が変化する自励発振器であり、frおよびf0の周波数と位相とが常に一致(同期、ロック)するように入力電圧で制御される。分周器68は、後述する電子制御装置72により分周比がNと設定された場合にVCO66の出力周波数f0を1/N倍にする。
【0049】
基準発振回路70は、例えば水晶発振器などの安定発振器であり、予め固定された周波数(例えばfr)の出力を行なう。
【0050】
タイマ78は時刻を計測するものであって、後述する電子制御装置72が時間とともにその制御作動を切り換える場合などにその時刻に関する情報を供給する。
【0051】
記憶部80はいわゆるメモリなどの記憶手段であって、例えば、電子制御装置72の制御作動に関して予め記憶されたタイムチャートや、後述する距離算出部88において用いられる、受信電力に対する移動局10と基地局12との距離の関係などが記憶される。
【0052】
電子制御装置72は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、制御部74、周波数切換部76などの機能を実現するようになっている。
【0053】
このうち、制御部74は、移動局10の作動を制御するものであって、例えば、前記送信部52における送信の開始および終了、あるいは送信波に含める信号の生成、前記受信部56における受信の開始および終了、あるいは受信波に信号として含まれる指令の実行、前記送受信切換部58における送信および受信の切換などの制御を実行する。
【0054】
また、周波数切換部76は、例えば記憶部80に記憶されたタイムチャートに従って、前記分周器68に対して分周比Nを設定する。このように分周比Nを設定することにより、PLL回路60から得られる搬送波の周波数を変化させることができる。
【0055】
また基地局12は、前述の移動局10と共通する構成に加え、RSSI測定回路82、通信インタフェース90を有する。このうち、RSSI測定回路82は、前記受信部56によって受信された電波の強度である受信波強度値としてRSSIを測定する。このRSSIは、例えば前記受信された電波の強度を0乃至255の256段階で評価する値である。このRSSI測定回路82が受信強度測定部に対応する。
【0056】
また、通信インタフェース90は、通信ケーブル18を介して基地局12とサーバ14との情報通信を行なう。具体的には、基地局12の距離算出部88において算出される基地局12と移動局10との距離に関する情報などが基地局12からサーバ14に送信されるほか、サーバ14からは、基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信される。
【0057】
また、前記電子制御装置72は、前述の制御部74および周波数切換部76に加え、周波数選択部84、RSSI−受信電力変換部86、距離算出部88の機能も実現する。
【0058】
このうち、周波数選択部84は、移動局10が送信する複数の周波数の電波のそれぞれに対し前記RSSI測定回路82によって測定された受信波強度値としてのRSSIが、所定の受信波強度範囲内にあるか否かが前記複数の周波数のそれぞれ毎に判断され、前記RSSIが前記所定の受信波強度範囲内である電波の周波数を選択する。具体的には例えば、測定したRSSIの値Rが、前記受信波強度範囲Rlow≦R≦Rupを満たすか否かが判断される。この受信波強度範囲の上限Rupおよび下限Rlowは、例えば次のように決定される。
【0059】
図6は、周波数f1(Hz)の搬送波に対し周波数変調により変調が行なわれることにより搬送波に信号が乗せられた場合の信号強度を表した図である。図6において、変調信号は、その周波数がf1−Δfからf1+Δfまでの間となるように周波数変調が行なわれる。また、変調後の電波の周波数fが、f1−Δf≦f≦f1+Δfである場合に、その範囲に含まれるの周波数fN(f1−Δf≦fN≦f1+Δf)のノイズが発生した場合には、その信号強度は例えば破線116で表される。
【0060】
ここで、基地局12の受信部56で受信された電波についての関係が図6で示される場合、前記RSSI測定回路82は、前記ノイズの成分も合算してRSSIを算出することとなり、本来搬送波のみを受信した場合のRSSIに比べて大きな値となる。
【0061】
一方、本実施例においては、移動局10のPLL回路30が制御されることにより、複数の周波数、例えば周波数がそれぞれf1(Hz)、f2(Hz)、およびf3(Hz)の搬送波が移動局10から基地局12に送信される。図6の場合と同様に周波数fN(Hz)のノイズが発生する場合、周波数ごとの信号強度を表す関係は図7のようになる。かかる場合において、前記RSSI測定回路82により周波数がそれぞれf1(Hz)、f2(Hz)、およびf3(Hz)の搬送波のRSSIを測定すると、周波数f1の搬送波については前述の図6の場合と同様にノイズの成分を合算したRSSIがされる一方、周波数f2およびf3の搬送波については、搬送波のRSSIを測定することができる。このとき、前記周波数f1、f2、およびf3は受信電力の減衰ポイントとなる距離、すなわち後述する図9において説明する受信電力が極小となる距離が異なる距離となるような周波数を選ぶ。周波数が大きく異なるほどこの特性は異なるので、使用帯域内でなるべく周波数がばらつくように選択すれば良い。具体的にはたとえばf1=2410(MHz)、f2=2420(MHz)、f3=2430(MHz)のように定められる。
【0062】
そこで、周波数選択部84は、ノイズの無い信号を受信した場合に測定されるRSSIの値を、前記受信強度範囲の上限値Rupとして設定する。この様にすれば、上限値Rupを超えたRSSIが測定された場合には、その周波数においてノイズが発生し、RSSIがノイズの影響を受けていると判断することができる。
【0063】
一方、移動局10から送信された電波は、移動局10から直接基地局12に到達するほか、例えば大地面あるいは床面、壁などの反射面で反射した後、基地局12に到達する。なお、移動局10から直接基地局12に到達する電波を以下、「直接波」といい、移動局10から送信され、前記反射面で反射した後基地局12に到達する電波を「反射波」という。図8は移動局10から送信された電波が直接波Dとして、また反射波Rとしてそれぞれ基地局12に到達する様子を説明する図である。ここで、移動局10から基地局12までの直接波Dの伝搬距離がLd(m)、反射波Rの伝搬距離がLr(m)であるとき、その距離の差(Ld−Lr)および電波の波長λに基づいて、前記直接波Dと反射波Rとの干渉が生ずる。例えば、直接波Dおよび反射波Rが同位相で基地局12に到達する場合、すなわち前記距離の差(Ld−Lr)が電波の波長λの整数倍である場合には、直接波Dおよび反射波Rは互いに強め合い、直接波Dおよび反射波Rが位相差πだけずれて基地局12に到達する場合、すなわち前記距離の差(Ld−Lr)が電波の波長λおよび任意の自然数nを用いて(Ld−Lr)=(n+1/2)×λと表される場合には、直接波Dおよび反射波Rは互いに弱め合う。
【0064】
図9は、基地局12においてRSSI測定回路82によって測定され後述するRSSI−受信電力変換部86によって対数表現された受信電力PR(dBm)と、移動局および基地局の間の距離Lとの関係を、複数の周波数毎に表した図である。図9において、何れも細線で描かれた実線、破線、一点鎖線は、それぞれ周波数がf1、f2、f3であって、反射波Rが存在しない場合、すなわち基地局12において直接波Dのみを受信する場合の前記受信電力と前記距離との関係を表している。すなわち、これら細線の実線、破線、一点鎖線は、それぞれ周波数がf1、f2、f3である場合の距離に対応するRupの値に対応する。また、何れも太線で描かれた実線、破線、一点鎖線は、それぞれ周波数がf1、f2、f3であって、反射波Rが存在し、基地局12において直接波Dおよび反射波Rを受信する場合の前記受信電力PRと前記距離Dとの関係を表している。
【0065】
図9の太線のそれぞれで表された関係は、次式(1)によって表される。
PR=−20log(4πLf/c)+GTA+GRA+Pt
−10log(1+γ+2γcos((2πΔl)/λ+φ)) …(1)
ここで、γは反射面の反射係数、すなわち電波がある角度をもって反射面に入射されたときの入射波振幅に対する反射波振幅の割合である。また、L(m)は移動局と基地局との距離であり、Δl(m)は直接波Dと反射波Rとの伝搬距離の差(Ld−Lr)である。GTA(dBi)は送信アンテナのアンテナゲイン、GRA(dBi)は受信アンテナのアンテナゲインであり、移動局10のアンテナ24、基地局12のアンテナ54がそれぞれダイポールアンテナである場合には、GTA=GRA=2.14(dBi)である。また、Pt(dBm)は移動局10の送信部22の送信電力である。また、λ(m)は電波の波長、すなわち電波の速度c(m/s)および波長fを用いてλ=c/fであり、φ(rad)は移動局から送信される電波の初期位相である。
【0066】
図9の太線のそれぞれに示すように、直接波Dおよび反射波Rを受信する場合には、細線で表された直接波Dのみを受信する場合に比べて特定の周波数において受信電力PRの値が著しく低下している。後述する距離算出部88が、例えば図9の細線で示された受信電力PRと距離Lとの関係を用いて、移動局10と基地局12との距離を算出する場合において、前記著しく低下した受信電力の値PRには対応する距離Lの値がない、あるいは対応する距離Lの値が実際の距離とは大きく異なるものであることがある。すなわち、受信電力PRの値が前記著しく低下したものとなった場合には、その後に行なわれる移動局10と基地局12との距離の算出が正確に行なわれないおそれがある。
【0067】
そこで、周波数選択部84は、前記受信電力PRの著しい低下が生じていない場合に測定されるRSSIの値と、移動局10と基地局12との距離とに応じ前記受信強度範囲の下限値Rlowとして設定する。この様にすれば、下限値Rlowを下回ったRSSIが測定された場合には、その周波数において前記受信電力PRの著しい低下が生じていると判断することができる。このRlowは、例えば移動局測位システム8において移動局10と基地局12とが最も離れた状態にある場合の距離に対応する受信電力に対応するRSSIの値とされ、前記移動局10と基地局12とが最も離れた状態にある場合の距離が例えば10mである場合には、図9において、移動局10と基地局12との距離が10mである場合の受信電力に対応する受信強度(RSSI)の値とされる。なお、後述するように受信電力PRの値とRSSIの値とは一対一に対応し得るものであり、変換が可能である。
【0068】
なお、図9の各太線で示されるように、直接波Dおよび反射波Rを受信する場合の受信電力PRの値が著しく低下する距離Lは、移動局10によって送信される電波の周波数によって異なっている。そのため、ある距離Lに移動局10が位置している場合について、特定の周波数を用いた受信電力PRは前記著しい低下を生ずる一方で、他の周波数を用いれば受信電力PRが前記著しい低下を生じない。具体的には例えば、図9の例において、移動局10と基地局12との距離がL’である場合に、周波数f1の電波を用いた電波の送受信においては、マルチパスが存在する場合に受信電力PRの値が著しく落ち込み前記PRlowを下回る一方、周波数f2あるいはf3の電波を用いた電波の送受信においては、マルチパスが存在する場合であっても受信電力PRの値が著しく落ち込み前記PRlowを下回わらない。そのため、移動局10から複数の周波数の電波が送信され、RSSI測定回路82によってそのRSSIがそれぞれ測定されると、ある周波数によって測定されたRSSIが前記受信強度範囲の下限値Rlowを下回り、その周波数が周波数選択部84によって選択されない場合であっても、移動局10が送信する他の周波数の電波によっては、測定されたRSSIが前記受信強度範囲の下限値Rlowを上回り、その周波数が周波数選択部84によって選択されうる。すなわち、図9の例であれば、受信電力の値PRが前記PRlowを下回った周波数f1以外の周波数が選択される。
【0069】
図3に戻って、RSSI−受信電力変換部86は、前記RSSI測定回路82において受信波強度値として測定されたRSSIを、対応する受信電力、例えば単位をdBmとする対数表現による電力に変換する。すなわち、前記RSSIは受信部56における電波を受信した際の受信電圧に基づいて算出されるものであるから、この受信電圧、RSSI、および受信電力はそれぞれ対応する値に変換が可能であり、RSSIと受信電力とは一対一に対応するものであるので、受信電力も受信波強度値ということができる。
【0070】
距離算出部88は、前記RSSI−受信電力変換部86によって変換されることにより得られる受信電力の値に基づいて、電波の送信源である移動局10と、その移動局10から送信された電波を受信した基地局12との距離を算出する。距離算出部88による距離の算出は、例えば、シミュレーションや実験などにより予め得られ、前記記憶部80などに記憶されている前記受信電力と距離との関係に基づいて算出される。
【0071】
図5は、この受信電力と距離との関係の一例を示すグラフである。図5に示すように、受信電力と距離との関係は移動局10と基地局12との間で送受信される電波の周波数によって異なるものとなっており、RSSI測定回路82においてRSSIを測定した際の周波数についての関係が用いられる。この関係は、受信電力をPR(dBm)、移動局10と基地局との距離をL(m)とすると、次式(2)で表されるものである。
PR=−20log(4πLf/c)+GTA+GRA+Pt …(2)
ここで、前述のGTA(dBi)は送信アンテナのアンテナゲイン、GRA(dBi)は受信アンテナのアンテナゲインであり、移動局10のアンテナ24、基地局12のアンテナ54がそれぞれダイポールアンテナである場合には、GTA=GRA=2.14(dBi)である。また、Pt(dBm)は移動局10の送信部22の送信電力である。
【0072】
また、距離算出部88は、移動局10と基地局12との距離Lの算出を前記移動局10が送信する複数の種類の周波数fの電波のそれぞれについて行い、算出を行なった電波の周波数のうち、前記周波数選択部によって選択された周波数に対応する前記距離Lf(i)の平均L’を算出する。
【0073】
図4は、サーバ14の有する機能の概要を説明するブロック図である。サーバ14は有線通信インタフェース92、いわゆるマイコン等によって構成される制御部94、記憶部104などによって構成される。また、制御部94は測位部96、位置候補選択部98を有し、制御部94のCPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、これら測位部96、位置候補選択部98などにおける処理を実行するようになっている。
【0074】
記憶部104はいわゆるメモリなどの記憶装置であり、後述する通信インタフェース92を介して各基地局12との通信により得られる、各基地局12および移動局10の間の距離に関する情報や、後述する測位部96によって複数算出される移動局10の位置の候補についての情報、あるいは移動局10の位置の算出が繰り返し行なわれる場合における、過去所定回数において算出された移動局10の位置およびその算出時刻についての情報などが記憶される。
【0075】
通信インタフェース92は、サーバ14と基地局12との通信ケーブル18を通した情報通信を行なうためのインタフェースである。この通信インタフェース92は、例えばサーバ14から基地局12に対し、基地局12の制御作動に関する指令を行なったり、あるいは移動局10の制御作動に関する指令を基地局12を介して行なわせたりする。また、有線通信インタフェース82は、基地局12から送信される情報、例えば基地局12と移動局10との距離に関する情報などが受信される。なお、サーバ14の有線通信インタフェース92が移動局10の制御作動に関する指令を基地局12を介して行なわせるのは、サーバ14は無線通信に関する機能、すなわち受信部や送信部を有していない一方、移動局10は有線通信に関する機能、すなわち有線通信インタフェースを有しておらず、サーバ14と移動局10とが直接通信を行なうことができないためであり、このため、サーバ14と移動局10とはいずれかの基地局12を介して通信を行なうことができる。
【0076】
測位部96は、予め既知である各基地局12の位置に関する情報と、各基地局12の距離算出部88により算出され、通信ケーブル18を介してサーバ14に送信された各基地局12と移動局10との距離に関する情報とに基づいて、移動局10の位置を算出する。具体的には例えば、すなわち、第1基地局12Aの位置を表す座標が(x1,y1)、第2基地局12Bの座標が(x2,y2)、第3基地局12Cの座標が(x3,y3)であり、前記各基地局12の距離算出部88によって第1基地局12Aと移動局10との距離がL1、第2基地局12Bと移動局10との距離がL2、第3基地局12Cと移動局10との距離がL3と算出される場合において、移動局10の位置を表す座標を(x,y)とすると、これらの関係は次式(3)で表される。
(x1−x)+(y1−y)=L1
(x2−x)+(y2−y)=L2
(x3−x)+(y3−y)=L3 …(3)
測位部96はこの式(3)を満たす(x,y)を算出し、移動局10の位置とする。図10は、前述の式(3)で現れる第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、および移動局10の位置関係の一例を図示したものである。なお、図10においては、説明のため基地局12の配置が図1のそれとは異なるように示されている。図10に示すように、距離算出部88により第1基地局12Aと移動局10との距離がL1、第2基地局12Bと移動局10との距離がL2、第3基地局12Cと移動局10との距離がL3であると算出されると、測位部96は第1基地局12Aを中心とする半径L1の円と、第2基地局12Bを中心とする半径L2の円と、第3基地局12Cを中心とする半径L3の円の交点が移動局10の位置であるとして算出する。なお、測位部96においては、少なくとも3つの基地局12のそれぞれと移動局10との距離が得られていれば移動局10の位置の算出が可能であるため、式(3)および図10においては、第4基地局12Dに関する記載が省略されているが、第4基地局12Dの位置、および第4基地局12Dと移動局10との距離を考慮して移動局10の位置を算出することも同様に可能である。
【0077】
位置候補選択部98は、前記測位部96よって移動局10の位置が複数算出された場合に、これら算出された複数の移動局10の位置を移動局10の位置の候補とし、そのいずれかを移動局10の位置として選択する。位置候補選択部98は、領域情報比較部100および履歴情報比較部102の少なくともいずれか一方を有する。位置候補選択部98は、この領域情報比較部100によって得られる移動局10の存在しうる領域に関する情報である領域情報、および前記履歴情報比較部102によって得られる移動局10の移動履歴に関する情報の少なくとも一方に基づいて移動局10の位置の選択を行なう。
【0078】
領域情報比較部100は、移動局10が存在しうる領域に関する情報と、前記測位部96によって算出される移動局の位置10の候補とを比較する。すなわち、移動局10が壁などでしきられた室内などの限定された領域内のみを移動可能とされている場合においては、その移動局10が移動可能である領域についての情報(領域情報)を、例えば後述する記憶部104などに予め記憶しておき、領域情報比較部100は、この記憶部104から読み出された領域情報と、前記測位部96によって算出される移動局10の位置の候補とを比較する。そして、移動局10の位置の候補のうち、前記領域情報に基づいて、移動局10の移動可能な領域の内側にあるか否かを判断する。そして、位置候補選択部98は、移動局10の移動可能な領域の内側にないと判断された前記移動局10の位置の候補については、移動局10の位置の候補から除外する。
【0079】
図11は、領域情報比較部100および位置候補選択部98の作動を説明する図である。測位部96などにより、2つの移動局10の位置の候補P1およびP2が得られている。一方、予め移動局位置記憶部66に記憶された領域情報、すなわち、移動局10の移動可能領域が、複数の線分120で囲まれた領域126であるとする。このとき、領域情報比較部100は、移動局10の位置の候補P1およびP2の位置と、領域情報、すなわち移動可能領域126の位置とを比較し、候補P2は移動局10の移動可能な領域の内側にあると判断し、一方、候補P1は移動局10の移動可能な領域の内側にはないと判断する。この判断に基づき、位置候補選択部60は、候補P1は移動局10の位置の候補から除外する。この結果、移動局10の位置の候補は候補P2のみとなり、位置候補選択部60は移動局10の位置は候補P2の位置であると選択する。
【0080】
また、本実施例において、例えばコンピュータの記憶手段などによって実現される測位サーバ14の記憶部104は、前述の移動局測位システム8により移動局10の測位が例えば所定の間隔で繰り返し行なわれる場合において、過去に測位部96により移動局10の位置であるとして選択された位置およびその測位の行なわれた時刻についての情報(移動履歴情報)を所定の回数分だけ記憶する。
【0081】
また、履歴情報比較部102は、前記記憶部104において記憶された前記移動履歴情報に基づいて、現在の移動局10の位置を予測する。そして、予測された現在の移動局10の予測位置と前記測位部96によって算出された複数の移動局位置候補とを照合する。そして、位置候補選択部98は、この照合の結果、前記移動局10の予測位置に最も近い位置にある移動局の位置の候補を現在の移動局10の位置であるとして選択する。
【0082】
図12は、このときの履歴情報比較部102および位置候補選択部98の作動を説明する図である。図12において、前記測位部96によって算出された移動局位置の2つの候補は候補P1および候補P2である。一方、点qt−1、点qt−2、点qt−3、点qt−4はそれぞれ、現在より1回乃至4回前に行なわれた移動局10の測位における移動局10の位置であるとされた位置を表している。前記履歴情報比較部102は、前記点qt−1、点qt−2、点qt−3、点qt−4の位置に基づいて、現在の移動局10の予測位置q(x,y)を予測する。そして、予測された移動局10の予測位置qと候補P1の距離de1、および移動局10の予測位置qと候補P2のそれぞれとの距離de2をそれぞれ算出する。位置候補選択部60は算出された距離de1および距離de2を比較し、この距離がより小さくなる移動局位置候補を実際の移動局10の位置であるとして選択する。すなわち、図12の例であれば、de1>de2であるので、より小さい距離であるde2に対応する移動局位置である候補P2を実際の移動局10の位置であるとして選択する。
【0083】
具体的には、履歴情報比較部102は、例えば以下のようにして現在の移動局の予測位置q(x,y)を予測する。現在の移動局の予測位置qにおける移動局10の移動速度をv、加速度をaとし、同様に、過去1回前の測位の際の移動局10の位置qt−1における移動局10の移動速度をvt−1、加速度をat−1、過去2回前の測位の際の移動局10の位置qt−2における移動局10の移動速度をvt−2、加速度をat−2、過去3回前の測位の際の移動局10の位置qt−3における移動局10の移動速度をvt−3、加速度をat−3、過去4回前の測位の際の移動局10の位置qt−4における移動局10の移動速度をvt−4、加速度をat−4とする。このとき、現在の加速度は過去2回における測位の際における移動局10の移動加速度の平均であるとすると、その関係は次式(4)で表される。
=(at−1+at−2)/2 …(4)
で表される。このとき、移動局測位システム8による測位が微小時間で反復して行なわれている場合には、ある測位の際における移動局10の移動加速度aは、その測位の際における移動局10の移動速度vと1回前の測位の際における移動局10の移動速度vt−1とを用いて、a=v−vt−1と表され、またある測位の際における移動局10の移動速度vtは、その測位の際における移動局10の位置qと1回前の測位の際における移動局10の位置qt−1とを用いて、v=q−qt−1と表されることから、前記式(4)は、
−vt−1=((vt−1−vt−2)+(vt−2−vt−3))/2
(q−qt−1)−(q−qt−1
=(((qt−1−qt−2)+(qt−2−qt−3))
+((qt−2−qt−3)+(qt−3−qt−4))/2
と順次書き換えられる。これをqtについて整理すると、
=(5qt−1−3qt−2−qt−3+qt−4)/2
となる。このようにして、現在の移動局10の予測位置qtを算出する。
【0084】
図13は、本発明の移動局測位システム8における移動局10の制御作動を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、移動局10に対し、電波を送信するように指令が行なわれたか否かが判断される。この指令は、後述する基地局12の作動を説明するフローチャートである図14のステップSB2が実行されることによって行なわれる。この指令は、例えば移動局10の受信部26によって受信され、受信波から指令を含む情報が取り出された後、制御部44においてその内容が解析・実行される。そして、この指令が行なわれた場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSA2以降が実行される。一方、指令が行なわれていない場合には、本ステップの判断が否定され、再びSA1が実行される。すなわち、指令の待機が行なわれる。
【0085】
SA2においては、移動局10の送信する電波の周波数の種類を表す変数iが1とされ、1番目の周波数の電波の送信の準備が行なわれる。この変数iと電波の周波数f(i)との対応づけは、例えば予め記憶部50に記憶されていればよい。そして、周波数切換部46などに対応するSA3においては、PLL回路30から出力される周波数が、変数iに対応する周波数f(i)となるように、分周比Nが設定される。
【0086】
SA4においては、タイマ48の内容がリセット、すなわち時間を記録するカウンタの内容が零とされるとともに、電波の送信時間の計測が開始される。続くPLL回路30、送信部22などに対応するSA5においては、SA3において設定された周波数f(i)の電波が所定の出力により送信される。
【0087】
SA6においては、SA4において開始されたタイマ48で計測される電波の送信時間が、予め設定された規定送信時間だけ経過したか否か、すなわちタイムアウトしたか否かが判断される。この規定送信時間は、少なくとも基地局12において受信波強度値としてのRSSIを測定するのに十分な時間を上回るように設定される。そして、送信時間が前記規定送信時間を上回った場合には本ステップの判断が肯定され、SA7以降が実行される。一方、送信時間が前記規定送信時間に達していない場合には、本ステップの判断が否定され、引き続き電波の送信が行なわれる。
【0088】
SA6の判断が肯定された場合、すなわち、周波数f(i)の電波が前記規定送信時間だけ送信された場合に実行されるSA7においては、電波の送信が終了させられる。そして、続くSA8において、電波の周波数の種類を表す変数iが1だけ繰り上げられる。すなわち、次の種類の周波数の電波の送信に備える。
【0089】
SA9においては、電波の周波数の種類を表す変数iが、予め定められた送信する電波の周波数の種類の総数imaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、予め3種類の周波数の電波を送信するようにされている場合においては、変数iが3を上回ったか否かが判断される。そして、変数iがimaxを上回った場合には、全ての種類の周波数の電波の送信が完了したとして、本ステップの判断が肯定され、本フローチャートは終了させられる。一方、変数iがimaxと等しいあるいはimaxを下回った場合には、未だ送信を行なっていない周波数の電波が存在するとして、本ステップの判断が否定され、SA3以降が実行される。
【0090】
図14は、本発明の移動局測位システム8における各基地局12の制御作動を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SB1においては、サーバ14から各基地局12に対し、移動局10との距離を測定しサーバに送信するように指示が行なわれたか否かが判断される。この指令は、後述するサーバ14の作動を説明するフローチャートである図15のSC1が実行されることによって行なわれる指令である。
【0091】
SB2においては、基地局12から移動局10に対して、測位のための電波を送信するように指令が行なわれる。この指令は、例えば、基地局12の制御部74において生成された指令に関する情報を含む電波が送信部52から送信される。なお、この基地局12から移動局10への指令はいずれか1つの基地局12によって行なわれればよい。
【0092】
SB3においては、基地局12の受信する電波の周波数の種類を表す変数iが1とされ、1番目の周波数の電波の受信の準備が行なわれる。この変数iと電波の周波数f(i)との対応づけは、例えば予め記憶部80に記憶されていればよい。そして、周波数切換部76などに対応するSB4においては、PLL回路60から出力される周波数が、変数iに対応する周波数f(i)となるように、分周比Nが設定される。
【0093】
SB5においては、タイマ78の内容がリセット、すなわち時間を記録するカウンタの内容が零とされるとともに、電波の受信時間の計測が開始される。続くPLL回路60、受信部52などに対応するSB6においては、SB4において設定された周波数f(i)の電波が受信され、RSSI測定回路82に対応するSB7においては、SB6において受信された電波の受信波強度値として、例えばRSSIが測定される。
【0094】
続くSB8およびSB9は周波数選択部84に対応する。まず、SB8においては、SB7で測定されたRSSIの値Rf(i)が、予め定められた受信波強度範囲に含まれるか否か、すなわち、Rlow≦Rf(i)≦Rupを満たすか否かが判断される。そして、SB7で測定されたRSSIの値Rf(i)がRlow≦Rf(i)≦Rupを満たす場合には、本ステップの判断が肯定され、SB10以降が実行される。一方、SB7で測定されたRSSIの値Rf(i)がRlow≦Rf(i)≦Rupを満たさない場合には、本ステップの判断が否定され、SB9が実行される。
【0095】
SB9は、SB8の判断が否定された場合、すなわちRSSIが前記受信波強度範囲の上限を上回る、あるいは下限を下回る場合に実行されるステップである。本ステップにおいては、SB8の判断を否定するRSSIを測定した際の電波の周波数が、後述するSB14における距離の算出の際に用いられないものとされる。逆に言えば、SB8の判断が肯定され、本ステップが実行されない場合には、SB8の判断を肯定するRSSIを測定した際の電波の周波数が、SB14における距離の算出の際に用いられるものとして選択される。
【0096】
SB10においては、SB5において開始されたタイマ48で計測される電波の受信時間が、予め設定された規定受信時間だけ経過したか否か、すなわちタイムアウトしたか否かが判断される。この規定受信時間は、例えば、前記移動局10における規定送信時間と同じとなるように設定される。そして、受信時間が前記規定受信時間を上回った場合には本ステップの判断が肯定され、SB11以降が実行される。一方、受信時間が前記規定受信時間に達していない場合には、本ステップの判断が否定され、引き続き電波の受信作動が行なわれる。
【0097】
SB10の判断が肯定された場合、すなわち、周波数f(i)の電波が前記規定受信時間だけ受信された場合に実行されるSB11においては、電波の受信が終了させられる。そして、続くSB12において、電波の周波数の種類を表す変数iが1だけ繰り上げられる。
【0098】
SB13においては、電波の周波数の種類を表す変数iが、予め定められた受信する電波の周波数の種類の総数imaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、予め3種類の周波数の電波を受信するようにされている場合においては、変数iが3を上回ったか否かが判断される。この受信する電波の周波数の種類の総数imaxは、移動局10によって送信される電波の周波数の種類の総数imaxと等しくされる。そして、変数iがimaxを上回った場合には、全ての種類の周波数の電波の受信が完了したとして、本ステップの判断が肯定され、SB14以降が実行される。一方、変数iがimaxと等しいあるいはimaxを下回った場合には、未だ受信を行なっていない周波数の電波が存在するとして、本ステップの判断が否定され、SB4以降が実行される。
【0099】
RSSI−受信電力変換部86および距離算出部88に対応するSB14においては、まず、SB8における判断が肯定された電波の周波数f(i’)のそれぞれについて、SB7で測定されたRSSIの値Rf(i’)が対数表現された、すなわち例えばdBmの単位で表された受信電力PRf(i’)に換算される。この換算は、例えば予め記憶部80に記憶されたテーブルや関係式などを用いることで行なわれる。そして、換算された受信電力PRの値に基づいて、移動局10および基地局12の間の距離Lf(i’)が算出される。この算出は、例えば予め記憶部80に記憶された図5に示すような関係に基づいて行なわれる。
【0100】
距離算出部88に対応するSB15においては、SB14において各周波数ごとに算出された移動局10および基地局12の間の距離Lf(i’)の平均L’が算出される。この平均は次式(5)で表される。
【数1】

ここで、i’は前記周波数選択部84によって選択された周波数の種類を表す番号、imax’は、前記移動局10が送信する電波の複数種類の周波数の数のうち、前記周波数選択部84によって選択された周波数の数である。すなわち、1≦i’≦imax’であり、f(i’)は周波数選択部84によって選択された周波数のそれぞれを表す。
【0101】
通信インタフェース90に対応するSB16においては、SB15において算出された移動局10および基地局12の間の距離の平均L’の値についての情報が通信ケーブル18を介してサーバ14に送信される。
【0102】
図15は、本発明の移動局測位システム8におけるサーバ14の制御作動を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SC1においては、サーバ14から各基地局12に対し、移動局10との距離を測定しサーバに送信するように指示が行なわれるとともに、いずれか1の基地局12に対し、移動局10への指令を無線により行なうように指示が行なわれる。この移動局10への指令は、移動局10に対し測位のための電波の発信を指示するものである。これは、本実施例においては、移動局10は外部との通信インタフェースとして送信部22および受信部26のみを有する一方、サーバ14は通信ケーブルを介した通信のための通信インタフェース92のみを有しており、サーバ14と移動局10とは直接通信を行なうことができないので、移動局10およびサーバ14は、移動局10との無線通信のためのインタフェースとしても作動可能な送信部52および受信部56などと、有線通信のための通信インタフェース90の両方を有している基地局12のいずれか1つを介して通信を行なうようにされているためである。
【0103】
サーバ14の通信インタフェース92等に対応するSC2においては、各基地局12において算出された移動局10および基地局12の間の距離の平均L’の値が、通信ケーブル18を介してサーバ14によって受信される。ここで、好適には、3以上の基地局12から送信されるまで受信が待機されてもよいし、SC2の実行から所定時間の間、各基地局12から前記L’の値が送信されるのを待機し、前記所定時間が経過した場合には3未満の基地局12からしか前記L’の値が得られていない場合であってもSC3以降が実行されるようにしてもよい。
【0104】
測位部96に対応するSC3においては、SC2で得られた3つ以上の各基地局12のそれぞれと移動局10との距離の平均L’、および前記3つ以上の各基地局12の位置に関する情報に基づいて、移動局10の位置の推定が行なわれる。移動局10の位置の推定は、例えば、前記式(3)を満たす(x,y)を算出することにより行なわれる。このとき、例えば前記式(3)においては、第1基地局12Aと移動局10との距離はL1とされていたが、これに代えて、SC2において第1基地局12Aから得られたL’の値が用いられる。他の基地局12についても同様である。
【0105】
続くSC4およびSC5は位置候補選択部98などに対応する。まず、SC4においては、SC3において算出された移動局10の位置が複数であったか否かが判断される。算出された移動局10の位置が1つであった場合には、本ステップの判断が否定され、その算出された位置が移動局10の位置であるとされて、本フローチャートは終了する。一方、算出された移動局10の位置が2つ以上であった場合には、本ステップの判断が否定され、続くSC5が実行される。
【0106】
位置候補選択部98、領域情報比較部100、履歴情報比較部102などに対応するSC5においては、SC3において算出された複数の移動局10の位置の候補のうち、いずれかが移動局10の位置として選択される。この選択は、前記移動局10の位置の候補についての情報と、移動局10が移動可能とされる移動可能領域の位置についての情報、および/または移動局10の移動の履歴に関する情報とを比較することによって行なわれる。具体的には例えば、前記移動可能領域の内側にない移動局10の位置の候補は候補から除外されることにより、あるいは、移動局の移動履歴から推定される現在の移動局10の位置に近い移動局10の位置の候補が選択されることにより、移動局10の位置の候補のいずれかが現在の移動局10の位置として選択される。
【0107】
本実施例の移動局測位システム8によれば、前記周波数選択部84(SB8、SB9)によって選択される、前記受信強度測定部としてのRSSI測定回路82(SB7)によって測定された受信波強度値としてのRSSIのうち、該RSSIの値Rが所定の受信波強度範囲(Rlow≦R≦Rup)となる周波数f(i’)が選択され、前記測位部96(SC3)により、周波数選択部84によって選択された周波数f(i’)の電波に対応するRSSIの値と、予め算出されるRSSIの値と前記移動局10および基地局12間の距離との関係とに基づいて、前記移動局10および各基地局12間の距離Lがそれぞれ推定され、該推定された距離Lに基づいて移動局の位置(x,y)が算出されるので、前記所定の受信波強度範囲内となる周波数、すなわち、受信波強度値がノイズやマルチパスの影響を受けにくい周波数における受信波強度値を用いて前記移動局10および各基地局12間の距離Lがそれぞれ推定され、比較的誤差の小さい移動局10の測位を行なうことができる。
【0108】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、位置候補選択部98(SC4、SC5)により、複数の移動局10の位置の候補から、受信波強度値としてのRSSIと異なる情報に基づいて移動局10の位置が選択されるので、位置算出部としての測位部96(SC3)が移動局10の位置として複数の位置の候補を推定した場合に、位置候補選択部98により該複数の位置の候補のいずれか1つを移動局10の位置として選択することができる。
【0109】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、位置候補選択部98の領域情報比較部100(SC5)は、受信波強度値としてのRSSIと異なる情報として移動局10が移動可能な領域に関する情報に基づいて移動局10の位置を選択するので、予め既知である移動局10が移動可能な領域に関する情報に基づいて移動局10の位置が選択される。
【0110】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、位置候補選択部98の履歴情報比較部102(SC5)は、受信波強度値としてのRSSIと異なる情報として移動局10の移動履歴に関する情報に基づいて移動局10の位置を選択するので、移動局10の測位が繰り返し行なわれる場合において繰り返し毎に算出される移動局10の位置である移動履歴に基づいて移動局10の位置が選択される。
【0111】
また、前述の実施例の基地局12によれば、移動局10が送信する複数の周波数f(i)(1≦i≦imax)の電波を受信可能な受信部56と、該受信部56により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値としてのRSSIを前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部82(SB6)とを備えるので、移動局測位システム8に好適に適用される。
【0112】
また、前述の実施例の移動局10によれば、複数の周波数f(i)(1≦i≦imax)の電波の送信が可能な送信部22(SA6)を備えるので、移動局測位システム8に好適に適用される。
【0113】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0114】
本実施例においても、移動局測位システム8は前述の実施例のものと同様のもの、すなわち例えば図1に示される構成の移動局測位システム8が用いられる。また、移動局測位システム8を構成する移動局10および基地局12も、前述の実施例のもの、すなわち、例えば図2および図3にそれぞれ示される構成を有する移動局10および基地局12と同様の構成を有する。
【0115】
また、本実施例においても、前述の実施例1と同様に、移動局10の周波数切換部46および基地局12の周波数切換部76は、例えば予め移動局10の記憶部50および基地局12の記憶部80にそれぞれ記憶されたタイムチャートに従って、移動局10の分周器38および基地局12の分周器68に対し分周比Nをそれぞれ設定し、移動局10のPLL回路30および基地局12のPLL回路60の出力周波数を変化させる。ここで、前述の実施例1においては、移動局10による電波の送信は、予め設定されたimax種類の周波数の電波のそれぞれについて少なくとも1回の送信が行なわれればよいものとされていたが、本実施例においては、前記imax種類の周波数の電波のそれぞれについて、予め定められた所定回数であるs回(s>1)だけ送信が行なわれるように、例えば前記移動局10の記憶部50に記憶されたタイムチャートが設定されている。また、同様に基地局12においては、移動局10が送信する電波を受信し、その周波数ごとに受信波強度値が受信できるよう、基地局12の記憶部80に記憶されたタイムチャートが設定されている。
【0116】
この所定回数であるsは、例えば、後述する存在確率算出部152において移動局10および基地局12間の距離に対する移動局10の存在確率を算出する際に算出される平均および分散が一定の効果が得られるものとなる数であり、具体的には例えば5(回)である。
【0117】
また、基地局12の距離算出部88は、前述の実施例1においては、前記移動局10が送信する複数種類の周波数の電波のそれぞれについて、基地局12の受信部56によって受信された電波の受信電力の値に基づいて、電波の送信源である移動局10とその電波を受信した基地局12との距離Lf(i)を算出し、前記周波数選択部によって選択された周波数に対応する前記距離Lf(i)の平均L’を算出した。一方、本実施例においては、移動局10と基地局12との間で、前記複数種類の周波数の電波のそれぞれについて所定回数(s回)の電波の送受信が行なわれることから、距離算出部88はまず、前記複数種類の周波数のうち、前記周波数選択部84により選択された周波数のそれぞれについて、前記所定回数だけ行なわれた電波の受信のそれぞれにおいて、RSSI測定回路82によって測定されたRSSIの値がRSSI−受信電力変換部86により変換されることにより得られる受信電力に基づいて、移動局10と基地局12との距離を算出する。そして前記所定回数の受信に対応して得られた移動局10と基地局12との距離について、それらの各周波数における平均Lf(i)を算出する。
【0118】
さらに距離算出部88は、前記複数種類の周波数のそれぞれについて得られた移動局10と基地局12との距離の平均について、その平均L’を算出する。
【0119】
具体的には例えば、i’を前記周波数選択部84により選択された周波数の種類を表す番号、imax’を前記周波数選択部84により選択された周波数の数、jを各周波数における測定回数、sを前記所定回数、すなわち、各周波数における測定回数の総数とすると、距離算出部88は、次式(6)
【数2】

のように前記平均L’を算出する。なお、Lf(i’,j)は、周波数f(i’)についてj番目の受信を行なった際のRSSIに基づいて算出される距離である。
【0120】
また、RSSI測定回路82によって測定されたRSSIの値がRSSI−受信電力変換部86によって変換されることによって得られる受信波の受信電力の値についての情報や、周波数選択部84によって選択された周波数についての情報は、通信インタフェース90を介してサーバ14に送信されている。
【0121】
図16は、本実施例における移動局測位システム8を構成するサーバ14の有する機能の概要を説明するブロック図である。サーバ14は有線通信インタフェース92、いわゆるマイコン等によって構成される制御部94、記憶部104などによって構成される。このうち、通信インタフェース92、および記憶部104は前述の実施例におけるサーバ14(図4参照)と共通するものであるので、説明を省略する。また、制御部94は存在確率算出部132、位置算出部134、位置候補選択部98を有し、制御部94のCPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、これら存在確率算出部132、位置算出部134、位置候補選択部98などにおける処理を実行するようになっている。
【0122】
存在確率算出部132は、移動局10および基地局12間の距離に対する、その距離となる確率分布を算出する。本実施例においては、基地局12の位置は固定され、移動局10は移動可能とされていることから、前記確率分布は、移動局10が基地局12からの距離に対する、その距離となる位置に移動局10が存在する確率を表す確率分布を表すこととなる。
【0123】
具体的には、存在確率算出部132は、次のように前記確率分布を算出する。まず、RSSI測定回路82によって測定されたRSSIの値がRSSI−受信電力変換部86によって変換されることによって得られる受信波の受信電力の値のうち、周波数選択部84によって選択された周波数の電波の受信電力PRの値の平均PRAVおよび分散σPRを次式(7)および(8)のようにそれぞれ算出する。
【数3】

ここで、i’は前記周波数選択部84によって選択された周波数の種類を表す番号、imax’は、前記移動局10が送信する電波の複数種類の周波数の数のうち、前記周波数選択部84によって選択された周波数の数である。すなわち、1≦i’≦imax’であり、f(i’)は周波数選択部84によって選択された周波数のそれぞれを表す。また、PRf(i’)は、周波数f(i’)の電波について複数回受信を行なった際における受信電力の平均であり、PRf(i’,j)は、周波数f(i’)についてj番目の受信を行なった際の受信電力である。
【0124】
ここで、ある位置にある移動局10から送信された電波が、位置が固定された基地局12において受信される際においては、真の伝搬距離は変化しない一方、場所的な要因、例えば周囲の人や自動車などが動くことにより、基地局12において受信される電波の受信電力PRf(i’,j)が変化する。そして、この変化の分布は、十分な回数の受信を行えば正規分布となり、その平均および分散はそれぞれ、前述の式(7)および(8)によって算出されるPRAVおよびσPRである。
【0125】
この前記受信電力PRf(i’,j)の分布は、次式(9)によって表される。
【数4】

ここで、P(PRAV|L)は、移動局10および基地局12間の距離がL(m)である場合に、受信電力PRの値が前記平均の値PRAV(dBm)となる確率を表す。また、PR(L)(dBm)は、移動局10および基地局12間の距離がL(m)である場合の受信電力の理論値であり、例えば前記(2)式で表される。存在確率算出部132は前述の式(9)のように算出された受信電力PRf(i’,j)の分布に基づいて、移動局10および基地局12間の距離に対する、移動局10がその距離となる位置に存在する確率を算出する。
【0126】
前述のように、前記変化の分布は正規分布となるので、移動局10から送信された電波が基地局12において受信される際のある値の受信電力PRとなる場合に、移動局10および基地局12間の距離Lの値に対して前記ある値の受信電力PRが得られる確率分布が、例えば図17に示すP1のように得られる。言い換えればこの確率分布P1は、受信電力がある値PRである場合において、移動局10および基地局12間の距離Lがそれぞれの値である確率分布を表している。また、図17に示す確率分布P2は、前記P1の場合とは異なる値の受信電力PRについて、同様に算出される確率分布を表している。特に本実施例においては、基地局12の位置は固定される一方、移動局10は移動可能であることから、移動局10の存在位置の確率分布であるともいえる。
【0127】
図17は、例えば前記(2)式で表される、移動局10および基地局12間の距離Lと基地局12における電波の受信電力PRとの関係と、受信電力PRがRおよびR’である場合における前記確率分布であるP1およびP2とを、共通する前記距離Lを表す横軸において表した図である。この図17において、確率分布P1あるいはP2について、その確率の値が最大となる移動局10と基地局12との距離L0あるいはL0’は、基地局12における受信電力PRの値がR0あるいはR0’である場合に、移動局10が存在する確率が最も高い移動局10および基地局12間の距離Lを表している。
【0128】
一方、確率分布P1あるいはP2について、その確率の値が最大となる移動局10および基地局12間の距離L0あるいはL0’に対応する基地局12における受信電力PRの値は、図17の上段に示された移動局10および基地局12間の距離Lと基地局12における電波の受信電力PRとの関係を参照すると、それぞれR0あるいはR0’となっている。このR0あるいはR0’が基地局における受信電力の平均PRAVである。すなわち、図17の下段に表される基地局12での電波の受信電力の値PRの場合の確率分布について、その確率が最大となる移動局10および基地局12間の距離Lは、前記基地局12の距離算出部88において算出される移動局10および基地局12間の距離の平均L’の値と等しい。また、この距離の平均L’の値は、前記確率分布を算出する際における受信電力の平均PRAVを、前記移動局10および基地局12間の距離Lと基地局12における電波の受信電力PRとの関係に適用して得られる値である。
【0129】
このように、存在確率算出部132は、移動局10からの電波を受信した各基地局12のそれぞれについて前述のように、算出された受信電力の平均移動局10および基地局12間の距離に対する、移動局10がその距離となる位置に存在する確率の分布を算出する。すなわち、受信電力PRの平均PRAVおよび分散σPRが算出されると、これらに対応する移動局10の確率分布を算出する。
【0130】
なお、図17においては、基地局12から一方向の距離のみについての確率分布を示したが、実際には基地局12から移動局10の方向は特定されないので、基地局12からある距離Lの位置に移動局10が存在する、との表現は、基地局12を中心とする半径Lの円上のいずれかの位置に移動局10が存在することになる。従って、移動局10が平面上を移動可能とされている場合に、移動局10の存在確率分布は、基地局12の位置を中心に放射状に変化する。図18は、移動局10が平面上を移動可能とされている場合に、移動局10の存在確率分布を説明する図である。移動局10の存在確率分布は図18に示す基地局12の位置を中心とする同心円142a乃至142cにより等高線状に表現されている。このうち、円142bが存在確率が最も高い位置を表し、円142aおよび142cは存在確率が同じ値である位置を表している。なお、図18におけるI−I’断面図として記載されているのは、前記I−I’の位置における移動局10の存在確率を縦軸として示したものであり、図17に示した関係に相当する。
【0131】
図16に戻って、位置算出部134は、前記存在確率算出部132によって算出される、移動局10からの電波を受信した各基地局12についての各基地局12および移動局10間の距離に対する、移動局10がその距離となる位置に存在する確率の分布に基づいて、移動局10の位置を算出する。移動局算出部134は、結合確率算出部136および最大確率位置判定部138を有している。このうち、結合確率算出部136は、前述の各基地局12および移動局10間の距離に対する、移動局10がその距離となる位置に存在する確率の分布のそれぞれに基づいて、これらの結合確率を算出する。そして、最大確率位置判定部138は、前記結合確率算出部136によって算出された前記結合確率が最大となる位置に基づいて移動局10の位置を算出する。
【0132】
図19は、移動局10からの電波を受信した第1基地局12A、第2基地局12Bおよび第3基地局12Cの3つの基地局について、前記存在確率算出部132によって算出される、各基地局12および移動局10間の距離に対する、移動局10がその距離となる位置に存在する確率の分布をそれぞれ示した図である。例えば図19が示す平面において、第1基地局12A乃至第3基地局12Cが存在し、また、移動局10がその平面を移動可能である場合を説明する図である。図19において、第1基地局12Aの位置を中心とする同心円144a、144b、144cは第1基地局12Aおよび移動局10間の距離に対する、移動局10がその距離となる位置に存在する確率の分布を示している。また、第2基地局12Bの位置を中心とする同心円146a、146b、146cは第2基地局12Bおよび移動局10間の距離に対する、移動局10がその距離となる位置に存在する確率の分布を、第3基地局12Cの位置を中心とする同心円148a、148b、148cは第3基地局12Cおよび移動局10間の距離に対する、移動局10がその距離となる位置に存在する確率の分布をそれぞれ示している。なお、これらの確率分布のそれぞれは、前述の図18に示した図に対応する。すなわち、円144bの半径に対応する距離が、第1基地局12Aおよび移動局10間の距離として確率が最も高い距離を表しており、円144bは移動局10が存在する確率が最も高い位置の連なりである。円146b、円148bについても、それぞれ第2基地局12B、第3基地局12Cについて同様である。
【0133】
かかる場合において、結合確率算出部136は、移動局10が存在し得る位置のそれぞれに対し、結合確率を算出する。この結合確率は、前記移動局10が存在し得る位置における、各基地局12のそれぞれに対する移動局10の存在確率を乗ずることによって得られる。すなわち、ある位置について、第1基地局12Aに対する移動局10の存在確率がg1、第2基地局12Bに対する移動局10の存在確率がg2、第3基地局12Cに対する移動局10の存在確率がg3である場合には、結合確率算出部136はその位置における移動局10の結合確率Gを
G=g1×g2×g3 …(10)
のように算出する。ここで、第1基地局12Aに対する移動局10の存在確率g1は、前記存在確率算出部132によって算出される移動局10および第1基地局12A間の距離に対する、その距離となる移動局10の存在確率分布における、前記ある位置と第1基地局12Aとの距離に対する移動局10の存在確率の値であり、第2基地局12Bに対する移動局10の存在確率g2および第3基地局12Cに対する移動局10の存在確率g3は同様に、それぞれ前記存在確率算出部132によって算出される移動局10および第2基地局12B間の距離に対する、その距離となる移動局10の存在確率分布における、前記ある位置と第2基地局12Bとの距離に対する移動局10の存在確率の値、および移動局10および第3基地局12C間の距離に対する、その距離となる移動局10の存在確率分布における、前記ある位置と第3基地局12Cとの距離に対する移動局10の存在確率の値およびである。
【0134】
最大確率位置判定部138は、前述のように算出される結合確率Gが、最も大きい値となる位置を判定する。具体的には例えば、最大確率位置判定部138はまず、移動局10が移動可能な領域を例えば所定の間隔dの格子状に区切り、その各格子点における結合確率Gの値を算出する。図20は格子点の設定の一例を説明する図である。すなわち、移動局10が移動可能な領域が、一辺(格子間隔)がd(m)の格子により区切られ、その格子点Q11、Q12、Q13、…、Qrs、…が設定される。この一辺の長さdは、例えば、予め移動局測位システム8に要求される測位精度や、例えば図17におけるΔRのように示される前記RSSI測定回路82におけるRSSI測定の分解能、移動局10が送信する電波の周波数などに基づいて設定される。そして、最大確率位置判定部138は、算出された各格子点ごとの結合確率Gの値を比較し、その値が最も大きい格子点を選択する。
【0135】
位置算出部134は、この様にして選択された、結合確率Gの値がもっとも大きい格子点の位置が移動局10の位置であるとして算出する。
【0136】
なお、位置候補選択部98は、前述の実施例1と同様の作動をするものであって、位置算出部134によって算出された移動局10の位置が複数である場合、すなわち、結合確率Gの値が最も大きい値となる格子点が2つ以上存在する場合に、これらを移動局10の位置の候補とする。そして、移動局の存在し得る領域に関する情報である領域情報、あるいは移動局の位置の履歴に関する情報である移動履歴情報の少なくとも一方に基づいて、前記の移動局10の位置の候補のいずれかを移動局10の位置として選択する。なお、このとき、結合確率Gの値が同一である格子点が2つ以上存在する場合にこれらを移動局10の位置の候補としても良いし、あるいは最大となった結合確率Gの値から所定の範囲に結合確率の値が含まれる格子点が存在する場合にこれらを移動局10の位置の候補としてもよい。
【0137】
図21は、本発明の別の実施例の移動局測位システム8における移動局10の制御作動を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SD1においては、移動局10に対し、電波を送信するように指令が行なわれたか否かが判断される。この指令は、後述する基地局12の作動を説明するフローチャートである図22のステップSE2が実行されることによって行なわれる。この指令は、例えば移動局10の受信部26によって受信され、受信波から指令を含む情報が取り出された後、制御部44においてその内容が解析・実行される。そして、この指令が行なわれた場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSD2以降が実行される。一方、指令が行なわれていない場合には、本ステップの判断が否定され、再びSD1が実行される。すなわち、指令の待機が行なわれる。
【0138】
SD2においては、移動局10の送信する電波の周波数の種類を表す変数iが1に、また、各周波数についての電波の送信回数を表す変数jが1とされ、1番目の周波数の1回目の電波の送信の準備が行なわれる。この変数iと電波の周波数f(i)との対応づけは、例えば予め記憶部50に記憶されていればよい。そして、周波数切換部46などに対応するSD3においては、PLL回路30から出力される周波数が、変数iに対応する周波数f(i)となるように、分周比Nが設定される。
【0139】
SD4においては、タイマ48の内容がリセット、すなわち時間を記録するカウンタの内容が零とされるとともに、電波の送信時間の計測が開始される。続くPLL回路30、送信部22などに対応するSD5においては、SD3において設定された周波数f(i)の電波が所定の出力により送信される。
【0140】
SD6においては、SD4において開始されたタイマ48で計測される電波の送信時間が、予め設定された規定送信時間だけ経過したか否か、すなわちタイムアウトしたか否かが判断される。この規定送信時間は、少なくとも基地局12において受信波強度値としてのRSSIを測定するのに十分な時間を上回るように設定される。そして、送信時間が前記規定送信時間を上回った場合には本ステップの判断が肯定され、SD7以降が実行される。一方、送信時間が前記規定送信時間に達していない場合には、本ステップの判断が否定され、引き続き電波の送信が行なわれる。
【0141】
SD6の判断が肯定された場合、すなわち、周波数f(i)の電波が前記規定送信時間だけ送信された場合に実行されるSD7においては、電波の送信が終了させられる。そして、続くSA8において、電波の周波数の種類を表す変数iが1だけ繰り上げられる。すなわち、次の種類の周波数の電波の送信に備える。
【0142】
SD9においては、電波の周波数の種類を表す変数iが、予め定められた送信する電波の周波数の種類の総数imaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、予め3種類の周波数の電波を送信するようにされている場合においては、変数iが3を上回ったか否かが判断される。そして、変数iがimaxを上回った場合には、全ての種類の周波数の電波の送信が完了したとして、本ステップの判断が肯定され、SD10が実行される。一方、変数iがimaxと等しいあるいはimaxを下回った場合には、未だ送信を行なっていない周波数の電波が存在するとして、本ステップの判断が否定され、SD3以降が実行される。
【0143】
SD9の判断が肯定された場合に実行される場合、すなわち、全ての種類の周波数の電波が1回づつ送信された場合に実行されるSD10においては、電波の周波数の種類を表す変数iが1にリセットされ、また、各周波数についての電波の送信回数を表す変数jが1だけ繰り上げられる。すなわち、全ての種類の周波数の電波の送信を再度繰り返すのに備える。
【0144】
SD11においては、各周波数についての電波の送信回数を表す変数jが、予め定められた各周波数の電波を送信する回数の総数jmaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、予め各周波数の電波を5回ずつ送信するようにされている場合においては、変数jが5を上回ったか否かが判断される。そして、変数jがjmaxを上回った場合には、全ての種類(imax)の周波数の電波を予め定められた回数(jmax)だけ送信が完了したとして、本ステップの判断が肯定され、本フローチャートが終了させられる。一方、変数jがjmaxと等しいあるいはjmaxを下回った場合には、各周波数について所定回数(jmax)だけ送信を行なっていないとして、本ステップの判断が否定され、SD3以降が実行される。
【0145】
図22は、本発明の別の実施例の移動局測位システム8における各基地局12の制御作動を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SE1においては、サーバ14から各基地局12に対し、移動局10との距離を測定しサーバに送信するように指示が行なわれたか否かが判断される。この指令は、後述するサーバ14の作動を説明するフローチャートである図24のSF1が実行されることによって行なわれる指令である。
【0146】
SE2においては、基地局12から移動局10に対して、測位のための電波を送信するように指令が行なわれる。この指令は、例えば、基地局12の制御部74において生成された指令に関する情報を含む電波が送信部52から送信される。なお、この基地局12から移動局10への指令はいずれか1つの基地局12によって行なわれればよい。
【0147】
SE3においては、基地局12の受信する電波の周波数の種類を表す変数iが1に、また、各周波数についての電波の送信回数を表す変数jが1とされ、1番目の周波数の1回目の電波の受信の準備が行なわれる。この変数iと電波の周波数f(i)との対応づけは、例えば予め記憶部80に記憶されていればよい。そして、周波数切換部76などに対応するSE4においては、PLL回路60から出力される周波数が、変数iに対応する周波数f(i)となるように、分周比Nが設定される。
【0148】
SE5においては、タイマ78の内容がリセット、すなわち時間を記録するカウンタの内容が零とされるとともに、電波の受信時間の計測が開始される。続くPLL回路60、受信部52などに対応するSE6においては、SE4において設定された周波数f(i)の電波が受信され、RSSI測定回路82に対応するSE7においては、SE6において受信された電波の受信波強度値として、例えばRSSIが測定される。
【0149】
続くSE8およびSE9は周波数選択部84に対応する。まず、SE8においては、SE7で測定されたRSSIの値Rf(i)が、予め定められた受信波強度範囲に含まれるか否か、すなわち、Rlow≦Rf(i)≦Rupを満たすか否かが判断される。そして、SE7で測定されたRSSIの値Rf(i)がRlow≦Rf(i)≦Rupを満たす場合には、本ステップの判断が肯定され、SE10以降が実行される。一方、SE7で測定されたRSSIの値Rf(i)がRlow≦Rf(i)≦Rupを満たさない場合には、本ステップの判断が否定され、SE9が実行される。
【0150】
SE9は、SE8の判断が否定された場合、すなわちRSSIが前記受信波強度範囲の上限を上回る、あるいは下限を下回る場合に実行されるステップである。本ステップにおいては、SE8の判断を否定するRSSIを測定した際の電波の周波数が、後述するSE14における距離の算出の際に用いられないものとされる。逆に言えば、SE8の判断が肯定され、本ステップが実行されない場合には、SE8の判断を肯定するRSSIを測定した際の電波の周波数が、SE14における距離の算出の際に用いられるものとして選択される。
【0151】
SE10においては、SE5において開始されたタイマ48で計測される電波の受信時間が、予め設定された規定受信時間だけ経過したか否か、すなわちタイムアウトしたか否かが判断される。この規定受信時間は、例えば、前記移動局10における規定送信時間と同じとなるように設定される。そして、受信時間が前記規定受信時間を上回った場合には本ステップの判断が肯定され、SE11以降が実行される。一方、受信時間が前記規定受信時間に達していない場合には、本ステップの判断が否定され、引き続き電波の受信作動が行なわれる。
【0152】
SE10の判断が肯定された場合、すなわち、周波数f(i)の電波が前記規定受信時間だけ受信された場合に実行されるSE11においては、電波の受信が終了させられる。そして、続くSE12において、電波の周波数の種類を表す変数iが1だけ繰り上げられる。
【0153】
SE13においては、電波の周波数の種類を表す変数iが、予め定められた受信する電波の周波数の種類の総数imaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、予め3種類の周波数の電波を受信するようにされている場合においては、変数iが3を上回ったか否かが判断される。この受信する電波の周波数の種類の総数imaxは、移動局10によって送信される電波の周波数の種類の総数imaxと等しくされる。そして、変数iがimaxを上回った場合には、全ての種類の周波数の電波の受信が完了したとして、本ステップの判断が肯定され、SE14以降が実行される。一方、変数iがimaxと等しいあるいはimaxを下回った場合には、未だ受信を行なっていない周波数の電波が存在するとして、本ステップの判断が否定され、SE4以降が実行される。
【0154】
SE13の判断が肯定された場合に実行される場合、すなわち、全ての種類の周波数の電波が1回づつ受信された場合に実行されるSE14においては、電波の周波数の種類を表す変数iが1にリセットされ、また、各周波数についての電波の受信回数を表す変数jが1だけ繰り上げられる。すなわち、全ての種類の周波数の電波の受信を再度繰り返すのに備える。
【0155】
SE15においては、各周波数についての電波の受信回数を表す変数jが、予め定められた各周波数の電波を送信する回数の総数jmaxを上回ったか否かが判断される。すなわち、予め各周波数の電波を5回ずつ受信するようにされている場合においては、変数jが5を上回ったか否かが判断される。そして、変数jがjmaxを上回った場合には、全ての種類(imax)の周波数の電波を予め定められた回数(jmax)だけ受信が完了したとして、本ステップの判断が肯定され、本フローチャートが終了させられる。一方、変数jがjmaxと等しいあるいはjmaxを下回った場合には、各周波数について所定回数(jmax)だけ受信を行なっていないとして、本ステップの判断が否定され、SE4以降が実行される。本実施例では5回の送受信としたが信頼度係数が必要な精度(誤差範囲)を満たすように設定されて回数が決定されるものである。
【0156】
RSSI−受信電力変換部86および距離算出部88に対応するSE16においては、まず、SE8における判断が肯定された電波の周波数f(i’)のそれぞれについて、SE7でj回測定されたRSSIの値Rf(i’,j)が、例えばdBmの単位で表されることによって対数表現された受信電力PRf(i’,j)に換算される。この換算は、例えば予め記憶部80に記憶されたテーブルや関係式などを用いることで行なわれる。そして、換算された受信電力PRの値に基づいて、移動局10および基地局12の間の距離Lf(i’,j)が算出される。この算出は、例えば予め記憶部80に記憶された図5に示すような関係に基づいて行なわれる。このとき、SE8における判断が肯定された電波の周波数f(i’)とは、例えば各周波数についてのj回の測定のうち、j回の全てについてSE8の判断が肯定された周波数としてもよいし、1回でもSE8の判断が肯定された周波数としてもよい。
【0157】
続くSE17およびSE18は距離算出部88に対応する。このうち、SE17においては、SE16において算出されたLf(i’,j)の各周波数f(i’)についての平均距離Lf(i’)が算出される。
【0158】
また、SE18においては、SE17において各周波数ごとに算出された移動局10および基地局12の間の距離Lf(i’)の平均L’が算出される。この平均は前述の実施例と同様に、式(5)により算出される。
【0159】
通信インタフェース90に対応するSE19においては、SE18において算出された移動局10および基地局12の間の距離の平均L’の値についての情報が通信ケーブル18を介してサーバ14に送信される。また、前述のSE16において算出される受信電力PRの値が、その受信電力を測定した電波の周波数に関する情報とともにサーバ14に送信される。
【0160】
図23は、前述の図21に示すフローチャートに従って作動する移動局10の作動と、図22に示すフローチャートに従って作動する基地局12の作動とを、共通する時間軸上において説明する図である。図23において、上段には基地局12の作動が、下段には移動局10の作動がそれぞれ示されている。また、図23においては、時間軸は右向き、すなわち図において右にいくほど時間が経過するように設けられている。
【0161】
まず、SE2に対応する152においては、サーバ14から距離測定の指令を受けた基地局12から移動局10に対し電波を送信するよう要求が行なわれる。これを受け、移動局10においては、204乃至232において、所定の種類の周波数のそれぞれについて、所定の回数だけ電波の送信が行なわれる。このうち、204、206および208はそれぞれi=1、2および3、すなわち電波の周波数がf(1)、f(2)およびf(3)である1回目(j=1)の送信に対応する。同様に、210、212、214は2回目(j=2)、216、218、220は3回目(j=3)、222、224、226は4回目(j=4)、228、230、232は5回目(j=5)の送信である。そして、各周波数について所定の回数jmax回(=5)だけ送信が行なわれると、移動局10の作動は終了する。
【0162】
一方、基地局12においては、152において移動局10に対し電波を送信するよう要求が行なわれた後、154乃至182において、移動局10が送信する電波の周波数と同一の周波数で電波の受信をおこない、その受信波強度値(RSSIなど)を測定する。このうち、154、156および158はそれぞれi=1、2および3、すなわち電波の周波数がf(1)、f(2)およびf(3)である1回目(j=1)の受信に対応する。同様に、156、162、164は2回目(j=2)、166、168、170は3回目(j=3)、172、174、176は4回目(j=4)、178、180、182は5回目(j=5)の受信である。そして、各周波数について所定の回数jmax回(=5)だけ受信が行なわれると、基地局12においては、SE16およびSE17に対応する184において、周波数選択部84によって選択された周波数f(i’)に対応するRSSIに基づいて、移動局10と基地局12との距離Lf(i’,j)が算出され、さらにそれら距離Lf(i’,j)の各周波数f(i’)についての平均距離Lf(i’)が算出される。さらに、SE18に対応する186においては、周波数選択部84によって選択された全ての周波数f(i’)についての平均距離Lf(i’)の平均L’算出され、SE19に対応する188においては、その算出された平均L’についての情報がサーバ14に送信される。
【0163】
なお、このとき、移動局10から電波を送信している時間と基地局12がその電波を受信している時間が重なる時間が、基地局12のRSSI測定回路82においてRSSIの測定をするのに十分な時間であれば、基地局12と移動局10とにおいて、対応する電波の送信開始時刻と受信開始時刻、あるいは送信終了時刻と受信終了時刻とは必ずしも一致していなくてもよい。例えば、周波数f(2)の3回目の電波の送受信について、移動局10による電波の送信が行われる220と基地局12による電波の受信が行なわれる170とが重なる時間である、Δt=t222−t172が基地局12のRSSI測定回路82においてRSSIの測定をするのに十分な時間であれば、移動局10における電波の送信開始時刻t220と基地局12における電波の受信開始時刻t170とが必ずしも一致している必要はなく、また、移動局10における電波の送信終了時刻t222と基地局12における電波の受信終了時刻t172とが一致している必要もない。すなわち、移動局10のタイマ48および基地局12のタイマ78とが完全に同期させられる必要はない。
【0164】
図24は、本発明の本実施例の移動局測位システム8におけるサーバ14の制御作動を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SF1においては、サーバ14から各基地局12に対し、移動局10との距離を測定しサーバに送信するように指示が行なわれるとともに、いずれか1の基地局12に対し、移動局10への指令を無線により行なうように指示が行なわれる。前述の実施例と同様に、移動局10への指令は、移動局10に対し測位のための電波の発信を指示するものであり、基地局12のいずれか1つを介して通信を行なうようにされている。
【0165】
サーバ14の通信インタフェース92等に対応するSF2においては、各基地局12において算出された移動局10および基地局12の間の距離の平均L’の値が、通信ケーブル18を介してサーバ14によって受信される。ここで、好適には、3以上の基地局12から送信されるまで受信が待機されてもよいし、SF2の実行から所定時間の間、各基地局12から前記L’の値が送信されるのを待機し、前記所定時間が経過した場合には3未満の基地局12からしか前記L’の値が得られていない場合であってもSF3以降が実行されるようにしてもよい。
【0166】
存在確率算出部132に対応するSF3においては、SE19によって各基地局12から送信される各基地局12および移動局10間の距離の平均L’、受信電力PRの平均PRAVおよび分散σPRについての情報に基づいて、移動局10および基地局12間の距離に対する、その距離となる確率分布を各基地局ごとに算出する。
【0167】
続く、SF4およびSF5は位置算出部134に対応する。このうち、結合確率算出部136などに対応するSF4においては、SF3において算出される各基地局12ごとの、基地局12および移動局10間の距離とその移動局10がその距離となる確率との関係に基づいて、結合確率Gが算出される。具体的には例えば、移動局10が移動可能な領域に所定の間隔で格子状に設けられた各格子点について、移動局10がその位置であるとした場合の各基地局12に対する存在確率を掛け合わせることにより結合確率Gが算出される。
【0168】
また、最大確率位置判定部138に対応するSF5においては、前記SF4において算出される結合確率Gに基づいて、移動局10の位置が推定される。具体的には、前記各格子点における結合確率Gの値を比較し、その結合確率Gの値が最も高い格子点を移動局10の位置であると推定される。
【0169】
続くSF6およびSF7は位置候補選択部98などに対応する。まず、SF6においては、SF5において算出された移動局10の位置が複数であったか否かが判断される。算出された移動局10の位置が1つであった場合には、本ステップの判断が否定され、その算出された位置が移動局10の位置であるとされて、本フローチャートは終了する。一方、算出された移動局10の位置が2つ以上であった場合には、本ステップの判断が否定され、続くSF7が実行される。
【0170】
位置候補選択部98、領域情報比較部100、履歴情報比較部102などに対応するSF7においては、SF5において算出された複数の移動局10の位置の候補のうち、いずれかが移動局10の位置として選択される。この選択は、前記移動局10の位置の候補についての情報と、移動局10が移動可能とされる移動可能領域の位置についての情報、および/または移動局10の移動の履歴に関する情報とを比較することによって行なわれる。具体的には例えば、前記移動可能領域の内側にない移動局10の位置の候補は候補から除外されることにより、あるいは、移動局の移動履歴から推定される現在の移動局10の位置に近い移動局10の位置の候補が選択されることにより、移動局10の位置の候補のいずれかが現在の移動局10の位置として選択される。
【0171】
前述の実施例の移動局測位システム8によれば、平均算出部としての存在確率算出部132(SF3)は、複数の基地局12のそれぞれについて、受信強度測定部としてのRSSI測定回路82によって所定の複数周波数f(i)のそれぞれについて複数回測定された前記受信波強度値としてのRSSIからからRSSI−受信電力変換部86により変換されて得られる対数表現された受信電力PRの平均PRAVおよび分散σPRを算出するので、特定の周波数においてノイズやマルチパスによる干渉などが発生する場合であっても、これらの影響による前記受信波強度値の変動を低減することができる。そして、前記存在確率算出部132は、算出された受信電力の平均PRAVおよび分散σPRと、予め算出された前記受信電力と前記移動局10および前記基地局12間の距離との関係とに基づいて、前記移動局10および前記基地局12間の距離に対する前記移動局10の存在確率分布を各基地局12ごとに算出し、前記結合確率算出部136(SF4)は、前記存在確率算出部132により前記複数の基地局12について測定された前記移動局10および前記基地局12間の距離に対する前記移動局10の存在確率分布に基づいて、移動局10の位置に対する該移動局10の存在確率分布を算出し、前記位置算出部134(SF5)は、前記結合確率算出部136によって算出された存在確率分布に基づいて移動局10の位置を算出するので、前記特定の周波数におけるノイズやマルチパスによる干渉などが発生する場合であっても、移動局10の測位における誤差が低減される。
【0172】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、前記位置算出部134(SF2)は、前記複数の基地局12のうち3局以上の基地局12のそれぞれと前記移動局10との距離に関する確率分布に基づいて移動局10の位置の算出を行なうので、例えば平面を移動する移動局10の位置を一意に算出することができるなど、移動局10の位置の算出を好適に行なうことができる。
【0173】
また、本実施例の移動局測位システム8によれば、周波数選択部84は、前記受信強度測定部としてのRSSI測定回路82によって測定された受信波強度値としてのRSSIのうち、そのRSSIの値Rが所定の受信波強度範囲(Rlow≦R≦Rup)内となる周波数f(i’)を選択し、前記平均算出部としての存在確率算出部132は、該周波数選択部によって選択された周波数f(i’)の電波に対する受信波強度値としてのRSSIからRSSI−受信電力変換部86により変換されて得られる対数表現された受信電力PRの平均PRAVおよび分散σPRを算出するので、前記所定の受信波強度範囲内となる周波数、すなわち、受信波強度値がノイズやマルチパスの影響を受けにくい周波数における受信波強度値を用いて受信電力PRの平均PRAVおよび分散σPRが算出される。
【0174】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、位置候補選択部98(SF6、SF7)により、複数の移動局10の位置の候補から、受信波強度値としてのRSSIと異なる情報に基づいて移動局10の位置が選択されるので、位置算出部としての位置算出部134(SF5)が移動局10の位置として複数の位置の候補を推定した場合に、位置候補選択部98により該複数の位置の候補のいずれか1つを移動局10の位置として選択することができる。
【0175】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、位置候補選択部98の領域情報比較部100(SF7)は、受信波強度値としてのRSSIと異なる情報として移動局10が移動可能な領域に関する情報に基づいて移動局10の位置を選択するので、予め既知である移動局10が移動可能な領域に関する情報に基づいて移動局10の位置が選択される。
【0176】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、位置候補選択部98の履歴情報比較部102(SF7)は、受信波強度値としてのRSSIと異なる情報として移動局10の移動履歴に関する情報に基づいて移動局10の位置を選択するので、移動局10の測位が繰り返し行なわれる場合において繰り返し毎に算出される移動局10の位置である移動履歴に基づいて移動局10の位置が選択される。
【0177】
また、前述の実施例の基地局12によれば、移動局10が送信する複数の周波数f(i)(1≦i≦imax)の電波を受信可能な受信部56と、該受信部56により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値としてのRSSIを前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部82(SB6)とを備えるので、移動局測位システム8に好適に適用される。
【0178】
また、前述の実施例の移動局10によれば、複数の周波数f(i)(1≦i≦imax)の電波の送信が可能な送信部22(SA6)を備えるので、移動局測位システム8に好適に適用される。
【0179】
なお、前述の実施例1および2においては、基地局12には周波数選択部84(SB8、SB9、SE8、SE9)が設けられ、RSSI測定回路82(SB7)によって測定された受信波強度値としてのRSSIのうち、該RSSIの値Rが所定の受信波強度範囲(Rlow≦R≦Rup)となる周波数f(i’)が選択され、その選択された周波数f(i’)の電波のRSSIのみが距離算出部88における移動局10および基地局12間の距離の算出、あるいは存在確率算出部132における受信電力の平均PRAVおよび分散σPRの算出に用いられるようにされたが、必ずしもこの様な態様に限られず、基地局12は周波数選択部84を含まない構成とされてもよい。この場合、測定されるすべての周波数f(i)の電波のRSSIが距離算出部88における移動局10および基地局12間の距離の算出、あるいは存在確率算出部132における受信電力の平均PRAVおよび分散σPRの算出に用いられる。この様な場合であっても、移動局10が送信するある特定の周波数の電波について、マルチパスやノイズの影響が生ずる場合に、その特定の周波数についての受信波強度値であるRSSIおよびマルチパスやノイズの影響が生じない周波数についてのRSSIの平均を用いて移動局10の位置の算出を行なうので、前記マルチパスやノイズの影響が生ずる特定の周波数の電波についてのRSSIのみを用いて移動局10の位置の算出を行なう場合にくらべて、前記マルチパスやノイズの影響を低減することができる。すなわち、基地局12は周波数選択部84を含まない構成とされても一定の効果を得ることができる。
【0180】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0181】
例えば、前述の実施例においては、基地局12には周波数選択部84(SB8、SB9、SE8、SE9)が設けられ、RSSI測定回路82(SB7)によって測定された受信波強度値としてのRSSIのうち、該RSSIの値Rが所定の受信波強度範囲(Rlow≦R≦Rup)となる周波数f(i’)が選択されたが、この様な態様に限られない。例えば、各基地局12において複数種類の周波数の電波のそれぞれについて、RSSI測定回路82によって複数回測定される受信波強度値としてのRSSIの値Rについて、周波数選択部84はその分散σを算出し、算出された分散σの値が予め定められた分散判定値σ_judgeよりも小さくなる周波数のみを選択してもよい。この場合、周波数選択部84は平均算出部に対応する。ここで、前記分散判定値σ_judgeの値は、例えば当該測定エリアにおいて位置精度と分散値の関係を予め測定して必要な精度に応じて設定される。この様にすれば、平均算出部としての周波数選択部84は、複数の基地局12のそれぞれについて、受信強度測定部としてのRSSI測定回路82によって前記所定の複数周波数のそれぞれについて複数回測定された前記受信波強度値であるRSSIの分散σを周波数ごとに算出し、算出された分散の値が所定の分散判定値σ_judgeよりも小さい周波数の電波が選択されるので、前記分散σが前記所定の分散判定値σ_judgeよりも小さい周波数、すなわち、受信波強度値がノイズやマルチパスの影響を受けない周波数の電波の受信結果に基づいて移動局10の位置の算出が行なわれる。
【0182】
また、前述の実施例においては、距離算出部88は、受信電力PRf(i’)もしくはPRf(i’,j)の値に基づいて移動局10および基地局12間の距離Lf(i’)もしくはLf(i’,j)を算出し、これらを平均化したが、この様な態様に限られない。例えば、受信電力PRf(i’)もしくはPRf(i’,j)の値を平均化し、平均化された受信電力の値に基づいて移動局10および基地局12間の距離Lf(i’)もしくはLf(i’,j)を算出してもよい。
【0183】
また、前述の実施例においては、各基地局12が受信した信号の強度(RSSI)から各基地局12のそれぞれと移動局10との距離を算出してサーバ14に送信する構成としたが、各基地局12は信号の強度信号をサーバ14に送信してサーバ14が距離を算出して処理を行ってもよい。すなわち、前述の実施例においては距離算出部88は各基地局12の電子制御装置72によって実現されたが、サーバ14の電子制御装置によって実現されてもよい。このようにすれば、受信強度から距離を算出するための演算をサーバ14に集約することができる。
【0184】
また、前述の実施例においては、周波数選択部84は前記受信強度範囲の下限値Rlowを、移動局測位システム8において移動局10と基地局12とが最も離れた状態にある場合の距離に対応する受信電力に対応するRSSIの値としたが、これに限られない。例えばマルチパスの影響を受けない場合においても生ずる受信電力の揺らぎによる誤判定を避けるため、所定の余裕を設けて設定することも可能である。すなわち、マルチパスの影響を受け、受信強度の値が著しく落ち込んだか否かを判定することができる値であればよい。
【0185】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明の移動局測位システムの構成の一例を説明する図である。
【図2】本発明の移動局測位システムを好適に構成する移動局の構成および機能の一例を説明するブロック図である。
【図3】本発明の移動局測位システムを好適に構成する基地局の構成および機能の一例を説明するブロック図である。
【図4】本発明の移動局測位システムを好適に構成するサーバの機能の一例を説明するブロック図である。
【図5】受信電力と、移動局および基地局間の距離との関係を説明する図である。
【図6】周波数変調される電波の周波数ごとの信号強度の一例と、ノイズの信号強度との関係を説明する図である。
【図7】複数の周波数の異なる電波についての、周波数変調される周波数ごとの信号強度の一例と、ノイズの信号強度との関係を説明する図である。
【図8】マルチパスを説明する図である。
【図9】複数の周波数の異なる電波についての、受信電力と、移動局および基地局間の距離との関係を説明する図であって、マルチパスが生ずる場合と生じない場合とを比較する図である。
【図10】測位部による移動局の位置の算出を説明する図である。
【図11】領域情報比較部による、複数の移動局の位置の候補と移動局が移動し得る領域との比較を説明する図である。
【図12】履歴情報比較部による、複数の移動局の位置の候補と移動局の移動履歴との比較を説明する図である。
【図13】本発明の一実施例における移動局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の一実施例における基地局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の一実施例におけるサーバの制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図16】本発明の別の実施例におけるサーバの機能の一例を説明するブロック図である。
【図17】移動局および基地局間の距離の値に対して、その距離となるように移動局が存在する確率を説明する図である。
【図18】移動局および基地局間の距離の値に対して、その距離となるように移動局が存在する確率を移動局が存在する平面上で説明する図である。
【図19】複数の基地局に対し、移動局および各基地局間の距離の値に対して、その距離となるように移動局が存在する確率を移動局が存在する平面上で各基地局について説明する図である。
【図20】存在確率算出部による結合確率の分布の算出が行われる格子点を説明する図である。
【図21】本発明の別の実施例における移動局の制御作動の一例を説明するフローチャートであって、図13に対応する図である。
【図22】本発明の別の実施例における基地局の制御作動の一例を説明するフローチャートであって、図14に対応する図である。
【図23】本発明の別の実施例における移動局と基地局の制御作動の一例を説明するタイムチャートである。
【図24】本発明の別の実施例におけるサーバの制御作動の一例を説明するフローチャートであって、図15に対応する図である。
【符号の説明】
【0187】
8:測位システム
10:移動局
12:基地局
8:移動局測位システム
22:送信部
56:受信部
82:受信強度測定部(RSSI測定回路)
84:周波数選択部
96:測位部
98:位置候補選択部
132:平均算出部(存在確率算出部)
132:存在確率算出部
136:結合確率算出部
134:位置算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局から送信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信結果に関する値と該複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、
前記移動局は、所定の複数の周波数の電波の送信が可能な送信部を備え、
前記基地局は、前記移動局が送信する所定の複数の周波数の電波を受信可能な受信部と、該受信部により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値を前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部とを備え、
前記複数の基地局のそれぞれについて、該受信強度測定部によって前記所定の複数周波数のそれぞれについて複数回測定された前記受信波強度値の平均および分散を算出する平均算出部と、
該平均算出部により算出された受信波強度値の平均および分散と、予め算出された前記受信波強度値と前記移動局および前記基地局間の距離との関係とに基づいて、前記移動局および前記基地局間の距離に対する前記移動局の存在確率分布を各基地局ごとに算出する存在確率算出部と、
該存在確率算出部により前記複数の基地局について測定された前記移動局および前記基地局間の距離に対する前記移動局の存在確率分布に基づいて、移動局の位置に対する該移動局の存在確率分布を算出する結合確率算出部と、
該結合確率算出部によって算出された存在確率分布に基づいて移動局の位置を算出する位置算出部と、を有すること
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記位置算出部は、前記複数の基地局のうち3局以上の基地局のそれぞれと前記移動局との距離に関する確率分布に基づいて移動局の位置の算出を行なうこと
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
複数の移動局の位置の候補から、前記受信波強度値と異なる情報に基づいて移動局の位置を選択する位置候補選択部を有し、
前記位置算出部が移動局の位置として複数の位置の候補を推定した場合に、前記位置候補選択部により該複数の位置の候補のいずれか1つを移動局の位置として選択すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記位置候補選択部は、前記受信波強度値と異なる情報として移動局が移動可能な領域に関する情報に基づいて移動局の位置を選択すること
を特徴とする請求項3に記載に移動局測位システム。
【請求項5】
前記位置候補選択部は、前記受信波強度値と異なる情報として移動局の移動履歴に関する情報に基づいて移動局の位置を選択すること
を特徴とする請求項3に記載に移動局測位システム。
【請求項6】
前記受信強度測定部によって測定された受信波強度値のうち、該受信波強度値が所定の受信波強度範囲内となる周波数を選択する周波数選択部を有し、
前記平均算出部は、該周波数選択部によって選択された周波数の電波に対する受信波強度値の平均および分散を算出すること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記平均算出部は、前記複数の基地局のそれぞれについて、該受信強度測定部によって前記所定の複数周波数のそれぞれについて複数回測定された前記受信波強度値の分散を前記複数周波数ごとに算出し、算出された分散の値が所定の分散判定値よりも小さい周波数の電波についての受信波強度値の平均および分散を算出すること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項8】
移動局から送信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信結果に関する値と該複数の基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、
前記移動局は、所定の複数周波数の電波の送信が可能な送信部を備え、
前記基地局は、前記移動局が送信する所定の複数周波数の電波を受信可能な受信部と、該受信部により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値を前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部とを備え、
前記受信強度測定部によって測定された受信波強度値のうち、該受信波強度値が所定の受信波強度範囲内となる周波数を選択する周波数選択部と、
該周波数選択部によって選択された周波数の電波に対応する受信波強度値と、予め算出される受信波強度値と前記移動局および基地局間の距離との関係とに基づいて、前記移動局および各基地局間の距離をそれぞれ推定し、該推定された距離に基づいて移動局の位置を算出する測位部とを有すること
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項9】
前記移動局が送信する複数の周波数の電波を受信可能な受信部と、
該受信部により受信した電波の強度に関する値である受信波強度値を前記受信結果に関する値として測定する受信強度測定部とを備え、
請求項1乃至8のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能であること
を特徴とする基地局。
【請求項10】
複数の周波数の電波の送信が可能な送信部を備え、
請求項1乃至8のいずれか1に記載の移動局測位システムに適用可能であること
を特徴とする移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−264747(P2009−264747A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110613(P2008−110613)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】