説明

移動局測位システム

【課題】移動局による電波の送信電力の変動の影響を受けることのない、電波の受信電力を利用した移動局測位システムを提供する。
【解決手段】移動局から送信された電波が各基地局において受信され、基地局の受信電力測定部に38よってそれぞれ測定された受信電力に基づいて、距離比算出部54により、対をなす基地局間の受信電力の差が算出され、受信電力の差に基づいて一方の基地局と移動局との距離と、他方の基地局と移動局との距離との距離比が算出される。算出された距離比を実現する位置を表す点の連なりである軌跡が軌跡生成部56により生成され、位置算出部58により、複数の基地局対についての軌跡の交点を算出することにより移動局の存在位置の候補が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である受信電力に基づいて移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、電池の消耗などにより移動局の送信電力の変化が生じた場合においても正確に測位を可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が発信(送信)する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける受信電力に基づいて移動局の位置の推定を行なう方法が提案されている。この方法においては、例えば、受信電力がRSSI値として測定され、予め実験やシミュレーションにより得られる前記受信電力と電波の発信側である移動局と電波の受信側である基地局との距離との関係に基づいて前記受信電力を測定した基地局と電波の発信源である移動局との距離を算出し、算出される前記複数の基地局と移動局との距離に基づいて移動局の位置が推定される。
【0003】
具体的には、RSSI値などによって得られる電波の受信電力に、予め実験的にあるいはシミュレーションなどによって得られる電波の受信電力と距離との関係を適用して、電波の発信源である移動局と受信局である基地局との距離を算出する。そして、これを3以上の基地局について行い、既知である各基地局の位置に関する情報と、算出された各基地局と移動局との距離に関する情報とに基づいて、例えば3点測量の原理などにより、移動局の位置を算出するものである。
【0004】
特許文献1には、電波を発信する基地局とその電波を受信する移動局との距離を、移動局における受信レベル(電界強度)の長区間中央値に基づいて算出する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−313972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、移動局はその移動性などを目的として例えば充電池などのバッテリなどによって駆動されることがある。移動局が電波を発信し、基地局が受信する構成とされる場合に、移動局を駆動するバッテリの残量が低下すると、移動局から送信される電波の送信電力(出力)が低下することがある。
【0007】
かかる場合においては、実際の受信電力(受信強度)と、移動局および基地局間の距離との関係は、例えば定格送信電力に基づいて予め実験やシミュレーションにより得られた関係とは異なるものとなるため、予め得られた関係に基づいて受信電力から移動局および基地局間の距離を算出しても、算出される距離に誤差が生ずるおそれがある。そのため、かかる距離を用いて移動局の測位を行なっても、移動局の位置を正確に測位することはできないという問題があった。
【0008】
図11は、所定の電力により送信された電波を受信した場合の受信電力の値と、その電波の送信源と受信した地点との距離との関係を表す図である。例えば、バッテリ28の充電量が十分であって移動局から所定の出力(電力)により電波が送信される場合を想定して、図11の曲線Rnormalで表される関係が予め得られている。かかる関係に基づいて、受信電力VrがVr=Vrnormalである場合には、その電波を受信した基地局は電波の送信源である移動局の距離がDnormalであると推定する。しかしながら、移動局のバッテリ28の充電量が低下し、移動局からの送信される電波の出力が低下した場合した場合には、前記受信電力と距離との関係は、予め算出された関係Rnormalとは異なる関係、例えば図11の曲線RnormalよりもΔだけ下側、すなわち受信電力の低い側にある曲線Rlowで表される関係となる。かかる場合においては、移動局と基地局との距離がDnormalである場合には、基地局で測定される受信電力はVrnormalより小さいVrlowである。逆に、基地局で測定される受信電力がVrlowである場合には、移動局と基地局との距離はDnormalと推定されるべきであるが、前記予め得られている関係である曲線Rnormalに基づいて推定される移動局と基地局との距離はDlowとされてしまう。このように、電波の送信源である移動局から電波が所定の出力によって行なわれることを前提として得られる電波の受信電力と距離の関係に基づいて、移動局と距離との距離を算出する場合、電波の送信源である移動局の状態によっては必ずしも正確な距離を算出することができないという問題があった。
【0009】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該基地局がそれぞれ受信した電波の受信電力に関する値と該基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムにおいて、2つの基地局における電波の受信電力の所定の演算結果に基づいて移動局の位置の算出(測位)を行なうことにより、予め得られる受信電力と移動局および基地局間距離との関係を用いずに移動局の測位を行なうことのできる移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該基地局がそれぞれ受信した電波の受信電力と該基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、(b)前記移動局は、所定の周波数の電波の発信が可能な発信部を備え、(c)前記基地局は、前記移動局が発信する電波を受信可能な受信部と、該受信部により受信した電波の受信電力を測定する受信電力測定部とを備え、(d)対をなす前記基地局である基地局対を構成する該基地局の該受信電力測定部によってそれぞれ測定された受信電力の所定の演算結果に基づいて、前記基地局対を構成する一方の基地局と前記移動局との距離と、前記基地局対を構成する他方の基地局と前記移動局との距離との距離比を基地局対のそれぞれについて算出する距離比算出部と、(e)該距離比算出部によって算出された距離比を実現する解の集合を前記基地局対毎にそれぞれ算出する解集合算出部と、(f)該解集合算出部により生成された複数の解集合の積集合を求めることにより該解集合の積集合に属する解を移動局の存在位置として算出する位置算出部とを有することを特徴とする。
【0011】
好適には、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、前記位置算出部により前記解集合の積集合に属する解が複数算出される場合において、前記位置算出部とは異なる方法により算出された前記移動局の位置情報に基づいて、前記位置算出部によって算出された複数の解に対応する移動局の存在位置の候補から前記移動局の存在位置を選択する位置候補選択部とを有することを特徴とする。
【0012】
また好適には、請求項3にかかる発明は、前記位置候補選択部は、前記移動局の移動可能な領域に関する情報に基づいて前記位置算出部が移動局の存在位置の候補として算出した位置のうち、いずれか1を移動局の位置として選択することを特徴とする。
【0013】
また好適には、請求項4にかかる発明は、前記位置候補選択部は、前記移動局の移動履歴情報に基づいて、前記位置算出部が移動局の存在位置の候補として算出した位置のうち、いずれか1を移動局の位置として選択することを特徴とする。
【0014】
また、請求項5にかかる発明は、前記位置算出部は、受信電力測定部により測定される受信電力が最も高い基地局を基準基地局として選択し、前記基地局対を該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択することを特徴とする。
【0015】
また好適には、請求項6にかかる発明は、(a)前記基地局のそれぞれが前記移動局より受信した電波における誤りの発生度合いである誤り率をそれぞれ算出する誤り率算出部を有し、(b)前記位置算出部は、該誤り率算出部によって算出される前記誤り率が最も小さい基地局を基準基地局として選択し、前記基地局対を該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択することを特徴とする。
【0016】
また好適には、請求項7にかかる発明は、前記位置算出部は、その受信電力測定部における分解能が最も高い基地局を基準基地局として選択し、前記基地局対を該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1にかかる発明によれば、前記距離比算出部により、前記基地局の前記受信電力測定部によってそれぞれ測定された受信電力の所定の演算結果に基づいて前記基地局対を構成する一方の基地局と前記移動局との距離と、前記基地局対を構成する他方の基地局と前記移動局との距離との距離比が前記基地局対のそれぞれについて算出され、前記解集合算出部により、前記距離比算出部によって算出された距離比を実現する解の集合が算出され、前記位置算出部により、前記解集合算出部によって算出された複数の解集合の積集合を求めることにより該解集合の積集合に属する解が移動局の存在位置として算出されるので、移動局の特定の送信電力の場合のもとで得られる受信電力と移動局および基地局間距離との関係を用いずに移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位に際して送信電力の影響を受けないため、移動局のバッテリ残量が少なくなり、送信電力が低下した場合でも、測位精度を保つことができる。
【0018】
また、請求項2にかかる発明によれば、前記位置候補選択部により、該位置算出部とは異なる方法により算出された前記移動局の位置情報に基づいて、前記位置算出部によって算出された複数の解に対応する移動局の存在位置の候補から移動局の存在位置が選択されるので、移動局の特定の送信電力の場合のもとで得られる受信電力と移動局および基地局間距離との関係を用いずに移動局の測位を行なうことができる。これにより、十分な数の基地局がない場合でも、移動局の送信電力の影響を受けない測位が可能となる。
【0019】
また、請求項3にかかる発明によれば、前記位置候補選択部により、前記移動局の移動可能な領域に関する情報に基づいて前記位置算出部が移動局の存在位置の候補として算出した位置のうち、いずれか1が移動局の位置として選択されるので、移動局の位置として適当なものが選択される。
【0020】
また、請求項4にかかる発明によれば、前記位置候補選択部により、前記移動局の移動履歴情報に基づいて、前記位置算出部が移動局の存在位置の候補として算出した位置のうち、いずれか1が移動局の位置として選択されるので、移動局の移動履歴に基づいて移動局の位置として適当なものが選択される。
【0021】
また、請求項5にかかる発明によれば、前記位置算出部により、受信電力測定部により測定される受信電力が最も高い基地局が基準基地局として選択され、前記基地局対は該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択されるので、受信電力をより高い値で測定することができる、すなわち受信電力をより正確に測定し得る基地局を含む基地局対における受信電力の所定の演算結果を算出することができ、各基地局対の受信電力差の精度を高めることができ、全体として測位の精度を高めることができる。
【0022】
また、請求項6にかかる発明によれば、前記誤り率算出部により、前記基地局のそれぞれが前記移動局より受信した電波における誤りの発生度合いである誤り率がそれぞれ算出され、前記位置算出部により、該誤り率算出部によって算出される前記誤り率が最も小さい基地局が基準基地局として選択され、前記基地局対は該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択されるので、前記誤り率が小さい、すなわち他からの妨害を受けることなく、移動局からの電波を良好に受信した基地局を含む基地局対における受信電力の所定の演算結果を算出することができ、各基地局対の受信電力差の精度を高めることができ、全体として測位の精度を高めることができる。
【0023】
また、請求項7にかかる発明によれば、前記位置算出部により、前記受信電力測定部における分解能が最も高い基地局が基準基地局として選択され、前記基地局対は該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択されるので、予め分解能を高く、すなわち高感度に設計されることにより受信電力が正確に測定される基地局を含む基地局対における受信電力の所定の演算結果をを算出することができ、各基地局対の受信電力差の精度を高めることができ、全体として測位の精度を高めることができる。
【0024】
また、好適には、前記所定の演算結果は、前記基地局対を構成する基地局における真数表現された電波の受信電力の受信電力の比である。このようにすれば、前記距離比算出部は、前記演算結果に基づいて前記基地局対を構成する一方の基地局と前記移動局との距離と、前記基地局対を構成する他方の基地局と前記移動局との距離との距離比を算出することができる。
【0025】
また、好適には、前記受信電力は対数表現された受信電力であり、前記所定の演算結果は、前記基地局対を構成する基地局における対数表現された電波の受信電力の受信電力の差である。このようにすれば、電波の受信電力を表わすものとして広く用いられる対数表現された受信電力が前記受信電力測定部において測定され、前記距離比算出部において前記演算結果、すなわち前記基地局対を構成する一方の基地局と他方の基地局とにおける対数表現された受信電力の差を用いて前記移動局との距離が算出される。とくに前記基地局対を構成する一方の基地局と他方の基地局とにおける対数表現された受信電力の差においては、移動局における電波の送信電力が変化してもその影響を受けない。そのため、例えば移動局の電池が消耗した場合など、移動局の送信電力が変化した場合においても前記距離比を精度よく算出することができ、移動局の位置の算出を精度よく実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の移動局測位システム8の構成の一例を示した図である。図1に示すように、移動局測位システム8は、移動可能な移動局10、既知の位置に固定され、前記移動局10と無線による通信を行なう機能を有する第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つの基地局12(以下、第1基地局12A乃至第4基地局12Dを区別しない場合、基地局12という。)、および測位サーバ14を含んで構成される。測位サーバ14は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成される。なお、移動局10の数は1個以上であればとくに限定されない。また、基地局12はそれぞれ、LANケーブル等の通信ケーブル18によって測位サーバ14と接続され、相互に通信可能とされている。
【0028】
なお、移動局10が移動可能な領域(図1の例であれば平面)には例えば図1に示すような座標系が設定され、移動局10、基地局12の位置はこの座標系における座標によって表現することができる。
【0029】
図2は、移動局10の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。このうち、無線部24は、後述する制御部26によって行なわれる制御の内容に応じて、アンテナ22を用いて電波の送受信を行なう。例えば無線部24は、後述する基地局12から送信される移動局10の作動を制御する指令を含む電波を受信したり、あるいは測位のための電波の送信指令を受けた場合には、所定の電波出力、あるいは所定の電波特性により電波を送信する。すなわち、無線部24は所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調する変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどによって実現される送信機能と、アンテナ22によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含む。
【0030】
バッテリ28は周知の電池などにより構成されるもので無線部24,制御部26に電力を供給する。
【0031】
また、制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、移動局10の電波の送受信の切換や、送受信される電波の変復調、あるいは送信される電波に含まれる信号の生成などの処理を実行するようになっている。具体的には、無線部24が受信した電波を解析し、移動局10の作動に関する指令を取り出し、その指令に応じて無線部24から電波を送信させるなどの作動を行なう。
【0032】
また、アンテナ22は、前述の無線部24が電波を送受信する際に用いられるものであって、無線部24が送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、移動局からの距離が同じ場合にアンテナ22からの距離が同じである場合には同じ強さで電波を受信できるように、アンテナ22は少なくとも電波の伝搬方向に無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0033】
図3は、基地局12の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。基地局12は、電波を送受信するためのアンテナ32、無線部34、制御部36、受信電力測定部38、誤り率算出部40、有線通信インタフェース42等を有する。基地局12は例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記制御部36、受信電力測定部38、誤り率算出部40の機能などを実現する。
【0034】
無線部34は、前述の移動局10の無線部24と同様の機能、すなわち、アンテナ32を用いて電波を送受信する機能を有する。
【0035】
制御部36は、基地局12の作動を制御するものであって、基地局12の電波の送受信の切換や、送受信される電波の変復調などの処理を実行するようになっている。具体的には、前記無線部34の送受信を切り換えたり、あるいは、後述する受信電力測定部38、誤り率算出部40の作動を制御する。また、後述するサーバ14からの指令に基づいて、前記移動局10の作動に関する指令を無線で送信する。
【0036】
受信電力測定部38は、無線部34において受信された電波(受信波)の受信電力を測定する。具体的には例えば、まずRSSI(Receive Signal Strength Indicator)と呼ばれるハードウェアに特有の電波の受信強度を数値化した指標値を測定し、得られたRSSIをそのハードウェアの仕様に基づいて換算を行うことにより受信電力が得られる。このRSSIは、例えば電波の受信時のアンテナの給電点における電圧の大きさに基づいて算出される0乃至255までの256段階で表される数値である。
【0037】
有線通信インタフェース42は、例えばLANケーブルなどの通信ケーブル18を介して他の基地局12あるいは測位サーバ14と情報交換可能に接続される。本実施例においては、前述の図1で説明したように、各基地局のそれぞれは測位サーバ14と通信可能に接続されている。具体的には、前記受信電力測定部38により測定された受信波の受信電力に関する情報や、前記誤り率算出部40により算出される誤り率に関する情報を通信ケーブル18を介して測位サーバ14に送信される。また、測位サーバ14から送信された基地局12の作動に関する指令などが受信される。
【0038】
なお、誤り率算出部40は後述する別の実施例で用いるものであり、その説明は後述する。すなわち、本実施例においては、誤り率算出部40は必要とされない。
【0039】
図4は、測位サーバ14の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。測位サーバ14は、有線通信インタフェース52、距離比算出部54、解集合算出部56、位置算出部58、位置候補選択部60、領域情報比較部62、履歴情報比較部64、記憶部66、基準基地局68などを有して構成される。このうち、有線通信インタフェース52は、通信ケーブル18を介して基地局12のそれぞれと情報交換可能に接続される。具体的には例えば、基地局12から前記受信波の受信電力に関する情報や、誤り率に関する情報を受信する。また、基地局12の作動に関する指令や、移動局10の作動に関する指令などを基地局12に対し送信する。これは、移動局10は有線通信インタフェースを有さない一方、測位サーバ14は無線部を有しないため、測位サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の無線部34を介して行なうためである。
【0040】
距離比算出部54は、まず、移動局10の無線部24が所定の出力により送信した電波を前記各基地局12が受信した際の、各基地局12の受信電力測定部38において測定される受信電力を取得する。前述のように取得される受信電力の値は、デシベル単位で表された電力であり、その単位はdBmを用いて表される。
【0041】
続いて距離比算出部54は、前記複数の基地局12から2つの基地局の組み合わせである基地局対を生成する。具体的には、前記複数の基地局12のうち、後述する基準基地局選択部68によって選択された基準基地局と、その基準基地局以外の基地局との組み合わせによって基地局対を生成する。例えば、図1に示すように第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つの基地局が存在する場合に、基準基地局選択部68によって第1基地局12Aが基準基地局として選択された場合には、選択基地局と選択基地局以外の基地局との組み合わせ、すなわち第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対を生成する。
【0042】
距離比算出部54は、生成した各基地局対を構成する2つの基地局における前記受信電力について、所定の演算処理を行う。この所定の演算処理により得られる所定の演算結果は例えばデシベル単位で表された受信電力の差である。具体的には例えば、前記基地局対を構成する2つの基地局のうち、基準基地局における移動局からの電波の受信電力の値から、基準基地局でない移動局の電波の受信電力を減ずることにより差を算出する。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、第1基地局12Aの受信電力Vr(dBm)と第2基地局12Bの受信電力Vr(dBm)との差ΔVr12(dBm)をΔVr12=Vr−Vr、第1基地局12Aの受信電力Vr(dBm)と第3基地局12Cの受信電力Vr3(dBm)との差ΔVr13(dBm)をΔVr13=Vr−Vr、第1基地局12Aの受信電力Vr(dBm)と第4基地局12Dの受信電力Vr(dBm)との差ΔVr14(dBm)をΔVr14=Vr−Vr、のようにそれぞれ算出する。
【0043】
さらに距離比算出部54は、算出された前記各基地局対における受信電力差に基づいて、前記基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと、電波を送信した移動局との距離の比を算出する。この距離の比の算出は次のように行なわれる。まず、移動局からの電波を受信した基地局において、その受信電力Vr(dBm)と移動局と基地局との距離D(m)との関係は、次式(1)によって与えられる。
Vr=−20log(4πDf/c)+GTA+GRA+Pt …(1)
ここで、GTA(dBi)は送信アンテナゲイン、すなわち送信側である移動局10のアンテナ22のゲイン、GRA(dBi)は受信アンテナゲイン、すなわち受信側である基地局12のアンテナ32のゲイン、Pt(dBm)は移動局10における送信電力、f(Hz)は送信電波の周波数、c(m/s)は光速、すなわち電波の伝搬速度である。
【0044】
この式(1)を用いて、例えば第1基地局12Aの受信電力Vrと第2基地局12Bの受信電力Vrとの差ΔVr12は、次式(2)で表される。
ΔVr12=Vr−Vr
=−20log(4πDf/c)+GTA+GRA+Pt
−(−20log(4πDf/c)+GTA+GRA+Pt)
=−20log(4πDf/c)+20log(4πDf/c)
=20log(D/D) …(2)
ここで、D、Dはそれぞれ、第1基地局12Aと基地局10との距離および第2基地局12Bと基地局10との距離である。このように、基地局対の受信電力の差ΔVr12は、移動局10の送信電力Ptを含まないものとなり、送信電力Ptの影響を受けることがない。さらに、前記(2)式より、
(D/D)=exp(ΔVr12/20) …(3)
となり、基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと、電波を送信した移動局との距離の比を算出することができる。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、第1基地局12Aの受信電力Vrと第2基地局12Bの受信電力Vrとの差ΔVr12に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第2基地局12Bと移動局10との距離Dとの比(距離比)(D/D)を、第1基地局12Aの受信電力Vrと第3基地局12Cの受信電力Vrとの差ΔVr13に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第3基地局12Cと移動局10との距離Dとの比(D/D)を、第1基地局12Aの受信電力Vrと第4基地局12Dの受信電力VR4との差ΔVr14に基づいて第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第4基地局12Dと移動局10との距離Dとの比(D/D)を、それぞれ算出する。
【0045】
このとき、移動局10の位置は、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの位置との関係において、第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第2基地局12Bと移動局10との距離Dとの比(距離比)が(D/D)となる条件満たす解集合S1のいずれか1点にある。同様に、移動局10の位置は、第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第3基地局12Cと移動局10との距離Dとの比(D/D)となる条件満たす解集合S2のいずれか1点および第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第4基地局12Dと移動局10との距離Dとの比(D/D)となる条件満たす解集合S3のいずれか1点にある。従って、移動局10の位置は、これらの条件を全て満たす、解集合S1、S2およびS3の積集合S=S1∩S2∩S3のいずれか1点である。
【0046】
解集合算出部56は、前記距離比算出部54において算出された基地局対ごとの距離比を満たす解の集合である解集合S1〜S3を基地局対ごとに算出する。ここで、図5に示すように、平面上において2つの点S、Rからの距離がm:n(n≠1)であるような点Pの軌跡は、線分SRを内分する点をA、外分する点をBとすれば、線分ABを直径とする円82、すなわちアポロニウスの円となることから、解集合算出部56は、このアポロニウスの円に基づいて、前記距離比算出部54において算出された基地局対ごとの距離比、すなわち基地局対を構成する各基地局のそれぞれと移動局との距離の比を実現する前記移動局の位置を表す点の連なりである軌跡を生成する。この軌跡が解集合に対応する。具体的には、図5の点Sに基地局12Sが、点Rに基地局12Rが存在し、前記距離比算出部によって算出される基地局12Sと移動局との距離と、基地局12Rと移動局との距離との比(D/D)が
/D = m/n
である場合には、移動局10の位置を表す軌跡すなわち解集合は図5の円82で表されることになる。
【0047】
具体的に例えば、第1移動局12Aと第2移動局12Bとからなる基地局対について、前記距離比算出部54によって算出される距離比(D/D)の値をa、第1移動局12Aの座標を(X,Y)、第2移動局12Bの座標を(X,Y)、移動局10の座標を(x,y)とすると、
【数1】

となって、円の軌跡を表す式(4)が得られる。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、同様に第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dからなる基地局対のそれぞれについても、
【数2】

のように、式(5)、(6)で表される軌跡を算出する。なお、前記式(5)においてbは第1移動局12Aと第3移動局12Cとからなる基地局対について、前記距離比算出部54によって算出される距離比(D/D)の値であり、前記式(6)においてcは第1移動局12Aと第4移動局12Dとからなる基地局対について、前記距離比算出部54によって算出される距離比(D/D)の値である。これら式(4)〜(6)のそれぞれを満たす解(x,y)の集合である軌跡が解集合S1〜S3に対応する。
【0048】
位置算出部58は、前記解集合算出部56において算出された解集合S1〜S3の積集合Sを算出することにより、移動局10の位置を算出する。本実施例においては、前記解集合はそれぞれ円を表す軌跡であることから、これら複数の解集合S1〜S3に対応する軌跡の交点が、積集合Sに対応する。具体的には、前記解集合算出部56によって生成された複数の軌跡をそれぞれ表す数式を同時に満たす点を算出することによって、その交点の位置を算出する。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、これらの基地局対に対応する3つの軌跡88A、88B、88C(図6参照)のそれぞれに対応する前記式(4)乃至式(6)を同時に満たす解(x,y)を求めることにより、前記3つの軌跡の交点Pを移動局10の位置として算出する。なお、図6に示すように軌跡の交点として移動局10の位置を算出する場合には、少なくとも3つの軌跡が必要であり、従ってこれに対応する少なくとも3つの基地局対が必要である。また、この少なくとも3つの基地局対は、少なくとも4つの基地局によって構成される必要がある。
【0049】
ところで、基地局12が3つしか存在しない場合や、4つ以上存在する場合であっても3つの基地局12しか移動局10からの電波を受信することができない場合、あるいは4つの基地局がそれぞれ正方形の頂点となる位置にある場合などには、距離比算出部54によって算出される距離比が、2つの基地局対についてしか算出されない。かかる場合においては、解集合として前記2つの基地局対に対応する2つの軌跡しか算出されないため、前記位置算出部58が算出する積集合Sである軌跡の交点は複数の点を含む場合がある。従って、位置算出部58は移動局10の位置を特定することができず、移動局10の位置の候補を複数算出する。
【0050】
このように位置算出部58は、前記軌跡生成部56において生成された2つの軌跡の交点に基づいて、移動局10の位置の候補を算出する場合がある。すなわち、前記軌跡の交点として算出される複数の交点が、複数の基地局対についての距離比を満たす位置であり、これら複数の交点のうちいずれかが移動局10の位置である。具体的には、前記解集合算出部56によって生成された2つの軌跡をそれぞれ表す数式を同時に満たす点を算出することによって、その交点の位置を算出する。例えば、図7に示すように第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cおよび第4基地局12Dの4つの基地局が正方形の頂点となるように配置されている場合においては、図7に示す3つの軌跡88A、88B、および88Cがそれぞれ点Pおよび点Qにおいて交わる。すなわち、第1基地局12Aと第2基地局12Bからなる基地局対、第1基地局12Aと第3基地局12C、および、第1基地局12Aと第4基地局12Dからなる基地局対のそれぞれに対応する3つの軌跡88A、88Bおよび88Cのそれぞれに対応する前記式(4)乃至式(6)を同時に満たす解(x,y)を求めることにより、前記2つの軌跡の2つの交点PおよびQを移動局10の位置の候補として算出する。
【0051】
位置候補選択部60は、前記位置算出部58によって算出された移動局10の位置の候補のうち、いずれかを移動局10の位置として選択する。位置候補選択部60は、領域情報比較部62および履歴情報比較部64の少なくともいずれか一方を有する。位置候補選択部60は、この領域情報比較部62によって得られる移動局10の存在しうる領域に関する情報である領域情報、および前記履歴情報比較部64によって得られる移動局10の移動履歴に関する情報の少なくとも一方に基づいて移動局10の位置の選択を行なう。
【0052】
領域情報比較部62は、移動局10が存在しうる領域に関する情報と、前記位置算出部58によって算出される移動局の位置10の候補とを比較する。すなわち、移動局10が壁などでしきられた室内などの限定された領域内のみを移動可能とされている場合においては、その移動局10が移動可能である領域についての情報(領域情報)を、例えば後述する移動局位置記憶部66などに予め記憶しておき、領域情報比較部62は、この移動局位置記憶部66から読み出された領域情報と、前記位置算出部58によって算出される移動局10の位置の候補とを比較する。そして、移動局10の位置の候補のうち、前記領域情報に基づいて、移動局10の移動可能な領域の内側にあるか否かを判断する。そして、位置候補選択部60は、移動局10の移動可能な領域の内側にないと判断された前記移動局10の位置の候補については、移動局10の位置の候補から除外する。
【0053】
図8は、領域情報比較部62および位置候補選択部60の作動を説明する図である。位置算出部58などにより、2つの基地局対に対する距離比から算出される2つの軌道88Aおよび88Bが算出され、その交点として2つの移動局10の位置の候補P1およびP2が得られている。一方、予め移動局位置記憶部66に記憶された領域情報、すなわち、移動局10の移動可能な領域が、線120で囲まれた領域126であるとする。このとき、領域情報比較部62は、移動局10の位置の候補P1およびP2の位置と、領域情報、すなわち移動可能領域126の位置とを比較し、候補P2は移動局10の移動可能な領域の内側にあると判断し、一方、候補P1は移動局10の移動可能な領域の内側にはないと判断する。この判断に基づき、位置候補選択部60は、候補P1は移動局10の位置の候補から除外する。この結果、移動局10の位置の候補は候補P2のみとなり、位置候補選択部60は移動局10の位置は候補P2の位置であると選択する。
【0054】
本実施例において、例えばコンピュータの記憶手段などによって実現される測位サーバ14の移動局位置記憶部66は、前述の移動局測位システム8により移動局10の測位が例えば所定の間隔で繰り返し行なわれる場合において、過去に移動局位置候補選択部60により移動局10の位置であるとして選択された位置およびその測位の行なわれた時刻についての情報(移動履歴情報)を所定の回数分だけ記憶する。
【0055】
また、履歴情報比較部64は、前記移動局位置記憶部66において記憶された前記移動履歴情報に基づいて、現在の移動局10の位置を予測する。そして、予測された現在の移動局10の予測位置と前記位置算出部58によって算出された複数の移動局位置候補とを照合する。そして、位置候補選択部60は、この照合の結果、前記移動局10の予測位置に最も近い位置にある移動局の位置の候補を現在の移動局10の位置であるとして選択する。
【0056】
図9は、このときの履歴情報比較部64および位置候補選択部60の作動を説明する図である。図9において、前記位置算出部58によって算出された移動局位置の2つの候補は候補P1および候補P2である。一方、点qt−1、点qt−2、点qt−3、点qt−4はそれぞれ、現在より1回乃至4回前に行なわれた移動局10の測位における移動局10の位置であるとされた位置を表している。前記履歴情報比較部64は、前記点qt−1、点qt−2、点qt−3、点qt−4の位置に基づいて、現在の移動局10の予測位置q(x,y)を予測する。そして、予測された移動局10の予測位置qと候補P1の距離de1、および移動局10の予測位置qと候補P2のそれぞれとの距離de2をそれぞれ算出する。位置候補選択部60は算出された距離de1および距離de2を比較し、この距離がより小さくなる移動局位置候補を実際の移動局10の位置であるとして選択する。すなわち、図9の例であれば、de1>de2であるので、より小さい距離であるde2に対応する移動局位置である候補P2を実際の移動局10の位置であるとして選択する。
【0057】
具体的には、履歴情報比較部64は、例えば以下のようにして現在の移動局の予測位置q(x,y)を予測する。現在の移動局の予測位置qにおける移動局10の移動速度をv、加速度をaとし、同様に、過去1回前の測位の際の移動局10の位置qt−1における移動局10の移動速度をvt−1、加速度をat−1、過去2回前の測位の際の移動局10の位置qt−2における移動局10の移動速度をvt−2、加速度をat−2、過去3回前の測位の際の移動局10の位置qt−3における移動局10の移動速度をvt−3、加速度をat−3、過去4回前の測位の際の移動局10の位置qt−4における移動局10の移動速度をvt−4、加速度をat−4とする。このとき、現在の加速度は過去2回における測位の際における移動局10の移動加速度の平均であるとすると、その関係は次式(7)で表される。
=(at−1+at−2)/2 …(7)
で表される。このとき、移動局測位システム8による測位が微小時間で反復して行なわれている場合には、ある測位の際における移動局10の移動加速度aは、その測位の際における移動局10の移動速度vと1回前の測位の際における移動局10の移動速度vt−1とを用いて、a=v−vt−1と表され、またある測位の際における移動局10の移動速度vは、その測位の際における移動局10の位置qと1回前の測位の際における移動局10の位置qt−1とを用いて、v=q−qt−1と表されることから、前記式(7)は、
−vt−1=((vt−1−vt−2)+(vt−2−vt−3))/2
(q−qt−1)−(q−qt−1
=(((qt−1−qt−2)+(qt−2−qt−3))
+((qt−2−qt−3)+(qt−3−qt−4))/2
と順次書き換えられる。これをqについて整理すると、
=(5qt−1−3qt−2−qt−3+qt−4)/2
となる。このようにして、現在の移動局10の予測位置qを算出する。
【0058】
基準基地局選択部68は、前記距離比算出部54において基地局対を生成する場合において、全ての基地局対に含まれる基準基地局を選択する。例えば、前述のように第1基地局12Aと第2基地局12B、第1基地局12Aと第3基地局12C、第1基地局12Aと第4基地局12Dの3つの基地局対が生成される場合においては、第1基地局12Aが基準基地局として選択されている。このとき、第1基地局12Aの受信電力Vrは、移動局10の位置を算出するための式(4)乃至式(6)のいずれにも含まれ、算出される移動局10の位置に影響する。このように、基準基地局における電波の受信電力は、移動局10の測位結果に大きく影響する。そのため、基準基地局には、その電波の受信電力が正確に測定可能な基地局が選択されることが望ましい。そこで、基準基地局選択部68は、各基地局12の受信電力測定部38において測定された移動局10からの電波の受信電力が最も高い基地局を、基準基地局として選択する。これは、電波の受信電力が高い基地局のほうが、移動局により近く、受信電力の測定精度が高く、基準基地局に適しているためである。
【0059】
図10は、本発明の移動局測位システムの制御作動の概要を説明するフローチャートである。本フローチャートにおいては、移動局10、基地局12、測位サーバ14の制御作動がそれぞれ示されている。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、測位サーバ14において移動局10の測位のための作動が開始されると、測位サーバ14からいずれか1つの基地局12、例えば第1基地局12Aに対し、移動局10への電波の送信指令を無線により送信する指令がなされる。このとき、前記いずれか1つの基地局12とは、常に同一の基地局12であってもよいし、その都度異なる基地局12が選択されてもよい。またSA1においては全ての基地局12に対し、移動局10からの電波を受信するための待機を行なうよう指令がなされる。これらの指令は、測位サーバ14の有線通信インタフェース52、通信ケーブル18、各基地局12の有線通信インタフェース42等を介して行なわれる。
【0060】
各基地局12の制御部36に対応するSA2においては、SA1において測位サーバ14から行なわれた指令が実行される。すなわち、まず、移動局10への電波の送信指令を無線により送信する指示がされたか否かが判断される。前記SA1において移動局10への電波の送信指令を無線により送信する指示がされた基地局12、例えば第1基地局12Aにおいては、本ステップの判断が肯定され、続くSA3が実行される。一方、その他の基地局12、例えば第2基地局12B乃至第4基地局12Dにおいては、本ステップの判断が否定され、SA3が実行されることなく、移動局10からの電波の受信の待機が行なわれる。
【0061】
基地局12の制御部36および無線部34に対応するSA3においては、移動局10への電波の送信指令が無線により送信される。具体的には、SA1において測位サーバ14から受け取った移動局10への送信指令の内容が、制御部36により電波の送信状態に切り換えられた無線部34によって、無線により移動局10へ送信される。なお、送信の実行後は、他の基地局、すなわちSA2の判断が否定された基地局と同様に、移動局10からの電波の受信の待機が行なわれる。
【0062】
移動局10の制御部26および無線部24などに対応するSA4においては、SA3において行なわれた電波の送信指令を受け、移動局10から各基地局12に対し、測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波は予め定められた出力によって所定時間、少なくとも各基地局12の受信電力測定部38が電波の受信電力を測定するのに十分な時間だけ送信が行なわれる。
【0063】
各基地局12の受信電力測定部38に対応するSA5においては、SA4において移動局10から送信される測位のための電波が受信され、その受信電力が測定される。この受信電力は、例えば前記RSSI値などにから換算することによって得られるものであって、対数表現(デシベル単位)により表わされた値である。また、各基地局12の有線通信インタフェース42などに対応するSA6においては、SA5において測定された移動局10からの測位のための電波の受信電力が、通信ケーブル18を介して測位サーバ14に送信される。
【0064】
測位サーバ14の基準基地局選択部68および距離比算出部54に対応するSA7においては、まず、SA5において各基地局12において測定された移動局10からの電波の受信電力に基づいて、その受信強度の最も高い基地局、例えば第1基地局12Aが基準基地局として選択される。続いて、基準基地局として選択された基地局である第1基地局12Aと、その他の基地局である第2基地局12B乃至第4基地局12Dのうち1つの基地局との組み合わせである基地局対が複数生成される。さらに、生成された各基地局対に対して、各基地局対を構成する2つの基地局における移動局10からの電波の受信電力の差が算出される。この受信電力の差の算出においては、前記SA5においてRSSIから変換されたデシベル値で表される受信電力Vr(dBm)の値が用いられる。具体的には例えば、基準基地局である第1基地局12Aの受信電力Vrと第2基地局12Bの受信電力Vrとの差ΔVr12、第1基地局12Aの受信電力Vrと第3基地局12Cの受信電力Vrとの差ΔVr13、第1基地局12Aの受信電力Vrと第4基地局12Dの受信電力Vrとの差ΔVr14がそれぞれ算出される。
【0065】
測位サーバの距離比算出部54に対応するSA8においては、SA7において算出された各基地局対を構成する2つの基地局における移動局10からの電波の受信電力の差に基づいて、各基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと、移動局10との距離の比が算出される。すなわち、SA7において算出した受信電力の差ΔVr12、ΔVr13、ΔVr14のそれぞれについて前記式(3)の関係式を適用することにより、第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第2基地局12Bと移動局10との距離Dとの比(距離比)(D/D)、第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第3基地局12Cと移動局10との距離Dとの比(D/D)、第1基地局12Aと移動局10との距離Dと第4基地局12Dと移動局10との距離Dとの比(D/D)がそれぞれ算出される。
【0066】
解集合算出部56に対応するSA9においては、SA8において算出された基準基地局と他の基地局のそれぞれと移動局10との距離の比に対応する移動局10の軌跡を表わす式を算出する。この軌跡を表わす式は、予め得られている各基地局12の位置座標、および、SA8において得られた距離比の値に基づいて、前記距離比を実現するアポロニウスの円を表す式として算出される。例えば、第1基地局12Aと第2基地局12Bとからなる基地局対について前記式(4)、第1基地局12Aと第3基地局12Cとからなる基地局対について前記式(5)、第1基地局12Aと第4基地局12Dとからなる基地局対について前記式(6)の式がそれぞれ得られる。
【0067】
位置算出部58に対応するSA10においては、SA9において算出された複数の軌跡を表す式を解くことにより、移動局10の位置が前記複数の軌跡の交点として算出される。
【0068】
続くSA11およびSA12は位置候補選択部60などに対応する。まず、SA11においては、SA10において算出された軌跡の交点が1つであったか否かが判断される。軌跡の交点が1つであった場合には、本ステップの判断が肯定され、その1つの交点が移動局10の位置であるとされて、本フローチャートは終了する。一方、軌跡の交点が2つ以上であった場合には、本ステップの判断が否定され、続くSA12が実行される。
【0069】
位置候補選択部60、領域情報比較部62、履歴情報比較部64などに対応するSA12においては、SA10において軌跡の交点として算出された複数の移動局10の位置の候補のうち、いずれかが移動局10の位置として選択される。この選択は、前記移動局10の位置の候補についての情報と、移動局10が移動可能とされる移動可能領域の位置についての情報、および/または移動局10の移動の履歴に関する情報とを比較することによって行なわれる。具体的には例えば、前記移動可能領域の内側にない移動局10の位置の候補は候補から除外されることにより、あるいは、移動局の移動履歴から推定される現在の移動局10の位置に近い移動局10の位置の候補が選択されることにより、移動局10の位置の候補のいずれかが現在の移動局10の位置として選択される。
【0070】
前述の実施例によれば、前記距離比算出部54(SA7、SA8)により、前記基地局12の前記受信電力測定部38(SA5)によってそれぞれ測定された受信電力に基づいて、前記基地局対における該受信電力の所定の演算結果として対数表現された受信電力の差が算出され、該対数表現された受信電力の差に基づいて前記基地局対を構成する一方の基地局と前記移動局10との距離と、前記基地局対を構成する他方の基地局と前記移動局10との距離との距離比が前記基地局対のそれぞれについて算出され、前記解集合算出部56(SA9)により、前記距離比算出部54によって算出された距離比を実現する解の集合、すなわち前記距離比を実現する点の連なりである軌跡が前記基地局対毎にそれぞれ算出され、前記位置算出部58(SA10)により、前記解集合算出部によって算出された複数の解集合の積集合としての前記複数の軌跡の交点を算出することにより移動局10の存在位置が算出されるので、移動局10の特定の送信電力の場合のもとで得られる受信電力と移動局および基地局間距離との関係を用いずに移動局の測位を行なうことができる。すなわち、測位に際して送信電力Ptの影響を受けないため、移動局10のバッテリ28の残量が少なくなり、送信電力が低下した場合でも、測位精度を保つことができる。
【0071】
また、前述の実施例によれば、位置算出部58(SA10)により複数の移動局10の位置の候補が算出される場合において、前記位置候補選択部60(SA11、12)により位置算出部58とは異なる方法により算出された前記移動局10の位置情報に基づいて、前記位置算出部58によって算出された複数の解に対応する移動局10の存在位置の候補から移動局10の存在位置が選択されるので、移動局10の特定の送信電力の場合のもとで得られる受信電力と移動局10および基地局12間の距離との関係を用いずに移動局10の測位を行なうことができる。これにより、十分な数の基地局がない場合でも、移動局の送信電力の影響を受けない測位が可能となる。
【0072】
また、前述の実施例によれば、前記位置候補選択部60(SA11)、領域情報比較部62(SA12)により、前記移動局10の移動可能な領域に関する情報(126)に基づいて前記位置算出部58(SA10)が移動局10の存在位置の候補として算出した位置のうち、いずれか1が移動局10の位置として選択されるので、移動局の位置として適当なものが選択される。
【0073】
また、前述の実施例によれば、前記位置候補選択部60(SA11)、履歴情報比較部62(SA12)により、前記移動局10の移動履歴情報に基づいて前記位置算出部58(SA10)が移動局10の存在位置の候補として算出した位置P1、P2のうち、いずれか1が移動局10の位置として選択されるので、移動局10の移動履歴に基づいて移動局10の位置として適当なものが選択される。
【0074】
また、前述の実施例によれば、前記基準基地局選択部68(SA7)により、受信電力測定部38(SA5)により測定される受信電力が最も高い基地局12が基準基地局として選択され、前記基地局対は該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択されるので、距離比算出部54(SA7)において受信電力をより高い値で測定することができる、すなわち受信電力をより正確に測定し得る基地局を含む基地局対における受信電力の所定の演算結果を算出することができ、各基地局対の受信電力差の精度を高めることができ、全体として測位の精度を高めることができる。
【0075】
なお、前述の実施例において、サーバ14は位置候補選択部60を有するものとされていたが、この様な態様に限られない。すなわち、例えば、距離比算出部54が3以上の基地局対に対する距離比を算出することができた場合にのみ、位置算出部58が移動局10の位置の算出を行なうようにされるなど、位置算出部58により1つの解を算出することが可能である場合などは、位置候補選択部60を有する必要がない。このように、位置候補選択部60がなくても移動局測位システム8として一定の効果を得ることができる。
【0076】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0077】
本実施例において、移動局10の機能の要部は前述の実施例1と同様に、図2に示すブロック図によって表される。このうち、無線部24は前述の実施例1と同様の機能を有する。制御部26は、前述の実施例1において有していた、移動局10の作動を制御する機能に加え、以下の機能を有している。すなわち、移動局10から各基地局12に対して送信する電波に含まれるデータに、例えばパリティ検査ビットなどの誤りを検出するために付加される誤り検出符号を付加する機能を有しており、前記送信データから所定の算出方法によってこの誤り検出符号を算出し、算出された誤り検出符号を前記送信データとともに各基地局に送信する。
【0078】
また、基地局12の機能の要部は前述の実施例1と同様に、図3に示すブロック図によって表される。前述の実施例1と比べ、実施例1においては用いられなかった誤り率算出部40が用いられる点が異なる。
【0079】
誤り率算出部40は、基地局12の無線部34が受信した移動局からの電波に含まれる受信データついて、その受信データおよび誤り検出符号に基づいて、移動局10から基地局12への間の通信における通信の誤りの発生率である誤り率(BER;Bit Error Rate)を算出する。具体的には、誤り率算出部40は、例えば、受信した受信データから前記移動局10の制御部が誤り検出符号を算出した算出方法と同じ算出方法により誤り検出符号を算出し、この誤り率算出部40において算出された誤り検出符号と受信した移動局10において算出された誤り検出符号との比較を行なう。これにより、受信データの誤りを検出することができ、その誤りの割合より誤り率を算出することができる。この結果、誤り率が小さい基地局12ほど、移動局10との通信がエラーが少なく実行され、移動局10と基地局12との通信に信頼性があるといえる。
【0080】
また、この誤り率算出のための送信データおよび誤り検出符号は、例えば、測位のために送信される電波に含めることができる。あるいは、測位のための電波とは別個に誤り率算出のための送信データおよび誤り検出符号を含む電波が送信されてもよい。
【0081】
また、測位サーバの機能の概要は、実施例1において説明した図4によって表されるが、基準基地局選択部68による基準基地局の選択作動が異なる点が前述の実施例1と相違する。すなわち、基準基地局選択部68は、前記距離比算出部54において基地局対を生成する場合において、全ての基地局対に含まれる基準基地局を選択する。このとき、基準基地局選択部68は、前記各基地局12の誤り率算出部40において算出される誤り率が最も低い基地局を誤り率として選択する。これは、誤り率が最も低い基地局は移動局10との通信において最も信頼性がある基地局であると考えられ、電波の受信電力が正確に得られると考えられるためである。
【0082】
本実施例の移動局測位システムの制御作動の概要は、前述の実施例1と同様に図10によって表されるが、前述した実施例1との差異に対応するステップであるSA5、SA6、SA7における制御作動が前述の実施例1と異なる。
【0083】
すなわち、各基地局12の受信電力測定部38および誤り率算出部40に対応するSA5においては、SA4において移動局10から送信される測位のための電波が受信され、その受信電力が測定される。また、移動局10から送信されるデータおよび誤り検出符号に基づいて、移動局10から各基地局12へのデータ通信における通信誤りの発生率である誤り率が算出される。また、各基地局12の有線通信インタフェース42などに対応するSA6においては、SA5において測定された移動局10からの測位のための電波の受信電力および誤り率が、通信ケーブル18を介して測位サーバ14に送信される。
【0084】
測位サーバ14の基準基地局選択部68および距離比算出部54に対応するSA7においては、まず、SA5において各基地局12において算出された移動局10から各基地局12への通信における誤り率に基づいて、その誤り率の最も低い基地局、例えば第1基地局12Aが基準基地局として選択される。続いて、基準基地局として選択された基地局である第1基地局12Aと、その他の基地局である第2基地局12B乃至第4基地局12Dのうち1つの基地局との組み合わせである基地局対が複数生成される。さらに、生成された各基地局対に対して、各基地局対を構成する2つの基地局における移動局10からの電波の受信電力の差が算出される。この受信電力の差の算出においては、前記SA5において測定されたRSSIから変換されることにより得られる対数表現(デシベル値)で表される受信電力Vr(dBm)の値が用いられる。具体的には例えば、基準基地局である第1基地局12Aの受信電力Vrと第2基地局12Bの受信電力Vrとの差ΔVr12、第1基地局12Aの受信電力Vrと第3基地局12Cの受信電力Vrとの差ΔVr13、第1基地局12Aの受信電力Vrと第4基地局12Dの受信電力Vrとの差ΔVr14がそれぞれ算出される。
【0085】
なお、その他のステップにおける制御作動は前述の図10におけるものと同一であるので、説明を省略する。
【0086】
前述の実施例2によれば、前記移動局10により誤り検出符号を付加したデータを含む電波が発信され、前記誤り率算出部40(SA5)により、前記基地局10のそれぞれが前記移動局10からの電波を受信した際における誤りの発生度合いである誤り率がそれぞれ算出され、前記基準基地局選択部68(SA7)により、該誤り率算出部40によって算出される前記誤り率が最も小さい基地局12が基準基地局として選択され、前記基地局対は該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択されるので、前記位置算出部58(SA10)により、前記誤り率が小さい、すなわち他からの妨害を受けることなく、移動局からの電波を良好に受信した基地局を含む基地局対における受信電力の所定の演算結果を算出することができ、各基地局対の受信電力差の精度を高めることができ、全体として測位の精度を高めることができる。
【0087】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0088】
例えば、前述の実施例においては、前記基準基地局選択部68は、移動局10からの電波の受信電力が最も強い基地局12を、あるいは、誤り率算出部40によって算出される移動局10との通信において誤り率が最も低い基地局12を基準基地局として選択したが、これに限られない。例えば、前記基準基地局は、その受信電力測定部38における分解能が最も高い基地局とされてもよい。この様にすれば、前記基準基地局は、その受信電力測定部38における分解能が最も高い基地局であるので、予め分解能を高く、すなわち高感度に設計されることにより受信電力が正確に測定される基地局12を含むように基地局対を設定し、その基地局対を構成する2つの基地局12の受信電力の所定の演算結果を算出することができる。
【0089】
逆に、基準基地局を選択することは本発明の実施において必須の要件ではない。すなわち、移動局10からの電波を受信した4以上の基地局が存在する場合において、想定される全ての基地局対から任意に選択される3以上の基地局対により対応する軌跡を算出することにより、移動局10の位置の算出を行なうことも可能であり、かかる方法によっても一定の効果が得られる。
【0090】
前述の実施例2においては、移動局10の制御部26は送信するデータに誤り検出符号を付加し、基地局12の誤り率算出部40はその誤り検出符号に基づいて移動局10から基地局12への無線通信における誤り率BERを算出したが、この様な態様に限られない。例えば、移動局10および基地局12において予め既知とされたビットパターン等のデータを有しておき、移動局10がそのビットパターン等のデータを基地局12へ送信し、基地局12が受信した電波から取り出したデータと、予め有していたデータとを照合することにより誤り率を算出してもよい。
【0091】
また、前述の実施例において説明したように、4つの基地局12を用いて平面上を移動する移動局10の位置の算出を行なう場合に、それら4つの基地局12が正方形の頂点となるように配置されると、位置算出部58は移動局10の位置の候補を複数算出することとなる。そのため、移動局10の位置の算出に用いる基地局12は、位置算出部58により算出される移動局10の位置が複数とならないよう、具体的には例えば正方形の頂点に位置する関係にならないように予め設置されてもよい。また、5以上の基地局12が存在する場合において、位置算出部58により算出される移動局10の位置が複数とならないように、移動局10の位置の算出に用いる基地局12を選択するようにしてもよい。
【0092】
また、前述の実施例においては、解集合算出部56は、前記距離比算出部54において算出された基地局対ごとの距離比を満たす解の集合である解集合を円として基地局対ごとに算出したが、このような態様に限られない。例えば解集合算出部56は前記基地局対ごとに前記解集合を前記距離比を満たす円を分布の中心とする円環状の確率密度分布として算出し、前記位置算出部58は算出された複数の確率密度分布を重ね合わせ、例えば各基地局対についての存在確率の積が高くなった部分を解、すなわち移動局10の位置としてもよい。
【0093】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】本発明の移動局測位システムを構成する移動局の構成および制御機能を説明するブロック図である。
【図3】本発明の移動局測位システムを構成する基地局の構成および制御機能を説明するブロック図である。
【図4】本発明の移動局測位システムを構成する測位サーバの構成および制御機能を説明するブロック図である。
【図5】基地局対を構成する2つの基地局のそれぞれと基地局との距離の比に基づいて算出される移動局が存在する軌跡を説明する図である。
【図6】3つの基地局対に対応する軌跡の交点によって移動局の位置が算出される様子を説明する図である。
【図7】3つの基地局対に対応する軌跡の複数の交点によって複数の移動局の位置の候補が算出される様子を説明する図である。
【図8】領域情報比較部による移動局の位置の候補と移動可能領域との比較を説明する図である。
【図9】履歴情報比較部による移動局の位置の候補と移動局の現在の推定位置との比較を説明する図である。
【図10】本発明の移動局測位システムの制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図11】電波の発信源からの距離とその距離の位置における受信電力の大きさとの関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0095】
8:移動局測位システム
10:移動局
12:基地局
24:移動局10の無線部(発信部)
34:基地局12の無線部(受信部)
38(SA5、SB5):受信電力測定部
40(SA5):誤り率算出部
54(SA7、SA8、SB7、SB8):距離比算出部
56(SA9、SB9):軌跡生成部
58(SA10):位置算出部
60(SA11、SA12):位置候補選択部
88:軌跡(解集合)
126:移動局の移動可能領域
P1、P2:移動局の存在位置の候補

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該基地局がそれぞれ受信した電波の受信電力と該基地局の位置とに基づいて前記移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、
前記移動局は、所定の周波数の電波の発信が可能な発信部を備え、
前記基地局は、前記移動局が発信する電波を受信可能な受信部と、該受信部により受信した電波の受信電力を測定する受信電力測定部とを備え、
対をなす前記基地局である基地局対を構成する該基地局の該受信電力測定部によってそれぞれ測定された受信電力の所定の演算結果に基づいて、前記基地局対を構成する一方の基地局と前記移動局との距離と、前記基地局対を構成する他方の基地局と前記移動局との距離との距離比を前記基地局対のそれぞれについて算出する距離比算出部と、
該距離比算出部によって算出された距離比を実現する解の集合を前記基地局対毎にそれぞれ算出する解集合算出部と、
該解集合算出部により算出された複数の解集合の積集合を求めることにより該解集合の積集合に属する解を移動局の存在位置として算出する位置算出部と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記位置算出部により前記解集合の積集合に属する解が複数算出される場合において、前記位置算出部とは異なる方法により算出された前記移動局の位置情報に基づいて、前記位置算出部によって算出された複数の解に対応する移動局の存在位置の候補から前記移動局の存在位置を選択する位置候補選択部を有することを特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記位置候補選択部は、前記移動局の移動可能な領域に関する情報に基づいて前記位置算出部が移動局の存在位置の候補として算出した位置のうち、いずれか1を移動局の位置として選択すること、
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記位置候補選択部は、前記移動局の移動履歴情報に基づいて、前記位置算出部が移動局の存在位置の候補として算出した位置のうち、いずれか1を移動局の位置として選択すること、
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記位置算出部は、受信電力測定部により測定される受信電力が最も高い基地局を基準基地局として選択し、前記基地局対を該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記基地局のそれぞれが前記移動局より受信した電波における誤りの発生度合いである誤り率をそれぞれ算出する誤り率算出部を有し、
前記位置算出部は、該誤り率算出部によって算出される前記誤り率が最も小さい基地局を基準基地局として選択し、前記基地局対を該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記位置算出部は、その受信電力測定部における分解能が最も高い基地局を基準基地局として選択し、前記基地局対を該基準基地局とそれ以外の基地局との組み合わせとして選択すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−281793(P2009−281793A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132551(P2008−132551)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】