説明

移動通信システム

【課題】1つの無線基地局に接続可能な中継局の数を多くした場合であっても伝送品質を高品質に保持する。
【解決手段】無線移動局106の移動経路に沿って配設されたLCX105aの所定距離毎に配置された複数の中継局401(n)と、基地局102とを備えた移動通信システム100が、基地局102を複数の中継局401(n)それぞれに対して個別に接続する光ファイバ401dn,401upを含み、基地局102側に設けられる光電変換器402は、光信号回線伝送損と、光信号分配器10a〜10cの分配器挿入損と、補正用固定減衰器402t(n)の減衰量を示す補正固定減衰量とを合わせた総損失が全ての中継局401(n)について許容損失値以下となるように、中継局401(n)側に出力する光信号を分配する構成とされた不均一損光信号分配器402dを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局の移動経路に沿って配設された通信路の所定距離毎に配置された複数の中継局と、その中継局と通信接続可能な基地局とを備えた移動通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、線路上を移動する列車の中とその外部との通信を示す鉄道通信の通信システムが各種提案されている(例えば特許文献1−3参照)。このような通信システムでは、線路に沿って通信路を敷設し、その通信路と線路上を走行する列車とを無線通信回線により通信接続することで通信がなされている。この通信路は、漏洩同軸ケーブル(以下、「LCX」という。)によって構成されていた。すなわち、例えば所定距離(例えば1.5km)毎に設置された中継局を介して複数のLCXを線路に並行して敷設していくことで、列車軌道に沿った通信路が構成されていた。
【0003】
上記のようなLCXを用いた通信システムでは、中継局での増幅処理時に発生する熱雑音が中継局毎に重畳されていくため、1つの無線基地局に接続される中継局の数に制限を受けることになる。このような熱雑音の増加を抑制するため、例えば特許文献1には、通信路をLCXと光ファイバとによって構成し、各中継局から線路の双方向に向かって(グレーディング方向が交互となるように)LCXを敷設することで、各中継局間の中継距離を長くして中継数を少なくするようにした通信システムが開示されている。ここで、グレーディング方向とは、LCXへの電力の給電点から遠ざかる方向をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−11719号公報
【特許文献2】特開2002−118870号公報
【特許文献3】特開2004−056617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した特許文献1の通信システムでは、LCXのみで通信路を構成する場合と比較すると熱雑音の増加を抑制することができるものの、中継局で実行される光電変換処理にて発生する熱雑音が各中継局において重畳されていくことになるため、1つの無線基地局に接続される中継局の数はやはり制限を受けることになるという問題があった。
【0006】
また、上述した特許文献1の通信システムでは、各中継局から双方向にLCXを敷設するようにしているので、各中継局間のLCXのグレーディング方向が向き合う点では、手前の中継局から送信される電力と、一つ奥の中継局から送信される電力とで、約3.0Km分の伝播遅延差が生じてしまう。このため、遅延補償のための遅延メモリなどのタイミング補償機能(例えば、特許文献2の「タイミング補償機能」など)を別途追加する必要があり、通信品質の劣化要因を増やしてしまうことになる。
【0007】
さらに、上述した特許文献1の通信システムでは、通信路における各スパン(基地局あるいは中継局と中継局との間)における伝送品質が均一でなく、中継局における中継数が増えれば増えるほど、無線基地局から離れたところのスパンにおける伝送品質が大きく劣化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題を解消し、列車などの移動局との通信を行う移動通信システムにおいて、1つの無線基地局に接続可能な中継局の数を多くした場合であっても伝送品質を高品質に保持することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の移動通信システムは、移動局の移動経路に沿って配設された通信路の所定距離毎に配置された複数の中継局と、該中継局と通信接続可能な基地局とを備えた移動通信システムであって、前記基地局を前記複数の中継局それぞれに対して個別に接続する光信号回線を含み、前記基地局側に設けられる光信号と電気信号を相互に変換する光電変換器は、該当する中継局までの光信号回線伝送損と、該当する中継局のために使用された光信号分配器の分配器挿入損と、各中継局への出力対応に設けられた補正用固定減衰器の減衰量を示す補正固定減衰量とを合わせた総損失が全ての中継局について許容損失値以下となるように、中継局側に出力する光信号を各中継局への出力用に分配する構成とされた不均一損光信号分配器を含むことを特徴とする。
【0010】
上記のように構成したことで、1つの無線基地局に接続可能な中継局の数を多くした場合であっても伝送品質を高品質に保持することができるようになる。
【0011】
前記不均一損光信号分配器は、光信号を分配する複数の光信号分配器を連結することによって構成され、複数の光信号分配器のうち前段の光信号分配器によって分配された光信号の一部を中継局の何れかへの出力用の光信号とし、他の一部を後段の光信号分配器によってさらに分配していくことによって、中継局側に出力する光信号を各中継局への出力用に分配する構成とされていてもよい。
【0012】
また、本発明の移動通信システムは、移動局の移動経路に沿って配設された通信路の所定距離毎に配置された複数の中継局と、該中継局と通信接続可能な基地局とを備えた移動通信システムであって、前記基地局と前記複数の中継局との各局間をそれぞれ接続する光信号回線を含み、前記複数の中継局は、それぞれ、前記基地局から見て下位側の中継局が存在する場合に当該下位側の中継局までの光信号回線伝送損と、該当する中継局のために使用された光信号分配器の分配器挿入損と、各中継局への出力対応に設けられた補正用固定減衰器の減衰量を示す補正固定減衰量とを合わせた総損失が前記下位側の中継局について許容損失値以下となるように、光信号を前記下位側の中継局への出力用に分配する構成とされた不均一損光信号分配器と、前記基地局から見て下位側の中継局が存在する場合に当該下位側の中継局からの光信号と、前記移動局から発信された電気信号を変換した光信号とを合成した光信号を上位側の中継局あるいは前記基地局に向けて送信する不均一光合波器とを含むことを特徴とする。
【0013】
前記不均一光合波器は、前記基地局から見て下位側の中継局が存在する場合に当該下位側の中継局からの光信号と、前記移動局から発信された電気信号を変換した光信号とを波長多重により合波することによって合成した光信号を送信する構成とされていてもよい。
【0014】
前記基地局から下位側の中継局に向かうダウンリンク側と前記基地局側に向かうアップリンク側の通信のために前記光信号回線の芯数を前記移動局の移動経路に応じて設けられている1系・2系の2ルートの各ルートについて2芯の計4芯で構成し、前記不均一光合波器は、前記基地局から見て下位側の中継局が存在する場合に当該下位側の中継局からの光信号と、前記移動局から発信された電気信号を変換した光信号とを時分割多重することにより合成した光信号を送信する構成とされていてもよい。
【0015】
前記基地局から下位側の中継局に向かうダウンリンク側と前記基地局側に向かうアップリンク側の通信のために前記光信号回線の芯数を前記移動局の移動経路に応じて設けられている1系・2系の2ルートの各ルートについて1芯の計2芯で構成し、前記複数の中継局は、それぞれ、前記基地局側あるいは他の中継局との間で波長多重信号による通信を行うためにダウンリンク側の信号とアップリンク側の信号とを波長多重したりダウンリンク側の信号とアップリンク側の信号とに波長分離するための光波長分離器を1系・2系の各ルートについてそれぞれ備える構成とされていてもよい。
【0016】
前記基地局と前記複数の中継局とに設けられる電気/光信号変換器と光/電気信号変換器との組み合わせを各局間において1対のみとする構成とされていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1つの無線基地局に接続可能な中継局の数を多くした場合であっても伝送品質を高品質に保持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態における移動通信システムの構成例を示す信号系統ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における無線基地局と光電変換器の構成の例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における中継局の構成の例を示すブロック図である。
【図4】不均一損光分配器の構成の例を示す説明図である。
【図5】三種類の不均一損1:2分配器の構成(分配比と挿入損失)の具体例を示す説明図である。
【図6】光区間損失図である。
【図7】光区間損失図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における移動通信システムの構成例を示す信号系統ブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における無線基地局と光電変換器の構成の例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における中継局の構成の例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における移動通信システムの構成例を示す信号系統ブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における無線基地局と光電変換器の構成の例を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における中継局の構成の例を示すブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態における移動通信システムの構成例を示す信号系統ブロック図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態における無線基地局と光電変換器の構成の例を示すブロック図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態における中継局の構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態における移動通信システム100の構成例を示す信号系統ブロック図である。
【0021】
図1に示すように、移動通信システム100は、インターネットなどの通信ネットワークに接続される無線基地局102と、光信号と電気信号とを相互に変換する光電変換器402と、光電変換器402と光ファイバ401up,401dnを介して接続される中継局401(n)[本例では、n=1〜20の整数]と、グレーディング方向が線路に沿った一方方向とされ20スパン(本例では、1スパン長=約1.5km)で敷設されたLCX105aとを含む。移動通信システム100は、図1に示すように、1スパン毎に1つの中継局401(n)が設けられ、各中継局401(n)から同一方向に1スパンのLCX105aが敷設された構成とされている。本例では、1つの無線基地局102の配下には、グレーディング方向が一方方向に敷設された20スパンのLCX105aで構成されたゾーン(本例では、ゾーン長=約30km)があることになる。なお、図1には、線路上を移動する列車等である無線移動局106も示されている。
【0022】
また、移動通信システム100においては、図1に示すように、各スパンにおけるLCX105aの基点には、それぞれ、中継局401(n)の何れかが電気的に接続されている。
【0023】
各中継局401(n)は、それぞれ、図1に示すように、無線基地局102が送受信する電気信号と光ファイバ401up,401dnによって伝送される光信号とを相互に変換する機能を有する光電変換器402と、各4芯の光ファイバ401up,401dnを介して直接接続されている。よって、本例のように20台の中継局401(n)を用いる場合には、必要ファイバ芯数は80芯[=2芯/ルート×2ルート(図1に示す1系ルートと2系ルートの2ルート)×中継局台数=2×2×20]となる。
【0024】
図1に示されているように、無線基地局102に接続された光電変換器402と各中継局401(n)とは、光ファイバ401up,401dnを介した「スター状」の接続形態となる。よって、各光ファイバ401up,401dnの光ファイバ長は、接続対象の各中継局401(n)により異なることになり、光電変換器402から最も近い中継局401(1)から1スパン離れていくに従って約1.5kmずつ長くなる。
【0025】
本例では、無線基地局102から無線移動局106に向けたダウンリンク信号(DL)は、ゾーン内のすべての無線移動局106に同報通信され、無線移動局106から無線基地局102へ向けたアップリンク信号(UL)は、通信必要時に「バースト的」に発信される通信アクセス方式を前提にしている。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施の形態における無線基地局102と光電変換器402の構成の例を示すブロック図である。図3は、本発明の第1の実施の形態における中継局401(n)の構成の例を示すブロック図である。
【0027】
図2において、無線基地局102から光電変換器402に入力されるダウンリンク電気信号402dn(s)は、電気分配器402hによって1系・2系の2ルートに分配された後、それぞれのルートにおいてEO変換器402bに入力される。このEO変換器402dで電気信号から光信号に変換されたダウンリンク光信号402dnは、不均一損光分配器402dに入力されて各中継局401(n)[本例では、n=1〜20の整数]に向けたダウンリンク光信号402dn(n)に光分配され、各ポート対応の補正用固定減衰器402t(n)[本例では、n=1〜20の整数]を介して出力される。
【0028】
二つのルートから送信されたダウンリンク光信号402dn(n)は、図3に示すように、光ファイバ401dnを介して各中継器401(n)に入力され、各中継器401(n)が備えるOE変換器401cによってそれぞれ電気信号に復元される。
【0029】
一般に、EO変換器402bの光出力レベルとOE変換器401cの光入力レベルには、入出力範囲の制限がある。また、このレベル差が光伝送区間の許容伝送損失となる。ここでは、説明の簡単のために、EO変換器402bの出力レベルを+10dBm、OE変換器401cの最小受信入力レベルを−20dBm、最大許容受信レベルを−15dBmとする。従って、EO変換器402bとOE変換器401cとの間の最大許容損失は、ここでは30dBとなるものとする。
【0030】
図2において、EO変換器402bの出力を不均一損光分配器402dで20個のルートに分配する際に、単純に「等分配」すると各ポートへの挿入損失は等しく13dB程度となる。本例では、不均一損光分配器402dを、図4に示すような不均一損型分配器10a、10b、10cによって、これらの数珠繋ぎ構成で実現する。
【0031】
図5は、上記の三種類の不均一損分配器の構成(分配比と挿入損失)の具体例を示す説明図である。図5(A)は、図5(D)の表におけるタイプ10aの分配器10aの具体例を示す説明図である。図5(B)は、図5(D)の表におけるタイプ10bの分配器10bの具体例を示す説明図である。図5(C)は、図5(D)の表におけるタイプ10cの分配器10cの具体例を示す説明図である。
【0032】
図5(A)に示す分配器10aは、例えば、入力ポート10a(in)に信号入力があると、電力分配比1/40でドロップ側出力ポート10a(x)に信号出力し、電力分配比39/40で中継側出力ポート10a(y)に信号出力する構成とされている。
【0033】
図5(B)に示す分配器10bは、例えば、入力ポート10b(in)に信号入力があると、電力分配比1/20でドロップ側出力ポート10b(x)に信号出力し、電力分配比19/20で中継側出力ポート10b(y)に信号出力する構成とされている。
【0034】
図5(C)に示す分配器10cは、例えば、入力ポート10c(in)に信号入力があると、電力分配比1/2でドロップ側出力ポート10c(x)に信号出力し、電力分配比1/2で中継側出力ポート10c(y)に信号出力する構成とされている。
【0035】
各分配器10a〜10cの電力分配比は必ずしも図5(D)に示す数値である必要はないが、不均一損光分配器402dを構成する手順としては、先ず、各出力ポートに割り振られているポート番号の若番側に分配比差分が大きい分配器10aを使用し、ポート番号中段に分配比差分が中程度の分配器10bを使用し、ポート番号最終段側に分配比差分が最小の分配器10cを使用する。本例では、不均一損光分配器402dは、ポート番号1〜20の20個の出力ポートが設けられる。
【0036】
なお、図4に示す例では3種の分配器10a〜10cで構成しているが、4種でも良いし、また必ずしもこの分配比でなくてもよい。
【0037】
ここで、図6に示す光区間損失図を参照して分配器10a〜10cによる不均一損光分配器402dの構成の決定手順の具体例について説明する。
まず、各中継局401(n)までの光ファイバ伝送損をグラフ化する(図6の太実線矢印20)。
ここでは、光中継ファイバの伝送損を1dB/スパンとした。(0.3dB/km x 1.5 km + コネクタ4箇所接続損5.5dB=1dB)
次に、各分配器10a〜10cを最若番であるポート(1)から順次割り当て、ポート毎に[光ファイバ伝送損+分配器挿入損(ドロップ側)]を算出し、この総損失が30dBを超えない範囲で順次分配器の種類を選択する(10a→10b→10cの順)。ここで、総損失30dBは、EO変換器402bとOE変換器401cとの間の最大許容損失として決定する。図6では、分配器10a〜10cによる分配器挿入損(ドロップ側)が点線矢印30で示されている。
ポート(1)から順番に分配器10aを割り当てていき、[光ファイバ伝送損+分配器挿入損(ドロップ側)]の総損失が30dBを超えることとなるポート(図4,図6に示す例ではポート(14))から分配器10bを割り当てていくこととし、さらに[光ファイバ伝送損+分配器挿入損(ドロップ側)]の総損失が30dBを超えることとなるポート(図4,図6に示す例ではポート(18))から分配器10cを割り当てていくこととする。図6では、実線矢印20と点線矢印30によって[光ファイバ伝送損+分配器挿入損(ドロップ側)]の総損失が30dBを超えない範囲であることが容易に把握できるようにグラフ化されている。
【0038】
上記のようにして、各ポート番号に対応した分配器種別(仕様)を決定し、図4に示す不均一損光分配器402dの詳細構成を3種の分配器10a〜10cの数珠繋ぎ構成で決定することができる。また、図2における、各ポートに対応する補正用固定減衰器402t(n)の減衰量を図6に表われている細実線矢印40から決定することができる。この細実線矢印40の長さに相当する値は、EO変換器402bとOE変換器401cとの間の最大許容損失(本例では30dB)から、[光ファイバ伝送損+分配器挿入損(ドロップ側)]の総損失を減算した値を示すものとなる。従って、例えば、図6に示す範囲50(=25dB以上、かつ30dB以下)内の値となるように、各ポートの固定減衰器402t(n)の補正固定減衰量の値を決定すればよい。
【0039】
以上のようにして、図2の基地局構成におけるダウンリンク側の不均一損光分配器402dの構成、補正用固定減衰器402t(n)の補正固定減衰量の構成を決定することができる。
【0040】
また、図2の基地局構成におけるアップリンク側の構成においては、図3のアップリンク側のEO変換器401bと図2のアップリンク側のOE変換器402cの入出力条件も上記のダウンリンク側と同様とすれば、各ポートは光ファイバで接続されているので、同様に図7の光区間損失図から、図2におけるアップリンク側の補正用固定減衰器402r(n)の補正固定減衰量の値を決定することができる。すなわち、図2の基地局構成における各ポートに対応する補正用固定減衰器402r(n)の減衰量を図7に表われている細実線矢印40から決定することができる。この細実線矢印40の長さに相当する値は、EO変換器401bとOE変換器402cとの間の最大許容損失(本例では30dB)から、光ファイバ伝送損(図7の太実線矢印20)を減算した値を示すものとなる。従って、図7に表われている細実線矢印40の先が位置する値が、図7における所定の範囲(例えば、25dB以上、かつ30dB以下)内の値となるように、各ポートの固定減衰器402r(n)の補正固定減衰量の値を決定すればよい。
【0041】
以上のように、第1の実施の形態によれば、無線基地局102と各中継局401(n)間を直接4芯光ファイバで接続する構成とし、このダウンリンク側の構成において不均一損分配器402dを用いたので、EO変換器402bとOE変換器401cとの間の光伝送損失を所定の範囲内に、且つ一定にすることができる。また、EO変換器402bとOE変換器401cの組が各中継局401(n)に対して1対(回)のみであり、またこの光損失区間内(EO変換器402bとOE変換器401cとの間)には光受動素子のみしか使用していないため、光区間におけるアクティブ素子による下位の中継局への信号品質に影響を及ぼすことを防止することができ、信頼性を高く保つことが可能となる。さらに、中継局401(n)が20台である場合を例にした上述した実施の形態により明らかなように、20スパンの対応が可能となり、伝送品質を高品質に保持したまま1つの無線基地局102に接続可能な中継局の数を多くすることができるようになる。
【0042】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、上述した第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0043】
図8は、本発明の第2の実施の形態における移動通信システム200の構成例を示す信号系統ブロック図である。
【0044】
図8に示すように、移動通信システム200は、無線基地局102と、光信号と電気信号とを相互に変換する光電変換器502と、光電変換器502と光ファイバ501up,501dnを介して接続される中継局501(n)[本例では、n=1〜20の整数]と、グレーディング方向が線路に沿った一方方向とされ20スパン(本例では、1スパン長=約1.5km)で敷設されたLCX105aとを含む。移動通信システム200は、図8に示すように、1スパン毎に1つの中継局501(n)が設けられ、各中継局501(n)から同一方向に1スパンのLCX105aが敷設された構成とされている。本例では、上述した第1の実施の形態と同様に、1つの無線基地局102の配下には、グレーディング方向が一方方向に敷設された20スパンのLCX105aで構成されたゾーン(本例では、ゾーン長=約30km)があることになる。
【0045】
また、移動通信システム200においては、図8に示すように、各スパンにおけるLCX105aの基点には、それぞれ、中継局501(n)の何れかが電気的に接続されている。
【0046】
各中継局501(n)のうち無線基地局102側に最も近い最上流の中継局501(1)は、図8に示すように、無線基地局102が送受信する電気信号と光ファイバ501up,501dnによって伝送される光信号とを相互に変換する機能を有する光電変換器502と、各2芯の光ファイバ501up,501dnを介して計4芯で直接接続されている。
【0047】
また、図8に示すように、各中継局501(n)のうち中継局501(2)〜中継局501(20)は、それぞれ、無線基地局102側に1つ近い上流側の中継局501(n−1)と、2芯の光ファイバ501up,501dnを介して計4芯で直接接続されている。
【0048】
すなわち、本例の移動通信システム200は、各2芯の光ファイバ501up,501dn(計4芯)で光電変換器502と各中継局501(n)との間のスパンを接続した構成となっている。
【0049】
図9は、本発明の第2の実施の形態における無線基地局102と光電変換器502の構成の例を示すブロック図である。図10は、本発明の第2の実施の形態における中継局501(n)の構成の例を示すブロック図である。なお、図9、図10に示されているEO変換器502bとOE変喚器502cは、出力レベル、入力レベルについては上述したEO変換器402bやOE変喚器402cと同じであるものとするが、本例では、EO変換器502bが光連続キャリア型EO変喚器(バースト的でなく連続的に発信されるキャリア信号の変換処理を行うEO変換器)であり、OE変喚器502cが光連続キャリア型OE変喚器(バースト的でなく連続的に発信されるキャリア信号の変換処理を行うOE変換器)であるものとする。
【0050】
先ず、ダウンリンク側について説明する。
無線基地局102から送出されるダウンリンク信号は、ゾーン内のすべての無線移動局106に同報的に通信される必要がある。図9において、無線基地局102から無線移動局106へ向けたダウンリンク電気信号502dn(s)は、電気分配器502hによって1系ルートと2系ルートの2ルートに分配された後、それぞれのルートにおいてEO変換器502bに入力され、光信号に変換されたダウンリンク光信号502dn(n)が光ファイバ501dnへ送出される。
【0051】
ダウンリンク光信号502dn(n)は、まず無線基地局102側に最も近い第1段の中継局501(1)に入力される。図10に示す中継局501(n)にあるように、このダウンリンク光信号501dn(n:n=1)は、不均一損光分配器501ztに入力され光信号で2ルートに分配される。分配された一方のダウンリンク光信号501dn(n+1:n=1)は、無線基地局102側に2番目に近い第2段の中継局501(2)に向けて、1スパンの中継用光ファイバ501dnを介して伝送される。以後、中継局501(3)以降についても、同様の動作が繰り返され、ダウンリンク信号501dn(n)は最終の第20段の中継局501(20)まで送信される。
【0052】
一方、図10における不均一損光分配器501ztにてもう一方に分配されたダウンリンク光信号は、図10に示すように中継局501(n)に接続されているLCX105a(n)に放射されるべき信号である。分配されたダウンリンク光信号は、補正用光固定減衰器501tt(n)を通過して減衰された後、OE変喚器501cによって光信号から電気信号に復元され、ルート選択スイッチ501sを介した後に、電気信号増幅器501xで増幅され、その後、分配器501hと送受信信号分離・合成器501aを介して、LCX105a(n)から無線移動局106に向けて輻射される。
【0053】
なお、上述した不均一損光分配器501zt、該当スパン用の補正用光固定減衰器501tt(n)は、各中継局501(n)によって、その種別と、固定減衰値が異なる。ただし、この選択決定手順(手法)は、上述した第1の実施の形態にて図6等を参照して説明した選択決定手法をそのまま利用することによって決定することができる。
【0054】
次に、アップリンク側について説明する。
ここで、図10の中継局501(n)におけるアップリンク側のEO変換器501b(n)の送信波長λnは、中継局501(1)〜中継局501(20)において、それぞれ異なるものとする。
【0055】
無線移動局106から発信されたアップリンク信号は、該当スパンのLCX105aを介して、電気信号として増幅器501yを介してEO変換器501b(n)に入力され、アップリンク光信号に変換される。このアップリンク光信号は、アップリンク用の固定減衰器501tr(n)を経由して、不均一損光合波器501zrに入力される。
【0056】
不均一損光合波器501zrは、図10に示すようにLCX105a(n)から中継局501(n)に入力されるアップリンク光信号と、下位側の中継局501(n+1)からのアップリンク光信号501up(n+1)とを合波(波長多重)し、合波したアップリンク光信号501up(n)を上位側の中継局501(n−1)に送出する。その後、上位側の中継局501(n−1)以降も同様な動作を順次繰り返し、光電変換器502を介して無線基地局102に送信される。
【0057】
図9の基地局構成例のアップリンク側系統図では、アップリンク光信号502upwは、波長多重信号(λx:x=1〜20)である。この波長多重信号が光波長分離器502f(n)によって光波長分離され、それぞれの中継局501(n)からのアップリンク光信号502up(n)に分離され、それぞれのOE変換器502cに入力され電気信号に戻されて、無線基地局102に送信される。
【0058】
なお、図10において、アップリンク用固定減衰器501tr(n)、アップリンク用不均一損光合波器501zrは、上述したダウンリンク側の補正用光固定減衰器501tt(n)と不均一損光分配器501ztと同じ型のものをそのまま使用するものとする。
【0059】
以上のように、第2の実施の形態によれば、無線基地局102と最上流の中継局501(1)の間を計4芯の光ファイバで直接接続するとともに、各中継局501(n)の間をを計4芯の光ファイバでそれぞれ接続する構成としたので、第1の実施の形態と同様に、EO変換器502bとOE変換器501cとの間の光伝送損失を所定の範囲内に、且つ一定にすることができる。また、EO変換器502bとOE変換器501cの組が各中継局401(n)に対して1対(回)のみであり、またこの光損失区間内(EO変換器502bとOE変換器501cとの間)には光受動素子のみしか使用していないため、光区間におけるアクティブ素子による下位の中継局への信号品質に影響を及ぼすことを防止することができ、信頼性を高く保つことが可能となる。
【0060】
さらに、第2の実施の形態によれば、1ゾーン内に使用する光ファイバ芯数が、光電変換器502と中継局501(1)の間と、中継局501(n)と中継局501(n+1)のそれぞれの間との何れの局間においてもルート2芯(計4芯)で構成するようにしているため、第1の実施の形態と比較して、経済化が図られている。
【0061】
すなわち、第1の実施の形態ではゾーン当たりに使用される光ファイバ芯数が80芯と多く必要であったが、第2の実施の形態では光ファイバ芯数を4芯としているため、使用すべき光ファイバ芯数を少なくすることができ、第1の実施の形態と比較してシステムの構築コストを大幅に低減することが可能となる。
【0062】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、上述した第2の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0063】
図11は、本発明の第3の実施の形態における移動通信システム300の構成例を示す信号系統ブロック図である。
【0064】
図11に示すように、移動通信システム300は、上述した移動通信システム200と同様に、無線基地局102と、光信号と電気信号とを相互に変換する光電変換器502と、光電変換器502と光ファイバ501up,501dnを介して接続される中継局501(n)[本例では、n=1〜20の整数]と、グレーディング方向が線路に沿った一方方向とされ20スパン(本例では、1スパン長=約1.5km)で敷設されたLCX105aとを含む。移動通信システム300は、上述した移動通信システム200と同様に、図11に示すように、1スパン毎に1つの中継局501(n)が設けられ、各中継局501(n)から同一方向に1スパンのLCX105aが敷設された構成とされている。本例では、上述した第1の実施の形態と同様に、1つの無線基地局102の配下には、グレーディング方向が一方方向に敷設された20スパンのLCX105aで構成されたゾーン(本例では、ゾーン長=約30km)があることになる。
【0065】
また、図11に示すように、移動通信システム300においては、無線基地局102、光電変換器502、各中継局501(n)、及び各スパンにおけるLCX105aの接続構成は、上述した移動通信システム200と同様とされている。
【0066】
図12は、本発明の第3の実施の形態における無線基地局102と光電変換器502の構成の例を示すブロック図である。図13は、本発明の第3の実施の形態における中継局501(n)の構成の例を示すブロック図である。ダウンリンク側の構成及び動作については、上述した第2の実施の形態と同一である。よって、アップリンク側の説明のみについて行うこととする。
【0067】
図13の中継局501(n)を構成する機能ブロックは図10に示したものと同じであるが、無線移動局106からのアップリンク信号が「バースト」信号として入力されるアップリンク側のEO変換器501fについては、この入力バースト信号に連動して、EO変換器501fの出力光信号501upも光キャリア信号が「バースト」出力されるタイプであるものとする。
【0068】
従って、このタイプでのEO変換器501fの送出波長(λn)は、いずれの中継局501(n)においても同一とすると、不均一損光合波器501zrの出力は、下位側中継局501(n+1)からのアップリンク光信号と時分割多重により合波された合波信号となり、上位側中継局501(n−1)または光電変換器501へ送出される。図12の光電変換器502におけるアップリンク側系統では、この時分割多重された単一波長でのアップリンク光信号502upが、OE変換器502eによって光信号から電気信号に復元され、無線基地局102にて受信されることになる。
【0069】
以上のように、第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができ、且つアップリンク側には波長多重を用いず時分割多重された単一波長でのアップリンク光信号502upを用いる構成としているので、光電変換器502の構成を簡略化することが可能となり、システムの構築コストをさらに低減することが可能となる。
すなわち、上述した第2の実施の形態と比較すると、アップリンク側における光波長分離器502f(n)、2系統の各ルートそれぞれに複数用いられる多数のOE変換器502c、電気分配器502hを備える必要がなく、光電変換器502を、アップリンク側について2系統の各ルートそれぞれに1つずつ用いる2つのOE変換器502e等を備えた簡略化した構成とすることが可能となる。よって、システムの構築コストをさらに低減することが可能となるのである。
【0070】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、上述した第3の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0071】
図14は、本発明の第4の実施の形態における移動通信システム400の構成例を示す信号系統ブロック図である。
【0072】
図14に示すように、移動通信システム400は、上述した移動通信システム300と同様に、無線基地局102と、光信号と電気信号とを相互に変換する光電変換器502と、光電変換器502と光ファイバ501up,501dnを介して接続される中継局501(n)[本例では、n=1〜20の整数]と、グレーディング方向が線路に沿った一方方向とされ20スパン(本例では、1スパン長=約1.5km)で敷設されたLCX105aとを含む。移動通信システム400は、上述した移動通信システム300と同様に、図14に示すように、1スパン毎に1つの中継局501(n)が設けられ、各中継局501(n)から同一方向に1スパンのLCX105aが敷設された構成とされている。本例では、上述した第1の実施の形態と同様に、1つの無線基地局102の配下には、グレーディング方向が一方方向に敷設された20スパンのLCX105aで構成されたゾーン(本例では、ゾーン長=約30km)があることになる。
【0073】
各中継局501(n)のうち無線基地局102側に最も近い最上流の中継局501(1)は、図14に示すように、無線基地局102が送受信する電気信号と光ファイバ501up,501dnを伝送する光信号とを相互に変換する機能を有する光電変換器502と、各1芯の光ファイバ501up,501dnを介して計2芯で直接接続されている。
【0074】
また、図14に示すように、各中継局501(n)のうち中継局501(2)〜中継局501(20)は、それぞれ、無線基地局102側に1つ近い上流側の中継局501(n−1)と、1芯の光ファイバ501up,501dnを介して計2芯で直接接続されている。
【0075】
すなわち、本例の移動通信システム400は、各1芯の光ファイバ501up,501dn(計2芯)で光電変換器502と各中継局501(n)との間のスパンを接続した構成となっている。
【0076】
図15は、本発明の第4の実施の形態における無線基地局102と光電変換器502の構成の例を示すブロック図である。図16は、本発明の第4の実施の形態における中継局501(n)の構成の例を示すブロック図である。
【0077】
図15の信号系統ブロック図に示すように、本例では、光ファイバ芯数の低減を図るために、各スパンについて1系・2系の各ルートあたり光ファイバ1芯(計2芯)で実現している。この場合、図15に示す光電変換器502におけるダウンリンク側のEO変換器502bの送信波長(λ0)と、図16に示す各中継局501(n)の光バーストキャリア型EO変換器501fの送信波長(λ1)の2種類のみ設定し、光電変換器502と中継局501(1)との間と、中継局501(n)から中継局501(n+1)までのそれぞれの間との何れの局間においてもルート1芯(計2芯)の光ファイバで接続し、各局間をダウンリンク光信号とアップリンク光信号で波長多重伝送する構成とすればよい。
【0078】
本例では、図15に示すように、光電変換器502と各中継局501(n)とが、それぞれ、各局間におけるダウンリンク光信号とアップリンク光信号を波長分割多重する光波長分離器を1系・2系の各ルートについてそれぞれ備える構成としている。光電変換器502については、中継局501(1)と送受信される信号を処理するために波長多重あるいは波長分離するための光波長分離器とを1系・2系の各ルートについてそれぞれ備える構成としている。各中継局501(n)については、上位側の中継局501(n−1)と送受信される信号を処理するために波長多重あるいは波長分離するための光波長分離器と、下位側の中継局501(n+1)と送受信される信号を処理するために波長多重あるいは波長分離するための光波長分離器とを1系・2系の各ルートについてそれぞれ備える構成としている。
【0079】
以上のように、第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができ、加えて、局間ファイバをルート1芯で実現することができ、更にシステムの経済化を図ることができるようになる。
【0080】
[効果]
以上説明したように、本発明の実施の形態において、移動局(例えば無線移動局106)の移動経路に沿って配設された通信路(例えばLCX105a)の所定距離毎に配置された複数の中継局401(n)と、その中継局401と通信接続可能な基地局(例えば無線基地局102)とを備えた移動通信システム100が、基地局102を複数の中継局401(n)それぞれに対して個別に接続する光信号回線(例えば光ファイバ401dn,401up)を含み、基地局102側に設けられる光信号と電気信号を相互に変換する光電変換器402は、該当する中継局401(n)までの光信号回線伝送損と、該当する中継局401(n)のために使用された光信号分配器10a〜10cの分配器挿入損と、各中継局401(n)への出力対応に設けられた補正用固定減衰器402t(n)の減衰量を示す補正固定減衰量とを合わせた総損失が全ての中継局401(n)について許容損失値以下となるように、中継局401(n)側に出力する光信号を各中継局401(n)への出力用に分配する構成とされた不均一損光信号分配器402dを含む構成としたことで、1つの無線基地局102に接続可能な中継局401(n)の数を多くした場合であっても伝送品質を高品質に保持することができるという効果を奏する。
【0081】
また、上述した実施の形態では、不均一損光信号分配器402dが、光信号を分配する複数の光信号分配器10a〜10cを連結することによって構成するようにしたので、複数の光信号分配器10a〜10cを連結していくだけの簡単な構成で、かつ正確に総損失が全ての中継局401(n)について許容損失値以下となるような不均一損光信号分配器402dを構成することが可能となる。
【0082】
また、上述した実施の形態では、不均一損光信号分配器402dが、複数の光信号分配器10a〜10cのうち前段の光信号分配器(例えば光信号分配器10a)によって分配された光信号の一部を中継局401(n)の何れかへの出力用の光信号とし、他の一部を後段の光信号分配器(例えば、前段のものとは異なる同種の光信号分配器10a)によってさらに分配していくことによって、中継局401(n)側に出力する光信号を各中継局401(n)への出力用に分配する構成するようにしたので、簡単かつ正確に総損失が全ての中継局401(n)について許容損失値以下となるように不均一損光信号分配器402dを構成することが可能となる。
【0083】
また、本発明の実施の形態において、移動局(例えば無線移動局106)の移動経路に沿って配設された通信路(例えばLCX105a)の所定距離毎に配置された複数の中継局501(n)と、その中継局501(n)と通信接続可能な基地局(例えば無線基地局102)とを備えた移動通信システム200,300,400が、基地局102と複数の中継局501(n)との各局間をそれぞれ接続する光信号回線を含み、複数の中継局501(n)は、それぞれ、基地局102から見て下位側の中継局501(n+1)が存在する場合に当該下位側の中継局501(n+1)までの光信号回線伝送損と、該当する中継局501(n+1)のために使用された光信号分配器10a〜10cの分配器挿入損と、各中継局501(n)への出力対応に設けられた補正用固定減衰器501ttの減衰量を示す補正固定減衰量とを合わせた総損失が下位側の中継局について許容損失値以下となるように、光信号を下位側の中継局への出力用に分配する構成とされた不均一損光信号分配器501ztと、基地局102から見て下位側の中継局501(n+1)が存在する場合に当該下位側の中継局501(n+1)からの光信号と、移動局106から発信された電気信号を変換した光信号とを合成した光信号を上位側の中継局501(n−1)あるいは基地局102に向けて送信する不均一光合波器501zrを含む構成としたことで、1つの無線基地局102に接続可能な中継局501(n)の数を多くした場合であっても伝送品質を高品質に保持することができるという効果を奏する。
【0084】
また、上述した実施の形態において、不均一光合波器501zrは、基地局102から見て下位側の中継局501(n+1)が存在する場合に当該下位側の中継局501(n+1)からの光信号と、移動局106から発信された電気信号を変換した光信号とを波長多重により合波することによって合成した光信号を送信する構成とした場合には、波長多重により合成した信号を上位側の中継局501(n−1)あるいは基地局102に向けて送信することが可能となる。
【0085】
また、上述した実施の形態において、基地局102から下位側の中継局501(n+1)に向かうダウンリンク側と基地局102側に向かうアップリンク側の通信のために光信号回線の芯数を移動局106の移動経路に応じて設けられている1系・2系の2ルートの各ルートについて2芯の計4芯で構成し、不均一光合波器501zrは、基地局102から見て下位側の中継局501(n+1)が存在する場合に当該下位側の中継局501(n+1)からの光信号と、移動局106から発信された電気信号を変換した光信号とを時分割多重することにより合成した光信号を送信する構成とした場合には、光電変換器502の構成を簡略化することが可能となり、低コストでシステムを構築することが可能となる。
【0086】
また、上述した実施の形態では、基地局102と複数の中継局401(n),501(n)とに設けられるOE変換器とEO変換器との組み合わせを各局間において1対のみとする構成としたので、光区間におけるアクティブ素子による下位の中継局への信号品質に影響を及ぼすことを防止することができ、信頼性を高く保つことが可能となる。
【0087】
また、上述した実施の形態において、基地局102から下位側の中継局501(n+1)に向かうダウンリンク側と基地局102側に向かうアップリンク側の通信のために光信号回線の芯数を移動局106の移動経路に応じて設けられている1系・2系の2ルートの各ルートについて1芯の計2芯で構成し、複数の中継局501(n)は、それぞれ、基地局102側あるいは他の中継局との間で波長多重信号による通信を行うためにダウンリンク側の信号とアップリンク側の信号とを波長多重したりダウンリンク側の信号とアップリンク側の信号とに波長分離するための光波長分離器(図16参照)を1系・2系の各ルートについてそれぞれ備える構成とした場合には、さらに低コストでシステムを構築することが可能となる。
【0088】
また、上述した実施の形態では、不均一損光分配器(例えば不均一損光分配器501zt)と不均一損光合波器(例えば不均一損光合波器501zr)とを用いる構成としたことで、基地局102側のEO/OE変換器(例えばEO変換器502b、OE変換器502c)と各中継局(例えば中継局501(n))のOE/EO変換器(例えばEO変換器501b、OE変換器501c)間の光伝送損失が一定値以内の損失となるように設定(設計)することができるようになり、その結果、無線移動局106がいずれのスパンに位置している場合であっても一定以上の通信品質を確保することができる。
【0089】
また、上述した実施の形態では、基地局102側のEO/OE変換器(例えばEO変換器502b、OE変換器502c)と各中継局(例えば中継局501(n))のOE/EO変換器(例えばEO変換器501b、OE変換器501c)間は一対(一対向)のEO−OE変換とし、光伝送損失はすべて受動素子のみとなるように構成されているため、熱雑音が重畳されることなく、且つ光伝送損失の変動要素が最小限に抑制された高品質・高安定なシステムの信頼性設計を各スパン毎に独立して設計することができるようになる。
【0090】
また、上述した実施の形態において、アップリンク側には波長多重を用いず時分割多重された単一波長でのアップリンク光信号502upを用いる構成とし、無線基地局102から中継局501(1)の間と中継局501(1)から中継局501(20)までのそれぞれの局間の光ファイバをルート2芯の構成で実現するようにした場合には、無線基地局102側(具体的には光電変換器502)の構成を大幅に簡略化することが可能となり、システム構築コストを低減することができるようになる。
【0091】
また、上述した実施の形態において、光電変換器502と各中継局501(n)とが、それぞれ、各局間におけるダウンリンク光信号とアップリンク光信号を波長分割多重する光波長分離器を1系・2系の各ルートについてそれぞれ備える構成とし、無線基地局102から中継局501(1)の間と中継局501(1)から中継局501(20)までのそれぞれの局間の光ファイバをルート1芯の構成で実現するようにした場合には、さらにシステム構築コストを低減することができるようになる。
【0092】
なお、上述した実施の形態では、中継局間のスパン長が1.5kmですべて等しい例を示したが、その局間距離が等しくなくランダムな場合であっても本発明を適用することができる。また、上述した実施の形態では、中継局数が20台であるものとして説明したが、19台以下の場合はもちろん本発明を適用することができ、20台を超える局数であっても光許容伝送損失内の範囲であれば本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、1つの無線基地局に接続可能な中継局の数を多くした場合であっても伝送品質を高品質に保持するのに有用である。
【符号の説明】
【0094】
100 移動通信システム
102 無線基地局
105a LCX
106 無線移動局
401 中継局
401dn ダウンリンク用光ファイバ
401up アップリンク用光ファイバ
402 光電変換器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局の移動経路に沿って配設された通信路の所定距離毎に配置された複数の中継局と、該中継局と通信接続可能な基地局とを備えた移動通信システムであって、
前記基地局を前記複数の中継局それぞれに対して個別に接続する光信号回線を含み、
前記基地局側に設けられる光信号と電気信号を相互に変換する光電変換器は、該当する中継局までの光信号回線伝送損と、該当する中継局のために使用された光信号分配器の分配器挿入損と、各中継局への出力対応に設けられた補正用固定減衰器の減衰量を示す補正固定減衰量とを合わせた総損失が全ての中継局について許容損失値以下となるように、中継局側に出力する光信号を各中継局への出力用に分配する構成とされた不均一損光信号分配器を含む
ことを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記不均一損光信号分配器は、
光信号を分配する複数の光信号分配器を連結することによって構成され、
複数の光信号分配器のうち前段の光信号分配器によって分配された光信号の一部を中継局の何れかへの出力用の光信号とし、他の一部を後段の光信号分配器によってさらに分配していくことによって、中継局側に出力する光信号を各中継局への出力用に分配する
請求項1記載の移動通信システム。
【請求項3】
移動局の移動経路に沿って配設された通信路の所定距離毎に配置された複数の中継局と、該中継局と通信接続可能な基地局とを備えた移動通信システムであって、
前記基地局と前記複数の中継局との各局間をそれぞれ接続する光信号回線を含み、
前記複数の中継局は、それぞれ、
前記基地局から見て下位側の中継局が存在する場合に当該下位側の中継局までの光信号回線伝送損と、該当する中継局のために使用された光信号分配器の分配器挿入損と、各中継局への出力対応に設けられた補正用固定減衰器の減衰量を示す補正固定減衰量とを合わせた総損失が前記下位側の中継局について許容損失値以下となるように、光信号を前記下位側の中継局への出力用に分配する構成とされた不均一損光信号分配器と、
前記基地局から見て下位側の中継局が存在する場合に当該下位側の中継局からの光信号と、前記移動局から発信された電気信号を変換した光信号とを合成した光信号を上位側の中継局あるいは前記基地局に向けて送信する不均一光合波器とを含む
ことを特徴とする移動通信システム。
【請求項4】
前記不均一光合波器は、前記基地局から見て下位側の中継局が存在する場合に当該下位側の中継局からの光信号と、前記移動局から発信された電気信号を変換した光信号とを波長多重により合波することによって合成した光信号を送信する
請求項3記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記基地局から下位側の中継局に向かうダウンリンク側と前記基地局側に向かうアップリンク側の通信のために前記光信号回線の芯数を前記移動局の移動経路に応じて設けられている1系・2系の2ルートの各ルートについて2芯の計4芯で構成し、
前記不均一光合波器は、前記基地局から見て下位側の中継局が存在する場合に当該下位側の中継局からの光信号と、前記移動局から発信された電気信号を変換した光信号とを時分割多重することにより合成した光信号を送信する
請求項3記載の移動通信システム。
【請求項6】
前記基地局から下位側の中継局に向かうダウンリンク側と前記基地局側に向かうアップリンク側の通信のために前記光信号回線の芯数を前記移動局の移動経路に応じて設けられている1系・2系の2ルートの各ルートについて1芯の計2芯で構成し、
前記複数の中継局は、それぞれ、前記基地局側あるいは他の中継局との間で波長多重信号による通信を行うためにダウンリンク側の信号とアップリンク側の信号とを波長多重したりダウンリンク側の信号とアップリンク側の信号とに波長分離するための光波長分離器を1系・2系の各ルートについてそれぞれ備える
請求項3記載の移動通信システム。
【請求項7】
前記基地局と前記複数の中継局とに設けられる電気/光信号変換器と光/電気信号変換器との組み合わせを各局間において1対のみとする
請求項1から請求項6のうちいずれかに記載の移動通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−216974(P2011−216974A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80628(P2010−80628)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(307022424)ソフトバンクテレコム株式会社 (42)
【Fターム(参考)】