説明

移動通信装置

【課題】着信があった場合、2種類の通信方式による近距離無線通信に支障が発生しない。
【解決手段】着信があった場合、着信報知機能は、代金の支払い用の第1の近距離無線通信が行われているか、コンテンツの受信用の第2の近距離無線通信が行われているかに拘らず、コンテンツの購入処理中であれば(ステップS102の「YES」)、その購入処理の完了を待って(ステップS105の「コンテンツの受信完了」)、着信を報知する(ステップS103)。又は、着信報知機能は、購入処理を中止させて着信を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信装置に係り、特に、移動通信に加えて、近距離無線通信を行う処理に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信網を介した通信に加えて、近距離無線通信を行う移動通信装置が知られている。近距離無線通信の相手方の通信装置は、例えば、コンテンツサーバ装置であり、近距離無線通信によってコンテンツの受信と、そのコンテンツの代金の決済とが行われる。コンテンツの受信には、高速な通信が求められる。一方、代金の決済には、高いセキュリティの通信が求められる。そこで、2種類の通信方式による近距離無線通信を使い分けることが知られている。
【0003】
高速な近距離無線通信の一例は、トランスファージェット(登録商標、TransferJet)等のUWB(Ultra Wide Band)方式による通信である。また、高いセキュリティの近距離無線通信の一例は、鉄道の乗車券等や電子マネーとして用いられているフェリカ(登録商標、FeliCa)と互換性を持つISO/IEC JTC 1(International Organization for Standardization/International Electrotechnical Commission Joint Technical Committee 1)によって規格化された近距離無線通信(Near Field Communication。以後、NFCと称する。)方式による通信である。
【0004】
近距離無線通信中の移動通信装置に着信があり、装置の使用者がその着信に対する着呼操作をした場合、また、単にその着信に気を取られた場合であっても、装置を保持する手が動き、近距離無線通信に障害が発生する恐れがある。そこで、移動通信装置は、近距離無線通信中の着信を報知せず、その通信が終了した後でその着信を報知する処理が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−191790号公報(第11頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている方法では、2種類の通信方式による近距離無線通信中に着信があった場合の処理が考慮されていない問題点があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、着信があった場合、2種類の通信方式による近距離無線通信に支障が発生しない移動通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の移動通信装置は、コンテンツ購入代金決済の通信をする第1の近距離無線通信手段と、前記第1の近距離無線通信手段より受信速度が速く、コンテンツを受信する第2の近距離無線通信手段とによってコンテンツサーバ装置からコンテンツを購入する処理を行う移動通信装置であって、移動通信網から着信信号を受信すると、その着信を報知する着信報知手段を有し、前記着信報知手段は、前記購入処理中に着信信号が受信された場合、前記第1の近距離無線通信手段及び前記第2の近距離無線通信手段にその購入処理を中止させて、その着信を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着信があった場合、2種類の通信方式による近距離無線通信に支障が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動通信装置が含まれる通信システムの構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るコンテンツサーバ装置の外観図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る移動通信装置の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るコンテンツサーバ装置の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る着信報知機能の着信を報知する制御動作のフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るコンテンツサーバ装置の外観図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る移動通信装置の構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るコンテンツサーバ装置の構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る着信報知機能の着信を報知する制御動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る移動通信装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る移動通信装置が含まれる通信システムの構成を示すブロック図である。この通信システムは、近距離無線通信網NWを介して接続される携帯電話である移動通信装置MSと、コンテンツサーバ装置SVとからなる。移動通信装置MSは、コンテンツサーバ装置SVに記憶されたコンテンツを購入する処理を行い、コンテンツサーバ装置SVは、そのコンテンツを販売する処理を行う。ここで、これらの装置が近距離に、例えば、数センチメートル以下の距離に位置する場合に限って、近距離無線通信網NWを介して接続される。
【0013】
図2は、第1の実施形態に係るコンテンツサーバ装置SVの外観を示す。この装置は、床又は机上に置かれるコンテンツ自動販売装置であって、正面上部には、表示部42が設置されている。また、正面中央部には、左に第1のマークSV1が、右に第2のマークSV2が描かれている。装置内部の、これらのマークに近い部分には、それぞれ近距離無線通信に用いられるアンテナが設置されている。第1のマークSV1と第2のマークSV2は、合わせて1つのマークになる場合もある。
【0014】
図3は、第1の実施形態に係る移動通信装置MSの構成を示すブロック図である。この移動通信装置MSは、移動通信網(図示せず)を介した通信等を行う装置であり、装置全体の制御を行う制御部11と、基地局(図示せず)との間で電波の送受を行うアンテナ12aと、移動通信網通信部12bと、移動通信網送受信部13と、受話音声発生用のレシーバ14aと、送話音声入力用のマイクロフォン14bと、通話部14cと、表示部15と、入力部16と、第1の近距離無線通信部21と、コンテンツサーバ装置SVとの間の電波の送受に用いられるアンテナ21aと、代金支払い部22と、プリペイド情報記憶部23と、第2の近距離無線通信部31と、コンテンツサーバ装置SVとの間の電波の送受に用いられるアンテナ31aと、コンテンツ受信部32と、コンテンツ記憶部33と、コンテンツ再生部34とからなる。なお、アンテナの電波感度が通信をするために支障がない場合は、アンテナ21aと、アンテナ31aとを1つのアンテナにすることも可能である。
【0015】
なお、プログラムを実行することで実現される本発明に関する機能として、制御部11には、着信報知機能11−1が含まれる。また、プリペイド情報記憶部23には、電子マネー管理事業者にプリペイドされた金額と、移動通信装置MSを一意に識別可能な識別情報とが記憶される。なお、少なくともプリペイドされた金額は暗号化されて記憶される。コンテンツ記憶部33には、コンテンツ受信部32によって受信され、コンテンツ再生部34によって再生されるコンテンツが記憶される。ここで、コンテンツは、動画像、静止画像、音声、文字等からなり、電子化された新聞や、雑誌もコンテンツの一例である。
【0016】
図4は、第1の実施形態に係るコンテンツサーバ装置SVの構成を示すブロック図である。このコンテンツサーバ装置SVは、装置全体の制御を行う制御部41と、表示部42と、第1の近距離無線通信部51と、移動通信装置MSとの間の電波の送受に用いられ、第1のマークSV1の近傍に設置されたアンテナ51aと、代金受け取り部52と、支払い情報記憶部53と、第2の近距離無線通信部61と、移動通信装置MSとの間の電波の送受に用いられ、第2のマークSV2の近傍に設置されたアンテナ61aと、コンテンツ送信部62と、コンテンツ記憶部63とからなる。
【0017】
このように、アンテナ51aと、アンテナ61aとが離れて設置されていることにより、それぞれのアンテナによって送信される電波の強さや、指向性を任意に設定し、かつ、これらのアンテナによって送受信される電波の干渉を防ぐことができる。なお、アンテナの電波感度が通信をするために支障がない場合は、アンテナ51aと、アンテナ61aとを1つのアンテナにすることも可能である。この場合、第1のマークSV1と第2のマークSV2は、合わせて1つのマークとし、そのマークの近くにアンテナを設置することが適切である。
【0018】
支払い情報記憶部53には、代金受け取り部52によって受け取った代金に係る情報が記憶される。コンテンツ記憶部63には、コンテンツ送信部62によって送信されるコンテンツが記憶される。
【0019】
上記のように構成された、本発明の第1の実施形態に係る通信システムの各部の動作を説明する。
【0020】
まず、第1の実施形態に係る移動通信装置MSの各部の動作を、図3を参照して説明する。移動通信網通信部12bは、アンテナ12aによって受信された高周波信号を移動通信網送受信部13へ出力し、また、移動通信網送受信部13から出力された高周波信号をアンテナ12aより送信する。
【0021】
移動通信網送受信部13は、移動通信網通信部12bからの高周波信号を増幅、周波数変換及び復調して、デジタル信号を得て、得られた通話音声信号を通話部14cに、着信信号を含む制御信号を制御部11に送る。
【0022】
更には、移動通信網送受信部13は、デジタル信号、即ち、通話部14cから出力された通話音声信号、及び制御部11から出力された制御信号を変調、周波数変換及び増幅し、高周波信号を得て、それを移動通信網通信部12bに送って送信させる。
【0023】
通話部14cは、移動通信網送受信部13から出力されたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し、それを増幅してレシーバ14aに送る。また、マイクロフォン14bから出力されたアナログ音声信号を増幅し、それをデジタル音声信号に変換して移動通信網送受信部13に送信する。
【0024】
表示部15は、例えば、LCDであり、制御部11に制御されることで、文字、数字や画像データの表示動作を行い、表示されているデータは、入力部16からの入力操作や着信信号に応答して制御部11からの指示を受けることで切換わる。
【0025】
入力部16は、通信相手の電話番号等を指定するため、また、文字を入力するための数字キーと複数の機能キーとを含むキーからなる。そして、入力部16のキーが操作されると、そのキーの識別子が制御部11に通知され、制御部11によって、表示部15に文字として表示され、又は、制御が行われる。
【0026】
第1の近距離無線通信部21は、NFC方式の通信を行い、アンテナ21aによって受信された高周波信号を代金支払い部22へ出力し、また、代金支払い部22から出力された高周波信号をアンテナ21aより送信する。なお、第1の近距離無線通信部21は、電力を消費することなく、アンテナ21aによって受信された電波を受信する。
【0027】
代金支払い部22は、第1の近距離無線通信部21からの高周波信号を復調して、デジタル信号を受信する。また、デジタル信号を変調して第1の近距離無線通信部21に送って送信させる。なお、代金支払い部22は、電力を消費することなく、第1の近距離無線通信部21から信号を受信する。受信された信号が所定の代金支払いの要求である場合、代金支払い部22は、代金支払い開始を制御部11に通知し、プリペイド情報記憶部23に記憶された暗号化されたプリペイドされた金額と、識別情報とを第1の近距離無線通信部21に送信させる。
【0028】
続いて、代金支払い部22は、第1の近距離無線通信部21によって受信された暗号化されたプリペイドされた金額をプリペイド情報記憶部23に更新記憶させることによって支払いをする。そして、コンテンツ受信部32を動作させて、動作を終了する。なお、第1の近距離無線通信部21によって支払い不能である旨の信号が受信された場合、代金支払い部22は、支払い不能を制御部11に通知し、代金支払い部22は、コンテンツ受信部32を動作させることなく動作を終了する。
【0029】
第2の近距離無線通信部31は、数ギガヘルツの超広帯域電波を用いるUWB方式による通信を行い、アンテナ31aによって受信された高周波信号をコンテンツ受信部32へ出力し、また、コンテンツ受信部32から出力された高周波信号をアンテナ31aより送信する。なお、第2の近距離無線通信部31は、コンテンツ受信部32によって通信が要求された際に電力供給が開始され、また、その通信が終了した際に電力供給が停止される。
【0030】
このコンテンツ受信部32による電力供給制御の結果、第2の近距離無線通信部31は、待ち受け状態に置かれることがなく、言い換えると、コンテンツサーバ装置SVから送信された電波を受信するために受信動作を続けることがなく、消費電力の削減が可能である。
【0031】
コンテンツ受信部32は、第2の近距離無線通信部31を介してコンテンツの送信を要求し、その要求に応じて送信されたコンテンツの受信が完了すると、受信されたコンテンツをコンテンツ記憶部33に記憶させ、コンテンツの受信完了を制御部11に通知する。以上説明したように、コンテンツの購入処理は、代金支払い部22による代金支払いと、その代金支払いに続くコンテンツ受信部32によるコンテンツの受信とからなる。
【0032】
コンテンツ再生部34は、コンテンツ記憶部33に記憶されたコンテンツを再生する。即ち、コンテンツに含まれる動画像、静止画像、及び文字を表示部15に表示させ、音声をレシーバ14a、又は、コンテンツ再生用のスピーカ(図示せず)から発生させる。
【0033】
着信報知機能11−1は、着信信号が受信された場合、その着信を報知する。報知は、着信音をスピーカから発生させ、バイブレータ(図示せず)を振動させ、所定の画像を表示部15に表示させる等の方法による。
【0034】
次に、第1の実施形態に係るコンテンツサーバ装置SVの各部の動作を、図4を参照して説明する。表示部42は、例えば、LCDであり、制御部41に制御されることで、文字、数字や画像データの表示動作を行い、表示されているデータは、各部からの要求に応じた制御部41からの指示を受けることで切換わる。
【0035】
第1の近距離無線通信部51は、移動通信装置MSの第1の近距離無線通信部21とNFC方式の通信を行う通信部であり、アンテナ51aによって受信された高周波信号を代金受け取り部52へ出力し、また、代金受け取り部52から出力された高周波信号をアンテナ51aより送信する。
【0036】
代金受け取り部52は、第1の近距離無線通信部51からの高周波信号を復調して、デジタル信号を受信する。また、デジタル信号を変調して第1の近距離無線通信部51に送って送信させる。
【0037】
代金受け取り部52は、装置の電源が投入されると直ちに動作を開始し、表示部42にコンテンツの購入を促す所定の表示をさせる。この表示は、コンテンツの名称、そのコンテンツの金額、及び、移動通信装置MSを第1のマークSV1の近くに位置させることによってそのコンテンツの購入が可能であることを含む。そして、所定の代金支払いの要求を第1の近距離無線通信部51に送信させ続ける。そして、第1の近距離無線通信部51から暗号化されたプリペイドされた金額と、識別情報とが受信されると、所定の支払い中である旨の表示を表示部42にさせ、その暗号を解く。
【0038】
そして、代金受け取り部52は、受信されたプリペイドされた金額から、所定のコンテンツの金額を減じて更新されたプリペイドされた金額を計算し、暗号化された更新されたプリペイドされた金額と、識別情報とを第1の近距離無線通信部51に送信させ、識別情報と、所定のコンテンツの金額とを支払い情報記憶部53に記憶させる。更に、コンテンツ送信部62を動作させて、所定の支払いが完了した旨の表示と、移動通信装置MSを第2のマークSV2の近くに移動させることを促す表示とを表示部42にさせる。
【0039】
なお、受信されたプリペイドされた金額が所定のコンテンツの金額未満である場合、代金受け取り部52は、支払い不能である旨を第1の近距離無線通信部51に送信させる。そして、表示部42にプリペイドされた金額が不足である旨を所定の時間に渡って表示させた後、コンテンツの購入を促す所定の表示をさせ、所定の代金支払いの要求を第1の近距離無線通信部51に送信させ続ける。
【0040】
また、代金受け取り部52は、以上説明した支払い情報記憶部53に記憶させた識別情報と、所定のコンテンツの金額とを電子マネー管理事業者に設置された電子マネー管理サーバ装置(図示せず)へ送信する。この送信は、コンテンツの販売処理完了後に行われれば良く、その完了直後である必要はない。複数回の販売処理完了後、バッチ処理として送られても良い。
【0041】
第2の近距離無線通信部61は、移動通信装置MSの第2の近距離無線通信部31とUWB方式による通信を行う通信部であり、アンテナ61aによって受信された高周波信号をコンテンツ送信部62へ出力し、また、コンテンツ送信部62から出力された高周波信号をアンテナ61aより送信する。
【0042】
コンテンツ送信部62は、第2の近距離無線通信部61を介してコンテンツの送信要求を受信すると、コンテンツの送信中である旨の表示を表示部42にさせ、コンテンツ記憶部63に記憶されたコンテンツを送信する。送信の完了後、表示部42に所定の時間に渡って販売処理が完了した旨の表示をさせ、続いて、代金受け取り部52を動作させる。以上説明したように、コンテンツの販売処理は、代金受け取り部52による代金受け取りと、その代金受け取りに続くコンテンツ送信部62によるコンテンツの送信とからなる。
【0043】
以下、本発明の第1の実施形態に係わる移動通信装置MSにおける、着信報知機能11−1の着信を報知する制御動作を、コンテンツの購入処理中に着信信号が受信された場合を含めて説明する。
【0044】
図5は、着信報知機能11−1の着信を報知する制御動作のフローチャートを示す。着信報知機能11−1は、着信信号が受信された場合に制御動作を開始し(ステップS101)、コンテンツの購入処理中であるか否かを判断する(ステップS102)。ここで、購入処理中とは、代金支払い開始からコンテンツの受信完了(以後、コンテンツの受信完了には、支払い不能である旨の受信を含む。)までの間である。
【0045】
購入処理中でない場合、着信報知機能11−1は、着信を報知して(ステップS103)、着信報知の制御動作を終了する(ステップS104)。購入処理中である場合、着信報知機能11−1は、通知の受信を待ち、受信された通知によって動作を分岐する(ステップS105)。
【0046】
受信された通知がコンテンツの受信完了の通知である場合、着信報知機能11−1は、着信を報知して(ステップS103)、着信報知の制御動作を終了する(ステップS104)。受信された通知が着信信号に係る発信元の通信装置による発信の取り消しである場合、コンテンツの受信完了の通知の受信を待ち(ステップS106)、その通知の受信後に、着信があったことを報知して(ステップS107)、着信報知の制御動作を終了する(ステップS104)。着信があったことの報知は、着信の報知と同様に、音声の発生、バイブレータの振動、画像の表示等の方法による。
【0047】
この着信報知機能11−1の制御動作によれば、代金支払い部22が動作中であるか、コンテンツ受信部32が動作中であるかに拘らず、コンテンツの購入処理中は着信報知がされない結果、その購入処理が優先して行われ、コンテンツの購入処理が無意味となることがない。その購入処理に要する時間が数秒以内である場合、着信報知の遅れは、その着信に係る発信者に不快を感じさせることはない。
【0048】
以上の説明で、コンテンツの購入及び販売の状況は、販売処理の状況として表示部42に表示されるとしたが、これに代えて、又は、加えて、代金支払い部22及びコンテンツ受信部32によって購入処理の状況として表示部15に表示されるとしても良い。なお、表示部42は、表示部15に比較すると表示画面が大きく、見易い表示が可能である。また、コンテンツサーバ装置SVは、商用電源によって動作するので、蓄電池から供給される電力によって動作する移動通信装置MSに比較すれば、表示のための消費電力の削減を重要視する必要がない。そこで、表示部42の表示の活用が適切である。
【0049】
以上の説明で、代金の支払いは、プリペイドされた金額から行われるとしたが、これに限るものではない。クレジットカードによっても良い。この場合、プリペイド情報記憶部23には、プリペイドされた金額は記憶されず、クレジットカード番号が記憶される。
【0050】
以上の説明で、コンテンツの購入及び販売処理は、代金支払い部22及び代金受け取り部52による代金の決済と、その決済に続くコンテンツ受信部32及びコンテンツ送信部62によるコンテンツの送受とからなるとしたが、これに限るものではない。コンテンツ受信部32及びコンテンツ送信部62によるコンテンツの送受と、その送受に続く代金支払い部22及び代金受け取り部52による代金決済としても良い。
【0051】
以上の説明で、第1の近距離無線通信部21はNFC方式の通信を行うとしたが、この方式の通信に限るものではない。例えば、赤外線による通信でも良い。この構成の場合、移動通信装置MSは、アンテナ21aに代えて、発光部及び受光部を有する。また、第2の近距離無線通信部31は、UWB方式による通信を行うとしたが、この方式の通信に限るものではない。例えば、無線LAN方式による通信でも良く、また、ブルートゥース(登録商標、Bluetooth)方式による通信でも良い。
【0052】
以上の説明で、コンテンツサーバ装置SVは、1つのコンテンツの販売処理を行うとしたが、複数のコンテンツの中の1つのコンテンツの販売処理を行うとしても良い。複数のコンテンツの金額が異なっても、何ら支障はない。販売処理されるコンテンツは、コンテンツサーバ装置SVの入力部(図示せず)の所定の操作によって選択される。また、第1のマークSV1が複数描かれ、それぞれのマークに近傍にアンテナ51aを備え、いずれのアンテナ51aの近くに移動通信装置MSが位置されたかによって販売処理されるコンテンツが選択されても良い。
【0053】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る通信システムは、第1の実施形態に係る通信システムと比較して、移動通信装置MS及びコンテンツサーバ装置SVに相違がある。しかし、それぞれ、第1の実施形態に係る移動通信装置MS及びコンテンツサーバ装置SVと類似しており、同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
図6は、第2の実施形態に係るコンテンツサーバ装置SVの外観を示す。この装置は、第1の実施形態に係る装置と比較して、正面中央部には、第1のマークSV1及び第2のマークSV2が描かれず、それらに代えて、第3のマークSV3が描かれている。装置内部で、このマークに近い部分には、近距離無線通信に用いられる2つのアンテナが設置されている。
【0055】
図7は、第2の実施形態に係る移動通信装置MSの構成を示すブロック図である。この移動通信装置MSは、第1の実施形態に係る装置と比較して、代金支払い部22に代えて代金支払い部22−2を有し、コンテンツ受信部32に代えてコンテンツ受信部32−2を有し、着信報知機能11−1に代えて着信報知機能11−2を有する。
【0056】
図8は、第2の実施形態に係るコンテンツサーバ装置SVの構成を示すブロック図である。このコンテンツサーバ装置SVは、第1の実施形態に係る装置と比較して、代金受け取り部52に代えて代金受け取り部52−2を有し、コンテンツ送信部62に代えてコンテンツ送信部62−2を有する。なお、アンテナ51a及びアンテナ61aは、いずれも第3のマークSV3の近傍に設置される。このように、2つのアンテナが近くに設置されていることにより、コンテンツの購入及び販売処理中に、移動通信装置MSを移動させることが不要になる。
【0057】
上記のように構成された、本発明の第2の実施形態に係る通信システムの各部の動作を説明する。
【0058】
まず、第2の実施形態に係る移動通信装置MSの各部の動作を、図7を参照して説明する。代金支払い部22−2は、代金支払い部22の動作に加えて、代金支払いの取り消しの動作を行う。即ち、代金支払い部22−2は、コンテンツの購入処理中に制御部11からコンテンツ購入処理中止の指示を受信すると、支払い開始前、即ち、プリペイド情報記憶部23に記憶された暗号化されたプリペイドされた金額と、識別情報とを第1の近距離無線通信部21に送信させる前であれば、第1の近距離無線通信部21を介した通信を終了し、所定の時間に渡ってその通信を行わない。
【0059】
支払い開始後であれば、第1の近距離無線通信部21から受信された暗号化されたプリペイドされた金額をプリペイド情報記憶部23に更新記憶させた後である場合、直ちに、一方、その更新記憶前である場合、その更新記憶を待って、支払い取り消しである旨と、プリペイド情報記憶部23に記憶された暗号化されたプリペイドされた金額と、識別情報とを第1の近距離無線通信部21に送信させる。続いて、代金支払い部22は、第1の近距離無線通信部21から受信された暗号化されたプリペイドされた金額をプリペイド情報記憶部23に更新記憶させることによって支払い取り消しをし、第1の近距離無線通信部21を介した通信を終了し、所定の時間に渡ってその通信を行わない。
【0060】
コンテンツ受信部32−2は、コンテンツ受信部32の動作に加えて、コンテンツ購入処理を中止する動作を行う。即ち、コンテンツ受信部32−2は、コンテンツの受信中に制御部11からコンテンツ購入処理中止の指示を受信すると、第2の近距離無線通信部31を介した通信を終了する。そして、受信中であったコンテンツをコンテンツ記憶部33に記憶させない。なお、制御部11からの指示の受信の際、コンテンツの受信を行っていない場合、コンテンツ受信部32−2は、その指示に対して何も行わない。
【0061】
着信報知機能11−2は、着信信号が受信された場合、その着信を報知する点では、着信報知機能11−1と同じ動作をする。異なる動作は、以下に述べる、コンテンツの購入処理中に着信信号が受信された場合の動作である。
【0062】
次に、第2の実施形態に係るコンテンツサーバ装置SVの各部の動作を、図8を参照して説明する。
【0063】
代金受け取り部52−2は、代金受け取り部52の動作に加えて、代金支払いの取り消しの動作を行う。即ち、第1の近距離無線通信部51から支払い取り消しである旨と暗号化されたプリペイドされた金額と、識別情報とが受信されると、その暗号を解き、受信されたプリペイドされた金額に、所定のコンテンツの金額(この金額は、支払い情報記憶部53に直近の過去に記憶されている。)を加えて更新されたプリペイドされた金額を計算し、暗号化されたプリペイドされた金額と、識別情報とを第1の近距離無線通信部51に送信させる。
【0064】
また、代金受け取り部52−2は、支払い情報記憶部53に直近の過去に記憶された識別情報と、所定のコンテンツの金額とを削除する。そして、表示部42にコンテンツの販売処理が中止された旨の表示を所定時間に渡ってさせた後、コンテンツの購入を促す所定の表示をさせ、所定の代金支払いの要求を第1の近距離無線通信部51に送信させ続ける。
【0065】
なお、コンテンツサーバ装置SVには、第1のマークSV1及び第2のマークSV2に代えて、第3のマークSV3が描かれているので、代金受け取り部52−2は、表示部42にさせるコンテンツの購入を促す所定の表示中で、移動通信装置MSを第1のマークSV1の近くに位置させることを促す表示ではなく、第3のマークSV3の近くに位置させることを促す表示をさせる。また、移動通信装置MSを第2のマークSV2の近くに移動させることを促す表示をさせない。
【0066】
コンテンツ送信部62−2は、コンテンツ送信部62の動作に加えて、コンテンツの販売処理を中止する動作を行う。即ち、コンテンツの送信中に第2の近距離無線通信部61を介した通信が中断すると、コンテンツの送信を中止する。
【0067】
以下、本発明の第2の実施形態に係わる移動通信装置MSにおける、着信報知機能11−2の着信を報知する制御動作を、コンテンツの購入処理中に着信信号が受信された場合を含めて説明する。
【0068】
図9は、着信報知機能11−2の着信を報知する制御動作のフローチャートを示す。この制御動作は、図5を参照して説明した着信報知機能11−1の着信を報知する制御動作と類似している。そこで、同じ動作ステップには同じ符号を付して説明を省略する。
【0069】
着信報知機能11−2は、着信信号が受信された場合に制御動作を開始し(ステップS201)、ステップS102のコンテンツの購入処理中であるか否かを判断する動作、及び、購入処理中でない場合、ステップS103の着信報知をして、制御動作を終了する(ステップS202)動作は、着信報知機能11−1の制御動作と同じである。
【0070】
ステップS102で購入処理中である場合、着信報知機能11−2は、代金支払い部22−2及びコンテンツ受信部32−2にコンテンツの購入処理の中止を指示し(ステップS203)、ステップS103の着信報知の制御動作に移る。
【0071】
この着信報知機能11−2の制御動作によれば、たとえコンテンツの購入処理中であっても、その購入処理中のコンテンツの受信完了を待たずに着信報知がされるので、速やかにその着信に係る通話を開始することができる。また、コンテンツの購入処理中に、移動通信装置MSは常に第3のマークSV3の近傍に位置するのであるから、購入処理の中止の際、第1の近距離無線通信部21は、常に支払い取り消しの通信が可能である。
【0072】
以上の説明で、コンテンツの購入処理中に着信信号が受信された場合、その購入処理を中断し、例えば、通話の終了後に再開しても良い。しかしながら、移動通信装置MSの使用者は、その通話の後、移動通信装置MSを再び第3のマークSV3の近傍に位置させない可能性がある。そこで、以上の説明のように、購入処理を中止することが望ましい。代金を支払ったにも拘らず、コンテンツが未受信の状態を避けることができるからである。
【0073】
(その他の実施形態)
以上説明した着信報知機能11−1の制御動作及び着信報知機能11−2の制御動作は、適宜組み合わせて実施することができる。第1の組合せの例によると、コンテンツの購入処理は、代金支払い部22、22−2の動作と、コンテンツ受信部32、32−2の動作との2つの段階に、それらの前後を問わず別けられるところ、前の段階の動作中であれば、着信報知機能11−2のコンテンツの購入処理を中止する動作をして着信を報知し、後の段階の動作中であれば、着信報知機能11−1の着信報知を遅らせる動作をする。
【0074】
第2の組合せの例によると、代金支払い部22、22−2及び/又はコンテンツ受信部32、32−2は、コンテンツの大きさを購入処理前に取得し、その大きさと、コンテンツ受信部32、32−2の仕様上の、及び/又は、受信中に測定された受信速度とからコンテンツの受信の完了までに必要な時間を計算する。その時間が所定の閾値より小さければ、着信報知機能11−1の着信報知を遅らす動作をし、大きければ、着信報知機能11−2のコンテンツの購入処理を中止する動作をする。これらの組み合わせの例によって、中止されて無意味となる購入処理を減らしつつ、速やかな着信報知がされる。本発明は以上の構成に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0075】
MS 移動通信装置
NW 近距離無線通信網
SV コンテンツサーバ装置
SV1、SV2、SV3 第1、第2、第3のマーク
11、41 制御部
11−1、11−2 着信報知機能
12a、21a、31a、51a、61a アンテナ
12b 移動通信網通信部
13 移動通信網送受信部
15、42 表示部
21、51 第1の近距離無線通信部
22、22−2 代金支払い部
23 プリペイド情報記憶部
31、61 第2の近距離無線通信部
32、32−2 コンテンツ受信部
33、63 コンテンツ記憶部
34 コンテンツ再生部
52、52−2 代金受け取り部
53 支払い情報記憶部
62、62−2 コンテンツ送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツ購入代金決済の通信をする第1の近距離無線通信手段と、前記第1の近距離無線通信手段より受信速度が速く、コンテンツを受信する第2の近距離無線通信手段とによってコンテンツサーバ装置からコンテンツを購入する処理を行う移動通信装置であって、
移動通信網から着信信号を受信すると、その着信を報知する着信報知手段を有し、
前記着信報知手段は、前記購入処理中に着信信号が受信された場合、前記第1の近距離無線通信手段及び前記第2の近距離無線通信手段にその購入処理を中止させて、その着信を報知する
ことを特徴とする移動通信装置。
【請求項2】
前記第1の近距離無線通信手段は、前記購入処理の中止の際、前記コンテンツ購入代金の決済を取り消す
ことを特徴とする請求項1に記載の移動通信装置。
【請求項3】
コンテンツ購入代金決済の通信をする第1の近距離無線通信手段と、前記第1の近距離無線通信手段より受信速度が速く、コンテンツを受信する第2の近距離無線通信手段とによってコンテンツサーバ装置からコンテンツを購入する処理を行う移動通信装置であって、
移動通信網から着信信号を受信すると、その着信を報知する着信報知手段を有し、
前記コンテンツの購入処理は、前記第1の近距離無線通信手段によるコンテンツ購入代金決済の通信と、その通信に続く、前記第2の近距離無線通信手段によるコンテンツの受信によって行われ、
前記着信報知手段は、前記コンテンツ購入代金決済の通信中に着信信号が受信された場合、前記第1の近距離無線通信手段にその通信を中止させて、その着信を報知し、前記コンテンツの受信中に着信信号が受信された場合、その受信中は、その着信を報知せず、その受信終了後、その着信を報知する
ことを特徴とする移動通信装置。
【請求項4】
前記第1の近距離無線通信手段は、前記コンテンツ購入代金決済の通信を中止する際、前記コンテンツ購入代金決済の通信を完了させた後、前記コンテンツ購入代金の決済を取り消す
ことを特徴とする請求項3に記載の移動通信装置。
【請求項5】
プリペイドされた金額を記憶するプリペイド情報記憶手段を更に有し、
前記第1の近距離無線通信手段は、前記プリペイド情報記憶手段に記憶された金額を前記コンテンツサーバ装置に送信し、その送信に応じて前記コンテンツサーバ装置から送信された、前記送信された金額から前記コンテンツ購入代金を減じた金額を前記プリペイド情報記憶手段に更新記憶させることによって前記コンテンツ購入代金の決済をする
ことを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の移動通信装置。
【請求項6】
前記第1の近距離無線通信手段は、前記プリペイド情報記憶手段に記憶された金額を前記コンテンツサーバ装置に送信し、その送信に応じて前記コンテンツサーバ装置から送信された、前記送信された金額に前記コンテンツ購入代金を加えた金額を前記プリペイド情報記憶手段に更新記憶させることによって前記コンテンツ購入代金の決済を取り消す
ことを特徴とする請求項5に記載の移動通信装置。
【請求項7】
コンテンツ購入代金決済の通信をする第1の近距離無線通信手段と、前記第1の近距離無線通信手段より受信速度が速く、コンテンツの受信をする第2の近距離無線通信手段とによってコンテンツサーバ装置からコンテンツを購入する処理を行う移動通信装置であって、
移動通信網から着信信号を受信すると、その着信を報知する着信報知手段を有し、
前記着信報知手段は、前記購入処理中に着信信号が受信された場合、その購入処理中は、その着信を報知せず、その購入処理終了後、その着信を報知する
ことを特徴とする移動通信装置。
【請求項8】
前記第1の近距離無線通信手段は、NFC(Near Field Communication)方式による通信を行い、
前記第2の近距離無線通信手段は、UWB(Ultra Wide Band)方式による通信を行う
ことを特徴とする請求項1、請求項3又は請求項7に記載の移動通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−288209(P2010−288209A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142422(P2009−142422)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】