説明

積層セラミックコンデンサ

【課題】誘電体層の厚みを薄層化しても絶縁性に優れ、高温負荷寿命の信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】外部電極3a、3bが形成された端面に平行な前記コンデンサ本体1の断面10における前記内部電極層7間の前記誘電体層5について、前記内部電極層7の平面方向の端部7aにおいて前記内部電極層7の積層方向に引いた直線上に存在する前記結晶粒子数が、前記内部電極層7の平面方向の中央部7bにおいて、これも前記内部電極層7の積層方向に引いた直線上に存在する前記結晶粒子数よりも多いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は積層セラミックコンデンサに関し、特に、微粒のチタン酸バリウム系結晶粒子により形成された誘電体層を具備する小型高容量の積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層セラミックコンデンサは小型高容量化のために、それを構成する誘電体層および内部電極層の薄層化ならびに多層化が図られており、積層数は200層を越え、また、誘電体層の厚みは3μm以下となり、その誘電体層を構成する結晶粒子の平均粒径は0.8μm以下となっている(特許文献1参照、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−17356号公報
【特許文献2】特開2005−347509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような積層セラミックコンデンサでは、誘電体層の薄層化および多層化に伴い、誘電体層間に形成される内部電極層の厚みが大きく影響するようになり、内部電極層が形成されている部分と形成されていない部分との間で内部電極層の厚みによる段差が累積し、内部電極層の無い周囲の誘電体層に変形がおこり、内部電極層の端部領域では誘電体層が本来の厚みよりも部分的に薄くなり、絶縁性が低下したり、高温負荷寿命が低下するという問題があった。
【0004】
従って本発明は、誘電体層の厚みを薄層化しても絶縁性に優れ、高温負荷寿命の信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層セラミックコンデンサは、(1)複数の結晶粒子からなる誘電体層および内部電極層が交互に積層されたコンデンサ本体と、該コンデンサ本体の前記内部電極層が導出された対向する端面にそれぞれ設けられた一対の外部電極とを具備する積層セラミックコンデンサにおいて、前記外部電極が形成された端面に平行な前記コンデンサ本体の断面における前記内部電極層間の前記誘電体層について、前記内部電極層の平面方向の端部において前記内部電極層の積層方向に引いた直線上に存在する前記結晶粒子数が、前記内部電極層の平面方向の中央部において、これも前記内部電極層の積層方向に引いた直線上に存在する前記結晶粒子数よりも多いことを特徴とする。
【0006】
また上記積層セラミックコンデンサでは、(2)前記結晶粒子がジルコニアを含有し、前記内部電極層の端部における前記誘電体層の前記結晶粒子のジルコニアの含有量は前記内部電極層の中央部における前記誘電体層の前記結晶粒子のジルコニアの含有量よりも多いことが望ましい。
【0007】
ここで、直線の太さは結晶粒子の最小径よりも小さいものとする。また、内部電極層の平面方向の端部とはコンデンサ本体の上記断面に露出した内部電極層の平面方向の終端付近の位置のことである。この内部電極層の端部は上下層の内部電極層の端部同士を積層方向(内部電極層の平面方向に対して垂直な方向)に直線で結ぶことのできる箇所である。また、内部電極層の平面方向の中央部とは上記断面に露出した内部電極層の平面方向の終端間の中央の位置のことである。
【発明の効果】
【0008】
通常、誘電体層の厚みを薄層化して多層化した場合、内部電極層が形成されている部分と形成されていない部分との間で内部電極層の厚みによる段差の影響が大きくなり、内部電極層の無い周囲の誘電体層が変形しやすくなるが、本発明の積層セラミックコンデンサによれば、誘電体層の変形により内部電極層の端部における誘電体層の厚みが内部電極層の中央部における誘電体層の厚みよりも部分的に薄くなっても、内部電極層の端部における誘電体層中の結晶粒子数を内部電極層の中央部における誘電体層中の結晶粒子数よりも多くしたことにより、誘電体層の絶縁性を高めることができ、積層セラミックコンデンサの高温負荷寿命の信頼性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の積層セラミックコンデンサの斜視図である。図2はコンデンサ本体内部の誘電体層上に形成された内部電極層を示す平面図であり、内部電極層の面内における図1に示したA−A断面の端部および中央部の位置を示すものである。
【0010】
図3(a)は図1のA−A断面図であり、(b)は図1(a)の中央部と端部における誘電体層を構成する結晶粒子を表す模式図である。本発明の積層セラミックコンデンサはコンデンサ本体1の対向する端面に一対の外部電極3a、3bが形成されている。コンデンサ本体1は誘電体層5および内部電極層7が交互に積層され構成されている。外部電極3a、3bはコンデンサ本体1の内部電極層7が導出された端面に接続されている(図1のB−B方向)。ここで積層セラミックコンデンサの積層数は300層以上が高容量化のために好ましい。
【0011】
また、誘電体層5の厚みは2μm以下が望ましく、特に、1〜1、5μmが好ましい。誘電体層5の厚みが1μm以上であれば高絶縁性となり、2μm以下であれば高容量化できる。
【0012】
一方、内部電極層7の厚みは0.5〜1.5μmが好ましい。内部電極層7の厚みが0.5μm以上であれば焼成後の途切れが抑えられて有効面積を大きくでき静電容量を高められる。内部電極層7の厚みが1.5μm以下であれば積層コンデンサの薄層化に好適であり、また内部電極層7の段差を抑えられる。
【0013】
本発明の積層セラミックコンデンサは誘電体層5がチタン酸バリウムを主成分とする複数の結晶粒子9からなるものである。そして、本発明では、この結晶粒子9について以下の特徴を有する。即ち、本発明の積層セラミックコンデンサでは、外部電極3a、3bが形成された端面に平行な前記コンデンサ本体1の断面における前記内部電極層7間の誘電体層5について、前記内部電極層7の平面方向の端部7aにおいて内部電極層7の積層方向に引いた直線13上に存在する結晶粒子9数が、内部電極層7の平面方向の中央部7bにおいて、これも内部電極層7の積層方向に引いた直線13上に存在する結晶粒子9数よりも多いことが重要である。内部電極層7の端部7a付近の誘電体層5の結晶粒子の数をn1、内部電極層7の中央部7bの誘電体層5の結晶粒子9の数をn2としたときに、n1/n2=1.8〜2の範囲が好ましい。n1/n2=1.8以上であると絶縁抵抗および高温負荷寿命が高まり、一方、n1/n2が2以下では静電容量を高く維持できるという効果がある。つまり、内部電極層7の端部7aの誘電体層5を形成する結晶粒子9の平均粒径D1が内部電極層7の中央部7bの誘電体層5を形成する結晶粒子9の平均粒径D2よりも小さいものである。誘電体層5の厚みが2μm以下の場合の結晶粒子9の平均粒径D1、D2については、内部電極層7の端部7aの誘電体層5を形成する結晶粒子9の平均粒径D1が0.1〜0.4μmであることが望ましく、一方、内部電極層7の中央部7bの誘電体層5を形成する結晶粒子9の平均粒径D2は0.3〜0.5μmであることが望ましい。誘電体層5の厚みが2μm以下の場合に、上記のような結晶粒子の粒径差を有することにより、小型高容量の積層セラミックコンデンサにおいて誘電体層5が薄層化され変形が起こっても高絶縁性化が可能となる。
【0014】
また、本発明によれば誘電体層5を形成する結晶粒子9の粒径は内部電極層7の中央部7bから内部電極層の端部7aにかけて次第に微粒化していることが望ましい。このような粒径の変化は後述の工程図に示すように、内部電極パターンの端部から全幅の10〜30%程度の領域に中央部よりも細かい粉末を付与することにより形成できる。内部電極パターンの端部から全幅の10%より少ないと絶縁性が低下しやすい。一方、30%より多いと静電容量が低下する。
【0015】
本発明の積層セラミックコンデンサにおいて誘電体層5は希土類元素の酸化物、MgOおよびやMnOを含有することが望ましく、結晶粒子9に含まれる希土類元素の酸化物、MgOおよびMnOの含有量はBaTiOを主体とする結晶粒子100モル部に対して、希土類元素の酸化物およびMgOが0.5〜2モル部、MnO=0.2〜0.5モル部であれば、静電容量の温度特性を安定化できるとともに絶縁性が高まり高温負荷試験での信頼性が優れたものとなる。
【0016】
また、係る誘電体層5は内部電極層7の端部7aの誘電体層5を形成する結晶粒子9のジルコニアの含有量が内部電極層7の中央部7bの誘電体層5を形成する結晶粒子9のジルコニア(ZrO)の含有量よりも多いことが好ましい。BaTiOを主体とする結晶粒子9にジルコニアの成分を固溶させることにより結晶粒子9の焼成時の粒成長を抑制できる。また、結晶粒子9にジルコニアを含有させて、内部電極層7の端部7aにおける結晶粒子9のジルコニアの含有量を内部電極層7の中央部7bにおける結晶粒子9のジルコニアの含有量よりも多くしたものは高温負荷信頼性が向上する。この場合、ジルコニアの含有量は原料粉末全体で0.4〜2モル部含有することが望ましい。また、本発明に係る結晶粒子9はBaTi1−xZr(x=0.005〜0.2)のように最初から固溶させたものを用いることもできる。
【0017】
内部電極層7は高積層化しても製造コストを抑制できるという部で、ニッケル(Ni)またはニッケル合金などの卑金属が望ましく、特に、係る誘電体層5との同時焼成が図れるという部でニッケル(Ni)がより望ましい。
【0018】
図4は、本発明における交流インピーダンス測定を用いた誘電体層中の粒界の抵抗の評価手法を示す模式図である。図4において、20aは試料である積層セラミックコンデンサを装着して温度制御を行う恒温槽、20bは試料に直流電圧を印加するHALT測定装置、20cは交流電源を有するインピーダンス測定装置である。図5は、(a)本発明の交流インピーダンス測定を用いた誘電体層中の粒界の抵抗評価結果の代表例であり、(b)は積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層を構成するコア(中心部)、シェル(外周部)、粒界相11および内部電極層7と誘電体層5との界面の4つの成分を等価回路で表したものである。
【0019】
この場合、積層セラミックコンデンサを、誘電体層5を構成するチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子9が示すキュリー温度よりも高い温度、および、積層セラミックコンデンサの定格電圧の1/3以上の電圧の高温負荷雰囲気中に放置する。そして、上記の条件の高温負荷雰囲気に放置する前後において、同じ条件にて交流インピーダンス測定での誘電体層5中の粒界の抵抗減少率を測定する。図5には本発明の積層セラミックコンデンサにおける結晶粒子9のコア(中心部)、シェル(外周部)、粒界および内部電極と誘電体層との界面におけるインピーダンス変化のグラフ(コールコールプロット)の例を示している。この評価では誘電体層5を図の等価回路のように、コア(中心部)、シェル(外周部)、粒界相11および内部電極層7と誘電体層5との界面の4つの成分に区別する。グラフの横軸はインピーダンス信号の実部、縦軸は虚部を示す。インピーダンスの変化を示すグラフは加速寿命試験(HALT)の前と後との違い、およびシミュレーションによるフィッティングである。本発明では、特に、粒界における抵抗変化に着目するものであり、その実部の変化率が1%/min以下であることが望ましい。この評価は、例えば、加速寿命試験(HALT)前後の図5のコールコールプロットを専用ソフトによって、上記4つの成分に分けて求めることができる。ここで、試験温度としてはキュリー温度の1.5倍、電圧としては定格電圧の2/5V以上が好ましい。試験条件を上記のように設定すると高温負荷雰囲気処理前後での誘電体層5中のイオンの拡散や電子の移動が大きくなり粒界相11の抵抗減少率を顕著に見ることができるという利点がある。
【0020】
次に、本発明の積層セラミックコンデンサの製法について詳細に説明する。図6は本発明の積層セラミックコンデンサの製法を示す工程図である(サイドマージン方向(A−A))。図7は本発明の積層セラミックコンデンサの製法を示す工程図である(エンドマージン方向(B−B))。
【0021】
(a)工程において、基材31上に長方形状の内部電極パターン33を形成する。内部電極パターン33となる導体ペーストは、Niもしくはこれらの合金粉末を主成分金属とし、これに共材としてのセラミック粉末を混合し、有機バインダ、溶剤および分散剤を添加して調製する。セラミック粉末としては後述のBT粉末が好ましいが、導体ペーストにセラミックス粉末を含有させることで、内部電極層7を貫通して上下の誘電体層5を接続するように柱状のセラミックスが形成される。これにより誘電体層5と内部電極層7間の剥離を防止できる。
【0022】
次に、(b)工程において、内部電極パターン33の周囲に内部電極パターン33と同一面になるように第1セラミックパターン35を形成する。次に、(c)工程において、内部電極パターン33の端部付近33aおよび第1セラミックパターン35上に第2セラミックパターン37を形成する。次に、(d)工程において(図7のエンドマージン方向(B−B)についての(d)工程は省略)、内部電極パターン33上における第2セラミックパターン37の内側に第2セラミックパターン37と同一面になるように第3セラミックパターン39を形成して基材31上にパターンシート40を形成する。この場合、第1セラミックパターン35に含まれるセラミック粉末の平均粒径D1と第3セラミックパターン39に含まれるセラミック粉末の平均粒径D3は同等であることが好ましい。一方、内部電極パターン33の端部33aに形成する第2セラミックパターン35に含まれるセラミック粉末の平均粒径D2は上記第1および第3セラミックパターンに含まれるセラミック粉末の平均粒径D1、D3よりも小さいことが重要である。つまり、D1>D2、D3>D2、D1=D3の関係より好ましい。ここで内部電極パターン33の厚みが0.5μm以上2μm以下が好ましく、一方、第2セラミックパターン35の厚みは1μm以上3μm以下が好ましい。次に、基材からパターンシート39を剥離する。次に、(e)工程において、パターンシート39を長方形状の内部電極パターン33の短辺が揃い、かつ長辺が半パターンずれるように所望の枚数積層し、この上下面に保護層シート41としてセラミックグリーンシートを積層し母体積層体43を形成する。次に、母体積層体43を切断線45に沿って切断して、両端に内部電極パターン33の端面が積層方向に交互に露出するコンデンサ本体成形体を形成する。次に、コンデンサ本体成形体を焼成してコンデンサ本体1を形成する。次に、コンデンサ本体1の内部電極層7が露出する端面にCuなどに卑金属を主成分とする外部電極3を形成する。上記工程において用いる原料粉末は、第1〜3セラミックパターン35、37、39についてはBaTiO粉末に対して上述した希土類元素、MgO、MnOなどの添加剤とともにガラス粉末を添加する。ガラス粉末はBaTiO粉末100質量部に対して0.5〜2質量部であることが低温焼結できるという点で好ましい。第2セラミックパターン37に含まれるセラミック粉末の平均粒径は0.1〜0.2μm、一方、第1および第3セラミックパターン35、39に含まれるセラミック粉末の平均粒径は0.15〜0.35μmであることが望ましい。また、第2セラミックパターン37に含まれるセラミック粉末として、BaTiOを主体とする原料粉末中にジルコニア(ZrO)粉末を0.5〜1モル%添加することが望ましい。さらには、BaTi1−xZr(x=0.005〜0.2)を用いることによっても同様の効果がある。
【0023】
また、内部電極パターン33の端部33aに形成する第2セラミックパターン37に用いるセラミック粉末として、2個以上のセラミック粉末が結合したネッキング粉末を用いると、セラミックパターン中においてセラミック粉末を配向したものにでき、誘電体層5の厚み方向に多くの界面数を形成できる。ネッキング粉末のアスペクト比は長寸/短寸比が1.5以上が好ましく、短寸の平均径が0.3μm以下にするという理由から長寸/短寸比3以下が好ましい。
【0024】
内部電極パターン33に用いる金属粉末としてはNiまたはCu、あるいはこれらの合金粉末が好ましく、これらの金属粉末の平均粒径は0.1〜0.2μmであることが過焼結を抑制しつつ段差を低減できるという部で好ましい。上述した本発明の積層セラミックコンデンサの製法によれば、内部電極パターン33の中央部と端部との間で異なる粒径のセラミック粉末を有するセラミックパターンを形成する手法を採用することにより、上記のように内部電極層7の端部7aの誘電体層5を形成する結晶粒子9の平均粒径を内部電極層7の中央部7bの誘電体層5を形成する結晶粒子9の平均粒径よりも小さくして、端部7a側の結晶粒子9の数を中央部7bの誘電体層5を形成する結晶粒子9の数を多くした誘電体層5を具備する積層セラミックコンデンサを容易に形成できる。
【実施例】
【0025】
本発明の積層セラミックコンデンサを以下のようにして作製した。第1および第3セラミックパターンに用いるセラミック粉末として平均粒径0.3μm、粉末の平均アスペクト比1.1、BaとTiのモル比が1.003のものを用いた。主成分粉末であるチタン酸バリウム(BaTiO)粉末に対する添加剤量はBaTiO100モル部に対して、MgOを0.5モル部、Yを0.5モル部およびMnOをMnCOとして0.3モル部添加した。焼結助剤としてSiOが50モル%、LiOが10モル%、BaOが20モル%、CaOが20モル%で構成されたガラス粉末をチタン酸バリウム粉末100質量部に対して1.2質量部添加した。ガラス粉末の平均粒径は0.5μmとした。第2セラミックパターンに用いるセラミック粉末は表1に示した。添加剤とその添加量は上記第1および第3セラミックパターンと同じとした。上記各粉末の混合粉末を直径5mmのジルコニアボールを用いて、溶媒としてトルエンとアルコールとの混合溶媒を添加し湿式混合し、それぞれ第1、第2および第3セラミックパターン用のスラリを調製した。次に、平均粒径が0.2μmのNi粉末を含む導体ペーストを調製した。次に、基材であるポリエステルフィルム上に厚み1μmの内部電極パターンを所定の配置に複数形成した。内部電極パターンの面積は長辺を1.6mm、短辺を0.8mmとした。次に、内部電極パターンの周囲に第1セラミックパターンを実質的に同一厚みになるように形成した。次に、内部電極パターンの中央部を除く領域に第2セラミックパターンを形成した。第2セラミックパターンは内部電極パターンの端部からそれぞれ長辺、短辺の全幅の20%の領域の幅に形成した。次に、第2セラミックパターンを付与していない内部電極パターンの上面に第1セラミックパターンと同じセラミックスラリを用いて第3セラミックパターンを形成しパターンシートを形成した。第2セラミックパターンと第3セラミックパターンとは実質的に同じ厚みになるように形成した。次に、ポリエステルフィルムとパターンシートとを剥離し、パターンシートを、長方形状の内部電極パターンの短辺が揃い、かつ長辺が半パターンずれるように所望の枚数積層し母体積層体を形成した。内部電極パターンの積層数は360層とし、その上下面に第1セラミックパターンのセラミックスラリから形成した厚み5μmのセラミックグリーンシートを上下20層ずつ積層した。プレス条件は温度60℃、圧力10Pa、時間10分の条件とした。次に、母体積層体を切断して、両端に内部電極パターンの端面が積層方向に交互に露出するコンデンサ本体成形体を形成した。次に、コンデンサ本体成形体を焼成してコンデンサ本体を形成した。焼成は大気中で300℃/hにて脱バインダ処理を行い、1170℃(酸素分圧10−6Pa)で2時間焼成し、続いて、窒素雰囲気中1000℃で7.5時間再酸化処理をした。次に、コンデンサ本体の内部電極層が露出する端面にCuの外部電極を焼き付けて、次いで、この外部電極の表面に、順にNiメッキ及びSnメッキを行い、積層セラミックコンデンサを作製した。コンデンサ本体の寸法は内部電極層に平行な面が1mm×0.5mm、厚みが1mmであった。内部電極層の面積は0.7mm×0.3mmであった。誘電体層の厚みは平均で2μmであった。
【0026】
得られた積層セラミックコンデンサを以下のように評価した。誘電体層間に存在する結晶粒子数を評価した。この場合、誘電体層の1層あたりの結晶粒子数が多いものが結晶粒子の平均粒径が小さいものとなる。結晶粒子数の算出は下記の手法を用いて行った。まず、積層セラミックコンデンサの外部電極面を下にして樹脂に埋め、研磨紙を用いて磁器の中央部まで研磨した。次に溶液(HCl=0.09%、HF=0.04%)を用いてケミカルエッチングを25℃で5秒間行い粒界を露出させた。粒界の露出した研磨面の内部電極層に上下挟まれた誘電体層の中央部および端部(内部電極層の端部から約0.1μmほど内側)をそれぞれ電子顕微鏡(SEM)を用いて写真の中央に誘電体層が入るように50000倍で撮影した。この後、撮影した写真の両端にある誘電体層と内部電極層との界面を直線で結び、その直線から誘電体層の厚み方向に垂線を引き、その線上に存在する結晶粒子について、内部電極層との界面から対面の内部電極層との界面までの間にある結晶粒子の個数を評価した。積層セラミックコンデンサの試料数は10個とした。静電容量はLCRメータを用いて、20℃の温度で、AC1V、測定周波数1kHzの条件で測定した。試料数は各100個とした。絶縁抵抗は絶縁抵抗計を用いて、温度25℃において電圧2V、印加時間1分後の値を測定した。試料数は各100個とした。高温負荷処理前後の抵抗減少率は、高温負荷試験を簡易的に短時間で評価できる上述の方法を用いた。この場合の高温負荷条件としては、温度250℃、積層セラミックコンデンサの外部電極に印加する電圧は3Vとした。測定時の電圧は0.1V、周波数は10mHz〜10kHzの間、その処理前後における交流インピーダンスを試料数30個について評価した。HALT(高温高電圧加速信頼性)試験は、125℃および135℃で直流電圧を22V印可した状態で行い、漏れ電流が10mAを超えた時間を故障時間とした。測定終了後、DC=9.45Vにおける換算を行い(L2/L1=(V1/V2)(例えば、L2は9.45Vでの故障時間、L1は22Vでの故障時間、V1は22V、V1は9.45V、n=5)、0.3%累積故障1000時間での判定を行い、1000時間以上を良品とした。結果を表1、2に示した。
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
表1、2の結果から明らかなように、第1および第3セラミックパターンに用いたセラミック粉末の平均粒径に対して平均粒径の小さいセラミック粉末を第2セラミックパターンに用いた本発明の試料No.2〜12では、誘電体層間における内部電極層の端部の結晶粒子数が中央部の結晶粒子数よりも多く、内部電極層上における端部の誘電体層厚み当たりの結晶粒子の平均粒径が中央部よりも小さくなったことにより、静電容量が0.79μF〜0.96μFと、比較例である試料No.1に比較してわずかに低下したものの、絶縁抵抗が200MΩ〜260MΩ、高温負荷処理前後での抵抗減少率が1%/min以下となり、高絶縁性かつ高温負荷信頼性(HALT)が得られた。特に、内部電極層の端部の結晶粒子にジルコニアを含有させて、内部電極層の端部における結晶粒子のジルコニアの含有量を内部電極層の中央部における結晶粒子のジルコニアの含有量よりも多くした試料No.3〜5、8〜10では高温負荷処理前後での抵抗減少率が0.7%/min以下であり高い高温負荷信頼性を示した。これに対して、第1〜第3セラミックパターンに同じ平均粒径のセラミック粉末を用いた試料No.1では静電容量は1.03μFと高いものの、絶縁抵抗が180MΩ、高温負荷処理前後での抵抗減少率が1.2%/minと大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【図2】本発明の積層セラミックコンデンサのコンデンサ本体内部の誘電体層上に形成された内部電極層を示す平面図であり、内部電極層の面内における図1に示したA−A断面の端部および中央部の位置を示すものである。
【図3】(a)は図1のA−A断面図であり、(b)は図1(a)の中央部と端部における誘電体層を構成する結晶粒子を表す模式図である。
【図4】本発明における交流インピーダンス測定を用いた誘電体層中の粒界の抵抗の評価手法を示す模式図である。
【図5】(a)本発明の交流インピーダンス測定を用いた誘電体層中の粒界の抵抗評価結果の代表例であり、(b)は積層セラミックコンデンサを構成する誘電体層を構成するコア(中心部)、シェル(外周部)、粒界相および内部電極層と誘電体層との界面の4つの成分を等価回路で表したものである。
【図6】本発明の積層セラミックコンデンサの製法を示す工程図である(サイドマージン方向(A−A))。
【図7】本発明の積層セラミックコンデンサの製法を示す工程図である(エンドマージン方向(B−B))。
【符号の説明】
【0030】
1 コンデンサ本体
3 外部電極
5 誘電体層
7 内部電極層
7a 端部
7b 中央部
9 結晶粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の結晶粒子からなる誘電体層および内部電極層が交互に積層されたコンデンサ本体と、該コンデンサ本体の前記内部電極層が導出された対向する端面にそれぞれ設けられた一対の外部電極とを具備する積層セラミックコンデンサにおいて、前記外部電極が形成された端面に平行な前記コンデンサ本体の断面における前記内部電極層間の前記誘電体層について、前記内部電極層の平面方向の端部において前記内部電極層の積層方向に引いた直線上に存在する前記結晶粒子数が、前記内部電極層の平面方向の中央部において、これも前記内部電極層の積層方向に引いた直線上に存在する前記結晶粒子数よりも多いことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記結晶粒子がジルコニアを含有し、前記内部電極層の端部における前記誘電体層の前記結晶粒子のジルコニアの含有量は前記内部電極層の中央部における前記誘電体層の前記結晶粒子のジルコニアの含有量よりも多い請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−242827(P2007−242827A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62092(P2006−62092)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】