説明

積層セラミックコンデンサ

【課題】積層セラミックコンデンサにおいて、誘電体セラミック層の厚みを1μm未満と薄くしても、高い絶縁性および寿命特性の維持を可能とする。
【解決手段】誘電体セラミック層2の厚みをtとし、誘電体セラミック層2を構成する誘電体セラミックの結晶粒子の平均粒径をrとしたとき、N=t/r−1で定義される平均粒界個数Nを0<N≦2とするとともに、誘電体セラミックの組成を、ABO(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつMnおよびVを副成分とし、主成分100モル部に対して、Mnを0.05〜0.75モル部、Vを0.05〜0.75モル部それぞれ含有し、MnおよびVの合計で0.10〜0.80モル部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミックコンデンサに関するもので、特に、積層セラミックコンデンサにおける誘電体セラミック層のより薄層化を図るための改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、小型化を図ることが要望されている。積層セラミックコンデンサを小型化するためには、誘電体セラミック層の薄層化を進めて、より大きな容量を得ることができるようにすることが有効である。誘電体セラミック層の薄層化を進めるにあたって留意すべきは、誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックが、特に絶縁性および寿命特性に関して、十分な信頼性を有しているかどうかである。
【0003】
誘電体セラミック層の薄層化に適した誘電体セラミックとして、たとえば、特開2002‐20167号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1では、BaおよびTiの酸化物がBaTiOに換算して100モル%、Re(ReはSm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Yから選択された1種または2種以上)の酸化物がReに換算して0.25〜1.5モル%、Mgの酸化物がMgOに換算して0.2〜1.5モル%、Mn,VおよびCrから選択された1種または2種以上の酸化物が各々Mn,V,Crに換算して0.03〜0.6モル%の割合で含有されている焼結体からなり、Ba/Ti比が0.970〜1.030であることを特徴とする誘電体セラミックが記載されている。
【0004】
上記組成において、Mn、V、Crという元素によって、絶縁性が高められ、良好な寿命特性が得られている。
【0005】
一方、積層セラミックコンデンサの小型化に対する要求がより厳しくなりつつあって、誘電体セラミック層の薄層化を、厚み1μm未満のレベルにまで進めたいという要望がある。誘電体セラミック層が薄層化されるに従って、誘電体セラミック層に印加される電界がより大きくなるので、上記のような要望を満たすためには、誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックに対して、これまで以上の高い絶縁性および寿命特性が必要となってくる。ところが、前述の特許文献1に記載の組成を有する誘電体セラミックを用いると、主に粒界の絶縁性に問題が生じ、十分な寿命特性を得ることができないという問題があった。
【特許文献1】特開2002‐20167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る積層セラミックコンデンサを提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、結晶粒子と結晶粒界とを有する誘電体セラミックからなる、積層された複数の誘電体セラミック層、および誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極をもって構成される、コンデンサ本体と、コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ内部電極の特定のものに電気的に接続される、複数の外部電極とを備える、積層セラミックコンデンサに向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0008】
まず、内部電極の積層方向に隣り合うものの間に位置する誘電体セラミック層の厚みをtとし、かつ誘電体セラミックの結晶粒子の平均粒径をrとしたとき、厚みtは1μm未満であり、かつN=t/r−1(ただし、tの単位およびrの単位は互いに同じである。)で定義される平均粒界個数Nは、0<N≦2であることを第1の特徴としている。なお、上記平均粒界個数Nは、誘電体セラミック層の厚み方向に直線を引いたとき、その直線が誘電体セラミック層1層あたり横切る粒界の数ということである。
【0009】
また、誘電体セラミックは、ABO(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつMnおよびVを副成分として含む組成を有し、主成分100モル部に対して、Mnの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、Vの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、MnおよびVの合計含有量は0.10モル部以上かつ0.80モル部以下であることを第2の特徴としている。
【0010】
上記誘電体セラミックは、(Ba1-xCax)TiO3系ペロブスカイト型化合物(0≦x≦0.1)を主成分とし、副成分として、主成分100モル部に対して、さらに、希土類元素R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYから選ばれる少なくとも1種である。)を0.1〜5.0モル部、Mgを0.1〜2.0モル部、およびSiを0.5〜2.0モル部含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明において、誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックに副成分として含まれるMnとVは、主に粒界の絶縁性を高める作用があり、寿命特性に効果のある元素である。主成分100モル部に対して、Mnの含有量を0.05モル部以上とし、Vの含有量を0.05モル部以上とし、MnおよびVの合計含有量を0.10モル部以上とすることによって、粒界の絶縁性を高める作用が確実に発揮される。
【0012】
他方、平均粒界個数Nを0<N≦2とすることにより、誘電体セラミック層に占める粒界の体積割合が減少する。よって、上記MnおよびVが、粒界全体に均一に拡散しやすくなる。そして、MnおよびVが均一に拡散しやすくなるので、粒界の絶縁性を高めるため、MnおよびVの量をそれほど増やす必要もない。なお、主成分100モル部に対して、Mnの含有量が0.75モル部を超えたり、Vの含有量が0.75モル部を超えたり、MnおよびVの合計含有量が0.80モル部を超えたりすると、偏析ができやすく、寿命特性に悪影響を及ぼす。
【0013】
以上のことから、この発明によれば、粒界体積割合を減らしながら、MnおよびVの含有量が偏析の生じない適正量に絞り込まれているので、誘電体セラミック層の厚みが1μm未満という超薄層領域においても、非常に高い寿命特性を得ることができる。
【0014】
この発明において、誘電体セラミックが、(Ba1-xCax)TiO3系ペロブスカイト型化合物を主成分とし、副成分として、主成分100モル部に対して、さらに、希土類元素Rを0.1〜5.0モル部、Mgを0.1〜2.0モル部、およびSiを0.5〜2.0モル部含んでいると、より厳しい条件における寿命特性にも対応可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、この発明に係る誘電体セラミックが適用される積層セラミックコンデンサ1を示す断面図である。
【0016】
積層セラミックコンデンサ1は、積層された複数の誘電体セラミック層2と誘電体セラミック層2間の特定の界面に沿って形成される複数の内部電極3および4とをもって構成される、コンデンサ本体5を備えている。誘電体セラミック層2は、結晶粒子と結晶粒界とを有する誘電体セラミックからなる。内部電極3および4は、たとえば、Niを主成分としている。
【0017】
コンデンサ本体5の外表面上の互いに異なる位置には、第1および第2の外部電極6および7が形成される。外部電極6および7は、たとえば、Cuを主成分としている。図1に示した積層セラミックコンデンサ1では、第1および第2の外部電極6および7は、コンデンサ本体5の互いに対向する各端面上に形成される。内部電極3および4は、第1の外部電極6に電気的に接続される第1の内部電極3と第2の外部電極7に電気的に接続される第2の内部電極4とがあり、これら第1および第2の内部電極3および4は、積層方向に関して交互に配置されている。
【0018】
このような積層セラミックコンデンサ1において、隣り合う第1の内部電極3と第2の内部電極4との間に位置する誘電体セラミック層2の厚みをtとし、かつ誘電体セラミック層2を構成する誘電体セラミックの結晶粒子の平均粒径をrとしたとき、厚みtは1μm未満であり、かつN=t/r−1(ただし、tの単位およびrの単位は互いに同じである。)で定義される平均粒界個数Nは、0<N≦2である。
【0019】
また、誘電体セラミック層2を構成する誘電体セラミックは、ABO(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつMnおよびVを副成分として含む組成を有し、主成分100モル部に対して、Mnの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、Vの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、MnおよびVの合計含有量は0.10モル部以上かつ0.80モル部以下である。
【0020】
上述した誘電体セラミックに副成分として含まれるMnとVは、主に粒界の絶縁性を高める作用があり、寿命特性に効果のある元素である。他方、平均粒界個数Nを0<N≦2とすることにより、誘電体セラミック層に占める粒界の体積割合が減少する。よって、上記MnおよびVが、粒界全体に均一に拡散しやすくなる。そして、MnおよびVが均一に拡散しやすくなるので、粒界の絶縁性を高めるため、MnおよびVの量をそれほど増やす必要もない。
【0021】
なお、主成分100モル部に対して、Mnの含有量が0.75モル部を超えたり、Vの含有量が0.75モル部を超えたり、MnおよびVの合計含有量が0.80モル部を超えたりすると、偏析ができやすく、寿命特性に悪影響を及ぼす。他方、主成分100モル部に対して、Mnの含有量の下限を0.05モル部とし、Vの含有量の下限を0.05モル部とし、MnおよびVの合計含有量の下限を0.10モル部としたのは、これら下限を下回ると、粒界の絶縁性を高める作用を十分に発揮し得ないためである。
【0022】
以上のことから、この発明によれば、粒界体積割合を減らしながら、MnおよびVの含有量が偏析の生じない適正量に絞り込まれているので、誘電体セラミック層2の厚みが1μm未満という超薄層領域においても、非常に高い寿命特性を得ることができる。
【0023】
誘電体セラミックが、より特定的に、(Ba1-xCax)TiO3系ペロブスカイト型化合物を主成分とし、副成分として、主成分100モル部に対して、さらに、希土類元素Rを0.1〜5.0モル部、Mgを0.1〜2.0モル部、およびSiを0.5〜2.0モル部含んでいると、より厳しい条件における寿命特性にも対応可能とすることができる。
【0024】
なお、この発明が適用される積層セラミックコンデンサは、図1に示すような構造を有するものに限らず、たとえば、複数の内部電極がコンデンサ本体内部において直列容量を形成する構造のもの、あるいは、アレイ状の積層セラミックコンデンサまたは低ESL化された積層セラミックコンデンサのような多端子構造のものであってもよい。
【0025】
以下に、この発明に基づいて実施した実験例について説明する。
【0026】
[実験例1]
実験例1では、(Mn+V)量とN値とをそれぞれ変化させ、寿命特性に与える影響を調べた。MnおよびV以外の組成は固定した。また、積層セラミックコンデンサの製造方法については一般的なものを採用した。
【0027】
(A)誘電体原料配合物の作製
まず、主成分の出発原料として、BaCOおよびTiOの各粉末を準備し、これら粉末を、Ba1.008TiOの組成になるように秤量し、次いで、熱処理し、平均粒径が0.3μmのBa1.008TiO粉末を得た。
【0028】
他方、副成分として、Dy、MgCO、MnCO、SiOおよびVの各粉末を準備し、これらを、
組成式:100Ba1.008TiO+0.7DyO3/2+1.4MgO+cMnO+dVO5/2+SiO (係数はモル部)
で表され、かつ表1に示す係数cおよびdを有する組成となるように、上記Ba1.008TiO粉末と配合し、水を媒体としてボールミルにより混合した。その後、蒸発乾燥により誘電体原料配合物を得た。
【0029】
(B)積層セラミックコンデンサの作製
上記誘電体原料配合物に、ポリビニルブチラール系バインダおよびエタノールを加えて、ボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを得た。このセラミックスラリーをリップコータによりシート成形し、セラミックグリーンシートを得た。
【0030】
次に、上記セラミックグリーンシート上に、Niを主成分とする導電ペーストをスクリーン印刷し、内部電極を構成するための導電ペースト膜を形成した。
【0031】
次に、導電ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを、導電ペースト膜の引き出されている側が互い違いになるように複数枚積層し、生の積層体を得た。次に、この生の積層体を、N雰囲気中にて300℃の温度に加熱し、バインダを燃焼させた後、酸素分圧10-10MPaのH−N−HOガスからなる還元性雰囲気中にて1150℃の温度で2時間焼成し、焼結したセラミック積層体を得た。
【0032】
次に、上記セラミック積層体の両端面に、B−LiO−SiO−BaOガラスフリットを含有するCuペーストを塗布し、N雰囲気中において800℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成し、各試料に係る積層セラミックコンデンサを得た。
【0033】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、長さ2.0mm、幅1.2mm、厚さ1.0mmであり、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みtは、各試料について1000nm未満であり、表1のとおりであった。また、有効誘電体セラミック層の数は100であり、1層当たりの対向電極面積は1.4mmであった。
【0034】
(C)特性評価およびセラミック微構造観察
特性評価として、高温負荷寿命試験を実施した。すなわち、温度85℃および125℃の各々にて、6.3Vの直流電圧を印加して、絶縁抵抗の経時変化を測定した。この高温負荷寿命試験において、100個の試料について試験を行ない、1000時間および2000時間それぞれ経過するまでに、絶縁抵抗値が100kΩ以下になった試料を不良と判定した。表2に、これら不良個数が示されている。
【0035】
また、セラミック微構造を観察した。すなわち、試料となる積層セラミックコンデンサ断面をエッチングし、粒界部分が明確になるような状態にした上で、FE−SEMにて2次電子像を観察した。このとき、結晶粒子が50個前後入る視野にて、平均粒径(平均円相当径)を算出した。この作業を5視野分行ない、その平均を平均粒径rとした。そして、N=t/r−1の式から、平均粒界個数Nを算出した。表1に、これら平均粒径rおよび平均粒界個数Nが示されている。
【0036】
(D)結果
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表2からわかるように、試料104、105、106、110、111、114および117によれば、負荷レベルの比較的低い高温負荷試験においてはもちろん、負荷レベルの比較的高い高温負荷試験においても不良が発生しておらず、非常に高い信頼性が発現している。これら試料104、105、106、110、111、114および117については、表1に示すように、0<N≦2、0.05≦c≦0.75、0.05≦d≦0.75、および0.10≦c+d≦0.80の条件を満たしている。
【0040】
これに対して、0<N≦2、0.05≦c≦0.75、0.05≦d≦0.75、および0.10≦c+d≦0.80の条件のいずれかを満たさない試料101〜103、107〜109、112、113、115、116および118〜120では、高温負荷試験のいずれかの試験条件において、不良が少なくとも1/100個発生している。
【0041】
[実験例2]
実験例2では、誘電体セラミック層の厚みtと平均粒界個数Nをほぼ固定とした上で、組成を幅広く変化させた場合の影響を調べた。この実験例は、信頼性向上にとって、より好ましい組成範囲を規定するためのものである。
【0042】
(A)誘電体原料配合物の作製
まず、主成分の出発原料として、BaCO、CaCOおよびTiOの各粉末を準備し、これら粉末を、表3に示されたxおよびmをそれぞれ有する(Ba1-xCaTiOの組成になるように秤量し、次いで、熱処理し、平均粒径が0.3μmの(Ba1-xCaTiO粉末を得た。
【0043】
他方、副成分として、MgCO、MnCO、SiOおよびVの各粉末を準備するとともに、Rの酸化物(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYから選ばれる1種である。)を準備し、これらを、
組成式:100(Ba1-xCaTiO+aRO3/2+bMgO+cMnO+dVO5/2+eSiO (係数はモル部)
で表され、かつ表1にそれぞれ示す、R成分を用いながら、係数a、b、cおよびdを有する組成となるように、上記(Ba1-xCaTiO粉末と配合し、水を媒体としてボールミルにより混合した。その後、蒸発乾燥により誘電体原料配合物を得た。
【0044】
(B)積層セラミックコンデンサの作製
実験例1の場合と同様の操作を経て、各試料に係る積層セラミックコンデンサを得た。誘電体セラミック層の厚みtは、0.8μmに統一した。
【0045】
(C)特性評価およびセラミック微構造観察
実験例1の場合と同様の特性評価およびセラミック微構造観察を行なった。特性評価の結果が表4に示されている。表には、特に示していないが、試料201〜224は、平均粒界個数Nがほぼ1.5であった。
【0046】
(D)結果
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
実験例2で作製された試料201〜224は、すべて、この発明の範囲内のものである。これら試料201〜224については、表4に示すように、高温負荷試験において、ほとんど不良が発生しておらず、不良が発生したものがあっても、それは最も厳しい試験条件の場合のみである。
【0050】
上記試料201〜224のうち、試料201、202、204、207〜209、213、214、217、218および221〜224については、この発明のより好ましい範囲内のものである。すなわち、誘電体セラミックが、(Ba1-xCaxTiO3を主成分とし、副成分として、主成分100モル部に対して、さらに、表3の「a」に示すように、希土類元素Rを0.1〜5.0モル部、表3の「b」に示すように、Mgを0.1〜2.0モル部、および、表3の「e」に示すように、Siを0.5〜2.0モル部含む、という条件をさらに満たしている。よって、これらの試料については、負荷レベルの最も厳しい高温負荷試験においても不良が発生しておらず、非常に高い信頼性が発現している。
【0051】
[実験例3]
実験例3では、不純物の影響を評価した。原料作製等、積層セラミックコンデンサの加工プロセスにおいて、Mo、W、Cu、Sr、Zr、Hf、Zn、Na、Ag、NiおよびPdが不純物として混入する可能性があり、これらが結晶粒子内および結晶粒子間を占める結晶粒界に存在する可能性がある。また、積層セラミックコンデンサの焼成プロセスなどにおいて、内部電極成分が結晶粒子内および結晶粒子間を占める結晶粒界に拡散し存在する可能性がある。
【0052】
(A)誘電体原料配合物の作製
実験例2において作製した試料201に係る誘電体原料配合物に、表5に示した不純物を加えて、試料301〜307に係る誘電体原料配合物を得た。
【0053】
【表5】

【0054】
(B)積層セラミックコンデンサの作製
実験例2の場合と同様の操作を経て、同様の仕様を有する、各試料に係る積層セラミックコンデンサを得た。
【0055】
(C)特性評価およびセラミック微構造観察
実験例1の場合と同様の特性評価およびセラミック微構造観察を行なった。特性評価の結果が表6に示されている。表には、特に示していないが、試料301〜307は、平均粒界個数Nがほぼ1.5であった。
【0056】
(D)結果
【0057】
【表6】

【0058】
表6に示すように、試料301〜307は、いずれも、実験例2において作製した試料201と同様、非常に優れた信頼性を示した。
【0059】
[実験例4]
実験例4では、様々な焼結助剤を評価した。
【0060】
(A)誘電体原料配合物の作製
実験例2において作製した試料201に係る誘電体原料配合物に、表7に示した焼結助剤を加えて、試料401〜407に係る誘電体原料配合物を得た。
【0061】
【表7】

【0062】
(B)積層セラミックコンデンサの作製
実験例2の場合と同様の操作を経て、同様の仕様を有する、各試料に係る積層セラミックコンデンサを得た。
【0063】
(C)特性評価およびセラミック微構造観察
実験例1の場合と同様の特性評価およびセラミック微構造観察を行なった。特性評価の結果が表8に示されている。表には、特に示していないが、試料401〜407は、平均粒界個数Nがほぼ1.5であった。
【0064】
(D)結果
【0065】
【表8】

【0066】
表8に示すように、試料401〜407は、いずれも、実験例2において作製した試料201と同様、非常に優れた信頼性を示した。
【0067】
なお、以上の実験例1〜4では、誘電体セラミックの主成分として、(Ba1-xCaxTiO3(0≦x≦0.1)を用いたが、この(Ba1-xCaxTiO3において、Caに代えて、またはCaに加えて、Srが用いられても、あるいは、Tiの一部がZrおよびHfの少なくとも一方で置換されても、上記実験例1〜4の場合と実質的に同様の結果が得られることが確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 積層セラミックコンデンサ
2 誘電体セラミック層
3,4 内部電極
5 コンデンサ本体
6,7 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒子と結晶粒界とを有する誘電体セラミックからなる、積層された複数の誘電体セラミック層、および前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿って形成された複数の内部電極をもって構成される、コンデンサ本体と、
前記コンデンサ本体の外表面上の互いに異なる位置に形成され、かつ前記内部電極の特定のものに電気的に接続される、複数の外部電極と
を備え、
前記内部電極の積層方向に隣り合うものの間に位置する前記誘電体セラミック層の厚みをtとし、かつ前記誘電体セラミックの前記結晶粒子の平均粒径をrとしたとき、
前記厚みtは1μm未満であり、かつ
N=t/r−1(ただし、tの単位およびrの単位は互いに同じである。)で定義される平均粒界個数Nは、0<N≦2であり、
前記誘電体セラミックは、ABO(Aは、Ba、またはBaならびにCaおよびSrの少なくとも一方を含む。Bは、Ti、またはTiならびにZrおよびHfの少なくとも一方を含む。)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、かつMnおよびVを副成分として含む組成を有し、前記主成分100モル部に対して、Mnの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、Vの含有量は0.05モル部以上かつ0.75モル部以下であり、MnおよびVの合計含有量は0.10モル部以上かつ0.80モル部以下である、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体セラミックは、(Ba1-xCax)TiO3系ペロブスカイト型化合物(0≦x≦0.1)を主成分とし、前記副成分として、前記主成分100モル部に対して、さらに、希土類元素R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYから選ばれる少なくとも1種である。)を0.1〜5.0モル部、Mgを0.1〜2.0モル部、およびSiを0.5〜2.0モル部含む、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−40798(P2010−40798A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202564(P2008−202564)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】