説明

積層デバイスの製造方法

【課題】歩留まりよく積層デバイスを製造可能な積層デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】半導体ウエーハをm枚(mは3以上の整数)準備する半導体ウエーハ準備ステップと、m枚の半導体ウエーハにおいて、良品、不良品マップ12A、12B、12C、12Dを半導体ウエーハ毎に作成するマップ作成ステップと、該m枚の半導体ウエーハから該所定数nの半導体ウエーハを選択して積層し、半導体デバイス中に不良品半導体デバイス16bが含まれる数が最も少なくなる組み合わせを検出する組み合わせ検出ステップと、該組み合わせ検出ステップで検出した半導体ウエーハの組み合わせに従って、該所定数nの半導体ウエーハを形成する積層ウエーハ形成ステップと、該積層ウエーハ形成ステップで形成した該積層ウエーハを該分割予定ラインに沿って分割して、該所定数nの半導体デバイスが積層された積層デバイスを形成する分割ステップと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体デバイスが積層された積層デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウエーハの表面にストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画された各領域にICやLSI等のデバイスが形成される。そして、分割予定ラインに沿って半導体ウエーハをチップに分割することで、個々の半導体デバイスが製造される。このようにして製造された半導体デバイスは各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
近年、電気機器の小型化・薄型化に伴い半導体デバイスパッケージも小型化・薄型化が要求され、実装の高密度化が要求されている。複数の半導体デバイスを一つのパッケージに集積する手法の一つに複数の半導体デバイスチップを縦方向に積層して実装する三次元実装がある。
【0004】
従来の三次元実装では、ワイヤボンディングを用いて半導体デバイスチップ間、或いは半導体デバイスチップとインターポーザとを接続していた。ワイヤボンディングによる接続では、その配線長分インダクタンス等が大きくなるので高速での信号のやり取りには向かないという問題があるとともに、ワイヤが半導体デバイスチップ等に触れないようにチップを積層する必要があるため小型化が難しい等の問題がある。
【0005】
近年、新たな三次元実装技術として、ワイヤの代わりにSi貫通電極(Through−Silicon Via:TSV)を用いた実装技術が注目されている。TSV技術を用いると、配線長がワイヤより短いため配線抵抗やインダクタンスが大幅に低減でき、消費電力も大幅に低減できるというメリットがある。
【0006】
TSV技術の一つとして、複数の半導体ウエーハ同士を積層し、積層した半導体ウエーハを貫く貫通電極を形成してウエーハ同士を接続する方法がある(Wafer on Wafer:WOW)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−249620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、殆どの半導体ウエーハには、良品半導体デバイスと幾つかの不良品半導体デバイスが混在しているため、複数の半導体ウエーハ同士を積層し、積層した半導体ウエーハ同士を貫く貫通電極を形成して半導体ウエーハ同士を接続するWOW技術では歩留まりが悪いという問題がある。数多くの半導体ウエーハを積層する場合には、上記問題が顕著になる。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歩留まりの悪化を抑制可能な積層デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、所定数n(nは2以上の整数)の半導体デバイスが積層された積層デバイスを製造する積層デバイスの製造方法であって、それぞれ同位置に交差する複数の分割予定ラインを有し、該分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれ半導体デバイスが形成された半導体ウエーハを該nより多いm枚(mは3以上の整数)準備する半導体ウエーハ準備ステップと、該半導体ウエーハ準備ステップで準備したm枚の半導体ウエーハにおいて、どの半導体デバイスが良品でどの半導体デバイスが不良品であるかのマップを半導体ウエーハ毎に作成するマップ作成ステップと、該マップ作成ステップを実施した後、該m枚の半導体ウエーハから該所定数nの半導体ウエーハを選択して積層する組み合わせのうち、積層された半導体デバイス中に不良品半導体デバイスが含まれる数が最も少なくなる組み合わせを検出する組み合わせ検出ステップと、該組み合わせ検出ステップで検出した半導体ウエーハの組み合わせに従って、該所定数nの半導体ウエーハを積層して積層ウエーハを形成する積層ウエーハ形成ステップと、該積層ウエーハ形成ステップで形成した該積層ウエーハを該分割予定ラインに沿って分割して、該所定数nの半導体デバイスが積層された積層デバイスを形成する分割ステップと、を具備したことを特徴とする積層デバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層デバイスの製造方法によると、準備した全半導体ウエーハ中積層デバイスの歩留まりが最も高くなる組み合わせを選択して積層ウエーハを形成するため、積層ウエーハを分割して得られる積層デバイスの歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】半導体ウエーハ準備ステップを説明する図である。
【図2】マップ形成ステップを説明する図である。
【図3】図3(A)は半導体ウエーハAのマップと半導体ウエーハBのマップの組み合わせを示す図、図3(B)は半導体ウエーハCのマップと半導体ウエーハDのマップの組み合わせを示す図である。
【図4】図4(A)は半導体ウエーハAのマップと半導体ウエーハCのマップの組み合わせを示す図、図4(B)は半導体ウエーハBのマップと半導体ウエーハDのマップの組み合わせを示す図である。
【図5】図5(A)は半導体ウエーハAのマップと半導体ウエーハDのマップの組み合わせを示す図、図5(B)は半導体ウエーハBのマップと半導体ウエーハCのマップの組み合わせを示す図である。
【図6】図6(A)は半導体ウエーハAと半導体ウエーハCとが積層された積層ウエーハの斜視図、図6(B)は半導体ウエーハBと半導体ウエーハDとが積層された積層ウエーハの斜視図である。
【図7】積層ウエーハを分割する分割ステップを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、半導体ウエーハ準備ステップの説明図が示されている。ここでは、4枚の半導体ウエーハ2A,2B,2C,2Dを準備するものとする。
【0014】
各半導体ウエーハ2A〜2Dはシリコンウエーハから形成されており、その表面には格子状に形成された複数の分割予定ライン(ストリート)4によって区画された各領域にIC、LSI等の半導体デバイス6a,6bが形成されている。
【0015】
ここで、白抜きは良品半導体デバイス6a、シェーディングが施されたデバイスは不良品半導体デバイス6bであるとする。8はシリコンウエーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチである。
【0016】
半導体ウエーハ2A〜2Dの全ての半導体デバイスは検査工程で電気的特性等が検査され、良品半導体デバイス6aは検査工程で合格した半導体デバイスであり、不良品半導体デバイス6bは検査工程で不合格とされた半導体デバイスである。
【0017】
本発明の積層デバイスの製造方法では、図1に示す半導体ウエーハ2A〜2Dを準備した後、半導体ウエーハ2A〜2Dにおいてどの半導体デバイスが良品でどの半導体デバイスが不良品であるかのマップを半導体ウエーハ毎に作成するマップ作成ステップを実施する。
【0018】
このマップ作成ステップでは、図2に示すようなマップを作成し、これらのマップを例えばウエーハ積層装置のメモリに格納する。ここで12Aは図1に示した半導体ウエーハ2Aに対応したマップであり、16aは良品半導体デバイスの位置を示し、16bは不良品半導体デバイスの位置を示しており、それぞれ半導体ウエーハ2Aの良品半導体デバイス6a、不良品半導体デバイス6bに対応する。
【0019】
12Bは半導体ウエーハ2Bのマップであり、良品半導体デバイス位置16a、不良品半導体デバイス位置16bはそれぞれ半導体ウエーハ2Bの良品半導体デバイス6a、不良品半導体デバイス6bに対応している。
【0020】
12Cは半導体ウエーハ2Cのマップであり、良品半導体デバイス位置16a、不良品半導体デバイス位置16bはそれぞれ半導体ウエーハ2Cの良品半導体デバイス6a、不良品半導体デバイス6bに対応している。
【0021】
12Dは半導体ウエーハ2Dのマップであり、良品半導体デバイス位置16a、不良品半導体デバイス位置16bはそれぞれ半導体ウエーハ2Dの良品半導体デバイス6a、不良品半導体デバイス6bに対応している。
【0022】
このように本発明のマップ作成ステップでは、半導体ウエーハ準備ステップで準備した全ての半導体ウエーハについて、良品半導体デバイス位置及び不良品半導体デバイス位置を示すマップを作成し、これらのマップをウエーハ積層装置のメモリに格納する。
【0023】
マップ作成ステップを実施後、複数枚積層された半導体デバイス中に不良品半導体デバイス6bが含まれる数が最も少なくなる半導体ウエーハの組み合わせを検出する組み合わせ検出ステップを実施する。
【0024】
例えば、図1に示した4枚の半導体ウエーハ2A〜2Dの中から2枚の半導体ウエーハを組み合わせて積層ウエーハを形成する場合には、図3乃至図5に示す3通りの組み合わせがある。
【0025】
図3は第1の組み合わせ方法を示しており、図3(A)は半導体ウエーハ2Aのマップ12Aと半導体ウエーハ2Bのマップ12Bを組み合わせる場合を示しており、図3(B)は半導体ウエーハ2Cのマップ12Cと半導体ウエーハ2Dのマップ12Dを組み合わせる場合を示している。
【0026】
図4は第2の組み合わせ方法を示しており、図4(A)は半導体ウエーハ2Aのマップ12Aと半導体ウエーハ2Cのマップ12Cを組み合わせる場合を示しており、図4(B)は半導体ウエーハ2Bのマップ12Bと半導体ウエーハ2Dのマップ12Dを組み合わせる場合を示している。
【0027】
図5は第3の組み合わせ方法を示しており、図5(A)は半導体ウエーハ2Aのマップ12Aと半導体ウエーハ2Dのマップ12Dを組み合わせる場合を示しており、図5(B)は半導体ウエーハ2Bのマップ12Bと半導体ウエーハ2Cのマップ12Cを組み合わせる場合を示している。
【0028】
本発明の組み合わせ検出ステップでは、積層された半導体デバイス中に不良品半導体デバイス6bが含まれる数が最も少なくなる組み合わせを検出する。ここで、半導体ウエーハ2A中の不良品半導体デバイス16bの数をA、半導体ウエーハ2B中の不良品半導体デバイス16bの数をB、半導体ウエーハ2C中の不良品半導体デバイス6bの数をC、半導体ウエーハ2D中の不良品半導体デバイス6bの数をDとし、位置が重複する不良品半導体デバイスの数をxとすると、図3〜図5に示した第1の組み合わせ乃至第3の組み合わせについて、それぞれ以下の関係が得られる。
【0029】
図3に示した第1の組み合わせ方法では、図3(A)はA+B−x=5+6−1=10であり、図3(B)はC+D−x=10+3−3=10であり、合計で20個の不良品積層デバイスが得られる。
【0030】
図4に示した第2の組み合わせ方法では、図4(A)はA+C−x=5+10−4=11であり、図4(B)はB+D−x=7+3−2=8であり、合計で19個の不良品積層デバイスを含んでいる。
【0031】
図5に示した第3の組み合わせ方法では、図5(A)はA+D−x=5+3−3=5であり、図5(B)はB+C−x=7+10−6=11であり、合計で16個の不良品積層デバイスを含んでいる。
【0032】
よって、本発明の組み合わせ検出ステップでは、図5に示した第3の組み合わせ方法である半導体ウエーハ2Aと半導体ウエーハ2Dとを組み合わせ、更に半導体ウエーハ2Bと半導体ウエーハ2Cとを組み合わせる組み合わせ方法が最も少ない不良品積層デバイスを製造できると検出される。
【0033】
よって、本発明の積層デバイスの製造方法では、組み合わせ検出ステップで検出した半導体ウエーハの積層組み合わせに従って、図6(A)に示すように、半導体ウエーハ2Aと半導体ウエーハ2Dとを組み合わせて積層ウエーハ18Aを形成し、図6(B)に示すように、半導体ウエーハ2Bと半導体ウエーハ2Cとを組み合わせて積層ウエーハ18Bを形成する。
【0034】
次いで、図7に示すように、切削装置の図示しないチャックテーブルで積層ウエーハ18Aを吸引保持しながら、積層ウエーハ18Aの第1の方向に伸長する分割予定ライン4に沿って切削ブレード20で積層ウエーハ18Aを切削して分割溝22を形成する。
【0035】
第1の方向に伸長する全ての分割予定ライン4に沿っての分割溝22の形成終了後、図示しないチャックテーブルを90度回転してから、第1の方向と直交する第2の方向に伸長する全ての分割予定ライン4に沿っても同様な分割溝22を形成することにより、積層ウエーハ18Aを個々の積層デバイスに分割することができる。
【0036】
図6(B)に示す積層ウエーハ18Bでも同様であり、第1の方向及び第1の方向に直交する第2の方向に伸長する全ての分割予定ライン4に沿って分割溝22を形成することにより、積層ウエーハ18Bを個々の積層デバイスに分割することができる。
【0037】
上述した実施形態では、4枚の半導体ウエーハ2A〜2Dの中から2枚の半導体ウエーハを積層する例について説明したが、本発明の積層デバイスの製造方法はこれに限定されるものではなく、一般的にn枚(nは2以上の整数)の半導体ウエーハを積層する場合について、m枚(mはnより大きい整数)の半導体ウエーハの中から最適の組み合わせを得る場合について同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
2A,2B,2C,2D 半導体ウエーハ
4 分割予定ライン(ストリート)
6a 良品半導体デバイス
6b 不良品半導体デバイス
12A,12B,12C,12D マップ
16a 良品半導体デバイス位置
16b 不良品半導体デバイス位置
18A,18B 積層半導体ウエーハ
20 切削ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数n(nは2以上の整数)の半導体デバイスが積層された積層デバイスを製造する積層デバイスの製造方法であって、
それぞれ同位置に交差する複数の分割予定ラインを有し、該分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれ半導体デバイスが形成された半導体ウエーハを該nより多いm枚(mは3以上の整数)準備する半導体ウエーハ準備ステップと、
該半導体ウエーハ準備ステップで準備したm枚の半導体ウエーハにおいて、どの半導体デバイスが良品でどの半導体デバイスが不良品であるかのマップを半導体ウエーハ毎に作成するマップ作成ステップと、
該マップ作成ステップを実施した後、該m枚の半導体ウエーハから該所定数nの半導体ウエーハを選択して積層する組み合わせのうち、積層された半導体デバイス中に不良品半導体デバイスが含まれる数が最も少なくなる組み合わせを検出する組み合わせ検出ステップと、
該組み合わせ検出ステップで検出した半導体ウエーハの組み合わせに従って、該所定数nの半導体ウエーハを積層して積層ウエーハを形成する積層ウエーハ形成ステップと、
該積層ウエーハ形成ステップで形成した該積層ウエーハを該分割予定ラインに沿って分割して、該所定数nの半導体デバイスが積層された積層デバイスを形成する分割ステップと、
を具備したことを特徴とする積層デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−134334(P2012−134334A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285416(P2010−285416)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】