説明

積層フィルムの製造方法

【課題】第一透明樹脂フィルムおよび硬化層を有する第一積層フィルムが適用された第二積層フィルムにおいてカールを抑制し、かつオリゴマーの析出を防止すること。
【解決手段】熱収縮性を有する第一透明樹脂フィルムの片面または両面に硬化層を形成する第一積層フィルムの製造方法であって、前記硬化層の厚さは1μm未満であり、前記硬化層の形成は、活性エネルギー線硬化型化合物、光重合開始剤(但し、加熱減量試験における10%加熱減量温度が170℃以上である)および溶媒を含有する組成物溶液を、第一透明樹脂フィルムの片面または両面に、塗工して塗工層を形成する塗工工程(1)と、前記塗工層に含まれる溶媒の乾燥を、得られる第一積層フィルムを150℃で1時間加熱した場合の熱収縮率が0.5%以下となるような温度条件下に制御して行なう熱処理工程(2)と、塗工層を硬化させる硬化工程(3)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性を有する第一透明樹脂フィルムの片面または両面に硬化層を有する積層フィルム(第一積層フィルム)の製造方法に関する。当該製造方法により得られる第一積層フィルムは、その硬化層に、熱収縮性を有する第二透明樹脂フィルムを、粘着剤層を介して積層して第二積層フィルムを形成するために用いられるものであり、当該第二積層フィルムは光学用途等の各種用途に用いることができる。
【0002】
例えば、第二透明樹脂フィルムが、透明導電性薄膜を有する場合には、第二積層フィルムは透明導電性フィルムの積層体として用いることができる。透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのディスプレイ方式や光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどにおける透明電極に用いられる。その他、透明導電性フィルムは、透明物品の帯電防止や電磁波遮断、液晶調光ガラス、透明ヒーター等に用いられる。
【背景技術】
【0003】
透明導電性フィルムが電極として用いられるタッチパネルは、位置検出の方式により、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルでは透明導電性フィルムと透明導電体付きガラスとがスペーサを介して対抗配置されており、透明導電性フィルムに電流を流して透明導電体付きガラスにおける電圧を測定するような構造になっている。
【0004】
前記透明導電性フィルムとしては、押圧操作時の耐擦傷性や打点特性に耐えられるように、透明フィルム基材の一方の面に透明導電性薄膜を設けた導電性フィルムに、さらに粘着剤層を介して、前記透明フィルム基材の他方の面には外表層にハードコート層を有する透明基体を貼りあわせた透明導電性積層フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0005】
前記透明導電性フィルムは、タッチパネルなどの電子機器に組み込まれる際には、透明導電性膜の端部に銀ペーストからなるリードが設けられる。前記リードは、導電性ペーストを100〜150℃程度で1〜2時間程度、加熱して硬化処理する方法などにより形成される。しかし、透明導電性フィルムに用いられる透明フィルム基材には、ポリエチレンテレフタレート等の熱収縮性の透明樹脂フィルムが用いられるため、前記加熱硬化処理によって、透明導電性フィルムにカールが発生する問題がある。特に、ハードコート層を有する透明基体を貼りあわせた透明導電性積層フィルムではカールに係る問題が大きい。当該カールの問題に対して、ハードコート層を薄くしたり、透明フィルム基材に低収縮性の素材を用いたりすることが提案されているが、この場合には、硬度不足等によりハードコート層としての機能を満足できなくなる。
【0006】
また、両面にハードコート層を形成した透明基体を、透明導電性積層フィルムに用いることが提案されている(特許文献2,3)。しかし、かかる構成により透明導電性積層フィルムのカールを抑制することができるが、近年、タッチパネルなどの電子機器は薄型化が進んでおり、透明導電性積層フィルムにも薄型化が求められており、前記構成の透明導電性積層フィルムは薄型化の観点からは好ましくない。
【0007】
また、透明導電性積層フィルムにリードを設ける前に、予め加熱処理を施すことにより、透明導電性積層フィルムのカールを抑制することが可能である。しかし、透明導電性積層フィルムに、さらに加熱処理を施すことは、それだけ製造工程が多くなり、製造コスト上好ましくない。
【0008】
一方、透明導電性積層フィルムに用いられる透明フィルム基材には、ポリエチレンテレフタレート等の熱収縮性の透明樹脂フィルムが用いられる場合には、透明フィルム基材中に含まれている低分子成分(オリゴマー)が加熱により析出し、透明導電性フィルムが白化する問題がある。かかる問題に対しては、透明フィルム基材にオリゴマー防止層を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2667686号明細書
【特許文献2】特開平7−013695号公報
【特許文献3】特開平8−148036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、透明導電性積層フィルム等の第二積層フィルム(熱収縮性を有する第一および第二透明樹脂フィルムを、粘着剤層を介して積層してもの)に用いられる、第一透明樹脂フィルムおよび硬化層を有する第一積層フィルムの製造方法であって、当該第一積層フィルムが適用された第二積層フィルムに加熱処理工程が施された場合にもカールを抑制でき、かつ、オリゴマーの析出を防止できる、第一積層フィルムの簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明は、前記第一積層フィルムから、加熱処理工程が施された場合にもカールを抑制でき、かつ、オリゴマーの析出を防止できる、第二積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の製造方法より前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、熱収縮性を有する第一透明樹脂フィルムの片面または両面に硬化層を形成する第一積層フィルムの製造方法であって、
前記第一積層フィルムは、前記第一積層フィルムの硬化層に、熱収縮性を有する第二透明樹脂フィルムを、粘着剤層を介して積層して第二積層フィルムを形成するために用いられるものであり、
前記硬化層の厚さは1μm未満であり、
前記硬化層の形成は、
活性エネルギー線硬化型化合物、光重合開始剤(但し、加熱減量試験における10%加熱減量温度が170℃以上である)および溶媒を含有する組成物溶液を、第一透明樹脂フィルムの片面または両面に、塗工して塗工層を形成する塗工工程(1)と、
前記塗工工程(1)の後に、前記塗工層に含まれる溶媒の乾燥を、得られる第一積層フィルムを150℃で1時間加熱した場合の熱収縮率が0.5%以下となるような温度条件下に制御して行なう熱処理工程(2)と、
前記熱処理工程(2)の後に、塗工層を硬化させる硬化工程(3)を含むことを特徴とする第一積層フィルムの製造方法、に関する。
【0014】
前記第一積層フィルムの製造方法において、前記光重合開始剤は、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−メチル−プロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチループロパン−1−オン、および/または2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンであることが好ましい。
【0015】
前記第一積層フィルムの製造方法において、前記光重合開始剤の使用量が、活性エネルギー線硬化型化合物100重量部に対して、0.1重量部以上であることが好ましい。
【0016】
前記第一積層フィルムの製造方法において、熱処理工程(2)の温度は、125〜165℃に設定することができる。
【0017】
前記第一積層フィルムの製造方法において、第一積層フィルムの一方の片面の最外層に硬化層、他の片面の最外層には機能層を有することができる。機能層としてはハードコート層が好適である。
【0018】
また本発明は、前記製造方法により第一積層フィルムを得た後、
当該第一積層フィルムの硬化層に、熱収縮性を有する第二透明樹脂フィルムを、粘着剤層を介して貼り合せる積層工程(4)をさらに含むことを特徴とする第二積層フィルムの製造方法、に関する。
【0019】
前記第二積層フィルムの製造方法において、前記第二透明樹脂フィルムは、前記硬化層に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜を有するものを用いることができる。
【0020】
前記第二積層フィルムの製造方法において、前記透明導電性膜が、金属酸化物により形成された非晶質透明導電性薄膜の場合には、積層工程(4)の後に、前記非晶質透明導電性薄膜を加熱により結晶質化する結晶化工程(5)をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第一積層フィルムは熱収縮性を有する第一透明樹脂フィルムおよび硬化層を有している。当該硬化層は活性エネルギー線硬化型化合物、重合開示剤および溶媒を含有する組成物溶液から形成されるものであり、オリゴマー防止層として機能する。従って、第一積層フィルムの硬化層に、第二透明樹脂フィルムを、粘着剤層を介して積層して得られる第二積層フィルムにおいても、オリゴマーの析出を防止することができる。
【0022】
また、前記硬化層の形成は、塗工工程(1)により塗工層を形成した後に、当該塗工層に所定の熱処理工程(2)が施される。前記熱処理工程(2)は、塗工層に含まれる溶媒の乾燥とともに、第一透明樹脂フィルムに対しても熱処理が施される。熱処理は、得られる第一積層フィルムを150℃で1時間加熱した場合の熱収縮率(MD方向とTD方向のいずれも)が0.5%以下となるような温度条件下に制御して行なわれる。即ち、第一積層フィルムは、既に熱処理が施された状態で得られるため、第一積層フィルムにさらに熱処理が施されたとしても、熱収縮は殆ど生ぜず、第一積層フィルムのカールを抑制することができる。従って、第一積層フィルムを適用して得られる第二積層フィルムに加熱処理工程が施された場合にもカールを抑制できる。特に、第二積層フィルムに用いる第二透明樹脂フィルムについても、第一積層フィルムと同程度の熱収縮率になるように制御(予め熱処理を施して、第一積層フィルムと第二透明樹脂フィルムの熱収縮率を略同じになるように制御)されている場合には、第二積層フィルムのカール防止に有効である。また、熱処理工程(2)では、溶媒の乾燥とともに、第一積層フィルムの熱処理を同時に行なっているため、従来、第一積層フィルムまたは第二積層フィルムの製造後に施されていた熱処理の工程を省略することができ、本発明の製造方法は、低コストで、しかも簡便な製造方法である。
【0023】
前記熱処理工程(2)の温度条件は、第一積層フィルムを150℃で1時間加熱した場合の熱収縮率が0.5%以下となるような温度条件下であるため、単に溶媒を乾燥する温度条件よりも厳しい温度条件が設定される。一方、熱処理工程(2)の温度条件が厳しいため、熱処理工程(2)では、塗工層の表層部に存在する光重合開始剤の揮発する傾向にあり、前記揮発が著しく大きくなると、塗工層を硬化させる硬化工程(3)において、表層部での反応度が十分でなくなり、硬化層の耐擦傷性が悪くなる。このような場合には、例えば、第一積層フィルムを第二透明樹脂フィルムに貼り合せるために搬送する際等に第一積層フィルムの硬化層に傷が入り外観不良の原因になる。そこで本発明では、塗工工程(1)に用いる組成物溶液には、光重合開始剤として、加熱減量試験における10%加熱減量温度が170℃以上である光重合開始剤を用いている。当該光重合開始剤は、塗工層の表層部からの揮発が著しく低く、熱処理工程(2)を経た後においても、硬化工程(3)において反応度を得ることができ、耐擦傷性を満足できる硬化層を形成できる。なお、塗工層の表層部からの光重合開始剤の揮発分を補うために、多量の光重合開始剤を用いることも考えられるが、本発明の光重合開始剤以外の光重合開始剤では、熱処理工程(2)において、塗工層の表層部からの揮発が多く、耐擦傷性を満足できる硬化層を形成するのは困難である。
【0024】
また上記のように、本発明では、耐擦傷性を満足できる硬化層を形成できることから、硬化層の厚さは1μm未満で形成することができ、第一積層フィルム、さらには第一積層フィルムが適用される第二積層フィルムの薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一積層フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2A】本発明の第二積層フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図2B】本発明の第二積層フィルムの実施形態の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の第一積層フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第一および第二積層フィルムとその製造方法に係る実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本発明の第一積層フィルム1の一例を示す断面図である。図1の第一積層フィルム1は、第一透明樹脂フィルム10の片面に硬化層11を有する場合である。硬化層11は、第一透明樹脂フィルム10の両面に設けることもできる。また、図1では、第一透明樹脂フィルム10の硬化層11を有しない方の片面に、機能層(例えば、ハードコート層)12を有する場合が例示されている。なお、第一積層フィルムに機能層を形成する場合には、第一積層フィルムの一方の片面の最外層に硬化層、他の片面の最外層に機能層を有するように機能層が形成される。第一透明樹脂フィルム10の両面に硬化層11を有する場合には、一方の硬化層11に機能層12が形成される。
【0027】
図2は、本発明の第二積層フィルム2の一例を示す断面図である。図2Aの第一積層フィルム2(A)は、図1に示す第一積層フィルム1の硬化層11に、第二透明樹脂フィルム20を、粘着剤層3を介して積層した場合である。図2Bの第二積層フィルム2(B)は、図2Aにおいて、第二透明樹脂フィルム20の前記硬化層11に貼り合せない他方の片面に、アンダーコート層21を介して、透明導電性膜22を有する場合であり、図2Bの第二積層フィルム2(B)は透明導電性フィルムとして用いることができる。なお、図2Bでは、アンダーコート層21を介して、透明導電性膜22が設けられているが、透明導電性膜22は、アンダーコート層21を介することなく、直接、第二透明樹脂フィルム20に設けることができる。
【0028】
図3は、本発明の第一積層フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。図3に記載の第一積層フィルム1は、第一透明樹脂フィルム10の片面に、硬化層11を形成した場合である。図3では、まず、第一透明樹脂フィルム10の片面に、塗工工程(1)により、組成物溶液を塗工して塗工層11´を形成している。次いで、熱処理工程(2)により、前記塗工層11´に含まれる溶媒を乾燥した塗工層11´´を形成している。熱処理工程(2)は、得られる第一積層フィルム1が所定の熱収縮率0.5%以下を満足するような温度条件下で行われる。次いで、硬化工程(3)により、塗工層11´´を硬化させて、硬化層11を形成している。図3では示していないが、積層工程(4)により、得られた第一積層フィルム1の硬化層11に、第二透明樹脂フィルム20(または第二透明樹脂フィルムに透明導電性膜22等が設けられている透明導電性フィルム)を、粘着剤層3を介して積層して第二積層フィルム2(A)、(B)を製造することができる。なお、図3では、機能層12を形成する工程については記載していないが、機能層の形成工程は、塗工工程(1)を施す前の第一透明樹脂フィルム10に施してもよく、得られた第一積層フィルム1または第二積層フィルム2(A)、(B)に施してもよい。
【0029】
また、図示はしていないが、図3において、図2Bに示す第二積層フィルム2(B)を製造した場合において、当該第二積層フィルム2(B)の透明導電性膜22が、金属酸化物により形成された非晶質透明導電性薄膜の場合には、積層工程(4)の後に、さらに、前記非晶質透明導電性薄膜を加熱により結晶質化する結晶化工程(5)を設けることができる。
【0030】
まず、本発明の第一積層フィルム1について説明する。第一積層フィルム1は、熱収縮性を有する第一透明樹脂フィルム10および硬化層11を有する。
【0031】
熱収縮性を有する第一透明樹脂フィルム10としては、150℃程度の温度で約1時間の加熱により収縮するプラスチックフィルムが用いられる。例えば、熱収縮性を有する樹脂フィルムとしては、少なくとも一方向に延伸処理されたものがあげられる。延伸処理は特に限定されることはなく、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸等の各種の延伸処理があげられる。第一透明樹脂フィルム10としては、機械的な強度の点からは二軸延伸処理された樹脂フィルムが好ましい。
【0032】
前記熱収縮性を有する樹脂フィルムの材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料があげられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリエーテルスルホン系樹脂である。
【0033】
また、特開2001−343529号公報(WO10/37007)に記載の、例えば、側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換及び/又は非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物が挙げられる。具体的には、イソブチレン及びN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物を、前記樹脂フィルムの材料として用いることができる。
【0034】
前記第一透明樹脂フィルム10は、通常、1層のフィルムにより形成されている。第一透明樹脂フィルム10の厚さは、通常、30〜250μmであるのが好ましく、より好ましくは45〜200μmである。
【0035】
硬化層11は、第一透明樹脂フィルム10の片面または両面に形成される。硬化層11は、第一透明樹脂フィルム10中の移行成分、例えば、ポリエステルフィルム中の移行成分であるポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する等の機能を有する。当該硬化層11は、活性エネルギー線硬化型化合物、光重合開始剤(但し、加熱減量試験における10%加熱減量温度が170℃以上である)および溶媒を含有する組成物溶液から形成される。
【0036】
また、硬化層11の厚さは1μm未満である。前記組成物溶液中の光重合開始剤は、熱処理工程(2)においても、塗工層の表層からの揮発が少なく、硬化層が薄い場合にも耐擦傷性を満足することができ、オリゴマー移行防止機能を付与することができる。硬化層11の厚さは800nm以下であっても、さらには600nm以下であっても、硬化層に耐擦傷性、オリゴマー移行防止機能を付与することができる。なお、硬化層11に、十分な耐擦傷性とオリゴマー移行機能を付与するには、硬化層11の厚さは120nm以上にすることが好ましい。
【0037】
活性エネルギー線硬化型化合物としては、分子中に少なくとも一つの重合性二重結合を有する官能基を有し、樹脂層を形成できる材料が用いられる。重合性二重結合を有する官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等があげられる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味し、本発明では(メタ)とは同様の意味である。
【0038】
活性エネルギー線硬化型化合物としては、前記重合性二重結合を有する官能基を有する、活性エネルギー線硬化型樹脂があげられる。例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
また、活性エネルギー線硬化型化合物としては、前記活性エネルギー線硬化型樹脂の他に、分子中に少なくとも一つの重合性二重結合を有する官能基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。反応性希釈剤としては、例えば、エチレンオキサイド変性フェノールの(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノールの(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、2−エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートがあげられる。また、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアリルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;さらには三官能以上の(メタ)アクリレート、があげられる。その他、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸の(メタ)アクリレート等もあげられる。反応性希釈剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
また、硬化層を形成する組成物溶液には、硬化層の硬度上昇とカール抑制のために前記活性エネルギー線硬化型化合物の他に、無機材料(無機酸化物粒子)を含有することができる。無機酸化物粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、マイカ、等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
無機酸化物粒子は、重量平均粒径が1nm〜200nmの範囲である、いわゆるナノ粒子であることが好ましい。前記重量平均粒径は、より好ましくは、1nm〜100nmの範囲である。なお無機酸化物粒子の重量平均粒径は、コールターカウント法により、微粒子の重量平均粒径を測定した。具体的には、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、微粒子が細孔を通過する際の微粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、微粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出した。
【0042】
前記無機酸化物粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物と結合(表面修飾)されているものを用いることができる。前記重合性不飽和基は、活性エネルギー線硬化型化合物と反応硬化することで、硬化層の硬度を向上させる。前記重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基が好ましい。また、前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物あるいは加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、光感応性基を有するものであることも好ましい。
【0043】
前記無機酸化物粒子は、活性エネルギー線硬化型化合物100重量部に対して、好ましくは100〜200重量部の範囲である。前記配合量を100重量部以上とすることで、カールおよび折れの発生を、より効果的に防止でき、200重量部以下とすることで、耐擦傷性や鉛筆硬度を高いものとすることができる。前記配合量は、前記(A)成分100重量部に対し、より好ましくは、100〜150重量部の範囲である。
【0044】
前記光重合開始剤としては、加熱減量試験における10%加熱減量温度が170℃以上を有するものが用いられる。前記光重合開始剤は、加熱減量試験における10%加熱減量温度は、190℃以上を有するものが好ましい。前記光重合開始剤に係る物性は、加熱減量試験の昇温170℃での加熱減量(加熱減少率)が10%以下であることが好ましいとも言える。前記光重合開始剤は、加熱減量試験の昇温170℃での加熱減量が、5%であることがより好ましく、さらには2%以下であることが好ましい。
【0045】
当該光重合開示剤を用いることで、熱処理工程(2)において、硬化層の表層から光重合開始剤が揮発するのを防ぐことができる結果、硬化工程(3)で硬化層が十分な反応度を得ることができ、硬化層に十分なオリゴマー移行防止機能を付与することができる。当該光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−メチル−プロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチループロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を用いることができる。また、当該光重合開始剤の使用量は、硬化工程(3)にて十分な反応度を得るには、活性エネルギー線硬化型化合物100重量部に対して0.1重量部以上であるのが好ましい。前記光重合開始剤の使用量は、0.3重量部以上であるのが好ましく、さらには0.4重量部以上であるのが好ましい。なお、前記光重合開始剤の使用量は、硬度低下の観点から、10重量部以下が好ましく、さらには7重量部以下とするのが好ましい。
【0046】
組成物溶液に用いられる溶媒としては、活性エネルギー線硬化型化合物等を溶解できるものが選択される。溶媒の具体例としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−へキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン等のケトン系;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル系;アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセチルアセトン系;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロへキサノール等のアルコール系;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系等の各種溶媒を用いることができる。これら溶媒は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物溶液の濃度は、通常、1〜60重量%であり、好ましくは2〜10重量%である。
【0047】
硬化層11の形成にあたり、まず、塗工工程(1)により、第一透明樹脂フィルム10の片面又は両面に、組成物溶液を塗工して塗工層を形成する。塗工法としては、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。塗工層の形成は、最終的に得られる硬化層11の厚さが1μm未満になるように行われる。
【0048】
次いで、熱処理工程(2)により、前記塗工層に含まれる溶媒の乾燥を行なう。溶媒の乾燥は、得られる第一積層フィルム1を150℃で1時間加熱した場合の熱収縮率が0.5%以下となるような温度条件下に制御して行なう。かかる熱処理工程(2)により、溶媒の乾燥とともに、得られる第一積層フィルム1に対して熱収縮を予め生じさせることにより、得られる第一積層フィルム1にカールが発生することを低減することができる。前記熱処理工程(2)の温度は、第一透明樹脂フィルム10の種類、硬化層11を形成する組成物溶液の種類により適宜設定されるが、例えば、125〜165℃の温度範囲であることが好ましい。
【0049】
次いで、硬化工程(3)により、熱処理工程(2)の施された塗工層を硬化させる。硬化手段は、通常、紫外線を照射することにより行なわれる。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。紫外線の照射条件は、前記塗工層を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線照射は、紫外線波長365nmでの積算光量で50〜500mJ/cmが好ましい。照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化がより十分となり、形成される硬化層11の硬度もより十分なものとなる。また、500mJ/cm以下であれば、形成される硬化層11の着色を防止することができる。
【0050】
また必要に応じて、第一積層フィルム1は機能層(ハードコート層)12を設けることができる。機能層は、前述のように、前記第一透明樹脂フィルム10の一方の片面の最外層に硬化層11を有し、他の片面の最外層が機能層を有するように設けられる。
【0051】
機能層12(但し、硬化層を除く)としては、例えば、外表面の保護を目的としたハードコート層を設けることができる。ハードコート層の形成材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。ハードコート層の厚さとしては、0.1〜30μmが好ましい。厚さを0.1μm以上とすることが、硬度を付与するうえで好ましい。一方、厚さが30μmを超えると、ハードコート層にクラックが発生したり、第一積層フィルム1全体にカールが発生するおそれがある。
【0052】
また、前記機能層12としては、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることができる。また前記ハードコート層上に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1〜30μmが好ましい。反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止層は複数層を設けることができる。
【0053】
本発明の第二積層フィルム2は、前記第一積層フィルム1の硬化層11に、熱収縮性を有する第二透明樹脂フィルム20を、粘着剤層3を介して積層することで形成することができる。
【0054】
第二透明樹脂フィルム20としては、前記第一透明樹脂フィルム10と同様の熱収縮性を有する樹脂フィルムを例示できる。第二透明樹脂フィルム20は、第一透明樹脂フィルム10と同じ材料を用いることができる。第二透明樹脂フィルム20についても、第一積層フィルムと第二透明樹脂フィルムの熱収縮率を略同じになるように予め熱処理を施すことができる。前記第二透明樹脂フィルム20の厚みは、通常、10〜300μmであり、好ましくは10〜200μmである。
【0055】
第二透明樹脂フィルム20は、前記硬化層11に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜22を設けることができる。
【0056】
第二透明樹脂フィルム20に透明導電性膜22を設けて透明導電性フィルムを作成する場合には、第二透明樹脂フィルム20の厚さは10〜40μmであることが好ましく、20〜30μmであることがより好ましい。透明導電性フィルムに用いる第二透明樹脂フィルム20の厚みが10μm未満であると、第二透明樹脂フィルム20の機械的強度が不足し、この第二透明樹脂フィルム20をロール状にして、透明導電性膜22を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが40μmを超えると、透明導電性膜22の製膜加工において第二透明樹脂フィルム20の投入量を低減させ、またガスや水分の除去工程に弊害を生じ、生産性を損なうおそれがある。また、透明導電性積層フィルムの薄型化が困難となる。
【0057】
前記第二透明樹脂フィルム10には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電性膜22またはアンダーコート層21の前記第二透明樹脂フィルム20に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電性膜22またはアンダーコート層21を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0058】
透明導電性膜22の構成材料としては特に限定されず、例えば酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。透明導電性膜22として、前記金属酸化物により形成する場合には、前記材料中の酸化スズを制御する(所定量となるように含有させる)ことにより、透明導電性膜22を非晶質にすることができる。非晶質透明導電性膜を形成する場合、当該金属酸化物は、酸化インジウム90〜99重量%および酸化スズ1〜10重量%を含有することが好ましい。さらには、酸化インジウム95〜98重量%および酸化スズ2〜5重量%を含有することが好ましい。なお、透明導電性膜22を形成した後、必要に応じて、100〜150℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。
【0059】
また、前記非晶質透明導電性薄膜の結晶質化は、本発明の第二積層フィルムを形成した後に、結晶化工程(5)として加熱処理を施すことにより行うことができる。結晶化工程(5)の加熱温度は、前記アニール処理と同様の温度(100〜150℃)を採用することができる。
【0060】
なお、本発明における「非晶質」とは、電界放出型透過型電子顕微鏡(FE−TEM)により、透明導電性薄膜を表面観察した際に、当該透明導電性薄膜の表面全体において、多角形又は長円形状の結晶が占める面積割合が50%以下(好ましくは0〜30%)であることをいう。
【0061】
透明導電性膜22の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さ10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。厚さが15nm未満であると表面電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、35nmを超えると透明性の低下などをきたしてしまう。
【0062】
透明導電性膜22の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0063】
アンダーコート層21は、無機物、有機物、または無機物と有機物との混合物により形成することができる。アンダーコート層21は一層または2層以上の複数層で形成することができ、複数層の場合には、これらの各層を組み合わせることができる。
【0064】
例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は光の屈折率である〕があげられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウム100重量部に対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化スズを0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0065】
無機物により形成されたアンダーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスとして、またはウェット法(塗工法)などにより形成できる。アンダーコート層を形成する無機物としては、前述の通り、SiOが好ましい。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO2膜を形成することができる。
【0066】
また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0067】
アンダーコート層21の厚さは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記第二透明樹脂フィルム20からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、アンダーコート層21を2層以上設ける場合、各層の厚さは、5〜250nm程度であり、好ましくは10〜250nmである。
【0068】
粘着剤層3としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0069】
粘着剤層3の構成材料である粘着剤の種類によっては、適当な粘着用下塗り剤を用いることで投錨力を向上させることが可能なものがある。従って、そのような粘着剤を用いる場合には、粘着用下塗り剤を用いることが好ましい。粘着用下塗り剤は、通常、第二透明樹脂フィルム20の側に設けられる。
【0070】
前記粘着用下塗り剤としては、粘着剤の投錨力を向上できる層であれば特に制限はない。具体的には、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤、同一分子内にチタンを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するチタネート系カップリング剤、及び同一分子内にアルミニウムを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するアルミネート系カップリング剤等のいわゆるカップリング剤、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エステルウレタン系樹脂等の有機反応性基を有する樹脂を用いることができる。工業的に取扱い易いという観点からは、シラン系カップリング剤を含有する層が特に好ましい。
【0071】
また、前記粘着剤層3には、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また、粘着剤層3には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層3とすることもできる。
【0072】
なお、前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、酸化カルシウム、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性の無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子など適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
【0073】
前記粘着剤層3は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた粘着剤溶液(固形分濃度:10〜50重量%程度)から形成される。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
【0074】
粘着剤層3の形成方法としては、特に制限されず、粘着剤(溶液)を塗工し乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型フィルムにより転写する方法等があげられる。塗工法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
【0075】
第一透明樹脂フィルム10の硬化層11と第二透明樹脂フィルム20の貼り合わせは、第二透明樹脂フィルム20側に前記の粘着剤層3を設けておき、これに前記第一積層フィルム1の硬化層11側を貼り合わせるようにしてもよいし、逆に第一積層フィルム1の硬化層11側に前記の粘着剤層3を設けておき、これに第二透明樹脂フィルム20を貼り合わせるようにしてもよい。
【0076】
前記粘着剤層3は、第一積層フィルムと第二透明樹脂フィルム20(透明導電性フィルムの場合を含む)を接着した後に得られる第二積層フィルムにおいて、そのクッション効果により、例えば、第二透明樹脂フィルム20の一方の面に設けられた透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしての打点特性、いわゆるペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させる機能を有する。この機能をより良く発揮させる観点から、粘着剤層3の弾性係数を1〜100N/cmの範囲、厚さを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。前記厚さであると上記効果が十分発揮され、第二透明樹脂フィルム20と第一積層フィルム1の硬化層11との密着力も十分である。上記範囲よりも薄いと上記耐久性や密着性が十分確保できず、また上記範囲よりも厚いと透明性などの外観に不具合が発生してしまうおそれがある。
【0077】
前記の弾性係数が1N/cm未満であると、粘着剤層3は非弾性となるため、加圧により容易に変形して第二透明樹脂フィルム20、さらには第二透明樹脂フィルム20に設けられる透明導電性膜22に凹凸を生じさせる。また、加工切断面からの粘着剤のはみ出しなどが生じやすくなり、そのうえ透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしての打点特性の向上効果が低減する。一方、弾性係数が100N/cmを超えると、粘着剤層3が硬くなり、そのクッション効果が期待できなくなるため、透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。
【0078】
また、粘着剤層3の厚さが1μm未満となると、そのクッション効果が期待できないため、透明導電性膜22の耐擦傷性やタッチパネル用透明導電性フィルムとしてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。その一方、厚くしすぎると、透明性を損なったり、粘着剤層3の形成や第一積層フィルム1の硬化層11と第二透明樹脂フィルム20の貼り合わせ作業性、更にコストの面でも好結果を得にくい。
【0079】
この様な粘着剤層3を介して貼り合わされる第二積層フィルム2(B)は、良好な機械的強度を付与し、ペン入力耐久性および面圧耐久性の他に、とくに、カールなどの発生防止に寄与するものである。
【0080】
前記粘着剤3は、前記貼り合せに用いられるまで、離型フィルムで保護することができる。離型フィルムとしては、粘着剤層3と接着する面に移行防止層及び/又は離型層が積層されたポリエステルフィルム等を用いるのが好ましい。
【0081】
前記離型フィルムの総厚は、30μm以上であることが好ましく、60〜100μmの範囲内であることがより好ましい。粘着剤層3の形成後、ロール状態にて保管する場合に、ロール間に入り込んだ異物等により発生することが想定される粘着剤層3の変形(打痕)を抑制する為である。
【0082】
前記移行防止層としては、ポリエステルフィルム中の移行成分、特に、ポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する為の適宜な材料にて形成することができる。移行防止層の形成材料として、無機物若しくは有機物、又はそれらの複合材料を用いることができる。移行防止層の厚さは、0.01〜20μmの範囲で適宜に設定することができる。移行防止層の形成方法としては特に限定されず、例えば、塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法等も用いることができる。
【0083】
前記離型層としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブテン等の適宜な剥離剤からなるものを形成することができる。離型層の厚さは、離型効果の点から適宜に設定することができる。一般には、柔軟性等の取り扱い性の点から、該厚さは20μm以下であることが好ましく、0.01〜10μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜5μmの範囲内であることが特に好ましい。離型層の形成方法としては特に制限されず、前記移行防止層の形成方法と同様の方法を採用することができる。
【0084】
前記塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法に於いては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂や前記樹脂に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、マイカ等を混合したものを用いることができる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法又は電気メッキ法を用いる場合、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト又はスズやこれらの合金等からなる金属酸化物、ヨウ化鋼等からなる他の金属化合物を用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
実施例1
(ハードコート層の形成)
ハードコート層の形成材料として、アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学(株)製のユニディック17−806)100重量部に、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(イルガキュア184,チバスペシャルティケミカルズ社製)5重量部を加えて、30重量%の濃度に希釈してなるトルエン溶液を調製した。
【0087】
このハードコート層の形成材料を、第一透明樹脂フィルムである、厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルの一方の面に塗工し、90℃で3分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmで紫外線照射を行ない、厚さ7μmのハードコート層を形成した。
【0088】
(第一積層フィルムの作成:硬化層の形成)
無機酸化物粒子と重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなるナノシリカ粒子を分散させた、活性エネルギー線硬化型化合物を含む硬化層形成材料(JSR(株)製、商品名「オプスターZ7540」,固形分:56重量%,溶媒:酢酸ブチル/メチルエチルケトン(MEK)=76/24(重量比))を準備した。前記硬化層形成材料は、活性エネルギー線硬化型化合物として、ジペンタエリスリトールおよびイソホロンジイソシアネート系ポリウレタン、表面を有機分子により修飾したシリカ微粒子(重量平均粒径100nm以下)を、前者:後者=2:3の重量比で含有する。この硬化層形成材料の活性エネルギー線硬化型化合物の固形分100重量部あたり、光重合開始剤として、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907,チバスペシャルティケミカルズ社製,加熱減量試験における10%加熱減量温度:202℃)5重量部を混合した。この混合物に固形分濃度が10重量%、酢酸ブチル/メチルエチルケトン=2/1(重量比)になるように酢酸ブチルおよびメチルエチルケトンを加えて希釈し、硬化層形成材料を調製した。
【0089】
前記第一透明樹脂フィルムのハードコート層が形成された面とは反対側の面に、前記硬化層形成材料をコンマコーターを用いて塗工し、塗工層を形成した。次いで、145℃で1分間加熱し、前記塗工層を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmで紫外線照射を行ない、厚さ300nmの硬化層を形成して、ハードコート層を有する第一積層フィルムを得た。
【0090】
(透明導電性フィルムの作成)
第二透明樹脂フィルムである、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に、アルゴンガス80%と酸素ガス20%とからなる0.4Paの雰囲気中で、ポリエチレンテレフタレートフィルムの温度が100℃の条件下で、放電出力:6.35W/cm、酸化インジウム97重量%、酸化スズ3重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚さ22nmのITO膜を形成して、透明導電性フィルムを得た。上記ITO膜は、非晶質であった。
【0091】
(第二積層フィルムの作成)
上記第一積層フィルムの硬化層に粘着剤層を形成し、当該粘着剤層に、透明導電性フィルムの透明導電性膜を形成していない側の面を貼り合せて、第二積層フィルムを作成した。前記粘着剤層は、厚さ20μm、弾性係数10N/cmの透明なアクリル系の粘着剤層を形成した。粘着剤層組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100重量部に、イソシアネート系架橋剤を1重量部配合してなるものを用いた。
【0092】
得られた第二積層フィルムに対して、140℃で90分間の加熱処理を施して、非晶質のITO膜を結晶化した。
【0093】
実施例2
実施例1の第一積層フィルムの作成(硬化層の形成)において、光重合開始剤として、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−メチル−プロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチループロパン−1−オン(イルガキュア127,チバスペシャルティケミカルズ社製,加熱減量試験における10%加熱減量温度:263℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、第二積層フィルムを得た。また、実施例1と同様に結晶化処理を施した。
【0094】
比較例1
実施例1の第一積層フィルムの作成(硬化層の形成)において、光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(イルガキュア184,チバスペシャルティケミカルズ社製,加熱減量試験における10%加熱減量温度:154℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、第二積層フィルムを得た。また、実施例1と同様に結晶化処理を施した。
【0095】
参考例1
実施例1の第一積層フィルムの作成(硬化層の形成)において、光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(イルガキュア184,チバスペシャルティケミカルズ社製,加熱減量試験における10%加熱減量温度:154℃)を用いたこと、塗工層の乾燥温度を80℃に変えたこと、紫外線照射後に150℃で1分間の加熱処理をさらに行なったこと以外は、実施例1と同様にして、第二積層フィルムを得た。また、実施例1と同様に結晶化処理を施した。
【0096】
実施例および比較例で得られた、第一積層フィルム、結晶化処理が施された第二積層フィルム(透明導電性積層フィルム)について、下記評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1には下記方法で評価した光重合開始剤の加熱減量、第一積層フィルムの熱収縮率(150℃で1時間加熱)について記載する。
【0097】
<加熱減量試験>
試料(光重合開始剤)は水などの揮発性不純物を取り除くために、試験前に100℃で5分間の前処理を施した。その後、試料(光重合開始剤)約10mgを熱重量分析装置(セイコーインスツルメンツ(株)製,Tg/DTA6200)で窒素気流中における昇温速度5℃/分にて加熱処理して、下記式から算出される加熱減量M(%)が10%になる温度を測定した。昇温170℃での加熱減量Mは、170℃時点の試料の重量を測定し、下記式から170℃における加熱減量M(%)を算出した。
加熱処理前の試料の重量(M0)、加熱処理後の試料の重量(M1)。
M(%)={(M0−M1)/M0}×100
【0098】
<熱収縮率>
ハードコート層を有する第一積層フィルムを、10cm四方に切り出し、初期状態の寸法(初期寸法)と、150℃で1時間加熱処理した後の寸法(加熱後寸法)を測定し、これらの測定値から、下記式により、MD方向とTD方向の熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)={(初期寸法―加熱後寸法)/初期寸法}×100
【0099】
<硬化層表面の耐擦傷性>
スチールウールに250g/25mmφの荷重をかけ、硬化層表面を10cmの長さで10往復した後、硬化層表面の状態を目視により観察し下記基準で評価した。
○:全面に薄い傷が確認できる。
×:全面に著しい傷が確認できる。
【0100】
<カール>
結晶化処理が施された第二積層フィルムを10cm四方に切り出し、カールが凸になっている面が下側になるように水平面上に置き、角の4点のうちで最も水平面から長い点の距離(mm)を測定した。ITOの形成面を上にした凹になる場合をプラス、ハードコート層の形成面を上にして凹になる場合をマイナスとして標記する。
【0101】
【表1】

【0102】
表1に示すように、実施例の第一積層フィルムは、硬化層の耐擦傷性が良好であり、かる、第二積層フィルムを形成した場合にもカールは認めらない。一方、比較例1の硬化層は、その形成材料に用いている光重合開始剤が本発明の熱減少率を満足していないため、薄層の塗工層に対してかつ高温の熱処理温度が施された結果、耐擦傷性を満足できていない。参考例1の硬化層は、硬化層の耐擦傷性が良好であり、かる、第二積層フィルムを形成した場合にもカールは認めらないが、硬化層の形成後にさらに、熱処理工程が施されており、製造上有利でない。
【符号の説明】
【0103】
1 第一積層フィルム
10 第一透明樹脂フィルム
11 硬化層
12 機能層(ハードコート層)
2 第二積層フィルム
20 第二透明樹脂フィルム
21 アンダーコート層
22 透明導電性膜
3 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性を有する第一透明樹脂フィルムの片面または両面に硬化層を形成する第一積層フィルムの製造方法であって、
前記第一積層フィルムは、前記第一積層フィルムの硬化層に、熱収縮性を有する第二透明樹脂フィルムを、粘着剤層を介して積層して第二積層フィルムを形成するために用いられるものであり、
前記硬化層の厚さは1μm未満であり、
前記硬化層の形成は、
活性エネルギー線硬化型化合物、光重合開始剤(但し、加熱減量試験における10%加熱減量温度が170℃以上である)および溶媒を含有する組成物溶液を、第一透明樹脂フィルムの片面または両面に、塗工して塗工層を形成する塗工工程(1)と、
前記塗工工程(1)の後に、前記塗工層に含まれる溶媒の乾燥を、得られる第一積層フィルムを150℃で1時間加熱した場合の熱収縮率が0.5%以下となるような温度条件下に制御して行なう熱処理工程(2)と、
前記熱処理工程(2)の後に、塗工層を硬化させる硬化工程(3)を含むことを特徴とする第一積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記光重合開始剤が、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−メチル−プロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチループロパン−1−オン、および/または2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンであることを特徴とする請求項1記載の第一積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記光重合開始剤の使用量が、活性エネルギー線硬化型化合物100重量部に対して、0.1重量部以上であることを特徴とする請求項1または2記載の第一積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
熱処理工程(2)の温度が、125〜165℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の第一積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
第一積層フィルムの一方の片面の最外層に硬化層、他の片面の最外層に機能層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の第一積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
機能層がハードコート層であることを特徴とする請求項5記載の第一積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により第一積層フィルムを得た後、
当該第一積層フィルムの硬化層に、熱収縮性を有する第二透明樹脂フィルムを、粘着剤層を介して貼り合せる積層工程(4)をさらに含むことを特徴とする第二積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第二透明樹脂フィルムは、前記硬化層に貼り合せない他方の片面に、直接またはアンダーコート層を介して、透明導電性膜を有することを特徴とする請求項7記載の第二積層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記透明導電性膜が、金属酸化物により形成された非晶質透明導電性薄膜であり、積層工程(4)の後に、前記非晶質透明導電性薄膜を加熱により結晶質化する結晶化工程(5)をさらに含むことを特徴とする請求項7または8記載の第二積層フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91163(P2012−91163A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210900(P2011−210900)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】