説明

積層フィルム

【課題】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム上にバインダー化合物と球状粒子を積層する際において、塗布ムラや塗布スジ等の外観欠点のない塗工外観の良好な積層フィルムおよびバックライトならびに太陽電池を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明は、以下の(1)〜(3)の3つの要件を満たす塗布層を有することを特徴とする積層フィルムである。
(1)基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面にバインダー化合物と球状粒子とを含有する塗布層であること。
(2)前記球状粒子の変動係数CVが15%以下であること。
(3)前記球状粒子の径小径粒子存在割合が1%以上であること。
また、本発明の太陽電池、およびバックライトは、それぞれ本発明の積層フィルムを用いて構成されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品あるいはディスプレイ等に使用する積層フィルムに関するものである。さらに詳しくは、ディスプレイ表面に配置する反射防止フィルムあるいは防眩フィルム等の積層フィルム、液晶ディスプレイ用バックライト等に組み込む反射フィルムあるいは光拡散フィルム等の積層フィルム、太陽電池バックシート用の積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムに、球状粒子を含有する塗布層を積層されたフィルムは多用途に広がっており、主に光学フィルムとされる分野では塗工スジ・塗工ムラ等の外観欠点の厳しい要求をされることが多い。
【0003】
液晶バックライト用積層フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルム上にバインダー樹脂と球状粒子から成る塗布層を積層した光拡散フィルム(特許文献1)、白色フィルム上に紫外線吸収バインダー樹脂と球状粒子からなる塗布層を積層した反射フィルム(特許文献2)等が知られている。
【0004】
防眩処理された反射防止フィルムでは、球状粒子とバインダー樹脂からなる塗布層において、その粒子径や塗布厚みを最適化することで該塗布層の外観欠点を軽減したものが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2002−99220号公報
【特許文献2】国際公開2007/148544
【特許文献3】特開2007−249191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶バックライト用積層フィルムでは、外観欠点が輝度ムラとして現れ、ディスプレイの表示品位に影響されるため、外観欠点がないものが要求され、更に、防眩フィルム等ではディスプレイの最表面に用いられるため、更に高いレベルの外観品位が要求される。
【0006】
球状粒子とバインダー化合物から塗布層を形成する際には、粒子の分散状態の変動、部分的な膜厚の変動が生じ、塗布ムラや塗布スジ等の外観欠点が突発的に発生することが多い。
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム上に、バインダー化合物と球状粒子を積層する際において、従来とは異なる視点で球状粒子を工夫することにより、塗布ムラや塗布スジ等の外観欠点を低減させた積層フィルムおよびバックライトならびに太陽電池を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(3)の3つの要件を満たす塗布層を有することを特徴とする積層フィルムである。
(1)基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面にバインダー化合物と球状粒子とを含有する塗布層であること。
(2)前記球状粒子の変動係数CVが15%以下であること。
(3)前記球状粒子の小径粒子存在割合が1%以上であること。
【0009】
また、本発明の太陽電池、バックライトおよびディスプレイは、それぞれ本発明の積層フィルムを用いて構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基材熱可塑性樹脂フィルム少なくとも片面に特定の球状粒子を設けた積層フィルムとすることで、塗布ムラや塗布スジ等の外観欠点を低減することができる積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、前記課題、つまり、基材熱可塑性樹脂フィルムに積層する塗布層を構成する球状粒子を工夫することで、該塗布層の塗布ムラや塗布スジ等の外観欠点の少ない積層フィルム提供することについて鋭意検討したものである。
【0012】
その結果、基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、球状粒子を含有する塗布層を塗布する際に、該球状粒子の変動係数CVが15%未満の特定なものを用い、さらに比較的粒径の小さい球状粒子の存在割合に関して特定の条件のものを用いてみたところ、かかる課題を解決することを究明したものである。
【0013】
本発明に係る小径粒子径存在割合とは、球状粒子の体積平均粒子径×0.4から算出される粒子径以下の存在割合を示すものである。例えば、体積平均粒子径5μmの粒状粒子が1000個含有されるものであるとすると、小径粒子存在割合は、2μm以下の球状粒子が100個存在した場合、下記式の通り、小径粒子存在割合は10%となる。
・小径粒子存在割合(%) = (2μm以下の球状粒子個数:100/全体の個数:1000)×100=10。
【0014】
本発明に係る小粒径存在割合は、1%以上であることが好ましい。この小径粒子存在割合が、1%未満であると、塗料調整後の粒子分散性が低下し、塗工外観が悪化する場合がある。一方、上限は特に限定されるものではないが、10%を超えると、バックライト用積層フィルム用途
においては輝度が低下する場合がある。
【0015】
本発明に係る球状粒子は、その変動係数CVが15%以下であることが好ましい。ここで、変動係数CVとは、粒子径の標準偏差を体積平均粒子径で除した値である。この変動係数CVは、例えば後述する方法により測定される。該変動係数CVは、より好ましくは10%以下である。該変動係数CVが15%より大きい場合、バックライト用積層フィルム用途においては輝度が低下する場合がある。
【0016】
本発明にかかる球状粒子の体積平均粒子径としては、特に限定されるものではないが、0.05μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上、特に好ましくは3μm以上である。すなわち、該体積平均粒子径が0.05μmより小さい場合は、バックライト用積層フィルム用途においては、輝度が低下する場合があり、防眩フィルム用途においては、可視光の波長領域より小さいため、光の屈折が生じなくなり、防眩効果が得られない場合がある。逆に、該体積平均粒子径の上限は特に限定されるものではないが、100μmを超えると、ディスプレイ最表面に使用する用途での画像ボケや白濁等の問題を生じる可能性があるので、100μm以下に制御するのが好ましい。
【0017】
ここで、球状粒子の採取方法、体積平均粒子径、変動係数および径小径粒子存在割合の測定方法について説明する。
【0018】
(1)球状粒子の採取
積層フィルムの塗布層を鋭利な刃物で削り取り、積層フィルムから塗布層を採取し、有機溶剤を用いてバインダー化合物成分を抽出した。
【0019】
(2)球状粒子の体積平均粒子径、球状粒子の変動係数CV
前記(1)にて採取した球状粒子の体積平均粒子径及び変動係数CVの測定には、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置としてコールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)を用いた。
すなわち、粒子が細孔を通過する際の粒子体積に相当する電解液分の電気抵抗を測定することによって、粒子の数と体積を測定した。まず、微少量のサンプルを薄い界面活性剤水溶液に分散させ、次いでモニターの表示を見ながらアパチャー(検知部分の細孔)通過率が10〜20%となる量だけ指定電解液の容器に添加した後、通過粒子数が10万個になるまで粒子径の計測を続けて自動計算させ、体積平均粒子径、体積平均粒子径の標準偏差及び変動係数CVを求めた。変動係数CVの値は下記式により求めることができる。
・変動係数CV(%)= 体積平均粒子径の標準偏差(μm)×100/体積平均粒子径(μm)。
【0020】
(3)小径粒子存在割合
前記(1)にて採取した球状粒子をマルチイメージアナライザー(ベックマン・コールター社製)を用いた画像解析により、1000個の球状粒子を解析し、球状粒子の体積平均粒子径×0.4から算出される粒子径以下の球状粒子の個数をカウントした。
・小粒径存在割合(%)={(体積平均粒子径×0.4)μm以下の球状粒子個数/1000}×100。
【0021】
本発明に係る球状粒子の種類としては特に限定されるものではなく、有機系、無機系のいずれでも用いることができる。
【0022】
かかる有機系球状粒子としては、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミンのようなポリアミド樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を用いることができる。また、無機系球状粒子としては、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物等を用いることができる。
【0023】
しかし、一般に使用される樹脂バインダー化合物との分散性、塗布性および経済性等の点から、有機系球状粒子を使用するのが好ましい。
【0024】
これら有機系球状粒子の中でも、アクリル重合体、ポリスチレン重合体、アクリル系ビニルモノマーとスチレン系ビニルモノマーの共重合体が好ましく、特にアクリル系ビニルモノマーとスチレン系ビニルモノマーの共重合体は、2種の共重合割合を調整することで、屈折率を変更することができることから、本発明においては好適に使用することが出来る。
【0025】
本発明においては、該塗布層の塗布工程にて、溶剤中にて球状粒子を分散する必要があるため、耐溶剤性が必要なことから、球状粒子は架橋構造を有していることが好ましい。かかる架橋構造を持たない場合においては、塗布工程にて球状粒子が溶出してしまい、粒子形状、粒径が維持された塗布層を設けることができなくなる問題がある。
【0026】
かかる架橋構造を形成するためには、一分子内に複数の官能基を有するビニル化合物を使用して架橋構造を形成することが好ましく、特に本発明では一分子内に複数の官能基を有するビニル化合物として、二官能性アクリル系化合物、三官能アクリル系化合物、四官能以上の重合性アクリル系化合物のような多官能性アクリル系化合物を使用するのが好ましく採用される。
【0027】
本発明においては、「テクポリマー」(R)(積水化成品工業(株)製)を使用することができ、変動係数15%以下であれば、同SSXシリーズ等のメタクリル酸メチルとエチレングリコールジメタクリレートとの共重合体からなる球状粒子が最も好適に使用できる。
【0028】
本発明に係る塗布層中における球状粒子の含有量は、特に限定されず、また、粒子種や塗液中の分散性等にも依存するため一義的に限定することはできないが、塗布層全体に対して3重量%以上であることが好ましく、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。すなわち、3重量%より少ない場合は、外観欠点の問題はないが、バックライト用積層フィルム用途においては輝度が低下する場合がある。また、かかる球状粒子の含有量の上限は特に限定されるものではないが、300重量%を超えると、バックライト用途での輝度低下やディスプレイ最表面に使用する用途での画像ボケや白濁等の問題を生じる可能性がある。
【0029】
本発明に係る塗布層の厚みは、各種用途に合わせて選択することができ、特に限定されるものではないが、0.05μm以上であることが好ましい。該塗布層の厚みが0.05μm未満であると、球状粒子の脱落等の問題を生じる場合がある。塗布層の厚みは、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、該塗布層の厚みの上限は特に限定されるものではないが、100μmを超えると、乾燥ムラ、塗布ムラ等の問題を生じる可能性があり、経済的にも好ましくない。
【0030】
本発明に係るバインダー化合物としては、特に限定されないが、有機成分を主体とする樹脂が好ましく、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。これらのバインダー化合物の中でもポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルもしくはメタクリル樹脂が、耐熱性、粒子分散性、塗布性および光沢度等の点から好ましく使用される。
【0031】
本発明の積層フィルムは、反射防止フィルムや防眩フィルム等のディスプレイの最表面に使用される場合には、表面硬度や低反射率が要求されるため、前記バインダー化合物として、光重合性化合物、フッ素系化合物、ケイ素系化合物等の化合物等が好ましく使用される。たとえば、特開2007−249191号公報の段落〔0013〕〜〔0068〕に詳細に開示されているものを使用することができる。
【0032】
本発明の積層フィルムは、バックライト用途や太陽電池用途として使用すると、冷陰極管などのランプや太陽光、特に紫外線によって基材熱可塑性樹脂フィルムが劣化する場合(例えば黄変などの光学的劣化、あるいは低分子化する分解劣化など)があるので、基材熱可塑性樹脂フィルムに設ける塗布層を形成するバインダー樹脂中に本発明の効果を阻害しない範囲内で、紫外線吸収剤および/あるいは光安定剤を含有するのが好ましい。
【0033】
かかる紫外線吸収剤、光安定剤としては、無機系と有機系に大別されるが、含有する形態に関しては特に限定されるものではなく、かかる塗布層を形成する樹脂と混合する等の方法でも良く、かかる塗布層よりブリードアウトすることを防ぎたい場合は、例えば該塗布層を形成する樹脂と共重合する等の方法でも良い。
【0034】
かかる無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、などが一般的に知られており、中でも酸化チタン、酸化亜鉛および酸化セリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類がブリードアウトせず、経済性、耐光性、紫外線吸収性、光触媒活性に優れるという点から好ましく用いられる。かかる紫外線吸収剤は、必要に応じて数種類併用する場合もある。中でも酸化チタンあるいは酸化亜鉛が経済性、紫外線吸収性、光触媒活性という点で最も好ましい。
【0035】
また、かかる有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどが挙げられる。特にベンゾトリアゾールは構造内に窒素を含有するため難燃剤としての作用も有するため好適に用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの紫外線吸収剤は、紫外線を吸収するのみであり、紫外線照射により発生する有機ラジカルを捕捉することができないため、このラジカルにより連鎖的に基材熱可塑性樹脂フィルムが劣化することがある。これらのラジカル等を捕捉するために光安定化剤が好適に併用され、かかる光安定化剤としてはヒンダードアミン(HALS)系化合物が好ましく使用される。
【0036】
ここで、かかる有機系紫外線吸収剤および/または光安定化剤を固定させる共重合モノマーとしては、アクリル系、スチレン系などのビニル系モノマーが、汎用性に高く、経済的にも好ましい。かかる共重合モノマーのなかでも、スチレン系ビニルモノマーは芳香族環を有しているため、黄変しやすいため、耐光性という点では、アクリル系ビニルモノマーとの共重合が最も好ましく使用される。
【0037】
なお、前記ベンゾトリアゾールに反応性ビニルモノマーが置換されたものとして、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(商品名:RUVA−93);大塚化学(株)製)を使用することができ、また、ヒンダードアミン系化合物に反応性ビニルモノマーが置換されたものとして、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(「アデカスタブLA−82」;(株)ADEKA製)を使用することができる。
【0038】
本発明においては、かかる有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどの有機紫外線吸収剤を含有する樹脂、あるいはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系反応性モノマーを共重合した樹脂、さらにはこれらにヒンダードアミン(HALS)系反応性モノマーなどの光安定剤を含有及び/又は共重合した樹脂を、本発明の効果を阻害しない範囲内で使用することができる。
【0039】
これらの製造方法等については、特開2002−90515号公報の段落〔0019〕〜〔0039〕に詳細に開示されている。中でもアクリルモノマーと紫外線吸収剤の共重合物を有効成分として含むハルスハイブリッド(登録商標)((株)日本触媒製)などを使用することができる。
【0040】
本発明においては、水酸基を有するバインダー化合物を使用する場合には硬化剤を併用することが多い。かかる硬化剤としては、塗膜強度を高め、かつ基材熱可塑性樹脂フィルムとの密着性を高めるためには多官能化合物が好ましく使用され、バインダー化合物として水酸基を有するアクリル樹脂等と使用した場合には、ポリイソシアネート化合物を最も好ましく使用される。
【0041】
ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、耐光性及び耐候性という観点で脂肪族系が好ましく、中でもヘキサメチレン系およびイソホロン系が特に好ましい。市販品としては、ヘキサメチレン系としては“デスモジュール” (登録商標)N3200(住化バイエルウレタン(株)製)、“コロネート” (登録商標)HL(日本ポリウレタン(株)製)、“タケネート” (登録商標)D120N(三井武田ケミカル(株)製)、イソホロン系としては“タケネート” (登録商標)D140N(三井武田ケミカル(株)製)などを使用することができる。
【0042】
また、併用したバインダー化合物の水酸基価は、好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上、特に好ましくは35以上である。水酸基価が20未満であると、塗膜強度あるいは密着性が低下する場合がある。上限は特に限定されないが、80以上になると、外塗布外観が低下する場合があり、好ましくない。
【0043】
本発明の基材熱可塑性樹脂フィルムとしては、特に限定されたものではないが、セルロースアシレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリ(メタ)アクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニル等が挙げられ、偏光板用途等のディスプレイの最表面に用いられる場合では、上記各種フィルムの中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であるセルロースアシレートフィルムが好ましく使用される。
【0044】
また、バックライト用途や太陽電池バックシート用途として使用する場合には可視光線反射率が高ければ高い熱可塑性樹脂フィルムの方が好ましい。このためには内部に気泡及び/又は非相溶の粒子を含有する白色熱可塑性樹脂フィルムが好ましく使用される。これらの白色熱可塑性樹脂フィルムとしては限定されるものではないが、多孔質の未延伸、あるいは二軸延伸ポリプロピレンフィルム、多孔質の未延伸あるいは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリオレフィン系やポリエステル系が例として好ましく用いられ、特に成形性や生産性の点からポリエステル系が好ましく用いられる。
【0045】
これらの製造方法等については特開平8−262208号公報の段落〔0034〕〜〔0057〕、特開2002−90515号公報の段落〔0007〕〜〔0018〕、特開2002−138150号公報の段落〔0008〕〜〔0034〕等に詳細に開示されている。中でも特開2002−90515号公報の中に開示されている多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが前述の理由で本発明にかかる基材熱可塑性樹脂フィルムとして好ましい。
【0046】
本発明にかかる基材熱可塑性樹脂フィルムの構成は、使用する用途や要求する特性により適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、少なくとも1層以上の構成を有する単層及び/又は2層以上の複合フィルムが好ましく、その少なくとも1層以上に気泡及び/又は無機粒子を含有していることが好ましい。
【0047】
単層構成(=1層)の例としては、たとえば単層のA層のみの基材熱可塑性樹脂フィルムであり、前記A層に気泡を含有させた構成のものが挙げられる。中でも、ルミラー(登録商標)E20(東レ(株)製)、SY64、SY74(SKC製)などを使用することができる。
【0048】
また、2層構成の例としては、前記A層にB層を積層した、A層/B層の2層構成の基材熱可塑性樹脂フィルムであり、これらA、B層少なくともどちらか1層中に、気泡を含有させた構成のものが挙げられる。中でも、テトロン(登録商標)フィルムUXZ1、UXSP(帝人デュポンフィルム(株)製)などを使用することができる。
【0049】
さらに、3層構成の例としては、前記同様に、A層/B層/A層やA層/B層/C層の3層を積層してなる3層積層構造の基材熱可塑性樹脂フィルムであり、各層の内少なくとも1層中に、気泡を含有させた構成のものが挙げられる。中でも、ルミラー(登録商標)E6SL、E6SR、E6SQ、テトロン(登録商標)フィルムUX(帝人デュポンフィルム(株)製)などが挙げられる。
【0050】
本発明にかかる塗料に含まれる、乾燥の対象となる溶剤とは、物質を溶解する性質をもつ有機化合物を意味する。具体的には、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、クロルベンゼン、オルトージクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類、モノクロルメタン等のメタン誘導体、モノクロルエタン等のエタン誘導体等を含む塩化脂肪族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素系、ケトン系、エステル系の有機溶剤が好ましい。
【0051】
バインダー樹脂などを溶解するものであれば、特に限定はないが、近年のVOC(揮発性有機化合物)規制などから、トルエン、キシレンの使用は避けた方が好ましく、溶解性、汎用性、コストの点で、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。また乾燥速度を調整できる点で沸点の異なる2種類以上の溶剤を混合して使用することが好ましい。
【0052】
本発明においては、塗布層を基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に形成するにあたり、任意の方法で形成することができる。例えば、バインダー化合物と球状粒子を含有する塗液をグラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、リバースキスコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート、スリットダイコート、リップコートおよびディッピングなどの各種塗布方法を用いて基材熱可塑性樹脂フィルム製造時に塗布(インラインコーティング)したり、結晶配向完了後の基材熱可塑性樹脂フィルム上に塗布(オフラインコーティング)する方法などが挙げられるが、塗工有効幅に制限が少ないことと、製品幅に対して柔軟に対応することができることから、リバースキスコート塗布法が好ましく使用することができる。
【0053】
本発明にかかる白色フィルムおよび/または塗布層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、有機および/または無機の微粒子、蛍光増白剤、架橋剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、有機の滑剤、帯電防止剤、核剤、染料、充填剤、分散剤およびカップリング剤などを用いることができる。
【0054】
このようにして得られる本発明の積層フィルムは、塗布ムラや塗布スジ等の外観欠点を低減することができるため、ディスプレイ表面に配置する反射防止フィルムあるいは防眩フィルム等、液晶ディスプレイ用バックライト等に組み込む反射フィルムあるいは光拡散フィルム等の積層フィルム、太陽電池バックシート用の積層フィルムに好都合に使用することができる。これらをバックライトや太陽電池に使用するに際しては、本発明の積層フィルムを、その塗布層を光源側に向けて設置する。他に、紙代替、すなわちカード、ラベル、シール、宅配伝票、ビデオプリンタ用受像紙、インクジェット、バーコードプリンタ用受像紙、ポスター、地図、無塵紙、表示板、白板、感熱転写、オフセット印刷、テレフォンカード、ICカードなどの各種印刷記録に用いられる受容シートの基材としても用いることができる。
【実施例】
【0055】
測定方法および評価方法を以下に示す。
【0056】
(1)球状粒子の採取
積層フィルムの塗布層を鋭利な刃物で削り取り、積層フィルムから塗布層を採取し、有機溶剤を用いてバインダー化合物成分を抽出した。
【0057】
(2)球状粒子の体積平均粒子径、球状粒子の変動係数CV
(1)にて採取した球状粒子の体積平均粒子径及び変動係数CVの測定には、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置としてコールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)を用いた。粒子が細孔を通過する際の粒子体積に相当する電解液分の電気抵抗を測定することによって、粒子の数と体積を測定した。まず微少量のサンプルを薄い界面活性剤水溶液に分散させ、次いでモニターの表示を見ながらアパチャー(検知部分の細孔)通過率が10〜20%となる量だけ指定電解液の容器に添加した後、通過粒子数が10万個になるまで粒子径の計測を続けて自動計算させ、体積平均粒子径、体積平均粒子径の標準偏差及び変動係数CVを求めた。変動係数CVの値は下記式により求めることができる。
・変動係数CV(%)= 体積平均粒子径の標準偏差(μm)×100/体積平均粒子径(μm)。
【0058】
(3)小径粒子存在割合
(1)にて採取した球状粒子をマルチイメージアナライザー(ベックマン・コールター社製)を用いた画像解析により、1000個の球状粒子を解析し、球状粒子の体積平均粒子径×0.4から算出される粒子径以下の球状粒子の個数をカウントした。
・小径粒子存在割合(%)={(体積平均粒子径×0.4)μm以下の球状粒子個数/1000}×100。
【0059】
(4)粒子分散性
実施例あるいは比較例にて調合後得られた塗料を100g採取し、1分後の状態を下記により判定し、A級は合格とし、B級、C級は不合格とした。
A級:粒子の沈殿が見られない。
B級:塗料の上澄み部分のみ2層分離しており、粒子沈殿が若干見られる。
C級:完全に粒子が容器の底辺に沈殿している。
【0060】
(5)塗工外観
実施例あるいは比較例にて得られた塗工サンプルについて、任意に選定した10名の判定者が蛍光灯反射光にて可視判定することにより外観欠点を検出した。判定は下記基準により実施し、A級は合格とし、B級は不合格とした。
A級: 10名全員が塗布スジ及び塗布ムラを検出できなかった。
B級: 1名でも塗布スジ及び塗布ムラを検出できた。
【0061】
(実施例1)
ハルスハイブリッド(登録商標)UV−G720T(アクリル系共重合体、濃度40%溶液、(株)日本触媒製):10kg、酢酸エチル:18kg、球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 TECHPOLYMER(商標登録)TRX05S、体積平均粒子径5.0μm、変動係数CV9%、小粒子存在割合1.4%、製品ロットGK6268):1.5kg、デスモジュール(登録商標)N3200(ヘキサメチレン系脂肪族ポリイソシアネート、住化バイエルウレタン株式会社製、濃度100%):0.50kgを順次攪拌しながら添加し、最後に30分間攪拌してなる塗液(計30kg)を準備した。ここで粒子分散性を確認した。
【0062】
300μmの白色ポリエステルフィルム(“ルミラー”(登録商標)E6SQ、1100mm×900m)1本をリバースキス方式にて乾燥後の塗布量が3.5g/mになるように、連続塗工し、片面塗工を実施した。なお、乾燥条件は長さ3.5m×4室の乾燥室にて、それぞれ前室より60℃/80℃/120℃/100℃にて実施し、速度は20m/minにて実施し、塗工外観を確認判定した。
【0063】
(実施例2)
球状粒子を無孔質アクリル粒子(球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 TECHPOLYMER(商標登録)TRX05S、体積平均粒子径5.0μm、変動係数CV9%、小粒子存在割合1.4%、製品ロットHA6234)としたこと以外は、実施例1と同様に作成し、得られた白色フィルムの塗工外観を確認判定した。
【0064】
(比較例1)
球状粒子を無孔質アクリル粒子(球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 TECHPOLYMER(商標登録)TRX05S、体積平均粒子径5.0μm、変動係数CV9%、小粒子存在割合0.57%、製品ロットHA6206)としたこと以外は、実施例1と同様に作成し、得られた白色フィルムの塗工外観を確認判定した。
【0065】
(比較例2)
球状粒子を無孔質アクリル粒子(球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 TECHPOLYMER(商標登録)TRX05S、体積平均粒子径5.0μm、変動係数CV9%、小粒子存在割合0.82%、製品ロットHA6208)としたこと以外は、実施例1と同様に作成し、得られた白色フィルムの塗工外観を確認判定した。
【0066】
(比較例3)
球状粒子を無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 TECHPOLYMER(商標登録)MBXシリーズ、XX−09FP、屈折率1.49、体積平均粒子径5.0μm、変動係数CV27%、小粒子存在割合5.2%)としたこと以外は、実施例1と同様に作成し、得られた白色フィルムの塗工外観を確認判定した。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1〜2のいずれにおいても、粒子分散性が良く、得られた積層フィルムの塗工外観も良好であった。小径粒子存在割合が1%未満になると、粒子分散性が急激に悪化し、塗工外観にスジ・ムラ等の欠点が多発した(比較例1、2)。また、小径粒子存在割合が1%以上でも、変動係数CVが15よりも大きい場合(比較例3)、粒子分散性も若干悪く、塗工外観にてムラが見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(1)〜(3)の3つの要件を満たす塗布層を有する積層フィルム。
(1)基材熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面にバインダー化合物と球状粒子とを含有する塗布層であること。
(2)前記球状粒子の変動係数CVが15%以下であること。
(3)前記球状粒子の小径粒子存在割合が1%以上であること。
【請求項2】
該基材熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエステルフィルムである請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
該基材熱可塑性樹脂フィルムが、白色フィルムである請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルムを用いて構成されているバックライト。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルムを用いて構成されている太陽電池。

【公開番号】特開2010−95640(P2010−95640A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268259(P2008−268259)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】