説明

積層体、成形品、燃料ホース、及び、積層体の製造方法

【課題】本発明は、新規なフッ素樹脂を使用することによって、高い燃料バリア性を実現した積層体を提供する。
【解決手段】本発明は、フッ素樹脂からなる層(A)とエラストマーからなる層(B)とを含む積層体であって、フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、及び、任意でエチレン性不飽和単量体(但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)の共重合単位を含む共重合体であり、かつ、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaであることを特徴とする積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、成形品、燃料ホース、及び、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昨今の環境意識の高まりから、燃料揮発を防止するための法整備が進み、特に自動車業界では米国を中心に燃料揮発抑制の傾向が著しく、燃料バリア性に優れた材料へのニーズが大きくなりつつある。燃料バリア性に優れた材料として、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂が使用されているが、これらの材料は燃料バリア性が高い反面、柔軟性に乏しく、柔軟性が求められる部位に用いることが困難である。それに対してゴム系材料は高い柔軟性を有しているが一般的に燃料バリア性が劣っており、燃料ホース等の自動車部品に使用した場合には燃料の揮発・蒸散が大きく、改善が求められている。これらの問題を解決するために、近年、燃料バリア性が高い樹脂層と柔軟性が高いエラストマー層からなる積層構造を有する燃料ホースが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2では、フルオロプラスチックを含む第1の層を含み、前記第1の層が硬化性エラストマー及び脱フッ化水素化組成物の混合物を含む第2の層と実質的に接触している、層状製品が提案された。そして、特許文献1では、フルオロプラスチックとして、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンの共重合体であることが有用であり、特許文献2では、フルオロプラスチックとして、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレンを含む共重合単位から誘導されるフルオロポリマーが有用であるとされた。
【0004】
特許文献3では、六フッ化プロピレンと、四フッ化エチレンと、フッ化ビニリデンとからなるフッ素樹脂とエピクロルヒドリン系ゴムとよりなる層状成形体が提案された。
【0005】
特許文献4では、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフロライドの三元系フッ素樹脂の成形物である内層と、1・8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩と有機ホスホニウム塩を配合したエピクロルヒドリンゴムかNBR/PVCのブレンド物の架橋用組成物の架橋成型物である外層と、1・8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩と有機ホスホニウム塩を配合したNBR系ゴムかフッ
素ゴムの架橋用組成物の架橋成型物である最内層とが、強固に接着されてなることを特徴とする自動車燃料配管用ホースが提案された。
【0006】
特許文献5では、(1)エピクロロヒドリン系ゴムに対して1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7もしくはその弱酸塩が配合された架橋ゴム組成物と、(2)テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド三元共重合体フッ素含有樹脂、とからなる積層体が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−526972号公報
【特許文献2】特表2001−527104号公報
【特許文献3】特開平8−118549号公報
【特許文献4】特開平8−169085号公報
【特許文献5】特開平8−294998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、燃料バリア性が高いフッ素樹脂を柔軟性が高いエラストマー層と積層させた積層体は公知である。しかしながら、これらの積層体は燃料バリア性が充分ではない。
【0009】
そこで、本発明では、新規なフッ素樹脂を使用することによって、高い燃料バリア性およびエラストマーと強固な接着性を実現した積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フッ素樹脂からなる層(A)とエラストマーからなる層(B)とを含む積層体であって、フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、及び、任意でエチレン性不飽和単量体(但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)の共重合単位を含む共重合体であり、かつ、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaであることを特徴とする積層体である。
【0011】
本発明は、上記積層体から形成される成形品でもある。
【0012】
本発明は、上記積層体から形成される燃料ホースでもある。
【0013】
本発明は、上記積層体の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の積層体は、フッ素樹脂層(A)とエラストマー層(B)とを含むものであり、特に、新規なフッ素樹脂から形成されるフッ素樹脂層(A)を含むことに特徴がある。この特徴によって、本発明の積層体は、フッ素樹脂層とエラストマー層が優れた接着性を示し、高い燃料バリア性を有し、コスト面でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)フッ素樹脂層
上記層(A)は、フッ素樹脂から形成される。フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、及び、任意でエチレン性不飽和単量体(但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)の共重合単位を含む共重合体であり、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaである。
【0016】
従来エラストマーと積層しバリア性を付与するフッ素樹脂は比較的柔軟性に富み、それ故に比較的結晶性が低い樹脂であった。例えば、ダイネオン社のTHV樹脂はテトラフルオロエチレンとビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン(およびパーフルオロ(プロピル)ビニルエーテルを含むことがある)の共重合体であって、結晶化熱量が20mj/mg以下の比較的結晶性が低い樹脂である。一般的に結晶性を低下させるとバリア性は悪くなる。
【0017】
一方、本発明において使用するフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、及び、エチレン性不飽和単量体を特定の組成比で共重合することで、高い結晶性を持つ。従って、このフッ素樹脂からなる層(A)を含む本発明の積層体は、優れたバリア性を有する。
【0018】
本発明において使用するフッ素樹脂は、結晶性が高いので、170℃という高温でも高い貯蔵弾性率を示し、高温でもバリア性が優れる。また、従来エラストマーと積層するフッ素樹脂としてはエラストマーの柔軟性を損なわないようにするため弾性率の低いフッ素樹脂が使用されていたが、本発明において使用するフッ素樹脂は、燃料透過性が優れるため薄い層とすることが可能であり、弾性率が高くてもエラストマーの柔軟性を損なわずに積層させることができる。本発明において使用するフッ素樹脂をエラストマー/フッ素樹脂/エラストマーのようなサンドイッチ構成を構成する層に採用することでもこの問題は解消される。
【0019】
上記フッ素樹脂は、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaである。上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により170℃で測定する値であり、より具体的には、アイティ−計測制御社製動的粘弾性装置DVA220で長さ30mm、巾5mm、厚み0.25mmのサンプルを引張モード、つかみ幅20mm、測定温度25℃から250℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定する値である。170℃における好ましい貯蔵弾性率(E’)は80〜350MPaであり、より好ましい貯蔵弾性率(E’)は100〜350MPaである。
【0020】
本発明において使用するフッ素樹脂は、示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて融点ピークプラス50℃まで昇温した後に10℃/分の速度で降温させた時に生じる結晶化熱量が30mj/mg以上であることが好ましい。さらに好ましくは35mj/mg以上である。
【0021】
上記フッ素樹脂は、燃料透過係数が2.0g・mm/m/day以下であることが好ましく、1.8g・mm/m/day以下であることがより好ましい。燃料透過係数が高すぎると、積層体のバリア性が劣るおそれがある。
【0022】
上記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドの共重合単位のみからなる共重合体であるか、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド及びエチレン性不飽和単量体の共重合単位を含む共重合体である。
【0023】
上記エチレン性不飽和単量体としては、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドと共重合可能な単量体であれば特に制限されないが、下記の式(1)及び(2)で表されるエチレン性不飽和単量体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0024】
式(1): CX=CX(CF
(式中、X、X、X及びXは同一または異なってH、F又はClを表し、nは0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
【0025】
式(2): CF=CF−ORf
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基又はフルオロアルキル基を表す。)
【0026】
式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、CF=CFCl、CF=CFCF、下記式(3)
CH=CF−(CF (3)
(式中、X及びnは上記と同じ。)、及び、下記式(4)
CH=CH−(CF (4)
(式中、X及びnは上記と同じ。)
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF=CFCl、CH=CFCF、CH=CH−C、CH=CH−C13、CH=CF−CH及びCF=CFCFからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、CF=CFCl及びCH=CFCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0027】
式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、CF=CF−OCF、CF=CF−OCFCF及びCF=CF−OCFCFCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0028】
上記フッ素樹脂は、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
10.0〜41.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体
CX=CX(CF (1)
(式中、X、X、X及びXは同一または異なってH、F又はClを表し、nは0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であることが好ましい。
【0029】
より好ましくは、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
12.0〜41.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜3.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である。
【0030】
上記フッ素樹脂は、
55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
9.2〜44.2モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.8モル%の式(2):
CF=CF−ORf (2)
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基又はフルオロアルキル基を表す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であることも好ましい。
【0031】
より好ましくは、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
14.5〜41.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である。
【0032】
フッ素樹脂は、55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
6.2〜44.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜3.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、
0.1〜0.8モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であることも好ましい。
【0033】
より好ましくは、
58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
11.5〜39.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜3.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、
0.1〜0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である。
【0034】
上記フッ素樹脂は、各単量体の含有量が上述の範囲内にあると、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド及び第3成分からなる従来公知の共重合体と比べて結晶性が高くかつ170℃でも貯蔵弾性率が高いので、高温でも燃料バリア性に優れる。
また、第3成分を含まず、テトラフルオロエチレンの含有量が50mol%より多いテトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドの2元共重合体は成型体の耐クラック性が著しく劣るが、本発明の共重合体は耐クラック性が優れる。
【0035】
共重合体の各共重合単位の含有量は、NMR、元素分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0036】
上記フッ素樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10minであることが好ましい。
【0037】
上記MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、メルトインデクサー(東洋精機社製)を用いて、297℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)である。
【0038】
上記フッ素樹脂は、融点が180℃以上であることが好ましく、上限は290℃であってよい。より好ましい下限は200℃であり、上限は270℃である。
【0039】
上記融点は、示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、得られる吸熱曲線のピークにあたる温度を融点とする。
【0040】
上記フッ素樹脂は、熱分解開始温度が360℃以上であるものが好ましい。より好ましい下限は370℃である。上記熱分解開始温度は、上記範囲内であれば、上限を例えば410℃とすることができる。
【0041】
上記熱分解開始温度は、加熱試験に供したフッ素樹脂の1質量%が分解する温度であり、示差熱・熱重量測定装置〔TG−DTA〕を用いて加熱試験に供したフッ素樹脂の質量が1質量%減少する時の温度を測定することにより得られる値である。
【0042】
上記フッ素樹脂は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法によって製造することができるが、工業的に実施が容易である点で、乳化重合又は懸濁重合により製造することが好ましい。
【0043】
上記の重合においては、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0044】
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル開始剤を使用できる。
【0045】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとして挙げられる。
【0046】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
【0047】
上記界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4〜20の直鎖又は分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。添加量(対重合水)は、好ましくは50〜5000ppmである。
【0048】
上記連鎖移動剤としては、例えば、エタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素などがあげられる。添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01〜20質量%の範囲で使用される。
【0049】
上記溶媒としては、水、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
【0050】
上記懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性及び経済性の面から、水性媒体に対して10〜100質量%が好ましい。
【0051】
重合温度としては特に限定されず、0〜100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0〜9.8MPaGであってよい。
【0052】
(B)エラストマー層
エラストマー層はエラストマーから形成される。エラストマーとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、α,β−不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合体ゴム、α,β−不飽和ニトリル−共役ジエン系共重合体ゴムの水素化物があげられるが、これらの中でも、耐熱性、耐油性、耐候性、押し出し成型性の点から、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム及びアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム及びエピクロロヒドロリンゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0053】
層(B)は、層(A)との接着力向上の点から、オニウム塩、アミン化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0054】
オニウム塩としては特に限定されず、例えば、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、環状アミン、1官能性アミン化合物などがあげられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0055】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド(以下、DBU−Bともいう)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、式(5):
【0056】
【化1】

【0057】
(式中、3つのRは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子、または炭素数1〜30の1価の有機基であり、Xは1価の陰イオンである)
で示される化合物、
式(6):
【0058】
【化2】

【0059】
(式中、nは、0〜50の整数である)
で示される化合物、および
式(7):
【0060】
【化3】

【0061】
などがあげられる。
【0062】
式(5)中の、3つのRは、それぞれ同じかまたは異なり、水素原子、または炭素数1〜30の1価の有機基である。炭素数1〜30の1価の有機基としては、特に限定されるものではないが、脂肪族炭化水素基、フェニル基などのアリール基、またはベンジル基があげられる。具体的には、例えば、−CH、−C、−Cなどの炭素数1〜30のアルキル基;−CX、−C、−CH、−CHCX、−CHなどの炭素数1〜30のハロゲン原子含有アルキル基(Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子);フェニル基;ベンジル基;−C、−CHなどのフッ素原子で1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基;−C5−n(CF、−CH5−n(CF(nは1〜5の整数)などの−CFで1〜5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基などがあげられる。また、式(8):
【0063】
【化4】

【0064】
のように、窒素原子を含んでいてもよい。
【0065】
これらのうち、層(A)と層(B)との接着力が良好な点から上記のDBU−Bまたは、3つのRが炭素数1〜20のアルキル基またはベンジル基、Xが1価の陰イオンであり、ハロゲンイオン(F、Cl、Br、I)、OH、RO、RCOO、C、SO2−、SO2−、SO、RSO2−、CO2−、NO(Rは1価の有機基)で表される式(5)、式(6)などが好ましく、式(5)中のXとしては、Clがより好ましい。また、式(6)中では、ゴムとの混練り時の分散性の点から、nは0〜10の整数であることがより好ましく、1〜5の整数であることがさらに好ましい。
【0066】
これらの中でも、特に、式(9):
【0067】
【化5】

【0068】
で示される化合物であることが好ましい。
【0069】
第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、テトラブチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(以下、BTPPCともいう)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどをあげることができ、これらの中でも、層(A)と層(B)との接着力が良好な点から、BTPPCが好ましい。
【0070】
また、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている化合物を用いることもできる。
【0071】
オニウム塩の配合量は、エラストマー100質量部に対して、0.1〜10.0質量部が好ましく、0.2〜8.0質量部がより好ましく、0.3〜7.0質量部がさらに好ましい。オニウム塩の配合量が、0.1質量部未満であると層(A)と層(B)との接着性が充分に発現できない傾向があり、10.0質量部をこえるとエラストマー層の機械物性が低下する傾向がある。
【0072】
アミン化合物としては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン(以下、V3ともいう)、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどの脂肪族ポリアミン化合物誘導体や、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル〔4,4’−DPE〕、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン〔BAPP〕、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、ジアニリノエタン、4,4’−メチレン−ビス(3−ニトロアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、ジアミノピリジン、メラミンなどの芳香族ポリアミン化合物を使用することができる。これらの中でも、層(A)と層(B)との接着力が良好な点から、V3、4,4’−DPE、BAPPが好ましい。
【0073】
アミン化合物の配合量は、エラストマー100質量部に対して、0.1〜10.0質量部が好ましく、0.2〜8.0質量部がより好ましく、0.3〜7.0質量部がさらに好ましい。アミン化合物の配合量が、0.1質量部未満であると、層(A)と層(B)との接着性が充分に発現できない傾向があり、10.0質量部をこえるとエラストマー層の機械物性が低下する傾向がある。
【0074】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂等があげられる。これらのうちビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、式(10):
【0075】
【化6】

【0076】
で表わされる化合物等があげられる。ここで、式(10)において、nは0.1〜3が好ましく、0.1〜0.5がより好ましく、0.1〜0.3がさらに好ましい。nが0.1未満であると、他材との接着力が低下する傾向がある。一方、nが3をこえると、粘度が高くなり、ゴム中での均一な分散が困難になる傾向がある。
【0077】
エポキシ樹脂の配合量は、エラストマー100質量部に対して、0.1〜20.0質量部が好ましく、0.3〜15.0質量部がより好ましく、0.5〜10.0質量部がさらに好ましい。エポキシ樹脂の配合量が0.1質量部未満であると、層(A)と層(B)との接着性が充分に発現できない傾向があり、一方、エポキシ樹脂の配合量が20.0質量部をこえると、層(B)の柔軟性が低下する傾向がある。
【0078】
また、エラストマー層(B)は、未加硫ゴムのもの、または加硫させたもののいずれでも用いることができる。
【0079】
加硫剤としては、通常のエラストマーに使用される加硫剤であれば全て使用できる。例えば、イオウ系加硫剤、パーオキサイド系加硫剤、ポリチオール系加硫剤、キノイド系加硫剤、樹脂系加硫剤、金属酸化物、ジアミン系加硫剤、ポリチオール類、2−メルカプトイミダゾリン、ポリオール系加硫剤、ポリアミン系加硫剤などの加硫剤があり、なかでもパーオキサイド系加硫剤、ポリオール系加硫剤、ポリアミン系加硫剤などが接着特性および得られた加硫ゴムの機械物性の点から好ましい。
【0080】
パーオキサイド系架橋剤としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0081】
ポリアミン系加硫剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン類、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどの芳香族ポリアミン類、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメートなどのアミンカルバミン酸塩類等が挙げられる。
【0082】
上記架橋剤の使用量は、適宜決めることができるが、通常はエラストマー100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲である。
【0083】
上記架橋剤と共に、受酸剤を使用することもできる。上記受酸剤としては、金属化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。上記金属化合物としては周期律表第II族金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、亜燐酸塩、周期律表第IVa族金属の塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜燐酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩、塩基性珪酸塩等がある。
【0084】
金属化合物及びエポキシ化合物の具体例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜燐酸マグネシウム、亜燐酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜燐酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、塩基性珪酸鉛、エポキシ化大豆油、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応生成物等を挙げることができる。
【0085】
上記受酸剤の使用量は、適宜決めることができるが、通常はエラストマー100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲である。
【0086】
本発明の積層体を構成する各層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどのポリマー、炭酸カルシウム、タルク、セライト、クレー、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどの無機充填材、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤などを、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で含有してもよい。
【0087】
本発明の積層体は、層(A)の厚みが0.01〜2.0mmであってよく、好ましくは0.1〜2.0mm、層(B)の厚みが0.1〜4.0mmであってよく、好ましくは0.1〜2.0mmである。
【0088】
積層体の構成は特に制限されるものではなく、例えば、層(A)と層(B)からなる2層構成、同一または異なる2種類の層(B)の間に層(A)を挿入した3層構成、等を用いることができる。また、本発明の積層体に任意の材料をさらに積層させることも可能である。
【0089】
本発明の積層体は、例えば、
エラストマー及び任意の添加物を混合してエラストマー組成物を得る工程、
フッ素樹脂から形成される層(A)と、上記エラストマー組成物から形成される層(B)と、を積層する工程、
層(A)及び層(B)を加熱する工程、
を含む製造方法により好適に製造することができる。
【0090】
上記製造方法では、フッ素樹脂及び任意の添加剤とを混合するフッ素樹脂組成物を得る工程を含んでもよい。フッ素樹脂組成物は、フッ素樹脂及び任意の添加物を混合して得られ、混合は、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、二軸押出機等の通常の混合機を用いて行うことができる。
【0091】
エラストマー組成物は、エラストマー及び任意の添加物を混合して得られ、混合は、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、二軸押出機等を用いて行うことができる。
【0092】
フッ素樹脂組成物及びエラストマー組成物は、任意の添加物を含んでもよく、任意の添加物としては上述したオニウム塩、アミン化合物、エポキシ樹脂、架橋剤及び受酸剤の他、充填材、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、架橋促進剤、架橋助剤、共架橋剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤等が挙げられる。
【0093】
層(A)と層(B)とを積層する方法としては、従来公知の方法により行うことができる。例えば、フッ素樹脂とエラストマー組成物とを同時共押出成形して積層体を得てもよいし、別々に作製したフッ素樹脂からなる層とエラストマーからなる層とを重ね合わせてもよい。
【0094】
積層した層(A)及び層(B)の加熱は、エラストマーが架橋するのに充分な温度及び時間で行えばよく、通常、150〜300℃の温度で、1分〜24時間行うことができる。必要に応じて、恒温槽にて150℃、1〜3時間の2次加硫を行ってもよい。
【0095】
加熱の方法は、金型による加圧成型、蒸気、マイクロ波、熱風炉、塩浴による方法など通
常の加熱方法によって行うことができる。また、常圧、加圧、減圧下においても、また、空気中においても、どのような条件下においても架橋反応を行うことができる。
【0096】
層(A)と層(B)とを積層する工程、及び、加熱する工程は、例えば、(1)積層体を構成する各層を溶融状態で共押出成形することにより層間を熱溶融着(溶融接着)させ1段で積層体を形成する方法(共押出成形)、(2)押出機によりそれぞれ別個に作製した各層を重ね合わせ熱融着により層間を接着させる方法、(3)予め作製した層の表面上に押出機により溶融樹脂を押し出すことにより積層体を形成する方法、(4)予め作製した層の表面上に、該層に隣接することとなる層を構成する重合体を静電塗装したのち、得られる塗装物を全体的に又は塗装した側から加熱することにより、塗装に供した重合体を加熱溶融して層を成形する方法、等により行うこともできる。
【0097】
上記(1)の方法では、オーブンまたは加熱液浴などの、製品の温度を上昇させる手段によって、エラストマーが架橋するのに充分な温度及び時間で熱溶融着させてもよい。
【0098】
上記(2)及び(3)の方法では、層(A)及び層(B)の片方または両方の表面を処理してもよい。このような表面処理は、溶剤などの溶液処理からなっても良い。溶剤が1,8−ジアゾ[5.4.0]ビシクロウンデク−7−エン(DBU)などの塩基を含有する場合、フッ素樹脂にある程度の脱フッ化水素化が起きる。このような脱フッ化水素化は、引き続き適用されるエラストマーへの接着を促進するのに有利と考えられる。
【0099】
上記積層体から形成される成形品も本発明の1つである。本発明の成形品は、燃料バリア性に優れるとともに、機械的強度、耐薬品性、耐油性、耐熱性、柔軟性を兼ね備える成形品となる。
【0100】
本発明の積層体は、エラストマー層との密着性に優れ、耐薬品性、耐油性、耐熱性、耐寒性を兼ね備える積層体であり、多層燃料チューブまたは多層燃料容器として有用である。特に自動車のエンジンならびに周辺装置、AT装置、燃料系統ならびに周辺装置などの多層燃料チューブまたは多層燃料容器として有用なものである。例えば、自動車用のフィラーホース、エバポホース、ブリーザーホース等の燃料チューブ;自動車用の燃料容器、自動2輪車用の燃料容器、小型発電機の燃料容器、芝刈機の燃料容器等の燃料容器があげられる。
【0101】
また、前記積層体の用途として、さらに、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、滑剤・冷却系、燃料系、吸気・排気系;駆動系のトランスミッション系;シャーシのステアリング系;ブレーキ系;電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品などの、耐熱性・耐油性・燃料油耐性・エンジン冷却用不凍液耐性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型および接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシールなど)などのシール材などがあげられる。
【0102】
自動車用エンジンのエンジン本体に用いられるシール材としては、特に限定されないが、例えば、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、Oリング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール材などがあげられる。
【0103】
自動車用エンジンの主運動系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、例えば、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなどがあげられる。
【0104】
自動車用エンジンの動弁系に用いられるシール材としては、特に限定されるものではないが、例えば、エンジンバルブのバルブステムオイルシールなどがあげられる。
【0105】
自動車用途以外の用途としては、特に限定されず、
フィルム、シート類;食品用フィルム、食品用シート、薬品用フィルム、薬品用シート、ダイヤフラムポンプのダイヤフラムや各種パッキン等
チューブ、ホース類;溶剤用チューブ又は溶剤用ホース、塗料用チューブ又は塗料用ホース、自動車のラジエーターホース、エアコンホース、ブレーキホース、電線被覆材、飲食物用チューブ又は飲食物用ホース、ガソリンスタンド用地下埋設チューブ若しくはホース、海底油田用チューブ若しくはホース等
ボトル、容器、タンク類;溶剤用タンク、塗料用タンク、半導体用薬液容器等の薬液容器、飲食物用タンク等
その他;油圧機器のシール等の各種機械関係シール、ギア等
上記のなかでも特にチューブ又はホースに好適に用いることができる。
【0106】
上記チューブ又はホースは、その途中に波形領域を有するものであってもよい。このような波形領域とは、ホース本体途中の適宜の領域を、波形形状、蛇腹(corrugated)形状、渦巻き(convoluted)形状等に形成したものである。
【0107】
本発明のチューブ又はホースは、かかる波形の折り目が複数個環状に配設されている領域を有することにより、その領域において環状の一側を圧縮し、他側を外方に伸張することができるので、応力疲労や層間の剥離を伴うことなく容易に任意の角度で曲げることが可能となる。
【0108】
波形領域の形成方法は限定されないが、まず直管状のチューブを成形した後に、引き続いてモールド成形等し、所定の波形形状等とすることにより容易に形成することができる。
【0109】
本発明の積層体は、燃料ホース(チューブ)、タンク等の使用時に燃料と接する箇所がある用途に好適に用いることができる。
【0110】
上記積層体から形成される燃料ホースも本発明の1つである。本発明の積層体は、上述したように、層間が強固に接着しており、柔軟性、高い機械的強度、及び、燃料バリア性を有するので、自動車用燃料配管チューブに用いる燃料ホース用積層体として好適に用いることができる。この場合、燃料と接する箇所は層(A)であることが好ましい。すなわち、最内層が層(A)であることが好ましい。
【0111】
燃料ホースの最内層は、ガソリン等の引火性の液体が接して静電荷が蓄積しやすいが、この静電荷によって引火することを避けるため、最内層は導電性フィラーを含むことが好ましい。
【0112】
上記導電性フィラーとしては特に限定されず、例えば、金属、炭素等の導電性単体粉末又は導電性単体繊維;酸化亜鉛等の導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末等が挙げられる。
【0113】
上記導電性単体粉末又は導電性単体繊維としては特に限定されず、例えば、銅、ニッケル等の金属粉末;鉄、ステンレス等の金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリル等が挙げられる。
【0114】
上記表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタン等の非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。上記導電化処理の方法としては特に限定されず、例えば、金属スパッタリング、無電解メッキ等が挙げられる。上述した導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、各物性は以下の方法により測定した。
【0116】
フッ素樹脂の単量体組成
核磁気共鳴装置AC300(Bruker−Biospin社製)を用い、測定温度を(ポリマーの融点+20)℃として19F−NMR測定を行い、各ピークの積分値およびモノマーの種類によっては元素分析を適宜組み合わせて求めた。
【0117】
融点
示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
【0118】
結晶化熱量(ΔTc)
示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて融点ピークプラス50℃まで昇温した後に10℃/分の速度で降温させた時に生じる結晶化熱量ピーク面積(mj/mg)から求めた。
【0119】
結晶化温度
示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて融点ピークプラス50℃まで昇温した後に10℃/分の速度で降温させた時に生じる発熱曲線のピークから求めた。
【0120】
メルトフローレート〔MFR〕
MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、メルトインデクサー(東洋精機社製)を用いて、297℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)をMFRとした。
【0121】
燃料透過係数の測定
50mmφ、厚さ0.2〜0.3mmのシートを溶融プレス機で成形し、CE10燃料(イソオクタン/トルエン/エタノール:45/45/10(容量%))を18ml投入した内径40mmφ、高さ20mmのSUS316製の透過係数測定用カップに得られたシートを入れ、60℃における質量変化を1000時間まで測定した。時間あたりの質量変化、接液部のシートの表面積及びシートの厚さから燃料透過係数(g・mm/m/day)を算出した。
【0122】
貯蔵弾性率(E’)
貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により170℃で測定する値であり、アイティ−計測制御社製動的粘弾性装置DVA220で長さ30mm、巾5mm、厚み0.25mmのサンプルを引張モード、つかみ幅20mm、測定温度25℃から250℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
【0123】
熱分解開始温度(1%質量減温度)
熱分解開始温度は、示差熱・熱重量測定装置〔TG−DTA〕を用いて加熱試験に供したフッ素樹脂の質量が1質量%減少する時の温度を熱分解開始温度とした。
【0124】
<シート状試験片の作製(フッ素樹脂層)>
各種フッ素樹脂を金型にセットし、ヒートプレス機により、270〜300℃にて15〜30分保持し、フッ素樹脂を溶融状態にした後、3MPaの負荷を1分間与え圧縮成形し、所定の厚さのシート状試験片を作製した。
【0125】
<シート状試験片の作製(エラストマー層)>
各種生ゴムに8インチオープンロールにて加硫剤、充填剤などの各種配合剤を添加し、フルコンパウンドを作製した。このフルコンパウンドをオープンロールにて所定の厚さのシート状試験片を作製した。
【0126】
<積層体の作製>
前記方法にて厚さ0.5mmのフッ素樹脂シートと厚さ1.5mmのエラストマー組成物のシート状試験片を作製した。これらのシート状試験片を重ね170℃に昇温した金型にセットし、ヒートプレス機により、170℃にて3MPaの負荷を20分与え、フッ素樹脂層―エラストマー層積層体を作製した。
【0127】
<接着性評価試験>
得られた積層体をそれぞれ1.0cm幅×10cmの短冊状に切断して接着試験用試験片を作製し、この試験片について、オートグラフ((株)島津製作所製 AGS−J 5kN)を使用して、JIS−K−6256(加硫ゴムの接着試験方法)に記載の方法に準拠し、25℃において50mm/minの引張速度で剥離試験を行い、接着強度を測定した。また、剥離モードを観測し、以下の基準で評価した。
【0128】
(接着評価)
◎・・・フッ素樹脂層/エラストマー層界面は剥離せず、エラストマー層が材料破壊した。
○・・・フッ素樹脂層/エラストマー層界面で剥離したが、充分に接着しており剥離するのが困難であった。
△・・・フッ素樹脂層/エラストマー層界面で比較的容易に剥離した。
×・・・フッ素樹脂層とエラストマー層とが接着性を示さなかった。
【0129】
フッ素樹脂製造例1(A−1)
174L容積のオートクレーブに蒸留水52.2Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン39.1kgを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度200rpmに保った。次いで、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]0.07kg、テトラフルオロエチレン[TFE]6.22kgおよびビニリデンフルオライド[VDF]0.68kgを順次仕込んだ後、重合開始剤ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート[NPP]の50質量%メタノール溶液を130g添加して重合を開始した。重合開始と同時に酢酸エチルを0.6kg仕込んだ。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE/VDF/CTFE混合ガスモノマー(TFE/VDF/CTFE:72.5/26.7/0.8(モル%))を仕込み、系内圧力を0.9MPaに保った。最終的に混合ガスモノマーの追加仕込み量が8kgになった時点で重合を停止し、放圧して大気圧に戻した後、得られたTFE/VDF/CTFE共重合体を水洗、乾燥して7.5kgの粉末を得た。
【0130】
次いでφ20mm単軸押出し機を用いてシリンダー温度300℃で溶融混練を行い、ペレットを得た。次いで得られたペレットを150℃で12時間加熱した。
【0131】
得られたペレット(A−1)は以下の組成及び物性を有していた。
TFE/VDF/CTFE:72.4/26.9/0.7(モル%)
融点:254℃
結晶化温度:232℃
結晶化熱量:43mj/mg
MFR:1.1g/10min(297℃‐5kg)
170℃における貯蔵弾性率(E’):152MPa
熱分解開始温度(1%質量減温度):392℃
燃料透過係数:1.5g・mm/m/day
【0132】
フッ素樹脂製造例2(A−2)
174L容積のオートクレーブに蒸留水52.2Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン39.1kgを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度200rpmに保った。次いで、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン0.02kg、TFE5.0kgおよびVDF0.7kgを順次仕込んだ後、重合開始剤ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート〔NPP〕の50質量%メタノール溶液を130g添加して重合を開始した。重合開始と同時に酢酸エチルを0.30kg仕込んだ。重合の進行と共に系内圧力が低下するので、TFE/VDF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン混合ガスモノマー(TFE/VDF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン:66.0/33.5/0.5(モル%))を仕込み系内圧力を0.8MPaに保った。最終的に混合ガスモノマーの追加仕込み量が8kgになった時点で重合を停止し、放圧して大気圧に戻した後、得られたTFE/VDF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体を水洗、乾燥して8.5kgの粉末を得た。
【0133】
次いでφ20mm単軸押出し機を用いてシリンダー温度300℃で溶融混練を行い、ペレットを得た。次いで得られたペレットを150℃で12時間加熱した。
【0134】
得られたペレット(A−2)は以下の組成及び物性を有していた。
TFE/VDF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン:69.1/30.4/0.5(モル%)
融点:232.2℃
結晶化温度:211.3℃
結晶化熱量:41.2mj/mg
MFR:1.8g/10min(297℃‐5kg)
170℃における貯蔵弾性率(E’):167MPa
熱分解開始温度(1%質量減温度):382℃
燃料透過係数:1.6g・mm/m/day
【0135】
エラストマー組成物配合例1
FKMフルコンパウンド(B−1)
3元フッ素ポリマーの生ゴム(VDF/TFE/HFP=58/20/22モル%、ムーニー粘度40)100質量部にビスフェノールAF(ダイキン工業(株)製)2.2質量部、DBU−B(和光純薬(株)製)0.56質量部、カーボンブラック(シーストS、東海カーボン(株)製)13質量部、酸化マグネシウム(キョーワマグ150、協和化学工業(株)製)3.0質量部、水酸化カルシウム(カルディック2000、近江化学工業(株)製)6.0質量部、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸と1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ−7−エンの塩(DA500、ダイソー(株)製)0.5質量部を添加し8インチオープンロールを用いて混練し、エラストマー組成物B−1を得た。
【0136】
エラストマー組成物配合例2
FKMフルコンパウンド(B−2)
3元フッ素ポリマーの生ゴム(VDF/TFE/HFP=58/20/22モル%、ムーニー粘度40)100質量部にビスフェノールAF(ダイキン工業(株)製)2.2質量部、DBU−B(和光純薬(株)製)0.56質量部、カーボンブラック(シーストS、東海カーボン(株)製)13質量部、酸化マグネシウム(キョーワマグ150、協和化学工業(株)製)3.0質量部、水酸化カルシウム(カルディック2000、近江化学工業(株)製)6.0質量部、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン(V3、ダイキン工業(株)製)2質量部を添加し8インチオープンロールを用いて混練し、エラストマー組成物B−2を得た。
【0137】
エラストマー組成物配合例3
NBRフルコンパウンド(B−3)
アクリロニトリル−ブタジエンゴム(Nipol 1041、JSR(株)製)100質量部にカーボンブラック(N990、Cancarb Ltd.製)30質量部、酸化亜鉛(ハイステック(株)製)5質量部、湿式シリカ(NipsilVN3、日本シリカ工業(株)製)15質量部、ステアリン酸(ルナック、花王(株)製)1質量部、老化防止剤(A.O.224、KING INDUSTRIES製)2質量部、可塑剤(Thiokol TP95、Morton International製)15質量部、ワックス(カルナバワックス、東亜化成(株)製)、過酸化物(パークミルD−40、日本油脂(株)製)2質量部を加えてニーダー練を実施した後、オニウム塩系試薬(8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(DBU−B)、和光純薬(株)製)5質量部、エポキシ化合物(JER828、ジャパンエポキシレジン(株)製)5質量部を添加し8インチオープンロールを用いて混練し、エラストマー組成物B−3を得た。
【0138】
エラストマー組成物配合例4
ECOフルコンパウンド(B−4)
エピクロロヒドリンゴム(エピクロマーCG、ダイソー(株)製)100質量部に、カーボンブラック(N−550、CancarbLtd.製)80質量部、Plasticizer(ADK cizer RS−107、旭電化工業(株)製)5.0質量部、Lubricant(Splender R−300)2.0質量部、老化防止剤(ノクラックNBC、大内新興化学工業(株)製)2.0質量部、合成ハイドロタルサイト(DIIT−4A、協和化学工業(株)製)3.0質量部、酸化マグネシウム(キョーワマグ150、協和化学工業(株)製)3.0質量部、DBUフェノール樹脂塩(P−152)1.5質量部、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート(ダイソネットXL−21S、ダイソー(株)製)1.5質量部を添加し8インチオープンロールを用いて混練し、エラストマー組成物B−4を得た。
【0139】
実施例1〜5
表1に示すフッ素樹脂層およびエラストマー層の組合せで、前記の方法にしたがい積層体を作成した。この積層体の接着強度を前記の方法により測定・評価した。
【0140】
比較例1
テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(A−3)(商品名:ネオフロンFEP NP−20、ダイキン工業(株)製、融点271℃、MFR6.4g/10min(372℃‐5kg))をフッ素樹脂層、エラストマー層をB−1とし実施例と同様に積層体を作成した。但し、フッ素樹脂のシート成形温度は350℃とした。
【0141】
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0142】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の積層体は、燃料バリア性に優れ、フッ素樹脂層とエラストマー層からなる積層体の界面において良好な接着性を示し、燃料周辺用材料として有用であり、例えば、燃料チューブ、ホースとして好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂からなる層(A)とエラストマーからなる層(B)とを含む積層体であって、
フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、及び、任意でエチレン性不飽和単量体(但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)の共重合単位を含む共重合体であり、かつ、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60〜400MPaであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
フッ素樹脂は、58.0〜85.0モル%のテトラフルオロエチレン、
10.0〜41.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である請求項1記載の積層体。
式(1): CX=CX(CF
(式中、X、X、X及びXは同一または異なってH、F又はClを表し、nは0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
【請求項3】
フッ素樹脂は、55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
9.2〜44.2モル%のビニリデンフルオライド、及び、
0.1〜0.8モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である請求項1記載の積層体。
式(2): CF=CF−ORf
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基又はフルオロアルキル基を表す。)
【請求項4】
フッ素樹脂は、55.0〜90.0モル%のテトラフルオロエチレン、
6.2〜44.8モル%のビニリデンフルオライド、
0.1〜3.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、
0.1〜0.8モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、
の共重合単位を含む共重合体である請求項1記載の積層体。
式(1): CX=CX(CF
(式中、X、X、X及びXは同一または異なってH、F又はClを表し、nは0〜8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
式(2): CF=CF−ORf
(式中、Rfは炭素数1〜3のアルキル基又はフルオロアルキル基を表す。)
【請求項5】
フッ素樹脂は、結晶化熱量が30mj/mg以上である請求項1、2、3又は4記載の積層体。
【請求項6】
フッ素樹脂は、燃料透過係数が2.0g・mm/m/day以下である請求項1、2、3、4又は5記載の積層体。
【請求項7】
エラストマーは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム及びアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2、3、4、5又は6記載の積層体。
【請求項8】
層(B)は、オニウム塩、アミン化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の積層体。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の積層体から形成される成形品。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の積層体から形成される燃料ホース。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の積層体の製造方法。

【公開番号】特開2010−280103(P2010−280103A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134385(P2009−134385)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】