積層体の製造方法、および製造装置
【課題】垂直配向積層体の製造方法と製造装置を提供する。
【解決手段】積層体は、硬化性流体、例えばポリマーを流路(80)に沿って分割し、再配置し、流れを複合し(95、98、100)、所望の積層体を得て製造される。流れの分割と再複合は繰り返すことができ、これによって数十、あるいは数万の層を有する積層体が製造できる。ポリマーは例えば粘度比3未満など、同様の粘度を持つものが使用できる。本発明の態様は包装用途に適用できるが、本発明の態様は積層体が使用される任意の分野に適用できる。
【解決手段】積層体は、硬化性流体、例えばポリマーを流路(80)に沿って分割し、再配置し、流れを複合し(95、98、100)、所望の積層体を得て製造される。流れの分割と再複合は繰り返すことができ、これによって数十、あるいは数万の層を有する積層体が製造できる。ポリマーは例えば粘度比3未満など、同様の粘度を持つものが使用できる。本発明の態様は包装用途に適用できるが、本発明の態様は積層体が使用される任意の分野に適用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月5日に出願された米国仮出願番号第61/086,364号を基礎とする優先権を主張するものであり、その開示内容は完全な参照によって本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、例えば高分子材料からなる流動性および硬化性を有する材料から積層体を製造するための方法および製造装置に関する。本発明は特に、流動性のある材料を、材料が硬化する前に、流れを分割し、形状変化させ、および位置合わせする流路を通して流下させる製造装置および製造方法を提供する。
【0003】
積層シートあるいは積層フィルムは、種々の工業用途、例えば、包装、環境分離、光学特性、および構造安定性などに一般に使用されている。ポリマー積層体はその光学特性によって光学産業において有用である。積層フィルムおよび積層シートの機械特性はまた、例えば、活性成分を支持する基材として、電子産業および太陽電池産業において有益である。これらおよびその他の産業における優位性に伴って、バリア特性、光学特性、および構造特性がより優れた積層体が必要になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術において、ポリマー積層構造体を提供する種々の方法および装置が開示されている。例えば、米国特許第3,195,865号明細書、米国特許第3,239,197号明細書、米国特許第3,557,265号明細書、米国特許第5,094,788号明細書、および米国特許第5,628,950号明細書には、流動性のあるポリマーの流れを操作する種々の方法および装置が開示されている。しかしながら、以下の記載で明らかとなるように、これらの技術および関連技術のいずれも、例えば垂直方向に配向されたポリマー積層体を提供するなどの本発明の有利性を提供することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、光学分野、電気電子分野、工業分野、および包装分野などに用いられるフィルムやシートなど、多種多様な用途に用いられる垂直配向積層構造体を製造するための各種製造装置及び製造方法を含む。
【0006】
本発明の一態様は、少なくとも第1の硬化性流体の第1の流れと第2の硬化性流体の第2の流れを提供する工程と、前記第1の流れと前記第2の流れを複合して、前記第1の流体と前記第2の流体からなる複合流を提供する工程と、前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体からなる複数の流れに分割する工程と、前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置する工程と、前記横方向に隣接された前記複数の流れを複合して、垂直配向積層体を提供する工程とを含む積層体、例えば垂直配向積層体の製造方法である。本発明の一態様は、前記第1の流れを前記第1の流体の2つの流れに分割する工程をさらに含み、前記第1の流れと前記第2の流れを複合する工程が、前記第1の流体の前記2つの流れと前記第2の流れを複合して、第3の流れを提供する工程である製造方法である。
【0007】
本発明の態様は流動性および硬化性を有するいかなる材料にも適用されるが、発明の1つの態様において、流動性材料は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、あるいは、軟質塩化ビニル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、あるいはこれらの組合せ、あるいはこれらと他の樹脂との組合わせ等のポリマーである。1種以上の上記材料からなる流動性材料は、例えば、液体、滑剤、光安定剤、難燃剤、膠着防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、光開始剤など、及びこれらの組合わせのような有機あるいは無機の添加剤を含んでいてもよい。
【0008】
本発明の他の一態様は、第1の硬化性流体の第1の流れと第2の硬化性流体の第2の流れを受け入れると共に、前記第1の流れと前記第2の流れを複合して前記第1の流体と前記第2の流体からなる複合流を提供するに適した供給ブロックと、前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体からなる複数の流れに分割するに適した複層化部と、前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置するに適した層配置部と、前記横方向に隣接された前記複数の流れを複合して垂直配向積層体を提供するに適した層複合部とを含む積層体、例えば垂直配向積層体の製造装置である。本発明の一態様は、前記第1の流れを2つの第1のポリマーの流れに分割するに適した分割器をさらに含み、前記供給ブロックが、前記2つの第1の流れと前記第2の流れを複合して前記複合流を提供するに適した製造装置である。繰り返しになるが、第1と第2の硬化性流体は、上記で挙げた1以上のポリマー、樹脂、あるいはプラスチックからなることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、例えば2以上の材料、例えば2以上の材料の交互配列、あるいは2以上の材料の繰返し配列からなる、数十、数百、数千、数万、数十万または数百万、あるいは数千万、あるいはそれ以上の垂直配向層を有する積層体を提供するに適した製造方法および製造装置を提供することができる。これらの積層体は、硬化性材料の複数の流れを提供し複合することによって提供することができる。
【0010】
本発明におけるこれらの態様と他の態様、特徴、長所は、添付の図面とともに、以下の種々の態様の詳しい説明で明らかにする。
【0011】
本発明に関する主題は、本明細書の最後に特許請求の範囲として明示されている。本発明における前述のおよび他の目的、特徴、及び長所は、添付の図面と併せて、以下の発明の詳細な説明から容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様に係る積層体の製造工程の概略図である。
【0013】
【図2】本発明の態様によって提供される垂直配向層と、従来技術によって提供される水平配向層との概略比較図である。
【0014】
【図3】本発明の一態様に係る積層体の製造工程の概略図である。
【0015】
【図4】本発明の一態様に係る積層体の製造装置の斜視図である。
【0016】
【図5】本発明の一態様に係るポリマーの三次元流路の斜視図である。
【0017】
【図6a】本発明の一態様に係るポリマー流トランジションプレートの分解斜視図である。
【0018】
【図6b】図6aに示したポリマー流トランジションプレートの分解斜視ワイヤーフレーム図である。
【0019】
【図7】本発明の一態様に係るポリマーの三次元流路の詳細な斜視図である。
【0020】
【図8】本発明の一態様に係る複数の垂直配向層を有するフィルムの写真である。
【0021】
【図9】本発明の態様の実施例をまとめた表である。
【0022】
【図10】本発明の一態様によって製造された積層体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一態様に係る積層体の製造工程10を示す概略図である。図示するように、工程は一般的に、流動性ポリマーのような1以上の硬化性材料を2つの押出機12、14に導入することによって開始される。本発明の態様は硬化性を有するいかなる材料、すなわち、ある条件下で第1の粘度を有し、第2の条件下で第2の粘度を有する任意の材料を使用することができるが、本発明の態様の説明を容易にするために、以下の説明では「ポリマー」の用語を使用する。この用語が本発明の態様で使用される任意の種類の硬化性材料の代表であることは理解されよう。本発明の態様では2以上の押出機12、14を使用できるが、図1に示す態様では2つの押出機12、14が示されており、押出機12は第1のポリマーAを受け入れ、押出機14は第2のポリマーBを受け入れるようになっている。一般的に押出機12、14内において、ポリマーの粘度を下げるために、例えば200〜400℃の温度にポリマーを加熱することができる。これによって、ポリマーは押出機12、14から排出され、次の処理ために取り扱われる。
【0024】
図1に示すように、押出機12、14から押し出されたポリマー、すなわち押出ポリマー13、15はそれぞれ、初期層構造17、すなわち、第1のポリマーAと第2のポリマーBからなる流体の複合流を形成するために、層の複合及びプログラミング工程に導入される。(例えば、ポリマーA、Bは以下の図4に示す複合装置に供給される。)複合工程16の後、ポリマーAとポリマーBからなる複合流17は複層化工程18に進められる。複層化工程18は、複合流17を、各々が第1のポリマーAと第2のポリマーBからなる複数の流れに分割する。複層化工程18は第1のポリマーAとポリマーBからなる複数の流れの複合流19を生成する。複層化18は流れとスペースのサイズによってのみ制限され、複層数は例えば1,000〜10,000の範囲内である。一般的に、複層化工程18はまた、複数の流れを互いに隣接するよう、例えば互いに横方向に隣接するよう配置し、隣接された複数の流れの少なくとも一部を複合して積層流19、例えば垂直配向積層体の流れを生成することができる。
【0025】
次に、複数の流れの複合流19は、シートあるいはフィルム形成工程20、例えばシートあるいはフィルム形成ダイに導入され、積層ポリマーA、B、C等のシートあるいはフィルム21が形成される。シートあるいはフィルム形成工程20では一般的に、流れ19の高さが低くなる間に流れ19の幅が増加して、シートあるいはフィルム21が形成される。
【0026】
本発明の態様によれば、シートあるいはフィルム21に含まれる層及びポリマーA、B、C等の種類の数は、層複合工程16に導入されるポリマーA、B、C等の数と複層化18の数に依存する。本発明の態様によれば、シートあるいはフィルム21は1,000以上のポリマー成分を含むことができる。
【0027】
図2は、従来技術によって提供される一般的な水平配向層26と本発明の態様によって提供される一般的な垂直配向層28との概略比較図24である。ただし、本発明の一態様において、本発明の方法及び装置によって水平配向層26を提供することもできる。例えば、米国特許第3,195,586号、3,557,265号、5,094,788号、及び5,628,950号の各明細書には、例えば図2の26で示すような水平配向層の製造方法及び製造装置が開示されている。米国特許第3,239,197号明細書には垂直配向層の製造方法及び製造装置が開示されているが、複数の層の混練前の初期ステップとしてのみである。この従来技術は、図2の28で示すような積層垂直配向層の製造方法あるいは製造装置を提供していない。
【0028】
図3は、本発明の一態様に係る積層体の製造方法の概略図30である。図3は、本発明の装置及び方法を用いたポリマー流のハンドリングの順序を示す概略図であり、例えば、本発明に係るポリマー層の分割、ポリマー層の再配置、及びポリマー層の再複合を含んでいる。例えば、図3において、複数のポリマー成分A、B、C等からなり、高さH、幅Wのポリマー流を持つ代表断面図32が示されている。断面図32は図1に示した層複合及びプログラミング工程16で形成することができ、代表的に図1の複合流17で表すことができる。図3に示す態様において、断面図32は2つのポリマーAとBの配列を含んでおり、ポリマーBの1つの構成部分の両側にポリマーAの2つの構成部分が並んだ構造を有している。これは、ポリマーのA-B-A配列と呼ぶことができる。図3の断面図32は本発明の態様に係るポリマー流の代表的な断面図にすぎないことは理解されよう。本発明の態様においては、無数の相対的位置に配列された3以上のポリマーを本発明の態様に従って取り扱うことができる。例えば、断面図32は、特に限定されないがA-B、A-B-C、A-B-A-C、A-B-C-A、A-B-B-C等、及びその他の所望の順序で配列された3以上のポリマーA、B、C等を含むことができる。
【0029】
図3に示すように、本発明の態様において、断面図32は断面図34に分割することができる。この態様において、断面図32は実質的に高さ寸法Hの半分に分割され、互いに垂直方向に配置され、各々がポリマー配列A-B-Aを有する2つの実質的に同一な断面図36、38からなる断面図34が生成されている。断面図36、38は断面図32を実質的に高さ寸法Hの半分に分割した断面図を表しているが、断面図36、38は等しい高さでなくてもよく、例えば高さHの1/4-3/4、及び1/3-2/3等、断面図32の高さHの相補的分数の高さを有していればよい。
【0030】
図3に示す態様において、断面図36、38の形状あるいはアスペクト比は40で示される断面図42、44に変化させることができる。この態様において、断面図36、38のアスペクト比、すなわち、幅に対する高さの比を所望のものに変化させることができる。ポリマー流36、38のアスペクト比は、34に示される第1のアスペクト比から40に示される第2のアスペクト比に変化させることができる。例えば、40で示す態様において、断面図36、38のアスペクト比は変化しており、断面図36、38の高さは増加して、断面図42、44では初期の断面図32の高さHと実質的に同じ高さとなっており、断面図36、38の幅は低減して、断面図42、44では初期の断面図32の幅Wの実質的に約半分の幅となっている。繰り返しになるが、34と40の間のアスペクト比の変化は例にすぎず、本発明の態様において、断面図32における高さHと幅Wは他の分数又は倍数であっても構わない。加えて、断面図36、38、42、44で表されるアスペクト比のバリエーションはそれぞれ初期の断面図32の寸法とはほとんどあるいは全く関係しないかもしれない。
【0031】
図3の40で示されるアスペクト比の変化は、図1の層複合及びプログラミング工程16で行うこともでき、図1の複合流17で表すこともできる。図3に示すように、34及び40で示されるポリマー流の操作において、ポリマー流の数とアスペクト比は変化してもよいが、ポリマー配列は維持される。すなわち、40における隣接したポリマーの配列は、初期の断面図32のA-B-A配列と同様である。
【0032】
図3のステップ46は本発明の態様に係るポリマー流の他の操作を示している。図示するように、ステップ46において、40のポリマー流42、44の配置がポリマー流48、50の配置に変化している。ポリマー流42、44の配置は、40で示した第1の位置から46で示す第2の位置に変化することができる。本発明の態様において、断面図48、50に示されるポリマー流の相対的位置は40の断面図42、44に示されるポリマー流の位置から平面方向に変化することができる。図3で示す態様において、ポリマー流42、44は再配置され、ポリマー流48、50は互いに実質的に水平方向な配列となっている。しかしながら、本発明の態様において、ポリマー流48、50の相対的位置は広く変化することができ、例えば、ポリマー流48、50は同一平面上になくてもよく、水平方向あるいは垂直方向に所定量離れていても構わない。加えて、ポリマー流48、50のうち少なくとも1つの断面図は、40のポリマー流42、44の方位に対して相対的に回転していても構わない。この再配置は図1の層複合及びプログラミング工程16で行うこともでき、図1の複合流17で表すこともできる。
【0033】
本発明の態様において、図3の46で示した再配置の後、断面図48、50で示されるポリマー流を複合して、52の断面図54で示す1つの流れとすることができる。この態様において、再配置された流れ48、50は、図3の仮想線56で示すように、共通の境界に沿って連結されており、一般的に少なくとも一部が複合して、断面図54の連続したポリマー流となる。
【0034】
図3に示す態様において、初期の断面図32は、断面図52と実質的に同一の高さH、実質的に同一の幅W(すなわち、実質的に同一のアスペクト比)を有する断面図54となるが、各ポリマーA、Bの配列と幅は変化している。図3の52で示されるこの再配置及び複合は、図1の複層化工程18で行うこともでき、図1の流れ19で表すこともできる。繰り返しになるが、本発明の態様において、46、52で示したポリマー流の複層化に際して初期のポリマー配列を維持することができる。すなわち、52の隣接したポリマー流54の配列は初期の断面図32のA-B-A配列と同様になり得る。
【0035】
図4は、本発明の一態様に係る積層体の製造装置60の斜視図であり、例えば図1及び3に示したプロセスを実施するものである。図5は、本発明の一態様において、図4で示した装置60を流れるポリマーの三次元流路80の斜視図である。本発明の一態様において、装置60は例えば図1及び3に示したポリマー流の操作を実施するのに適した複数のセクションを含んでいる。
【0036】
図4に示すように、装置60は少なくとも2つのポリマー入口64、66、例えばポリマーのそれぞれの供給源に接続されたフランジの入口を有するハウジング62を含んでいる。図示する態様において、入口64は図1の押出機12に接続され、入口66は図1の押出機14に接続されている。以降の説明では、具体的にポリマーAが入口64に導入され、ポリマーBが入口66に導入されるとする。図4に示す装置60は、2つのポリマー流を受け入れるのに適したものにすぎないが、本発明において、2以上の流れ、例えば5以上あるいは10以上のポリマー流を装置60に導入できることは理解されよう。
【0037】
装置60は、ポリマーA、Bを入口64、66からそれぞれ受け入れ、第1のポリマーAを少なくとも2つの流れの第1のポリマーAに分割し、少なくとも2つの流れの第1のポリマーAと第1のポリマーAとは異なる第2のポリマーBの少なくとも1つの流れと複合するに適した第1のセクション(複合化及び供給セクション)68を含んでいる。装置60のセクション68は、図1の層の複合化及び供給工程16に対応している。装置60はまた、第1のセクション68からポリマー複合流を受け入れ、2以上の複合流に複層化するに適した第2のセクション(複層化セクション)70を含んでいる。装置60のセクション70は、図1の複層化工程18に対応している。加えて、装置60はまた、第2のセクション70から複層化されたポリマー複合流を受け入れ、複合流の薄いシートあるいはフィルム76を製造し、シートあるいはフィルム76を出口74から流出させるに適した第3のセクション(シート形成セクション)72を含んでいる。装置60のセクション72は、図1のシートあるいはフィルム形成工程20に対応している。
【0038】
複合化及び供給セクション68の詳細を図5及び図5中の流路80によって詳しく図示する。図4、5に示すように、押出機12からのポリマーAの流れは図5では符号84で表される図4の入口64及び導入され、図5において流路94で表される供給セクション68内の長流路に導入される。例えば、セクション68内において、流路94は円状流路でもよいし、非円状流路でもよい。図5において、流路94の終点にある分岐96に示すように、図4のセクション68は入口流路94内の流れを2以上の流れ(図5において流路98、100に示す)に分割するに適した分割器を含んでいる。図5に示すように、図4のセクション68の流路98、100は断面を変えることができる。例えば図5に示すように、セクション68の流路はそれぞれ始めの端部102、104の第1の形状あるいはアスペクト比から、終わりの端部106、108の第2の形状あるいはアスペクト比に変化することができる。例えば、装置60のセクション68の流路98、100の高さ及び幅は一端から他端まで変化させることができる。例えば図5に示すように、流路98、100の幅は、第1の端部102、104において第2の端部106、108よりも大きく(あるいはより小さく)することができる。同様に、本発明の態様において、流路98、100の高さは、第1の端部102、104において第2の端部106、108よりも小さく(あるいはより大きく)することができる。一態様において、流路98、102の高さあるいは幅は、一端から他端まで変化しなくてもよい。繰り返しになるが、図5において2つの流路98、100のみが示されているが、装置60のセクション68は流路94を2以上の流路98、100、例えば装置60のセクション68において等しく分配された3以上あるいは4以上の流路に分割することができる。他の態様において、流路94は分割されず、1以上のポリマー流と複合される1つのポリマー流(例えば流路98)により構成してもよい。
【0039】
図5に示すように、図4に示す装置60のセクション68は、少なくとも1つの第2の入口流路を含むことができる。図4及び図5に示すように、押出機14からのポリマーBの流れは図5では符号86で表される入口66及びに導入され、図5において流路95で表されるセクション68内の長流路に導入される。例えば、セクション68内において、流路95は円状流路でもよいし、非円状流路でもよい。本発明の態様において、図5の流路95に対応するセクション68の流路は断面を変えることができる。図5に示すように、セクション68の流路95は始めの端部112の第1の形状あるいはアスペクト比から、終わりの端部116の第2の形状あるいはアスペクト比に変化することができる。流路95に対応する装置60のセクション68の流路の高さ及び/又は幅は一端から他端まで変化させることができる。例えば図5に示すように、流路95の始めの端部112において流路を断面視円状とし、流路95の終わりの端部116において流路を、例えば流路95が複合される流路98、100の形状に応じて、断面視矩形状とすることができる。流路95の断面変化は流路98、100と同様徐々でもよいし、急な変化でもよい。図5に示すように、流路95の形状は円状から矩形状に急激に変化することができる。繰り返しになるが、図5において1つの流路95のみが示されているが、装置60のセクション68は流路95を2以上の流路、例えば装置60のセクション68において等しく分配された3以上あるいは4以上の流路に分割することができる。
【0040】
図5の符号120で示すように、図4に示す装置60のセクション68はまた、1以上のポリマー流を複合して流路122で表される1つの流れを生成することができる。例えば図5に示すように、セクション68は図5の流路集中120で示すように、流れを集める内部流路を含むことができる。例えば図5に示すように、図4のセクション68はポリマーAの流路98、100とポリマーBの流路95とを集めてポリマーA、Bの複合流122を生成する流路を含むことができる。図5に示す流路95、98、100の形状及び方向に基づいて、図5の流路122内のポリマー流は、図1の断面32で示すA-B-A配列と方向のようになる。もちろん、本発明の態様において、流路の数の変化と、装置60のセクション68に導入されるポリマーA, B, C等の数の変化に応じて、セクション68において隣接するポリマーの配列を変化させることができる。
【0041】
本発明の態様において、図4に示すように、装置60のセクション68で複合されたポリマー流は、複層化セクション70に導入される。装置60のセクション70におけるポリマー流は図5の流路124で表されている。本発明の態様において、複層化及び再配置セクション70をなす流路は、所望のポリマー流の分割、再配列、及び再複合を決める互いに協同した流路を有する一連のプレートによって提供され得る。図6Aは、本発明の一態様において、装置60のセクション70で使用され得る3つのポリマー流トランジションプレート130の分解斜視図である。図6Bは、図6Aに示したポリマー流トランジションプレートのワイヤーフレーム図である。本発明の態様の説明を容易にするために、図6Aで示す種々の要素やアライメント孔は図6Bでは省略してある。
【0042】
図6Aに示すように、装置60のセクション70は所望の複層化と所望の配置とを行う複数のプレート130により構成できる。図示するように、プレート130は、3つのプレート132、134、136を含むことができ、所望の複層化に応じてプレートは増減できる。プレート132、134、136は所望の流路を形成するよう所望の形状、例えば正方形、矩形、多角形等の形状を有することができる。図6A、6Bで示す態様において、プレート132、134、136は断面視円状であり、必要に応じてプレートの組立と位置合わせを容易にするための複数の孔を含んでいる。例えばプレート132、134、136は各々、装置60内にプレート132、134、136を固定保持するネジ山を切ったボルト等の金具(図示せず)を受ける複数のスルーホール142、144、146を含んでいる。プレート132、134、136はまた、プレート132、134、136のそれぞれの流路の位置合わせを容易にする構造、例えば位置合わせあるいは合わせくぎを受けるに適した1以上の合わせくぎピンホール152、154、156を含んでいる。
【0043】
プレート132は、セクション68から、図6A、6Bにおいて矢印131で示されるポリマー流を受ける位置に配置することができる。本発明の態様において、プレート132、134、136は所望のポリマーの分割と再配置を行う流路を含んでいる。図7は本発明の一態様において、図6A、6Bに示すプレート132、134、136によって提供されるポリマーの流路150の三次元流路の詳細な斜視図である。参考のために、図6A、6Bに示す矢印131は図7にも示してある。図7に示す流路152、154、156はそれぞれプレート132、134、136のポリマー流に対応している。
【0044】
図6A、6Bに示すように、プレート132は、図7に示す流路159、160に対応した分割流路139、140の入口138と、出口141、143とを含んでいる。プレート132はポリマー流131を2つのポリマー流159、160に分割する機能を有する。プレート134は、プレート132の出口141、143にそれぞれ対応した入口145、147と、図7に示す流路161、162に対応した流路149、150と、出口164、166とを含んでいる。プレート134はポリマー流159、160をポリマー流161、162に再配置する機能を有する。プレート136は、プレート134の出口164、166にそれぞれ対応した入口168と、図7に示す流路165に対応した流路169と、出口170とを含んでいる。プレート136はポリマー流161、162を複合し位置合わせし、例えば以降のプロセスのために1つの流れ165とする機能を有する。繰り返しになるが、本発明の態様において、図6A、6Bではプレート132、134、136のセットは1つのみが図示されているが、1以上の同様の流路を有する同様のプレートのセットを複数用いても構わない。例えば、プレート134、136間に付加プレート、具体的にはプレート132、134と同様に複数の流路を有するプレートを配し、プレート134から流出した流れをさらに分割及び再配置しても構わない。
【0045】
図4に戻って、複層化セクション70で生成された複合ポリマー流(図7の流れ165)はシート形成セクション/ダイ72に進む。本発明の態様において、シート形成セクション72は、複合流165の薄いシートあるいはフィルムを製造し、このシートあるいはフィルム76を出口74から排出するに適している。一態様において、出口74から排出されるシートあるいはフィルム76は複数のポリマー成分からなる。これらのポリマー成分はしっかりと均一に配列した層を有することができ、その層は図2に示す実質的な垂直配向層28のように、シートあるいはフィルム76の幅に対して実質的に垂直方向に配列することができる。図8は、本発明の態様によって製造された複数の垂直配向層178を有するポリマーフィルム176の写真である。
【0046】
上述したように、本発明の態様において、硬化性流体として流動性と硬化性を有するいかなる材料をも使用することができるが、本発明の態様において流動性材料は一般にポリマーからなる。使用されるポリマーの例としては、ポリエチレンあるいはポリプロピレンのようなポリオレフィン;ポリスチレンのようなポリ芳香族ビニル;ポリメチルメタクリレート;ポリビニルアルコール;塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート;ポリエチレン−2,6− ナフタレートあるいはポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル;ナイロン6(ポリカプロラクタム)あるいはナイロン66(ポリ(ヘキサメチレンジアミン−co−アジピン酸))のようなポリアミド;ポリビスフェノールAカーボネートのようなポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリスルフォン;等の単独重合体、あるいはこれらの組合わせ、あるいはこれらの共重合体を含む樹脂を挙げることができる。硬化性流体は上記の2以上の樹脂の混合体であってもよい。
【0047】
一態様において、ポリエステル共重合体を使用する場合、その共重合成分はジカルボン酸成分であってもグリコール成分であってもよい。ジカルボン酸成分の例としてはイソフタル酸、フタル酸、あるいはナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルンボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、あるいはデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸; シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。本発明の態様で使用されるグリコール成分の例としては特に制限されず、ブタンジオール及びヘキサンジオール等の脂肪族ジオール; シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等を挙げることができる。
【0048】
使用される1以上の硬化性材料はエラストマーを含むことができる。エラストマーとしては例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、スチレンエラストマー、あるいは、これらの組合せが挙げられる。
【0049】
1以上の上記材料からなる流動性材料は例えば、可塑剤、プロセスオイル、滑剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、膠着防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、光重合開始剤、あるいはこれらの組合わせなどの有機あるいは無機の添加剤を含むことができる。
【0050】
本発明の他の態様において、1以上の硬化性流体の粘度はほぼ同一でも非同一でもよい。一態様において、しっかりと均一に配列した複数の層を有する積層体は、例えば実際の成形温度で剪断速度が15s-1程度の条件で、第1の硬化性流体と第2の硬化性流体の溶融粘度差が小さいときに得ることができる。互いに隣接した配列した硬化性材料の溶融粘度の比(すなわち、より低溶融粘度の材料の溶融粘度に対するより高溶融粘度の材料の溶融粘度の比)が、剪断速度が15s-1程度の条件において、約10以下、例えば約5以下であり、3以下が好ましい。例えば、第1の硬化性流体が第1の粘度を有し、第2の硬化性流体が第1の粘度より小さい第2の粘度を有することができる。第2の粘度に対する第1の粘度の比(粘度の単位には関係ない)は約10未満、例えば約5未満、あるいは3未満であることができる。
【実施例】
【0051】
ここで、図4〜7に記載の積層体製造装置を用い、2種類の硬化性流体を用いて積層体を作製した際の層構造について説明する。本発明の態様の効果を、本発明の態様に係る製造装置によって製造した積層体の試験によって確かめ、明らかとした。また、物性値の評価方法について説明する。各実施例で使用したポリマーと得られた結果を図9の表に示す。
(1)層構成、配列数
【0052】
積層体の層構成は、製造した層のサンプルを試験することで求めた。サンプルは、積層体を精密低速切断機ミクロトームを用いて断面を切り出して得、透過型光学顕微鏡、例えばオリンパス社製BX50、及びレーザ顕微鏡、例えばキーエンス社製VK-9500を用いて観察した。製造された層の寸法によっては、本発明の態様において層の寸法は例えばnmスケールであり、このような場合、走査型電子顕微鏡あるいは原子間力顕微鏡で試験をすることができる。
(2)溶融粘度の測定
【0053】
回転式レオメーター、例えばTAインスルツメント社製ARESを用いて、サンプルの動的粘弾性測定を行った。測定には平行円板(直径40mm)を用い、窒素雰囲気下、各実施例での成形温度、歪量3%、剪断速度1〜100s-1の条件で測定を行った。得られたデータのうち、剪断速度15s-1での複素粘性率を剪断粘度とした。実施例にて乾燥後にフィルム成形した樹脂については、本測定においても同様の条件にて乾燥を行った。
[実施例1]
【0054】
第1の硬化性材料としてポリメチルメタクリレート(PMMA、株式会社クラレ社製「パラペットGF」)を、第2の硬化性材料としてポリメチルメタクリレート(PMMA、株式会社クラレ社製「パラペットGF」)に青色顔料シアニンブルー(大日精化工業株式会社製「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を準備した。硬化性材料1(PMMA、青色顔料なし)と2(PMMA、青色顔料あり)を一昼夜80℃で乾燥した後、別個の押出機に供給した。
【0055】
硬化性材料1、2は、それぞれ押出機内にて温度250℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PMMA、青色顔料なし)と16層の第2の層(PMMA、青色顔料あり)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。
[実施例2]
【0056】
第1の硬化性材料としてポリカーボネート(PC、サビック社製「レキサン121R」)を、第2の硬化性材料としてこのポリカーボネートに青色顔料シアニンブルー(「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を準備した。硬化性材料1(PC、青色顔料なし)と2(PC、青色顔料あり)を一昼夜120℃で乾燥した後、別個の押出機に供給した。
【0057】
硬化性材料1、2は、それぞれ押出機内にて温度250℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PC、青色顔料なし)と16層の第2の層(PC、青色顔料あり)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。
[実施例3]
【0058】
第1の硬化性材料としてポリメチルメタクリレート(PMMA、パラペットGF)を、第2の硬化性材料としてポリプロピレン(PP、ハンツマン社製P4G3Z-050)を準備した。硬化性材料1を一昼夜80℃で乾燥した後、硬化性材料1、2を別個の押出機に供給した。
【0059】
硬化性材料1、2は、それぞれ押出機内にて温度230℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、9層の第1の層(PMMA)と8層の第2の層(PP)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。
[実施例4]
【0060】
第1の硬化性材料としてポリプロピレン(PP、ハンツマン社製「P4C5B-03」)を、第2の硬化性材料として熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(POE、デュポンダウエラストマー社製「エンゲージ8440」)を準備した。これらを別個の押出機に供給した。
【0061】
硬化性材料1(PP)と2(POE)は、それぞれ押出機内にて温度220℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、513層の第1の層(PP)と512層の第2の層(POE)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。
[実施例5]
【0062】
第1の硬化性材料としてポリスチレン(PS、東洋スチレン社製「HRM-12」)を、第2の硬化性材料としてポリメチルメタクリレート(PMMA、「パラペットGF」)に青色顔料シアニンブルー(「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を準備した。硬化性材料2(PMMA、青色顔料あり)を一昼夜80℃で乾燥した後、硬化性材料1、2を別個の押出機に供給した。
【0063】
硬化性材料1(PS)と2(PMMA、青色顔料あり)は、それぞれ押出機内にて温度240℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PS)と16層の第2の層(PMMA、青色顔料あり)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。成形温度240℃における硬化性材料1と2の溶融粘度比、より詳しくはより高溶融粘度の硬化性材料の他方の材料に対する溶融粘度比は、2.70であった。
[実施例6]
【0064】
実施例6、7は、本発明の態様において溶融粘度の差による影響を試験したものである。実施例6においては溶融粘度の差が小さいポリマーを用い、実施例7では溶融粘度の差が大きいポリマーを用いた。
【0065】
第1の硬化性材料として溶融粘度が860Pa/sのポリメチルメタクリレート(PMMA、株式会社クラレ社製「パラペットGH-1000S」)に青色顔料シアニンブルー(「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を、第2の硬化性材料として実施例2において使用した溶融粘度が1370Pa/sのポリカーボネート(PC、「レキサン121R」)を準備した。硬化性材料1、2をそれぞれ一昼夜80℃、120℃で乾燥した後、これらを別個の押出機に供給した。
【0066】
硬化性材料1(PS)と2(PMMA、青色顔料あり)は、それぞれ押出機内にて温度250℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PMMA、青色顔料あり)と16層の第2の層(PC)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。成形温度250℃における硬化性材料1と2の溶融粘度比、より詳しくはより高溶融粘度の硬化性材料の他方の材料に対する溶融粘度比は、1.59であった。
[実施例7]
【0067】
第1の硬化性材料として溶融粘度が563Pa/sのポリメチルメタクリレート(PMMA、「パラペットGH-1000S」)に青色顔料シアニンブルー(「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を、第2の硬化性材料として溶融粘度が2700Pa/sのポリメチルメタクリレート(PMMA、株式会社クラレ社製「パラペットEH」)を準備した。硬化性材料1、2を一昼夜80℃で乾燥した後、これらを別個の押出機に供給した。
【0068】
硬化性材料1(PMMA、低粘度)と2(PMMA、高粘度)は、それぞれ押出機内にて温度250℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PMMA、低粘度)と16層の第2の層(PMMA、高粘度)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。成形温度250℃における硬化性材料1と2の溶融粘度比、より詳しくはより高溶融粘度の硬化性材料の他方の材料に対する溶融粘度比は、5.54であった。
【0069】
実施例1-7で用いたポリマーと得られた結果を図9の表にまとめておく。図9は、本発明の態様に係る実施例1-7で得られた積層体の断面写真を含んでいる。図9から明らかなように、本発明の態様によれば、種々のポリマー、及び粘度比の異なる種々のポリマーから、積層体、とりわけ垂直配向積層体を提供することができる。
[実施例8]フィルム
【0070】
実施例2の樹脂を用いて同様の手順で層を作製し、ロールへと導き、リボンを得た。得られたリボンの幅は2.2mm、その厚みは190μmであった。
【0071】
図10は、本発明の一態様によって製造された積層体182の写真180である。図示する態様では、ポリプロピレン(PP)と熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(POE)とが交互に積層されて積層体182をなしている。写真180のスケールに示すように、積層体182の個々の層の厚みは約0.01mm未満である。図10に示すように、本発明の態様は数千のポリマー層を有する積層体に適用できる。
【0072】
本発明の態様の内容を理解しやすくするために、いくつかの態様について詳しく説明したが、従来技術における当業者が本発明の特許請求の範囲の趣旨から逸脱しない範囲内において、種々の変形、付加、及び置換を実施可能なことは明らかであろう。それ故、これらの変形、付加、及び置換は、以下に記載の特許請求の範囲で規定される本発明に含まれるものとみなす。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月5日に出願された米国仮出願番号第61/086,364号を基礎とする優先権を主張するものであり、その開示内容は完全な参照によって本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、例えば高分子材料からなる流動性および硬化性を有する材料から積層体を製造するための方法および製造装置に関する。本発明は特に、流動性のある材料を、材料が硬化する前に、流れを分割し、形状変化させ、および位置合わせする流路を通して流下させる製造装置および製造方法を提供する。
【0003】
積層シートあるいは積層フィルムは、種々の工業用途、例えば、包装、環境分離、光学特性、および構造安定性などに一般に使用されている。ポリマー積層体はその光学特性によって光学産業において有用である。積層フィルムおよび積層シートの機械特性はまた、例えば、活性成分を支持する基材として、電子産業および太陽電池産業において有益である。これらおよびその他の産業における優位性に伴って、バリア特性、光学特性、および構造特性がより優れた積層体が必要になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術において、ポリマー積層構造体を提供する種々の方法および装置が開示されている。例えば、米国特許第3,195,865号明細書、米国特許第3,239,197号明細書、米国特許第3,557,265号明細書、米国特許第5,094,788号明細書、および米国特許第5,628,950号明細書には、流動性のあるポリマーの流れを操作する種々の方法および装置が開示されている。しかしながら、以下の記載で明らかとなるように、これらの技術および関連技術のいずれも、例えば垂直方向に配向されたポリマー積層体を提供するなどの本発明の有利性を提供することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、光学分野、電気電子分野、工業分野、および包装分野などに用いられるフィルムやシートなど、多種多様な用途に用いられる垂直配向積層構造体を製造するための各種製造装置及び製造方法を含む。
【0006】
本発明の一態様は、少なくとも第1の硬化性流体の第1の流れと第2の硬化性流体の第2の流れを提供する工程と、前記第1の流れと前記第2の流れを複合して、前記第1の流体と前記第2の流体からなる複合流を提供する工程と、前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体からなる複数の流れに分割する工程と、前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置する工程と、前記横方向に隣接された前記複数の流れを複合して、垂直配向積層体を提供する工程とを含む積層体、例えば垂直配向積層体の製造方法である。本発明の一態様は、前記第1の流れを前記第1の流体の2つの流れに分割する工程をさらに含み、前記第1の流れと前記第2の流れを複合する工程が、前記第1の流体の前記2つの流れと前記第2の流れを複合して、第3の流れを提供する工程である製造方法である。
【0007】
本発明の態様は流動性および硬化性を有するいかなる材料にも適用されるが、発明の1つの態様において、流動性材料は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、あるいは、軟質塩化ビニル樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、あるいはこれらの組合せ、あるいはこれらと他の樹脂との組合わせ等のポリマーである。1種以上の上記材料からなる流動性材料は、例えば、液体、滑剤、光安定剤、難燃剤、膠着防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、光開始剤など、及びこれらの組合わせのような有機あるいは無機の添加剤を含んでいてもよい。
【0008】
本発明の他の一態様は、第1の硬化性流体の第1の流れと第2の硬化性流体の第2の流れを受け入れると共に、前記第1の流れと前記第2の流れを複合して前記第1の流体と前記第2の流体からなる複合流を提供するに適した供給ブロックと、前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体からなる複数の流れに分割するに適した複層化部と、前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置するに適した層配置部と、前記横方向に隣接された前記複数の流れを複合して垂直配向積層体を提供するに適した層複合部とを含む積層体、例えば垂直配向積層体の製造装置である。本発明の一態様は、前記第1の流れを2つの第1のポリマーの流れに分割するに適した分割器をさらに含み、前記供給ブロックが、前記2つの第1の流れと前記第2の流れを複合して前記複合流を提供するに適した製造装置である。繰り返しになるが、第1と第2の硬化性流体は、上記で挙げた1以上のポリマー、樹脂、あるいはプラスチックからなることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、例えば2以上の材料、例えば2以上の材料の交互配列、あるいは2以上の材料の繰返し配列からなる、数十、数百、数千、数万、数十万または数百万、あるいは数千万、あるいはそれ以上の垂直配向層を有する積層体を提供するに適した製造方法および製造装置を提供することができる。これらの積層体は、硬化性材料の複数の流れを提供し複合することによって提供することができる。
【0010】
本発明におけるこれらの態様と他の態様、特徴、長所は、添付の図面とともに、以下の種々の態様の詳しい説明で明らかにする。
【0011】
本発明に関する主題は、本明細書の最後に特許請求の範囲として明示されている。本発明における前述のおよび他の目的、特徴、及び長所は、添付の図面と併せて、以下の発明の詳細な説明から容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様に係る積層体の製造工程の概略図である。
【0013】
【図2】本発明の態様によって提供される垂直配向層と、従来技術によって提供される水平配向層との概略比較図である。
【0014】
【図3】本発明の一態様に係る積層体の製造工程の概略図である。
【0015】
【図4】本発明の一態様に係る積層体の製造装置の斜視図である。
【0016】
【図5】本発明の一態様に係るポリマーの三次元流路の斜視図である。
【0017】
【図6a】本発明の一態様に係るポリマー流トランジションプレートの分解斜視図である。
【0018】
【図6b】図6aに示したポリマー流トランジションプレートの分解斜視ワイヤーフレーム図である。
【0019】
【図7】本発明の一態様に係るポリマーの三次元流路の詳細な斜視図である。
【0020】
【図8】本発明の一態様に係る複数の垂直配向層を有するフィルムの写真である。
【0021】
【図9】本発明の態様の実施例をまとめた表である。
【0022】
【図10】本発明の一態様によって製造された積層体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一態様に係る積層体の製造工程10を示す概略図である。図示するように、工程は一般的に、流動性ポリマーのような1以上の硬化性材料を2つの押出機12、14に導入することによって開始される。本発明の態様は硬化性を有するいかなる材料、すなわち、ある条件下で第1の粘度を有し、第2の条件下で第2の粘度を有する任意の材料を使用することができるが、本発明の態様の説明を容易にするために、以下の説明では「ポリマー」の用語を使用する。この用語が本発明の態様で使用される任意の種類の硬化性材料の代表であることは理解されよう。本発明の態様では2以上の押出機12、14を使用できるが、図1に示す態様では2つの押出機12、14が示されており、押出機12は第1のポリマーAを受け入れ、押出機14は第2のポリマーBを受け入れるようになっている。一般的に押出機12、14内において、ポリマーの粘度を下げるために、例えば200〜400℃の温度にポリマーを加熱することができる。これによって、ポリマーは押出機12、14から排出され、次の処理ために取り扱われる。
【0024】
図1に示すように、押出機12、14から押し出されたポリマー、すなわち押出ポリマー13、15はそれぞれ、初期層構造17、すなわち、第1のポリマーAと第2のポリマーBからなる流体の複合流を形成するために、層の複合及びプログラミング工程に導入される。(例えば、ポリマーA、Bは以下の図4に示す複合装置に供給される。)複合工程16の後、ポリマーAとポリマーBからなる複合流17は複層化工程18に進められる。複層化工程18は、複合流17を、各々が第1のポリマーAと第2のポリマーBからなる複数の流れに分割する。複層化工程18は第1のポリマーAとポリマーBからなる複数の流れの複合流19を生成する。複層化18は流れとスペースのサイズによってのみ制限され、複層数は例えば1,000〜10,000の範囲内である。一般的に、複層化工程18はまた、複数の流れを互いに隣接するよう、例えば互いに横方向に隣接するよう配置し、隣接された複数の流れの少なくとも一部を複合して積層流19、例えば垂直配向積層体の流れを生成することができる。
【0025】
次に、複数の流れの複合流19は、シートあるいはフィルム形成工程20、例えばシートあるいはフィルム形成ダイに導入され、積層ポリマーA、B、C等のシートあるいはフィルム21が形成される。シートあるいはフィルム形成工程20では一般的に、流れ19の高さが低くなる間に流れ19の幅が増加して、シートあるいはフィルム21が形成される。
【0026】
本発明の態様によれば、シートあるいはフィルム21に含まれる層及びポリマーA、B、C等の種類の数は、層複合工程16に導入されるポリマーA、B、C等の数と複層化18の数に依存する。本発明の態様によれば、シートあるいはフィルム21は1,000以上のポリマー成分を含むことができる。
【0027】
図2は、従来技術によって提供される一般的な水平配向層26と本発明の態様によって提供される一般的な垂直配向層28との概略比較図24である。ただし、本発明の一態様において、本発明の方法及び装置によって水平配向層26を提供することもできる。例えば、米国特許第3,195,586号、3,557,265号、5,094,788号、及び5,628,950号の各明細書には、例えば図2の26で示すような水平配向層の製造方法及び製造装置が開示されている。米国特許第3,239,197号明細書には垂直配向層の製造方法及び製造装置が開示されているが、複数の層の混練前の初期ステップとしてのみである。この従来技術は、図2の28で示すような積層垂直配向層の製造方法あるいは製造装置を提供していない。
【0028】
図3は、本発明の一態様に係る積層体の製造方法の概略図30である。図3は、本発明の装置及び方法を用いたポリマー流のハンドリングの順序を示す概略図であり、例えば、本発明に係るポリマー層の分割、ポリマー層の再配置、及びポリマー層の再複合を含んでいる。例えば、図3において、複数のポリマー成分A、B、C等からなり、高さH、幅Wのポリマー流を持つ代表断面図32が示されている。断面図32は図1に示した層複合及びプログラミング工程16で形成することができ、代表的に図1の複合流17で表すことができる。図3に示す態様において、断面図32は2つのポリマーAとBの配列を含んでおり、ポリマーBの1つの構成部分の両側にポリマーAの2つの構成部分が並んだ構造を有している。これは、ポリマーのA-B-A配列と呼ぶことができる。図3の断面図32は本発明の態様に係るポリマー流の代表的な断面図にすぎないことは理解されよう。本発明の態様においては、無数の相対的位置に配列された3以上のポリマーを本発明の態様に従って取り扱うことができる。例えば、断面図32は、特に限定されないがA-B、A-B-C、A-B-A-C、A-B-C-A、A-B-B-C等、及びその他の所望の順序で配列された3以上のポリマーA、B、C等を含むことができる。
【0029】
図3に示すように、本発明の態様において、断面図32は断面図34に分割することができる。この態様において、断面図32は実質的に高さ寸法Hの半分に分割され、互いに垂直方向に配置され、各々がポリマー配列A-B-Aを有する2つの実質的に同一な断面図36、38からなる断面図34が生成されている。断面図36、38は断面図32を実質的に高さ寸法Hの半分に分割した断面図を表しているが、断面図36、38は等しい高さでなくてもよく、例えば高さHの1/4-3/4、及び1/3-2/3等、断面図32の高さHの相補的分数の高さを有していればよい。
【0030】
図3に示す態様において、断面図36、38の形状あるいはアスペクト比は40で示される断面図42、44に変化させることができる。この態様において、断面図36、38のアスペクト比、すなわち、幅に対する高さの比を所望のものに変化させることができる。ポリマー流36、38のアスペクト比は、34に示される第1のアスペクト比から40に示される第2のアスペクト比に変化させることができる。例えば、40で示す態様において、断面図36、38のアスペクト比は変化しており、断面図36、38の高さは増加して、断面図42、44では初期の断面図32の高さHと実質的に同じ高さとなっており、断面図36、38の幅は低減して、断面図42、44では初期の断面図32の幅Wの実質的に約半分の幅となっている。繰り返しになるが、34と40の間のアスペクト比の変化は例にすぎず、本発明の態様において、断面図32における高さHと幅Wは他の分数又は倍数であっても構わない。加えて、断面図36、38、42、44で表されるアスペクト比のバリエーションはそれぞれ初期の断面図32の寸法とはほとんどあるいは全く関係しないかもしれない。
【0031】
図3の40で示されるアスペクト比の変化は、図1の層複合及びプログラミング工程16で行うこともでき、図1の複合流17で表すこともできる。図3に示すように、34及び40で示されるポリマー流の操作において、ポリマー流の数とアスペクト比は変化してもよいが、ポリマー配列は維持される。すなわち、40における隣接したポリマーの配列は、初期の断面図32のA-B-A配列と同様である。
【0032】
図3のステップ46は本発明の態様に係るポリマー流の他の操作を示している。図示するように、ステップ46において、40のポリマー流42、44の配置がポリマー流48、50の配置に変化している。ポリマー流42、44の配置は、40で示した第1の位置から46で示す第2の位置に変化することができる。本発明の態様において、断面図48、50に示されるポリマー流の相対的位置は40の断面図42、44に示されるポリマー流の位置から平面方向に変化することができる。図3で示す態様において、ポリマー流42、44は再配置され、ポリマー流48、50は互いに実質的に水平方向な配列となっている。しかしながら、本発明の態様において、ポリマー流48、50の相対的位置は広く変化することができ、例えば、ポリマー流48、50は同一平面上になくてもよく、水平方向あるいは垂直方向に所定量離れていても構わない。加えて、ポリマー流48、50のうち少なくとも1つの断面図は、40のポリマー流42、44の方位に対して相対的に回転していても構わない。この再配置は図1の層複合及びプログラミング工程16で行うこともでき、図1の複合流17で表すこともできる。
【0033】
本発明の態様において、図3の46で示した再配置の後、断面図48、50で示されるポリマー流を複合して、52の断面図54で示す1つの流れとすることができる。この態様において、再配置された流れ48、50は、図3の仮想線56で示すように、共通の境界に沿って連結されており、一般的に少なくとも一部が複合して、断面図54の連続したポリマー流となる。
【0034】
図3に示す態様において、初期の断面図32は、断面図52と実質的に同一の高さH、実質的に同一の幅W(すなわち、実質的に同一のアスペクト比)を有する断面図54となるが、各ポリマーA、Bの配列と幅は変化している。図3の52で示されるこの再配置及び複合は、図1の複層化工程18で行うこともでき、図1の流れ19で表すこともできる。繰り返しになるが、本発明の態様において、46、52で示したポリマー流の複層化に際して初期のポリマー配列を維持することができる。すなわち、52の隣接したポリマー流54の配列は初期の断面図32のA-B-A配列と同様になり得る。
【0035】
図4は、本発明の一態様に係る積層体の製造装置60の斜視図であり、例えば図1及び3に示したプロセスを実施するものである。図5は、本発明の一態様において、図4で示した装置60を流れるポリマーの三次元流路80の斜視図である。本発明の一態様において、装置60は例えば図1及び3に示したポリマー流の操作を実施するのに適した複数のセクションを含んでいる。
【0036】
図4に示すように、装置60は少なくとも2つのポリマー入口64、66、例えばポリマーのそれぞれの供給源に接続されたフランジの入口を有するハウジング62を含んでいる。図示する態様において、入口64は図1の押出機12に接続され、入口66は図1の押出機14に接続されている。以降の説明では、具体的にポリマーAが入口64に導入され、ポリマーBが入口66に導入されるとする。図4に示す装置60は、2つのポリマー流を受け入れるのに適したものにすぎないが、本発明において、2以上の流れ、例えば5以上あるいは10以上のポリマー流を装置60に導入できることは理解されよう。
【0037】
装置60は、ポリマーA、Bを入口64、66からそれぞれ受け入れ、第1のポリマーAを少なくとも2つの流れの第1のポリマーAに分割し、少なくとも2つの流れの第1のポリマーAと第1のポリマーAとは異なる第2のポリマーBの少なくとも1つの流れと複合するに適した第1のセクション(複合化及び供給セクション)68を含んでいる。装置60のセクション68は、図1の層の複合化及び供給工程16に対応している。装置60はまた、第1のセクション68からポリマー複合流を受け入れ、2以上の複合流に複層化するに適した第2のセクション(複層化セクション)70を含んでいる。装置60のセクション70は、図1の複層化工程18に対応している。加えて、装置60はまた、第2のセクション70から複層化されたポリマー複合流を受け入れ、複合流の薄いシートあるいはフィルム76を製造し、シートあるいはフィルム76を出口74から流出させるに適した第3のセクション(シート形成セクション)72を含んでいる。装置60のセクション72は、図1のシートあるいはフィルム形成工程20に対応している。
【0038】
複合化及び供給セクション68の詳細を図5及び図5中の流路80によって詳しく図示する。図4、5に示すように、押出機12からのポリマーAの流れは図5では符号84で表される図4の入口64及び導入され、図5において流路94で表される供給セクション68内の長流路に導入される。例えば、セクション68内において、流路94は円状流路でもよいし、非円状流路でもよい。図5において、流路94の終点にある分岐96に示すように、図4のセクション68は入口流路94内の流れを2以上の流れ(図5において流路98、100に示す)に分割するに適した分割器を含んでいる。図5に示すように、図4のセクション68の流路98、100は断面を変えることができる。例えば図5に示すように、セクション68の流路はそれぞれ始めの端部102、104の第1の形状あるいはアスペクト比から、終わりの端部106、108の第2の形状あるいはアスペクト比に変化することができる。例えば、装置60のセクション68の流路98、100の高さ及び幅は一端から他端まで変化させることができる。例えば図5に示すように、流路98、100の幅は、第1の端部102、104において第2の端部106、108よりも大きく(あるいはより小さく)することができる。同様に、本発明の態様において、流路98、100の高さは、第1の端部102、104において第2の端部106、108よりも小さく(あるいはより大きく)することができる。一態様において、流路98、102の高さあるいは幅は、一端から他端まで変化しなくてもよい。繰り返しになるが、図5において2つの流路98、100のみが示されているが、装置60のセクション68は流路94を2以上の流路98、100、例えば装置60のセクション68において等しく分配された3以上あるいは4以上の流路に分割することができる。他の態様において、流路94は分割されず、1以上のポリマー流と複合される1つのポリマー流(例えば流路98)により構成してもよい。
【0039】
図5に示すように、図4に示す装置60のセクション68は、少なくとも1つの第2の入口流路を含むことができる。図4及び図5に示すように、押出機14からのポリマーBの流れは図5では符号86で表される入口66及びに導入され、図5において流路95で表されるセクション68内の長流路に導入される。例えば、セクション68内において、流路95は円状流路でもよいし、非円状流路でもよい。本発明の態様において、図5の流路95に対応するセクション68の流路は断面を変えることができる。図5に示すように、セクション68の流路95は始めの端部112の第1の形状あるいはアスペクト比から、終わりの端部116の第2の形状あるいはアスペクト比に変化することができる。流路95に対応する装置60のセクション68の流路の高さ及び/又は幅は一端から他端まで変化させることができる。例えば図5に示すように、流路95の始めの端部112において流路を断面視円状とし、流路95の終わりの端部116において流路を、例えば流路95が複合される流路98、100の形状に応じて、断面視矩形状とすることができる。流路95の断面変化は流路98、100と同様徐々でもよいし、急な変化でもよい。図5に示すように、流路95の形状は円状から矩形状に急激に変化することができる。繰り返しになるが、図5において1つの流路95のみが示されているが、装置60のセクション68は流路95を2以上の流路、例えば装置60のセクション68において等しく分配された3以上あるいは4以上の流路に分割することができる。
【0040】
図5の符号120で示すように、図4に示す装置60のセクション68はまた、1以上のポリマー流を複合して流路122で表される1つの流れを生成することができる。例えば図5に示すように、セクション68は図5の流路集中120で示すように、流れを集める内部流路を含むことができる。例えば図5に示すように、図4のセクション68はポリマーAの流路98、100とポリマーBの流路95とを集めてポリマーA、Bの複合流122を生成する流路を含むことができる。図5に示す流路95、98、100の形状及び方向に基づいて、図5の流路122内のポリマー流は、図1の断面32で示すA-B-A配列と方向のようになる。もちろん、本発明の態様において、流路の数の変化と、装置60のセクション68に導入されるポリマーA, B, C等の数の変化に応じて、セクション68において隣接するポリマーの配列を変化させることができる。
【0041】
本発明の態様において、図4に示すように、装置60のセクション68で複合されたポリマー流は、複層化セクション70に導入される。装置60のセクション70におけるポリマー流は図5の流路124で表されている。本発明の態様において、複層化及び再配置セクション70をなす流路は、所望のポリマー流の分割、再配列、及び再複合を決める互いに協同した流路を有する一連のプレートによって提供され得る。図6Aは、本発明の一態様において、装置60のセクション70で使用され得る3つのポリマー流トランジションプレート130の分解斜視図である。図6Bは、図6Aに示したポリマー流トランジションプレートのワイヤーフレーム図である。本発明の態様の説明を容易にするために、図6Aで示す種々の要素やアライメント孔は図6Bでは省略してある。
【0042】
図6Aに示すように、装置60のセクション70は所望の複層化と所望の配置とを行う複数のプレート130により構成できる。図示するように、プレート130は、3つのプレート132、134、136を含むことができ、所望の複層化に応じてプレートは増減できる。プレート132、134、136は所望の流路を形成するよう所望の形状、例えば正方形、矩形、多角形等の形状を有することができる。図6A、6Bで示す態様において、プレート132、134、136は断面視円状であり、必要に応じてプレートの組立と位置合わせを容易にするための複数の孔を含んでいる。例えばプレート132、134、136は各々、装置60内にプレート132、134、136を固定保持するネジ山を切ったボルト等の金具(図示せず)を受ける複数のスルーホール142、144、146を含んでいる。プレート132、134、136はまた、プレート132、134、136のそれぞれの流路の位置合わせを容易にする構造、例えば位置合わせあるいは合わせくぎを受けるに適した1以上の合わせくぎピンホール152、154、156を含んでいる。
【0043】
プレート132は、セクション68から、図6A、6Bにおいて矢印131で示されるポリマー流を受ける位置に配置することができる。本発明の態様において、プレート132、134、136は所望のポリマーの分割と再配置を行う流路を含んでいる。図7は本発明の一態様において、図6A、6Bに示すプレート132、134、136によって提供されるポリマーの流路150の三次元流路の詳細な斜視図である。参考のために、図6A、6Bに示す矢印131は図7にも示してある。図7に示す流路152、154、156はそれぞれプレート132、134、136のポリマー流に対応している。
【0044】
図6A、6Bに示すように、プレート132は、図7に示す流路159、160に対応した分割流路139、140の入口138と、出口141、143とを含んでいる。プレート132はポリマー流131を2つのポリマー流159、160に分割する機能を有する。プレート134は、プレート132の出口141、143にそれぞれ対応した入口145、147と、図7に示す流路161、162に対応した流路149、150と、出口164、166とを含んでいる。プレート134はポリマー流159、160をポリマー流161、162に再配置する機能を有する。プレート136は、プレート134の出口164、166にそれぞれ対応した入口168と、図7に示す流路165に対応した流路169と、出口170とを含んでいる。プレート136はポリマー流161、162を複合し位置合わせし、例えば以降のプロセスのために1つの流れ165とする機能を有する。繰り返しになるが、本発明の態様において、図6A、6Bではプレート132、134、136のセットは1つのみが図示されているが、1以上の同様の流路を有する同様のプレートのセットを複数用いても構わない。例えば、プレート134、136間に付加プレート、具体的にはプレート132、134と同様に複数の流路を有するプレートを配し、プレート134から流出した流れをさらに分割及び再配置しても構わない。
【0045】
図4に戻って、複層化セクション70で生成された複合ポリマー流(図7の流れ165)はシート形成セクション/ダイ72に進む。本発明の態様において、シート形成セクション72は、複合流165の薄いシートあるいはフィルムを製造し、このシートあるいはフィルム76を出口74から排出するに適している。一態様において、出口74から排出されるシートあるいはフィルム76は複数のポリマー成分からなる。これらのポリマー成分はしっかりと均一に配列した層を有することができ、その層は図2に示す実質的な垂直配向層28のように、シートあるいはフィルム76の幅に対して実質的に垂直方向に配列することができる。図8は、本発明の態様によって製造された複数の垂直配向層178を有するポリマーフィルム176の写真である。
【0046】
上述したように、本発明の態様において、硬化性流体として流動性と硬化性を有するいかなる材料をも使用することができるが、本発明の態様において流動性材料は一般にポリマーからなる。使用されるポリマーの例としては、ポリエチレンあるいはポリプロピレンのようなポリオレフィン;ポリスチレンのようなポリ芳香族ビニル;ポリメチルメタクリレート;ポリビニルアルコール;塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート;ポリエチレン−2,6− ナフタレートあるいはポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル;ナイロン6(ポリカプロラクタム)あるいはナイロン66(ポリ(ヘキサメチレンジアミン−co−アジピン酸))のようなポリアミド;ポリビスフェノールAカーボネートのようなポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリスルフォン;等の単独重合体、あるいはこれらの組合わせ、あるいはこれらの共重合体を含む樹脂を挙げることができる。硬化性流体は上記の2以上の樹脂の混合体であってもよい。
【0047】
一態様において、ポリエステル共重合体を使用する場合、その共重合成分はジカルボン酸成分であってもグリコール成分であってもよい。ジカルボン酸成分の例としてはイソフタル酸、フタル酸、あるいはナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルンボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、あるいはデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸; シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。本発明の態様で使用されるグリコール成分の例としては特に制限されず、ブタンジオール及びヘキサンジオール等の脂肪族ジオール; シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等を挙げることができる。
【0048】
使用される1以上の硬化性材料はエラストマーを含むことができる。エラストマーとしては例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、スチレンエラストマー、あるいは、これらの組合せが挙げられる。
【0049】
1以上の上記材料からなる流動性材料は例えば、可塑剤、プロセスオイル、滑剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、膠着防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、光重合開始剤、あるいはこれらの組合わせなどの有機あるいは無機の添加剤を含むことができる。
【0050】
本発明の他の態様において、1以上の硬化性流体の粘度はほぼ同一でも非同一でもよい。一態様において、しっかりと均一に配列した複数の層を有する積層体は、例えば実際の成形温度で剪断速度が15s-1程度の条件で、第1の硬化性流体と第2の硬化性流体の溶融粘度差が小さいときに得ることができる。互いに隣接した配列した硬化性材料の溶融粘度の比(すなわち、より低溶融粘度の材料の溶融粘度に対するより高溶融粘度の材料の溶融粘度の比)が、剪断速度が15s-1程度の条件において、約10以下、例えば約5以下であり、3以下が好ましい。例えば、第1の硬化性流体が第1の粘度を有し、第2の硬化性流体が第1の粘度より小さい第2の粘度を有することができる。第2の粘度に対する第1の粘度の比(粘度の単位には関係ない)は約10未満、例えば約5未満、あるいは3未満であることができる。
【実施例】
【0051】
ここで、図4〜7に記載の積層体製造装置を用い、2種類の硬化性流体を用いて積層体を作製した際の層構造について説明する。本発明の態様の効果を、本発明の態様に係る製造装置によって製造した積層体の試験によって確かめ、明らかとした。また、物性値の評価方法について説明する。各実施例で使用したポリマーと得られた結果を図9の表に示す。
(1)層構成、配列数
【0052】
積層体の層構成は、製造した層のサンプルを試験することで求めた。サンプルは、積層体を精密低速切断機ミクロトームを用いて断面を切り出して得、透過型光学顕微鏡、例えばオリンパス社製BX50、及びレーザ顕微鏡、例えばキーエンス社製VK-9500を用いて観察した。製造された層の寸法によっては、本発明の態様において層の寸法は例えばnmスケールであり、このような場合、走査型電子顕微鏡あるいは原子間力顕微鏡で試験をすることができる。
(2)溶融粘度の測定
【0053】
回転式レオメーター、例えばTAインスルツメント社製ARESを用いて、サンプルの動的粘弾性測定を行った。測定には平行円板(直径40mm)を用い、窒素雰囲気下、各実施例での成形温度、歪量3%、剪断速度1〜100s-1の条件で測定を行った。得られたデータのうち、剪断速度15s-1での複素粘性率を剪断粘度とした。実施例にて乾燥後にフィルム成形した樹脂については、本測定においても同様の条件にて乾燥を行った。
[実施例1]
【0054】
第1の硬化性材料としてポリメチルメタクリレート(PMMA、株式会社クラレ社製「パラペットGF」)を、第2の硬化性材料としてポリメチルメタクリレート(PMMA、株式会社クラレ社製「パラペットGF」)に青色顔料シアニンブルー(大日精化工業株式会社製「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を準備した。硬化性材料1(PMMA、青色顔料なし)と2(PMMA、青色顔料あり)を一昼夜80℃で乾燥した後、別個の押出機に供給した。
【0055】
硬化性材料1、2は、それぞれ押出機内にて温度250℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PMMA、青色顔料なし)と16層の第2の層(PMMA、青色顔料あり)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。
[実施例2]
【0056】
第1の硬化性材料としてポリカーボネート(PC、サビック社製「レキサン121R」)を、第2の硬化性材料としてこのポリカーボネートに青色顔料シアニンブルー(「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を準備した。硬化性材料1(PC、青色顔料なし)と2(PC、青色顔料あり)を一昼夜120℃で乾燥した後、別個の押出機に供給した。
【0057】
硬化性材料1、2は、それぞれ押出機内にて温度250℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PC、青色顔料なし)と16層の第2の層(PC、青色顔料あり)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。
[実施例3]
【0058】
第1の硬化性材料としてポリメチルメタクリレート(PMMA、パラペットGF)を、第2の硬化性材料としてポリプロピレン(PP、ハンツマン社製P4G3Z-050)を準備した。硬化性材料1を一昼夜80℃で乾燥した後、硬化性材料1、2を別個の押出機に供給した。
【0059】
硬化性材料1、2は、それぞれ押出機内にて温度230℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、9層の第1の層(PMMA)と8層の第2の層(PP)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。
[実施例4]
【0060】
第1の硬化性材料としてポリプロピレン(PP、ハンツマン社製「P4C5B-03」)を、第2の硬化性材料として熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(POE、デュポンダウエラストマー社製「エンゲージ8440」)を準備した。これらを別個の押出機に供給した。
【0061】
硬化性材料1(PP)と2(POE)は、それぞれ押出機内にて温度220℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、513層の第1の層(PP)と512層の第2の層(POE)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。
[実施例5]
【0062】
第1の硬化性材料としてポリスチレン(PS、東洋スチレン社製「HRM-12」)を、第2の硬化性材料としてポリメチルメタクリレート(PMMA、「パラペットGF」)に青色顔料シアニンブルー(「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を準備した。硬化性材料2(PMMA、青色顔料あり)を一昼夜80℃で乾燥した後、硬化性材料1、2を別個の押出機に供給した。
【0063】
硬化性材料1(PS)と2(PMMA、青色顔料あり)は、それぞれ押出機内にて温度240℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PS)と16層の第2の層(PMMA、青色顔料あり)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。成形温度240℃における硬化性材料1と2の溶融粘度比、より詳しくはより高溶融粘度の硬化性材料の他方の材料に対する溶融粘度比は、2.70であった。
[実施例6]
【0064】
実施例6、7は、本発明の態様において溶融粘度の差による影響を試験したものである。実施例6においては溶融粘度の差が小さいポリマーを用い、実施例7では溶融粘度の差が大きいポリマーを用いた。
【0065】
第1の硬化性材料として溶融粘度が860Pa/sのポリメチルメタクリレート(PMMA、株式会社クラレ社製「パラペットGH-1000S」)に青色顔料シアニンブルー(「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を、第2の硬化性材料として実施例2において使用した溶融粘度が1370Pa/sのポリカーボネート(PC、「レキサン121R」)を準備した。硬化性材料1、2をそれぞれ一昼夜80℃、120℃で乾燥した後、これらを別個の押出機に供給した。
【0066】
硬化性材料1(PS)と2(PMMA、青色顔料あり)は、それぞれ押出機内にて温度250℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PMMA、青色顔料あり)と16層の第2の層(PC)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。成形温度250℃における硬化性材料1と2の溶融粘度比、より詳しくはより高溶融粘度の硬化性材料の他方の材料に対する溶融粘度比は、1.59であった。
[実施例7]
【0067】
第1の硬化性材料として溶融粘度が563Pa/sのポリメチルメタクリレート(PMMA、「パラペットGH-1000S」)に青色顔料シアニンブルー(「シアニンブルー4937」)を少量添加した材料を、第2の硬化性材料として溶融粘度が2700Pa/sのポリメチルメタクリレート(PMMA、株式会社クラレ社製「パラペットEH」)を準備した。硬化性材料1、2を一昼夜80℃で乾燥した後、これらを別個の押出機に供給した。
【0068】
硬化性材料1(PMMA、低粘度)と2(PMMA、高粘度)は、それぞれ押出機内にて温度250℃で溶融した。これらの材料はギヤポンプで計量した後、それぞれの導入管より供給ブロックに導入し、さらに図6に示す装置で2つの流れに分割し、再配置し、積層した。その積層状態を保持したまま、層をロールへと導き、17層の第1の層(PMMA、低粘度)と16層の第2の層(PMMA、高粘度)が交互に垂直方向に配向した積層体を作製した。成形温度250℃における硬化性材料1と2の溶融粘度比、より詳しくはより高溶融粘度の硬化性材料の他方の材料に対する溶融粘度比は、5.54であった。
【0069】
実施例1-7で用いたポリマーと得られた結果を図9の表にまとめておく。図9は、本発明の態様に係る実施例1-7で得られた積層体の断面写真を含んでいる。図9から明らかなように、本発明の態様によれば、種々のポリマー、及び粘度比の異なる種々のポリマーから、積層体、とりわけ垂直配向積層体を提供することができる。
[実施例8]フィルム
【0070】
実施例2の樹脂を用いて同様の手順で層を作製し、ロールへと導き、リボンを得た。得られたリボンの幅は2.2mm、その厚みは190μmであった。
【0071】
図10は、本発明の一態様によって製造された積層体182の写真180である。図示する態様では、ポリプロピレン(PP)と熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(POE)とが交互に積層されて積層体182をなしている。写真180のスケールに示すように、積層体182の個々の層の厚みは約0.01mm未満である。図10に示すように、本発明の態様は数千のポリマー層を有する積層体に適用できる。
【0072】
本発明の態様の内容を理解しやすくするために、いくつかの態様について詳しく説明したが、従来技術における当業者が本発明の特許請求の範囲の趣旨から逸脱しない範囲内において、種々の変形、付加、及び置換を実施可能なことは明らかであろう。それ故、これらの変形、付加、及び置換は、以下に記載の特許請求の範囲で規定される本発明に含まれるものとみなす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の硬化性流体の第1の流れと第2の硬化性流体の第2の流れを提供する工程と、
前記第1の流れと前記第2の流れを複合して、前記第1の流体と前記第2の流体からなる複合流を提供する工程と、
前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体からなる複数の流れに分割する工程と、
前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置する工程と、
前記横方向に隣接された前記複数の流れを複合して、垂直配向積層体を提供する工程とを含む垂直配向積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の流れを前記第1の流体の2つの流れに分割する工程をさらに含み、
前記第1の流れと前記第2の流れを複合する工程が、前記第1の流体の前記2つの流れと前記第2の流れを複合する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記複合流を複数の流れに分割する工程が、前記複合流を複数の流路に導入する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置する工程が、前記複数の流れを分離された複数の流路に通す工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置する工程が、前記複数の流れを横方向に隣接された複数の出口から流出させる工程である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1の硬化性流体と第2の硬化性流体が第1の流動性ポリマーと第2の流動性ポリマーである請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1の硬化性流体が第1の粘度を有し、前記第2の硬化性流体が第1の粘度より大きい第2の粘度を有し、第2の粘度に対する第1の粘度の比が3未満である請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
少なくとも第3の硬化性流体からなる第3の流れを提供する工程をさらに含み、
前記第1の流れと前記第2の流れを複合する工程が、前記第1の流れと前記第2の流れと前記第3の流れを複合して、前記第1の流体と前記第2の流体と少なくとも前記第3の流体からなる複合流を提供する工程であり、
前記複合流を複数の流れに分割する工程が、前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体と前記第3の流体からなる複数の流れに分割する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
第1の硬化性材料、第2の硬化性材料、および第3の硬化性材料のうち少なくとも2つが実質的に同じ硬化性材料からなる請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第3の硬化性流体の前記第3の流れを提供し、複合する工程を含む請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記垂直配向積層体が少なくとも1,000層を含む請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
第1の硬化性流体の第1の流れと第2の硬化性流体の第2の流れを受け入れると共に、前記第1の流れと前記第2の流れを複合して前記第1の流体と前記第2の流体からなる複合流を提供するに適した供給ブロックと、
前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体からなる複数の流れに分割するに適した複層化部と、
前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置するに適した層配置部と、
前記横方向に隣接された前記複数の流れを複合して垂直配向積層体を提供するに適した層複合部とを含む垂直配向積層体の製造装置。
【請求項13】
前記第1の流れを2つの第1のポリマーの流れに分割するに適した分割器をさらに含み、
前記供給ブロックが、前記2つの第1の流れと前記第2の流れを複合して前記複合流を提供するに適したものである請求項12記載の製造装置。
【請求項14】
前記複層化部が複数の流路からなる請求項13に記載の製造装置。
【請求項15】
前記層配置部が複数の分離された流路からなる請求項12に記載の製造装置。
【請求項16】
前記層複合部が横方向に隣接された複数の出口をさらに含む請求項15に記載の製造装置。
【請求項17】
前記第1の硬化性流体と第2の硬化性流体が第1の流動性ポリマーと第2の流動性ポリマーである請求項12に記載の製造装置。
【請求項18】
前記供給ブロックが、さらに第3の硬化性流体からなる第3の流れを受け入れ、前記第1の流れと前記第2の流れと前記第3の流れを複合して前記第1の流体と前記第2の流体と前記第3の流体からなる硬化性流体の前記複合流を提供するに適したものであり、
前記複層化部が、前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体と前記第3の流体からなる複数の流れに分割するに適したものである請求項12に記載の製造装置。
【請求項19】
前記第3の硬化性流体の前記第3の流れを複合するに適したものである請求項18に記載の製造装置。
【請求項20】
前記垂直配向積層体が少なくとも1,000層を含む請求項12〜19のいずれかに記載の製造装置。
【請求項1】
少なくとも第1の硬化性流体の第1の流れと第2の硬化性流体の第2の流れを提供する工程と、
前記第1の流れと前記第2の流れを複合して、前記第1の流体と前記第2の流体からなる複合流を提供する工程と、
前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体からなる複数の流れに分割する工程と、
前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置する工程と、
前記横方向に隣接された前記複数の流れを複合して、垂直配向積層体を提供する工程とを含む垂直配向積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の流れを前記第1の流体の2つの流れに分割する工程をさらに含み、
前記第1の流れと前記第2の流れを複合する工程が、前記第1の流体の前記2つの流れと前記第2の流れを複合する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記複合流を複数の流れに分割する工程が、前記複合流を複数の流路に導入する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置する工程が、前記複数の流れを分離された複数の流路に通す工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置する工程が、前記複数の流れを横方向に隣接された複数の出口から流出させる工程である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1の硬化性流体と第2の硬化性流体が第1の流動性ポリマーと第2の流動性ポリマーである請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1の硬化性流体が第1の粘度を有し、前記第2の硬化性流体が第1の粘度より大きい第2の粘度を有し、第2の粘度に対する第1の粘度の比が3未満である請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
少なくとも第3の硬化性流体からなる第3の流れを提供する工程をさらに含み、
前記第1の流れと前記第2の流れを複合する工程が、前記第1の流れと前記第2の流れと前記第3の流れを複合して、前記第1の流体と前記第2の流体と少なくとも前記第3の流体からなる複合流を提供する工程であり、
前記複合流を複数の流れに分割する工程が、前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体と前記第3の流体からなる複数の流れに分割する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
第1の硬化性材料、第2の硬化性材料、および第3の硬化性材料のうち少なくとも2つが実質的に同じ硬化性材料からなる請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第3の硬化性流体の前記第3の流れを提供し、複合する工程を含む請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記垂直配向積層体が少なくとも1,000層を含む請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
第1の硬化性流体の第1の流れと第2の硬化性流体の第2の流れを受け入れると共に、前記第1の流れと前記第2の流れを複合して前記第1の流体と前記第2の流体からなる複合流を提供するに適した供給ブロックと、
前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体からなる複数の流れに分割するに適した複層化部と、
前記複数の流れを互いに横方向に隣接するよう配置するに適した層配置部と、
前記横方向に隣接された前記複数の流れを複合して垂直配向積層体を提供するに適した層複合部とを含む垂直配向積層体の製造装置。
【請求項13】
前記第1の流れを2つの第1のポリマーの流れに分割するに適した分割器をさらに含み、
前記供給ブロックが、前記2つの第1の流れと前記第2の流れを複合して前記複合流を提供するに適したものである請求項12記載の製造装置。
【請求項14】
前記複層化部が複数の流路からなる請求項13に記載の製造装置。
【請求項15】
前記層配置部が複数の分離された流路からなる請求項12に記載の製造装置。
【請求項16】
前記層複合部が横方向に隣接された複数の出口をさらに含む請求項15に記載の製造装置。
【請求項17】
前記第1の硬化性流体と第2の硬化性流体が第1の流動性ポリマーと第2の流動性ポリマーである請求項12に記載の製造装置。
【請求項18】
前記供給ブロックが、さらに第3の硬化性流体からなる第3の流れを受け入れ、前記第1の流れと前記第2の流れと前記第3の流れを複合して前記第1の流体と前記第2の流体と前記第3の流体からなる硬化性流体の前記複合流を提供するに適したものであり、
前記複層化部が、前記複合流を、各々が前記第1の流体と前記第2の流体と前記第3の流体からなる複数の流れに分割するに適したものである請求項12に記載の製造装置。
【請求項19】
前記第3の硬化性流体の前記第3の流れを複合するに適したものである請求項18に記載の製造装置。
【請求項20】
前記垂直配向積層体が少なくとも1,000層を含む請求項12〜19のいずれかに記載の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2011−530427(P2011−530427A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522207(P2011−522207)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/052805
【国際公開番号】WO2010/017271
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(500057548)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ ローウェル (2)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/052805
【国際公開番号】WO2010/017271
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(500057548)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ ローウェル (2)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】
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