説明

積層体の製造方法

【課題】十分なガスバリア性を有する積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】真空チャンバーと、平行ないしほぼ平行に対向して配置され、内部に磁場発生部材61,62を備えている一対の成膜ロール31,32と、極性が反転するプラズマ電源とを備えるプラズマCVD成膜装置を用いて行われる積層体の製造方法であって、真空チャンバー内で、長尺の基材の表面の第一の部分と、基材の表面の第二の部分とが対向するように基材を成膜ロールに巻き掛けた状態で基材を搬送しながら、成膜ロールの間の成膜空間に有機珪素化合物のガスと酸素ガスを含む成膜ガスを供給し、磁場発生部材により成膜空間に磁場を発生させ、成膜ロール間にプラズマ電源により放電プラズマを発生させ、基材上に連続的に薄膜層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD成膜による積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤といった物品の包装に適する容器として好適に用いることができる。近年、プラスチックフィルム等の基材フィルムの一方の表面上に、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウムなどの無機化合物の薄膜層を成膜して形成されたガスバリア性フィルムが提案されている。
【0003】
このように無機化合物の薄膜層をプラスチック基材の表面上に成膜する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD)が知られている。
また、このような成膜方法を用いて製造したガスバリア性フィルムとして、例えば、特開平4−89236号公報(特許文献1)には、プラスチック基材の表面上に、蒸着により形成された2層以上のケイ素酸化物膜からなる積層蒸着膜層が設けられたガスバリア性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−89236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の成膜方法を用いたガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤等のような包装容器のガスバリア性が比較的低くても満足できる物品用のガスバリア性フィルムとしては使用することができるが、有機EL素子や有機薄膜太陽電池等の電子デバイスの包装用のガスバリア性フィルムとしてはガスバリア性の点で必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分なガスバリア性を有する積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、バリア膜の形成法として、特定のプラズマCVD法を採用することにより、十分なガスバリア性を有する積層フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明によれば、以下のことが提供される。
[1]真空チャンバーと、平行ないしほぼ平行に対向して配置され、内部に磁場発生部材を備えている一対の成膜ロールと、極性が反転するプラズマ電源とを備えるプラズマCVD成膜装置を用いて行われる積層体の製造方法であって、
前記真空チャンバー内で、長尺の基材の表面の第一の部分と、該基材の表面の第二の部分とが対向するように記基材を前記成膜ロールに巻き掛けた状態で該基材を搬送しながら、前記成膜ロールの間の成膜空間に有機珪素化合物のガスと酸素ガスを含む成膜ガスを供給し、前記磁場発生部材により前記成膜空間に磁場を発生させ、前記成膜ロール間に前記プラズマ電源により放電プラズマを発生させ、これにより、該基材上に連続的に薄膜層を形成するものであり、前記成膜空間の圧力が0.1〜2.5Paであり、前記有機珪素化合物のガスの流量が、基材の面積速度1m/分あたり、0℃、1気圧基準で85〜230sccmである積層体の製造方法。
[2]真空チャンバーと、平行ないしほぼ平行に対向して配置され、内部に磁場発生部材を備えている一対の成膜ロールと、極性が反転するプラズマ電源とを備えるプラズマCVD成膜装置を用いて行われる積層体の製造方法であって、
前記真空チャンバー内で、長尺の基材の表面の第一の部分と、該基材の表面の第二の部分とが対向するように前記基材を前記成膜ロールに巻き掛けた状態で該基材を搬送しながら、前記成膜ロールの間の成膜空間に有機珪素化合物のガスと酸素ガスを含む成膜ガスを供給し、前記磁場発生部材により前記成膜空間に磁場を発生させ、前記成膜ロール間に前記プラズマ電源により放電プラズマを発生させ、これにより、該基材上に連続的に薄膜層を形成するものであり、前記成膜空間の圧力が0.1〜2.5Paであり、前記有機珪素化合物のガスの流量が、0℃、1気圧基準で15〜40sccmである積層体の製造方法。
[3]前記成膜空間の圧力が0.3〜1.5Paである[1]または[2]に記載の積層体の製造方法。
[4]前記有機珪素化合物のガスの流量が、基材の面積速度1m/分あたり、0℃、1気圧基準で、115〜170sccmである[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[5]前記成膜ガスの有機珪素化合物のガスと酸素ガスの流量比(酸素ガスの流量)/(有機珪素化合物のガスの流量)が、有機珪素化合物を完全に酸化させるモル比の倍以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[6]前記成膜ガスの有機珪素化合物のガスと酸素ガスの流量比(酸素ガスの流量)/(有機珪素化合物のガスの流量)が、有機珪素化合物を完全に酸化させるモル比以下である[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[7]前記成膜ガスの有機珪素化合物がヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)であり、HMDSOと酸素ガスの流量比(酸素ガス流量)/(HMDSOガスの流量)が、24以下である[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[8]前記成膜ガスの有機珪素化合物がヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)であり、HMDSOと酸素ガスの流量比(酸素ガス流量)/(HMDSOガスの流量)が、12以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体の製造方法によれば、十分なガスバリア性を有する積層フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発明の方法を用いて積層フィルムを製造するのに好ましい製造装置の一例を示す模式図である。
【図2】Ca腐食法を用いて評価した積層フィルムのマイクロスコープ(光学顕微鏡)画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(定義)
以下に、本発明に関する主要な用語の定義を記す。
「真空チャンバー」とは、内部を真空にするための容器である。通常、チャンバーに取り付けられた真空ポンプを作動させることにより、チャンバー内に真空環境が作られる。
「巻き掛ける」とは、フィルムなどの可曲性物体をロールなどの円筒状物体に、前記円筒状物体を覆うように接触させることである。
「長尺の」とは、ロール状に巻かれたフィルムのように、幅方向の長さに比べて長さ方向の長さが長いことを意味する。
「基材」とは、膜を形成する時に該膜の支持体となる物体である。
「成膜ロール」とは、それに巻き掛けた基材の表面上に膜を形成するためのロールであり、通常は、金属からなって放電のための電極を兼ねる。
「成膜空間」とは、一対の成膜ロールの間の空間であって、成膜のためのプラズマが発生する空間である。
「有機珪素化合物」とは、珪素を構成元素として含有する有機化合物である。
「成膜ガス」とは、膜の原料となる原料ガスを必須要素として含有するガスであり、必要に応じて、原料ガスと反応して化合物を形成する反応ガスや、形成された膜に含まれることはないがプラズマ発生や膜質向上などに寄与する補助ガスを更に含有することがある。
「原料ガス」とは、膜の主成分となる材料の供給源となるガスである。例えばSiO膜を形成する場合には、HMDSO,TEOS,シラン等のSiを含有するガスが原料ガスである。
「反応ガス」とは、原料ガスと反応して、形成される膜に取り込まれるガスであり、例えばSiO膜を形成する場合には、酸素(O)がこれに該当する。
「磁場発生部材」とは、永久磁石からなる磁場発生機構であり、例えば、長い中央磁石と、この中央磁石を取り囲む外周磁石と、それらを接続する磁界短絡部材とからなる部材がこれに該当する。
「プラズマ電源」とは、電極である一対の成膜ロールに接続されて成膜ロール間にプラズマを発生させる電源である。
「極性が反転するプラズマ電源」とは、上に定義されたプラズマ電源であって、一方の成膜ロールの極性がプラスの時、他方の成膜ロールの極性がマイナスとなるように極性が反転するプラズマ電源である。
「放電プラズマ」とは、放電により発生させたプラズマである。
「プラズマCVD成膜方法」とは、ガス状物質の化学反応を利用して成膜を行うCVD成膜方法の一種であり、プラズマ放電を利用して化学反応を促進させるCVD成膜方法である。
「面積速度」とは、ロール・ツー・ロール成膜法などにおいて、一定時間の間に基材が進む面積である。基材の線速度と基材の幅との間には、(面積速度)=(線速度)×(基材の幅)の関係がある。
「0℃、1気圧基準で」とは、表示されたガスの量が、0℃、1気圧におけるそのガスの体積であることを表す。
「有機珪素化合物を完全に酸化させる」とは、有機珪素化合物を、該化合物に含まれるSi、C、およびHが、SiはSiOになり、CはCOになり、HはHOになるように酸化させることを意味する。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0012】
本発明の積層体の製造方法は、真空チャンバーと、平行ないしほぼ平行に対向して配置され、内部に磁場発生部材を備えている一対の成膜ロールと、極性が反転するプラズマ電源とを備えるプラズマCVD成膜装置を用いて行われる積層体の製造方法であって、前記真空チャンバー内で、長尺の基材の表面の第一の部分と、該基材の表面の第二の部分とが対向するように前記基材を前記成膜ロールに巻き掛けた状態で該基材を搬送しながら、前記成膜ロールの間の成膜空間に有機珪素化合物のガスと酸素ガスを含む成膜ガスを供給し、前記磁場発生部材により前記成膜空間に磁場を発生させ、前記成膜ロール間に前記プラズマ電源により放電プラズマを発生させ、これにより、該基材上に連続的に薄膜層を形成する方法であって、前記成膜空間の圧力が0.1〜2.5Paであり、前記有機珪素化合物のガスの流量が、基材の面積速度1m/分あたり、0℃、1気圧基準で85〜230sccmである。
【0013】
また、本発明の積層体の製造方法は、真空チャンバーと、平行ないしほぼ平行に対向して配置され、内部に磁場発生部材を備えている一対の成膜ロールと、極性が反転するプラズマ電源とを備えるプラズマCVD成膜装置を用いて行われる積層体の製造方法であって、前記真空チャンバー内で、長尺の基材の表面の第一の部分と、該基材の表面の第二の部分とが対向するように前記基材を前記成膜ロールに巻き掛けた状態で該基材を搬送しながら、前記成膜ロールの間の成膜空間に有機珪素化合物のガスと酸素ガスを含む成膜ガスを供給し、前記磁場発生部材により前記成膜空間に磁場を発生させ、前記成膜ロール間に前記プラズマ電源により放電プラズマを発生させ、これにより、該基材上に連続的に薄膜層を形成する方法であって、前記成膜空間の圧力が0.1〜2.5Paであり、前記有機珪素化合物のガスの流量が、0℃、1気圧基準で15〜40sccmである。
【0014】
本発明の積層体の製造方法に用いる長尺の基材としては、樹脂からなるフィルム又はシートが挙げられる。このような基材に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリイミド系樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性及び線膨張率が高く、製造コストが低いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、PET、PENが特に好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
前記長尺の基材の厚みは、積層フィルムを製造する際の安定性を考慮して適宜に設定することができる。前記基材の厚みとしては、真空中においてもフィルムの搬送が可能であるという観点から、5〜500μmの範囲であることが好ましく、50〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜100μmの範囲であることが特に好ましい。
【0016】
また、前記基材には、薄膜層との密着性の観点から、基材の表面を清浄するための表面活性化処理を施すことが好ましい。このような表面活性化処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
【0017】
本発明では、樹脂フィルム上にバリア膜である薄膜層を形成する方法として、ロール間放電プラズマCVD法を用いる。これにより、屈曲してもバリア性が低下し難い積層フィルムを得ることができる。従来の積層フィルムでは、屈曲するとバリア膜にクラックが生じ易く、バリア性が低下し易かったが、本発明によれば、屈曲してもバリア膜にクラックが生じ難く、バリア性が低下し難い積層フィルムを得ることができる。
【0018】
ここで、プラズマCVD法は、原料物質を含むガスを交流でプラズマ化することにより、原料物質がラジカル化、及び/又はイオン化し、樹脂フィルム等の基板上に原料物質が堆積する成膜方法である。更に、本発明においては、ガスバリア性や耐屈曲性に優れた積層フィルムを得るために、低圧プラズマCVD法が用いられている。
低圧とは、0.1Pa〜2.5Paであり、好ましくは0.3〜1.5Paである。
真空チャンバー内の圧力が、0.1Pa以上の場合、磁場の存在する領域における放電の発生が困難とならず、2.5Pa以下の場合、気相中で反応が生じ、薄膜層の上または中に薄膜層と同じまたは類似の化学組成のパーティクルが形成されることを防止することができる。上記パーティクルは、薄膜層のガスバリア性を低下させるが、上記範囲内であれば、パーティクルの形成がよく抑制されてバリア性の高い薄膜層を成膜することができる。
【0019】
このような薄膜層の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとして、珪素を含有する有機珪素化合物を用いる。このような有機珪素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機珪素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られる薄膜層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機珪素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに、原料ガスとして、上述の有機珪素化合物のほかにモノシランを含有させ、形成するバリア膜の珪素源として使用してもよい。
【0020】
本発明のプラズマCVD法においては、有機珪素化合物のガスの流量が、基材の面積速度1m/分あたり、0℃、1気圧基準で85〜230sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)であり、好ましくは115〜170sccmである。85sccm以上の場合、薄膜層がポーラスとならず充分なガスバリア性が得られ、230sccm以下の場合、排気能力不足を理由に圧力制御に支障をきたすことがない。
【0021】
また、本発明のプラズマCVD法においては、有機珪素化合物のガスの流量は、15〜40sccmであり、好ましくは20〜30sccmである。かかる数値は、前記成膜ロールの幅等を限定しない場合の値である。
【0022】
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いる。このような反応ガスとして、前記原料ガスと反応して酸化物を形成させるために、酸素ガスを用いる。
【0023】
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
【0024】
ロール間放電プラズマCVD法では、成膜ロール間の空間にプラズマ放電を発生させる。典型的な例では、回転しない磁石を内蔵した2つの水冷回転ドラムを4〜5cmの間隔で成膜ロール間に設置し、ロール間に磁場が形成され、磁石とローラー間に中周波を印加する。ガスを導入するときわめて明るい高密度のプラズマがロール間に形成される。ロール間の磁場と電場により電子はロール間ギャップの中心近傍に閉じ込められることになり、高密度のプラズマが形成される。
【0025】
このプラズマ源は、数Paの低圧力で動作可能で、中性粒子やイオンの温度は低く、室温近傍になる。一方、電子の温度は高いので、ラジカルやイオンを多く生成する。また、高温の2次電子が磁場の作用で樹脂フィルムに流れ込むのが防止され、樹脂フィルムの温度を低く抑えたままで高い電力の投入が可能となり、高速成膜が達成される。膜の堆積は、主に樹脂フィルム表面のみに起こり、電極は樹脂フィルムに覆われて汚れにくいために、長時間の安定成膜ができる。
【0026】
図1は、本発明の方法を用いて積層フィルムを製造するのに好ましい製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
図1に示す製造装置は、送り出しロール11と、搬送ロール21、22、23、24と、成膜ロール31、32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、成膜ロール31及び32の内部に設置された磁場発生装置61、62と、巻取りロール71とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ロール31、32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、磁場発生装置61、62とが図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。更に、このような製造装置において前記真空チャンバーは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
【0028】
このような製造装置においては、一対の成膜ロール(成膜ロール31と成膜ロール32)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ロールがそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。そのため、このような製造装置においては、プラズマ発生用電源51により電力を供給することにより、成膜ロール31と成膜ロール32との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ロール31と成膜ロール32との間の空間にプラズマを発生させることができる。更に、このような製造装置においては、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)は、平行ないしほぼ平行に対向して配置される。このようにして、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できる。
このような製造装置によれば、CVD法によりフィルム100の表面上に薄膜層を形成することが可能であり、成膜ロール31上においてフィルム100の表面上に膜成分を堆積させつつ、更に成膜ロール32上においてもフィルム100の表面上に膜成分を堆積させることもできる。従って、フィルム100の表面上に前記薄膜層を効率よく形成することができる。
【0029】
また、成膜ロール31及び成膜ロール32の内部には、成膜ロールが回転しても、連動して回転しないように固定された磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられている。
【0030】
成膜ロール31及び成膜ロール32としては適宜公知のロールを用いることができる。
このような成膜ロール31及び32としては、より効率よく薄膜層を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ロール31及び32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、5〜100cmの範囲とすることが好ましい。
【0031】
また、このような製造装置においては、フィルム100の表面の第一の部分と第二の部分とが互いに対向するように、一対の成膜ロール(成膜ロール31と成膜ロール32)に、フィルム100が巻き掛けられている。このようにフィルム100を配置することにより、成膜ロール31と成膜ロール32との間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ロール間に存在するフィルム100の表面の第一の部分と第二の部分に同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、上述したように、CVD法により、成膜ロール31上にてフィルム100の表面上に膜成分を堆積させ、更に成膜ロール32上にて膜成分を堆積させることができるため、フィルム100の表面上に前記薄膜層を効率よく形成することが可能となる。なお、フィルム100の前記第一の部分及び前記第二の部分は、該フィルムの表面の固定された部分を指すものではなく、「該フィルムの表面の成膜空間中に位置している部分」と定義される。
【0032】
また、このような製造装置に用いる送り出しロール11及び搬送ロール21、22、23、24としては適宜公知のロールを用いることができる。また、巻取りロール71としても、薄膜層を形成したフィルム100を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のロールを用いることができる。
【0033】
また、ガス供給管41としては原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源51としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ロール31と成膜ロール32に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用する。また、このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ且つ交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61、62としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、フィルム100としては、薄膜層を予め形成させたものを用いることができる。このように、フィルム100として薄膜層を予め形成させたものを用いることにより、前記薄膜層の厚みを厚くすることも可能である。
【0034】
このように、図1に示す製造装置を用いて、原料ガスの種類、流量、真空チャンバー内の圧力を限定することにより、ガスバリア性や耐屈曲性に優れた積層フィルムを製造することができる。また、例えば、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、成膜ロールの直径、並びに、フィルムの搬送速度を適宜調整してもよい。すなわち、図1に示す製造装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ロール31上のフィルム100の表面上並びに成膜ロール32上のフィルム100の表面上に、前記薄膜層がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、長尺のフィルム100が送り出しロール11や成膜ロール31等により、それぞれ搬送されることにより、ロール・ツー・ロール方式の連続的な成膜プロセスによりフィルム100の表面上に前記薄膜層が形成される。
【0035】
前記成膜ガスは、前記有機珪素化合物と酸素とを含有するものであり、原料ガスである有機珪素化合物と反応ガスである酸素の比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、ガスバリア性や耐屈曲性に優れた積層フィルムが得られなくなってしまう。よって、酸素ガスは前記成膜ガス中の前記有機珪素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
【0036】
実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、成膜ガスの有機珪素化合物のガスと反応ガスの酸素は、ガス供給部から成膜領域へ供給されて反応し、成膜されるので、成膜ガスの有機珪素化合物のガスと酸素ガスの流量比(酸素ガスの流量)/(有機珪素化合物のガスの流量)が、原料の有機珪素化合物を完全に酸化させるモル比であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる。
そのため、成膜ガスの有機珪素化合物のガスと酸素ガスの流量比は、有機珪素化合物を完全に酸化させるモル比の倍以下であることが好ましく、有機珪素化合物を完全に酸化させるモル比以下であることがより好ましい。
【0037】
以下、前記成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機珪素化合物:HMDSO:(CHSiO:)と反応ガスとしての酸素(O)を含有するものを用い、珪素−酸素系の薄膜を製造する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスの好適な比率等についてより詳細に説明する。
【0038】
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)とを含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させて珪素−酸素系の薄膜を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1):
(CHSiO+12O→6CO+9HO+2SiO (1)
に記載のような反応が起こり、二酸化珪素が製造される。このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化珪素膜が形成されてしまうため、ガスバリア性や耐屈曲性に優れた積層フィルムを得ることができなくなってしまう。そのため、薄膜層を形成する際には、上記(1)式の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくする必要がある。
なお、上述したように、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素は、ガス供給部から成膜領域へ供給されて反応し、成膜される。従って、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる。
そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である24倍量以下の量であることが好ましく、12倍量以下とすることがより好ましい。
このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子が薄膜層中に取り込まれ、得られる積層フィルムに優れたバリア性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。
なお、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)が少なすぎると、酸化されなかった炭素原子や水素原子が薄膜層中に過剰に取り込まれる。この場合はバリア膜の透明性が低下して、バリアフィルムは有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板には利用できなくなってしまう。このような観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
【0039】
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ロール31及び32間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラム(本実施形態においては成膜ロール31及び32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。この印加電力が前記下限未満ではパーティクルが発生し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると成膜時に発生する熱量が多くなり、成膜時の基材表面の温度が上昇してしまい、基材が熱負けして成膜時に皺が発生してしまう可能性や、ひどい場合には熱でフィルムが溶けて、裸の成膜ロール間に大電流の放電が発生して成膜ロール自体を傷めてしまう可能性が生じる。
【0040】
フィルム100の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が前記下限未満では、フィルムに熱に起因する皺の発生しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、形成される薄膜層の厚みが薄くなる傾向にある。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、積層フィルムの水蒸気透過度は以下の方法により測定した。
【0042】
[水蒸気透過度の測定]
(i)温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件において、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、機種名「GTRテック−3000」)を用いて、積層フィルムの水蒸気透過度を測定した。
(ii)水蒸気透過度が(i)の方法の検出限界を超えた積層フィルムについては、Ca腐食法(特開2005−283561号公報に記載される方法)によって、水蒸気透過度を測定した。
【0043】
(実施例1)
前述の図1に示す製造装置を用いて積層フィルムを製造した。すなわち、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚み:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を基材(フィルム100)として用い、これを送り出しロ−ル11に装着した。そして、成膜ロール31と成膜ロール32との間に磁場を印加すると共に、成膜ロール31と成膜ロール32にそれぞれ電力を供給して成膜ロール31と成膜ロール32との間に放電してプラズマを発生させ、このような放電領域に成膜ガス(原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスとしての酸素ガス(放電ガスとしても機能する)の混合ガス)を供給して、下記条件にてプラズマCVD法による薄膜形成を行い、積層フィルムを得た。
【0044】
〈成膜条件〉
成膜ガスの混合比(ヘキサメチルジシロキサン/酸素):25/250[単位:sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、0℃、1気圧基準]
基材の面積速度1m/分あたりのヘキサメチルジシロキサンの流量:143sccm
真空チャンバー内の真空度:0.55Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
繰り返し数:5パス
【0045】
このようにして得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは430nmであった。また、得られた積層フィルムにおいて、温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は検出限界(1×10−4g/m/day)以下の値であった。
【0046】
また、得られた積層フィルムについて、Ca腐食法により温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は7×10−5g/m/dayだった。マイクロスコープ(CCDカメラ)の観察結果を図2に示す。
【0047】
(実施例2)
前述の図1に示す製造装置を用いて成膜条件だけを変えて実施例1と同様に成膜を行った。
【0048】
〈成膜条件〉
成膜ガスの混合比(ヘキサメチルジシロキサン/酸素):25/500[単位:sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、0℃、1気圧基準]
基材の面積速度1m/分あたりのヘキサメチルジシロキサンの流量:143sccm
真空チャンバー内の真空度:1.0Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
繰り返し数:5パス
【0049】
このようにして得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは522nmであった。また、得られた積層フィルムについて、Ca腐食法により温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は2.0×10−4g/m/dayだった。
【0050】
(実施例3)
前述の図1に示す製造装置を用いて成膜条件だけを変えて実施例1と同様に成膜を行った。
【0051】
〈成膜条件〉
成膜ガスの混合比(ヘキサメチルジシロキサン/酸素):25/500[単位:sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、0℃、1気圧基準]
基材の面積速度1m/分あたりのヘキサメチルジシロキサンの流量:143sccm
真空チャンバー内の真空度:1.5Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
繰り返し数:1パス
【0052】
このようにして得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは338nmであった。また、得られた積層フィルムについて、Ca腐食法により温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は9.0×10−4g/m/dayだった。
【0053】
(比較例1)
前述の図1に示す製造装置を用いて成膜条件だけを変えて実施例1と同様に成膜を行った。マイクロスコープ(CCDカメラ)の観察結果を図2に示す。
【0054】
〈成膜条件〉
成膜ガスの混合比(ヘキサメチルジシロキサン/酸素):50/500[単位:sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、0℃、1気圧基準]
基材の面積速度1m/分あたりのヘキサメチルジシロキサンの流量:286sccm
真空チャンバー内の真空度:3.0Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
繰り返し数:1パス
【0055】
このようにして得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは390nmであった。また、得られた積層フィルムについて、Ca腐食法により温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は9.8×10−3g/m/dayだった。
【0056】
(比較例2)
前述の図1に示す製造装置を用いて成膜条件だけを変えて実施例1と同様に成膜を行った。
【0057】
〈成膜条件〉
成膜ガスの混合比(ヘキサメチルジシロキサン/酸素):12.5/125[単位:sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、0℃、1気圧基準]
基材の面積速度1m/分あたりのヘキサメチルジシロキサンの流量:71sccm
真空チャンバー内の真空度:1.0Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
繰り返し数:5パス
【0058】
このようにして得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは400nmであった。また、得られた積層フィルムについて、Ca腐食法により温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は2.0×10−1g/m/day以上だった。
【符号の説明】
【0059】
11…送り出しロール、21、22、23、24…搬送ロール、31、32…成膜ロール、41…ガス供給管、51…プラズマ発生用電源、61、62…磁場発生装置、71…巻取りロール、100…フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバーと、平行ないしほぼ平行に対向して配置され、内部に磁場発生部材を備えている一対の成膜ロールと、極性が反転するプラズマ電源とを備えるプラズマCVD成膜装置を用いて行われる積層体の製造方法であって、
前記真空チャンバー内で、長尺の基材の表面の第一の部分と、該基材の表面の第二の部分とが対向するように前記基材を前記成膜ロールに巻き掛けた状態で該基材を搬送しながら、前記成膜ロールの間の成膜空間に有機珪素化合物のガスと酸素ガスを含む成膜ガスを供給し、前記磁場発生部材により前記成膜空間に磁場を発生させ、前記成膜ロール間に前記プラズマ電源により放電プラズマを発生させ、これにより、該基材上に連続的に薄膜層を形成するものであり、前記成膜空間の圧力が0.1〜2.5Paであり、前記有機珪素化合物のガスの流量が、基材の面積速度1m/分あたり、0℃、1気圧基準で85〜230sccmである積層体の製造方法。
【請求項2】
真空チャンバーと、平行ないしほぼ平行に対向して配置され、内部に磁場発生部材を備えている一対の成膜ロールと、極性が反転するプラズマ電源とを備えるプラズマCVD成膜装置を用いて行われる積層体の製造方法であって、
前記真空チャンバー内で、長尺の基材の表面の第一の部分と、該基材の表面の第二の部分とが対向するように前記基材を前記成膜ロールに巻き掛けた状態で該基材を搬送しながら、前記成膜ロールの間の成膜空間に有機珪素化合物のガスと酸素ガスを含む成膜ガスを供給し、前記磁場発生部材により前記成膜空間に磁場を発生させ、前記成膜ロール間に前記プラズマ電源により放電プラズマを発生させ、これにより、該基材上に連続的に薄膜層を形成するものであり、前記成膜空間の圧力が0.1〜2.5Paであり、前記有機珪素化合物のガスの流量が、0℃、1気圧基準で15〜40sccmである積層体の製造方法。
【請求項3】
前記成膜空間の圧力が0.3〜1.5Paである請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記有機珪素化合物のガスの流量が、基材の面積速度1m/分あたり、0℃、1気圧基準で115〜170sccmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記成膜ガスの有機珪素化合物のガスと酸素ガスの流量比(酸素ガスの流量/有機珪素化合物のガスの流量)が、有機珪素化合物を完全に酸化させるモル比の倍以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記成膜ガスの有機珪素化合物に対するガスと酸素ガスの流量比(酸素ガスの流量/有機珪素化合物のガスの流量)が、有機珪素化合物を完全に酸化させるモル比以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記成膜ガスの有機珪素化合物がヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)であり、HMDSOに対する酸素ガスの流量比(酸素ガス流量/HMDSOガスの流量)が、24以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記成膜ガスの有機珪素化合物がヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)であり、HMDSOに対する酸素ガスの流量比(酸素ガス流量/HMDSOガスの流量)が、12以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−97354(P2012−97354A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222102(P2011−222102)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】