説明

積層品の製造方法

【課題】紙基材とフィルム基材とを溶融樹脂によって貼合わせた積層品において、製造工程で紙基材の水分量をコントロールすることによってカールを制御する積層品の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】押出しラミネータの第一給紙から紙基材(1)を繰り出し、溶融樹脂をTダイスから押出して第二給紙から繰り出すフィルム基材(2)と貼合せる方法において、溶融樹脂を押出す直前に紙基材(1)の貼合せ面に水を供給し、直後の紙の水分量を15.0重量%〜30.0重量%になるように制御することを特徴とする積層品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材とフィルム基材とを溶融樹脂によって貼合わせた積層品について、製造工程で紙基材の水分量をコントロールすることによってカールを制御する積層品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙基材とフィルム基材を溶融樹脂で押し出して貼合せる積層品の製造工程において、貼合せ後の積層品の樹脂が収縮する程度によって、紙基材側またはフィルム基材側にカールが発生してしまうという問題があった。その結果、後工程(特に充填時)において加工が困難になる場合があった。
【0003】
これまでに、コート紙を100℃〜150℃の加熱ロールの表面に接触させながら加熱し、次いで非コート面にコート面の温度よりも低い水分を付与させることによってカールを矯正する方法が報告されているが、コート面の温度を一定にすることが難しく、カールがばらつきやすいなどの問題があった。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
また、紙材とフィルムを積層する際、紙材を水分含量3.4重量%以下に調整することによってカールを調整して食品の連続製造ラインにおける蓋材のシール時に、温度等の変化により蓋材がカールすることがなく、フラットな状態に保持できるので、容易にシール処理を行うことができる方法が報告されているが、この方法は、ドライラミネートにおいては効果的であるが、本発明のように押出し樹脂により貼合せる場合、樹脂の収縮により発生するカールを制御するには好ましくない。(例えば、特許文献2参照)
【0005】
さらに、特許文献3では、本発明と類似した発明として、紙を主材とするベース基材の上面に、溶融樹脂をラミネートする方法において、ラミネート加工前にベース基材の加工面と反対側の面に水付け処理を行うことによってラミネート後のカールを防止する方法が報告されているが、接着性を損なわないために水付け面がラミネート加工面とは反対側であるため、紙表に印刷している製品の場合インクのにじみや水分のはじきが発生する可能性があること、また水付け処理量を最終製品の水分量で規定している為、管理が難しく、加工上困難を極めると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2743289号
【特許文献2】特開平7−267271号公報
【特許文献3】特開平8−216223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紙基材とフィルム基材とを溶融樹脂によって貼合わせた積層品において、製造工程で紙基材の水分量をコントロールすることによってカールを制御する積層品の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の請求項1の発明は、押出しラミネータの第一給紙から紙基材(1)を繰り出し、溶融樹脂をTダイスから押出して第二給紙から繰り出すフィルム基材(2)と貼合せる方法において、溶融樹脂を押出す直前に紙基材(1)の貼合せ
面に水を供給し、直後の紙の水分量を15.0重量%〜30.0重量%になるように制御することを特徴とする積層品の製造方法である。
【0009】
本発明の請求項2の発明は、該積層品表面に、長さ15cmのカット線を2本、それぞれが中心で直角に交わるように設け、カット中心部の立ち上がりが紙基材(1)側の場合を「+(プラス)」、フィルム基材(2)側の場合を「−(マイナス)」とした場合、立ち上がりが−15mm以上+15mm以下の範囲に収まることを特徴とした、請求項1記載の積層品の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
押出しラミネータの第一給紙から紙基材(1)を繰り出し、溶融樹脂をTダイスから押出して第二給紙から繰り出すフィルム基材(2)と貼合せる方法において、溶融樹脂を押出す直前に紙基材(1)の貼合せ面に水を供給し、直後の紙の水分量を15.0重量%〜30.0重量%の一定範囲になるように制御することによって、本発明の積層品をたとえば、食品の連続製造ラインにおける蓋材等に用いた場合に、そのシール時に、温度の変化により蓋材がカールすることがなく、フラットな状態に保持できるので、容易にシール処理を行うことができる。
【0011】
該積層品表面に、長さ15cmのカット線を2本、それぞれが中心で直角に交わるように設け、カット中心部の立ち上がりが紙基材(1)側の場合を「+(プラス)」、フィルム基材(2)側の場合を「−(マイナス)」とした場合、立ち上がりが−15mm以上+15mm以下の範囲に収まるようにすれば、上記のカール防止効果はより確実になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の一例について説明する。
【0013】
従来、紙基材とフィルム基材を溶融樹脂で押し出して貼合せる積層品の製造工程において、貼合せ後の積層品の樹脂が収縮する程度によって、紙基材側またはフィルム基材側にカールが発生してしまうという問題があった。その結果、後工程(特に充填時)において加工が困難になる場合があった。
【0014】
本発明の積層品の製造方法によれば、紙基材とフィルム基材とを溶融樹脂によって貼合わせる直前に紙の貼合せ面に一定範囲量の水を含ませ、紙を膨張させた状態で貼合せることによって、貼合せ後の溶融樹脂の収縮に追随する紙の収縮を制御することが可能であり、カールを制御することが可能となる積層品が得られる。
【0015】
本発明の積層品の製造に用いる紙基材(1)としては、アート紙、コート紙、上質紙、晒クラフト紙、などが主に挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0016】
フィルム基材(2)に用いる材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ナイロン(NY)樹脂などの二軸延伸、一軸延伸もしくは無延伸のフィルムが挙げられるが、特に限定されるものではない。また、酸素バリア性や水蒸気バリア性を持たせる為にアルミニウムや酸化アルミ、酸化珪素等の蒸着を施したものでもよい。
【0017】
また、紙基材(1)との貼合わせ面とは反対面にも、上記フィルム基材などを積層しても良い。積層方法としては、溶融樹脂を押出す方式、ドライラミネート方式、ウェットラミネート方式などいずれでも良く、特に限定されない。
【0018】
貼合せるための樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、中密度ポリエチレン(MDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、ポリプロピレン、未延伸ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMA)樹脂、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂、ポリプロピレン−エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂などが挙げられる。
【0019】
紙基材に供給する水としては水道水をはじめ蒸留水、イオン交換水、精製水などが使用出来、特に限定されるものではない。また、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール類を添加しても良い。アルコール類を添加することにより、カールの方向を制御しやすくなる。
【0020】
塗布後の紙の水分量は15.0重量%〜30.0重量%であることが好ましく、さらに望ましくは20.0重量%〜25.0重量%である。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0022】
下記に実施例で用いた主な特性評価法を説明する。
(a)表面水分量・・・ 紙水分計((株)ケット科学研究所製:HK−300−2)にて測定した。
(b)アルコール濃度・・・ エチルアルコール濃度計((株)アタゴ製:PET−109)にて測定した。
(c)カール測定・・・ 積層品表面に、長さ15cmのカット線を2本、それぞれが中心で直角に交わるように設け、カット中心部の立ち上がりが紙基材側の場合を「+(プラス)」、フィルム基材側の場合を「−(マイナス)」と表記した。
<実施例1>
【0023】
室内温度30℃、湿度40%の環境にて、アート紙(104.7g/m:表面水分量6.3 重量%)を押出しラミネータの第一給紙により100m/minの速度で送り出し、塗工部にて、直後の紙の水分量が15%になるようにアート紙の貼合せ面に水を塗工した。その後、コロナ放電処理装置を用いて、アート紙の貼合せ面にコロナ放電処理を行った。そして、ポリエチレン樹脂(LC600A:三井化学製、密度0.919)を、Tダイスを用いて、340℃で、厚みが15μmとなるように、アート紙の貼合せ面に押し出し、第二給紙よりPETフィルム(テトロン:帝人デュポンフィルム製)を冷却ロールと押圧ロールのロール間に供給することにより、アート紙/ポリエチレン/PETの構成の積層品(A)を得た。
<実施例2>
【0024】
紙の水分量が25%になるように水を塗工し、ポリエチレン樹脂の厚みを30μmとなるように水を塗工した以外は実施例1と同様にし、積層品(B)を得た。
<実施例3>
【0025】
紙の水分量が25%、ポリエチレン樹脂の厚みが25μmとなるように水とメタノールを重量比70/30となる混合液を塗工した以外は実施例1と同様にし、積層品(C)を得た。
<実施例4>
【0026】
紙の水分量が25%、ポリエチレン樹脂の厚みが25μmとなるように水とメタノールを重量比30/70となる混合液を塗工した以外は実施例1と同様にし、積層品(D)を得た。
<比較例1>
【0027】
紙に水を塗工せず、ポリエチレン樹脂の厚みが15μmとなるようにした以外は実施例1と同様にし、積層品(E)を得た。
<比較例2>
【0028】
紙の水分量が10%、ポリエチレン樹脂の厚みが25μmとなるようにとなるように水を塗工した以外は実施例1と同様にし、積層品(F)を得た。
<比較例3>
【0029】
紙の水分量が40%、ポリエチレン樹脂の厚みが25μmとなるようにとなるように水を塗工した以外は実施例1と同様にし、積層品(G)を得た。
<積層品のカール比較>
【0030】
上記(c)カール測定に示した方法で積層品(A)から(G)のカールの程度を比較した結果を表1に示した。
【表1】

【0031】
この結果から紙の水分量が15重量%から30重量%の範囲であった実施例1から実施例4の積層品(A)(B)(C)(D)はいずれもカール量の範囲がプラス10mmからマイナス10mmの範囲内であるのに比べて、紙の水分量が上記範囲から外れている比較例1から比較例3の積層品(E)(F)(G)はカール量の範囲が実施例の積層品よりはるかに大きかった。
【0032】
これによって、本発明の積層品をたとえば、食品の連続製造ラインにおける蓋材等に用いた場合に、そのシール時に、温度の変化により蓋材がカールすることがなく、フラットな状態に保持できるので、容易にシール処理を行うことができることが確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出しラミネータの第一給紙から紙基材(1)を繰り出し、溶融樹脂をTダイスから押出して第二給紙から繰り出すフィルム基材(2)と貼合せる方法において、溶融樹脂を押出す直前に紙基材(1)の貼合せ面に水を供給し、直後の紙の水分量を15.0重量%〜30.0重量%になるように制御することを特徴とする積層品の製造方法。
【請求項2】
該積層品表面に、長さ15cmのカット線を2本、それぞれが中心で直角に交わるように設け、カット中心部の立ち上がりが紙基材(1)側の場合を「+(プラス)」、フィルム基材(2)側の場合を「−(マイナス)」とした場合、立ち上がりが−15mm以上+15mm以下の範囲に収まることを特徴とした、請求項1記載の積層品の製造方法。

【公開番号】特開2010−253875(P2010−253875A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109039(P2009−109039)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】