説明

積層型電子部品

【課題】互いに磁気的に負に結合するコイル間の磁気的な結合係数を適切な大きさにすると共に、形状を小型化する。
【解決手段】絶縁体層11A〜11Nとコイル用導体パターン12A〜12D、13A〜13Dを積層し、コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された第1のコイル部、絶縁体層とコイル用導体パターンを積層し、コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された第2のコイル部及び、第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された磁気結合用窓Hを有する電極を積み重ねて積層体が形成され、第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された電極は磁気的結合用窓Hに連なるスリットSが形成される。第1のコイル部のコイルと第2のコイル部のコイルは、磁気的に負に結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体層とコイル用導体パターンを積層し、コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された複数のコイル部と、複数のコイル部間に配置された磁気結合用窓を有する電極を積み重ねて積層体が形成され、複数のコイル部のコイルを磁気的に結合させた積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の積層型電子部品に、絶縁体層と導体パターンを積層して積層体内に、互いに磁気的に負に結合する複数のコイルを備えたLCフィルタが形成されたものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
近年、通信分野で使用されるこの種の積層型電子部品は、小型化、低背化が望まれている。小型化、低背化するために、図7に示す様に、絶縁体層71とコイル用導体パターン72、73を積層して内部に複数のコイルが形成されたコイル部と、絶縁体層71とコンデンサ用導体パターン74を積層して内部に複数のコンデンサが形成されたコンデンサ部が積み重ねられて、積層体内にLCフィルタを形成したり、図8に示す様に、絶縁体層81とコイル用導体パターン82を積層してコイルが形成されたコイル部と、絶縁体層81とコイル用導体パターン83を積層してコイルが形成されたコイル部との間に、絶縁体層81とコンデンサ用導体84を積層して内部に複数のコンデンサが形成されたコンデンサ部が積み重ねられて、積層体内にLCフィルタを形成したりすることが行われている。
しかしながら、図7の様な従来の積層型電子部品は、2つのコイルが近接しているために、2つのコイル間の磁気的な結合係数が負の方向に大きくなりすぎ、ノイズを減衰するために設けられる2つの減衰極の周波数が大きく離れ、ノイズを充分に減衰できないという問題があった。また、図8の様な従来の積層型電子部品は、コイルとコイルの間にコンデンサ用導体パターンが配置されているため、コイル中心部の磁束がコンデンサ用導体パターンによって遮られ、2つのコイル間の結合係数を大きくすることができなかった。
これらの問題を解決するために、図9に示す様に、絶縁体層91とコイル用導体パターン92を積層してコイルが形成されたコイル部と、絶縁体層91とコイル用導体パターン93を積層してコイルが形成されたコイル部との間に、絶縁体層91と結合窓Hを設けたコンデンサ用導体94を積層して内部に複数のコンデンサが形成されたコンデンサ部が積み重ねられ、積層体内にLCフィルタを形成することが検討された。
【0003】
【特許文献1】特開2003-87074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この様な従来の積層型電子部品は、2つのコイル間の結合係数が図7に示す従来の積層型電子部品のものとほぼ同じとなり、2つのコイル間の結合係数を大きくすることができず、ノイズを充分に減衰することができなかった。
【0005】
本発明は、互いに磁気的に負に結合するコイル間の磁気的な結合係数を適切な大きさにすることができると共に、形状を小型化することができる積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、絶縁体層とコイル用導体パターンを積層し、コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された第1のコイル部、絶縁体層とコイル用導体パターンを積層し、コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された第2のコイル部及び、第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された磁気結合用窓を有する電極を積み重ねて積層体が形成され、第1のコイル部のコイルと第2のコイル部のコイルを磁気的に結合させた積層型電子部品において、第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された電極は磁気的結合用窓に連なるスリットが形成され、第1のコイル部のコイルと第2のコイル部のコイルを磁気的に負に結合させる。また、電極を絶縁体層を介して複数積層し、複数の電極によってコンデンサが形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層型電子部品は、第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された電極は磁気的結合用窓に連なるスリットが形成され、第1のコイル部のコイルと第2のコイル部のコイルを磁気的に負に結合させるので、互いに磁気的に負に結合するコイル間の磁気的な結合係数を適切な大きさにすることができると共に、形状を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の積層型電子部品は、絶縁体層とコイル用導体パターンを積層し、コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された第1のコイル部、絶縁体層とコイル用導体パターンを積層し、コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された第2のコイル部及び、第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された磁気結合用窓を有する電極を積み重ねて積層体が形成される。この第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された電極は、磁気的結合用の窓が形成されると共に、この磁気的結合用窓に連なるスリットが形成される。そして、第1のコイル部のコイルと第2のコイル部のコイルを磁気的に負に結合させる。
従って、本発明の積層型電子部品は、磁気的結合用窓に連なるスリットによって、コイルの中心部における磁束の遮られる面積を小さくすることができる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の積層型電子部品の実施例を図1乃至図6を参照して説明する。
図1は本発明の積層型電子部品の第1の実施例を示す分解斜視図、図2は本発明の積層型電子部品の実施例の斜視図である。
図1において、11A〜11Nは絶縁体層、12A〜12D、13A〜13Dはコイル用導体パターン、14A〜14Gは電極である。
絶縁体層11A〜11Nは、磁性体、非磁性体、誘電体等絶縁性を有する材料を用いて形成される。
絶縁体層11Aの表面には、コイル用導体パターン12Aが形成される。このコイル用導体パターン12Aは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン12Aの一端は絶縁体層11Aの側面まで引き出される。
絶縁体層11Bの表面には、コイル用導体パターン12Bが形成される。このコイル用導体パターン12Bは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン12Bの一端は絶縁体層11Bのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Aの他端に接続される。
絶縁体層11Cの表面には、コイル用導体パターン12Cが形成される。このコイル用導体パターン12Cは、1ターン未満分が形成され、一端が絶縁体層11Cのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Bの他端に接続される。
絶縁体層11Dの表面には、コイル用導体パターン12Dが形成される。このコイル用導体パターン12Dは、1ターン未満分が形成され、一端が絶縁体層11Dのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Cの他端に接続され、他端が絶縁体層11Dの側面まで引き出される。この様にコイル用導体パターン12A、コイル用導体パターン12B、コイル用導体パターン12C、コイル用導体パターン12Dを螺旋状に接続することによりコイルが形成される。
絶縁体層11Eの表面には、電極14Aと電極14Bが形成される。電極14Aと電極14Bは、互いに接触しない様に離間して形成され、それぞれ絶縁体層11Eの側面まで引き出される。
絶縁体層11Fの表面には、電極14Cが形成される。電極14Cは、コイルの中心部に対応する中央部分に磁気的結合用窓Hが設けられると共に、この磁気的結合用窓Hに連なり電極14Cの一辺に達するスリットSが設けられる。この電極14Cは、絶縁体層11Fの表面の電極14Aと電極14Bに対向する位置に形成され、絶縁体層11Fの側面まで引き出される。
絶縁体層11Gの表面には、電極14Dが形成される。電極14Dは、コイルの中心部に対応する中央部分に磁気的結合用窓Hが設けられると共に、この磁気的結合用窓Hに連なり電極14Dの一辺に達するスリットSが設けられる。この電極14Dは、絶縁体層11Gの表面の電極14Cに対向する位置に形成され、絶縁体層11Gの側面まで引き出される。この時、電極14Dの磁気的結合用窓Hは、電極14Cの磁気的結合用窓Hの位置と一致する様に形成される。
絶縁体層11Hの表面には、電極14Eと電極14Fが形成される。電極14Eと電極14Fは、互いに接触しない様に離間して絶縁体層11Hの表面の電極14Dと対向する位置に形成される。この電極14Eと電極14Fは、それぞれ絶縁体層11Hの側面まで引き出される。
絶縁体層11Iの表面には、電極14Gが形成される。電極14Gは、コイルの中心部に対応する中央部分に磁気的結合用窓Hが設けられると共に、この磁気的結合用窓Hに連なり電極14Gの一辺に達するスリットSが設けられる。この電極14Gは、絶縁体層11Iの表面の電極14Eと電極14Fに対向する位置に形成され、絶縁体層11Iの側面まで引き出される。
絶縁体層11Jの表面には、コイル用導体パターン13Aが形成される。このコイル用導体パターン13Aは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン13Aの一端は絶縁体層11Jの側面まで引き出される。
絶縁体層11Kの表面には、コイル用導体パターン13Bが形成される。このコイル用導体パターン13Bは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン13Bの一端は絶縁体層11Kのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン13Aの他端に接続される。
絶縁体層11Lの表面には、コイル用導体パターン13Cが形成される。このコイル用導体パターン13Cは、1ターン未満分が形成され、一端が絶縁体層11Lのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン13Bの他端に接続される。
絶縁体層11Mの表面には、コイル用導体パターン13Dが形成される。このコイル用導体パターン13Dは、1ターン未満分が形成され、一端が絶縁体層11Mのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン13Cの他端に接続され、他端が絶縁体層11Mの側面まで引き出される。この様にコイル用導体パターン13A、コイル用導体パターン13B、コイル用導体パターン13C、コイル用導体パターン13Dを螺旋状に接続することによりコイルが形成される。
この絶縁体層11Mの上には、絶縁体層11Nが積層される。
この様に積層された積層体は、絶縁体層11A〜11Dとこれらの絶縁体層に形成されたコイル用導体パターン12A〜12Dによって第1のコイル部が、絶縁体層11J〜11Mとこれらの絶縁体層に形成されたコイル用導体パターン13A〜13Dによって第2のコイル部が構成され、第1のコイル部と第2のコイル間に、磁気的結合用窓とスリットを有する電極が配置される。なお、図1では、この第1のコイル部と第2のコイル間に絶縁体層を介して積層された電極14A、14B、14E、14F及び、磁気的結合用窓とスリットを有する電極14C、14D、14Gとでコンデンサが形成される。第1のコイル部のコイルと第2のコイル部のコイルは、磁気的に負に結合する様に配置される。
この様な積層体には、図2に示す様に、積層体の側面に入力端子21、出力端子22、アース端子23、24が形成される。そして、コイル用導体パターン13A、電極14A、14Eが入力端子21に、コイル用導体パターン12D、電極14B、14Fが出力端子に、コイル用導体パターン12A、13D、電極14D、14Gがアース端子23に、電極14Cがアース端子24に接続される。
【0010】
この様に形成された積層型電子部品は、コイル用導体パターン13A〜13DによってコイルL1が、コイル用導体パターン12A〜12DによってコイルL2が、電極14Eと電極14G間の容量と電極14Eと電極14D間の容量によってコンデンサC1が、電極14Fと電極14G間の容量と電極14Fと電極14D間の容量によってコンデンサC2が、電極14Aと電極14C間の容量によってコンデンサC3が、電極14Bと電極14C間の容量によってコンデンサC4が、電極14Cと電極14D間の容量によってコンデンサC5がそれぞれ形成されることにより、積層体内に、図3に示す様な、入出力端子間にコイルL1とコイルL2が直列に接続され、コイルL1にコンデンサC1が並列に接続され、コイルL2にコンデンサC2が並列に接続され、コイルL1の入力側とアース間にコンデンサC3が、コイルL2の出力側とアース間にコンデンサC4が、コイルL1とコイルL2の接続点とアース間にコンデンサC5がそれぞれ接続されたローパスフィルタが形成される。このコイルL1とコイルL2は、互いに磁気的に負に結合する。
【0011】
この様な積層型電子部品は、電極の磁気的結合用窓の大きさを150μm×150μm、スリットの幅を100μm、コイル用導体パターン12Dと電極14A、14B間の距離を46μm、コイル用導体パターン13Aと電極14G間の距離を23μmとしたところ、コイルL1とコイルL2間の結合係数kは−0.095となり、その時のそれぞれのコイルのインダクタンス値とQ値は図4(A)に示す様になった。また、コイルL1とコイルL2間の結合係数kは、電極の磁気的結合用窓の大きさや、コイルの位置(コイル用導体パターンと電極間の距離)によって調整することができた。本発明の積層型電子部品は、比較1に示す図8の従来の積層型電子部品や比較2に示す図9の従来の積層型電子部品よりも、コイル間の結合係数を大きくできると共に、それぞれのコイルのインダクタンス値とQ値も大きくすることができた。これは、積層型電子部品のコイルを図4(B)のコイルL、電極を図4(B)のコイルL’に当てはめて考えると、比較1、2の従来の積層型電子部品はコイルL’の端子T3と端子T4間が短絡された状態と考えることができ、Lのインダクタンス値はL(1−k)、LのQ値はQ(1−k)となり、コイルと電極が近づくほど結合係数kが大きくなってコイルLのインダクタンス値やQ値が小さくなるのに対し、本発明の積層型電子部品は電極に磁気的結合用窓に連なるスリットが設けられているので、コイルL’の端子T3と端子T4間が開放された状態と考えることができ、コイルLのインダクタンス値とQ値はコイルLそのもののインダクタンス値とQ値になり、従来のものよりもそれぞれのコイルのインダクタンス値とQ値が大きくなったと推測される。
【0012】
図5は本発明の積層型電子部品の第2の実施例を示す分解斜視図である。
絶縁体層51Aの表面には、コイル用導体パターン52Aが形成される。このコイル用導体パターン12Aは、1ターン未満分が形成され、一端が絶縁体層51Aの側面まで引き出される。
絶縁体層51Bの表面には、コイル用導体パターン52Bが形成される。このコイル用導体パターン52Bは、1ターン未満分が形成され、一端がコイル用導体パターン52Aの他端に接続される。
絶縁体層51Cの表面には、コイル用導体パターン52Cが形成される。このコイル用導体パターン52Cは、1ターン未満分が形成され、一端がコイル用導体パターン12Bの他端に接続される。
絶縁体層51Dの表面には、コイル用導体パターン52Dが形成される。このコイル用導体パターン52Dは、1ターン未満分が形成され、一端がコイル用導体パターン52Cの他端に接続され、他端が絶縁体層51Dの側面まで引き出される。この様にコイル用導体パターン52A、コイル用導体パターン52B、コイル用導体パターン52C、コイル用導体パターン52Dを螺旋状に接続することによりコイルが形成される。
絶縁体層51Eの表面には、電極54Aと電極54Bが形成される。電極54Aと電極54Bは、互いに接触しない様に離間して形成され、それぞれ絶縁体層51Eの側面まで引き出される。また、電極54Aと電極54Bは、後述の磁気的結合用窓とスリットを有する電極の磁気的結合用窓とスリットに対向する部分に位置しない様に、その形状や絶縁体層51Eの表面における位置が決められる。
絶縁体層51Fの表面には、電極54Cが形成される。電極54Cは、コイルの中心部に対応する中央部に磁気的結合用窓Hが設けられると共に、この磁気的結合用窓Hに連なり電極54Cの長手方向の一辺に達するスリットSが設けられる。この電極54Cは、絶縁体層51Fの表面の電極54A、54Bに対向する位置に形成され、絶縁体層51Fの側面まで引き出される。
絶縁体層51Gの表面には、電極54Dが形成される。電極54Dは、コイルの中心部に対応する中央部に磁気的結合用窓Hが設けられると共に、磁気的結合用窓Hに連なり電極54Dの長手方向に延在するスリットS1と、磁気的結合用窓Hに連なり電極54Dの幅方向の一辺に達するスリットS2が設けられる。この電極54Dは、絶縁体層51Gの表面の電極54Cに対向する位置に形成され、絶縁体層51Gの側面まで引き出される。この時、電極54Dの磁気的結合用窓Hは、電極54Cの磁気的結合用窓Hの位置と一致する様に形成される。
絶縁体層51Hの表面には、電極54Eと電極54Fが形成される。電極54Eと電極54Fは、互いに接触しない様に離間して絶縁体層51Hの表面の電極54Dと対向する位置に形成され、それぞれ絶縁体層51Hの側面まで引き出される。また、電極54Eと電極54Fは、電極54Dの磁気的結合用窓HとスリットS1に対向する部分に位置しない様に、その形状や絶縁体層51Hの表面における位置が決められる。
絶縁体層51Iの表面には、電極54Gが形成される。電極54Gは、コイルの中心部に対応する中央部に磁気的結合用窓Hが設けられると共に、磁気的結合用窓Hに連なり電極54Gの長手方向に延在するスリットS1と、磁気的結合用窓Hに連なり電極54Gの幅方向の一辺に達するスリットS2が設けられる。この電極54Gは、絶縁体層51Iの表面の電極54E、54Fに対向する位置に形成され、絶縁体層51Iの側面まで引き出される。
絶縁体層51Jの表面には、コイル用導体パターン53Aが形成される。このコイル用導体パターン53Aは、1ターン未満分が形成され、一端が絶縁体層51Jの側面まで引き出される。
絶縁体層51Kの表面には、コイル用導体パターン53Bが形成される。このコイル用導体パターン53Bは、1ターン未満分が形成され、一端がコイル用導体パターン53Aの他端に接続される。
絶縁体層51Lの表面には、コイル用導体パターン53Cが形成される。このコイル用導体パターン53Cは、1ターン未満分が形成され、一端がコイル用導体パターン53Bの他端に接続される。
絶縁体層51Mの表面には、コイル用導体パターン53Dが形成される。このコイル用導体パターン53Dは、1ターン未満分が形成され、一端がコイル用導体パターン53Cの他端に接続され、他端が絶縁体層51Mの側面まで引き出される。この様にコイル用導体パターン53A、コイル用導体パターン53B、コイル用導体パターン53C、コイル用導体パターン53Dを螺旋状に接続することによりコイルが形成される。
この絶縁体層51Mの上には、絶縁体層51Nが積層される。
この様に積層された積層体は、絶縁体層51A〜51Dとコイル用導体パターン52A〜52Dによって第1のコイル部が、絶縁体層51J〜51Mとコイル用導体パターン53A〜53Dによって第2のコイル部が構成され、第1のコイル部と第2のコイル間に、絶縁体層51E〜51I、電極54A、54B、54E、54F及び、磁気的結合用窓とスリットを有する電極54C、54D、54Gが積層されてコンデンサが形成される。第1のコイル部のコイルと第2のコイル部のコイルは、磁気的に負に結合する様に配置される。
この様な積層体には、図2に示す様に、積層体の側面に入力端子21、出力端子22、アース端子23、24が形成される。そして、コイル用導体パターン53A、電極54A、54Eが入力端子21に、コイル用導体パターン52D、電極54B、54Fが出力端子に、コイル用導体パターン52A、53D、電極54D、54Gがアース端子23に、電極54Cがアース端子24に接続される。
【0013】
この様に形成された積層型電子部品は、コイル用導体パターン53A〜53DによってコイルL1が、コイル用導体パターン52A〜52DによってコイルL2が、電極54Eと電極54G間の容量と電極54Eと電極54D間の容量によってコンデンサC1が、電極54Fと電極54G間の容量と電極54Fと電極54D間の容量によってコンデンサC2が、電極54Aと電極54C間の容量によってコンデンサC3が、電極54Bと電極54C間の容量によってコンデンサC4が、電極54Cと電極54D間の容量によってコンデンサC5がそれぞれ形成されることにより、積層体内に、図3に示す様な、入出力端子間にコイルL1とコイルL2が直列に接続され、コイルL1にコンデンサC1が並列に接続され、コイルL2にコンデンサC2が並列に接続され、コイルL1の入力側とアース間にコンデンサC3が、コイルL2の出力側とアース間にコンデンサC4が、コイルL1とコイルL2の接続点とアース間にコンデンサC5がそれぞれ接続されたローパスフィルタが形成される。このコイルL1とコイルL2は、互いに磁気的に負に結合する。
【0014】
この様な積層型電子部品は、絶縁体層の誘電率を21、コイル用導体パターンの線幅を75μm、電極の磁気的結合用窓の大きさを150μm×150μm、スリットS、S1の幅を100μm、コイル用導体パターン52Dと電極54A、54B間の距離を46μm、コイル用導体パターン53Aと電極54G間の距離を23μm、素子全体の形状を1mm×0.5mm×0.5mmとしたところ、図6に示す様に、通過帯域が470〜710MHz、通過帯域における挿入損失が1.94dB、通過帯域における反射損失が18.2dB、阻止帯域の895〜925MHzの減衰量が28.1dB、阻止帯域の1500〜2500MHzの減衰量が16.2dBとなった。なお、図6において、横軸は周波数、縦軸は減衰量をそれぞれ示し、61が伝送特性、62が反射特性を示している。
【0015】
以上、本発明の積層型電子部品の実施例を述べたが、本発明はこの実施例に限られるものではない。例えば、実施例では、2つのコイル部間に、磁気的結合用窓とスリットを備えた電極と磁気的結合用窓とスリットを備えない電極を絶縁体層を介して積層してコンデンサが形成されたものを説明したが、磁気的結合用窓とスリットを備えた複数の電極を絶縁体層を介して積層してコンデンサを形成してもよい。また、2つのコイル部間に、磁気的結合用窓とスリットを備えた電極を配置してトランスやコモンモードチョークコイルとしても良い。さらに、2つのコイル部間に配置される電極にスリットを複数形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の積層型電子部品の第1の実施例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の積層型電子部品の実施例の斜視図である。
【図3】本発明の積層型電子部品の回路の一例を示す回路図である。
【図4】本発明の積層型電子部品の第1の実施例の特性の説明図である。
【図5】本発明の積層型電子部品の第2の実施例を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の積層型電子部品の第2の実施例の特性を示す特性図である。
【図7】従来の積層型電子部品の分解斜視図である。
【図8】従来の別の積層型電子部品の分解斜視図である。
【図9】従来のさらに別の積層型電子部品の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
11A〜11N 絶縁体層
12A〜12D、13A〜13D コイル用導体パターン
14A〜14G 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体層とコイル用導体パターンを積層し、該コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された第1のコイル部、絶縁体層とコイル用導体パターンを積層し、該コイル用導体パターンによって内部にコイルが形成された第2のコイル部及び、該第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された磁気結合用窓を有する電極を積み重ねて積層体が形成され、該第1のコイル部のコイルと第2のコイル部のコイルを磁気的に結合させた積層型電子部品において、
該第1のコイル部と第2のコイル部間に配置された該電極は該磁気的結合用窓に連なるスリットが形成され、該第1のコイル部のコイルと該第2のコイル部のコイルを磁気的に負に結合させたことを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記電極を絶縁体層を介して複数積層し、該複数の電極によってコンデンサが形成された請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記磁気的結合用窓とスリットを有する電極に第2の電極を積層してコンデンサが形成され、該第2の電極が該磁気的結合用窓及びスリットと重ならない様に形成された請求項1又は請求項2に記載の積層型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−141643(P2010−141643A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316569(P2008−316569)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】