説明

積層構造体及びその製造方法

【課題】製造過程において溶液の影響が誘電体層に及び難い積層構造体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る積層構造体は、金属製の基材1、誘電体層2、保護膜4、及び電極層5を備えている。誘電体層2は、基材1の表面上に形成されている。保護膜4は、耐食性及び/又は耐湿性を有する膜であって、誘電体層2の表面を被覆している。電極層5は、保護膜4の表面上に形成されている。本発明に係る製造方法は、工程(a)、工程(b)、及び工程(c)を有している。工程(a)では、金属製の基材1の表面上に誘電体層2を形成する。工程(b)では、誘電体層2の露出面を、耐食性及び/又は耐湿性を有する保護膜4によって被覆する。工程(c)では、ウェットプロセス技術を用いて、保護膜4の表面上に電極層5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ回路を有した回路基板や薄膜キャパシタ等の積層構造体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の積層構造体は、電極箔と、該電極箔上に形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成された電極層とを有している。該積層構造体を製造する場合、電極箔の表面上に誘電体層を形成した後、該誘電体層の表面上に電極層を形成する。電極層の形成には、スパッタリング法や蒸着法等のドライプロセス技術や、メッキ法やスクリーン印刷法等のウェットプロセス技術が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/040604号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層構造体において電極層の厚さ寸法を数μm〜数十μmにする場合、電極層の形成にはウェットプロセス技術が適している。なぜなら、ドライプロセス技術では成膜速度が遅く、このため電極層の形成に時間を要するのに対し、ウェットプロセス技術では成膜速度が速く、このため電極層を短時間で形成することが出来るからである。
【0005】
その一方で、ウェットプロセス技術を用いて電極層を形成する場合、メッキ液等の溶液中に、電極箔と共に誘電体層が浸される。誘電体層に溶液が接触した場合、誘電体層は、溶液による浸食や誘電体層内への溶液の浸透等、溶液の影響を受け易い。このため、積層構造体の製造過程において、誘電体層が溶液に接触することは、あまり好ましいことではない。
【0006】
そこで本発明の目的は、製造過程において溶液の影響が誘電体層に及び難い積層構造体、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る積層構造体は、金属製の基材、誘電体層、保護膜、及び電極層を備えている。誘電体層は、前記基材の表面上に形成されている。保護膜は、耐食性及び/又は耐湿性を有する膜であって、前記誘電体層の表面を被覆している。電極層は、前記保護膜の表面上に形成されている。
【0008】
上記積層構造体の具体的構成において、前記保護膜は耐湿性を有しており、前記誘電体層の表面と側端面とが保護膜によって覆われている。
【0009】
上記積層構造体の他の具体的構成において、該積層構造体は、前記誘電体層の表面上に形成された金属薄膜を更に備えている。そして、前記保護膜には、該保護膜を貫通した導電ビアが形成されており、該導電ビアを介して、前記金属薄膜と電極層とが互いに電気的に接続されている。
【0010】
上記積層構造体の更なる他の具体的構成において、該積層構造体は、前記誘電体層の表面上に形成された金属薄膜を更に備えている。そして、前記電極層には、互いに離間して配置された第1電極部と第2電極部とが形成されている。前記金属薄膜には、互いに離間して配置された接続用金属膜と電極用金属膜とが形成されている。前記誘電体層には、該誘電体層を貫通した第1導電ビアが形成され、前記保護膜には、該保護膜を貫通した第2導電ビアと第3導電ビアとが形成されている。前記第1導電ビアと第2導電ビアとが、前記接続用金属膜を介して互いに電気的に接続され、第1導電ビアに前記基材が電気的に接続される一方、第2導電ビアに前記第1電極部が電気的に接続されている。又、前記第2電極部と電極用金属膜とが、前記第3導電ビアを介して互いに電気的に接続されている。
【0011】
本発明に係る積層構造体の製造方法は、工程(a)、工程(b)、及び工程(c)を有している。工程(a)では、金属製の基材の表面上に誘電体層を形成する。工程(b)では、前記誘電体層の露出面を、耐食性及び/又は耐湿性を有する保護膜によって被覆する。工程(c)では、ウェットプロセス技術を用いて、前記保護膜の表面上に電極層を形成する。
【0012】
上記製造方法の具体的態様において、該製造方法は、工程(d)及び工程(e)を更に有している。工程(d)は、前記工程(a)の後であって且つ工程(b)の前に実行される。工程(d)では、ドライプロセス技術を用いて、前記誘電体層の表面上に金属薄膜を形成する。工程(e)は、前記工程(b)の後に実行される。工程(e)では、前記保護膜に対して、前記電極層と金属薄膜とを互いに電気的に接続させる導電ビアを形成する。
【0013】
上記製造方法の他の具体的態様において、該製造方法は、工程(f)、工程(g)、工程(h)、工程(i)、及び工程(j)を更に有している。工程(f)は、前記工程(a)の後であって且つ工程(b)の前に実行される。工程(f)では、ドライプロセス技術を用いて、前記誘電体層の表面上に金属薄膜を形成する。工程(g)は、前記工程(f)の後に実行される。工程(g)では、前記金属薄膜に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される接続用金属膜と電極用金属膜とを形成する。工程(h)は、前記工程(a)の後に実行される。工程(h)では、前記誘電体層に対して、前記基材と接続用金属膜とを互いに電気的に接続させる第1導電ビアを形成する。工程(i)は、前記工程(c)の後に実行される。工程(i)では、前記電極層に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される第1電極部と第2電極部とを形成する。工程(j)は、前記工程(b)の後に実行される。工程(j)では、前記保護膜に対して、前記第1電極部と接続用金属膜とを互いに電気的に接続させる第2導電ビアと、前記第2電極部と電極用金属膜とを互いに電気的に接続させる第3導電ビアとを形成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る積層構造体及びその製造方法は、製造過程において溶液の影響が誘電体層に及び難い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薄膜キャパシタを示した平面図である。
【図2】図1に示されるA−A線に沿う断面図である。
【図3】第1実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法にて実行される成膜工程の説明に用いられる断面図である。
【図4】該製造方法にて実行される金属薄膜形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図5】該製造方法にて実行される保護膜形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図6】該製造方法にて実行されるビア形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る薄膜キャパシタを示した平面図である。
【図8】図7に示されるB−B線に沿う断面図である。
【図9】図7に示されるC−C線に沿う断面図である。
【図10】第2実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法にて実行される第1ビア形成工程の説明に用いられる図である。
【図11】該製造方法にて実行される金属薄膜形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図12】該製造方法にて実行される第1パターニング工程の内、マスキング処理の説明に用いられる図である。
【図13】該製造方法にて実行される第1パターニング工程の内、エッチング処理の説明に用いられる断面図である。
【図14】該製造方法にて実行される保護膜形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図15】該製造方法にて実行される第2ビア形成工程の説明に用いられる図である。
【図16】該製造方法にて実行される電極層形成工程の説明に用いられる断面図である。
【図17】該製造方法にて実行される第2パターニング工程の内、マスキング処理の説明に用いられる図である。
【図18】該製造方法にて実行される第2パターニング工程の内、エッチング処理の説明に用いられる断面図である。
【図19】第2実施形態の薄膜キャパシタを用いて作製されたコンデンサ内蔵基板を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る薄膜キャパシタを示した平面図である。図2は、図1に示されるA−A線に沿う断面図である。図1及び図2に示す様に、薄膜キャパシタは、電極箔1、誘電体層2、金属薄膜3、保護膜4、及び電極層5を備えている。
【0017】
電極箔1は、金属製の基材である。電極箔1を構成する金属材料には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)等、箔を形成することが可能であって、且つ薄膜キャパシタの電極となり得る物質が用いられる。
【0018】
誘電体層2は、電極箔1の表面上に形成されている。ここで、誘電体層2の形成には、ゾル‐ゲル法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、蒸着法、粉末噴射コーティング法等、周知の種々の成膜法が用いられる。ここで、粉末噴射コーティング法は、気体の流れを利用して、粉末をターゲット(電極箔1)の表面に噴き付け、これにより該ターゲットの表面上に粉末を堆積させて薄膜を形成する方法である。粉末噴射コーティング法には、PJD(Powder Jet Deposition)法やAD(Aerosol Deposition)法の方法が存在する。
【0019】
金属薄膜3は、誘電体層2の表面上に形成されている。ここで、金属薄膜3の形成には、スパッタリング法や蒸着法等のドライプロセス技術が用いられる。又、金属薄膜3を構成する金属材料には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)等、ドライプロセス技術によって薄膜を形成することが可能であって、且つ薄膜キャパシタの電極となり得る物質が用いられる。
【0020】
保護膜4は、耐食性と耐湿性の両方の特性を有しており、更に電気絶縁性をも有している。保護膜4は、誘電体層2と金属薄膜3とを被覆している。これにより、誘電体層2の表面が保護膜4によって覆われる共に、誘電体層2の側端面2aが、全周に亘って保護膜4により覆われている。保護膜4を構成する保護材料には、例えばフッ素樹脂やガラスを用いることが出来る。尚、保護材料には、耐食性と耐湿性の両方の特性を有する誘電体材料を用いてもよい。
【0021】
電極層5は、保護膜4の表面上に形成されている。ここで、電極層5の形成には、メッキ法やスクリーン印刷法等のウェットプロセス技術が用いられる。又、電極層5を構成する金属材料には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)等、ウェットプロセス技術によって薄膜を形成することが可能であって、且つ薄膜キャパシタの電極となり得る物質が用いられる。尚、電極層5を構成する金属材料には、金属薄膜3を構成する金属材料と同じ種類の物質が用いられてもよいし、それとは異なる種類の物質が用いられてもよい。
【0022】
図2に示す様に、保護膜4には、該保護膜4をその表面から裏面まで貫通した導電ビア6が形成されている。そして、該導電ビア6を介して、金属薄膜3と電極層5とが互いに電気的に接続されている。
【0023】
次に、第1実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法について説明する。該製造方法では、成膜工程、金属薄膜形成工程、保護膜形成工程、ビア形成工程、及び電極層形成工程が、順に実行される。
【0024】
図3は、成膜工程の説明に用いられる断面図である。図3に示す様に、成膜工程では、ゾル‐ゲル法、MOCVD法、スパッタリング法、蒸着法、粉末噴射コーティング法等、周知の種々の成膜法を用いて、電極箔1の表面上に誘電体層2を形成する。尚、成膜工程では、電極箔1の表面上に、誘電体層2となる成膜層を形成した後、該成膜層に対して熱処理を施すことにより、誘電体層2を形成してもよい。
【0025】
図4は、金属薄膜形成工程の説明に用いられる断面図である。図4に示す様に、金属薄膜形成工程では、誘電体層2の表面上に金属薄膜3を形成する。ここで、金属薄膜3の形成には、スパッタリング法や蒸着法等のドライプロセス技術が用いられる。
【0026】
図5は、保護膜形成工程の説明に用いられる断面図である。保護膜形成工程では、フッ素樹脂やガラス等、耐食性と耐湿性の両方の特性を有する電気絶縁材料によって、誘電体層2と金属薄膜3とを被覆する。これにより、図5に示す様に保護膜4を形成し、該保護膜4によって誘電体層2の露出面(表面の一部及び側端面2a)を被覆する。
【0027】
図6は、ビア形成工程の説明に用いられる断面図である。図6に示す様に、ビア形成工程では、保護膜4に対してレーザ加工等の加工を施すことにより、該保護膜4の所定箇所に、保護膜4をその表面から裏面まで貫通する貫通孔7を形成する。これによって、金属薄膜3の表面の少なくとも一部を露出させる。ここで、所定箇所は、導電ビア6を形成せんとする箇所に設定されている。
【0028】
電極層形成工程では、図2に示す様に、保護膜4の表面上に電極層5を形成する。ここで、電極層5の形成には、メッキ法やスクリーン印刷法等のウェットプロセス技術が用いられる。従って、電極層5の形成に伴い、該形成に用いられる金属材料の一部によって貫通孔7が充填され、或いは、電極層5の一部が貫通孔7の内面にも形成される。これにより、保護膜4に導電ビア6が形成され、該導電ビア6によって、金属薄膜3と電極層5とが互いに電気的に接続される。斯くして、図1及び図2に示す薄膜キャパシタが完成する。
【0029】
第1実施形態に係る製造方法においては、ウェットプロセス技術を用いて電極層5を形成する前に(電極層形成工程の前に)、誘電体層2の露出面が保護膜4によって覆われる。このため、電極層形成工程において、メッキ液やペースト等の溶液が誘電体層2に接触することがない。又、保護膜4は、耐食性と耐湿性の両方の特性を有している。このため、保護膜4に溶液が接触した場合でも、保護膜4は、溶液による浸食を受け難く、又、吸湿し難い。よって、第1実施形態の製造方法によれば、製造過程での誘電体層2の劣化及び吸湿が、保護膜4によって防止されることになる。又、誘電体層2内に溶液が浸透することがない。よって、誘電体層2内に金属膜が形成されることがなく、従って電極箔1と金属薄膜3との間に短絡が生じ難い。尚、金属薄膜3は、これにメッキ液やペースト等の溶液が接触した場合でも、溶液による浸食を受け難く、又、吸湿し難い。
【0030】
第1実施形態に係る薄膜キャパシタにおいては、誘電体層2の表面及び側端面2aが保護膜4によって覆われている。このため、誘電体層2には、外部に露出した部分がない。従って、誘電体層2は、外気に晒されることがない。又、保護膜4は耐湿性を有している。よって、第1実施形態の薄膜キャパシタによれば、高い耐湿性が実現され、これにより誘電体層2の電気絶縁性の低下が防止されている。
【0031】
又、第1実施形態の薄膜キャパシタにおいては、薄膜キャパシタの電極(陽極又は陰極)の内、電極層5によって構成される電極が、導電ビア6と金属薄膜3とによって誘電体層2の表面上まで引き込まれている。よって、第1実施形態の薄膜キャパシタには、静電容量の低下等、保護膜4を設けたことによる誘電特性の低下が生じない。
【0032】
図7は、本発明の第2実施形態に係る薄膜キャパシタを示した平面図である。図8及び図9はそれぞれ、図7に示されるB−B線及びC−C線に沿う断面図である。図7〜図9に示す様に、薄膜キャパシタは、電極箔1、誘電体層2、金属薄膜3、保護膜4、及び電極層5を備えている。以下、第2実施形態の薄膜キャパシタの構成の内、第1実施形態の薄膜キャパシタの構成と相違している部分について説明する。尚、第1実施形態の薄膜キャパシタの構成と同じ部分については、説明を省略する。
【0033】
図7及び図8に示す様に、電極層5には、互いに離間して配置された第1電極部51と第2電極部52とが形成されている。具体的には、第1電極部51は、電極層5の4箇所に形成されている(図7参照)。第2電極部52は、4つの第1電極部51〜51をそれぞれ包囲すると共に、各第1電極部51から離間して形成されている。
【0034】
図8に示す様に、金属薄膜3には、互いに離間して配置された接続用金属膜31と電極用金属膜32とが形成されている。具体的には、接続用金属膜31は、4つの第1電極部51〜51に1つずつ対応させて、金属薄膜3の4箇所に形成されている。電極用金属膜32は、4つの接続用金属膜31〜31をそれぞれ包囲すると共に、各接続用金属膜31から離間して形成されている。そして、電極用金属膜32は、電極箔1と広い範囲に亘って対向している。
【0035】
図8に示す様に、誘電体層2の表面の内、各接続用金属膜31の形成領域と電極用金属膜32の形成領域とによって挟まれた領域P0が、保護膜4の一部によって覆われている。又、誘電体層2には、該誘電体層2をその表面から裏面まで貫通した第1導電ビア61が形成されている。具体的には、第1導電ビア61は、4つの接続用金属膜31〜31に1つずつ対応させて、誘電体層2の4箇所に形成されている。そして、接続用金属膜31〜31と電極箔1とが、各接続用金属膜31に対応する第1導電ビア61を介して、互いに電気的に接続されている。
【0036】
図8に示す様に、保護膜4には、該保護膜4をその表面から裏面まで貫通した第2導電ビア62が形成されている。具体的には、第2導電ビア62は、4つの第1電極部51〜51に1つずつ対応させて、保護膜4の4箇所に形成されている。そして、各第2導電ビア62を介して、第1電極部51とこれに対応する接続用金属膜31とが互いに電気的に接続されている。
【0037】
斯くして、第2実施形態の薄膜キャパシタにおいては、各第1導電ビア61と、これに対応する第2導電ビア62とが、接続用金属膜31を介して互いに電気的に接続されている。そして、第1導電ビア61には電極箔1が電気的に接続される一方、第2導電ビア62には第1電極部51が電気的に接続されている。
【0038】
ここで、接続用金属膜31〜31と電極用金属膜32とは、互いに離間して配置されている。従って、各接続用金属膜31が、これに対応する第1導電ビア61及び第2導電ビア62に電気的に接続される一方で、電極用金属膜32は、第1導電ビア61〜61及び第2導電ビア62〜62から電気的に絶縁されている。
【0039】
図8及び図9に示す様に、保護膜4には更に、該保護膜4をその表面から裏面まで貫通した第3導電ビア63が形成されている。具体的には、第3導電ビア63は、保護膜4の内、第2導電ビア62〜62の形成箇所とは異なる箇所に形成されている。そして、第2電極部52と電極用金属膜32とが、第3導電ビア63を介して互いに電気的に接続されている。
【0040】
ここで、第1電極部51〜51と第2電極部52とは、互いに離間して配置されている。従って、各第1電極部51は、これに対応する第2導電ビア62に電気的に接続される一方で、第3導電ビア63からは電気的に絶縁されている。第2電極部52は、第3導電ビア63に電気的に接続される一方で、第2導電ビア62〜62からは電気的に絶縁されている。
【0041】
次に、第2実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法について説明する。該製造方法では、成膜工程、第1ビア形成工程、金属薄膜形成工程、第1パターニング工程、保護膜形成工程、第2ビア形成工程、電極層形成工程、及び第2パターニング工程が、順に実行される。尚、第2実施形態の成膜工程は、第1実施形態の成膜工程(図3参照)と同じであるので、説明を省略する。
【0042】
図10(a)は、第1ビア形成工程の説明に用いられる平面図である。図10(b)は、図10(a)に示されるD−D線に沿う断面図である。図10(a)及び図10(b)に示す様に、第1ビア形成工程では、誘電体層2に対してレーザ加工等の加工を施すことにより、該誘電体層2の所定箇所に、誘電体層2をその表面から裏面まで貫通する第1貫通孔71を形成する。これによって、電極箔1の表面の一部を露出させる。ここで、所定箇所は、第1導電ビア61〜61を形成せんとする4箇所に設定されている(図10(a)参照)。
【0043】
図11は、金属薄膜形成工程の説明に用いられる断面図である。図11に示す様に、金属薄膜形成工程では、誘電体層2の表面上に金属薄膜3を形成する。ここで、金属薄膜3の形成には、スパッタリング法や蒸着法等のドライプロセス技術が用いられる。従って、金属薄膜3の形成に伴い、該形成に用いられる金属材料の一部によって第1貫通孔71〜71が充填され、或いは、金属薄膜3の一部が第1貫通孔71〜71の内面にも形成される。これにより、誘電体層2に第1導電ビア61〜61が形成され、該第1導電ビア61〜61によって、金属薄膜3と電極箔1とが互いに電気的に接続される。
【0044】
図12(a)は、第1パターニング工程にて実行されるマスキング処理の説明に用いられる平面図である。図12(b)は、図12(a)に示されるE−E線に沿う断面図である。図12(a)及び図12(b)に示す様に、第1パターニング工程では先ず、金属薄膜3の表面上にレジスト膜81を形成することにより、金属薄膜3に対してマスキング処理を施す。このとき、金属薄膜3の表面の内、接続用金属膜31〜31を形成せんとする領域P1と、電極用金属膜32を形成せんとする領域P2とを、レジスト膜81によって被覆し、それ以外の領域上にはレジスト膜81を形成しない。
【0045】
図13(a)及び図13(b)は、第1パターニング工程にて実行されるエッチング処理の説明に用いられる断面図である。図13(a)に示す様に、マスキング処理の後、金属薄膜3に対してレジスト膜81側からエッチング処理を施す。これにより、金属薄膜3の内、レジスト膜81によって覆われている部分を残置させると共に、それ以外の部分を除去する。斯くして、金属薄膜3には、接続用金属膜31〜31と電極用金属膜32とが形成されることになる。その後、図13(b)に示す様に、金属薄膜3の表面からレジスト膜81を除去する。
【0046】
尚、上記第1パターニング工程を実行することに代えて、金属薄膜形成工程において次の態様を採用してもよい。即ち、誘電体層2の表面の内、接続用金属膜31〜31を形成せんとする領域と、電極用金属膜32を形成せんとする領域とに、ドライプロセス技術を用いて金属薄膜3を選択的に形成し、これにより接続用金属膜31〜31と電極用金属膜32とを形成してもよい。この態様によれば、上記第1パターニング工程が不要となる。
【0047】
図14は、保護膜形成工程の説明に用いられる断面図である。保護膜形成工程では、フッ素樹脂やガラス等、耐食性と耐湿性の両方の特性を有する電気絶縁材料によって、誘電体層2と金属薄膜3とを被覆する。これにより、図14に示す様に保護膜4を形成し、該保護膜4によって誘電体層2の露出面(領域P0を含む表面の一部及び側端面2a)を被覆する。
【0048】
図15(a)は、第2ビア形成工程の説明に用いられる平面図である。図15(b)は、図15(a)に示されるF−F線に沿う断面図である。図15(a)及び図15(b)に示す様に、第2ビア形成工程では、保護膜4に対してレーザ加工等の加工を施すことにより、該保護膜4の所定箇所に、保護膜4をその表面から裏面まで貫通する第2貫通孔72と第3貫通孔73とを形成する。ここで、所定箇所は、第2導電ビア62〜62を形成せんとする4箇所と、第3導電ビア63を形成せんとする箇所とに設定されている。これにより、各接続用金属膜31の表面の少なくとも一部を露出させ、又、電極用金属膜32の表面の少なくとも一部を露出させる。
【0049】
図16は、電極層形成工程の説明に用いられる断面図である。図16に示す様に、電極層形成工程では、保護膜4の表面上に電極層5を形成する。ここで、電極層5の形成には、メッキ法やスクリーン印刷法等のウェットプロセス技術が用いられる。従って、電極層5の形成に伴い、該形成に用いられる金属材料の一部によって第2貫通孔72〜72及び第3貫通孔73が充填され、或いは、電極層5の一部が第2貫通孔72〜72及び第3貫通孔73の内面にも形成される。これにより、保護膜4に、第2導電ビア62〜62及び第3導電ビア63が形成される。そして、第2導電ビア62〜62によって、接続用金属膜31〜31と電極層5とが互いに電気的に接続される。又、第3導電ビア63によって、電極用金属膜32と電極層5とが互いに電気的に接続される。
【0050】
図17(a)は、第2パターニング工程にて実行されるマスキング処理の説明に用いられる平面図である。図17(b)は、図17(a)に示されるG−G線に沿う断面図である。図17(a)及び図17(b)に示す様に、第2パターニング工程では先ず、電極層5の表面上にレジスト膜82を形成することにより、電極層5に対してマスキング処理を施す。このとき、電極層5の表面の内、第1電極部51〜51を形成せんとする領域P3と、第2電極部52を形成せんとする領域P4とを、レジスト膜82によって被覆し、それ以外の領域上にはレジスト膜82を形成しない。
【0051】
図18(a)及び図18(b)は、第2パターニング工程にて実行されるエッチング処理の説明に用いられる断面図である。図18(a)に示す様に、マスキング処理の後、電極層5に対してレジスト膜82側からエッチング処理を施す。これにより、電極層5の内、レジスト膜82によって覆われている部分を残置させると共に、それ以外の部分を除去する。斯くして、電極層5には、第1電極部51〜51と第2電極部52とが形成されることになる。その後、図18(b)に示す様に、電極層5の表面からレジスト膜82を除去する。これにより、図7〜図9に示す薄膜キャパシタが完成する。
【0052】
尚、上記第2パターニング工程を実行することに代えて、電極層形成工程において次の態様を採用してもよい。即ち、保護膜4の表面の内、第1電極部51〜51を形成せんとする領域と、第2電極部52を形成せんとする領域とに、ウェットプロセス技術を用いて電極層5を選択的に形成し、これにより第1電極部51〜51と第2電極部52とを形成してもよい。この態様によれば、上記第2パターニング工程が不要となる。
【0053】
第2実施形態に係る製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様、製造過程での誘電体層2の劣化及び吸湿が、保護膜4によって防止されることになる。又、電極箔1と金属薄膜3との間に短絡が生じ難い。更に、第2実施形態に係る薄膜キャパシタによれば、第1実施形態の薄膜キャパシタと同様、高い耐湿性が実現され、これにより誘電体層2の電気絶縁性の低下が防止される。又、静電容量の低下等、保護膜4を設けたことによる誘電特性の低下が生じない。
【0054】
本願に関連する技術として、絶縁基板内に薄膜キャパシタを埋め込む技術が存在する。この技術により作製された基板は、コンデンサ内蔵基板と呼ばれ、薄膜キャパシタの高密度化が可能である。一例として、図19は、第2実施形態の薄膜キャパシタを用いて作製されたコンデンサ内蔵基板を示した断面図である。図19に示す様に、絶縁基板9は、2つの絶縁基材91,92を積層して構成されている。そして、薄膜キャパシタは、2つの絶縁基材91,92の間に挟み込まれている。
【0055】
ここで、第2実施形態の薄膜キャパシタにおいては、図8に示す様に、薄膜キャパシタの電極の内、電極箔1によって構成される電極が、第1導電ビア61〜61、接続用金属膜31〜31、及び第2導電ビア62〜62を順に介して第1電極部51〜51に電気的に接続されており、これにより該電極が保護膜4の表面上に引き出されている。又、図9に示す様に、電極用金属膜32によって構成される電極が、第3導電ビア63及び第2電極部52によって保護膜4の表面上に引き出されている。従って、コンデンサ内蔵基板に回路を構築する場合において、図19に示す様に、導電ビア93〜93を用いて、薄膜キャパシタに対して片側(電極層5側)から配線することが可能となる。従って、コンデンサ内蔵基板を作製する過程において、回路の構築が容易となる。
【0056】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態に係る薄膜キャパシタの完成品において高い耐湿性が必要とされない場合には、その完成品においては、誘電体層2の一部が保護膜4から露出していてもよい。又、本発明において、保護膜4は、耐食性と耐湿性の両方の特性を有したものに限定されない。例えば、電極層形成工程にて用いるウェットプロセス技術の手法(メッキ法やスクリーン印刷法等)に応じて、保護膜4を、耐食性又は耐湿性の何れかの特性を有したものに種々変形することが可能である。更に、第1実施形態の薄膜キャパシタは、金属薄膜3及び導電ビア6が形成されていない構成に変形されてもよい。
【0057】
上記実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法において、誘電体層に対する溶液の影響がない場合、或いはその影響があったとしても問題とならない場合には、金属薄膜形成工程での金属薄膜3の形成に、ウェットプロセス技術を用いてもよい。
【0058】
上記第1実施形態に係る薄膜キャパシタの製造方法においては、電極層形成工程での電極層5の形成に伴って導電ビア6が形成されている。しかし、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、導電ビア6の形成を、電極層形成工程の前又は後に、電極層形成工程とは別の工程にて実行してもよい。第2実施形態での第1導電ビア61、第2導電ビア62、及び第3導電ビア63の形成についても、同様である。製造方法の工程順は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0059】
上述した薄膜キャパシタ及びその製造方法において、電極箔1に代えて、種々の金属製の基材を採用することが出来る。又、上述した薄膜キャパシタ及びその製造方法の各種構成は、コンデンサ回路を有した回路基板等、種々の積層構造体に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0060】
1 電極箔
2 誘電体層
2a 側端面
3 金属薄膜
31 接続用金属膜
32 電極用金属膜
4 保護膜
5 電極層
51 第1電極部
52 第2電極部
6 導電ビア
61 第1導電ビア
62 第2導電ビア
63 第3導電ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の基材と、
前記基材の表面上に形成された誘電体層と、
耐食性及び/又は耐湿性を有する膜であって、前記誘電体層の表面を被覆した保護膜と、
前記保護膜の表面上に形成された電極層と
を備える、積層構造体。
【請求項2】
前記保護膜は耐湿性を有しており、前記誘電体層の表面と側端面とが保護膜によって覆われている、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記誘電体層の表面上に形成された金属薄膜を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の積層構造体であって、
前記保護膜には、該保護膜を貫通した導電ビアが形成されており、該導電ビアを介して、前記金属薄膜と電極層とが互いに電気的に接続されている、
積層構造体。
【請求項4】
前記誘電体層の表面上に形成された金属薄膜を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の積層構造体であって、
前記電極層には、互いに離間して配置された第1電極部と第2電極部とが形成され、前記金属薄膜には、互いに離間して配置された接続用金属膜と電極用金属膜とが形成され、前記誘電体層には、該誘電体層を貫通した第1導電ビアが形成され、前記保護膜には、該保護膜を貫通した第2導電ビアと第3導電ビアとが形成されており、
前記第1導電ビアと第2導電ビアとが、前記接続用金属膜を介して互いに電気的に接続され、第1導電ビアに前記基材が電気的に接続される一方、第2導電ビアに前記第1電極部が電気的に接続されており、前記第2電極部と電極用金属膜とが、前記第3導電ビアを介して互いに電気的に接続されている、
積層構造体。
【請求項5】
(a)金属製の基材の表面上に誘電体層を形成する工程と、
(b)前記誘電体層の露出面を、耐食性及び/又は耐湿性を有する保護膜によって被覆する工程と、
(c)ウェットプロセス技術を用いて、前記保護膜の表面上に電極層を形成する工程と
を有する、積層構造体の製造方法。
【請求項6】
(d)前記工程(a)の後であって且つ工程(b)の前に、ドライプロセス技術を用いて、前記誘電体層の表面上に金属薄膜を形成する工程と、
(e)前記工程(b)の後、前記保護膜に対して、前記電極層と金属薄膜とを互いに電気的に接続させる導電ビアを形成する工程と
を更に有する、請求項5に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項7】
(f)前記工程(a)の後であって且つ工程(b)の前に、ドライプロセス技術を用いて、前記誘電体層の表面上に金属薄膜を形成する工程と、
(g)前記工程(f)の後、前記金属薄膜に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される接続用金属膜と電極用金属膜とを形成する工程と、
(h)前記工程(a)の後、前記誘電体層に対して、前記基材と接続用金属膜とを互いに電気的に接続させる第1導電ビアを形成する工程と、
(i)前記工程(c)の後、前記電極層に対して加工を施すことにより、互いに離間して配置される第1電極部と第2電極部とを形成する工程と、
(j)前記工程(b)の後、前記保護膜に対して、前記第1電極部と接続用金属膜とを互いに電気的に接続させる第2導電ビアと、前記第2電極部と電極用金属膜とを互いに電気的に接続させる第3導電ビアとを形成する工程と
を更に有する、請求項5に記載の積層構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−212795(P2012−212795A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77834(P2011−77834)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】