穴あけ装置
【課題】ワークへのちりの付着を防止できる穴あけ装置の提供を課題とする。
【解決手段】ワーク66をワーク回転機構12の回転軸28上で支持し上面に開口15が備えられたワーク支持部材13と、ワーク支持部材13に対して昇降可能に設けられ開口15に被せられる蓋部16と、蓋部16が開口15に被せられた照射室63と、照射室63に繋げられ圧縮ガスを供給するガス供給手段45と、ワーク回転機構12からワーク支持部材13の外側方を通って延びるブラケット81と、ブラケット81の上部と蓋部16とを着脱自在に連結する連結手段83とを備えたことを特徴とする。
【効果】ガス供給手段45と、排出手段49とを備えた。レーザ光を照射する場合に、ガス供給手段45で圧縮ガスを供給しつつ、排出手段49でガスを排出する。気圧の差を生じさせることにより照射室63内に気流が発生する。この気流により効率よくちり72が外部へ排出される。
【解決手段】ワーク66をワーク回転機構12の回転軸28上で支持し上面に開口15が備えられたワーク支持部材13と、ワーク支持部材13に対して昇降可能に設けられ開口15に被せられる蓋部16と、蓋部16が開口15に被せられた照射室63と、照射室63に繋げられ圧縮ガスを供給するガス供給手段45と、ワーク回転機構12からワーク支持部材13の外側方を通って延びるブラケット81と、ブラケット81の上部と蓋部16とを着脱自在に連結する連結手段83とを備えたことを特徴とする。
【効果】ガス供給手段45と、排出手段49とを備えた。レーザ光を照射する場合に、ガス供給手段45で圧縮ガスを供給しつつ、排出手段49でガスを排出する。気圧の差を生じさせることにより照射室63内に気流が発生する。この気流により効率よくちり72が外部へ排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射することにより、ワークの壁部に貫通穴を形成する穴あけ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射ノズルを製造する際に、燃料噴射ノズル本体の壁部に貫通穴を形成する。貫通穴の形成は、穴あけ装置を用いて壁部にレーザ光を照射することで行う。(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図14(a)に示すように、穴あけ装置100は、ワークとしての燃料噴射ノズル101の内部を真空に保つ真空ポンプ102と、この真空ポンプ102に繋がれ流体が充填されるタンク103と、タンク103内の流体を燃料噴射ノズル101に供給する流体供給ポンプ104と、この流体供給ポンプ104から供給される流体の量を調整する流量調整器105と、この流量調整器105から燃料噴射ノズル101の先端101aに向かって延ばされ内部に流体が流される流体供給管106と、流体供給管106から燃料噴射ノズル101に供給された流体をタンク103に向かって送る流体回収管107と、燃料噴射ノズル101にレーザ光を照射することで燃料噴射ノズル101に穴をあける照射器110とからなる。
【0004】
(a)のb部拡大図である(b)に示すように、照射器110で燃料噴射ノズル101の先端101aにレーザ光112を照射する。レーザ光112を照射する間、燃料噴射ノズル101の先端101a内部に向かって、流体供給管106から流体を供給し続ける(矢印参照)。先端101aに穴があいた場合に、燃料噴射ノズル101の内部に到達したレーザ光112は流体によって拡散される。拡散されることで、穴があけられた先端101aに対向する部位101bへの、レーザ光112の照射を防ぐことができる。
【0005】
ところで、レーザ光112を照射した場合に、レーザ光112の照射される先端101a付近で、レーザ光112で溶融されたヒュームと称するちりが飛散する。飛散したちりの一部は、先端101a付近に付着することがある。外観性向上の観点から、ワークへのちりの付着を防ぐことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−526961公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ワークへのちりの付着を防止できる穴あけ装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、中空状のワークの外から中空部に向かってレーザ光を照射することにより、ワークの壁部に貫通穴を形成する穴あけ装置であって、
この穴あけ装置は、
基台に支持され、ワークを回動させるワーク回転機構と、
このワーク回転機構に支持され、ワークをワーク回転機構の回転軸上で支持し、上面に開口が備えられたワーク支持部材と、
このワーク支持部材に対して昇降可能に設けられ、ワーク支持部材の開口に被せられる蓋部と、
この蓋部が開口に被せられてなる領域であって、ワークのうちレーザ光が照射される被照射部に向かって、レーザ光を導入する照射室と、
この照射室に繋げられ照射室内に圧縮ガスを供給するためのガス供給手段と、
照射室内へ先端部が伸ばされレーザ光の照射により発生するちりを含め照射室内のガスを照射室の外へ排出する排出手段と、
ワーク回転機構からワーク支持部材の外側方を通って延びるブラケットと、
このブラケットの上部と蓋部とを着脱自在に連結する連結手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、連結手段は、ガス供給手段により圧縮ガスが照射室へ供給される前に蓋部に係合し、排出手段により圧縮ガスが照射室から排出された後に蓋部との係合を解くシリンダユニットであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、連結手段は、ガス供給手段により圧縮ガスが照射室へ供給される前に蓋部に係合し、排出手段により圧縮ガスが照射室から排出された後に蓋部との係合を解くピンであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、ワークは、レーザ光により溶融されない充填体が中空部に充填され、
この充填体に接触するように、充填体を振動させる振動機構が配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項4に記載の穴あけ装置であって、
この穴あけ装置は、振動機構、ガス供給手段及び排出手段を制御する制御機構を備え、
この制御機構は、貫通穴が形成されるまでは、照射室内の気圧を、中空部の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の穴あけ装置であって、
制御機構は、貫通穴が形成された後は、排出手段の排出機能を停止させることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項4、請求項5又は請求項6に記載の穴あけ装置であって、
充填体の大きさは30μm〜20mmであって、振動機構が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、発振の際の振幅は5μm〜30μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、ガス供給手段と、排出手段とを備えた。レーザ光を照射する場合に、ガス供給手段で圧縮ガスを供給しつつ、排出手段でガスを排出する。気圧の差を生じさせることにより照射室内に気流が発生する。この気流により効率よくちりが外部へ排出される。
【0016】
加えて、ブラケットと蓋部とを連結する連結手段を備えた。ブラケットは、ワーク支持部材と共に回転機構に支持される。即ち、連結手段でブラケットと蓋部とを連結することで、蓋部に対してワーク支持部材を固定することができる。ワーク支持部材を固定することでワークも固定され、正確な位置に穴をあけることができる。
【0017】
さらに、ワークは、ワーク支持部材により回転軸上に回動可能に支持される。ワーク回転機構を回動させることで、レーザ光に対するワークの角度を変えることができる。1台の装置で、様々な角度に穴あけを行うことができ有益である。
【0018】
請求項2に係る発明では、連結手段は、ガス供給手段により圧縮ガスが照射室へ供給される前に蓋部に係合し、排出手段により圧縮ガスが照射室から排出された後に蓋部との係合を解く。圧縮ガスが照射室内へ供給されることで、照射室内のガス圧が高まる。圧縮ガスは、ワーク支持部材を押し下げる方向に作用する。即ち、圧縮ガスが照射室内に供給されている間が、最もワーク支持部材の移動が起こりやすい。照射室内の圧力が高い間に連
結手段を用いることで、有効にワーク支持部材の移動を防ぐことができる。
【0019】
加えて、連結手段はシリンダユニットが用いられる。シリンダユニットを用いることで、ブラケットと蓋部との連結・解除を早急に行うことができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、連結手段は、ガス供給手段により圧縮ガスが照射室へ供給される前に蓋部に係合し、排出手段により圧縮ガスが照射室から排出された後に蓋部との係合を解く。圧縮ガスが照射室内へ供給されることで、照射室内のガス圧が高まる。圧縮ガスは、ワーク支持部材を押し下げる方向に作用する。即ち、圧縮ガスが照射室内に供給されている間が、最もワーク支持部材の移動が起こりやすい。照射室内の圧力が高い間に連
結手段を用いることで、有効にワーク支持部材の移動を防ぐことができる。
【0021】
加えて、連結手段はピンが用いられる。ピンであれば安価に調達することができ、部品の調達コストを低下させることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、レーザ光により溶融されない充填体が中空部に充填される。このため、壁部に穴をあけたレーザ光は、中空部に充填された充填体に衝突する。この衝突により、充填体はレーザ光のエネルギを吸収する。充填体がエネルギを吸収することにより、レーザ光が内周面に照射されることを防ぐことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、制御機構は、貫通穴が形成されるまでは、照射室内の気圧を、中空部の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御する。気圧の差を生じさせることにより照射室内に気流が発生する。この気流により効率よくちりが外部へ排出される。
【0024】
請求項6に係る発明では、貫通穴が形成された後は、排出手段の排出機能を停止させる。ちりを排出するための気流を一つに絞ることにより、効率よくちりを外部へ排出することができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、充填体の大きさは30μm〜20mmであって、振動機構が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、発振の際の振幅は5μm〜30μmである。充填体の大きさは30μm〜20mmである。この大きさであれば、中空部内に充填体を振動させるために程良いスペースが空く。また、前述の振動条件で振動させることにより充填体をよく振動させることができるため、充填体の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】参考例に係る穴あけ装置の斜視図である。
【図2】参考例に係る穴あけ装置の要部断面図である。
【図3】ワークのセットについて説明する図である。
【図4】ワーク支持部の作業位置までの移動を説明する図である。
【図5】作業部の移動について説明する図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】レーザの照射角について説明する図である。
【図8】本発明の実施例と過去の比較例との比較図である。
【図9】クランプ機構の変更例を説明する図である。
【図10】連結手段を説明する図である。
【図11】実施例に係る穴あけ装置の側面図である。
【図12】連結手段の作用を説明する図である。
【図13】連結手段の変更例を説明する図である。
【図14】従来技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0028】
図1に示されるように、穴あけ装置10は、基台11と、この基台11に支持されワーク(図3、符号66)を回転させるワーク回転機構12と、このワーク回転機構12に回転可能に支持されワークを支持するワーク支持部材13と、このワーク支持部材13の側面に設けられワークをクランプするワーククランプ機構14と、ワーク支持部材13の上方に回転可能且つ昇降可能に設けられワーク支持部材13の開口15に被せられる蓋部16と、基台11上に設けられた作業台17と、この作業台17に支持され蓋部16を回転させる蓋部回転機構18と、この蓋部回転機構18に接続され蓋部16を昇降させる昇降機構19と、この昇降機構19の下方に設けられ蓋部16を昇降する際に蓋部16の位置決めをする位置決めブロック21と、ワーク回転機構12やワーククランプ機構14に繋がれこれらを制御する制御機構22とからなる。
【0029】
ワーククランプ機構14は、クランプシリンダ23の先端に板体24が接続され、クランプシリンダ23を作動させることで、板体24を矢印(1)で示すように昇降させる。これにより、ワークのクランプ及びクランプ解除を操作する。
【0030】
詳細は後述するが、図に示されるような状態では、ワーク支持部材13内に配置されるワークがクランプされる。ここからクランプシリンダ23を作動させ板体24を上昇させることで、クランプ状態が解除される。
【0031】
ワーク回転機構12は、基台11上に設けられるL字形の回転機構支持部26と、この回転機構支持部26に回転可能に支持されワーク支持部材13を支持するL字形のワーク回転テーブル27とからなる。
ワーク回転テーブル27は、矢印(2)で示すように回転軸28を中心に回動される。詳細は後述するが、この回転軸28は、ワーク支持部材13内のワークに接触する。即ち、ワークは、ワーク回転テーブル27の回転軸28上に配置される。
【0032】
昇降機構19は、蓋部昇降シリンダ32が矢印(3)に示すように上方下方に作動することにより、蓋部16と、この蓋部16を支持する蓋部支持体33と、この蓋部支持体33の底面に配置される位置決めピン34が一体的に昇降される。
【0033】
図に示す状態から蓋部昇降シリンダ32を作動させ、蓋部16、蓋部支持体33、位置決めピン34を降下させる。蓋部16はワーク支持部材13に被せられ、位置決めピン34は位置決めブロック21に挿入される。
【0034】
蓋部回転機構18は、蓋部16を水平方向に旋回させるための蓋部回転モータ36と、この蓋部回転モータ36の上面に配置され蓋部昇降シリンダ32を支持するための支持柱37とからなる。
蓋部回転モータ36を作動させることにより、矢印(4)に示すように支持柱37が回転軸38を中心に回転する。これにより支持柱37に支持される蓋部昇降シリンダ32、蓋部支持体33、蓋部16、位置決めピン34が一体的に回動される。
【0035】
ワーク回転テーブル27を回転軸28廻りに回転させる(矢印(2))際に、蓋部16にクランプシリンダ23が接触しないようにする必要がある。蓋部16等を想像線で示す待機位置39に移動させておくことで接触を防ぐ。
次図で本発明の要部について説明する。
【0036】
図2に示すように、蓋部16は、上面の支持枠42に支持されレーザ光を通す透過板43と、この透過板43を通過したレーザ光が通過する通路44とを備える。この通路44を通過したレーザ光により照射されるワークを、収容する照射室63の空間を形成する隔壁41に、当該通路44が開口している。更に、蓋部16は、この通路44に繋げられガス供給手段45から供給される圧縮ガスが通される圧縮ガス供給路46と、ノズル状に形成されレーザ光が照射される方向に必ず向けられて配置される先端部48と、この先端部48からレーザ光の照射により発生するちりを吸い込む排出手段49と、ワーク支持部材13に蓋部16を被せた際にワーク支持部材13に接触するシール材51とを備える。
【0037】
なお、レーザ光の照射により発生するちりとは、プリュームと呼ばれる、レーザ加工時にワークの表面の金属が熱で蒸発してできた金属蒸気や、イオン化した混合気体のことである。
また、矢印(1)と矢印(3)は、図1の矢印(1)、矢印(3)と同じである。
【0038】
蓋部16は、上部基体52と下部基体53とから構成され、シール材51はこれらの上部基体52と下部基体53とに挟まれるように配置される。
ガス供給手段45から供給されるガスとしては、空気の他、窒素等の不活性ガスを用いることもでき、圧縮ガスの種類は問わない。
【0039】
一方、ワーク支持部材13は、シール材51に接触する外壁部47と、隔壁41に対向する位置に照射室63の空間を形成する内壁部54を有する凹部62と、この凹部62の底部にワークが載置される第1ワークポケット55と、この第1ワークポケット55に向かって先端が延ばされる超音波振動子を用いた振動機構56と、この振動機構56の先端付近に繋げられ第1ワークポケット55の下側を低圧にする低圧手段(詳細は後述)とからなる。
【0040】
板体24を降下させることにより、この板体24に接続される支持板57、支持柱58、58、クランプ板59が一体的に降下される。ワークは、想像線で示すようにクランプ板59の下面に形成される第2ワークポケット61と、第1ワークポケット55でクランプされる。
【0041】
この後、矢印(3)で示すように蓋部16を降下させワーク支持部材13に被せる。このとき蓋部16とワーク支持部材13とで囲われた領域が、レーザ光の照射を行う照射室63である。即ち、ガス供給手段45は、照射室63に繋げられ照射室63内に圧縮ガスを供給するということができる。また、排出手段49は、ノズル状に形成された先端部48が照射室63内に伸ばされているということができる。
次図でワークのセットについて説明する。
【0042】
図3(a)に示すように振動機構56の先端が上を向いている状態から、ワーク回転テーブル(図1、符号27)を作動させ、振動機構56の先端が下を向く、図3(b)に示す状態にワーク支持部材13を回転させる。
なお、図3は回転軸28が図面表裏に延びる方向からワーク支持部材13を見ている。
【0043】
次に(b)に示す状態で、前述の第1ワークポケット55における振動機構56側を低圧にする低圧手段64を作動させる。そして、レーザ光で溶融しないジルコニア製ボールを充填体65として、ワーク66の中空部67に充填し、第1ワークポケット55に配置する。
【0044】
このとき、低圧手段64の作用により、ワーク66には上向きに引っ張られる力が掛かる。従って、クランプ板59でクランプする前にワーク66から手を離しても、ワーク66が落下することはない。
【0045】
充填体65たるジルコニア製ボールは、酸化物セラミックであるジルコニアからなる。周知の通りジルコニアは、融点が極めて高く、このためレーザ光が入射しても溶融することはない。なお、充填体65においてレーザ光が入射した箇所は、崩壊を起こす。その結果微粉末が発生する。
【0046】
なお、充填体にはジルコニア製ボールの他に、粉体を用いることもできる。即ち、ジルコニア製の粉体を含む充填体65の直径は、レーザ光の照射時間や発振周波数に基づいて設定される。換言すると、レーザ光が照射される前のジルコニア製の充填体65の体積をV0、パルス毎に崩壊する体積をZ、レーザ光の発振周波数をf、レーザ光の照射時間をt、とするとき、最低限必要な充填体の半径Rは、下記の式(1)で表されるとおりである。
R={3V0−tfZ/4π}1/3・・・(1)
【0047】
更に換言すると、充填体65としては、式(1)で求められる半径Rよりも半径が大きいものが選定される。また、式(1)のパルス毎に崩壊する体積Zは、予め実験により求められる体積であるから、ジルコニア製の粉体を含む充填体以外のもので、例えば素材がジルコニアの充填体であっても予め実験によりパルス毎に崩壊する体積Zが求めることができれば選定することができる。
【0048】
なお、レーザ光がワークに照射される間に、該ワークの壁部に貫通穴を形成して、該貫通穴を通る該レーザ光が、貫通穴が形成された壁部と対向するワークの内周面に到達することを回避するべく、充填体65は設けられたものであり、レーザ光を照射して溶融しないもので且つ、前記ワークに形成される貫通穴の直径、及び上述の式(1)で求められるRよりも半径が大きいものであれば、充填体の素材、形状は特に限定されない。
【0049】
貫通穴の直径は3μm〜200μmであり、少なくとも貫通穴よりも大きい粉体を用いる必要があり、ジルコニア製ボールを用いる場合、ジルコニア製ボールの直径は直径30μm〜20mmであることが望ましい。
【0050】
次に(c)の矢印(1)で示すようにクランプ板59を上昇させて、ワーク66をクランプする。これでワーク66のセットが完了する。
この図に示されるとおり、低圧手段64は、中空部67に繋げられ、この中空部67の気圧を壁部68の外側よりも低くしている。
【0051】
低圧手段64により、中空部67の気圧を壁部68の外側よりも低くする。これにより、ワーク66を低圧側に引っ張る力が作動する。穴あけ前には、この力によりワーク66がしっかり抑えられる。
次図でワーク支持部の作業位置までの移動について説明する。
【0052】
図4(a)に示されるように、ワーク66をクランプした後は、ワーク回転テーブル(図1、符号27)を作動させ、(b)に示すように再び振動機構56の先端が上向きになるような位置まで、ワーク支持部材13を移動させる。
次図で、ワーク支持部材13に蓋部16を被せる際の作用について説明する。
【0053】
図5に示されるように、待機位置(図1、符号39)からワーク支持部材13の上に蓋部16を移動させ、その後、矢印(3)で示すように蓋部16を降下させる。この動作により、蓋部16の隔壁41及びシール材51、並びにワーク支持部材13の内壁部54及びクランプ板59の上面により照射室63が形成される。即ち、照射室63は、ワーク支持部材13の開口15に蓋部16を被せることで形成される領域ということができる。照射室63を形成した上で、ワークにレーザ光を照射する。
【0054】
図6に示すようにレーザ光70を照射する際は、ガス供給手段45で圧縮ガスを供給しつつ、レーザ光70を照射することにより発生するちりを排出手段49で排出する。ガス供給手段45で圧縮ガスを供給することにより照射室63内の気圧は高くなる。このため、排出手段49を作動させることにより、照射室63内を大気圧と同じ気圧に保つことができる。
振動機構56、低圧手段64、ガス供給手段45及び排出手段49は、それぞれが接続される制御機構22によって制御され、作動される。
【0055】
レーザ光は、ナノ秒レーザ光やピコ秒レーザ光を用いることができる。また、レーザ加工ヘッドにナノ秒レーザ光の照射機及びピコ秒レーザ光の照射機の両方を支持させることもできる。この場合には、ナノ秒レーザ光により大まかな穴あけを行った後、ピコ秒レーザ光で仕上げを行うことにより、精度の高い穴あけ作業を短時間で行うことができる。
【0056】
図7(a)に示すように、レーザ光70に対して、振動機構56の軸線L1がなす角度θを、ワーク回転テーブル(図1符号27)を回転させることにより変えることができる。例えば、(a)の場合のθ1は27°で、これを回転させることにより(b)に示すようにθ2を45°とすることができる。
これにより、ワーク66に対してレーザ光70の当たる照射角度を変えることができる。
【0057】
図面表裏方向に延びる回転軸28上にワーク66が配置される。これにより、照射されるレーザ光70に対するワーク66の角度は、ワーク回転テーブルを回動させることにより変えることができる。即ち、様々な角度からの穴あけを行うために、回動機構を作動させるだけでよい。1台の装置で、様々な角度に穴あけを行うことができ有益である。
【0058】
仮に、回転軸28に対してワーク66を離して配置した場合は、ワーク支持部材13を回転させることにより、ワーク66は大きく移動し、レーザ光70の照射されない位置までワーク66が移動してしまう。ワーク66はワーク支持部材13により回転軸28上に支持される。ワーク66が回転軸28上に支持されることで、ワーク66は同じ位置で回転される。同じ位置で回転するため、回転させた後に別途ワーク66の高さを調整する必要がない。即ち、ワーク66の高さ等を調整するための機器を設ける必要がなく、部品点数の削減に寄与する。
【0059】
図8(a)に示すように、排出手段49を作動させながらワーク66にレーザ光70を照射することにより、被照射部71で発生するちり72を素早く回収することが出来る。
貫通穴((c)、符号75)が形成されるまでの間、制御機構は、照射室63内の気圧が、中空部67の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御している。
【0060】
即ち、ガス供給手段45の単位時間当たりのガスの供給量よりも多く排出手段49で吸引している。加えて、この排出手段49の単位時間当たりの吸引量よりも多く、低圧手段64で吸引している。
気圧の差を生じさせることにより照射室63内に気流が発生する。この気流により効率よくちりが外部へ排出される。
【0061】
一方、(b)に示すように、排出手段を有しない比較例では、蒸発したちり72がその場に止まることにより、穴に再付着することがある。従って、再付着したちり73を再度削りながら穴あけを行うため、時間がかかる。
即ち、(a)に示すように排出手段49を作動させながらワーク66にレーザ光70を照射することにより、ちり72の再付着を防ぐことができ、早く穴を貫通させることができる。
【0062】
換言すると、穴あけ装置は、図示しない制御機構を備え、照射室63を、大気圧若しくは大気圧よりも若干低圧に保った状態にすることができる。前記いずれかの状態で図示しないレーザ加工ヘッドからレーザ光70を発射し、中空状のワーク66の外側面に照射する。加工によりちり(プリューム)72が発生する。
【0063】
なお、貫通穴75が形成されるまでは、照射室63に気体の逃げ場がない場合(b)は、加圧しすぎると加工が透過板43または密閉部材に負荷をかける。また、加圧しすぎると空気がちり72を押さえてしまい、加工されるべき箇所からちり72が除去されずに、そのちり72がレーザ光70を遮ってしまうおそれがある。更に換言すると、加圧しすぎない方が加工が進むからである。
【0064】
(c)に示すように貫通穴75が形成されると、レーザ光70は充填体65に衝突する。この衝突により、充填体65はレーザ光70のエネルギを吸収する。充填体65がエネルギを吸収することにより、レーザ光70が内周面76に照射されることを防ぐことができる。
【0065】
また、レーザ光70を照射された充填体65は、振動機構56により振動を与えられている。例えば、このときの振動周波数は30kHZ〜100kHzであり、振幅は5μm〜30μmである。この振動により充填体65が動かされ、レーザ光70の照射される場所を少しずつ変えることができる。
【0066】
具体的には、このような振動条件の下では、図8(c)における鉛直方向に沿って約0.1mm上方移動ないし下方移動しながら、回転動作をすることができる。即ち、レーザ光70の照射される場所が充填体65の1箇所に集中しないようにすることにより、レーザ光70によるダメージの分散を図ることができ、充填体65の長寿命化を図ることができる。
【0067】
レーザ光70での加工が進むと、(c)に示すように貫通穴75が形成され、その後は、弁77を閉じ、排出手段49を停止させる。穴が貫通した後は、低圧手段64によりちり72が回収される。穴あけ後には、低圧手段64によりレーザ光70の照射により発生したちり72が回収され、貫通穴75付近にちり72が留まらない。
【0068】
なお、(a)の状態では、内周面76で形成されるワークの中空部の気圧を、ワークの壁部68の外側よりも低くされて制御されている。そして、(c)に示すように貫通穴75が形成されると、圧力差で空気がワークの中空部内を矢印の用に流れ、この流れに伴いちり72は低圧手段に押し流される。
【0069】
また、弁77を切替えると、照射室63は(a)の状態よりも気圧が高圧になり、照射室63の気圧とワークの中空部の気圧との圧力差が更に大きくなり、図(c)の矢印のように示されるワークの中空部内の空気の流れがよりいっそう円滑になる。
ちり72の貫通穴75付近への再付着を防ぐことができ、作業の効率化を図ることができる。
【0070】
貫通穴75が形成された後は、排出手段49の排出機能を停止させる。これにより、気流がガス供給手段45から低圧手段64に向かう気流のみになる。ちり72を排出するための気流を一つに絞ることにより、効率よくちり72を外部へ排出することができる。
【0071】
充填体65の大きさは30μm〜20mmであって、振動機構56が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、発振の際の振幅は5μm〜30μmである。充填体65の大きさは30μm〜20mmである。この大きさであれば、ワーク66に燃料噴射ノズルを用いた場合に中空部67内に充填体を振動させるための程良いスペースが空く。また、前述の振動条件で振動させることにより充填体65をよく振動させることができるため、充填体65の長寿命化を図ることができる。
【0072】
(d)の比較例に示すように、充填体を充填しない場合は、レーザ光70がワーク66の内周面76に接触し、その部分を除去してしまう。
ところで、ワークをクランプするクランプ機構(図1、符号11)は、次図で説明する構成とすることもできる。詳細を次図で説明する。
【0073】
図9に示されるように、クランプ機構に蝶ボルト78、78を用いた。蝶ボルト78、78を用いた場合はクランプ機構を簡易に構成することができる。
このようなクランプ機構を用いた場合であっても、充填体がエネルギを吸収することにより、レーザ光が内周面に照射されることを防ぐことができるという本発明の効果を得ることができる。
【0074】
ところで、本発明者らが穴あけ装置10を用いたところ、以下のことが分かった。図5に戻り説明する。
図5に示されるように、穴あけ作業を行う場合は、まず、矢印(5)で示すように照射室63内に圧縮ガスを送る。圧縮ガスが送られることで、照射室63内は高圧となる。高圧になると、白抜き矢印で示すように、蓋部16には上方に向かって浮くような力が働き、ワーク支持部13には下方に向かって沈むような力が働く。
【0075】
白抜き矢印で示す力で、蓋部16を支持する蓋部支持体(図1、符号33)や、ワーク支持部13を支持するワーク回転テーブル(図1、符号27)が撓み得ることが分かった。仮に、撓んだ場合は、ワーク66の位置がずれ、穴が開けられる位置もずれることとなる。即ち、穴あけ装置10に、さらにワーク66の移動を防ぐことができる機能を付加することを知見した。ワークの移動を防ぐための対策について、詳細を次図で説明する。
【0076】
図10に示すように、穴あけ装置80は、回転機構(図1、符号12)のワーク回転テーブル27に支持されたブラケット81と、このブラケット81の上部に設けられた差込み穴82、82に差込まれることで支持される連結手段としてのシリンダユニット83、83とが備えられる。
【0077】
ブラケット81は、ワーク回転テーブル27の上面に立てられる支柱部84、84と、これらの支柱部84、84間に架けられ上面でワーク支持部材13の本体13aを支持する梁部85とからなる。梁部85の中央には振動機構56を通すための穴部86が設けられる。
【0078】
シリンダユニット83は、差込み穴82に差込まれる本体部88と、この本体部88の移動を規制するために支柱部84に接触するストッパ部89と、このストッパ部89とは逆側に形成される雄ねじ部91と、この雄ねじ部91に螺合され本体部88の移動を規制するナット92とからなる。
【0079】
シリンダユニット83は、ロッド93が回転機構(図1、符号12)の回転軸28上に沿って設けられ、ロッド93の先端が蓋部16の係合穴94に着脱自在に設けられる。ロッド93の進退は制御部22で制御される。
【0080】
図11に示すように、昇降機構19及び蓋部回転機構18が設けられる位置を、ブラケット81の配置スペースを確保するため、図1の穴あけ装置と比べ変更した。それぞれの機構が設けられる位置を除き、各機構の機能は図1に示す穴あけ装置(図1、符号10)と同様である。
【0081】
ブラケット81の支柱部84は、台形状を呈する。台形状とすることで、下部の面積を広く取ることができ、ワーク回転テーブル27に確実に支持される。一方、上部の面積を小さくすることで、蓋部16の移動時における蓋部16への干渉を防止できる。
連結手段としてのシリンダユニット83の作用を次図で詳細に説明する。
【0082】
図12に示すように、シリンダユニット83(連結手段)は、ガス供給手段45により圧縮ガスが照射室63へ供給される前に蓋部16に係合し、排出手段(図10、符号49)により圧縮ガスが照射室63から排出された後に蓋部16との係合を解く。
【0083】
圧縮ガスが照射室63内へ供給されることで、照射室63内のガス圧が高まる。圧縮ガスは、白抜き矢印で示すように、ワーク支持部材13を押し下げる方向及び蓋部16を押し上げる方向に作用する。
【0084】
ワーク回転テーブル27(回転機構)に支持されたシリンダユニット83は、蓋部16に設けられた係合穴94にロッド93が係合することで、蓋部16に係合する。蓋部16に係合することで、ワーク支持部材13の下方に移動しようとする力が、蓋部16の押し上げられる力で打ち消される。打ち消すことで、ワーク支持部材13の下方向への移動を防ぎ、ワーク66の移動も防ぐことができる。
【0085】
圧縮ガスが照射室63内に供給されている間が、最もワーク支持部材13の移動が起こりやすい。照射室63内の圧力が高い間にシリンダユニット83を用いることで、有効にワーク支持部材13及びワーク66の移動を防ぐことができる。ワーク66の移動を防ぐことで、正確な位置に穴あけを行うことができる。
【0086】
シリンダユニット83を用いることで、ブラケット81と蓋部16との連結・解除を早急に行うことができる。
さらに、ブラケット81は、2本の支柱部84、84の間に梁部85を通してなる。梁部85を設けることで、ブラケット81の剛性を高めることができ、より確実にワーク支持部材13及びワーク66の移動を防ぐことができる。
【0087】
図13に示すように、連結手段にピン96、96を用いた。作業者がリング状の把手部97を持ち、ストッパ部98が支柱部84に接触するまでロッド99を係合穴94に差込む。ピン96、96で蓋部16との係合を行うことによっても本発明の効果を得ることができる。
【0088】
即ち、ピン96、96(連結手段)でブラケット81と蓋部16とを連結することで、蓋部16に対してワーク支持部材13を固定することができる。ワーク支持部材13を固定することでワーク66も固定され、正確な位置に穴をあけることができる。
【0089】
加えて、連結手段はピン96、96が用いられる。ピン96、96であれば安価に調達することができ、部品の調達コストを低下させることができる。
【0090】
尚、本発明に係る穴あけ装置は、実施の形態では燃料噴射ノズルに適用したが、細い貫通穴があけられる部材であれば、その他の機械部品等にも適用可能であり、用途はこれらに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る穴あけ装置は、燃料噴射ノズルの穴あけに好適である。
【符号の説明】
【0092】
11…基台、12…ワーク回転機構、13…ワーク支持部材、15…開口、16…蓋部、22…制御機構、28…回転軸、45…ガス供給手段、48…先端部、49…排出手段、56…振動機構、63…照射室、64…低圧手段、65…充填体、66…ワーク、67…中空部、68…壁部、70…レーザ光、71…被照射部、72…ちり、75…貫通穴、80…穴あけ装置、81…ブラケット、83…シリンダユニット(連結手段)、96…ピン(連結手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射することにより、ワークの壁部に貫通穴を形成する穴あけ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射ノズルを製造する際に、燃料噴射ノズル本体の壁部に貫通穴を形成する。貫通穴の形成は、穴あけ装置を用いて壁部にレーザ光を照射することで行う。(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図14(a)に示すように、穴あけ装置100は、ワークとしての燃料噴射ノズル101の内部を真空に保つ真空ポンプ102と、この真空ポンプ102に繋がれ流体が充填されるタンク103と、タンク103内の流体を燃料噴射ノズル101に供給する流体供給ポンプ104と、この流体供給ポンプ104から供給される流体の量を調整する流量調整器105と、この流量調整器105から燃料噴射ノズル101の先端101aに向かって延ばされ内部に流体が流される流体供給管106と、流体供給管106から燃料噴射ノズル101に供給された流体をタンク103に向かって送る流体回収管107と、燃料噴射ノズル101にレーザ光を照射することで燃料噴射ノズル101に穴をあける照射器110とからなる。
【0004】
(a)のb部拡大図である(b)に示すように、照射器110で燃料噴射ノズル101の先端101aにレーザ光112を照射する。レーザ光112を照射する間、燃料噴射ノズル101の先端101a内部に向かって、流体供給管106から流体を供給し続ける(矢印参照)。先端101aに穴があいた場合に、燃料噴射ノズル101の内部に到達したレーザ光112は流体によって拡散される。拡散されることで、穴があけられた先端101aに対向する部位101bへの、レーザ光112の照射を防ぐことができる。
【0005】
ところで、レーザ光112を照射した場合に、レーザ光112の照射される先端101a付近で、レーザ光112で溶融されたヒュームと称するちりが飛散する。飛散したちりの一部は、先端101a付近に付着することがある。外観性向上の観点から、ワークへのちりの付着を防ぐことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−526961公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ワークへのちりの付着を防止できる穴あけ装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、中空状のワークの外から中空部に向かってレーザ光を照射することにより、ワークの壁部に貫通穴を形成する穴あけ装置であって、
この穴あけ装置は、
基台に支持され、ワークを回動させるワーク回転機構と、
このワーク回転機構に支持され、ワークをワーク回転機構の回転軸上で支持し、上面に開口が備えられたワーク支持部材と、
このワーク支持部材に対して昇降可能に設けられ、ワーク支持部材の開口に被せられる蓋部と、
この蓋部が開口に被せられてなる領域であって、ワークのうちレーザ光が照射される被照射部に向かって、レーザ光を導入する照射室と、
この照射室に繋げられ照射室内に圧縮ガスを供給するためのガス供給手段と、
照射室内へ先端部が伸ばされレーザ光の照射により発生するちりを含め照射室内のガスを照射室の外へ排出する排出手段と、
ワーク回転機構からワーク支持部材の外側方を通って延びるブラケットと、
このブラケットの上部と蓋部とを着脱自在に連結する連結手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、連結手段は、ガス供給手段により圧縮ガスが照射室へ供給される前に蓋部に係合し、排出手段により圧縮ガスが照射室から排出された後に蓋部との係合を解くシリンダユニットであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、連結手段は、ガス供給手段により圧縮ガスが照射室へ供給される前に蓋部に係合し、排出手段により圧縮ガスが照射室から排出された後に蓋部との係合を解くピンであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、ワークは、レーザ光により溶融されない充填体が中空部に充填され、
この充填体に接触するように、充填体を振動させる振動機構が配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項4に記載の穴あけ装置であって、
この穴あけ装置は、振動機構、ガス供給手段及び排出手段を制御する制御機構を備え、
この制御機構は、貫通穴が形成されるまでは、照射室内の気圧を、中空部の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の穴あけ装置であって、
制御機構は、貫通穴が形成された後は、排出手段の排出機能を停止させることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項4、請求項5又は請求項6に記載の穴あけ装置であって、
充填体の大きさは30μm〜20mmであって、振動機構が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、発振の際の振幅は5μm〜30μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、ガス供給手段と、排出手段とを備えた。レーザ光を照射する場合に、ガス供給手段で圧縮ガスを供給しつつ、排出手段でガスを排出する。気圧の差を生じさせることにより照射室内に気流が発生する。この気流により効率よくちりが外部へ排出される。
【0016】
加えて、ブラケットと蓋部とを連結する連結手段を備えた。ブラケットは、ワーク支持部材と共に回転機構に支持される。即ち、連結手段でブラケットと蓋部とを連結することで、蓋部に対してワーク支持部材を固定することができる。ワーク支持部材を固定することでワークも固定され、正確な位置に穴をあけることができる。
【0017】
さらに、ワークは、ワーク支持部材により回転軸上に回動可能に支持される。ワーク回転機構を回動させることで、レーザ光に対するワークの角度を変えることができる。1台の装置で、様々な角度に穴あけを行うことができ有益である。
【0018】
請求項2に係る発明では、連結手段は、ガス供給手段により圧縮ガスが照射室へ供給される前に蓋部に係合し、排出手段により圧縮ガスが照射室から排出された後に蓋部との係合を解く。圧縮ガスが照射室内へ供給されることで、照射室内のガス圧が高まる。圧縮ガスは、ワーク支持部材を押し下げる方向に作用する。即ち、圧縮ガスが照射室内に供給されている間が、最もワーク支持部材の移動が起こりやすい。照射室内の圧力が高い間に連
結手段を用いることで、有効にワーク支持部材の移動を防ぐことができる。
【0019】
加えて、連結手段はシリンダユニットが用いられる。シリンダユニットを用いることで、ブラケットと蓋部との連結・解除を早急に行うことができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、連結手段は、ガス供給手段により圧縮ガスが照射室へ供給される前に蓋部に係合し、排出手段により圧縮ガスが照射室から排出された後に蓋部との係合を解く。圧縮ガスが照射室内へ供給されることで、照射室内のガス圧が高まる。圧縮ガスは、ワーク支持部材を押し下げる方向に作用する。即ち、圧縮ガスが照射室内に供給されている間が、最もワーク支持部材の移動が起こりやすい。照射室内の圧力が高い間に連
結手段を用いることで、有効にワーク支持部材の移動を防ぐことができる。
【0021】
加えて、連結手段はピンが用いられる。ピンであれば安価に調達することができ、部品の調達コストを低下させることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、レーザ光により溶融されない充填体が中空部に充填される。このため、壁部に穴をあけたレーザ光は、中空部に充填された充填体に衝突する。この衝突により、充填体はレーザ光のエネルギを吸収する。充填体がエネルギを吸収することにより、レーザ光が内周面に照射されることを防ぐことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、制御機構は、貫通穴が形成されるまでは、照射室内の気圧を、中空部の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御する。気圧の差を生じさせることにより照射室内に気流が発生する。この気流により効率よくちりが外部へ排出される。
【0024】
請求項6に係る発明では、貫通穴が形成された後は、排出手段の排出機能を停止させる。ちりを排出するための気流を一つに絞ることにより、効率よくちりを外部へ排出することができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、充填体の大きさは30μm〜20mmであって、振動機構が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、発振の際の振幅は5μm〜30μmである。充填体の大きさは30μm〜20mmである。この大きさであれば、中空部内に充填体を振動させるために程良いスペースが空く。また、前述の振動条件で振動させることにより充填体をよく振動させることができるため、充填体の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】参考例に係る穴あけ装置の斜視図である。
【図2】参考例に係る穴あけ装置の要部断面図である。
【図3】ワークのセットについて説明する図である。
【図4】ワーク支持部の作業位置までの移動を説明する図である。
【図5】作業部の移動について説明する図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】レーザの照射角について説明する図である。
【図8】本発明の実施例と過去の比較例との比較図である。
【図9】クランプ機構の変更例を説明する図である。
【図10】連結手段を説明する図である。
【図11】実施例に係る穴あけ装置の側面図である。
【図12】連結手段の作用を説明する図である。
【図13】連結手段の変更例を説明する図である。
【図14】従来技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0028】
図1に示されるように、穴あけ装置10は、基台11と、この基台11に支持されワーク(図3、符号66)を回転させるワーク回転機構12と、このワーク回転機構12に回転可能に支持されワークを支持するワーク支持部材13と、このワーク支持部材13の側面に設けられワークをクランプするワーククランプ機構14と、ワーク支持部材13の上方に回転可能且つ昇降可能に設けられワーク支持部材13の開口15に被せられる蓋部16と、基台11上に設けられた作業台17と、この作業台17に支持され蓋部16を回転させる蓋部回転機構18と、この蓋部回転機構18に接続され蓋部16を昇降させる昇降機構19と、この昇降機構19の下方に設けられ蓋部16を昇降する際に蓋部16の位置決めをする位置決めブロック21と、ワーク回転機構12やワーククランプ機構14に繋がれこれらを制御する制御機構22とからなる。
【0029】
ワーククランプ機構14は、クランプシリンダ23の先端に板体24が接続され、クランプシリンダ23を作動させることで、板体24を矢印(1)で示すように昇降させる。これにより、ワークのクランプ及びクランプ解除を操作する。
【0030】
詳細は後述するが、図に示されるような状態では、ワーク支持部材13内に配置されるワークがクランプされる。ここからクランプシリンダ23を作動させ板体24を上昇させることで、クランプ状態が解除される。
【0031】
ワーク回転機構12は、基台11上に設けられるL字形の回転機構支持部26と、この回転機構支持部26に回転可能に支持されワーク支持部材13を支持するL字形のワーク回転テーブル27とからなる。
ワーク回転テーブル27は、矢印(2)で示すように回転軸28を中心に回動される。詳細は後述するが、この回転軸28は、ワーク支持部材13内のワークに接触する。即ち、ワークは、ワーク回転テーブル27の回転軸28上に配置される。
【0032】
昇降機構19は、蓋部昇降シリンダ32が矢印(3)に示すように上方下方に作動することにより、蓋部16と、この蓋部16を支持する蓋部支持体33と、この蓋部支持体33の底面に配置される位置決めピン34が一体的に昇降される。
【0033】
図に示す状態から蓋部昇降シリンダ32を作動させ、蓋部16、蓋部支持体33、位置決めピン34を降下させる。蓋部16はワーク支持部材13に被せられ、位置決めピン34は位置決めブロック21に挿入される。
【0034】
蓋部回転機構18は、蓋部16を水平方向に旋回させるための蓋部回転モータ36と、この蓋部回転モータ36の上面に配置され蓋部昇降シリンダ32を支持するための支持柱37とからなる。
蓋部回転モータ36を作動させることにより、矢印(4)に示すように支持柱37が回転軸38を中心に回転する。これにより支持柱37に支持される蓋部昇降シリンダ32、蓋部支持体33、蓋部16、位置決めピン34が一体的に回動される。
【0035】
ワーク回転テーブル27を回転軸28廻りに回転させる(矢印(2))際に、蓋部16にクランプシリンダ23が接触しないようにする必要がある。蓋部16等を想像線で示す待機位置39に移動させておくことで接触を防ぐ。
次図で本発明の要部について説明する。
【0036】
図2に示すように、蓋部16は、上面の支持枠42に支持されレーザ光を通す透過板43と、この透過板43を通過したレーザ光が通過する通路44とを備える。この通路44を通過したレーザ光により照射されるワークを、収容する照射室63の空間を形成する隔壁41に、当該通路44が開口している。更に、蓋部16は、この通路44に繋げられガス供給手段45から供給される圧縮ガスが通される圧縮ガス供給路46と、ノズル状に形成されレーザ光が照射される方向に必ず向けられて配置される先端部48と、この先端部48からレーザ光の照射により発生するちりを吸い込む排出手段49と、ワーク支持部材13に蓋部16を被せた際にワーク支持部材13に接触するシール材51とを備える。
【0037】
なお、レーザ光の照射により発生するちりとは、プリュームと呼ばれる、レーザ加工時にワークの表面の金属が熱で蒸発してできた金属蒸気や、イオン化した混合気体のことである。
また、矢印(1)と矢印(3)は、図1の矢印(1)、矢印(3)と同じである。
【0038】
蓋部16は、上部基体52と下部基体53とから構成され、シール材51はこれらの上部基体52と下部基体53とに挟まれるように配置される。
ガス供給手段45から供給されるガスとしては、空気の他、窒素等の不活性ガスを用いることもでき、圧縮ガスの種類は問わない。
【0039】
一方、ワーク支持部材13は、シール材51に接触する外壁部47と、隔壁41に対向する位置に照射室63の空間を形成する内壁部54を有する凹部62と、この凹部62の底部にワークが載置される第1ワークポケット55と、この第1ワークポケット55に向かって先端が延ばされる超音波振動子を用いた振動機構56と、この振動機構56の先端付近に繋げられ第1ワークポケット55の下側を低圧にする低圧手段(詳細は後述)とからなる。
【0040】
板体24を降下させることにより、この板体24に接続される支持板57、支持柱58、58、クランプ板59が一体的に降下される。ワークは、想像線で示すようにクランプ板59の下面に形成される第2ワークポケット61と、第1ワークポケット55でクランプされる。
【0041】
この後、矢印(3)で示すように蓋部16を降下させワーク支持部材13に被せる。このとき蓋部16とワーク支持部材13とで囲われた領域が、レーザ光の照射を行う照射室63である。即ち、ガス供給手段45は、照射室63に繋げられ照射室63内に圧縮ガスを供給するということができる。また、排出手段49は、ノズル状に形成された先端部48が照射室63内に伸ばされているということができる。
次図でワークのセットについて説明する。
【0042】
図3(a)に示すように振動機構56の先端が上を向いている状態から、ワーク回転テーブル(図1、符号27)を作動させ、振動機構56の先端が下を向く、図3(b)に示す状態にワーク支持部材13を回転させる。
なお、図3は回転軸28が図面表裏に延びる方向からワーク支持部材13を見ている。
【0043】
次に(b)に示す状態で、前述の第1ワークポケット55における振動機構56側を低圧にする低圧手段64を作動させる。そして、レーザ光で溶融しないジルコニア製ボールを充填体65として、ワーク66の中空部67に充填し、第1ワークポケット55に配置する。
【0044】
このとき、低圧手段64の作用により、ワーク66には上向きに引っ張られる力が掛かる。従って、クランプ板59でクランプする前にワーク66から手を離しても、ワーク66が落下することはない。
【0045】
充填体65たるジルコニア製ボールは、酸化物セラミックであるジルコニアからなる。周知の通りジルコニアは、融点が極めて高く、このためレーザ光が入射しても溶融することはない。なお、充填体65においてレーザ光が入射した箇所は、崩壊を起こす。その結果微粉末が発生する。
【0046】
なお、充填体にはジルコニア製ボールの他に、粉体を用いることもできる。即ち、ジルコニア製の粉体を含む充填体65の直径は、レーザ光の照射時間や発振周波数に基づいて設定される。換言すると、レーザ光が照射される前のジルコニア製の充填体65の体積をV0、パルス毎に崩壊する体積をZ、レーザ光の発振周波数をf、レーザ光の照射時間をt、とするとき、最低限必要な充填体の半径Rは、下記の式(1)で表されるとおりである。
R={3V0−tfZ/4π}1/3・・・(1)
【0047】
更に換言すると、充填体65としては、式(1)で求められる半径Rよりも半径が大きいものが選定される。また、式(1)のパルス毎に崩壊する体積Zは、予め実験により求められる体積であるから、ジルコニア製の粉体を含む充填体以外のもので、例えば素材がジルコニアの充填体であっても予め実験によりパルス毎に崩壊する体積Zが求めることができれば選定することができる。
【0048】
なお、レーザ光がワークに照射される間に、該ワークの壁部に貫通穴を形成して、該貫通穴を通る該レーザ光が、貫通穴が形成された壁部と対向するワークの内周面に到達することを回避するべく、充填体65は設けられたものであり、レーザ光を照射して溶融しないもので且つ、前記ワークに形成される貫通穴の直径、及び上述の式(1)で求められるRよりも半径が大きいものであれば、充填体の素材、形状は特に限定されない。
【0049】
貫通穴の直径は3μm〜200μmであり、少なくとも貫通穴よりも大きい粉体を用いる必要があり、ジルコニア製ボールを用いる場合、ジルコニア製ボールの直径は直径30μm〜20mmであることが望ましい。
【0050】
次に(c)の矢印(1)で示すようにクランプ板59を上昇させて、ワーク66をクランプする。これでワーク66のセットが完了する。
この図に示されるとおり、低圧手段64は、中空部67に繋げられ、この中空部67の気圧を壁部68の外側よりも低くしている。
【0051】
低圧手段64により、中空部67の気圧を壁部68の外側よりも低くする。これにより、ワーク66を低圧側に引っ張る力が作動する。穴あけ前には、この力によりワーク66がしっかり抑えられる。
次図でワーク支持部の作業位置までの移動について説明する。
【0052】
図4(a)に示されるように、ワーク66をクランプした後は、ワーク回転テーブル(図1、符号27)を作動させ、(b)に示すように再び振動機構56の先端が上向きになるような位置まで、ワーク支持部材13を移動させる。
次図で、ワーク支持部材13に蓋部16を被せる際の作用について説明する。
【0053】
図5に示されるように、待機位置(図1、符号39)からワーク支持部材13の上に蓋部16を移動させ、その後、矢印(3)で示すように蓋部16を降下させる。この動作により、蓋部16の隔壁41及びシール材51、並びにワーク支持部材13の内壁部54及びクランプ板59の上面により照射室63が形成される。即ち、照射室63は、ワーク支持部材13の開口15に蓋部16を被せることで形成される領域ということができる。照射室63を形成した上で、ワークにレーザ光を照射する。
【0054】
図6に示すようにレーザ光70を照射する際は、ガス供給手段45で圧縮ガスを供給しつつ、レーザ光70を照射することにより発生するちりを排出手段49で排出する。ガス供給手段45で圧縮ガスを供給することにより照射室63内の気圧は高くなる。このため、排出手段49を作動させることにより、照射室63内を大気圧と同じ気圧に保つことができる。
振動機構56、低圧手段64、ガス供給手段45及び排出手段49は、それぞれが接続される制御機構22によって制御され、作動される。
【0055】
レーザ光は、ナノ秒レーザ光やピコ秒レーザ光を用いることができる。また、レーザ加工ヘッドにナノ秒レーザ光の照射機及びピコ秒レーザ光の照射機の両方を支持させることもできる。この場合には、ナノ秒レーザ光により大まかな穴あけを行った後、ピコ秒レーザ光で仕上げを行うことにより、精度の高い穴あけ作業を短時間で行うことができる。
【0056】
図7(a)に示すように、レーザ光70に対して、振動機構56の軸線L1がなす角度θを、ワーク回転テーブル(図1符号27)を回転させることにより変えることができる。例えば、(a)の場合のθ1は27°で、これを回転させることにより(b)に示すようにθ2を45°とすることができる。
これにより、ワーク66に対してレーザ光70の当たる照射角度を変えることができる。
【0057】
図面表裏方向に延びる回転軸28上にワーク66が配置される。これにより、照射されるレーザ光70に対するワーク66の角度は、ワーク回転テーブルを回動させることにより変えることができる。即ち、様々な角度からの穴あけを行うために、回動機構を作動させるだけでよい。1台の装置で、様々な角度に穴あけを行うことができ有益である。
【0058】
仮に、回転軸28に対してワーク66を離して配置した場合は、ワーク支持部材13を回転させることにより、ワーク66は大きく移動し、レーザ光70の照射されない位置までワーク66が移動してしまう。ワーク66はワーク支持部材13により回転軸28上に支持される。ワーク66が回転軸28上に支持されることで、ワーク66は同じ位置で回転される。同じ位置で回転するため、回転させた後に別途ワーク66の高さを調整する必要がない。即ち、ワーク66の高さ等を調整するための機器を設ける必要がなく、部品点数の削減に寄与する。
【0059】
図8(a)に示すように、排出手段49を作動させながらワーク66にレーザ光70を照射することにより、被照射部71で発生するちり72を素早く回収することが出来る。
貫通穴((c)、符号75)が形成されるまでの間、制御機構は、照射室63内の気圧が、中空部67の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御している。
【0060】
即ち、ガス供給手段45の単位時間当たりのガスの供給量よりも多く排出手段49で吸引している。加えて、この排出手段49の単位時間当たりの吸引量よりも多く、低圧手段64で吸引している。
気圧の差を生じさせることにより照射室63内に気流が発生する。この気流により効率よくちりが外部へ排出される。
【0061】
一方、(b)に示すように、排出手段を有しない比較例では、蒸発したちり72がその場に止まることにより、穴に再付着することがある。従って、再付着したちり73を再度削りながら穴あけを行うため、時間がかかる。
即ち、(a)に示すように排出手段49を作動させながらワーク66にレーザ光70を照射することにより、ちり72の再付着を防ぐことができ、早く穴を貫通させることができる。
【0062】
換言すると、穴あけ装置は、図示しない制御機構を備え、照射室63を、大気圧若しくは大気圧よりも若干低圧に保った状態にすることができる。前記いずれかの状態で図示しないレーザ加工ヘッドからレーザ光70を発射し、中空状のワーク66の外側面に照射する。加工によりちり(プリューム)72が発生する。
【0063】
なお、貫通穴75が形成されるまでは、照射室63に気体の逃げ場がない場合(b)は、加圧しすぎると加工が透過板43または密閉部材に負荷をかける。また、加圧しすぎると空気がちり72を押さえてしまい、加工されるべき箇所からちり72が除去されずに、そのちり72がレーザ光70を遮ってしまうおそれがある。更に換言すると、加圧しすぎない方が加工が進むからである。
【0064】
(c)に示すように貫通穴75が形成されると、レーザ光70は充填体65に衝突する。この衝突により、充填体65はレーザ光70のエネルギを吸収する。充填体65がエネルギを吸収することにより、レーザ光70が内周面76に照射されることを防ぐことができる。
【0065】
また、レーザ光70を照射された充填体65は、振動機構56により振動を与えられている。例えば、このときの振動周波数は30kHZ〜100kHzであり、振幅は5μm〜30μmである。この振動により充填体65が動かされ、レーザ光70の照射される場所を少しずつ変えることができる。
【0066】
具体的には、このような振動条件の下では、図8(c)における鉛直方向に沿って約0.1mm上方移動ないし下方移動しながら、回転動作をすることができる。即ち、レーザ光70の照射される場所が充填体65の1箇所に集中しないようにすることにより、レーザ光70によるダメージの分散を図ることができ、充填体65の長寿命化を図ることができる。
【0067】
レーザ光70での加工が進むと、(c)に示すように貫通穴75が形成され、その後は、弁77を閉じ、排出手段49を停止させる。穴が貫通した後は、低圧手段64によりちり72が回収される。穴あけ後には、低圧手段64によりレーザ光70の照射により発生したちり72が回収され、貫通穴75付近にちり72が留まらない。
【0068】
なお、(a)の状態では、内周面76で形成されるワークの中空部の気圧を、ワークの壁部68の外側よりも低くされて制御されている。そして、(c)に示すように貫通穴75が形成されると、圧力差で空気がワークの中空部内を矢印の用に流れ、この流れに伴いちり72は低圧手段に押し流される。
【0069】
また、弁77を切替えると、照射室63は(a)の状態よりも気圧が高圧になり、照射室63の気圧とワークの中空部の気圧との圧力差が更に大きくなり、図(c)の矢印のように示されるワークの中空部内の空気の流れがよりいっそう円滑になる。
ちり72の貫通穴75付近への再付着を防ぐことができ、作業の効率化を図ることができる。
【0070】
貫通穴75が形成された後は、排出手段49の排出機能を停止させる。これにより、気流がガス供給手段45から低圧手段64に向かう気流のみになる。ちり72を排出するための気流を一つに絞ることにより、効率よくちり72を外部へ排出することができる。
【0071】
充填体65の大きさは30μm〜20mmであって、振動機構56が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、発振の際の振幅は5μm〜30μmである。充填体65の大きさは30μm〜20mmである。この大きさであれば、ワーク66に燃料噴射ノズルを用いた場合に中空部67内に充填体を振動させるための程良いスペースが空く。また、前述の振動条件で振動させることにより充填体65をよく振動させることができるため、充填体65の長寿命化を図ることができる。
【0072】
(d)の比較例に示すように、充填体を充填しない場合は、レーザ光70がワーク66の内周面76に接触し、その部分を除去してしまう。
ところで、ワークをクランプするクランプ機構(図1、符号11)は、次図で説明する構成とすることもできる。詳細を次図で説明する。
【0073】
図9に示されるように、クランプ機構に蝶ボルト78、78を用いた。蝶ボルト78、78を用いた場合はクランプ機構を簡易に構成することができる。
このようなクランプ機構を用いた場合であっても、充填体がエネルギを吸収することにより、レーザ光が内周面に照射されることを防ぐことができるという本発明の効果を得ることができる。
【0074】
ところで、本発明者らが穴あけ装置10を用いたところ、以下のことが分かった。図5に戻り説明する。
図5に示されるように、穴あけ作業を行う場合は、まず、矢印(5)で示すように照射室63内に圧縮ガスを送る。圧縮ガスが送られることで、照射室63内は高圧となる。高圧になると、白抜き矢印で示すように、蓋部16には上方に向かって浮くような力が働き、ワーク支持部13には下方に向かって沈むような力が働く。
【0075】
白抜き矢印で示す力で、蓋部16を支持する蓋部支持体(図1、符号33)や、ワーク支持部13を支持するワーク回転テーブル(図1、符号27)が撓み得ることが分かった。仮に、撓んだ場合は、ワーク66の位置がずれ、穴が開けられる位置もずれることとなる。即ち、穴あけ装置10に、さらにワーク66の移動を防ぐことができる機能を付加することを知見した。ワークの移動を防ぐための対策について、詳細を次図で説明する。
【0076】
図10に示すように、穴あけ装置80は、回転機構(図1、符号12)のワーク回転テーブル27に支持されたブラケット81と、このブラケット81の上部に設けられた差込み穴82、82に差込まれることで支持される連結手段としてのシリンダユニット83、83とが備えられる。
【0077】
ブラケット81は、ワーク回転テーブル27の上面に立てられる支柱部84、84と、これらの支柱部84、84間に架けられ上面でワーク支持部材13の本体13aを支持する梁部85とからなる。梁部85の中央には振動機構56を通すための穴部86が設けられる。
【0078】
シリンダユニット83は、差込み穴82に差込まれる本体部88と、この本体部88の移動を規制するために支柱部84に接触するストッパ部89と、このストッパ部89とは逆側に形成される雄ねじ部91と、この雄ねじ部91に螺合され本体部88の移動を規制するナット92とからなる。
【0079】
シリンダユニット83は、ロッド93が回転機構(図1、符号12)の回転軸28上に沿って設けられ、ロッド93の先端が蓋部16の係合穴94に着脱自在に設けられる。ロッド93の進退は制御部22で制御される。
【0080】
図11に示すように、昇降機構19及び蓋部回転機構18が設けられる位置を、ブラケット81の配置スペースを確保するため、図1の穴あけ装置と比べ変更した。それぞれの機構が設けられる位置を除き、各機構の機能は図1に示す穴あけ装置(図1、符号10)と同様である。
【0081】
ブラケット81の支柱部84は、台形状を呈する。台形状とすることで、下部の面積を広く取ることができ、ワーク回転テーブル27に確実に支持される。一方、上部の面積を小さくすることで、蓋部16の移動時における蓋部16への干渉を防止できる。
連結手段としてのシリンダユニット83の作用を次図で詳細に説明する。
【0082】
図12に示すように、シリンダユニット83(連結手段)は、ガス供給手段45により圧縮ガスが照射室63へ供給される前に蓋部16に係合し、排出手段(図10、符号49)により圧縮ガスが照射室63から排出された後に蓋部16との係合を解く。
【0083】
圧縮ガスが照射室63内へ供給されることで、照射室63内のガス圧が高まる。圧縮ガスは、白抜き矢印で示すように、ワーク支持部材13を押し下げる方向及び蓋部16を押し上げる方向に作用する。
【0084】
ワーク回転テーブル27(回転機構)に支持されたシリンダユニット83は、蓋部16に設けられた係合穴94にロッド93が係合することで、蓋部16に係合する。蓋部16に係合することで、ワーク支持部材13の下方に移動しようとする力が、蓋部16の押し上げられる力で打ち消される。打ち消すことで、ワーク支持部材13の下方向への移動を防ぎ、ワーク66の移動も防ぐことができる。
【0085】
圧縮ガスが照射室63内に供給されている間が、最もワーク支持部材13の移動が起こりやすい。照射室63内の圧力が高い間にシリンダユニット83を用いることで、有効にワーク支持部材13及びワーク66の移動を防ぐことができる。ワーク66の移動を防ぐことで、正確な位置に穴あけを行うことができる。
【0086】
シリンダユニット83を用いることで、ブラケット81と蓋部16との連結・解除を早急に行うことができる。
さらに、ブラケット81は、2本の支柱部84、84の間に梁部85を通してなる。梁部85を設けることで、ブラケット81の剛性を高めることができ、より確実にワーク支持部材13及びワーク66の移動を防ぐことができる。
【0087】
図13に示すように、連結手段にピン96、96を用いた。作業者がリング状の把手部97を持ち、ストッパ部98が支柱部84に接触するまでロッド99を係合穴94に差込む。ピン96、96で蓋部16との係合を行うことによっても本発明の効果を得ることができる。
【0088】
即ち、ピン96、96(連結手段)でブラケット81と蓋部16とを連結することで、蓋部16に対してワーク支持部材13を固定することができる。ワーク支持部材13を固定することでワーク66も固定され、正確な位置に穴をあけることができる。
【0089】
加えて、連結手段はピン96、96が用いられる。ピン96、96であれば安価に調達することができ、部品の調達コストを低下させることができる。
【0090】
尚、本発明に係る穴あけ装置は、実施の形態では燃料噴射ノズルに適用したが、細い貫通穴があけられる部材であれば、その他の機械部品等にも適用可能であり、用途はこれらに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る穴あけ装置は、燃料噴射ノズルの穴あけに好適である。
【符号の説明】
【0092】
11…基台、12…ワーク回転機構、13…ワーク支持部材、15…開口、16…蓋部、22…制御機構、28…回転軸、45…ガス供給手段、48…先端部、49…排出手段、56…振動機構、63…照射室、64…低圧手段、65…充填体、66…ワーク、67…中空部、68…壁部、70…レーザ光、71…被照射部、72…ちり、75…貫通穴、80…穴あけ装置、81…ブラケット、83…シリンダユニット(連結手段)、96…ピン(連結手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状のワークの外から中空部に向かってレーザ光を照射することにより、前記ワークの壁部に貫通穴を形成する穴あけ装置であって、
この穴あけ装置は、
基台に支持され、前記ワークを回動させるワーク回転機構と、
このワーク回転機構に支持され、前記ワークを前記ワーク回転機構の回転軸上で支持し、上面に開口が備えられたワーク支持部材と、
このワーク支持部材に対して昇降可能に設けられ、前記ワーク支持部材の開口に被せられる蓋部と、
この蓋部が前記開口に被せられてなる領域であって、前記ワークのうち前記レーザ光が照射される被照射部に向かって、前記レーザ光を導入する照射室と、
この照射室に繋げられ当該照射室内に圧縮ガスを供給するためのガス供給手段と、
前記照射室内へ先端部が伸ばされ前記レーザ光の照射により発生するちりを含め当該照射室内のガスを前記照射室の外へ排出する排出手段と、
前記ワーク回転機構から前記ワーク支持部材の外側方を通って延びるブラケットと、
このブラケットの上部と前記蓋部とを着脱自在に連結する連結手段とを備えたことを特徴とする穴あけ装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記ガス供給手段により前記圧縮ガスが前記照射室へ供給される前に前記蓋部に係合し、前記排出手段により前記圧縮ガスが前記照射室から排出された後に前記蓋部との係合を解くシリンダユニットであることを特徴とする請求項1記載の穴あけ装置。
【請求項3】
前記連結手段は、前記ガス供給手段により前記圧縮ガスが前記照射室へ供給される前に前記蓋部に係合し、前記排出手段により前記圧縮ガスが前記照射室から排出された後に前記蓋部との係合を解くピンであることを特徴とする請求項1記載の穴あけ装置。
【請求項4】
前記ワークは、前記レーザ光により溶融されない充填体が前記中空部に充填され、
この充填体に接触するように、前記充填体を振動させる振動機構が配置されていることを特徴とする請求項1記載の穴あけ装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項4に記載の穴あけ装置であって、
この穴あけ装置は、前記振動機構、前記ガス供給手段及び前記排出手段を制御する制御機構を備え、
この制御機構は、前記貫通穴が形成されるまでは、前記照射室内の気圧を、前記中空部の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御することを特徴とする穴あけ装置。
【請求項6】
請求項5記載の穴あけ装置であって、
前記制御機構は、前記貫通穴が形成された後は、前記排出手段の排出機能を停止させることを特徴とする穴あけ装置。
【請求項7】
請求項4、請求項5又は請求項6に記載の穴あけ装置であって、
前記充填体の大きさは30μm〜20mmであって、前記振動機構が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、前記発振の際の振幅は5μm〜30μmであることを特徴とする穴あけ装置。
【請求項1】
中空状のワークの外から中空部に向かってレーザ光を照射することにより、前記ワークの壁部に貫通穴を形成する穴あけ装置であって、
この穴あけ装置は、
基台に支持され、前記ワークを回動させるワーク回転機構と、
このワーク回転機構に支持され、前記ワークを前記ワーク回転機構の回転軸上で支持し、上面に開口が備えられたワーク支持部材と、
このワーク支持部材に対して昇降可能に設けられ、前記ワーク支持部材の開口に被せられる蓋部と、
この蓋部が前記開口に被せられてなる領域であって、前記ワークのうち前記レーザ光が照射される被照射部に向かって、前記レーザ光を導入する照射室と、
この照射室に繋げられ当該照射室内に圧縮ガスを供給するためのガス供給手段と、
前記照射室内へ先端部が伸ばされ前記レーザ光の照射により発生するちりを含め当該照射室内のガスを前記照射室の外へ排出する排出手段と、
前記ワーク回転機構から前記ワーク支持部材の外側方を通って延びるブラケットと、
このブラケットの上部と前記蓋部とを着脱自在に連結する連結手段とを備えたことを特徴とする穴あけ装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記ガス供給手段により前記圧縮ガスが前記照射室へ供給される前に前記蓋部に係合し、前記排出手段により前記圧縮ガスが前記照射室から排出された後に前記蓋部との係合を解くシリンダユニットであることを特徴とする請求項1記載の穴あけ装置。
【請求項3】
前記連結手段は、前記ガス供給手段により前記圧縮ガスが前記照射室へ供給される前に前記蓋部に係合し、前記排出手段により前記圧縮ガスが前記照射室から排出された後に前記蓋部との係合を解くピンであることを特徴とする請求項1記載の穴あけ装置。
【請求項4】
前記ワークは、前記レーザ光により溶融されない充填体が前記中空部に充填され、
この充填体に接触するように、前記充填体を振動させる振動機構が配置されていることを特徴とする請求項1記載の穴あけ装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項4に記載の穴あけ装置であって、
この穴あけ装置は、前記振動機構、前記ガス供給手段及び前記排出手段を制御する制御機構を備え、
この制御機構は、前記貫通穴が形成されるまでは、前記照射室内の気圧を、前記中空部の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御することを特徴とする穴あけ装置。
【請求項6】
請求項5記載の穴あけ装置であって、
前記制御機構は、前記貫通穴が形成された後は、前記排出手段の排出機能を停止させることを特徴とする穴あけ装置。
【請求項7】
請求項4、請求項5又は請求項6に記載の穴あけ装置であって、
前記充填体の大きさは30μm〜20mmであって、前記振動機構が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、前記発振の際の振幅は5μm〜30μmであることを特徴とする穴あけ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−235292(P2011−235292A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106411(P2010−106411)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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