説明

空中物位置測定装置、空中物位置測定システム及び空中物位置測定方法

【課題】空中に配置される雲などの測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる空中物位置測定装置を提供する。
【解決手段】空中物位置測定装置300であって、第一地点OAにおいて全天カメラを用いて撮像された第一全天画像Z1と、第二地点OBにおいて全天カメラを用いて撮像された第二全天画像Z2とを取得する画像取得部310と、第一全天画像Z1に含まれる測定対象物の画像である第一対象物画像と、第二全天画像Z2に含まれる測定対象物の画像である第二対象物画像とが一致するように、第一全天画像Z1と第二全天画像Z2とを方位を維持しながら重ね合わせて重合画像Z3を生成する画像生成部320と、重合画像Z3内における、第一全天画像Z1の中心位置と第二全天画像Z2の中心位置と測定対象物の位置との位置関係から、空中に配置されている測定対象物の位置を算出する位置算出部330とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に配置される測定対象物の位置を測定する空中物位置測定装置、空中物位置測定システム及び空中物位置測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電などの分散型電源を設置し、当該太陽光発電と商用電力系統からの電力により、消費する電力負荷に電力を供給する需要家が増えてきている。ここで、太陽光発電を有効に活用するためには、太陽光発電の発電出力を予測することが重要であるが、太陽光発電の発電出力を予測するには、太陽の光を遮る雲の位置を測定し、当該雲の動きを予測する必要がある。
【0003】
このため、従来、全天カメラを用いて撮像された画像に地上での風向風速データを組み合わせ、雲の動きを予測して太陽光発電の発電出力を予測する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この手法では、太陽光発電パネルの設置地点に配置した全天カメラの画像から得られる雲の動きと、地上の観測機器から得られる風向風速データとから、雲の動きを予測して、太陽光発電の発電出力を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−252940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の手法においては、雲の動きを正確に予測することができないという問題がある。
【0006】
つまり、雲は高さによって移動方向や速度が異なるため、雲の動きを正確に予測するには、雲の位置(水平位置と高さ)を測定することが必要である。そして、上記特許文献1に開示されている手法は、この雲の位置を測定して雲の動きを予測しているのではないため、当該手法では、雲の動きを正確に予測することができない。
【0007】
また、雲の位置を測定する手法としては、2地点からの三角測量により雲の位置を測定する手法が考えられる。しかし、この手法では、2地点から撮像した2枚の雲画像に仮想的にマーカ(基準点)を配置する必要があるが、雲には図形上の特徴が少ないため、当該2枚の雲画像の同じ位置にマーカを配置することは困難である。また、この手法では、方位角や高度角を求めた上で三角関数を用いた計算を行う必要があるため、計算が複雑であり、計算の処理負荷が大きい。
【0008】
このように、従来の手法では、雲の位置を正確に測定することが困難なために、雲の動きを正確に予測することができない。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる空中物位置測定装置、空中物位置測定システム及び空中物位置測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る空中物位置測定装置は、空中に配置される測定対象物の位置を測定する空中物位置測定装置であって、第一地点において全天カメラを用いて撮像された画像である第一全天画像と、前記第一地点と異なる第二地点において全天カメラを用いて撮像された画像である第二全天画像とを取得する画像取得部と、前記第一全天画像に含まれる前記測定対象物の画像である第一対象物画像と、前記第二全天画像に含まれる前記測定対象物の画像である第二対象物画像とが一致するように、前記第一全天画像と前記第二全天画像とを方位を維持しながら重ね合わせて得られる画像である重合画像を生成する画像生成部と、生成された前記重合画像内における、前記第一全天画像の中心位置である第一中心位置と前記第二全天画像の中心位置である第二中心位置と前記測定対象物の位置である対象物位置との位置関係から、空中に配置されている前記測定対象物の位置を算出する位置算出部とを備える。
【0011】
これによれば、空中物位置測定装置は、異なる2地点における全天カメラの画像である第一全天画像と第二全天画像とを、測定対象物の画像が一致するように重ね合わせて重合画像を生成し、当該重合画像内における、第一全天画像の中心と第二全天画像の中心と測定対象物との位置関係から、空中に配置されている測定対象物の位置を算出する。つまり、2枚の全天画像を測定対象物の画像が一致するように重ね合わせて重合画像を生成すればよいため、従来の雲画像にマーカを仮想的に配置するというような必要がない。このため、空中に配置される雲などの測定対象物の形状に特徴が少ない場合でも、容易に正確に測定対象物の画像を一致させて重合画像を生成することができるので、測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる。
【0012】
また、好ましくは、前記位置算出部は、前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第一中心位置とを結ぶ直線に垂直な前記対象物位置を通る直線が前記第一全天画像の外周円と交差する点と、前記対象物位置との距離を第一距離として算出し、前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第二中心位置とを結ぶ直線に垂直な前記対象物位置を通る直線が前記第二全天画像の外周円と交差する点と、前記対象物位置との距離を第二距離として算出し、算出した前記第一距離と前記第二距離とを用いて、前記測定対象物の位置を算出する。
【0013】
これによれば、位置算出部は、重合画像内において、対象物位置と第一全天画像の外周円上の一点とを結ぶ線分の長さを第一距離として算出し、対象物位置と第二全天画像の外周円上の一点とを結ぶ線分の長さを第二距離として算出して、当該第一距離と第二距離とを用いて、測定対象物の位置を算出する。つまり、位置算出部は、重合画像内における測定対象物の高さに対応する距離として、第一距離と第二距離とを算出して、測定対象物の位置を算出する。このように、測定対象物の高さに対応する第一距離と第二距離とを用いて算出を行うことで、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる。
【0014】
また、好ましくは、前記位置算出部は、さらに、前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第一中心位置とを結ぶ線分を、前記対象物位置を起点として、前記第一距離に対する前記第二距離の比率で延長または短縮した線分の終点を、変更中心位置として算出し、算出した前記変更中心位置を用いて、前記測定対象物の位置を算出する。
【0015】
これによれば、位置算出部は、重合画像内において、第一距離が第二距離の長さになるように、対象物位置と第一中心位置とを結ぶ線分を延長または短縮して、線分の終点を変更中心位置として算出し、当該変更中心位置を用いて、測定対象物の位置を算出する。つまり、第一距離と第二距離とは、測定対象物の高さに対応する距離であるので、第一距離と第二距離の長さが一致するように縮尺を調整する。これにより、鉛直方向の成分の縮尺が同じになるように調整されるので、水平方向の成分も同じ縮尺になる。このため、第一全天画像と第二全天画像を同じ縮尺に調整することで、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる。
【0016】
また、好ましくは、前記位置算出部は、さらに、前記重合画像内において、前記変更中心位置と前記対象物位置との距離を第三距離として算出し、前記第二中心位置と前記対象物位置との距離を第四距離として算出し、前記第二中心位置と前記変更中心位置との距離を第五距離として算出し、前記第一地点と前記第二地点との距離である地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第三距離を延長した距離を、前記第一地点と前記測定対象物との水平方向の距離である第一水平距離として算出し、前記地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第四距離を延長した距離を、前記第二地点と前記測定対象物との水平方向の距離である第二水平距離として算出し、前記地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第二距離を延長した距離を、前記第一地点または前記第二地点と前記測定対象物との鉛直方向の距離である鉛直距離として算出し、算出した前記第一水平距離と前記第二水平距離と前記鉛直距離とを用いて、前記測定対象物の水平位置と高さとを算出する。
【0017】
これによれば、位置算出部は、重合画像内において、第一地点及び第二地点間の距離の第五距離に対する比率から、変更中心位置と対象物位置との距離を延長して第一地点と測定対象物との水平方向の距離を算出し、第二中心位置と対象物位置との距離を延長して第二地点と測定対象物との水平方向の距離を算出し、第二中心位置と変更中心位置との距離を延長して測定対象物の鉛直方向の高さを算出することで、測定対象物の水平位置と高さを算出する。つまり、従来のように方位角や高度角を求めて三角関数計算を行う必要がなく、距離を用いた縮尺計算によって、測定対象物の水平位置と高さを算出することができる。このため、複雑な計算を行うことがなく、容易に、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を正確に測定することができる。
【0018】
また、好ましくは、前記測定対象物は、雲である。
【0019】
これによれば、測定対象物は、雲である。このため、測定対象物が形状に特徴が少ない雲であっても、測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる。
【0020】
また、好ましくは、さらに、前記位置算出部が行う計算の過程を画面上に表示させる表示部を備える。
【0021】
これによれば、空中物位置測定装置は、位置算出部が行う計算の過程を画面上に表示させる。これにより、ユーザが、空中物位置測定装置が行う計算過程を視覚的に確認することができるので、ユーザによる測定状況の把握や、不具合の発見などをリアルタイムに行うことができる。
【0022】
また、好ましくは、前記画像取得部は、所定の第一時刻における前記第一全天画像及び前記第二全天画像と、前記第一時刻とは異なる所定の第二時刻における前記第一全天画像及び前記第二全天画像とを取得し、前記画像生成部は、前記第一時刻における前記重合画像と、前記第二時刻における前記重合画像とを生成し、前記位置算出部は、前記第一時刻における前記測定対象物の位置である第一位置と、前記第二時刻における前記測定対象物の位置である第二位置とを算出し、前記空中物位置測定装置は、さらに、前記位置算出部が算出した前記第一位置と前記第二位置とを用いて、前記第一時刻から前記第二時刻までの前記測定対象物の速度を算出する速度算出部を備える。
【0023】
これによれば、空中物位置測定装置は、異なる2つの時刻における測定対象物の位置を算出することで、当該測定対象物の速度を算出する。ここで、例えば測定対象物が雲であれば、雲は高さによって移動速度が異なるため、移動速度の予測が困難である。このため、雲の移動速度を算出することで、雲の動きを正確に予測することができるので、太陽光発電の発電出力を予測することができる。
【0024】
なお、本発明は、このような空中物位置測定装置として実現することができるだけでなく、異なる2地点に配置される2台の全天カメラと、当該2台の全天カメラによって撮像された2つの全天画像を用いて空中に配置される測定対象物の位置を測定する空中物位置測定装置とを備える空中物位置測定システムとしても実現することができる。
【0025】
これにより、2台の全天カメラで並行して異なる2地点における全天画像を撮像することで、リアルタイムに測定対象物の位置を測定することができる。
【0026】
また、本発明は、このような空中物位置測定装置として実現することができるだけでなく、当該空中物位置測定装置に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする空中物位置測定方法としても実現することができる。また、空中物位置測定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムや集積回路として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる空中物位置測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置を備える空中物位置測定システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図4A】本発明の実施の形態に係る画像取得部が取得する第一全天画像を示す図である。
【図4B】本発明の実施の形態に係る画像取得部が取得する第二全天画像を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像生成部が生成する重合画像を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る位置算出部が測定対象物の位置を算出する処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る位置算出部が第一距離及び第二距離を算出する処理を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る位置算出部が変更中心位置を算出する処理を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る位置算出部が第三距離、第四距離及び第五距離を算出する処理を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る位置算出部が第一水平距離、第二水平距離及び鉛直距離を算出する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置及び空中物位置測定システムについて、説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置300を備える空中物位置測定システム10の構成を示す図である。
【0031】
同図に示すように、空中物位置測定システム10は、空中に配置される測定対象物(空中物)の位置を測定するためのシステムであり、第一全天カメラ100と、第二全天カメラ200と、空中物位置測定装置300とを備えている。
【0032】
第一全天カメラ100は、第一地点OAに設置された全天カメラである。ここで、第一地点OAは、太陽光発電設備20の設置位置Qから、距離L1(以下、第一水平距離L1という)離れた場所であることとする。また、全天カメラとは、天空全体を1枚の感光材料に撮像するためのカメラであり、円形状の画像を生成する。
【0033】
第二全天カメラ200は、第二地点OBに設置された全天カメラである。ここで、第二地点OBは、太陽光発電設備20の設置位置Qから距離L2(以下、第二水平距離L2という)離れた場所、及び第一地点OAから距離L3(以下、地点間距離L3という)離れた場所であることとする。
【0034】
空中物位置測定装置300は、第一全天カメラ100及び第二全天カメラ200と接続され、第一全天カメラ100及び第二全天カメラ200が撮像した全天画像を用いて、空中に配置される測定対象物の位置を測定する装置である。測定対象物は、例えば雲であり、ここでは、空中物位置測定装置300は、太陽光発電設備20の設置位置Qから鉛直上方向に距離H(以下、鉛直距離Hという)離れた雲30の位置Pを測定することとする。
【0035】
次に、空中物位置測定装置300の詳細な機能構成について、説明する。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置300の機能的な構成を示すブロック図である。
【0037】
同図に示すように、空中物位置測定装置300は、画像取得部310と、画像生成部320と、位置算出部330と、速度算出部340と、入力部350と、表示部360と、記憶部370とを備えている。
【0038】
画像取得部310は、第一地点OAにおいて第一全天カメラ100を用いて撮像された画像である第一全天画像と、第一地点OAと異なる第二地点OBにおいて第二全天カメラ200を用いて撮像された画像である第二全天画像とを取得する。そして、画像取得部310は、取得した第一全天画像と第二全天画像とを、記憶部370に記憶させる。
【0039】
画像生成部320は、第一全天画像に含まれる測定対象物の画像である第一対象物画像と、第二全天画像に含まれる測定対象物の画像である第二対象物画像とが一致するように、第一全天画像と第二全天画像とを方位を維持しながら重ね合わせて得られる画像である重合画像を生成する。
【0040】
つまり、画像生成部320は、記憶部370に記憶されている第一全天画像と第二全天画像とを記憶部370から読み出し、重合画像を生成する。そして、画像生成部320は、生成した重合画像を、記憶部370に記憶させる。
【0041】
位置算出部330は、画像生成部320が生成した重合画像内における、第一全天画像の中心位置である第一中心位置と第二全天画像の中心位置である第二中心位置と測定対象物の位置である対象物位置との位置関係から、空中に配置されている測定対象物の位置を算出する。つまり、位置算出部330は、記憶部370に記憶されている重合画像を記憶部370から読み出し、当該測定対象物の位置を算出する。そして、位置算出部330は、算出した当該測定対象物の位置を、記憶部370に記憶させる。
【0042】
具体的には、位置算出部330は、重合画像内において、対象物位置と第一中心位置とを結ぶ直線に垂直な対象物位置を通る直線が第一全天画像の外周円と交差する点と、対象物位置との距離を第一距離として算出する。また、位置算出部330は、重合画像内において、対象物位置と第二中心位置とを結ぶ直線に垂直な対象物位置を通る直線が第二全天画像の外周円と交差する点と、対象物位置との距離を第二距離として算出する。
【0043】
そして、位置算出部330は、重合画像内において、対象物位置と第一中心位置とを結ぶ線分を、対象物位置を起点として、第一距離に対する第二距離の比率で延長または短縮した線分の終点を、変更中心位置として算出する。
【0044】
そして、位置算出部330は、重合画像内において、変更中心位置と対象物位置との距離を第三距離として算出し、第二中心位置と対象物位置との距離を第四距離として算出し、第二中心位置と変更中心位置との距離を第五距離として算出する。
【0045】
そして、位置算出部330は、第一地点と第二地点との距離である地点間距離L3の第五距離に対する比率で、第三距離を延長した距離を、第一地点と測定対象物との水平方向の距離である第一水平距離L1として算出する。また、位置算出部330は、地点間距離L3の第五距離に対する比率で、第四距離を延長した距離を、第二地点と測定対象物との水平方向の距離である第二水平距離L2として算出する。また、位置算出部330は、地点間距離L3の第五距離に対する比率で、第二距離を延長した距離を、第一地点または第二地点と測定対象物との鉛直方向の距離である鉛直距離Hとして算出する。
【0046】
そして、位置算出部330は、算出した第一水平距離L1と第二水平距離L2と鉛直距離Hとを用いて、測定対象物の水平位置と高さとを算出する。
【0047】
速度算出部340は、所定の第一時刻において位置算出部330が算出した測定対象物の位置である第一位置と、当該第一時刻とは異なる所定の第二時刻において位置算出部330が算出した測定対象物の位置である第二位置とを用いて、第一時刻から第二時刻までの測定対象物の速度を算出する。
【0048】
つまり、速度算出部340は、記憶部370に記憶されている第一位置と第二位置とを記憶部370から読み出し、当該測定対象物の速度を算出する。そして、速度算出部340は、算出した当該測定対象物の速度を、記憶部370に記憶させる。
【0049】
つまり、画像取得部310は、当該第一時刻における第一全天画像及び第二全天画像と、当該第二時刻における第一全天画像及び第二全天画像とを取得し、画像生成部320は、当該第一時刻における重合画像と、当該第二時刻における重合画像とを生成し、位置算出部330は、当該第一時刻における第一位置と、当該第二時刻における第二位置とを算出することで、速度算出部340は、第一時刻から第二時刻までの測定対象物の速度を算出する。
【0050】
入力部350は、例えばキーボードやマウスなどで構成されており、ユーザからの操作を受け付けて、他の処理部に通知する。
【0051】
表示部360は、位置算出部330が行う計算の過程を、液晶ディスプレイなどの画面(図示せず)上に表示させる。
【0052】
記憶部370は、測定対象物の位置を測定するためのデータなどを記憶しているメモリである。記憶部370は、例えば、第一全天画像、第二全天画像、重合画像や測定対象物の位置または速度の測定に必要な情報などを記憶している。
【0053】
次に、空中物位置測定装置300が行う処理について、説明する。なお、以下では、当該測定対象物は雲であるとして、説明を行う。
【0054】
図3は、本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置300が行う処理(空中物位置測定方法)の一例を示すフローチャートである。
【0055】
同図に示すように、空中物位置測定装置300は、所定の時刻において、以下の処理(S104〜S108)を繰り返し実施する(ループ1:S102〜S110)。ここでは、空中物位置測定装置300は、第一時刻と第二時刻において、当該処理を繰り返し実行する。つまり、第一時刻が測定開始時刻であり、第一時刻と第二時刻との間隔は、測定間隔である。なお、当該測定間隔は、特に限定されないが、例えば、1〜2分程度の時間である。
【0056】
まず、画像取得部310は、画像取得ステップとして、第一全天画像と第二全天画像とを取得する(S104)。そして、画像取得部310は、取得した第一全天画像と第二全天画像とを、記憶部370に記憶させる。ここで、画像取得部310が取得する第一全天画像と第二全天画像について、以下に説明する。
【0057】
図4Aは、本発明の実施の形態に係る画像取得部310が取得する第一全天画像を示す図である。
【0058】
同図に示すように、画像取得部310は、第一地点OAに設置されている第一全天カメラ100が撮像した画像を第一全天画像Z1として、第一全天カメラ100から取得する。ここで、第一全天画像Z1は、第一地点OAから天空全体を見上げて撮像された円形状の画像であり、方位については、上方が北、下方が南、右方が西、及び左方が東である。
【0059】
また、第一全天画像Z1の中心位置である第一中心位置Oaは、第一地点OAに対応する第一全天画像Z1上の位置である。また、第一領域Raは、例えば雲30が撮像されている領域である。また、第一マーカMaは、測定対象物の位置を示しており、ここでは、図1に示された雲30の位置Pに対応する第一全天画像Z1上の位置である。
【0060】
なお、第一全天画像Z1内には、天空の雲などの画像が撮像されているが、同図では、当該画像は省略して、第一全天画像Z1を表現している。
【0061】
また、図4Bは、本発明の実施の形態に係る画像取得部310が取得する第二全天画像を示す図である。
【0062】
同図に示すように、画像取得部310は、第一地点OBに設置されている第二全天カメラ200が撮像した画像を第二全天画像Z2として、第二全天カメラ200から取得する。なお、第二全天画像Z2については、第一全天画像Z1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0063】
なお、第二全天画像Z2の中心位置である第二中心位置Obは、第二地点OBに対応する第二全天画像Z2上の位置であり、第二領域Rbは、雲30が撮像されている領域であり、第二マーカMbは、雲30の位置Pに対応する第二全天画像Z2上の位置である。
【0064】
このように、第一全天画像Z1と第二全天画像Z2とは、異なる地点から撮像されているので、第一領域Raと第二領域Rb、第一マーカMaと第二マーカMbは、異なる位置に配置される。
【0065】
なお、第一領域Ra及び第二領域Rbは、後述する画像生成部320が重合画像を生成する際の目印となる領域であり、第一領域Ra及び第二領域Rbの位置は、当該目印となる程度の正確性があればよい。
【0066】
また、第一マーカMa及び第二マーカMbは、画像生成部320が重合画像を生成する際に、正確に位置が定められる。このため、画像取得部310が第一全天画像Z1及び第二全天画像Z2を取得する際には、第一マーカMa及び第二マーカMbの位置の正確性は要求されず、また、第一マーカMa及び第二マーカMbの位置は取得されなくともよい。
【0067】
また、画像取得部310は、第一全天カメラ100と第二全天カメラ200が同時刻に撮像することで、同時刻に撮像された第一全天画像Z1と第二全天画像Z2とを取得するのが好ましいが、第一全天画像Z1と第二全天画像Z2の撮像時刻が異なっていてもよい。
【0068】
図3に戻り、次に、画像生成部320は、画像生成ステップとして、重合画像を生成する(S106)。つまり、画像生成部320は、記憶部370に記憶されている第一全天画像と第二全天画像とを記憶部370から読み出し、重合画像を生成する。そして、画像生成部320は、生成した重合画像を、記憶部370に記憶させる。ここで、画像生成部320が生成する重合画像について、以下に説明する。
【0069】
図5は、本発明の実施の形態に係る画像生成部320が生成する重合画像を示す図である。
【0070】
同図に示すように、画像生成部320は、図4Aに示された第一全天画像Z1と、図4Bに示された第二全天画像Z2とを、方位を維持しながら重ね合わせることで、重合画像Z3を生成する。
【0071】
具体的には、画像生成部320は、第一全天画像Z1に含まれる測定対象物の画像と、第二全天画像Z2に含まれる測定対象物の画像とが一致するように、第一全天画像Z1と第二全天画像Z2とを重ね合わせて重合画像Z3を生成する。
【0072】
つまり、画像生成部320は、第一全天画像Z1の第一領域Ra内の画像と、第二全天画像Z2の第二領域Rb内の画像とを画像処理によって解析し、当該2つの画像が一致するように、第一全天画像Z1と第二全天画像Z2とを重ね合わせる。なお、画像生成部320は、第一全天画像Z1内の全画像と、第二全天画像Z2内の全画像とを画像処理によって解析して、第一全天画像Z1と第二全天画像Z2とを重ね合わせることにしてもよい。
【0073】
そして、画像生成部320は、生成した重合画像Z3上において、第一マーカMa及び第二マーカMbが同一位置になるように、第一マーカMa及び第二マーカMbの位置を定める。なお、この第一マーカMa及び第二マーカMbは、重合画像Z3上での測定対象物の位置を示しているため、以下、対象物位置Mとして説明を行う。
【0074】
図3に戻り、次に、位置算出部330は、位置算出ステップとして、測定対象物の位置を算出する(S108)。つまり、位置算出部330は、記憶部370に記憶されている重合画像を記憶部370から読み出し、当該測定対象物の位置を算出する。そして、位置算出部330は、算出した当該測定対象物の位置を、記憶部370に記憶させる。
【0075】
具体的には、位置算出部330は、画像生成部320が生成した重合画像Z3内における、第一全天画像Z1の中心位置である第一中心位置Oaと、第二全天画像Z2の中心位置である第二中心位置Obと、測定対象物の位置である対象物位置Mとの位置関係から、空中に配置されている測定対象物の位置を算出する。なお、位置算出部330が測定対象物の位置を算出する処理の詳細な説明については、後述する。
【0076】
そして、上記処理(S104〜S108)が、第一時刻と第二時刻において繰り返し実行されることで(ループ1:S102〜S110)、位置算出部330は、第一時刻における測定対象物の第一位置と、第一時刻とは異なる第二時刻における測定対象物の第二位置とを算出し、記憶部370に記憶させる。
【0077】
そして、速度算出部340は、位置算出部330が算出した第一位置と第二位置とを用いて、第一時刻から第二時刻までの測定対象物の速度を算出する(S112)。つまり、速度算出部340は、記憶部370に記憶されている第一位置と第二位置とを記憶部370から読み出し、当該測定対象物の速度を算出する。そして、速度算出部340は、算出した当該測定対象物の速度を、記憶部370に記憶させる。
【0078】
以上により、空中物位置測定装置300が行う処理(空中物位置測定方法)は、終了する。
【0079】
次に、位置算出部330が測定対象物の位置を算出する処理(図3のS108)について、詳細に説明する。
【0080】
図6は、本発明の実施の形態に係る位置算出部330が測定対象物の位置を算出する処理の詳細を示すフローチャートである。
【0081】
同図に示すように、まず、位置算出部330は、第一距離及び第二距離を算出する(S202)。ここで、位置算出部330が第一距離及び第二距離を算出する処理について、以下に詳細に説明する。
【0082】
図7は、本発明の実施の形態に係る位置算出部330が第一距離及び第二距離を算出する処理を説明する図である。
【0083】
同図に示すように、位置算出部330は、重合画像Z3内において、対象物位置Mと第一中心位置Oaとを結ぶ直線に垂直な対象物位置Mを通る直線が第一全天画像Z1の外周円と交差する点Paと、対象物位置Mとの距離を第一距離として算出する。
【0084】
具体的には、位置算出部330は、対象物位置Mを起点とし、第一中心位置Oaを終点とするベクトルを、ベクトルV1として算出する。そして、位置算出部330は、ベクトルV1に垂直なベクトルで、対象物位置Mを起点とし、第一全天画像Z1の外周円上の点Paを終点とするベクトルを、ベクトルV2として算出する。そして、位置算出部330は、ベクトルV2の大きさを、第一距離として算出する。
【0085】
なお、ベクトルV1は、図1に示された太陽光発電設備20から第一地点OAまでのベクトルに対応する第一全天画像Z1上のベクトルであり、ベクトルV1の大きさは、太陽光発電設備20と第一地点OAとの距離である第一水平距離L1に対応している。また、ベクトルV2は、太陽光発電設備20から雲30までのベクトルに対応する第一全天画像Z1上のベクトルであり、ベクトルV2の大きさである第一距離は、雲30の高さである鉛直距離Hに対応している。
【0086】
また、位置算出部330は、同様に、重合画像Z3内において、対象物位置Mと第二中心位置Obとを結ぶ直線に垂直な対象物位置Mを通る直線が第二全天画像Z2の外周円と交差する点Pbと、対象物位置Mとの距離を第二距離として算出する。
【0087】
具体的には、位置算出部330は、対象物位置Mを起点とし、第二中心位置Obを終点とするベクトルを、ベクトルV3として算出する。そして、位置算出部330は、ベクトルV3に垂直なベクトルで、対象物位置Mを起点とし、第二全天画像Z2の外周円上の点Pbを終点とするベクトルを、ベクトルV4として算出する。そして、位置算出部330は、ベクトルV4の大きさを、第二距離として算出する。
【0088】
なお、ベクトルV3は、図1に示された太陽光発電設備20から第二地点OBまでのベクトルに対応する第二全天画像Z2上のベクトルであり、ベクトルV3の大きさは、太陽光発電設備20と第二地点OBとの距離である第二水平距離L2に対応している。また、ベクトルV4は、太陽光発電設備20から雲30までのベクトルに対応する第二全天画像Z2上のベクトルであり、ベクトルV4の大きさである第二距離は、雲30の高さである鉛直距離Hに対応している。
【0089】
なお、全天画像は、全天カメラの性能にもよるが、水平方向から10°程度まで上空の領域が撮像されない。このため、位置算出部330は、外周円の径を当該10°分補正して、上記算出を行う。また、位置算出部330は、以降の算出を行う場合にも、必要に応じて同様の補正を行うこととする。
【0090】
図6に戻り、次に、位置算出部330は、変更中心位置を算出する(S204)。ここで、位置算出部330が変更中心位置を算出する処理について、以下に詳細に説明する。
【0091】
図8は、本発明の実施の形態に係る位置算出部330が変更中心位置を算出する処理を説明する図である。
【0092】
同図に示すように、位置算出部330は、重合画像Z3内において、対象物位置Mと第一中心位置Oaとを結ぶ線分を、対象物位置Mを起点として、第一距離に対する第二距離の比率で延長または短縮した線分の終点を、変更中心位置Oa’として算出する。
【0093】
つまり、位置算出部330は、線分M−Paの長さである第一距離が線分M−Pbの長さである第二距離になるように、三角形Oa−M−Paを拡大または縮小して、三角形Oa’−M−Pa’を生成することで、変更中心位置Oa’を算出する。例えば、位置算出部330は、図7に示されたベクトルV2、V4の大きさである|V2|、|V4|とベクトルV1とを用いて、ベクトルM−Oa’が、以下の式1になるように、変更中心位置Oa’を算出する。
【0094】
ベクトルM−Oa’=(|V4|/|V2|)×ベクトルV1 (式1)
【0095】
このように、第一全天画像Z1上の画像と第二全天画像Z2上の画像とでは、縮尺が異なるため、当該縮尺を一致させるために、雲の高さに相当する第一距離を第二距離に一致させることで、第一全天画像Z1上の画像の縮尺を調整する。これにより、水平距離成分である線分M−Oa’と線分M−Obとを同じ縮尺に合わせることができる。
【0096】
図6に戻り、次に、位置算出部330は、第三距離、第四距離及び第五距離を算出する(S206)。ここで、位置算出部330が第三距離、第四距離及び第五距離を算出する処理について、以下に詳細に説明する。
【0097】
図9は、本発明の実施の形態に係る位置算出部330が第三距離、第四距離及び第五距離を算出する処理を説明する図である。
【0098】
同図に示すように、位置算出部330は、重合画像Z3内において、変更中心位置Oa’と対象物位置Mとの距離を、第三距離l1として算出する。また、位置算出部330は、第二中心位置Obと対象物位置Mとの距離を、第四距離l2として算出する。また、位置算出部330は、第二中心位置Obと変更中心位置Oa’との距離を、第五距離l3として算出する。
【0099】
ここで、重合画像Z3内における第三距離l1は、図1に示された太陽光発電設備20の設置位置Qと第一地点OAとの距離である第一水平距離L1に対応しており、第四距離l2は、当該設置位置Qと第二地点OBとの距離である第二水平距離L2に対応しており、第五距離l3は、第一地点OAと第二地点OBとの距離である地点間距離L3に対応している。また、第二距離hは、当該設置位置Qと雲30の位置Pとの距離である雲の高さである鉛直距離Hに対応している。
【0100】
つまり、第三距離l1、第四距離l2、第五距離l3及び第二距離hは、それぞれ第一水平距離L1、第二水平距離L2、地点間距離L3及び鉛直距離Hを同じ縮尺で縮小したものである。
【0101】
図6に戻り、次に、位置算出部330は、第一水平距離L1、第二水平距離L2及び鉛直距離Hを算出する(S208)。ここで、位置算出部330が第一水平距離L1、第二水平距離L2及び鉛直距離Hを算出する処理について、以下に詳細に説明する。
【0102】
図10は、本発明の実施の形態に係る位置算出部330が第一水平距離L1、第二水平距離L2及び鉛直距離Hを算出する処理を説明する図である。
【0103】
同図は、図1に示した雲30の位置Pと、太陽光発電設備20の設置位置Qと、第一全天カメラ100が設置されている第一地点OAと、第二全天カメラ200が設置されている第二地点OBとの位置関係を示している。なお、点PA及び点MAは、第一全天画像Z1上の点Pa’及び点Maに対応する点であり、点PB及び点MBは、第二全天画像Z2の点Pb及び点Mbに対応する点である。
【0104】
そして、三角形OA−MA−PAは、重合画像Z3内における三角形Oa’−M−Pa’と相似形であり、三角形OA−Q−Pとも相似形であるため、三角形Oa’−M−Pa’と三角形OA−Q−Pとは、相似形である。また同様に、三角形OB−MB−PBは、重合画像Z3内における三角形Ob−M−Pbと相似形であり、三角形OB−Q−Pとも相似形であるため、三角形Ob−M−Pbと三角形OA−Q−Pとは、相似形である。
【0105】
このため、重合画像Z3内における第三距離l1、第四距離l2、第五距離l3及び第二距離hは、それぞれ第一水平距離L1、第二水平距離L2、地点間距離L3及び鉛直距離Hを同じ比率で縮小したものである。そして、当該同じ比率とは、第一地点OAと第二地点OBとの距離である地点間距離L3の第五距離l3に対する比率である。
【0106】
以上から、位置算出部330は、以下の式2に示すように、地点間距離L3の第五距離l3に対する比率で、第三距離l1を延長した距離を、第一地点OAと測定対象物である雲30との水平方向の距離である第一水平距離L1として算出する。
【0107】
第一水平距離L1=地点間距離L3/第五距離l3×第三距離l1 (式2)
【0108】
また、位置算出部330は、以下の式3に示すように、地点間距離L3の第五距離l3に対する比率で、第四距離l2を延長した距離を、第二地点OBと測定対象物である雲30との水平方向の距離である第二水平距離L2として算出する。
【0109】
第二水平距離L2=地点間距離L3/第五距離l3×第四距離l2 (式3)
【0110】
また、位置算出部330は、以下の式4に示すように、地点間距離L3の第五距離l3に対する比率で、第二距離hを延長した距離を、第一地点OAまたは第二地点OBと測定対象物である雲30との鉛直方向の距離である鉛直距離Hとして算出する。
【0111】
鉛直距離H=地点間距離L3/第五距離l3×第二距離h (式4)
【0112】
図6に戻り、最後に、位置算出部330は、算出した第一水平距離L1と第二水平距離L2と鉛直距離Hとを用いて、測定対象物の水平位置と高さとを算出する(S210)。つまり、位置算出部330は、上記式2〜4の計算結果を用いて、所定の基準点からの、測定対象物である雲30の位置Pの水平位置と高さとを算出する。
【0113】
なお、以上の位置算出部330が行う計算の過程については、表示部360が、随時、液晶ディスプレイなどの画面上に表示させている。
【0114】
以上により、位置算出部330が測定対象物の位置を算出する処理(図3のS108)は、終了する。
【0115】
以上のように、本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置300によれば、異なる2地点における全天カメラの画像である第一全天画像Z1と第二全天画像Z2とを、測定対象物の画像が一致するように重ね合わせて重合画像Z3を生成し、当該重合画像Z3内における、第一全天画像Z1の中心と第二全天画像Z2の中心と測定対象物との位置関係から、空中に配置されている測定対象物の位置を算出する。つまり、2枚の全天画像を測定対象物の画像が一致するように重ね合わせて重合画像Z3を生成すればよいため、従来の雲画像にマーカを仮想的に配置するというような必要がない。このため、空中に配置される雲などの測定対象物の形状に特徴が少ない場合でも、容易に正確に測定対象物の画像を一致させて重合画像Z3を生成することができるので、測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる。
【0116】
また、位置算出部330は、重合画像Z3内において、対象物位置と第一全天画像Z1の外周円上の一点とを結ぶ線分の長さを第一距離として算出し、対象物位置と第二全天画像Z2の外周円上の一点とを結ぶ線分の長さを第二距離として算出して、当該第一距離と第二距離とを用いて、測定対象物の位置を算出する。つまり、位置算出部330は、重合画像Z3内における測定対象物の高さに対応する距離として、第一距離と第二距離とを算出して、測定対象物の位置を算出する。このように、測定対象物の高さに対応する第一距離と第二距離とを用いて算出を行うことで、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる。
【0117】
また、位置算出部330は、重合画像Z3内において、第一距離が第二距離の長さになるように、対象物位置Mと第一中心位置Oaとを結ぶ線分を延長または短縮して、線分の終点を変更中心位置Oa’として算出し、当該変更中心位置Oa’を用いて、測定対象物の位置を算出する。つまり、第一距離と第二距離とは、測定対象物の高さに対応する距離であるので、第一距離と第二距離の長さが一致するように縮尺を調整する。これにより、鉛直方向の成分の縮尺が同じになるように調整されるので、水平方向の成分も同じ縮尺になる。このため、第一全天画像Z1と第二全天画像Z2を同じ縮尺に調整することで、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる。
【0118】
また、位置算出部330は、重合画像Z3内において、第一地点及び第二地点間における地点間距離L3の第五距離l3に対する比率から、変更中心位置Oa’と対象物位置Mとの距離を延長して第一地点OAと測定対象物との水平方向の距離を算出し、第二中心位置Obと対象物位置Mとの距離を延長して第二地点OBと測定対象物との水平方向の距離を算出し、第二中心位置Obと変更中心位置Oa’との距離を延長して測定対象物の鉛直方向の高さを算出することで、測定対象物の水平位置と高さを算出する。つまり、従来のように方位角や高度角を求めて三角関数計算を行う必要がなく、距離を用いた縮尺計算によって、測定対象物の水平位置と高さを算出することができる。このため、複雑な計算を行うことがなく、容易に、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を正確に測定することができる。
【0119】
また、測定対象物は、雲である。このため、測定対象物が形状に特徴が少ない雲であっても、測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる。
【0120】
また、空中物位置測定装置300は、位置算出部330が行う計算の過程を画面上に表示させる。これにより、ユーザが、空中物位置測定装置300が行う計算過程を視覚的に確認することができるので、ユーザによる測定状況の把握や、不具合の発見などをリアルタイムに行うことができる。
【0121】
また、空中物位置測定装置300は、異なる2つの時刻における測定対象物の位置を算出することで、当該測定対象物の速度を算出する。ここで、例えば測定対象物が雲であれば、雲は高さによって移動速度が異なるため、移動速度の予測が困難である。このため、雲の移動速度を算出することで、雲の動きを正確に予測することができるので、太陽光発電の発電出力を予測することができる。
【0122】
また、本発明は、このような空中物位置測定装置300として実現することができるだけでなく、異なる2地点に配置される2台の全天カメラである第一全天カメラ100及び第二全天カメラ200と、当該2台の全天カメラによって撮像された2つの全天画像を用いて空中に配置される測定対象物の位置を測定する空中物位置測定装置300とを備える空中物位置測定システム10としても実現することができる。
【0123】
これにより、2台の全天カメラで並行して異なる2地点における全天画像を撮像することで、リアルタイムに測定対象物の位置を測定することができる。
【0124】
以上、本発明の実施の形態に係る空中物位置測定装置300及び空中物位置測定システム10について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0125】
例えば、本実施の形態では、測定対象物は雲であり、空中物位置測定装置300は、雲の位置を測定することとした。しかし、測定対象物は雲には限定されず、ビルなどの建築物であってもよいし、飛行機などの飛行物体であってもよい。
【0126】
また、本実施の形態では、空中物位置測定システム10は、2台の全天カメラを備えており、空中物位置測定装置300は、2台の全天カメラからの全天画像を用いて、測定対象物の位置を測定することとした。しかし、空中物位置測定システム10は、1台の全天カメラしか備えておらず、当該1台の全天カメラを移動させて2地点における全天画像を撮像することで、空中物位置測定装置300が測定対象物の位置を測定することにしてもよい。
【0127】
また、本実施の形態では、空中物位置測定装置300は、速度算出部340を備えており、速度算出部340により測定対象物の速度を算出することとしたが、空中物位置測定装置300は、速度算出部340を備えておらず、測定対象物の速度は算出しないことにしてもよい。
【0128】
また、本実施の形態では、空中物位置測定装置300は、表示部360を備えており、位置算出部330が行う計算の過程を画面上に表示させることとしたが、空中物位置測定装置300は、表示部360を備えておらず、当該表示をしないことにしてもよい。また、同様に、空中物位置測定装置300は、入力部350を備えていないことにしてもよい。
【0129】
また、本発明は、このような空中物位置測定装置300として実現することができるだけでなく、当該空中物位置測定装置300に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする空中物位置測定方法としても実現することができる。また、空中物位置測定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムや集積回路として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、空中に配置される雲などの測定対象物の位置を容易に正確に測定することができる空中物位置測定装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0131】
10 空中物位置測定システム
20 太陽光発電設備
30 雲
100 第一全天カメラ
200 第二全天カメラ
300 空中物位置測定装置
310 画像取得部
320 画像生成部
330 位置算出部
340 速度算出部
350 入力部
360 表示部
370 記憶部
H 鉛直距離
h 第二距離
L1 第一水平距離
L2 第二水平距離
L3 地点間距離
l1 第三距離
l2 第四距離
l3 第五距離
M 対象物位置
Ma 第一マーカ
Mb 第二マーカ
OA 第一地点
Oa 第一中心位置
Oa’ 変更中心位置
OB 第二地点
Ob 第二中心位置
V1、V2、V3、V4 ベクトル
Z1 第一全天画像
Z2 第二全天画像
Z3 重合画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に配置される測定対象物の位置を測定する空中物位置測定装置であって、
第一地点において全天カメラを用いて撮像された画像である第一全天画像と、前記第一地点と異なる第二地点において全天カメラを用いて撮像された画像である第二全天画像とを取得する画像取得部と、
前記第一全天画像に含まれる前記測定対象物の画像である第一対象物画像と、前記第二全天画像に含まれる前記測定対象物の画像である第二対象物画像とが一致するように、前記第一全天画像と前記第二全天画像とを方位を維持しながら重ね合わせて得られる画像である重合画像を生成する画像生成部と、
生成された前記重合画像内における、前記第一全天画像の中心位置である第一中心位置と前記第二全天画像の中心位置である第二中心位置と前記測定対象物の位置である対象物位置との位置関係から、空中に配置されている前記測定対象物の位置を算出する位置算出部と
を備える空中物位置測定装置。
【請求項2】
前記位置算出部は、
前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第一中心位置とを結ぶ直線に垂直な前記対象物位置を通る直線が前記第一全天画像の外周円と交差する点と、前記対象物位置との距離を第一距離として算出し、
前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第二中心位置とを結ぶ直線に垂直な前記対象物位置を通る直線が前記第二全天画像の外周円と交差する点と、前記対象物位置との距離を第二距離として算出し、
算出した前記第一距離と前記第二距離とを用いて、前記測定対象物の位置を算出する
請求項1に記載の空中物位置測定装置。
【請求項3】
前記位置算出部は、さらに、
前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第一中心位置とを結ぶ線分を、前記対象物位置を起点として、前記第一距離に対する前記第二距離の比率で延長または短縮した線分の終点を、変更中心位置として算出し、
算出した前記変更中心位置を用いて、前記測定対象物の位置を算出する
請求項2に記載の空中物位置測定装置。
【請求項4】
前記位置算出部は、さらに、
前記重合画像内において、前記変更中心位置と前記対象物位置との距離を第三距離として算出し、前記第二中心位置と前記対象物位置との距離を第四距離として算出し、前記第二中心位置と前記変更中心位置との距離を第五距離として算出し、
前記第一地点と前記第二地点との距離である地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第三距離を延長した距離を、前記第一地点と前記測定対象物との水平方向の距離である第一水平距離として算出し、
前記地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第四距離を延長した距離を、前記第二地点と前記測定対象物との水平方向の距離である第二水平距離として算出し、
前記地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第二距離を延長した距離を、前記第一地点または前記第二地点と前記測定対象物との鉛直方向の距離である鉛直距離として算出し、
算出した前記第一水平距離と前記第二水平距離と前記鉛直距離とを用いて、前記測定対象物の水平位置と高さとを算出する
請求項3に記載の空中物位置測定装置。
【請求項5】
前記測定対象物は、雲である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の空中物位置測定装置。
【請求項6】
さらに、
前記位置算出部が行う計算の過程を画面上に表示させる表示部を備える
請求項1〜5のいずれか1項に記載の空中物位置測定装置。
【請求項7】
前記画像取得部は、所定の第一時刻における前記第一全天画像及び前記第二全天画像と、前記第一時刻とは異なる所定の第二時刻における前記第一全天画像及び前記第二全天画像とを取得し、
前記画像生成部は、前記第一時刻における前記重合画像と、前記第二時刻における前記重合画像とを生成し、
前記位置算出部は、前記第一時刻における前記測定対象物の位置である第一位置と、前記第二時刻における前記測定対象物の位置である第二位置とを算出し、
前記空中物位置測定装置は、さらに、
前記位置算出部が算出した前記第一位置と前記第二位置とを用いて、前記第一時刻から前記第二時刻までの前記測定対象物の速度を算出する速度算出部を備える
請求項1〜6のいずれか1項に記載の空中物位置測定装置。
【請求項8】
異なる2地点に配置される2台の全天カメラと、
前記2台の全天カメラによって撮像された2つの全天画像を用いて、空中に配置される測定対象物の位置を測定する請求項1〜7のいずれか1項に記載の空中物位置測定装置と
を備える空中物位置測定システム。
【請求項9】
空中に配置される測定対象物の位置を測定する空中物位置測定方法であって、
第一地点において全天カメラを用いて撮像された画像である第一全天画像と、前記第一地点と異なる第二地点において全天カメラを用いて撮像された画像である第二全天画像とを取得する画像取得ステップと、
前記第一全天画像に含まれる前記測定対象物の画像である第一対象物画像と、前記第二全天画像に含まれる前記測定対象物の画像である第二対象物画像とが一致するように、前記第一全天画像と前記第二全天画像とを方位を維持しながら重ね合わせて得られる画像である重合画像を生成する画像生成ステップと、
生成された前記重合画像内における、前記第一全天画像の中心位置である第一中心位置と前記第二全天画像の中心位置である第二中心位置と前記測定対象物の位置である対象物位置との位置関係から、空中に配置されている前記測定対象物の位置を算出する位置算出ステップと
を含む空中物位置測定方法。
【請求項10】
前記位置算出ステップは、
前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第一中心位置とを結ぶ直線に垂直な前記対象物位置を通る直線が前記第一全天画像の外周円と交差する点と、前記対象物位置との距離を第一距離として算出する第一距離算出ステップと、
前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第二中心位置とを結ぶ直線に垂直な前記対象物位置を通る直線が前記第二全天画像の外周円と交差する点と、前記対象物位置との距離を第二距離として算出する第二距離算出ステップと、
前記重合画像内において、前記対象物位置と前記第一中心位置とを結ぶ線分を、前記対象物位置を起点として、前記第一距離に対する前記第二距離の比率で延長または短縮した線分の終点を、変更中心位置として算出する変更中心位置算出ステップと、
前記重合画像内において、前記変更中心位置と前記対象物位置との距離を第三距離として算出し、前記第二中心位置と前記対象物位置との距離を第四距離として算出し、前記第二中心位置と前記変更中心位置との距離を第五距離として算出する第三距離算出ステップと、
前記第一地点と前記第二地点との距離である地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第三距離を延長した距離を、前記第一地点と前記測定対象物との水平方向の距離である第一水平距離として算出する第一水平距離算出ステップと、
前記地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第四距離を延長した距離を、前記第二地点と前記測定対象物との水平方向の距離である第二水平距離として算出する第二水平距離算出ステップと、
前記地点間距離の前記第五距離に対する比率で、前記第二距離を延長した距離を、前記第一地点または前記第二地点と前記測定対象物との鉛直方向の距離である鉛直距離として算出する鉛直距離算出ステップと、
算出された前記第一水平距離と前記第二水平距離と前記鉛直距離とを用いて、前記測定対象物の水平位置と高さとを算出する水平位置高さ算出ステップとを含む
請求項9に記載の空中物位置測定方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の空中物位置測定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−242322(P2012−242322A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114663(P2011−114663)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】