説明

空中超音波センサ

【課題】簡易な構成で取り付け対象の外観のデザイン性を劣化させずに超音波を良好に送受信する。
【解決手段】空中超音波センサ1は、平板12と平板13とを固着させた振動板と、振動板に磁界を発生させる磁界発生部11と、磁界発生部11が発生した磁界領域中に電流を流して振動板に渦電流を発生させるコイル14とを有し、磁界と渦電流の相互作用で前記振動板を振動させ超音波を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば空気中に超音波を送信し、または空気中を伝播してきた超音波を受信する空中超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空中超音波センサは、空気中に超音波を送信し、空気中を伝搬して障害物等により反射された超音波を受信することにより、障害物等を検知することができ、例えば障害物検知システムに利用されている。空中超音波センサは屋外で用いられる場合もあり、水滴、埃等の付着により不具合が発生する問題があるため、例えば非特許文献1のように、超音波を発生させる圧電素子を金属ケースで密閉した構造が開示されている。
このような空中超音波センサを、例えば車両周辺の障害物を検知する障害物検知システムに用いる場合、車体やバンパに取り付ける必要がある。空中超音波センサは、車体内側やバンパ内部に取り付けられると、超音波が車体またはバンパで反射され送信できなくなったり、受信感度が大きく低下してしまう。そこで、空中超音波センサは、車体またはバンパをくりぬいて形成した取り付け穴に取り付けられ、その超音波放射面を外部に露出させていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「超音波とその使い方 超音波センサ・超音波モータ」 谷腰欣司著 日刊工業新聞社発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空中超音波センサは、取り付け対象の外周に取り付け穴を開口させなければならず、外観のデザイン性が劣化するという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で取り付け対象の外観のデザイン性を劣化させることなく、超音波を良好に送受信できる空中超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る空中超音波センサは、第一の平板と第二の平板とを固着させた振動板と、振動板に磁界を発生させる磁界発生部と、磁界発生部が発生した磁界領域中に交流電流を流して振動板に渦電流を発生させるコイルとを有し、磁界と渦電流の相互作用で前記振動板を振動させ超音波を発生させるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る空中超音波センサによれば、上記のように第一の平板と第二の平板とを固着させた振動板を、磁界と渦電流の相互作用で振動させて超音波を発生させる構成にしたことにより、取り付け対象の構成を第二の平板として用いることができ、取り付け対象に取り付け穴を設ける必要が無い。その結果、簡易な構成で取り付け対象の外観のデザイン性を劣化させることなく、超音波を良好に送受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る空中超音波センサの構成を示す図(a)、(b)である。
【図2】空中超音波センサの動作を説明する図(a)、(b)である。
【図3】空中超音波センサにおける振動板の動作を説明する図(a)、(b)である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る空中超音波センサを説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る空中超音波センサを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1の空中超音波センサ1の構成を示しており、図1(a)が空中超音波センサ1を超音波放射方向に見た上面図、図1(b)が図1(a)のA−A´線の断面図である。
【0010】
空中超音波センサ1は、磁界発生部11、平板12(第一の平板)、平板13(第二の平板)、コイル14で構成されている。
磁界発生部11は、略円柱形状の軸方向両端の面が平板12と平行になるよう配置されており、振動板に磁界を発生させる。磁界発生部11は、例えばネオジウム等の保磁力の高い材料で形成された永久磁石であり、軸方向両端のうちの一端がN極、他端がS極となっている。
【0011】
平板12と平板13は、それぞれ異なる材料で構成され、それぞれの面を合わせて接着剤で固着されて振動板を形成している。平板12と平板13は、質量が小さく、高い合成と適度な弾性を有する材料で構成されており、特に平板12は例えば渦電流を多く発生する導体で構成され、磁界発生部11およびコイル14に対向して配置されている。平板13は、一方の面を平板12に固着され、他方の面を超音波を放射する外部方向に向けて配置されている。なお、平板13は、例えば車体またはバンパのように空中超音波センサ11の外部の別部材で構成されるものであってもよい。
コイル14は、複数回巻回され略円形に形成され、磁界発生部11と振動板としての平板12との間に配置されている。コイル14は、磁界発生部11が発生した磁界領域中に電流を流して振動板に渦電流を発生させる。
【0012】
次に空中超音波センサ1の動作について図2と図3を用いて説明する。
空中超音波センサ1は、外部の電源からコイル14に交流電圧が印加されると、図2(a)に示すようにコイル14中に各周波数ωである交流電流I(ω)が流れる。この交流電流I(ω)により、平板12には交流電流I(ω)と逆向きの渦電流J(ω)が発生する。ここで、磁界発生部11は、平板12の面に対して垂直方向に一様な静磁界Bを与えている。このとき、平板12には、渦電流J(ω)と静磁界Bとの相互作用により、面に平行な方向に伸長するようなローレンツ力F(ω)が発生する。
一方、コイル14に流れる交流電流I(ω)は、角周波数ωにより、図2(b)に示すように流れる向きが変わる。それに従って平板12に発生する渦電流J(ω)の向きが変化して、平板12には、面に平行な方向に収縮するようなローレンツ力F(ω)が発生する。これらの動きが繰り返されて、平板12は面に平行な方向に伸縮を繰り返す。
【0013】
ここで、平板12と平板13は固着されているため、図2(a)に示すローレンス力F(ω)が発生すると図3(a)に示すように平板13にはローレンス力F(ω)と逆向きの力が生じ、図2(b)に示すローレンス力F(ω)が発生すると図3(b)に示すように平板13にはローレンス力F(ω)と逆向きの力が生じ、平板12と平板13からなる振動板を撓ませる力に変換させる。このようにして、振動板は交互に湾曲して振動し、超音波を空気中に放射する。
【0014】
なお、ここでは超音波を放射する動作について説明したが、空中超音波センサ1の動作は可逆であるため、詳細に説明するまでもなく、障害物等で反射され空気中を伝搬してきた超音波を受信することも可能である。
【0015】
なお、実施の形態1の空中超音波センサ1は、磁界発生部11を略円柱形状、平板12と平板13、コイル14を略円形として説明しているが、それに限るものではなく、それぞれ直方体および矩形としてもよい。
【0016】
以上のように、実施の形態1の空中超音波センサ1は、それぞれ異なる材料の平板12と平板13とを固着させた振動板を、磁界と渦電流の相互作用で振動させて超音波を発生させる構成にしたことにより、平板13を車両(取り付け対象)の車体、バンパ、ナンバープレートで構成して空気中に超音波を放射することができる。その結果、空中超音波センサ1を取り付け対象に取り付けても外観のデザイン性を損なうことがないという効果が得られる。
【0017】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1の空中超音波センサ1と同様の構造であるが、平板12と平板13のそれぞれの材料の条件について説明する。図4は、実施の形態2に係る空中超音波センサ2の構成を示す図である。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同様の内容については説明を省略する。
【0018】
空中超音波センサ2は、磁界発生部11、平板22(第一の平板)、平板23(第二の平板)、コイル14で構成されている。ここで、磁界発生部11とコイル14は実施の形態1の空中超音波センサと同様であるため、図1と同一の符号を付して説明を省略する。
平板22と平板23は、空気の音響インピーダンスZ、平板22の音響インピーダンスZ、平板23の音響インピーダンスZとした場合、次式(1)を満たす材料でそれぞれ構成されている。

【0019】
ここで、音響インピーダンスZについて説明する。音響インピーダンスZは、音速V、密度ρとすると、Z=ρVと定義される。したがって密度ρが異なる媒質間では音響インピーダンスZも異なる。二つの媒質の音響インピーダンスZが同程度の場合、超音波はよく透過し、反射波は少ないが、音響インピーダンスZが異なる媒質間で超音波が伝達される場合、媒質間で超音波の反射、透過が生じる。例えば二つの媒質の音響インピーダンスZの差が大きい場合、音響インピーダンスZの不整合により透過波が少なく、反射波が非常に大きくなる。一般的に、気体と固体の音響インピーダンスZの差は非常に大きいため、空気中へ超音波を放射させる空中超音波センサでは、振動板と空気の境界で反射波が多くなり、透過波が少なくなる。したがって、空中超音波センサのセンサ効率が低下する。
【0020】
空中超音波センサ2は、平板22の音速V、密度ρ、音響インピーダンスZ、平板23の音速V、密度ρ、音響インピーダンスZ、空気の音速V、密度ρ、音響インピーダンスZとした場合、音響インピーダンスZ、Z、Zの関係を上記式(1)を満たすように平板22、平板23の材料が選択されている。このように平板22の材料と平板23の材料を選択すれば、平板23は、空気の音響インピーダンスZと平板22の音響インピーダンスZとの不整合を緩和する音響整合層として機能する。
【0021】
以上のように、実施の形態2の空中超音波センサ2は、平板23が空気の音響インピーダンスZと平板22の音響インピーダンスZとの不整合を緩和するよう構成したことにより、その不整合に起因する反射波を低減し、センサ効率の低下を抑制することができるという効果が得られる。
【0022】
なお、平板23は、平板23から空気中(外部)へ向けて放射される超音波の波長の1/4の厚さdで構成することで、平板23から空気中への透過波が反射波により打ち消されないため、より効率よく超音波を放射することができる。
【0023】
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態1の空中超音波センサ1と同様の構造であるが、空中超音波センサ1における平板12の厚さを設定する構成について説明する。
【0024】
図5は、実施の形態3の空中超音波センサ3の構成を示している。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1と同様の内容については説明を省略する。
空中超音波センサ3は、磁界発生部11、平板32(第一の平板)、平板33(第二の平板)、コイル14で構成されている。ここで、磁界発生部11とコイル14は実施の形態1の空中超音波センサと同様であるため説明を省略する。
【0025】
平板32は、その材料の抵抗率r、透磁率μとすると、平板32の厚さdが平板32の抵抗率r、透磁率μ、渦電流の角周波数ωに対して下記式(2)を満たすよう構成されている。

上記式(2)は、表皮効果により渦電流の角周波数ωが高周波数になるに従って渦電流が平板32の表面に集中することを用いたものであり、平板32の厚さdが渦電流の流れる深さ(表皮深さ)以上になるように設定する式である。この式を用いて平板32の厚さdを設定して構成することにより、渦電流が平板32のみに生じ、平板33には生じない。そのため、渦電流と磁界発生部11により生じる静磁界Bとの相互作用であるローレンツ力F(ω)が平板32にのみ生じ、平板32と平板33からなる振動板の撓みがより大きくなる。
【0026】
以上のように、実施の形態3の空中超音波センサ3は、平板32の厚さdを表皮効果による表皮深さ以上にすることにより、平板32がローレンス力F(ω)により伸長、圧縮する際、平板33にローレンス力F(ω)を生じさせず、平板32と平板33からなる振動板の撓みがより大きくなる。その結果、空中超音波センサ3における振動板の振動効率を高くすることができ、センサ効率を向上させることができるという効果が得られる。
【0027】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1,2,3 空中超音波センサ、11 磁界発生部、12,22,32 平板(第一の平板)、13,23,33 平板(第二の平板)、14 コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の平板と第二の平板とを固着させた振動板と、
前記振動板に磁界を発生させる磁界発生部と、
前記磁界発生部が発生した磁界領域中に交流電流を流して前記振動板に渦電流を発生させるコイルとを有し、
前記磁界と前記渦電流の相互作用で前記振動板を振動させ超音波を発生させる空中超音波センサ。
【請求項2】
第一の平板と第二の平板は、空気の音響インピーダンスZと前記第一の平板の音響インピーダンスZと前記第二の平板の音響インピーダンスZが次式(1)を満たす材料でそれぞれ構成されることを特徴とする請求項1記載の空中超音波センサ。

【請求項3】
第二の平板は、その第二の平板が発生する超音波の波長の1/4の厚さであることを特徴とする請求項2記載の空中超音波センサ。
【請求項4】
第一の平板の厚さdは、その第一の平板の抵抗率r、透磁率μ、渦電流の角周波数ωに対して次式(2)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の空中超音波センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−191429(P2012−191429A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53054(P2011−53054)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】