説明

空気インナーライナーの製造方法

【課題】空気インナーライナー用の動的加硫アロイを形成するには可塑剤が必須であるけれども、可塑剤はタイヤをつくるほとんどの後続の工程において問題を引き起こす。有用であると期待されることは、動的加硫アロイをタイヤ形成に使用する前に、それから可塑剤を低減しまたは排除することである。
【解決手段】本発明は、空気インナーライナー用の連続エラストマー長尺物を調製する方法であって、可塑剤およびエラストマーを含む連続エラストマー長尺物を用意する工程、該連続エラストマー長尺物をある滞留時間、該可塑剤の引火点の上15℃以下の温度で加熱する工程、および該長尺物を冷却して該連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する熱処理された連続エラストマー長尺物を形成する工程、を含む方法に関する。ある実施形態では、熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続エラストマー長尺物を含む積層物は、最初に、切断されて空気インナーライナーユニットを形成し、該空気インナーライナーユニットをそれ自体に接合して空気インナーライナーを形成することができる。熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続エラストマー長尺物を含む積層物は、切断されてそれによってスリーブの形態にされて空気インナーライナースリーブを形成し、該スリーブはタイヤ中に組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2009年11月19日に出願された米国特許出願番号第61/262,594号の優先権および利益を主張する。
【0002】
本願発明は、タイヤ用の空気インナーライナー、特にイソブチレン系動的加硫アロイのインナーライナー、およびそれらがタイヤの要素を形成することができるようにそれらを用意する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
空気タイヤのインナーライナーは、該タイヤの全体性能にとって決定的に重要なものである。より低い空気透過性を有する材料を使用することは、インナーライナーの厚さの削減を可能にし、その結果として燃料効率を改善する。動的加硫アロイ(「DVA」)を使用する最新技術はこれを可能にすることができる。DVA中空成形フィルムは、イソブチレン系エラストマーと熱可塑性樹脂との動的加硫ブレンドであるタイヤインナーライナー技術に係るものである。この技術の例は、RUBBER WORLD誌(2007年9月1日刊)の「動的加硫アロイインナーライナー」にTraceyおよびTsouによって記載されている(非特許文献1)。基本材料をつくるためには、10〜20重量パーセントの可塑剤がDVAに添加されなければならない。
【0004】
DVAを形成するには可塑剤が必須であるけれども、可塑剤はタイヤをつくるほとんどの後続の工程において問題を引き起こす。可塑剤は、フィルム形成プロセスの際に発煙を生じさせ、貯蔵後のDVAフィルムの表面にブルーミング(白紛)を生じさせ、タイヤの硬化の際に硬化装置の表面を覆い、それをインナーライナーから全て除かないと、インナーライナーが圧力を保持する能力を低下させる。有用であると期待されることは、DVAをタイヤ形成に使用する前に、それから可塑剤を低減しまたは排除することである。
【0005】
いくつかの関連する刊行物は、米国特許出願公開第2008−0275187号(特許文献1)、米国特許出願公開第2007−0106024号(特許文献2)、米国特許第7,226,962号(特許文献3)、米国特許第5,407,627号(特許文献4)および国際公開第2009−048472号(特許文献5)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008−0275187号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007−0106024号明細書
【特許文献3】米国特許第7,226,962号明細書
【特許文献4】米国特許第5,407,627号明細書
【特許文献5】国際公開第2009−048472号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】TraceyおよびTsou、RUBBER WORLD、2007年9月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有用であると期待されることは、DVAをタイヤ形成に使用する前に、それから可塑剤を低減しまたは排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示発明の1の側面は、空気インナーライナー用の連続エラストマー長尺物を調製する方法であって、
可塑剤およびエラストマーを含む連続エラストマー長尺物を用意する工程、該連続エラストマー長尺物をある滞留時間、該可塑剤の引火点の上15℃以下または10℃以下または5℃以下または0℃以下の温度で加熱する工程、および該長尺物を冷却して該連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する熱処理された連続エラストマー長尺物を形成する工程、
を含む方法に関する。ある実施形態では、熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続エラストマー長尺物を含む積層物は、切断されて空気インナーライナーユニットを形成し、該空気インナーライナーユニットをそれ自体に接合して空気インナーライナーを形成することができ、この場合表面の可塑剤を除く工程は実質的に存在しない。さらに他の実施形態では、熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続エラストマー長尺物を含む積層物は、切断されてそれによって該連続長尺物はスリーブの形態にされて空気インナーライナースリーブを形成し、該空気インナーライナースリーブはタイヤ中に組み込まれる。
【0010】
望ましくは、連続エラストマー長尺物は少なくとも1のエラストマーを含み、さらにその上、ある実施形態では、そのエラストマーまたは全てのエラストマーは加熱工程の前に少なくとも部分的に硬化される。硬化は動的加硫によって実施されることができ、エンジニアリング樹脂および以下でさらに説明される他の成分の存在下に実施されてもよい。
【0011】
本開示発明の他の側面は、空気インナーライナー用の連続エラストマー長尺物を調製する方法であって、
可塑剤およびエラストマーを含む連続エラストマー長尺物を用意する工程、該連続エラストマー長尺物を切断して空気インナーライナーユニットを形成する工程、該空気インナーライナーユニットをある滞留時間、該可塑剤の引火点の上15以下または10以下または5以下または0℃以下の温度で加熱する工程、および該空気インナーライナーユニットを冷却して該連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する熱処理された空気インナーライナーを形成する工程、
を含む方法に関する。ある実施形態では、熱処理された空気インナーライナーユニットはそれ自体に接合されて空気インナーライナーを形成し、この場合表面の可塑剤を除く工程は実質的に存在しない。さらに他の実施形態では、熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続エラストマー長尺物を含む積層物が用意され、該インナーライナーはスリーブの形態にされて、この空気インナーライナースリーブはタイヤ中に組み込まれる。
【0012】
本明細書の発明のいずれの側面においても、熱処理された連続エラストマー長尺物の空気透過性は、連続エラストマー長尺物の空気透過性よりも少なくとも10または少なくとも30または少なくとも50または少なくとも100または少なくとも200%低い。さらに、本開示発明のいずれの側面においても、熱処理された連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルは、連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少なくとも10または少なくとも20または少なくとも30または少なくとも40または少なくとも50または少なくとも60または少なくとも70または少なくとも80または少なくとも90%低い。長尺物を構成する長さおよび組成は、以下でさらに説明される数多くの他の記載される側面によって説明されることができる。
【0013】
本明細書に開示される様々な記載された要素および数値範囲は、他の記載された要素および数値範囲と一緒にされて、組成物、インナーライナー、インナーライナーを含むタイヤおよび本明細書に記載されたかかるものを処理し製造するプロセスの好ましい実施形態を記載することができ、さらにある要素の任意の数値上限は、同じ要素の任意の数値下限と一緒にされて、好ましい実施形態を記載することができる。これに関連して「XからYまでの範囲内」の語句は、「X」および「Y」の数値をこの範囲内に包含することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本明細書に記載されたプロセスの多ゾーン式炉の実施形態の概略図であり、エラストマー物質の連続長尺物(シートまたはスリーブ)が加熱されながらその中を循環する。
【図2】図2は本明細書に記載されたプロセスの多ゾーン式炉の実施形態の概略図であり、エラストマー物質の連続長尺物(シートまたはスリーブ)が加熱されながらその中を循環し、熱処理された長尺物の上に他の物質の層を設けるための任意的な押出コーティングダイを示す。
【図3】図3は表1のデータのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示発明は、空気インナーライナーとして、とりわけタイヤ用の空気インナーライナーとして使用されることができるエラストマーシートまたはスリーブを製造する方法に関する。望ましくは、該方法は、かかるシートまたはスリーブの表面を洗浄する何らかの工程が存在しないようなものであり、これによってタイヤの製造を簡単にし、また改善する。洗浄工程は、該シートまたはスリーブから表面の可塑剤および/またはプロセス油を除くことを含むことができ、該シートまたはスリーブをインナーライナーとして有効であるようにするためにしばしば必要になる。洗浄は、タイヤ形成の加熱段階の間の望ましくない発煙およびガス発生の可能性を取り除き、および/またはエラストマースリーブもしくはシートのこれら自体もしくは他のタイヤ要素への、より好都合な接合もまた可能にした。
【0016】
本明細書で使用される周期表の族の新しい番号付け方法はHAWLEY’S CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY (John Wiley & Sons社、1997年刊)に開示されたものである。全ての分子量は、特に断りのない限り重量平均である。
【0017】
「ポリマー」とは、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、ターポリマー等を言うために使用されることができる。同様に、コポリマーとは少なくとも2のモノマーを、任意的に他のモノマーとともに含むポリマーのことを言うことができる。ポリマーがモノマーを含むと言うときは、該モノマーの重合された形でまたは該モノマーの誘導体の形で該モノマーが該ポリマー中に存在している。しかし、言及の簡易さのために「(それぞれの)モノマーを含む」の語句等が簡略表現として使用される。同様に、触媒成分が該成分の中性安定形を含むと記載されるときは、該成分の活性形はモノマーと反応してポリマーを生成する形であることが当業者によって十分に理解される。
【0018】
「イソオレフィン」とは、2の置換基を同じ炭素上に含む任意のオレフィンモノマーを言う。「イソブチレン系」ポリマーとは、該ポリマーの重量当たり少なくとも20重量%のイソブチレンモノマーを含むポリマーである。
【0019】
本明細書で使用される「エラストマー」または「複数のエラストマー」とは、ASTM D1566の定義に一致する任意のポリマーまたはポリマーの組成物を言う。
【0020】
「アルキル」とは、アルカンの化学式から1以上の水素を切り離すことによって誘導されることができるパラフィン炭化水素基、たとえばメチル基(−CH)またはエチル基(−CHCH)等を言う。
【0021】
「アリール」とは、芳香族化合物の特徴を有する環構造を形成する炭化水素基、たとえばベンゼン、ナフタレン、フェナントレンまたはアントラセン等を言い、典型的にはその構造内に一つ置きの二重結合(「不飽和結合」)を有する。アリール基はしたがって、芳香族化合物の化学式から1以上の水素を切り離すことによって誘導された基、たとえばフェニル、すなわち−Cである。
【0022】
「置換され」または「官能化され」または「官能基」とは、炭化水素部分上の少なくとも1の水素基が、たとえばハロゲン(塩素、臭素、フッ素またはヨウ素)、アミノ、ニトロ、スルホキシ(スルホネートまたはアルキルスルホネート)、チオール、アルキルチオールおよびヒドロキシ;1〜20炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル、たとえばメチル、エチル、プロピル、3級ブチル、イソプロピル、イソブチル等;アルコキシ、1〜20炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシ、たとえばメトシキ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、2級ブトキシ、3級ブトキシ、ペンチロキシ、イソペンチロキシ、ヘキシロキシ、ヘプチロキシ、オクチロキシ、ノニロキシおよびデシロキシ;ハロアルキル、これは少なくとも1のハロゲンによって置換された1〜20炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを意味し、たとえばクロロメチル、ブロモメチル、フルオロメチル、ヨードメチル等;から選択された少なくとも1の置換基によって置き換えられたものを言う。
【0023】
本明細書に記載されたエラストマー物質から可塑剤を除く主な方法は、インナーライナーに使用されることになるエラストマー物質の少なくとも表面から、可塑剤を熱に曝露することによってフラッシュ蒸発し、気化し、昇華しおよび/または酸化する方法である。したがって、1の側面において開示されるのは、空気インナーライナー用の連続エラストマー長尺物を調製する方法であって、
可塑剤およびエラストマーを含む連続エラストマー長尺物を用意する工程、該連続エラストマー長尺物をある滞留時間、該可塑剤の引火点の上15以下または10以下または5以下または0℃以下の温度で加熱する工程、および該長尺物を冷却して該連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する熱処理された連続エラストマー長尺物を形成する工程、
を含む方法である。特定の実施形態では、長尺物の少なくとも1の表面が加熱され、より特定の実施形態では全ての表面が加熱される。
【0024】
連続エラストマー「長尺物」とは、任意の望ましい形状および外観、たとえば直線状、平坦状、細長状、管状、テーパー状、長方形またはこれらの組み合わせのものである。「連続」によって意味されるものは、エラストマーを含む物質の長さがその全体にわたって、それが加熱手段上をまたは加熱手段の中を通って搬送され、次に冷却されることができるような形態をしており、すでに加熱された長尺物の部分が冷却されているときに、長尺物の他の部分は加熱されている等々であるけれども、その加熱されまたは冷却される部分が同じ「長尺物」の一部であることである。ある実施形態では、長尺物は、連続チューブ、すなわち「スリーブ」または連続の実質的に平らなシートの形態をしている。連続エラストマー長尺物の例は、幅20インチ(50.8cm)、平均厚さ300μmおよび長さ20〜60フィート(6.1〜18.3m)のシートである。1の実施形態では、長尺物のエラストマーは少なくとも部分的に硬化され、他の実施形態では完全な程度にまで硬化され、完全な程度にまでとは、それが空気タイヤ中に組み込まれたときに硬化されることになる状態にまで硬化されることを意味する。ある実施形態では、連続エラストマー長尺物は10または20または40または50μmから200または250または300または400または500μmまでの範囲内の平均厚さを有する。連続エラストマー長尺物は任意の適当な手段によって形成されることができ、ある実施形態では成型方法または中空成形方法によって、好ましくは中空成形方法によって形成される。
【0025】
ある実施形態では、連続エラストマー長尺物の少なくとも1の表面は、該長尺物中の最も高い分解(または融解)温度の成分の分解(または融)点の上15以下または10以下または5以下または0℃以下の温度まで加熱される。より特定の実施形態では、連続エラストマー長尺物の少なくとも1の表面は、250未満または220未満または200未満または190未満または185未満または180未満または170未満または160℃未満の温度まで加熱される。さらに、より特定の実施形態では、連続エラストマー長尺物の少なくとも1の表面は、60または80または100または120℃から160または170または180または185または190または200または220または250℃までの範囲内に加熱される。望ましくは、これらの温度は±3以内または±2℃以内まで測定され、長尺物を取り囲む、停滞しているあるいは移動している雰囲気の温度に、好ましくは該長尺物の表面の1フィート(30.5cm)以内で対応して調整される。
【0026】
ある実施形態では、本発明の方法は、連続エラストマー長尺物からある量まで可塑剤が除かれるその量によって特徴付けられることができる。1の実施形態では、熱処理された連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルは、連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少なくとも10または少なくとも20または少なくとも30または少なくとも40または少なくとも50または少なくとも60または少なくとも70または少なくとも80または少なくとも90%低い。他の実施形態では、熱処理された連続エラストマー長尺物の空気透過性は、連続エラストマー長尺物の該透過性よりも少なくとも10または少なくとも20または少なくとも40または少なくとも80または少なくとも100または少なくとも200%低い。
【0027】
望ましくは、熱処理された連続エラストマー長尺物および/またはインナーライナーの透過係数(permeation coefficient)は、60未満または50未満または40cc・mm/m・日未満である。他の実施形態では、熱処理された連続エラストマー長尺物および/またはインナーライナーは、1.000未満または0.500未満または0.100未満または0.080cc・mm/m・日・mmHg未満の透過率係数(permeability coefficient)を有する。
【0028】
本明細書に記載された方法はさらに、熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続エラストマー長尺物を含む積層物を切断して空気インナーライナーユニットを形成する工程、および該空気インナーライナーユニットをそれ自体に接合して空気インナーライナーを形成する工程を含むことができ、この場合表面の可塑剤を除く工程は実質的に存在しない。このような工程は可塑剤を除くために加熱された後で実施されると好都合であり得るけれども、ある実施形態では、最初に連続エラストマー長尺物が切断され、次に空気インナーライナーユニットが加熱されて熱処理された空気インナーライナーを形成してもよい。これらの熱処理された空気インナーライナーは次にタイヤ中の要素として使用されることができる。
【0029】
ある実施形態では、積層物は、熱処理された連続エラストマー長尺物と、いくつかの他の物質、たとえば熱可塑性樹脂、エラストマー、接着剤またはこれらの組み合わせと、を含んで形成される。特定の実施形態では、積層物は、熱処理されたエラストマー長尺物と、少なくとも1の層の接着性物質と、から形成される。積層物は、物質のすでに形成されて存在するフィルムから形成されてもよく、または任意の他のプロセスによって、たとえば熱処理された長尺物の上に物質の層を直接形成する押出コーティングプロセスによって形成されてもよい。接着剤は任意の極性官能化ポリマーを含むことができ、特定の実施形態ではスチレンコポリマー、エポキシ化スチレンコポリマー、イソブチレン系コポリマー、エポキシ化イソブチレン系コポリマー、マレイン酸変性スチレンコポリマー、マレイン酸変性イソブチレン系コポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。極性官能基は、それが結合されるポリマーに極性度を付加し、分子部分、たとえば以下のものに限定されることなく、サルフェート、ホスフェート、ヒドロキシド、カルボキシレート、エポキシド、アクリレート、アセテートまたはマレエート等を含む。
【0030】
連続エラストマー長尺物を加熱する工程は、該長尺物の少なくとも1の表面、望ましくは全ての表面に熱を輸送する能力のある任意の望ましい加熱手段、たとえば可塑剤の少なくとも一部をフラッシュ蒸発、昇華、気化および/または酸化除去することによって達成されることができる。ある実施形態では、加熱の間、生成物、典型的には酸化生成物が発生し、これは連続エラストマー長尺物から吸引除去されてさらなる処理または処分をされる。この生成物は加熱物からの発煙または何らかの他のガス状発生物の形態をしており、排気フードまたは他の負圧手段を通して吸引されて、処理され貯蔵されおよび/またはしかるべく処分されることができる。
【0031】
望ましくは、連続エラストマー長尺物は加熱工程の間、酸素に曝露される。特定の実施形態では、連続のまたは実質的に連続の流れのガス、たとえば空気、窒素/酸素混合物または酸化剤を有する他のガスが、連続エラストマー長尺物上をそれが加熱されている間、流される。加熱は、長尺物から可塑剤の所望の一部を除くのに適した滞留時間にわたって行われる。ある実施形態では、滞留時間は少なくとも30秒間または1または2または5または10分間の時間であり、より特定の実施形態では30秒間または1または2または5分間から8または10または15または20または30または60分間までの範囲内である。
【0032】
長尺物を加熱している間、ネッキング、たるみおよび応力に起因する他の変形が回避されることが望ましい。ある実施形態では、連続エラストマー長尺物を加熱している間、5.0未満または4.0未満または3.0未満または2.0未満または1.0未満または0.5g/cm・μm未満の張力が加熱されている連続エラストマー長尺物に維持される。特定の実施形態では、該張力は0.05または0.1または0.2から1.0または2.0または3.0または4.0または5.0g/cm・μmまでの範囲内である。ある他の実施形態では、張力をかけられてまたは張力なしで、連続エラストマー長尺物は、たとえば長尺物の重量を支持するために実質的に水平であるフラットコンベアによって完全に支持されてもよい。特定の実施形態では、長尺物の加熱されている少なくとも一部は、張力下にまたは無張力下に支持される。
【0033】
連続エラストマー長尺物を加熱するのに使用される加熱手段は、任意の形式のものであることができる。1の実施形態では、エラストマー長尺物の加熱される部分は、全体にわたってまたはゾーンに分けられた加熱区画において均一の加熱を提供する炉、望ましくは対流炉、の中を通される。他の特定の実施形態では、カレンダーロールもまた存在しまたはそれが専ら使用され、カレンダーロールは穿孔されて酸素または他の酸化剤が通り抜けることを可能にし、該カレンダーに接するシートの表面が酸素に曝露されることを可能にする。
【0034】
ある実施形態では、加熱後、シートは望ましくは200より下または180より下または160より下または140より下または120より下または100より下または80℃より下まで放置冷却され、そこで、熱処理された連続エラストマー長尺物は輸送、貯蔵のためにロールに巻かれることができ、または同じもしくは異なる加熱手段まで搬送され加熱工程が繰り返されることができる。加熱工程は1段階のみ、または2または3または4またはそれより多くの加熱段階であることができる。特定の実施形態では、連続エラストマー長尺物はロールになっており、これは繰り出されて、連続エラストマー長尺物の繰り出された区画の少なくとも一部が加熱される。
【0035】
特定の実施形態では、連続の実質的に平らなシートはロールの形態をしており、これは繰り出されて該シートの少なくとも1の表面の少なくとも一部がある滞留時間にわたって加熱されるように炉内を通され、最初の連続の実質的に平らなシートの加熱された部分は、次に炉から搬出されて冷却されロールに巻かれる。
【0036】
どのような場合でも、連続エラストマー長尺物を、たとえば成型法または中空成形法または他の手段によってつくる段階からタイヤが形成されるまでのいずれの段階においてもまたは段階と段階との間のいずれの時間においても、望ましい実施形態では連続エラストマー長尺物は溶媒と実質的に接触しない。「実質的に」によって意味されるのは、連続長尺物を引いて炉を通すためのリードにそれを取り付けるために、長尺物の小さい表面をきれいにすること等のような些細な理由以外に溶媒との接触がないことである。溶媒は、可塑剤を溶解する能力のある任意の化合物または組成物、たとえばアセトン、エーテル、水、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、スルフォラン、トルエン、ベンゼン、ジオキサン、クロロホルム、塩化メチレンまたはこれらの組み合わせである。溶媒は、室温における液体に限定されないで、特定の実施形態では室温(20℃)における液体である。
【0037】
本明細書に記載された方法によって、可塑剤の少なくとも一部が、インナーライナーに使用されることになるシート、チューブまたは他の形態のエラストマー組成物から除かれる。たとえば、ある実施形態では、可塑剤は連続エラストマー長尺物中に該連続エラストマー長尺物の1または2または3または4または6重量%から10または15または20または25または30重量%までの範囲内で存在し、他方、熱処理された連続エラストマー長尺物は該熱処理された連続エラストマー長尺物の10未満または8未満または6未満または4未満または2未満または1未満または0.5重量%未満の可塑剤を含む。
【0038】
連続エラストマー長尺物は、スリーブの形態であれシートの形態であれ、少なくとも1のイソブチレン系エラストマーまたはハロゲン化イソブチレン系エラストマーと、可塑剤と、を含む(または、から本質的に成る)。この文脈において、「から本質的に成る」とは、長尺物が唯一のエラストマーとしてのイソブチレン系エラストマーまたはそのハロゲン化変性物と、最終硬化特性を変えない程度までの些少な量のみの他の成分と、を含むことを意味する。ある実施形態では、エラストマーは、本明細書で以下に説明される熱可塑性樹脂とともに55/45〜80/20、好ましくは60/40〜75/25、より好ましくは65/35〜75/25のエラストマーと熱可塑性樹脂との重量比で組成物中に存在する。
【0039】
イソブチレン系エラストマーとは、C4〜C7イソオレフィン由来単位、たとえばイソブチレン由来単位と、少なくとも1の他の重合性単位、たとえばマルチオレフィンと、のランダムコポリマーとして説明される。1の実施形態では、ハロゲン化イソブチレン系コポリマーとは、ブチルタイプのエラストマーまたは分枝状のブチルタイプのエラストマー、とりわけこれらのエラストマーの臭素化変性物である。有用な不飽和イソブチレン系エラストマー、たとえばホモポリマーおよびオレフィンまたはイソオレフィンのコポリマーならびに連続エラストマー長尺物に適した他のタイプのエラストマーは周知であり、これらのうちのいくつかは本明細書に記載されている。
【0040】
イソオレフィンは、1の実施形態では全モノマー混合物の70〜99.5重量%の範囲にあり、他の実施形態では85〜99.5重量%の範囲にある。マルチオレフィン成分はモノマー混合物中に1の実施形態では30〜0.5重量%存在し、他の実施形態では15〜0.5重量%存在する。さらに他の実施形態では、モノマー混合物の8〜0.5重量%がマルチオレフィンである。イソオレフィンは好ましくはC4〜C12化合物であり、その非限定的な例は、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセンおよび4−メチル−1−ペンテンのような化合物である。マルチオレフィンはC4〜C14マルチオレフィン、たとえばイソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−1−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエンおよびピペリレンならびに従来技術で知られた他のモノマーである。他の重合性モノマー、たとえばスチレン、置換スチレンおよびジクロロスチレンもブチルエラストマーにおけるホモ重合または共重合に適している。
【0041】
イソブチレン系エラストマーの例は、イソブチレンモノマーとイソプレンモノマーとを含む、いわゆるブチルゴムまたはブチルエラストマーである。ハロゲン化ブチルエラストマーはブチルエラストマーのハロゲン化によって製造される。ハロゲン化は任意の手段によって実施されることができ、本発明ではハロゲン化プロセスによって限定されない。1の実施形態では、ブチルエラストマーは、ヘキサン希釈剤中4〜60℃で臭素(Br)または塩素(Cl)をハロゲン化剤として使用してハロゲン化される。ハロゲン化ブチルエラストマーの商業的実施形態は、以下のものに限定されることなく、ブロモブチル(Bromobutyl)2222およびブロモブチル2255(ExxonMobil Chemical社)を含む。
【0042】
ハロゲン化ブチルエラストマーの他の有用な実施形態は、ハロゲン化された、分枝鎖または「星状分枝」鎖のブチルエラストマーである。1の実施形態では、星状分枝ブチルエラストマー(「SBB」)は、ブチルエラストマーとポリジエンまたはブロックコポリマーとを含む組成物である。ポリジエン、ブロックコポリマーまたは分枝剤(以後、「ポリジエン」と呼ぶ。)は典型的にはカチオン反応性であり、ブチルもしくはハロゲン化ブチルエラストマーの重合の間、存在し、またはブチルエラストマーとブレンドされてSBBを形成することができる。分枝剤またはポリジエンは任意の好適な分枝剤であることができる。好ましくは、本明細書で使用される分枝または「星状分枝」ブチルエラストマーはハロゲン化される。1の実施形態では、ハロゲン化星状分枝ブチルエラストマー(「HSBB」)は、ハロゲン化あるいは非ハロゲン化ブチルエラストマーと、ハロゲン化あるいは非ハロゲン化ポリジエンまたはブロックコポリマーと、を含む。ポリジエン/ブロックコポリマーまたは分枝剤(以後、「ポリジエン」と呼ぶ。)は典型的にはカチオン反応性であり、ブチルもしくはハロゲン化ブチルエラストマーの重合の間、存在し、またはブチルもしくはハロゲン化ブチルエラストマーとブレンドされてHSBBを形成することができる。HSBBの商業的実施形態はブロモブチル6222(ExxonMobil Chemical社)である。
【0043】
イソブチレン系エラストマーは官能化インターポリマーも含むことができ、該官能化インターポリマーでは、スチレンモノマー単位上に存在するアルキル置換基のうちの少なくともいくつかがベンジルハロゲンを含み、たとえば臭素化スチレン基もしくは臭素化アルキルスチレン基であり、または以下でさらに説明される他の官能基を含む。イソオレフィンコポリマー中の望ましいスチレンモノマーは、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、インデンおよびインデン誘導体、ならびにこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、該エラストマーはスチレンインターポリマーである。該インターポリマーは、C4〜C7イソモノオレフィン、たとえばイソブチレンと、パラアルキルスチレンコモノマー、たとえば少なくとも80重量%、より選択的には少なくとも90重量%のパラ異性体を含むパラメチルスチレンコモノマーと、のランダムエラストマーコポリマーであることができ、かつ、任意的に官能化インターポリマーも含み、該官能化インターポリマーでは、スチレンモノマー単位中に存在するアルキル置換基のうちの少なくとも1以上がベンジルハロゲンまたは何らかの他の官能基を含む。これらのものは、官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)(「FIBS」)と呼ばれることができ、本明細書に記載された官能基を有する。
【0044】
他の実施形態では、インターポリマーは、エチレンまたはC3〜C6アルファオレフィンと、パラアルキルスチレンコモノマー、たとえば少なくとも80重量%、選択的には少なくとも90重量%のパラ異性体を含むパラメチルスチレンコモノマーと、のランダムエラストマーコポリマーであることができ、かつ、任意的に官能化インターポリマーも含み、該官能化インターポリマーでは、スチレンモノマー単位中に存在するアルキル置換基のうちの少なくとも1以上がベンジルハロゲンまたは何らかの他の官能基を含む。典型的な物質は、ポリマー鎖(1)および(2)に沿ってランダムに間隔を空けて配置された以下のモノマー単位を含むインターポリマーとして特徴付けられることができる。
【化1】

【化2】

これらの式において、RおよびRは独立に、水素、低級アルキル、たとえばC〜Cアルキルまたは1級もしくは2級アルキル塩化物基であり、Xは官能基、たとえばハロゲンである。特定の実施形態では、RおよびRはそれぞれ水素である。ある実施形態では、官能化構造体(2)の量は0.1または0.4から1または5モル%までである。
【0045】
官能基Xは、ハロゲン、またはベンジルハロゲンを他の基、たとえばカルボン酸、カルボキシ塩、カルボキシエステル、アミドおよびイミド、ヒドロキシ、アルコキシド、フェノキシド、チオレート、チオエーテル、キサンテート、シアナイド、シアネート、アミノもしくはこれらの混合物を用いて求核置換することによって取り込まれることができる何らかの他の官能基であることができる。これらの官能化イソモノオレフィンコポリマー、その製造方法、官能化方法および硬化反応は、米国特許第5,162,445号に、より詳細に開示されており、その内容は参照によって本明細書に取り込まれる。他の実施形態では、該官能基は、それが望ましい組成物のマトリクスポリマー中に存在する官能基、たとえば酸、アミノまたはヒドロキシ官能基と、これらのポリマー成分が高温度で混合されるときに、反応しまたは極性結合を形成することができるように選択される。特定の実施形態では、エラストマーはハロゲン化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)であり、より特定の実施形態では、臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)(「BIMS」)である。
【0046】
ある実施形態では、官能化された物質は、イソブチレンとパラメチルスチレンとのエラストマーランダムインターポリマーであり、0.5〜20モル%のパラメチルスチレンを含み、ベンジル環上に存在するメチル置換基の60もしくは50もしくは20もしくは10モル%までが臭素または塩素原子、たとえば臭素原子を含み(パラ(ブロモメチルスチレン))、またこのほかにこれらの、酸またはエステル官能化変性物も含有する。別の言い方をすれば、官能化されたパラメチルスチレンに由来する単位は、エラストマーの4または5または6から9または11または13または15または17重量%までの範囲内を構成する。
【0047】
ある実施形態では、連続エラストマー長尺物はイソブチレン系エラストマーと熱可塑性樹脂とを含み、またはこれらから本質的に成り、かつ、特に、少なくとも部分的に硬化された組成物である。該エラストマーと熱可塑性樹脂との組み合わせは、しばしば「熱可塑性エラストマー組成物」と呼ばれる。特定の実施形態では、該エラストマーと熱可塑性樹脂とは動的加硫され、DVAをもたらす。この文脈で使用される「から本質的に成る」とは、該組成物が特許請求されたエラストマーおよび特許請求された熱可塑性樹脂のみと、該組成物の硬化特性に影響を及ぼさない僅少量の他の添加剤のみと、を含むことを意味する。
【0048】
有用な熱可塑性樹脂またはエンジニアリング樹脂(これらの用語は互換的に使用される。)は、500MPa超のヤング率および好ましくは170℃〜270℃の融点を有する任意の熱可塑性ポリマー、コポリマーまたはこれらの混合物であると定義され、以下のものに限定されることなく、以下のものの1以上を包含する。すなわち、a)ポリアミド樹脂:ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66コポリマー(N6/66)、ナイロン6/66/610(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T(N6T)、ナイロン6/6Tコポリマー、ナイロン66/PPコポリマー、ナイロン66/PPSコポリマー;b)ポリエステル樹脂:ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEIコポリマー、ポリアクリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジアシド/ポリブチレートテレフタレートコポリマーおよび他の芳香族ポリエステル;c)ポリニトリル樹脂:ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレンコポリマー(AS)、メタクリロニトリル−スチレンコポリマー、メタクリロニトリル−スチレン−ブタジエンコポリマー;d)ポリメタクリレート樹脂:ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート;e)ポリビニル樹脂:たとえば、酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレンコポリマー(EVOA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニル/ポリビニリデンコポリマー、ポリ塩化ビニリデン/メタクリレートコポリマー;f)セルロ−ス樹脂:酢酸セルロ−ス、セルロ−スアセテートブチレート;g)フッ素樹脂:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレンコポリマー(ETFE);h)芳香族ポリイミド;i)ポリスルホン;j)ポリアセタール;k)ポリラクチド;l)ポリフェニレンオキシドおよびポリフェニレンスルフィド;m)スチレン−無水マレイン酸;n)芳香族ポリケトン;ならびにo)a)〜n)のいずれかのおよび全ての混合物、さらにこのほかにa)〜n)のそれぞれ内に例示されたまたは典型とされたエンジニアリング樹脂のいずれかの混合物。本開示発明の目的のためには、エンジニアリング樹脂のこの定義は、オレフィンのポリマー、たとえばポリエチレンおよびポリプロピレンを除いている。好ましいエンジニアリング樹脂は複数のポリアミド樹脂およびこれらの混合物を含み、特に好ましい樹脂はナイロン6、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612およびこれらのブレンドを含む。
【0049】
他のエラストマー(または「二次エラストマー」)がハロゲン化イソブチレン系エラストマーと組み合わされて使用されることができる。一般に、連続エラストマー長尺物に有用な二次エラストマーは、たとえば天然エラストマー(NR)、高ジエンエラストマー、イソプレンエラストマー(IR)、エポキシ化天然エラストマー、スチレンブタジエンエラストマー(SBR)、ポリブタジエンエラストマー(BR)(高シスBRおよび低シスBRを含む。)、ニトリルブタジエンエラストマー(NBR)、ハロゲン化NBR、ハロゲン化SBR、オレフィンエラストマー、たとえばエチレンプロピレンエラストマー(EPDMおよびEPMの双方を含む。)、マレイン酸変性エチレンプロピレンエラストマー(M−EPM)、ブチルエラストマー(IIR)、イソブチレンおよび芳香族ビニルまたはジエンモノマーコポリマー、アクリルエラストマー(ACM)、アイオノマー、他のハロゲン含有エラストマー、たとえばクロロプレンエラストマー(CR)、ヒドリンエラストマー(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)、シリコーンエラストマー(たとえば、メチルビニルシリコーンエラストマー、ジメチルシリコーンエラストマー、メチルフェニルビニルシリコーンエラストマー)、イオウ含有エラストマー(たとえば、ポリスルフィドエラストマー)、フルオロエラストマー(たとえば、フッ化ビニリデンエラストマー、フッ素含有ビニルエーテル系エラストマー、テトラフルオロエチレン−プロピレンエラストマー、フッ素含有シリコーンエラストマー、フッ素含有ホスファゲンエラストマー)、熱可塑性エラストマー(たとえば、スチレン含有エラストマー、オレフィンエラストマー、エステルエラストマー、ウレタンエラストマーまたはポリアミドエラストマー)およびこれらの混合物を含む。
【0050】
二次エラストマーは、上述のように熱可塑性マトリクス中に小粒子の形で分散しており、イソブチレン系エラストマーまたはハロゲン化イソブチレン系エラストマーに関連して説明したのと同じように任意的に、部分的に、実質的にもしくは完全に、硬化、架橋または加硫されることができる。かかる架橋は、二次エラストマーをポリアミドマトリクス中に分散する過程においてハロゲン化エラストマー成分に適用したのと同じ動的加硫方法を使用することによって実施されることができる。
【0051】
他の相容化剤は、熱可塑性樹脂およびエラストマーポリマーの双方もしくは一方の構造を有するようなコポリマー、または該熱可塑性樹脂もしくはエラストマーポリマーと反応する能力のあるエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミン基、マレエート基、オキサゾリン基もしくはヒドロキシ基等を有するコポリマーの構造を有するようなコポリマー、を含む。二次エラストマーは、混合されることになる熱可塑性樹脂ポリマーとエラストマーポリマーとのタイプに基づいて選択されることができる。有用な二次エラストマーは、無水マレイン酸グラフトエラストマー、たとえば無水マレイン酸グラフトの、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンエラストマー)、SEBS(スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン)等、およびマレイン酸変性のエチレンコポリマーエラストマー、たとえばマレイン酸変性の、エチレン−プロピレン(EPM)、エチレン−ブテン、エチレン−ヘキセン、エチレン−オクテン、エチレン−デセン、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−アクリル酸メチル、エチレン−アクリル酸エチル、エチレン−アクリル酸、のコポリマーエラストマー等、ならびにこれらの混合物から成る群から選択される。また、潜在的に有用なエラストマーはEPDM/スチレン、EPDM/アクリロニトリルグラフトコポリマーおよびこれらのマレイン酸変性体;スチレン/マレイン酸コポリマー;反応性フェノキシ熱可塑性樹脂;およびこれらの混合物を含む。
【0052】
(官能化物であれ非官能化物であれ)二次エラストマーが存在するときは、その量は典型的には20重量%未満、好ましくは10重量%未満、一般に0.5重量%〜20重量%、たとえば5重量%〜15重量%、たとえば7.5重量%〜12.5重量%である。
【0053】
本明細書に記載された組成物は、1以上のフィラー成分、たとえば炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカおよびシリケート、タルク、二酸化チタン、デンプンおよび他の有機フィラー、たとえば木粉ならびにカーボンブラックを有することができる。好適なフィラー物質はカーボンブラック、たとえばチャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、変性カーボンブラック、たとえばシリカで処理されたまたはシリカで被覆されたカーボンブラック等を含む。強化用グレードのカーボンブラックが好まれる。フィラーは他の強化用または非強化用物質、たとえばシリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン等も含む。フィラーは、組成物中に存在するエラストマーの0〜30重量%のレベルで存在することができる。
【0054】
層剥離され、層間挿入されまたは分散されたクレーも組成物中に存在することができる。これらのクレーは「ナノクレー」とも呼ばれ、周知である。本開示発明の目的に適した膨潤性層状クレー物質は、天然または合成フィロシリケート、特にスメクタイトクレー、たとえばモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、フォルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、マガダイト、ケニヤイト、スティブンサイト等、さらにこのほかにバーミキュライト、ハロイサイト、アルミネートオキシド、ヒドロタルサイト等を含む。これらの層状クレーは一般に、典型的には1の実施形態では4〜20Å、他の実施形態では8〜12Åの厚さを有する互いに結合された複数のシリケート薄層を含有しかつ該層間面に存在する交換可能なカチオン、たとえばNa、Ca+2、KまたはMg+2を含有する、粒子を含む。
【0055】
層状クレーは、層状シリケートの層間面に存在するカチオンとイオン交換反応をする能力のある有機分子(膨潤剤)を用いた処理によって層間挿入され、また層剥離されることができる。好適な膨潤剤は、カチオン界面活性剤、たとえば脂肪族、芳香族もしくはアリール脂肪族アミン、ホスフィンおよびスルフィドの、アンモニウム、アルキルアミンもしくはアルキルアンモニウム(1級、2級、3級および4級)、ホスホニウムまたはスルホニウム誘導体を含む。
【0056】
層剥離され、層間挿入されまたは分散されたクレーが、本明細書に記載された組成物中に取り込まれて存在するときは、その量は該組成物の機械特性またはバリア特性、たとえば引張強さまたは空気/酸素透過性の改善を発現するのに十分な量である。その量は典型的には、組成物のポリマー含有量当たり、1の実施形態では0.5〜15重量%、他の実施形態では1〜10重量%、さらに他の実施形態では1〜5重量%であることができる。
【0057】
本明細書で使用される「プロセス油」の語は、石油由来のプロセス油および合成可塑剤の双方を意味する。プロセス油または可塑剤油は、空気バリア組成物中に存在することができる。かかる油は、層の調製の際に、組成物の加工処理、たとえば混合、カレンダ加工等を改善するために主に使用される。好適な可塑剤油、特に(1または複数の)エラストマー成分用の可塑剤油は、脂肪酸エステルまたは炭化水素可塑剤油、たとえばパラフィンもしくはナフテン石油系油を含む。標準的な、非DVAの、エンジニアリング樹脂非含有のインナーライナー組成物に使用される好ましい可塑剤油は、パラフィン石油系油であり、このようなインナーライナーに使用される好適な炭化水素可塑剤油は、以下の一般的な特性を有する油を含む。
【0058】
一般に、プロセス油はパラフィン油、芳香族油、ナフテン油およびポリブテン油から選択されることができる。ポリブテンプロセス油は、3〜8炭素原子、より好ましくは4〜6炭素原子を有するオレフィン由来単位の低分子量(15,000未満のMn)ホモポリマーまたはコポリマーである。他の実施形態では、ポリブテン油はC4ラフィネートのホモポリマーまたはコポリマーである。ゴムプロセス油も、パラフィン、ナフテンまたは芳香族の炭化水素質プロセス油のどの部類に属するかに応じてASTMの指定を受けている。使用されるプロセス油のタイプはエラストマー成分のタイプに連動して慣用されるものになるであろうし、当業者であるエラストマー化学技術者は、特定の用途における特定のエラストマーにどのタイプの油を使用すべきかを認識するであろう。熱可塑性エラストマー組成物の場合、該油は全組成物の0または0.5または1重量%から20または40重量%までのレベルで存在することができ、好ましくは該組成物の不透過性を最大限にするために、該油は取り込まれない。
【0059】
混合および/または加工処理の間のエラストマー成分とエンジニアリング樹脂との粘度差を最小限にすることは、均一な混合および微細なブレンド物モルホロジー(形態)、言い換えれば、加硫されたエラストマーを小さい、分散された粒子にすること、を高め、このことは良好なブレンド物機械特性および所望の透過特性も有意に高める。しかし、ある種のエラストマーに特有の流動活性化およびせん断流動化の結果として、高いせん断速度および温度におけるFIMSの比較的低い粘度を考慮すると、ナイロン成分の粘度が該エラストマーの粘度と同程度になるように選択されるとすると、さらなる粘度の低減のためには、比較的低い粘度を有する低分子量グレードのナイロン、または可塑剤と組み合わされたナイロン、またはこれら両手法の組み合わせ、のいずれかを使用することが必要である。
【0060】
ある実施形態では、可塑剤はイソブチレン系エラストマーと熱可塑性樹脂とのブレンドに一緒にされる。好適な可塑剤は、様々な商標下に販売されているものを含み、たとえばサンマイド(Sunmide)(商標)(三和化学工業社)およびUni−Rez(商標)(Arizona Chemical社)がある。このような物質は典型的には20,000ダルトン未満、たとえば1,000〜18,000ダルトン、好ましくは3,000〜17,000ダルトンの分子量を有し、250℃超の引火点、−20℃未満の脆化温度および約180℃未満の軟化温度を有する。
【0061】
さらに、有用な低分子量アミドは、15パスカル・秒(Pa・s)未満、あるいは0.05〜12Pa・s、好ましくは0.2〜10Pa・sの200℃における粘度を示す。上記の粘度の全範囲を満たす好適な製品が商業的に入手可能であり、たとえばサンマイド製品は190℃で測定された0.25Pa・s〜0.60Pa・s、200℃で測定された0.4Pa・s〜15Pa・sの範囲にある粘度を示し、さらにまたUni−Rezグレード2611〜2722もあり、具体的にはたとえば、全て200℃で測定されてグレード2614は1.1の粘度を有し、グレード2633は4.3の粘度を有し、グレード2653は7.5の粘度を有する。
【0062】
典型的な可塑剤は、フタレート可塑剤、アジペート可塑剤、ホスフェート可塑剤、グリコレート可塑剤、スルホンアミド可塑剤、トリメリテート可塑剤およびポリマー可塑剤、特に低分子量ナイロンから成る群から選択されることができる。好まれる可塑剤はフタレート可塑剤、アジペート可塑剤およびスルホンアミド可塑剤から成る群から選択される。好適な可塑剤の例は、ジブチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジメチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジフェニルフタレート、ジウンデシルフタレート、混合ジアルキルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ベンジルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、混合ジアルキルアジペート、トリブトキシエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレートおよび混合アルキルトリメリテートを含む。スルホンアミド可塑剤、たとえばアルキルまたはアリールスルホンアミドは、ポリアミド用の好ましい部類の可塑剤を構成し、たとえばN−ブチルベンジルスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、o,p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−o,p−トルエンスルホンアミドおよびN−エチル−o−トルエンスルホンアミドがある。他の実施形態では、プロセス油、たとえばナフテン、芳香族またはパラフィンのエクステンダー油が1〜5phrで存在してもよい。さらに他の実施形態では、ナフテン油、脂肪族油、パラフィン油および他の芳香族油は組成物中に実質的に存在しない。「実質的に存在しない」とは、ナフテン油、脂肪族油、パラフィン油、鉱物油および他の芳香族油が、組成物中に仮に存在するとして2phr以下の程度まで存在することができることを意味する。いずれの場合でも、連続エラストマー長尺物中にエラストマーとともに、可塑剤は、それがブレンド混入される組成物の、または該連続エラストマー長尺物の0.5または1または2または3または4または5から10または15または20重量%までの範囲内で存在することができる。
【0063】
本明細書で言及されるエラストマーとの関連では「硬化され」、「加硫され」または「架橋され」の用語は、たとえば鎖の延長、もしくはポリマーまたはエラストマーを含むポリマー鎖間の架橋の間に、かかる過程を経る該エラストマーが、タイヤが使用に供されるときに該硬化反応から得られる必要な機能的特性を発揮する程度にまで結合を形成することを含む化学反応のことを言う。一般に、本明細書に記載された連続エラストマー長尺物を製造するのに使用されるエラストマー組成物は、可塑剤を除くための加熱をされる前におよびタイヤに組み立てられる前に、完全にではないにせよ、少なくとも部分的に架橋される。架橋または加硫は、硬化剤および/もしくは促進剤を添加することによって達成され、かかる薬剤の混合物全体は典型的には硬化剤「系」と呼ばれる。硬化剤は、エラストマーの硬化を促進しまたはそれに影響を及ぼす上記の成分を含み、一般に金属、金属酸化物、促進剤、イオウ、過酸化物および当該分野でよく見られる他の薬剤を含む。架橋剤または硬化剤は、たとえばイオウ、酸化亜鉛および脂肪酸ならびにこれらの混合物のうちの少なくとも1を含む。過酸化物含有硬化剤系も使用されることができる。一般に、ポリマー組成物は、硬化剤、たとえばイオウ、金属酸化物(すなわち、酸化亜鉛)、有機金属化合物、ラジカル開始剤等を添加し、該組成物または混合物を加熱することによって架橋されることができる。
【0064】
一般に、「動的加硫」の語は、熱可塑性樹脂またはエンジニアリング樹脂と少なくとも1の加硫可能エラストマーとが、該1もしくは複数のエラストマー用の硬化剤もしくは硬化剤系の存在下かつ高せん断および高温度の条件下に混合される加硫工程を表すために使用される。その結果、エラストマーは架橋され、同時に粒子として、好ましくはミクロゲルの形態で、連続マトリクスを形成する樹脂中に分散される。得られた組成物は「動的加硫アロイ」またはDVAとして従来技術で知られている。典型的には、動的加硫は、ロールミル、Banbury(商標)ミキサー、連続ミキサー、ニーダーまたは混合押出機(たとえば、2軸押出機)のような装置を使用して、エラストマーの硬化温度以上の温度および樹脂の融解温度以上の温度で添加成分を混合することによって実施される。
【0065】
1または複数の硬化剤は、少なくとも1の促進剤の使用とともにまたはそれを使用せずに、1または複数のエラストマー用の硬化剤「系」と、当該分野でしばしば呼ばれる。硬化剤「系」が使用される理由は、典型的には2以上の硬化剤が、有利な効果を出すように、特に高ジエンエラストマーと比較的低反応性のエラストマーとの混合物が使用されるときに有利な効果を出すように採用されるからである。さらにその上、硬化剤系の特性は、所望の連続エラストマー長尺物の状態が満たされることができるように、混合プロセスに適応させることができる。たとえば、組成物中に存在する特定の1または複数のエラストマーの硬化応答性を決定するために、該1または複数のエラストマーおよび硬化剤系は、当業者に知られた手段によって、たとえば2本ロールミル、Banburyミキサーまたは混合押出機上で一緒にされることができる。該混合物のサンプルは、「促進された」コンパウンドとしばしば呼ばれ、静的条件下に、たとえばプレス内の熱および圧力に付される金型を使用して薄いシートの形態で硬化されることができる。促進された薄いシートのサンプルは、漸増的に、より長い時間および/またはより高い温度で硬化され、次に応力ひずみ特性および/または架橋密度を試験されて、硬化の状態が決定される(米国材料試験協会の規格ASTM D412に詳細に記載されている。)。
【0066】
あるいは、促進されたコンパウンドは、振動ディスク硬化レオメータ試験を使用して硬化状態を試験されることができる(米国材料試験協会の規格ASTM D2084に詳細に記載されている。)。その後に、組成物中に存在する加硫可能エラストマーが十分に硬化されて、たとえばタイヤ用のインナーライナーのような空気または流体保持バリア物の一部となる熱可塑性組成物の所望の特性を達成するように、動的加硫工程の時間および温度の全体が調整されることができる。
【0067】
加硫可能エラストマー、たとえばハロゲン化イソブチレンエラストマー、たとえばFIMSまたはBIMS(またはかかるエラストマーの混合物)は、それが硬化剤系、硬化時間および硬化温度に基づいて可能である最大硬化の状態の少なくとも50%(「部分的」硬化)まで硬化され、典型的には、かかるエラストマーの硬化状態が最大硬化の50%を超えることは当業者に正しく理解されるだろう。第二のエラストマーも加硫可能エラストマーを含むことができるので、かかる第二のエラストマーが、たとえば本明細書に記載された動的加硫技術に従って加硫される場合には、それもまた典型的には、それの硬化剤または硬化剤系ならびにそれが処理される時間および温度に基づいてそれが可能である硬化の最大状態の少なくとも50%を超えるまで硬化される。これらの2のエラストマーは区別されて加硫されてもよい。いずれの場合でも、硬化状態が90未満または80未満または70未満または60未満または50%未満であるならば、エラストマーは部分的にのみ硬化されている。あるいは、本明細書で説明したように、かかる第二のエラストマーは、組成物が供される用途に望まれる特性を提供するのに必要なだけの小さい粒子サイズに十分に分散されている限り、それの硬化状態が限界にならないように、硬化剤の使用とともにまたは使用せずに、ポリアミド樹脂とグラフトされ、結合されおよび/または関わり合いを持つようにされることもできる。
【0068】
硬化剤系は、適当な濃度でエラストマー成分中に分散されることができ、該エラストマー成分は任意的に、1以上のフィラー、エクステンダー油および/または可塑剤を含有しており、ここで上記分散は、たとえばエラストマーと硬化剤系成分とを、エラストマー含有組成物を熱可塑性樹脂に添加する前の工程段階においてエラストマー業界でこのような目的のために普通に使用される任意の混合装置、たとえば2本ロールエラストマーミル、Banburyミキサー、混合押出機等を使用して混合することによって行われる。かかる混合は、普通、エラストマー組成物を「促進する」と呼ばれる。1の実施形態では、少なくとも1の硬化剤は典型的には0.1〜15phr、あるいは0.5〜10phrで存在する。硬化剤および促進剤は従来技術で周知のように一緒にされることができる。
【0069】
好ましいポリマー成分は、1または複数の加硫可能成分としてハロゲン化イソブチレン含有コポリマー、たとえば塩素化ブチルまたは臭素化ブチルのようなハロゲン化ブチルおよび塩素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)(BIMSコポリマー)と、熱可塑性ポリマー、たとえばナイロンまたは種々のナイロンポリマーのブレンドと、を含む。本明細書に記載された動的加硫組成物は、1または複数のハロゲン化エラストマー成分を、エンジニアリング樹脂の連続マトリクス中に分散され部分的にまたは完全に硬化された小粒子の形態で、含むことが特に好ましい。
【0070】
単軸押出機の出口にT−シートダイ、ストレートもしくはクロスヘッド構造のチューブダイ、インフレーション成形円筒ダイ等を使用して、得られた熱可塑性エラストマー組成物をシート、フィルムもしくはチューブ(連続エラストマー長尺物)に成型もしくは中空成形することによって、またはカレンダ加工することによって、該組成物を空気タイヤの空気透過防止層、たとえばインナーライナーとして、およびホースの成分もしくは層として等に使用することが可能となる。本明細書に記載された熱可塑性エラストマー組成物は、樹脂用に典型的に用いられる単軸押出機を使用することによってストランドにいったん巻き取られ、ペレット化され、次に成型されてもよい。
【0071】
かくして得られたシートまたはチューブに成型された物品は、空気タイヤのインナーライナー層または低ガス透過性ホースのホースチューブもしくはホースカバーとして有効に使用されることができる。さらにその上、該組成物の低透過性の特徴はガス以外の流体、たとえば水、油圧油、ブレーキ油、熱伝導流体等のような液体に、該流体と直接接触する層が、取り扱われる流体に対して適した耐性を有するならば、使用するのに適している。
実施例
【0072】
第一組の実験は以下の物質および方法を使用して実施され、そのデータは表1および図3にまとめられている。この実施例に使用されたエラストマー物質の連続エラストマー長尺物は、63phrのナイロン6/66(UBE 5033B)および100phrの臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)(該コポリマー中に0.75モル%のBr、5重量%のパラメチルスチレン)とともに27phrのブチルベンジルスルホンアミド(「BBSA」)および10phrのマレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート、2.5phrのSG2000タルク、それぞれ1phr未満のIrganox(商標)1098、Tinuvin(商標)622LD、ヨウ化銅、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸を含むDVAの、連続の実質的に平らなシートであった。
【0073】
60フィート(18.3m)の炉が使用され180℃に保たれ、連続シートの幅は20インチ(510mm)であり、平均厚さは217μmであった。より詳細には、以下の方法がDVAの連続シートを加熱するために使用された。すなわち
1.炉の設定点を180℃に調整する。炉は60フィート(18.3m)長の頂部および底部を有する熱風フローティング炉である。したがって、6つの設定点がある。
2.リーダーを使用して、アイドラー、炉を通ってそれから巻き取り工程部までラインを通す。
3.DVAのロールを、繰り出し工程部に取り付ける。
4.DVAシート表面の端部をアセトンで拭き、リーダーをDVAシートに接合しステープル留めする。
5.DVAシートを表1に示された速度で走らせる。
6.DVAシートを1ポンド/インチ(0.179kg/cm)未満の張力で巻き取る。
7.巻き取り工程部でロールの表面からスラブサンプルを切り取る。
8.結果が表1に記録された。
【表1】

【0074】
残存BBSAの測定は共焦点ラマン顕微鏡を用いて行われた。全てのスペクトルは785nmレーザーおよび40倍、開口数0.6、Plan Fluorの空気(媒質)対物レンズを用いて得られた。フィルムサンプルは対物レンズの下に置かれ、その表面に焦点が合うとレーザーの干渉パターンが最小のスポットサイズをつくった。スペクトル取得のための見かけ焦点は表面の下約10μmに下げられた。それぞれが横方向に1ミクロンの間隔を空けられて、100個のスペクトルが得られた。宇宙線がデータから除かれ得るように、各記録されたスペクトルごとに2つの5秒間取得が採取され、平均化された。収集後、オフセットを除きベースラインを平らにするために、二次多項式項が各スペクトルから差し引かれた。データをぼかす、あるレベルの蛍光を含むスペクトルは平均値に含めなかった。上記の4つの成分のいずれも有意の蛍光を示さないので、これは有効な措置であると推定される。臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)、ナイロン6/66、AR201(マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート)およびBBSAの純粋成分のスペクトルも同様の条件下で得られ、この場合、より短時間の取得で1個のスペクトルのみが得られ、また該物質中への深さは測定に関係なかった。Witec(商標)Projectソフトウェア内の線形最小二乗法プログラムが使用されて、純粋成分のスペクトルを100個のフィルムスペクトルのそれぞれにフィッティングさせた(各フィルムスペクトルが独立にフィッティングされた)。最小二乗法分析に使用されたスペクトルの部分は680〜1800cm−1の間であった。該ソフトウェアの最小二乗法分析からの出力は、ソフトウェアからの4つの出力値を合計し各個別の値を該合計値で割ることによって、パーセント濃度に変換された。結果は一組の4データの出力であり、それぞれが100個のデータ点のそれぞれにおける特定の成分のパーセント濃度である。これらの100個のデータ点は平均化され、その結果が報告された。
【0075】
第二組の実験が、上記と同じ組成を有する連続エラストマー長尺物を使用して実施され、図1に示された炉を通して行われた。3つのサンプル、すなわちサンプルA、BおよびCが以下の条件下に順番に通され、結果が表2にまとめられ、また「対照」とは熱処理前のフィルムである。すなわち
条件1
●サンプルが3.5インチ(8.89cm)丸ダイを使用して160℃で通されたフィルムから打ち抜かれた。
●サンプル1のネックイン(5mm)は非常に小さかった。
●約3〜4%のBBSAがフィルム中に残存していた。
●フィルムはいくらかの自己粘着性を有する。
条件2
●温度を180℃まで上げる。
●張力をわずかに下げる。
●BBSAは約7%のみである。
●フィルムBはフィルムAよりも暗色で強さが大きいようである。
条件3
●4fpm(1.22m/分)とした以外は条件2と同じである。
【表2】

【表2−2】

【0076】
サンプルA、BおよびCの様々な特性が対照と比較して測定され、表3および4にまとめられている。
【表3】

【表4】

【0077】
DVAの物理的特性を測定するために、可能な場合には標準ASTM試験法が使用された(表1参照)。応力/ひずみ特性(引張強さ、破断伸び、弾性係数値、破断エネルギー)が室温でInstron(商標)4204を使用して測定された。引張測定は環境温度で幅0.16インチ(0.41cm)および(2のタブ間の)長さ0.75インチ(1.91cm)の(ドッグボーン形状の)試料について行われた。試料の厚さは変えられ、Mahr Federal社の隙間ゲージによって手作業で測定された。試料は20インチ/分(51cm/分)のクロスヘッド速度で引っ張られ、応力/ひずみデータが記録された。少なくとも3つの試料の平均応力/ひずみ値が報告される。ショアA硬度は室温でZwickデュロメーターを使用することによって15秒間の圧入後に測定された。LCR粘度はDynisco(商標)キャピラリーレオメーターを用いて30/1のL/D(長さ/直径)、220℃、1200秒−1において測定された。融点は示差走査熱量計によって10℃/分で測定された。
【0078】
透過性試験は以下の記載に従って進められた。全てのサンプルは徐冷圧縮成型によって欠陥のないパッドにされた。圧縮・硬化プレスがエラストマーサンプルのために使用された。Arborプレスを使用して圧縮成型されたパッドの典型的な厚さは約0.38mmであり、次に透過性試験用に、成型されたパッドから直径2インチ(5.08cm)のディスクが打ち抜かれた。これらのディスクは測定の前に真空オーブン中60℃で一晩、条件調整された。酸素透過性試験はMocon OX−TRAN 2/61透過性試験機を用いて40℃でJournal of Polymer Science:Part A−2、467(1970)中のR.A.Pasternakらの原理の下に行われた。このようにして調製されたディスクがテンプレート上に取り付けられ真空グリースでシールされた。10mL/分の酸素の定常流がディスクの一方の側に維持され、他方、10mL/分の窒素の定常流がディスクの反対側に維持された。窒素側の酸素センサーを使用して、窒素側の酸素濃度の経時増加が監視されることができた。一定量の酸素がディスクを透過するのに要する時間または窒素側の酸素濃度が一定値に達するのに要する時間が記録され、酸素ガス透過性を決めるのに使用された。
【0079】
ここまで、エラストマー長尺物およびそれを取り扱う方法とともに空気インナーライナーおよびタイヤを形成する方法を記載してきたが、番号を付けられた実施形態が以下に記載される。すなわち
1. 空気インナーライナー用の連続エラストマー長尺物を調製する方法であって、
可塑剤およびエラストマーを含む連続エラストマー長尺物を用意する工程、
該連続エラストマー長尺物をある滞留時間、該可塑剤の引火点の上15以下または10以下または5以下または0℃以下の温度で加熱する工程、および
該長尺物を冷却して該連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する熱処理された連続エラストマー長尺物を形成する工程
を含む、方法。
2. 実施形態1に記載の方法を含む空気インナーライナーをつくる方法であって、
熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続長尺物を含む積層物を切断して空気インナーライナーユニットを形成する工程、および
該空気インナーライナーユニットをそれ自体に接合して空気インナーライナーを形成する工程
をさらに含み、表面の可塑剤を除く工程が実質的に存在しない、方法。
3. 熱処理された連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルが、連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少なくとも10または少なくとも20または少なくとも30または少なくとも40または少なくとも50または少なくとも60または少なくとも70または少なくとも80または少なくとも90%低い、実施形態1または2に記載の方法。
4. 実施形態1に記載の方法を含む空気タイヤをつくる方法であって、
熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続長尺物を含む積層物を切断し、該長尺物をスリーブの形態にして、空気インナーライナースリーブを形成する工程、および該空気インナーライナースリーブをタイヤ中に組み込む工程
をさらに含む、方法。
5. 空気インナーライナー用の連続エラストマー長尺物を調製する方法であって、
可塑剤およびエラストマーを含む連続エラストマー長尺物を用意する工程、
該連続エラストマー長尺物を切断して空気インナーライナーユニットを形成する工程、
該空気インナーライナーユニットをある滞留時間、該可塑剤の引火点の上15以下または10以下または5以下または0℃以下の温度で加熱する工程、および
該空気インナーライナーユニットを冷却して該連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する熱処理された空気インナーライナーを形成する工程
を含む、方法。
6. 実施形態5に記載の方法を含む空気タイヤを作る方法であって、
熱処理された空気インナーライナーユニットをそれ自体に接合して空気インナーライナーを形成する工程
をさらに含み、表面の可塑剤を除く工程が実質的に存在しない、方法。
7. 実施形態5に記載の方法を含む空気タイヤをつくる方法であって、
熱処理された空気インナーライナーまたは該熱処理された空気インナーライナーを含む積層物を用意して、該インナーライナーをスリーブの形態にする工程、および
該空気インナーライナースリーブをタイヤの中に組み込む工程
をさらに含む、方法。
8. 熱処理された連続エラストマー長尺物の空気透過性が、連続エラストマー長尺物の空気透過性よりも少なくとも10または少なくとも30または少なくとも50または少なくとも100または少なくとも200%低い、実施形態1〜7のいずれか1形態に記載の方法。
9. 熱処理された連続エラストマー長尺物および少なくとも1の層の接着性物質を含む積層物が形成される、実施形態1〜8のいずれか1形態に記載の方法。
10. 接着性物質が、極性官能基を持つポリマーを含み、特定の実施形態ではスチレンコポリマー、エポキシ化スチレンコポリマー、イソブチレン系コポリマー、エポキシ化イソブチレン系コポリマー、マレイン酸変性スチレンコポリマー、マレイン酸変性イソブチレン系コポリマーおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される、実施形態9に記載の方法。
11. 熱処理された連続エラストマー長尺物および/もしくは空気インナーライナーユニットもしくはインナーライナーの透過係数が60未満もしくは50未満もしくは40cc・mm/m・日未満であり、または透過率係数が1.000未満または0.500未満または0.100未満または0.080cc・mm/m・日・mmHg未満である、実施形態1〜10のいずれか1形態に記載の方法。
12. 連続エラストマー長尺物が加熱工程の間、酸素に曝露される、実施形態1〜11のいずれか1形態に記載の方法。
13. 加熱の間、生成物が発生し、該生成物は連続エラストマー長尺物から吸引除去されてさらなる処理または処分をされる、実施形態1〜12のいずれか1形態に記載の方法。
14. 連続エラストマー長尺物がイソブチレン系エラストマーを含む、実施形態1〜13のいずれか1形態に記載の方法。
15. 連続エラストマー長尺物が、エンジニアリング樹脂と官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)との動的加硫アロイを含む(または、から本質的に成る)、実施形態1〜14のいずれか1形態に記載の方法。
16. 連続のまたは実質的に連続の流れのガスが、連続エラストマー長尺物上を該連続エラストマー長尺物が加熱されている間、流される、実施形態1〜15のいずれか1形態に記載の方法。
17. 連続エラストマー長尺物がロールになっており、該連続エラストマー長尺物が繰り出されて、該連続エラストマー長尺物の繰り出された区画の少なくとも一部が加熱される、実施形態1〜16のいずれか1形態に記載の方法。
18. 連続エラストマー長尺物が加熱されるときに、5.0未満または4.0未満または3.0未満または2.0未満または1.0未満または0.5g/cm・μm未満の張力が該連続エラストマー長尺物に維持される、実施形態17に記載の方法。
19. 可塑剤が、アルキルまたはアリールスルホンアミド、アルキルまたはアリールフタレート、アルキルまたはアリールホスフェート、アジペート、グリコレート、鉱物油、ポリオレフィン油、パラフィン油およびこれらの組み合わせから選択される、実施形態1〜18のいずれか1形態に記載の方法。
20. 可塑剤が、アルキルまたはアリールスルホンアミドである、実施形態1〜19のいずれか1形態に記載の方法。
21. 可塑剤が、連続エラストマー長尺物中に該連続エラストマー長尺物の1または2または3または4または6重量%から10または15または20または25または30重量%までの範囲内で存在する、実施形態1〜20のいずれか1形態に記載の方法。
22. 熱処理された連続エラストマー長尺物が、該熱処理された連続エラストマー長尺物の10未満または8未満または6未満または4未満または2未満または1未満または0.5重量%未満の可塑剤を含む、実施形態1〜21のいずれか1形態に記載の方法。
23. 連続エラストマー長尺物が溶媒と接触しない、実施形態1〜22のいずれか1形態に記載の方法。
24. 滞留時間が、30秒間または1または2または5分間から8または10または15または20または30または60分間までの範囲内の時間である、実施形態1〜23のいずれか1形態に記載の方法。
25. 実施形態1〜24のいずれか1形態に記載の方法によってつくられた空気インナーライナー。
26. 実施形態1〜25のいずれか1形態に記載の方法によってつくられた空気タイヤ。
27. 空気インナーライナー用の連続エラストマーシートを調製する方法であって、
10または20または40または50μmから200または250または300または400または500μmまでの範囲内の平均厚さを有し、エンジニアリング樹脂と官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)との動的加硫アロイ、および連続の実質的に平らなシートの少なくとも10重量%のアルキルまたはアリールスルホンアミド可塑剤、を含む(または、から本質的に成る)、該連続の実質的に平らなシートを用意する工程、
酸素を含む流動雰囲気の存在下に、該連続の実質的に平らなシートの少なくとも1の表面を、少なくとも30秒間、60℃から190または185または180または170または160または180または200または220または250℃までの範囲内の温度で、連続エラストマー長尺物を5.0未満または4.0未満または3.0未満または2.0未満または1.0未満または0.5g/cm・μm未満の張力下に置きながら、該表面の加熱をする工程、
該加熱の間、発生する反応生成物を吸引除去する工程、および
該連続シートを冷却して、該連続の実質的に平らなシート中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する加熱された連続の実質的に平らなシートを形成する工程
を含む、方法。
28. シートが熱空気対流によって加熱される、実施形態27に記載の方法。
29. 連続の実質的に平らなシートがロールの形態をしており、該連続の実質的に平らなシートが繰り出されて該シートの少なくとも1の表面の少なくとも部分がある滞留時間、加熱されるように炉の中を通され、該最初の連続の実質的に平らなシートの加熱された部分が次に該炉から搬出されて、冷却され、ロールに巻かれる、実施形態27または28に記載の方法。
30. 実施形態27〜29のいずれか1形態に記載の方法を含む空気タイヤをつくる方法であって、
加熱された連続の実質的に平らなシートを切断して空気インナーライナーユニットを形成する工程、および
該空気インナーライナーユニットをそれ自体に接合して空気インナーライナーを形成する工程、
をさらに含み、表面の可塑剤を除く工程が実質的に存在しない、方法。
31. エンジニアリング樹脂と官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)との動的加硫アロイ、およびインナーライナーの10未満もしくは8未満もしくは6未満もしくは4未満もしくは2未満もしくは1未満もしくは0.5重量%未満のアルキルまたはアリールスルホンアミド可塑剤、から本質的に成る空気インナーライナーを含む空気タイヤ。
32. インナーライナーが10または20または40または50μmから200または250または300または400または500μmまでの範囲内の平均厚さを有する、実施形態31に記載の空気タイヤ。
33. エンジニアリング樹脂がナイロンである、実施形態31に記載の空気タイヤ。
34. 官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)が臭素化ポリ(イソブチレン−コ−p−メチルスチレン)である、実施形態31に記載の空気タイヤ。
【0080】
また本明細書に記載されるのは、タイヤをつくるために空気インナーライナーを使用する方法であって、該空気インナーライナーが、エンジニアリング樹脂と官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)との動的加硫アロイ、および該インナーライナーの10未満もしくは8未満もしくは6未満もしくは4未満もしくは2未満もしくは1未満もしくは0.5重量%未満のアルキルもしくはアリールスルホンアミド可塑剤、を含む、または、から本質的に成る、方法である。該インナーライナーの成分は、その製造方法も含めて、本明細書に開示されたようにさらに説明されることができる。
【0081】
また本明細書に記載されるのは、タイヤをつくるために連続エラストマー長尺物を使用する方法であって、該長尺物が、エンジニアリング樹脂と官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)との動的加硫アロイ、および該長尺物の少なくとも10重量%のアルキルもしくはアリールスルホンアミド可塑剤、を含む、または、から本質的に成る、方法である。該長尺物の成分は、その後続の熱処理および切断方法も含めて、本明細書に開示されたようにさらに説明されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気インナーライナー用の連続エラストマー長尺物を調製する方法であって、
可塑剤およびエラストマーを含む連続エラストマー長尺物を用意する工程、
該連続エラストマー長尺物をある滞留時間、該可塑剤の引火点の上15℃以下の温度で加熱する工程、および
該長尺物を冷却して該連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する熱処理された連続エラストマー長尺物を形成する工程
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を含む空気インナーライナーをつくる方法であって、
熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続長尺物を含む積層物を切断して空気インナーライナーユニットを形成する工程、および
該空気インナーライナーユニットを該空気インナーライナーユニット自体に接合して空気インナーライナーを形成する工程
をさらに含み、表面の可塑剤を除く工程が実質的に存在しない、方法。
【請求項3】
熱処理された連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルが、連続エラストマー長尺物中の可塑剤のレベルよりも少なくとも10%低い、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法を含む空気タイヤをつくる方法であって、
熱処理された連続エラストマー長尺物または該熱処理された連続長尺物を含む積層物を切断し、該長尺物をスリーブの形態にして、空気インナーライナースリーブを形成する工程、および
該空気インナーライナースリーブをタイヤ中に組み込む工程
をさらに含む、方法。
【請求項5】
連続エラストマー長尺物が、連続スリーブまたは連続の実質的に平らなシートの形態をしている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
熱処理された連続エラストマー長尺物の空気透過性が、連続エラストマー長尺物の空気透過性よりも少なくとも10%低い、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
連続エラストマー長尺物が加熱工程の間、酸素に曝露される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
連続エラストマー長尺物がイソブチレン系エラストマーを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
連続エラストマー長尺物が、エンジニアリング樹脂と官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)との動的加硫アロイを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
連続エラストマー長尺物が、1以上の加熱されたカレンダーロール、対流熱、1または複数の加熱された空気流、マイクロ波放射、紫外線放射、赤外線放射またはこれらの組み合わせとの接触によって加熱される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
連続エラストマー長尺物が加熱されるときに、5.0g/cm・μm未満の張力が該連続エラストマー長尺物に維持される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
可塑剤が、アルキルまたはアリールスルホンアミド、アルキルまたはアリールフタレート、アルキルまたはアリールホスフェート、アジペート、グリコレート、鉱物油、ポリオレフィン油、パラフィン油およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
可塑剤が、連続エラストマー長尺物中に該連続エラストマー長尺物の1から30重量%までの範囲内で存在する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
連続エラストマー長尺物が溶媒と接触しない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によってつくられた空気インナーライナー。
【請求項16】
エンジニアリング樹脂と官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)との動的加硫アロイ、およびインナーライナーの10未満もしくは8未満もしくは6未満もしくは4未満もしくは2未満もしくは1未満もしくは0.5重量%未満のアルキルまたはアリールスルホンアミド可塑剤、から本質的に成る空気インナーライナーを含む空気タイヤ。
【請求項17】
空気インナーライナー用の連続エラストマーシートを調製する方法であって、
10から500μmまでの範囲内の平均厚さを有し、エンジニアリング樹脂と官能化ポリ(イソブチレン−コ−アルキルスチレン)との動的加硫アロイ、および連続の実質的に平らなシートの少なくとも10重量%のアルキルまたはアリールスルホンアミド可塑剤、を含む、該連続の実質的に平らなシートを用意する工程、
酸素を含む流動雰囲気の存在下に、該連続の実質的に平らなシートの少なくとも1の表面を、少なくとも30秒間、60℃から250℃までの範囲内の温度で、連続エラストマー長尺物を5.0g/cm・μm未満の張力下に置きながら、該表面の加熱をする工程、
該加熱の間、発生する反応生成物を吸引除去する工程、および
該連続シートを冷却して、該連続の実質的に平らなシート中の可塑剤のレベルよりも少ない可塑剤のレベルを有する加熱された連続の実質的に平らなシートを形成する工程
を含む、方法。
【請求項18】
シートが熱空気対流によって加熱される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
連続の実質的に平らなシートがロールの形態をしており、該連続の実質的に平らなシートが繰り出されて該シートの少なくとも1の表面の少なくとも部分がある滞留時間、加熱されるように炉の中を通され、該最初の連続の実質的に平らなシートの加熱された部分が次に該炉から搬出されて、冷却され、ロールに巻かれる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法を含む空気タイヤをつくる方法であって、
加熱された連続の実質的に平らなシートを切断して空気インナーライナーユニットを形成する工程、および
該空気インナーライナーユニットを該空気インナーライナーユニット自体に接合して空気インナーライナーを形成する工程、
をさらに含み、表面の可塑剤を除く工程が実質的に存在しない、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−510744(P2013−510744A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539917(P2012−539917)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/053502
【国際公開番号】WO2011/062724
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】