説明

空気伝播酸化粒子の分解および除去装置および方法

【課題】
【解決手段】 空気流から、炭素元素、硫黄元素、鉄元素、金元素およびその他の元素状物質を回収する装置(10)及び方法であって、漏斗形状のレセプタ(14)と、この漏斗状レセプタからスペースを開けて配置した逆円錐形状の電極ノード本体(12)と、前記電極ノード本体の外側表面と、前記レセプタの内側表面(60)の間に形成した前記空気流を受けるための漏斗形状の反応ゾーン(45)と、前記電極ノード本体(12)に装着され前記反応ゾーン(45)に突出している複数のポイントソース電極(36)と、を具える。電極ノード本体(12)とレセプタ(14)は互いに分離されており、レセプタ(14)は接地されており、電極ノード本体(12)に電圧源が電気的に接続されている。この装置と方法は、化石燃料、ごみ、およびその他の材料の燃焼から生じる汚染物質を含む空気流の処理に使用して、酸化物を元素状物質と水に分解し、空気流から元素状物質を除去することに、石炭で稼動する電力プラントの放出物を処理して、プラントの放出物から炭素を回収して、その回収した炭素を燃料として再使用することによってプラントの効率を改善することに、焼却炉でごみを燃焼することによって、および焼却炉の放出物を処理して元素状物質を回収し、元の焼却していないごみよりはるかに少ないスペースで埋め立てられるようにすることによって、埋め立ての必要性を低減することに、およびフラーレンなどの価値のある元素状物質を生成することに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願のクロスリファレンス
本出願は、以下のカザフスタン共和国特許出願の優先権を主張する:2003年11月17日に出願された出願番号2003/1474.1であって、現予備特許第14236号;2003年11月17日に出願された出願番号2003/1475.0であって、現予備特許第14237号;2003年12月1日に出願された出願番号2003/1635.1であって、現予備特許第14238号;2003年12月10日に出願された出願番号2003/1686.1であって、現予備特許第14312号;2004年6月28日に出願された出願番号2004/0911.1;および2004年6月30日に出願された出願番号2004/0924.1。
【0002】
発明の属する技術分野
本発明は、空気伝播酸化粒子の分解装置および方法に関するものであり、特に、化石燃料や、廃棄物、その他を燃焼させるときに発生する汚染物質を含む空気流を処理して、その酸化物を元素状物質と水に分解して、空気流から元素状物質を除去する装置及び方法に関する。本発明の装置及び方法は、また、例えば元素状炭素(フラーレンを含む)、元素状硫黄、元素状鉄、元素状金、その他の有益な元素状物質の空気流からの回収を可能にするものでもある。
【0003】
発明の背景
我々の環境は、様々な自然現象によって、および地球上の工業国による人工的な汚染物質の空気や水の中への導入することによって、どんどん汚染されてきている。空気中に導入された人工的な汚染物質の共通する例には、炭化水素を燃焼させる電力プラント、焼却炉、精錬のような様々な工業プロセス、硝酸および硫酸プラント、内燃エンジンその他における燃焼によって生じる空気伝播粒子が含まれている。このような汚染物質の大部分は、炭素、硫黄、窒素、鉛、亜鉛、およびその他の元素の酸化物を含んでいる。例えば、石炭は、鉛、亜鉛、銀、その他を含む様々な不純物を微量に含んでいるので、石炭が燃焼するとき、石炭中の炭素と共にこれらの不純物が酸化される。最後に、硫黄化合物を含む燃料の燃焼および窒素化合物を含む燃料の燃焼から生じる硫黄酸化物と窒素酸化物が、増えつつある有意な環境問題である酸性雨に寄与する酸を形成する。
【0004】
炭化水素燃焼パワープラント、焼却炉、工業プロセス、内燃エンジン、その他の燃焼生成物を処理して、これらのソースからの空気伝播粒子の導入を制御する多くの試みがなされてきた。例えば、石炭燃焼電力プラントは、しばしば、硫黄酸化物と反応するカルシウム化合物を用いる洗浄プロセスを石膏をつくるために用いる。残念なことに、この洗浄プロセスによって生じる廃棄物の実質的な量は、重大な廃棄問題となる。可能な場合は、石炭燃焼電力プラントで硫黄分の低い石炭を用いて、洗浄の必要性を低減するようにしているが、これは電力発生のコストをあげることになる。代替的に、プラントを低温で稼動させることによって硫黄酸化物の放出を低減することができるが、これによると利用されていない石炭の加熱価値をいくらか残すことになる。
【0005】
このような排出物を処理する別の方法は、電気集塵機を使用して、粒子の除去を強化することであった。この方法では、様々なタイプのイオン発生装置を用いて、粒子につけるイオンを発生する。結果として帯電した粒子が、電気集塵機に集められる。
【0006】
残念なことに、燃焼によって発生する空気伝播粒子の導入を制御する従来の方法は、一またはそれ以上の重大な問題を抱えている。例えば、従来の方法は、放出物を受け入れ可能なレベルにまで低減することができず、設置あるいは操作が法外に高価であり、エネルギィ効率が十分でない。
【0007】
本発明は粒子状の燃焼生成物を含有する空気流を処理して元素状物質と水に分解する装置及び方法を提供する。本発明の装置と方法は、また、元素状物質を除去し、清浄で非常に改善された空気流を残し、所望の場合に価値のある元素状物質を回収できるようにする手段を提供している。最後に、本発明は、高エネルギィ効率でこれらの目的を全て達成するものである。
【0008】
フラーレンは、本発明の装置と方法を使用して回収することができる価値のある元素状物質のひとつである。フラーレンは、非常に高価であり、六角形および五角形の形をした、60以上のsp−担持炭素原子でできた大きな閉じたケージ型分子を具える、工業的に重要な形の炭素である。現在、フラーレンは球体の形状(バックミンスターフラーレン:buckminsterfullerene)と、筒状あるいはドーナツ形状(ナノチューブ)のものが知られている。フラーレンを製造するための様々な複雑かつ高価なプロセスが知られている。このプロセスは非常に複雑であり、収率がとても低いため、結果物が非常に高価である。本発明は、これらの材料を非常に効率よくかつ廉価に製造する方法を提供するものである。
【0009】
本発明の装置は、ほんのわずかな量のエネルギィで稼動するので、装置を石炭で稼動する電力プラントの放出物の処理に用いた場合、プラントの煙突から炭素を回収し、燃料の燃焼に繰り返して使用することができ、電力プラントの効率を非常に強化することになる。
【0010】
最後に、本装置は、埋め立ての必要性を低減するという点でも有益である。例えば、本発明は空気清浄効率が非常によいので、使用により生じる空気汚染を効率的に制御することが困難なため、これまで禁止されていた、あるいは計画を思いとどまっていた焼却炉を使用することが可能である。従って、埋め立てられなければ焼却されていたであろう多くの物質が埋め立てられ、実質的な埋め立て領域を不必要に無駄にしていた。このような物質を焼却炉で燃やすことができ、本発明の装置で処理することができたのであれば、埋め立てることができた残留物質(主に、回収した元素状物質)の体積を大幅に低減し、実質的により少ない埋め立て面積を占めることになる。更に、すでに埋められた埋め立て物質を掘り起こして、焼却し、本発明によって処理を行って、埋立地に戻すことができ、掘り起こした埋立の体積を大幅に低減し、埋立地の寿命を実質的に延長することができる。
【0011】
発明の概要
本発明は、炭素、硫黄、鉄およびその他の元素の粒子及び/又は酸化化合物を含む空気流を処理する装置及び方法を具える。この装置と方法は、内側面を有するレセプタと、外側表面が当該レセプタの内側面から間隔をあけて配置されている本体を有する電極ノードを具え、前記本体の外側表面と前記レセプタの内側面との間に反応ゾーンを規定している。複数の導電ポイントソース電極が前記電極ノードの本体から前記反応ゾーンへ突出している。この電極ノードとレセプタは、互いに電気的に絶縁されており、レセプタの内側面が接地されている。電圧源が電極ノードに電気的に接続されている。最後に、空気流を反応ゾーンに導入する手段が提供されており、この空気流を処理して前記粒子および酸化化合物を除去する。
【0012】
この装置と方法は、様々な目的のために使用することができる。例えば、この装置と方法は、化石燃料、ごみおよびその他の物質を燃焼させることによって生じる汚染物質を含む空気流を処理して、酸化物を元素状物質と水に分解し、この空気流から元素状物質を除去するのに使用することができる。また、この装置と方法は、石炭で稼動する電力プラントの放出物を処理して、プラントの放出物から炭素を回収することおよび回収した炭素を燃料として再使用することによって、プラントの効率を改善するのに使用することができる。この装置と方法は、焼却炉で廃棄物を燃やして、焼却炉の放出物を処理して、元素状物質を回収することによって埋め立ての必要性を低減することに使用することができる。これによって、埋立地のスペースをもとの燃やされない廃棄物よりはるかに少ないものとすることができる。更に、この装置と方法は、掘り起こした埋立物質に用いることができる。この物質は焼却され、処理されて元素状物質を回収し、非常に低減された体積の回収された元素状物質として埋立地に戻される。最後に、この装置と方法は、フラーレンなどの価値のある元素状物質の製造に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
新規であると考えている本発明の特徴を、特に特許請求の範囲に述べる。本発明は、その目的と効果とともに、以下の図面を見ながら以下の説明を参照することによって最もよく理解することができる。図中、同じ符号は同じ要素を表している。
【図1】図1は、本発明に係る空気伝播酸化粒子を含む空気流を処理する装置の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す装置の平面図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、それぞれ、図1に示す装置の電極ノード本体のゴムタイルの正面図と側面図である。
【図4】図4A、図4B、および図4Cは、電極ノード本体の好ましい形状(図4A)と別の形状、および対応するレセプタ(図4Bおよび図4C)の概略図である。
【図5】図5は、本発明の実施例の概略図であり、処理した空気流が再循環して、システムを効率よく改善している。
【図6】図6は、ポイントソース電極チップの代替の実施例を示す図である。
【0014】
発明の詳細な説明
まず、図1及び図2を参照すると、本発明に係る装置10が記載されている。装置10は、逆円錐形状で、上から吊り下げられており、漏斗形のレセプタ14から間隔をあけて配置されている電極ノード本体12を具える。電極ノード本体とレセプタは、支持構造体16に取り付けられている。この構造体は、これらの円錐形と漏斗形のまわりに配置されており、一連の支持ビーム16A−16Eと、ビーム16F−16Hを含む一般的な水平部材と、好ましくは、このシステムの電極ノード本体、レセプタおよびその他の部品を適所に保持するための取り付け部材を具えている。一連の3つの一般的な水平支持バー16I−16Kが、電極ノード本体12内部に、内側の上部周辺部18に沿って取り付けられている。この3本の支持バーは、また、共通センター20(図2)に連結されている。このセンターからは、中央サポート22が下側に向けて電極ノード本体の中へ突出しており、インジェクタの遠位先端24の後部に取り付けられている。支持バー16I−16Kと、中央サポート22は、導電材料でできている。
【0015】
電極ノード本体12は、一連の絶縁体26で水平部材16F、16Gおよび16Hから本体を吊り下げることによってシステムから電気的に絶縁されている。絶縁体26は、水平部材16F、16Gおよび16Hの底側28と、支持バー16I、16Jおよび16Kに取り付けられている。
【0016】
電極ノード本体12は、適宜のサイズと形状を有する一連の相互連結されたアルミニウムフレーム30を具え、円錐形の本体形状を作る適宜の形状をしている。ゴムタイル32がこれらのフレーム内に装着されており、連続的な円錐構造を形成している。代表的なタイル32aが図3Aおよび3Bに記載されている。タイル32の前面34は、電極ノード本体の外側表面を形成しており、通常平滑であり、このタイル面から突出している先端のとがった針36の形状の一連のポイントソース電極を具えている。これらの針は、鋭利なとがった先端38と、シャフト40と、膨らんだベース42を具える。これらは、導電性でなくてはならず、好ましくは、ステンレススチールまたは耐腐食性のその他の導電材料で、微小で鋭利な先端38を維持できる材料でできている。目下のところの好ましい実施例では、皮下注射に用いるようなステンレススチール針が使用されている。
【0017】
電極ノード本体12の内側は、アルミニウムフォイルなどの導電性材料でできた少なくとも一のシートで被覆されている。本実施例では、3層のアルミニウムフォイル44A、44Bおよび44Cが電極ノード本体の内側面に、タイル(及びフレーム)の後壁46の近傍に、後壁46と第1のフォイルシート44Aの前側との間に、ついで、フォイルシート44A、44B、および44Cの連続して隣接する表面間にポリウレタンのりなどの適宜の接着剤で貼り付けられている。
【0018】
針36は、フォイルシート44A、44B、44Cを通して、ついで、ゴムタイルを通して、針の膨張したベース42がフォイルシート44Cの露出した後面48に隣接するまで針を通すことによって電気的に相互接続されている。全ての針がこのように取り付けられているので、全ての針とフォイルシートの間が、膨張したベース42とフォイルシート44Cとの間の電気的接触と同様に、針のシャフトのベース部分50と3つのフォイル層間の電気的接触を介して導電される。装置を組み立てる場合、各針とフォイル間の通電性を、適宜の導電メータでチェックして、全てのポイントソース電極が共通電気回路と一体化されていることを確認することが好ましい。
【0019】
何本かの針がインジェクタタイル32aから突出して示されているだけであるが、実際には、電極ノード本体12の外側面は、各タイルの前側表面に亘って好ましくは均等スペースで無数の突出した針で覆われている。この針の実際の間隔は所望する通りに変化させることができるが、目下のところは、表面積約22m2の逆円錐形状の電極ノード本体に表面から、直径約0.35mmの針が約17,000本、隣り合う針の間に約22mmの間隔をおいて、突出している。必要に応じてより少ないあるいはより多い数の針を使用することができるが、最大効率は、最大実行数の針で達成できると考えられる。現在、約20mmより小さくなく、約45mmより大きくないスペースが最適であると考えられている。また、図に示す実施例では、タイルが厚さ約4cmであり、針のシャフトはタイルの前側表面から約40mm突出している。
【0020】
本発明で用いられているポイントソース電極36には、特別な処置がなされている。図1−2に示す好適な実施例ではこれらのポイントソース電極は、皮下注射の針のようなものが示されているが、遠位端に尖ったポイントを有するものであればどのような構造であってもよい。シャフトは、所望の場合は、丸型、フラット、三角形、矩形などであってもよい。このような構造の非限定的な選択例を図6に示す。全てのケースで、少なくともシャフトの遠位端が先端に向かうテーパを有しており、先端が単一の尖った点になっている。テーパの角度は様々であっても良いが、できる限り尖ったテーパ角であることが好ましい。以下に示すように、適宜のポイントソース電極には電位が与えられ、先端が空気流にさらされると、先端周辺に光を帯びて放電が発生し、暗闇の中で見ることができる。
【0021】
針36は、トランス52などの電圧源を導電性の支持バー16I−16Kに電気的に接続することによって電位が与えられる。支持バーは、インジェクタの後部、フォイル、従って針に電気的に接続されている。トランスの負のリードは、インジェクタに接続されており、正のリードは接地されている(この構成が好ましい)ように示されているが、必要に応じてこれらのリードを入れ替えることができる。いずれかの従来の電気トランスを使用することができる。トランスは、整流器を介して約10−3000kVの範囲の電圧を発生することが好ましい。図に示す実施例では、直流300kV、250mAを出力するトランスが使用されている。電位は、空気流中の粒子の性質、空気流の流量等に合わせて、一定であっても、変化するものであってもよい。
【0022】
漏斗状のレセプタ14を見ると、このレセプタは連続的な円錐形の内部傾斜面60を具える。レセプタの外側エッジ62は、環状窪み64によって囲まれている。装置の稼動中、リザーバ68から水を引き込んでその水を供給チューブ70および72を介して窪み64に送出するポンプ66でこの窪みに連続的に水が供給されるので、窪み内の水がレセプタの外側エッジ62にあふれ、レセプタの内側の傾斜面全面を水の連続的なフィルム74で覆うことになる。装置の稼動中はレセプタの全面が水の膜で覆われることが好ましいので、レセプタは可能な限り、外側エッジの上を流れ落ちる水が漏斗状の形状の面全体を均等にするような状態のレベルに保たれる。図に示す実施例の動作では、ポンプ66が窪みに一分間に約600mの割合で水を供給している。
【0023】
図に示す実施例のレセプタ14は、外側エッジ62を横切る位置で約5m、高さが約2mである。レセプタ14の内側傾斜面60は約45度の角度で、逆円錐形電極ノード本体12の外側面から約0.5mの距離Aが設けられており、円錐面と漏斗面の間に漏斗形状の空気処理領域あるいは反応ゾーン45を作っている。このスペースは、必要に応じてあるいは所望の場合は調節して、装置10の動作を最適なものにする。実際、従来の手動手段あるいは動力による手段を提供して(図示せず)、電極ノード本体12をレセプタ14に対して(及び/又はレセプタを電極ノード本体に対して)上下に移動させて、この空間を変えることができる。
【0024】
更に、水を搬送しているレセプタの内側面60は、エポキシコーティング80などの絶縁コーティングで被覆することが好ましい。このコーティングは、図に示す実施例では厚さ約6mmであり、誘電粒子で埋められている。好ましくは、この絶縁コーティングは、レセプタの上端のリップ部分周辺に延在している。このコーティングがよく磨かれて、水の膜による表面カバレージを容易にし、漏斗型レセプタの円錐形の内側傾斜面60を連続的に流れ落ちる水の膜の流量を最大にすることが更に好ましい。この絶縁コーティングにもかかわらず、以下に述べるように、水の膜が電気的に接地されている。
【0025】
特定の電極ノード本体とレセプタの構造が図1−2(及び、図4に示す対応する概略図)に示す本発明の実施例に示されているが、その他の構成を使用することができる。例えば、電極ノード本体とレセプタは、図4Bの概略図に示すようなボール形状であってもよく、あるいは別の形状をしていてもよい。しかしながら、対応する電極ノード本体とレセプタ表面が実質的平行であるか、 あるいは互いに等距離にあること、および電極ノード本体とレセプタとが共通軸に対して対称に配置されていることが好ましい。また、代替的な、より好ましくない実施例においては、電極ノード本体とレセプタが、上述したような無数のポイントソース電極を担持する単純な平坦面(図4C)であって、この平坦面の間に反応ゾーンを構成するスペースを作るようにしてもよい。
【0026】
水はレセプタの内側傾斜面60を通った後、環状のガータ溝78に集められ、ガータ溝から出口89を通ってリザーバ68に流れる。この水は、フィルタ92を通った後ポンプ66によって吸引される。ガータ溝78は水の膜が確実に電気的に接地されるように導電性とする。フィルタ92は概略的に示されているが、従来のフィルタ手段を用いることができる。例えば、空気浮揚システムを用いて、これによってリザーバに集めた水より軽い材料(炭素粒子、フラーレンなど)をリザーバの上から取り出して、クリーンな水を残してレセプタに戻すようにする。図に示す実施例では、リザーバ68は約3000リットルの水を保持する。
【0027】
本発明の装置は、電極ノード本体とレセプタ面との間の漏斗形状の反応ゾーン45に導入された酸化した粒子を含む空気流を処理することを意図している。この空気流は、装置の様々な場所から空気処理領域へ導入するようにしてもよい。例えば、環状の空気チャンバ96を環状窪み64の外側エッジ94の周りに配置してもよい。このチャンバは、好ましくは、図に示すように空気チャンバの周囲に環状に空気流のほうへ向けられた一又はそれ以上のインレット100(図2)を具えている。空気チャンバ96は、その上端102に半径方向に内側に向いた環状ノーズ部104を窪み64の上に並列させている。環状空気チャンバ96の上端106は環状の開口98を有し、この開口から空気チャンバ96へ入る空気流が排出される。デフレクタパネル108がくぼみの周りの開口98の上方に設けられている。デフレクタパネル108は、レセプタの内側傾斜面60からスペースを置いて配置されており、漏斗の外側エッジ62のすぐ上に環状の開口110を提供する。図に示す実施例では、このキャビティは直径約6cmである。好ましい実施例では、ガード112(拡大して示されている)が漏斗のエッジ62のすぐ上に配置されて、漏斗の内側面上の水流が空気流の流入によって妨げられないようにしている。
【0028】
酸化した粒子を含む空気流は、好ましくは正の圧力ヘッドの下に空気チャンバ96に供給される。空気ポンプ(図示せず)を使用して、空気流を加速して、空気流が約70mmの水柱の下にチャンバに入るようにする。
【0029】
代替の実施例において、酸化した粒子を含有する空気流が入口122と出口124を有する中央空気チャンバ120に提供される。空気流が中央空気チャンバに供給されると、漏斗形状のレセプタの下側部分から、好ましくは上述の圧力のかかった状態で反応ゾーン45へ入る。この空気流は、反応ゾーンを通って移動して、上述したように電極ノード本体から突出している針36に接触する。
【0030】
別の代替の実施例では、システムの効率を改善するために反応ゾーン45を通過する空気流を再循環させる手段が提供されている。これは、例えば、図5に概略的に示されているようにして完了される。ここでは、反応ゾーン45中のすでに処理された空気流の一部が、空気ポンプ126の動作によってレセプタの底から中央空気チャンバ120を通って引き出され、空気リザーバ96に戻され、反応ゾーンへ再循環される。
【0031】
本装置の動作は以下の通り進行する。
【0032】
A.トランス52をオンにして、針36に所望の電圧をかける。
【0033】
B.ポンプ66をオンにして、レセプタの内側表面の上に連続的な水の膜を作る。
【0034】
C.例えば、炭素酸化物、硫黄酸化物、鉛酸化物、亜鉛酸化物、鉄酸化物、銀酸化物などの酸化した粒子を含有する空気流を入口100を介して導入する。装置10が高温の空気流を直接処理するように使用される場合は、なんらかの従来の手段を使用して、この空気流を少なくとも約60℃に冷却することが好ましい。
【0035】
D.空気流は環状空気チャンバ96を満たし、反応ゾーン45を移動しながら環状開口98に存在する。反応ゾーンで、空気が上に上がって電極ノード本体の外側表面から突出している針の先端と相互に作用する。電極ノード本体とレセプタとの間のスペースに入った空気は、加速されて、酸化した粒子とインジェクタのポイントソース電極との相互作用の結果、ポイントソース電極(針の先端)と酸化した粒子との間の相互作用が強化される。空気流中の酸化した粒子は、ポイントソース電極の作用によって元素状の炭素、硫黄、鉛、亜鉛および銀に戻り、漏斗の内側傾斜面60上の水膜74へ落ちて、リザーバ68へ搬送される。この元素状物質は、フィルタ92によって除去されると、所望であれば分離され、廃棄され、処理される、などする。
【0036】
E.エアフリーの酸化粒子が、空気処理領域を通って上に上がり、チャネル91から漏れて大気中に再入する。
【0037】
上述の装置は、外に出てゆく空気流には本質的に所望しない粒子がないのでインドアで操作することができる。代替的に、この装置をアウトドアで稼動してもよいのはもちろんである。電極ノード本体、レセプタおよびその他の装置の潜在的に傷つきやすい部材を保護する適宜の雨よけ(図示せず)を設けることが好ましい。更に、天蓋を用いて2またはそれ以上の装置ユニット10をグループにする、あるいは並べてリンクさせ、チャネル91からの空気出力を回収して再循環させて、一方が動作しないときの安全装置として稼動させることができる。代替の実施例では、チャネル91の上に延在する天蓋を用いて第1の装置から空気出力を回収し、回収した空気出力を第2の装置の入口100に送り込むことによって2またはそれ以上の装置10が並べてリンクされている。
【0038】
本発明の装置を用いてフラーレンを作り、リザーバ68から回収することができる。フラーレンを作ることが望まれる場合、フラーレン最終製品の不純物の存在を最小限にするために、非常にクリーンな炭化水素源(ジェット燃料あるいはパラフィンなど)を燃やして、装置10で処理することが好ましい。C60、C70、C84、およびC120を含む製造されたフラーレンは、従来の方法で、分離することができる。
【0039】
本発明の装置と方法で達成される重要で期待されていなかった結果は、酸化粒子を非常に活発に低減するユニポーライオン化によってポイントソース電極の先端で製造された元素状水素の製造の結果であると考えられるが、出願人は本発明の範囲をその動作のいずれかのセオリィに限定することは意図していない。このため、出願人は、本発明による二酸化硫黄を分解することができる以下のメカニズムを提言する。同様のメカニズムで、炭素、鉄、銀、銅などのその他の材料を元素形状へ転換することができる。
【0040】
H2O = OH- + H+
【0041】
H+ + e- = H
【0042】
4OH- − 4e- = O2 = 2H2O
【0043】
6H + SO2 = H2S + 2H2O
【0044】
SO2 + 2H2S = 3S↓ + 2H2O
【0045】
又は
【0046】
SO2 + 4H = S↓ + 2H2O
【0047】
同様に、二酸化炭素を本発明のメカニズムによって分解することができる。
【0048】
4H + CO2 = C↓ + 2H2O
【0049】
CO2 + 8H = CH4 + 2H2O
【0050】
CH4 + CO2 = 2C↓ + 2H2O
【0051】
ここに挙げられている、文献、特許出願、特許を含む全ての引用は、各引用がここにおよび特に引例に組み込まれていると表示されているかのような程度に組み込まれており、全体において示されている。
【0052】
本発明を記載しているコンテキスト(特に、請求項のコンテキスト)における「a」「an」「the」および同様の指示の使用は、特に表示されていない限り、コンテキストによって明確に否定されていない限り、単数及び複数の双方をカバーすると解釈すべきである。「comprising」「having」「including」および「containing」の用語は、特に記載されていない限り、制限のない用語(すなわち、「含んでいるが、限定するものではない」)と解釈すべきである。数値の範囲の記載は、特に記載されていない限り、各別々の値がその範囲内に入ることをそれぞれ意味する速記法として単に作用するものであり、別々の値が、ここに記載されているかのように、明細書中に組みこまれている。ここに記載した全ての方法は、特に表示がない限り、あるいはコンテキストによって明確に否定されていない限り、あらゆる好適な順番で実行することができる。いずれかの、また全ての実施例、あるいはここに提供されている例示する用語(例えば「such as」)の使用は、単に本発明をよりわかりやすくするためのものであり、請求項にかかれていない限り本発明の範囲を限定するものではない。明細書の言語は、本発明の実施に必須である請求項に記載されていないいずれかの要素を示すものであると解釈すべきでない。
【0053】
本発明を実行するための発明者が知る限りのベストモードを含む、本発明の好ましい実施例がここに記載されている。これらの好ましい実施例に変形例は、上記の説明を読んだ当業者には自明である。発明者は当業者がこのような変形例を適宜行うことはわかっており、発明者はここに特に記載されたもの以外で実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法令が許す限り、請求の範囲に記載されている主題のすべての変形および均等物を含むものである。更に、全ての可能な変形例中の上述の要素の組み合わせは、ここに特に指摘されていない限り、またはコンテキストによって明確に否定されていない限り、本発明に合致するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素、硫黄、鉄、およびその他の元素の粒子及び/又は酸化化合物を含有する空気流を処理する装置において:
内側表面を有するレセプタと;
前記レセプタの内側表面からスペースをあけて配置した外側表面を有する本体を具え、この本体の外側表面と前記レセプタの内側表面との間に反応ゾーンを規定する電極ノードと;
前記電極ノードの本体から前記反応ゾーンへ突出している複数の導電性ポイントソース電極と;
互いに電気的に絶縁されており、前記レセプタの内側表面が接地されている前記電極ノードと前記レセプタと;
前記電極ノードに電気的に接続されている電圧源と;
前記反応ゾーンに前記空気流を導入する手段と;
を具えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記電極ノード本体が、一連の相互接続された導電性フレームと具えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記フレームに導電タイルが装着されて円錐形状の構造を作っていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、前記ポイントソース電極が前記タイル表面から前記反応ゾーンへ突出していることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記電極ノード本体が、導電材料で被覆された内側表面を有することを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、前記導電材料がアルミニウムフォイルであることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、前記ポイントソース電極が共通の電気回路内に集積されていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、前記ポイントソース電極がニードル電極であることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、隣接する針の間のスペースが約20mmより少なくなく、約45mmより大きくないことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項8に記載の装置において、前記電極ノード本体が、直径約0.35mmの針が約17,000本当該表面から突出しており、当該針が隣接する針間に約22mmのスペースが置かれている、約22mの外側表面積を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項8に記載の装置において、前記針のシャフトが前記電極ノードの本体の外側表面から約40mm突出していることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置において、前記電圧源がトランスであることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、前記トランスが整流器を介して約10〜3,000kVの範囲の電圧を提供することを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項12に記載の装置において、前記トランスが整流器を介して約300kVの範囲の電圧と約250mAの電流が生じることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置において、前記レセプタが漏斗形状をしており、円錐形の傾斜内側面を有することを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置が、前記レセプタの内側面上に電気的に接地した水の連続的な膜を供給する手段を具えることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置において、前記レセプタの外側エッジが環状の窪みによって囲まれており、当該窪みに連続的に水が供給され前記漏斗状のレセプタの外側エッジからあふれて前記連続的な水の膜を供給することを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項16に記載の装置において、前記水の膜を搬送している前記レセプタの内側表面が、絶縁コーティングで覆われていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、前記絶縁コーティングが誘電粒子で満たされたエポキシであることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項16に記載の装置が、前記レセプタの内側表面を移動する水を回収する手段と、この回収した水をろ過して、粒子と元素状物質を除去する手段と、を具えることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置において、前記回収した水を濾過するエアフローテーションシステムを具えることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項1に記載の装置において、前記反応ゾーンが厚さ約5mであることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項1に記載の装置が、前記反応ゾーンの厚さを変化させるために、前記レセプタに対して前記電極ノード本体を移動させる手段を具えることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項1に記載の装置において、前記電極ノード本体とレセプタがボール状であることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項1に記載の装置において、前記電極ノード本体の対応する外側表面と前記レセプタの内側表面が実質的に互いに等距離であり、前記電極ノード本体とレセプタが、共通の軸に対して対称的に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項1に記載の装置が、前記反応ゾーンに導入された空気流をリサイクルする手段を具えることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項1に記載の装置が、前記レセプタの下側部分から前記空気流を導入する手段を具えることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項1に記載の装置が、前記反応ゾーンに入るときに前記空気流を加速する手段を具えることを特徴とする装置。
【請求項29】
炭素、硫黄、鉄、およびその他の元素の粒子及び酸化化合物を含有する空気流を処理する方法において:
複数のポイントソース電極を有する電極ノードと接地されたレセプタとの間に形成した反応ゾーンに空気流を供給するステップであって、当該電極ノードとレセプタが互いに絶縁されているステップと;
前記ポイントソース電極に電圧を印加するステップと;
前記レセプタの表面に電気的に接地された水の連続的な膜を供給するステップと;
前記水が前記レセプタの表面を移動した後に当該水を濾過して、前記反応ゾーン中に形成された元素状物質を回収するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記ポイントソース電極がニードル電極であることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法において、前記ポイントソース電極におけるユニポーライオン化によって水素原子が生成され、前記反応ゾーン内で酸化化合物を分解することを特徴とする方法。
【請求項32】
石炭を燃焼させるプラントの放出物を処理して、前記プラントの放出物から炭素を回収して、その回収した炭素を燃料として再使用することによってその効率を改善する方法において:
石炭を燃焼させるプラントの前記放出物から炭素化合物を含有する空気流を、複数のポイントソース電極を有する電極ノードと接地されたレセプタとの間に形成された反応ゾーンへ供給するステップであって、前記電極ノードとレセプタが電気的に互いから絶縁されているステップと;
前記ポイントソース電極へ電圧を印加するステップと;
前記レセプタの表面に電気的に接地された水の連続的な膜を供給するステップと;
前記水が前記レセプタの表面を移動した後に当該水を濾過して、前記反応ゾーン中に形成された炭素を回収するステップと;
この回収した炭素を前記石炭燃料に加えるステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、前記ポイントソース電極がニードル電極であることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法において、前記空気流が前記反応バンドに入る前に少なくとも約60℃に冷却されていることを特徴とする方法。
【請求項35】
廃棄物を焼却して、最初の廃棄物と比較して量が減少した廃棄物を有する結果物としての元素材料を埋め立てることによって、廃棄物の埋め立てにおける廃棄物を低減する方法において:
炭素、硫黄、鉄、およびその他の元素の酸化物を含有する空気流を生成する焼却炉で廃棄物を燃やすステップと;
前記焼却炉からの空気流を、複数のポイントソース電極を有する電極ノードと接地されたレセプタとの間に形成された反応ゾーンへ供給するステップであって、前記電極ノードとレセプタが電気的に互いに絶縁されているステップと;
前記インジェクタのポイントソース電極へ電圧を印加するステップと;
前記レセプタの表面に電気的に接地された水の連続的な膜を供給するステップと;
前記水が前記レセプタの表面を移動した後に当該水を濾過して、前記反応ゾーン中に形成された元素状物質を回収するステップと;
この回収した元素状物質を埋め立てるステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記ポイントソース電極がニードル電極であることを特徴とする方法。
【請求項37】
フラーレンを生成する方法において:
酸化した炭素化合物を含有する空気流を、複数のポイントソース電極を有する電極ノードと接地されたレセプタとの間に形成された反応ゾーンへ供給するステップであって、前記電極ノードとレセプタが電気的に互いから絶縁されているステップと;
前記インジェクタのポイントソース電極へ電圧を印加するステップと;
前記レセプタの表面に電気的に接地された水の連続的な膜を供給するステップと;
前記水が前記レセプタの表面を移動した後に当該水を濾過して、前記反応ゾーン中に形成された炭素を回収するステップと;
この回収した炭素からフラーレンを分離するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、前記ポイントソース電極がニードル電極であることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法において、前記ポイントソース電極におけるユニポーライオン化によって水素原子が生成され、前記反応ゾーン内で炭素化合物を分解し、炭素を生成することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項35に記載の方法において、前記酸化した炭素化合物が、ハイドロカーボン燃料又はパラフィンを燃やすことによって生成されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−528287(P2007−528287A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538988(P2006−538988)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003722
【国際公開番号】WO2005/046877
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506163788)
【Fターム(参考)】