説明

空気入りタイヤおよび積層体

【課題】空気入りタイヤにおけるフィルムとゴム組成物の層の接着強度の改善。
【解決手段】ゴム組成物がゴム成分、式(1)


(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤおよび積層体に関する。より詳しくは、本発明は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体をインナーライナー材として含む空気入りタイヤ、および熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空気入りタイヤのインナーライナー層として用いることのできるポリアミド系樹脂層とゴム層の積層体が開示され、ポリアミド系樹脂層とゴム層の接着性を改善するために、少なくともゴム層にN−アルコキシメチル尿素誘導体を含有させ、かつゴム層および/またはポリアミド系樹脂層にレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を含有させている。
特許文献2には、2層のポリアミド樹脂層の間に防振ゴム層が介在している積層体であって、上記防振ゴム層が、(A)ジエン系ゴムまたはメチレン基を有するゴム、(B)加硫剤、(C)レゾルシノール系化合物、(D)メラミン系樹脂を必須成分とするゴム組成物の加硫物からなり、ポリアミド樹脂層と化学的接着していることを特徴とする積層体が開示されているが、その積層体は小型マウントとして用いられるものである。特許文献2は、その積層体を空気入りタイヤに用いることを教示していない。
特許文献3には、(A)アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムおよび水素添加アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムの少なくとも一方、(B)過酸化物加硫剤、(C)レゾルシノール系化合物、(D)メラミン樹脂を用いて形成されたゴム層の外周面に、金属箔と樹脂フィルムとを積層してなる積層体が開示されているが、その積層体はガソリン燃料ホースに用いられるものである。特許文献3は、その積層体を空気入りタイヤに用いることを教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−239905号公報
【特許文献2】特開2003−97644号公報
【特許文献3】特開2004−42495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体をインナーライナー材として含む空気入りタイヤにおいて、フィルムとゴムの接着強度を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件第1発明は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体を含む空気入りタイヤであって、ゴム組成物がゴム成分、式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が0.5〜10であることを特徴とする空気入りタイヤである。
本件第2発明は、熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体であって、ゴム組成物がゴム成分、式(1)
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が0.5〜10であることを特徴とする積層体である。
【0010】
本発明は、具体的には、次の[1]〜[19]の態様を含む。
[1]熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体を含む空気入りタイヤであって、ゴム組成物がゴム成分、式(1)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が0.5〜10であることを特徴とする空気入りタイヤ。
[2]ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物が加硫促進剤を含まないことを特徴とする[1]に記載の空気入りタイヤ。
[3]ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過20質量部以下であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して1.5質量部超過200質量部以下であることを特徴とする[1]に記載の空気入りタイヤ。
[4]ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜3質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜30質量部であり、硫黄の配合量がゴム成分100質量部に対して4質量部未満であり、加硫促進剤の配合量がゴム成分100質量部に対して0質量部超過2.1質量部未満であることを特徴とする[1]に記載の空気入りタイヤ。
[5]加硫促進剤がスルフェンアミド構造を有する化合物であり、スルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が0質量部超過1.5質量部未満であることを特徴とする[4]に記載の空気入りタイヤ。
[6]ゴム組成物が加硫促進剤としてスルフェンアミド構造を有する化合物およびチウラム構造を有する化合物を含み、チウラム構造を有する化合物の配合量が0質量部超過0.6質量部未満であることを特徴とする[5]に記載の空気入りタイヤ。
[7]熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
[8]熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分がポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、エラストマー成分が臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
[9]式(1)中、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが炭素原子数が1〜8個のアルキル基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
[10]前記縮合物が、式(2)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、nは1〜20の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
[11]式(1)中、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であることを特徴とする[1]に記載の空気入りタイヤ。
[12]前記縮合物が、式(3)
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、mは1〜20の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする[11]に記載の空気入りタイヤ。
[13]熱可塑性樹脂が、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が熱可塑性樹脂の総量の5〜100質量%であることを特徴とする[11]または[12]に記載の空気入りタイヤ。
[14]熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分が、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が熱可塑性樹脂成分の総量の5〜100質量%であることを特徴とする[11]または[12]に記載の空気入りタイヤ。
[15]メチレンドナーが、変性エーテル化メチロールメラミン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、およびヘキサメトキシメチルメラミンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[14]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
[16]ゴム成分がブタジエンゴムを含むことを特徴とする[1]〜[15]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
[17]ゴム成分の10〜100質量%がブタジエンゴムであることを特徴とする[16]に記載の空気入りタイヤ。
[18]熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体であって、ゴム組成物がゴム成分、式(1)
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が0.5〜10であることを特徴とする積層体。
[19]前記縮合物が、式(3)
【0019】
【化7】

【0020】
(式中、mは1〜20の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする[18]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体を含み、ゴム組成物にフェノール構造を有する縮合物とホルムアルデヒドを発生する塩基成分を特定配合率にて配合し、かつ硫黄および加硫促進剤の配合調整をしたことにより、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との界面の接着強度が大きい。
本発明の積層体は、フェノール構造を有する縮合物とホルムアルデヒドを発生する塩基成分をゴム組成物に特定配合率にて配合し、かつ硫黄および加硫促進剤の配合調整をしたことにより、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との界面の接着強度が大きく、かつタイヤを構成するゴムとの接着性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体を含む空気入りタイヤであって、ゴム組成物がゴム成分、式(1)
【0023】
【化8】

【0024】
(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が0.5〜10であることを特徴とする。
【0025】
本発明の積層体は、熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体であって、ゴム組成物がゴム成分、式(1)
【0026】
【化9】

【0027】
(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が0.5〜10であることを特徴とする。
【0028】
フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66(N6/66)、ナイロン6/66/12(N6/66/12)、ナイロン6/66/610(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン9T、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル等が挙げられる。ポリニトリル系樹脂としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体等が挙げられる。ポリメタクリレート系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられる。ポリビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等が挙げられる。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。イミド系樹脂としては、芳香族ポリイミド(PI)等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
なかでも、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、ナイロン6Tが、耐疲労性と空気遮断性の両立という点で、好ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂には、加工性、分散性、耐熱性、酸化防止性などの改善のために、充填剤、補強剤、加工助剤、安定剤、酸化防止剤などの、樹脂組成物に一般的に配合される配合剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、配合してもよい。可塑剤は、空気遮断性および耐熱性の観点から、配合しない方がよいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、配合してもよい。
【0030】
フィルムを構成する熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分がマトリックス相を構成し、エラストマー成分が分散相を構成しているものである。
【0031】
熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂成分としては、前記の熱可塑性樹脂と同一のものが使用できる。
【0032】
熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマー成分としては、ジエン系ゴムおよびその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ジエン系ゴムおよびその水添物としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(変性EEA)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムとしては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムとしては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。
なかでも、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体が、空気遮断性の観点から、好ましい。
【0033】
エラストマー成分には、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などの、ゴム組成物に一般的に配合される配合剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、配合してもよい。
【0034】
熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマー成分と熱可塑性樹脂成分との組み合わせは、限定するものではないが、ハロゲン化ブチルゴムとポリアミド系樹脂、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合ゴムとポリアミド系樹脂、ブタジエンゴムとポリスチレン系樹脂、イソプレンゴムとポリスチレン系樹脂、水素添加ブタジエンゴムとポリスチレン系樹脂、エチレンプロピレンゴムとポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴムとポリオレフィン系樹脂、非結晶ブタジエンゴムとシンジオタクチックポリ(1,2−ポリブタジエン)、非結晶イソプレンゴムとトランスポリ(1,4−イソプレン)、フッ素ゴムとフッ素樹脂等が挙げられるが、空気遮断性に優れたブチルゴムとポリアミド系樹脂の組み合わせが好ましく、なかでも、変性ブチルゴムである臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合ゴムとナイロン6/66もしくはナイロン6またはナイロン6/66とナイロン6のブレンド樹脂との組み合わせが、耐疲労性と空気遮断性の両立という点で特に好ましい。
【0035】
熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分とを、たとえば2軸混練押出機等で、溶融混練し、マトリックス相を形成する熱可塑性樹脂成分中にエラストマー成分を分散相として分散させることにより、製造することができる。熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分の質量比率は、限定するものではないが、好ましくは10/90〜90/10であり、より好ましくは15/85〜90/10である。
【0036】
熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を含むことができる。
【0037】
ゴム組成物の層を構成するゴム組成物は、ゴム成分、式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含む。
【0038】
【化10】

【0039】
式(1)中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。
【0040】
ゴム成分としては、ジエン系ゴムおよびその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ジエン系ゴムおよびその水添物としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(変性EEA)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムとしては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムとしては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。なかでも、隣接ゴム材料との共架橋性の観点から、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴムが好ましく、より好ましくは、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、臭素化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムである。ゴム成分は、2種以上のゴム成分の混合物であってもよい。
【0041】
式(1)で表される化合物の1つの好ましい例は、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが炭素原子数が1〜8個のアルキル基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例の1つはクレゾールである。
式(1)で表される化合物のもう1つの好ましい例は、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例のもう1つはレゾルシンである。
【0042】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物としては、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体等が挙げられる。また、これらの縮合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、変性されていてもよい。たとえば、エポキシ化合物で変性された変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体も本発明に使用することができる。これらの縮合物は、市販されており、本発明に市販品を使用することができる。
【0043】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は、好ましくは、式(2)または式(3)で表される化合物である。
【0044】
【化11】

【0045】
式中、nは1〜20の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。
【0046】
【化12】

【0047】
式中、mは1〜20の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜3の整数である。
【0048】
メチレンドナーとは、加熱等によりホルムアルデヒドを発生する塩基化合物をいい、たとえば、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、メチロールメラミン、エーテル化メチロールメラミン、変性エーテル化メチロールメラミン、エステル化メチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサキス(エトキシメチル)メラミン、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、N,N′,N″−トリメチル−N,N′,N″−トリメチロールメラミン、N,N′,N″−トリメチロールメラミン、N−メチロールメラミン、N,N′−ビス(メトキシメチル)メラミン、N,N′,N″−トリブチル−N,N′,N″−トリメチロールメラミン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。なかでも、ホルムアルデヒドの放出温度の観点から、変性エーテル化メチロールメラミンが好ましい。
【0049】
加硫剤としては、無機系加硫剤と有機系加硫剤があり、無機系加硫剤としては、硫黄、一塩化硫黄、セレン、テルル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛等が挙げられ、有機系加硫剤としては、含硫黄有機化合物、ジチオカルバミン酸塩、オキシム類、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ジニトロソ化合物、変性フェノール樹脂、ポリアミン、有機過酸化物等が挙げられる。なかでも、硫黄、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼンのような有機過酸化物、臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体のような変性フェノール樹脂、酸化亜鉛、含硫黄有機化合物が好ましい。
【0050】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(以下、単に「縮合物」ともいう。)の配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。縮合物の配合量が少なすぎると、良好な接着を得るのに必要な熱量、時間が増大するため加硫効率が悪化し、逆に多すぎると、得られるゴム組成物の加硫伸びが損なわれ、破断しやすくなる。
【0051】
メチレンドナーの配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、好ましくは0.5〜80質量部であり、さらに好ましくは1〜40質量部である。メチレンドナーの配合量が少なすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に多すぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0052】
メチレンドナーの配合量/縮合物の配合量の比は、0.5〜10であり、好ましくは1〜4質量部であり、さらに好ましくは1〜3である。この比が小さすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に大きすぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0053】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄である場合は、ゴム組成物が加硫促進剤を含まないことが好ましい。
【0054】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、かつゴム組成物がさらに加硫促進剤を含む場合は、縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過20質量部以下であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して1.5質量部超過200質量部以下、さらには3質量部超過80質量部以下、であることが好ましい。縮合物の配合量が少なすぎると、縮合体が加硫促進剤と反応して界面での樹脂との反応が進行しなくなる。逆に多すぎると、得られるゴム組成物の加硫伸びが損なわれ、破断しやすくなる。メチレンドナーの配合量が少なすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に多すぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0055】
加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、アルデヒド・アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系が挙げられ、好ましくはチアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系である。
【0056】
チアゾール系加硫促進剤は、チアゾール構造を有する化合物であり、たとえば、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアジルジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、(ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられるが、なかでもジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0057】
スルフェンアミド系加硫促進剤は、スルフェンアミド構造を有する化合物であり、たとえば、N−シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられるが、なかでもN−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが好ましい。
【0058】
チウラム系加硫促進剤は、チウラム構造を有する化合物であり、たとえば、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等が挙げられるが、なかでもテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。
【0059】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜3質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜30質量部である場合は、硫黄の配合量がゴム成分100質量部に対して4質量部未満であり、加硫促進剤の配合量がゴム成分100質量部に対して0質量部超過2.1質量部未満であることが好ましい。硫黄の配合量が多すぎると、ゴム組成物系内での縮合物の反応と競争的に進行するために接着を低下させる。加硫促進剤が配合されないと、加硫反応が進行しづらく、加硫効率が悪化し、逆に加硫促進剤の配合量が多すぎると、縮合体が加硫促進剤と反応して界面での樹脂との反応が進行しなくなる。
この場合において、加硫促進剤がスルフェンアミド構造を有する化合物であるときは、スルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が0質量部超過1.5質量部未満であることが好ましい。スルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が配合されないと、加硫反応が進行しづらく、加硫効率が悪化し、逆にスルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が多すぎると、促進剤の反応が樹脂の反応と競合するために接着反応を阻害する。
この場合において、ゴム組成物が加硫促進剤としてスルフェンアミド構造を有する化合物およびチウラム構造を有する化合物を含むときは、チウラム構造を有する化合物の配合量が0質量部超過0.6質量部未満であることが好ましい。チウラム構造を有する化合物の配合量が配合されないと、硫黄配合量が接着に効果を及ぼしやすくなり、逆にチウラム構造を有する化合物の配合量が多すぎると、硫黄が放出がされるために接着反応が阻害される。
【0060】
ゴム成分はジエン系ゴムを含むことが好ましい。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。なかでも、隣接ゴム材料との共架橋性の観点から、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、それらの混合物が好ましい。ゴム成分中のジエン系ゴムの割合は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、ゴム成分のすべてがジエン系ゴムであることがさらに好ましい。
【0061】
ゴム成分は、より好ましくは、ブタジエンゴムを含む。さらに、ゴム成分の10〜100質量%がブタジエンゴムであることが好ましく、ゴム成分の50〜98質量%がブタジエンゴムであることがより好ましく、ゴム成分の70〜95質量%がブタジエンゴムであることがさらに好ましい。ゴム成分がブタジエンゴム以外のゴム成分を含む場合は、ブタジエンゴム以外のゴム成分としては、天然ゴムまたはイソプレンゴムが好ましい。すなわち、ゴム成分は、ブタジエンゴムと天然ゴムの組み合わせまたはブタジエンゴムとイソプレンゴムの組み合わせからなるものが特に好ましい。
【0062】
エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むフィルムと、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物を含むゴム組成物との組み合わせは、フィルムとゴム組成物の層との界面の接着性がきわめて良好であるので、特に好ましい。
ここで、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むフィルムとは、熱可塑性樹脂のフィルムであって熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むもの、または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムであって熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むものをいう。エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量は、好ましくは、熱可塑性樹脂のフィルムの場合、熱可塑性樹脂の総量の5〜100質量%、より好ましくは20〜70質量%であり、熱可塑性エラストマー組成物のフィルムの場合、熱可塑性樹脂成分の総量の5〜100質量%、より好ましくは20〜70質量%である。
【0063】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」ともいう。)は、エチレン単位(−CHCH−)とビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)とからなる共重合体であるが、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成単位を含有していてもよい。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン単位の含有量すなわちエチレン含有量が好ましくは5〜55モル%、より好ましくは20〜50モル%のものを使用する。エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が少なすぎるとポリアミド樹脂との相溶性に劣る。逆にエチレン含有量が多すぎると熱可塑性樹脂に含まれる水酸基の数が減るために接着力向上が期待できない。エチレン−ビニルアルコール共重合体はエチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物であるが、そのケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度が小さすぎると空気バリア性が低下し、また熱安定性も低下する。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、市販されており、たとえば、日本合成化学工業株式会社からソアノール(登録商標)の商品名で、株式会社クラレからエバール(登録商標)の商品名で入手することができる。エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール」(登録商標)H4815B(エチレン含有量48モル%)、A4412B(エチレン含有量42モル%)、DC3212B(エチレン含有量32モル%)、V2504RB(エチレン含有量25モル%)、株式会社クラレ製「エバール」(登録商標)L171B(エチレン含有量27モル%)、H171B(エチレン含有量38モル%)、E171B(エチレン含有量44モル%)などがある。
【0064】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムにゴム組成物を積層することによって製造することができる。限定するものではないが、より具体的には、次のようにして製造することができる。まず、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物を、インフレーション成形装置、Tダイ押出機等の成形装置でフィルム状に成形して、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを作製する。次に、ゴム組成物を、Tダイ押出機等で、前記フィルムの上に押出すと同時に積層して、積層体を製造する。
【0065】
本発明の空気入りタイヤは、常法により製造することができる。たとえば、タイヤ成形用ドラム上に、インナーライナー材として本発明の積層体を、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルム側がタイヤ成形用ドラムの方を向くように置き、その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、成形後、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとし、次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0066】
(1)フィルムの作製
表1に示す配合比率で原料を配合して熱可塑性エラストマー組成物を調製し、その熱可塑性エラストマー組成物をインフレーション成形装置で成形し、厚さ0.2mmのフィルムを作製した。作製したフィルムをフィルムAという。
【0067】
【表1】

【0068】
表2に示す配合比率で原料を配合して熱可塑性エラストマー組成物を調製し、その熱可塑性エラストマー組成物をインフレーション成形装置で成形し、厚さ0.2mmのフィルムを作製した。作製したフィルムをフィルムBという。
【0069】
【表2】

【0070】
宇部興産株式会社製ナイロン6/66「UBEナイロン5013B」をインフレーション成形装置で成形し、厚さ0.02mmのフィルムを作製した。作製したフィルムをフィルムCという。
【0071】
(2)ゴム組成物の調製
下記の原料を表3〜表6に示す配合比率で配合し、26種類のゴム組成物を調製した。
スチレンブタジエンゴム: 日本ゼオン株式会社製「Nipol 1502」
天然ゴム: SIR−20
ブタジエンゴム: 日本ゼオン株式会社製「Nipol BR1220」
イソプレンゴム: 日本ゼオン株式会社製「Nipol IR2200」
カーボンブラック: 東海カーボン株式会社製「シーストV」
ステアリン酸: 工業用ステアリン酸
アロマオイル: 昭和シェル石油株式会社製「デソレックス3号」
酸化亜鉛: 正同化学工業株式会社製「亜鉛華3号」
クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体: 田岡化学工業株式会社製「スミカノール610」
変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体: 田岡化学工業株式会社製「スミカノール620」
メチレンドナー: 変性エーテル化メチロールメラミン(田岡化学工業株式会社製「スミカノール507AP」)
硫黄: 5%油展処理硫黄
加硫促進剤(1): ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーDM」)
加硫促進剤(2): N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(大内化学工業株式会社製「ノクセラーNS」)
加硫促進剤(3): テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(大内化学工業株式会社製「ノクセラーTOT−N」)
過酸化物: 化薬アクゾ株式会社製「パーカドックス14/40」(1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼン40%含有)
樹脂架橋剤: 田岡化学工業株式会社製「タッキロール250−I」(臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体)
【0072】
(3)積層体の作製
上記(1)で作製したフィルムAおよびフィルムCの上に、上記(2)で調製したゴム組成物をそれぞれ0.7mmの厚さで押出積層し、52種類の積層体を作製した。
さらに、上記(2)で調製した実施例10〜14のゴム組成物については、上記(1)で作製した熱可塑性エラストマー組成物のフィルムBとの積層体も作製した。
【0073】
(4)積層体の評価
作製した積層体について、剥離強度、タイヤ剥離、タイヤ破壊を評価した。評価結果を表3〜表6に示す。なお、各評価項目の評価方法は次のとおりである。
【0074】
[剥離強度]
積層体の試料を、加硫後、幅25mmに切断し、その短冊状試験片の剥離強度をJIS−K6256に従い測定した。測定された剥離強度(N/25mm)を次の基準で指数化した。指数0以外はすべて良好の範囲である。
指数 剥離強度(N/25mm)
0 0以上 20未満
1 20以上 25未満
2 25以上 50未満
3 50以上 75未満
4 75以上100未満
5 100以上200未満
6 200以上
【0075】
[タイヤ剥離]
積層体をインナーライナー材として用いて、定法により、195/65R15サイズのタイヤを作製し、そのタイヤをリム15×6JJ、内圧200kPaとして、排気量1800ccのFF乗用車に装着し、市街地を30,000km走行した。その後、タイヤをリムから外し内面観察を行い、インナーライナー材として用いた熱可塑性樹脂積層体の剥離故障の有無を確認した。剥離がなかった場合を○で、剥離があった場合を×で表す。
【0076】
[タイヤ破壊]
積層体をインナーライナー材として用いて、定法により、195/65R15サイズのタイヤを作製し、そのタイヤをリム15×6JJ、内圧200kPaとして、排気量1800ccのFF乗用車に装着し、市街地を30,000km走行した。その後、タイヤをリムから外し内面観察を行い、インナーライナー材として用いた熱可塑性樹脂積層体のクラック、亀裂の有無を目視にて確認した。外観異常がなかった場合を○で、外観異常があった場合を×で表す。
【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
実施例1〜21はすべて良好な評価結果を示した。
比較例1は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体およびメチレンドナーを含まない従来技術に相当するものであり、タイヤ剥離があった。
比較例2は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体の配合量が少ないもので、タイヤ剥離があった。
比較例3は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体の配合量が多いもので、タイヤ剥離はなかったが、タイヤ破壊があった。
比較例4は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体の配合量に対するメチレンドナーの配合量の比が小さいもので、タイヤ剥離があった。
比較例5は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体の配合量に対するメチレンドナーの配合量の比が大きいもので、タイヤ剥離があった。
実施例10〜14は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むフィルム(フィルムB)とレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体を含むゴム組成物との組み合わせが、タイヤ剥離の点で特に優れていることを示す。
実施例15〜21は、ゴム成分として、ブタジエンゴムと天然ゴムの組み合わせ、およびブタジエンゴムとイソプレンゴムの組み合わせを用いたときが、タイヤ剥離の点で特に優れていることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の空気入りタイヤは、自動車用タイヤとして好適に利用することができる。本発明の積層体は、空気入りタイヤの製造に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体を含む空気入りタイヤであって、ゴム組成物がゴム成分、式(1)
【化1】

(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が0.5〜10であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物が加硫促進剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過20質量部以下であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して1.5質量部超過200質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜3質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜30質量部であり、硫黄の配合量がゴム成分100質量部に対して4質量部未満であり、加硫促進剤の配合量がゴム成分100質量部に対して0質量部超過2.1質量部未満であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
加硫促進剤がスルフェンアミド構造を有する化合物であり、スルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が0質量部超過1.5質量部未満であることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
ゴム組成物が加硫促進剤としてスルフェンアミド構造を有する化合物およびチウラム構造を有する化合物を含み、チウラム構造を有する化合物の配合量が0質量部超過0.6質量部未満であることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分がポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、エラストマー成分が臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
式(1)中、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが炭素原子数が1〜8個のアルキル基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記縮合物が、式(2)
【化2】

(式中、nは1〜20の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
式(1)中、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記縮合物が、式(3)
【化3】

(式中、mは1〜20の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
熱可塑性樹脂が、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が熱可塑性樹脂の総量の5〜100質量%であることを特徴とする請求項11または12に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分が、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が熱可塑性樹脂成分の総量の5〜100質量%であることを特徴とする請求項11または12に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
メチレンドナーが、変性エーテル化メチロールメラミン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、およびヘキサメトキシメチルメラミンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
ゴム成分がブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
ゴム成分の10〜100質量%がブタジエンゴムであることを特徴とする請求項16に記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との積層体であって、ゴム組成物がゴム成分、式(1)
【化4】

(式中、R、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が0.5〜10であることを特徴とする積層体。
【請求項19】
前記縮合物が、式(3)
【化5】

(式中、mは1〜20の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする請求項18に記載の積層体。

【公開番号】特開2012−177071(P2012−177071A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113847(P2011−113847)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【特許番号】特許第4858654号(P4858654)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】