説明

空気処理装置

【課題】調理終了後に自動的に残遅運転、脱臭性能の回復を行なう機能を備えた空気処理装置を得ること。
【解決手段】実施の形態の空気処理装置は、下方に位置する加熱調理器により加熱された被調理物から発生する汚染空気を捕集する吸込み口1と、前記吸込み口の上方に配置された風路2と、前記風路と並列して配置され、前記汚染空気を前記風路より上方に吹出す送風機3と、前記送風機の吹出し口の上方に接続され、上方向の屋外に接続された排気風路5と、側面方向の室内に室内開口を向けて接続された循環風路6と、前記排気風路と前記循環風路とへの風向きを切替えるダンパー7と、を内蔵したチャンバー4と、前記ダンパーと前記室内開口との間に位置して脱臭剤とヒーターを備えた脱臭装置と、前記加熱調理器による調理終了後、前記送風機を第1の所定時間の間運転し、その後、前記ヒーターを第2の所定時間の間加熱する制御回路12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気処理装置、特に厨房用空気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厨房用換気扇では加熱調理器上部に設置し屋外へ排気する台所用換気扇が一般的であった。しかしながら、室内空気を排出するため空調のロスが多く発生したり、排気の送風による室内の負圧を低減するために給気口を設ける必要があった。このため、加熱調理器で加熱された被調理物から発生する汚染空気を、屋外へ排出せずに汚染空気を浄化して室内に循環するものとして、汚染空気をフードで捕集した後に送風機によって多孔構造のフィルター等を通過、浄化し、屋内へ送風させ、光触媒脱臭装置やヒーター加熱による触媒の活性化で脱臭性能を維持させる技術が開示されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−322648号公報
【特許文献2】特開2010−207658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調理時に発生する汚染空気(油煙、臭気)を吸着・分解する脱臭装置において、ヒーター加熱による触媒の活性化で脱臭性能を維持させるが、加熱による再生処理を怠ると、調理時の脱臭性能が低下、または脱臭出来ないことになる。さらに、定期的に再生処理を実施しないと触媒が劣化してしまい、加熱再生を実施しても初期状態に戻り難くなり再生時間が長くなってしまうという課題があった。
【0005】
そこで効率良く触媒の活性化を実施する必要があるが、実施のタイミングが、エンドユーザーの調理頻度や調理内容によって異なる、再生処理のヒーター加熱を実施する時間、頻度がエンドユーザーでは分からない等といった課題がある。また上記加熱再生の実施、加熱再生を行う頻度、ヒーター加熱時間をエンドユーザーが判断し実施するのは手間がかかるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、調理時に発生する汚染空気を室内に循環する空気処理装置において、調理終了後に自動的に残遅運転、脱臭性能の回復を行なう機能を備えた空気処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、下方に位置する加熱調理器により加熱された被調理物から発生する汚染空気を捕集する吸込み口と、前記吸込み口の上方に配置された風路と、前記風路と並列して配置され、前記汚染空気を前記風路より上方に吹出す送風機と、前記送風機の吹出し口の上方に接続され、上方向の屋外に接続された排気風路と、側面方向の室内に室内開口を向けて接続された循環風路と、前記排気風路と前記循環風路とへの風向きを切替えるダンパーと、を内蔵したチャンバーと、前記ダンパーと前記室内開口との間に位置して脱臭剤とヒーターを備えた脱臭装置と、前記加熱調理器による調理終了後、前記送風機を第1の所定時間の間運転し、その後、前記ヒーターを第2の所定時間の間加熱する制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空気処理装置は、加熱調理器で加熱された被調理物から発生する汚染空気を捕集する吸込み口を備え、吸込み口上方に配置された風路と、風路の後方に配置され上方に吹出す送風機により汚染空気を室内から送風機上方のチャンバーへ送風する。チャンバーは、送風機の吹出し口の直上方に位置し上方向に屋外へと連通する排気風路と、室内に面した循環風路と、これらの排気風路と循環風路とへの風向きを切替えるダンパーを備える。このダンパーの向きの切り替えにより、屋外または室内に送風される。屋外または室内への送風は、室内の空調状況によって切替える。室内に送風される場合には、前記ダンパーと循環風路の室内開口の間に位置し、油煙・臭気を吸着・分解する脱臭装置により、清浄化された空気が送り出される。
【0009】
この脱臭装置の再生処理を加熱調理機の調理終了後行なうことにより、ユーザーによる定期的な再生処理を必要とせず、またこれの頻度、再生時間等を気にすることなく使用できるものである。また、この再生処理は加熱調理器の調理後、送風機による残遅運転を行いその後に再生処理を実施することで、厨房内にいやな臭気が残ることなく毎回脱臭装置の性能が回復できるものである。
【0010】
加熱時に発生する熱や臭気は、室温よりも高温であるため、チャンバーの排気風路を通じて自然に屋外へ排出するので、熱や臭気の室内拡散が簡易な構造であり低コストで防止することができる空気処理装置であり、省エネルギー、適用性、利便性を兼ね備えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、従来の形態にかかる空気処理装置の構成を示す側面断面図である。
【図2】図2は、従来の形態にかかる空気処理装置の構成を示す側面断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1にかかる空気処理装置を示す正面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1にかかる空気処理装置を示す側面断面図である。
【図5−1】図5−1は、本発明の実施の形態1にかかる換気時のダンパー位置を示す図である。
【図5−2】図5−2は、本発明の実施の形態1にかかる循環時のダンパー位置を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1にかかる制御回路の構成の概略を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1にかかる空気処理装置の風量特性を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態1にかかる脱臭剤(酸化マンガン)およびPd(パラジウム)の活性度の温度特性を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1にかかるヒーターを構成するフィンの断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1にかかる脱臭装置の臭気除去性能を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態1にかかるグリスフィルターを示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2にかかる動作フロー1を示す図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態3にかかる動作フロー2を示す図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態4にかかる動作フロー3を示す図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態2にかかる空気処理装置の運転制御を示す図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態3にかかる空気処理装置における臭気判定に基づいた運転制御の判定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる空気処理装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1および図2は、従来の形態にかかる空気処理装置を示す側面断面図である。図3は、本実施の形態にかかる空気処理装置を示す正面図であり、図4は、本実施の形態にかかる空気処理装置を示す側面断面図である。
【0014】
従来の形態にかかる空気処理装置においては、例えば、図1に示すように、加熱調理器で加熱された被調理物から発生する汚染空気を、送風機を経由して脱臭剤、光脱臭触媒を通過させ、室内へ浄化された空気が循環排出されるようになっている。光触媒装置は放電により光触媒が活性化し、また放電時に発生するオゾンの酸化作用で脱臭性能を維持するが、放電装置は高価で構造が複雑であり、また人体に有害なオゾンを除去するフィルターを設ける必要がある。
【0015】
また、図2に示す空気処理装置の様に、ヒーターと脱臭剤を設け、脱臭剤を加熱して活性化させる空気処理装置においては、加熱時発生する熱や臭気が室内に拡散するのを防止するために、断熱材で加熱素子周りを覆ったり、排気口シャッター等を設ける必要が生ずる。このため、機器の構成が複雑で高コストになるといった問題があった。さらに、これらの空気処理装置においては室内O2濃度を確保する機能や排湿の機能を有していないため、加熱調理器としては、CO2が発生するガス調理器は使用することができず、ハロゲンヒーターや電磁気式調理器に限定される。また、調理時に発生する湿度を排出できないため窓をあけて換気する必要がある。さらに、夏場の冷房時には調理の熱が室内に留まるため、換気よりも余計に空調が必要となるといった課題があった。
【0016】
図3、図4に示すように、本実施の形態にかかる空気処理装置では、加熱調理器で加熱された被調理物から発生する汚染空気を捕集する吸込み口1を備え、吸込み口1の上方に配置された風路2と、風路2の後方に配置され上方に吹出す送風機3により汚染空気を室内から送風機3の上方のチャンバー4へ送風する。
【0017】
図4に示すように、チャンバー4は送風機3の吹出し口の直上方に位置し、上方向の屋外へと連通する排気風路5と、室内に面した循環風路6と、これら排気風路5と循環風路6とへの風向きを切替えるダンパー7が備えられている。ダンパー7の向きにより、図5−1および図5−2に示すように、屋外(図5−1)または室内(図5−2)へと送風が切り替えられる。図5−1は、換気時のダンパー位置7aと風の流れを示している。図5−2は、循環時のダンパー位置7bと風の流れを示している。
【0018】
屋外または室内への送風は、夏場は換気、冬場は循環といった具合に、室内の空調状況によって省エネルギー効果が得られる送風風路に切替える。室内に送風される場合には、ダンパー7と循環風路6の室内開口の間に位置し、油煙・臭気を吸着・分解する脱臭剤を有する脱臭装置8により、清浄化された空気が送り出される。
【0019】
本実施の形態においては、繰り返し使用した後に油煙・臭気が脱臭装置8に備えられた脱臭剤に堆積する前に、ヒーター20への通電によって脱臭剤を加熱することによって脱臭剤の活性度を高め、油煙・臭気を分解する。ヒーター20への通電手段は、機器操作部(図示せず)に設置されたヒーター通電スイッチを押すことによって使用者が定期的に行ってもよいし、調理終了後の残遅運転が終了した後に毎回実施してもよい。
【0020】
図3に示すように、本実施の形態にかかる空気処理装置は制御回路12を備える。制御回路12の構成の概略図を図6に示す。図6に示すように、制御回路12は、加熱調理器25、送風機3、ヒーター20、ダンパー開閉装置、および臭気センサー15に接続され、これらを制御する、或いはこれらから情報を受け取る。制御回路12は、加熱調理器25による調理の終了の後、残遅運転として送風機3を第1の所定時間の間運転させる。その後、ヒーター20を第2の所定時間の間加熱するように制御する。
【0021】
ヒーター20での加熱時に発生する熱や臭気は室温よりも高温であるため、送風せずともチャンバー4の排気風路5を通じてドラフト効果で自然に屋外へ排出するので、熱や臭気の室内拡散を簡易な構造であり低コストで防止することができる。また、屋外へと連通する排気風路5は、送風機3の吹出し口の直上方に位置するので、屋外への圧力損失が小さく屋外への排気風量を確保することができる。
【0022】
本実施の形態でのチャンバー4と排気風路5の開口の圧力損失は、400m3/hの風量時に20Pa程度である。図7に本実施の形態にかかる空気処理装置と排気タイプの厨房用換気扇の風量特性を示す。図7に示すように排気を行うタイプの厨房用換気扇の送風機3を用いて本実施の形態にかかる空気処理装置とほぼ同等の風量を確保することができる。
【0023】
また、本実施の形態にかかる空気処理装置は十分な風量を確保できるため、例えばガス発生量に応じて、換気量を調整するような制御を設ければO2濃度が確保できる。このため、加熱調理器はハロゲンヒーターや電磁気式調理器に限定されず、CO2が発生するガス調理器に対しても適用が可能である。また室内外の空気条件と調理内容の条件によって結露が発生するような場合には、換気により室内の除湿を行えば、結露を抑えることが可能である。この結露を抑えるためには400m3/h程度の風量が必要と考えられるが、排気風路5を送風機3の吹出し口の直上方に位置させて、圧力損失を小さくした効果により、排気タイプの厨房用換気扇の送風機3を用いて400m3/h以上の風量を確保でき、結露を抑えることができる。
【0024】
また、従来の技術では夏場の冷房時にも調理器の熱が室内に留まるため換気よりも余計に空調が必要となっていた。しかし、本実施の形態にかかる空気処理装置の構成によればダンパー7の向きを変えることにより換気と循環を切替えることが可能となるので、夏場は換気、冬場は循環といった具合に切替えることで季節に関わらず1年中省エネルギー効果を確保できるようにすることができる。
【0025】
脱臭装置8に用いる脱臭剤としては、酸化マンガンを用いることにより貴金属を用いた場合に比較して安価であることに加え、低温度で活性化させることが可能である。このため、付着した油煙・臭気を油の発火温度360℃以下での加熱で分解することが可能となり、安全に再生することができる。例として、Pd(パラジウム)触媒を比較対象として、それぞれの活性度の温度特性を図8に示す。
【0026】
図8に示すように、Pd(パラジウム)触媒においては300℃程度の高温が必要であるが、二酸化マンガン触媒であれば100℃程度で大きな活性を示すため、180℃の温度で油煙を再生分解し長時間使用しても触媒の性能を維持できる。
【0027】
また、脱臭装置に用いるヒーター20は、正の温度係数の抵抗変化特性であるPTCヒーターを用いれば自己温度制御性を持つため、異常に高温になることがなく安全で、省エネルギー性を得ることができる。すなわち180℃以上で急激に電気抵抗が大きくなる特性を持ったヒーター20を使用することによりヒーター20の制御回路12が故障した場合でもヒーター20は180℃以上に上昇することがなく安全である。
【0028】
脱臭装置8に用いる脱臭剤は、ヒーター20に接触した金属のフィン21に担持させるとヒーター20と脱臭剤が空気を介して間接的に加熱する方式よりも熱のロスを小さくすることができ省エネルギー性を確保することができる。具体的には、図9の左上に示したように、アルミ製板金のフィン21にゼオライトと共に酸化マンガン触媒を担持させる。さらに脱臭装置8のサイズは小さくするほど製品に組み込み易く全体のサイズも小サイズ化が可能となる。しかし、それに伴い風路面積が小さくなるため圧力損失が大きく風量が少なくなる。また、臭気が脱臭剤に吸着、接触する面積も小さくなるため脱臭性能が小さくなる。
【0029】
この課題を解決するために、本実施の形態では金属のフィン21で構成された風路を図9に示すように曲げることによって、脱臭装置8の外形サイズが小さく、低圧力損失で十分な脱臭性能を確保することができる。本実施の形態に用いた送風機3のサイズは送風性能等を考慮し、幅360mm×高さ350mm×奥行225mmである。このとき、上述したように本実施の形態では、脱臭装置8を送風機3の上部に構成し、送風機3の直上部は排気風路5と循環風路6につながるチャンバー4のスペースとする。
【0030】
また空気処理装置全体の製品の高さを600mm以内に収め、さらに送風機3の上部には凹凸がなくデザイン性の良い外観とするために、脱臭装置8は幅400mm×高さ125mm×奥行45mm程度とすることが必要である。製品の高さを600mm以内に収める理由は、床からの天井の高さが2200mmの居室において、高さ800mmの加熱調理器と組み合わせたときに、加熱調理器の天面から空気処理装置の離隔距離が防災上十分な800mmを確保できるようにするためである。
【0031】
本実施の形態におけるフィン21の形状は、図9に示すようにフィン21の風路の入口・出口部においてそれぞれ2回ずつ曲げることにより、上記したサイズを確保し、圧力損失と脱臭性能を確保することができた。圧力損失は、200m3/hの風量時に26Pa程度である。脱臭性能は、1m3ボックス内100ppmのアセトアルデヒドの除去率の試験により確認した結果、図10に示すように曲げ無しのフィンと比較して臭気が短時間で除去されることが確認できた。
【0032】
吸込み口1の手前に油煙・湯気を除去するグリスフィルター9を設置し、吸込み口1より風下の構成部品の汚れを防止することにより、さらにメンテンナンス軽減や省エネルギー性を得ることができる。グリスフィルター9は低い位置にあるので使用者による清掃がしやすく、また大きな粒子径の油煙等を除去することにより、高い位置にあってメンテナンスがやりにくい送風機3や脱臭剤の汚れを低減することができる。また、ヒーター脱臭剤へ油煙等の付着量を抑えるので加熱時の消費電力を抑えることができる。
【0033】
グリスフィルター9として、10メッシュのものを2層以上設置すると、風下の送風機3等に付着する油煙は極微量であるので、清掃せずとも気にならない程度に抑えられることがわかった。メッシュの大きさは目が細かいと油煙の捕集率は良いが調理時に発生する湯気による目詰まりが起ってしまう。目詰まりが起こらないためには10メッシュ以上の開き目の大きさにすると良い。ただし、開き目が大きいと1層では十分な捕集性が得られないために2層とする。また10メッシュは2層に重ねても清掃性は問題ないため、図11に示すように2層をまとめて金属枠等の保護枠で固定したものを、1枚以上設置することで、捕集性があり、かさばらず取扱いのよいフィルターとすることができる。
【0034】
図3に示すように、チャンバー4の脱臭装置8の側方に仕切り板を有し、この仕切り板から側方を汚染空気から切離した風路外のスペース10a、10bとする。この風路外のスペース10a、10bにダンパー開閉装置、ヒーター配線部を配置することにより、これらの電気部品は汚染空気の接触が無く防水・防塵の処理をせずとも長期間の信頼性を確保することができる。
【0035】
また、風路2と送風機3との間に仕切り板を有し、汚染空気から切離した風路外のスペース11を設け、ここに送風機3、ヒーター20等の運転制御をする制御回路12を配置することにより、これらの電気部品は汚染空気の接触が無く防水・防塵の処理をせずとも長期間の信頼性を確保することができる。送風機3のケーシングは円に近い形状であるため風路を矩形形状とした場合にスペースが発生し、制御回路12を配置することができる。
【0036】
また、屋外へと連通する排気風路5に、熱感知式の防火ダンパー13を備えることにより、万が一、てんぷら等の調理時に鍋等から発火したり、脱臭装置8内のヒーター20から発火したときに熱を感知し、風路を遮断することができる。これにより、配管を伝っての延焼を防ぐことが可能となり安全性を確保することができる。防火ダンパー13の熱感知の方法は、サーミスタ等のセンサーによる方式でもよいが、金属が溶融する温度ヒューズによってバネ動作する方式を採用することによって、より簡易な構造とすることができる。
【0037】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2にかかる空気処理装置の動作について図12のフローチャートに基づいて説明する。本実施の形態にかかる空気処理装置は実施の形態1と同様であり、図3および図4に示される。図12のフローチャートに従った空気処理装置の動作は制御回路12により実行される。
【0038】
まず、ステップS101において加熱調理器25で調理が開始される。すると、ステップS102では加熱調理器25より発信されるON信号を、制御回路12で受信し、送風機3は自動的に運転を開始する。ステップS103にて加熱調理器25の調理が終了した際は、加熱調理器25より発信されるOFF信号を制御回路12で受信し、送風機3の運転を停止させる。ただし、調理の際に被調理物から発生する汚染空気は、加熱調理器25での調理が終了した後も室内に残存する。そのため、本実施の形態においては、ステップS104に示すように、調理が終了した後に、送風機3を自動で運転する残遅運転機能を備える。残遅運転は、例えば、図15に示すようなノッチおよび時間(第1の所定時間)で実行される。これにより、室内に残存した汚染空気を処理することができる。
【0039】
その後、ステップS105にて残遅運転を終了し、さらにその後に、ステップS106で空気処理装置のヒーター20へ通電し脱臭剤の加熱再生を開始する。ステップS106において、脱臭剤を加熱し性能を回復することにより、脱臭剤の劣化を防ぐことができる。例えば、図15に示したような所定の加熱時間(第2の所定時間)にわたり加熱した後、ヒーター20への通電を切る(OFF)(ステップS107)。ステップS107の後はステップS101に戻る。
【0040】
本実施の形態における残遅運転の時間や、ヒーター20の加熱時間を、あらかじめ設定しておくことで、図12のフローチャートに示すように、調理終了後に自動的に残遅運転を実施し、残遅運転終了後に加熱再生を実施するという運転制御を行なうことができる。設定する運転時間等は、例えば図15に示すように、室内に残存する臭気を除去するために残遅運転を10分間、弱ノッチで運転し油煙や臭気を脱臭装置に吸着させ、残遅運転終了後にヒーターを10分間加熱することで付着した油煙や臭気を分解する。この10分間という加熱時間は、先に図10において示したように、ヒーター加熱による触媒の活性化が有効に実現される時間である。
【0041】
これにより、従来、触媒の活性化をエンドユーザーに実施させることにより手間がかかっていたといった問題を解決することができる。また、再生処理を実施するタイミングが、エンドユーザーの調理頻度や調理内容に依存して異なってくるといった問題や、加熱による再生処理を怠り、調理時の脱臭性能が低下、または脱臭出来なくなってしまうという問題を解決することができる。また、再生処理のヒーター加熱を実施する時間、頻度がエンドユーザーでは分からないといった問題を解決することができる。また、調理後に必ず再生処理を実施することにより、定期的に再生処理を実施しないと触媒が劣化してしまい、期間を空けて加熱再生を実施しても初期状態に戻らせるのが難しくなって再生時間が長くなってしまうという問題を解決することができる。
【0042】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3にかかる空気処理装置の動作について図13のフローチャートに基づいて説明する。本実施の形態にかかる空気処理装置は実施の形態1と同様であり、図3および図4に示される。図13のフローチャートに従った空気処理装置の動作は制御回路12により実行される。
【0043】
図3に示すように吸込み口1の上方に配置された風路2内に、臭気センサー15を搭載することも可能である。臭気センサー15は吸込み口1の近傍に設置することにより、加熱調理器25で加熱された被調理物から発生した汚染空気の臭気濃度を、臭気が拡散する前に測定が可能である。また調理を行なっていない場合は、室内の臭気濃度を測定することができる。
【0044】
臭気センサー15により調理時に発生する臭気濃度を測定することで、図13のフローチャートに示すように調理内容に合わせて残遅運転の有無または運転ノッチや時間、ヒーター加熱の有無や時間を判断し運転を自動制御することができる。
【0045】
本実施の形態にかかる空気処理装置の動作について図13のフローチャートに基づいて説明する。ステップS201〜S203は実施の形態2(図12)のステップS101〜S103とそれぞれ同様である。ステップS203で調理が終了すると、次に、ステップS204で臭気センサー15による臭気判定を実施する。ステップ5で臭気測定結果により、運転時間等の判定を行なう。運転時間等の判定方法は、臭気センサー15で測定した臭気成分の含有率に依存して決定する。
【0046】
例えば、図16に示すように、調理時に発生する例えばアセトアルデヒドなどの臭気成分の含有率の測定結果が、例えば悪臭防止法に定められる濃度以下(0〜0.05ppm)の場合(ステップS204:臭気無(微量))には、ステップS205に進み、送風機3を停止する。従ってこの場合は、実施の形態2(図12)で行ったステップS104の残遅運転やステップS106のヒーター加熱再生は実施しない。ステップS204において臭気無(微量)と判定される場合とは、例えば、湯沸し等の臭気成分を発生させない調理の場合である。ステップS205の後は、ステップS201に戻る。
【0047】
ステップS204における判定にて、アセトアルデヒドの含有率が0.05ppm以上であると判定された場合(ステップS204:臭気有)には、ステップS206に進み、アセトアルデヒドの含有率に応じて、例えば図16に従って、残遅運転の運転ノッチ・時間および脱臭剤の加熱時間を決定する。
【0048】
ステップS206の後は、実施の形態2(図12)のステップS104〜S107と同様に、残遅運転開始(ステップS207)、残遅運転終了(ステップS208)、脱臭剤加熱再生開始(ステップS209)、脱臭剤加熱再生完了(ステップS210)と進む。ステップS210の後は、ステップS201に戻る。本実施の形態においては、ステップS206において、臭気濃度、即ち、アセトアルデヒドの含有率に応じて、例えば図16に従って、残遅運転の運転ノッチ・時間および脱臭剤の加熱時間などを変化させる。
【0049】
例えば、アセトアルデヒドの含有率が0.05ppm〜0.5ppmと判定された場合には、含有率が0.05ppm〜0.1ppmの範囲と0.1ppm〜0.5ppmの範囲とで、残遅運転(ステップS207〜S208)の運転時間と、ヒーター加熱再生(ステップS209〜S210)の時間を図16の例に示したように変化させるといった制御方法が考えられる。上記で示した残遅運転や加熱再生時間の制御方法はあくまでも一例であり、脱臭剤の性能や、測定する臭気の種類により判定方法、残遅運転の時間や加熱時間は変更してかまわない。
【0050】
また、アセトアルデヒドの含有率が0.5ppm以上の場合には残遅運転開始時(ステップS207)に残遅運転のノッチ(風量)を切り替え、即ち循環(図5−2)→排気(換気)(図5−1)へダンパー7を切替えることで、残遅運転を中ノッチの排気で開始して臭気を排出する。その後、残遅運転(ステップS207〜S208)の途中で弱ノッチへ切り替え、ダンパー7を循環運転に切り替えて残遅運転が終了するまで継続する。その後、ヒーター加熱再生(ステップS209〜S210)を実施するといった制御方法も考えられる。
【0051】
具体的には、図16に示すように、アセトアルデヒドの含有率が0.5ppm〜1.0ppmの場合は、残遅運転(ステップS207〜S208)は、3分間の中ノッチの排気(図5−1)で開始(ステップS207)して臭気を排出する。その後、ダンパー7を循環(図5−2)に切替え、5分間弱ノッチで循環運転を行って残遅運転を終了する(ステップS208)。その後のヒーター加熱再生(ステップS209〜S210)を15分間行う。アセトアルデヒドの含有率が1.0ppmより高い場合は、残遅運転(ステップS207〜S208)は、5分間の中ノッチの排気(図5−1)で開始(ステップS207)して臭気を排出する。その後、ダンパー7を循環(図5−2)に切替え、5分間弱ノッチで循環運転を行って残遅運転を終了する(ステップS208)。その後のヒーター加熱再生(ステップS209〜S210)を20分間行う。
【0052】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4にかかる空気処理装置の動作について図14のフローチャートに基づいて説明する。本実施の形態にかかる空気処理装置は実施の形態1と同様であり、図3および図4に示される。図14のフローチャートに従った空気処理装置の動作は制御回路12により実行される。
【0053】
本実施の形態においては、ステップS301〜S308は実施の形態3(図13)のステップS201〜S208とそれぞれ同様であり、ステップS311、S312は実施の形態3(図13)のステップS209、S210とそれぞれ同様である。
【0054】
本実施の形態においては、ステップS308の残遅運転終了後にステップS309において再度、臭気センサー15による臭気判定を実施する。ステップS309で臭気無し(または微量)と判定された場合(ステップS309:臭気無(微量))は、ステップS311のヒーター加熱再生を実施する。さらに、ステップS312で脱臭剤加熱再生完了となった後は、ステップS301にもどる。
【0055】
ステップS309で臭気有りと判定された場合(ステップS309:臭気有)には、ステップS310の残遅運転を継続に進み、ステップS306〜S309をステップS309で、臭気無し(または微量)と判定される(ステップS309:臭気無(微量))まで繰返す。このようにして残遅運転の継続有無を判定する制御方法も考えられる。
【0056】
調理時に発生する汚染空気(油煙、臭気)を吸着・分解する脱臭装置においては、ヒーター加熱による触媒の活性化で脱臭性能を維持させることができるが、触媒の活性化を実施するタイミングが、エンドユーザーの調理頻度や調理内容によって異なるという問題があった。また調理時に発生する汚染空気が調理終了後も室内に残存するため、調理終了後も運転を行なう場合があるが、調理後の残遅運転機能が搭載されていないものに対しては、エンドユーザーの判断で運転ノッチ、運転時間を決定する必要があった。その場合に適切な風量設定が行なわれない、運転していることを忘れてしまうなどの課題がある。また残遅運転機能を搭載するものにあっては、運転ノッチ、運転時間を製造メーカーが設定しているが、臭気を取り除く前に停止してしまうなどの課題があり、結果的にエンドユーザーが再度運転を行なう等の問題があった。
【0057】
しかし以上説明したように、本実施の形態に係る空気処理装置により、上述したような、エンドユーザーの調理内容によりメンテナンスのタイミングが変わってしまうという問題を解決することが可能となる。また調理内容に合わせ最適な風量と運転時間、再生時間が得られることから消費電力の削減も可能となる。
【0058】
更に、本願発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。
【0059】
例えば、上記実施の形態1乃至4それぞれに示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。更に、上記実施の形態1乃至4にわたる構成要件を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる空気処理装置は、省エネルギーに有用であり、特に、メンテナンスが不要な脱臭装置を備え、かつ、加熱調理器は限定されることがないので、広い範囲の厨房において快適な空間を確保することが可能な厨房用空気処理装置に適している。
【符号の説明】
【0061】
1 吸込み口
2 風路
3 送風機
4 チャンバー
5 排気風路
6 循環風路
7 ダンパー
7a 換気時のダンパー位置
7b 循環時のダンパー位置
8 脱臭装置
9 グリスフィルター
10a、10b、11 風路外のスペース
12 制御回路
13 防火ダンパー
15 臭気センサー
20 ヒーター
21 フィン
25 加熱調理器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に位置する加熱調理器により加熱された被調理物から発生する汚染空気を捕集する吸込み口と、
前記吸込み口の上方に配置された風路と、
前記風路と並列して配置され、前記汚染空気を前記風路より上方に吹出す送風機と、
前記送風機の吹出し口の上方に接続され、上方向の屋外に接続された排気風路と、側面方向の室内に室内開口を向けて接続された循環風路と、前記排気風路と前記循環風路とへの風向きを切替えるダンパーと、を内蔵したチャンバーと、
前記ダンパーと前記室内開口との間に位置して脱臭剤とヒーターを備えた脱臭装置と、
前記加熱調理器による調理終了後、前記送風機を第1の所定時間の間運転し、その後、前記ヒーターを第2の所定時間の間加熱する制御回路と、
を備えることを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
臭気濃度を測定する臭気検知手段をさらに備え、
前記臭気検知手段による測定結果に基づいて第1の所定時間を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
【請求項3】
臭気濃度を測定する臭気検知手段をさらに備え、
前記臭気検知手段による測定結果に基づいて第2の所定時間を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
【請求項4】
前記臭気検知手段による測定結果に基づいて第1の所定時間の間の前記送風機の風量を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の空気処理装置。
【請求項5】
前記臭気検知手段による測定結果に基づいて第1の所定時間の間の前記ダンパーの切り替えによる風向きを決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の空気処理装置。
【請求項6】
前記送風機を第1の所定時間の間運転した後、前記臭気検知手段による再測定結果に基づいて、前記ヒーターを加熱する、或いは前記送風機を運転する、のいずれかを決定する
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項7】
前記臭気検知手段は前記吸込み口の近傍に備えられている
ことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項8】
前記脱臭剤は酸化マンガンである
ことを特徴とした請求項1〜7のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項9】
前記脱臭装置は、前記ヒーターに接触しそれぞれ少なくとも1つ以上の屈曲部を有しつつ並列した複数のフィンを備え、前記脱臭剤は当該フィンが担持している
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項10】
前記吸込み口の下方に前記汚染空気を通過させるグリスフィルターをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項11】
前記チャンバーは、前記排気風路および前記循環風路から仕切り板によって隔離したスペースを側方に備え、当該スペースに前記ダンパーの開閉装置、前記ヒーターの配線部を配置している
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項12】
前記風路から仕切り板によって隔離したスペースを前記風路の側方に備え、当該スペースに、前記送風機および前記ヒーターの制御回路を配置している
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項13】
前記排気風路は、熱感知式の防火ダンパーを備える
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の空気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−229840(P2012−229840A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97496(P2011−97496)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】