説明

空気抜き弁

【課題】流体に含まれる不純物や沈殿物が弁体の弁座当接面に付着し難い空気抜き弁を提供する。
【解決手段】空気抜き弁Aは、フロート1と、弁体2と、弁座3と、弁体を閉弁方向へ付勢するバネ4と、フロートと弁体とに係合してフロートの下降時に弁体を開弁方向へ駆動するリンク機構5と、を有する弁機構と、弁機構を収容するケーシング6とを備え、流体空気流入口8と空気排出口7とがケーシングに形成され、弁体は水平動し、弁体の側端面が弁座に当接離脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体配管に使用される空気抜き弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体が流れる配管に使用される空気抜き弁であって、フロートと、フロートにより上下駆動される弁体と、弁体が当接離脱する弁座とを有する弁機構と、弁機構を収容するケーシングと、ケーシングに形成された流体空気流入口と空気排出口とを有する空気抜き弁が特許文献1に開示されている。
特許文献1の空気抜き弁においては、弁体は上下動し、弁体の上端面が弁座に当接離脱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−245374
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気抜き弁には、排出空気に連行されて弁体の弁座との当接面である弁体上端面に付着した流体に含まれる不純物や沈殿物が、弁体上端面上に堆積し、空気抜き弁のシール性能が損なわれるという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、流体に含まれる不純物や沈殿物が、弁体の弁座との当接面に付着し難い空気抜き弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、フロートと、弁体と、弁座と、弁体を閉弁方向へ付勢するバネと、フロートと弁体とに係合してフロートの下降時に弁体を開弁方向へ駆動するリンク機構と、を有する弁機構と、弁機構を収容するケーシングとを備え、流体空気流入口と空気排出口とがケーシングに形成され、弁体は水平動し、弁体の側端面が弁座に当接離脱することを特徴とする空気抜き弁を提供する。
空気が排出される際に空気に連行された流体が弁体側端面に付着しても、重力を受けて下方へ落下するので、弁体側端面に残留し難い。従って流体に含まれる不純物や沈殿物は、弁体の弁座との当接面である弁体側端面に付着し難い。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、フロート外周側面に対峙するケーシング内周側面に、周方向に互いに間隔を隔てて上下に延在する複数の線状突起が形成され、前記線状突起がフロート外周側面に近接している。
複数の線状突起に案内されることにより、フロートの上下動が安定し、弁の開閉が安定する。
本発明の好ましい態様においては、弁体外周側面に対峙するケーシング内周側面に、周方向に互いに間隔を隔てて水平に延在する複数の線状突起が形成され、前記線状突起が弁体外周側面に近接している。
複数の線状突起に案内されることにより、弁体の水平動が安定し、弁の開閉が安定する。
本発明の好ましい態様においては、ケーシングは、弁機構を収容し空気排出口が形成された第1部分と、流体空気流入口が形成されると共に流体配管に接続固定される第2部分とを有し、第1部分が第2部分にワンタッチ接続されている。
弁機構が経時劣化した時に、既存の弁機構を収容した既存のケーシング第1部分を新品の弁機構を収容した新品のケーシング第1部分に交換すれば良いので、保守作業が容易になる。ケーシング第1部分とケーシング第2部分との接続はワンタッチ接続なので、保守作業は更に容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例に係る空気抜き弁の構造図である。(a)は閉弁時の縦断面図であり、(b)は(a)のb−b矢視図であり、(c)は(b)の部分拡大図であり、(d)は(a)のd−d矢視図であり、(e)は(d)の部分拡大図であり、(f)は(a)のf−f矢視図であり、(g)は(f)の部分拡大図である。
【図2】本発明の実施例に係る空気抜き弁の開弁時の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例に係る空気抜き弁を説明する。
図1に示すように、空気抜き弁Aは、縦置き円柱体のフロート1と、弁体部2aと弁軸2bとを有する横置き円柱体の弁体2と、弁体部2aの側端面に対峙する環状弁座3と、一端が弁体部2aに係合し他端が後述する座金5bに係合して弁体2を閉弁方向へ付勢するバネ4と、フロート1と弁体2との間のリンク機構5と、を有する弁機構αと、弁機構αを収容するケーシング6とを備えている。
リンク機構5は、フロート1の上端に突設された有頭ピン5aと、弁軸2bが摺動可能に挿通されると共にケーシング6に螺合固定された座金5bと、弁軸2bの端部に係止された止め輪5cと、一端5d’が有頭ピン5aの頭部に係合し、屈曲した他端5d”が座金5bに係合し止め輪5cに係合離脱するレバー5dとを有している。座金5bには、弁軸2bの挿通穴に加えて複数の貫通穴5b’が形成されている。
ケーシング6は、弁機構αを収容し空気排出口7が形成された第1部分6aと、流体空気流入口8が形成されると共に図示しない流体配管に接続固定される第2部分6bとを有している。第1部分6aは、Uピン9を用いて第2部分6bにワンタッチ接続されている。第1部分6aと第2部6bとの接続部はOリング10によりシールされている。
フロート1外周側面に対峙するケーシングの第1部分6a内周側面に、周方向に互いに間隔を隔てて上下に延在する複数の線状突起6cが形成されている。線状突起6cは、フロート1外周側面に形成された複数の周突起1aに、微少隙間を隔てて対峙している。
弁体部2a外周側面に対峙するケーシングの第1部分6a内周側面に、周方し向に互いに間隔を隔てて水平に延在する複数の線状突起6dが形成されている。線状突起6dは、弁体部2a外周側面に微少隙間を隔てて対峙している。
【0009】
空気抜き弁Aの作動を説明する。
ケーシング第2部分6bが図示しない水道配管に螺合固定した状態で、空気抜き弁Aが前記水道配管に接続固定されている。図1に示すように、フロート1は縦置き状態になっており、弁体2は横置き状態になっている。空気排出口7は流体空気流入口8よりも上方に位置している。
水道水と水道水に混入した空気とが、流体空気流入口8を介してケーシング6内に流入している。ケーシング6内の水位WLは、弁座3によって囲まれると共に空気排出口7の一部を形成する弁穴7aよりも若干下方に在り、フロート1はケーシング6内水道水中に浮かんでいる。リンク機構のレバー5dの他端5d”は座金5bに係合すると共に止め輪5cから離脱している。バネ4の付勢力を受けた弁体部2aの側端面が弁座3に当接して、弁穴7a、ひいては空気排出口7を閉じている。
水道配管内の空気が流体空気流入口8を通ってケーシング6内に流入し、フロート1外周側面と当該外周側面に対峙するケーシング6内周側面との間の隙間を通って、フロート1上方のケーシング6上部に流入する。図2に示すように、ケーシング6上部に溜まった空気の圧力が上昇して水面を下方へ押し下げ、ケーシング6内の水位WLが低下する。水位WLの低下に追随して水道水中に浮かぶフロート1もケーシングの線状突起6cに案内されて下降する。有頭ピン5aに係合するレバー5dの一端5d’がフロート1に追随して下方へ移動し、レバー5の屈曲した他端5d”が当該他端先端を中心にして図中時計回りに回動し、他端基部が止め輪5cに係合して止め輪5cを図中右方向へ駆動し、ひいては弁体2をバネ4の付勢力に抗して図中右方向へ水平駆動する。弁体部2aの側端面が弁座3から離脱して、弁穴7a、ひいては空気排出口7を開く。
ケーシング6の上部に溜まった空気が、座金5bの貫通穴5b’と、弁体部2a外周側面とケーシング6内周側面との間の隙間と、空気排出口7とを介して外部環境に放出される。
ケーシング6上部の空気圧が低下し、ケーシング6内の水位WLが上昇し、フロート1も水位WLの上昇に追随して上方へ移動し、レバー5の屈曲した他端5d”が当該他端先端を中心にして図2中反時計回りに回動する。他端5d”の反時計回りの回動に追随して、バネ4の付勢力の下に止め輪5c、ひいては弁体2がが図2中左方向へ水平移動し、弁体部2aの側端面が弁座3に当接して、弁穴7a、ひいては空気排出口7を閉じる。他端5d”が止め輪5cから離脱し、座金5bのみに当接する。
【0010】
空気抜き弁Aにおいては、弁体2は水平動し、弁体部2aの側端面が弁座3に当接離脱するので、ケーシング6から空気が排出される際に空気に連行された水道水が弁体部2aの側端面に付着しても、重力で下方へ落下し、弁体部2aの側端面に残留し難い。従って水道水に含まれる不純物や沈殿物は、弁体2の弁座3との当接面である弁体部2a側端面に付着し難く、空気抜き弁Aのシール性は損なわれ難い。
複数の線状突起6cに案内されることにより、フロート1の上下動が安定し、弁体2による弁穴7aの開閉動作が安定する。フロート1と線状突起6cとの接触は周突起1aと線状突起6cとの間の点接触なので、フロート1はケーシング内の水位WLの変化に速やかに応答して動くことができる。
複数の線状突起6dに案内されることにより、弁体2の水平動が安定し、弁体2による弁穴7aの開閉動作が安定する。
弁機構αが経時劣化した時に、既存の弁機構αを収容した既存のケーシング第1部分6aを新品の弁機構αを収容した新品のケーシング第1部分6aに交換すれば良いので、保守作業が容易になる。ケーシング第1部分6aとケーシング第2部分6bとの接続はワンタッチ接続なので、保守作業は更に容易になる。
【0011】
ケーシング6aに線状突起6c、6dを形成するのに代えて、フロート1周側面、弁体部2a周側面に複数の線状突起を形成しても良い。
閉弁時にレバー5の他端部5d”が座金5bと止め輪5cとに当接するように構成しても良い。但し、閉弁時に他端部5d”と止め輪5cとの間に僅かの隙間を設ける構成には、フロート1の下降に伴う他端部5d”の回動をスムーズに開始させられる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、空気抜き弁に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0013】
A 空気抜き弁
1 フロート
1a 周突起
2 弁体
2a 弁体部
2b 弁軸
3 弁座
4 バネ
5 リンク機構
6 ケーシング
6a 第1部分
6b 第2部分
7 空気排出口
7a 弁穴
8 流体空気流入口
9 Uピン
10 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートと、弁体と、弁座と、弁体を閉弁方向へ付勢するバネと、フロートと弁体とに係合してフロートの下降時に弁体を開弁方向へ駆動するリンク機構と、を有する弁機構と、弁機構を収容するケーシングとを備え、流体空気流入口と空気排出口とがケーシングに形成され、弁体は水平動し、弁体の側端面が弁座に当接離脱することを特徴とする空気抜き弁。
【請求項2】
フロート外周側面に対峙するケーシング内周側面に、周方向に互いに間隔を隔てて上下に延在する複数の線状突起が形成され、前記線状突起がフロート外周側面に近接していることを特徴とする請求項1に記載の空気抜き弁。
【請求項3】
弁体外周側面に対峙するケーシング内周側面に、周方向に互いに間隔を隔てて水平に延在する複数の線状突起が形成され、前記線状突起が弁体外周側面に近接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気抜き弁。
【請求項4】
ケーシングは、弁機構を収容し空気排出口が形成された第1部分と、流体空気流入口が形成されると共に流体配管に接続固定される第2部分とを有し、第1部分が第2部分にワンタッチ接続されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の空気抜き弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−40637(P2013−40637A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176523(P2011−176523)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(391060029)株式会社ダンレイ (32)
【Fターム(参考)】