空間・周波数分割多元接続装置および空間・周波数分割多元接続方法
【課題】 周波数選択性フェージング伝搬環境や独立な伝送路の形成が難しいサブキャリアの存在する伝搬環境において、伝送速度が高くかつビット誤り率を低減する。
【解決手段】 サブキャリア割当部が送信可能なビット数または所要送信電力を参照し、送信ビット数が増加し、所要送信電力が低減するように、送信データの系統数およびサブキャリアごとの受信アンテナの組を伝搬環境の変動に応じて適応的に選択し、所要品質を満足するように各サブキャリアの送信ビット数および送信電力を調整する。
【解決手段】 サブキャリア割当部が送信可能なビット数または所要送信電力を参照し、送信ビット数が増加し、所要送信電力が低減するように、送信データの系統数およびサブキャリアごとの受信アンテナの組を伝搬環境の変動に応じて適応的に選択し、所要品質を満足するように各サブキャリアの送信ビット数および送信電力を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いて同時に、同一周波数帯域内の複数のチャネルの信号を送受信するMIMO(Multiple Input Multiple Output) 通信を行う空間・周波数分割多元接続装置および空間・周波数分割多元接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光アクセス等の普及に伴う様々な大容量サービスに対応するため、無線通信の伝送速度の向上が要求されている。伝送速度は占有する周波数帯域に比例するため、周波数帯域を拡大することにより伝送速度の向上は可能である。しかし、実際の周波数資源は有限であるため、周波数帯域の拡大には限界がある。また、周波数帯域を増加させずに伝送速度を向上する方法として、1シンボルあたり2ビットを伝送するQPSKや、1シンボルあたり6ビットを伝送する64QAMのような変調多値数の大きい変調方式を用いる方法がある。しかし、多値数の増加に伴い信号点間距離が減少することでノイズによる誤りやハードウェアの特性による誤りが発生しやすくなり、良好な通信品質を確保するために高い信号対雑音比が必要となり、この方法で伝送速度を大きく向上させる難しい。
【0003】
そこで、これらの方法を用いずに周波数の利用効率を上げて伝送速度を向上する空間分割多元接続が提案されている。空間分割多元接続は、図6に示すように、送信機のアンテナから送信する信号に位相・振幅の重み付けをすることにより、あるいは受信機のアンテナに受信する信号に位相・振幅の重み付けをすることにより、同一周波数を用いる各受信機への送信信号1,2,3を空間的に分離し、同時に送信可能になる。これにより、空間分割多元接続を行わない場合の伝送速度に比べて、空間分割多元接続を行った場合の合計の伝送速度を増加させることができる。
【0004】
図7は、従来の空間分割多元接続装置の構成例を示す。ここでは、2本のアンテナを搭載する送信機21と、1本のアンテナを搭載する2台の受信機22a,22bとの間で空間分割多元接続する構成について説明する。また、本構成では、複数のサブキャリアを用いて信号を伝送するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 変調を併用するものとする。また、本構成ではサブキャリア数を2とした場合を示すが、実際のシステムでは数十から数千程度のサブキャリアが使用される。
【0005】
送信データ部1aは、送信機21から受信機22aへ送信する系統1の送信データを保持する。送信データ部1bは、送信機21から受信機22bへ送信する系統2の送信データを保持する。各系統の送信データは、分配部2a,2bでそれぞれ各サブキャリアに分配される。なお、各系統の送信データが使用するサブキャリアは、いずれもサブキャリア1およびサブキャリア2であり、使用するサブキャリアを共有するものとする。分配部2a,2bで分配された送信データは、サブキャリア変調部9a,9bでサブキャリア変調される。サブキャリア変調には、1シンボル当たり1ビットを伝送するBPSKや1シンボル当たり8ビットを伝送する 256QAMなど、システム設計に応じた様々な変調方式が用いられる。
【0006】
ここで、ある時刻の系統1、サブキャリア1、サブキャリア変調後における送信シンボルをAとし、系統2、サブキャリア1、サブキャリア変調後における送信シンボルをBとする。これらから構成される送信信号dは
【0007】
【数1】
【0008】
と表される。
この送信信号dは空間分割多元接続が可能になるように、すなわち受信機22a,22bがシンボルAおよびシンボルBをそれぞれ受信できるように、重み乗算部4aで位相・振幅の調整が行われる。この重み乗算部4aの重みは、重み計算部11が伝搬パラメータ推定部12の保有する送受信アンテナ間の伝搬パラメータを参照して算出する。サブキャリア2に対応する送信信号についても同様に、重み乗算部4bで位相・振幅の調整が行われる。
【0009】
ここで、伝搬パラメータの定義と伝搬パラメータ推定部12の動作について説明する。本構成では、2本の送信アンテナ6a,6bから信号が送信され、各送信信号はそれぞれ異なる空間を通過して異なる変動を受け、2本の受信アンテナ7a,7bで受信される。送信アンテナ6aから出力アンテナ7aへの伝搬パラメータをh11、送信アンテナ6aから出力アンテナ7bへの伝搬パラメータをh21、送信アンテナ6bから出力アンテナ7aへの伝搬パラメータをh12、送信アンテナ6bから出力アンテナ7bへの伝搬パラメータをh22とし、これらから伝搬パラメータHは
【0010】
【数2】
【0011】
と表される。伝搬パラメータHは、受信アンテナ数の行数と送信アンテナ数の列数をもち、図7の構成の場合には2行2列となる。
【0012】
受信機22a,22bからの逆リンクが存在する場合は、Hは逆リンクの信号から伝搬パラメータ推定部12が推定する。または、受信機22a,22bが推定し、その結果を伝搬パラメータ推定部12に別途通知し、伝搬パラメータ推定部12が保有する。
【0013】
仮に、重み乗算部4a,4bを用いずに信号を送信した場合には、各送信アンテナからの信号をxとすると、各受信アンテナではxが重畳されて受信され、xとHから受信アンテナにおける信号yは、
y=Hx …(1)
と表される。前述の条件より、この場合はx=dである。
【0014】
ここで、受信機において重みの調整を行い、その受信信号から送信された信号を取り出すことで空間分割多元接続が実現する。なお、複数のアンテナにより複数の異なる送信信号を分離する代表的な計算方法には、特許文献1や非特許文献1のZero Forcingによる方法、非特許文献2のMaximum Likelihood Detectionによる方法、非特許文献3のMinimum Mean Square Error による方法等がある。
【0015】
また、送信機において重みの調整を行い、その結果として各受信機の受信アンテナに希望の送信信号が受信されることでも空間分割多元接続が実現する。図7において、この計算を担う重み計算部11について、上記のZero Forcingによる方法に基づいてその動作を説明する。簡単のために、信号の雑音の表示については省略する。
【0016】
重み計算部11は、伝搬パラメータ推定部12から得た伝搬パラメータ行列Hを参照して重みを計算する。ここで得られる重みを行列Cとすると、重み適用後の送信信号xは、
x=Cd …(2)
と表される。式(1) と式(2) とにより、重みCがHの逆行列であれば所望の結果が得られることがわかる。この行列計算を一般化し、重みCは疑似逆行列を用いて、
C=H*(HH*)-1 …(3)
と表される。ここで、*は行列の転置を表し、−1は通常の逆行列計算を表す。
【0017】
この計算で得られた重みCが重み乗算部4a,4bで送信信号に乗算される。重み乗算部4aの出力は、系統1,2のサブキャリア1を用いて送信アンテナ6a,6bから送信する信号を表す。同様に、重み乗算部4bの出力は、系統1,2のサブキャリア2を用いて送信アンテナ6a,6bから送信する信号を表す。
【0018】
重み乗算部4a,4bの出力は、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform) 演算部5a,5bでそれぞれIFFT演算された後にガードインターバルが付加され、OFDM信号に変換される。このOFDM信号は送信アンテナ6a,6bから送信され、空間上で伝搬パラメータ行列Hの変動を受けた後に受信アンテナ7a,7bに到達する。この時点で、受信機22a,22bにはそれぞれ所望とする信号が受信され、受信部8a,8bが送信シンボルA,Bを復元する。このようにして空間分割多元接続が実現する。
【特許文献1】特許3631698号公報
【非特許文献1】Q.H.Spencer, et al.,"An introduction to the multi-user MIMO downlink", IEEE Commun. Mag.,Oct.2004
【非特許文献2】R.van Nee, et al.,"Maximum Likelihood decoding in a space division multiplexing system", Proc.IEEE VTC 2000, pp.6-10, May 2000
【非特許文献3】A.Benjebbour, et al.,"A Semi-Adaptive MNSE Weights Generation Approach for Ordered Successive Detection in MIMO Systems",IEICE Trans.Commun.,Vol.E87-B,No.2,Feb.2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
空間分割多元接続が理想的に行われるには、送受信アンテナ間の伝搬環境が良く、かつ複数の受信アンテナに対してMIMO伝送路が形成される必要がある。しかし、実際の電波伝搬ではこれらの条件を満足するとは限らない。
【0020】
ここで、第1の条件である送受信アンテナ間の伝搬環境について説明する。無線通信では、一般に送信アンテナから送信された信号は伝搬経路中の障害物により様々な経路を通過し、反射を受けた後に受信アンテナに到達し、これら複数の異なる遅延時間をもつ信号が合成されて受信する。このとき、各信号は周波数ごとに異なる位相関係で合成されるため、帯域内に振幅偏差が発生する。この現象は周波数選択性フェージングと呼ばれる。
【0021】
周波数選択性フェージングは、図8に示すように周波数ごとにレベルが大きく異なることがわかる。なお、図8の横軸はOFDM信号のサブキャリア番号、すなわち周波数に対応している。縦軸は、受信機における瞬時信号電力対雑音電力比(以下「C/N」という)であり、各サブキャリアの雑音電力の期待値を一定とみなした場合の受信電力レベルの相対値に相当する。図8の帯域全体を使ってシングルキャリア伝送を行った場合、その帯域内の振幅偏差が原因となってビット誤り率が悪化する。これに対し、OFDM信号は図8の帯域を複数の狭帯域信号(サブキャリア)に分割して伝送されるので、各サブキャリアで発生する振幅偏差は小さく、サブキャリアごとには一様振幅とみなすことができ、帯域内の振幅偏差に起因するビット誤り率を改善することができる。
【0022】
しかし、図8に示すように、周波数選択性フェージング環境下における各サブキャリアの受信電力レベルは大きく異なっている。このような周波数選択性フェージング伝搬環境で複数のサブキャリアに対して単一のサブキャリア変調方式を用いて信号を伝送した場合、C/Nの低いサブキャリアのビット誤り率BERは極端に悪化し、結果として全体の通信ができなくなるおそれがある。
【0023】
次に、第2の条件であるMIMO伝送路の形成について説明する。空間分割多元接続を行うためには、図6に示すように各端末に対して独立な伝送路が形成され、必要な情報のみが送信されることが理想である。一方、実伝搬環境では干渉を回避する重みを計算した結果、受信機の受信アンテナにおける信号の位相条件次第では受信レベルが低下するおそれがある。これは、伝搬環境がよいサブキャリアを用いた場合にも発生する。このような伝搬環境において空間分割多元接続を行った場合には、受信機の誤り率を満足するための十分な受信電力が得られず、場合によっては信号の復元ができない問題がある。これを克服するには送信電力を増加する方法があるが、一般に送信電力は有限であるため、送信電力の増加で解決できるとは限らない。
【0024】
このように、空間分割多元接続装置は周波数選択性フェージング伝搬環境において、伝搬環境の悪いサブキャリアを用いて通信を行った場合や、独立な伝送路の形成が難しい伝搬環境でMIMO伝送を行った場合に、受信機におけるビット誤り率が悪化する問題があった。
【0025】
本発明は、周波数選択性フェージング伝搬環境や独立な伝送路の形成が難しいサブキャリアの存在する伝搬環境において、伝送速度が高くかつビット誤り率を低減した空間・周波数分割多元接続装置および空間・周波数分割多元接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
第1の発明は、複数の送信アンテナを有する1つの送信機と、それぞれが1以上の受信アンテナおよび受信部を有する1以上の受信機との間で、空間および周波数を分割して接続する空間・周波数分割多元接続装置において、送信機は、受信機の各受信部に送信する送信データを系統別に保有する送信データ部と、送信データ部から各系統の送信データを入力し、系統ごとに送信データが占有する1以上のサブキャリアに分配する分配部と、分配部から各サブキャリアに分配した送信データを入力し、所要の通信品質を満足する条件下で、各サブキャリアが送信する送信ビット数および送信電力を決定するサブキャリア変調・電力割当部と、サブキャリア変調・電力割当部の出力のうち、同一のサブキャリアを用いる1以上の送信データに対して重みを乗算するサブキャリア数と同数の重み乗算部と、重み乗算部の出力のうち、1つの送信アンテナから送信するすべてのサブキャリアの信号を逆フーリエ変換(IFFT変換)し、各送信アンテナにそれぞれ接続するIFFT演算部と、各送信アンテナと各受信アンテナ間のサブキャリアごとの伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定部と、サブキャリア変調・電力割当部の割当結果を参照し、受信部に送信する送信データの系統数、要求ビットレート、送信アンテナの送信電力、および変動する伝搬パラメータに応じて、各送信データが使用するサブキャリアを決定して分配部に通知するサブキャリア割当部と、サブキャリア割当部のサブキャリア割り当てに従い、伝搬パラメータ推定部の出力から空間分割多重するための各送信アンテナから送信する各サブキャリアの重みを決定し、サブキャリア変調・電力割当部および重み乗算部に通知する重み計算部とを備える。
【0027】
ここで、重み計算部は、空間分割多重により伝送される各系統の送信データをそれぞれ対応する受信部が復元できる(例えば直交ビームを形成する)重みを算出する構成である。
【0028】
第1の発明の空間・周波数分割多元接続装置のサブキャリア割当部は、各系統の送信データが同一のサブキャリアを占有するように割り当てる構成である。特に、サブキャリア割当部は、サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、全系統の送信データの合計ビットレートが最大になるようにサブキャリアの割り当てを行う構成としてもよい。また、サブキャリア割当部は、サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、各系統の送信データの所要ビットレートを満足するようにサブキャリアの割り当てを行う構成としてもよい。また、サブキャリア割当部は、サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、全系統の送信データの合計ビットレートが最大になり、かつ各系統の送信データの所要ビットレートを満足するようにサブキャリアの割り当てを行う構成としてもよい。さらに、サブキャリア割当部は、各系統の送信データが占有するサブキャリアの組み合わせを未知変数とし、未知変数に値を入力したときの全系統の送信データの合計ビットレートおよび各系統の送信データの所要ビットレートを最大化する目的関数として、遺伝的アルゴリズムを用いて未知変数の解を得る構成としてもよい。
【0029】
第1の発明の空間・周波数分割多元接続装置のサブキャリア割当部は、サブキャリア変調・電力割当部から所要送信電力を参照し、各系統の送信データの所要ビットレートを満足する所要送信電力が最小になるようにサブキャリアの割り当てを行う構成としてもよい。さらに、サブキャリア割当部は、各系統の送信データが占有するサブキャリアの組み合わせを未知変数とし、未知変数に値を入力したときの各系統の送信データの所要ビットレートを満足する所要送信電力を最小化する目的関数として、遺伝的アルゴリズムを用いて未知変数の解を得る構成としてもよい。
【0030】
また、第1の発明の空間・周波数分割多元接続装置は、1つの受信機が複数の受信アンテナおよび受信部を備え、当該受信機が1または複数の系統の送信データを受信する構成としてもよい。
【0031】
また、第1の発明の空間・周波数分割多元接続装置は、複数の送信アンテナが空間的に離れた位置に設置され、各送信アンテナがサブキャリアごとに異なるサービスエリアを形成し、サブキャリア割当部は、各系統の送信データが干渉しないサブキャリアの組み合わせを選択する構成としてもよい。
【0032】
第2の発明は、複数の送信アンテナを有する1つの送信機と、それぞれが1以上の受信アンテナおよび受信部を有する1以上の受信機との間で、空間および周波数を分割して接続する空間・周波数分割多元接続方法において、送信機は、送信データ部が受信機の各受信部に送信する送信データを系統別に保有し、分配部が送信データ部から各系統の送信データを入力し、系統ごとに送信データが占有する1以上のサブキャリアに分配し、サブキャリア変調・電力割当部が分配部から各サブキャリアに分配した送信データを入力し、所要の通信品質を満足する条件下で、各サブキャリアが送信する送信ビット数および送信電力を決定し、重み乗算部がサブキャリア変調・電力割当部の出力のうち、同一のサブキャリアを用いる1以上の送信データに対して重みを乗算し、IFFT演算部が重み乗算部の出力のうち、1つの送信アンテナから送信するすべてのサブキャリアの信号を逆フーリエ変換(IFFT変換)し、各送信アンテナにそれぞれ接続し、伝搬パラメータ推定部が各送信アンテナと各受信アンテナ間のサブキャリアごとの伝搬パラメータを推定し、サブキャリア割当部がサブキャリア変調・電力割当部の割当結果を参照し、受信部に送信する送信データの系統数、要求ビットレート、送信アンテナの送信電力、および変動する伝搬パラメータに応じて、各送信データが使用するサブキャリアを決定して分配部に通知し、重み計算部がサブキャリア割当部のサブキャリア割り当てに従い、伝搬パラメータ推定部の出力から空間分割多重するための各送信アンテナから送信する各サブキャリアの重みを決定し、サブキャリア変調・電力割当部および重み乗算部に通知する。
【0033】
第2の発明のサブキャリア割当部は、各系統の送信データが同一のサブキャリアを占有するように割り当てるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の空間・周波数分割多元接続装置は、サブキャリア割当部が送信可能なビット数または所要送信電力を参照し、送信ビット数が増加し、所要送信電力が低減するように、送信データの系統数およびサブキャリアごとの受信アンテナの組を伝搬環境の変動に応じて適応的に選択し、所要品質を満足するように各サブキャリアの送信ビット数および送信電力を調整することができる。
【0035】
本発明の空間・周波数分割多元接続装置のサブキャリア割当部は、各サブキャリアに対して送信可能ビット数が増加するような伝搬パラメータの組となる受信アンテナを選択することにより、優れたビット誤り率を維持しつつビットレートの高い通信を行うことができる。
【0036】
また、本発明の空間・周波数分割多元接続装置のサブキャリア割当部は、各サブキャリアに対して所要送信ビット数を満たしつつ所要送信電力が低減するような伝搬パラメータの組となる受信アンテナを選択することにより、優れたビット誤り率を維持しつつ送信電力を低減した通信を行うことができる。
【0037】
さらに、本発明の空間・周波数分割多元接続装置は、1台の受信機が複数の受信アンテナおよび受信部を備えることにより、受信機当たりのビットレートを高めることができる。
【0038】
さらに、本発明の空間・周波数分割多元接続装置は、互いに干渉を与えにくい伝搬環境をもつ送受信アンテナの組を選択することにより、複数の独立な通信路を形成してビットレートを高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第1の実施形態を示す。ここでは、2本のアンテナを搭載する送信機21と、1本のアンテナを搭載する2台の受信機22a,22bとの間で空間・周波数分割多元接続する構成について説明する。また、本構成では、周波数選択性フェージングに有効な複数のサブキャリアを用いて信号を伝送するOFDM変調を併用するものとし、簡単のために最大サブキャリア数を2とする。
【0040】
図において、送信データ部1a,1b、分配部2a,2b、重み乗算部4a,4b、IFFT演算部5a,5b、送信アンテナ6a,6b、受信アンテナ7a,7b、受信部8a,8b、重み計算部11、伝搬パラメータ推定部12は、図6に示す従来構成と同様である。
【0041】
本実施形態の特徴は、従来の空間分割多元接続装置のサブキャリア変調部9a,9bをサブキャリア変調・電力割当部3a,3bに置き換え、重み計算部11の出力に応じて通信品質を満足するように各サブキャリアの送信ビット数と送信電力を調整するとともに、その情報を新たに設けたサブキャリア割当部10に与え、分配部2a,2bがサブキャリア割当部10を参照し、送信ビットレートが増加するように各系統が使用するサブキャリアを選択するところにある。
【0042】
以下、本実施形態の構成による動作例について説明する。
送信データ部1aは、送信機21から受信機22aへ送信する系統1の送信データを保持する。送信データ部1bは、送信機21から受信機22bへ送信する系統2の送信データを保持する。各系統の送信データは、分配部2a,2bがサブキャリア割当部10を参照し、使用するサブキャリアに分配される。ここでは、分配部2aはサブキャリア1およびサブキャリア2を使用し、分配部2bはサブキャリア1のみを使用する。これに対応するようにサブキャリア割当部10が指示するサブキャリア割当用行列Dは、
【0043】
【数3】
【0044】
と表わされる。ここで、各列は送信データの系統を表し、各列はサブキャリアの番号を表し、サブキャリアを使用する場合を「1」、使用しない場合を「0」としている。サブキャリア割当用行列Dの決定方法については後述する。
【0045】
まず、重み計算部11の動作について説明する。重み計算部11は、伝搬パラメータ推定部12から得た伝搬パラメータ行列Hと、サブキャリア割当部10が出力するサブキャリア割当用行列Dを参照し、空間分割多元接続が可能になるように重みを計算する。ここで得られるサブキャリア1の重みC(1) およびサブキャリア2の重みC(2) は、疑似逆行列を用いて、
C(1) =H(1)*(H(1)H(1)*)-1
C(2) =H(2)*(H(2)H(2)*)-1 …(4)
で表される。ここで、*は行列の転置を表し、−1は通常の逆行列計算を表す。H(1) およびH(2) は、各サブキャリアが使用する受信アンテナに関する伝搬パラメータで構成され、
【0046】
【数4】
【0047】
と表される。
分配部2a,2bで分配された送信ビットは、サブキャリア変調・電力分配部3a,3bでサブキャリア変調される。ここでは、各サブキャリアの重みC(1) ,C(2) と、伝搬パラメータH(1) ,H(2) とを参照し、受信機22a,22bが必要とする誤り率を満足するように変調方式と電力とを決定する。
【0048】
サブキャリア変調・電力分配部3a,3bの動作について、図2を参照して説明する。ここでは、Greedy water-filling algorithmに従った変調方式の決定と送信電力の配分について示すが、これ以外の方法を用いてもよいし、変調方式を固定として送信電力のみを調整する方法、あるいは送信電力を固定として変調方式のみを調整する方法を用いてもよい。また、サブキャリア変調には、1シンボル当たり2ビットを伝送するQPSK、1シンボル当たり4ビットを伝送する16QAM、1シンボル当たり6ビットを伝送する64QAMを用いるものとする。
【0049】
まず、各サブキャリアに配分する送信電力P(n) をすべて0、変調方式番号M(n) を0として初期化する(S1)。ここで、nはサブキャリア番号であり1〜Nの整数とする。Nは使用サブキャリア数であり、本実施形態では系統1は2、系統2は1である。M(n) が0の場合はサブキャリアnへのビットの割り当てなし、1の場合は2ビット割り当て(QPSK)、2の場合は4ビット割り当て(16QAM)、3の場合は6ビット割り当て(64QAM)とする。
【0050】
次に、各サブキャリアごとに現在の状態よりも2ビット多く伝送する、すなわち変調方式を1段階増加するために必要な加算電力ΔP0(n)を次式に基づいて計算する(S2)。
ΔP0(n)={R(M(n)+1)−R(M(n))}/{ΣH(n)C(n)}2
ΔP(n) =ΔP0(n)Σ|C(n)|2
ここで、R(M(n)) は変調方式番号M(n) のときに必要な受信電力、ΣH(n)C(n)はサブキャリアごとの目的の受信アンテナが関連する成分の和を表す。ΔP0(n)はサブキャリア変調・電力割当部3a,3bの出力におけるレベルであり、これを送信アンテナから出力される電力に換算したものがΔP(n) である。伝搬パラメータH(n) は、受信機から送出されるリバースリンクのトレーニング信号から推定する構成であり、送信機において既知であるものとする。
【0051】
次に、ステップS2で求めた各サブキャリアの加算電力ΔP(1) 〜ΔP(N) の最小値をΔPmin と、そのときのサブキャリア番号nmin を探索する(S3)。なお、ステップS3のarg(min(ΔP(n))) は、ΔPmin におけるnを出力する関数である。
【0052】
次に、これまでに各サブキャリアに配分した送信電力P(1) 〜P(N) の合計sum(P(n))とステップS3で探索したΔPmin の和と、最大送信電力Pmax を比較し(S4)、sum(P(n))+ΔPmin がPmax を超えた場合には、このビットの割り当てを行うことはできないので処理を終了する。一方、sum(P(n))+ΔPmin がPmax を超えない場合には、加算電力が最小となるサブキャリアnmin に変調方式番号および電力を割り当てる。すなわち、サブキャリアnmin の送信電力P(nmin)にΔPmin を増加し、変調方式番号M(nmin)に1を増加し(S5)、再度ステップS2からの手順を繰り返す。これにより、サブキャリア番号nmin に対して、常に品質を一定に保ったまま、変調方式番号(M(nmin)+1)と送信電力(P(nmin)+ΔPmin) の割り当てが行われる。
【0053】
なお、最大送信電力Pmax は総送信電力を系統数で割ってもよいし、総送信電力を超えない範囲でユーザごとに異なる電力を割り当ててもよい。この段階で、変調方式番号M(n) が初期値0のままのサブキャリアは送信電力P(n) も0であり、送信ビットおよび送信電力が配分されないサブキャリアである。
【0054】
ここで、ある時刻の系統1、サブキャリア1、サブキャリア変調・電力割当部3aの出力における送信シンボルをAとし、系統2、サブキャリア1、サブキャリア変調・電力割当部3bの出力における送信シンボルをBとする。
【0055】
これらの信号は、重み計算部11で先に求めた重みCが乗算され、位相・振幅の調整が行われる。重み乗算部4aの出力は、系統1,2のサブキャリア1を用いて送信アンテナ6a,6bから送信する信号を表す。同様に、重み乗算部4bの出力は、系統1のサブキャリア2を用いて送信アンテナ6a,6bから送信する信号を表す。
【0056】
重み乗算部4a,4bの出力は、IFFT演算部5a,5bでそれぞれIFFT演算された後にガードインターバルが付加され、OFDM信号に変換される。このOFDM信号は送信アンテナ6a,6bから送信され、空間上で伝搬パラメータ行列Hの変動を受けた後に受信アンテナ7a,7bに到達する。この時点で、受信機22a,22bにはそれぞれ所望とする信号が受信され、受信部8a,8bが送信シンボルA,Bを復元する。
【0057】
サブキャリア割当部10は、指示したサブキャリア割当用行列Dに対してサブキャリア変調・電力割当部3a,3bが行った割り当て結果を参照し、各系統の送信信号の合計ビットレートを最大化するようにサブキャリア割当用行列Dを調整する。また、各系統の送信信号の所要ビットレートを満足するようにサブキャリア割当用行列Dを調整してもよい。また、全系統の送信信号の合計ビットレートの増加と各系統の送信信号の所要ビットレートが両立するようにサブキャリア割当用行列Dを調整してもよい。また、サブキャリア割当部10におけるサブキャリア割当用行列Dの決定と、サブキャリア変調・電力割当部3a,3bにおけるビット数の通知を繰り返し行った後に信号を送出するようにしてもよい。
【0058】
ここまで、送信アンテナを2本搭載する1台の送信機21と、受信アンテナを1本搭載する2台の受信機22a,22bで構成される例を示したが、送信アンテナが3本以上であっても、また受信機が1台または3台以上であっても同様である。また、複数の受信アンテナからその数よりも少ない数の一連の計算に用いる受信アンテナ、すなわち送信系統数を事前に定めてもよい。以上により、伝送速度が高くかつ優れたビット誤り率を維持する通信が可能となる。
【0059】
(第2の実施形態)
本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第2の実施形態は、図1に示す第1の実施形態の構成において、サブキャリア変調・電力割当部3a,3bの動作規範が異なり、各系統が所要ビットレートを満足するように動作することを特徴とする。サブキャリア変調・電力割当部3a,3b以外の動作は第1の実施形態と同様である。
【0060】
本実施形態のサブキャリア変調・電力分配部3a,3bの動作について、図3を参照して説明する。ここでは、Greedy water-filling algorithmに従った変調方式の決定と送信電力の配分について示すが、これ以外の方法を用いてもよいし、変調方式を固定として送信電力のみを調整する方法、あるいは送信電力を固定として変調方式のみを調整する方法を用いてもよい。
【0061】
図3において、ステップS11〜S13は、図2に示す第1の実施形態のステップS1〜S3と同じであり、ステップS13の次に、加算電力が最小となるサブキャリアnmin に変調方式番号および電力を割り当てる。すなわち、サブキャリアnmin の送信電力P(nmin)にΔPmin を増加し、変調方式番号M(nmin) に1を増加する(S14)。この演算を行うことにより、次に品質を一定に保ったままで電力と変調方式の割り当てを行うことができる。
【0062】
次に、これまでに各サブキャリアに配分した変調方式番号M(1) 〜M(N) の合計sum(M(n))と、所要ビットレートMmax を比較し(S15)、sum(M(n))がMmax を超えない場合には、再度ステップS12からの手順を繰り返す。そして、sum(M(n))がMmax を超えた時点で処理を終了する。この段階で、変調方式番号M(n) が初期値0のままのサブキャリアは送信電力P(n) も0であり、送信ビットおよび送信電力が配分されないサブキャリアである。以上により、伝送速度が高くかつ優れたビット誤り率を維持する通信が可能となる。
【0063】
(第3の実施形態)
本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第3の実施形態は、図1に示す第1の実施形態の構成において、サブキャリア割当部10の動作に遺伝的アルゴリズムを導入するところに特徴とする。サブキャリア割当部10以外の動作は第1の実施形態または第2の実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態のサブキャリア割当部10の動作について、図4を参照して説明する。
サブキャリア割当部10は、その内部に第1の実施形態で示したサブキャリア割当用行列Dを複数個保有している(S21)。ここでは、サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の2つを保有しているものとし、これがサブキャリア割当の候補となる。各サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の初期値は全零、全1、または0と1の乱数で与える。初期値における各サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の要素は同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
次に、各サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の性能の評価を行う(S22)。すなわち、D1 またはD2 を図1における分配部2a,2bに与えた際のサブキャリア変調・電力割当部3a,3bの計算結果(第1の実施形態における所要ビット数、第2の実施形態における所要電力)を得る。D1 に対する結果をE1 、D2 に対する結果をE2 とする。ここで、E1 またはE2 が所要のビット数または電力を満足しているか否かを判断し(S23)、満足している場合には処理を終了し、満足していない場合には次のステップに進む。
【0066】
次に、サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の選択を行う(S24)。これは、先の評価結果から特性の優れるものを次の世代に確率的に残りやすくするものである。ここでは、元のD1 ,D2 からD2 を削除し、D1 を複製して新たにD1 ,D2 を生成する。
【0067】
次に、新たなサブキャリア割当用行列D1 ,D2 の交叉を行う(S25)。これは、行列間での要素の入れ替えであり、確率的に発生させる。ここでは、元のD1 を構成する成分c,dと、D2 を構成する成分g,hとを入れ替え、新たにD1 ,D2 を生成する。
【0068】
次に、新たなサブキャリア割当用行列D1 ,D2 の突然変異を行い(S26)、ステップS22に戻る。これは、行列内での要素の変化であり、確率的に発生させる。ここでは、ビットの反転を意味し、D1 を構成する成分c(例えば0)がビット反転し、成分cが1となった新たなD1 を生成する。
【0069】
このステップS22からステップS26までの処理は、所要のビット数または電力の条件が達成されるまで繰り返される。以上により、伝送速度が高くかつ優れたビット誤り率を維持する通信が可能となる。
【0070】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第4の実施形態を示す。
本実施形態は、図1に示す第1の実施形態と同様に、2本のアンテナを搭載する送信機21と、1本のアンテナを搭載する2台の受信機22a,22bとの間で空間・周波数分割多元接続する構成であるが、送信機21の送信アンテナ6a,6bが大幅に離れた位置に配置される場合を想定している。そのため、送信アンテナ6aの送信信号が到達する領域Aと、送信アンテナ6bの送信信号が到達する領域Bが大きく異なる。なお、領域A,Bは、あるサブキャリアに対する例であり、周波数選択性フェージングが生ずる伝搬環境ではサブキャリアごとに生じる領域は異なる。
【0071】
ここで、領域Aおよび領域Bに属さない領域は信号が到達しないため、このサブキャリアで通信を行うことはできない。ただし、他のサブキャリアではいずれか一方の領域、または両方の領域に含まれる可能性はある。
【0072】
領域Aおよび領域Bに属する領域は、第1〜第3の実施形態に示す動作で空間分割多元接続が可能である。
【0073】
領域Aのみに属する領域は、領域Bの影響を受けない。図5では、この領域に受信機22aが位置している。したがって、受信機22aは送信アンテナ6bからの信号に関わらず通信を行うことができる。同様に、領域Bのみに属する領域は、領域Aの影響を受けない。図5では、この領域に受信機22bが位置している。したがって、受信機22bは送信アンテナ6aからの信号に関わらず通信を行うことができる。サブキャリア割当部10は、このような組合せを選択するように動作する。この結果、同一サブキャリアを使用する独立した複数の伝送経路が形成され、システム全体の伝送速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第1の実施形態を示す図。
【図2】第1の実施形態におけるサブキャリア変調・電力分配部3a,3bの動作例を示すフローチャート。
【図3】第2の実施形態におけるサブキャリア変調・電力分配部3a,3bの動作例を示すフローチャート。
【図4】第3の実施形態におけるサブキャリア割当部10の動作例を示すフローチャート。
【図5】本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第4の実施形態を示す図。
【図6】従来の空間分割多元接続の例を示す図。
【図7】従来の空間分割多元接続装置の構成例を示す図。
【図8】周波数選択性フェージングの例を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1a,1b 送信データ部
2a,2b 分配部
3a,3b サブキャリア変調部
4a,4b 重み乗算部
5a,5b IFFT演算部
6a,6b 送信アンテナ
7a,7b 受信アンテナ
8a,8b 受信部
9a,9b サブキャリア変調・電力割当部
10 サブキャリア割当部
11 重み計算部
12 伝搬パラメータ推定部
21 送信機
22a,22b 受信機
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いて同時に、同一周波数帯域内の複数のチャネルの信号を送受信するMIMO(Multiple Input Multiple Output) 通信を行う空間・周波数分割多元接続装置および空間・周波数分割多元接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光アクセス等の普及に伴う様々な大容量サービスに対応するため、無線通信の伝送速度の向上が要求されている。伝送速度は占有する周波数帯域に比例するため、周波数帯域を拡大することにより伝送速度の向上は可能である。しかし、実際の周波数資源は有限であるため、周波数帯域の拡大には限界がある。また、周波数帯域を増加させずに伝送速度を向上する方法として、1シンボルあたり2ビットを伝送するQPSKや、1シンボルあたり6ビットを伝送する64QAMのような変調多値数の大きい変調方式を用いる方法がある。しかし、多値数の増加に伴い信号点間距離が減少することでノイズによる誤りやハードウェアの特性による誤りが発生しやすくなり、良好な通信品質を確保するために高い信号対雑音比が必要となり、この方法で伝送速度を大きく向上させる難しい。
【0003】
そこで、これらの方法を用いずに周波数の利用効率を上げて伝送速度を向上する空間分割多元接続が提案されている。空間分割多元接続は、図6に示すように、送信機のアンテナから送信する信号に位相・振幅の重み付けをすることにより、あるいは受信機のアンテナに受信する信号に位相・振幅の重み付けをすることにより、同一周波数を用いる各受信機への送信信号1,2,3を空間的に分離し、同時に送信可能になる。これにより、空間分割多元接続を行わない場合の伝送速度に比べて、空間分割多元接続を行った場合の合計の伝送速度を増加させることができる。
【0004】
図7は、従来の空間分割多元接続装置の構成例を示す。ここでは、2本のアンテナを搭載する送信機21と、1本のアンテナを搭載する2台の受信機22a,22bとの間で空間分割多元接続する構成について説明する。また、本構成では、複数のサブキャリアを用いて信号を伝送するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 変調を併用するものとする。また、本構成ではサブキャリア数を2とした場合を示すが、実際のシステムでは数十から数千程度のサブキャリアが使用される。
【0005】
送信データ部1aは、送信機21から受信機22aへ送信する系統1の送信データを保持する。送信データ部1bは、送信機21から受信機22bへ送信する系統2の送信データを保持する。各系統の送信データは、分配部2a,2bでそれぞれ各サブキャリアに分配される。なお、各系統の送信データが使用するサブキャリアは、いずれもサブキャリア1およびサブキャリア2であり、使用するサブキャリアを共有するものとする。分配部2a,2bで分配された送信データは、サブキャリア変調部9a,9bでサブキャリア変調される。サブキャリア変調には、1シンボル当たり1ビットを伝送するBPSKや1シンボル当たり8ビットを伝送する 256QAMなど、システム設計に応じた様々な変調方式が用いられる。
【0006】
ここで、ある時刻の系統1、サブキャリア1、サブキャリア変調後における送信シンボルをAとし、系統2、サブキャリア1、サブキャリア変調後における送信シンボルをBとする。これらから構成される送信信号dは
【0007】
【数1】
【0008】
と表される。
この送信信号dは空間分割多元接続が可能になるように、すなわち受信機22a,22bがシンボルAおよびシンボルBをそれぞれ受信できるように、重み乗算部4aで位相・振幅の調整が行われる。この重み乗算部4aの重みは、重み計算部11が伝搬パラメータ推定部12の保有する送受信アンテナ間の伝搬パラメータを参照して算出する。サブキャリア2に対応する送信信号についても同様に、重み乗算部4bで位相・振幅の調整が行われる。
【0009】
ここで、伝搬パラメータの定義と伝搬パラメータ推定部12の動作について説明する。本構成では、2本の送信アンテナ6a,6bから信号が送信され、各送信信号はそれぞれ異なる空間を通過して異なる変動を受け、2本の受信アンテナ7a,7bで受信される。送信アンテナ6aから出力アンテナ7aへの伝搬パラメータをh11、送信アンテナ6aから出力アンテナ7bへの伝搬パラメータをh21、送信アンテナ6bから出力アンテナ7aへの伝搬パラメータをh12、送信アンテナ6bから出力アンテナ7bへの伝搬パラメータをh22とし、これらから伝搬パラメータHは
【0010】
【数2】
【0011】
と表される。伝搬パラメータHは、受信アンテナ数の行数と送信アンテナ数の列数をもち、図7の構成の場合には2行2列となる。
【0012】
受信機22a,22bからの逆リンクが存在する場合は、Hは逆リンクの信号から伝搬パラメータ推定部12が推定する。または、受信機22a,22bが推定し、その結果を伝搬パラメータ推定部12に別途通知し、伝搬パラメータ推定部12が保有する。
【0013】
仮に、重み乗算部4a,4bを用いずに信号を送信した場合には、各送信アンテナからの信号をxとすると、各受信アンテナではxが重畳されて受信され、xとHから受信アンテナにおける信号yは、
y=Hx …(1)
と表される。前述の条件より、この場合はx=dである。
【0014】
ここで、受信機において重みの調整を行い、その受信信号から送信された信号を取り出すことで空間分割多元接続が実現する。なお、複数のアンテナにより複数の異なる送信信号を分離する代表的な計算方法には、特許文献1や非特許文献1のZero Forcingによる方法、非特許文献2のMaximum Likelihood Detectionによる方法、非特許文献3のMinimum Mean Square Error による方法等がある。
【0015】
また、送信機において重みの調整を行い、その結果として各受信機の受信アンテナに希望の送信信号が受信されることでも空間分割多元接続が実現する。図7において、この計算を担う重み計算部11について、上記のZero Forcingによる方法に基づいてその動作を説明する。簡単のために、信号の雑音の表示については省略する。
【0016】
重み計算部11は、伝搬パラメータ推定部12から得た伝搬パラメータ行列Hを参照して重みを計算する。ここで得られる重みを行列Cとすると、重み適用後の送信信号xは、
x=Cd …(2)
と表される。式(1) と式(2) とにより、重みCがHの逆行列であれば所望の結果が得られることがわかる。この行列計算を一般化し、重みCは疑似逆行列を用いて、
C=H*(HH*)-1 …(3)
と表される。ここで、*は行列の転置を表し、−1は通常の逆行列計算を表す。
【0017】
この計算で得られた重みCが重み乗算部4a,4bで送信信号に乗算される。重み乗算部4aの出力は、系統1,2のサブキャリア1を用いて送信アンテナ6a,6bから送信する信号を表す。同様に、重み乗算部4bの出力は、系統1,2のサブキャリア2を用いて送信アンテナ6a,6bから送信する信号を表す。
【0018】
重み乗算部4a,4bの出力は、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform) 演算部5a,5bでそれぞれIFFT演算された後にガードインターバルが付加され、OFDM信号に変換される。このOFDM信号は送信アンテナ6a,6bから送信され、空間上で伝搬パラメータ行列Hの変動を受けた後に受信アンテナ7a,7bに到達する。この時点で、受信機22a,22bにはそれぞれ所望とする信号が受信され、受信部8a,8bが送信シンボルA,Bを復元する。このようにして空間分割多元接続が実現する。
【特許文献1】特許3631698号公報
【非特許文献1】Q.H.Spencer, et al.,"An introduction to the multi-user MIMO downlink", IEEE Commun. Mag.,Oct.2004
【非特許文献2】R.van Nee, et al.,"Maximum Likelihood decoding in a space division multiplexing system", Proc.IEEE VTC 2000, pp.6-10, May 2000
【非特許文献3】A.Benjebbour, et al.,"A Semi-Adaptive MNSE Weights Generation Approach for Ordered Successive Detection in MIMO Systems",IEICE Trans.Commun.,Vol.E87-B,No.2,Feb.2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
空間分割多元接続が理想的に行われるには、送受信アンテナ間の伝搬環境が良く、かつ複数の受信アンテナに対してMIMO伝送路が形成される必要がある。しかし、実際の電波伝搬ではこれらの条件を満足するとは限らない。
【0020】
ここで、第1の条件である送受信アンテナ間の伝搬環境について説明する。無線通信では、一般に送信アンテナから送信された信号は伝搬経路中の障害物により様々な経路を通過し、反射を受けた後に受信アンテナに到達し、これら複数の異なる遅延時間をもつ信号が合成されて受信する。このとき、各信号は周波数ごとに異なる位相関係で合成されるため、帯域内に振幅偏差が発生する。この現象は周波数選択性フェージングと呼ばれる。
【0021】
周波数選択性フェージングは、図8に示すように周波数ごとにレベルが大きく異なることがわかる。なお、図8の横軸はOFDM信号のサブキャリア番号、すなわち周波数に対応している。縦軸は、受信機における瞬時信号電力対雑音電力比(以下「C/N」という)であり、各サブキャリアの雑音電力の期待値を一定とみなした場合の受信電力レベルの相対値に相当する。図8の帯域全体を使ってシングルキャリア伝送を行った場合、その帯域内の振幅偏差が原因となってビット誤り率が悪化する。これに対し、OFDM信号は図8の帯域を複数の狭帯域信号(サブキャリア)に分割して伝送されるので、各サブキャリアで発生する振幅偏差は小さく、サブキャリアごとには一様振幅とみなすことができ、帯域内の振幅偏差に起因するビット誤り率を改善することができる。
【0022】
しかし、図8に示すように、周波数選択性フェージング環境下における各サブキャリアの受信電力レベルは大きく異なっている。このような周波数選択性フェージング伝搬環境で複数のサブキャリアに対して単一のサブキャリア変調方式を用いて信号を伝送した場合、C/Nの低いサブキャリアのビット誤り率BERは極端に悪化し、結果として全体の通信ができなくなるおそれがある。
【0023】
次に、第2の条件であるMIMO伝送路の形成について説明する。空間分割多元接続を行うためには、図6に示すように各端末に対して独立な伝送路が形成され、必要な情報のみが送信されることが理想である。一方、実伝搬環境では干渉を回避する重みを計算した結果、受信機の受信アンテナにおける信号の位相条件次第では受信レベルが低下するおそれがある。これは、伝搬環境がよいサブキャリアを用いた場合にも発生する。このような伝搬環境において空間分割多元接続を行った場合には、受信機の誤り率を満足するための十分な受信電力が得られず、場合によっては信号の復元ができない問題がある。これを克服するには送信電力を増加する方法があるが、一般に送信電力は有限であるため、送信電力の増加で解決できるとは限らない。
【0024】
このように、空間分割多元接続装置は周波数選択性フェージング伝搬環境において、伝搬環境の悪いサブキャリアを用いて通信を行った場合や、独立な伝送路の形成が難しい伝搬環境でMIMO伝送を行った場合に、受信機におけるビット誤り率が悪化する問題があった。
【0025】
本発明は、周波数選択性フェージング伝搬環境や独立な伝送路の形成が難しいサブキャリアの存在する伝搬環境において、伝送速度が高くかつビット誤り率を低減した空間・周波数分割多元接続装置および空間・周波数分割多元接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
第1の発明は、複数の送信アンテナを有する1つの送信機と、それぞれが1以上の受信アンテナおよび受信部を有する1以上の受信機との間で、空間および周波数を分割して接続する空間・周波数分割多元接続装置において、送信機は、受信機の各受信部に送信する送信データを系統別に保有する送信データ部と、送信データ部から各系統の送信データを入力し、系統ごとに送信データが占有する1以上のサブキャリアに分配する分配部と、分配部から各サブキャリアに分配した送信データを入力し、所要の通信品質を満足する条件下で、各サブキャリアが送信する送信ビット数および送信電力を決定するサブキャリア変調・電力割当部と、サブキャリア変調・電力割当部の出力のうち、同一のサブキャリアを用いる1以上の送信データに対して重みを乗算するサブキャリア数と同数の重み乗算部と、重み乗算部の出力のうち、1つの送信アンテナから送信するすべてのサブキャリアの信号を逆フーリエ変換(IFFT変換)し、各送信アンテナにそれぞれ接続するIFFT演算部と、各送信アンテナと各受信アンテナ間のサブキャリアごとの伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定部と、サブキャリア変調・電力割当部の割当結果を参照し、受信部に送信する送信データの系統数、要求ビットレート、送信アンテナの送信電力、および変動する伝搬パラメータに応じて、各送信データが使用するサブキャリアを決定して分配部に通知するサブキャリア割当部と、サブキャリア割当部のサブキャリア割り当てに従い、伝搬パラメータ推定部の出力から空間分割多重するための各送信アンテナから送信する各サブキャリアの重みを決定し、サブキャリア変調・電力割当部および重み乗算部に通知する重み計算部とを備える。
【0027】
ここで、重み計算部は、空間分割多重により伝送される各系統の送信データをそれぞれ対応する受信部が復元できる(例えば直交ビームを形成する)重みを算出する構成である。
【0028】
第1の発明の空間・周波数分割多元接続装置のサブキャリア割当部は、各系統の送信データが同一のサブキャリアを占有するように割り当てる構成である。特に、サブキャリア割当部は、サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、全系統の送信データの合計ビットレートが最大になるようにサブキャリアの割り当てを行う構成としてもよい。また、サブキャリア割当部は、サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、各系統の送信データの所要ビットレートを満足するようにサブキャリアの割り当てを行う構成としてもよい。また、サブキャリア割当部は、サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、全系統の送信データの合計ビットレートが最大になり、かつ各系統の送信データの所要ビットレートを満足するようにサブキャリアの割り当てを行う構成としてもよい。さらに、サブキャリア割当部は、各系統の送信データが占有するサブキャリアの組み合わせを未知変数とし、未知変数に値を入力したときの全系統の送信データの合計ビットレートおよび各系統の送信データの所要ビットレートを最大化する目的関数として、遺伝的アルゴリズムを用いて未知変数の解を得る構成としてもよい。
【0029】
第1の発明の空間・周波数分割多元接続装置のサブキャリア割当部は、サブキャリア変調・電力割当部から所要送信電力を参照し、各系統の送信データの所要ビットレートを満足する所要送信電力が最小になるようにサブキャリアの割り当てを行う構成としてもよい。さらに、サブキャリア割当部は、各系統の送信データが占有するサブキャリアの組み合わせを未知変数とし、未知変数に値を入力したときの各系統の送信データの所要ビットレートを満足する所要送信電力を最小化する目的関数として、遺伝的アルゴリズムを用いて未知変数の解を得る構成としてもよい。
【0030】
また、第1の発明の空間・周波数分割多元接続装置は、1つの受信機が複数の受信アンテナおよび受信部を備え、当該受信機が1または複数の系統の送信データを受信する構成としてもよい。
【0031】
また、第1の発明の空間・周波数分割多元接続装置は、複数の送信アンテナが空間的に離れた位置に設置され、各送信アンテナがサブキャリアごとに異なるサービスエリアを形成し、サブキャリア割当部は、各系統の送信データが干渉しないサブキャリアの組み合わせを選択する構成としてもよい。
【0032】
第2の発明は、複数の送信アンテナを有する1つの送信機と、それぞれが1以上の受信アンテナおよび受信部を有する1以上の受信機との間で、空間および周波数を分割して接続する空間・周波数分割多元接続方法において、送信機は、送信データ部が受信機の各受信部に送信する送信データを系統別に保有し、分配部が送信データ部から各系統の送信データを入力し、系統ごとに送信データが占有する1以上のサブキャリアに分配し、サブキャリア変調・電力割当部が分配部から各サブキャリアに分配した送信データを入力し、所要の通信品質を満足する条件下で、各サブキャリアが送信する送信ビット数および送信電力を決定し、重み乗算部がサブキャリア変調・電力割当部の出力のうち、同一のサブキャリアを用いる1以上の送信データに対して重みを乗算し、IFFT演算部が重み乗算部の出力のうち、1つの送信アンテナから送信するすべてのサブキャリアの信号を逆フーリエ変換(IFFT変換)し、各送信アンテナにそれぞれ接続し、伝搬パラメータ推定部が各送信アンテナと各受信アンテナ間のサブキャリアごとの伝搬パラメータを推定し、サブキャリア割当部がサブキャリア変調・電力割当部の割当結果を参照し、受信部に送信する送信データの系統数、要求ビットレート、送信アンテナの送信電力、および変動する伝搬パラメータに応じて、各送信データが使用するサブキャリアを決定して分配部に通知し、重み計算部がサブキャリア割当部のサブキャリア割り当てに従い、伝搬パラメータ推定部の出力から空間分割多重するための各送信アンテナから送信する各サブキャリアの重みを決定し、サブキャリア変調・電力割当部および重み乗算部に通知する。
【0033】
第2の発明のサブキャリア割当部は、各系統の送信データが同一のサブキャリアを占有するように割り当てるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の空間・周波数分割多元接続装置は、サブキャリア割当部が送信可能なビット数または所要送信電力を参照し、送信ビット数が増加し、所要送信電力が低減するように、送信データの系統数およびサブキャリアごとの受信アンテナの組を伝搬環境の変動に応じて適応的に選択し、所要品質を満足するように各サブキャリアの送信ビット数および送信電力を調整することができる。
【0035】
本発明の空間・周波数分割多元接続装置のサブキャリア割当部は、各サブキャリアに対して送信可能ビット数が増加するような伝搬パラメータの組となる受信アンテナを選択することにより、優れたビット誤り率を維持しつつビットレートの高い通信を行うことができる。
【0036】
また、本発明の空間・周波数分割多元接続装置のサブキャリア割当部は、各サブキャリアに対して所要送信ビット数を満たしつつ所要送信電力が低減するような伝搬パラメータの組となる受信アンテナを選択することにより、優れたビット誤り率を維持しつつ送信電力を低減した通信を行うことができる。
【0037】
さらに、本発明の空間・周波数分割多元接続装置は、1台の受信機が複数の受信アンテナおよび受信部を備えることにより、受信機当たりのビットレートを高めることができる。
【0038】
さらに、本発明の空間・周波数分割多元接続装置は、互いに干渉を与えにくい伝搬環境をもつ送受信アンテナの組を選択することにより、複数の独立な通信路を形成してビットレートを高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第1の実施形態を示す。ここでは、2本のアンテナを搭載する送信機21と、1本のアンテナを搭載する2台の受信機22a,22bとの間で空間・周波数分割多元接続する構成について説明する。また、本構成では、周波数選択性フェージングに有効な複数のサブキャリアを用いて信号を伝送するOFDM変調を併用するものとし、簡単のために最大サブキャリア数を2とする。
【0040】
図において、送信データ部1a,1b、分配部2a,2b、重み乗算部4a,4b、IFFT演算部5a,5b、送信アンテナ6a,6b、受信アンテナ7a,7b、受信部8a,8b、重み計算部11、伝搬パラメータ推定部12は、図6に示す従来構成と同様である。
【0041】
本実施形態の特徴は、従来の空間分割多元接続装置のサブキャリア変調部9a,9bをサブキャリア変調・電力割当部3a,3bに置き換え、重み計算部11の出力に応じて通信品質を満足するように各サブキャリアの送信ビット数と送信電力を調整するとともに、その情報を新たに設けたサブキャリア割当部10に与え、分配部2a,2bがサブキャリア割当部10を参照し、送信ビットレートが増加するように各系統が使用するサブキャリアを選択するところにある。
【0042】
以下、本実施形態の構成による動作例について説明する。
送信データ部1aは、送信機21から受信機22aへ送信する系統1の送信データを保持する。送信データ部1bは、送信機21から受信機22bへ送信する系統2の送信データを保持する。各系統の送信データは、分配部2a,2bがサブキャリア割当部10を参照し、使用するサブキャリアに分配される。ここでは、分配部2aはサブキャリア1およびサブキャリア2を使用し、分配部2bはサブキャリア1のみを使用する。これに対応するようにサブキャリア割当部10が指示するサブキャリア割当用行列Dは、
【0043】
【数3】
【0044】
と表わされる。ここで、各列は送信データの系統を表し、各列はサブキャリアの番号を表し、サブキャリアを使用する場合を「1」、使用しない場合を「0」としている。サブキャリア割当用行列Dの決定方法については後述する。
【0045】
まず、重み計算部11の動作について説明する。重み計算部11は、伝搬パラメータ推定部12から得た伝搬パラメータ行列Hと、サブキャリア割当部10が出力するサブキャリア割当用行列Dを参照し、空間分割多元接続が可能になるように重みを計算する。ここで得られるサブキャリア1の重みC(1) およびサブキャリア2の重みC(2) は、疑似逆行列を用いて、
C(1) =H(1)*(H(1)H(1)*)-1
C(2) =H(2)*(H(2)H(2)*)-1 …(4)
で表される。ここで、*は行列の転置を表し、−1は通常の逆行列計算を表す。H(1) およびH(2) は、各サブキャリアが使用する受信アンテナに関する伝搬パラメータで構成され、
【0046】
【数4】
【0047】
と表される。
分配部2a,2bで分配された送信ビットは、サブキャリア変調・電力分配部3a,3bでサブキャリア変調される。ここでは、各サブキャリアの重みC(1) ,C(2) と、伝搬パラメータH(1) ,H(2) とを参照し、受信機22a,22bが必要とする誤り率を満足するように変調方式と電力とを決定する。
【0048】
サブキャリア変調・電力分配部3a,3bの動作について、図2を参照して説明する。ここでは、Greedy water-filling algorithmに従った変調方式の決定と送信電力の配分について示すが、これ以外の方法を用いてもよいし、変調方式を固定として送信電力のみを調整する方法、あるいは送信電力を固定として変調方式のみを調整する方法を用いてもよい。また、サブキャリア変調には、1シンボル当たり2ビットを伝送するQPSK、1シンボル当たり4ビットを伝送する16QAM、1シンボル当たり6ビットを伝送する64QAMを用いるものとする。
【0049】
まず、各サブキャリアに配分する送信電力P(n) をすべて0、変調方式番号M(n) を0として初期化する(S1)。ここで、nはサブキャリア番号であり1〜Nの整数とする。Nは使用サブキャリア数であり、本実施形態では系統1は2、系統2は1である。M(n) が0の場合はサブキャリアnへのビットの割り当てなし、1の場合は2ビット割り当て(QPSK)、2の場合は4ビット割り当て(16QAM)、3の場合は6ビット割り当て(64QAM)とする。
【0050】
次に、各サブキャリアごとに現在の状態よりも2ビット多く伝送する、すなわち変調方式を1段階増加するために必要な加算電力ΔP0(n)を次式に基づいて計算する(S2)。
ΔP0(n)={R(M(n)+1)−R(M(n))}/{ΣH(n)C(n)}2
ΔP(n) =ΔP0(n)Σ|C(n)|2
ここで、R(M(n)) は変調方式番号M(n) のときに必要な受信電力、ΣH(n)C(n)はサブキャリアごとの目的の受信アンテナが関連する成分の和を表す。ΔP0(n)はサブキャリア変調・電力割当部3a,3bの出力におけるレベルであり、これを送信アンテナから出力される電力に換算したものがΔP(n) である。伝搬パラメータH(n) は、受信機から送出されるリバースリンクのトレーニング信号から推定する構成であり、送信機において既知であるものとする。
【0051】
次に、ステップS2で求めた各サブキャリアの加算電力ΔP(1) 〜ΔP(N) の最小値をΔPmin と、そのときのサブキャリア番号nmin を探索する(S3)。なお、ステップS3のarg(min(ΔP(n))) は、ΔPmin におけるnを出力する関数である。
【0052】
次に、これまでに各サブキャリアに配分した送信電力P(1) 〜P(N) の合計sum(P(n))とステップS3で探索したΔPmin の和と、最大送信電力Pmax を比較し(S4)、sum(P(n))+ΔPmin がPmax を超えた場合には、このビットの割り当てを行うことはできないので処理を終了する。一方、sum(P(n))+ΔPmin がPmax を超えない場合には、加算電力が最小となるサブキャリアnmin に変調方式番号および電力を割り当てる。すなわち、サブキャリアnmin の送信電力P(nmin)にΔPmin を増加し、変調方式番号M(nmin)に1を増加し(S5)、再度ステップS2からの手順を繰り返す。これにより、サブキャリア番号nmin に対して、常に品質を一定に保ったまま、変調方式番号(M(nmin)+1)と送信電力(P(nmin)+ΔPmin) の割り当てが行われる。
【0053】
なお、最大送信電力Pmax は総送信電力を系統数で割ってもよいし、総送信電力を超えない範囲でユーザごとに異なる電力を割り当ててもよい。この段階で、変調方式番号M(n) が初期値0のままのサブキャリアは送信電力P(n) も0であり、送信ビットおよび送信電力が配分されないサブキャリアである。
【0054】
ここで、ある時刻の系統1、サブキャリア1、サブキャリア変調・電力割当部3aの出力における送信シンボルをAとし、系統2、サブキャリア1、サブキャリア変調・電力割当部3bの出力における送信シンボルをBとする。
【0055】
これらの信号は、重み計算部11で先に求めた重みCが乗算され、位相・振幅の調整が行われる。重み乗算部4aの出力は、系統1,2のサブキャリア1を用いて送信アンテナ6a,6bから送信する信号を表す。同様に、重み乗算部4bの出力は、系統1のサブキャリア2を用いて送信アンテナ6a,6bから送信する信号を表す。
【0056】
重み乗算部4a,4bの出力は、IFFT演算部5a,5bでそれぞれIFFT演算された後にガードインターバルが付加され、OFDM信号に変換される。このOFDM信号は送信アンテナ6a,6bから送信され、空間上で伝搬パラメータ行列Hの変動を受けた後に受信アンテナ7a,7bに到達する。この時点で、受信機22a,22bにはそれぞれ所望とする信号が受信され、受信部8a,8bが送信シンボルA,Bを復元する。
【0057】
サブキャリア割当部10は、指示したサブキャリア割当用行列Dに対してサブキャリア変調・電力割当部3a,3bが行った割り当て結果を参照し、各系統の送信信号の合計ビットレートを最大化するようにサブキャリア割当用行列Dを調整する。また、各系統の送信信号の所要ビットレートを満足するようにサブキャリア割当用行列Dを調整してもよい。また、全系統の送信信号の合計ビットレートの増加と各系統の送信信号の所要ビットレートが両立するようにサブキャリア割当用行列Dを調整してもよい。また、サブキャリア割当部10におけるサブキャリア割当用行列Dの決定と、サブキャリア変調・電力割当部3a,3bにおけるビット数の通知を繰り返し行った後に信号を送出するようにしてもよい。
【0058】
ここまで、送信アンテナを2本搭載する1台の送信機21と、受信アンテナを1本搭載する2台の受信機22a,22bで構成される例を示したが、送信アンテナが3本以上であっても、また受信機が1台または3台以上であっても同様である。また、複数の受信アンテナからその数よりも少ない数の一連の計算に用いる受信アンテナ、すなわち送信系統数を事前に定めてもよい。以上により、伝送速度が高くかつ優れたビット誤り率を維持する通信が可能となる。
【0059】
(第2の実施形態)
本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第2の実施形態は、図1に示す第1の実施形態の構成において、サブキャリア変調・電力割当部3a,3bの動作規範が異なり、各系統が所要ビットレートを満足するように動作することを特徴とする。サブキャリア変調・電力割当部3a,3b以外の動作は第1の実施形態と同様である。
【0060】
本実施形態のサブキャリア変調・電力分配部3a,3bの動作について、図3を参照して説明する。ここでは、Greedy water-filling algorithmに従った変調方式の決定と送信電力の配分について示すが、これ以外の方法を用いてもよいし、変調方式を固定として送信電力のみを調整する方法、あるいは送信電力を固定として変調方式のみを調整する方法を用いてもよい。
【0061】
図3において、ステップS11〜S13は、図2に示す第1の実施形態のステップS1〜S3と同じであり、ステップS13の次に、加算電力が最小となるサブキャリアnmin に変調方式番号および電力を割り当てる。すなわち、サブキャリアnmin の送信電力P(nmin)にΔPmin を増加し、変調方式番号M(nmin) に1を増加する(S14)。この演算を行うことにより、次に品質を一定に保ったままで電力と変調方式の割り当てを行うことができる。
【0062】
次に、これまでに各サブキャリアに配分した変調方式番号M(1) 〜M(N) の合計sum(M(n))と、所要ビットレートMmax を比較し(S15)、sum(M(n))がMmax を超えない場合には、再度ステップS12からの手順を繰り返す。そして、sum(M(n))がMmax を超えた時点で処理を終了する。この段階で、変調方式番号M(n) が初期値0のままのサブキャリアは送信電力P(n) も0であり、送信ビットおよび送信電力が配分されないサブキャリアである。以上により、伝送速度が高くかつ優れたビット誤り率を維持する通信が可能となる。
【0063】
(第3の実施形態)
本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第3の実施形態は、図1に示す第1の実施形態の構成において、サブキャリア割当部10の動作に遺伝的アルゴリズムを導入するところに特徴とする。サブキャリア割当部10以外の動作は第1の実施形態または第2の実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態のサブキャリア割当部10の動作について、図4を参照して説明する。
サブキャリア割当部10は、その内部に第1の実施形態で示したサブキャリア割当用行列Dを複数個保有している(S21)。ここでは、サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の2つを保有しているものとし、これがサブキャリア割当の候補となる。各サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の初期値は全零、全1、または0と1の乱数で与える。初期値における各サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の要素は同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
次に、各サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の性能の評価を行う(S22)。すなわち、D1 またはD2 を図1における分配部2a,2bに与えた際のサブキャリア変調・電力割当部3a,3bの計算結果(第1の実施形態における所要ビット数、第2の実施形態における所要電力)を得る。D1 に対する結果をE1 、D2 に対する結果をE2 とする。ここで、E1 またはE2 が所要のビット数または電力を満足しているか否かを判断し(S23)、満足している場合には処理を終了し、満足していない場合には次のステップに進む。
【0066】
次に、サブキャリア割当用行列D1 ,D2 の選択を行う(S24)。これは、先の評価結果から特性の優れるものを次の世代に確率的に残りやすくするものである。ここでは、元のD1 ,D2 からD2 を削除し、D1 を複製して新たにD1 ,D2 を生成する。
【0067】
次に、新たなサブキャリア割当用行列D1 ,D2 の交叉を行う(S25)。これは、行列間での要素の入れ替えであり、確率的に発生させる。ここでは、元のD1 を構成する成分c,dと、D2 を構成する成分g,hとを入れ替え、新たにD1 ,D2 を生成する。
【0068】
次に、新たなサブキャリア割当用行列D1 ,D2 の突然変異を行い(S26)、ステップS22に戻る。これは、行列内での要素の変化であり、確率的に発生させる。ここでは、ビットの反転を意味し、D1 を構成する成分c(例えば0)がビット反転し、成分cが1となった新たなD1 を生成する。
【0069】
このステップS22からステップS26までの処理は、所要のビット数または電力の条件が達成されるまで繰り返される。以上により、伝送速度が高くかつ優れたビット誤り率を維持する通信が可能となる。
【0070】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第4の実施形態を示す。
本実施形態は、図1に示す第1の実施形態と同様に、2本のアンテナを搭載する送信機21と、1本のアンテナを搭載する2台の受信機22a,22bとの間で空間・周波数分割多元接続する構成であるが、送信機21の送信アンテナ6a,6bが大幅に離れた位置に配置される場合を想定している。そのため、送信アンテナ6aの送信信号が到達する領域Aと、送信アンテナ6bの送信信号が到達する領域Bが大きく異なる。なお、領域A,Bは、あるサブキャリアに対する例であり、周波数選択性フェージングが生ずる伝搬環境ではサブキャリアごとに生じる領域は異なる。
【0071】
ここで、領域Aおよび領域Bに属さない領域は信号が到達しないため、このサブキャリアで通信を行うことはできない。ただし、他のサブキャリアではいずれか一方の領域、または両方の領域に含まれる可能性はある。
【0072】
領域Aおよび領域Bに属する領域は、第1〜第3の実施形態に示す動作で空間分割多元接続が可能である。
【0073】
領域Aのみに属する領域は、領域Bの影響を受けない。図5では、この領域に受信機22aが位置している。したがって、受信機22aは送信アンテナ6bからの信号に関わらず通信を行うことができる。同様に、領域Bのみに属する領域は、領域Aの影響を受けない。図5では、この領域に受信機22bが位置している。したがって、受信機22bは送信アンテナ6aからの信号に関わらず通信を行うことができる。サブキャリア割当部10は、このような組合せを選択するように動作する。この結果、同一サブキャリアを使用する独立した複数の伝送経路が形成され、システム全体の伝送速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第1の実施形態を示す図。
【図2】第1の実施形態におけるサブキャリア変調・電力分配部3a,3bの動作例を示すフローチャート。
【図3】第2の実施形態におけるサブキャリア変調・電力分配部3a,3bの動作例を示すフローチャート。
【図4】第3の実施形態におけるサブキャリア割当部10の動作例を示すフローチャート。
【図5】本発明の空間・周波数分割多元接続装置の第4の実施形態を示す図。
【図6】従来の空間分割多元接続の例を示す図。
【図7】従来の空間分割多元接続装置の構成例を示す図。
【図8】周波数選択性フェージングの例を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1a,1b 送信データ部
2a,2b 分配部
3a,3b サブキャリア変調部
4a,4b 重み乗算部
5a,5b IFFT演算部
6a,6b 送信アンテナ
7a,7b 受信アンテナ
8a,8b 受信部
9a,9b サブキャリア変調・電力割当部
10 サブキャリア割当部
11 重み計算部
12 伝搬パラメータ推定部
21 送信機
22a,22b 受信機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを有する1つの送信機と、それぞれが1以上の受信アンテナおよび受信部を有する1以上の受信機との間で、空間および周波数を分割して接続する空間・周波数分割多元接続装置において、
前記送信機は、
前記受信機の各受信部に送信する送信データを系統別に保有する送信データ部と、
前記送信データ部から前記各系統の送信データを入力し、前記系統ごとに前記送信データが占有する1以上のサブキャリアに分配する分配部と、
前記分配部から各サブキャリアに分配した送信データを入力し、所要の通信品質を満足する条件下で、各サブキャリアが送信する送信ビット数および送信電力を決定するサブキャリア変調・電力割当部と、
前記サブキャリア変調・電力割当部の出力のうち、同一のサブキャリアを用いる1以上の送信データに対して重みを乗算するサブキャリア数と同数の重み乗算部と、
前記重み乗算部の出力のうち、1つの送信アンテナから送信するすべてのサブキャリアの信号を逆フーリエ変換(IFFT変換)し、前記各送信アンテナにそれぞれ接続するIFFT演算部と、
前記各送信アンテナと前記各受信アンテナ間のサブキャリアごとの伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定部と、
前記サブキャリア変調・電力割当部の割当結果を参照し、前記受信部に送信する送信データの系統数、要求ビットレート、前記送信アンテナの送信電力、および変動する伝搬パラメータに応じて、各送信データが使用するサブキャリアを決定して前記分配部に通知するサブキャリア割当部と、
前記サブキャリア割当部のサブキャリア割り当てに従い、前記伝搬パラメータ推定部の出力から空間分割多重するための前記各送信アンテナから送信する各サブキャリアの重みを決定し、前記サブキャリア変調・電力割当部および前記重み乗算部に通知する重み計算部と
を備えたことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記各系統の送信データが同一のサブキャリアを占有するように割り当てる構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、全系統の送信データの合計ビットレートが最大になるようにサブキャリアの割り当てを行う構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項4】
請求項2に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、各系統の送信データの所要ビットレートを満足するようにサブキャリアの割り当てを行う構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項5】
請求項2に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、全系統の送信データの合計ビットレートが最大になり、かつ各系統の送信データの所要ビットレートを満足するようにサブキャリアの割り当てを行う構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項6】
請求項2に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記サブキャリア変調・電力割当部から所要送信電力を参照し、各系統の送信データの所要ビットレートを満足する所要送信電力が最小になるようにサブキャリアの割り当てを行う構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項7】
請求項3〜請求項5のいずれかに記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、各系統の送信データが占有するサブキャリアの組み合わせを未知変数とし、未知変数に値を入力したときの全系統の送信データの合計ビットレートおよび各系統の送信データの所要ビットレートを最大化する目的関数として、遺伝的アルゴリズムを用いて未知変数の解を得る構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項8】
請求項6に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、各系統の送信データが占有するサブキャリアの組み合わせを未知変数とし、未知変数に値を入力したときの各系統の送信データの所要ビットレートを満足する所要送信電力を最小化する目的関数として、遺伝的アルゴリズムを用いて未知変数の解を得る構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
1つの受信機が複数の受信アンテナおよび受信部を備え、当該受信機が1または複数の系統の送信データを受信する構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記複数の送信アンテナが空間的に離れた位置に設置され、各送信アンテナがサブキャリアごとに異なるサービスエリアを形成し、
前記サブキャリア割当部は、前記各系統の送信データが干渉しないサブキャリアの組み合わせを選択する構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項11】
複数の送信アンテナを有する1つの送信機と、それぞれが1以上の受信アンテナおよび受信部を有する1以上の受信機との間で、空間および周波数を分割して接続する空間・周波数分割多元接続方法において、
前記送信機は、
送信データ部が前記受信機の各受信部に送信する送信データを系統別に保有し、
分配部が前記送信データ部から前記各系統の送信データを入力し、前記系統ごとに前記送信データが占有する1以上のサブキャリアに分配し、
サブキャリア変調・電力割当部が前記分配部から各サブキャリアに分配した送信データを入力し、所要の通信品質を満足する条件下で、各サブキャリアが送信する送信ビット数および送信電力を決定し、
重み乗算部が前記サブキャリア変調・電力割当部の出力のうち、同一のサブキャリアを用いる1以上の送信データに対して重みを乗算し、
IFFT演算部が前記重み乗算部の出力のうち、1つの送信アンテナから送信するすべてのサブキャリアの信号を逆フーリエ変換(IFFT変換)し、前記各送信アンテナにそれぞれ接続し、
伝搬パラメータ推定部が前記各送信アンテナと前記各受信アンテナ間のサブキャリアごとの伝搬パラメータを推定し、
サブキャリア割当部が前記サブキャリア変調・電力割当部の割当結果を参照し、前記受信部に送信する送信データの系統数、要求ビットレート、前記送信アンテナの送信電力、および変動する伝搬パラメータに応じて、各送信データが使用するサブキャリアを決定して前記分配部に通知し、
重み計算部が前記サブキャリア割当部のサブキャリア割り当てに従い、前記伝搬パラメータ推定部の出力から空間分割多重するための前記各送信アンテナから送信する各サブキャリアの重みを決定し、前記サブキャリア変調・電力割当部および前記重み乗算部に通知する
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続方法。
【請求項12】
請求項11に記載の空間・周波数分割多元接続方法において、
前記サブキャリア割当部は、前記各系統の送信データが同一のサブキャリアを占有するように割り当てる
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続方法。
【請求項1】
複数の送信アンテナを有する1つの送信機と、それぞれが1以上の受信アンテナおよび受信部を有する1以上の受信機との間で、空間および周波数を分割して接続する空間・周波数分割多元接続装置において、
前記送信機は、
前記受信機の各受信部に送信する送信データを系統別に保有する送信データ部と、
前記送信データ部から前記各系統の送信データを入力し、前記系統ごとに前記送信データが占有する1以上のサブキャリアに分配する分配部と、
前記分配部から各サブキャリアに分配した送信データを入力し、所要の通信品質を満足する条件下で、各サブキャリアが送信する送信ビット数および送信電力を決定するサブキャリア変調・電力割当部と、
前記サブキャリア変調・電力割当部の出力のうち、同一のサブキャリアを用いる1以上の送信データに対して重みを乗算するサブキャリア数と同数の重み乗算部と、
前記重み乗算部の出力のうち、1つの送信アンテナから送信するすべてのサブキャリアの信号を逆フーリエ変換(IFFT変換)し、前記各送信アンテナにそれぞれ接続するIFFT演算部と、
前記各送信アンテナと前記各受信アンテナ間のサブキャリアごとの伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定部と、
前記サブキャリア変調・電力割当部の割当結果を参照し、前記受信部に送信する送信データの系統数、要求ビットレート、前記送信アンテナの送信電力、および変動する伝搬パラメータに応じて、各送信データが使用するサブキャリアを決定して前記分配部に通知するサブキャリア割当部と、
前記サブキャリア割当部のサブキャリア割り当てに従い、前記伝搬パラメータ推定部の出力から空間分割多重するための前記各送信アンテナから送信する各サブキャリアの重みを決定し、前記サブキャリア変調・電力割当部および前記重み乗算部に通知する重み計算部と
を備えたことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記各系統の送信データが同一のサブキャリアを占有するように割り当てる構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、全系統の送信データの合計ビットレートが最大になるようにサブキャリアの割り当てを行う構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項4】
請求項2に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、各系統の送信データの所要ビットレートを満足するようにサブキャリアの割り当てを行う構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項5】
請求項2に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記サブキャリア変調・電力割当部から割当可能ビット数を参照し、全系統の送信データの合計ビットレートが最大になり、かつ各系統の送信データの所要ビットレートを満足するようにサブキャリアの割り当てを行う構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項6】
請求項2に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、前記サブキャリア変調・電力割当部から所要送信電力を参照し、各系統の送信データの所要ビットレートを満足する所要送信電力が最小になるようにサブキャリアの割り当てを行う構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項7】
請求項3〜請求項5のいずれかに記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、各系統の送信データが占有するサブキャリアの組み合わせを未知変数とし、未知変数に値を入力したときの全系統の送信データの合計ビットレートおよび各系統の送信データの所要ビットレートを最大化する目的関数として、遺伝的アルゴリズムを用いて未知変数の解を得る構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項8】
請求項6に記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記サブキャリア割当部は、各系統の送信データが占有するサブキャリアの組み合わせを未知変数とし、未知変数に値を入力したときの各系統の送信データの所要ビットレートを満足する所要送信電力を最小化する目的関数として、遺伝的アルゴリズムを用いて未知変数の解を得る構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
1つの受信機が複数の受信アンテナおよび受信部を備え、当該受信機が1または複数の系統の送信データを受信する構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の空間・周波数分割多元接続装置において、
前記複数の送信アンテナが空間的に離れた位置に設置され、各送信アンテナがサブキャリアごとに異なるサービスエリアを形成し、
前記サブキャリア割当部は、前記各系統の送信データが干渉しないサブキャリアの組み合わせを選択する構成である
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続装置。
【請求項11】
複数の送信アンテナを有する1つの送信機と、それぞれが1以上の受信アンテナおよび受信部を有する1以上の受信機との間で、空間および周波数を分割して接続する空間・周波数分割多元接続方法において、
前記送信機は、
送信データ部が前記受信機の各受信部に送信する送信データを系統別に保有し、
分配部が前記送信データ部から前記各系統の送信データを入力し、前記系統ごとに前記送信データが占有する1以上のサブキャリアに分配し、
サブキャリア変調・電力割当部が前記分配部から各サブキャリアに分配した送信データを入力し、所要の通信品質を満足する条件下で、各サブキャリアが送信する送信ビット数および送信電力を決定し、
重み乗算部が前記サブキャリア変調・電力割当部の出力のうち、同一のサブキャリアを用いる1以上の送信データに対して重みを乗算し、
IFFT演算部が前記重み乗算部の出力のうち、1つの送信アンテナから送信するすべてのサブキャリアの信号を逆フーリエ変換(IFFT変換)し、前記各送信アンテナにそれぞれ接続し、
伝搬パラメータ推定部が前記各送信アンテナと前記各受信アンテナ間のサブキャリアごとの伝搬パラメータを推定し、
サブキャリア割当部が前記サブキャリア変調・電力割当部の割当結果を参照し、前記受信部に送信する送信データの系統数、要求ビットレート、前記送信アンテナの送信電力、および変動する伝搬パラメータに応じて、各送信データが使用するサブキャリアを決定して前記分配部に通知し、
重み計算部が前記サブキャリア割当部のサブキャリア割り当てに従い、前記伝搬パラメータ推定部の出力から空間分割多重するための前記各送信アンテナから送信する各サブキャリアの重みを決定し、前記サブキャリア変調・電力割当部および前記重み乗算部に通知する
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続方法。
【請求項12】
請求項11に記載の空間・周波数分割多元接続方法において、
前記サブキャリア割当部は、前記各系統の送信データが同一のサブキャリアを占有するように割り当てる
ことを特徴とする空間・周波数分割多元接続方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−290406(P2009−290406A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139057(P2008−139057)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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