説明

穿刺針アダプタ

【課題】 穿刺治療針の樹脂コーティングが破損された場合においても、穿刺針アダプタの金属部分への電流が流れることのない穿刺針アダプタを提供すること。
【解決手段】 被検体内部の形態画像を生成する超音波診断装置に接続された超音波プローブに装着され、穿刺針の前記被検体内部への刺入をガイドする穿刺針アダプタであって、前記穿刺針と接してこれをガイドし、少なくとも前記穿刺針と接する部分が非導電材料によって構成されるガイド部と、金属材料から構成され、前記超音波プローブに装着されるホルダ部とを具備することを特徴とする穿刺針アダプタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置の超音波プローブ(超音波探触子とも呼ぶ)に装着し、穿刺針の刺入において使用される穿刺針アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の生体に、穿刺針を刺入し、被検者の組織片の採取、或いは被検者の体内の局所に薬剤を注入する医療技術として、超音波穿刺術が実施されている。この超音波穿刺術においては、超音波画像診断装置により、生体内の穿刺対象と穿刺針の刺入位置を、観察しながら施術が行われる。超音波穿刺術の観察と穿刺針の刺入操作を、確実および安定に行うために、観察を行う超音波診断装置の超音波プローブ(超音波探触子とも呼ぶ)に、穿刺針の刺入方向および位置を案内する穿刺針ガイドを備える穿刺針アダプタが装着され施術される場合もある。
【0003】
従来の穿刺針アダプタは、大きくは、超音波プローブの胴部に固定するホルダ部分と、これに結合される穿刺針の刺入を案内する針ガイド部分との2部分で大略構成が成されて、剛性強度および耐久性を確保する点から、これ等の各部分は一般的には金属材料により構成される。この針ガイド部分において、複数の刺入角度に対応する構成、太さの異なる穿刺針に対応する構成、さらに、穿刺針の着脱に対応する構成などの利便性を図る提案がされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
近年、針先端付近以外の針筒周囲を樹脂コーティングして絶縁した構造の穿刺(治療)針を体内に刺入し、その先端部分からRF波(ラジオ周波)を放射することにより体内局所を加熱治療する手法が行なわれている。この穿刺治療針を患者の治療対象の局所に刺入する際に、超音波プローブ及びこれに取り付けた上述の穿刺針アダプタを用いて行われる。しかし、この穿刺治療針を穿刺針アダプタの金属製の針ガイド部分に差し入れるときに、樹脂コーティングを傷付けることがあった。穿刺治療針の傷付けられた樹脂コーティングの部分がアダプタのガイド付近に位置したときに、この破損部分から穿刺針アダプタへ電流が流れ、さらに穿刺針アダプタから生体表面に電流が流れる場合がある。この漏れ出た電流により、生体表面に熱傷を生じさせる場合があり、金属材料により構成される針ガイド部分を有する穿刺針アダプタを使用しながら穿刺治療針によるラジオ周波の加熱治療を行うには問題があった。
【0005】
また、穿刺針の刺入方向においては、治療の部位が多岐に亘り、超音波プローブのホリゾンタルライン(超音波放射方向の垂直な水平線)に対する広範囲の刺入角度で刺入することが求められて、これ等の設定が簡便に行えることが求められている。
【特許文献1】特開2005−34273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上に述べたように、樹脂コーティングを施した穿刺治療針による加熱治療において、従来の金属製の穿刺針アダプタを使用して穿刺治療針を操作することには、往々にして、樹脂コーティングの破損部分から漏洩電流が生じて、時として患者或いは被検者に熱傷を生じさせる問題があった。また、穿刺刺入角度の設定範囲が広範囲で、種々の刺入角が容易に設定できることも、大いに求められるところであった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、穿刺治療針の樹脂コーティングに破損があった場合においても、穿刺針アダプタの金属部分への電流が流れることのない穿刺針アダプタを提供することを目的とする。
【0008】
また、種々の部位に対応する広範囲の穿刺針の刺入方向に対し、所望の超音波プローブの観察位置において、適切な刺入角を設定し得る穿刺針アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の穿刺針アダプタは、被検体内部の形態画像を生成する超音波診断装置に接続された超音波プローブに装着され、穿刺針の前記被検体内部への刺入をガイドする穿刺針アダプタであって、前記穿刺針と接してこれをガイドし、少なくとも前記穿刺針と接する部分が非導電材料によって構成されるガイド部と、金属材料から構成され、前記超音波プローブに装着されるホルダ部とを具備することを特徴とするものである。
【0010】
さらに、上記本発明の穿刺針アダプタにおいては、前記ガイド部は、前記刺入の方向が異なる他のガイド部と交換可能であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の穿刺針アダプタは、被検体内部の形態画像を生成する超音波診断装置に接続された超音波プローブ本体に、着脱自在に装着するホルダ部と穿刺針を誘導及び保持するガイドと、このガイドを支持するガイドベース部とからなる穿刺針アダプタであって、前記ガイドは、樹脂材料により嵌め合い機構を有して形成され、穿刺針を誘導する複数の溝体を備える針溝ガイドと、同じく樹脂材料により嵌め合い機構を有して形成され、前記針溝ガイドの複数の前記溝体と対をなす複数の連丘を備え、この連丘が前記穿刺針を溝体に押圧し、保持する針押しガイドとからなり、前記ガイドベース部は、前記針溝ガイドを前記嵌め合い機構により保持する針溝支持部と、前記針押しガイドを前記嵌め合い機構により保持する針押し支持部と、前記針溝支持部と針押し支持部とを、前記ホルダ部に連結される台座にヒンジを設け、前記ガイドそれぞれの溝と連丘を対向して開閉可能に連結し、さらに前記対向を閉じるように緩く付勢するバネ体による開閉機構とを備えて構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による穿刺針アダプタによれば、穿刺治療針の樹脂コーティングが破損された場合においても、穿刺針アダプタの金属部分への電流が流れることのない穿刺針アダプタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1〜6を用いて詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、超音波プローブ本体に本発明の穿刺針アダプタの第1の実施形態を取り付けた斜視図であり、同図(a)は左上前方から、同図(b)は右下後方からの模式斜視図である。図2(a)は、図1の穿刺針アダプタのホルダ部分と、針溝ガイド及び針押しガイドを取り外したガイドベース部分の構成の詳細を同じく示す斜視図であり、また同図(b)には、調整ネジ板42に設ける可動体441の構成を示す模式断面図である。図3は、本実施形態の針溝ガイド及び針押しガイドのそれぞれを異なる視線方向から見た模式斜視図である。なお、図において、同一部分には同一符号を付して図示している。
【0015】
ここで図示した超音波プローブ本体1は、円弧状に超音波ビームをスキャンするコンペックスタイプが示されているが、これに限らずリニアスキャンタイプあるいはセクタスキャンタイプなどどのようなスキャン方式のものであっても良く、先端部に音響レンズ1aを備え、この部分を被検者の体に接触させて、医師あるいは技師などの操作者が被検者の体内の対象部位を探査しながら、穿刺針の刺入施術する場合に用いられるものである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の穿刺針アダプタ2の構成は、大きくは、超音波プローブ本体1を挟み込むようにして取り付けるホルダ部20と、これに(本斜視方向から隠れて見えない)ヒンジにより連結されたガイドベース部30と、このガイドベース部30を構成する針溝支持部40の溝用ベースA41aに装着される針溝ガイド60a、及び同じく針押し支持部50の押し用ベースA51aに装着される針押しガイド70aそれぞれとによりなる。
【0017】
ホルダ部20の構成の詳細は、図1及び図2に示すように、超音波プローブ本体1の胴部を挟み込むように金属製のホルダ21a、21bによって取り付けられている。すなわち、ホルダ21a、21bは、図1(b)に図示する第1のヒンジ23によって連結された略帯状を成す2つの取り付け具で、ともに超音波プローブ本体1の胴部の外形に沿う如く加工が施されており、超音波プローブ本体1の外側に巻き渡すようにし、第1のヒンジ23を設けた側と反対の側の先端部同士を固定ネジ22によって締め付けて、このホルダ21a、21bの持つ弾性カが作用し、超音波プローブ本体1を挟持する。なお、超音波プローブ本体1の胴部を挟持した状態ではホルダ21a、21bの対峠する先端部同士の間に若干の空隙を設け、固定ネジ22のねじによってこの隙間を減少させるように締め込むことによって、強固に固定するようにすることが好ましい。また、この固定ネジ22は、一方のホルダ21bの先端部に回転自在に軸止されており、固定ネジ22のつまみ部分を他方のホルダ21aの先端部に係合させることにより、ホルダ21a、21bの先端部を締め付けている構成とすることは好適となる。
【0018】
また、図1(b)に示されているように、ホルダ21aには、第1のヒンジ23の部分から突出した台座部24が形成されており、この台座24にガイドベース部30が固定されている。ガイドベース部30は、針溝支持部40と針押し支持部50とを有し、これらの基部は第2のヒンジ33によって連結されている。
【0019】
そして、針押し支持部50の基部は、ネジ止めあるいは溶接など適宜の手段によってホルダ21aの台座24に固定されている。また、針押し支持部50は、図2に図示するように、基部から水平方向へ突出した部分に嵌め合い段差52aを設けて、さらにその側部には嵌め合い凹部53a、53b(嵌め合い凹部53bは陰となって図示せず)を設けたステージ状の押し用ベースA51aを形成して備えている。
【0020】
一方、ガイドベース部30の針溝支持部40は、第2のヒンジ33に連結した基部から立ち上がり先端側が略水平に屈曲したL字型をした調整ネジ板42を設ける。この調整ネジ板42には、軸芯431を移動させる調整ネジ43、及び3個の筒体44a〜44c(筒体44cは、他の構造物の陰になって図示せず)を備える。さらに、この筒体44a〜44cそれぞれの内部を滑動する3本の可動棒体441a〜441c(可動棒体441cは、他の構造物の陰になって図示せず)が挿入される。
【0021】
図2(b)の模式断面図に示すように、これら可動棒体441(a〜c)それぞれの挿入側の端部は、筒体44(a〜c)から抜け落ちないように規制する端部処理、例えば、ネジ頭など施し、これを引き上げるようにバネ体442が備えられている。可動棒体441の他端は、側部に嵌め合い凹部46a、46b(嵌め合い凹部46bは陰となって図示せず)を設けた板状の溝用ベースA41aの上面にそれぞれ固着接続される。調整ネジ43により移動する軸芯431は、溝用ベースA41aの上面を押し出すように作用し、調整ネジ43により軸芯431を引き戻すと、溝用ベースA41aは引き戻した位置と前述の端部処理による規制の位置との間の筒体44内を自由に位置変化することができる。針溝支持部40は、位置調整の可能な溝用ベースA41aを形成して備えている。
【0022】
次に、上述の溝用ベースA41aに装着される針溝ガイド60a、及び押し用ベースA51aに装着される針押しガイド70aのそれぞれに付いて、図3を用いて説明する。図3(a)、(b)には、針溝ガイド60aを上から、或いは下から見たそれぞれ斜視図を、同図(c)、(d)には、押し用ベースA51aのそれぞれ斜視図を示す。
【0023】
針溝ガイド60aは、図3(b)に示すように少なくも2本の穿刺針を挿入するためのV字溝61a、61bが設けられて、その背後の上面62の両脇に、嵌め合い凸部64a、64bをそれぞれに備える挟持フィン63a、63bが設けられて、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、或いはポリフェニレノキサイド(変性PPO)などの電気絶縁特性を有する樹脂にて形成される。そして、この針溝ガイド60aは、挟持フィン63a、63bの端部を開き加減にして、図2に示す溝用ベースA41aの下面に嵌め込み、上面62を接するように密着させる。このとき、針溝ガイド60aの嵌め合い凸部64a、64bそれぞれが、溝用ベースA41aの嵌め合い凹部46a、46b(嵌め合い凹部46bは陰となって図示せず)に嵌まり込んで、溝用ベースA41aと針溝ガイド60aとが強固に接合して構成される。
【0024】
一方、針押しガイド70aは、図3(c)に示すように針溝ガイド60aのV字溝と同本数の針押し連丘体71a、71bが設けられて、その背後の下面72の両脇に、嵌め合い凸部74a、74bをそれぞれに備える挟持フィン73a、73bが設けられて、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、或いはポリフェニレノキサイド(変性PPO)などの電気絶縁特性を有する樹脂にて形成される。そして、この針押しガイド70aは、挟持フィン73a、73bの端部を開き加減にして、図2に示す押し用ベースA51aの上面に嵌め込み、下面72を接するように密着させる。このとき、針押しガイド70aの嵌め合い凸部74a、74bそれぞれが、押し用ベースA51aの嵌め合い凹部53a、53b(嵌め合い凹部53bは陰となって図示せず)に嵌まり込んで、押し用ベースA51aと針押しガイド70aとが強固に接合して構成される。
【0025】
また、針溝支持部40と針押し支持部50とを連結している第2のヒンジ33には、図示していないがバネを介在させて、図1に示すように、針溝支持部40の針溝ガイド60aを、針押し支持部50の針押しガイド70a側へ付勢するように、押圧カが通常作用するよう構成する。針溝ガイド60a及び針押しガイド70aの着脱には、針着脱レバー25の操作により、第2のヒンジ33部分に介在したバネの付勢力に抗して針溝支持部40の針溝ガイド60aと針押し支持部50の針押しガイド70aの接合が解かれた状態にして行う。針溝ガイド60a或いは針押しガイド70aの離脱には、挟持フィン63a、63b或いは挟持フィン73a、73bの端部を開き加減にして、嵌め合い凹部46a或いは嵌め合い凹部53aへの引き掛りを外して行えることは言うまでもない。
【0026】
また、対となる針溝ガイド60a及び針押しガイド70aに設けられた複数の溝体の方向(刺入角度)が異なる数種の針溝ガイド60a及び針押しガイド70aの対を挟持フィン及び嵌め合い凸部を同様にして備えて予め揃えて、異なる穿刺針の刺入角度に対応する場合には、所望角度或いはそれに近い角度の溝体を備える針溝ガイド60a及び針押しガイド70aの対を選択して、これを取り付けて施術できることは言うまでもない。
【0027】
次に、本実施形態の穿刺針アダプタの作用、動作について説明する。
【0028】
先ず、超音波プローブ本体1の胴部に、穿刺針アダプタ2のホルダ部20のホルダ21a、21bで挟み込むようにして取り付け、ホルダ21a、21bの先端部を係合させて固定ネジ22により強固に固定する。このようにして、超音波プローブ本体1に穿刺針アダプタ2を取り付けた状態で、これを操作して操作者は、被検者の超音波画像を観察しながら画像中の穿刺対象部位(例えば加熱治療の対象となる患部)を確認する。
【0029】
そして、穿刺対象部位が定まれば、患部の状況から使用する穿刺針或いは加熱治療アンテナの穿刺治療針を決め、その太さに合うように調整ネジ43によって、針溝ガイド60aに形成されているV字溝61a、61bと針押しガイド70aに形成されている針押し連丘体71a、71bとの間隔を調整する。その後、穿刺針を針溝ガイド60aに形成されている所望のV字の溝に挿入し、映し出された超音波画像の観察により、穿刺針の所定部分が対象部位に向かって刺入していることを確認する。穿刺針の先端部が所望の位置(患部)に到達したことを確認すれば、穿刺針の刺入の操作手順が完了する。
【0030】
穿刺針の所望の刺入ができれば、次に刺入した穿刺針による処置、すなわち組織の吸引、薬液の注入、或いは加熱治療などの目的の施術を行う。この施術とき、対象の患部の超音波画像を観察しながら行う場合には、穿刺針を穿刺針アダプタ2の針溝ガイド60aと針押しガイド70aにより挟持させた状態の超音波プローブ本体2により、超音波断層画像を撮れば、穿刺針の像と共に患部の像も観察できる。例えば、RF波(ラジオ周波)を放射する穿刺治療針を刺入して、加熱治療の進行を観察しながら治療を進める場合に、穿刺治療針の電気的絶縁をするコーティングが一部で破損していても、穿刺治療針は電気絶縁をする樹脂により形成された針溝ガイド60aと針押しガイド70aにより挟持されて穿刺針アダプタに保持されており、加熱のための高周波電流は穿刺針アダプタの他の金属製部分へ漏洩することが全く無く、目的外の加熱をすること無く加熱治療を施術できる。
【0031】
一方、長時間の施術を行うような場合では、超音波画像による観察を中断して、穿刺(治療)針のみを留置して施術を継続するときには、操作者が指で針着脱レバー25の先端部を、ホルダ21a側へ押し下げる操作により、第2のヒンジ33部分に介在したバネの付勢力に抗して針溝支持部40の針溝ガイド60aと針押し支持部50の針押しガイド70aの嵌合が解かれるように回動させて、被検者に穿刺針を刺したまま、穿刺針アダプタ2及び超音波プローブ本体1から離脱させて処置を施すこともできる。施術が終了して、その状況を超音波画像により再び観察する場合には、針着脱レバー25を操作して、針溝ガイド60aと針押しガイド70aの嵌合を開いて、針溝ガイド60aの溝体に留置している穿刺(治療)針が納まるように穿刺針アダプタ2共々超音波プローブ本体1を位置させて、針溝ガイド60aと針押しガイド70aを閉じると元の観察位置に戻すことができる。
【0032】
また、本実施形態の穿刺針に触れる針溝ガイド及び針押しガイドの部分は、挟持フィン63a、63b或いは挟持フィン73a、73bにより着脱可能に取り付けられるので、この挟持フィンの形状を全く同じにして、図6(a)、(b)、(c)及び同図(d)、(e)、(f)に示すように、例えば、図6(a)は80度と67度の組、同図(d)は80度と55度の組のように、他の異なる種々の穿刺角度の針溝ガイド60’及び針押しガイド70’を予め具備しておくことは好適である。予め準備したこれ等のガイドの複数の組みの中から、所望する角度の針溝ガイド及び針押しガイドを選択して、これ等を針溝支持部40或いは針押し支持部50に装着することにより、刺入角度の設定を簡便に変更ができる。
【0033】
本実施形態によれば、RF加熱治療用穿刺針の使用において、穿刺針の電気絶縁のコーティングが破損している場合であっても、穿刺針アダプタの部分への漏洩電流を防止し、被治療者に目的外の異常加熱をすることが無い穿刺針アダプタを提供できる。
【0034】
さらに、異なる穿刺角度の針溝ガイド及び針押しガイドを予め準備して置き、これの中から所望する刺入角となる針溝ガイド及び針押しガイドの組を選択し、これ等を装着して、穿刺針の刺入角度を簡便に更できる利点もある。
【0035】
また、本実施形態の針溝ガイド及び針押しガイドのそれぞれは、形状が単純で樹脂成形品として大量に廉価で供給できる。したがって、これ等の針溝ガイド及び針押しガイドのそれぞれをディスポーザブル品として扱い、複雑で特殊な消毒・滅菌処理のコストを削減できる。さらに、この処理による耐久性劣化を回避する医療用器具の提供をする利点もある。
【0036】
(実施形態2)
図4は、超音波プローブ本体に本発明の第2の実施形態の穿刺針アダプタを取り付けた斜視図であり、同図(a)は針溝ガイド及び針押しガイドがより強固に装着される穿刺針アダプタの模式斜視図であり、同図(b)は本実施形態の穿刺針アダプタのホルダ部分と、針溝ガイド及び針押しガイドを取り外したガイドベース部分の構成の詳細を示す斜視図である。図5は、本実施形態の針溝ガイド及び針押しガイドを異なる視線方向から見た模式斜視図である。なお、図4、5においても、図1〜3と同様に同一部分には同一符号を付して図示している。
【0037】
本実施形態の穿刺針アダプタの構成は、前述第1の実施形態と全く同様に構成したホルダ部20と、同じくこれに第1のヒンジ23(図1(b)を参照)により連結されたガイドベース部30とからなる。本実施形態のガイドベース部30は、溝用ベースB41bとこれに装着される針溝ガイド60b、及び同じく押し用ベースB51bとこれに装着される針押しガイド70bの形態が、第1の実施形態と異なる以外は、同様の構成による。
【0038】
本実施形態の溝用ベースB41bは、図4(b)に示すように、針溝支持部40の調整ネジ板42に備える3個の筒体44a〜44c(筒体44cは、他の構造物の陰になって図示せず)の内部を滑動する3本の可動棒体441a〜441c(可動棒体441cは、他の構造物の陰になって図示せず)の端部それぞれ取り付けられて、側部にベース凸板47aを設けた板状の取り付けベースを形成している。本実施形態の押し用ベースB51bは、同じく図4(b)に示すように、第2のヒンジ33(図1(b)を参照)によって連結される基部24から水平方向へ突出した部分に嵌め合い段差52aを設けて、さらにその側部にはベース凸板55aを設けたステージ状の取り付けベースを形成している。
【0039】
上述の溝用ベースB41bに装着される針溝ガイド60bは、図5(a)に示すように穿刺針を挿入するための少なくも2本のV字溝61a、61bが設けられて、その背後の上面の側端部に、ガイド凸板66を備える。このガイド凸板66には、嵌合枠65aを備える固定レバー65が設けられる。このガイド凸板66と溝用ベースB41bのベース凸板47aとを揃えて、この針溝ガイド60bの上面と溝用ベースB41bの下面とを密着し、嵌合枠65aの枠内に両凸板を嵌り込むように固定レバー65をガイド凸板66側へ倒して、針溝ガイド60bを装着する。なお、針溝ガイド60bは、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、或いはポリフェニレノキサイド(変性PPO)などの電気絶縁特性を有する樹脂にて形成される。
【0040】
一方、押し用ベースB51bに装着される針押しガイド70bは、図5(b)に示すように針溝ガイド60bのV字溝と同本数の針押し連丘体71a、71bが設けられて、その背後の下面の側端部に、ガイド凸板76を備える。このガイド凸板76にも針溝ガイドのガイド凸板66と同様に、嵌合枠75aを備える固定レバー75が設けられる。このガイド凸板76と押し用ベースB51bのベース凸板55aとを揃えて、この針押しガイド70bの下面と押し用ベースB51bの上面の嵌め合い段差52aとを密着し、嵌合枠75aの枠内に両凸板を嵌り込むように固定レバー75をガイド凸板76側へ倒して、針押しガイド70bを装着する。なお、針押しガイド70bも、針溝ガイド60bと同様の電気絶縁特性を有する樹脂にて形成される。
【0041】
本実施形態によれば、電気絶縁のコーティングが破損しているRF加熱治療用穿刺針の使用においても、穿刺針を支持する樹脂製の針溝ガイド及び針押しガイドにより電気絶縁が成されて、穿刺針アダプタの部分への漏洩電流を防止し、被治療者に目的外の異常加熱をすることが無い穿刺針アダプタを提供できる。
【0042】
また、本実施形態において、穿刺針に触れる針溝ガイド及び針押しガイドの部分は、着脱可能に取り付けられて、その取り付け或いは取り外しが、嵌合枠を備える固定レバーの操作で簡便に行えて、施術中の穿刺角度の変更において予め用意した種々の穿刺角度となるこれ等ガイドの対との変更が簡便にできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す模式斜視図。
【図2】第1の実施形態におけるホルダ部分とガイドベース部分の斜視図、および可動体の構成を示す模式断面図。
【図3】第1の実施形態における針溝ガイドと針押しガイドの模式斜視図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す模式斜視図。
【図5】第2の実施形態における針溝ガイドと針押しガイドの模式斜視図。
【図6】実施形態における挟持フィンを全く同じにした穿刺角度の異なる針溝ガイドと針押しガイドの模式斜視図。
【符号の説明】
【0044】
1・・・超音波プローブ本体、
1a・・・音響レンズ、
2・・・穿刺針アダプタ、
20・・・ホルダ部、
21a、21b・・・ホルダ、
22・・・固定ネジ、
23・・・第1のヒンジ、
24・・・台座、
25・・・針着脱レバー、
30・・・ガイドベース部、
33・・・第2のヒンジ、
40・・・針溝支持部、
41a・・・溝用ベースA、
41b・・・溝用ベースB、
42・・・調整ネジ板、
43・・・調整ネジ、
44a、44b、44c・・・筒体、
46a、53a・・・嵌め合い凹部、
47a、55a・・・ベース凸版、
50・・・針押し支持部、
51a・・・押し用ベースA、
51b・・・押し用ベースB、
52a・・・嵌め合い段差、
60a、60b・・・針溝ガイド、
61a、61b・・・V字溝、
62・・・上面、
63a、63b、73a、73b・・・挟持フィン、
64a、64b、74a、74b・・・嵌め合い凸部、
65、75・・・固定レバー、
65a・・・嵌合枠、
66・・・ガイド凸板
70a、70b・・・針押しガイド、
71a、71b・・・連丘体、
72・・・下面、
431・・・軸芯
441a、441b・・・可動棒体、
442・・・バネ体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内部の形態画像を生成する超音波診断装置に接続された超音波プローブに装着され、穿刺針の前記被検体内部への刺入をガイドする穿刺針アダプタであって、
前記穿刺針と接してこれをガイドし、少なくとも前記穿刺針と接する部分が非導電材料によって構成されるガイド部と、
金属材料から構成され、前記超音波プローブに装着されるホルダ部と、
を具備することを特徴とする穿刺針アダプタ。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記刺入の方向が異なる他のガイド部と交換可能であることを特徴とする請求項1に記載の穿刺針アダプタ。
【請求項3】
被検体内部の形態画像を生成する超音波診断装置に接続された超音波プローブ本体に、着脱自在に装着するホルダ部と穿刺針を誘導及び保持するガイドと、このガイドを支持するガイドベース部とからなる穿刺針アダプタであって、
前記ガイドは、樹脂材料により嵌め合い機構を有して形成され、穿刺針を誘導する複数の溝体を備える針溝ガイドと、
同じく樹脂材料により嵌め合い機構を有して形成され、前記針溝ガイドの複数の前記溝体と対をなす複数の連丘を備え、この連丘が前記穿刺針を溝体に押圧し、保持する針押しガイドとからなり、
前記ガイドベース部は、前記針溝ガイドを前記嵌め合い機構により保持する針溝支持部と、
前記針押しガイドを前記嵌め合い機構により保持する針押し支持部と、
前記針溝支持部と針押し支持部とを、前記ホルダ部に連結される台座にヒンジを設け、前記ガイドそれぞれの溝と連丘を対向して開閉可能に連結し、さらに前記対向を閉じるように緩く付勢するバネ体による開閉機構と、
を備えて構成されることを特徴とする穿刺針アダプタ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−130399(P2007−130399A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328950(P2005−328950)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】