説明

窒化アルミニウム単結晶とその製造方法および製造装置

【課題】長時間に亘り結晶成長速度が安定しており、良好な品質の窒化アルミニウム単結晶を生産性良好に製造することのできる窒化アルミニウム単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】気相法による窒化アルミニウム単結晶24の製造方法であって、成長容器2と連通され、窒素ガス導入部17を具備した原料ガス発生容器11と、原料ガス発生容器11の上面に設けられたフィーダー13と、フィーダー13の上面に設けられ、原料21を連続的に供給する原料ホッパー12とを備え、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末とを混合させてなる原料21を、原料ガス発生容器11に供給し、原料ガス発生容器11を加熱することにより発生させたAlガスと、窒素ガス導入部17より原料ガス発生容器11へ供給された窒素とを、成長容器2内へ輸送し、成長容器2の成長部で連続的に窒化アルミニウム単結晶24を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウム(AlN)単結晶の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム系半導体は、深紫外のレーザーダイオードや高効率、高周波の電子デバイスとして期待されている。この半導体を育成する基板としては、窒化アルミニウム単結晶が最適であることから、窒化アルミニウム単結晶作製の開発が進められている。
窒化アルミニウム単結晶の特徴としては、熱伝導率が290Wm−1−1と非常に高いことが挙げられ、デバイス作動時に発生する熱を拡散する上で大変有利である。
【0003】
窒化アルミニウムの単結晶の製造方法としては、溶液法ではフラックス法、気相法では有機金属気相成長法(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy, MOVPE)、水素化物気相堆積法(Hydride Vapor Phase Epitaxy, HVPE)、昇華法などが挙げられる。この中でも、昇華法は、一般的に成長速度が大きいため、バルク結晶の作製に対して有力な方法である。この昇華法とは、原料である窒化アルミニウムを昇華させ、それを昇華温度よりも低い温度領域で再凝縮させることにより単結晶を作製する方法である。
【0004】
昇華法での高純度窒化アルミニウムの結晶成長については、Slackらにより初めて実証されて以来(非特許文献1を参照)、広く研究開発が行われてきた。最近では、非特許文献2に記載の技術のように、半導体グレードの窒化アルミニウム単結晶が昇華法により作製されつつある。
【0005】
図2に種子基板を利用した昇華法により窒化物単結晶を作製することを可能にする、従来の窒化物製造装置1を示す。
従来の窒化物製造装置1は、成長容器2と、成長容器2の内底部に配置された原料容器14と、成長容器2の上部に取り付けられたサセプタ3と、を備えて構成されている。原料容器14の底部には窒化アルミニウム粉末などの原料22が収納されている。
サセプタ3の下面には原料22と対向するように種子基板23が貼り付けられている。成長容器2本体外周に沿って、成長容器2内部に配された原料22やサセプタ3、種子基板23を加熱する抵抗加熱方式による加熱手段7が設けられている。成長容器2および加熱手段7は、チャンバー8によって包囲されている。チャンバー8の天井部には、窒素ガスなどのガス供給装置に接続されたガス導入部5が形成され、更に、圧力調整弁6を介して真空ポンプなどの減圧装置が接続されて、チャンバー8の内部を所定のガス圧力に調整できるようになっている。
【0006】
窒化物単結晶の作製に際しては、まず、チャンバー8に設けられている図示略の搬入口を開けて、原料22を原料容器14の底部にセットし、搬入口を閉じてチャンバー8を密閉する。次いで、チャンバー8内を圧力調整弁6を介して減圧装置により真空排気した後、ガス導入部5により窒素ガスなどのプロセスガスを成長容器2内に導入して、圧力を調整する。
そして、原料22が配された原料容器22やサセプタ3、種子基板23を加熱する。加熱で昇華させて分解気化された原料22は、窒素ガス雰囲気下で種子基板23上に結晶成長することで、窒化物単結晶24となり成長する。
【0007】
改良レイリー法による窒化アルミニウム単結晶作成方法として、特許文献1には、窒化物と酸化物との混合粉末を、窒化物と酸化物の反応を利用することにより、窒化物の昇華温度よりも低い温度で過熱して気化させ、この窒素雰囲気中で、基板上に窒化物単結晶を育成するという方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−53495号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Crystal Growth 34 (1976) 263
【非特許文献2】Journal of Crystal Growth 310 (2008) 881
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の昇華法による窒化アルミニウム単結晶の製造方法においては、原料容器14に原料22を充填して、バッチ式により単結晶の成長が行われていた。この場合は、成長結晶の大きさが、充填する原料量により決定されてしまうため、結晶の大口径化には限界があった。大口径の結晶を作製するためには、バッチ式による結晶成長を繰り返して実施しなければならないため、多大な労力を要するという問題があった。
また、上記従来の昇華法では、窒化アルミニウム粉末を原料に用い、これを加熱、昇華させることで原料ガスを発生させている。昇華は吸熱を伴う状態変化であり、一般に、化学反応に比べると変化のスピードが遅い。そのため、原料部の温度を結晶成長温度に比べて高い温度にしないと、十分な昇華速度が得られない。また、粉末原料を加熱すると焼結により収縮するため、原料全体の表面積が縮小する。そのため、昇華速度の低下が起こり、窒化アルミニウム成長部への原料供給量が減るため、窒化アルミニウム結晶成長速度が低くなるという問題がある。このような昇華速度の変動は、作製する窒化アルミニウム単結晶の質に大きく影響を与え、良好な品質の窒化アルミニウム単結晶が得られない場合があった。
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて考案されたものであり、気相法により単結晶を製造する際に、長時間に亘り結晶成長速度が安定しており、良好な品質の窒化アルミニウム単結晶を生産性良好に製造することのできる窒化アルミニウム単結晶の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造方法は、
気相法による窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、
成長容器と、
該成長容器と連通され、窒素ガス導入部を具備した原料ガス発生容器と、
この原料ガス発生容器内を加熱する加熱手段と、
該原料ガス発生容器の上面に設けられたフィーダーと、
該フィーダーの上面に設けられ、原料を連続的に供給する原料ホッパーとを備え、
酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末とを混合させてなる前記原料を、前記原料ガス発生容器に供給し、
CとCOの平衡酸素分圧がAlと酸化アルミニウムの平衡酸素分圧を下回るように温度制御し、
該原料ガス発生容器を加熱することにより発生させたAlガスと、前記窒素ガス導入部より前記原料ガス発生容器へ供給された窒素とを、前記成長容器内へ輸送し、
前記成長容器の成長部で連続的に窒化アルミニウム単結晶を成長させることを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造方法は、前記原料ホッパーは、ガス導入部および圧力調整弁を備え、前記原料ホッパー内の圧力を前記成長容器内圧力と同等に制御することを特徴とする。
上記の課題を解決するため、本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造方法は、前記反応ガス発生容器内において、CとCOの平衡酸素分圧が、Alと酸化アルミニウムの平衡酸素分圧を下回るように温度調整することを特徴とする。
さらに本発明は、前記窒化アルミニウム単結晶の製造方法を用いて得られる窒化アルミニウム単結晶を提供する。
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造装置は、
成長容器と、
該成長容器と連通され、窒素ガス導入部を具備した原料ガス発生容器と、
該原料ガス発生容器の上面に設けられたフィーダーと、
該フィーダーの上面に設けられ、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末とを混合してなる原料を収納する原料ホッパーとを備え、
前記フィーダーから前記原料ガス発生容器へ前記原料を連続的に供給し、
前記原料ガス発生容器で発生させたAlガスと、前記窒素ガス導入部より前記原料ガス発生容器へ供給された窒素とを、前記成長容器内へ輸送することにより、
前記成長容器の成長部で、連続的に窒化アルミニウム単結晶を成長させることができることを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造装置は、前記原料ホッパーは、ガス導入部および圧力調整弁を備え、前記原料ホッパー内の圧力を前記成長容器内圧力と同等に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造装置は、成長容器とは別に、成長容器と連通した原料ガス発生容器を設け、この原料ガス発生容器に、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末を混合させてなる原料を供給するためのフィーダーおよび原料ホッパーと、窒素ガスを供給するための窒素ガス導入部を設ける構成とした。これにより、フィーダーから原料ガス発生容器へ原料を連続的に供給するとともに、窒素ガス導入部から窒素を連続的に供給するし、原料ガス発生容器中で発生させたAlガスと窒素ガスを成長容器に輸送し、成長容器の成長部で連続的に窒化アルミニウム単結晶を成長させることができる。ゆえに、長時間安定した結晶成長が可能となり、良好な品質の窒化アルミニウム単結晶を提供することができる。
また、本発明の窒化物単結晶の製造方法によれば、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末を混合させてなる原料を原料ガス発生容器へと供給し、該原料ガス発生容器を加熱することにより、Al+3C→2Al+3COの化学反応により窒化アルミニウム単結晶の原料ガスとなるAlガスを効率的に発生させることができる。このAlガスと窒素ガスを成長容器に連続して供給することにより、良好な品質の窒化アルミニウム単結晶を提供することができる。
さらに、本発明の窒化物単結晶の製造方法によれば、原料ガス発生容器内における、CとCOの平衡酸素分圧が、Alと酸化アルミニウムの平衡酸素分圧を下回るようにすることにより、該原料ガス発生容器内におけるAl+3C→2Al+3COの化学反応が速やかに進行し、原料の投入後、即座にAlガスを発生させることができる。したがって、窒化アルミニウム単結晶の原料ガスとなるAlガスの発生速度が向上し、良好な結晶成長速度を長時間安定して保つことができるので、良好な品質の窒化アルミニウム単結晶を生産性良好に提供することができる。
また、本発明によれば、フィーダーより原料を連続的に定量供給するとともに、窒素ガス導入部より窒素ガスを連続定量供給することが可能であるため、窒化アルミニウム単結晶のAlガスと窒素ガスを連続的に定量供給することが可能である。これにより、成長時間の長時間化が可能となるため、窒化アルミニウム単結晶の大口径化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造装置の一例を模式的に示した概略構成図である。
【図2】従来の窒化物単結晶の製造装置の一例を模式的に示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。図1は本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造装置の一例を示す概略構成図である。図1において、図2で示した従来の装置の要素と同一の要素には同一の符号を付してある。
【0019】
本実施形態の窒化アルミニウム単結晶の製造装置1は、成長容器2と、成長容器2と連通している原料ガス発生容器11と、原料ガス発生容器11の先端部に設けられている窒素ガス導入部17と、原料21を収容する原料ホッパー12と、原料ホッパー12から原料21を供給するフィーダー13と、フィーダー13の下方に設けられているシャッター12Bを備えて構成されている。原料ガス発生容器11は、成長容器2の側壁に連結部(フランジ)11Aを介して横向きに接続されたものである。
成長容器2の上部中央(天井部)には、サセプタ3が配置されており、サセプタ3の下面に貼り付けられている種子基板23上に窒化物単結晶(窒化アルミニウム単結晶)24が成長するようになっている。サセプタ3は、黒鉛などからなる板状のもので、結晶成長用の種子基板23は、例えば直径2インチの6H−SiCまたは窒化アルミニウム単結晶板である。
【0020】
成長容器2には、成長容器2内部に配されたサセプタ3、種子基板23を加熱する抵抗加熱方式による加熱手段7が設けられている。同様に、原料ガス発生容器11には、原料ガス発生容器11内部に供給された原料21を加熱する抵抗加熱方式による加熱手段18が設けられている。このような加熱手段7、18としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。例えば、ヒーター材として、カーボン、タングステンなどを使用することができる。また、成長容器2、原料ガス発生容器11、および加熱手段7、18は、チャンバー8によって包囲されている。
【0021】
原料ホッパー12の上部側には、窒素ガスなどのガス導入部15および圧力調整弁16が設けられており、原料ホッパー12の内部圧力をチャンバー8の内部圧力と同等に制御できるようになっている。原料ホッパー12の底部は、連結部(フランジ)12Aを介して、原料ガス発生容器11の上部に接続されている。
成長容器2の底部には、窒素ガスなどの導入部4が形成され、原料ガス発生容器11の先端部には、窒素ガス導入部17が形成されていて、チャンバー8内の天井部にはガス導入部5および圧力調整弁6が設けられている。これにより、チャンバー8の内部を、所定のガス圧力に個別に調整できるようになっている。
【0022】
次に、本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造方法について説明する。
本発明の窒化アルミニウム単結晶の製造方法においては、原料として酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末を混合したものを用いる。この混合粉末を原料ガス発生容器内で加熱することにより、Al+3C→2Al+3COの反応が起こり、窒化アルミニウム単結晶の原料ガスであるAlガスを発生させることができる。このようにして発生させたAlガスと窒素ガスを反応容器へ輸送することにより、成長容器内の種子基板上に結晶成長させる。
原料となる酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末の混合割合は、酸化アルミニウム粉末1モルに対して、カーボン粉末を3〜10モルの割合とすることが好ましく、4〜7モルの割合とすることがさらに好ましい。このような混合割合とすることにより、原料ガス発生容器内で原料を加熱するとAlガスが即座に発生するため好ましく、窒化アルミニウム単結晶の成長速度を向上させることができる。
【0023】
本発明の製造装置1を用いた窒化アルミニウム単結晶24の製造方法について説明する。
まず、原料ホッパー12に設けられている搬入口12Aを開けて、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末の混合粉末である原料21を原料ホッパー12に収容した後、搬入口12Aを閉じて原料ホッパー12を密閉する。
次いで、シャッター12Bを開けて、フィーダー13より原料21を原料ガス発生容器14に供給する。次いで、チャンバー8内を圧力調整弁6に接続された真空ポンプより真空排気した後、ガス導入部4、5により窒素ガス等のプロセスガスを成長容器2へ導入し、さらに窒素ガス導入部17より窒素ガスを原料ガス発生容器11内の内部空間に導入して、圧力を調整する。ここでの圧力は1〜760Torr、より好ましくは10〜500Torrに設定することができる。
【0024】
そして加熱手段7、18を用いて原料21が配された原料ガス発生容器11と、サセプタ3、種子基板23を加熱する。ここで、原料ガス発生容器11内の原料ガス発生部の温度は1700〜2250℃、より好ましくは1750〜2200℃に設定することができる。また、成長部の温度は1700〜2300℃、より好ましくは1800〜2250℃に設定することができる。原料ガス発生部と成長部の温度の大小については特に制限されず、例えば、成長部の温度を原料ガス発生部の温度よりも50度程度高く設定することができる。従来公知の窒化アルミニウム粉末を原料とする昇華法では、原料の昇華を促進するために、原料部の温度は成長部の温度に比べて高く設定しなければならなかったが、本発明では、原料ガスはAl+3C→2Al+3COの化学反応により発生するため、従来の昇華法よりも低い温度で効果的にAlガスを発生させることができるので、従来の昇華法のような原料ガス発生部と成長部の温度の大小関係は制限されない。
【0025】
また、加熱中は、チャンバー8の上面の圧力調整弁6から成長容器2内のガスを排気しつつ、ガス導入部4、5および窒素ガス導入部17からガスを成長容器2および原料ガス発生容器11内に供給することにより、成長容器2および原料ガス発生容器11内のガス圧、および流量を適切に調整する。原料ホッパー12に設けられたガス導入部15および圧力調整弁16は、チャンバー8内圧力と、原料ホッパー12内圧力とを同等に制御する。
原料ガス発生容器11内の原料ガス発生部で加熱された原料21は、Al+3C→2Al+3COの化学反応により、窒化アルミニウム単結晶の原料ガスであるAlガスを発生する。この際、原料ガス発生容器11内において、CとCOの平衡酸素分圧がAlとAlの平衡酸素分圧を下回るように、原料ガス発生部の温度と圧力を調整することが好ましい。CとCOの平衡酸素分圧がAlとAlの平衡酸素分圧を下回るための温度条件は、圧力条件に依存し、原料ガス発生容器11内の圧力が高い場合には温度を高く設定する必要がある。例えば、原料ガス発生容器11内の圧力が10Torrの場合は、温度を1670℃以上と設定し、また、原料ガス発生容器11内の圧力が760Torrの場合には、温度を2030℃以上と設定することにより、CとCOの平衡酸素分圧はAlとAlの平衡酸素分圧を下回る状態となる。このような雰囲気下で原料21を加熱することにより、前記化学反応式の反応が促進され、原料21は速やかに分解気化されて、Alガスが発生する。
【0026】
原料ガス発生容器11内で原料21を加熱することにより発生したAlガス、および、窒素ガス導入部17より原料ガス発生容器11へ供給された窒素ガスは、原料ガス発生容器11と連通している成長容器2へと輸送される。輸送は、窒素ガス導入部17より導入された窒素ガスによって行われる。輸送されたAlガスと窒素ガスは、成長容器2上部に配置されたサセプタ3下面に配置された種子基板23上に、窒素ガス雰囲気下で窒化アルミニウム単結晶24となり成長する。本発明では、この結晶成長中において、種子基板23での結晶成長の結晶化速度を制御するため、サセプタ3の温度と、原料ガス発生容器11内の原料ガス発生部の温度と、窒素ガス導入部17からの窒素ガスの供給量(窒素ガス流量)とをそれぞれ最適化する制御を行う。
【0027】
本発明では、この間、原料21を、フィーダー13によって原料ガス発生容器11へ適宜定量供給することが可能となる。
また、窒化アルミニウム単結晶24の作製の間にも、原料ホッパー12と原料ガス発生容器11との間のシャッター12Bを閉じた上で、搬入口12Aを開けることにより、原料21を原料ホッパー12に供給することができる。シャッター12Bを閉じた上で搬入口12Aを開けることにより、原料容器2および原料ガス発生容器11の内部圧力に影響を与えることはない。補給された原料21をフィーダー13によって供給する際は、原料ホッパー12の内部を個別に真空にしてからシャッター12Bを開けるため、原料ガス発生容器11の真空状態に影響を与えることなく、原料21を原料ガス発生容器11に供給できる。上記のような操作を繰り返すことにより、原料ガス発生容器11内の原料ガス発生部で、Alガスを半永久的に連続して安定して発生させることが可能となる。
以上の方法により、窒素ガス導入部17より供給された窒素ガスと、原料ガス発生容器11内で発生させたAlガスを、成長容器2へ連続的に安定して輸送することができ、種子基板23の被堆積面に成長した窒化アルミニウム単結晶24は、半永久的に連続成長が可能となる。これにより、結晶成長時間を長時間化することにより、窒化アルミニウム単結晶24の大口径化が可能となる。
さらに本発明によれば、窒化アルミニウム単結晶の原料ガスであるAlガスを、原料21を構成する酸化アルミニウムとカーボンの化学反応により発生させていることにより、従来公知の窒化アルミニウム粉末を原料とした昇華法に比べて、原料ガスの発生を効率的に行うことができる。これにより、窒化アルミニウム単結晶の結晶成長速度を向上させることが可能であり、生産性良好に窒化アルミニウム単結晶を製造することができる。
【実施例】
【0028】
図1に示す構成の装置を用い、種子基板23の一面に、窒化アルミニウム単結晶24を作製した。この作製にあたっての実験条件および実験結果を、以下の表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
この実験条件において、実施例1〜3は、本願の連続式製造方法および製造装置による実施例である。比較例1〜3は、図2に示す従来の装置を用いる比較例である。
【0031】
<実施例1〜3>
種子基板23として、直径2インチの6H−SiC(0001)を用い、図1に示した製造装置を用いて、アルミナ粉末とカーボン粉末を1:6(モル比)の割合で混合した混合粉末を原料21とし、この原料をフィーダー13により原料ガス発生容器11へ連続的に供給しながら、表1に示した条件で窒化アルミニウム単結晶を作製した。この時、原料ガス発生容器11内において、CとCOの平衡酸素分圧は、AlとAlの平衡酸素分圧を下回っているので、Alガスが連続的に発生し、連続的に種子基板23上に窒化アルミニウム単結晶を成長させることが出来る。なお、表1において、原料部温度は、原料ガス発生容器11内の原料ガス発生部の温度を表す。
【0032】
<比較例1〜3>
種子基板23として、直径2インチの6H−SiC(0001)を用い、図2に示した製造装置を用い、原料22として窒化アルミニウム粉末を用い、表1に示した条件で窒化アルミニウム単結晶を作製した。なお、表1において、比較例1〜3の原料部温度は、原料容器14の温度を表す。
【0033】
実施例1〜3では、100時間、原料ホッパーに収容された原料を連続的に定量供給しながら、また、必要であれば、原料ホッパーに原料を追加しながら成長実験を行った。その結果、長時間安定してバルク窒化アルミニウム単結晶を作製可能であった。また、本発明にかかる実施例1〜3は、窒化アルミニウム粉末を原料としてバッチ式で窒化アルミニウム単結晶を作製する方法に比べて、作製速度が向上することが確認された。また、窒化アルミニウム粉末を原料とする従来公知の昇華法では、原料部の温度を成長部の温度よりも高くしなければ十分な昇華速度が得られなかったが、実施例1〜3では、原料部の温度を成長部の温度よりも50℃低く設定しても、良好な成長速度で結晶成長が可能であった。
【0034】
比較例1〜3では、図2に示す製造装置を用いて成長実験を行った。原料の窒化アルミニウ粉末は1kg充填したが、いずれの条件においても、加熱により原料の焼結、収縮が進むことにより、昇華速度の低下および結晶成長速度の低下がおこり、長時間安定して結晶が成長しなかった。また、100時間の成長実験において、結晶成長長さがいずれも2mm以下であったことから、口径拡大を実現するには、複数回の実験が必要であり、実験のセッティングや、降温過程など、多大な時間と労力を要することになり、効率的ではない。
【0035】
以上の結果のように、気相法による窒化アルミニウム成長において、図1に示す装置を用いて、窒素ガスと原料ホッパー内部の原料を、原料ガス発生容器へ連続的に定量供給することにより、長時間安定した結晶成長を、生産性良好に行うことができた。したがって、良好な品質の窒化アルミニウム単結晶の製造が可能であり、製造時間を長時間化することにより、窒化アルミニウム単結晶の大口径化が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により製造された窒化アルミニウム単結晶は、窒化物系単結晶基板として一般的な用途に利用可能であり、詳しくは、青色および紫外発光ダイオード(LED)向け基板、レーザーダイオード(LD)用基板、高耐圧・高周波パワーデバイス用基板として好適な材料である。
【符号の説明】
【0037】
1…単結晶の製造装置、2…成長容器、3…サセプタ、4…ガス導入部、5…ガス導入部、6…圧力調整弁、7…加熱手段、8…チャンバー、11…原料ガス発生容器、11A…連結部、12…原料ホッパー、12a…搬入口、12A…連結部、12B…シャッター、13…フィーダー、14…原料容器、15…ガス導入部、16…圧力調整弁、17…窒素ガス導入部、18…加熱装置、21、22…原料、23…種子基板、24…窒化物単結晶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相法による窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、
成長容器と、
該成長容器と連通され、窒素ガス導入部を具備した原料ガス発生容器と、
該原料ガス発生容器の上面に設けられたフィーダーと、
該フィーダーの上面に設けられ、原料を連続的に供給する原料ホッパーとを備え、
酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末とを混合させてなる前記原料を、前記原料ガス発生容器に供給し、
該原料ガス発生容器を加熱することにより発生させたAlガスと、前記窒素ガス導入部より前記原料ガス発生容器へ供給された窒素とを、前記成長容器内へ輸送し、
前記成長容器の成長部で連続的に窒化アルミニウム単結晶を成長させることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記原料ホッパーは、ガス導入部および圧力調整弁を備え、前記原料ホッパー内の圧力を前記成長容器内圧力と同等に制御することを特徴とする請求項1に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記反応ガス発生容器内において、CとCOの平衡酸素分圧が、Alと酸化アルミニウムの平衡酸素分圧を下回るように温度調整することを特徴とする請求1または2に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法を用いて得られる窒化アルミニウム単結晶。
【請求項5】
成長容器と、
該成長容器と連通され、窒素ガス導入部を具備した原料ガス発生容器と、
この原料ガス発生容器内を加熱する加熱手段と、
該原料ガス発生容器の上面に設けられたフィーダーと、
該フィーダーの上面に設けられ、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末とを混合してなる原料を収納する原料ホッパーとを備え、
前記フィーダーから前記原料ガス発生容器へ前記原料を連続的に供給し、
CとCOの平衡酸素分圧がAlと酸化アルミニウムの平衡酸素分圧を下回るように温度制御し、
前記原料ガス発生容器で発生させたAlガスと、前記窒素ガス導入部より前記原料ガス発生容器へ供給された窒素とを、前記成長容器内へ輸送することにより、
前記成長容器の成長部で、連続的に窒化アルミニウム単結晶を成長させることができることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造装置。
【請求項6】
前記原料ホッパーは、ガス導入部および圧力調整弁を備え、前記原料ホッパー内の圧力を前記成長容器内圧力と同等に制御することを特徴とする請求項5に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−26162(P2011−26162A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172340(P2009−172340)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】