説明

窯炉、耐火物の施工方法及び耐火物ブロック

【課題】鉄鋼製造用の転炉や高炉、取鍋等の円筒状の窯炉の直胴部の築炉を容易に実施できる、耐火物の施工方法、及び耐火ブロックを提供する。
【解決手段】円筒状の窯炉1本体と、前記窯炉の内面に配置された鉄皮と、前記鉄皮の内側に配置され、複数の耐火物ブロック4を含む内張り耐火物と、を備える窯炉であって、前記複数の耐火物ブロック4の夫々は、前記窯炉の中央側に露出する六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有し、前記複数の耐火物ブロック4は、前記窯炉の径方向に沿った前記稼動面側端面の位置を、窯炉の軸心を基準として規定された基準位置に揃えて配置され、前記鉄皮内面の円周方向に沿ってリング状に1段以上配列され、ハニカム状に積層されている窯炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製造用の転炉や高炉、取鍋等の窯炉、耐火物の施工方法及び耐火物ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造用の転炉をはじめとする精錬窯炉においては、炉体の内側の鉄皮面にまず永久張りと称される矩形状のパーマネント煉瓦を炉底部、炉壁部に施工する。その後、パーマネント煉瓦の上面に矩形状のウェア煉瓦を押し当て、炉底部の全面に敷き詰める。炉底部へのウェア煉瓦の施工完了後、炉底下部から炉壁上部へ、炉壁に沿って、一段ずつ同一平面上にパーマネント煉瓦に押し当てて施工していくのが築炉の基本的手順である。
【0003】
このような築炉作業の効率を向上させるために、従来種々の提案がなされてきている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1は、搬送手段にて供給された煉瓦を所定の位置へ詰め寄せるための移動を、円滑かつ迅速に行うことができる煉瓦積み装置に関するものである。
【0005】
特許文献2では、互いに形状が異なる2種の煉瓦を予め定められた所定の順番で略円周状に複数段配置する煉瓦積み方法が提案されている。
【0006】
つまり、上記特許文献1、2では、断面矩形状の煉瓦を一本ずつ、パーマネント煉瓦面に押し付けて築造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−5262号公報
【特許文献2】特開2005−9707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載されるような構成では、各段において煉瓦の円周方向の位置決めをする必要があり、築炉に長時間を要するという問題がある。
【0009】
また、矩形状の煉瓦を用いる場合、各煉瓦は、両隣の煉瓦との間での拘束力で支えられている状態である。このため、直立状態での築炉が完了した後、例えば炉を前後に傾動するとき、煉瓦間の拘束が弱い箇所があると、傾動時に煉瓦の抜け落ち現象が発生する等の問題がある。
【0010】
一度このような抜け落ち現象が発生すると、炉を再び直立状態に戻し、順次上部から煉瓦を取り外し、抜け落ち部を元の位置に復帰させ、再度各煉瓦の押し込みを行い、再度、築炉する必要がある。このため、築炉に長時間を要してしまう。
【0011】
また、矩形状の煉瓦を用いる場合、上記のような抜け落ちを制御するために、パーマネント煉瓦面への押し付けを強化することが重要である。この際に、パーマネント煉瓦が鉄皮に押し付けられることで鉄皮が変形してしまうおそれがある。更に、鉄皮が変形したまま耐火物ブロックを配置すると、目地開きが発生してしまうおそれもある。
【0012】
本発明は、築炉に際して、まず、窯炉の軸心を求め、稼動面である窯炉内面及び鉄皮側の背面ともに、六角形状の耐火物ブロックを、求めた窯炉の軸心から一定の距離を基準として(以下、「内面基準」という。)積上げる内面基準で構築することで、上述した既存技術の種々の不具合を改良した煉瓦積み方法による窯炉、耐火物の施工方法及び耐火物ブロックに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の各態様は、以下の構成を有する。
(1)円筒状の窯炉本体と、前記窯炉の内面に配置された鉄皮と、前記鉄皮の内側に配置され、複数の耐火物ブロックを含む内張り耐火物と、を備える窯炉であって、
前記複数の耐火物ブロックの夫々は、前記窯炉の中央側に露出する六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有し、
前記複数の耐火物ブロックは、前記窯炉の径方向に沿った前記稼動面側端面の位置を、窯炉の軸心を基準として規定された基準位置に揃えて配置され、前記鉄皮内面の円周方向に沿ってリング状に1段以上配列され、ハニカム状に積層されている窯炉。
(2)円筒状の窯炉本体と、前記窯炉の内面に配置された鉄皮と、前記鉄皮の内側に配置され、複数の耐火物ブロックを含む内張り耐火物と、を備える窯炉であって、
前記複数の耐火物ブロックの夫々は、前記窯炉の中央側に露出する六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有し、
前記複数の耐火物ブロックは、前記窯炉の径方向に沿った前記稼動面側端面の位置を、窯炉の軸心を基準として規定された基準位置に揃えて配置され、前記鉄皮内面の円周方向に沿って螺旋状に1段以上配列され、ハニカム状に積層されている窯炉。
(3)前記耐火物ブロックと前記鉄皮との間に、不定形耐火物又は耐火物粉体が充填されている(1)又は(2)に記載の窯炉。
(4)前記耐火物ブロックは、熱膨張を吸収する熱膨張吸収部材を介して配置されている(1)〜(3)の何れかに記載の窯炉。
(5)前記耐火物ブロックは、金属板と前記金属板の一面から突出する金属製の把持部とを含み、接着剤及びボルトを用いて固定されたブロック配置用治具を更に有する(1)〜(4)の何れかに記載の窯炉。
(6)円筒状の窯炉の鉄皮内面に耐火物を内張り施工する耐火物の施工方法であって、
窯炉の軸心を求め、
六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状背面側端面とを有する耐火物ブロックを積層し、
複数の前記耐火物ブロックを、前記窯炉の径方向に沿って前記稼動面側端面の位置を、窯炉の軸心を基準として規定された基準位置に揃うように配列し、
複数の前記耐火物ブロックを窯炉内の円周方向に沿って、かつ、ハニカム状に積層することを特徴とする耐火物の施工方法。
(7)(6)に記載の耐火物の施工方法であって、前記耐火物ブロックと、該耐火物ブロックを、前記六角形状の稼動面側端面と前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを、夫々2つの台形に等分する切断平面で切断した形状の半割ブロックと、を用い、該半割ブロックを炉底面の所定の位置にリング状に設置した後、それらの上面に、耐火物ブロックをリング状に1段以上積層する耐火物の施工方法。
(8)(6)に記載の耐火物の施工方法であって、前記耐火物ブロックと、該耐火物ブロックを、所定の角度で斜めに切断した複数の分割耐火物ブロックと、を用い、該分割ブロックを炉底面の所定の位置に、分割ブロックの大きさの順に配置して、分割する前のブロックの中心が、炉底面に対して一定の傾斜角で上昇するように円筒部の1段分を配列し、その後、それらの上面に、耐火物ブロックを螺旋状に1段以上積層する耐火物の施工方法。
(9)(6)〜(8)のいずれか1項に記載の耐火物の施工方法であって、
前記耐火物ブロックが、金属板と前記金属板の一面から突出する金属製の把持部とを含み、接着剤及びボルトを用いて固定されたブロック配置用治具を有し、
前記把治部を把持することで、前記耐火物ブロックを持ち上げて配置する耐火物の施工方法。
(10)円筒状の窯炉の鉄皮内面の内張り用の耐火物ブロックであって、六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有し、積層した際に、該耐火物ブロックの左右側を構成する2面がなす稜線が、稼動面側から背面側にかけて、互いに上下逆方向に緩傾斜している耐火物ブロック。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、略円筒状の窯炉を形成する際の、窯炉直胴部の築炉を容易に実施することができる。
【0015】
このため、熟練した施工者でなくとも、各段において、所定の耐火物ブロックを所定間隔毎に配置して、下段の設置済み耐火物ブロックの間に作業中の段の耐火物ブロックを所定の順序で嵌め込むだけで、円周方向及び半径方向の位置決めをすることができる。
【0016】
また、従来の矩形状の耐火物ブロックを用いる場合、垂直面で耐火物ブロック同士を接触させるため、耐火物ブロックの自重によって円周方向の拘束力を発生させることができず、円周方向の拘束力は、設置状態(設置間隔)で決まることなり、この拘束力を略一定にすることが困難であるのに対し、本発明では、耐火物ブロックをハニカム状に積層することで、垂直面に対して、傾斜する面で耐火物ブロック同士を接触させているため、耐火物ブロックの自重によって円周方向の拘束力を発生させることができ、かつ、この拘束力を設置状態に拘らずに略一定にできる。
【0017】
したがって、窯炉を傾動させたときの耐火物ブロックの抜け落ちを防止できる。
【0018】
これに加えて、耐火物ブロックを稼動面側端面の位置を基準にして設置できるため、耐火物ブロックをパーマネント煉瓦へ押し付ける必要がないことから、鉄皮の変形やそれに伴う目地開きの発生を防止でき、容易にかつ短時間で築炉可能な窯炉、その施工方法及び耐火物ブロックを提供できる。
【0019】
さらに、転炉やRH炉のような、鉄皮の内側に耐火物ブロックを配置し、その中に高温の溶鋼を注入して使用する構造物においては、高温の溶鋼によって、耐火物ブロックが膨張しようとするが、鉄皮に拘束されているため、耐火物ブロックには円周方向の熱応力が発生し、そのために耐火物ブロックの破損のおそれがある。
【0020】
従来の矩形状の耐火物ブロックでは、水平方向に隣接する耐火物ブロック同士の接触面が半径方向の垂直面をなし、上下方向に隣接する耐火物ブロック同士は水平面をなしているため、水平面は応力が零であるのに対し、垂直面では、高い応力がかかるため、前記膨張によって、耐火物ブロック同士のせめぎあいが生じて、耐火物ブロックの破損等のおそれがあるが、本発明の耐火物ブロックを、基壇に屋根型の耐火物ブロックを配置してリング状に積層した場合には、半径方向の垂直面が存在しないため、応力が分散して緩和される。また、螺旋状に積層施工すると、平行面が存在しないことから、全ての隣接面から応力が加わり、耐火物ブロックに均一な応力が発生して、一層応力が緩和される。
【0021】
その結果、従来例や、屋根型の耐火物ブロックを基壇に配置して、リング状に1段毎に積層した場合に比較して、耐火物ブロックの破損のおそれが大幅に低減されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る窯炉の平面図である。
【図2】トラニオン軸から炉体軸を決定する説明図である。
【図3】底吹き羽口から炉体軸を決定する説明図である。
【図4】レーザースキャナー等を利用して最小二乗法により炉体軸を決定する説明図である。
【図5】前記実施形態におけるハニカムブロックの平面図である。
【図6】前記実施形態におけるハニカムブロックの内側端面側からの図である。
【図7】前記実施形態における半割ブロックとハニカムブロックの配置状態を窯炉の内部から見た図である。
【図8a】直胴部分にハニカムブロックをリング状に積上げた状態を窯炉の内部から見た図である。
【図8b】リング状積上げに用いる六角形状ブロックの三面図と見取り図である。
【図9a】直胴部分に六角形状ブロックを螺旋状に積上げた状態を窯炉の内部から見た図である。
【図9b】螺旋状積上げに用いる六角形状ブロックの三面図と見取り図である。
【図10】前記実施形態におけるハニカムブロックの配置状態の平面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る耐火物施工装置が転炉内に挿入された状態を説明する模式図である。
【図12】前記実施形態における耐火物施工装置の構造を表す正面図である。
【図13】前記実施形態における耐火物施工装置の構造を表す側面図である。
【図14】前記実施形態における耐火物の施工方法の手順を説明するための模式図である。
【図15】前記実施形態における耐火物の施工方法の手順を説明するための模式図である。
【図16】前記実施形態における耐火物の施工方法の手順を説明するための模式図である。
【図17】前記実施形態における耐火物の施工方法の手順を説明するための模式図である。
【図18】前記実施形態における耐火物の施工方法の手順を説明するための模式図である。
【図19】前記実施形態における耐火物の施工方法の手順を説明するための模式図である。
【図20】前記実施形態の変形となる耐火物の施工方法を現す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、円筒状の窯炉の鉄皮内面の内張り耐火物ブロックとして、例えば、焼成煉瓦や不焼成煉瓦を用いることができる。焼成煉瓦を用いる場合、通常の矩形状の煉瓦の作成後に機械加工することで六角形状の耐火物ブロックを得ることができる。
【0024】
また、不焼成煉瓦を用いる場合、六角形状の型枠を用いて原料粉末を加圧成型するか、または型枠に不定形耐火物を流し込み、養生、乾燥、加熱処理することで耐火物ブロックを得ることができる。なお、断面台形状のブロックを複数接合することで六角形状にしたブロックを用いてもよい。
【0025】
また、耐火物ブロックの稼動面側(以降、「内面」と記載する場合がある。)端面や背面側(以降、「外面」と記載する場合がある。)端面は平面、円弧面、曲面のいずれであってもよい。
【0026】
さらに、耐火物ブロックの各端面(稼動面又は背面)における円周方向に突出する頂点の角度を120°前後、具体的には、115〜125°に設定することが好ましい。125°よりも大きくすると、円周方向への拘束力を充分に発揮させることができず、115°未満の場合には、上記稜線を含む部分に作用する自重が大きくなり破損してしまうおそれがあるからである。
【0027】
なお、本発明で対象とする円筒状の窯炉とは、必ずしも完全な円筒である必要はなく、略円筒状の窯炉であっても良い。
【0028】
そして、本発明では、前記耐火物ブロックがハニカム状に積層されている。このため、例えば一部のブロックが欠損しても、隣接した耐火物ブロックが抜け落ちることがない。このため、耐火物ブロックを鉄皮側へ押し付ける必要がなく、前記内側端面の位置を基準にして、耐火物ブロックを配置することができる。
【0029】
ここで、従来技術のように、矩形状の耐火物ブロックを鉄皮内面に設けたパーマネント煉瓦に押し付けながら、すなわち外側端面を基準にして位置決めする場合、通常、施工者が位置する内側端面側から外側端面を確認することは困難である。このため、適切に位置決めできないおそれがある。さらに、このような場合、パーマネント煉瓦が鉄皮に押し付けられることで、鉄皮が変形してしまうおそれがある。また、鉄皮が変形したまま耐火物ブロックを配置すると、目地開きが発生してしまうおそれがある。
【0030】
これに対して、内面基準にして配置することで、施工者が配置位置を容易に確認することができ、鉄皮を破損することなく窯炉を築炉することができる。
【0031】
また、本発明では、前記耐火物ブロックと、前記鉄皮の間には、不定形耐火物又は耐火物粉体が充填されている構成が望ましい。
【0032】
ここで、耐火物ブロックと鉄皮との間にパーマネント煉瓦を設けた場合、煉瓦間の空隙を通して輻射により、窯炉内部の熱が鉄皮に伝わって鉄皮温度が上昇し、炉体からの熱の大気放散量が増加してしまう。この場合、大気放散した熱を補うために余計なエネルギーを費やす必要が生じる。
【0033】
これに対して、不定形耐火物やマグネシア等の耐火物粉体を充填することにより、炉体からの大気放散熱量が増加することを防止でき、省エネルギー化を図ることができる。さらに、鉄皮が過熱により変形すること等を防止でき、安定な窯炉とすることができる。
【0034】
さらに、本発明では、前記耐火物ブロックは、熱膨張を吸収する熱膨張吸収部材を介して配置されている構成が好ましい。
【0035】
ここで、熱膨張吸収部材としては、可縮性を有するものであればよく、例えば、段ボール等のシート、カーボン質ファイバーからなるペーパー等を用いることができる。
【0036】
また、耐火物ブロックの外周面に、熱膨張吸収部材を被覆してから、上記耐火物ブロックを配置する手順を採用してもよい。また、配置済みの耐火物ブロックの露出している面に熱膨張吸収部材を設けてから、新たな耐火物ブロックを配置する手順を採用してもよい。
【0037】
この発明によれば、窯炉稼動時の熱応力を熱膨張吸収部材で吸収することで、耐火物ブロックに作用する応力を小さくすることができ、耐火物ブロックの長寿命化を図ることができる。
【0038】
本発明の耐火物の施工方法は、円筒状の窯炉の直胴部の鉄皮内面に耐火物を内張り施工する耐火物の施工方法であって、炉底部に設置する1段目の耐火物ブロックの配列方法として、以下のものがある。
(1)前記窯炉の中央側に露出する六角形状の稼動面側端面と、上記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有する耐火物ブロックと、この耐火物ブロックを前記稼動面側端面と前記背面側端面とが半分となるように切断した断面台形状の半割ブロックとを用い、前記半割ブロックを、上底よりも下底の方が長い断面台形状の半割ブロックとして、前記窯炉の半径方向の位置として、前記稼動面側端面の位置を基準にして配置し、かつ、前記鉄皮内面の円周方向に沿って所定間隔ごとに配列し、隣接する半割ブロックの間に、端面が六角形状の耐火物ブロックを前記円周方向に沿って配列し、2段目以降をハニカム状に積層する。
(2)前記(1)と同様の耐火物ブロックを用い、端面において対向する1対の辺の中央で切断して家型の半割ブロックを作製し、該家型半割ブロックを窯炉の稼動面を基準として炉底の所定位置の円周上に配置し、直胴部内面の1段目とする。
【0039】
この1段目の隣接する半割ブロックが形成するV字状の凹部に、2段目の六角形状耐火物ブロックを配置し、以降は、同様にして耐火物ブロックを積上げ、ハニカム状に積層する。
(3)螺旋積み用の耐火物ブロックを用い、直胴部に耐火物ブロックを配置積層した状態で、仮想的な傾斜面により、耐火物ブロックを分割して、分割ブロックを作製し、これを炉底の1段目として、窯炉内に内面基準で配置する。2段目以降は下段に配置された隣接する分割ブロック又は耐火物ブロックの上面が協働して構成するV字状溝部に耐火物ブロックを内面基準で、螺旋状に積上げ、ハニカム状に積層する。
(4)炉底の所定位置に予め形成した溝部内に、例えば不定形耐火物を配置し、その上に六角形状の耐火物ブロックを内面基準で配置し、固定して直胴部の1段目とする。溝部を形成したのは、不定形耐火物等が直接溶鋼等に触れるのを防止するためである。
【0040】
その際、耐火物ブロックの載置面を構成する不定形耐火物を水平なリング状に形成すれば、上述した(1)又は(2)の半割ブロック又は家型半割ブロックを配列した1段目が得られるし、炉底に対して所定の傾斜面として、螺旋積み用の耐火物ブロックを配置すれば、(3)の螺旋上に積上げる際の1段目が得られる。
【0041】
上述したいずれの手法を採用しても、耐火物ブロック同士の接触面は、必ず傾斜面を含むので、それ自体で位置決めされるとともに、自重によって、隣接する耐火物ブロックとの間で摩擦力による拘束力が生じるため、従来の、矩形状の耐火物ブロックを1段ごとにリング状に積層する場合と比較して、安定的かつ容易に、短時間で積層することができる。
【0042】
これら(1)〜(4)の手法は、炉体上端の平面部を形成する場合においても、同様に適用することが可能である。
【0043】
また、本発明の耐火物の施工方法では、金属板と上記金属板の一面から突出する金属製の把持部とを有するブロッ配置用治具を準備し、このブロック配置用治具の金属板を接着剤で前記耐火物ブロックの内側端面と、前記半割ブロック等の内側端面に接着するとともにボルト止めし、前期把持部を把持することで、前記耐火物ブロックと前記半割ブロック等を持ち上げて配置する構成が好ましい。
【0044】
ここで、接着剤のみでブロック配置用治具を耐火物ブロックに片持ち固定する場合、十分な固定力を得にくい。また、ボルト止めのみで片持ち固定する場合、両者間に隙間ができてしまい、十分な固定力が得にくい。上記いずれの場合も、運搬中に耐火物ブロックが落下してしまうおそれがある。そのため、本発明では、接着剤とボルト止めとを併用することで、片持ち固定でも、より十分な固定力を得ることができる。したがって、把持部を施工機械等で把持しても、耐火物ブロックを落下させることなく配置でき、築炉作業の機械化を容易に図れ、さらに作業効率を向上できる。
【0045】
さらに、ブロック配置用治具を金属製にしているため、初期の窯炉の予熱や稼動時に、この治具を溶解させることができる。窯炉が金属を精錬するためのものであれば、溶解した治具を金属源として利用でき、窯炉の機能に影響を及ぼすことがない。
【0046】
本発明の耐火物ブロックは、円筒状の窯炉の直胴部の鉄皮内面の内張り用の耐火物ブロックであって、前記窯炉の中央側に露出する六角形状の稼動面側端面と、上記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有する。
【0047】
この発明の耐火物ブロックを用いることで、容易にかつ短時間で窯炉を築炉できる。
【0048】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[窯炉の全体構成]
図1には、窯炉1の平面図が示されている。この窯炉1は、下面が炉底部21で閉塞された円筒状の鉄皮2を備えている。
【0049】
鉄皮2の内部には、半割ブロック3と、耐火物ブロックとしてのハニカムブロック4とが設けられている。ここで、図1において、全ての半割ブロック3とハニカムブロック4に符号を付していないが、リング状に配置された大小の台形のうち、大きい台形が半割ブロック4を表している。半割ブロック3とハニカムブロック4とは、同じ成分の耐火物により構成されている。半割ブロック3は、鉄皮2の底部と頂部とにおいて、円周方向に沿って所定間隔ごとに配列されている。又、ハニカムブロック4を配置する際、窯炉1の半径方向の位置決めを行うにあたって、稼動面側端面としての内側端面32、42の位置を基準にして配置を行う。
[炉体軸心の決定方法]
内側端面の決定は、例えば、下記のような手法を用いて炉体の軸心を決定し、該軸心から所定の等距離面を内側端面とする。
(1)転炉においては、トラニオン軸を含む平面内で、炉底中心に向かって垂線を降ろし、これを中心軸として、等距離の円筒面を稼動面と決定する。
【0050】
トラニオン軸14は、図2に示すように、転炉胴部のトラニオンリング13から水平方向に伸びる軸であって、トラニオンリング13付近は、鉄皮の変形が比較的小さい領域であるから、トラニオン軸14の軸心は、転炉鉄皮の直径と一致している可能性が高い。そこで、トラニオン軸14の軸心をなす直線が鉄皮内面によって切り取られる線分を、直径とみなし、その中点を炉体軸心線上の一点とみなして、正立状態にある窯炉について、垂線を立てて、これを炉体軸15とし、円の中心と仮定して、等距離面を内側端面とする。
(2)図3に示すように、現在多く用いられている底吹き転炉においては、炉底中心に対してガス吹込み用の羽口16が複数個、対称的に設置されているので、各羽口16の中心を基準として、逆に、炉底中心を決定することができ、ここから正立状態の炉体に対して垂線を立て、炉体軸とし、円の中心と仮定して、等距離面を内側端面とする。
(3)上記(1)、(2)でそれぞれ決定したトラニオン軸14における炉体軸心上の一点と、炉底中心とを結ぶ直線を炉体軸と決定する。
【0051】
以上(1)〜(3)は、炉体の高さ方向の一面あるいは二面の中心から軸心を求める手法であるが、これら以外に、
(4)図4に示すように、レーザースキャナー等により、鉄皮12の内面のプロフィールを計測し、炉底から所定の高さ毎に鉄皮内面の平面形状を求め、その中心を決定した後、前記各高さにおける中心点を決定し、これらの中心点を結ぶ直線を最小二乗法により決定して、これを炉体の軸心線とみなす手法もある。
【0052】
さらに、各ハニカムブロック4は、円周方向に沿って配列され、さらに、ハニカム状に積層されている。
【0053】
つまり、特定の一段のハニカムブロック4の周方向の位置と、それに隣接する上、または下の一段のハニカムブロック4の周方向の位置とは、ハニカムブロック4の幅の半分ずれるように配置されている。
【0054】
また、鉄皮2と、半割ブロック3及びハニカムブロック4との間には、間隔が約230mmの隙間Sが設けられている。この隙間Sには、耐火物粉体5として、例えば粒径1mm〜5mmのマグネシア粒子が充填されている。さらには、半割ブロック3の外周面31とハニカムブロック4の外周面41とには、熱膨張吸収部材としての厚さ2mmの模造紙6が貼り付けられている。
[ハニカムブロックの構成]
ハニカムブロック4は、図5及び図6に示すように、外周面41と、窯炉1の内張り内面に露出する六角形状の内側端面42と、この内側端面42よりも大きい六角形状の背面側端面としての外側端面43とを有する。ハニカムブロック4の高さ寸法、幅寸法、奥行き寸法は、窯炉1の幅寸法や高さ寸法、ハニカムブロック4の円周方向や高さ方向への設置個数等により、適切な大きさに設定できる。また、内側端面42と外側端面43における左右に突出する頂部の角度θは、115°〜125°とすることが好ましく、120°とすることがより好ましい。
【0055】
また、窯炉1の施工時において、ハニカムブロック4の内側端面42には、鉄製のハニカムブロック配置用治具70が固定される。このハニカムブロック配置用治具70は、内側端面42よりも小さい金属板であって、例えば、厚さ5mmの鉄板71と、この鉄板71の一面の略中央から、例えば直径50mmの丸棒状に突出する把持部72とを備えている。そして、ハニカムブロック配置用治具70は、鉄板71がAl−Mg合金を5質量%含有するフェノール樹脂の接着剤74で内側端面42に接着されるとともに、4個のボルト75により、ボルト止めされることで、ハニカムブロック4に片持ち固定されている。
【0056】
なお、鉄板71の大きさは、内側端面42と同じであってもよいが、施工時に隣り合うハニカムブロック4の内側端面同士が密着することと、作業性とを考慮に入れると、図5、図6に示すように、内側端面42によりも小さい方が好ましい。
[耐火物の施工方法]
窯炉1を施工する際には、まず、熱膨張吸収部材としての模造紙6及び図7に示すような半割ブロック配置用治具76が設けられたハニカムブロック4と、を準備する。ここで、半割ブロック配置用治具76は、台形状の鉄板77と、把持部78とを備えている。鉄板77が図示しない接着剤とボルト75により内側端面32(図1参照)に片持ち固定されている。
【0057】
次に、図示しない施工機械で把持部78を把持することで、図7に示すように、半割ブロック3を鉄皮2の炉底部21に所定間隔ごとに配置する。このとき、半割ブロック3を内面基準で配置する。つまり、半割ブロック3の内側端面32の位置が所定の基準位置に揃うように半割ブロック3を配置する。これにより、半割ブロック3と鉄皮2との間に確実に隙間Sを形成することができ、両者の衝突を確実に防止できる。
【0058】
この後、施工機械で把持部72を把持することで、ハニカムブロック4を半割ブロック3の間に内面基準で配置する。このとき、ハニカムブロック4を半割ブロック3の間に嵌め込むだけで、特別な位置決めをすることなくハニカムブロック4の円周方向の位置決めが適切になされる。この後、図8aにも示すように、ハニカムブロック4を円周方向及び上下方向に内面基準でハニカム状に配置していく。
【0059】
そして、最上段のハニカムブロックを配置し終えたら、ハニカムブロック4の間に半割ブロック3を炉底部に配置した際の向きと逆に配置して、上面を平坦状にする。この後、隙間Sに耐火物粉体5を充填して、窯炉1の築炉が終了する。
【0060】
なお、築炉終了時点では、ハニカムブロック配置用治具70と半割ブロック配置用治具76とが窯炉1内に残っているが、初期の窯炉1の予熱や稼動時に溶解させることができ、窯炉の機能に影響を及ぼすことがない。
【0061】
以上の施工方法を用いて、実際に窯炉1を築炉したところ、従来の矩形状の煉瓦を用いる場合と比べて、約10分の1の工期で築炉できることが確認できた。
【0062】
また、窯炉1を約4000チャージ(サイクル)稼動した後、ハニカムブロック4を確認したところ、いずれのハニカムブロック4も、抜け落ちていないことが確認できた。
【0063】
このように機械装置を使用してハニカムブロックを施工すれば、人力でハニカムブロックを施工する場合よりも質量の大きなハニカムブロックを使用することができ(500kg/個以上も可能)、ハニカムブロックのサイズを拡大できること、さらに、施工作業の自動化、効率化を図ることができる。また、施工単位である耐火物を約500kg/個以上とすることで、耐火物間の目地数を従来の1/10以下とすることができることなどから、機械施工が好ましい。
【0064】
なお、図8aに、図7で示した半割ブロックに替えて、家型ブロックを1段目に配置して、各耐火物ブロック4を図7の状態から90°転回させて積上げた場合の直胴内面の斜視図を示す。図8bは、使用するブロックの三面図と見取り図である。
【0065】
また、図9aは、耐火物ブロック4を螺旋状に積層した場合の直胴部内面の斜視図を示す。図9bは、使用するブロックの三面図と見取り図である。
【0066】
螺旋状に積層する場合、リング状に積上げる場合と同様のブロック形状でもよいが、図9bに示すように、積上げたときに、ブロック左右の側面が交差してなす稜辺を左右で僅かに上下逆方向に傾斜するように形成すると、積層した際の安定性に優れたブロックとすることができる。
【0067】
積層に際しては、図10に示すように、熱膨張吸収部材としての模造紙6と耐火物ブロック保持用治具7とを備えたブロックを内面基準で配置していく。
【0068】
さらに、本発明の耐火物ブロック(ハニカムブロック)の施工装置の別の形態として、図11から図13に記載の装置を使用することもできる。この装置を使用する場合は、耐火物ブロックには、図6の把持部72に替えて、雌ネジ部を耐火物ブロックの内面側に形成する。
【0069】
これらの図に記載の施工装置は、耐火物ブロック保持機構、軸方向移動機構、半径方向移動機構、及び旋回機構を具備するものである。
【0070】
耐火物ブロック保持機構は、耐火物ブロックを保持する機構であり、先端に雄ネジ部が形成され、耐火物ブロックの内側面に形成された雌ネジと螺合することで保持することが可能となり、手動式又は油圧式のアクチュエータ等で耐火物ブロックを上げ下げすることができる。
【0071】
また、この耐火物ブロック保持機構は、耐火物ブロックの設置時に、耐火物ブロックの姿勢を調整できるような機構を付加することができる。
【0072】
軸方向移動機構は、耐火物ブロック保持機構で保持した耐火物ブロックを、精錬容器の円筒軸方向に沿って移動させる機構であり、油圧式のアクチュエータを使用することができる。
【0073】
半径方向移動機構は、耐火物ブロック保持機構で保持した耐火物ブロックを、精錬容器の半径方向に移動させる機構であり、油圧式のアクチュエータを使用することができる。
【0074】
旋回機構は、耐火物ブロック保持機構で保持した耐火物ブロックを、精錬容器の内側面の円周方向に沿って移動させる機構であり、例えば、インナーギアが形成されたリング状のフレームと、回転軸にリング状のフレームに噛合するピニオンギアが取り付けられた回転モータとを備えた構成を採用することができる。
【0075】
以下、本施工装置を用いた際の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
【0076】
図11には、本発明の実施の形態に係る窯炉の中でも、特に転炉11の鉄皮2の内面に耐火物としてのハニカム形状のブロック4を施工している状態が示されている。
【0077】
本実施形態では、直立状態で、既設した耐火物ブロックの内面に固定した築炉装置を用いてハニカムブロック4を設置している。
【0078】
あるいは、施工のし易さから、転炉11炉前のスペースと転炉11の傾動機構を利用し、転炉11を炉前側に傾動させた状態で、ハニカムブロック4を施工しても構わない。
【0079】
また、図13に示すように、転炉11の開放が可能な底部を開放した状態で、内部に装入される耐火物ブロック施工装置8によって行われてもよい。なお、本発明の耐火物ブロック施工装置8で施工できる精錬容器は、転炉11に限られず、取鍋等の略円筒状の精錬容器であれば、その種類を問われない。
【0080】
いずれにしても、耐火物ブロック施工装置8の旋回、半径方向移動の際の軸心は、上述した炉体軸心を求める手法により、決定した軸心に合致するように設置される。
【0081】
図12は、転炉11の円筒状体の円筒の軸方向から見た耐火物ブロック施工装置8の平面図である。
【0082】
耐火物ブロック施工装置8は、転炉11の内部に設置され、ハニカムブロック4を保持した状態で、求めた窯炉の軸心を中心とした旋回移動、軸方向移動、半径方向移動を行うことにより、転炉11の鉄皮2の内面に施工する装置であり、図12に示すように、旋回機構9、半径方向移動機構100、軸方向移動機構110、及び耐火物ブロック保持機構120を備える。
【0083】
旋回機構9は、略円筒状の転炉11の炉体軸心を中心とした内側面円周方向にハニカムブロックを移動させる機構であり、リングフレーム91、支持ローラ92、回転モータ93、及びカウンタウエイト94を備える。
【0084】
リングフレーム91は、リング状の鋼製フレームであり、リングの内周縁には、インナーギアが形成されている。
【0085】
支持ローラ92は、転炉11の鉄皮2の内面に複数固設され、リングフレーム91を転炉11内で回転自在に支持する。
【0086】
回転モータ93は、リングフレーム91を回転させる油圧式の駆動装置であり、回転モータ93の駆動軸にギアが設けられ、このギアが、リングフレーム91のインナーギアと噛合しており、回転モータ93を駆動すると、リングフレーム91は、転炉11の炉体軸心を中心軸として回転する。
【0087】
カウンタウエイト94は、リングフレーム91の回転中心を中心として、耐火物ブロック保持機構120の略反対側に設けられており、耐火物ブロック保持機構120がハニカムブロックを保持した際のウェイトバランスとして機能する。
【0088】
半径方向移動機構100は、耐火物ブロック保持機構120で保持したハニカムブロック4を転炉11の炉体軸心の半径方向に移動させる機構であり、旋回機構9上に設けられ、油圧シリンダ101、及び支持アーム102を備える。
【0089】
油圧シリンダ101は、旋回機構9のリングフレーム91上であって、リングフレーム91の回転中心を中心とする直径方向位置に2機設けられている。
【0090】
支持アーム102は、略平行に配置される一対の摺動部と、一対の摺動部の端部同士を略半円状に連結し、軸方向移動機構110が設けられるアーム部とを備える。2機の油圧シリンダ101が摺動部を摺動させることで、支持アーム102は、転炉11の円筒半径の方向に摺動する。なお、支持アーム102の形状はこれに限られず、非対称の片アーム型のものや、リンク型のものを採用することができる。
【0091】
軸方向移動機構110は、耐火物ブロック保持機構120で保持したハニカムブロック4を、転炉11の炉体の軸心方向に移動させる機構であり、半径方向移動機構100の支持アーム102の円筒の半径方向先端に設けられており、油圧シリンダ101から構成されている。
【0092】
耐火物ブロック保持機構120は、ハニカムブロック4を保持する機構であり、軸方向移動機構110の転炉11の炉体の軸方向端部に設けられており、センターピン121、ローリングジャッキ122、保持シリンダ123、及び保持版124を備える。
【0093】
センターピン121は、ハニカムブロック4の略中央にネジ締め等により取り付けられ、ハニカムブロック4の荷重を支持する部分であり、センターピン121の先端には、ユニバーサルジョイント等の回転自在の継手を介して雄ネジ部が設けられている。
【0094】
ローリングジャッキ122は、ハニカムブロック4の施工時に、ハニカムブロック4を背面から押したり引いたりして、ハニカムブロック4の姿勢を微調整する部分であり、手動式の油圧シリンダで構成されている。
【0095】
保持シリンダ123は、ハニカムブロック4の端部を保持する部分であり、センターピン121と同様に、保持シリンダ123の先端には、ユニバーサルジョイント等の回転自在の継ぎ手を介して雄ネジ部が設けられている。
【0096】
保持板124(71、77の金属板は平板である。)は、側面L字状の板状体垂直状態でハニカムブロック4の荷重を支持する。
【0097】
前述した旋回機構9、半径方向移動機構100、軸方向移動機構110、及び耐火物ブロック保持機構120には、各種油圧アクチュエータ、油圧モータ等が用いられているが、これらの駆動源の能力は、保持力、回転力。回転速度、半径方向移動速度、軸方向移動距離の力、及び速度を考慮した設計が必要とされる。
【0098】
耐火物ブロック保持機構120の保持力は、ハニカムブロック4の組み立て時、保持したハニカムブロック4を吊り上げることができ、さらに施工したハニカムブロック4の位置調整をすることができる力があればよい。
【0099】
次に、前述した耐火物ブロック施工装置8によるハニカムブロック4の施工手順を、図14〜図19を用いて説明する。
【0100】
まず、ハニカムブロック4の転炉11の炉内設置位置までの運搬としては、ハニカムブロック4のストックヤードに仮り置きしたハニカムブロック4を、バッテリーロコで伸縮管内の搬送台車により、炉内設置位置まで搬送する。
【0101】
その後、ハニカムブロック4のセット位置まで搬送したハニカムブロック4を伸縮管内クレーンで、ハニカムブロックのセット位置まで搬送したハニカムブロック4を伸縮管内クレーンでハニカムブロック4の供給装置に積込み、耐火物ブロック施工装置8で保持できる位置まで移動する。
【0102】
ハニカムブロック4の炉内設置が終了したら、図14に示されるように、既に施工されたハニカムブロック4上に、施工しようとするハニカムブロック4を配置して、前述した耐火物ブロック保持機構120のセンターピン121、保持シリンダ123(図14~図18では符号略)の雄ネジ部をハニカムブロック4の連結板の孔に挿入してナットで締結して、ハニカムブロック4を保持する。
【0103】
次に、図15に示されるように、軸方向移動機構120を操作して、施工するハニカムブロック4を転炉11の円筒の軸方向(紙面直交方向手前側)に移動させる。そして、図16に示されるように、旋回機構9を操作して、ハニカムブロック4を旋回させたら、図17に示されるように、半径方向移動機構100を操作して、ハニカムブロック4を施工位置に移動させる。この際、耐火物ブロック保持機構120のローリングジャッキ122(図14〜図18では符号略)を操作しながら、ハニカムブロック4の姿勢を調整し、ハニカムブロック4を適切な位置に案内する。ハニカムブロック4の設置が終了したら、図20に示すように、耐火物ブロック保持機構120の保持シリンダ123を取り外す。
【0104】
そして、ハニカムブロック4の設置ごとに、背面及びハニカムブロック4間の隙間に、充填材を圧入する。なお、充填材の圧入ポンプは、ダブルピストンタイプの圧送圧の高いものが望ましく、耐火物ブロック施工装置8に一体的に設けてもよい。以後、これを繰り返し、転炉11の円周方向にハニカムブロック4を順次施工していく。但し、最後の1個については、ハニカムブロックの形状を考えると、円周方向からハニカムブロック4を移動させて挿入することができないので、図19に示すように、転炉11の円周の軸方向からハニカムブロック4を挿入する(図では簡略化のため、ハニカムブロック4の形状を板状に記載している)。
【0105】
このようなハニカムブロック4は、1つの施工単位となる1リング(1段分)を20〜30個で構成するのが、施工能率、目地数の減少という本発明の目的を達成する上で好ましい。なお、上記形態では、ハニカムブロック表面に雌ネジを儲け、耐火物ブロック保持機構8においては雄ネジを設けて、両者を螺合して、ハニカムブロック4を保持しているが、これに替えて、ハニカムブロック4に図3に示す把持部72を設けて、耐火物ブロック保持機構8には把持部72を把持する、筒状の把持体等を設けて保持しても構わない。
(実施形態の変形)
前述した第1実施形態では、直立させた状態で、耐火物ブロック施工装置8を上下方向に昇降させて、下からハニカムブロック4を積み上げていく耐火物ブロック施工装置8で施工していたが、本発明の耐火物ブロック施工装置8は、このような施工方法に限定されるものではない。
【0106】
すなわち、図20に示されるように、転炉11を炉前のスペースで略90度傾動させた状態として施工する方法も可能である。
【実施例】
【0107】
350tの転炉11を、図20のように、炉前90度に傾動固定し、装入壁側に順次本発明の耐火物ブロック施工装置8が前進可能なレール付きハニカムブロック4を設置した後、炉底側から順次大型のハニカムブロック4を、該耐火物ブロック施工装置8を用いて設置していくと同時に、ハニカムブロック4に設けられた開口部から、ハニカムブロック4と鉄皮2間に充填材を圧入しながら、炉前側へ耐火物ブロック施工装置8を後退させ、ハニカムブロック4を順次設置していった。
【0108】
出鋼孔部については、既にスリーブが埋設された耐火物ブロックを設置することにより、精度よく迅速に設置した。
【0109】
その結果、従来の一般的な煉瓦を、転炉11の内部に搬送し、内部で人力により煉瓦を施工する場合と比べて、築炉工数を1/10にすることができた。また、損耗度指数を15%減少でき、ライニング寿命も2割増加することができた。
【0110】
本発明の実施例では、築炉時間、築炉工数が大幅に低減され、施工能率が極めて高いことが確認された。
【0111】
ハニカムブロック4の質量も420kg/個と、従来の35kg/個のものよりも、極めて大きなものとすることができ、結果として目地の数を大幅に低減することができたので、損耗度指数、ライニング寿命も大幅に向上した。なお、損耗度指数とは、損耗寸法を使用ヒート回数で除した数値を、従来の比較例を100として指数化した値である。また、ライニング寿命とは、転炉11の内部に、ハニカムブロック4や従来の煉瓦を施工してライニング処理を行った後、次のライニング処理が必要となるまでの転炉11の実操業回数である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、熟練した施工者でなくても、各段において、耐火物ブロックを所定間隔ごとに配置して、下段の設置済みの耐火物ブロックの間に作業中の段の耐火物ブロックを嵌め込むだけで、円周方向の位置決めをすることができる。このため、工期を大幅に短縮できる。
【符号の説明】
【0113】
1 窯炉
13 トラニオンリング
14 トラニオン軸
15 炉体軸
16 羽口
2 鉄皮
3 半割ブロック
4 ハニカムブロック(耐火物ブロック)
44 連結板
45 耐火物本体
46 連結片
47 孔
48 ボルト
49 ピン
490 フック
5 耐火物粉体
6 模造紙(熱膨張吸収部材)
32、42 内側端面(稼動面側端面)
43 外側端面(背面側端面)
70 ハニカムブロック配置用治具
71、77 鉄板(金属板)
72、78 把持部
74 接着剤
76 半割ブロック配置用治具
8 耐火物ブロック施工装置
81 昇降機構
9 旋回機構
91 リングフレーム
92 支持ローラ
93 回転モータ
94 カウンタウエイト
100 半径方向移動機構
101 油圧シリンダ
102 支持アーム
110 軸方向移動機構
120 耐火物ブロック保持機構
121 センターピン
122 ローリングジャッキ
123 保持シリンダ
124 保持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の窯炉本体と、
前記窯炉の内面に配置された鉄皮と、
前記鉄皮の内側に配置され、複数の耐火物ブロックを含む内張り耐火物と、
を備える窯炉であって、
前記複数の耐火物ブロックの夫々は、前記窯炉の中央側に露出する六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有し、
前記複数の耐火物ブロックは、前記窯炉の径方向に沿った前記稼動面側端面の位置を、窯炉の軸心を基準として規定された基準位置に揃えて配置され、前記鉄皮内面の円周方向に沿ってリング状に1段以上配列され、ハニカム状に積層されていることを特徴とする窯炉。
【請求項2】
円筒状の窯炉本体と、
前記窯炉の内面に配置された鉄皮と、
前記鉄皮の内側に配置され、複数の耐火物ブロックを含む内張り耐火物と、
を備える窯炉であって、
前記複数の耐火物ブロックの夫々は、前記窯炉の中央側に露出する六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有し、
前記複数の耐火物ブロックは、前記窯炉の径方向に沿った前記稼動面側端面の位置を、窯炉の軸心を基準として規定された基準位置に揃えて配置され、前記鉄皮内面の円周方向に沿って螺旋状に1段以上配列され、ハニカム状に積層されていることを特徴とする窯炉。
【請求項3】
前記耐火物ブロックと前記鉄皮との間に、不定形耐火物又は耐火物粉体が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窯炉。
【請求項4】
前記耐火物ブロックは、熱膨張を吸収する熱膨張吸収部材を介して配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の窯炉。
【請求項5】
前記耐火物ブロックは、金属板と前記金属板の一面から突出する金属製の把持部とを含み、接着剤及びボルトを用いて固定されたブロック配置用治具を更に有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の窯炉。
【請求項6】
円筒状の窯炉の鉄皮内面に耐火物を内張り施工する耐火物の施工方法であって、
窯炉の軸心を求め、
六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状背面側端面とを有する耐火物ブロックを積層し、
複数の前記耐火物ブロックを、前記窯炉の径方向に沿って前記稼動面側端面の位置を、窯炉の軸心を基準として規定された基準位置に揃うように配列し、
複数の前記耐火物ブロックを窯炉内の円周方向に沿って、かつ、ハニカム状に積層することを特徴とする耐火物の施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の耐火物の施工方法であって、前記耐火物ブロックと、該耐火物ブロックを、前記六角形状の稼動面側端面と前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを、夫々2つの台形に等分する切断平面で切断した形状の半割ブロックと、を用い、該半割ブロックを炉底面の所定の位置にリング状に設置した後、それらの上面に、耐火物ブロックをリング状に1段以上積層することを特徴とする耐火物の施工方法。
【請求項8】
請求項6に記載の耐火物の施工方法であって、前記耐火物ブロックと、該耐火物ブロックを、所定の角度で斜めに切断した複数の分割耐火物ブロックと、を用い、該分割ブロックを炉底面の所定の位置に、分割ブロックの大きさの順に配置して、分割する前のブロックの中心が、炉底面に対して一定の傾斜角で上昇するように円筒部の1段分を配列し、その後、それらの上面に、耐火物ブロックを螺旋状に1段以上積層することを特徴とする耐火物の施工方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の耐火物の施工方法であって、
前記耐火物ブロックが、金属板と前記金属板の一面から突出する金属製の把持部とを含み、接着剤及びボルトを用いて固定されたブロック配置用治具を有し、
前記把治部を把持することで、前記耐火物ブロックを持ち上げて配置することを特徴とする耐火物の施工方法。
【請求項10】
円筒状の窯炉の鉄皮内面の内張り用の耐火物ブロックであって、六角形状の稼動面側端面と、前記稼動面側端面よりも大きい六角形状の背面側端面とを有し、積層した際に、該耐火物ブロックの左右側を構成する2面がなす稜線が、稼動面側から背面側にかけて、互いに上下逆方向に緩傾斜していることを特徴とする耐火物ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−112577(P2012−112577A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261540(P2010−261540)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】