説明

立体映像表示用位相差板、立体映像表示用偏光素子、および立体映像表示装置

【課題】斜め方向から視認された場合でも、右目用映像と左目用映像との間の色の差が小さい立体映像表示装置および、それに用いられる位相差板、偏光素子を提供する。
【解決手段】本発明の立体映像形成用位相差板10は、第1の位相差領域11のみにおいて1/2波長のレターデーションを有する第1の位相差部材1と、第1の位相差領域および第2の位相差領域において1/4波長のレターデーションを有する第2の位相差部材2とが積層されており、第1の位相差領域11において、第1の位相差部材1の遅相軸方向と第2の位相差部材2の遅相軸方向とが直交しており、第1の位相差部材の第1の位相差領域と第2位相差部材とは符号の異なるAプレートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像の表示に適した位相差板、および偏光素子に関する。また、本発明は該位相差板、偏光素子を用いた立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体映像を表示させる方法として、右目用映像と左目用映像とを異なる偏光状態で現出させ、これを右目用レンズと左目用レンズとからなる立体視用眼鏡を介して視認する方法が提案されている。かかる方法によれば、右目には右目用映像のみが、左目には左目用映像のみが視認されるため、両眼の視差によって視認者は立体感を想起する。より具体的には、映像表示装置から第1の偏光状態を有する右目用映像と、第2の偏光状態を有する左目用映像とを現出させ、これを第1の偏光状態の光を透過し第2の偏光状態の光を遮蔽(吸収または反射)する第1の偏光板を備える右目用レンズと、第1の偏光状態の光を遮蔽し第2の偏光状態の光を透過する第2の偏光板を備える左目用レンズとからなる偏光眼鏡を介して視認することにより、立体表示が可能となる。
【0003】
このように異なる偏光状態を有する2種類の映像を1台の映像表示装置から現出させる方法として、例えば特許文献1では、透過軸方向が互いに直交する第1の領域と第2の領域とを有する偏光板を、表示装置の前面に密着させる方法が提案されている。
【0004】
また、第1の領域と第2の領域とを有する位相差板と、均一な透過軸を有する偏光板とを組合せて、第1の領域と第2の領域で現出される映像の透過軸方向が互いに直交するように構成する方法が提案されている。例えば特許文献2では、半波長(λ/2)のレターデーションを有する第1の領域とレターデーションを有していない第2の領域とにパターン化された位相差板と、均一な透過軸を有する偏光板とを用い、第1の領域の遅相軸方向と偏光板の透過軸方向とを45°に配置することによって、第1の領域の偏光の振動面と第2の領域の偏光の振動面を直交させる方法が提案されている。また、特許文献3では、偏光の振動面を90°回転させる旋光素子が配置された第1の領域と該旋光素子が除去された第2の領域とからなる位相差板と偏光板とを用いる方法が提案されている。
【0005】
このような方法によれば、例えば第1の領域から右目用映像、第2の領域から左目用映像を現出し、第1の領域の偏光を透過し第2の偏光状態の光を遮蔽する第1の偏光板を備える右目用レンズと、第1の偏光板とは透過軸方向が直交である第2の偏光板を備える左目用レンズからなる立体視用偏光眼鏡を介して視認することにより、立体表示が可能となる。しかしながら、右目用映像および左目用映像として直交する2種類の偏光を現出させる場合、右目用映像および左目用映像の透過軸方向と視認者が装着する偏光眼鏡の偏光板の透過軸方向とを正確に一致させる必要がある。そのため、視認者の位置や顔の角度、あるいは偏光眼鏡の装着状態が異なると、各々の目に右目用映像と左目用映像とが混在して視認され、立体像が不鮮明となる(このような現象は「クロストーク」と称される)。
【0006】
かかる観点から、第1の領域と第2の領域とで極性の異なる円偏光(右円偏光と左円偏光)を現出させる方法が提案されている。例えば特許文献4においては、半波長(λ/2)のレターデーションを有する第1の領域とレターデーションを有していない第2の領域にパターン化された第1の位相差部材と、4分の1波長(λ/4)のレターデーションを有する第2位相差部材とを両者の遅相軸が直交するように配置した積層位相差板が提案されている。かかる積層位相差板は、第1の領域のレターデーションが+λ/4、第2の領域のレターデーションが−λ/4となる。そのため、この積層位相差板と偏光板とを、光軸方向のなす角が45°となるように積層することにより、第1の領域と第2の領域とで極性の異なる円偏光が現出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−184929号公報
【特許文献2】特開2001−59948号公報
【特許文献3】特開2002−14301号公報
【特許文献4】特開平10−227998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に開示されているように、極性の異なる円偏光により立体映像を現出する場合は、映像表示装置と立体視用偏光眼鏡の軸方向を一致させる必要がない。そのため、視認者の顔の角度が変わったり、偏光眼鏡の装着状態が変化した場合でもクロストークが抑制される。
【0009】
一方で、映画、ゲーム、医療用モニタ等の用途に用いられる立体映像表示装置は、複数の視認者によりさまざまな角度から視認される。しかしながら、特許文献4に記載されているようなλ/4板とパターン化されたλ/2板との組み合わせを用いた場合においては、画面を斜め方向から視認した場合に右目用映像と左目用映像の色に差が生じ、視認者の疲労感や画面酔いにつながることが判明した。
【0010】
上記に鑑み、本発明は立体映像表示装置を斜め方向から視認した場合においても、左右の視差、特に色つきの差の発生を抑制し得る立体映像表示用の位相差板および偏光素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑みて検討の結果、特許文献4に記載されている従来技術においては、λ/4板とλ/2板の両者にポジティブAプレートが用いられているために、右目用映像と左目用映像の色に大きな差が生じていることが判明した。すなわち、当該構成においては、画面が斜め方向から視認された場合に、偏光状態が円偏光からズレるが、その円偏光からのズレが右目用映像と左目用映像で大きくことなることに起因して、色の差が生じていることが判明した。
【0012】
かかる知見に基づいてさらに検討の結果、λ/4板とλ/2板として、ポジティブAプレートとネガティブAプレートの組み合わせを用いた場合には、画面が斜め方向から視認されても、λ/4板とλ/2板の見かけ上の遅相軸方向の直交が保持されるため、右目用映像と左目用映像の色の差が抑制されることが見出された。
【0013】
本発明は、当該知見に基づいてなされたものであり、本発明の立体映像形成用位相差板は、複数の第1の位相差領域と複数の第2の位相差領域とを有している。第1の位相差領域および第2の位相差領域はともに1/4波長の正面レターデーションを有し、第1の位相差領域の遅相軸方向と第2の位相差領域の遅相軸方向とが直交している。
【0014】
本発明の立体映像形成用位相差板10は、第1の位相差部材1と第2の位相差部材2とが積層された構成を有する。第1の位相差部材1は、位相差を有する領域1aと位相差を有さない領域1bとにパターン化されており、領域1aが位相差板10の第1の位相差領域11に対応し、領域1bが位相差板10の第2の位相差領域12に対応する。第1の位相差部材1は、領域1aのみにおいて1/2波長のレターデーションを有する。第2の位相差部材2は、第1の位相差領域および第2の位相差領域において1/4波長のレターデーションを有する。第1の位相差領域において、第1の位相差部材の遅相軸方向と第2の位相差部材の遅相軸方向とは直交している。
【0015】
以降、本明細書において、単に「第1の位相差部材がλ/2のレターデーションを有する」、「第1の位相差部材がネガティブAプレートである」のように第1の位相差部材位相差特性について言及する場合があるが、特に断りのない限り、これらは、いずれも第1の位相差部材の位相差を有する領域1aの位相差特性についての記載である。
【0016】
第1の位相差部材と第2の位相差部材とは符号の異なるAプレートである。すなわち、第1の位相差部材と第2の位相差部材の一方はポジティブAプレートであり、他方はネガティブAプレートである。
【0017】
本発明の第1の実施形態においては、第1の位相差部材がポジティブAプレートであり、第2の位相差部材2がネガティブAプレートである。本発明の第2の実施形態においては、第1の位相差部材がネガティブAプレートであり、第2の位相差部材がポジティブAプレートである。これらいずれの形態においても、位相差板10の第1の位相差領域11においては、ポジティブAプレートとネガティブAプレートとが、両者の遅相軸方向が直交するように配置されており、第2の位相差領域12においては、ポジティブAプレートまたはネガティブAプレートが1枚のみ配置されている。
【0018】
本発明の位相差板において、第1の位相差領域11と第2の位相差領域12とはストライプ状に配置されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明は前記位相差板10と偏光板20とが積層された立体映像表示用偏光素子50に関する。本発明の偏光素子において、位相差板10の第1の位相差領域11における遅相軸方向111と偏光板20の透過軸方向201とのなす角が45°であることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明は、前記位相差板10あるいは前記偏光素子50を備える立体映像表示装置80に関する。本発明の立体映像表示装置は、前記位相差板10と、偏光板20と映像表示セル30とを備える。本発明の立体映像表示装置においては、映像表示セル30の視認側に偏光板20が配置され、偏光板20よりも視認側に位相差板10が配置されている。位相差板10の遅相軸方向と偏光板の透過軸方向とのなす角は45°である。映像表示セルは第1の映像表示領域および第2の映像表示領域を有し、位相差板は、第1の位相差領域および第2の位相差領域が、映像表示セルの第1の映像表示領域および第2の映像表示領域にそれぞれ対応するように配置される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の位相差板は、第1の位相差領域および第2の位相差領域がともに1/4波長の正面レターデーションを有しており、両者の遅相軸方向が直交している。そのため、偏光板と積層した場合に、第1の領域と第2の領域とで極性の異なる円偏光が現出されることから、立体映像表示に用いることができる。また、第1の位相差領域において、ポジティブAプレートとネガティブAプレートが、両者の遅相軸方向が直交するように配置されているため、斜め方向から視認した場合においても両者の見かけ上の遅相軸方向の直交関係が保持される。そのため、位相差板と偏光板とが積層された偏光素子が斜め方向から視認された場合において、第1の位相差領域の偏光状態が円偏光から大きく乖離することが抑止される。かかる位相差板、あるいは偏光素子を適用した立体映像表示装置においては、画面を斜め方向から視認した場合の右目用映像と左目用映像の色に差が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明の一実施形態による位相差板を模式的に表す平面図である。
【図1B】図1Aの位相差板の模式的断面図である。
【図2A】本発明の一実施形態による偏光素子を模式的に表す断面図である。
【図2B】本発明の一実施形態による偏光素子を模式的に表す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による偏光素子の配置を概念的に表す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による立体映像表示装置の配置を概念的に表す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による立体映像表示装置を模式的に表す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による立体映像表示装置を模式的に表す断面図である。
【図7】立体映像表を視認するための立体視用偏光眼鏡の構成を模式的に表す斜視図である。
【図8】実施例における白輝度の色相の評価結果を表す図である。
【図9】比較例における白輝度の色相の評価結果を表す図である。
【図10】実施例において、斜め方向から視認した場合の偏光状態の変化の様子をポアンカレ球上への軌跡として模式的に表す図である。
【図11】比較例において、斜め方向から視認した場合の偏光状態の変化の様子をポアンカレ球上への軌跡として模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。図1Aは、本発明の位相差板の一実施形態を模式的に表す平面図であり、図1Bは、図1AのIB−IB断面における模式的断面図である。本発明の位相差板10は、複数の第1の位相差領域11および複数の第2の位相差領域12を有している。
【0024】
図1Bに示すように、本発明の位相差板10は第1の位相差部材1と第2の位相差部材2とが積層された構成を有している。第1の位相差部材1は、位相差を有する領域1aと位相差を有さない領域1bとにパターン化されており、領域1aおよび領域1bは、それぞれ第1の位相差領域11および第2の領域12に対応している。第2の位相差部材2は、第1の位相差領域11および第2の位相差領域12の両者において同一のレターデーションを有している。
【0025】
第1の位相差部材は1/2波長(λ/2)の正面レターデーションを有し、第2の位相差部材は1/4波長(λ/4)の正面レターデーションを有する。第1の位相差部材1の遅相軸方向と第2の位相差部材2の遅相軸方向とは直交している。位相差板10の第1の位相差領域11においては、1/2波長板と1/4波長板とが遅相軸が直交するように配置されているため、1/4波長の正面レターデーションを有する。また、位相差板10の第2の位相差領域は、第1の位相差部材1の位相差を有さない領域1bとλ/4の正面レターデーションを有する第2の位相差部材が配置されているため、1/4波長の正面レターデーションを有する。第1の位相差領域11の遅相軸方向111と第2の位相差領域の遅相軸方向121とは直交している。
【0026】
ここで、本明細書において、「直交」とは、両者のなす角が厳密に90°であることに限定されず、本発明の目的を達成し得る範囲であれば足り、例えば90±5°、好ましくは90±3°である。同様に、「平行」とは、両者のなす角が厳密に0°であることに限定されず、本発明の目的を達成し得る範囲であれば足り、例えば0±5°、好ましくは0±3°である。また、「45°」とは、厳密に45°であることに限定されず、直線偏光が略円偏光に変換され得る範囲であれば足り、例えば45±5°、好ましくは45±3°である。特に明示がない限り、角度の符号は限定されず、半時計回り(+)でも時計回り(−)でもよい。
【0027】
また、レターデーションが「1/4波長」、あるいは「λ/4」との記載は、レターデーションが厳密に波長λの1/4倍である必要はなく、直線偏光を略円偏光に変換する範囲であればよい。なお、「略円偏光」とは、完全な円偏光のみならず、完全な円偏光に近い、すなわち楕円率が1に近い楕円偏光をも含み得る。例えば、波長λ=550nmにおけるレターデーションが137.5±30nmの範囲が「1/4波長」に包含される。波長λ=550nmにおけるレターデーションは、好ましくは137.5±20nmであり、より好ましくは137.5±10nmである。同様に、「1/2波長」、あるいは「λ/2」との記載は、厳密に波長λの1/2倍である必要はなく、例えば波長λ=550nmにおけるレターデーションが275±60nmの範囲が「1/2波長」に包含される。波長λ=550nmにおけるレターデーションは、好ましくは275±40nmであり、より好ましくは275±20nmである。
【0028】
図2Aおよび図2Bは位相差板10と偏光板20とが積層された偏光素子50を模式的に表す断面図である。偏光板20は、図2Aに示すように位相差板10の第1の位相差部材1側に積層されていてもよく、図2Bに示すように第2の位相差部材2側に積層されていてもよい。図3は偏光素子50を概念的に表す斜視図である。偏光板20の透過軸方向201と位相差板10の遅相軸方向111および121のなす角は±45°である。
【0029】
図4は本発明の立体映像表示装置を概念的に表す斜視図である。なお、図4においては、簡略のために第1の位相差領域11および第2の位相差領域をそれぞれ1つずつ図示しているが、実際の構成においては、第1の位相差領域11および第2の位相差領域12はいずれも複数存在している。
【0030】
立体映像表示装置80において、映像表示セル30の視認側に偏光板20が配置され、偏光板20のさらに視認側に位相差板10が配置される。映像表示セル30は面内に複数の第1の映像表示領域31および第2の映像表示領域32を有している。図4に示すように、位相差板10の第1の位相差領域11と第2の位相差領域12は、それぞれ映像表示セル30の第1の映像表示領域31と第2の映像表示領域32に対応するように配置される。
【0031】
上記構成によって立体映像を現出する原理について、図4を参照して説明する。映像表示セルの第1の映像表示領域31からは、自然偏光、あるいは所定の偏光状態を有する光r31が射出される。光r31は偏光板20を通過する際、偏光板20の透過軸方向201に振動を有する偏光成分r21のみが位相差板10側へ透過され、透過軸方向201と直交方向に振動を有する偏光成分は遮蔽される。
【0032】
偏光板20を透過した光r21は、位相差板10の第1の位相差領域11に到達する。ここで、光r21の振動方向と位相差板の遅相軸方向111とのなす角が+45°であり、正面レターデーションは波長λの1/4倍である。そのため、位相差板10の第1の位相差領域11を透過した光r11は円偏光となる。
【0033】
一方、映像表示セルの第2の映像表示領域32からは、自然偏光、あるいは所定の偏光状態を有する光r32が射出される。光r32は偏光板20を通過する際、偏光板20の透過軸方向201に振動を有する偏光成分r22のみが位相差板10側へ透過され、透過軸方向201と直交方向に振動を有する偏光成分は遮蔽される。
【0034】
偏光板20を透過した光r22は、位相差板10の第2の位相差領域12に到達する。ここで、光r22の振動面と位相差板の遅相軸方向111とのなす角が−45°であり、正面レターデーションは波長λの1/4倍である。そのため、位相差板10の第2の位相差領域12を透過した光r12も円偏光となる。
【0035】
ここで、位相差板10の第1の位相差領域11の遅相軸方向111と第2の位相差領域12の遅相軸方向121とが直交しているため、第1の位相差領域を通過した円偏光r11と、第2の位相差領域を通過した円偏光r12の位相はπずれている。したがって、r11とr12とは極性の異なる円偏光として現出される。
【0036】
例えば、映像表示セルの第1の映像表示領域31からは右目用映像を射出し、第2の映像表示領域32からは左目用映像を射出する場合、偏光板20と位相差板10の作用により、第1の映像表示領域の右目用映像は右円偏光r11として現出され、第2の領域の映像表示領域の左目用映像は左円偏光r12として現出される。視認者は、立体視用の偏光眼鏡を装着して当該映像を視認する。偏光眼鏡は、例えば右円偏光を透過し左円偏光を遮蔽する第1の円偏光板を備える右目用レンズと、左円偏光を透過し右円偏光を遮蔽する第2の円偏光板を備える右目用レンズとを備える。
【0037】
このような構成によれば、視認者の右目には右目用映像のみが視認され、左目には左目用映像のみが視認される。そのため視認者は右目用映像と左目用映像のずれ、すなわち両眼視差により奥行き感を想起し、立体映像を認識する。
【0038】
なお、上記は、映像表示装置を正面視した場合の説明である。一方、映像表示装置を斜め方向から視認した場合には、見かけ上の遅相軸方向や見かけ上のレターデーション値が、正面視の場合とは異なる。そのため、第1の位相差領域を通過した光r11および第2の位相差領域を透過した光r12の偏光状態は、円偏光から幾分かのズレを生じている。このような斜視時の円偏光からのズレに起因して、画像のクロストークや、右目用映像と左目用映像との色の差が生じ得る。特に、第1の位相差領域の円偏光からのズレと第2の位相差領域の円偏光からのズレが大きく異なる場合、右目用映像と左目用映像の色の差が大きくなる傾向がある。
【0039】
第2の位相差領域12においては、第1の位相差部材1が位相差を有していない。そのため、斜め方向から視認された場合において、第2の位相差領域12における正面視からの位相差特性のズレは、λ/4の正面レターデーションを有する第2の位相差部材2単体が斜め方向から視認された場合における正面視からの位相差特性のズレに等しい。一方で、第1の位相差領域11が斜め方向から視認された場合における正面視からの位相差特性のズレは、λ/2の正面レターデーションを有する第1の位相差部材1のズレとλ/4の正面レターデーションを有する第2の位相差部材2のズレが複合されたものとなる。
【0040】
ここで、同一の符号を有する2枚のAプレートが、遅相軸方向が直交するように積層されている場合について説明する。方位角+45°方向に遅相軸を有する第1のポジティブAプレートと、方位角−45°方向に遅相軸を有する第2のポジティブAプレートとが積層された積層位相差板を、方位角0°の斜め方向から視認した場合、第1のポジティブAプレートの見かけ上の遅相軸方向は+45°よりも+側に、第2のポジティブAプレートの見かけ上の遅相軸方向は−45°よりも−側に、それぞれ変化する。一方、方位角+45°方向に遅相軸を有する第1のネガティブAプレートと、方位角−45°方向に遅相軸を有する第2のネガティブAプレートとが積層された積層位相差板を、方位角0°の斜め方向から視認した場合、第1のネガティブAプレートの見かけ上の遅相軸方向は+45°よりも−側に、第2のネガティブAプレートの見かけ上の遅相軸方向は−45°よりも+側に、それぞれ変化する。
【0041】
このように、符号が同一のAプレート2枚が用いられる場合、斜め方向からの視認時に、2枚のAプレートの見かけ上の遅相軸方向が異なる方向に変化してみえる。そのため、第1の位相差部材と第2の位相差部材の両者がポジティブAプレートである場合、あるいは両者がネガティブAプレートであ場合のように、同様の三次元屈折率特性を有する位相差部材が用いられる場合は、第1の位相差部材の見かけ上の遅相軸方向と第2の位相差部材の見かけ上の遅相軸方向は直交状態からズレを生じる。このような構成において、映像表示装置が斜め方向から視認されると、2枚の位相差層が積層された第1の位相差領域11と1枚の位相差層のみを有する第2の位相差領域との偏光状態の差が大きくなる傾向があるため、右目用映像と左目用映像との間に色の差を生じやすい。
【0042】
これに対して、本発明においては、第1の位相差部材と第2の位相差部材に符号の異なるAプレートが用いられている。すなわち、本発明の第1の実施形態においては、第1の位相差部材1がポジティブAプレートであり、第2の位相差部材2はネガティブAプレートである。また、本発明の第2の実施形態においては、第1の位相差部材1がネガティブAプレートであり、第2の位相差部材2はポジティブAプレートである。
【0043】
より詳細には、本発明の第1の実施形態において、第1の位相差部材1は、第1の位相差領域に対応する領域1aおいて1/2波長の正面レターデーションを有するポジティブAプレートが形成されており、第2の位相差領域に対応する領域1bは位相差を有していない。また、第1の実施形態において、第2の位相差部材2は、1/4波長の正面レターデーションを有するネガティブAプレートである。一方、本発明の第2の実施形態において、第1の位相差部材1は、第1の位相差領域に対応する領域1aおいて1/2波長の正面レターデーションを有するネガティブAプレートが形成されており、第2の位相差領域に対応する領域1bは位相差を有していない。また、第2の実施形態において、第2の位相差部材2は、1/4波長の正面レターデーションを有するポジティブAプレートである。
【0044】
すなわち、本発明の位相差板10の第1の位相差領域11においては、ポジティブAプレートとネガティブAプレートとが、両者の遅相軸方向が直交するように積層された構成を有している。このように符号の異なる2枚のAプレートを、両者の遅相軸方向が直交するように積層配置された構成においては、斜め方向から視認された場合でも、ポジティブAプレートの見かけ上の遅相軸方向の変化とネガティブAプレートの見かけ上の遅相軸方向の変化とが同一方向となり、両者の見かけ上の遅相軸方向の直交が保持される。すなわち、ポジティブAプレートが斜め方向から視認された場合は、ポジティブAプレートの遅相軸方向は視認者から遠ざかる方向に変化するのに対して、ネガティブAプレートの遅相軸方向は視認者に近づく方向に変化するため、両者の直交関係が保持される。
【0045】
ここで、フィルム面内の遅相軸方向および進相軸方向の屈折率をそれぞれnxおよびny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、一般に、nx>ny=nzの三次元屈折率特性を有するものが「ポジティブAプレート」と称されるが、本発明においては、nx>ny≒nzであるものも「ポジティブAプレート」に包含される。同様に、一般に、nx=nz>nyの三次元屈折率特性を有するものが「ネガティブAプレート」と称されるが、本発明においては、nx≒nz>nyであるものも「ポジティブAプレート」に包含される。具体的には、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz係数が0.9〜3の範囲にあるものがポジティブAプレートに包含され、Nz係数が−2〜0.1の範囲にあるものも「ネガティブAプレート」に包含される。
【0046】
以下、本発明の位相差板の製造方法について、説明する。
【0047】
[ポジティブAプレート]
ポジティブAプレートは、例えば正の複屈折を有するポリマーフィルムを延伸配向させることで製造し得る。「正の複屈折を有する」とは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に大きくなるものをいい、多くのポリマーがこれに該当する。正の複屈折を有するポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等のセルロース脂肪酸エステル、あるいは、セルロースエーテル等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの如きポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系(ポリノルボルネン系)樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンの如きポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのポリマーは一種を単独で用いることもできるし、二種以上を混合して用いることもできる。また、これらを共重合、分枝、架橋、分子末端修飾(又は封止)、及び立体規則変性等によって変性して用いることもできる。
【0048】
一般に、正の複屈折を有するポリマーフィルムを縦一軸延伸(自由端一軸延伸)することでポジティブAプレートが得られるが、延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)等は、ポリマーフィルムを形成する樹脂の種類や所望のレターデーションやNz係数の値に応じて、適宜に選択し得る。
【0049】
また、ポジティブAプレートとして、正の複屈折を有する液晶性分子の配向層を用いることもできる。液晶性分子としては、液晶相がネマティック相である棒状の液晶材料が好適に用いられる。このような液晶材料としては、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。ポジティブAプレートを得る観点から、液晶の配向状態は、ホモジニアス配向であることが好ましい。なお、本明細書において、「ホモジニアス配向」とは、液晶化合物がフィルム面に対して平行に、かつ同一方位に配列している状態をいう。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記液晶材料が液晶性モノマーである場合、例えば、重合性モノマーおよび/または架橋性モノマーであることが好ましい。液晶性モノマーを配向させた後に、例えば、液晶性モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって配向状態を固定することができる。液晶モノマーが重合されることでポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されるが、これらは非液晶性である。したがって、形成されたポジティブAプレートは、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、液晶性分子の配向層は、温度変化の影響を受け難く、安定性に優れた位相差部材となり得る。
【0051】
液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002−533742号公報(WO00/37585国際公開パンフレット)、欧州特許358208号明細書(米国特許5211877号明細書)、欧州特許66137(米国特許4388453号明細書)、WO93/22397国際公開パンフレット、欧州特許0261712号明細書、ドイツ特許19504224号明細書、ドイツ特許4408171号明細書、および英国特許2280445号明細書等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker−Chem社の商品名LC−Sillicon−CC3767が挙げられる。
【0052】
[ネガティブAプレート]
ネガティブAプレートは、例えば負の複屈折を有するポリマーフィルムを延伸配向させることで製造し得る。「負の複屈折を有する」とは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に小さくなる、換言すると、配向方向と直交する方向の屈折率が大きくなるものをいう。このようなポリマーとしては、例えば、芳香族やカルボニル基などの分極異方性の大きい化学結合や官能基が、ポリマーの側鎖に導入されているものが挙げられる。具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂等が挙げられる。
【0053】
上記のアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂の製法としては、例えば、それぞれ、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、マレイミド系モノマー等を付加重合させることによって得ることができる。また、重合後に、側鎖を置換したり、マレイミド化やグラフト化反応をおこなう等によって、複屈折特性を制御することもできる。また、負の複屈折を示すポリマーとして、例えば特開2005−350544号公報等に開示されているような環状オレフィン系共重合体等を用いることもできる。さらには、特開2005−156862号公報や、特開2005−227427号公報等に開示されているような、ポリマーと無機微粒子の組成物も好適に用いることができる。また、負の複屈折を示すポリマーは、一種を単独で用いることもできるし、二種以上を混合して用いてもよい。さらに、これらを共重合、分枝、架橋、分子末端修飾(又は封止)、及び立体規則変性等によって変性して用いることもできる。
【0054】
一般に、負の複屈折を有するポリマーフィルムを縦一軸延伸(自由端一軸延伸)することでネガティブAプレートが得られるが、延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)等は、ポリマーフィルムを形成する樹脂の種類や所望のレターデーションやNz係数の値に応じて、適宜に選択し得る。
【0055】
また、ネガティブAプレートは、正の複屈折を有するポリマーを用いて製造することもできる。正の複屈折を有するポリマーを用いてネガティブAプレートを得る方法としては、例えば、特開2000−231016号公報、特開2000−206328号公報、特開2002−207123号公報等に開示されているような、厚み方向の屈折率を増大させる延伸方法を用いることができる。すなわち、正の複屈折を有するポリマーを有するフィルムの片面又は両面に熱収縮性フィルムを接着して、加熱処理による熱収縮性フィルムの収縮力の作用下に正の複屈折を有するポリマーを有するフィルムを幅方向、および必要に応じて長手方向にも収縮させることで、厚み方向の屈折率が増大され、nx≒nz>nyの特性を有するネガティブAプレートが得られる。
【0056】
負の複屈折を有するポリマーは、正の複屈折を有するポリマーに比して用い得るポリマーの種類が少ないため、所望の光学特性や耐熱性等を満足させる観点から、上記のような正の複屈折を有するポリマーによってネガティブAプレートを得る方法は有用となり得る。
【0057】
また、ネガティブAプレートとして、負の複屈折を有する液晶性分子の配向層を用いることもできる。液晶性分子としては、液晶相がネマティック相であるディスコティック液晶材料が好適に用いられる。ネガティブAプレートを得る観点から、液晶の配向状態は、ディスコティック液晶化合物の分子の円板面が、フィルム面に対して垂直であり、光軸がフィルム面に対して平行であることが好ましい。
【0058】
好ましくは、上記ディスコティック液晶化合物は、分子構造の一部分に、少なくとも1つの重合性官能基および/または架橋性官能基を有する。このような液晶化合物を用いれば、重合反応または架橋反応により、これらの官能基を重合または架橋させることによって、位相差部材の機械的強度が増し、耐久性、寸法安定性に優れた位相差部材が得られ得る。重合性官能基または架橋性官能基としては、任意の適切な官能基が選択され得るが、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基などが好ましく用いられる。
【0059】
このようなディスコティック液晶化合物の固化層または硬化層からなるネガティブAプレートは、例えば特開2001−56411号公報に記載の方法によって得ることができる。
【0060】
また、リオトロピック液晶相を示すディスコティック液晶化合物を、分子の円板面がフィルム面に対して垂直であり、光軸がフィルム面に対して平行となるように配向させたものも、ネガティブAプレートとして用い得る。「リオトロピック液晶化合物」とは、溶液状態で溶質の濃度によって液晶相が発現する液晶化合物をいう。
【0061】
上記リオトロピック液晶化合物としては、任意の適切なものが用いられ得る。上記リオトロピック液晶化合物の具体例としては、分子の両末端に親水性基と疎水性基を有する両親媒性化合物、水溶性が付与された芳香環を有するクロモニック化合物等が挙げられる。
【0062】
上記実質的に垂直に配向させたリオトロピック液晶化合物を含有する液晶性組成物の固化層または硬化層からなるネガティブAプレートは、例えば特開平10−333154号公報や特表2004−519014号公報に記載の方法によって得ることができる。
【0063】
[第1の位相差部材のパターン化]
次に第1の位相差部材のパターン化方法について説明する。本発明の第1の実施形態においては、第1の位相差部材1の位相差を有する領域1aがポジティブAプレートであり、第2の位相差部材2はネガティブAプレートである。この場合、λ/2の正面レターデーションを有するポジティブAプレートが位相差を有する領域1aと位相差を有さない領域1bとにパターン化される。また、本発明の第2の実施形態においては、第1の位相差部材1の位相差を有する領域1aがネガティブAプレートであり、第2の位相差部材2がポジティブAプレートである。この場合、λ/2の正面レターデーションを有するネガティブAプレートが位相差を有する領域1aと位相差を有さない領域1bとにパターン化されている。
【0064】
第1の位相差部材1をパターン化する方法は特に限定されず、λ/2の正面レターデーションを有するポリマーフィルムや液晶配向層を形成した後にパターン化を行う方法、およびλ/2板の形成時にパターン化を行う方法のいずれも採用し得る。
【0065】
λ/2の正面レターデーションを有するポリマーフィルムや液晶配向層を形成した後にパターン化を行う方法としては、位相差を有する領域1aに対応する部分をレジスト材料で覆い、ウェットエッチング法やドライエッチング法でパターン化する方法が挙げられる。また、特開平9−68699号公報記載の複屈折性を有する感光性フィルムを用いてもよい。この場合は、ポリマーフィルム自身が感光性を有するので、領域1aに対応する部分にのみ、フォトマスクを介して光を照射すればよい。その他、レーザー照射やサンドブラスト法により、λ/2板から位相差を有さない領域1bに対応する部分を除去する方法も採用し得る。
【0066】
λ/2板の形成時にパターン化を行う方法としては、例えば液晶層を配向するための配向層をパターン化しておく方法や、液晶性モノマーを重合または架橋するための紫外線等を照射する際にマスク等を用いて領域1aのみに照射を行う方法等が挙げられる。
【0067】
パターン化後において位相差を有さない領域1bは、空洞であってもよく、適宜の材料が充填されていてもよい。また、他の部材と積層するために、第1の位相差部材の表面に平坦化層(図示せず)を形成してもよい。
【0068】
図1においては、第1の位相差領域11に対応する領域1a(位相差を有する領域)と第2の位相差領域12に対応する領域1b(位相差を有さない領域)とが交互にストライプ状に配置された実施形態を示しているが、本発明はかかる形態に限定されず、例えば第1の位相差領域11と第2の位相差領域12とが格子状に配置されていてもよい。
【0069】
第1の位相差領域と第2の位相差領域とがストライプ状に配置される場合には、各ストライプ列の幅が、映像表示セルの右目用映像表示列および左目用映像表示列の幅に対応することが好ましい。このような場合、各位相差領域の幅は小さい方が好ましく、具体的には映像表示装置の画素の1辺の長さ(画素の幅)に対応させることが好ましい。また、第1の位相差領域11と第2の位相差領域12とが格子状に配置される場合は、各位相差領域を映像表示装置の画素に対応させることが好ましい。
【0070】
なお、第1の位相差領域と第2の位相差領域との境界部分は映像表示に用いることができない場合がある。かかる観点からは第1の位相差領域と第2の位相差領域とを交互にストライプ状に配置し、位相差領域の境界部分の面積を小さくすることが好ましい。
【0071】
[偏光素子]
本発明の偏光素子50は、前記位相差板10と偏光板20とが積層された構成を有する。偏光素子50は、位相差板10の第1の位相差部材1側が偏光板20側に積層されている構成、および位相差板10の第2の位相差部材2側が偏光板20側に積層されている構成のいずれであってもよい。
【0072】
図3に示すように、偏光板20の透過軸方向201は位相差板10の第2の位相差領域12の遅相軸方向121と45°の角度をなす。また、偏光板20の透過軸方向201と位相差板10の第1の位相差領域11の遅相軸方向111とのなす角も45°であるが、角度の符号(±)は、第2の位相差領域の遅相軸方向の場合と反対である。かかる構成によって、偏光板20を透過した直線偏光が位相差板10によって、第1の領域と第2の領域とで異なる極性を有する円偏光(右円偏光と左円偏光)に変換される。
【0073】
偏光板20は、任意の偏光状態を有する光を直線偏光に変換するものであれば特に限定されず、各種のものを使用できる。このような偏光板としては、例えば、偏光子の一方または両方の主面に必要に応じて透明保護フィルムを積層したものが用いられる。偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。また、米国特許5,523,863号等に開示されている二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプのO型偏光板、米国特許6,049,428号等に開示されているリオトロピック液晶を一定方向に配向させたE型偏光板等も用いることができる。
【0074】
偏光子の一方または両方の主面に積層される透明保護フィルムとしては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好適に用いられる。また、本発明の位相差板を偏光子に積層して、偏光板保護フィルムとしての機能と立体映像表示用位相差板としての機能を兼用させてもよい。
【0075】
偏光板20と位相差板10は単に重ね合わせただけでもよいし、接着剤等を介して貼り合せてもよい。また、偏光板20と位相差板10との間には、偏光板保護フィルムやその他のフィルム、あるいは映像表示セルを形成するためのガラス基板等を介してもよい。
【0076】
[立体映像表示装置]
位相差板10あるいは偏光素子50を、映像表示セル30の視認側に配置することによって立体映像表示装置が形成される。なお、「映像表示セルの視認側」との表現は、映像表示セルを形成する全ての部材よりも視認側に配置する形態のみならず、例えば液晶セルにおいては液晶層よりも視認側であればよく、液晶セルの視認側のガラス基板よりも視認側に配置されることは必ずしも要しない。
【0077】
図4に示すように、本発明の位相差板10は、偏光板20よりも視認側に配置される。また、位相差板の第1の位相差領域11と第2の位相差領域12とは、それぞれ映像表示セル30の第1の映像表示領域31と第2の映像表示領域32に対応するように画面の法線方向視認側に配置される。第1の映像表示領域31および第2の映像表示領域32は、一方が右目用映像表示領域、他方が左目用映像像表示領域に対応している。かかる構成によって、映像表示セルの第1の映像表示領域および第2の映像表示領域から射出される光は、偏光板20と位相差板10によって極性の異なる円偏光として射出されるため、立体表示が実現される。
【0078】
映像表示セル30は特に限定されず、例えば、有機ELセル、プラズマ表示セル、ブラウン管等の自発光型の表示セルや、液晶セル等のように、光源からの光の透過量を調整する表示セルを用いることができる。また、リアプロジェクションシステムのような投影型表示装置のスクリーンを適用することもできる。
【0079】
中でも液晶表示装置は、映像表示のために液晶セルの視認側に偏光板が配置されているため、別途偏光板を設けることなく、本発明の位相差板を付加することによって立体映像表示装置を形成可能である。また、視認側の偏光板とは別にもう1枚の偏光板を設けてもよい。有機EL表示装置の場合は、金属電極による外光の鏡面反射を遮蔽するために、有機発光層の視認側に、1/4波長板と偏光板が積層された円偏光板が配置される場合があるが、該円偏光板の視認側に本発明の位相差板を配置することによって、立体映像表示装置としてもよい。
【0080】
立体映像表示装置の映像表示セル30として液晶セルを採用する液晶表示装置について説明する。液晶セルとしては、外光を利用する反射型液晶セル、バックライト等の光源からの光を利用する透過型液晶セル、外部からの光と光源からの光の両者を利用する半透過半反射型液晶セルのいずれを用いてもよい。また、液晶セルの駆動方式としては、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の任意なタイプのものを用い得る。
【0081】
図5を参照すると、液晶セル30は、一対の基板301、302と、基板間に挟持された表示媒体としての液晶層303とを有する。一般的な構成においては、一方の基板301側に、カラーフィルタ層306が設けられており、他方の基板302に、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子307と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線と、画素電極および対向電極とが設けられている。上記基板301、302の間隔(セルギャップ)は、スペーサー等によって制御できる。基板の液晶層303と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜等を設けることができる。カラーフィルタ層306は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応したカラーフィルタとブラックマトリクスを有している。
【0082】
視認側の基板301側に偏光板20および位相差板10が配置される。位相差板10は、第1の位相差領域11と第2の位相差領域12が、映像表示セル30の第1の映像表示領域31と第2の映像表示領域32にそれぞれ対応するように配置される。
【0083】
位相差板10および偏光板20は、粘着剤または接着剤等を介して液晶セルの基板301に貼り合わされることが好ましい。液晶セル30として、透過型液晶セル、あるいは半透過半反射型液晶セルを採用する場合は、液晶セルの基板302側に偏光板40と光源60とが配置されることが好ましい。
【0084】
また、図6に示すように、液晶セル30を構成するガラス基板301の内側(液晶層303側)に偏光板20および位相差板10を配置することもできる。かかる実施形態によれば、液晶セルの形成時に位相差板10が配置されるため、液晶セル30の映像表示領域31および32と位相差板10の位相差領域11および12の位置あわせを容易になし得る。また、液晶セルの画素形成領域である液晶層303と位相差板10との距離が小さいために、斜め方向から映像表示装置を視認した場合でも液晶セルの映像表示領域と位相差板の位相差領域との対応関係を保持することができ、右目用映像と左目用映像の混在(クロストーク)を抑制することができる。
【0085】
なお、図6においては、カラーフィルタ層306の視認側(基板301側)に偏光板20および位相差板10を設けたが、カラーフィルタ層306は偏光板20と位相差板10との間や、位相差板10と基板301との間に配置することもできる。
【0086】
映像表示セルとして液晶セル以外のセル、例えば有機ELセルや、プラズマ表示セル、ブラウン管等の自発光型のセルを用いる場合においても、位相差板10の第1の位相差領域11と第2の位相差領域12を、映像表示セル30の第1の映像表示領域31と第2の映像表示領域32にそれぞれ対応するように配置することにより、立体映像表示装置が形成される。
【0087】
本発明の立体映像表示装置から現出される立体映像を、右目用レンズおよび左目用レンズとして極性の異なる2枚の円偏光板を備える立体視用偏光眼鏡を装着して視認することにより、視認者は立体表示を想起する。
【0088】
立体視用偏光眼鏡70は、右目用レンズおよび左目用レンズの一方に第1の円偏光板71、他方に第2の円偏光板72を備える。図7に模式的に示すように、第1の円偏光板71は、第1の映像表示領域31から第1の位相差領域11を透過して現出される第1の円偏光r11を透過し、第2の映像表示領域32から第2の位相差領域12を透過して現出される第2の円偏光r121を遮蔽する。一方、第2の円偏光板72は、第1の映像表示領域31から第1の位相差領域11を透過して現出される第1の円偏光r112を遮蔽し、第2の映像表示領域32から第2の位相差領域12を透過して現出される第2の円偏光r122を透過する。第1の円偏光と第2の円偏光は逆の極性を有している。すなわち、第1の円偏光と第2の円偏光の一方は右円偏光であり、他方は左円偏光である。
【0089】
このような第1の円偏光板71と第2の円偏光板72としては、異なる極性の円偏光を透過する2枚の円偏光板の組合せが用いられる。このような2枚の円偏光板としては、捩れ方向の異なるコレステリック液晶による第1の反射型円偏光板と第2の反射型円偏光板の組合せや、偏光板と1/4波長板を積層した第1の円偏光板、および偏光板と3/4波長板を積層した第2の円偏光板の組合せ、偏光板と1/4波長板を積層した第1の円偏光板、および偏光板と1/4波長板の軸配置が第1の円偏光板とは鏡像関係にある第2の円偏光板の組合せ等を採用することができる。
【0090】
本発明によれば、位相差板10の第1の領域において、符号の異なる2枚のAプレートが配置されているために、立体映像表示装置が斜め方向から視認された場合においても、視認者に到達する右目用映像と左目用映像の両者において、偏光状態が円偏光から大幅に乖離することが抑制されている。そのため、立体視用偏光眼鏡を介して視認される右目用映像と左目用映像の色の差が小さく、視認者の疲労感や画面酔い等が抑制される。
【実施例】
【0091】
以下の実施例においては、位相差板の第1の領域と第2の領域を透過した光の偏光状態を評価することによって、本発明の効果を確認した。
【0092】
(偏光板)
ヨウ素を吸着させて一軸延伸したポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子の両面に偏光子保護フィルムが積層された市販のヨウ素系偏光板を用いた。
【0093】
(ポジティブAプレート)
環状ポリオれふぃん系ポリマーを主成分とする市販の高分子フィルム(オプテス製 商品名「ゼオノアフィルム ZF14-100」)を用い、ロール延伸機により一軸延伸して、λ/4板およびλ/2板を得た。λ/4板およびλ/2板は、いずれもNZ=1.0のポジティブAプレートであり、波長550nmにおける正面レターデーションは、それぞれ137.5nmおよび275nmであった。
【0094】
(ネガティブAプレート)
スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァ・ケミカル・ジャパン社製、製品名「ダイラーク D232」)のペレット状樹脂を、単軸押出機とTダイを用いて、270℃で押出し、シート状の溶融樹脂を冷却ドラムで冷却してフィルムを得た。このフィルムを、ロール延伸機により一軸延伸して、λ/4板およびλ/2板を得た。λ/4板およびλ/2板は、いずれもNZ=0.0のネガティブAプレートであり、波長550nmにおける正面レターデーションは、それぞれ137.5nmおよび275nmであった。
【0095】
[実施例1]
位相差を有する領域1aが正面レターデーションλ/2のポジティブAプレートである 第1の位相差部材と、正面レターデーションλ/4のネガティブAプレートである第2の位相差部材が用いられた場合における、第1の位相差領域と第2の位相差領域における偏光状態を確認した。
【0096】
(実施例1−1)
偏光板の一方主面の半分の領域に、λ/2の正面レターデーションを有するポジティブAプレートを、ポジティブAプレートの遅相軸方向が偏光板の透過軸方向に対して、+45°(偏光板側からみた場合)となるようにした。その上に、偏光板の全面にλ/4の正面レターデーションを有するネガティブAプレートを、ポジティブAプレートの遅相軸方向とネガティブAプレートの遅相軸方向とが直交するように積層した。すなわち、実施例1−1は、図2Aの積層形態に相当する。
【0097】
(実施例1−2)
偏光板の一方主面の全面に、λ/4の正面レターデーションを有するネガティブAプレートを、ネガティブAプレートの遅相軸方向が偏光板の透過軸方向に対して、+45°(偏光板側からみた場合)となるように積層した。その上の半分の領域にλ/2の正面レターデーションを有するポジティブAプレートを、ネガティブAプレートの遅相軸方向とポジティブAプレートの遅相軸方向とが直交するように積層した。すなわち、実施例1−2は、図2Bの積層形態に相当する。
【0098】
(白画像の色つきの評価)
光源(輝度約10000cd/m)上に、偏光板上に第1の位相差領域(ポジティブAプレートとネガティブAプレートとが配置された領域)と第2の位相差領域(ネガティブAプレートのみが配置された領域)とを有する位相差板が形成された偏光素子を、偏光板が光源側となるように配置した。
【0099】
輝度計(トプコン製 製品名「BM−5」のレンズに円偏光板(日東電工製 商品名「NZD−VEGQ」)を装着し、23℃の暗室にて、光源を点灯させて60分後に、パネルから50cmの位置に輝度計を配置し、正面方向(位相差板の法線方向)および方位角40°、極角60°方向におけるXYZ表色系のX,Y,Zを測定した。得られたX,Y,Zの値から、x値(X/(X+Y+Z))、およびy値(Y/(X+Y+Z))を算出した。
なお、方位角の基準は、偏光板の吸収軸方向を0°とし、視認側(輝度計側)からみて反時計回りを+とした。また、レンズに装着する円偏光板は、測定する位相差領域から現出される円偏光を透過させるような極性を有するものを用いた。
【0100】
(偏光特性の評価)
偏光素子の第1の領域および第2の領域のそれぞれからサンプル片を切り出し、王子計測機器製のKOBRA−WPRにより、波長550nmにおける正面方向および方位角40°、極角60°方向での楕円偏光特性を測定し、それぞれのストークスパラメーターを算出した。なお、ストークスパラメーターの算出にあたっての基準として、偏光板の透過軸方向の直線偏光のストークスパラメーターを(S1,S2,S3)=(0,1,0)とし、S3>0の北半球を右楕円偏光、S3<0の南半球を左円偏光と定義した。
【0101】
[実施例2]
位相差を有する領域1aが正面レターデーションλ/2のネガティブAプレートである 第1の位相差部材と、正面レターデーションλ/4のポジティブAプレートである第2の位相差部材が用いられた場合における、第1の位相差領域と第2の位相差領域における偏光状態を確認した。
【0102】
(実施例2−1)
偏光板の一方主面の半分の領域に、λ/2の正面レターデーションを有するネガティブAプレートを、ネガティブAプレートの遅相軸方向が偏光板の透過軸方向に対して、+45°(偏光板側からみた場合)となるように積層した。その上に、偏光板の全面にλ/4の正面レターデーションを有するネガティブAプレートを、ポジティブAプレートの遅相軸方向とネガティブAプレートの遅相軸方向とが直交するように積層した。すなわち、実施例2−1は、図2Aの積層形態に相当する。
【0103】
(実施例2−2)
偏光板の一方主面の全面に、λ/4の正面レターデーションを有するネガティブAプレートを、ネガティブAプレートの遅相軸方向が偏光板の透過軸方向に対して、+45°(偏光板側からみた場合)となるようにした。その上の半分の領域にλ/2の正面レターデーションを有するポジティブAプレートを、ネガティブAプレートの遅相軸方向とポジティブAプレートの遅相軸方向とが直交するように積層した。すなわち、実施例2−2は、図2Bの積層形態に相当する。
【0104】
このようにして得られた偏光素子について、前記実施例1と同様に光学特性の評価を行った。
【0105】
[比較例1]
比較例1においては、前記実施例1における第1の位相差部材としてポジティブAプレートを用いるかわりにネガティブAプレートを用いた。すなわち、比較例1の位相差板においては、第1の位相差部材、第2の位相差部材の両者にネガティブAプレートが用いられた。それ以外は前記実施例1と同様にして偏光素子を作製し、光学特性の評価を行った。
【0106】
[比較例2]
比較例2においては、前記実施例2における第1の位相差部材としてネガティブAプレートを用いるかわりに、ポジティブAプレートを用いた。すなわち、比較例2の位相差板は、第1の位相差部材、第2の位相差部材の両者にポジティブAプレートが用いられた。それ以外は前記実施例2と同様にして偏光素子を作製し、光学特性の評価を行った。
【0107】
上記各実施例および比較例における位相差板の構成を表1に、偏光特性の評価結果(ストークスパラメーター)を表2に示す。また、各実施例における白表示の色相の評価結果を図8に、各比較例における白表示の色相の評価結果を図9に、それぞれ示す。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
表1に示すように、いずれの実施例および比較例においても、正面方向(方位角0°、極角0°)から視認した場合は、領域1,2のストークスパラメーターS3が±1となっており、極性の異なる円偏光が得られている。斜め方向(方位角40°、極角60°)から視認した場合は、λ/4板のみが配置されている第2の位相差領域ではいずれの実施例、比較例においてもストークスパラメーターS3の絶対値が0.9以上であり、円偏光状態が保たれているといえる。一方、λ/4板とλ/2板が配置されている第1の位相差領域では、実施例と比較例に明確な差がみられた。すなわち、符号の異なる2枚のAプレートが用いられた各実施例では、第1の位相差領域においても、ストークスパラメーターS3の絶対値が0.9以上であり円偏光状態が保たれているのに対して、符号が同一である2枚のAプレートが用いられた各比較例においては、実施例に比してS3の絶対値が大幅に低下しており、円偏光からの乖離が大きいことがわかる。
【0111】
図10および図11は、それぞれ各実施例および各比較例において、斜め方向から視認した場合の、位相差板による偏光状態の変換を、ポアンカレ球上の軌跡(S1−S2面への投影)として模式的に表したものである。図10によれば、いずれの実施例においても、第1の位相差領域と第2の位相差領域におけるポアンカレ球上の軌跡が同一直線上に存在している。これは、第1の位相差板と第2の位相差板との見かけ上の遅相軸方向の直交状態が保たれているためである。一方、図11によれば、いずれの比較例においても、2枚の位相差板が配置された第1の領域におけるポアンカレ球上の軌跡が同一直線内に存在していない。これは第1の位相差板と第2の位相差板の見かけ上の遅相軸方向が直交状態からずれていることに起因している。
【0112】
このように、符号が同一である2枚のAプレートが用いられる場合は、斜め方向から視認された場合の第1の領域と第2の領域との間で円偏光からのズレ量が大きく異なる。そのため、図9に示すように、比較例1、2では、正面視の場合に比して斜め方向から視認された場合の領域1,2の色相の差が大きくなっている。これに対して、符号の異なる2枚のAプレートが用いられる各実施例では、図8に示すように、斜め方向から視認された場合の第1の領域と第2の領域との色相の差が小さく、色の差が抑制されていることがわかる。
【0113】
なお、上記の例は、偏光状態の評価を行うためになされたものであるため、各位相差領域は微細にパターン化されていない。しかしながら、本明細書の開示等に基づいて、微細にパターン化された位相差板を用いれば、本発明の構成により、所期の効果が得られることが理解される。
【符号の説明】
【0114】
1, 2 位相差部材
10 位相差板
20 偏光板
30 映像表示セル(液晶セル)
40 偏光板
50 偏光素子
60 光源
70 偏光眼鏡
71,72 円偏光板
80 映像表示装置
301,302 基板
303 液晶層
306 カラーフィルタ層
307 スイッチング素子
11,12 位相差領域
31,32 映像表示領域
111,112 遅相軸方向
201 透過軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の位相差領域と複数の第2の位相差領域とを有し、第1の位相差領域および第2の位相差領域はともに1/4波長の正面レターデーションを有し、かつ第1の位相差領域の遅相軸方向と第2の位相差領域の遅相軸方向とが直交している立体映像形成用位相差板であって、
第1の位相差領域のみにおいて1/2波長のレターデーションを有する第1の位相差部材と、第1の位相差領域および第2の位相差領域において1/4波長のレターデーションを有する第2の位相差部材とが積層されており、
第1の位相差領域において、第1の位相差部材の遅相軸方向と第2の位相差部材の遅相軸方向とが直交しており、
第1の位相差部材の第1の位相差領域と第2位相差部材とは符号の異なるAプレートである、立体映像形成用位相差板。
【請求項2】
第1の位相差部材の第1の位相差領域がポジティブAプレートであり、第2の位相差部材がネガティブAプレートである、請求項1に記載の立体映像形成用位相差板。
【請求項3】
第1の位相差部材の第1の位相差領域がネガティブAプレートであり、第2の位相差部材がポジティブAプレートである、請求項1に記載の立体映像形成用位相差板。
【請求項4】
第1の位相差領域と第2の位相差領域とがストライプ状に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体映像形成用位相差板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体映像形成用位相差板と偏光板とが積層されており、前記位相差板の第2の位相差領域における遅相軸方向と偏光板の透過軸方向とのなす角が45°である、立体映像形成用偏光素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の位相差板と、偏光板と映像表示セルとを備え、
前記映像表示セルの視認側に偏光板が配置され、前記偏光板よりも視認側に前記位相差板が配置されており、
前記位相差板の第2の位相差領域における遅相軸方向と偏光板の透過軸方向とのなす角が45°であり、
前記映像表示セルは第1の映像表示領域および第2の映像表示領域を有し、
前記位相差板の第1の位相差領域および第2の位相差領域が、前記映像表示セルの第1の映像表示領域および第2の映像表示領域にそれぞれ対応するように配置された立体映像表示装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−22148(P2012−22148A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159978(P2010−159978)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】