説明

立体画像処理方法

【課題】 立体画像にマーキングを行うことで、正確に距離情報を得て一画像を回転させてもマーカーの位置がずれない立体画像処理方法を提供する。
【解決手段】 立体連続画像の一画像に2点のマークを記し直線を生成すると該直線の距離情報と奥行き情報が演算され、該立体連続画像を形成する第一の2次元連続画像と第二の2次元連続画像に該距離情報と該奥行き情報に基づく直線が各々全ての連続画像に記され、保存される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両眼視差を利用する立体表示において、立体画像処理方法に関するものである。特に左眼画像と右眼画像を撮影するステレオ撮影方法において、撮影装置と被写体との距離が予め決められている医療データ等の立体画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の立体画像の観察では、主に人間の両眼視差を利用している。すなわち、同一の被写体を左右の撮影装置で撮影してできる左眼画像と右眼画像を用意する。右眼には右眼画像のみ、左眼には左眼画像のみを観察するようにすると、同一被写体に視差がついているので、観察者は飛び出し・奥行き効果をもつ立体画像を観察することができる。
【特許文献1】特開平10−221643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の立体観察では飛び出し・奥行き効果をもつ立体画像を観察することはできても実際の距離情報を正確に得ることはできない。さらに、立体画像にマーキングをした場合、立体画像を回転させると、距離情報の演算結果が保存されないためマーカーの位置がずれる欠点もあった。
【0004】
本発明は立体画像に立体カーソルでマーキングを行うことで、正確に距離情報を得て、画像を回転させてもマーカーの位置がずれない立体画像処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る立体画像処理方法は、
第一の2次元画像と第二の2次元画像に基づく立体画像において、立体画像上に立体力ーソルで立体マークを記すと、該立体画像を形成する第一の2次元画像と第二の2次元画像に該立体マークに基づくマークが記され、該立体マークの位置情報が演算されることを特徴とする。
【0006】
上記の立体画像処理方法において、前記立体画像上に前記立体カーソルで2点の立体マークを記し直線を生成すると、該立体画像を形成する第一の2次元画像と第二の2次元画像に該2点の立体カーソルに基づく直線が記され、該直線の距離情報が演算されることを特徴とする。
【0007】
上記の立体画像処理方法において、前記立体画像上に前記立体カーソルで多数点の立体マークを記し図形を生成すると、該立体画像を形成する第一の2次元画像と第二の2次元画像に該図形が記され、該図形の面情報が演算されることを特徴とする。
【0008】
第一の2次元画像と第二の2次元画像に基づく立体画像において、前記立体画像が立体連続画像であり、該立体連続画像の一画像上に立体カーソルで立体マークを記すと、該立体連続画像を形成する第一の2次元連続画像と第二の2次元連続画像に該立体マークに基づくマークが各々全ての連続画像に記され、該立体マークの位置情報が演算されることを特徴とする。
【0009】
上記の立体画像処理方法において、前記立体連続画像の一画像に前記立体カーソルで2点の立体マークを記し直線を生成すると、該立体連続画像を形成する第一の2次元連続画像と第二の2次元連続画像に該2点の立体マークに基づく直線が各々全ての連続画像に記され、該直線の距離情報が演算されることを特徴とする。
【0010】
上記の立体画像処理方法において、前記立体連続画像の一画像に前記立体カーソルで多数点の立体マークを記し図形を生成すると、該立体連続画像を形成する第一の2次元連続画像と第二の2次元連続画像に該図形に基づく図形が各々全ての連続画像に記され、該図形の面情報が演算されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は立体画像にマーキングを行うことで、正確に距離情報を得て、画像を回転させてもマーカーの位置がずれない立体画像処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本実施例1の立体画像処理のフローチヤートである。ステップ100にて左右眼画像がコンピュータに読み込まれ、ステップ101にて左右眼画像の各々が一水平走査線ごとに分割され、垂直方向に交互に繰り返し配列されて立体画像が作成される。立体画像の作成は、画像処理ソフト等を用いて行われる。合成されて得られた立体画像は立体画像表示装置によって表示され、観察者は立体画像を観察する。立体画像表示装置については、一水平走査線ごとに表示された右眼画像と左眼画像をレンチキュラレンズもしくはバリアを用いて、右眼画像は右眼方向に、左眼画像は左眼方向に指向させて、観察者は裸眼で立体画像を観察するタイプや、―水平走査線ごとに画像の偏光方向を変化させる特殊偏光板をパネルに配置させ、観察者は偏光メガネをかけて観察するタイプがある。
【0014】
次に図2の被写体の撮影方法を水平方向から捉えた図を用い、ステップ102以下の手順を説明する。図2において、右眼画像を撮影する右眼画像撮影装置204と左眼画像を撮影する左眼画像撮影装置205で被写体203を撮影している。図では、右眼画像撮影装置204と左眼画像撮影装置205との間隔をE、撮影装置から像の中心を通る面206までの距離をSとする。面206は立体画像観察時にはパネル面であり、この面を基準として飛び出し・奥行きが生じる。ここでEとSは既知である。そのため、ステップ102にて、コンピュータに撮影装置の間隔Eと撮影距離Sを入力する。そしてステップ103にて観察者は関心のある位置に立体カーソルを移動し、マークをする。
【0015】
図2を用いてステップ104の説明を行う。説明のため、XYZ座標系を設定している。X軸は面206に取り、Y軸は右左眼画像撮影装置の中心を垂直に通過する方向に取り、Z軸はXY軸に対し垂直方向に取る。
【0016】
被写体203内部の関心のある位置に観察者がマーク202をする場合、右眼画像撮影装置204で撮影されたマーク202は面206では右眼画像マーク200で表示される。左眼画像撮影装置205で撮影されたマーク202は面206では左眼画像マーク201で表示される。ここで右眼画像マーク200と左眼画像マーク201の位置にはPの距離だけずれが生じる。これをずれ量と呼ぶ。このずれ量の大きさによって、立体画像の飛び出し・奥行きが起こる。つまりステップ104にて、立体画像にマークをすることで左右眼画像にそれぞれマークが生成される。そしてステップ105にて関心のある位置にマーク202が生成される。
【0017】
次にステップ106にて左右眼撮影装置と左右眼画像マークの位置を読み込む。あらかじめ表示パネルにはXZ座標が設定されており、座標を設定する方法はピクセルごとに座標を設定する方法や表示パネルの大きさにあわせ所定の座標を設定する方法等でおこなう。
【0018】
本実施例ではZ軸の座標は左右眼画像で変化しないので、X座標を求める。まず入力された撮影装置の間隔Eと撮影距離Sより右眼画像観察装置204のX座標Xと左眼画像観察装置205のX座標Xを求める。次にステップ104でマークされた右眼画像マーク200のX座標Xと左眼画像マーク201のX座標Xを求める。
【0019】
ステップ107にて撮影装置の間隔E、撮影距離Sとずれ量P等から上記で求めた右眼画像観察装置204のX座標Xと左眼画像観察装置205のX座標X、右眼画像マーク200のX座標Xと左眼画像マーク201のX座標Xより相似関係を用いてマーク202の座標(X,Y)を求める。
【0020】
ステップ108ではステップ107で求められた位置情報が画面に表示され、また自動的に保存される。
【実施例2】
【0021】
図3は本実施例2の立体画像処理のフローチャートで、図4は2点を立体カーソルでマークし直線を生成した場合の説明図である。
【0022】
まず関心のある位置にマーク202をする手順であるステップ300からステップ305までは実施例1と同様の操作を行う。この手順によって右眼画像に右眼画像マーク200、左眼画像に左眼画像マーク201が生成される。
【0023】
次にステップ306にて新たに関心のある位置に立体カーソルを移動し、図4に示すマーク207をする。そして図4からステップ307にて、ステップ304,305と同じようにマーク207の右眼画像マーク208と左眼画像マーク209がマークされ、マーク207が生成される。そして、ステップ308にて立体画像にマーク202とマーク207を結ぶ直線が生成される。
【0024】
次にマーク202とマーク207の座標を求めるため、ステップ309にて右眼画像マーク200のX座標Xと左眼画像マーク201のX座標Xとずれ量P、右眼画像マーク208のX座標Xと左眼画像マーク209のX座標Xとずれ量Qが読みこまれる。マーク310にて図4における相似関係を用いてマーク202とマーク207の座標を求める。また求めた座標より直線の長さも求める。ステップ311にて立体画像にマーク位置の座標と直線の距離が表示される。
【実施例3】
【0025】
図5は本実施例3で回転する連続画像を得るシステムの図である。図5で被写体203の周囲を撮影装置810と被写体203との撮影距離Sを保ちつつ、撮影装置710がΔθごと移動し、撮影を行う。そして撮影された画像を任意にペアにすることで右眼画像と左眼画像を形成する。例えば、図6ではΔθが1°の場合で、撮影装置が被写体の周囲を1°ごと移動しながら撮影し、左右眼画像のペアは右眼画像600と左眼画像601のように4°づつとしている。
【0026】
図7は本実施例3の立体画像処理のフローチャートである。ステップ700にて図6で示した連続する左右眼画像をコンピュータに読み込む。ステップ701にて連続する左右眼画像の各々が一水平走査線ごとに分割され、垂直方向に交互に繰り返し配列されて連続する立体画像が作成される。立体画像の作成は、画像処理ソフト等を用いて行われる。また観察に用いる立体画像表示装置は実施例1と同様の物を用いる。
【0027】
図8は被写体の撮影方法を水平方向から捉えた図である。ステップ702にて撮影装置710と被写体203との撮影距離Sと回転角度Δθを入力する。ステップ703にて観察者は立体カーソルで立体画像の関心のある位置にマ−ク802をする。
【0028】
ステップ704では、まず表示されている立体画像を形成する元の左右眼画像において、右眼画像は右眼画像マーク800に、左眼画像は左眼画像マーク801にマークされ、その位置は自動的に保存される。さらに表示されている画像以外の全ての連続画像においてもマーク802が射影計算され、全ての連続画像にマークが記される。そしてステップ705にて立体マークが生成される。
【0029】
全ての連続画像にマークが読み込まれる方法は次のようになる。まず右眼画像マーク800のX座標Xと左眼画像マーク801のX座標X1+n0が読み込まれる。読み込まれたX座標と撮影距離Sと回転角度Δθから、マーク802の座標(X,Y)が求められる。次にマーク802の原点からの距離r、角度αと回転角Δθをもちいて座標(X,Y)を極座標変換する。極座標変換されたマーク802の座標(X,Y)から回転角Δθごとにマークを射影すると、全ての連続画像におけるマークを求めることができる。
【0030】
そしてステップ706にて新たな関心ある位置に立体カーソルを移動し、マークする。するとステップ707にて上記に示した手順で新たなマークの左右眼画像におけるマークが全ての連続画像に読み込まれる。ステップ708では、すでに左右眼画像にマークを生成する時点で立体画像のマーク位置が求められているので、関心のある位置を結ぶ直線が生成される。そしてステップ709では直線の長さが計算され、ステップ710にて立体画像に直線の距離が表示される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1のフローチャート
【図2】実施例1の撮影方法とマークの説明図
【図3】実施例2のフローチャート
【図4】実施例2のマ−クの説明図
【図5】実施例3の撮影方法図
【図6】実施例3の連続画像構成図
【図7】実施例3のフローチャート
【図8】実施例3のマークの説明図
【符号の説明】
【0032】
200 右眼画像マーク
201 左眼画像マーク
202 マーク
203 被写体
204 右眼画像撮影装置
205 左眼画像撮影装置
206 面
810 撮影装置
800 右眼画像マーク
801 左眼画像マーク
802 マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の2次元画像と第二の2次元画像に基づく立体画像において、立体画像上に立体カーソルで立体マークを記すと、該立体画像を形成する第一の2次元画像と第二の2次元画像に該立体マークに基づくマークが記され、該立体マークの位置情報が演算されることを特徴とする立体画像処理方法。
【請求項2】
請求項1の立体画像処理方法において、前記立体画像上に前記立体カーソルで2点の立体マークを記し直線を生成すると、該立体画像を形成する第一の2次元画像と第二の2次元画像に該2点の立体カーソルに基づく直線が記され、該直線の距離情報が演算されることを特徴とする立体画像処理方法。
【請求項3】
請求項2の立体画像処理方法において、前記立体画像上に前記立体カーソルで多数点の立体マークを記し図形を生成すると、該立体画像を形成する第一の2次元画像と第二の2次元画像に該図形が記され、該図形の面情報が演算されることを特徴とする立体画像処理方法。
【請求項4】
請求項1の立体画像処理方法において、前記立体画像が立体連続画像であり、該立体連続画像の一画像上に立体カーソルで立体マークを記すと、該立体連続画像を形成する第一の2次元連続画像と第二の2次元連続画像に該立体マークに基づくマークが各々全ての連続画像に記され、該立体マークの位置情報が演算されることを特徴とする立体画像処理方法。
【請求項5】
請求項4の立体画像処理方法において、前記立体連続画像の一画像に前記立体カーソルで2点の立体マークを記し直線を生成すると、該立体連続画像を形成する第一の2次元連続画像と第二の2次元連続画像に該2点の立体マークに基づく直線が各々全ての連続画像に記され、該直線の距離情報が演算されることを特徴とする立体画像処理方法。
【請求項6】
請求項5の立体画像処理方法において、前記立体連続画像の一画像に前記立体カーソルで、多数点の立体マークを記し図形を生成すると、該立体連続画像を形成する第一の2次元連続画像と第二の2次元連続画像に該図形に基づく図形が各々全ての連続画像に記され、該図形の面情報が演算されることを特徴とする立体画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−103910(P2010−103910A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275543(P2008−275543)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】