説明

立体配線の製造方法およびその製造方法により作製した立体配線基板

【課題】微細なピッチの立体的な配線電極を形成するとともに、接続信頼性に優れた立体配線の形成方法を提供する。
【解決手段】複数段の第1の配線電極群30と、この第1の配線電極群30の間を少なくとも高さ方向に接続する第2の配線電極40とを、光造形法を用いて形成する立体配線の製造方法であって、マスク150に形成した所定のパターンで所定の厚みに一括で露光し、順次高さ方向に第1の配線電極群30と第2の配線電極40を形成する工程と、第1の配線電極群30と第2の配線電極40を埋設する絶縁層を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度で、立体的な配線を生産性よく形成できる立体配線の製造方法およびその製造方法により作製した立体配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末などは、様々な機能を内部に取り込むことにより総合情報機器へと急激に進展している。そのため、限られた容積で多様化する機能を実現するためには、半導体チップなどの各種デバイスの小型化・高性能化が前提となっている。しかし、高集積化が実現されてきた半導体チップでさえも、コスト面や技術面などの点で、今までどおりの方法では、大幅な性能向上が困難になりつつある。
【0003】
そこで、現在、デバイスをコンパクトに収納するための高密度実装技術の重要性が増している。
【0004】
また、デバイスを高集積化するには、デバイスの微細な配線に対応できる、2次元から3次元への立体的な配線が要望されている。そのため、いかに高密度で、かつ簡単なプロセスで立体配線を形成するかが、開発のポイントになっている。
【0005】
従来、一般的に図14に示すような立体配線構造からなるプリント基板が実現されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
以下に、従来の4層に積層された多層構造を有するプリント基板について簡単に説明する。
【0007】
図14は、従来の4層に積層された多層構造を有するプリント基板の要部構造およびその製造方法を説明する部分斜視図である。
【0008】
まず、図14(a)に示すように、樹脂フィルム1010の片面に、例えば導電ペーストを印刷して形成された導体パターン1020と、ビアホールを導電ペーストで充填した導電ビア1030を有する、例えば3枚の片面導体フィルム1050を形成する。ここで、導体パターン1020には、片面導体フィルム1050の積層時に、導電ビア1030との位置ずれを許容するためのランド1040が形成される。
【0009】
つぎに、図14(b)に示すように、3枚の片面導体フィルム1050を、導体パターン1020と導電ビア1030との位置を合わせて載置する。そして、3枚の片面導体フィルム1050の上下から、例えばプレス機などを用いて、加熱しながら加圧することにより、図14(c)に示すような4層構造を有するプリント基板1000が形成される。
【0010】
また、光造形法を用いて、立体配線構造を有する配線基板の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
以下、光造形法を用いて、立体配線構造を有する配線基板を製造する方法について、図15と図16を用いて説明する。
【0012】
図15は配線基板の製造装置を模式的に示す断面図で、図16は図15の製造装置を用いた配線基板の製造方法を説明する断面図である。
【0013】
図15に示すように、配線基板の製造装置1100は、絶縁性液状樹脂1110を貯めた第1の貯溜槽1120と導電性液状樹脂1130を貯めた第2の貯溜槽1140を備えている。そして、テーブル1150に設置した基板1160を、第1の貯溜槽1120と第2の貯溜槽1140を交互に移動させる移動制御部1180を有している。さらに、例えば所定の深さに配置された基板1160の上の絶縁性液状樹脂1110または導電性液状樹脂1130を、紫外線などを発生するレーザ照射装置1190で所定のパターンを走査することにより硬化させ、所定のパターンを光造形法により形成するものである。
【0014】
以下、具体的な製造方法について、図16を用いて説明する。
【0015】
まず、図16(a)に示すように、基板1160を第1の貯溜槽1120の絶縁性液状樹脂1110に浸漬し、光造形法により基板1160の表面に電気的絶縁層1200を所定の厚みで形成する。
【0016】
つぎに、図16(b)に示すように、第2の貯溜槽1140の導電性液状樹脂1130に浸漬し、導電性液状樹脂1130が所定の厚みで平坦化した後、所定の導体パターン1210を、光造形法により電気的絶縁層1200の上に形成する。その後、導体パターン1210以外の導電性液状樹脂1130を除去することにより、1層目の導体パターン1210を形成する。
【0017】
つぎに、図16(c)に示すように、基板1160を第1の貯溜槽1120の絶縁性液状樹脂1110に浸漬し、光造形法により基板1160の導体パターン1210の上に電気的絶縁層1220を所定の厚みで形成する。このとき、導体パターン1210の所定の位置の絶縁性液状樹脂1110に光を照射せずに、絶縁性液状樹脂1110を除去することによりビア穴1230が形成される。
【0018】
つぎに、図16(d)に示すように、第2の貯溜槽1140の導電性液状樹脂1130に浸漬し、導電性液状樹脂1130が所定の厚みで平坦化した後、ビア穴1230を被覆する2層目の導体パターン1240を、光造形法により電気的絶縁層1220の上に形成する。
【0019】
つぎに、図16(e)に示すように、上記と同様の方法により、導体パターン1240の上に電気的絶縁層1250と3層目の導体パターン1260を形成する。
【0020】
以上の工程により、多層の配線基板を生産性よく形成できることが記載されている。
【0021】
また、液晶マスクを用いた光造形法により、立体的な構造物を形成した例が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0022】
上記方法によれば、液晶マスクで、光硬化性樹脂からなる造形対象物の3次元形状を非積層で一体に形成することにより、異なる形状の複数の部品を同時に作製できるため、多品種少量生産に適することが示されている。
【0023】
また、同様に光造形法を用いて、立体構造物に電気回路パターンを形成した回路部品の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0024】
上記によれば、図17に示すように光造形法により光硬化性樹脂を層状に硬化させ立体構造物1300を形成する。そして、その表面に金属メッキを形成し、その金属メッキをフォトリソグラフィ法とエッチング法を用いて、電気回路パターン1310を形成するものである。これにより、短期間で立体構造物1300に電気回路パターン1310を形成した回路部品が得られるとしている。
【特許文献1】特開2002−368418号公報
【特許文献2】特開2004−22623号公報
【特許文献3】特開2001−252986号公報
【特許文献4】特開平10−12995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、上記特許文献1に示すようなプリント基板では、複数枚の樹脂フィルムの上下面に導体パターンを形成し、樹脂フィルム中に形成した導電ビアと接続することにより積層基板を構成している。そして、樹脂フィルムの積層時の導電ビアと導体パターンとの接続位置のずれを考慮して、ランドを形成している。
【0026】
そのため、以下に示す、図18を用いて説明するような課題を生じている。
【0027】
図18は、導電ビア1030と導体パターン1020がランド1040を介して接続された状態を説明する模式図である。
【0028】
つまり、図18(b)の平面図に示すように、導電ビア1030と接続するランド1040により、導体パターン1020をランド1040を避けて配置しなければならず、微細なピッチで導体パターン1020を形成することができないという課題があった。
【0029】
また、導体パターン1020を樹脂フィルムの両面にしか形成できないため、高密度の立体的な配線が制限されていた。
【0030】
また、導電ビア1030と導体パターン1020が圧接や圧着により接続されるため、接続界面への異物の混入や酸化膜の形成により、接続抵抗の増加など接続の信頼性に課題があった。それを防止するために、界面をエッチングなどにより処理すると、工程数の増加などにより生産性が低下するという問題が発生する。
【0031】
また、複数枚の樹脂フィルムを積層して一体化する場合、気泡などの残存により、剥離などが発生しやすく信頼性に課題があった。
【0032】
同様に、特許文献2に示されている配線基板は、導体パターンと電気的絶縁層を貯溜槽の切り替えにより形成するため、多層構造を有する配線基板を容易に製造できるという利点を有するものである。
【0033】
しかし、上記配線基板においても、導電ビアの形状よりも導体パターンが大きいために、微細なピッチの導体パターンを形成できないという課題があった。
【0034】
そして、導体パターンが平坦に形成された電気的絶縁層の上に形成されるため、任意の位置に導体パターンを形成できないという課題があった。
【0035】
さらに、導体パターンと導電ビアおよび電気的絶縁層を、別々の工程で層ごとに形成するため、生産性が低下するとともに、導体パターンと導電ビアとの層間での接続の信頼性に課題があった。
【0036】
また、特許文献3によれば、立体的な絶縁性の構造物を一括に作製することはできるが、電気的に接続された立体的な配線電極に関する記載は何ら開示されていない。
【0037】
また、特許文献4に示されている回路部品は、立体構造物の表面の所定の位置に電気回路パターンを形成するものである。
【0038】
そのため、立体的な構造を有する電気回路パターンの形成は困難であった。さらに、電気回路パターンはエッチングにより形成するため、立体構造物の段差での微細な形成が困難で、生産性が低いという課題があった。
【0039】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、微細なピッチを有する立体的な配線を一括に生産性よく形成できる立体配線の製造方法およびその方法により作製した立体配線基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上述したような目的を達成するために、本発明の立体配線の製造方法は、複数段の第1の配線電極群と、第1の配線電極群の間を少なくとも高さ方向に接続する第2の配線電極とを、光造形法を用いて形成する立体配線の製造方法であって、マスクに形成した所定のパターンで所定の厚みに一括で露光し、順次高さ方向に第1の配線電極群と第2の配線電極を形成する方法を含む。
【0041】
さらに、第1の配線電極群と第2の配線電極を埋設する絶縁層をさらに形成する方法を含んでいてもよい。
【0042】
これら方法により、立体的な配線電極群を生産性よく作製することができる。また、立体的な配線電極群を形成後に、それらを埋設する絶縁層を設けることにより、層ごとに形成される多層基板における層の概念をなくし、任意の位置に配線電極群を作製することができる。また、絶縁層により、立体的な配線電極群の信頼性を向上することができる。
【0043】
さらに、マスクは、パターンを作成する液晶パネルであってもよい。
【0044】
この方法により、1枚のマスクで任意の形状や任意の方向に立体的な配線電極群を、短時間で容易に連続して形成することができる。
【0045】
さらに、第1の配線電極群と第2の配線電極が、導電フィラーを含む光硬化性樹脂で形成されていてもよい。
【0046】
この方法により、光硬化と同時に電気的に接続された立体的な配線電極群を形成することができる。
【0047】
さらに、第1の配線電極群と第2の配線電極が、光硬化性樹脂とその外表面に形成された金属層からなっていてもよい。
【0048】
この方法により、配線抵抗の低い、高周波伝送特性に優れた立体的な配線電極群を一括で、生産性よく形成できる。
【0049】
さらに、光硬化性樹脂が、可視光で硬化する樹脂であってもよい。
【0050】
この方法により、液晶パネルの液晶材料の特性を低下させずに立体的な配線電極群を形成できる。
【0051】
また、本発明の立体配線基板は、立体配線の製造方法により作製された構成を有する。
【0052】
これにより、設計自由度に優れた立体配線基板を生産性よく実現できる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の立体配線の製造方法によれば、高密度実装を実現する微細なピッチの立体的な配線電極群を一括で形成できるため生産性の向上に優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0055】
(第1の実施の形態)
以下では、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を、立体配線基板に適用した例で説明する。
【0056】
図1(a)は本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法により作製した立体配線基板を模式的に示す部分平面図で、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図で、同図(c)は同図(a)のB−B線断面図である。
【0057】
図1に示すように、立体配線基板10は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などからなる絶縁性基板20の少なくとも一方の面に、例えば銀粒子などの導電フィラーを含む光硬化性樹脂により立体的に形成された配線電極群が絶縁層50に埋設された構成を有している。
【0058】
ここでは、説明をわかりやすくするために、図1(a)の配線電極群で帯状に示されているものを第1の配線電極群30とし、円状に示されているものを第2の配線電極40とする。そして、第2の配線電極40は、従来の配線基板での導電ビアと同様の作用を有するもので、複数段に形成された第1の配線電極群30を、高さ(厚み)方向に接続するものである。また、第2の配線電極40の形状は、円状だけでなく、例えば多角形や楕円など任意に設計できることはいうまでもない。
【0059】
また、本発明の第1の実施の形態の立体配線の製造方法により形成された立体配線基板10においては、第1の配線電極群30は、立体配線基板10の高さ方向に設けられた、最下段に相当する1段目の第1の配線電極32、2段目の第1の配線電極34と最上段に相当する3段目の第1の配線電極36の、例えば3段に構成した例で示している。
【0060】
以下に、図2と図3を用いて、立体配線基板10の製造方法を例に、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法について説明する。
【0061】
図2は、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を用いた立体配線基板の製造方法を説明する断面図である。また、図3は、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を説明する断面図である。
【0062】
まず、図2(a)に示すように、例えば20μm〜1000μmの厚みのPETフィルム、ポリイミドフィルムやガラスエポキシ基板、セラミック基板やガラス基板などの絶縁性基板20を準備する。
【0063】
つぎに、図2(b)に示すように、絶縁性基板20の上に、光造形法を用いて、順次1段目の第1の配線電極32、第2の配線電極40、2段目の第1の配線電極34、第2の配線電極40、3段目の第1の配線電極36を形成する。
【0064】
ここで、図3を用いて、第1の配線電極群30と第2の配線電極40からなる立体的な配線電極群の製造方法について詳細に説明する。
【0065】
まず、図3(a)に示すように、例えば銀粒子などの導電フィラーを含むウレタン系の光硬化性樹脂(以下では、「導電性光硬化樹脂」と記す)100で満たされた容器110の中に、少なくともZ方向に移動可能なテーブル120の上に設置した絶縁性基板20を浸漬する。
【0066】
そして、絶縁性基板20を被覆する導電性光硬化樹脂100の上に、例えば少なくとも紫外光や可視光は遮断する金属などで構成された所定のパターンの開口部140を有するマスク150を配置する。そして、マスク150の開口部140を通して、例えば光照射装置(図示せず)から出射される照射光130を、絶縁性基板20の上の導電性光硬化樹脂100に照射する。これにより、例えば1段目の第1の配線電極32のパターン形状の開口部140を有するマスク150を介して、絶縁性基板20に1段目の第1の配線電極32が一括で、所定の厚みに形成される。なお、所定の厚みとは、例えば配線パターンの場合、1μm〜100μmであり、その厚みは、照射光130の強度や照射時間により、任意に調節できる。このとき、マスク150の開口部140により発生する回折光の影響を除くことが好ましい。これにより、急峻な断面形状のパターンを形成できる。
【0067】
ここで、光照射装置として、アルゴンレーザ、He−Cdレーザ、YAGレーザ、ヘリウムネオンレーザや半導体レーザまたは高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプや蛍光ランプなどを用いることができる。
【0068】
つぎに、図3(b)および図3(c)に示すように、順次テーブル120をZ方向に移動させ、第1の配線電極群30および第2の配線電極40に対応した所定のパターンの開口部140を有するマスク150を、順次交換しながら、導電性光硬化樹脂100を硬化させ、第1の配線電極群30および第2の配線電極40を形成する。
【0069】
これにより、図2(b)に示すような立体的な配線電極群が導電性光硬化樹脂100の中に形成される。
【0070】
ここで、テーブル120は、以下で述べるように、マスク150の交換に対応させて移動させる。そのとき、例えば第1の配線電極群30の各段の厚みや第2の配線電極40の高さ(厚さ)に応じ、照射光130の強度、照射時間および導電性光硬化樹脂100の導電フィラーの形状や大きさを考慮して制御装置160により、テーブル120の移動量などが制御される。
【0071】
以下に、マスクの開口部の形状とそのマスクの開口部の形状が絶縁性基板上に形成される立体配線の製造方法について、図4および図5を用いて、さらに詳細に説明する。
【0072】
図4は、立体配線基板の上に第1の配線電極群および第2の配線電極を形成する各処理段階のマスクの一例を示す平面図である。そして、図5の左側の図は図4の各マスクに対応して絶縁性基板上に形成される配線電極群を示す平面図で、図5の右側の図は、図5の左側の図のA−A線断面図である。なお、図5の右側の図は、導電性光硬化樹脂の硬化後の所定のパターンのみを示しているが、実際の工程においては、その周囲に未硬化の導電性光硬化樹脂が存在している。
【0073】
まず、図4(a)に示すように、1段目の第1の配線電極形状の開口部141を備えたマスク150に照射光を照射して、導電性光硬化樹脂を硬化させる。これにより、図5(a)に示すような、絶縁性基板20の上に、1段目の第1の配線電極32が形成される。このとき、絶縁性基板20は、1段目の第1の配線電極32の厚み、例えば20μm程度、導電性光硬化樹脂中に沈んだ状態に保持され、光造形が行われる。
【0074】
つぎに、図4(b)に示すように、1段目の第1の配線電極と2段目の第1の配線電極間を接続する第2の配線電極形状の開口部142を備えたマスク150に照射光を照射して、導電性光硬化樹脂を硬化させる。これにより、図5(b)に示すような、1段目の第1の配線電極32の上に第2の配線電極40が形成される。このとき、絶縁性基板20は、さらに第2の配線電極40の厚み、例えば50μm程度、導電性光硬化樹脂中に沈んだ状態に保持され、光造形が行われる。
【0075】
つぎに、図4(c)に示すように、第2の配線電極と接続する2段目の第1の配線電極形状の開口部143を備えたマスク150に照射光を照射して、導電性光硬化樹脂を硬化させる。これにより、図5(c)に示すように、第2の配線電極40の上に2段目の第1の配線電極34が形成される。このとき、絶縁性基板20は、さらに2段目の第1の配線電極34の厚み、例えば20μm程度、導電性光硬化樹脂中に沈んだ状態に保持され、光造形が行われる。
【0076】
つぎに、図4(d)に示すように、2段目の第1の配線電極と3段目の第1の配線電極間を接続する第2の配線電極形状の開口部144を備えたマスク150に照射光を照射して、導電性光硬化樹脂を硬化させる。これにより、図5(d)に示すような、2段目の第1の配線電極34の上に第2の配線電極40が形成される。このとき、絶縁性基板20は、さらに第2の配線電極40の厚み、例えば75μm程度、導電性光硬化樹脂中に沈んだ状態に保持され、光造形が行われる。
【0077】
つぎに、図4(e)に示すように、第2の配線電極と接続する3段目の第1の配線電極形状の開口部145を備えたマスク150に照射光を照射して、導電性光硬化樹脂を硬化させる。これにより、図5(e)に示すように、第2の配線電極40の上に3段目の第1の配線電極36が形成される。このとき、絶縁性基板20は、さらに3段目の第1の配線電極36の厚み、例えば25μm程度、導電性光硬化樹脂中に沈んだ状態に保持され、光造形が行われる。
【0078】
上記で説明したように、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法により、少なくとも第1の配線電極群と第2の配線電極の接続部は、同一形状で連続して一体に、さらに平面方向において一括して形成することができる。
【0079】
上述した立体配線の製造方法により、図2(b)に示す立体的な配線電極群が、未硬化の導電性光硬化樹脂100の中に形成される。
【0080】
つぎに、図2(c)に示すように、照射光130が照射されていない未硬化の導電性光硬化樹脂100を、例えば溶剤への浸漬、エアーブローまたはスピンコーターを用いて取り除くことにより、第1の配線電極群30と第2の配線電極40からなる立体的な配線電極群が形成される。
【0081】
つぎに、図2(d)に示すように、例えばアクリル、ウレタンやエポキシなどの液状樹脂で満たされた容器(図示せず)に、図2(c)に示す第1の配線電極群30や第2の配線電極40からなる配線電極群を浸漬する。そして、例えば紫外線で硬化させることにより、絶縁層50を有する立体配線基板10が形成される。
【0082】
なお、絶縁層50は、PET樹脂を、例えば毛細管現象を利用して、配線電極群の周囲に注入して形成することもできる。
【0083】
上記で説明したように、本発明の第1の実施の形態の立体配線の製造方法によれば、第1の配線電極群と第2の配線電極から構成される立体的な配線電極群を一括に形成できるため、生産性を大幅に向上させて、例えば立体配線基板などを容易に作製することができる。
【0084】
また、マスクの交換により、任意の位置に配置して第1の配線電極群や第2の配線電極を形成できる。その結果、第1の配線電極群や第2の配線電極の形成位置が制限されない、設計自由度の高い製造方法を実現できる。
【0085】
また、マスクの交換だけで第1の配線電極群と第2の配線電極とを連続して形成できるため、第1の配線電極群と第2の配線電極との界面が形成されない。そのため、界面での接続抵抗の増加がなく、ばらつきの小さい接続の信頼性に優れた立体配線の製造方法を実現できる。
【0086】
また、図6を用いて説明するように、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を用いて形成された第1の配線電極群と第2の配線電極からなる配線電極群は、以下に示す特徴を有する。
【0087】
図6(a)は、第1の配線電極群と第2の配線電極の接続の状態を示す部分斜視図で、同図(b)は第1の配線電極群と第2の配線電極との配置関係を説明する部分平面図である。
【0088】
すなわち、図6(a)に示すように、1段目の第1の配線電極32と2段目の第1の配線電極34は、第2の配線電極40を介して、少なくともその接続部45は、同一形状で連続的に、かつ一体的に形成される。そのため、図6(b)に示すように、従来必要であったランドを設ける必要がない。その結果、第1の配線電極群と第2の配線電極とを連続して形成できるため、位置ずれなどを考慮したランドを形成する必要がなく、微細なピッチで第1の配線電極群や第2の配線電極を形成できる。
【0089】
なお、本発明の第1の実施の形態では、マスクを交換して所定の配線電極群を立体的に形成する例で説明したが、これに限られない。例えば、所定のパターンをCADデータなどに基づいて作成できる、例えばマトリックス駆動型の液晶パネルをマスクとして用いることもできる。このとき、液晶パネルの液晶材料の特性の低下を防止するために、液晶パネルを照射する照射光は、例えばアルゴンレーザ(波長488nm)やヘリウムネオンレーザ(波長632.8nm)などの可視光であることが好ましい。その中でも、微細な形状を形成する場合には、波長の短いものがさらに好ましい。
【0090】
これにより、マスクの交換工程を省略できるため、さらに短時間での立体配線の製造方法を実現できる。
【0091】
また、液晶パネルは、電気信号により任意のパターンを連続的に作成できるため、例えば図7に示すように、任意の傾きや断面形状の異なる第1の配線電極170、175や第2の配線電極42を自由に形成できる。これにより、さらに設計自由度の高い、汎用性に優れた立体配線の製造方法を実現できる。
【0092】
以下に、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を実現する光造形装置について、図8を用いて説明する。
【0093】
図8は、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を実現する光造形装置200の概略図である。
【0094】
図8に示すように、光造形装置200は、例えば光照射装置202、コリメータ部204、偏光子206、208、パターン作成装置210、レンズ212、ミラー214、対物レンズ216、導電性光硬化樹脂を充填した容器218、対象物を移動させるテーブル220とそれを制御する制御装置222などから構成される。
【0095】
なお、光照射装置202は、可視光や紫外光などを発生するレーザやランプなどで構成される。
【0096】
また、パターン作成装置210は、金属製の交換可能なマスクや液晶パネルで構成される。そして、液晶パネルの場合には、例えばCADデータなどの所定の2次元のパターン情報が、例えばPCなどの制御部224を介して、液晶パネル211に表示される。
【0097】
以下では、パターン作成装置210として、液晶パネル211を例に、その動作について説明する。
【0098】
まず、光照射装置202から出射した、例えばレーザ光203は、コリメータ部204により、液晶パネル211の全面に照射できるようにレーザ光203のビーム径が広げられる。
【0099】
そして、液晶パネル211の前に設けられた偏光子206により、例えばレーザ光203の直線偏光成分の光をカットして、パターンのコントラストを向上させる。
【0100】
さらに、液晶パネル211は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)のマトリックス駆動により、制御部224から出力される所定のパターンを表示する。
【0101】
また、液晶パネル211の後に設けられた偏光子208により、液晶パネル211に表示されたパターンが光の濃淡に変換される。
【0102】
そして、偏光子208を通過したレーザ光203を、レンズ212、ミラー214と対物レンズ216などで構成されるパターンを任意の大きさに変換する光学系を介して、導電性光硬化樹脂100に結像して、所定のパターンで露光する。
【0103】
さらに、制御装置222により、順次テーブル220を、例えばZ方向に移動させて、立体配線が形成される。
【0104】
なお、パターン作成装置210は、複数のマスクにより構成されている場合には、テーブル220の動作に対応させて、マスクを交換する機構を備えることはいうまでもない。
【0105】
また、上記では、レーザ光203を容器218の上面から照射する例で説明したが、これに限られない。例えば、図9の光造形装置250に示すように、容器218の底面をレーザ光203が透過する、例えば石英などで光透過窓226を形成し、テーブル220に設置された絶縁性基板20を引き上げながら、3次元の立体配線を形成してもよい。この場合、導電性光硬化樹脂100が、容器218の底面と絶縁性基板20で規制されるため平坦性よく供給される。そのため、導電性光硬化樹脂100の粘性を利用して平坦化させた後、テーブル220を引き下げて立体配線を形成する場合と比較して、短時間での形成が可能となる。
【0106】
また、上記では、絶縁層で配線電極群を埋設した例で説明したが、これに限られない。例えば、配線電極群が、その立体配線構造を保つために必要な機械的な強度を有する場合には、特に、絶縁層を設けなくてもよい。これにより、絶縁層などの誘電体層がないため、高周波特性がさらに向上した立体配線を有する立体配線基板が得られる。
【0107】
さらに、絶縁層を形成した場合には、絶縁性基板を、例えば研磨法などにより除去してもよい。これにより、さらに薄型の立体配線基板を実現できる。
【0108】
以下に、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を適用した別の例について、図10を用いて説明する。
【0109】
図10は、本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を適用した別の例を説明する図である。
【0110】
すなわち、ウエハ300上に形成された半導体チップ310の電極端子320に、立体配線を形成して再配線する、いわゆるウエハ・レベル・チップ・サイズ・パッケージ(WL−CSP)に適用したものである。
【0111】
図10(a)は、例えばシリコンなどのウエハ300に形成された半導体チップ310を示す平面図で、同図(b)から同図(d)は、同図(a)のウエハ300に立体配線を形成する工程を説明する同図(a)のA−A線断面図である。なお、図10(b)から図10(d)は、個別の半導体チップ310で示すが、通常はウエハ300の状態で形成されるものである。
【0112】
まず、図10(a)に示すように、半導体チップ310が形成されたウエハ300を準備する。
【0113】
つぎに、図10(b)に示すように、上記で説明した光造形法により、半導体チップ310の、例えば40μmピッチで形成された電極端子320に、第2の配線電極340と第1の配線電極350からなる配線電極群330を形成する。これにより、半導体チップ310に形成された微小な電極端子320を、立体配線により、例えば半導体チップ310の全面に拡大して、他の回路基板などにフリップチップ実装が可能な、例えば120μmピッチで形成された電極端子355の配置に再配線される。
【0114】
つぎに、図10(c)に示すように、立体配線された配線電極群330の周囲に、例えば封止樹脂などで絶縁層360を形成し、配線電極群330を埋設する。このとき、少なくとも最上段の配線電極群330は露出するように埋設することが好ましいが、困難な場合には、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)などの研磨処理により、配線電極群330を露出させてもよい。これにより、確実に配線電極群330を露出させ、信頼性の高い接続が可能となる。
【0115】
つぎに、図10(d)に示すように、露出させた配線電極群330の電極端子355に、例えばハンダボールなどでバンプ370を形成する。
【0116】
そして、バンプ370が形成された半導体チップ310を、例えばダイシング法などで個片に分離することにより、信頼性の高いWL−CSPを容易に得ることができる。
【0117】
なお、上記では、バンプ370をハンダボールなどで別の工程で形成する例で説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、上記光造形法を用いて、立体的な配線電極群と、一体に一括でバンプを形成してもよい。この場合、少なくとも絶縁層360でバンプが埋設されないように形成することが重要である。
【0118】
また、上記では、半導体チップ310に直接、再配線用の配線電極群を形成する例で説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、再配線用の配線電極群を有する、例えばインターポーザなどとして作製してもよい。
【0119】
以下に、本発明の第1の実施の形態に用いられる導電性光硬化樹脂100について、詳細に説明する。
【0120】
すなわち、導電性光硬化樹脂100は、光硬化性モノマーおよび光重合開始剤を含む光硬化性樹脂と、導電フィラーとを少なくとも含有する。
【0121】
ここで、光硬化性モノマーは、複数の光重合性基を有する多官能性モノマーと光重合性基を1つだけ有する単官能性モノマーの両方を含むことが好ましい。
【0122】
そして、複数の光重合性基を有する多官能性モノマーとしては、例えば1分子中に、炭素−炭素二重結合重結合のような重合可能な官能基を2つ以上有する化合物が用いられる。多官能性モノマーに含まれる重合可能な官能基の数は、3個〜10個であることが好ましいが、これらの範囲に限定されない。なお、重合可能な官能基の数が3個より少ない場合、硬化性が低下する傾向がある。その官能基の数が10個より多くなると、分子サイズが大きくなり、粘度が大きくなる傾向がある。
【0123】
複数の光重合性基を有する多官能性モノマーの具体的な例としては、例えばアリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレートが挙げられる。また、上記化合物に含まれるアクリル基の一部または全てを、例えばメタクリル基に置換した化合物を用いることもできる。
【0124】
光重合性基を1つだけ有する単官能性モノマーは、かぶり現象を防止するために、導電性光硬化樹脂に添加される。単官能性モノマーを含有しない場合には、光硬化が進みやすくなるため、露光部分だけでなく、非露光部分まで光硬化が進み、パターンの境界がぼける、いわゆる、かぶり現象が発生しやすくなる。
【0125】
また、単官能性モノマーは比較的低粘度であるため、導電性光硬化樹脂の粘度を低くするために添加してもよい。
【0126】
光重合性基を1つだけ有する単官能性モノマーとしては、例えばベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレートが挙げられる。また、上記化合物に含まれるアクリル基を、例えば、メタクリル基に置換した化合物を、単官能性モノマーとして用いることもできる。
【0127】
また、光重合開始剤としては、市販の光開始剤を好適に使用できる。光重合開始剤としては、例えば光還元性の色素と還元剤との組み合わせが用いられる。なお、光重合開始剤はこれらに限定されるものではない。
【0128】
ここで、光還元性の色素としては、例えばベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノアセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシープロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイル、エオシン、メチレンブルーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
さらに、還元剤としては、例えばアスコルビン酸、トリエタノールアミンが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
また、導電フィラーとしては、導電性を有する金属微粒子であれば、限定されることなく用いることができる。例えば、金、銀、白金、ニッケル、銅、パラジウム、モリブデン、タングステンなどの微粒子が挙げられる。これらの金属微粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記元素を含む合金からなる合金粉を導電フィラーとして使用することもできる。
【0131】
なお、低温による焼成で低抵抗の配線電極群を得るためには、比較的融点が低く、比抵抗値の低い金属材料を導電フィラーとして用いることが好適である。このような金属材料としては、例えば、金、銀および銅が好ましい。なお、金は非常に高価であること、銅は酸化しやすく、空気中の焼成ができないことなどから、銀が最も好適である。
【0132】
そして、導電フィラーの形状は、塊状、鱗片状、微結晶状、球状、粒状、フレーク状などの種々の形状であってもよいし、不定形であってもよい。その中でも、導電フィラーの形状は、球状または粒状であることが好ましい。露光時の光透過性がよく、露光効率がよいからである。
【0133】
さらに、導電フィラーの平均粒子径は、3μm未満であることが好ましく、1μm未満であることがさらに好ましい。導電フィラーの平均粒子径が3μm未満であることにより、150℃〜350℃程度の低温での焼結が可能となるため、焼結後の比抵抗値が小さく、電気伝導性に優れた配線電極群が得られる。そして、このような微粒子を使用することにより、解像度の高い導電性光硬化樹脂が得られる。また、導電フィラーの平均粒子径が1μm未満であることにより、さらに、低温で焼結を行うことができるだけでなく、より微細な配線電極群を形成することができる。さらに、導電フィラーの平均粒子径が3μm以上である場合には、導電性光硬化樹脂の表面粗さが大きくなり、寸法精度が低下する。
【0134】
また、基板の移動時に、導電性光硬化樹脂を短時間で供給するために、導電性光硬化樹脂の粘度は、10Pa・s以下であることが好ましく、1Pa・s以下であることがさらに好ましい。特に、導電性光硬化樹脂の粘度が1Pa・s以下である場合には、基板面への導電性光硬化樹脂の供給時間をさらに短縮できるため、導電性光硬化樹脂の厚みをより薄くすることができ、配線電極群の解像度を向上させることができる。さらには、供給時間の短縮により、生産性を向上させることもできる。一方で、導電性光硬化樹脂の粘度が10Pa・sよりも高い場合には、所定厚みの配線電極群を形成するために多くの時間を要したり、供給過程で導電性光硬化樹脂中に空気が入ったりすることがある。
【0135】
ここで、上記粘度は、例えば温度25℃で、コーンプレート型粘度計を用いて測定した値で示したものである。
【0136】
また、導電性光硬化樹脂に含まれる光硬化性樹脂について、多官能性モノマー、単官能性モノマーおよび光重合開始剤の適正な配合量は、導電フィラー100重量部あたり、多官能性モノマーは5重量部〜30重量部、単官能性モノマーは0.5重量部〜10重量部、光重合開始剤は0.1重量部〜5重量部であることが望ましい。そして、各光硬化性樹脂の量が上記範囲を外れた場合、所望の導電性が得られず、さらに、密着性、配線電極群の形成の点で問題を生じる。
【0137】
なお、導電性光硬化樹脂は、上記導電フィラーおよび光硬化性樹脂の他に、例えば、分散剤および粘度調節剤を含んでいてもよいものである。
【0138】
(第2の実施の形態)
以下では、本発明の第2の実施の形態における立体配線の製造方法を、立体配線基板に適用した例で説明する。
【0139】
図11(a)は本発明の第2の実施の形態における立体配線の製造方法により作製した立体配線基板を模式的に示す部分平面図で、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図で、同図(c)は同図(a)のB−B線断面図である。
【0140】
図11に示すように、立体配線基板400は、例えばウレタン樹脂などの光硬化性樹脂により立体的に形成された配線樹脂群の外表面に金属層410を形成して構成された配線電極群が絶縁層450に埋設された構成を有している。ここで、金属層410としては、例えば金、銀や銅などが、例えば無電解メッキ法などを用いて形成されている。
【0141】
すなわち、第2の実施の形態は、配線樹脂群の外表面に金属層410を形成して配線電極群とした点で、第1の実施の形態とは異なるものであり、他の構成は同様である。
【0142】
ここでは、説明をわかりやすくするために、図11(a)の配線電極群で帯状に示されているものを第1の配線電極群430とし、円状に示されているものを第2の配線電極440とする。そして、第2の配線電極440は、従来の配線基板での導電ビアと同様の作用を有するもので、複数段に形成された第1の配線電極群430を、高さ(厚み)方向に接続するものである。
【0143】
さらに、本発明の第2の実施の形態においては、第1の配線電極群430は、立体配線基板400の高さ方向に設けられた最下段に相当する1段目の第1の配線電極432、2段目の第1の配線電極434と最上段に相当する3段目の第1の配線電極436の、例えば3段で構成された例で示している。
【0144】
以下に、図12を用いて、本発明の第2の実施の形態における立体配線の製造方法を用いて作製した立体配線基板を例に説明する。なお、図11と同じ構成要素には同じ符号を付して説明する。
【0145】
図12は、本発明の第2の実施の形態における立体配線の製造方法を用いて作製した立体配線基板の製造方法を説明する断面図である。
【0146】
まず、図12(a)に示すように、例えば20μm〜1000μmの厚みのPETフィルム、ポリイミドフィルムやガラスエポキシ基板、セラミック基板またはガラス基板などの絶縁性基板420を準備する。
【0147】
つぎに、図12(b)に示すように、絶縁性基板420の上に、光造形法を用いて、順次1段目の第1の配線樹脂431、2段目の第1の配線樹脂433と3段目の第1の配線樹脂435とからなる第1の配線樹脂群429と、それらの段間を高さ方向に接続する第2の配線樹脂439とを形成する。このとき、第1の配線樹脂群429と第2の配線樹脂439との接続部445は、少なくとも同一形状で連続に一体で形成される。
【0148】
なお、第1の配線樹脂群と第2の配線樹脂の製造方法は、図2を用いて説明した第1の実施の形態の第1の配線電極群と同様であるが、導電フィラーを含有しない光硬化性樹脂で形成する点で異なるものである。
【0149】
そこで、図13を用いて、第1の配線樹脂群429と第2の配線樹脂439の立体配線の製造方法について簡単に説明する。
【0150】
まず、図13(a)に示すように、例えばウレタン系の光硬化性樹脂500で満たされた容器510の中に、少なくともZ方向に移動可能なテーブル520の上に設置した絶縁性基板420を浸漬する。
【0151】
そして、絶縁性基板420を被覆する光硬化性樹脂500の上に、例えば少なくとも紫外光や可視光は遮断する金属などで構成された所定のパターンの開口部540を有するマスク550を配置する。そして、マスク550の開口部540を通して、例えば光照射装置(図示せず)から出射される照射光530を、絶縁性基板420の上の光硬化性樹脂500に照射する。それにより、例えば1段目の第1の配線樹脂431のパターン形状の開口部540を有するマスク550を介して、絶縁性基板420に1段目の第1の配線樹脂431が一括で、所定の厚みに形成される。なお、所定の厚みとは、例えば配線パターンの場合、1μm〜100μmであり、その厚みは、照射光530の強度や照射時間により、任意に調節できる。このとき、マスク550の開口部540により発生する回折光の影響を除くことが好ましい。これにより、急峻な断面形状のパターンを形成できる。
【0152】
なお、光照射装置や光硬化性樹脂500は、第1の実施の形態と同様のものを用いることができる。
【0153】
つぎに、図13(b)および図13(c)に示すように、順次テーブル520をZ方向に移動させ、第1の配線樹脂431、433、435および第2の配線樹脂439に対応した所定のパターンの開口部540を有するマスク550を、順次交換しながら、光硬化性樹脂500を硬化させ、第1の配線樹脂群429および第2の配線樹脂439を形成する。
【0154】
これにより、図12(b)に示すような立体的な配線樹脂群が光硬化性樹脂500の中に形成される。
【0155】
ここで、テーブル520は、以下で述べるように、マスク550の交換に対応させて移動させる。そして、例えば第1の配線樹脂群429の各段の厚みや第2の配線樹脂439の高さ(厚さ)に応じ、照射光530の強度、照射時間および光硬化性樹脂500の特性などを考慮して制御装置560により、テーブル520の移動量などが制御される。
【0156】
そして、例えば第1の実施の形態で、図4および図5を用いて説明したように、マスクの開口部の形状とそのマスクの開口部の形状が絶縁性基板上に形成される立体的な配線樹脂群が形成される。
【0157】
ここで、上記では、マスクの交換により、配線電極群を形成する例で説明したが、これに限られない。例えば、第1の実施の形態で、図8および図9を用いて説明したように、液晶パネルをマスクとして用いてもよいことはいうまでもない。
【0158】
なお、配線樹脂群の製造方法は、第1の配線電極群と同様であるので説明は省略するが、異なる点は、導電フィラーの含有されていない光硬化性樹脂で形成されていることだけである。
【0159】
つぎに、図12(c)に示すように、照射光530が照射されていない未硬化の光硬化性樹脂500を、例えば溶剤への浸漬、エアーブローやスピンコーターを用いて取り除くことにより、第1の配線樹脂群429と第2の配線樹脂439からなる立体的な配線樹脂群が形成される。
【0160】
つぎに、図12(d)に示すように、少なくとも第1の配線樹脂群429および第2の配線樹脂439の外表面全体に、例えば無電解メッキ法を用いて、数μm〜10数μm程度の膜厚を有する金、ニッケル、銅や銀などの単層膜や金/ニッケル/銅などの積層膜からなる金属層410を形成する。なお、金属層410の厚みは、浸漬時間やメッキ槽の温度などにより任意に調整することができる。
【0161】
以上の工程により、1段目の第1の配線樹脂431と金属層410とからなる第1の配線電極432と、2段目の第1の配線樹脂433と金属層410とからなる第1の配線電極434と、3段目の第1の配線樹脂435と金属層410とからなる第1の配線電極436とで第1の配線電極群430が形成される。同様に、第2の配線樹脂439と金属層410とで第2の配線電極440が形成される。そして、第1の配線電極群430と第2の配線電極440で立体的な配線電極群が形成される。
【0162】
ここで、第1の配線樹脂群や第2の配線樹脂の外表面を、例えばエッチングなどにより、粗面化させておくことが好ましい。また、光造形法で、第1の配線樹脂群や第2の配線樹脂を形成するときに、第1の配線樹脂群や第2の配線樹脂の表面から内部に向かって微小な孔を多数形成し、第1の配線樹脂群や第2の配線樹脂を多孔質化してもよい。これにより、金属層410として銅などのメッキ膜を形成するときの核が形成されやすく、金属層410の付着強度やメッキ形成時間の短縮化により、生産性や信頼性を向上させることができる。
【0163】
つぎに、図12(e)に示すように、例えばアクリル、ウレタンやエポキシなどの液状樹脂で満たされた容器(図示せず)に、図12(d)に示す第1の配線電極群430や第2の配線電極440からなる配線電極群は少なくとも浸漬する。そして、例えば紫外線で硬化させることにより、第1の配線電極群430や第2の配線電極440を埋設する絶縁層450が形成される。
【0164】
なお、絶縁層450は、PET樹脂を、例えば毛細管現象を利用して、配線樹脂群の周囲に注入して形成することもできる。
【0165】
さらに、図12(f)に示すように、図12(d)の処理において、金属層410が形成された絶縁性基板420を、例えば研磨法などを用いて除去することにより、立体配線基板400が作製される。
【0166】
本発明の第2の実施の形態の立体配線の製造方法によれば、金属層により電気的に接続された第1の配線電極群と第2の配線電極から構成される立体的な配線電極群を一体的に連続して形成できるため、生産効率の高い立体配線の製造方法を実現できる。
【0167】
また、第1の配線樹脂群と第2の配線樹脂とが連続して一体に形成され、その外表面に形成した金属層で電気的に接続されるため、配線抵抗の低い、高周波特性に優れた、信頼性の高い立体配線を実現できる。
【0168】
また、マスクの交換や液晶パネルにより、任意の位置に配置して、所定のパターンからなる第1の配線樹脂群や第2の配線樹脂を形成できる。その結果、第1の配線樹脂群や第2の配線樹脂の形成位置が制限されない、設計自由度の高い製造方法を実現できる。
【0169】
また、マスクの交換や液晶パネルの表示パターンの変更だけで、第1の配線電極群と第2の配線電極とを連続して形成できるため、第1の配線電極群と第2の配線電極との界面が形成されない。そのため、界面での剥離などの発生しない信頼性に優れた立体配線の製造方法を実現できる。
【0170】
さらに、第1の実施の形態と同様に、第1の配線樹脂群と第2の配線樹脂が連続して一体に形成されるため、位置ずれなどを考慮したランドを形成する必要がなく、微細なピッチでの第1の配線樹脂群や第2の配線樹脂を形成できる。
【0171】
なお、第2の実施の形態では、無電解メッキ法により金属層が形成された絶縁性基板を除去した例で説明したが、これに限られない。例えば、機械的な強度を高め、変形などに対する信頼性を高めるために、新たな絶縁性基材を接着などにより設ける工程を有してもよい。また、絶縁性基板を除去した面に露出した金属層を保護するために、例えばPETフィルムなどをラミネートして保護層を設ける工程を有してもよいことはいうまでもない。
【0172】
また、本発明の第2の実施の形態では、金属層を無電解メッキ法で形成する例で説明したが、これに限られない。例えば、無電解メッキ法で薄い金属層を形成した後に、電解メッキ法を用いて金属層をさらに形成してもよい。これにより、金属層の形成を短時間で行う立体配線の製造方法を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の立体配線の製造方法は、電子部品などの高密度実装が要望される電子装置や小型・薄型で接続できる高密度配線が要望される携帯情報機器などに用いられる立体配線基板を製造する技術分野などにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】(a)本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法により作製した立体配線基板を模式的に示す部分平面図(b)同図(a)のA−A線断面図(c)同図(a)のB−B線断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を用いた立体配線基板の製造方法を説明する断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を説明する断面図
【図4】本発明の第1の実施の形態の立体配線の製造方法において、立体配線基板の上に第1の配線電極群および第2の配線電極を形成する各処理段階のマスクの一例を示す平面図
【図5】図4の各マスクに対応して絶縁性基板上に形成される配線電極群を示す図
【図6】(a)本発明の第1の実施の形態における立体配線基板の第1の配線電極と第2の配線電極の接続の状態を示す部分斜視図(b)本発明の第1の実施の形態における立体配線基板の第1の配線電極群と第2の配線電極との関係を説明する部分平面図
【図7】本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法により形成した第1の配線電極群と第2の配線電極の形状の別の例を説明する断面図
【図8】本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を実現する光造形装置の概略図
【図9】本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法の別の例を説明する光造形装置の概略図
【図10】本発明の第1の実施の形態における立体配線の製造方法を適用した別の例を説明する図
【図11】(a)本発明の第2の実施の形態における立体配線の製造方法により作製した立体配線基板を模式的に示す部分平面図(b)同図(a)のA−A線断面図(c)同図(a)のB−B線断面図
【図12】本発明の第2の実施の形態における立体配線の製造方法を用いて作製した立体配線基板の製造方法を説明する断面図
【図13】本発明の第2の実施の形態における立体配線の製造方法を説明する断面図
【図14】従来の4層に積層された多層構造を有するプリント基板の要部構造およびその製造方法を説明する部分斜視図
【図15】従来の配線基板の製造装置を模式的に示す断面図
【図16】図15の製造装置を用いた配線基板の製造方法を説明する断面図
【図17】従来の立体構造を有する回路部品を説明する斜視図
【図18】従来の配線基板の導電ビアと導体パターンがランドを介して接続された状態を説明する模式図
【符号の説明】
【0175】
10,400 立体配線基板
20,420 絶縁性基板
30,430 第1の配線電極群
32,34,36,170,175,350,432,434,436 第1の配線電極
40,42,340,440 第2の配線電極
45,445 接続部
50,360,450 絶縁層
100 導電性光硬化樹脂
110,218,510 容器
120,220,520 テーブル
130,530 照射光
140,141,142,143,144,145,540 開口部
150,550 マスク
160,222,560 制御装置
200,250 光造形装置
202 光照射装置
203 レーザ光
204 コリメータ部
206,208 偏光子
210 パターン作成装置
211 液晶パネル
212 レンズ
214 ミラー
216 対物レンズ
224 制御部
226 光透過窓
300 ウエハ
310 半導体チップ
320,355 電極端子
330 配線電極群
370 バンプ
410 金属層
429 第1の配線樹脂群
431,433,435 第1の配線樹脂
439 第2の配線樹脂
500 光硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の第1の配線電極群と、前記第1の配線電極群の間を少なくとも高さ方向に接続する第2の配線電極とを、光造形法を用いて形成する立体配線の製造方法であって、
マスクに形成した所定のパターンで所定の厚みに一括で露光し、順次高さ方向に前記第1の配線電極群と前記第2の配線電極を形成することを特徴とする立体配線の製造方法。
【請求項2】
前記第1の配線電極群と前記第2の配線電極を埋設する絶縁層をさらに形成することを特徴とする請求項1に記載の立体配線の製造方法。
【請求項3】
前記マスクは、前記パターンを作成する液晶パネルであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の立体配線の製造方法。
【請求項4】
前記第1の配線電極群と前記第2の配線電極が、導電フィラーを含む光硬化性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の立体配線の製造方法。
【請求項5】
前記第1の配線電極群と前記第2の配線電極が、光硬化性樹脂とその外表面に形成された金属層からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の立体配線の製造方法。
【請求項6】
前記光硬化性樹脂が、可視光で硬化する樹脂であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の立体配線の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の立体配線の製造方法により作製されたことを特徴とする立体配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−208028(P2007−208028A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25447(P2006−25447)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】