説明

端子付電気化学セル

【課題】耐熱性に優れ且つリフローハンダ付が可能であり、基板上に表面実装する際、占有スペースが最小限である端子付電気化学セルを提供する。
【解決手段】端子付電気化学セルは、正極と負極となる2つのセルケースを有する所定高さのボタン型或いはコイン型の電気化学セルと、該電気化学セルを基板上に表面実装するために2つのセルケースにそれぞれ溶接された2つの端子とを備える。前記2つの端子の一方は、前記2つのセルケースの一方に溶接されたA面と該A面と連続するセル高さ方向のB面と該B面と連続するハンダ付け用のC面とを有し、前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースの他方に溶接された面と該面と連続するハンダ付け用の面とを有し、前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースのうちの直径が大きい方のセルケースに外接する正方形を描いたときに該外接正方形よりも外側に突出していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン型あるいはコイン型電気化学セルに係り、回路基板上に表面実装する為の端子を有する端子付電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等のモバイル機器の小型化、薄型化、高機能化は目覚しく、それに伴い機器に搭載される部品についても高密度化、高機能化が急速に進展している。
【0003】
また、これら部品をプリント基板上に搭載する方法も表面実装化が一層進んでおり、特にハンダ付けプロセスについては、多くの電子部品を高密度に且つ一括してハンダ付可能な方法として、ハンダをあらかじめ基板上に印刷した後、ハンダの融点以上の温度に設定されたリフロー熱源によりハンダ付けを行う方法(以下リフローハンダ付という)が多く採用されている。
【0004】
一方、これらモバイル機器には様々な電池が用いられている。例えば、主電源としてアルカリ電池やリチウム電池などの1次電池、あるいはリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの各種2次電池が用いられており、これら電池は必要に応じて機器使用者が電池交換および/又は再充電している。主電源用途以外にも、メモリーバックアップやリアルタイムクロックのバックアップ用途などにも各種1次あるいは2次電池が用いられており、これら用途電池は予め機器に組み込まれている場合が殆どである。
【0005】
従来これらの電池を機器に実装する場合には、電池自身が高温に対する耐性が乏しいため、前述したようなリフローハンダ付けは不可能であり、電池以外の部品をリフローハンダ付した後手作業にてハンダ付け、あるいはホルダをリフローハンダ付後、手作業にて電池を該ホルダに装着しており、作業の効率面において問題を有していた。
【0006】
かかる状況下、リフローハンダ付けを可能にする電池の研究が鋭意なされており、例えば特開平8−17470号公報、及び特開平8−306384号公報で開示されているように、リフローハンダ付けが可能である電池が開発されている。
【0007】
一般的な電子部品の多くが方形状であるのに対し、これら電池形状は略コイン型或いはボタン型であるため、基板上に表面実装する際のデッドスペースが多いことに加え、基板に表面実装するための端子が占有するスペースが大きいという問題点を有している。特に電子機器の小サイズ化が著しい最近では上記問題の解決が強く望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは上述の実状を鑑み鋭意研究を続けた結果、本発明を完成したものである。本発明の目的は、耐熱性に優れ且つリフローハンダ付が可能であり、基板上に表面実装する際、占有スペースが最小限である端子付電気化学セルを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、正極と負極となる2つのセルケースを有する所定高さのボタン型或いはコイン型の電気化学セルと、該電気化学セルを基板上に表面実装するために2つのセルケースにそれぞれ溶接された2つの端子とを備えた端子付電気化学セルにおいて、前記2つのセルケースの一方は、前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに基板に近接しないセルケースであり、前記2つのセルケースの他方は、前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに基板に近接するケースであり、前記2つの端子の一方は、前記2つのセルケースの一方に溶接されたA面と、該A面と連続するセル高さ方向のB面と、該B面と連続するハンダ付け用のC面とを有しており、前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースの他方に溶接された面と、該面と連続するハンダ付け用の面とを有しており、前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースのうちの直径が大きい方のセルケースに外接する正方形を描いたときに該外接正方形よりも外側に突出していない、ことを特徴とする端子付電気化学セルにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る端子付電気化学セルの実施例1の図面である。上から順番に、上面図、側面図、底面図を示す。斜線部分は基板に接地するためのハンダメッキが着く面を示す。
【図2】本発明に係る端子付電気化学セルの実施例2の図面である。上から順番に、上面図、側面図、底面図を示す。斜線部分は基板に接地するためのハンダメッキが着く面を示す。
【図3】本発明に係る端子付電気化学セルの実施例3の図面である。上から順番に、上面図、側面図、底面図を示す。斜線部分は基板に接地するためのハンダメッキが着く面を示す。
【図4】従来の端子付電気化学セルを示す図である。上から順番に、上面図、側面図、底面図を示す。斜線部分は基板に接地する面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、基板に近接しないセルケースに溶接される端子1は、該セルケースフラット面に接し且つ平行であるA面、およびA面と連続し且つ同一平面状にないセル厚み方向に面するB面、およびB面とは連続しかつ同一平面状になく、前述A面と同一平行方向に面するC面の3面を有する。
【0012】
ここで、同一平行方向とは、B面を含む面で区切られる2つの空間に対して、A面とC面が同じ空間方向に存在することをいう。A面とC面は特に平行である必要はない。
【0013】
該端子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、A−B−C全てを含む断面が略コの字型形状であるものが挙げられる。このとき、断面上のA面とC面の長さの同異は特に問わない。また、B面の垂直高さは該セルの肩高さより大きいことが好ましく、更にはセル高さよりも大きいことが好ましいが、高すぎる場合、端子付セルの全高が大きくなってしまう。B面の垂直高さは、寸法上のバランス、ハンダ付け強度等を考慮した場合、基板に近接するセルケースに溶接される端子の段差+セル厚み±200μm程度であるのが好ましい。
【0014】
本発明において、基板に近接するセルケースに溶接される端子2は、セルケースに溶接される面と基板に接地される面の間に少なくともひとつの段差を有することが好ましい。端子の段差とは端子2の接地面とセルケースに溶接される面との垂直距離のことをいう。
【0015】
段差の寸法は特に限定されないが、200〜500μmとするのが以下に述べる理由より好都合である。段差が200μmより小さい場合には基板に近接しないセルケースと該セルケースに溶接される端子のC面の距離が短い為に、リフローハンダ付け作業後、基板に近接しないセルケースと該セルケースに溶接される端子のC面が直接接触することによる短絡、或いは一旦溶融したハンダを介して短絡してしまう可能性が高くなる。
【0016】
また、500μm以上の場合には端子付セルの高さ寸法が大きくなってしまうため好ましくない。該端子が段差を有さない場合は、もう一方の基板に近接しないセルケースに溶接される端子のC面が、基板と基板に近接するセルケースの間の空隙部に入ることが出来ないため、結果的に端子付セルが基板上で占める面積が大きくなってしまう。
【0017】
本発明において、端子1と端子2の位置関係は特に問わない。端子間での短絡を防止するためには、端子1と端子2が180度の角度を成す様に配置するのが好ましいが、基板のスペース形状によっては、例えば端子1と端子2が90度の角度を成す様に配置をしても構わない。この場合、端子1とコの字型の開口部は閉じていても良く、いわゆる略ロの字型を採ることも可能である。
【0018】
本発明において用いられる端子材料は、一般に用いられる金属材料であれば特に限定はされないが、各種のステンレス材、ニッケル材、ニッケル−鉄合金、銅などが好ましく用いられる。端子の厚みは特に限定されないが、通常50〜300μmの厚みである場合が溶接条件を設定しやすく好ましい。また、少なくとも端子が基板に接地する面には基板と端子付セルの充分な接着強度を持たせるためにハンダ等のメッキがなされている。
【0019】
本発明において、基板に近接しないセルケースに溶接される端子1の少なくともB面が開口部を持つ場合、端子付セルが基板に表面実装される場合の占有する面積をより小さくすることが可能にある。該開口部の垂直高さLbは、少なくとも正極セルケース及び負極セルケースの直径が大きい方のセルケースの高さに対しLb>Hであれば良いが、好ましくはセル高さHcに対し、Lb>Hcであるのが好ましい。この場合、B面の開口部とセル中心からの距離Rbはセル単体の半径R以下に出来るため、端子付セルが基板上で占める面積を小さくすることが出来る。
【0020】
また、開口部はA面および/あるいはC面に連続する開口部でも良い。この場合、さらにA面および/あるいはC面のB面側でないもう一方の端部は、それぞれ閉じていなくてもよい。C面のB面側でないもう一方の端部が閉じていない場合は、基板に接する部位の面積は減少するが、3点接地になるために強度を低下させること無くリフローハンダ付けが可能である。
【0021】
本発明における発電素子は、電気化学エネルギーを蓄え外部にエネルギーを取り出すことが可能であれば特に限定されず1次、2次の種は問わないが、リフローハンダ付け処理を考慮すると電解液が非プロトン性溶媒からなる有機電解質電池であることが好ましい。
【0022】
例えば、正極に二酸化マンガン、負極に金属リチウムを用いたリチウム一次電池や、正極にマンガン酸化物、負極にリチウムアルミ合金や珪素酸化物を用いたマンガン−リチウム合金系やマンガン−珪素酸化物系などの3V級電池、正・負極に活性炭の如き多孔質炭素材やポリアセン系有機半導体を用いた有機系キャパシタ、その他ニオブ酸化物−リチウム合金系、マンガン酸化物−チタン酸リチウム系などが挙げられる。
【0023】
本発明における発電素子の形状は特に限定されず、例えば、タブレット状に成形した正極及び負極電極を電解液を含浸したセパレータを介して対向させたものがあげられる。この場合、セパレータに接していないもう一方の電極面を缶に接着する場合が多い。
【0024】
また該発電素子は、箔やメッシュなどの集電体に成形した帯状正極及び負極電極をセパレータを介して巻回したものでもよく、帯状電極の最外周部を正極セルケースおよび/または負極セルケース内面に直接接触させて密閉するのが作業上簡便である。
【0025】
本発明で用いられる正極セルケース及び負極セルケースは、一般に電池に用いられる金属材料であれば特に限定されないが、好ましくは耐食性、耐孔食性等に優れている各種ステンレス材である。
【0026】
また、これら正極セルケース及び負極セルケースは短絡することなく発電素子を外雰囲気と遮断し、気密性、液密性を保持する為にガスケットを介してかしめ等プレスを行うのが通常である。
【0027】
ガスケット材に用いる材料としては、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂等が挙げられ、成形性を良くするために必要に応じてガラス繊維を添加して成形したものを用いても良い。
【0028】
以下、図面により本発明の実施の一例を説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
図1は正極及び負極の主成分がポリアセン系有機半導体である有機系キャパシタを発電素子に用いた直径4.8mm、高さ1.4mmコイン型セルに端子を溶接した本発明の実施例である。
【0030】
端子付セルの総高さは1.7mmであった。発電素子は例えば特願平7−137184の実施例に開示されている方法にて作製した。端子は厚みが100μmのSUS304材をプレス成形により作製したものを用いた。セルへの端子の溶接YAGレーザー溶接機により行なった。この場合、基板上においてセル本体のみが占める面積を100とした場合、端子付セルが占める面積比は110であった。
【0031】
(実施例2)
図2は実施例1と同様に発電素子としてポリアセン系有機半導体からなる有機性キャパシタを発電素子に用いた別の実施例である。この場合、基板上においてセル本体のみが占める面積を100とした場合、端子付セルが占める面積比は103%であった。
【0032】
(実施例3)
図3は実施例1と同様に発電素子としてポリアセン系有機半導体からなる有機系キャパシタを発電素子に用いた別の実施例である。端子1と端子2は90度の角度を成して配置されている。この場合、基板上においてセル本体のみが占める面積を100とした場合、端子付セルが占める面積比は106%であった。
【0033】
(比較例1)
図4は従来形状の端子を溶接した端子付セルの一例である。この場合、基板上においてセル本体のみが占める面積を100とした場合、端子付セルが占める面積比は137%であった。
【0034】
以上の結果から分かるように、比較例1に示した端子付セルにおいては、ハンダ付け強度を低下させることなく端子の占有面積を小さくすることが出来ないため、例えセルサイズを小さくしてもその効果を生かすことが出来なかった。それに対し、実施例1〜実施例3の場合、端子付セルが基板上で占める面積を小さくすることが可能となる。特に基板に近接しないセルケースに溶接される略コの字型端子の少なくともB面が開口部を有している場合、その効果は特に大きく、小型化、集積化する電気製品を含め多くの電気製品に有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1…正極セルケース、2…負極セルケース、3…端子1、4…端子2、5…ガスケット、6…端子1−A面、7…端子1−B面、8…端子1−C面、9…ハンダメッキ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極となる2つのセルケースを有する所定高さのボタン型或いはコイン型の電気化学セルと、該電気化学セルを基板上に表面実装するために2つのセルケースにそれぞれ溶接された2つの端子とを備えた端子付電気化学セルにおいて、
前記2つのセルケースの一方は、前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに基板に近接しないセルケースであり、
前記2つのセルケースの他方は、前記電気化学セルを基板上に表面実装するときに基板に近接するケースであり、
前記2つの端子の一方は、前記2つのセルケースの一方に溶接されたA面と、該A面と連続するセル高さ方向のB面と、該B面と連続するハンダ付け用のC面とを有しており、
前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースの他方に溶接された面と、該面と連続するハンダ付け用の面とを有しており、
前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースのうちの直径が大きい方のセルケースに外接する正方形を描いたときに該外接正方形よりも外側に突出していない、
ことを特徴とする端子付電気化学セル。
【請求項2】
前記2つの端子の他方は、前記2つのセルケースの他方に溶接された面と、前記ハンダ付け用の面との間に、少なくとも1つの段差を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付電気化学セル。
【請求項3】
前記2つの端子の一方における前記C面は、前記2つのセルケースのうちの直径が大きい方のセルケースよりも外側に突出する角部を有し、該角部は、前記外接正方形の2辺と略平行な2つの辺から成る略直角形状をしている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の端子付電気化学セル。
【請求項4】
前記C面の前記角部の一部分は、前記外接正方形よりも外側に突出している、
ことを特徴とする請求項3に記載の端子付電気化学セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−138373(P2012−138373A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−79631(P2012−79631)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2008−205484(P2008−205484)の分割
【原出願日】平成14年9月24日(2002.9.24)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】