説明

端子取付構造

【課題】 端子に外部からの振動や衝撃が掛かった場合であっても、端子取付板に安定した状態で強固に密接固定することができると共に、前記端子と端子取付板との間に段差が生じることなく接合面をフラットに仕上げることのできる端子取付構造を提供することである。
【解決手段】 取付面を凹設して形成される多角形状の溝部21と、この溝部21の中心に設けられる貫通孔15とを有する端子取付板13と、前記溝部21と同じ多角形状のフランジ18と、このフランジ18の下面から延び、前記貫通孔15に挿入される脚部19と、前記フランジ18の上面から延びる端子本体17とを有する端子14とを備え、前記溝部21にフランジ18を嵌め入れた後、前記脚部19を押し潰すことによって、前記端子14を端子取付板13にかしめ固定する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子取付板及びこの端子取付板にかしめ固定される端子とを備えた端子取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の端子取付板に端子をかしめて取り付ける端子取付構造は、産業用電気機器や自動車等に備わる蓄電用の二次電池などに多く採用されている(特許文献1)。このような二次電池は、蓄電機能を有するバッテリーパックと、このバッテリーパックの前面に取り付けられて外部機器との接続に用いられる一対以上の電極端子とを備えて構成されている。従来の自動車にあっては、鉛蓄電池からなるバッテリーに前記電極端子を一対備えているが、近年のハイブリッド自動車や電気自動車にあっては、二次電池としてリチウムイオン電池を複数搭載している。このため、リチウムイオン電池の搭載数に応じて電極端子も複数必要になってきている。
【0003】
このような車載用の二次電池は、蓄電容量が大きいことと、安定性や安全性を確保するために導電性のよい金属材料を一定の厚みや径に加工した電極端子が用いられる。また、良好な導電性を得ると同時に、振動や外部からの衝撃に耐えるため、接着剤等を用いることなく固定できるかしめ固定によって強固に組み付けられている(特許文献2)。
【0004】
前記構造による端子アッセンブリは、一般的に、バッテリーパック等の表面に取り付け可能な端子取付板と、この端子取付板に挿入固定される端子とで構成される。前記端子取付板は、金属材料を薄板状に成形し、前記端子を通す貫通孔が開設される。前記端子は、金属材料を円柱体あるいは角柱体にして成形された端子本体と、この端子本体の外周に張り出すように一体に設けられるフランジと、このフランジの下方に延びる脚部とを有して形成されることが多い。
【0005】
前記端子は、フランジの下方に延びる脚部を貫通孔に通し、フランジを端子取付板の上に載置した後、前記脚部を端子取付板の裏面側に向けてポンチ等の打付け冶具で押し潰すことによってかしめ固定することで組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−259388号公報
【特許文献2】特開平8−96649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記端子アッセンブリにあっては、端子の脚部が押し潰されて貫通孔の周囲に広がるようにして密着されているため、端子取付板から容易に抜け出ることはないが、端子取付板の表面とフランジとの間に隙間が生じると、端子本体がぐらついたり、回転してしまったりするといった問題があった。このような端子本体のぐらつきや回転が生じると、ここに接続される導線が捩れたり、導通部分の電気抵抗にバラツキが生じたりして、充電や放電といった電気的特性が低下する場合がある。
【0008】
また、端子取付板の表面に密着しているフランジの厚みによって、端子取付板の表面に段差が生じていることから、このままバッテリーパック等の表面に装着すると、隙間が生じて接合強度が弱くなるといった問題があった。このような問題を改善するために、装着面に前記フランジの厚みに相当するようなスペーサ部材を介して行う場合もあるが、部品点数が多くなることから、多数の端子が必要とされる大容量のバッテリーパックにあっては製造あるいは製品コストが多く掛かるといった問題もある。
【0009】
さらに、端子と端子取付板との位置決め箇所が規定されていないため、ポンチ等の冶具を用いてかしめ固定する際に、端子本体が回転しないように固定したり、押え付けたりしなければならないといった組立上の困難さがあった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、端子に外部からの振動や衝撃が掛かった場合であっても、端子取付板に安定した状態で強固に密接固定することができると共に、前記端子と端子取付板との間に段差が生じることなく接合面をフラットに仕上げることのできる端子取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の端子取付構造は、取付面を凹設して形成される多角形状の溝部と、この溝部の中心に設けられる貫通孔とを有する端子取付板と、前記溝部と同じ多角形状のフランジと、このフランジの下面から延び、前記貫通孔に挿入される脚部と、前記フランジの上面から延びる端子本体とを有する端子とを備え、前記溝部にフランジを嵌め入れた後、前記脚部を押し潰すことによって、前記端子を端子取付板にかしめ固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の端子取付構造によれば、前記溝部の中心に設けた貫通孔に端子の脚部を挿入して装着する際に、端子に設けられているフランジが溝部に嵌め合うことで、端子の位置決めが確実且つ容易になる。そして、このようにして嵌め込まれた端子の脚部を端子取付板の裏面側に押し潰すようにしてかしめ固定することで、端子の上面方向あるいは側面方向に対して外部からの振動や衝撃が掛かった場合であっても、かしめ固定した端子が緩んだり、ぐらついたりすることなく、より強固で安定した状態で密着固定することができる。
【0013】
また、前記端子取付板に設けた溝部に端子のフランジが段差なく係合させることで、フランジの表面が端子取付板の取付面と略面一となるため、端子取付板が取り付けられる部位における密着性が向上するといった効果が得られる。
【0014】
さらに、前記端子の脚部をフランジの上方に延びる端子本体よりも大径にして形成すると共に、その底面に円錐形状の凹部を設けることによって、この凹部を中心として押し潰した際の広がり面積が大きく且つ広がり幅が略均等となる。これによって、端子の脚部を端子取付板の裏面に安定した状態で確実に密着固定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る端子アッセンブリの組立斜視図である。
【図2】上記端子アッセンブリの端子の断面図(a)及び底面図(b)である。
【図3】上記端子アッセンブリの端子取付板の平面図(a)及び断面図(b)である。
【図4】上記端子アッセンブリの組立後の平面図(a)及び断面図(b)である。
【図5】上記端子アッセンブリのかしめ固定の工程を示す説明図である。
【図6】上記端子アッセンブリを備えたバッテリーパックの斜視図(a)及び断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る端子取付構造を具現化した端子アッセンブリの実施の形態を詳細に説明する。図1に示す端子アッセンブリ11は、例えば電気的な接点となる円柱状の端子14と、この端子14を組み付ける端子取付板13とで構成される。この端子アッセンブリ11は、図6に示すように、一例として、バッテリーパック12の前面12aに取り付けられる電極端子の一部を構成する。
【0017】
前記端子14は、図2に示すように、銅やアルミニウムなどの金属材料で成形した端子本体17と、この端子本体17の下部の外周面から外方向に張り出すフランジ18と、このフランジ18の下方に突出する円柱状の脚部19とを有して一体形成される。前記端子本体17は、外部の導線や接点と接触して導通を図るために、一定の規格に準じた高さ、例えば、10mm程度の高さh1を有して円柱状あるいは角柱状に形成される。前記フランジ18は、正円形状以外の多角形状に形成され、例えば、図2に示したように、六角形に形成される。前記脚部19は、潰しやすさと潰したときの広がりを考慮して、高さh2が約3mm程度で、前記端子本体17の径r1よりも若干広い径r2にして形成される。また、前記脚部19は、底面の中心部にポンチ等のかしめ冶具の先端をガイドすると共に、外側に潰れやすくするための円錐体形状からなる凹部20が設けられる。このように、前記脚部19の径を端子本体17よりも大径にすることで、後述する端子取付板13の溝部21に安定した状態で装着できると共に、底面を押し潰した際の広がり面積を大きくすることができるので、より強固なかしめ固定を行うことができる。また、前記脚部19の底面に円錐体形状からなる凹部20を設けることによって、ポンチ等のかしめ冶具を的確且つ容易に殴打位置に案内することができると共に、脚部19の底面を殴打した際の広がり幅を略均等にすることができる。
【0018】
前記端子取付板13は、図3に示すように、表面に前記フランジ18と同じ六角形状の溝部21と、この溝部21の中心に前記端子14の脚部19が挿入される貫通孔15が設けられる。この貫通孔15は前記脚部19と同じ径(r2)に設定される。本実施形態では、前記溝部21及びフランジ18を六角形状としたが、三角形状から五角形状であってもよい。ただし、六角以上の円形に近い多角形状にすると、端子14が回転しやすくなり、また、加工に要する工数も増えるため、六角形状以下にするのが好ましい。また、前記端子取付板13を長方形状としたが、取り付ける部位に合わせた平面形状にすることができる。なお、前記端子取付板13に開設されている取付孔16は、前記端子14とは別の外部接続用の端子等を取り付けるために設けられるものである。この取付孔16の位置や径は、端子取付板13が取り付けられる製品やその用途に応じて適宜設定される。
【0019】
前記溝部21の深さt2は、端子取付板13の厚みの略半分位に設定される。また、前記フランジ18の厚みt1を前記溝部21の深さt2に合わせて形成することで、端子取付板13にかしめ固定された端子14のフランジ18の表面と端子取付板13の表面とが段差がなく略面一となるように組み付けることが可能となる。
【0020】
図4は前記端子14を端子取付板13に挿入してかしめ固定した状態を示したものである。前記溝部21の内周面にフランジ18の外周面が密着するように嵌め込むことで、隙間なく係合させることができる。また、前記係合させた面には段差がなくフラット面となる。そして、前記貫通孔15に挿入された脚部19を押し潰すことによって、この脚部19の下部が貫通孔15の周囲に広がるようにして端子取付板13の裏面側に密着させることができる。
【0021】
次に、前記端子アッセンブリ11の組み付け工程を図5に示す。第1工程では、前記端子取付板13の溝部21にフランジ18を係合するようにして脚部19を貫通孔15に通す(図5(a))。第2工程では、殴打面22aが山型に突出した第1かしめ冶具22を用い、前記殴打面22aを脚部19の凹部20に挿入するようにして打撃を与えることで、脚部19の底面を円形に広げるようにして押し潰す(図5(b))。第3工程では、殴打面23aが平坦状の第2かしめ冶具23を用い、前記第2工程によって押し広げられた脚部19の底面全体を平坦にならすようにして端子取付板13の裏面側に打付ける(図5(c))。
【0022】
上記一連の工程によって、組み付けられた端子アッセンブリ11は、端子取付板13の溝部21に端子14のフランジ18が隙間なく密着して係合しているため、図4(a)に示したように、端子本体17の回転方向に対して大きな回転トルクNが掛かった場合であっても緩むことがない。また、図4(b)に示したように、端子本体17の上面に掛かる圧縮トルクPや側面方向に掛かるせん断トルクEに対しても十分な強度をもって耐えることができる。さらに、端子取付板13に対して直交する端子14の軸固定時における引抜トルクIに対しても十分に耐え得ることができる。このように外部からの要因による各種のトルクに対する耐性が十分確保できるため、車載用のバッテリーに組み込んだ場合であっても、走行中の振動や外部から衝撃を受けた際に、端子14が脱落したり、緩んだりすることがないので、電気系統のトラブルを生じることがない。特に、バッテリーパックがリチウムイオン電池で構成されている場合での安全性が確保できる。
【0023】
図6は前記端子アッセンブリ11を装着したバッテリーパック12の構成を示したものである。このバッテリーパック12は、上面側に電極端子を挿入するための一対の孔部が設けられている。この一対の孔部は、プラス電極部とマイナス電極部に相当し、組み付けられた端子アッセンブリ11の端子本体17を前記それぞれの孔部に挿入し、端子取付板13の上面をバッテリーパック12の前面12aに密着させて固定する。また、各端子取付板13に設けられている取付孔16には、外部接続用の端子(図示せず)がボルトやナット等を介して取り付けられる。このようにして端子アッセンブリ11が装着されたバッテリーパック12は、複数個組み合わされ、前記外部接続用の端子をケーブル等で接続することによって、ハイブリッド車や電気自動車の動力源となる蓄電池が構成される。なお、バッテリーとしてリチウムイオン二次電池を使用する場合は、正極にリチウム金属酸化物を用い、負極にグラファイトなどの炭素材が用いられるため、正極用の端子アッセンブリ11については、端子取付板13が銅材で端子14がアルミニウム材によって形成される。
【0024】
以上説明したように、本発明の端子取付構造によれば、端子取付板に設けた六角形の溝部に端子に設けた六角形のフランジを嵌め込んで係合させることで、端子を安定した状態で端子取付板に組み付けることができる。その後、前記溝部の中心に設けた貫通孔から突出する端子の脚部を押し潰すようにして端子取付板の裏面にかしめ固定することで、従来の端子取付構造と比較して端子に掛かる回転トルク、圧縮トルク、せん断トルク及び引抜トルクに対する耐性を格段に向上させることが可能となった。
【0025】
また、端子取付板に設けた溝部に端子のフランジが嵌め合って係合していることで、両者の接合部分に隙間が生じることがなく、また、接触する面積も増える。これによって、端子取付板と端子との電気抵抗が小さくなり、導電性をより向上させることができるといった電気的特性の向上効果も有している。
【0026】
なお、本実施形態では、車載用のバッテリーパックに組み込まれる電極端子を例にして本発明の端子取付構造を説明したが、車載用途以外の産業用機械のバッテリーや家庭用の小型充電器の電極端子であって、振動や衝撃を受けやすい環境で使用するのに適している。
【符号の説明】
【0027】
11 端子アッセンブリ
12 バッテリーパック
12a 前面
13 端子取付板
14 端子
15 貫通孔
16 取付孔
17 端子本体
18 フランジ
19 脚部
20 凹部
21 溝部
22 第1かしめ冶具
22a 殴打面
23 第2かしめ冶具
23a 殴打面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面を凹設して形成される多角形状の溝部と、この溝部の中心に設けられる貫通孔とを有する端子取付板と、
前記溝部と同じ多角形状のフランジと、このフランジの下面から延び、前記貫通孔に挿入される脚部と、前記フランジの上面から延びる端子本体とを有する端子とを備え、
前記溝部にフランジを嵌め入れた後、前記脚部を押し潰すことによって、前記端子を端子取付板にかしめ固定することを特徴とする端子取付構造。
【請求項2】
前記溝部及びフランジが角形状に形成されている請求項1に記載の端子取付構造。
【請求項3】
前記端子は、前記端子取付板の溝部に前記フランジを嵌め入れたときに、溝部の内周面にフランジの外周面が密着するように係合される請求項1に記載の端子取付構造。
【請求項4】
前記フランジの厚みは、溝部の深さと略同一寸法に形成されている請求項1に記載の端子取付構造。
【請求項5】
前記端子取付板にかしめ固定された端子のフランジの表面は、前記端子取付板の取付面と略面一である請求項1に記載の端子取付構造。
【請求項6】
前記端子取付板は銅材によって形成され、前記端子はアルミニウム材によって形成されている請求項1に記載の端子取付構造。
【請求項7】
前記脚部は、前記端子本体より大径であり、且つ底面に凹部が形成されている請求項1に記載の端子取付構造。
【請求項8】
前記脚部の底面に形成された凹部は円錐体形状からなる請求項7に記載の端子取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−226935(P2012−226935A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92716(P2011−92716)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(398069182)株式会社貴匠技研 (3)
【Fターム(参考)】