第1流体と第2流体との間で成分を交換する方法、第1流体から第1成分を清浄する方法、血液の処理方法、流体処理装置、第1流体と第1及び第2成分を含む第2流体との間で成分を交換する装置、第1流体と第2流体との間で成分を交換する装置、血漿から血球を分離する方法
マイクロ流体通路における直接接触によって第1及び第2流体間で成分を交換する装置、システム及び方法。流体は通路内を薄い層として流れる。流体の一方は、通路を出て行く際にフィルタを通り、そして流体の性質を変える補助処理装置を通って再循環される。再循環流体は更なる変化のために再使用される。フィルタは、再循環流体から血球を除外し、フィルタの目詰まりを阻止又は制限する。補助処理装置はメタボリック廃物及び水分を透析濾過によって除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、流体間の成分交換に関するものである。さらに特に、本発明は、マイクロ流動膜なし交換による試料流体(例えば血液)の選択的分離に関する。
【背景技術】
【0002】
血液の体外処理は種々用いられることが知られている。このような処理は、例えば病気の治療を行うのに用いられ得る。例えば、最終段階の腎臓病の治療には、血液透析はこの目的のための体外処理の最も普通に使用される形態である。血液成分の抽出は、治療のため自由ウイルス性粒子のような他の成分を除去するのに用いられ得、またうっ血性心不全の治療では、水及び電解液の非選択性コホートを除去するのに用いられ得る。体外処理の更なる使用には、病気の状態を治療する或いは研究及び/又は診断するのに有効である血液成分を抽出することが含まれる。血漿(すなわち血漿の成分除去)及び血小板のアフェレーシスは、この目的で持つとも普通に使用される処置である。本明細書では、主に血液の処理及びそれに関連した問題について記載するが、ここに記載する方法の多くは、他の流体の処理にも同様に用いられ得る。
【0003】
血液から成分を分離しょうとする多くの異なる体外血液処理技術が開発されてきた。分離されることになる成分は、プロセスの目的によって変化する。本明細書で使用したような血液又は血液流体は血液成分をもつ流体であることが理解される。代謝性生成物すなわち毒物のような成分を血液流体から抽出するのが望ましい。これらの代謝性生成物は、小さな分子、すなわち通常“ミドル分子”と呼ばれる分子量の大きな毒素であり得る。
【0004】
最も普通の方法は、選択した血液成分を流れさせる実質的な面積の人工膜を利用している。この流れは一般的には、濃度か圧力或いはそれら二つの組み合わせにおける透過膜の差によって誘導される。別の形態の血液処理では、血液を収着剤粒子に通すことによって成分を分離している。さらに別の形態の血液処理では、血液は、不混和液(例えば、フルオロカーボン液)と直接接触され、それにより、溶解した二酸化炭素を除去し、酸素を生成するという望ましい結果となる。しかし、不混和性液体は一般に抽出するのが望ましい血液成分を受入れる能力が限定されるので、不混和液を使用する血液処理技術の有効性は限定される。
【0005】
血液処理についての療法の一つの一般的な例としては、最終段階の腎臓病に伴う種及びボリューム平衡異常の緩和がある。この方法で(例えば血液透析を通して)治療した患者の総数は米国において300,000人以上であり、そして増え続けており、基本の治療費用は合併症を除いて毎年80億ドルを超えている。その上、これら患者の圧倒的多数(約90%)は透析センターで三週間の間治療される。処置は改良され続けて、1970年代に最も普通の治療の方法及び基本的構成要素、血液透析が広く確立された。代表的な血液透析装置は、数千本の浸透性中空繊維の束から成り、各中空繊維は、長さ約25cm、内径約200μmである。中空繊維は透析用溶液によって外部から灌流されている。血液透析装置は、主として、拡散モードで作動されるが、しかし水の対流流出を誘起する透過膜圧力も加えられる。一週間当たり総計で7〜9時間の三週間にわたる治療では、一週間当たり200リットルを上回る透析用溶液に対して、患者の血液を一週間当たり120リットル以上透析する。これらの数値はある程度変わり、また競合する技術が存在するが、記載した基本的なアプローチは優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の種々の形態の血液処理を用いた治療(例えば血液透析)の利点にもかかわらず、達成した寿命の延びは、治療するために療法の用いられる病気の進行や複雑さ並びに療法自体の伴う幾つかの問題点によって困難となる。透析において常に幾人かの患者は完全に社会復帰される。上述のように人工膜、収着剤、或いは不混和性流体の表面に血液が接触する結果として血液処理に問題が生じる。かかる接触はしばしば、凝固、補体系の活性化、並び血液タンパク及び血球の不可逆(回復不能)凝集に応動し得る反応を含む、処理中の血液における生化学反応を誘起する。
【0007】
公知の血液処理技術に関連した別の問題は、人工膜や収着剤との血液の接触が血液媒体インターフェースを汚すことに成り得ることにある。一般的に知られているように、血液浄化法(例えば最終段階の腎臓病に関連したもの)は健康な平衡状態を維持するようにして最も望ましく行われる。実際、処理は、疲労及び渇きのような体液の組成における急激な変化の結着を避けるために、できるだけ殆んど連続した形態でしかも限定した速度で行われるべきであることが認められてきた。しかし、人工物質との血液の接触によって生じする汚れは、かかる物質を用いた装置を有効に使用できる時間を制限する。
【0008】
人工表面に生じた血液凝固による汚れは、凝固防止剤で軽減され得るが、しかし外来患者には許容できない危険が伴う。その結果、携帯型の血液処理装置は実際的ではなくなり、患者は一般的には上述のように挿間的な透析スケジュールの形態を受け入れるように強いられる。これらの問題に対する解決は認められれば要求され、外来治療は挿間的な透析に代えることにある。
【0009】
挿間的な透析の理由は沢山ある。例えば、上記の生体非適合性、携帯型装置の不足、患者の体外での血液循環の現在の必要性、及び治療法を自分で管理できない(特に、患者の血管に穿刺する必要のため)多くの患者の感覚。従って日々の透析(例えば毎週七日、1.5〜2.0時間)又は夜間透析(例えば毎週6〜7夜、8〜10時間)は治療時間が長くなり、多くの患者にとってはこれら治療形態の一つを用いることは気が進まず、或いは用いることができない。
【0010】
治療及び分析物抽出のために血液と透析流体とを直接接触させる装置は提案されてきた。例えば、Wellmanの米国特許公開第2004/0009096号には、血液と透析液とを互いに直接接触させる装置が記載されている。別の例として、Weiglの米国特許第5,948,684号には分析物分離の応用について記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
全体的には、本発明は、マクロ流体膜なし交換装置に抽出流体を導入しそしてかかる装置から抽出流体を除去するフィルタを特徴としている。本発明の実施形態は、混和流体(例えば、抽出流体すなわち補助流体)と接触させることによって試料流体(例えば血液流体)から望ましくない物質を選択的に除去するために用いられ得る。一つの実施形態では、フィルタの微細孔は、血液流体との接触を実質的に避けるように装置に設けられる。
【0012】
混和流体で血液の核を被包すること、或いは混和流体が血液の少なくとも実質的な部分と流路の包囲境界との間に存在することを保証することによって、これら境界に血液が接触するのを阻止し、或いは少なくとも制限する。同様に、ある幾つかの実施形態では、抽出流体は、血液とフィルタとの接触を実質的に阻止する。それで、二つの流体のこの形態は、血液中の因子の望ましくない活性化を阻止し、或いは少なくとも低減し、それにより、先行技術の血液処理において問題であった生体非適合性を低減する。
【0013】
本願で考察しているマイクロ流体装置は、高さ約0.6mm未満の通路を備え、ここで“高さ”は流れの方向に対して垂直でありしかも輸送の行われる界面に対しいて垂直な寸法である。以下にさらに詳細に説明するように、高さ約75μmの通路を用いることによって利点が得られる。しかし、通路の高さは0.6mm程度に大きくできる。通路の高さを小さくすると、試料流体から補助流体への成分の拡散にかかる時間が短くなり、その結果、通路の大きな高さに比較して性能が高くなりしかも装置の寸法が小さくなる。さらに、補助流体は通常血液と混和し、そして全ての成分の拡散的及び対流的な輸送が期待される。しかし、拡散的及び対流的な輸送は、試料流体と補助流体との乱れ混合なしに行われる。補助流体は、微細孔を備えた薄いバリヤー、例えば、約1μm〜約50nmの範囲の臨界寸法をもつフィルタを介してマイクロ流体装置の通路から引き抜かれる。
【0014】
上述のように、抽出通路の高さは約75μmであり得る。従って、抽出流体の二つの層と試料流体(例えば血液流体)の単一層との高さは必然的に75μm未満である。一つの実施形態では、抽出通路は高さ約75μmであり、また各流体層は高さ約25μmである。抽出流体は抽出通路の壁に沿って抽出流体を維持するようにして抽出通路内へ導入される。流体の極端に薄い層と拡散界面に沿った膜のないこととの組合せにより、膜に基づく装置を用いて得られる輸送速度と比較して高い輸送速度となる。高い輸送速度によって、流体の接触する総面積は膜に基づく装置に比較して相対的に小さくできる。同様に、抽出領域に到達するまでの血液流体入口通路表面のような抽出通路に隣接した血液流体との接触表面も相対的に小さくできる。従って、血液流体と人工表面との接触する総量は低減される。本発明のこの特徴は、生体適合性を高めることになる。
【0015】
フィルタを介してマイクロ流体抽出通路から混和性流体(すなわち抽出流体)を引き抜くことにより、抽出流体中にある特定の成分が生成されるのを阻止する。例えば、血球は、流体がマイクロ流体抽出通路内で接触する時間中に、血液から抽出流体内へ移動し得る。幾つかの動作シナリオでは、この移動は望ましくない。以下にさらに詳細に説明するように、流体の流れの特徴は、血球が血液流体の流れの中間に集中するように制御され得る。これにより、抽出流体内へ拡散する血球の量が減少するが、しかし幾つかの血球の移動はなお生じ得る。フィルタにおける適切な微細孔は、この僅かな数の血球が抽出流体で抽出通路から出ていくのを阻止する。さらに、マイクロ流体の流れの高いせん断速度特性は、フィルタ表面にこの表面を“掃引”するのに十分なせん断力を生じさせる。抽出流体中の血球の数は比較的少なく保たれるので、この掃引作用は、フィルタの表面を血球のない状態に容易に保てるようにし、従って目詰まりを防止するのに役立つ。
【0016】
同様に、その他の血液成分は、抽出流体と共に抽出通路から出で行くのを阻止され得る。例えば、タンパクフィブリノーゲンは凝固し得、そのため、ある実施形態ではタンパクフィブリノーゲンが抽出流体と共に抽出通路から出で行くのを阻止するのが望ましい。従って、フィルタの微細孔は、例えば約50nmの微細孔サイズをもつフィルタを用いて抽出通路内にフィブリノーゲンを保持するように寸法決めされ得る。さらに、流体の流れ特性、流体界面速度、及び流体接触時間は、ある特定の血液成分の損失を防ぎしかも汚れを防ぐ上で微細孔サイズの選択を補完するように制御され得る。
【0017】
また種々の実施形態は、体外抽出装置の連続使用を妨げる主要因であると知られている汚れ反応を除去する、又は少なくとも実質的に軽減する。特に、膜なし交換装置(また膜なし分離装置又は抽出通路とも記載する)における主要な輸送表面は、生体適合性が増大しまた界面が不変的に更新されるので、本質的に汚れない。従って、長期又は連続運転の主な妨げは除去され、殆んど連続した血液処理の利点の認められた小型で耐摩耗性の装置又はシステムの設計及び構造を可能としている。かかる装置又はシステムは、非常に小型化でき、そして患者が装着又は担持でき(例えば病院や診療所の外で)、また外部緩衝液容器(バックパック、ブリーフケース内の、或いは家庭や職場などに設置した容器からのもの)が供給され得る。さらに、汚れが軽減され、また長時間にわたって低い血液流れでの運転が維持できるので、要求されるかかる凝固防止は、血液が身体から出て行く際に管理され得、また体外回路に限定した影響に留まるように調整され得る。当業者には理解されるように、診療所外での体系上の凝固防止を避けることは非常に望ましい。
【0018】
本明細書に記載した装置、システム及び方法の幾つかは、サイズの異なる種々の血液成分を拡散できる。さらに、血液及びそれと接触する混和性流体の流れは、細胞成分の所望の分離を達成するために制御され得る。例えば、以下に説明するように、血球が血液・液体界面から離れて動くようにさせる種々の流れ状態が用いられ得、それにより、血球なしで血漿の実質的な量を除去するために血液を“掬い取る”ことが可能となる。フィルタは、特定の流れ状態において血球が血液・液体界面から離れて動く傾向があるにもかかわらず、混和性流体内へ移動し得る血球の除去を抑止することによってかかる掬い取り作用を行うのを助ける。
【0019】
以下に説明するように、抽出流体との血液の薄い層の膜なし接触は、全ての溶質について血液・抽出流体接触の単位面積当たり高い交換率を生じさせるために用いられ得る。自由(非拘束)溶質間の識別は、一般に、それらの拡散係数の比率の平方根未満である。特定の物質の高い交換率が望ましいが、無識別輸送は望ましくない。従って、本明細書に記載したように抽出流体出口にフィルタを備えた主要な膜なし交換装置は、血液からの望ましい物質の除去を制限し、かつ血液からの望ましくない物質の除去を行うために、少なくとも一つの補助処理装置(例えば、膜装置又はその他の形式の分離装置)と一緒に用いられる。かかる補助処理装置の効率は、血液の血球を激減させた(すなわち血球のない)留分(画分)を補助処理装置に送出できる主分離装置の使用によって大きく高められる。
【0020】
従って、膜なし交換装置の例では、抽出流体への血液の分子成分の輸送は無識別であり得る。血液から除去するのが望ましい或いは望ましくないこれら両分子成分を含んだ抽出流体は補助処理装置に供給される。補助処理装置は、膜なし分離装置の抽出流体入口へ(直接又は間接に)戻す再循環流れの組成を通して膜なし分離装置の動作を調整する。さらに、この仕方で用いた膜に基づいた補助処理装置は、せん断感受性である血球が存在していないので、非常に高い分離速度を達成できる。さらに、濃度分極(すなわち分離装置の上流側における補助処理装置によって拒否された物質の蓄積)は、タンパクに限定され、血球を伴わず、また抽出流体中のタンパクの濃度は、フィルタの微細孔サイズ、流体流れ特性及び流体接触時間の選択によって調整され得る。さらに、血球は主分離装置(すなわち膜なし交換装置)に留まるので、それら血球は、生体不適合性が非常に低減されるべきであるために、液体・液体接触領域においてではなく単に導管表面においてのみ人工物質を出会う。このようにして、耐凝固の必要性は非常に低減され又は除去され得ることが理解されるべきである。
【0021】
血液と人工膜との接触で生じた問題を改善する方策は、2004年3月15日付け出願のマイクロ流体膜なし交換装置を有する血液に基づく治療システム及び方法と題する米国特許出願第10/801,366号、及び2005年5月12日付け出願の同じ名称の米国特許出願第11/127,905号に記載されており、これら両特許出願はそれらの全体について参照文献として本明細書に組み込まれる。
【0022】
一実施形態によれば、本発明は、第1流体と第2流体との間で成分を交換する方法である。この方法は、第1及び第2流体のそれぞれの層を形成して、第1及び第2流体間での成分の拡散に基づく交換を、第1及び第2流体の混合なしに生じさせるようにすることにより開始する。例えば、流体は層流通路に流れ得る。本方法によれば、第1流体の少なくとも一部は、第2流体からの第1成分をブロックし、かつ第2流体からの第2成分を通すように寸法決めした微細孔を通って流れる。例えば、第2流体が血液である場合には第1成分は血球であり得、また第2成分は、アルブミン及び電解質のような大小の分子を含み得る。この実施形態のさらに特定の変形例では、濾過は、800nmの以下のサイズの微細孔に第1流体を通すことを含む。第2流体が血液を含む場合には、微細孔サイズは好ましくはこのサイズより小さく、そしてさらに好ましくは実質的にそのサイズ未満、例えば600nm未満である。
【0023】
好ましくは、層は、第1及び第2流体を通路に流すことによって形成され、濾過は、通路の壁の一部を成すフィルタを設けることを含む。好ましくは、フィルタは、通路の壁と共面である平滑な連続表面を規定する。このようにすることによって、フィルタは表面に物質が付着しないままにできる。これは特に、好ましくは狭い空間からの流体の高いせん断速度がフィルタの表面を洗浄するのを助けるので、フィルタの表面に垂直な方向の通路寸法が小さい場合に当てはまる。この特徴は、特に、血液中のタンパク及び血球が相対的に平滑な表面を備えていないフィルタに付着され得る実施形態において好ましい。さらに、好ましくは、微細孔は、曲がりくねってなくしかも枝分れしていない通路を規定している。
【0024】
上記の方法の別の好ましい変形例では、間に第2層を備えた二つの第1層が設けられる。このようにして、第2層は、内部に第1及び第2層が流れる通路が好ましい適当なアスペクト比を持つ場合には、第1層で被包され得る。流体の流れシートのこのようなサンドイッチ構造は、高い接触面積をもたらし、そして混合の生じないような非常に低いレイノルズ数をもたらし得、しかもなお層間の非常に有効な拡散が達成される。好ましくは、通路の断面アスペクト比は、10以上であり、そしてさらに好ましくは50以上である。好ましくは、通路の深さ(横断面の短い寸法)は、75〜500ミクロンであり、さらに一層好ましくは約120ミクロンである。
【0025】
上記の方法の実施形態の好ましい変形例では、第1流体は、濾過した第1成分において第2成分を濃縮し、そしてそれを一つ又は複数の第1層に戻して再循環することによって発生される。これは、第1流体の濾過から濾液を取り出し、そして第2成分を残しながら第1流体から流体を除去する流体処理装置へ濾液を通すことによって行われ得る。例えば、これは、濾液を限外濾過し回収し、そしてそれを再循環することによって行われ得る。これはまた、例えば、再循環流れに第2成分をさらに添加することによって行われ得る。例えば、第2成分は、第2流体が血液である場合には、血清アルブミンであり得る。
【0026】
一実施形態によれば、本発明は、第1流体から第1成分を清浄する方法であり、この方法は、第1流体と溶媒とを混合することなしに第1流体から溶媒へ第1成分を拡散させながら、搬送通路の壁から第1流体の層を分離するように溶媒の少なくとも1つの共流層によって取巻かれた第1流体の層を流すこと、溶媒から第1成分を除去すること、及び除去により得られた溶媒の共流層を補充することを含む。一実施形態では、第1流体は血液である。後者の実施形態においては、溶媒は好ましくは水溶液である。除去は好ましくは、溶媒をフィルタに通し、その結果得られた濾液を別のフィルタに通すことによって溶媒を濾過すること、及び除去の結果得られた濾液を回収することを含む。除去は、溶媒をフィルタに通し、その結果得られた濾液を別のフィルタに通すことによって溶媒を濾過すること、及び除去の結果得られた濾液を回収することを含む。第1流体が血液である実施形態では、すなわち好ましい実施形態では、除去は、血球をブロックするように溶媒を濾過することを含む。例えば、第1流体が血液である場合に、除去は、血球から遠隔位置で溶媒を透析すること、及び透析した溶媒を共流層に戻して血液タンパク質を血液中に拡散させることを含む。
【0027】
一実施形態によれば、本発明は血液の処理方法である。この方法は、壁に1ミクロン未満の最大サイズをもつ規則的なパターンの微細孔を有する壁部分をもつ通路に血液と水性溶媒とを同時に流させることを含む。本方法はさらに、微細孔を備え、微細孔の上流点で溶媒を通路へ戻す流れ回路へ溶媒を循環させることを含む。流れ回路は好ましくは、溶媒から水を除去し、そして一層好ましくは溶媒から尿毒素を除去する処理装置を備えている。好ましくは、微細孔は600ミクロン未満の最大サイズをもつ。
【0028】
好ましくは、後者の実施形態では、流れは、血球が壁面のほぼ全てに接触しないようにする流れを生じさせる。好ましくは、微細孔は約100nm又はそれ未満の最大サイズをもつ。同時流れは好ましくは、通路内をほぼ等しい容積流量で血液と水性溶媒を流すことを含む。
【0029】
別の実施形態によれば、本発明は、幅と深さの比が10以上である通路を有する流体処理装置である。深さは300ミクロン程度であり、また幅及び深さの両方は流れの方向に垂直である。通路は、流れ方向に平行である長さで分離した入力端部と出力端部とを備えている。二つの入口抽出流体ポート及び二つの入口抽出流体ポート間に配置した一つの入口試料流体ポートは入口端部近くに位置決めされ、また二つの出口抽出流体ポート及び二つの出口抽出流体ポート間に配置した一つの出口試料流体ポートは出口端部近くに位置決めされる。出口抽出流体ポートは第1フィルタを備えている。出口抽出流体ポートの少なくとも一方は、上記通路以外の流れ通路を介して入口抽出流体ポートの少なくとも一方に結合される。
【0030】
好ましくは、通路は、幅及び長さに等しい寸法の壁面を備え、第1フィルタは壁の一部を形成している。好ましくは、第1フィルタの微細孔サイズは1000nm程度であり、一層好ましくは800nm程度であり、さらに一層好ましくは300nm程度である。好ましくは、通路の深さは120ミクロン程度である。好ましい変形例では、幅と深さとの上記の比は50以上である。変形例では、実施形態は、一日程度にわたる処理サイクル中に通路を通して少なくとも1リットルの血液と少なくとも1リットルの溶媒とを汲み上げるように構成した少なくとも一つのポンプを有する。
【0031】
上記実施形態の特に好ましい変形例では、入口及び出口試料ポートは、患者にアクセスするため動脈及び静脈血管に接続できるコネクタを備えた通路に接続される。
【0032】
別の実施形態によれば、本発明は、第1流体と第1及び第2成分を含む第2流体との間で成分を交換する装置である。本装置は、第1及び第2流体が互いに直接接触するが混合しないようにして、それぞれ第1及び第2流体の少なくとも一つの第1層と少なくとも一つの第2層とを形成するように第1流体及び第2流体を受ける通路を有する。少なくとも一つの第1層及び少なくとも一つの第2層は同じ方向に流れる。通路は、第1流体のみを受ける少なくとも一つのフィルタを備えた出口を有し、少なくとも一つのフィルタは、第2流体からの第2成分を通すが、第2流体からの第1構成成分を阻止するように寸法決めした微細孔を備えている。好ましくは、少なくとも一つのフィルタは、800nm以下のサイズの微細孔を備えている。通路は壁を備え、また少なくとも一つのフィルタは好ましくは通路壁の一部を規定している。好ましい変形例では、少なくとも一つの第1層は二つの層であり、そして少なくとも一つの第2層は一つの層であり、第2層は二つの第1層間に位置決めされている。好ましくは、微細孔は、曲がりくねってなくしかも枝分れしていない真直ぐな通路を規定している。好ましい実施形態では、第1成分は赤血球である。
【0033】
第1流体は好ましくは、少なくとも一つフィルタに第1流体を通すことによって得た濾液中の第2成分の濃度を高めることで得られた流体を含んでいる。好ましくは、第2成分は血清アルブミンを含んでいる。好ましくは、通路は壁を備え、また少なくとも一つの第1層は二つの第1層であり、第1及び第2層の形成は、二つの第1層間に単一の第2層を備えてそれら二つの第1層を形成して、第1流体により、第2流体が通路の壁に直接接触するのを阻止するように構成される。好ましくは、通路は、アスペクト比10以上の流れ方向を横切る横断面をもつ。好ましくは、通路は、75〜300ミクロンの流れ方向を横切る深さをもつ。最も好ましくは、深さは約120ミクロンである。
【0034】
別の実施形態によれば、本発明は、第1流体と第2流体との間で成分を交換する装置にある。本装置は、各々それぞれの入口と出口とを備え、入口内へ流れる少なくとも二つの流体が互いに直接接触して入口内へ流れさせ、そして出口から流出させる第1及び第2通路を有する。本装置はさらに、入口及び出口を備え、入口で受けた流体の性質を変え、性質の変わった流体を出口へ運ぶ流体処理装置を有する。第1通路の出口の第1出口は第2通路の入口の第1入口に接続される。第1通路の出口の第2出口は流体処理装置の入口に接続される。第2通路の入口の第2入口は流体処理装置の出口に接続される。
【0035】
好ましくは、流体処理装置は膜、例えば透析装置を備えている。通路内の流体間の輸送が主として拡散によるように層流形態で第1及び第2通路に流体を流れさせる流体輸送装置が設けられ得る。好ましくは、第1通路の出口の第2出口はフィルタを備えている。好ましくは、フィルタは最大600nmのサイズの微細孔を備えている。
【0036】
一実施形態によれば、本発明は血漿から血球を分離する方法にある。この方法は、被濾過出口を備えた容器表面から、血球及び血漿を含む層において血球のほとんどを抜き取ること、及び血球が被濾過出口に入るのを阻止するように被濾過出口を介して血漿を除去することを含む。一実施形態では、層は流動層であり、またこの実施形態の変形例では、血球の抜き取りは、表面から離れるより壁に近い方が高いせん断勾配を流動層に形成することを含む。好ましくは、層は水性溶媒を含む。被濾過出口は好ましくは、容器表面と共面である表面を備えたフィルタを備えている。この場合、層が表面近くにせん断を備えた流動層である場合に、せん断はフィルタの表面を清浄する。
【0037】
本発明の別の特徴、本発明の本質及び種々の利点は、全図を通して同じ部品を同じ参照文字で示す添付図面と共になされる以下の詳細な説明を考慮することにより一層明らかとなる。
【0038】
本明細書に組み合わされ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を例示し、そして上述の概要説明及び以下の詳細な説明と共に、本発明の特徴を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0039】
交換装置は試料流体から選択した成分を抽出する。交換装置は、抽出流体と試料流体が直接接触するが、共通の抽出通路を通じて規定した層に留まるように、共通の抽出通路を通して層流で抽出流体と試料流体を通過させる。好ましくは、抽出通路は、層流状態を保証し、通常使用の状態の下でも維持され、そして試料流体と抽出流体との間の大きな界面面積をコンパクトな構成で可能にする寸法をもつ。従って、通路及びそれに関連した構成要素は用語マイクロ流体で特徴付けられ得る寸法を備えている。
【0040】
図1A及び図1Bを参照すると、好ましい形態では、試料流体104は血液であり、二つの抽出流体層102の間に挟まれる層で流れ、全ての流体は共に抽出通路105を通って流れる。図1Aにおける紙面に対して、抽出通路105は紙面内へのびる幅と、水平方向の長さと、垂直方向の深さとをもっている。一般的には、本明細書で使用した用語“幅”は、流れの方向に垂直でしかも二つの液体間の界面に平行な寸法であり、用語“深さ”は、流れの方向及び二つの液体間の界面に垂直な寸法であり、また用語“長さ”は、流れの方向に平行な寸法である。抽出通路105上にはグラフが重ねられおり、このグラフは軸線を用いて試料流体104及び抽出流体102の層の速度輪郭を示している。
【0041】
抽出通路105における流れは、試料流体104及び抽出流体102の層間の二つの液体・液体境界面110を形成している。抽出通路105は、試料流体が抽出通路105内に位置しながら試料液体104を抽出通路105の人工壁107から実質的に分離するように構成され得る。例えば、好ましい形態では、抽出通路105は深さより何倍も幅広くて長い。その結果、試料流体104は、大きな面積(長さ×幅)にわたって抽出流体102と接触し、しかも側方縁部では非常に小さな面積(試料流体層の長さ×深さ=2B)にわたって通路の人工壁107と接触する。これにより、試料流体104と抽出流体102との間の大きな界面が形成され、抽出通路の壁から試料流体104を有効に分離する。
【0042】
好ましい抽出通路105は入口125を備え、入口125は、壁107に隣接して抽出通路105内に流体を搬送する。抽出通路は、入口125から長さ方向に変位したそれぞれの出口123を備え、これらの出口123は抽出通路105から抽出流体102を抜き取る。試料流体104は、それぞれ整列した入口127に流れ込み、そして出口129から流れ出る。入口及び出口123、125、127、129の実施形態の詳細は以下に実施形態に関して説明する。腎置換療法に用いることのできる抽出通路105の好ましい実施形態においては、試料流体104は血液であり、また抽出流体102は透析液のような水溶液である。以下にさらに詳しく説明するように、血球は、タンパクやイオン種のような小さな粒子より一層ゆっくりと拡散するので、試料流体104の層に留まる傾向がある。血球はまた、抽出通路105の中心に位置する流れの低いせん断領域に向って移動する傾向にある。(低いせん断領域へ移動する血球のこの傾向は、Goldsmith,H.L.及びSpain,S.著 小さな管を通しての血流中の白血球の辺縁趨向(Margination of leukocytes in blood flow through small tubes) Microvasc. Res. 1984年3月27(2):204−22に開示されている。)好ましい実施形態では、血球又はその他の大きな粒子は、フィルタ(図1A及び図1Bには示されていない)によって抽出流体出口1234から出て行かないようにされ、これらのフィルタについては以下に詳しく説明する。
【0043】
速度輪郭112/114は、試料流体104の性質が抽出流体102の場合と同じである状況について計算される。速度輪郭112/114は、二次元通路における層流によって仮想される標準的な単一流体輪郭と一致する。しかし、速度輪郭112/116は丸くなっており、これは、試料流体104の粘性が抽出流体102より高い時に生じする。これは、試料流体104が血液であり、また抽出流体102が透析液である場合である。図1Aには、試料流体104と抽出流体102との間に実質的に明確な境界面110がある場合の計算した状態を示していることが認められる。実際の装置では、流体の性質は、境界面110がそれらを横切っての流体成分の拡散のために識別できなくなるので混ざり得る。
【0044】
抽出通路105内の分子の輸送は好ましくは混合なしの非乱流である。流れ形態を選択した流量及び通路サイズにすることによって、混合は確かに防ぐことができる。透析装置として機能するような形態にすると、装置は、血液と人工物質との接触時間を短くし、体外血液容量を低くし、かつマイクロ流体装置のサイズを非常にコンパクトにして処理を行うことができる。本明細書で使用した用語“体外”は患者の身体から血液を取り出すことに必ずしも限定されるものでなく、患者の体内に挿置されるマイクロ流体抽出通路が本発明の範囲から除外されるものではないことが認められる。
【0045】
試料流体104が全血液であり得る腎置換療法の実施形態では、血液の非球成分のみを抽出通路105によって抽出しようとするものである。抽出通路105内の抽出流体102の流れは、一つ以上の注入ポンプ130、132及び抜き取りポンプ134、136の適当な組合せを用いて抽出通路105内の血液の流れに関係なく制御され得る。例えば、第1注入ポンプ132は抽出流体102を抽出通路105内へ注入でき、また第1抜き取りポンプ134は抽出通路105から抽出流体102を抜き取り得る。同様に、それぞれの注入ポンプ130及び抜き取りポンプ136はそれぞれ、抽出通路105内へ試料流体104を注入し、抽出通路105から試料流体104を抜き取り得る。ポンプ130〜136の相対流量を制御することによって、抽出通路105内に存在している血液の総量の変化は変えられ得る。血液処理の実施形態では、流入量及び流出量の制御は、腎置換療法の普通の要求である患者の流体量を調整するのに用いられる。この実施形態では、抽出通路の深さ(図1に示す6B)は、好ましくは70〜300μmの範囲、一層好ましくはほぼ120μmである。好ましくは、抽出通路105は少なくとも10の幅対深さ比をもつ。好ましくは、幅対深さ比は50以上であり、一層好ましくは500以上である。図1Bの比喩的な表示には四つのポンプが示されているが、他の実施形態ではより少数又は多数のポンプを使用することができる。
【0046】
図1Aを参照すると、抽出流体102の層で両側を被包した芯試料流体104の層の速度輪郭112/114は抽出流体の粘度μSの二倍と仮定される粘度μB及び5cm/秒の中心線速度をもつ血液について計算される。この中心線速度では、10cmの流路長さは2秒より僅かに長い接触時間をもたらす。界面速度(τ=L/v)で分割した接触面積の長さで決まる露出時間の間二つの移動流体の定常接触によって生じる(小さなイオンから血球までの全てのサイズの)成分粒子の拡散は、特定の時間の間のうっ血性流体のある容量と別のものとの瞬時露出に類似している。従って、共有流路に沿って流れる流体に生じる事態は、有限な時間期間の間、互いに露出した二つのうっ血性流体に生じる事態に匹敵している。うっ血性流体の問題は1870年にロシュミットによって解決された。
であり、ゼロ次項については、
の時に
で十分である。
【0047】
この式は、膜なしシステムにおける流体間でどの程度の質量が輸送されるかの評価を非常に簡単化する。特に、この式は、二つの液体が並流し、時間間隔tの間接触したままである時に拡散係数Dで成分の抽出Eの近似を行う。
【0048】
図2には、ロシュミット式の変形を用いて抽出対(π/2B)2Dtを表し、各流体層は同じ厚さB(すなわちBは試料流体の被包層の半分厚さである)をもつ。図2に示す状態は抽出流体(抽出流体)の層と接触する厚さBの血液層として分析され得る。シース層はゼロ濃度であると推定され、またEは時間tにおいて抽出される血液層における物質の留分であり、Dは抽出物質の拡散係数である。Bの二倍の厚さの層が厚さBの流体層で両側において境界決めされる場合、式はなお記載したように適用する。この式で示されるように、Eは、共流において、最高抽出が二つの流体の平衡に層に相応しているので、0.5を越えることがない。
【0049】
最大可能抽出(E=0.45である)の90%が望ましい場合には、比Dt/Bはほぼ0.86でなければならない。拡散係数、血液層の厚さ及びこの値を作る露出時間の任意の組合せは同じ抽出をもたらす。さらに、この抽出を達成するのに必要な面積(2LW)は0.86BQ/Dに等しく、ここでQは血液(及び抽出流体)の流量であることが示され得る。従って、尿素(0.300cm3/秒の血液流量でD=10cm)の場合、必要な面積は2.58B104cm2である。Bを100μmとすると、必要な面積は258cm2である。この流れは、装着可能な人工腎臓において必要なものである。代わりに、5cm3/秒の普通の流量が用いられる場合には、必要な面積は4300cm2である。薄い膜が用いられる場合には、特定の抽出を行うのにさらに小さい面積でよい。
【0050】
抽出に関して、長さLと幅Wとの組合せは、必要な面積及び特定の抽出率を作るように変えられ得る。(アルビミンについてのDが5×10−7cm2/秒であるとすると、それの抽出は尿素の場合の0.116,26%である。)通路の深さの増大は必要な接触時間を増やし、被包流れの安定性を低下させ得る。総血液層の厚さが25、50、又は100μmであり、また血液の流れが20ml/分(装着可能な人工腎臓の場合のように)である際に、尿素(5×10−7cm2/秒)のような物質を90%の平衡を達成させるのに必要な界面面積はそれぞれ18、36、71cm2である。従って、これらの例が示しているように、ある特定の実施形態では、総血液層の厚さは約25μmであるのが望ましい。望ましいが、この厚さは本質的なものではなく、他の考察では、血液処理の実施形態において異なる血液層厚さにするのが望ましくなる。また、上記の計算は透析型血液処理に適用する。しかし、認められるように、本発明は他の形式の交換プロセス及び流体に適用され得る。
【0051】
流れシステムでロシュミット式を用いることは、両流体が一様な速度で動いていると仮定して、質量輸送率及びクリアランスを正確に評価する妨げとなる不一致を導入することが認められるべきである。特に、被包流体(血液)について卓越した近似をもたらすが、抽出流体における界面からの距離による速度のほぼ直線状の減衰を無視している。それにもかかわらず、ロシュミット式は、シース層が血液層(B)の半分の暑さの二倍である総厚さ(2B)(図1Aに示すように)及び従って中心流れの半分にほぼ等しい流量をもつ際に構成上の目的に適合する。
【0052】
血球のせん断誘起自己拡散係数Dparticleは、濃縮懸濁液についてLeighton及びAcrivos(1987年)による式:Dparticle∝φ2a2γ2(ここでφは粒子量留分であり、aは粒子半径であり、またγはせん断率である)を用いて評価され得る。従って、血球の特徴とする変位はΔy∝√Dparticletとして表され得る。血球量留分φ≒0.45/2=0.225であり、赤血球の平均半径a≒2.5μmであり、また血液層上の平均せん断率γ≒3〜28/秒(0.5〜5cm/秒の平均速度範囲に基づく)であるように層流システムに対する代表値を選択することにより、小さな溶質の典型的な拡散係数よりほぼ三桁小さい大きさであるDparticlet10−8cm2/秒を計算する。せん断誘起自己拡散係数のこの値に基づいて(及び層間の10秒の接触を仮定して)、血球は、血液速度及び付随するせん断率の選択に関連して、中心層から特徴とする距離Δy≒3〜9μmだけ変位されることが評価される。中心層から離れる血球のこの僅かな移動距離により、血液の血球のない部分の除去が容易となる。
【0053】
多くの理由で、小さな粒子対大きな粒子(すなわち、小さな分子対高分子或いは血球)の拡散速度の違いに単に依存する膜なし抽出通路105は、血液処理の基礎を成すように十分に弁別し得ない。例えば、腎置換療法用の実際のシステムは、好ましくは、出口129から回収された試料流体104が入口127に入る血清アルブミンのような高分子の相当な留分を減少させるのを阻止する。さらに、システムはまた、血球の損失を防ぐ必要がある。以下に説明する実施形態では、普通膜に関連した高度の弁別をもっ手直接接触交換の利点をもたらすように、上記の抽出通路に付加的な特徴が組み込まれる。
【0054】
図3は、抽出通路300の簡略化した側面図である。抽出通路は、種々の技術、例えばwEDM(ワイヤーカット放電加工)法を用いて作られ得る。例示実施形態は、抽出通路302を備え、この抽出通路302は三つの別個の入口通路304、306、308から流体を受ける。抽出通路302からの流体は、三つのそれぞれの出口通路310、312、314を通って抽出通路から出て行く。入口通路304は、入口通路304を抽出通路302に接続する開口316を備えている。同様に、入口通路308は、入口通路308を抽出通路302に接続する開口318を備えている。出口通路310、314は抽出通路302に対する相応した開口320、322を備えている。抽出流体は、入口通路304から出口通路310へ層流形態で抽出通路の頂面に沿って流れ、また入口通路308から出口通路314へ抽出通路の底面に沿って同様な形態で流れる。
【0055】
フィルタは好ましくは開口316、318、320、322の全て又は幾つかに設けられ、これらの開口を介して抽出流体は抽出通路302に流入し、そして抽出通路302から流出する。例えば、図3の実施形態では、フィルタ324、326はそれぞれ、入口通路304、308の開口316、318に配置され、またフィルタ328、330はそれぞれ、出口通路310、314の開口320、322に配置される。フィルタ326、330の間の抽出通路302の長さは好ましくは約1〜2cmである。フィルタの長さは約3〜4mmであり得る(図4にLで示すように)。多数の抽出通路を並列にのばして設けることにより、例えば30cmの総合抽出通路幅を得ることができる。図4には、図3の抽出通路300の出口通路314の開口322の周りの領域を部分拡大斜視図で示している。フィルタ330は、出口通路314を抽出通路302に接続する開口322に配置される。一つの例示実施形態では、フィルタ330は図示したように断面逆“T”字型である。出口通路314の開口322は、開口322の側壁406に形成した二つの対向溝404を備えている。これらの溝404はフィルタ330の二つの相対タブ408を受ける。この構造により、フィルタ330を適位置へ摺動することによりフィルタ330を組み込むことができる。同様に、フィルタ330は、出口通路開口322から摺動させることによって出口通路開口322から取外すことができる。従って、この例示構成によりフィルタ330を容易に交換することができる。
【0056】
フィルタ330は、開口322とフィルタ330との間の隙間をなくすような寸法及び形状のものであることができ、それにより、表面の微細孔を介して抽出流体を流れさせる。代わりに、フィルタは、平坦な表面が抽出通路302のフィルタ面であるように支持するために、上流段部及び下流段部をもつ凹部に取付けられ得る。フィルタ330を組み込んだり取外したりするために開口322の領域にアクセスするための種々の技法を用いることができる。例えば、抽出通路300の側部は取外し可能なプレートでシールされ得る。従って、このプレートを外すことによって、開口316、318、320、322にアクセスできる。フィルタは、通路304、306、308、302、310、312、314を形成するのに用いた物質にフィルタを一体形成することを含む種々の機械的取付け形態が可能である。
【0057】
血液処理装置においては、フィルタ328、330は好ましくは、抽出流体出口通路310、314への血球の移動に対して保証するように設けられる。また入口フィルタ324、326は、抽出通路302への大きな粒子の導入をガードし、かつ抽出通路302への抽出流体の流れを平滑にするように設けられ得る。フィルタ330に示した微細孔のサイズは単に例示のために非常に誇張されている。好ましくは、実際の微細孔のサイズは直径1000nm未満であり、さらに好ましくは600nm又はそれ未満である。さらに一層好ましくは、サイズは約100nmであるが、しかしさらに小さく、例えば10nmであってもよい。
【0058】
上記の特定の製造法は単に例示のためのものである。例えば、抽出通路300の寸法は、本発明の範囲から逸脱することなしに変えられ得る。図5には、別の実施形態の抽出通路500の概略を示している。試料流体は入口通路506から抽出通路502に入り、そして出口通路512から流出して行く。この例では、入口通路504、508及び出口通路510、514は、抽出通路502の長さ方向に対して90°の角度を成していない。従って、例えば、出口通路514の開口522及びフィルタ530は流れの方向に向いている。
【0059】
図6にはフィルタ330の一例を示す。フィルタ330は、微細孔径より大きい粒子サイズをもつ成分を除去するように選択的にサイズ決めされた微細孔602を備えている。微細孔602の直径は、出口通路310、314から除去するようにされた成分に従って変えることができる。微細孔602の直径は、数nmから約10nmまで範囲にできる。従って、流体が抽出通路内にある間に試料流体の種々の成分が抽出流体層内へ移動できるが、フィルタは、ある特定の粒子が出口通路を介して抽出通路から流出させないようにしている。例えば、本発明の実施形態が人間の血液から物質を除去する透析処理において用いられることになる場合には、例えば約300nmのフィルタ微細孔サイズは、血球を除去するために選択され得、それにより、血液流体とフィルタとの接触を実質的に避けながら、処理すべき血液流体からの血球の損失を防止する。
【0060】
上述のように、フィルタは、入口通路304、308の開口316、318に備えられ得る。これらの開口に備えられるフィルタは、抽出通路302内へ流体を容易に一様に分配することによって抽出流体の導入を安定化するのに役立つ。出口通路310、314におけるフィルタ328、300によって、フィルタの表面を横切るせん断流れは好ましくは維持される。さらに、フィルタは、入口通路304、308内への望ましくない成分の進入を阻止する。フィルタは、抽出流体の流れがない時間が存在し、しかも試料流体が試料入口306を介して抽出通路302内へ流れている実施形態において特に有効であり得る。出口及び入口におけるフィルタの微細孔サイズは所与フィルタを横切って一様であり得るが、入口フィルタの微細孔サイズは出口フィルタの微細孔サイズと異なってもよい。
【0061】
上記のフィルタに用いることのできる商業的に利用できる装置の一例は、マイクロ篩マイクロ濾過装置である(Aquamarijn Micro Filtration BV,Berkelkade 11,NL 7201 JE Zutphenで入手できる)。これらのフィルタ表面は、写真平版シリコンチップ製造技術及びその他の技術を用いて形成され得る。例えば、フィルタは、600μm厚のシリコンウエハをほぼ1μm厚の窒化珪素の層で被覆することによって作られ得る。そして微細孔パターンは、現状の技術の写真平版マスキング及びエッチング技術を用いて窒化珪素層に形成され得る。窒化珪素層をエッチングした後、シリコン層は、窒化珪素層の下側を露出させるように粗くエッチングされ得、それにより、微細孔を通る流路を形成する。いくらかのシリコンは、相対的に薄い窒化珪素層に対する支持体を形成するために、エッチング処理中に残され得る。また、フィルタ構成要素は、フィルタの接着され得る支持構成要素(図示していない)と共に、フィルタ330のような多くの部品を備え得る。
【0062】
フィルタに望ましい性質は、フィルタを清浄し、抽出通路に対向した表面に血球や高分子を捕捉するのを避けように、抽出通路流れを生じさせる平滑で規則的な表面を備える。さらに、フィルタに規定した通路は好ましくは曲がりくねってなくしかも枝分かれしない好ましくは規則的なアレイを形成する。好ましくは、また、フィルタは、濾過した流体の平滑で真直ぐな流路並びに抽出通路内の流れに対向した平滑な表面を規定する。任意の支持構造体を含むフィルタはまた、粒子が小さな表面特徴部に付着したりトラップされることなしに直接微細孔通路を通って流れるようにすべきである。このようなフィルタを作る技術及びそれらのフィルタを構成する物質は種々あり、それらは進歩し、かつ改良され続けることが期待される。本発明は、血液又は血液流体を処理する実施形態では上述の性質が好ましいが、フィルタを製作する又はフィルタを構成する任意の特定の方法に限定されない。
【0063】
図7には、図3に示す出口通路314の開口322のまわりの領域を拡大側面図で示している。図面において、抽出通路302の底部に沿って流れる抽出流体層702が示され、また抽出流体層702の頂部上を流れる試料層704が示されている。流線706は流れの方向を表している。抽出流体702がフィルタ330を通って引かれる際に、抽出流体層は、抽出流体層702の曲がった境界面707で示すようにフィルタ330に向って下方へ引かれる。抽出流体層702は、フィルタ330に近づくにつれて、下向き流れ成分710と前向き流れ成分712をもち、合成成分は708で示されている。前向き流れ成分712は、フィルタ330の表面を掃引するように作用する。従って、フィルタ330の表面に沿って集まる抽出流体702に含まれた全ての成分は、前向き流れ成分712の方向においてフィルタ330の表面に沿って掃引される。この掃引作用は結果として除外成分を試料層704へ戻す。
【0064】
境界面707は流れパターンを正確には表してなく、単に、試料層704をシースする抽出流体層702が出口通路314へ実質的に引かれることを示すものであることが認められる。また、抽出流体層702と試料層704との間の境界面は十分に規定されてないことが認められる。実際に、一実施形態では、抽出通路302は、全ての成分が血球を除いて実質的に混合されるように構成され、これにより抽出流体層702の中心低流体せん断領域に向って移動する傾向がある。
【0065】
図8には、上記の装置300と同様な膜なし分離装置800を示している。膜なし分離装置800は、抽出通路802(図8にはない)、三つの別個の入口通路804、806、808、及び三つの相応した出口通路810、812、814を備えている。膜なし分離装置800は、入口通路804、808に配置したフィルタ816、818を備え、また出口通路810、814に配置したフィルタ820、822を備えている。しかし、本発明は、使用した入口又は出口通路の数によって限定されず、また本発明は各入口及び出口通路にフィルタを設ける必要性によって限定されないことが理解される。図8に示すように、膜なし分離装置800は血漿交換装置として用いることができる。例えば、図8に示すように、入口通路806を通って抽出通路802(図8にはない)に入る血液から血漿が掬い取られ、そして出口通路810、814を通って抽出流体と共に出て行く。この掬い取りプロセスは、入口通路804、808に入る量より多くの量の抽出流体を出口通路810、814を引き抜くことにより行われる。従って、この過剰の量は血液流体から除去される。図8には、抽出通路802(図8にはない)を通る流れの層構造を簡略に示している。例示した実施形態では、入口通路806に入る試料流体、入口通路804、808に入る抽出流体、及び809で示す形成層は、それら層の接触時間が増えるにつれて、組成が漸次に変化していく。その結果、混合層811は、両流体からの成分が同じ比率で存在するように特徴付けられる。血球は抽出通路802の低せん断流れ中心線に向って移動する傾向があるので、混合層811は入口通路806に入る試料流体806からの血球がない。図8に示すように、混合層811に入る試料層からの少なくとも非血球成分は抽出流体出口通路810から出て行く。抽出流体は正味の増量を含み得、それにより、混合層811は、試料流体出口通路812と二つの抽出流体出口通路810、814の各々との間で分けられる。
【0066】
図8は比喩的に示されており、実際には混合層811は図示したように明確な境界面で区別されないことが明らかである。また、上記の説明及び実施形態から明らかなように、抽出通路802(図8にはない)は、血液から血球成分を分離する又は抽出流体がなくても血球のない血漿を抽出するのに用いられ得る。血球のない血液留分は、流れの中心に対する血球のせん断誘起自己拡散のために相対的に血球のない抽出通路の層から有効に掬い取られ得る。同じ効果は、抽出流体のない場合に血球を濃縮するのにも用いられ得る。抽出流体の壁の近くの出口におけるフィルタ(例えば822)は、抽出通路802(この番号は図8にない)から取られた血球を含まない留分に血球が存在しないようにしている。
【0067】
腎置換療法装置の好ましい実施形態では、抽出通路は、抽出通路の抽出流体出口から抽出流体を受ける補助処理装置と共に作動し、抽出通路の外部で抽出流体を処理し、そして抽出流体を抽出通路の抽出流体入口へ戻す。図9には、抽出通路902及び補助処理装置904を備えるシステム900の簡略化したブロック線図を示している。詳細には示していないが、抽出通路902は、図3〜図8に示しまた種々の抽出通路実施形態に関して上記で説明した特徴を備え得ることが理解される。処理を受ける血液は、入口ライン928を通って抽出通路902に供給され(また抽出通路902から除去され)、そして出口ライン920を通って除去される。一方、補助処理装置904によって再循環される抽出流体は、それぞれ入口ライン930、932を通って抽出通路902に供給される(また抽出通路902から除去される)。従って、この例では、三つの流体流れが存在する。第1流体流れは、入口及び出口ライン928、920で搬送される処理すべき血液流体である。第2流体流れは、抽出通路902において血液流体と接触しそして入口及び出口ライン930、932を通って搬送される抽出流体(すなわち、抽出流体又は補助流体)である。第3流体流れは、成分を更新するために抽出流体と交換するのに用いられ、そしてそれぞれ入口及び出口ライン906、908を通って補助処理装置へ及びから搬送される。また図9に示すように、補助処理装置904は溶質を、連続した新しい供給によって更新される膜を通して第3の流体(例えば透析液)と交換する。第3の流体は入口ライン906を通って導入され、そして補助処理装置904で用いられた後、出口ライン908を通って送出される。こうして、抽出通路902は、補助処理装置又は抽出通路902の壁における膜の表面のような大きな面積の人工表面と接触することから血球を保持しながら、試料流体と抽出流体との間で溶質を平衡させる。
【0068】
補助処理装置904は、試料流体との所望の相互作用が達成されるように受けた抽出流体を変えるのに種々の機構を使用できる。限外濾過、血液透析濾過、及び透析に加えて、これらは、特に小さな及び/又は大きな分子に目標付けした収着剤を用いた収着、化学反応、及び沈殿を包含する。以下の国際特許公報には適当な血液透析濾過の幾つかの例が開示されている。WO02/062454(出願番号PCT/US02/03741)、WO02/45813(出願番号PCT/US01/47211)及びWO02/36246(出願番号PCT/US01/45369)。さらに、低分子量溶質が補助処理装置における血液透析濾過によって除去される時には、好ましくは血液に無菌緩衝腋が添加されて流体量を増やし、小さな分子を補助処理装置の血液透析濾過膜に通す。通常の血液透析濾過では、このような置換流体は血液透析濾過装置の前又は後に添加される。しかし、記載した実施形態では、血液流、又は抽出流体の主源である補助処理装置904からの再循環流体に対して、この置換流体を添加するのが有利である。
【0069】
抽出通路と共に動作する補助処理装置は、補助処理装置で保持され、かつ抽出通路へ戻して搬送される高分子の流入に対して抽出通路からの高分子の流出を自動的に平衡させることが認められる。従って、補助処理装置は、抽出通路の抽出流体に対して入口へ戻す再循環流れの組成を通して抽出通路の動作を調整する。
【0070】
血液治療では、血液中に留まるのが望ましい高分子の一つの例は血清アルブミンである。記載した抽出通路実施形態のような拡散に基づく交換装置の各通過時に、アルブミンは、小さな溶質の割合の1/4程度拡散する。しかし、腎置換療法処理では、所与量の血液は、総体内水分区画を通して分配されるので身体から尿素を除去するために、交換装置を通して何回も通過しなければならない。従って、尿素は、血液の尿素激減容量によって組織から捕捉され、そして補充されるべき抽出流体に通されなければならず、同じ容量を処理において恐らく10回、組織へ戻してさらに尿素を捕捉し、そして抽出流体に供給する。こうしてアルブミンは尿素に比較してゆっくりと拡散しながら、アルブミンの所与分子は抽出流体によって捕捉されることになる機会が多くなる。その結果、アルブミンの固有の拡散速度は比較的低いが、アルブミンの分留除去は、尿素の分留除去を超えがちであり得る。
【0071】
補助処理装置(例えば、アルブミンではなく尿素及び水分を抽出できる膜装置)は、補助処理装置で処理した抽出流体に血液を戻すことによって血液に対してアルブミン不の除去を保証するのに用いられ得る。これに対して、尿素は、補助処理装置によって抽出流体から除去され、そして抽出流体は抽出通路へ戻され、尿素が除去される。その結果、更新した抽出流体は抽出通路において一層捕捉することができる。上述のように、抽出流体の戻り流れはまた選択した水分も含み得る。従って、この流れの組成は、尿素及び水分の更なる抽出を回復するが、処理すべき血液と抽出流体との間におけるアルブミン濃度の差がなくなるので、アルブミンの更なる抽出を回復しない。
【0072】
抽出流体の入口流量と出口流量との差は、存在している試料及び抽出流体流れの組成を制御するように制御され得る。腎置換療法実施形態では、抽出通路からの抽出流体の流出量がそれの流入量に等しい場合に、尿素が補助処理装置で除去されても、出て行く抽出流れへのアルブミン及びその他の高分子の正味の流れは、試料(血液)流れへ戻る正味の流れによって自動的に平衡される。抽出通路へ流体の戻る流量より、抽出通路からの流体の除去流量が多い場合に、患者の水分量は抜き取られた水分だけ減少される。閉ループである抽出流れの濃度は、アルブミンを含む高分子の濃度が試料流れにおけるレベルに整合するように再循環流れにおいて上昇し、それで輸送平衡が維持され、また処理の終端後に体外回路に残っている部分を除いて、かかる成分の正味の損失はない。
【0073】
処理の重要な目的が、20ml/分の流れを仮定して、高速で拡散し得る(一般に低分子量の)分子の除去である際には、抽出通路における接触面積は約17〜71cm2の範囲である。処理の重要な目的がゆっくり拡散し得る分子(例えばタンパク及び特に免疫グロブリン)の除去である際には、抽出通路における接触面積は大きく、ほぼ1,700〜7,100cm2の範囲(20ml/分の流れを仮定して)であり、また補助処理装置は、これらの分子を除去し、かつ小さな分子を再循環するように構成され得る(それらの同時除去が望まれない限り)。
【0074】
図9に一致する膜なし分離装置の実施形態のさらに詳細な図を図10に示す。血液処理システム1000は、抽出通路1002及び補助処理装置1004を備えている。抽出通路1002は入口通路1008、1010、1012を備え、入口通路1008、1010、1012はそれぞれ入口1020、1021、1022に通じている。入口1020、1022はそれぞれ入口通路1008、1012から抽出流体を受ける。入口1021は、入口通路1010から試料流体を受ける。入口1020、1022は上記のように濾過されてもされなくてもよい。抽出通路1002はまた出口1024、1025、1026を備えている。出口1024、10265は、抽出流体を受け、そしてそれぞれ出口通路1014、1018に抽出流体を搬送する。試料流体は、出口1025を通って抽出通路1002から出て行き、出口1025は試料流体を出口通路1016へ搬送する。出口1024、1026は上述のように濾過されてもされなくてもよい。好ましくは、フィルタが設けられ、これらのフィルタの微細孔サイズは約100nmであるが、微細サイズは上記で説明したように他のサイズにしてもよい。
【0075】
システム1000はまた、血液供給部1028及び血液容器103(1030の誤り)(処理の設定において両方とも生きている動物又は人間の患者に相当する)を備えている。多数のポンプ1029、1030、1032、1034は好ましくは自動的に作動される。血液供給部1028は、血液入口通路1010を介して抽出通路1002に血液を供給する。血液供給部1028は、好ましくは生きている動物からの全血液であるが、人工容器であってもよい。血液抜き取りポンプ1030は、抽出通路1002から血液出口通路1016を介して血液を抜き取り、そして上述のように血液供給部1028と同じであり得る血液容器1030に搬送する。また、好ましくは血液ポンプ1029は、必ずしも本質的ではないが、ライン1010に設けられて、血液供給部1028から抽出通路1002へ血液を汲み上げる。
【0076】
シース入口通路1008、1012から入口1020、1022を介して抽出通路1002への抽出流体の流れは抽出流体注入ポンプ1032(好ましくは通路1008、1012に等しい部分で抽出流体を供給する)によって制御される。抽出通路1002から出口1024、1026を介して出口通路1014、1018への抽出流体の流れは抽出流体抜き取りポンプ1034によって制御され、抽出流体抜き取りポンプ1034は好ましくは、出口通路1014、1018から等しい量の抽出流体を抜き取る。ポンプ1034は、二チャンバーポンプ又は共通軸に回転子を備えた二つの蠕動ポンプのようなダブルポンプであり得る。代わりに、ラインの各々に二つの別個のポンプ(図示していない)を用いることができ、そして抽出通路1002からの抽出流体の全体流れを調整しながら、ライン1014、1018を通る流れを平衡するようにフィードバック制御する。ポンプ1032も、二チャンバーポンプ又は共通軸(図示していない)に回転子を備えた二つの蠕動ポンプのようなダブルポンプであり得る。ポンプ1032は、膜なし処理装置1002への抽出流体の全体流れを調整しながら、ライン1008、1012を通る流れを平衡するようにフィードバック制御されるライン1008、1012の各々における二つの別個のポンプ(図示していない)で置き換えられ得る。別個のポンプの使用によりまた、種々の流体、或いは同じ又は異なる流体を異なる流量で入口通路1008、1012へ搬送する能力が得られ得る。従って、入口通路1008に入る抽出流体は、入口通路1012に入る抽出流体と実質的に同じであっても異なってもよい。本発明は特定の形式のポンプ又は流量に限定されないことが理解されるべきであり、また多くの変形が可能であることが明らかである。
【0077】
ポンプ1029、1030、1032、1034(或いはその他の可能なポンプ装置)を用いて、フィルタ1024、1026を介して抽出流体のみ又は抽出流体プラス規定した量の血液流体を抜き取るように抽出流体及び血液流体の流れを制御するのに用いられ得る。同様に、ポンプ1030、1032、1034及び存在すればポンプ1029は、血球を含んだ試料層とフィルタ1020、1022との接触を調整するために抽出流体及び血液流体の流れを制御するように制御され得る。好ましい形態では、制御は、患者から水分の抜き取りができるだけ低流量で行われ、従って正味の抜き取りが所望の処理時間に一致した最大持続時間及び患者の要求に応じて行われる。水分の抜き取りは、入口通路1008、1012を通して置換されるより出口通路1014、1018を介して多くの量を抜き取ることによって行われる。従って、ポンプは好ましくは、入口及び出口流量の差を最少にし、二つの流量を正確に調整するように制御される。さらに、ライン1014及びライン1018を介しての出口流量は好ましくは、不平衡の結果として抽出流体出口ライン1014、1018の一方を通しての血球を含んだ層の吸い取りを避けるように正確に同じに維持される。平均及び瞬時流量を正確に調整することによって、中心の血球を含んだ層と流体出口1025との間の界面は、最少の血球が抽出通路1002の壁又は好ましくはフィルタ1024、1026と接触することを保証するように維持され得る。
【0078】
システム1000はまた抽出流体容器1036を備えることができる。抽出流体容器1036は、新しい抽出流体(例えば好ましい血液処理の実施形態における血液透析濾過すなわち透析に用いる置換流体のような)を、抽出通路1002と補助処理装置1004との間の流れループへ供給する。幾つかの実施形態の正常な動作の下では、抽出流体内へ拡散していく血液流体の成分は、補助処理装置1004で除去される。ある特定の条件の下では、血液流体から抽出流体へ拡散する血球又はフィブリノーゲンのような他の血液成分は、出口フィルタ1024、1026の表面に沿って集まり得る。これらの物質はほんの少量の抽出流体を用いてフィルタ1024、1026をフラッシュするように抽出流体の流れを一時的に反転させることによって、フィルタ1024、1026の表面から除去され得る。抽出流体のこの量は、血液流体に対して抽出流体の垂直な共流を再確立する際に、抽出流体容器1036から補充され得る。この“ブローバック”動作を行なう必要性は、フィルタ又は流量測定装置を横切って圧力降下によって決められ得る。これら装置はシステム1000に一体に構成され得る。抽出流体容器はまた、処理用の置換流体の源として働くことができ、例えば血液透析濾過において行われるように、処理目的のために患者から取り出されることになるより多くの水分及び溶質量が補助処理装置においてゆっくりと除去される。ポンプは、好ましくはプログラム可能なプロセッサを備えるコントローラ1040によって自動的に制御され得る。
【0079】
好ましくは、血液処理の実施形態では、抽出流体注入ポンプ1032によって(分離装置1004及び/又は任意選択的な抽出流体容器1036から)抽出通路1002へ供給される抽出流体は、抽出通路1002の断面のほぼ2/3を占め、血液供給部1028から血液は中間の1/3を占める。(この流れ形態は図1Aに例示されている。)この形態は、血液及び抽出流体の流入を適切に調整することによって維持され得る。この形態では、抽出通路1002における血液層の各半分はシース層の一つで“提供”され、またシース層は血液の速度のほぼ半分の速度の平均速度で移動していくが、血液と抽出流体との界面速度はほぼ等しい。従って、所与時間間隔中にユニットを通過する流体の量及び抽出流体の量はほぼ等しい。本発明はこの仕方で限定されないが、上記の形態では、二つの流体(例えば血液及び抽出流体)の容積流が互いに異なる場合に、平衡に関連した50%の最大値から交換効率は降下することが認められるべきである。
【0080】
処理すべき血液の血球のない成分の全て又は一部を分離させる(掬い取らせる)ために、抽出流体の入口及び出口流れは、入口通路1008、1012を通って供給される抽出流体より多くの総流体が抽出通路1002から出口通路1014、1018を介して抜き取られるように(それぞれポンプ1032、1034を介して)制御され得る。従って、処理すべき血液の一部分は出口通路1014、1018を介して抽出流体と一緒に除去される。例えば、抽出流体注入ポンプ1032の速度より10%高い速度で抽出流体抜き取りポンプ1034を運手することによって血液の流れの10%を掬い取ることが可能である。これがなされた時に、血液流出量は決められ、そして当然に流入の90%が流出するので、制御される必要はない。
【0081】
上記で説明したように、無差別の血漿除去が望まれない際には、抽出通路1002を用いて血液から掬い取られる血漿は、シース入口通路1008、1012に戻る再循環流れの流量及び組成を通して抽出通路1002の動作を調整する補助処理装置1004によって処理される(すなわち、再循環流れは、抽出の望まない血液成分の輸送を制限するのに用いられる)。補助処理装置1004は、濃度分極がタンパクに限定され、血球を伴わないことにより、高い濾過速度を達成できるので、実質的な利点が得られる。さらに、血球は抽出通路1002に保持されるので、フィルタの作用で補足される血球の移動の作用(以下に説明する)にもかかわらず、これらの血球の大部分は単に人工物質の導管表面において人工物質に接触する。相対的に少量の血球が出口通路1014、1018におけるフィルタ1024、1026と接触し得るが、接触は血球の総数の小部分に限定され、そして比較的短い時間の間に生じる。液体・液体接触領域における血球接触は機械的、及び化学的に殆んど衝撃がないので、生体不適合性の低減及び凝固防止の必要性の低減(又は除去)が達成される。さらに、システムにおける主輸送表面は本質的に汚れず、またフィルタの表面は流体せん断速度できれいに掃引されるので、長期又は連続運転に対すル主要な妨げは除去され、長期のゆっくりした交換の認められた利点をもつ装着可能なシステムの可能性に通じる。
【0082】
シース出口流れを相応した入口値より大きくできる抽出通路1002の動作は拡散流れ上で血液流れから対流を誘起することが理解されるべきである。このような対流が血球を搬送する(血流における血球の分布が一様であった場合のように)のを阻止するために、相当な血漿の掬い取りをできるようにするために、血液の血球成分が血流の中心に移動することが重要である。血球の中心に向うドリフトは、記載した実施形態においては種々の流れ形態の下で生じる。流れ状態は、血球が血液・液体界面から離れる方向へ動くように調整され得る。例えば、血液が約100相対秒の壁せん断率(管壁に垂直な血流速度勾配として測定される)以下で管内を流れる時に、このせん断率は、血球成分を管の中心へ移動させる。従って、フィルタとの血球の接触の発生は低減される。(Goldsmith,H.L.及びSpain,S.著 小さな管を通しての血流中の白血球の辺縁趨向(Margination of leukocytes in blood flow through small tubes) Microvasc. Res. 1984年3月;27(2):204−22参照。)
【0083】
上記のマイクロ流体装置の満足な動作に対して長期の安定性が必要であることが認識される。たとえば、正しくなく、血流へシース溶液の意図しない混入をもたらし得るシース入口及び出口通路流れにおける不適切な差を阻止するのが望ましい。従って、チップに基づくマイクロ流体装置の共通の特徴である内臓電子装置及び光学装置(図示していない)は、抽出通路1002の配置される同一プレートすなわち“チップ”に装着される電気駆動型装置(例えば圧電弁)でシステム1000を調整する(例えば流れの変化を導入する)のに用いられ得る。
【0084】
出口通路におけるフィルタ1024及び/また1026の一つの故障時に生じ得るような、抽出流体に血球が存在する場合に抽出流体出口通路1014、1018における流体出口流れをモニターするのに限外顕微鏡(又は稀釈粒子の存在に感応する他の装置)が用いられ得る。さらに、膜が存在する場合に当然阻止されるが、膜なし装置においては生じ得る血液損失又は血液量過多症を生じさせる流れ不平衡に対して保護する制御装置が好ましくは設けられる。例えば、血球が膜なし処理装置外の抽出流体において検出される際、或いは予定量の血漿が除去される時又は血液量過多症が治療されることになる時に得られる血液と限界不平衡を超える正味のシース流れとの間の流れ不平衡を独立した流れ測定センサーが検出する際に、システムを遮断し、かつアラームを発生する制御システムが設けられ得る。
【0085】
上記で説明したように、抽出通路において、流体(例えば血液及び抽出流体)は好ましくは同じ方向に流れる。特に、対向方向の流れは血液・流体界面を乱し、そして望ましくない混合を生じさせる傾向がある。流体が同じ方向に流れる際には、シース及び血液流れの流体の等しい量が平衡を達成する時、最大交換率が達成できる(これは、上記のロシュミットの式によれば、抽出流体が血液と同じ速度で流れる場合に、溶質の抽出Eが1/2を越えないことを意味している)。言い換えれば、二つの流れが等しい場合、溶質の殆んど半分が移動され得る。さらに、大きな流れが溶質の大きな留分Eを除去させるので、それらの流れは補助処理装置に対して高い循環速度を要求し、従って一般に望ましくない低い濃度で溶質を処理させることになる。従って、これらの流れはほぼ等しいか、又は少なくとも3倍以内であるのが望ましい。当然、この説明は、試料及び抽出流体が溶質及び/又は他の交換成分を蓄積する容量のような同じ性質を備えている場合に当てはまり、また比率は、性質の異なる流体が用いられる際に相応して調整され得る。
【0086】
抽出効率のこの制限は、図11に示し以下に説明する形態によって解決でき、一つ以上の共同膜なし処理装置を相互に接続することにより逆向き流れ(対向流)の効果を達成する。特に、低い抽出効率は、システムの各ユニットにおいて流れが同時に発生ししかも総体流れがパターン及び効率において対向流れに近くなるように、マイクロ流体システムを比較的複雑にレイアウトすることによって解決され得る。
【0087】
与えられた所望の接触面積をn個のユニット(段階)に副分割し、各ユニットを対向流の仕方で他のユニットに接続して使用することにより、抽出効率を50%以上に高めることができる。図11には二段膜なし分離システムの例が示されているが、他の実施形態では二段以上にすることができる。各付加段は抽出を増加させることになる。図11を参照すると、二段膜なし分離システム1100は第1段抽出通路1102及び第2段抽出通路1104を備えている。システム1100はまた、二つの抽出通路1102及び1104の間で抽出流体から成分を除去する上述の補助処理装置1106を備えている。試料流体は、所与成分の濃度c0をもつ試料流体流量qsで、第1段抽出通路1102の試料入口1108に供給される。試料流体は第1段抽出通路1102から試料出口1110を通って流出し、そして濃度c1で第2段抽出通路1104の試料入口1112に流入する。試料流体の流れは両段を通してほぼ等しいと仮定される。さらに、試料流体は第2段抽出通路1104から試料出口1114を通って濃度c2で流出する。
【0088】
きれいな抽出流体は、抽出流体流量qEで第2段抽出通路1104の抽出入口1116に供給され、抽出流体の流れは両段を通してほぼ等しいと仮定される。抽出流体はきれいであるので、所与成分の濃度は値ゼロを割り当てる。抽出流体は、第2段抽出通路1104から試料出口1118を通って流出し、そして抽出装置入口1120を通って第1段抽出通路1102に流入する。試料流体と抽出流体との十分な接触面積が、上記の計算で決められた十分な時間の間、各抽出通路段1102、1104において維持される場合、所与成分の濃度は試料流体と抽出流体との間の平衡に近づく。従って、第2段抽出通路1104の抽出装置出口1118から出て行く抽出流体の濃度はc2に等しいと仮定される。抽出流体は、第1段抽出通路1102から抽出装置出口1122を通って流出し、そして抽出装置入口1124を通って補助処理装置1106へ戻される。第2段抽出通路1104におけるように、出口1122から流出していく抽出流体の濃度は出て行く試料流体の濃度にほぼ等しいと仮定される。従って、抽出流体の濃度はc1である。抽出流体で集められた成分は補助処理装置1106において除去され、それで、きれいな抽出流体は、補助処理装置1106から抽出装置出口1126を介して流出し、そして第2段抽出通路1104の抽出装置入口1116に再循環され得る。質量平衡計算は、所与成分の分別クリアランスCl/qsを見出すために、二段膜なし分離システム1100の各段について行われ得る。上記で定義した濃度及び流体流れ変数を用いて、第1段抽出通路1102の質量平衡は、qSc0+qEc2=(qS+qE)・c1として表され得る。第2段抽出通路1104の質量平衡は、qSc1+qE0=(qS+qE)・c2として表され得、ここでc0=1であり、また分別クリアランスCl/qsは1−c2に等しく、そして分別クリアランスと抽出流体/試料流体流れの比率との関係は、
Cl/qS=(λ2+λ)/(λ2+λ+1)
である。
【0089】
従って、Clは、λが無限大に近づくにつれて、試料流体流れの値に近づく。抽出流体流れが全体として試料流体流れの二倍(すなわちλ=2)になると、分別クリアランスはほぼ0.86である。これに対して、段なし、すなわち単一通過膜なし分離システムでは、最高効率は、相応した抽出流体が試料流体の半分と接触するとして、試料流体の各半分に等しい。従って、二段抽出通路システム1100は、等しい抽出流体流量で試料流体から成分を除去する際に、単一通過膜なし分離システムより有効である。図11には二段が示されているが、システム1100に任意の数(例えば3、4、5又はそれ以上)の段を用いることができ、全ての段は、マイクロ流体装置の製造用の公知の技術によって作られた単一基板又は基板セットに容易に設けることができる。従って、好ましい実施形態では、多段は、マイクロ流体段間にいかなる外部接続も導入することなく設けられ得る。
【0090】
好ましい実施形態では、各抽出通路は、抽出流体出口1122、1118に、図3〜図8について説明した形式のフィルタを備えている。一つの実施形態では、補助処理装置1106に接続される抽出流体出口1122にのみフィルタが設けられる。
【0091】
記載した装置、システム及び方法は、フィルタの微細孔のサイズを適切に選択することにより、“小さな”分子、“中間の”分子、高分子、高分子凝結体、及び細胞(血球)を含む異なるサイズの種々の血液成分を、血液試料から抽出流体へ拡散できる。この能力は、特に、種々の処理が異なるサイズの粒子を除去する必要があることを考慮すると、重要である。例えば、透析においては、低分子量の分子を除去することが望ましく、これに対して、重大な肝不全の治療においては、小さなサイズ及び中間サイズの分子の両方を除去しなければならない。一方、血液成分分離療法では、一般に、選択したタンパク高分子(例えば免疫グロブリン)を除去することが望まれ、これに対して、劇症敗血症の治療においては、一般に除去するのが望ましい成分は中間分子量の毒素である。一方、提案した抗ウイルス性治療においては、遊離ウイルス粒子を除去することが望まれ、またうっ血性心臓疾患の治療では、単純に水分及び電解質の非選択性群を除去したい。
【0092】
補助処理装置で抽出流体が受ける処理は、全血液又は血球なしの血漿を用いて従来の種々の形式の処理において行なわれたものと実質的に同じであり得る。補助処理装置は、抽出流体を鮮化するために用いた任意の種々の装置を備え得る。例えば、膜装置又は収着装置を用いることができる。さらに、抽出通路及び補助処理装置システムは腎置換療法への応用に限定されない。例えば、かかるシステムはまた、特殊な疾患に関連した物質を除去、破壊又は不活性化する野に用いられ得る。幾つかの例として、酵素反応装置、寒冷沈降反応装置、及び/又は紫外線照射装置が含まれる。システムはまた非血液試料流体から成分を抽出するために用いられ得、補助処理装置は、抽出流体及び除去されない試料流体の成分の少なくとも幾つかを受ける。
【0093】
上記及び以下の説明では、単一抽出通路及び単一補助処理装置が確認されるが、単数名詞は必ずしも単一構成要素を表すものでないことが認められる。例えば、試料流体と抽出流体との接触面積の大きいコンパクトさを達成する層状または折畳み型構造に多数の抽出通路を形成し得る。
【0094】
抽出通路内における第1抽出流体と試料流体との界面は、第1抽出流体と試料流体との相対流量を調整することによって変えられ得る。さらに、出て行く単数又は複数の流体における物質、例えば出て行く抽出流体中の又は抽出通路内の望ましくない血液成分を検出する検出装置が単数又は複数の出口受け流れ内に設けられ得る。そして検出装置からの信号は、試料流体と抽出流体との相対流量を調整するのに用いられ得る。検出装置の例は、非細胞流体を受ける抽出通路において赤血球を検出できる不透明度モニター又は限外顕微鏡である。検出装置の別の例は、不適切な流体流れのために血液の断絶を検出する表示し得るヘモグロビン検出装置である。総体及び相対抽出及び試料流体流量はまた、かかる状態を修正するように調整され得る。
【0095】
試料流体から成分を選択的に抽出する方法は、少なくとも第1内面と第2内面とを備えたマイクロ抽出通路を設けること、及びマイクロ抽出通路内に第1抽出流体と第2抽出流体と試料流体との層流を確立することを含む。抽出通路内の第1抽出流体の層流は抽出通路の第1内面と接触し、また抽出通路内の第2抽出流体の層流は抽出通路の第2内面と接触する。試料流体の層流は、抽出通路内の第1及び第2抽出流体の間に配置されしかも第1及び第2抽出流体と接触する。第1抽出流体及び試料流体の成分の第1部分は抽出通路から第1フィルタを介して抜き取られ、第1フィルタは、第1サイズより大きな成分を除外するようにサイズ決めされた微細孔を備えている。同様に、第2抽出流体及び試料流体の成分の第2部分は抽出通路から第2フィルタを介して抜き取られ、第2フィルタは、第2サイズより大きな成分を除外するようにサイズ決めされた微細孔を備えている。残りの試料流体は抽出通路から抜き取られる。
【0096】
上述のように、記載した実施形態は、乱流混合を防止する状態の下で、血液の混和性流体との接触によって膜を用いずに血液を清浄化できる。記載した実施形態は例えば血液透析において有用であることが認められる。しかしまた、実施形態およびそれの変形例もまた、試料流体と別の流体との間の交換が拡散機構を介して行われるのが望ましいその他の状況において有用である。
【0097】
特定の交換率に対して抽出通路によって設けられる界面領域は、上述の原理に従って、通路の長さ、幅及び数の適切な組合せによって達成され得る。必要な領域は、多数の抽出通路を設け、そして各通路が二つの界面を含むようにシース流れを設けることによって得られ得る。高さが低く(過剰な拡散時間及び工程内容積を避けるために)、長さが短く(過剰な圧力降下を避けるために)及び平行に、並行に又は積重ねてそれらを整列する必要性を提案する単一装置の幅の実際の制限の競い合う要求は実際のマイクロ流体装置において満たされ得ることが示される。
【0098】
記載した実施形態は、多数の疾患状態を治療するために個人の血液を処理するのに用いられ得る。例えば、上記の治療法は、急性腎不全、急性肝不全、重症筋無力症及びその他の自己免疫性疾患における高い抗体レベルの治療に用いられ得る。付加的な使用は、例えば、うっ血性心不全の場合における悪性敗血症または流体の除去に加えて、同一接合体性高脂血症におけるLDLの析出か又は収着による除去を含む。記載した実施形態はまた、AIDS患者におけるウイルス性心配(負荷)の軽減を助け、他の形式の血液清浄化を必要とする患者の治療のために用いられ得る。糖尿病の患者、過量の薬剤に苦しむ患者、毒物を摂取した患者、腎不全に苦しむ患者、急性または慢性肝不全に苦しむ患者、或いは重症筋無力症、紅班性狼瘡又は別の自己免疫性疾患をもつ患者も上記の装置及びシステムによって有益であり得る。例えば、本発明による交換装置は糖尿病用の療法ではないが、糖尿病の一つ以上の症状の改善に有効であり得る。さらに、記載した実施形態は、自己免疫異常の原因となるlgG分子又はその他の分子の血液を清浄するのに有用であり得る。さらに、本発明による実施形態は、急性透析又は長期透析に用いられ得る。症状、疾患及びここで挙げていない症候群に苦しむ患者(又は獣医使用の場合には動物)も治療できる。
【0099】
記載した膜なし装置及びシステムは好ましくは、長期間の治療を行い、体外血液量の少ないシステムにおいて実施され、従ってそれら装置及びシステムをコンパクトな形態で提供することができる。一つの実施形態では、本発明による装着可能な(又は少なくとも携帯型の)システムは、例えば、約20cc/分の流量で一日当たり20〜24時間運転時間できる。従って、患者は、個人の衛生、スポーツ活動又は装着され又は用いられる小さなシステムに馴染みやすくない他の活動のために用いられ得る決まった場所の装置(例えばシャワーや風呂)なしに、毎日例えば4〜5時間使える。従って上述の実施形態は、日々の又は夜間の血液透析が必ずしも十分な取り得る方策でない透析社会で認識された問題(例えば一時的な透析スケジュールに関連した物理的な疲労、気持ちなどのようなマイナスの影響)に対応する。特に、上述の実施形態では、患者は、継続して透析を受けながら、ほぼ通常の仕方で(例えば職場、学校、家庭などにいながら)動くことができる。
【0100】
種々の病状の治療に加えて、本発明による装置又はシステムは、血液において分子及び細胞を分離したり拡散するプロセスを研究するためだけでなく、他のものを処理する血液成分を抽出するために用いられ得る。例えば、血液中の個々の分子種の拡散は、独立して起こらず、またストークス・アインシュタインの式で表される簡単な仕方でサイズに依存しない。さらに、多くの溶質は、多くの形態すなわち遊離、複合、血漿タンパクに結合、細胞・表面部分、又は細胞内溶質に区分し得る。溶質の拡散率に対して、その種々の形態は局部平衡であったりなかったりし得る。これらの現象は、膜が存在する場合に、全体移動速度をゆっくりし、制御するので、観察されるようである。従って、本発明による膜なし装置又はシステムはこれらの現象を研究するのに有用な科学的ツール及び溶質をどの程度、及びどのように迅速に除去できるかについて区分が限界を設定するシステムであり得る。特定の例はアルブミンに対するビリルビン結合である。別の例は、部分的にイオン化した塩として、血漿における二つの陰イオン形態として及び幾つかの細胞内形態で存在する無機燐である。
【0101】
本明細書には、主に、最終段階の腎不全に対する血液処理に関して記載してきたが、血液成分の抽出は、遊離ウイルス性粒子のような治療のための他の成分を除去するのに用いられ得、またうっ血性心不全の治療において水分及び電解質の非選択性群を除去するのに用いられ得る。体外処理の付加的な使用は、他のものの処理か又は調査に有用な血液成分抽出することを含む。血漿(すなわち血漿交換)及び血小板の血液成分分離はこの目的でもつとも普通に用いられた方法である。本明細書には主として血液処理及びそれに関連した問題について説明してきたが、説明してきた方法の多くは、血液成分と共に他の流体を処理するために用いられ得る。
【0102】
また、本明細書で説明してきた抽出通路及び関連した要素は補助処理装置において用いられ得、また流体成分を選択する多段を形成するように連鎖され得る。例えば、二つの抽出通路の連鎖体は、第1抽出通路の抽出流体を第2抽出通路の試料流体通路に搬送し、従ってカスケードを形成する。第2抽出装置は例えば第1のものより小さな微細孔サイズをもつフィルタを壁に備え、それで第2抽出通路からの試料流体は中間サイズの粒子を含むが、最小粒子の留分は少なくなっている。このようなカスケードは任意数の段を備え得る。
【0103】
また当業者には認められるように、本発明は、例示のためであって限定のためのものでなく記載してきた実施形態以外で実施することができ、また本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0104】
ある特定の実施形態について本発明を説明してきたが、記載してきた実施形態に対して種々の変更、改造及び変形は、特許請求の範囲に記載したように本発明の範囲から逸脱することなしに可能である。従って、本発明は記載した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の文言で定義された全範囲及びそれの均等範囲に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A】抽出流体の粘性の二倍と仮定した粘性と5cm/秒の中心線速度とをもつ血液について計算し、両側を抽出流体で被包された血液の芯の流れの速度輪郭を示す図。
【図1B】抽出通路を比喩的に示す図。
【図2】各流体層が同じ厚さをもつ二つの流体層間の拡散交換を、1870のロシュミットの式を用いて描いている曲線を示すグラフ。
【図3】抽出流体入口及び出口にフィルタを備えた膜なし分離装置の簡略化した図。
【図4】図3の膜なし分離装置のフィルタを備えた出口通路の開口のまわりの領域の部分詳細斜視図。
【図5】膜なし分離装置の別の可能な実施形態の概要を示す図。
【図6】フィルタの一例を示す図。
【図7】フィルタの表面を横切っての流体掃引作用を例示しているフィルタの詳細側面図。
【図8】血漿搬出のために用いたフィルタを備えた膜なし分離装置を示す図。
【図9】複数のフィルタを備えた膜なし分離装置及び補助処理装置を備える膜なし分離装置システムの簡略化したブロック線図。
【図10】主及び補助処理装置を備えるシステムのさらに詳細な図。
【図11】二つのユニットに副分割し、試料と抽出流体との擬似対向流を達成するように構成したシステムの構成を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、流体間の成分交換に関するものである。さらに特に、本発明は、マイクロ流動膜なし交換による試料流体(例えば血液)の選択的分離に関する。
【背景技術】
【0002】
血液の体外処理は種々用いられることが知られている。このような処理は、例えば病気の治療を行うのに用いられ得る。例えば、最終段階の腎臓病の治療には、血液透析はこの目的のための体外処理の最も普通に使用される形態である。血液成分の抽出は、治療のため自由ウイルス性粒子のような他の成分を除去するのに用いられ得、またうっ血性心不全の治療では、水及び電解液の非選択性コホートを除去するのに用いられ得る。体外処理の更なる使用には、病気の状態を治療する或いは研究及び/又は診断するのに有効である血液成分を抽出することが含まれる。血漿(すなわち血漿の成分除去)及び血小板のアフェレーシスは、この目的で持つとも普通に使用される処置である。本明細書では、主に血液の処理及びそれに関連した問題について記載するが、ここに記載する方法の多くは、他の流体の処理にも同様に用いられ得る。
【0003】
血液から成分を分離しょうとする多くの異なる体外血液処理技術が開発されてきた。分離されることになる成分は、プロセスの目的によって変化する。本明細書で使用したような血液又は血液流体は血液成分をもつ流体であることが理解される。代謝性生成物すなわち毒物のような成分を血液流体から抽出するのが望ましい。これらの代謝性生成物は、小さな分子、すなわち通常“ミドル分子”と呼ばれる分子量の大きな毒素であり得る。
【0004】
最も普通の方法は、選択した血液成分を流れさせる実質的な面積の人工膜を利用している。この流れは一般的には、濃度か圧力或いはそれら二つの組み合わせにおける透過膜の差によって誘導される。別の形態の血液処理では、血液を収着剤粒子に通すことによって成分を分離している。さらに別の形態の血液処理では、血液は、不混和液(例えば、フルオロカーボン液)と直接接触され、それにより、溶解した二酸化炭素を除去し、酸素を生成するという望ましい結果となる。しかし、不混和性液体は一般に抽出するのが望ましい血液成分を受入れる能力が限定されるので、不混和液を使用する血液処理技術の有効性は限定される。
【0005】
血液処理についての療法の一つの一般的な例としては、最終段階の腎臓病に伴う種及びボリューム平衡異常の緩和がある。この方法で(例えば血液透析を通して)治療した患者の総数は米国において300,000人以上であり、そして増え続けており、基本の治療費用は合併症を除いて毎年80億ドルを超えている。その上、これら患者の圧倒的多数(約90%)は透析センターで三週間の間治療される。処置は改良され続けて、1970年代に最も普通の治療の方法及び基本的構成要素、血液透析が広く確立された。代表的な血液透析装置は、数千本の浸透性中空繊維の束から成り、各中空繊維は、長さ約25cm、内径約200μmである。中空繊維は透析用溶液によって外部から灌流されている。血液透析装置は、主として、拡散モードで作動されるが、しかし水の対流流出を誘起する透過膜圧力も加えられる。一週間当たり総計で7〜9時間の三週間にわたる治療では、一週間当たり200リットルを上回る透析用溶液に対して、患者の血液を一週間当たり120リットル以上透析する。これらの数値はある程度変わり、また競合する技術が存在するが、記載した基本的なアプローチは優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の種々の形態の血液処理を用いた治療(例えば血液透析)の利点にもかかわらず、達成した寿命の延びは、治療するために療法の用いられる病気の進行や複雑さ並びに療法自体の伴う幾つかの問題点によって困難となる。透析において常に幾人かの患者は完全に社会復帰される。上述のように人工膜、収着剤、或いは不混和性流体の表面に血液が接触する結果として血液処理に問題が生じる。かかる接触はしばしば、凝固、補体系の活性化、並び血液タンパク及び血球の不可逆(回復不能)凝集に応動し得る反応を含む、処理中の血液における生化学反応を誘起する。
【0007】
公知の血液処理技術に関連した別の問題は、人工膜や収着剤との血液の接触が血液媒体インターフェースを汚すことに成り得ることにある。一般的に知られているように、血液浄化法(例えば最終段階の腎臓病に関連したもの)は健康な平衡状態を維持するようにして最も望ましく行われる。実際、処理は、疲労及び渇きのような体液の組成における急激な変化の結着を避けるために、できるだけ殆んど連続した形態でしかも限定した速度で行われるべきであることが認められてきた。しかし、人工物質との血液の接触によって生じする汚れは、かかる物質を用いた装置を有効に使用できる時間を制限する。
【0008】
人工表面に生じた血液凝固による汚れは、凝固防止剤で軽減され得るが、しかし外来患者には許容できない危険が伴う。その結果、携帯型の血液処理装置は実際的ではなくなり、患者は一般的には上述のように挿間的な透析スケジュールの形態を受け入れるように強いられる。これらの問題に対する解決は認められれば要求され、外来治療は挿間的な透析に代えることにある。
【0009】
挿間的な透析の理由は沢山ある。例えば、上記の生体非適合性、携帯型装置の不足、患者の体外での血液循環の現在の必要性、及び治療法を自分で管理できない(特に、患者の血管に穿刺する必要のため)多くの患者の感覚。従って日々の透析(例えば毎週七日、1.5〜2.0時間)又は夜間透析(例えば毎週6〜7夜、8〜10時間)は治療時間が長くなり、多くの患者にとってはこれら治療形態の一つを用いることは気が進まず、或いは用いることができない。
【0010】
治療及び分析物抽出のために血液と透析流体とを直接接触させる装置は提案されてきた。例えば、Wellmanの米国特許公開第2004/0009096号には、血液と透析液とを互いに直接接触させる装置が記載されている。別の例として、Weiglの米国特許第5,948,684号には分析物分離の応用について記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
全体的には、本発明は、マクロ流体膜なし交換装置に抽出流体を導入しそしてかかる装置から抽出流体を除去するフィルタを特徴としている。本発明の実施形態は、混和流体(例えば、抽出流体すなわち補助流体)と接触させることによって試料流体(例えば血液流体)から望ましくない物質を選択的に除去するために用いられ得る。一つの実施形態では、フィルタの微細孔は、血液流体との接触を実質的に避けるように装置に設けられる。
【0012】
混和流体で血液の核を被包すること、或いは混和流体が血液の少なくとも実質的な部分と流路の包囲境界との間に存在することを保証することによって、これら境界に血液が接触するのを阻止し、或いは少なくとも制限する。同様に、ある幾つかの実施形態では、抽出流体は、血液とフィルタとの接触を実質的に阻止する。それで、二つの流体のこの形態は、血液中の因子の望ましくない活性化を阻止し、或いは少なくとも低減し、それにより、先行技術の血液処理において問題であった生体非適合性を低減する。
【0013】
本願で考察しているマイクロ流体装置は、高さ約0.6mm未満の通路を備え、ここで“高さ”は流れの方向に対して垂直でありしかも輸送の行われる界面に対しいて垂直な寸法である。以下にさらに詳細に説明するように、高さ約75μmの通路を用いることによって利点が得られる。しかし、通路の高さは0.6mm程度に大きくできる。通路の高さを小さくすると、試料流体から補助流体への成分の拡散にかかる時間が短くなり、その結果、通路の大きな高さに比較して性能が高くなりしかも装置の寸法が小さくなる。さらに、補助流体は通常血液と混和し、そして全ての成分の拡散的及び対流的な輸送が期待される。しかし、拡散的及び対流的な輸送は、試料流体と補助流体との乱れ混合なしに行われる。補助流体は、微細孔を備えた薄いバリヤー、例えば、約1μm〜約50nmの範囲の臨界寸法をもつフィルタを介してマイクロ流体装置の通路から引き抜かれる。
【0014】
上述のように、抽出通路の高さは約75μmであり得る。従って、抽出流体の二つの層と試料流体(例えば血液流体)の単一層との高さは必然的に75μm未満である。一つの実施形態では、抽出通路は高さ約75μmであり、また各流体層は高さ約25μmである。抽出流体は抽出通路の壁に沿って抽出流体を維持するようにして抽出通路内へ導入される。流体の極端に薄い層と拡散界面に沿った膜のないこととの組合せにより、膜に基づく装置を用いて得られる輸送速度と比較して高い輸送速度となる。高い輸送速度によって、流体の接触する総面積は膜に基づく装置に比較して相対的に小さくできる。同様に、抽出領域に到達するまでの血液流体入口通路表面のような抽出通路に隣接した血液流体との接触表面も相対的に小さくできる。従って、血液流体と人工表面との接触する総量は低減される。本発明のこの特徴は、生体適合性を高めることになる。
【0015】
フィルタを介してマイクロ流体抽出通路から混和性流体(すなわち抽出流体)を引き抜くことにより、抽出流体中にある特定の成分が生成されるのを阻止する。例えば、血球は、流体がマイクロ流体抽出通路内で接触する時間中に、血液から抽出流体内へ移動し得る。幾つかの動作シナリオでは、この移動は望ましくない。以下にさらに詳細に説明するように、流体の流れの特徴は、血球が血液流体の流れの中間に集中するように制御され得る。これにより、抽出流体内へ拡散する血球の量が減少するが、しかし幾つかの血球の移動はなお生じ得る。フィルタにおける適切な微細孔は、この僅かな数の血球が抽出流体で抽出通路から出ていくのを阻止する。さらに、マイクロ流体の流れの高いせん断速度特性は、フィルタ表面にこの表面を“掃引”するのに十分なせん断力を生じさせる。抽出流体中の血球の数は比較的少なく保たれるので、この掃引作用は、フィルタの表面を血球のない状態に容易に保てるようにし、従って目詰まりを防止するのに役立つ。
【0016】
同様に、その他の血液成分は、抽出流体と共に抽出通路から出で行くのを阻止され得る。例えば、タンパクフィブリノーゲンは凝固し得、そのため、ある実施形態ではタンパクフィブリノーゲンが抽出流体と共に抽出通路から出で行くのを阻止するのが望ましい。従って、フィルタの微細孔は、例えば約50nmの微細孔サイズをもつフィルタを用いて抽出通路内にフィブリノーゲンを保持するように寸法決めされ得る。さらに、流体の流れ特性、流体界面速度、及び流体接触時間は、ある特定の血液成分の損失を防ぎしかも汚れを防ぐ上で微細孔サイズの選択を補完するように制御され得る。
【0017】
また種々の実施形態は、体外抽出装置の連続使用を妨げる主要因であると知られている汚れ反応を除去する、又は少なくとも実質的に軽減する。特に、膜なし交換装置(また膜なし分離装置又は抽出通路とも記載する)における主要な輸送表面は、生体適合性が増大しまた界面が不変的に更新されるので、本質的に汚れない。従って、長期又は連続運転の主な妨げは除去され、殆んど連続した血液処理の利点の認められた小型で耐摩耗性の装置又はシステムの設計及び構造を可能としている。かかる装置又はシステムは、非常に小型化でき、そして患者が装着又は担持でき(例えば病院や診療所の外で)、また外部緩衝液容器(バックパック、ブリーフケース内の、或いは家庭や職場などに設置した容器からのもの)が供給され得る。さらに、汚れが軽減され、また長時間にわたって低い血液流れでの運転が維持できるので、要求されるかかる凝固防止は、血液が身体から出て行く際に管理され得、また体外回路に限定した影響に留まるように調整され得る。当業者には理解されるように、診療所外での体系上の凝固防止を避けることは非常に望ましい。
【0018】
本明細書に記載した装置、システム及び方法の幾つかは、サイズの異なる種々の血液成分を拡散できる。さらに、血液及びそれと接触する混和性流体の流れは、細胞成分の所望の分離を達成するために制御され得る。例えば、以下に説明するように、血球が血液・液体界面から離れて動くようにさせる種々の流れ状態が用いられ得、それにより、血球なしで血漿の実質的な量を除去するために血液を“掬い取る”ことが可能となる。フィルタは、特定の流れ状態において血球が血液・液体界面から離れて動く傾向があるにもかかわらず、混和性流体内へ移動し得る血球の除去を抑止することによってかかる掬い取り作用を行うのを助ける。
【0019】
以下に説明するように、抽出流体との血液の薄い層の膜なし接触は、全ての溶質について血液・抽出流体接触の単位面積当たり高い交換率を生じさせるために用いられ得る。自由(非拘束)溶質間の識別は、一般に、それらの拡散係数の比率の平方根未満である。特定の物質の高い交換率が望ましいが、無識別輸送は望ましくない。従って、本明細書に記載したように抽出流体出口にフィルタを備えた主要な膜なし交換装置は、血液からの望ましい物質の除去を制限し、かつ血液からの望ましくない物質の除去を行うために、少なくとも一つの補助処理装置(例えば、膜装置又はその他の形式の分離装置)と一緒に用いられる。かかる補助処理装置の効率は、血液の血球を激減させた(すなわち血球のない)留分(画分)を補助処理装置に送出できる主分離装置の使用によって大きく高められる。
【0020】
従って、膜なし交換装置の例では、抽出流体への血液の分子成分の輸送は無識別であり得る。血液から除去するのが望ましい或いは望ましくないこれら両分子成分を含んだ抽出流体は補助処理装置に供給される。補助処理装置は、膜なし分離装置の抽出流体入口へ(直接又は間接に)戻す再循環流れの組成を通して膜なし分離装置の動作を調整する。さらに、この仕方で用いた膜に基づいた補助処理装置は、せん断感受性である血球が存在していないので、非常に高い分離速度を達成できる。さらに、濃度分極(すなわち分離装置の上流側における補助処理装置によって拒否された物質の蓄積)は、タンパクに限定され、血球を伴わず、また抽出流体中のタンパクの濃度は、フィルタの微細孔サイズ、流体流れ特性及び流体接触時間の選択によって調整され得る。さらに、血球は主分離装置(すなわち膜なし交換装置)に留まるので、それら血球は、生体不適合性が非常に低減されるべきであるために、液体・液体接触領域においてではなく単に導管表面においてのみ人工物質を出会う。このようにして、耐凝固の必要性は非常に低減され又は除去され得ることが理解されるべきである。
【0021】
血液と人工膜との接触で生じた問題を改善する方策は、2004年3月15日付け出願のマイクロ流体膜なし交換装置を有する血液に基づく治療システム及び方法と題する米国特許出願第10/801,366号、及び2005年5月12日付け出願の同じ名称の米国特許出願第11/127,905号に記載されており、これら両特許出願はそれらの全体について参照文献として本明細書に組み込まれる。
【0022】
一実施形態によれば、本発明は、第1流体と第2流体との間で成分を交換する方法である。この方法は、第1及び第2流体のそれぞれの層を形成して、第1及び第2流体間での成分の拡散に基づく交換を、第1及び第2流体の混合なしに生じさせるようにすることにより開始する。例えば、流体は層流通路に流れ得る。本方法によれば、第1流体の少なくとも一部は、第2流体からの第1成分をブロックし、かつ第2流体からの第2成分を通すように寸法決めした微細孔を通って流れる。例えば、第2流体が血液である場合には第1成分は血球であり得、また第2成分は、アルブミン及び電解質のような大小の分子を含み得る。この実施形態のさらに特定の変形例では、濾過は、800nmの以下のサイズの微細孔に第1流体を通すことを含む。第2流体が血液を含む場合には、微細孔サイズは好ましくはこのサイズより小さく、そしてさらに好ましくは実質的にそのサイズ未満、例えば600nm未満である。
【0023】
好ましくは、層は、第1及び第2流体を通路に流すことによって形成され、濾過は、通路の壁の一部を成すフィルタを設けることを含む。好ましくは、フィルタは、通路の壁と共面である平滑な連続表面を規定する。このようにすることによって、フィルタは表面に物質が付着しないままにできる。これは特に、好ましくは狭い空間からの流体の高いせん断速度がフィルタの表面を洗浄するのを助けるので、フィルタの表面に垂直な方向の通路寸法が小さい場合に当てはまる。この特徴は、特に、血液中のタンパク及び血球が相対的に平滑な表面を備えていないフィルタに付着され得る実施形態において好ましい。さらに、好ましくは、微細孔は、曲がりくねってなくしかも枝分れしていない通路を規定している。
【0024】
上記の方法の別の好ましい変形例では、間に第2層を備えた二つの第1層が設けられる。このようにして、第2層は、内部に第1及び第2層が流れる通路が好ましい適当なアスペクト比を持つ場合には、第1層で被包され得る。流体の流れシートのこのようなサンドイッチ構造は、高い接触面積をもたらし、そして混合の生じないような非常に低いレイノルズ数をもたらし得、しかもなお層間の非常に有効な拡散が達成される。好ましくは、通路の断面アスペクト比は、10以上であり、そしてさらに好ましくは50以上である。好ましくは、通路の深さ(横断面の短い寸法)は、75〜500ミクロンであり、さらに一層好ましくは約120ミクロンである。
【0025】
上記の方法の実施形態の好ましい変形例では、第1流体は、濾過した第1成分において第2成分を濃縮し、そしてそれを一つ又は複数の第1層に戻して再循環することによって発生される。これは、第1流体の濾過から濾液を取り出し、そして第2成分を残しながら第1流体から流体を除去する流体処理装置へ濾液を通すことによって行われ得る。例えば、これは、濾液を限外濾過し回収し、そしてそれを再循環することによって行われ得る。これはまた、例えば、再循環流れに第2成分をさらに添加することによって行われ得る。例えば、第2成分は、第2流体が血液である場合には、血清アルブミンであり得る。
【0026】
一実施形態によれば、本発明は、第1流体から第1成分を清浄する方法であり、この方法は、第1流体と溶媒とを混合することなしに第1流体から溶媒へ第1成分を拡散させながら、搬送通路の壁から第1流体の層を分離するように溶媒の少なくとも1つの共流層によって取巻かれた第1流体の層を流すこと、溶媒から第1成分を除去すること、及び除去により得られた溶媒の共流層を補充することを含む。一実施形態では、第1流体は血液である。後者の実施形態においては、溶媒は好ましくは水溶液である。除去は好ましくは、溶媒をフィルタに通し、その結果得られた濾液を別のフィルタに通すことによって溶媒を濾過すること、及び除去の結果得られた濾液を回収することを含む。除去は、溶媒をフィルタに通し、その結果得られた濾液を別のフィルタに通すことによって溶媒を濾過すること、及び除去の結果得られた濾液を回収することを含む。第1流体が血液である実施形態では、すなわち好ましい実施形態では、除去は、血球をブロックするように溶媒を濾過することを含む。例えば、第1流体が血液である場合に、除去は、血球から遠隔位置で溶媒を透析すること、及び透析した溶媒を共流層に戻して血液タンパク質を血液中に拡散させることを含む。
【0027】
一実施形態によれば、本発明は血液の処理方法である。この方法は、壁に1ミクロン未満の最大サイズをもつ規則的なパターンの微細孔を有する壁部分をもつ通路に血液と水性溶媒とを同時に流させることを含む。本方法はさらに、微細孔を備え、微細孔の上流点で溶媒を通路へ戻す流れ回路へ溶媒を循環させることを含む。流れ回路は好ましくは、溶媒から水を除去し、そして一層好ましくは溶媒から尿毒素を除去する処理装置を備えている。好ましくは、微細孔は600ミクロン未満の最大サイズをもつ。
【0028】
好ましくは、後者の実施形態では、流れは、血球が壁面のほぼ全てに接触しないようにする流れを生じさせる。好ましくは、微細孔は約100nm又はそれ未満の最大サイズをもつ。同時流れは好ましくは、通路内をほぼ等しい容積流量で血液と水性溶媒を流すことを含む。
【0029】
別の実施形態によれば、本発明は、幅と深さの比が10以上である通路を有する流体処理装置である。深さは300ミクロン程度であり、また幅及び深さの両方は流れの方向に垂直である。通路は、流れ方向に平行である長さで分離した入力端部と出力端部とを備えている。二つの入口抽出流体ポート及び二つの入口抽出流体ポート間に配置した一つの入口試料流体ポートは入口端部近くに位置決めされ、また二つの出口抽出流体ポート及び二つの出口抽出流体ポート間に配置した一つの出口試料流体ポートは出口端部近くに位置決めされる。出口抽出流体ポートは第1フィルタを備えている。出口抽出流体ポートの少なくとも一方は、上記通路以外の流れ通路を介して入口抽出流体ポートの少なくとも一方に結合される。
【0030】
好ましくは、通路は、幅及び長さに等しい寸法の壁面を備え、第1フィルタは壁の一部を形成している。好ましくは、第1フィルタの微細孔サイズは1000nm程度であり、一層好ましくは800nm程度であり、さらに一層好ましくは300nm程度である。好ましくは、通路の深さは120ミクロン程度である。好ましい変形例では、幅と深さとの上記の比は50以上である。変形例では、実施形態は、一日程度にわたる処理サイクル中に通路を通して少なくとも1リットルの血液と少なくとも1リットルの溶媒とを汲み上げるように構成した少なくとも一つのポンプを有する。
【0031】
上記実施形態の特に好ましい変形例では、入口及び出口試料ポートは、患者にアクセスするため動脈及び静脈血管に接続できるコネクタを備えた通路に接続される。
【0032】
別の実施形態によれば、本発明は、第1流体と第1及び第2成分を含む第2流体との間で成分を交換する装置である。本装置は、第1及び第2流体が互いに直接接触するが混合しないようにして、それぞれ第1及び第2流体の少なくとも一つの第1層と少なくとも一つの第2層とを形成するように第1流体及び第2流体を受ける通路を有する。少なくとも一つの第1層及び少なくとも一つの第2層は同じ方向に流れる。通路は、第1流体のみを受ける少なくとも一つのフィルタを備えた出口を有し、少なくとも一つのフィルタは、第2流体からの第2成分を通すが、第2流体からの第1構成成分を阻止するように寸法決めした微細孔を備えている。好ましくは、少なくとも一つのフィルタは、800nm以下のサイズの微細孔を備えている。通路は壁を備え、また少なくとも一つのフィルタは好ましくは通路壁の一部を規定している。好ましい変形例では、少なくとも一つの第1層は二つの層であり、そして少なくとも一つの第2層は一つの層であり、第2層は二つの第1層間に位置決めされている。好ましくは、微細孔は、曲がりくねってなくしかも枝分れしていない真直ぐな通路を規定している。好ましい実施形態では、第1成分は赤血球である。
【0033】
第1流体は好ましくは、少なくとも一つフィルタに第1流体を通すことによって得た濾液中の第2成分の濃度を高めることで得られた流体を含んでいる。好ましくは、第2成分は血清アルブミンを含んでいる。好ましくは、通路は壁を備え、また少なくとも一つの第1層は二つの第1層であり、第1及び第2層の形成は、二つの第1層間に単一の第2層を備えてそれら二つの第1層を形成して、第1流体により、第2流体が通路の壁に直接接触するのを阻止するように構成される。好ましくは、通路は、アスペクト比10以上の流れ方向を横切る横断面をもつ。好ましくは、通路は、75〜300ミクロンの流れ方向を横切る深さをもつ。最も好ましくは、深さは約120ミクロンである。
【0034】
別の実施形態によれば、本発明は、第1流体と第2流体との間で成分を交換する装置にある。本装置は、各々それぞれの入口と出口とを備え、入口内へ流れる少なくとも二つの流体が互いに直接接触して入口内へ流れさせ、そして出口から流出させる第1及び第2通路を有する。本装置はさらに、入口及び出口を備え、入口で受けた流体の性質を変え、性質の変わった流体を出口へ運ぶ流体処理装置を有する。第1通路の出口の第1出口は第2通路の入口の第1入口に接続される。第1通路の出口の第2出口は流体処理装置の入口に接続される。第2通路の入口の第2入口は流体処理装置の出口に接続される。
【0035】
好ましくは、流体処理装置は膜、例えば透析装置を備えている。通路内の流体間の輸送が主として拡散によるように層流形態で第1及び第2通路に流体を流れさせる流体輸送装置が設けられ得る。好ましくは、第1通路の出口の第2出口はフィルタを備えている。好ましくは、フィルタは最大600nmのサイズの微細孔を備えている。
【0036】
一実施形態によれば、本発明は血漿から血球を分離する方法にある。この方法は、被濾過出口を備えた容器表面から、血球及び血漿を含む層において血球のほとんどを抜き取ること、及び血球が被濾過出口に入るのを阻止するように被濾過出口を介して血漿を除去することを含む。一実施形態では、層は流動層であり、またこの実施形態の変形例では、血球の抜き取りは、表面から離れるより壁に近い方が高いせん断勾配を流動層に形成することを含む。好ましくは、層は水性溶媒を含む。被濾過出口は好ましくは、容器表面と共面である表面を備えたフィルタを備えている。この場合、層が表面近くにせん断を備えた流動層である場合に、せん断はフィルタの表面を清浄する。
【0037】
本発明の別の特徴、本発明の本質及び種々の利点は、全図を通して同じ部品を同じ参照文字で示す添付図面と共になされる以下の詳細な説明を考慮することにより一層明らかとなる。
【0038】
本明細書に組み合わされ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を例示し、そして上述の概要説明及び以下の詳細な説明と共に、本発明の特徴を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0039】
交換装置は試料流体から選択した成分を抽出する。交換装置は、抽出流体と試料流体が直接接触するが、共通の抽出通路を通じて規定した層に留まるように、共通の抽出通路を通して層流で抽出流体と試料流体を通過させる。好ましくは、抽出通路は、層流状態を保証し、通常使用の状態の下でも維持され、そして試料流体と抽出流体との間の大きな界面面積をコンパクトな構成で可能にする寸法をもつ。従って、通路及びそれに関連した構成要素は用語マイクロ流体で特徴付けられ得る寸法を備えている。
【0040】
図1A及び図1Bを参照すると、好ましい形態では、試料流体104は血液であり、二つの抽出流体層102の間に挟まれる層で流れ、全ての流体は共に抽出通路105を通って流れる。図1Aにおける紙面に対して、抽出通路105は紙面内へのびる幅と、水平方向の長さと、垂直方向の深さとをもっている。一般的には、本明細書で使用した用語“幅”は、流れの方向に垂直でしかも二つの液体間の界面に平行な寸法であり、用語“深さ”は、流れの方向及び二つの液体間の界面に垂直な寸法であり、また用語“長さ”は、流れの方向に平行な寸法である。抽出通路105上にはグラフが重ねられおり、このグラフは軸線を用いて試料流体104及び抽出流体102の層の速度輪郭を示している。
【0041】
抽出通路105における流れは、試料流体104及び抽出流体102の層間の二つの液体・液体境界面110を形成している。抽出通路105は、試料流体が抽出通路105内に位置しながら試料液体104を抽出通路105の人工壁107から実質的に分離するように構成され得る。例えば、好ましい形態では、抽出通路105は深さより何倍も幅広くて長い。その結果、試料流体104は、大きな面積(長さ×幅)にわたって抽出流体102と接触し、しかも側方縁部では非常に小さな面積(試料流体層の長さ×深さ=2B)にわたって通路の人工壁107と接触する。これにより、試料流体104と抽出流体102との間の大きな界面が形成され、抽出通路の壁から試料流体104を有効に分離する。
【0042】
好ましい抽出通路105は入口125を備え、入口125は、壁107に隣接して抽出通路105内に流体を搬送する。抽出通路は、入口125から長さ方向に変位したそれぞれの出口123を備え、これらの出口123は抽出通路105から抽出流体102を抜き取る。試料流体104は、それぞれ整列した入口127に流れ込み、そして出口129から流れ出る。入口及び出口123、125、127、129の実施形態の詳細は以下に実施形態に関して説明する。腎置換療法に用いることのできる抽出通路105の好ましい実施形態においては、試料流体104は血液であり、また抽出流体102は透析液のような水溶液である。以下にさらに詳しく説明するように、血球は、タンパクやイオン種のような小さな粒子より一層ゆっくりと拡散するので、試料流体104の層に留まる傾向がある。血球はまた、抽出通路105の中心に位置する流れの低いせん断領域に向って移動する傾向にある。(低いせん断領域へ移動する血球のこの傾向は、Goldsmith,H.L.及びSpain,S.著 小さな管を通しての血流中の白血球の辺縁趨向(Margination of leukocytes in blood flow through small tubes) Microvasc. Res. 1984年3月27(2):204−22に開示されている。)好ましい実施形態では、血球又はその他の大きな粒子は、フィルタ(図1A及び図1Bには示されていない)によって抽出流体出口1234から出て行かないようにされ、これらのフィルタについては以下に詳しく説明する。
【0043】
速度輪郭112/114は、試料流体104の性質が抽出流体102の場合と同じである状況について計算される。速度輪郭112/114は、二次元通路における層流によって仮想される標準的な単一流体輪郭と一致する。しかし、速度輪郭112/116は丸くなっており、これは、試料流体104の粘性が抽出流体102より高い時に生じする。これは、試料流体104が血液であり、また抽出流体102が透析液である場合である。図1Aには、試料流体104と抽出流体102との間に実質的に明確な境界面110がある場合の計算した状態を示していることが認められる。実際の装置では、流体の性質は、境界面110がそれらを横切っての流体成分の拡散のために識別できなくなるので混ざり得る。
【0044】
抽出通路105内の分子の輸送は好ましくは混合なしの非乱流である。流れ形態を選択した流量及び通路サイズにすることによって、混合は確かに防ぐことができる。透析装置として機能するような形態にすると、装置は、血液と人工物質との接触時間を短くし、体外血液容量を低くし、かつマイクロ流体装置のサイズを非常にコンパクトにして処理を行うことができる。本明細書で使用した用語“体外”は患者の身体から血液を取り出すことに必ずしも限定されるものでなく、患者の体内に挿置されるマイクロ流体抽出通路が本発明の範囲から除外されるものではないことが認められる。
【0045】
試料流体104が全血液であり得る腎置換療法の実施形態では、血液の非球成分のみを抽出通路105によって抽出しようとするものである。抽出通路105内の抽出流体102の流れは、一つ以上の注入ポンプ130、132及び抜き取りポンプ134、136の適当な組合せを用いて抽出通路105内の血液の流れに関係なく制御され得る。例えば、第1注入ポンプ132は抽出流体102を抽出通路105内へ注入でき、また第1抜き取りポンプ134は抽出通路105から抽出流体102を抜き取り得る。同様に、それぞれの注入ポンプ130及び抜き取りポンプ136はそれぞれ、抽出通路105内へ試料流体104を注入し、抽出通路105から試料流体104を抜き取り得る。ポンプ130〜136の相対流量を制御することによって、抽出通路105内に存在している血液の総量の変化は変えられ得る。血液処理の実施形態では、流入量及び流出量の制御は、腎置換療法の普通の要求である患者の流体量を調整するのに用いられる。この実施形態では、抽出通路の深さ(図1に示す6B)は、好ましくは70〜300μmの範囲、一層好ましくはほぼ120μmである。好ましくは、抽出通路105は少なくとも10の幅対深さ比をもつ。好ましくは、幅対深さ比は50以上であり、一層好ましくは500以上である。図1Bの比喩的な表示には四つのポンプが示されているが、他の実施形態ではより少数又は多数のポンプを使用することができる。
【0046】
図1Aを参照すると、抽出流体102の層で両側を被包した芯試料流体104の層の速度輪郭112/114は抽出流体の粘度μSの二倍と仮定される粘度μB及び5cm/秒の中心線速度をもつ血液について計算される。この中心線速度では、10cmの流路長さは2秒より僅かに長い接触時間をもたらす。界面速度(τ=L/v)で分割した接触面積の長さで決まる露出時間の間二つの移動流体の定常接触によって生じる(小さなイオンから血球までの全てのサイズの)成分粒子の拡散は、特定の時間の間のうっ血性流体のある容量と別のものとの瞬時露出に類似している。従って、共有流路に沿って流れる流体に生じる事態は、有限な時間期間の間、互いに露出した二つのうっ血性流体に生じる事態に匹敵している。うっ血性流体の問題は1870年にロシュミットによって解決された。
であり、ゼロ次項については、
の時に
で十分である。
【0047】
この式は、膜なしシステムにおける流体間でどの程度の質量が輸送されるかの評価を非常に簡単化する。特に、この式は、二つの液体が並流し、時間間隔tの間接触したままである時に拡散係数Dで成分の抽出Eの近似を行う。
【0048】
図2には、ロシュミット式の変形を用いて抽出対(π/2B)2Dtを表し、各流体層は同じ厚さB(すなわちBは試料流体の被包層の半分厚さである)をもつ。図2に示す状態は抽出流体(抽出流体)の層と接触する厚さBの血液層として分析され得る。シース層はゼロ濃度であると推定され、またEは時間tにおいて抽出される血液層における物質の留分であり、Dは抽出物質の拡散係数である。Bの二倍の厚さの層が厚さBの流体層で両側において境界決めされる場合、式はなお記載したように適用する。この式で示されるように、Eは、共流において、最高抽出が二つの流体の平衡に層に相応しているので、0.5を越えることがない。
【0049】
最大可能抽出(E=0.45である)の90%が望ましい場合には、比Dt/Bはほぼ0.86でなければならない。拡散係数、血液層の厚さ及びこの値を作る露出時間の任意の組合せは同じ抽出をもたらす。さらに、この抽出を達成するのに必要な面積(2LW)は0.86BQ/Dに等しく、ここでQは血液(及び抽出流体)の流量であることが示され得る。従って、尿素(0.300cm3/秒の血液流量でD=10cm)の場合、必要な面積は2.58B104cm2である。Bを100μmとすると、必要な面積は258cm2である。この流れは、装着可能な人工腎臓において必要なものである。代わりに、5cm3/秒の普通の流量が用いられる場合には、必要な面積は4300cm2である。薄い膜が用いられる場合には、特定の抽出を行うのにさらに小さい面積でよい。
【0050】
抽出に関して、長さLと幅Wとの組合せは、必要な面積及び特定の抽出率を作るように変えられ得る。(アルビミンについてのDが5×10−7cm2/秒であるとすると、それの抽出は尿素の場合の0.116,26%である。)通路の深さの増大は必要な接触時間を増やし、被包流れの安定性を低下させ得る。総血液層の厚さが25、50、又は100μmであり、また血液の流れが20ml/分(装着可能な人工腎臓の場合のように)である際に、尿素(5×10−7cm2/秒)のような物質を90%の平衡を達成させるのに必要な界面面積はそれぞれ18、36、71cm2である。従って、これらの例が示しているように、ある特定の実施形態では、総血液層の厚さは約25μmであるのが望ましい。望ましいが、この厚さは本質的なものではなく、他の考察では、血液処理の実施形態において異なる血液層厚さにするのが望ましくなる。また、上記の計算は透析型血液処理に適用する。しかし、認められるように、本発明は他の形式の交換プロセス及び流体に適用され得る。
【0051】
流れシステムでロシュミット式を用いることは、両流体が一様な速度で動いていると仮定して、質量輸送率及びクリアランスを正確に評価する妨げとなる不一致を導入することが認められるべきである。特に、被包流体(血液)について卓越した近似をもたらすが、抽出流体における界面からの距離による速度のほぼ直線状の減衰を無視している。それにもかかわらず、ロシュミット式は、シース層が血液層(B)の半分の暑さの二倍である総厚さ(2B)(図1Aに示すように)及び従って中心流れの半分にほぼ等しい流量をもつ際に構成上の目的に適合する。
【0052】
血球のせん断誘起自己拡散係数Dparticleは、濃縮懸濁液についてLeighton及びAcrivos(1987年)による式:Dparticle∝φ2a2γ2(ここでφは粒子量留分であり、aは粒子半径であり、またγはせん断率である)を用いて評価され得る。従って、血球の特徴とする変位はΔy∝√Dparticletとして表され得る。血球量留分φ≒0.45/2=0.225であり、赤血球の平均半径a≒2.5μmであり、また血液層上の平均せん断率γ≒3〜28/秒(0.5〜5cm/秒の平均速度範囲に基づく)であるように層流システムに対する代表値を選択することにより、小さな溶質の典型的な拡散係数よりほぼ三桁小さい大きさであるDparticlet10−8cm2/秒を計算する。せん断誘起自己拡散係数のこの値に基づいて(及び層間の10秒の接触を仮定して)、血球は、血液速度及び付随するせん断率の選択に関連して、中心層から特徴とする距離Δy≒3〜9μmだけ変位されることが評価される。中心層から離れる血球のこの僅かな移動距離により、血液の血球のない部分の除去が容易となる。
【0053】
多くの理由で、小さな粒子対大きな粒子(すなわち、小さな分子対高分子或いは血球)の拡散速度の違いに単に依存する膜なし抽出通路105は、血液処理の基礎を成すように十分に弁別し得ない。例えば、腎置換療法用の実際のシステムは、好ましくは、出口129から回収された試料流体104が入口127に入る血清アルブミンのような高分子の相当な留分を減少させるのを阻止する。さらに、システムはまた、血球の損失を防ぐ必要がある。以下に説明する実施形態では、普通膜に関連した高度の弁別をもっ手直接接触交換の利点をもたらすように、上記の抽出通路に付加的な特徴が組み込まれる。
【0054】
図3は、抽出通路300の簡略化した側面図である。抽出通路は、種々の技術、例えばwEDM(ワイヤーカット放電加工)法を用いて作られ得る。例示実施形態は、抽出通路302を備え、この抽出通路302は三つの別個の入口通路304、306、308から流体を受ける。抽出通路302からの流体は、三つのそれぞれの出口通路310、312、314を通って抽出通路から出て行く。入口通路304は、入口通路304を抽出通路302に接続する開口316を備えている。同様に、入口通路308は、入口通路308を抽出通路302に接続する開口318を備えている。出口通路310、314は抽出通路302に対する相応した開口320、322を備えている。抽出流体は、入口通路304から出口通路310へ層流形態で抽出通路の頂面に沿って流れ、また入口通路308から出口通路314へ抽出通路の底面に沿って同様な形態で流れる。
【0055】
フィルタは好ましくは開口316、318、320、322の全て又は幾つかに設けられ、これらの開口を介して抽出流体は抽出通路302に流入し、そして抽出通路302から流出する。例えば、図3の実施形態では、フィルタ324、326はそれぞれ、入口通路304、308の開口316、318に配置され、またフィルタ328、330はそれぞれ、出口通路310、314の開口320、322に配置される。フィルタ326、330の間の抽出通路302の長さは好ましくは約1〜2cmである。フィルタの長さは約3〜4mmであり得る(図4にLで示すように)。多数の抽出通路を並列にのばして設けることにより、例えば30cmの総合抽出通路幅を得ることができる。図4には、図3の抽出通路300の出口通路314の開口322の周りの領域を部分拡大斜視図で示している。フィルタ330は、出口通路314を抽出通路302に接続する開口322に配置される。一つの例示実施形態では、フィルタ330は図示したように断面逆“T”字型である。出口通路314の開口322は、開口322の側壁406に形成した二つの対向溝404を備えている。これらの溝404はフィルタ330の二つの相対タブ408を受ける。この構造により、フィルタ330を適位置へ摺動することによりフィルタ330を組み込むことができる。同様に、フィルタ330は、出口通路開口322から摺動させることによって出口通路開口322から取外すことができる。従って、この例示構成によりフィルタ330を容易に交換することができる。
【0056】
フィルタ330は、開口322とフィルタ330との間の隙間をなくすような寸法及び形状のものであることができ、それにより、表面の微細孔を介して抽出流体を流れさせる。代わりに、フィルタは、平坦な表面が抽出通路302のフィルタ面であるように支持するために、上流段部及び下流段部をもつ凹部に取付けられ得る。フィルタ330を組み込んだり取外したりするために開口322の領域にアクセスするための種々の技法を用いることができる。例えば、抽出通路300の側部は取外し可能なプレートでシールされ得る。従って、このプレートを外すことによって、開口316、318、320、322にアクセスできる。フィルタは、通路304、306、308、302、310、312、314を形成するのに用いた物質にフィルタを一体形成することを含む種々の機械的取付け形態が可能である。
【0057】
血液処理装置においては、フィルタ328、330は好ましくは、抽出流体出口通路310、314への血球の移動に対して保証するように設けられる。また入口フィルタ324、326は、抽出通路302への大きな粒子の導入をガードし、かつ抽出通路302への抽出流体の流れを平滑にするように設けられ得る。フィルタ330に示した微細孔のサイズは単に例示のために非常に誇張されている。好ましくは、実際の微細孔のサイズは直径1000nm未満であり、さらに好ましくは600nm又はそれ未満である。さらに一層好ましくは、サイズは約100nmであるが、しかしさらに小さく、例えば10nmであってもよい。
【0058】
上記の特定の製造法は単に例示のためのものである。例えば、抽出通路300の寸法は、本発明の範囲から逸脱することなしに変えられ得る。図5には、別の実施形態の抽出通路500の概略を示している。試料流体は入口通路506から抽出通路502に入り、そして出口通路512から流出して行く。この例では、入口通路504、508及び出口通路510、514は、抽出通路502の長さ方向に対して90°の角度を成していない。従って、例えば、出口通路514の開口522及びフィルタ530は流れの方向に向いている。
【0059】
図6にはフィルタ330の一例を示す。フィルタ330は、微細孔径より大きい粒子サイズをもつ成分を除去するように選択的にサイズ決めされた微細孔602を備えている。微細孔602の直径は、出口通路310、314から除去するようにされた成分に従って変えることができる。微細孔602の直径は、数nmから約10nmまで範囲にできる。従って、流体が抽出通路内にある間に試料流体の種々の成分が抽出流体層内へ移動できるが、フィルタは、ある特定の粒子が出口通路を介して抽出通路から流出させないようにしている。例えば、本発明の実施形態が人間の血液から物質を除去する透析処理において用いられることになる場合には、例えば約300nmのフィルタ微細孔サイズは、血球を除去するために選択され得、それにより、血液流体とフィルタとの接触を実質的に避けながら、処理すべき血液流体からの血球の損失を防止する。
【0060】
上述のように、フィルタは、入口通路304、308の開口316、318に備えられ得る。これらの開口に備えられるフィルタは、抽出通路302内へ流体を容易に一様に分配することによって抽出流体の導入を安定化するのに役立つ。出口通路310、314におけるフィルタ328、300によって、フィルタの表面を横切るせん断流れは好ましくは維持される。さらに、フィルタは、入口通路304、308内への望ましくない成分の進入を阻止する。フィルタは、抽出流体の流れがない時間が存在し、しかも試料流体が試料入口306を介して抽出通路302内へ流れている実施形態において特に有効であり得る。出口及び入口におけるフィルタの微細孔サイズは所与フィルタを横切って一様であり得るが、入口フィルタの微細孔サイズは出口フィルタの微細孔サイズと異なってもよい。
【0061】
上記のフィルタに用いることのできる商業的に利用できる装置の一例は、マイクロ篩マイクロ濾過装置である(Aquamarijn Micro Filtration BV,Berkelkade 11,NL 7201 JE Zutphenで入手できる)。これらのフィルタ表面は、写真平版シリコンチップ製造技術及びその他の技術を用いて形成され得る。例えば、フィルタは、600μm厚のシリコンウエハをほぼ1μm厚の窒化珪素の層で被覆することによって作られ得る。そして微細孔パターンは、現状の技術の写真平版マスキング及びエッチング技術を用いて窒化珪素層に形成され得る。窒化珪素層をエッチングした後、シリコン層は、窒化珪素層の下側を露出させるように粗くエッチングされ得、それにより、微細孔を通る流路を形成する。いくらかのシリコンは、相対的に薄い窒化珪素層に対する支持体を形成するために、エッチング処理中に残され得る。また、フィルタ構成要素は、フィルタの接着され得る支持構成要素(図示していない)と共に、フィルタ330のような多くの部品を備え得る。
【0062】
フィルタに望ましい性質は、フィルタを清浄し、抽出通路に対向した表面に血球や高分子を捕捉するのを避けように、抽出通路流れを生じさせる平滑で規則的な表面を備える。さらに、フィルタに規定した通路は好ましくは曲がりくねってなくしかも枝分かれしない好ましくは規則的なアレイを形成する。好ましくは、また、フィルタは、濾過した流体の平滑で真直ぐな流路並びに抽出通路内の流れに対向した平滑な表面を規定する。任意の支持構造体を含むフィルタはまた、粒子が小さな表面特徴部に付着したりトラップされることなしに直接微細孔通路を通って流れるようにすべきである。このようなフィルタを作る技術及びそれらのフィルタを構成する物質は種々あり、それらは進歩し、かつ改良され続けることが期待される。本発明は、血液又は血液流体を処理する実施形態では上述の性質が好ましいが、フィルタを製作する又はフィルタを構成する任意の特定の方法に限定されない。
【0063】
図7には、図3に示す出口通路314の開口322のまわりの領域を拡大側面図で示している。図面において、抽出通路302の底部に沿って流れる抽出流体層702が示され、また抽出流体層702の頂部上を流れる試料層704が示されている。流線706は流れの方向を表している。抽出流体702がフィルタ330を通って引かれる際に、抽出流体層は、抽出流体層702の曲がった境界面707で示すようにフィルタ330に向って下方へ引かれる。抽出流体層702は、フィルタ330に近づくにつれて、下向き流れ成分710と前向き流れ成分712をもち、合成成分は708で示されている。前向き流れ成分712は、フィルタ330の表面を掃引するように作用する。従って、フィルタ330の表面に沿って集まる抽出流体702に含まれた全ての成分は、前向き流れ成分712の方向においてフィルタ330の表面に沿って掃引される。この掃引作用は結果として除外成分を試料層704へ戻す。
【0064】
境界面707は流れパターンを正確には表してなく、単に、試料層704をシースする抽出流体層702が出口通路314へ実質的に引かれることを示すものであることが認められる。また、抽出流体層702と試料層704との間の境界面は十分に規定されてないことが認められる。実際に、一実施形態では、抽出通路302は、全ての成分が血球を除いて実質的に混合されるように構成され、これにより抽出流体層702の中心低流体せん断領域に向って移動する傾向がある。
【0065】
図8には、上記の装置300と同様な膜なし分離装置800を示している。膜なし分離装置800は、抽出通路802(図8にはない)、三つの別個の入口通路804、806、808、及び三つの相応した出口通路810、812、814を備えている。膜なし分離装置800は、入口通路804、808に配置したフィルタ816、818を備え、また出口通路810、814に配置したフィルタ820、822を備えている。しかし、本発明は、使用した入口又は出口通路の数によって限定されず、また本発明は各入口及び出口通路にフィルタを設ける必要性によって限定されないことが理解される。図8に示すように、膜なし分離装置800は血漿交換装置として用いることができる。例えば、図8に示すように、入口通路806を通って抽出通路802(図8にはない)に入る血液から血漿が掬い取られ、そして出口通路810、814を通って抽出流体と共に出て行く。この掬い取りプロセスは、入口通路804、808に入る量より多くの量の抽出流体を出口通路810、814を引き抜くことにより行われる。従って、この過剰の量は血液流体から除去される。図8には、抽出通路802(図8にはない)を通る流れの層構造を簡略に示している。例示した実施形態では、入口通路806に入る試料流体、入口通路804、808に入る抽出流体、及び809で示す形成層は、それら層の接触時間が増えるにつれて、組成が漸次に変化していく。その結果、混合層811は、両流体からの成分が同じ比率で存在するように特徴付けられる。血球は抽出通路802の低せん断流れ中心線に向って移動する傾向があるので、混合層811は入口通路806に入る試料流体806からの血球がない。図8に示すように、混合層811に入る試料層からの少なくとも非血球成分は抽出流体出口通路810から出て行く。抽出流体は正味の増量を含み得、それにより、混合層811は、試料流体出口通路812と二つの抽出流体出口通路810、814の各々との間で分けられる。
【0066】
図8は比喩的に示されており、実際には混合層811は図示したように明確な境界面で区別されないことが明らかである。また、上記の説明及び実施形態から明らかなように、抽出通路802(図8にはない)は、血液から血球成分を分離する又は抽出流体がなくても血球のない血漿を抽出するのに用いられ得る。血球のない血液留分は、流れの中心に対する血球のせん断誘起自己拡散のために相対的に血球のない抽出通路の層から有効に掬い取られ得る。同じ効果は、抽出流体のない場合に血球を濃縮するのにも用いられ得る。抽出流体の壁の近くの出口におけるフィルタ(例えば822)は、抽出通路802(この番号は図8にない)から取られた血球を含まない留分に血球が存在しないようにしている。
【0067】
腎置換療法装置の好ましい実施形態では、抽出通路は、抽出通路の抽出流体出口から抽出流体を受ける補助処理装置と共に作動し、抽出通路の外部で抽出流体を処理し、そして抽出流体を抽出通路の抽出流体入口へ戻す。図9には、抽出通路902及び補助処理装置904を備えるシステム900の簡略化したブロック線図を示している。詳細には示していないが、抽出通路902は、図3〜図8に示しまた種々の抽出通路実施形態に関して上記で説明した特徴を備え得ることが理解される。処理を受ける血液は、入口ライン928を通って抽出通路902に供給され(また抽出通路902から除去され)、そして出口ライン920を通って除去される。一方、補助処理装置904によって再循環される抽出流体は、それぞれ入口ライン930、932を通って抽出通路902に供給される(また抽出通路902から除去される)。従って、この例では、三つの流体流れが存在する。第1流体流れは、入口及び出口ライン928、920で搬送される処理すべき血液流体である。第2流体流れは、抽出通路902において血液流体と接触しそして入口及び出口ライン930、932を通って搬送される抽出流体(すなわち、抽出流体又は補助流体)である。第3流体流れは、成分を更新するために抽出流体と交換するのに用いられ、そしてそれぞれ入口及び出口ライン906、908を通って補助処理装置へ及びから搬送される。また図9に示すように、補助処理装置904は溶質を、連続した新しい供給によって更新される膜を通して第3の流体(例えば透析液)と交換する。第3の流体は入口ライン906を通って導入され、そして補助処理装置904で用いられた後、出口ライン908を通って送出される。こうして、抽出通路902は、補助処理装置又は抽出通路902の壁における膜の表面のような大きな面積の人工表面と接触することから血球を保持しながら、試料流体と抽出流体との間で溶質を平衡させる。
【0068】
補助処理装置904は、試料流体との所望の相互作用が達成されるように受けた抽出流体を変えるのに種々の機構を使用できる。限外濾過、血液透析濾過、及び透析に加えて、これらは、特に小さな及び/又は大きな分子に目標付けした収着剤を用いた収着、化学反応、及び沈殿を包含する。以下の国際特許公報には適当な血液透析濾過の幾つかの例が開示されている。WO02/062454(出願番号PCT/US02/03741)、WO02/45813(出願番号PCT/US01/47211)及びWO02/36246(出願番号PCT/US01/45369)。さらに、低分子量溶質が補助処理装置における血液透析濾過によって除去される時には、好ましくは血液に無菌緩衝腋が添加されて流体量を増やし、小さな分子を補助処理装置の血液透析濾過膜に通す。通常の血液透析濾過では、このような置換流体は血液透析濾過装置の前又は後に添加される。しかし、記載した実施形態では、血液流、又は抽出流体の主源である補助処理装置904からの再循環流体に対して、この置換流体を添加するのが有利である。
【0069】
抽出通路と共に動作する補助処理装置は、補助処理装置で保持され、かつ抽出通路へ戻して搬送される高分子の流入に対して抽出通路からの高分子の流出を自動的に平衡させることが認められる。従って、補助処理装置は、抽出通路の抽出流体に対して入口へ戻す再循環流れの組成を通して抽出通路の動作を調整する。
【0070】
血液治療では、血液中に留まるのが望ましい高分子の一つの例は血清アルブミンである。記載した抽出通路実施形態のような拡散に基づく交換装置の各通過時に、アルブミンは、小さな溶質の割合の1/4程度拡散する。しかし、腎置換療法処理では、所与量の血液は、総体内水分区画を通して分配されるので身体から尿素を除去するために、交換装置を通して何回も通過しなければならない。従って、尿素は、血液の尿素激減容量によって組織から捕捉され、そして補充されるべき抽出流体に通されなければならず、同じ容量を処理において恐らく10回、組織へ戻してさらに尿素を捕捉し、そして抽出流体に供給する。こうしてアルブミンは尿素に比較してゆっくりと拡散しながら、アルブミンの所与分子は抽出流体によって捕捉されることになる機会が多くなる。その結果、アルブミンの固有の拡散速度は比較的低いが、アルブミンの分留除去は、尿素の分留除去を超えがちであり得る。
【0071】
補助処理装置(例えば、アルブミンではなく尿素及び水分を抽出できる膜装置)は、補助処理装置で処理した抽出流体に血液を戻すことによって血液に対してアルブミン不の除去を保証するのに用いられ得る。これに対して、尿素は、補助処理装置によって抽出流体から除去され、そして抽出流体は抽出通路へ戻され、尿素が除去される。その結果、更新した抽出流体は抽出通路において一層捕捉することができる。上述のように、抽出流体の戻り流れはまた選択した水分も含み得る。従って、この流れの組成は、尿素及び水分の更なる抽出を回復するが、処理すべき血液と抽出流体との間におけるアルブミン濃度の差がなくなるので、アルブミンの更なる抽出を回復しない。
【0072】
抽出流体の入口流量と出口流量との差は、存在している試料及び抽出流体流れの組成を制御するように制御され得る。腎置換療法実施形態では、抽出通路からの抽出流体の流出量がそれの流入量に等しい場合に、尿素が補助処理装置で除去されても、出て行く抽出流れへのアルブミン及びその他の高分子の正味の流れは、試料(血液)流れへ戻る正味の流れによって自動的に平衡される。抽出通路へ流体の戻る流量より、抽出通路からの流体の除去流量が多い場合に、患者の水分量は抜き取られた水分だけ減少される。閉ループである抽出流れの濃度は、アルブミンを含む高分子の濃度が試料流れにおけるレベルに整合するように再循環流れにおいて上昇し、それで輸送平衡が維持され、また処理の終端後に体外回路に残っている部分を除いて、かかる成分の正味の損失はない。
【0073】
処理の重要な目的が、20ml/分の流れを仮定して、高速で拡散し得る(一般に低分子量の)分子の除去である際には、抽出通路における接触面積は約17〜71cm2の範囲である。処理の重要な目的がゆっくり拡散し得る分子(例えばタンパク及び特に免疫グロブリン)の除去である際には、抽出通路における接触面積は大きく、ほぼ1,700〜7,100cm2の範囲(20ml/分の流れを仮定して)であり、また補助処理装置は、これらの分子を除去し、かつ小さな分子を再循環するように構成され得る(それらの同時除去が望まれない限り)。
【0074】
図9に一致する膜なし分離装置の実施形態のさらに詳細な図を図10に示す。血液処理システム1000は、抽出通路1002及び補助処理装置1004を備えている。抽出通路1002は入口通路1008、1010、1012を備え、入口通路1008、1010、1012はそれぞれ入口1020、1021、1022に通じている。入口1020、1022はそれぞれ入口通路1008、1012から抽出流体を受ける。入口1021は、入口通路1010から試料流体を受ける。入口1020、1022は上記のように濾過されてもされなくてもよい。抽出通路1002はまた出口1024、1025、1026を備えている。出口1024、10265は、抽出流体を受け、そしてそれぞれ出口通路1014、1018に抽出流体を搬送する。試料流体は、出口1025を通って抽出通路1002から出て行き、出口1025は試料流体を出口通路1016へ搬送する。出口1024、1026は上述のように濾過されてもされなくてもよい。好ましくは、フィルタが設けられ、これらのフィルタの微細孔サイズは約100nmであるが、微細サイズは上記で説明したように他のサイズにしてもよい。
【0075】
システム1000はまた、血液供給部1028及び血液容器103(1030の誤り)(処理の設定において両方とも生きている動物又は人間の患者に相当する)を備えている。多数のポンプ1029、1030、1032、1034は好ましくは自動的に作動される。血液供給部1028は、血液入口通路1010を介して抽出通路1002に血液を供給する。血液供給部1028は、好ましくは生きている動物からの全血液であるが、人工容器であってもよい。血液抜き取りポンプ1030は、抽出通路1002から血液出口通路1016を介して血液を抜き取り、そして上述のように血液供給部1028と同じであり得る血液容器1030に搬送する。また、好ましくは血液ポンプ1029は、必ずしも本質的ではないが、ライン1010に設けられて、血液供給部1028から抽出通路1002へ血液を汲み上げる。
【0076】
シース入口通路1008、1012から入口1020、1022を介して抽出通路1002への抽出流体の流れは抽出流体注入ポンプ1032(好ましくは通路1008、1012に等しい部分で抽出流体を供給する)によって制御される。抽出通路1002から出口1024、1026を介して出口通路1014、1018への抽出流体の流れは抽出流体抜き取りポンプ1034によって制御され、抽出流体抜き取りポンプ1034は好ましくは、出口通路1014、1018から等しい量の抽出流体を抜き取る。ポンプ1034は、二チャンバーポンプ又は共通軸に回転子を備えた二つの蠕動ポンプのようなダブルポンプであり得る。代わりに、ラインの各々に二つの別個のポンプ(図示していない)を用いることができ、そして抽出通路1002からの抽出流体の全体流れを調整しながら、ライン1014、1018を通る流れを平衡するようにフィードバック制御する。ポンプ1032も、二チャンバーポンプ又は共通軸(図示していない)に回転子を備えた二つの蠕動ポンプのようなダブルポンプであり得る。ポンプ1032は、膜なし処理装置1002への抽出流体の全体流れを調整しながら、ライン1008、1012を通る流れを平衡するようにフィードバック制御されるライン1008、1012の各々における二つの別個のポンプ(図示していない)で置き換えられ得る。別個のポンプの使用によりまた、種々の流体、或いは同じ又は異なる流体を異なる流量で入口通路1008、1012へ搬送する能力が得られ得る。従って、入口通路1008に入る抽出流体は、入口通路1012に入る抽出流体と実質的に同じであっても異なってもよい。本発明は特定の形式のポンプ又は流量に限定されないことが理解されるべきであり、また多くの変形が可能であることが明らかである。
【0077】
ポンプ1029、1030、1032、1034(或いはその他の可能なポンプ装置)を用いて、フィルタ1024、1026を介して抽出流体のみ又は抽出流体プラス規定した量の血液流体を抜き取るように抽出流体及び血液流体の流れを制御するのに用いられ得る。同様に、ポンプ1030、1032、1034及び存在すればポンプ1029は、血球を含んだ試料層とフィルタ1020、1022との接触を調整するために抽出流体及び血液流体の流れを制御するように制御され得る。好ましい形態では、制御は、患者から水分の抜き取りができるだけ低流量で行われ、従って正味の抜き取りが所望の処理時間に一致した最大持続時間及び患者の要求に応じて行われる。水分の抜き取りは、入口通路1008、1012を通して置換されるより出口通路1014、1018を介して多くの量を抜き取ることによって行われる。従って、ポンプは好ましくは、入口及び出口流量の差を最少にし、二つの流量を正確に調整するように制御される。さらに、ライン1014及びライン1018を介しての出口流量は好ましくは、不平衡の結果として抽出流体出口ライン1014、1018の一方を通しての血球を含んだ層の吸い取りを避けるように正確に同じに維持される。平均及び瞬時流量を正確に調整することによって、中心の血球を含んだ層と流体出口1025との間の界面は、最少の血球が抽出通路1002の壁又は好ましくはフィルタ1024、1026と接触することを保証するように維持され得る。
【0078】
システム1000はまた抽出流体容器1036を備えることができる。抽出流体容器1036は、新しい抽出流体(例えば好ましい血液処理の実施形態における血液透析濾過すなわち透析に用いる置換流体のような)を、抽出通路1002と補助処理装置1004との間の流れループへ供給する。幾つかの実施形態の正常な動作の下では、抽出流体内へ拡散していく血液流体の成分は、補助処理装置1004で除去される。ある特定の条件の下では、血液流体から抽出流体へ拡散する血球又はフィブリノーゲンのような他の血液成分は、出口フィルタ1024、1026の表面に沿って集まり得る。これらの物質はほんの少量の抽出流体を用いてフィルタ1024、1026をフラッシュするように抽出流体の流れを一時的に反転させることによって、フィルタ1024、1026の表面から除去され得る。抽出流体のこの量は、血液流体に対して抽出流体の垂直な共流を再確立する際に、抽出流体容器1036から補充され得る。この“ブローバック”動作を行なう必要性は、フィルタ又は流量測定装置を横切って圧力降下によって決められ得る。これら装置はシステム1000に一体に構成され得る。抽出流体容器はまた、処理用の置換流体の源として働くことができ、例えば血液透析濾過において行われるように、処理目的のために患者から取り出されることになるより多くの水分及び溶質量が補助処理装置においてゆっくりと除去される。ポンプは、好ましくはプログラム可能なプロセッサを備えるコントローラ1040によって自動的に制御され得る。
【0079】
好ましくは、血液処理の実施形態では、抽出流体注入ポンプ1032によって(分離装置1004及び/又は任意選択的な抽出流体容器1036から)抽出通路1002へ供給される抽出流体は、抽出通路1002の断面のほぼ2/3を占め、血液供給部1028から血液は中間の1/3を占める。(この流れ形態は図1Aに例示されている。)この形態は、血液及び抽出流体の流入を適切に調整することによって維持され得る。この形態では、抽出通路1002における血液層の各半分はシース層の一つで“提供”され、またシース層は血液の速度のほぼ半分の速度の平均速度で移動していくが、血液と抽出流体との界面速度はほぼ等しい。従って、所与時間間隔中にユニットを通過する流体の量及び抽出流体の量はほぼ等しい。本発明はこの仕方で限定されないが、上記の形態では、二つの流体(例えば血液及び抽出流体)の容積流が互いに異なる場合に、平衡に関連した50%の最大値から交換効率は降下することが認められるべきである。
【0080】
処理すべき血液の血球のない成分の全て又は一部を分離させる(掬い取らせる)ために、抽出流体の入口及び出口流れは、入口通路1008、1012を通って供給される抽出流体より多くの総流体が抽出通路1002から出口通路1014、1018を介して抜き取られるように(それぞれポンプ1032、1034を介して)制御され得る。従って、処理すべき血液の一部分は出口通路1014、1018を介して抽出流体と一緒に除去される。例えば、抽出流体注入ポンプ1032の速度より10%高い速度で抽出流体抜き取りポンプ1034を運手することによって血液の流れの10%を掬い取ることが可能である。これがなされた時に、血液流出量は決められ、そして当然に流入の90%が流出するので、制御される必要はない。
【0081】
上記で説明したように、無差別の血漿除去が望まれない際には、抽出通路1002を用いて血液から掬い取られる血漿は、シース入口通路1008、1012に戻る再循環流れの流量及び組成を通して抽出通路1002の動作を調整する補助処理装置1004によって処理される(すなわち、再循環流れは、抽出の望まない血液成分の輸送を制限するのに用いられる)。補助処理装置1004は、濃度分極がタンパクに限定され、血球を伴わないことにより、高い濾過速度を達成できるので、実質的な利点が得られる。さらに、血球は抽出通路1002に保持されるので、フィルタの作用で補足される血球の移動の作用(以下に説明する)にもかかわらず、これらの血球の大部分は単に人工物質の導管表面において人工物質に接触する。相対的に少量の血球が出口通路1014、1018におけるフィルタ1024、1026と接触し得るが、接触は血球の総数の小部分に限定され、そして比較的短い時間の間に生じる。液体・液体接触領域における血球接触は機械的、及び化学的に殆んど衝撃がないので、生体不適合性の低減及び凝固防止の必要性の低減(又は除去)が達成される。さらに、システムにおける主輸送表面は本質的に汚れず、またフィルタの表面は流体せん断速度できれいに掃引されるので、長期又は連続運転に対すル主要な妨げは除去され、長期のゆっくりした交換の認められた利点をもつ装着可能なシステムの可能性に通じる。
【0082】
シース出口流れを相応した入口値より大きくできる抽出通路1002の動作は拡散流れ上で血液流れから対流を誘起することが理解されるべきである。このような対流が血球を搬送する(血流における血球の分布が一様であった場合のように)のを阻止するために、相当な血漿の掬い取りをできるようにするために、血液の血球成分が血流の中心に移動することが重要である。血球の中心に向うドリフトは、記載した実施形態においては種々の流れ形態の下で生じる。流れ状態は、血球が血液・液体界面から離れる方向へ動くように調整され得る。例えば、血液が約100相対秒の壁せん断率(管壁に垂直な血流速度勾配として測定される)以下で管内を流れる時に、このせん断率は、血球成分を管の中心へ移動させる。従って、フィルタとの血球の接触の発生は低減される。(Goldsmith,H.L.及びSpain,S.著 小さな管を通しての血流中の白血球の辺縁趨向(Margination of leukocytes in blood flow through small tubes) Microvasc. Res. 1984年3月;27(2):204−22参照。)
【0083】
上記のマイクロ流体装置の満足な動作に対して長期の安定性が必要であることが認識される。たとえば、正しくなく、血流へシース溶液の意図しない混入をもたらし得るシース入口及び出口通路流れにおける不適切な差を阻止するのが望ましい。従って、チップに基づくマイクロ流体装置の共通の特徴である内臓電子装置及び光学装置(図示していない)は、抽出通路1002の配置される同一プレートすなわち“チップ”に装着される電気駆動型装置(例えば圧電弁)でシステム1000を調整する(例えば流れの変化を導入する)のに用いられ得る。
【0084】
出口通路におけるフィルタ1024及び/また1026の一つの故障時に生じ得るような、抽出流体に血球が存在する場合に抽出流体出口通路1014、1018における流体出口流れをモニターするのに限外顕微鏡(又は稀釈粒子の存在に感応する他の装置)が用いられ得る。さらに、膜が存在する場合に当然阻止されるが、膜なし装置においては生じ得る血液損失又は血液量過多症を生じさせる流れ不平衡に対して保護する制御装置が好ましくは設けられる。例えば、血球が膜なし処理装置外の抽出流体において検出される際、或いは予定量の血漿が除去される時又は血液量過多症が治療されることになる時に得られる血液と限界不平衡を超える正味のシース流れとの間の流れ不平衡を独立した流れ測定センサーが検出する際に、システムを遮断し、かつアラームを発生する制御システムが設けられ得る。
【0085】
上記で説明したように、抽出通路において、流体(例えば血液及び抽出流体)は好ましくは同じ方向に流れる。特に、対向方向の流れは血液・流体界面を乱し、そして望ましくない混合を生じさせる傾向がある。流体が同じ方向に流れる際には、シース及び血液流れの流体の等しい量が平衡を達成する時、最大交換率が達成できる(これは、上記のロシュミットの式によれば、抽出流体が血液と同じ速度で流れる場合に、溶質の抽出Eが1/2を越えないことを意味している)。言い換えれば、二つの流れが等しい場合、溶質の殆んど半分が移動され得る。さらに、大きな流れが溶質の大きな留分Eを除去させるので、それらの流れは補助処理装置に対して高い循環速度を要求し、従って一般に望ましくない低い濃度で溶質を処理させることになる。従って、これらの流れはほぼ等しいか、又は少なくとも3倍以内であるのが望ましい。当然、この説明は、試料及び抽出流体が溶質及び/又は他の交換成分を蓄積する容量のような同じ性質を備えている場合に当てはまり、また比率は、性質の異なる流体が用いられる際に相応して調整され得る。
【0086】
抽出効率のこの制限は、図11に示し以下に説明する形態によって解決でき、一つ以上の共同膜なし処理装置を相互に接続することにより逆向き流れ(対向流)の効果を達成する。特に、低い抽出効率は、システムの各ユニットにおいて流れが同時に発生ししかも総体流れがパターン及び効率において対向流れに近くなるように、マイクロ流体システムを比較的複雑にレイアウトすることによって解決され得る。
【0087】
与えられた所望の接触面積をn個のユニット(段階)に副分割し、各ユニットを対向流の仕方で他のユニットに接続して使用することにより、抽出効率を50%以上に高めることができる。図11には二段膜なし分離システムの例が示されているが、他の実施形態では二段以上にすることができる。各付加段は抽出を増加させることになる。図11を参照すると、二段膜なし分離システム1100は第1段抽出通路1102及び第2段抽出通路1104を備えている。システム1100はまた、二つの抽出通路1102及び1104の間で抽出流体から成分を除去する上述の補助処理装置1106を備えている。試料流体は、所与成分の濃度c0をもつ試料流体流量qsで、第1段抽出通路1102の試料入口1108に供給される。試料流体は第1段抽出通路1102から試料出口1110を通って流出し、そして濃度c1で第2段抽出通路1104の試料入口1112に流入する。試料流体の流れは両段を通してほぼ等しいと仮定される。さらに、試料流体は第2段抽出通路1104から試料出口1114を通って濃度c2で流出する。
【0088】
きれいな抽出流体は、抽出流体流量qEで第2段抽出通路1104の抽出入口1116に供給され、抽出流体の流れは両段を通してほぼ等しいと仮定される。抽出流体はきれいであるので、所与成分の濃度は値ゼロを割り当てる。抽出流体は、第2段抽出通路1104から試料出口1118を通って流出し、そして抽出装置入口1120を通って第1段抽出通路1102に流入する。試料流体と抽出流体との十分な接触面積が、上記の計算で決められた十分な時間の間、各抽出通路段1102、1104において維持される場合、所与成分の濃度は試料流体と抽出流体との間の平衡に近づく。従って、第2段抽出通路1104の抽出装置出口1118から出て行く抽出流体の濃度はc2に等しいと仮定される。抽出流体は、第1段抽出通路1102から抽出装置出口1122を通って流出し、そして抽出装置入口1124を通って補助処理装置1106へ戻される。第2段抽出通路1104におけるように、出口1122から流出していく抽出流体の濃度は出て行く試料流体の濃度にほぼ等しいと仮定される。従って、抽出流体の濃度はc1である。抽出流体で集められた成分は補助処理装置1106において除去され、それで、きれいな抽出流体は、補助処理装置1106から抽出装置出口1126を介して流出し、そして第2段抽出通路1104の抽出装置入口1116に再循環され得る。質量平衡計算は、所与成分の分別クリアランスCl/qsを見出すために、二段膜なし分離システム1100の各段について行われ得る。上記で定義した濃度及び流体流れ変数を用いて、第1段抽出通路1102の質量平衡は、qSc0+qEc2=(qS+qE)・c1として表され得る。第2段抽出通路1104の質量平衡は、qSc1+qE0=(qS+qE)・c2として表され得、ここでc0=1であり、また分別クリアランスCl/qsは1−c2に等しく、そして分別クリアランスと抽出流体/試料流体流れの比率との関係は、
Cl/qS=(λ2+λ)/(λ2+λ+1)
である。
【0089】
従って、Clは、λが無限大に近づくにつれて、試料流体流れの値に近づく。抽出流体流れが全体として試料流体流れの二倍(すなわちλ=2)になると、分別クリアランスはほぼ0.86である。これに対して、段なし、すなわち単一通過膜なし分離システムでは、最高効率は、相応した抽出流体が試料流体の半分と接触するとして、試料流体の各半分に等しい。従って、二段抽出通路システム1100は、等しい抽出流体流量で試料流体から成分を除去する際に、単一通過膜なし分離システムより有効である。図11には二段が示されているが、システム1100に任意の数(例えば3、4、5又はそれ以上)の段を用いることができ、全ての段は、マイクロ流体装置の製造用の公知の技術によって作られた単一基板又は基板セットに容易に設けることができる。従って、好ましい実施形態では、多段は、マイクロ流体段間にいかなる外部接続も導入することなく設けられ得る。
【0090】
好ましい実施形態では、各抽出通路は、抽出流体出口1122、1118に、図3〜図8について説明した形式のフィルタを備えている。一つの実施形態では、補助処理装置1106に接続される抽出流体出口1122にのみフィルタが設けられる。
【0091】
記載した装置、システム及び方法は、フィルタの微細孔のサイズを適切に選択することにより、“小さな”分子、“中間の”分子、高分子、高分子凝結体、及び細胞(血球)を含む異なるサイズの種々の血液成分を、血液試料から抽出流体へ拡散できる。この能力は、特に、種々の処理が異なるサイズの粒子を除去する必要があることを考慮すると、重要である。例えば、透析においては、低分子量の分子を除去することが望ましく、これに対して、重大な肝不全の治療においては、小さなサイズ及び中間サイズの分子の両方を除去しなければならない。一方、血液成分分離療法では、一般に、選択したタンパク高分子(例えば免疫グロブリン)を除去することが望まれ、これに対して、劇症敗血症の治療においては、一般に除去するのが望ましい成分は中間分子量の毒素である。一方、提案した抗ウイルス性治療においては、遊離ウイルス粒子を除去することが望まれ、またうっ血性心臓疾患の治療では、単純に水分及び電解質の非選択性群を除去したい。
【0092】
補助処理装置で抽出流体が受ける処理は、全血液又は血球なしの血漿を用いて従来の種々の形式の処理において行なわれたものと実質的に同じであり得る。補助処理装置は、抽出流体を鮮化するために用いた任意の種々の装置を備え得る。例えば、膜装置又は収着装置を用いることができる。さらに、抽出通路及び補助処理装置システムは腎置換療法への応用に限定されない。例えば、かかるシステムはまた、特殊な疾患に関連した物質を除去、破壊又は不活性化する野に用いられ得る。幾つかの例として、酵素反応装置、寒冷沈降反応装置、及び/又は紫外線照射装置が含まれる。システムはまた非血液試料流体から成分を抽出するために用いられ得、補助処理装置は、抽出流体及び除去されない試料流体の成分の少なくとも幾つかを受ける。
【0093】
上記及び以下の説明では、単一抽出通路及び単一補助処理装置が確認されるが、単数名詞は必ずしも単一構成要素を表すものでないことが認められる。例えば、試料流体と抽出流体との接触面積の大きいコンパクトさを達成する層状または折畳み型構造に多数の抽出通路を形成し得る。
【0094】
抽出通路内における第1抽出流体と試料流体との界面は、第1抽出流体と試料流体との相対流量を調整することによって変えられ得る。さらに、出て行く単数又は複数の流体における物質、例えば出て行く抽出流体中の又は抽出通路内の望ましくない血液成分を検出する検出装置が単数又は複数の出口受け流れ内に設けられ得る。そして検出装置からの信号は、試料流体と抽出流体との相対流量を調整するのに用いられ得る。検出装置の例は、非細胞流体を受ける抽出通路において赤血球を検出できる不透明度モニター又は限外顕微鏡である。検出装置の別の例は、不適切な流体流れのために血液の断絶を検出する表示し得るヘモグロビン検出装置である。総体及び相対抽出及び試料流体流量はまた、かかる状態を修正するように調整され得る。
【0095】
試料流体から成分を選択的に抽出する方法は、少なくとも第1内面と第2内面とを備えたマイクロ抽出通路を設けること、及びマイクロ抽出通路内に第1抽出流体と第2抽出流体と試料流体との層流を確立することを含む。抽出通路内の第1抽出流体の層流は抽出通路の第1内面と接触し、また抽出通路内の第2抽出流体の層流は抽出通路の第2内面と接触する。試料流体の層流は、抽出通路内の第1及び第2抽出流体の間に配置されしかも第1及び第2抽出流体と接触する。第1抽出流体及び試料流体の成分の第1部分は抽出通路から第1フィルタを介して抜き取られ、第1フィルタは、第1サイズより大きな成分を除外するようにサイズ決めされた微細孔を備えている。同様に、第2抽出流体及び試料流体の成分の第2部分は抽出通路から第2フィルタを介して抜き取られ、第2フィルタは、第2サイズより大きな成分を除外するようにサイズ決めされた微細孔を備えている。残りの試料流体は抽出通路から抜き取られる。
【0096】
上述のように、記載した実施形態は、乱流混合を防止する状態の下で、血液の混和性流体との接触によって膜を用いずに血液を清浄化できる。記載した実施形態は例えば血液透析において有用であることが認められる。しかしまた、実施形態およびそれの変形例もまた、試料流体と別の流体との間の交換が拡散機構を介して行われるのが望ましいその他の状況において有用である。
【0097】
特定の交換率に対して抽出通路によって設けられる界面領域は、上述の原理に従って、通路の長さ、幅及び数の適切な組合せによって達成され得る。必要な領域は、多数の抽出通路を設け、そして各通路が二つの界面を含むようにシース流れを設けることによって得られ得る。高さが低く(過剰な拡散時間及び工程内容積を避けるために)、長さが短く(過剰な圧力降下を避けるために)及び平行に、並行に又は積重ねてそれらを整列する必要性を提案する単一装置の幅の実際の制限の競い合う要求は実際のマイクロ流体装置において満たされ得ることが示される。
【0098】
記載した実施形態は、多数の疾患状態を治療するために個人の血液を処理するのに用いられ得る。例えば、上記の治療法は、急性腎不全、急性肝不全、重症筋無力症及びその他の自己免疫性疾患における高い抗体レベルの治療に用いられ得る。付加的な使用は、例えば、うっ血性心不全の場合における悪性敗血症または流体の除去に加えて、同一接合体性高脂血症におけるLDLの析出か又は収着による除去を含む。記載した実施形態はまた、AIDS患者におけるウイルス性心配(負荷)の軽減を助け、他の形式の血液清浄化を必要とする患者の治療のために用いられ得る。糖尿病の患者、過量の薬剤に苦しむ患者、毒物を摂取した患者、腎不全に苦しむ患者、急性または慢性肝不全に苦しむ患者、或いは重症筋無力症、紅班性狼瘡又は別の自己免疫性疾患をもつ患者も上記の装置及びシステムによって有益であり得る。例えば、本発明による交換装置は糖尿病用の療法ではないが、糖尿病の一つ以上の症状の改善に有効であり得る。さらに、記載した実施形態は、自己免疫異常の原因となるlgG分子又はその他の分子の血液を清浄するのに有用であり得る。さらに、本発明による実施形態は、急性透析又は長期透析に用いられ得る。症状、疾患及びここで挙げていない症候群に苦しむ患者(又は獣医使用の場合には動物)も治療できる。
【0099】
記載した膜なし装置及びシステムは好ましくは、長期間の治療を行い、体外血液量の少ないシステムにおいて実施され、従ってそれら装置及びシステムをコンパクトな形態で提供することができる。一つの実施形態では、本発明による装着可能な(又は少なくとも携帯型の)システムは、例えば、約20cc/分の流量で一日当たり20〜24時間運転時間できる。従って、患者は、個人の衛生、スポーツ活動又は装着され又は用いられる小さなシステムに馴染みやすくない他の活動のために用いられ得る決まった場所の装置(例えばシャワーや風呂)なしに、毎日例えば4〜5時間使える。従って上述の実施形態は、日々の又は夜間の血液透析が必ずしも十分な取り得る方策でない透析社会で認識された問題(例えば一時的な透析スケジュールに関連した物理的な疲労、気持ちなどのようなマイナスの影響)に対応する。特に、上述の実施形態では、患者は、継続して透析を受けながら、ほぼ通常の仕方で(例えば職場、学校、家庭などにいながら)動くことができる。
【0100】
種々の病状の治療に加えて、本発明による装置又はシステムは、血液において分子及び細胞を分離したり拡散するプロセスを研究するためだけでなく、他のものを処理する血液成分を抽出するために用いられ得る。例えば、血液中の個々の分子種の拡散は、独立して起こらず、またストークス・アインシュタインの式で表される簡単な仕方でサイズに依存しない。さらに、多くの溶質は、多くの形態すなわち遊離、複合、血漿タンパクに結合、細胞・表面部分、又は細胞内溶質に区分し得る。溶質の拡散率に対して、その種々の形態は局部平衡であったりなかったりし得る。これらの現象は、膜が存在する場合に、全体移動速度をゆっくりし、制御するので、観察されるようである。従って、本発明による膜なし装置又はシステムはこれらの現象を研究するのに有用な科学的ツール及び溶質をどの程度、及びどのように迅速に除去できるかについて区分が限界を設定するシステムであり得る。特定の例はアルブミンに対するビリルビン結合である。別の例は、部分的にイオン化した塩として、血漿における二つの陰イオン形態として及び幾つかの細胞内形態で存在する無機燐である。
【0101】
本明細書には、主に、最終段階の腎不全に対する血液処理に関して記載してきたが、血液成分の抽出は、遊離ウイルス性粒子のような治療のための他の成分を除去するのに用いられ得、またうっ血性心不全の治療において水分及び電解質の非選択性群を除去するのに用いられ得る。体外処理の付加的な使用は、他のものの処理か又は調査に有用な血液成分抽出することを含む。血漿(すなわち血漿交換)及び血小板の血液成分分離はこの目的でもつとも普通に用いられた方法である。本明細書には主として血液処理及びそれに関連した問題について説明してきたが、説明してきた方法の多くは、血液成分と共に他の流体を処理するために用いられ得る。
【0102】
また、本明細書で説明してきた抽出通路及び関連した要素は補助処理装置において用いられ得、また流体成分を選択する多段を形成するように連鎖され得る。例えば、二つの抽出通路の連鎖体は、第1抽出通路の抽出流体を第2抽出通路の試料流体通路に搬送し、従ってカスケードを形成する。第2抽出装置は例えば第1のものより小さな微細孔サイズをもつフィルタを壁に備え、それで第2抽出通路からの試料流体は中間サイズの粒子を含むが、最小粒子の留分は少なくなっている。このようなカスケードは任意数の段を備え得る。
【0103】
また当業者には認められるように、本発明は、例示のためであって限定のためのものでなく記載してきた実施形態以外で実施することができ、また本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0104】
ある特定の実施形態について本発明を説明してきたが、記載してきた実施形態に対して種々の変更、改造及び変形は、特許請求の範囲に記載したように本発明の範囲から逸脱することなしに可能である。従って、本発明は記載した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の文言で定義された全範囲及びそれの均等範囲に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A】抽出流体の粘性の二倍と仮定した粘性と5cm/秒の中心線速度とをもつ血液について計算し、両側を抽出流体で被包された血液の芯の流れの速度輪郭を示す図。
【図1B】抽出通路を比喩的に示す図。
【図2】各流体層が同じ厚さをもつ二つの流体層間の拡散交換を、1870のロシュミットの式を用いて描いている曲線を示すグラフ。
【図3】抽出流体入口及び出口にフィルタを備えた膜なし分離装置の簡略化した図。
【図4】図3の膜なし分離装置のフィルタを備えた出口通路の開口のまわりの領域の部分詳細斜視図。
【図5】膜なし分離装置の別の可能な実施形態の概要を示す図。
【図6】フィルタの一例を示す図。
【図7】フィルタの表面を横切っての流体掃引作用を例示しているフィルタの詳細側面図。
【図8】血漿搬出のために用いたフィルタを備えた膜なし分離装置を示す図。
【図9】複数のフィルタを備えた膜なし分離装置及び補助処理装置を備える膜なし分離装置システムの簡略化したブロック線図。
【図10】主及び補助処理装置を備えるシステムのさらに詳細な図。
【図11】二つのユニットに副分割し、試料と抽出流体との擬似対向流を達成するように構成したシステムの構成を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で成分を交換する方法において、
それぞれ、第1及び第2流体の少なくとも1つの第1層及び少なくとも1つの第2層を形成して、第1及び第2流体間での成分の拡散に基づく交換を、第1及び第2流体の混合なしに生じさせるようにすること;及び
第2流体からの第1成分をブロックし、かつ第2流体からの第2成分を通すように寸法決めした微細孔を通る第1流体の少なくとも一部を濾過すること
を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記濾過が、800nmの以下のサイズの微細孔に第1流体を通すことを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1及び第2層の形成が、第1及び第2流体を通路に流すことを含み、前記濾過が、通路の壁の一部を成すフィルタを設けることを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1及び第2層の形成が、二つの第1層間に単一の第2層を備えてそれらの第1層を形成することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
微細孔が、曲がりくねってなくしかも枝分れしていない通路を規定していることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
第1成分が赤血球であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2流体が血液であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
第1流体が、濾過によって得た濾液中の第2流体のからの第2成分の濃度を高めることで得られた流体を含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
第2成分が血清アルブミンを含んでいることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの第1層が二つの第1層であり、第1及び第2層の形成が、二つの第1層間に単一の第2層を備えてそれら二つの第1層を形成して、第1流体により、第2流体が通路の壁に直接接触するのを阻止するようにすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
第1及び第2層の形成が、アスペクト比10以上の流れ方向を横切る横断面をもつ通路に第1及び第2流体を流すことを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
第1及び第2層の形成が、75〜300ミクロンの流れ方向を横切る深さをもつ通路に第1及び第2流体を流すことを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
深さが約120ミクロンであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
濾過が通路の壁の一部を形成するフィルタを設けることを含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
第1流体から第1成分を清浄する方法において、
第1流体と溶媒とを混合することなしに第1流体から溶媒へ第1成分を拡散させながら、搬送通路の壁から第1流体の層を分離するように溶媒の少なくとも1つの共流層によって取巻かれた第1流体の層を流すこと;
溶媒から第1成分を除去すること;及び
除去により得られた第1成分のない溶媒を溶媒の共流層に補充すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
流体が血液であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
溶媒が水溶液であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項18】
溶媒からの第1成分の除去が、溶媒をフィルタに通し、その結果得られた濾液を別のフィルタに通すことによって溶媒を濾過すること、及び除去の結果得られた濾液を回収することを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
溶媒からの第1成分の除去が、溶媒をフィルタに通し、その結果得られた濾液を別のフィルタに通すことによって溶媒を濾過すること、及び除去の結果得られた濾液を回収することを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項20】
溶媒からの第1成分の除去が、溶媒を第1フィルタに通して濾液を回収すること及び濾液を第2フィルタへ通して濾液を回収することを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項21】
第1流体が血液であり、溶媒からの第1成分の除去が、血球を阻止するために溶媒を濾過することを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項22】
第1流体が血液であり、溶媒からの第1成分の除去が、血球から遠隔位置で溶媒を透析すること、及び透析した溶媒を共流層に戻して血液タンパク質を血液中に拡散させることを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項23】
壁に1ミクロン未満の最大サイズをもつ規則的なパターンの微細孔を有する壁部分をもつ通路に血液と水性溶媒とを同時に流させること、
微細孔を通って、微細孔の上流点で溶媒を通路へ戻す流れ回路へ溶媒を循環させること
を含むことを特徴とする血液の処理方法。
【請求項24】
流れ回路が、溶媒から水を除去する処理装置を備えていることを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項25】
流れ回路が、溶媒から尿毒素を除去する処理装置を備えていることを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項26】
微細孔が600ミクロン未満の最大サイズをもつことを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項27】
血球が壁面のほぼ全てに接触しないようにする流れを同時流れが生じさせることを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項28】
微細孔が約50nm又はそれ未満の最大サイズをもつことを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項29】
同時流れが、通路内をほぼ等しい容積流量で血液と水性溶媒を流すことを含むことを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項30】
長さで分離ししかも流れ方向を規定する入力端部と出力端部とを備え、幅と深さの比が10以上であり、深さが300ミクロン程度であり、幅及び深さが流れの方向に垂直である通路と;
二つの入口抽出流体ポート及び入口端部近くに位置した二つの入口抽出流体ポート間の一つの入口試料流体ポート、並びに各々第1フィルタを備えた二つの出口抽出流体ポート及び出口端部近くに位置した二つの出口抽出流体ポート間の一つの出口試料流体ポートと;
を有し、
出口抽出流体ポートの少なくとも一方が別の通路を介して入口抽出流体ポートの少なくとも一方に結合されていること
を含むことを特徴とする流体処理装置。
【請求項31】
通路が、幅及び長さに等しい寸法の壁面を備え、第1フィルタが壁の一部を形成していることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項32】
第1フィルタの微細孔サイズが1000nm程度であることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項33】
第1フィルタの微細孔サイズが800nm程度であることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項34】
第1フィルタの微細孔サイズが300nm程度であることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項35】
通路の深さが120ミクロン程度であることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項36】
幅と深さとの比が50以上であることを特徴とする請求項35記載の流体処理装置。
【請求項37】
さらに、一日程度にわたる処理サイクル中に通路を通して少なくとも1リットルの血液と少なくとも1リットルの溶媒とを汲み上げるように構成した少なくとも一つのポンプを有することを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項38】
入口及び出口試料ポートが、患者にアクセスするため動脈及び静脈血管に接続できるコネクタを備えた通路に接続されることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項39】
第1流体と第1及び第2成分を含む第2流体との間で成分を交換する装置において、
第1及び第2流体が互いに直接接触するが混合しないようにして、それぞれ第1及び第2流体の少なくとも一つの第1層と少なくとも一つの第2層とを形成するように第1流体及び第2流体を受ける通路を有し;
少なくとも一つの第1層及び少なくとも一つの第2層が同じ方向に流れ;
通路が、第1流体のみを受ける少なくとも一つのフィルタを備えた出口を有し、少なくとも一つのフィルタが、第2流体からの第2成分を通すが、第2流体からの第1構成成分を阻止するように寸法決めした微細孔を備えていること
を特徴とする装置。
【請求項40】
少なくとも一つのフィルタが、800nm以下のサイズの微細孔を備えていることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項41】
通路が壁を備え、少なくとも一つのフィルタが通路壁の一部を規定していることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項42】
少なくとも一つの第1層が二つの層であり、少なくとも一つの第2層が一つの層であり、第2層が二つの第1層間に位置決めされていることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項43】
微細孔が、曲がりくねってなくしかも枝分れしていない通路を規定していることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項44】
第1成分が赤血球であることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項45】
第2流体が血液を含み、第1成分が赤血球であることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項46】
第1流体が、少なくとも一つフィルタに第1流体を通すことによって得た濾液中の第2成分の濃度を高めることで得られた流体を含んでいることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項47】
第2成分が血清アルブミンを含んでいることを特徴とする請求項46記載の装置。
【請求項48】
通路が壁を備え、少なくとも一つの第1層が二つの第1層であり、第1及び第2層の形成が、二つの第1層間に単一の第2層を備えてそれら二つの第1層を形成して、第1流体により、第2流体が通路の壁に直接接触するのを阻止するように構成したことを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項49】
通路が、アスペクト比10以上の流れ方向を横切る横断面をもつことを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項50】
通路が、75〜300ミクロンの流れ方向を横切る深さをもつことを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項51】
深さが約120ミクロンであることを特徴とする請求項50記載の装置。
【請求項52】
少なくとも一つのフィルタが通路の壁の一部を形成することを含むことを特徴とする請求項51記載の装置。
【請求項53】
第1流体と第2流体との間で成分を交換する装置において、
各々それぞれの入口と出口とを備え、入口内へ流れる少なくとも二つの流体が互いに直接接触して入口内へ流れさせ、そして出口から流出させる第1及び第2通路と;
入口及び出口を備え、入口で受けた流体の性質を変え、性質の変わった流体を出口へ運ぶ流体処理装置と
を有し;
第1通路の出口の第1出口が第2通路の入口の第1入口に接続され;
第1通路の出口の第2出口が流体処理装置の入口に接続され;
第2通路の入口の第2入口が流体処理装置の出口に接続されていること;
を特徴とする装置。
【請求項54】
流体処理装置が膜であることを特徴とする請求項53記載の装置。
【請求項55】
流体処理装置が透析装置であることを特徴とする請求項53記載の装置。
【請求項56】
さらに、通路内の流体間の輸送が主として拡散によるように層流形態で第1及び第2通路に流体を流れさせる流体輸送装置を有することを特徴とする請求項53記載の装置。
【請求項57】
第1通路の出口の第2出口がフィルタを備えていることを特徴とする請求項53記載の装置。
【請求項58】
フィルタが最大600nmのサイズの微細孔を備えていることを特徴とする請求項57記載の装置。
【請求項59】
血漿から血球を分離する方法において、
被濾過出口を備えた容器表面から、血球及び血漿を含む層において血球のほとんどを抜き取ること;
血球が被濾過出口に入るのを阻止するように被濾過出口を介して血漿を除去すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項60】
層が流動層であることを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項61】
血球の抜き取りが、表面から離れるより壁に近い方が高いせん断勾配を流動層に形成することを含むことを特徴とする請求項60記載の方法。
【請求項62】
層が水性溶媒を含むことを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項63】
被濾過出口が容器表面と共面である表面を備えたフィルタを備えていることを含むことを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項64】
被濾過出口が容器表面と共面である表面を備えたフィルタを備え、層が、フィルタの表面を清浄するのに有効であるせん断を表面近くに備えた流動層であることを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で成分を交換する方法において、
それぞれ、第1及び第2流体の少なくとも1つの第1層及び少なくとも1つの第2層を形成して、第1及び第2流体間での成分の拡散に基づく交換を、第1及び第2流体の混合なしに生じさせるようにすること;及び
第2流体からの第1成分をブロックし、かつ第2流体からの第2成分を通すように寸法決めした微細孔を通る第1流体の少なくとも一部を濾過すること
を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記濾過が、800nmの以下のサイズの微細孔に第1流体を通すことを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1及び第2層の形成が、第1及び第2流体を通路に流すことを含み、前記濾過が、通路の壁の一部を成すフィルタを設けることを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1及び第2層の形成が、二つの第1層間に単一の第2層を備えてそれらの第1層を形成することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
微細孔が、曲がりくねってなくしかも枝分れしていない通路を規定していることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
第1成分が赤血球であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2流体が血液であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
第1流体が、濾過によって得た濾液中の第2流体のからの第2成分の濃度を高めることで得られた流体を含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
第2成分が血清アルブミンを含んでいることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの第1層が二つの第1層であり、第1及び第2層の形成が、二つの第1層間に単一の第2層を備えてそれら二つの第1層を形成して、第1流体により、第2流体が通路の壁に直接接触するのを阻止するようにすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
第1及び第2層の形成が、アスペクト比10以上の流れ方向を横切る横断面をもつ通路に第1及び第2流体を流すことを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
第1及び第2層の形成が、75〜300ミクロンの流れ方向を横切る深さをもつ通路に第1及び第2流体を流すことを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
深さが約120ミクロンであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
濾過が通路の壁の一部を形成するフィルタを設けることを含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
第1流体から第1成分を清浄する方法において、
第1流体と溶媒とを混合することなしに第1流体から溶媒へ第1成分を拡散させながら、搬送通路の壁から第1流体の層を分離するように溶媒の少なくとも1つの共流層によって取巻かれた第1流体の層を流すこと;
溶媒から第1成分を除去すること;及び
除去により得られた第1成分のない溶媒を溶媒の共流層に補充すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
流体が血液であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
溶媒が水溶液であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項18】
溶媒からの第1成分の除去が、溶媒をフィルタに通し、その結果得られた濾液を別のフィルタに通すことによって溶媒を濾過すること、及び除去の結果得られた濾液を回収することを含むことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
溶媒からの第1成分の除去が、溶媒をフィルタに通し、その結果得られた濾液を別のフィルタに通すことによって溶媒を濾過すること、及び除去の結果得られた濾液を回収することを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項20】
溶媒からの第1成分の除去が、溶媒を第1フィルタに通して濾液を回収すること及び濾液を第2フィルタへ通して濾液を回収することを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項21】
第1流体が血液であり、溶媒からの第1成分の除去が、血球を阻止するために溶媒を濾過することを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項22】
第1流体が血液であり、溶媒からの第1成分の除去が、血球から遠隔位置で溶媒を透析すること、及び透析した溶媒を共流層に戻して血液タンパク質を血液中に拡散させることを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項23】
壁に1ミクロン未満の最大サイズをもつ規則的なパターンの微細孔を有する壁部分をもつ通路に血液と水性溶媒とを同時に流させること、
微細孔を通って、微細孔の上流点で溶媒を通路へ戻す流れ回路へ溶媒を循環させること
を含むことを特徴とする血液の処理方法。
【請求項24】
流れ回路が、溶媒から水を除去する処理装置を備えていることを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項25】
流れ回路が、溶媒から尿毒素を除去する処理装置を備えていることを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項26】
微細孔が600ミクロン未満の最大サイズをもつことを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項27】
血球が壁面のほぼ全てに接触しないようにする流れを同時流れが生じさせることを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項28】
微細孔が約50nm又はそれ未満の最大サイズをもつことを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項29】
同時流れが、通路内をほぼ等しい容積流量で血液と水性溶媒を流すことを含むことを特徴とする請求項23記載の血液の処理方法。
【請求項30】
長さで分離ししかも流れ方向を規定する入力端部と出力端部とを備え、幅と深さの比が10以上であり、深さが300ミクロン程度であり、幅及び深さが流れの方向に垂直である通路と;
二つの入口抽出流体ポート及び入口端部近くに位置した二つの入口抽出流体ポート間の一つの入口試料流体ポート、並びに各々第1フィルタを備えた二つの出口抽出流体ポート及び出口端部近くに位置した二つの出口抽出流体ポート間の一つの出口試料流体ポートと;
を有し、
出口抽出流体ポートの少なくとも一方が別の通路を介して入口抽出流体ポートの少なくとも一方に結合されていること
を含むことを特徴とする流体処理装置。
【請求項31】
通路が、幅及び長さに等しい寸法の壁面を備え、第1フィルタが壁の一部を形成していることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項32】
第1フィルタの微細孔サイズが1000nm程度であることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項33】
第1フィルタの微細孔サイズが800nm程度であることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項34】
第1フィルタの微細孔サイズが300nm程度であることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項35】
通路の深さが120ミクロン程度であることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項36】
幅と深さとの比が50以上であることを特徴とする請求項35記載の流体処理装置。
【請求項37】
さらに、一日程度にわたる処理サイクル中に通路を通して少なくとも1リットルの血液と少なくとも1リットルの溶媒とを汲み上げるように構成した少なくとも一つのポンプを有することを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項38】
入口及び出口試料ポートが、患者にアクセスするため動脈及び静脈血管に接続できるコネクタを備えた通路に接続されることを特徴とする請求項30記載の流体処理装置。
【請求項39】
第1流体と第1及び第2成分を含む第2流体との間で成分を交換する装置において、
第1及び第2流体が互いに直接接触するが混合しないようにして、それぞれ第1及び第2流体の少なくとも一つの第1層と少なくとも一つの第2層とを形成するように第1流体及び第2流体を受ける通路を有し;
少なくとも一つの第1層及び少なくとも一つの第2層が同じ方向に流れ;
通路が、第1流体のみを受ける少なくとも一つのフィルタを備えた出口を有し、少なくとも一つのフィルタが、第2流体からの第2成分を通すが、第2流体からの第1構成成分を阻止するように寸法決めした微細孔を備えていること
を特徴とする装置。
【請求項40】
少なくとも一つのフィルタが、800nm以下のサイズの微細孔を備えていることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項41】
通路が壁を備え、少なくとも一つのフィルタが通路壁の一部を規定していることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項42】
少なくとも一つの第1層が二つの層であり、少なくとも一つの第2層が一つの層であり、第2層が二つの第1層間に位置決めされていることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項43】
微細孔が、曲がりくねってなくしかも枝分れしていない通路を規定していることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項44】
第1成分が赤血球であることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項45】
第2流体が血液を含み、第1成分が赤血球であることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項46】
第1流体が、少なくとも一つフィルタに第1流体を通すことによって得た濾液中の第2成分の濃度を高めることで得られた流体を含んでいることを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項47】
第2成分が血清アルブミンを含んでいることを特徴とする請求項46記載の装置。
【請求項48】
通路が壁を備え、少なくとも一つの第1層が二つの第1層であり、第1及び第2層の形成が、二つの第1層間に単一の第2層を備えてそれら二つの第1層を形成して、第1流体により、第2流体が通路の壁に直接接触するのを阻止するように構成したことを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項49】
通路が、アスペクト比10以上の流れ方向を横切る横断面をもつことを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項50】
通路が、75〜300ミクロンの流れ方向を横切る深さをもつことを特徴とする請求項39記載の装置。
【請求項51】
深さが約120ミクロンであることを特徴とする請求項50記載の装置。
【請求項52】
少なくとも一つのフィルタが通路の壁の一部を形成することを含むことを特徴とする請求項51記載の装置。
【請求項53】
第1流体と第2流体との間で成分を交換する装置において、
各々それぞれの入口と出口とを備え、入口内へ流れる少なくとも二つの流体が互いに直接接触して入口内へ流れさせ、そして出口から流出させる第1及び第2通路と;
入口及び出口を備え、入口で受けた流体の性質を変え、性質の変わった流体を出口へ運ぶ流体処理装置と
を有し;
第1通路の出口の第1出口が第2通路の入口の第1入口に接続され;
第1通路の出口の第2出口が流体処理装置の入口に接続され;
第2通路の入口の第2入口が流体処理装置の出口に接続されていること;
を特徴とする装置。
【請求項54】
流体処理装置が膜であることを特徴とする請求項53記載の装置。
【請求項55】
流体処理装置が透析装置であることを特徴とする請求項53記載の装置。
【請求項56】
さらに、通路内の流体間の輸送が主として拡散によるように層流形態で第1及び第2通路に流体を流れさせる流体輸送装置を有することを特徴とする請求項53記載の装置。
【請求項57】
第1通路の出口の第2出口がフィルタを備えていることを特徴とする請求項53記載の装置。
【請求項58】
フィルタが最大600nmのサイズの微細孔を備えていることを特徴とする請求項57記載の装置。
【請求項59】
血漿から血球を分離する方法において、
被濾過出口を備えた容器表面から、血球及び血漿を含む層において血球のほとんどを抜き取ること;
血球が被濾過出口に入るのを阻止するように被濾過出口を介して血漿を除去すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項60】
層が流動層であることを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項61】
血球の抜き取りが、表面から離れるより壁に近い方が高いせん断勾配を流動層に形成することを含むことを特徴とする請求項60記載の方法。
【請求項62】
層が水性溶媒を含むことを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項63】
被濾過出口が容器表面と共面である表面を備えたフィルタを備えていることを含むことを特徴とする請求項59記載の方法。
【請求項64】
被濾過出口が容器表面と共面である表面を備えたフィルタを備え、層が、フィルタの表面を清浄するのに有効であるせん断を表面近くに備えた流動層であることを特徴とする請求項59記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−506599(P2010−506599A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512252(P2009−512252)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/069414
【国際公開番号】WO2007/137245
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508344512)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (3)
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/069414
【国際公開番号】WO2007/137245
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508344512)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (3)
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】
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