説明

等速ジョイント出力を有するトルク伝達装置

【課題】高い出力角度で、入力シャフトからリア出力シャフトとフロント出力シャフトの両方までのトランスファーケース内でのより効率的なトルク伝達装置を提供する。
【解決手段】等速ジョイントに組み込まれたトルク伝達装置904に内に回転自在に設けられたアウターレース920と、このアウターレース920内に伝達ボールを開始連結されたインナーレースと、このインナーレースに連結された出力シャフト914とから構成されている。前記出力シャフト914は、カバーのハブによって前記等速ジョイントのアウターレース920の回転軸に対して所定の角度で固定されている。前記カバー又はハブのは、前記アウターレース920のインナーボア930内まで延長する円周状延長部928を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照) 本出願は、2003年11月18日に出願された米国暫定出願第60/520,879号、2004年2月4日に出願された米国暫定出願第60/541,841号、2004年2月11日に出願された米国暫定出願第60/544,090号、2004年3月2日に出願された米国暫定出願第60/549,725号、2004年3月22日に出願された米国暫定出願第60/555,202号に対する優先権を主張し、これらは全て引用により全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は一般に、動力伝達システムに関する。より具体的には、本発明は、トルク伝達装置出力とフロント又はリアディファレンシャルとの間で角度駆動連結が可能な等速ジョイントを有するトルク伝達装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
四輪駆動車や全輪駆動車は、ここ数年の内に次第に使用され人気が高まってきている。フルタイム又はパートタイムモードにおけるこれら全輪駆動車や四輪駆動車でトルク出力の分配に使用される動力伝達システムには多くの種類がある。一般に、最も知られた四輪駆動出力伝達システムは、トランスミッション出力シャフトによって駆動される入力シャフトと、該入力シャフトによって駆動され且つ後輪を駆動するためリアプロペラシャフトを介してリアアクスル組立体に相互連結されるリア出力シャフトとを有するトランスファーケースなどのトルク伝達装置を含む。フロントプロペラシャフト、又はフロントディファレンシャルに相互連結されるフロント出力シャフトは通常は前輪を駆動する。駆動トルクをリア出力シャフトからフロント出力シャフトまで、又はフロント出力シャフトからリア出力シャフトまで連続的又は選択的に伝達するトルク伝達装置は同様に通常は一体化される。トルクのこの車軸間差動によって、前輪及び後輪が異なる速度で回転可能となり、これは、自動車の通常の旋回時、又は車両が泥、緩んだ砂利、氷、雪、水、その他同様のものなどのオフロードにある時に発生する。
【0003】
一般に、パートタイム四輪駆動システムでは、トランスファーケースは、二輪駆動モードと四輪駆動モードとの間で車両を切り替えるために、車両の運転者がフロントとリアの出力シャフトを選択的に結合し、分離することができる切り替え機構を備える。フルタイム四輪駆動システムは、フロントとリアの出力シャフトとの間で駆動トルクを連続的に分割しながら同時にこれらの間での速度差動を可能にするアクスル間ディファレンシャルを備えるトランスファーケースを有する。過度の車輪スリップに起因するトラクションロスを防止するために、これらのフルタイムトランスファーケースの多くは、選択的に又は自動的にアクスル間ディファレンシャルをロックして、車輪スリップに応答して速度差動を制限又は防止するためのスリップ制限装置を備える。
【0004】
最近では、駆動輪でトラクションが失われた場合に限り、車両運転者側からのどのような入力又は操作を行うこと無く自動的に従動輪に動力を配向させるために使用されるオンデマンド動力伝達システムが増えてきた。典型的には、これらの速度感応型トルク伝達装置は、これらの間で増加する速度差動に応じてフロント出力シャフトに漸次的にトルクを供給するために、フロント出力シャフトとリア出力シャフトとの間に設置される。これらのトルク伝達装置には通常、ビスカスカップリング、ギアカップリング、動力カップリング、電気カップリング、その他同様のものを含むことができる。
【0005】
一般的にトランスファーケースは、単一オフセット又は二重オフセットタイプのいずれかに分類される。単一オフセット型トランスファーケースでは、出力シャフトの1つだけが、入力シャフトの回転軸からオフセットされる。二重オフセット型トランスファーケースでは、フロントとリアの出力シャフトが通常整列し、両方が入力シャフトの回転軸からオフセットする。二重オフセット型トランスファーケースの1つの公知の欠点は、アンダーボディー空間の増大であり、これは特にオフロード車両ではパッケージングの問題が生じる場合が多い。
【0006】
先行技術のトランスファーケースに関連する別の公知の問題は、トランスファーケースのフロントとリアの出力シャフトとこれらの対応するプロペラシャフトとの間の連結のディパーチャーアングルである。ディパーチャーアングルは、プロペラシャフトの回転軸とトランスファーケース出力シャフトの回転軸との間に含まれる角度として定義される。一般的に先行技術では、ディパーチャーアングルが約5度より小さい場合には、単一カルダン継手がプロペラシャフトの各端部において使用された。ディパーチャーアングルが約5度を超える場合には、先行技術では二重カルダンユニバーサルジョイント又は別の追加の構成要素が必要とされ、コスト増大が必要となり、更にパッケージングの問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コストを削減し且つパッケージング問題を最小限にするためには、最新の四輪駆動車両のトランスファーケース出力シャフトで見られる高いディパーチャーアングルで作動可能なトランスファーケースなどのトルク伝達装置に対する必要性が存在する。これらの高い出力角度は、最新のオフロード又は四輪駆動車両ではどの場合でも10−20度である。等速ボールジョイントの使用に起因するトランスファーケースでの効率的なパッケージング及び外来の騒音の低減に対する当該技術分野における必要性も存在する。更に、入力シャフトからトランスファーケースのリア出力シャフトとフロント出力シャフトの両方までのトランスファーケース内でのトルク伝達のより効率的な方法に対する当該技術分野における必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、等速ジョイントと協働する改良されたトルク伝達装置が開示される。本トルク伝達装置は入力シャフトと少なくとも1つの出力シャフトとを含む。本等速ジョイントは、本トルク伝達装置内で回転自在に支持されるアウターレースを含む。インナーレースは、アウターレースのキャビティ内に位置付けられる。出力シャフトは、入力シャフトに回転自在に取り付けられる。少なくとも1つの転動体が、アウターレースとインナーレースとの間に配置され、更に転動体をその中に位置付けて保持するためのケージを含む。駆動機構装置は、アウターレースとインナーレースに動作可能に連結される。入力シャフトが回転すると、駆動機構装置は、発生したトルクをアウターレースに伝達し、その結果アウターレースがインナーレースを駆動し、これにより出力シャフトが駆動されることになる。駆動機構装置は、チェーンとスプロケット駆動システム、ベベルギアトルク伝達システム、又は、従来のインラインギアトルク伝達システムを組み込むことができる。
【0009】
1つの実施態様では、アウターレースが中実要素であり、従ってグリース又は他の好適な潤滑剤が等速ジョイント内をシールすることができると共に、トルク伝達装置からの潤滑油が等速ジョイント内に流入しないようにする。ブーツを出力シャフトとトランスファーケース表面又は等速ジョイントのアウターレースとの間に配置して、等速ジョイントを外部の汚染物質から保護しシールすることができる。該ブーツは、固定型又は回転型ブーツとすることができる。等速ジョイントは、プランジング型ジョイントであってもよく、或いは所定の高いディパーチャーアングルで固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による等速ジョイントを組み込み、ベベルギア駆動機構装置を使用するトランスファーケースの断面図である。
【図2】スプロケット及びチェーン駆動機構装置を使用する本発明によるトランスファーケースの代替的実施形態の断面図である。
【図3】トランスファーケースで使用するためのインラインギアトルク伝達システムの代替的実施形態の部分断面図である。
【図4】本発明によるトランスファーケース内に統合された等速ジョイントの断面図である。
【図5】本発明による代替的シール装置を備えた図4の等速ジョイントを示す図である。
【図6】本発明によるトランスファーケース内に位置付けられた等速ジョイントの代替的実施形態を示す図である。
【図7】本発明による代替的シール装置を備えた図6の等速ジョイントを示す図である。
【図8】本発明によるトランスファーケース内に位置付けられた等速ジョイントの代替的実施形態を示す図である。
【図9】本発明によるプランジング型等速ジョイントの断面図である。
【図10】本発明によるトランスファーケース内に位置付けられたプランジング型等速ジョイントの代替的実施形態の断面図である。
【図11】本発明による減衰要素を組み込んだプランジング型等速ジョイントの代替的実施形態の断面図である。
【図12】本発明で使用するための減衰システムの部分断面図である。
【図13】本発明による減衰システムの代替的実施形態の部分断面図である。
【図14】本発明で使用するための減衰システムの別の代替的実施形態の部分断面図である。
【図15】本発明によるハブを組み込んだ等速ジョイントの代替的実施形態の断面図である。
【図16】本発明による代替的ハブ設計を用いる図15の等速ジョイントの断面図である。
【図17】本発明による潤滑システムを含む等速ジョイントの代替的実施形態を示す図である。
【図18】本発明による代替的潤滑システムを含む等速ジョイントの断面図である。
【図19】本発明による潤滑システム別の代替的実施形態を含む等速ジョイントの断面図である。
【図20】本発明による等速ジョイントのアウターレース用支持体の代替的実施形態を示す図である。
【図21】本発明による等速ジョイントのアウターレース用支持体の代替的実施形態を示す図である。
【図22】本発明による等速ジョイントのアウターレース用支持体の代替的実施形態を示す図である。
【図23】本発明による等速ジョイントのアウターレース用支持体の代替的実施形態を示す図である。
【図24】本発明による等速ジョイントのアウターレース用支持体の代替的実施形態を示す図である。
【図25】本発明によるハブを組み込んだ等速ジョイントの代替的実施形態を示す図である。
【図26】本発明によるトランスファーケース内で使用する等速ジョイントの代替的実施形態を示す図である。
【図27】本発明によるトランスファーケース内で使用する等速ジョイントの代替的実施形態を示す図である。
【図28】本発明によるトランスファーケース内で使用する等速ジョイントの別の代替的実施形態を示す図である。
【図29】本発明によるトランスファーケース内で使用する等速ジョイントの更に別の代替的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
各図を全体的に参照すると、本発明によるトランスファーケースで使用する等速ジョイントが示されている。本発明は自動用トランスファーケースでの使用において説明するが、ギアボックス又は船舶用途などの別の用途もまた本発明の範囲にあるものとされる点を理解されたい。本トランスファーケースは、全輪駆動又は四輪駆動システムで使用するのが好ましいが、しかしながら、どのような公知の車両システムでも使用可能であることを理解されたい。実際に、本トランスファーケースは前輪駆動のみ、又は後輪駆動のみの車両システムで機能するように同様に適合可能である点に留意されたい。
【0012】
本トランスファーケースは一般に、車両エンジンからトランスミッションを介して入力シャフトにおいて動力を受け入れる。入力シャフトが回転すると、リア出力シャフトとフロント出力シャフトの両方とも回転し、各出力シャフトは、それぞれその端部でリアディファレンシャルとフロントディファレンシャルに動作可能に連結されている。先行技術のトランスファーケースが、フロント及びリアディファレンシャル間のプロペラシャフトとトランスファーケースの出力シャフトとの間の高いディパーチャーアングルで動作することに伴い問題が生じているので、プランジング型又は固定型のいずれかの等速ジョイントを使用する本発明では、トランスファーケースが高いディパーチャーアングルで作動することができ、更に車両のオフロード状態によって引き起こされるディパーチャーアングルの変化を適切に補償することも可能になる。
【0013】
次に図1を参照し、本発明による等速ジョイント12を有するトランスファーケース10の構成要素を説明する。トランスファーケース10は、第1の端部16で車両のトランスミッションに連結される入力シャフト14を含む。入力シャフト14の反対側の端部18はディファレンシャル20と係合し、該ディファレンシャル20は、入力シャフト14によって発生した入力トルクをトランスファーケース10のリア出力シャフト22と該リア出力シャフト22からディファレンシャル20の反対側に位置するトルク伝達システムとの両方に伝達する歯車装置システムを有する。1つの実施形態では、トルク伝達システムは、ベベルギアトルク伝達システム24を含む。ベベルギアトルク伝達システム24は第1セットのベベルギア26を含む。該第1セットのベベルギア26は、ディファレンシャル20を介して入力シャフト14からトルクを取り込み、該トルクをスタブシャフト28を介してスタブシャフト28の反対側端部32に配置された第2セットのベベルギア30に伝達する。スタブシャフト28は、少なくとも1つのセットの軸受によって回転自在に支持される。1つの実施形態では、軸受34a、34bは、トランスファーケース10内に第1、第2セットのベベルギア26、30に隣接して配置される。任意選択のねじりダンパー36は同様に振動と騒音を減少させるためにスタブシャフト28を中心に配置されている。
【0014】
第2セットのベベルギア30は、スタブシャフト28の一端部32に取り付けられたベベルギア36を含み、別のベベルギア38が本発明による等速ジョイント12のアウターレース40に動作可能に連結される。1つの実施形態では、ベベルギア38はアウターレース40と一体的に形成される。フロント出力シャフト46は、等速ジョイント12に動作可能に連結される。
【0015】
1つの実施形態では、アウターレース40は、トランスファーケース10内に少なくとも1つのセットの軸受42、44を介して支持されている。従って、車両のトランスミッションによって発生した入力トルクは、ディファレンシャル20を介してリア出力シャフト22とフロント出力シャフト46の両方に伝達される。この実施形態では、フロント出力シャフト46によって伝達されるトルクは、以下に説明するようにベベルギアトルク伝達システム24を介して伝達されるが、トランスファーケース10内の別のトルク伝達システムもまた企図される。更に、図1は、固定型等速ジョイント12を採用したが、プランジング型又は複数ボールジョイントもまた、本発明から逸脱することなく等速ジョイント12として採用可能である点を理解されたい。
【0016】
図2は、本発明による等速ジョイント51を組み込んだトランスファーケース50の代替的実施形態を示す。トランスファーケース50は、入力シャフト52を含み、該入力シャフト52は、第1スプロケット54と、端部でリア出力シャフト56との両方に動作可能に連結される。第1スプロケット54は第2スプロケット56と整列している。第1スプロケット54は、トランスファーケース50の入力シャフト52に対し回転自在に取り付けられる。トランスファーケース50の反対側にある第2スプロケット56は、等速ジョイント51のアウターレース60に対し回転自在に取り付けられる。第2スプロケット56は、両スプロケット54、56の外周の周りに延び且つ係合するチェーン62によって、本発明による等速ジョイント51に動作可能に連結される。チェーン62は、入力シャフト52から発生したトルクを、トランスファーケース50から延びるフロント出力シャフト64に伝達するように作動する。本明細書で説明するあらゆる等速ジョイントは、入力シャフト52からフロント出力シャフト64へのトルクの伝達に図2に示すチェーンとスプロケット方式を用いるトランスファーケース50で使用可能である。
【0017】
図3は、従来のインラインギア伝達システムを使用するトルク伝達システム70の断面図を示す。より具体的には、トルク伝達システム70では、入力シャフト72は、トランスファーケース内でトルクを発生する。入力シャフト駆動ギア74は、入力シャフト72に連結される。駆動ギア74は、アイドラーシャフト78に動作可能に連結される高速ギア76と係合する複数の歯を含む。出力シャフト80は出力シャフト駆動ギア82を備える。入力シャフト駆動ギア74と同様に、出力シャフト駆動ギア82は高速ギア76に形成された対応する歯と係合する複数の歯を含む。従って、トランスファーケース内の入力シャフト72からのトルクは、入力シャフト駆動ギア74を所定速度で回転しようとする。この速度は、入力シャフト駆動ギア74によって高速ギア76に伝達され、高速ギア76は、その反対側で出力シャフト駆動ギア82と接触する。従って、入力シャフト72のトルクは、高速ギア76を介してトルク伝達システム70の反対側の端部に向い、フロントディファレンシャルの出力シャフト80に渡される。これらのトランスファーケースは同様に互いに整列したフロント出力シャフトとリア出力シャフトを有することができる点に留意されたい。しかしながら図3に示す実施形態では、フロント出力シャフトとリア出力シャフトは、所定の距離だけ隔てられている。この配置により、全輪駆動車両と四輪駆車両でのパッケージングスペースが低減される。従って、本明細書で説明する如何なる種類の等速ジョイントもまた、トランスファーケース用として図3に示す従来の駆動型ギアトルク伝達システム70で使用することができる。
【0018】
一般に、図1−図3のトランスファーケースは、トランスファーケースシステムの適切に潤滑し、冷却する油中で全て動作する。しかしながら、トランスファーケースの潤滑剤や冷媒としてグリースを使用することもまた、本発明の範囲内であることが企図される点に留意されたい。
【0019】
図4は、本発明によるトランスファーケース92のようなトルク伝達装置で使用するための等速ジョイント90を示す。等速ジョイント90は、アウターレース94を含み、該アウターレースは、トランスファーケース92の内部チャンバ96と何らかの形で相互連結するか又は連通する中空シャフト又は中空部品が存在しないように中実の部材であるのが好ましい。これは、トランスファーケース92を潤滑するのに使用されるトランスファーケース油が等速ジョイント90の内部チャンバ98に確実に漏出又は汚染しないようにする。
【0020】
等速ジョイント90のアウターレース94は肩部分100を含む。肩部分100は、トランスファーケース92の内壁上に形成された装着部分102と協働して軸受104を位置付けて支持する。軸受104は、アウターレース94を回転自在に支持するように動作する。等速ジョイントのアウターレース94は、耐久性や強度の点で鋼材材料から構成されるのが好ましいが、しかしながら、車両の等速ジョイント90の設計要件に応じて、他のあらゆる金属材料、硬質プラスチック、複合材料、又はセラミックスを使用してもよい点に留意されたい。
【0021】
等速ジョイント90は更に、アウターレース94のボア内に配置されたローラーケージ106を含む。ローラーケージ106はその表面を貫通する複数のオリフィスを含む。インナーレース108はローラーケージ106内に配置され、貫通するボアを含む。このボアは、トランスファーケース92の出力シャフト110と連結するために、その内面に複数のスプライン又は歯を含む。本発明の1つの態様によれば、出力シャフト110とインナーレース108とは、互いに固定され一体に回転する。複数のトルク伝達ボール112は、アウターレース94の内面114とインナーレース108の外面116との間に配置される。ボール112は、該ボール112がアウターレース94とインナーレース108にあるそれぞれ指定されたボールトラック内に確実に位置付けられたままであるように、ローラーケージ106のオリフィス内に配置される。ローラーケージ106、ボール112、インナーレース108は、鋼材材料から構成されるのが好ましいが、他のあらゆる金属材料、セラミックス、硬質プラスチック、又は複合材料を使用することが企図されている点に留意されたい。
【0022】
また図4に示すように、スプロケット118は、アウターレース94の外面120に連結される。スプロケット118をアウターレース94に連結するために、どのような適切な種類の機械的又は化学的連結を使用してしてもよい。1つの実施形態では、スプロケット118は溶接122によって外面120に固定連結される。スプロケット118は、スプロケット118の装着面126と、トランスファーケース92に連結する装着ブラケット130上に形成された対応する装着面128との間に位置付けられた軸受124を介して、トランスファーケース92内に回転自在に支持される。スプロケット118は、スプロケット118の部分133の外面に複数の歯131を含む。チェーン132は、ループの一方端が歯131と係合するようにスプロケット118の外面の周りにループにされる。チェーン132のループの他端は、連結される対応のスプロケット(例えば図2スプロケット54を参照)を介してトランスファーケース92の入力シャフト(例えば図2の入力シャフト52を参照)に連結される。
【0023】
等速ジョイント90は更に、スプロケット118の内面136と出力シャフト110との間に位置付けられるブーツ134を含む。代替的な実施形態では、ブーツ134は、アウターレース94に連結することができる。ブーツ134は、いずれかの公知の固定具を介してスプロケット118と出力シャフト110に固定される。例えば、1つの実施形態では、ブーツ134を出力シャフト110に固定するのにクランプ138が使用される。作動中、ブーツ134は、出力シャフト110と等速ジョイント90と共に回転する。ブーツ134は、等速ジョイント90がグリースで潤滑することを可能にし、一方ではグリースを等速ジョイント90内に保持して、外部汚染から該等速ジョイント90を保護する機能を果たす。
【0024】
また、1つの実施形態では、等速ジョイント90はスプロケット118の端部分142と装着ブラケット130との間に配置されるリングカバー140を含むことができる。また、シール144を本発明に組込むことが望ましい場合がある。シール144は、装着ブラケット130とスプロケット118の端部分142との間に位置付けられる。リングカバー140とシール144の両方は、トランスファーケース92からの油がそこから漏出せず又は等速ジョイント90の内部チャンバ98に浸透しないことを保証するよう機能する。従って、等速ジョイント90は、自己潤滑システム(例えばグリース)を有すると同時に、トランスファーケース92は、トランスファーケース構成要素を潤滑し冷却する油潤滑剤を有することになる。
【0025】
本発明の1つの態様によれば、等速ジョイント90は、リア及び/又はフロントディファレンシャル間に連結されるプロペラシャフトに対して極めて高いディパーチャーアングルで動作することができる。トランスファーケース92内に統合されるこの新しい形態の等速ジョイントでは、トランスファーケースに必要な幅が小さくなり、従って、全輪駆動車両の他の構成要素のためのパッケージングスペースが増えることになる。
【0026】
本明細書で説明される等速ジョイント90は、当該技術分野で公知の固定型又はプランジング型ジョイントのいずれかとすることもできる。これらのジョイントは、6ボールジョイント、8ボールジョイント、又は10ボールジョイントなどのどのような数のタイプのボールジョイントであってもよく、クロスグローブ型ジョイント、固定型ジョイント、固定型トライポット、ダブルオフセット型ジョイントなどとすることができる。本発明の1つの態様によれば、等速ジョイント90を使用することにより、トランスファーケース92の出力シャフト110とフロントディファレンシャル又はリアディファレンシャルに連結するシャフトとの間でのより大きなディパーチャーアングルが可能となる。
【0027】
図5は、本発明によるトランスファーケース151内に配置された固定型等速ジョイント150の代替的な実施形態を示す。等速ジョイント150は、アウターレース152を含み、該アウターレース152は、トランスファーケース151の内部チャンバ154と連結される開口部又は中空部分の無い中実要素であるのが好ましい。アウターレース152は、肩部分156を含み、該肩部分156は、トランスファーケース151の内壁160上に形成された対応する装着部分158と協働して軸受162を保持する。軸受162は、トランスファーケース151内でアウターレース152を回転自在に支持する。
【0028】
等速ジョイント150は同様に等速ジョイント150のアウターレース152のボア内に配置されたローラーケージ164を含む。ローラーケージ164は、その表面を貫通する複数のオリフィスを含む。インナーレース166は、ローラーケージ164内に配置され、貫通するボアを含む。インナーレース166のボアは、出力シャフト168と連結するために、その内面に複数のスプライン又は歯を含む。出力シャフト168とインナーレース166とは、互いに固定され一体に回転する。本発明の1つの態様によれば、出力シャフト168は、トランスファーケース151に対して高いディパーチャーアングルで動作することができる。
【0029】
複数のトルク伝達ボール170は、アウターレース152の内面172とインナーレース166の外面174との間に配置される。ボール170は、該ボール170が動作中にアウターレース152とインナーレース166の指定されたボールトラック内に確実に保持されるように、ローラーケージ164のオリフィス内に配置される。ローラーケージ164、ボール170、アウターレース152、インナーレース166は全て、耐久性と強度のために鋼材材料で作られるのが好ましい。しかしながら、本発明から逸脱することなく等速ジョイント150内のこれらの部品に対して、いずれか他の好適な金属、セラミックス、硬質プラスチック、又は複合材料が採用可能であることも企図される。
【0030】
等速ジョイント150は同様にアウターレース152の外面に連結され固定されるスプロケット176を含むことができる。スプロケット176をアウターレース152に連結するために、どのような適切な種類の機械的又は化学的転結を使用してもよい。1つの実施形態では、溶接178が、スプロケット176をアウターレース152に堅固に固定する。
【0031】
スプロケット176は、軸受180を介してトランスファーケース151内に回転自在に支持される。軸受180は、スプロケット176の装着面182とトランスファーケース151の装着ブラケット部分186に形成された対応する装着面184との間に位置付けられる。軸受180は、スプロケット176と等速ジョイント150がトランスファーケース151に対して回転することができるように機能する。スプロケット176は更に、スプロケット176の部分190の外面上に形成された複数の歯188を含む。チェーン192は、ループの一方端が歯188と係合するようにスプロケット176の外面の周りにループにされる。チェーン192のループの反対側の端部は、連結される第2スプロケット(例えば図2スプロケット54を参照)を介してトランスファーケース151の入力シャフト(例えば図2の入力シャフト52を参照)に連結される。このチェーン/スプロケット構成により、等速ジョイント150は入力シャフト速度で回転する。
【0032】
等速ジョイント150は更に、トランスファーケース151の装着ブラケット186に固定されるブーツ194を出力シャフト168の周りに含むことができる。代替的な実施形態では、ブーツ194は、装着ブラケット186又はアウターレース152に連結することができる。ブーツ194は、いずれかの公知の固定具を介して装着ブラケット186に固定することができる。本発明の1つの態様によれば、ブーツ194は、ローラー軸受196によって出力シャフト168に固定され、その結果、出力シャフト168はブーツ194に対して回転できるようになる。この実施形態では、ブーツ194は、グリース又は他の好適な潤滑剤を等速ジョイント150内にシールするよう機能する非回転ブーツである。ブーツ194は同様に外部環境からの汚染物質が等速ジョイント150の内部チャンバ198へ侵入するのを防止する機能を果たす。
【0033】
ブーツ194は、ウレタンから構成されるのが好ましい。しかしながら、ゴム、プラスチック、複合材料又は織物のような他の好適な柔軟材料をブーツ194の製作に使用することができる点を理解されたい。実際に、ブーツ194用の材料は、等速ジョイント150の高温や高速回転に耐えると共に、運転条件に起因する等速ジョイント150のいかなる角度変化にも対応する柔軟性を保持できる限りどのような材料を使用してもよい。
【0034】
1つの実施形態では、等速ジョイント150はグリースで潤滑される。グリースは、ブーツ194まで浸透することができ、これにより、等速ジョイント150の全ての内部機構と共に出力シャフト168全体をほぼ潤滑する。等速ジョイント150の外面は、トランスファーケース151の潤滑油で被覆されるのが好ましい。上述のように潤滑油は、等速ジョイント150の内部チャンバ198内には浸透することができず、その結果、等速ジョイント150の潤滑グリースは汚染されないままとなる。
【0035】
また、トランスファーケース151が更に、スプロケット176の端部分202とトランスファーケース151の装着ブラケット186との間に配置されるシール200を含むのが望ましい。
【0036】
図6は、本発明によるトランスファーケース206内に位置付けられる等速ジョイント204の更に別の代替的実施形態を示す。等速ジョイント204は、アウターレース208を含み、該アウターレースは、トランスファーケース206の内部チャンバ210に連結されるか又は連通する開口又は中空部分の無い中実体として形成されるのが好ましい。アウターレース208は通常鋼材材料から作られるが、しかしながら等速ジョイント204と車両の、設計や運転要件に応じて、他のあらゆる金属材料、硬質プラスチック、複合材料、又はセラミックスを使用してもよい点に留意されたい。
【0037】
アウターレース208は更に、該アウターレース208の本体部分214から横方向に延びる延長部212を含む。延長部212は、図6では中空であるように示されているが、自動車の設計要件に応じて中空又は中実体とすることができる点を理解されたい。
【0038】
延長部212は更に、その外面上に取り付けられたスプロケット216を含むことができる。スプロケット216は、その外面220上に位置付けられる複数の歯218を含む。スプロケット216は、事実上化学的又は機械的な何らかの公知の固定技術によって、アウターレース208の延長部212に連結される。1つの好ましい実施形態では、スナップリング222を用いて、スプロケット216をアウターレース208から延びる延長部212に連結される。
【0039】
チェーン224は、チェーンループの一方端が歯188と係合するようにスプロケット216の外面の周りにループにされる。チェーンループの反対側の端部は、連結される第2スプロケット(例えば図2スプロケット54を参照)を介してトランスファーケース206の入力シャフト(例えば図2の入力シャフト52を参照)に連結される。このチェーン/スプロケット構成により、等速ジョイント204は、入力シャフト速度で回転する。
【0040】
他の好適な駆動機構装置が、図4−図28の種々の実施形態に示す等速ジョイントと関連付けて使用できる点に留意されたい。換言すれば、本発明は、チェーンとスプロケット駆動機構装置の使用に限定されない。図3に示すような従来型のインラインギア機構又は図1に示すベベルギア機構もまた使用することができる。
【0041】
ローラーケージ226は、等速ジョイント204のアウターレース208のボア内に配置される。ローラーケージ226は、その表面を貫通する複数のオリフィスを含む。インナーレース228は、ローラーケージ226内に配置され、貫通するボアを含む。本発明の1つの態様によれば、このボアは、出力シャフト230と連結するために、その内面に複数のスプライン又は歯を含む。出力シャフト230とインナーレース228とは、互いに固定され一体に回転する。複数のトルク伝達ボール232は、アウターレース208の内面234とインナーレース228の外面236との間に配置される。ボール232は、該ボール232がアウターレース208とインナーレース228のある指定されたボールトラック内に確実に留まるように、ローラーケージ226のオリフィス内に配置される。ローラーケージ226、ボール232、インナーレース228は全て、強度と耐久性のために鋼材材料で作られるのが好ましい点に留意されたい。しかしながら、等速ジョイント204内のこれらの部品に対して、他のあらゆる好適な金属材料、セラミックス、硬質プラスチック、又は複合材料が使用可能であることも企図される。
【0042】
等速ジョイント204は同様に第1、第2セットの軸受238、240のような少なくとも1つのセットの軸受を含む。第1、第2セットの軸受238、240は、アウターレース208の外面242とトランスファーケース206の内壁部分244との間に配置される。アウターレース208上に形成された保持リップ246は、トランスファーケース206の装着ブラケット250に形成された位置決め突起248と協働して、第1、第2セットの軸受238、240を正確に位置付ける。また、スナップリング252を用いて、第1、第2セットの軸受238、240を固定することも好ましい。第1、第2セットの軸受238、240は、等速ジョイント204がトランスファーケース206に対して回転できるようにする。
【0043】
本発明の別の態様によれば、シール装置254を設けることもまた好ましい。シール装置254は、第1セットの軸受238に隣接してトランスファーケース206の装着ブラケット250の内面256に沿って位置付けられる。シール装置254を用いて、潤滑油がトランスファーケース206の内部チャンバ210から等速ジョイント204の内部チャンバ258内に確実に漏出しないようにする。
【0044】
本発明の別の態様によれば、等速ジョイント204は同様にブーツ260を備えることができる。ブーツ260は、トランスファーケース206の装着ブラケット250の外面262上に位置付けられ、出力シャフト230を囲む開口を含む。ブーツ260は、装着ブラケット250の外面262に何らかの公知の固定機構を介して固定することができる。1つの好ましい実施形態では、ブーツ260の環状部材270を圧着する端部分268を含む固定部材266が設けられる。
【0045】
ブーツ260は、いずれかの好適な固定機構によって出力シャフト230の周りに固定することができる。図6に示す実施形態では、ブーツ260は、等速ジョイント204に対して回転しないブーツ260である。ニードル軸受272が、ブーツ260の装着リップ274と出力シャフト230の外面276との間に位置付けられる。ニードル軸受272により、出力シャフト230がブーツ260に対して回転することが可能となり、ブーツ260がトランスファーケース206に対して固定された状態に保たれる。
【0046】
等速ジョイント204は傘キャップ278を含むことができる。傘キャップ278は、出力シャフト230の周りに位置付けられ、トランスファーケース206の装着ブラケット250の内壁282に当接する端部分280を有する。傘キャップ278は、等速ジョイント204の内部チャンバ258の潤滑に使用される潤滑グリースが等速ジョイント204内に保持されることを可能にし、これにより、潤滑グリースがブーツ260を汚染せず及び/又は劣化させないようにする。傘キャップ278は、出力シャフト230に対して回転する。しかしながら、傘キャップ278は、出力シャフト230に対して回転しないように設計することができる点に留意されたい。
【0047】
図7は、本発明によるトランスファーケース286内に位置付けられた固定等速ジョイント284の更に別の実施形態を示す。等速ジョイント284は、アウターレース288の本体部分292から横方向に延びる延長部290を有するアウターレース288を含む。アウターレース288は、トランスファーケース286の内部チャンバ293に連結されるか又は連通する開口又は中空部分を備えない中実体として形成されるのが好ましい。アウターレース288は通常、鋼材材料から作られるが、しかしながら、等速ジョイント284と車両の、設計や運転要件に応じて、他のあらゆる金属材料、硬質プラスチック、複合材料、又はセラミックスを使用してもよい点に留意されたい。延長部290は、図6に関連して上述したような同じスプロケット294とチェーン296駆動システムを含むのが好ましいが、別の駆動機構もまた企図される。
【0048】
等速ジョイント284は、第1、第2セットの軸受298、300を介してトランスファーケース286に対して回転自在に支持される。第1、第2の軸受298、300は、アウターレース288の外面302とトランスファーケース286の内壁部分304との間に位置付けられる。アウターレース288に形成された保持リップ306は、トランスファーケース286の装着ブラケット310に形成された位置決め突起308と協働し、第1、第2セットの軸受298、300を正確に位置付ける。また、スナップリング312が、第1、第2セットの軸受298、300を固定するのに使用されるのが好ましい。第1、第2セットの軸受298、300により、等速ジョイント284がトランスファーケース286に対して回転することが可能となる。
【0049】
本発明の1つの態様によれば、シール326は、アウターレース288とトランスファーケース286との間に位置付けられ、潤滑油がトランスファーケース286から等速ジョイント284の内部チャンバ316内に確実に漏出しないようにする。
【0050】
等速ジョイント284は更に、該等速ジョイント284のインナーレース320のボア内に位置付けられるローラーケージ318を含む。ローラーケージ318は、その表面を貫通する複数のオリフィスを含む。インナーレース320は、ローラーケージ318内に位置付けられ、貫通するボアを含む。このボアは、出力シャフト322と連結するために、その内面に複数のスプライン又は歯を含む。出力シャフト322とインナーレース320は、互いに対し回転自在に取り付けられる。複数のトルク伝達ボール324が、アウターレース288の内面326とインナーレース320の外面328との間に配置される。ボール324は、ボール324がアウターレース288とインナーレース320の指定されたボールトラック内に確実に留まるように、ローラーケージ318のオリフィス内に配置される。1つの実施形態において、ローラーケージ318、ボール324、アウターレース288、インナーレース320は全て鋼材材料から作られるのが好ましいが、等速ジョイント284内でこれらの部品に対して、他のあらゆる好適な金属材料、セラミックス、硬質プラスチック、又は複合材料を使用することが企図されている点に留意されたい。
【0051】
本発明の別の態様によれば、等速ジョイント284は同様にブーツ330を含む。ブーツ330は、トランスファーケース286の装着ブラケット310の外面332上に位置付けられ、出力シャフト322を囲む開口334を含む。ブーツ330は、装着ブラケット310の外面332に何らかの公知の固定機構を介して固定することができる。1つの好ましい実施形態では、ブーツ330の環状部材342上を圧着する端部分340を含む固定部材338が設けられる。
【0052】
ブーツ330は、いずれかの好適な固定機構によって出力シャフト322の周りに固定することができる。図6に示す実施形態では、ブーツ330は、等速ジョイント284に対して回転しないブーツ330である。ニードル軸受344が、ブーツ330の装着リップ346と出力シャフト322の外面348との間に位置付けられる。ニードル軸受344により、出力シャフト322がブーツ330に対して回転することが可能となり、ブーツ330がトランスファーケース286に対して固定された状態に保たれる。
【0053】
また、等速ジョイント284は2部品遮蔽体350を含む。2部品遮蔽体350は、第1の部分352と第2の部分354とを含む。第1の部分352は、出力シャフト322が延びる中心を貫通するオリフィスを備えたほぼ傘形の形状を有する。第1の部分352は、装着ブラケット310の内面358と当接する端部材356を有する。第1の部分352は、等速ジョイント284の内部チャンバ316の潤滑に使用される潤滑グリースが等速ジョイント284内に保持されることを可能にし、これにより潤滑グリースがブーツ330を汚染せず及び/又は劣化させないようにする。第1の部分352は、出力シャフト322に対して回転する。しかしながら、第1の部分352は、出力シャフト322に対して回転しないように設計することができる点に留意されたい。
【0054】
第2の部分354は、ローラーケージ318の内面360と第1の部分352の内面362との間に位置付けられる。第2の部分354は同様に第1の部分352のオリフィスと整列して出力シャフト322を受け入れるオリフィス364を含む。2部品遮蔽体350は、グリースが等速ジョイント284の内部チャンバ316から漏出してブーツ330を確実に汚染しないように作用する。更に、2部品遮蔽体システム350を使用することにより、最大動作角度でもグリースが等速ジョイント284の内部チャンバ316から確実に漏出できないようになる。2枚シールの遮蔽体350の第1の部分352と第2の部分354の両方はトランスファーケース286に取り付けられ、その結果、第1の部分352と第2の部分354は、出力シャフト322の最大動作角度においても依然として等速ジョイント284の内部チャンバ316に対して定められたシールチャンバが存在しているように互いに相対的に移動する。
【0055】
図8は、本発明によるトランスファーケース370内に装着された固定型等速ジョイント368の更に別の代替的実施形態を示す。等速ジョイント368はアウターレース372を含む。アウターレース372は、トランスファーケース370の内部チャンバ374に連結されるか又は連通する開口や通路が存在しないような中実体であるのが好ましい。他の実施形態と同様に、アウターレース372は、鋼材材料から構成されるのが好ましいが、しかしながら等速ジョイント368と車両の、設計や運転要件に応じて、他のあらゆる金属材料、硬質プラスチック、複合材料、又はセラミックスを使用してもよい点に留意されたい。
【0056】
アウターレース372は、第1、第2セットの軸受376、378を介してトランスファーケース370内に回転自在に支持される。第1、第2セットの軸受376、378は、アウターレース372の外面382の肩部380とトランスファーケース370の内面386の対応する肩部384とに当接する。リング型固定具388a、388bは同様にトランスファーケース370内での第1、第2の軸受376、378の固定を助ける。
【0057】
等速ジョイント368は同様に第1、第2の軸受376、378の反対側の端部に、アウターレース372の外面382に取り付けられたスプロケット390を含む。スプロケット390は、化学的又は機械的などの何らかの公知の固定機構によって取り付けられる。図8に示す実施形態では、スプロケット390は、アウターレース372に溶接392により取り付けられている。スプロケット390は、その外面396上に複数の歯394を含む。
【0058】
チェーン398は、チェーンループの一方端が歯394と係合するようにスプロケット390の外面の周りにループにされる。チェーンループの反対側の端部は、連結される第2スプロケット(例えば図2スプロケット54を参照)を介してトランスファーケース370の入力シャフト(例えば図2の入力シャフト52を参照)に連結される。このチェーン/スプロケット構成により、等速ジョイント368は、入力シャフト速度で回転する。
【0059】
他の好適な駆動機構装置が、等速ジョイント368と関連付けて使用できる点に留意されたい。すなわち、本発明は、チェーンとスプロケット駆動機構装置の使用に限定されるものではない。また、図3に示すような従来のインラインギア機構又は図1に示すようなベベルギア機構を使用してもよい。
【0060】
等速ジョイント368は、等速ジョイント368のアウターレース372のボア内に配置されるローラーケージ400を含む。ローラーケージ400は、その表面を貫通する複数のオリフィスを含む。インナーレース402は、ローラーケージ400内に配置され、貫通するボアを含む。このボアは、出力シャフト404と連結するために、その内面に複数のスプライン又は歯を含む。出力シャフト404とインナーレース402は、互いに対し回転自在に取り付けられる。複数のトルク伝達ボール406は、アウターレース372の内面408とインナーレース402の外面410との間に配置される。ボール406は、該ボール406がインナーレース402とアウターレース372の指定されたボールトラック内に確実に留まるように、ローラーケージ400のオリフィス内に配置される。1つの実施形態では、ローラーケージ400、ボール406、アウターレース372、インナーレース402は全て、鋼材材料から構成されるのが好ましいが、等速ジョイント368内のこれらの部品に対して、他のあらゆる好適な金属材料、セラミックス、硬質プラスチック、又は複合材料を使用することが企図されている点に留意されたい。
【0061】
また、等速ジョイント368はトランスファーケース370の装着ブラケット414とスプロケット390の端部分416との間に位置付けられるシール412を含む。ブーツ418は、スプロケット390の端部分416の内面420と出力シャフト404との間に配置される。ブーツ418は、ウレタンのような柔軟性のある材料で作られる。同様に、ゴム、プラスチック、複合材料、又は織物などの他の好適な柔軟な材料をブーツ418に使用してもよい。ブーツ418は、出力シャフト404とスプロケット390の内面420に何らかの公知の固定具を介して固定される。図8に示すブーツ418は、出力シャフト404、等速ジョイント368、スプロケット390と共に回転する。
【0062】
本発明の別の態様によれば、図8に示す実施形態はハブ422を含む。ハブ422は、トランスファーケース370の装着ブラケット414に所定の角度で固定される。ハブ422は、出力シャフト404とハブ422の内面426との間に配置される少なくとも1つの軸受424を含む。ハブ422は更に、ハブ422の内面426と出力シャフト404との間に位置付けられるシール428を含む。ハブ422は、出力シャフト404とフロントディファレンシャル又はリアディファレンシャルのいずれかとの間の一般に望ましいとされる所定の角度でトランスファーケース370の装着ブラケット414に何らかの公知の化学的又は機械的接合技術により連結されるように適合される。このタイプのジョイントは、リアディファレンシャル及びフロントディファレンシャル(図示せず)と、トランスファーケース370との間で使用可能な単一のディパーチャーアングルだけを有し、従って、駆動システムにおいて単一のディパーチャーアングルだけが必要又は要求される特定のタイプの用途に使用される。
【0063】
図9、図10は、本発明によるトランスファーケース432で使用するためのプランジング型等速ジョイント430を使用する代替的実施形態を示す。プランジング型等速は、図4−図8に関連して上述した前記トランスファーケース伝達システムのいずれかで使用することができる点に留意されたい。
【0064】
図9、図10の両方は、アウターレース434を有する等速プランジング型ジョイント430を示す。アウターレース434は、潤滑油がトランスファーケース432の内部チャンバ436から等速ジョイント430の内部チャンバ438内に漏出しないように中実体を含むのが好ましい。アウターレース434は更に、アウターレース434の本体部分442から横方向に延びる延長部440を含む。スプロケット444は、アウターレース434の延長部440の外面446に、いずれかの公知の機械的又は化学的接合技術によって連結される。図9、図10に示す実施形態では、スプロケット444は、延長部440の端部450上に位置付けられたスナップリング448によって、該延長部440に取り付けられる。
【0065】
スプロケット444は、その外面545に複数の歯452を含む。チェーン456は、チェーンループの一方端が歯452と係合するようにスプロケット444の外面454の周りにループにされる。チェーンループの反対側の端部は、連結される第2スプロケット(例えば図2スプロケット54を参照)を介してトランスファーケース432の入力シャフト(例えば図2の入力シャフト52を参照)に連結される。このチェーン/スプロケット構成により、等速ジョイント430は入力シャフト速度で回転できる。
【0066】
他の好適な駆動機構装置が、等速ジョイント430と関連付けて使用できる点に留意されたい。すなわち、本発明は、チェーンとスプロケット駆動機構装置の使用に限定されない。図3に示すような従来型のインラインギア機構又は図1に示すベベルギア機構も同様に使用することができる。
【0067】
等速ジョイント430は、第1、第2セットの軸受458、460のような少なくとも1つの軸受セットを介してトランスファーケース432内に回転自在に配置される。第1、第2セットの軸受458、460は、アウターレース434の外面462に位置付けられる。保持リップ464は、外面462から外方に延びて、装着ブラケット468から横方向に延びる位置決め突起466と協働し、第1、第2の軸受458、460を所定位置に保持する。第1、第2セットの軸受458、460は、スナップリング又は他の好適な固定具470を介してシールされ所定位置に保持される。
【0068】
等速ジョイント430は更に、該等速ジョイント430のアウターレース434のボア内に位置付けられたローラーケージ472を含む。ローラーケージ472は、その表面を貫通する複数のオリフィスを含む。インナーレース474は、ローラーケージ472内に配置され、貫通するボアを含む。このボアは、出力シャフト476と連結するために、その内面に複数のスプライン又は歯を含む。出力シャフト476とインナーレース474は、互いに対し回転自在に取り付けられる。複数のトルク伝達ボール478は、アウターレース434の内面480とインナーレース474の外面482との間に配置される。ボール478は、該ボール478がアウターレース434とインナーレース474の指定されたボールトラック内内に確実に留まるように、ローラーケージ472のオリフィス内に配置される。図9、図10に示される実施形態では、ローラーケージ472、ボール478、アウターレース434、インナーレース474は全て、鋼材材料から構成されるのが好ましいが、等速ジョイント430内のこれらの部品に対して、他のあらゆる好適な金属材料、セラミックス、硬質プラスチック、又は複合材料を使用することが企図されている。プランジング型等速ジョイント430は、アウターレース434に対して出力シャフト476の軸方向移動又はプランジングを可能にする。ボール478は、これらのそれぞれのトラック内を所定距離で転動することができる。しかしながら、出力シャフト476は同様に所定のディパーチャーアングルで作動すると共に、軸方向でプランジング及び移動することができる。
【0069】
図9、図10の等速ジョイント430は同様にアウターレース434の外面462とトランスファーケース432の装着ブラケット468の位置決め突起466の一部との間に位置付けられたシール484を含む。
【0070】
図9に示す実施形態では、ブーツ488が、出力シャフト476の周りに位置付けられる。ブーツ488は、装着ブラケット468の開口494内に位置付けられたブーツカバー492に連結される端部分490を含む。ブーツカバー492の装着端部496は、圧着されるか、或いは他の場合にはアウターレース434の端部498に固定される。端部分490は、固定具500によって、或いは他の好適な機械的又は化学的技術によってブーツカバー492に固定される。ブーツ488の反対側の端部502は、何らかの公知の固定具504を介して出力シャフト476に固定される。
【0071】
図10は、等速ジョイント430’の代替的実施形態を示しており、図9に示す等速ジョイント430と実質的に同じものである。図9、図10では、同じ参照番号は同じ要素を示す。しかしながら、等速ジョイント430’は、該等速ジョイント430’に対して回転しないブーツ506の代替的実施形態を含む。この実施形態では、ニードル軸受508は、出力シャフト476とブーツ506の一方端510との間に位置付けられる。ブーツ506の反対側の端部512は、トランスファーケース432の装着ブラケット468の外面514に固定される。装着ブラケット468に固定された保持部分516は、ブーツ506の環状端部分520を覆って圧着されたリップ518を含む。非回転ブーツ506は同様にアウターレース434の端部498とトランスファーケース432の装着ブラケット468の内面524との間に位置付けられるリングシール522を含むことができる。リングシール522は、トランスファーケース油が等速ジョイント430の内部チャンバ438内に確実に漏出しないように機能する。
【0072】
等速ジョイント430の内部チャンバ438は、その内部でグリースを用いて潤滑される。リングシール522があるので、グリースをトランスファーケース432内に排出することはできない。更に、トランスファーケース潤滑油が等速ジョイント430の内部チャンバ438内に漏出又は排出される可能性はない。
【0073】
図11は、本発明によるトランスファーケース532内に位置付けられたプランジング型等速ジョイント530の代替的実施形態を示す。等速ジョイント530は、等速ジョイント430と多くの同じ部品を共用し、同様の様態で作動する。等速ジョイント530はアウターレース534を含み、該アウターレース534は、ニードル軸受536とこれと反対側の端部のローラー軸受538とを介してトランスファーケース532内に配置され回転自在に支持される。ニードル軸受536は、トランスファーケース532の内壁540内に位置付けられる。ローラー軸受538は、アウターレース534の反対側の端部に位置付けられて、トランスファーケース532の内壁540とアウターレース534の外面544との間に挟まれる。
【0074】
本発明の1つの態様によれば、アウターレース534は、トランスファーケース532の内部チャンバ546と連通する開口又は通路がないような中実の要素である。従って、グリースは、油で潤滑されるトランスファーケース532の内部チャンバ546内に漏出する可能性はない。
【0075】
本発明の別の態様によれば、スプロケット548は、アウターレース534の外面544の周りに位置付けられる。本発明の別の実施形態に関連して上述したように、スプロケット548は、チェーン552に係合する複数の歯を含む。チェーン552は、入力シャフト(図示せず)に連結される。
【0076】
本発明の他の態様によれば、等速ジョイント530はまたブーツ554を含む。ブーツ554は、出力シャフト556の周りに位置付けられてこれに固定される。ブーツ554は、アウターレース534に固定される端部分558を有する。ブーツ554は、出力シャフト556とアウターレース534と共に回転する。
【0077】
等速ジョイント530は同様にアウターレース566の外面544とスプロケット548の内面568との間位置付けられるダンパー562を含む。ゴム又は適切な別の材料から構成されるのが好ましいダンパー562は、トランスファーケース532のより効率的で静粛な動作を確実にする。実際に、ダンパー562は、トランスファーケースシステム内でのトルク伝達中のより静粛な動作と不具合の排除とを可能にする。振動と騒音の低減は、自動車環境でのトランスファーケース532のどのような保証問題をも更に軽減することができる。
【0078】
図12は、図1−図11に関連して本明細書で既に説明した等速ジョイント(12、58、90、150、204、284、368、430、530)において使用するための減衰要素580の実施形態を示す。この実施形態では、等速ジョイントのアウターレース582は、アウターレース582の外面584の周りに位置付けられた減衰要素580によって緩衝される。1つの実施形態では、減衰要素580は、ほぼリング状の形状を有する。
【0079】
スプロケット586(又はベベルギア又は駆動ギア)は、減衰要素580の外面588の周りに位置付けられる。チェーン590(チェーンとスプロケット駆動機構装置の場合)又は他のギア(ベベルギア又は駆動ギア駆動機構装置の場合)は、歯592又はスプロケット586の外面上に形成された他の係合機構に連結される。減衰要素580は、コスト効果があり更に耐久性のあるゴム材料で作られるのが好ましい。しかしながら、他の好適な材料が減衰要素580に使用できることを理解されたい。このような適切な材料の例には、限定ではないが、軟質又は硬質プラスチック、ゴム、複合材料又は織物が含まれる。減衰要素580は、効率を増大させながらトランスファーケースの作動から振動と騒音を除去するよう機能する。等速ジョイントからの振動や他の非効率を除去することによって、トランスファーケースのより静粛な動作とより効率的な動作とが確実なものとなる。
【0080】
図13は、本発明による等速ジョイント(12、58、90、150、204、284、368、430、530)で使用するための減衰システム594の代替的実施形態を示す。等速ジョイントのアウターレース596は、その外面600から延びる複数の歯598を含む。その内面606から延びる複数の歯604を有するスプロケット602は、該スプロケット602の歯604がアウターレース596の歯598と噛合するように等速ジョイント内に位置付けられる。本発明の1つの態様によれば、スプロケット602の歯604は、アウターレース596の隣接する歯598の間に形成される間隙よりも小さくなるような大きさにされる。従って、歯604が歯598と噛合すると、歯598、604の隣接する側壁610、612間に間隙が形成される。減衰要素608は、各隣接する側壁610、612間に位置付けられる。チェーン614は、スプロケット602の外面616の周りに位置付けられ、スプロケット602の外面616に形成された歯618と係合する。チェーン614は、入力シャフトに連結されてアウターレース596を駆動する。
【0081】
図14は、本発明による等速ジョイント(12、58、90、150、204、284、368、430、530)で使用するための減衰システム620の別の代替的実施形態を示す。減衰システム620では、アウターレース622は、外面626に形成され且つ軸方向に配置された複数の半円形チャネル624を含む。対応する複数の半円形チャネル628は、アウターレース622の周りに位置付けられたスプロケット632の内面630に軸方向に配置される。1つの実施形態では、スプロケット632の外面634は、チェーン638と係合するように適合された複数の歯636を含む。チェーン638は、入力シャフト(図示せず)に連結される。
【0082】
本発明の1つの態様によれば、スプリング640が、スプロケット632の内面630とアウターレース622の外面626の両方の上に円形チャネル624、628によって形成されるオリフィス642内に配置される。スプリング640は、該スプリング640が外方に付勢され、従ってスプロケット632とアウターレース622との間に強く堅固な嵌合を形成して、等速ジョイントの回転に伴うあらゆる振動と騒音を低減するようにほぼC字形であるのが好ましい。スプリング640は金属で構成されるのが好ましいが、スプリング640は、セラミックス、ゴム、プラスチック又は織物のどのような他のタイプから構成されてもよい点に留意されたい。
【0083】
図15は、本発明による固定型等速ジョイント700の代替的実施形態を示す。等速ジョイント700は、図8において上述したものと類似している。例えば、等速ジョイント700は、トランスファーケース702内に位置付けられ、アウターレース704とインナーレース706を含み、さらにインナーレース706とアウターレース704と協働するトルク伝達ボール708を含む。スプロケット710は、アウターレース704の周りに位置付けられて、第1、第2セットの軸受712、714と協働して、インナーレース706に動作可能に連結された出力シャフト716を駆動する。
【0084】
本発明の1つの態様によれば、等速ジョイント700は、カバー720に機械的又は化学的に固定されたハブ718を更に含む。カバー720は、取り外し可能な固定具などの何らかの好適な機構によってトランスファーケース702の外面722上に固定される。ブーツ724は、シャフト716の周りに位置付けられて、トランスファーケース702に連結される。ブーツ724の第1の端部726は、カバー720の内面728に隣接して配置され、トランスファーケース702に取り付けられる。ブーツ724の第2の端部730は、トランスファーケース702内で第1の端部726の内方に配置される。ブーツ724は更に、シールリップ領域734が形成されるように方向を変える本体部分732を有する。シールリップ領域734は出力シャフト716に接触する。
【0085】
等速ジョイント700は同様に1つ又はそれ以上のシール部材738及び740を含む。第1のシール部材738は、アウターレース704の外面742とトランスファーケース702の内面744との間に位置付けられる。第2のシール部材740は、アウターレース704の内面746とブーツ724の第2の端部730との間に位置付けられる。ブーツ724と第1、第2のシール738、740が協働し、等速ジョイント700とカバー720との間に位置付けられるチャンバ736の中に、確実に、油やグリースがトランスファーケース702から漏出して入らないようにされる。図18に示す実施形態は、出力シャフト716とフロント又はリアディファレンシャル(図示せず)との間で望ましいとされる所定の角度で固定されるように設計される点に留意されたい。
【0086】
図16は、本発明によるトランスファーケース752内に配置された固定型等速ジョイント750の別の代替的実施形態を示す。図16に示す等速ジョイント750は、上記の図8、図15に示すものとほぼ類似する。しかしながら、図16に示す実施形態は、単一部品カバー又は装着ブラケット754を含み、これは、単一のユニットを生成するよう形成、鋳造、又は製造された一体ハブ756を有する。
【0087】
ハブ756は、該ハブ756の内面760と軸受764に隣接してハブ756を貫通して延びる出力シャフト762との間に位置付けられたシール758を含む。シール758は、トランスファーケース752内に位置付けられた等速ジョイント750から確実に汚染物が流入せず、或いは潤滑剤が漏出しないように動作する。
【0088】
等速ジョイント750は同様にアウターレース770の外面768とトランスファーケース752の内面772との間に位置付けられるシール766を含む。別のシール774は、装着ブラケット754とトランスファーケース752との間に位置付けられて、トランスファーケース752から油が確実に漏出しないようにする。図8、図15に関して上記に説明したように、図16に示す実施形態は、出力シャフト762とフロントディファレンシャル又はリアディファレンシャル(図示せず)のいずれかとの間で定められる所定角度で固定される。従って、この設計により、トランスファーケース752とディファレンシャルとの間の1つの出力角度を可能にし、従って、駆動システムに対して単一のディパーチャーアングルだけが必要とされ又は要求される特定のタイプの用途で使用される。
【0089】
図17は、本発明によるトランスファーケース778内で使用される固定型等速ジョイント776の別の代替的実施形態を示す。図17に示す等速ジョイント776は、上記の図16に示し且つ上述されたのとほぼ類似している。しかしながら、図16の等速ジョイント750とは異なり、等速ジョイント776は更に潤滑システム780を含む。潤滑システム780は、トランスファーケース778の端部784から外方に離れて延びる管体782(部分断面で示す)を含む。ニードル軸受786は、管体782と等速ジョイント776のアウターレース800の内面788との間に位置付けられる。
【0090】
潤滑システム780はノズル802を含む。ノズル802は、等速ジョイント776の内部チャンバ804内の管体782の一方端に位置付けられる。ノズル802は更に、そこに形成された複数のオリフィス806を含む。オリフィス806は、管体782からの潤滑油を808で表わされるオイルミストとして放出し、トランスファーケース778に取り付けられた等速ジョイント776の内部構成要素を潤滑することができる。油空気混合体は、ポンプ(図示せず)から管体782を通って受け入れられ、次いで、オイルミストを生成して等速ジョイント776を適切に潤滑するようにノズル802を介して潤滑する。
【0091】
図18は、等速ジョイント812用のトランスファーケース814で使用される潤滑機構810の代替的実施形態である。等速ジョイント812は、図16−図17の等速ジョイント750、776と同様な構成のものである。しかしながら、この実施形態では、油空気混合体は、等速ジョイント812から離れて位置するポンプ(図示せず)を用いて受けられる。潤滑機構810は、キャップ818に固定された管体816を含む。キャップ818は、等速ジョイント812のアウターレース822の外面820に固定される。キャップ818は、アウターレース822を貫通して延びるチャネル824を覆って配置され、等速ジョイント812の内部チャンバ826に向って開かれている。従って、管体816は、内部チャンバ826に流体移動可能に連結される。本発明によれば、動作中の等速ジョイント812を冷却したり潤滑するために、ポンプからの油空気混合体が、管体816とキャップ818を通ってチャネル824内に入り、内部チャンバ826内に供給される。また、閉塞を防止して油空気混合体の均一な流れを可能にするために、キャップ818は、アウターレース822の外面820を通って形成されたチャネル824の開口830に隣接して形成される円周方向ノッチ828を含むのが好ましい。
【0092】
図19は、本発明による等速ジョイント834を潤滑する潤滑システム832の更に別の代替的実施形態を示す。この実施形態では、潤滑システム832は、等速ジョイント834のアウターレース838を貫通して延びる複数の潤滑チャネル836を含む。チャネル836によって、等速ジョイント834の内部構成要素への油の流入と排出が可能になる。油の流れを許容することによって、潤滑剤が軸受に達することができ、トランスファーケース840内において等速ジョイント834全体に対する潤滑領域を生成させる。
【0093】
本発明の1つの態様によれば、円錐状配向装置842が、アウターレース838の端部844内に配置される。円錐状配向装置842は、潤滑が最も必要とされる転動機構846、インナーレース848、ローラーケージ850に向けて外方に油の流れを配向するよう機能する。潤滑油チャネルの1つ836’は、潤滑油を回転円錐配向装置842に送り込み、該回転円錐配向装置842が、インナーレース848、ボール846、軸受、等速ジョイント834の他の構成要素に向かって外方に流入油を移動させることができる。
【0094】
図20−図24は、本発明による上記で認識された等速ジョイントのいずれかのアウターレース852を支持するための代替的実施形態を示す。全ての実施形態では、同じ要素には同じ参照番号が使用される。
【0095】
図20に示す第1の実施形態では、アウターレース852は、一対の軸受856によってトランスファーケース854内に支持される。軸受856は、アウターレース852の外面858とトランスファーケース854の内面860との間に位置付けられる。アウターレース852は、軸受856の1つが当接する肩部862を含む。トランスファーケース854は同様に軸受856の1つの上部分が当接する肩部864を含む。リング固定具866が、トランスファーケース854に連結されて、トランスファーケース854内で軸受856の保持を助けるのが好ましい。軸受856の1つの下部分に当接するカラー868もまた設けることができる。
【0096】
図21に示す第2の実施形態では、軸受856は、協働する肩部870、872によってアウターレース852とトランスファーケース854との間で保持される。第1の肩部870は、アウターレース852の外面858に形成される。第2の肩部872は、トランスファーケース854の内面860に形成される。リング固定具874は、軸受856の残りのコーナーを固定する。
【0097】
図22に示す第3の実施形態では、軸受856は、アウターレース852の外面858に形成された肩部876によって、及びトランスファーケース854の端部分880から横方向に延びる位置決め部材878によって、アウターレース852とトランスファーケース854との間に保持される。リング固定具882は、肩部876と位置決め部材878に対向して軸受856を保持する。
【0098】
別の代替的な実施形態は、アウターレース852の肩部876に対向するように位置付けられ、これによりリング固定具882の1つを省略できる肩部884(図23に示す)を形成するように所定の距離だけ内方に延びるトランスファーケース854の内面860を含む。
【0099】
別の実施形態が図24に示される。この実施形態では、軸受856は、アウターレース852の外面858から延びる肩部886に接して位置付けられる。リング固定具888は、肩部886の正反対に位置付けられ、軸受856の第2のコーナーを保持する。同様に、軸受856の残りのコーナーは、リング固定具890によって更に保持される。
【0100】
図25は、本発明による等速ジョイント900の別の実施形態を示す。等速ジョイント900は、上記の図16に示した実施形態と同様の構成である。本発明によれば、等速ジョイント900は、トランスファーケース904に固定された単一部品カバー902を含む。カバー902は、単一の一体ユニットを形成するために成形、鋳造又は製造されたハブ906を含む。本発明の1つの態様によれば、ハブ906は、ハブ906の内面910と出力シャフト914の外面912との間に位置付けられたシール908を含む。シール908は、トランスファーケース904に取り付けられた等速ジョイント900から確実に汚染物質が流入せず且つ潤滑剤が漏出しないように機能する。
【0101】
等速ジョイント900は同様にアウターレース920の外面918とトランスファーケース904の内面922との間に位置付けられたシール916を含む。シール916は、トランスファーケース904の内面922と等速ジョイント900のアウターレース920の外面918との間に同様に位置付けられた軸受924のセットに隣接して位置付けられる。軸受924は、いずれかの公知の結合手段を介してトランスファーケース904内に固定される。1つの実施形態では、スナップリング926を用いて、トランスファーケース904とアウターレース920に関して軸受924を所定位置に固定される。
【0102】
本発明の別の態様によれば、カバー902は同様にアウターレース920の内側ボア930内で所定の距離だけ延びる円周状延長部928を含む。アウターレース920のボア930内のカバー902の延長部928は、等速ジョイント900の内部チャンバ932内に潤滑剤を保持するのを助け、ジョイントの適正な潤滑を可能にする。図15、図16に関して上述のように、等速ジョイント900は、出力シャフト914とフロントディファレンシャル又はリアディファレンシャル(図示せず)のいずれかとの間で定められる所定の角度で固定される。従って、本設計は、トランスファーケース904とディファレンシャルとの間で使用可能な1つの出力角度だけを許容し、そのため、駆動システムにおいて1つだけのディパーチャーアングルが必要とされ又は要求される特定のタイプの用途に対して使用される。選択されるディパーチャーアングルは、自動車用動力伝達システムの何らかのタイプにも使用されるどのような公知のディパーチャーアングルであってもよい点にも留意されたい。
【0103】
図26は、本発明による等速ジョイント938の更に別の代替的実施形態を示す。図26に示す等速ジョイント938は、上述のように図16、図19に示した実施形態にほぼ類似している。等速ジョイント938は同様に該等速ジョイント938を収容するトランスファーケース942に固定される単一部品のカバー940を含む。カバー940は、単一の一体ユニットを生成するように成形、鋳造又は製造されるハブ944を含む。ハブ944は、該ハブ944を貫通して延びるボア950の内面948と出力シャフト954の外面952との間に位置付けられたシール946を含む。シール946は、等速ジョイント938内に流入する汚染物質から保護する。シール946は同様にトランスファーケース942内に収容され、取り付けられた等速ジョイント938からの潤滑剤の漏出を阻止する。
【0104】
等速ジョイント938は更に、トランスファーケース942の内面958と等速ジョイント938のアウターレース962の外面960との間に位置付けられた軸受956を含む。軸受956は、インナーレース964と等速ジョイント938の転動体966から所定の軸方向距離に位置付けられる。軸受956は、アウターレース962の肩部968と係合し、第1、第2のスナップリング970、972或いは他の好適な固定具によって所定位置に保持される。本発明の別の態様によれば、軸受956では幅が低減され、これによりコンパクト性を更に進めて等速ジョイント938におけるパッケージングの問題を軽減することができる。
【0105】
等速ジョイント938は同様にプラグ974を含む。プラグ974は、アウターレース962の一方端976に位置付けられる。プラグ974は、アウターレース962を貫通して延びるボア978内に位置付けられる。等速ジョイント938は、図26に示すように、油潤滑式等速ジョイント環境とグリース充填式等速ジョイント環境の両方においてトランスファーケース942と共に使用可能である点に留意されたい。いずれの環境においても、等速ジョイント938は同様に等速ジョイント938の外面960とトランスファーケース942及び/又はカバー940の内面958との間に位置付けられた選択的に取り外し可能なシール980を含むことができる。
【0106】
図26に示す実施形態は同様に出力シャフト954とフロントディファレンシャル又はリアディファレンシャル(図示せず)のいずれかとの間で定められる所定角度で固定される。従って、この設計は、トランスファーケース942とディファレンシャルとの間で使用可能な1つの出力角度を可能にし、駆動システムに対して1つのディパーチャーアングルだけが必要とされ又は要求される特定のタイプの用途に使用される。
【0107】
図27は、本発明によるトランスファーケース984に取り付けられる等速ジョイント982の別の代替的実施形態を示す。図27に示す実施形態では、トランスファーケース984は、スタブシャフト990の外面988に取り付けられたスプロケット986を含む。プロケット986は、スプライン等のような何らかの公知の固定手段を介してスタブシャフト990に取り付けられる。プロケット986は更に、該スプロケット986の外面994上に形成された歯を覆ってループになった第1の端部を有するチェーン992を含む。第2の端部は、入力シャフトを覆ってループにされ、入力シャフト(図示せず)に連結される。
【0108】
スタブシャフト990は、その一方の端部998にプラグ又はシール996を含む。スタブシャフト990は、その端部998上でピン軸受又はローラー1000によって、及びスタブシャフト990の外面988とトランスファーケース984の内面1004との間に配置され軸受1000から間隔を置いて配置された軸受1002によって回転自在に支持される。軸受1000、1002は、スタブシャフト990を支持して、トランスファーケース984に対して回転できるように機能する。
【0109】
本発明の別の態様によれば、スタブシャフト990は同様に該スタブシャフト990を貫通し、且つスタブシャフト990を貫通して延びる内部ボア1008内に少なくとも1つのチャネル1006を含む。チャネル1006により、油又はいずれかの公知の潤滑剤がトランスファーケース984と等速ジョイントハウジング1010との間を通過することが可能になる。
【0110】
等速ジョイントハウジング1010は、トランスファーケース984の外面1012に取り付けられる。等速ジョイントハウジング1010は、自動車用動力伝達システムのフロント又はリアディファレンシャルの角度に対応する所定の角度で配置される。
【0111】
スタブシャフト990は、等速ジョイントハウジング1010内と、等速ジョイント982のインナーレース1016内に延びる第2の端部1014を含む。インナーレース1016は、等速ジョイント982のアウターレース1020のボア1018内に配置される。トルク伝達ボールなどの転動体1022は、アウターレース1020の内面1024とインナーレース1016の外面1026との間に配置される。転動体1022は、ローラーケージ1028によって所定位置に保持される。アウターレース1020は、少なくとも1つの軸受1030によって等速ジョイントハウジング1010内に回転自在に支持される。軸受1030はいずれかの公知の固定具1032により所定位置に保持される。1つの実施形態では、第1、第2のスナップリングが、アウターレース1020の外面1033と等速ジョイントハウジング1010の内面1034との間で軸受1030を固定するために使用される。
【0112】
シール1036は、アウターレース1020の外面1033と等速ジョイントハウジング1010の内面1034との間で、等速ジョイントハウジング1010の端部1038に配置される。
【0113】
フランジ1040は、等速ジョイントハウジング1010の端部1038に配置されている。フランジ1040は、回転速度をトランスファーケース984からフロント又はリアディファレンシャル(図示せず)に連結されるプロペラシャフトに伝達する。2次的なシール要素1042を等速ジョイントハウジング1010とフランジ1040の外面1044との間に配置することができる。
【0114】
図27による等速ジョイント982の油潤滑式等速ジョイントの形態とグリース充填式等速ジョイントの形態の両方が企図される点に留意されたい。動作中、トランスファーケース984のスタブシャフト990は、トランスミッションからのトルクを等速ジョイントハウジング1010内に位置付けられた等速ジョイント982に伝達する。次いで、等速ジョイント982は、トルクをトランスファーケース984の位置に応じてフロント又はリアディファレンシャルに伝達する。
【0115】
上述のように、等速ジョイントハウジング1010は所定の角度で固定される。しかしながら、自動車の設計環境に応じて多数の角度を使用できる点を理解されたい。これらの多数の角度は、等速ジョイントハウジング1010の初期鋳造及び/又は初期成形によって製造可能である。あらゆる公知の技術を用いて、等速ジョイントハウジング1010のトランスファーケース984に連結することができる点に留意されたい。図27の実施形態では、トランスファーケース984は、標準的な構成要素を使用して等速ジョイントハウジング1010に連結される。
【0116】
図28は、本発明によるトランスファーケース1052と共に使用する等速ジョイント1050の更に別の代替的実施形態を示す。トランスファーケース1052は、スタブシャフト1058の外面1056に取り付けられたスプロケット1054を含む。プロケット1054は、スプライン等のようないずれかの公知の固定手段を介してスタブシャフト1058に取り付けることができる。チェーン1060は、プロケット1054の周りにループにされた第1のループを有する。第2のループは、トランスファーケース1052の入力シャフト(図示せず)上のスプロケットに連結される。
【0117】
スタブシャフト1058は、貫通して延びる内部ボア1062を有し、プラグ又はシール1063を含むことができる。スタブシャフト1058は、一方の端でピン軸受又はローラー1065によって、及び軸受1064によって回転自在に支持される。軸受1064は、スタブシャフト1058の外面1056とトランスファーケース1052の内面1068との間に位置付けられる。軸受1064は、ピン軸受又はローラー軸受1065と協働してスタブシャフト1058を支持し、該スタブシャフト1058がトランスファーケース1052に対して回転できるようにする。スタブシャフト1058は同様に内部ボア1062まで貫通して延びる少なくとも1つのチャネル1070を含む。チャネル1070により、油又は何らかの他の好適な潤滑剤がトランスファーケース1052と等速ジョイントハウジング1072との間を通過できる。
【0118】
等速ジョイントハウジング1072が、何らかの適切な方法によってトランスファーケース1052の外面1074に取り付けられる。本発明の1つの態様によれば、等速ジョイントハウジング1072は、自動車動力伝達システムのフロント又はリアディファレンシャル(図示せず)と一致する所定の角度を有する。
【0119】
スタブシャフト1058は、トランスファーケース1052から外方に延びて等速ジョイントハウジング1072内に入る端部1076を有する。スタブシャフト1058の端部1076に固定されるのは、第1のインナーレース1078である。第1のインナーレース1078は、等速ジョイント1050のアウターレース1080のボア内に配置される。アウターレース1080は一般に、アウターレース1080の両端に配置される第1のチャンバ1082と第2のチャンバ1084とを有する。チャンバ1082、1084は、企図される別の実施形態において、これらの間に内部連結通路を有することができ、或いは、併せて1つの大きなチャンバを形成するような大きさにすることもできる点に留意されたい。
【0120】
図示の実施形態における第1の転動体であるボール1086は、アウターレース1080の内面1088とインナーレース1078の外面1090との間に配置される。ローラーケージ1092は、第1の転動体1086をアウターレース1080と第1のインナーレース1078と接触した状態を維持する。
【0121】
アウターレース1080は、少なくとも1つの軸受1094によって等速ジョイントハウジング1072内に回転自在に支持される。軸受1094は、いずれかの適切な固定具1096によって所定位置に保持される。例えば図28に示すように、軸受1094は、複数のスナップリングによって、アウターレース1080の外面1098と等速ジョイントハウジング1072の内面1100との間の所定位置に保持される。1つの実施形態では、等速ジョイントハウジング1072は、軸受1094を保持し且つ位置決めするために少なくとも1つの支持肩部1102を含む。
【0122】
等速ジョイント1050は、等速ジョイント1050のアウターレース1080内に回転自在に装着された第2のインナーレース1104を含む。第2のインナーレース1104は、第2のスタブシャフト又はプロペラシャフト1106に動作可能に連結され、該第2のスタブシャフト又はプロペラシャフト1106は、フランジ或いは動力伝達システムのフロント又はリアディファレンシャル(図示せず)に直接連結される。第2の転動体、即ち少なくとも1つのボール1108は、アウターレース1080の内面1110と第2のインナーレース1104の外面1112との間に配置される。第2のローラーケージ1114は、アウターレース1080とインナーレース1104との間に配置され、第2の転動体1108を等速ジョイント1050の第2のインナーレース1104とアウターレース1080との間に位置付けるように動作する。本発明の1つの態様によれば、第2のインナーレース1104は、動力伝達システムのフロント又はリアディファレンシャルに対してシャフト1106が有するどのような角度にも変わることができるようになる。図示の実施形態では、等速ジョイント1050の第1、第2の回転部分の両方は固定型等速ジョイントであるが、どのようなタイプのプランジング型ジョイントでも使用可能であり、等速ジョイント1050のいずれの回転部分に対しても使用することが企図される点に留意されたい。従って、等速ジョイント1050は、トランスファーケース1052に隣接する等速ジョイントハウジング1072の内側の第1の部分1116と、等速ジョイントハウジング1072の外側に配置される第2の部分1118とに分けられる。
【0123】
本発明の別の態様によれば、等速ジョイント1050は同様に汚染物質が等速ジョイント1050に確実に入らないようにするシール1120を含むことができる。1つの実施形態では、シール1120は、アウターレース1080の外面1098と等速ジョイントハウジング1072の内面1100との間に等速ジョイントハウジング1072内に形成された開口に隣接して配置される。或いは、汚染物質が等速ジョイントハウジング1072及び/又は等速ジョイントの第1、第2の部分1116、1118に確実に入らないようにするために、アウターレース1080又は等速ジョイントハウジング1072の外面1098とスタブシャフト又はプロペラシャフト1106との間にブーツを配置してもよい。
【0124】
等速ジョイント1050は所定の角度で固定されるが、自動車の設計環境に応じて多くの角度を使用することができる点に留意されたい。実際に、等速ジョイントハウジング1072の初期鋳造及び/又は成形によって、多くの角度で製造可能である。
【0125】
図28に示す実施形態では、等速ジョイントハウジング1072は、等速ジョイント1050からディファレンシャルまでの所定角度を使用して、当該所定角度での回転速度の伝達を可能にする。この作用は、スタブシャフト1058がトランスファーケース1052からの回転トルクを所定角度で等速ジョイント1050の第1の部分1116に伝達することにより実現される。次に等速ジョイント1050は、アウターレース1080により等速ジョイント1050の第2の部分1118を介して回転トルクをディファレンシャル又は同様のものに伝達する。
【0126】
本発明を、フロント出力シャフトへトルクを伝達するためトランスファーケース内に等速ジョイントを利用することに関して説明してきたが、本発明は同様にリア出力シャフトでの使用のために利用してもよい。図29を参照すると、等速ジョイントハウジング1152に取り付けられたトランスファーケース1150の一部分が示されている。トランスファーケース1150と等速ジョイントハウジング1152は、本発明による等速ジョイント1154を収容する。
【0127】
等速ジョイント1154は、ローラーケージ1158を装着したアウターレース1156を含む。インナーレース1160は、ローラーケージ1158内に装着される。複数のトルク伝達ボール1162は、該ボール1162がアウターレース1156の内面1164とインナーレース1160の外面1166と接触するようにローラーケージ1158の表面に形成されたオリフィス内に位置付けられる。トランスファーケース1150は、貫通形成された開口を含み、トランスミッションに取り付けられる入力シャフト1170の遠位端1168が該開口を通って延びる。入力シャフト1170は、トランスファーケース1150内の開口を通って延び、遠位端1168は、アウターレース1156を貫通して形成された開口を貫通して延びて、そこに固定される。従って、入力シャフト1170が回転すると、そこに固定されたアウターレース1156もまた回転し、これによりボール1162を介してトルクがインナーレース1160に伝達される。
【0128】
スタブシャフト1172は、インナーレース1160と係合する遠位端1174を有する。反対側の端部1176は、等速ジョイントハウジング1152から外方に延びており、そこに装着されるフランジ1178を更に含むことができる。従って、インナーレース1160にトルクが伝達されると、スタブシャフト1172もまた回転される。
【0129】
等速ジョイントハウジング1152内での回転運動に対してスタブシャフト1172を支持するために、1つ又はそれ以上の軸受1180をスタブシャフト1172と、等速ジョイントハウジング1152の内面1182とに固定することができる。1つの実施形態では、等速ジョイントハウジング1152は、軸受1180を部分的に支持する支持肩部1184を含む。スナップリング1186又は他の好適な装着装置を使用してもよい。
【0130】
等速ジョイント1154をシールするために、トランスファーケース1150の開口に入力シャフト1170の周りに延びるシール1188を組み込むことができる。等速ジョイントハウジング1152の前方端部1190は同様に該ハウジングの内面1182とスタブシャフト1172との間にシール1192組み込むことができる。等速ジョイントハウジング1152の外面1196とフランジ1178の外面1198との間に2次シール要素1194を配置してもよい。
【0131】
上記に示した全ての実施形態では、あらゆる部品は、鋼材から構成されるのが好ましい点に留意されたい。しかしながら、他のいずれかの好適な金属、硬質セラミックス、硬質プラスチック、硬質複合材料もまた開示のシステムのいずれかの全ての構成要素の設計において使用可能であることを理解されたい。
【0132】
固定型とプランジング型ジョイントの両方を含む上述の等速ジョイントは、トランスファーケース油による等速ジョイントの内部チャンバの冷却を可能にする中空のアウターレースを有することができる。等速ジョイント内で通常使用されるグリースを用いてトランスファーケース全体を冷却することも企図される。しかしながら、幾つかの実施形態では、等速ジョイントの内部チャンバは潤滑剤で自己シールされて完全にシールされ、潤滑及び冷媒を提供するトランスファーケース油内に浸漬されるトランスファーケースの内部チャンバと連通することができない。
【0133】
開示した実施形態は同様に上述のタイプのトランスファーケースと、非回転型ブーツ、回転ブーツ、10ボール型、8ボール型、6ボール型ジョイント又は説明したいずれかの組み合わせなどを含む、説明されたタイプの等速ジョイントのいずれかとのあらゆる組み合わせを用いることができ、その結果、設計者は、等速ジョイントとトランスファーケース環境の範囲内で多数の組み合わせが利用可能となる。
【0134】
上記の本発明は、トランスファーケースに組み込まれる本発明の等速ジョイントを開示しているが、開示した等速ジョイントは、本発明から逸脱することなくギアボックス又は船舶用途に組み込むことができることを理解されたい。
【0135】
本発明を上述の実施形態に関して具体的に図示し説明してきたが、これらは、本発明を実施する上での最良の形態の例証に過ぎない。本明細書で説明した本発明の実施形態に対する種々の代替形態は、添付の本発明の請求項で定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の実施に使用できる点を当業者であれば理解するはずである。添付の請求項は本発明の範囲を定め、これら請求項の範囲内にある方法及び装置並びに均等物はこれにより保護されるものとする。本発明のこの明細書は、ここで説明した要素の新規性と進歩的の全ての組み合わせを含むものと理解すべきであり、この請求項は、これらの要素のどのような新規性と進歩性の組み合わせに対する本出願又は後願においても提示することができる。更に、上述の実施形態は例証であり、本出願又は後願において請求することができる全ての可能な組み合わせに対していかなる単一の特徴又は要素も必須のものではない。
【符号の説明】
【0136】
14,52 入力シャフト、24,70 駆動機構、706 インナーレース、770,920 アウターレース、754,902 カバー、756,906 ハブ、930
インナーボア、766,916 シール部材、752,904 トルク伝達装置、750,900 等速ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速ジョイント(750,900)が組み込まれたトルク伝達装置(752,904)であって、この伝達装置は;
前記トルク伝達装置(752,904)内に回転自在に設けられたアウターレース(770,920)と;
前記アウターレース内に位置付けられ、1つ又はそれ以上のトルク伝達ボールによって前記アウターレース(770,920)に動作可能に連結されたインナーレース(706)と;
前記等速ジョイント(750,900)のアウターレース(770,920)に連結され、入力シャフト(14,52,72)から前記トルク伝達装置(752,904)に受け入れたトルクを前記等速ジョイントのアウターレース(704,770,920)に伝達して、これにより前記アウターレースが前記インナーレース(706)を駆動させる駆動機構(24,70)と;
前記等速ジョイント(750,900)のインナーレース(706)に連結された出力シャフト(762,914)と;から構成され、
前記出力シャフトは、この出力シャフトが貫通するカバー(754,902)と協動してハブ(756,906)によって前記等速ジョイントのアウターレースの回転軸に対して所定の角度で固定されており、前記カバーおよびハブの少なくとも1つは前記アウターレース(770,920)のインナーボア(930)内で所定の長さにわたって延長する円周状延長部(928)を有し、前記カバーは前記トルク伝達装置に固定されていることを特徴とするトルク伝達装置。
【請求項2】
前記アウターレース(770,920)が、第1、第2の軸受によって前記トルク伝達装置内に回転自在に支持され、前記第1の軸受が前記アウターレースの遠位端と前記トルク伝達装置の内面とに固定され、前記第2の軸受が、前記アウターレースの前方端部の外面と前記トルク伝達装置(752)の内面とに固定されることを特徴とする請求項1に記載のトルク伝達装置。
【請求項3】
前記トルク伝達装置と前記アウターレース(770,920)との間に挟まれるように、前記アウターレースの前方部分の周りを囲むシール部材(766,916)を更に有することを特徴とする請求項1に記載のトルク伝達装置。
【請求項4】
前記カバー(754)と前記トルク伝達装置との間に位置付けられるシール部材(744)を更に有することを特徴とする請求項3に記載のトルク伝達装置。
【請求項5】
前記ハブ(756,944)は、前記カバーと一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトルク伝達装置。
【請求項6】
前記アウターレース(770,920)は、前記カバー対して回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のトルク伝達装置。
【請求項7】
前記出力シャフト(762,914)は、前記ハブに対して回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のトルク伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−69494(P2011−69494A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237207(P2010−237207)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【分割の表示】特願2006−541381(P2006−541381)の分割
【原出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(393002852)ジーケーエヌ・ドライブライン・ノースアメリカ・インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】