筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤、糖尿病合併症予防剤、並びにこれらを含む飲食物
【課題】 紅茶抽出成分が肥満及び糖尿病に与える影響について鋭意研究し、その成果に基づいて紅茶抽出成分の新たな用途を提案する。
【解決手段】 TF、TF3−G、TF3´−G及びTF3,3´−Gの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤又は糖尿病合併症予防剤、並びに、これらのいずれか含有してなる飲食物を提案する。これらを摂取すれば、脂肪細胞におけるグルコースの取込みを抑制でき、同時に筋肉細胞においてはグルコース取込みを逆に活性化させることができる。
【解決手段】 TF、TF3−G、TF3´−G及びTF3,3´−Gの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤又は糖尿病合併症予防剤、並びに、これらのいずれか含有してなる飲食物を提案する。これらを摂取すれば、脂肪細胞におけるグルコースの取込みを抑制でき、同時に筋肉細胞においてはグルコース取込みを逆に活性化させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶抽出成分の新たな用途、中でも肥満や糖尿病に関係する新たな用途に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活が豊かになるにつれ、「肥満」は現代人が抱える最も深刻な悩みの一つとなっている。肥満は、美容的に好ましくないばかりか、糖尿病、動脈硬化、高トリアシルグリセロール血症、高コレステロール血症、血栓症等疾患などの様々な疾病を引き起こすことが知られている。
肥満は、脂肪細胞の分化・肥大、或いは脂肪細胞数そのものの増加により生じるが、いずれの場合にも“グルコースの取込み”が深く関与している。
グルコースは極性物質であるため、血中から各細胞にグルコースが取り込まれるには輸送担体(glucose transporter:GLUT)が必要である。現在9種類以上のGLUTがクローニングされており、その中で生体内の糖・脂質代謝に大きく関与する脂肪細胞には主にGLUT1及びGLUT4が発現している。その中でも特にGLUT4は脂肪細胞の膜上におけるグルコースの取込み活性に主要な役割を果たしていることが知られている。
GLUT4は、インスリン感受型GLUTと呼ばれ、通常は脂肪細胞及び筋肉細胞における細胞内小胞に存在し、インスリンの刺激を受けると細胞膜上に移行(トランスロケーション)し、グルコースを取り込める状態とする。GLUT4のトランスロケーションは、インスリンが受容体に結合し、受容体のβサブユニットが自己リン酸化することが情報伝達の開始となり、その後インスリン受容体基質(IRS)のリン酸化、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の活性化、Akt/Protein Kinase Bの活性化という経路を介して細胞内の小胞体から細胞膜へのエキソサイトーシスにより、移行が完了する。また、GLUT4は、筋肉細胞内により多くのグルコースを移動させる働きを為し、運動選手は一般の人よりもGLUT4が多いことなども報告されている(「炭水化物ローディングの最新知見」慶応義塾大学スポーツ医学研究センター紀要 1996)。
【0003】
肥満の増加を反映して、糖尿病患者数が増える傾向にある。糖尿病は、いったん発症するとなかなか完治しづらいばかりか、合併症を発症し易いやっかいな疾病である。
糖尿病患者に特異的に発症する合併症として、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などあり、糖尿病三大合併症とも呼ばれている。これらの合併症は、細かい血管の病変に基づく細小血管障害に因ると考えられている。具体的には、プロテインキナーゼC等の酵素の働きが異常に亢進して細胞機能が低下したり、高血糖の持続により酵素などの蛋白質にグルコースが化学結合して酵素機能が低下したり、高血糖による代謝障害のためにソルビトール(糖アルコール)が細胞内に蓄積して細胞障害を起こしたりして、これが原因で細小血管の細胞や血液細胞に異常が生じ合併症を発症すると考えられている。
【0004】
従来、このような肥満や糖尿病に対する茶抽出物やその抽出成分の影響について、次のような様々な提案や報告が為されている。
【0005】
例えば特許文献1(特開平06−80580号)には、茶葉に含まれる多糖類(リボース,アラビノース及びグルコース)を有効成分とする血漿コレステロール低下剤が開示され、
特許文献2(特開平10−158181号)には、茶より抽出した植物エキスを含有する脂肪分解促進剤が、全身あるいは局所の脂肪組織の減少を促進して肥満体質の改善、肥満の抑制・防止に効果を発揮する旨が開示され、
特許文献3(特開平11−302168号)には、茶抽出物中のエピカテキンガレートを有効成分として含有するグルコース吸収阻害剤が、腸管でのグルコース吸収を抑制し、肥満や糖尿病などの治療等に有効である旨が開示され、
特許文献4(特開2003−81825号)には、カテキン類からなるグルコーストランスポーター4発現促進剤及び糖尿病予防・改善用容器詰飲料が開示され、
特許文献5(特開2003−95942号)には、カテキンガレート、ガレートエステルを備えたカテキン、茶抽出物のいずれかを有効成分とする脂肪細胞におけるグルコース取込阻害剤、インスリン刺激応答性グルコース取込阻害剤、GLUT4トランスロケーション抑制剤及び脂肪軽減飲食物が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平06−80580号公報
【特許文献2】特開平10−158181号公報
【特許文献3】特開平11−302168号公報
【特許文献4】特開2003−81825号公報
【特許文献5】特開2003−95942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、紅茶抽出成分が肥満や糖尿病に与える影響について鋭意研究し、その結果得られた様々な知見に基づいて、紅茶抽出成分の新たな用途、特に肥満や糖尿病に関係する新たな用途を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤又は糖尿病合併症予防剤、並びに、これらのいずれか含有してなる飲食物を提案するものであり、前記の紅茶抽出成分とは、テアフラビン(TF)、テアフラビン−3−ガレート(TF3−G)、テアフラビン−3'−ガレート(TF3´−G)及びテアフラビン−3,3’−ジガレート(TF3,3´−G)の混合成分であるテアフラビン類を含有する点に特徴を有している。
また、本発明において、飲食物とは、飲料と食品の両方を包含する意である。
【0009】
本発明の有効成分を摂取すれば、脂肪細胞におけるグルコースの取込み、特にインスリン刺激によって高まるグルコース取込みを抑制することができ、脂肪細胞量を軽減することができる。これによって、脂肪過剰状態すなわち肥満、並びに肥満に伴う糖尿病、動脈硬化、高トリアシルグリセロール血症、高コレステロール血症、血栓症等疾患などの様々な疾病の治療及び予防を図ることができる。
脂肪細胞においてグルコース取込み活性を阻害する機序としては、脂肪細胞に存在するGLUT4のトランスロケーションの抑制、或いはインスリンレセプターへの結合など様々な機構が考えられるが、本発明者らは、本発明の有効成分はGLUT4のトランスロケーションを特異的に抑制することを解明し、かかる知見に基づき、紅茶抽出成分を有効成分とする、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤及びこれを含有する飲食物を想到したものである。
【0010】
本発明の有効成分は、脂肪細胞におけるグルコース取込みを抑制するだけでなく、筋肉細胞におけるグルコース取込みを逆に活性化させ、過剰なグルコースを筋肉細胞に取り込ませて消費させることができる。すなわち、本発明は、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤及び糖尿病合併症予防剤の群からなる2種類以上の組合わせからなる用途を備えた薬剤としても提供することができる。よって、本発明の有効成分を投与或いは摂取すれば、血中糖濃度を高めることがなく、肥満防止に伴う倦怠感などが無いばかりか、逆に活動力の向上を図ることができる。すなわち、本発明の有効成分を摂取すれば、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーションを活性化し、筋肉細胞におけるグルコースの取込み活性を増大させることができ、その結果、筋肉細胞に多くのエネルギー源を取り込ませ、筋肉細胞量を増大させることができる。よって、筋肉組織の活性化、肉体疲労軽減、運動能力の向上、筋肉組織の増強・増大、引いては体質改造などに効果的に用いることができ、本発明の筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤は、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、或いは筋肉活性化剤としても利用することができる。
【0011】
また、本研究では、ストレプトゾトシン(STZ)投与により誘導した糖尿病のラットに対する紅茶抽出成分の影響を検討した結果、糖尿病ラットに対して紅茶抽出成分を投与すると、酸化ストレスの軽減や脂肪代謝の改善を図ることができ、これらの機能を介して糖尿病合併症、すなわち糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害を予防することができる旨の知見を得、かかる知見に基づき、紅茶抽出成分を有効成分とする、糖尿病合併症予防剤及びこれを含有する飲食物を提案するものである。
【0012】
さらにまた、紅茶抽出成分は、筋肉におけるAMPKを活性化すること、並びにアディポサイトカインの分泌バランスを良好に保持し、脂肪酸の燃焼(β酸化)を促進することで血漿遊離脂肪酸含量を低下させることが今回新たに確認されており、本発明は、紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉内AMPK活性化剤、アディポサイトカイン分泌バランス調整剤或いは脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤も併せて提案する。
【0013】
なお、本発明の有効成分は、インスリン分泌の前後いずれに摂取しても、効果が得られることを確認している。よって、本発明の有効成分は、食物摂取の前、食物摂取と同時、或いは食物摂取後のいずれに摂取しても効果を得ることができる。
しかも、本発明の有効成分は、古くから日常的に愛飲され、誰でも安心して摂取できる紅茶に由来する成分であるから、長期間無理なくかつ安心して摂取することができ、慢性的な症状及び疾病の根本治療並びに予防、更には体質改善に特に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について説明するが、本発明の実施形態が以下の例に限定されるものではない。
【0015】
本発明の「筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤」、「筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤」、「脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤」、「糖尿病合併症予防剤」、「筋肉内AMPK活性化剤」、「アディポサイトカイン分泌バランス調整剤」及び「脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤」はいずれも、紅茶抽出成分を適宜濃度で配合することによって製造することができる。
【0016】
紅茶とは、茶葉を完全発酵させたいわゆるブラックティー全般を意味し、産地、品種、茶葉の等級などを問わない。例えば、ダージリン種、アッサム種、ニルギリ種、ウバ種、ディンブラ種、ヌアラ種、その他のいずれであってもよいし、リーフグレイド、ブロークングレイド、その他の茶葉等級のいずれであってもよいが、特にウバ種が好ましい。
【0017】
紅茶抽出成分は、採取した紅茶葉をそのまま或いは砕片化して、水、温水又は熱水、好ましくは40℃〜100℃の温熱水、中でも90〜100℃の熱水で抽出して得ることができる。
【0018】
紅茶抽出成分中の成分としては、タンニン(ポリフェノール)、アミノ酸類、カフェイン、糖類、サポニンなどを挙げることができるが、中でもタンニン(ポリフェノール)が主要成分である。
紅茶抽出成分中のポリフェノールは、緑茶抽出物に比べてカテキン類が30〜40%に減少しており、その分、カテキン類の酸化重合物が多いという特徴がある。これは、茶葉の発酵工程で成分が酸化乃至重合しているためであり、カテキン類の酸化重合体であるテアフラビン類(TF(;Theaflavin、下記[化1])、
TF3−G(;Theaflavin-3-gallate、下記[化2])、
TF3´−G(;Theaflavin-3'-gallate、下記[化3])、
TF3,3´−G(;Theaflavin-3',3'-digallate、下記[化4])などを含む)やテアルビジン類、その他のカテキン類の酸化重合物は紅茶抽出成分中のポリフェノールの特徴的な成分であるが、本発明の有効成分としては、TF、TF3−G、TF3´−G及びTF3,3´−Gを含有するテアフラビン類が重要である。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
本発明が有効成分とする紅茶抽出成分は、上記の如く紅茶葉を抽出して得られた紅茶抽出液をそのまま有効成分とすることもできるが、紅茶抽出液を濃縮或いは乾燥させて紅茶抽出エキスとしたもの、特に好ましくはテアフラビン類の濃度をより一層高めた紅茶抽出エキスを有効成分とすることもできる。
【0024】
また、紅茶抽出成分を単独で有効成分とすることもできるが、既に或いは将来的に「筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤」、「筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤」、「脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤」、「糖尿病合併症予防剤」、「筋肉内AMPK活性化剤」、「アディポサイトカイン分泌バランス調整剤」及び「脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤」などの有効成分としての効果が認められた成分、例えば緑茶抽出物、中でもカテキンなどと混合してこの混合成分を有効成分とすることもできる。
【0025】
この際、緑茶抽出物の好ましい例としては、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物を乾燥させてカテキン濃度を約30%とした緑茶エキス(伊藤園社製商品名:テアフラン30A)や、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物をカテキン以外の成分を排除するためにカラム法により処理し乾燥させて、茶ポリフェノール濃度を約85〜95%とした緑茶エキス(伊藤園社製商品名:テアフラン90S)などを例示することができる。
また、カテキンとしては、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレートのいずれか、或いはこれらのいずれかの重合体、或いはこれらのうちの2種類以上の共重合体、或いはこれらのうちの2種類以上の混合物を挙げることができる。
【0026】
紅茶抽出成分を単独で有効成分とする場合、例えば紅茶抽出物を精製水又は生理食塩水などに溶解して薬剤(例えば経口投与剤、腹腔内投与剤、脳内投与剤等)などとして提供することができる。
【0027】
本発明の「筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤」、「筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤」、「脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤」、「糖尿病合併症予防剤」、「筋肉内AMPK活性化剤」、「アディポサイトカイン分泌バランス調整剤」及び「脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤」はいずれも、経口投与剤または非経口投与剤(筋肉注射、静脈注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、経鼻投与など)として使用することができ、それぞれの投与に適した配合及び剤型とするのが好ましい。
剤型については、例えば経口投与剤用としては液剤、錠剤、散剤、顆粒、糖衣錠、カプセル、懸濁液、乳剤、丸剤などの形態に調製することができ、非経口投与剤用としては注射剤、アンプル剤、直腸投与剤、油脂性坐剤、水溶性坐剤などの形態に調製することができる。
配合(製剤)については、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、潤滑剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。また、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどの無毒性の添加剤を配合することも可能である。
【0028】
本発明の「筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤」、「筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤」、「脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤」、「糖尿病合併症予防剤」、「筋肉内AMPK活性化剤」、「アディポサイトカイン分泌バランス調整剤」及び「脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤」はいずれも、医薬品のほか、医薬部外品、薬理効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品、その他ヒト以外の動物に対する薬剤や飼料などとして提供することもできる。
例えば、医薬部外品として調製し、これを瓶ドリンク飲料等の飲用形態、或いはタブレット、カプセル、顆粒等の形態とすることにより、より一層摂取し易くすることができる。
また、薬理効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品とする場合には、例えば本発明の有効成分を、炭酸、賦形剤(造粒剤含む)、希釈剤、或いは更に甘味剤、フレーバー、小麦粉、でんぷん、糖、油脂類等の各種タンパク質、糖質原料やビタミン、ミネラルなどの飲食品材料群から選ばれた1種類或いは2種類以上と混合したり、或いは、現在公知の飲食品、例えばスポーツ飲料、果実飲料、乳飲料、茶飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー、ゼリー飲料、炭酸飲料、チューインガム、チョコレート、キャンディ、ビスケット、スナック、パン、乳製品、魚肉練り製品、畜肉製品、冷菓、乾燥食品、サプリメントなどに添加して製造することができる。
中でも、糖類を多く含んだ飲食物素材に紅茶抽出成分を添加してなる飲食物は、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性効果と脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制効果の両方の効果を備えるため、優れた脂肪軽減飲食物(言い換えればダイエット飲食物)、筋肉活性化飲食物などとして提供することができる。
【0029】
本発明の有効成分である「紅茶抽出成分」の含有量は、使用方法によっても異なるが、医薬品であれば、テアフラビン乾燥重量換算にして0.001〜1重量%、特に0.01〜0.5重量%配合するのが好ましく、飲食品であれば、テアフラビン乾燥重量換算にして0.001〜1重量%、特に0.01〜0.5重量%配合するのが好ましい。
飲食物として調製する場合、紅茶抽出成分を飲食物中に0.001〜1重量%配合し、テアフラビン乾燥重量換算で通常飲用されるお茶の5倍〜500倍の濃度に調製するのが好ましい。
なお、摂取量としては、テアフラビン乾燥重量換算で一日に10〜5000mg、好ましくは100〜1500mg程度が好ましい。
【0030】
<試験1>
本試験では、紅茶抽出成分をラットに自由摂取させた時の糖代謝及び脂質代謝の変化を調べるため、血液成分及び脂肪組織と筋肉組織でのグルコースの取込みの変化を調べた。
【0031】
なお、本試験を含めて試験1〜試験4におけるすべての動物実験は、「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55年3月総理府告示第6号)および「神戸大学における動物実験に関する指針」に従って試験を実施した。
【0032】
(実験動物)
試験には生後6週齢のWistar/ST雄性ラット24匹(日本エスエルシー社製)を使用した。これらを6匹ずつ4群に分け、7日間の順化後、それぞれ(1)紅茶抽出液+ストレプトゾトシン(STZ)投与(T−STZ)、(2)紅茶抽出液のみ投与(T−CON)、(3)水+STZ投与(W−STZ)、(4)水のみ投与(W−CON)を実施した。
(1)(2)のグループには紅茶抽出液を、(3)(4)のグループには対照として蒸留水を、それぞれ給水ビンに入れて、飼育開始日より屠殺するまでの35日間自由摂取させた。この間、水、紅茶ともに連日交換し、飼料は市販の固形飼料を与えた。
【0033】
(紅茶抽出液)
紅茶(品種:ウバ)の茶葉20gを、95℃のイオン交換水1Lで2分間抽出し、得られた抽出液をネル濾布にて濾して紅茶抽出液(以下単に「紅茶」という)とした。
得られた紅茶抽出液中のテアフラビン類(TFs)量を高速液体クロマトグラフィ法により測定し、下記表1に示した。なお、表1に示した各値は3回の測定結果の平均値である。
【0034】
【表1】
【0035】
(実験操作)
飼育開始7日目にT−STZ群とW−STZ群に0.05Mのクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン(STZ;和光純薬工業社製)を40mg/kg・体重になるように、T−CON群とW−CONにはその対照としてクエン酸緩衝液のみを尾静脈より投与し、I型糖尿病の発症を誘導した。その後、屠殺までの間に1週間に2回、計8回にわたり12時間絶食後の血中グルコース濃度を測定し、定常時血糖値の推移を観察した。
飼育開始31日目には、D−グルコースを2g/kg・体重になるように経口負荷し、耐糖能試験(Oral Glucose Tolerance Test:OGTT)を行い、飼育最終日である35日目に同じくグルコースを経口負荷し、その30分後に心臓採血により屠殺し、肝臓、腎臓、膵臓、大腿筋、精巣上体脂肪組織を摘出し、小腸から上皮細胞を採取した。
【0036】
(測定)
(1.定常時血糖値の測定)
STZ投与前(0日目)、投与後3、7、10、14、17、20、24、28日目における空腹時の血糖値を測定し、飼育期間中の血糖調節を観察した。測定には血糖測定機器であるデキスターZII(三共社製)を用い、12時間絶食状態にしたラットの尾静脈血中のグルコース濃度を測定し、結果を図4に示した。
【0037】
(2.OGTTの測定)
飼育開始31日目に、12時間絶食状態にしたラットにD−グルコース水溶液を2 g/kg・体重になるようにゾンデ針を用いて経口投与し、糖負荷前(0分)、負荷後15、30、60、90、120、180分後にラットの尾先端より採血し、エッペンドルフチューブに回収した。回収した血液から血清を調製し、血清中グルコース濃度をグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いて測定し、結果を図5に示した。
【0038】
(3.3−O[メチル−3H]−D−グルコース(3−OMG)取込み活性の測定)
屠殺後速やかに筋肉、脂肪組織を採取し、各組織を約50mgになるように切り取った。その後クレブス−リンガー−HEPES緩衝液(KRH:50mM HEPES(シグマアルドリッチジャパン社製)、pH7.4、137mM NaCl、4.8mM KCl、1.85mM CaCl2、1.3mM MgSO4)に浸漬し、37℃で5分間インキュベート後、3−OMG(Moravek Biochemicals, Inc社製)を終濃度6.5mM、0.5μCiになるように添加した。その2分後に各組織をKRHで6回洗浄し、バイアル内でNCS II Tissue Solubilizer(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて可溶化し、クリアゾルIを添加後液体シンチレーションカウンターで3−OMGの組織への取込み量を測定し、筋肉組織における取込み量を図7に示し、脂肪組織における取込み量を図8に示した。
【0039】
(4.過酸化脂質の測定)
血清、肝臓、腎臓、膵臓中のチオバルビツール酸反応物質(TBARS)を測定し評価した。
各臓器を重量の4倍容のリン酸緩衝液(PBS(−):10mM Na phosphate、pH7.4、0.9% NaCl)とともに、ポリトロンホモジナイザーを用いて氷冷下でホモジナイズした。臓器ホモジネート及び血清に0.8% 2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)酢酸溶液、8.1% ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、20% 酢酸溶液(pH3.5)、0.8% 2−チオバルビツール水溶液(TBA試薬)を添加後5℃で60分間静置した。更に沸騰浴中で60分間インキュベート後、室温まで冷却したところへ、水、ブタノール・ピリジン混合溶液(15:1、v/v)を添加し攪拌後、反応混液を3000rpmで5分間遠心分離し、その上清の蛍光強度(Ex535nm−Em553nm)を測定した。過酸化脂質の標準物質にはテトラエトキシプロパンを用いた。
臓器ホモジネートは、bovine serum albumin(BSA;ウシ血清アルブミン)を標準物質としてタンパク質量をLowry法により求め、TBARS量をタンパク質量で除してマロンジアルデヒド当量として求めた。
【0040】
(5.血清中脂質の測定)
屠殺時に心臓より採血した血清中のトリグリセリド量、総コレステロール量、遊離コレステロール量、遊離脂肪酸量、HDL−コレステロール量はそれぞれトリグリセリドG−テストワコー、コレステロールE−テストワコー、NEFA C−テストワコー、HDL−コレステロールテストワコー、遊離コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いて測定した。LDL−コレステロール量は超遠心分画法を用いて分画し、その分画物をコレステロールE−テストワコーで測定して求めた。
【0041】
(6.小腸二糖類加水分解酵素活性の測定)
採取した小腸細胞塊に重量の7倍容の1.15%KClを加え、氷冷下でホモジナイズした。スクロース、マルトースは0.1Mになるようにマレイン酸緩衝液(50mM、pH6.0)に溶解し、それぞれスクロース溶液、マルトース溶液とした。調製したホモジネートにスクロース溶液を添加し、0、10、20、40分間にわたり37℃の温浴中においてスクロース分解酵素であるスクラーゼを反応させた。またマルトース溶液も同様にして、0、5、10、20分間の各時間でマルターゼを反応させた。その後、沸騰浴中で5分間インキュベートして酵素反応を停止させ、室温になるまで冷却した後3000rpmで10分間遠心分離し、回収した上清中のグルコース量はグルコースCII−テストワコーを用いて測定した。ホモジネート中のタンパク質量をLowry法により求め、グルコース量をタンパク質量で除して1分間当たりのスクラーゼ活性、マルターゼ活性を求め、結果をそれぞれ図10、図11に示した。
【0042】
(7.フルクトサミンの測定)
nitroblue tetrazolium(NBT)を0.48mMになるように炭酸ナトリウム緩衝液(200mM、pH10.3)に溶解しNBT溶液とした。屠殺時に採取した血清にウリカーゼ(和光純薬工業社製)を2.5kU/Lになるように溶解したNBT溶液を添加して37℃で反応させた。反応開始10分後と15分後の530nmにおける吸光度の差から、フルクトサミンの標準物質としてフルクトサミンキャリブレーター(シグマ ディアグノスティック社製)を用いてフルクトサミン量を求め、結果を図6に示した。
【0043】
(8.インスリンの測定)
12時間絶食状態にしたラットに、D−グルコース水溶液を2g/kg・体重になるようにゾンデ針を用いて経口投与し、糖負荷30分後に心臓採血により得た血清中のインスリン量をMercodia Rat Insulin ELISAキット(フナコシ社製)を用いて測定し、結果を図9に示した。
【0044】
(統計分析)
Student's t-testを用いて実験結果を比較し、p値が0.05以下になった場合を有意とみなした。
【0045】
(結果及び考察)
(1.体重、摂食量、摂水量の変化)
飼育開始時点での4群間の体重は、ほぼ差がなく同程度であった。その後、飼育7日目にSTZを投与した2群では、直後から体重減少、摂食量増加、摂水量増加といった糖尿病発症の特徴的な症状がみられた(図1−図3)。これらより、この2群はSTZの投与がI型糖尿病の発症を誘導したことを示している。更にこの2群を比較すると、水投与群では紅茶投与群に比べ、これら3つの症状が顕著であった。一方で、STZを投与しなかった2群間では、紅茶投与、水投与による差は観察されず、ともに飼育期間を通して順調な体重増加を示した。
【0046】
(2.定常時血糖値の推移)
STZ投与日(図4の0日目に相当する)には4群間の血糖値はほぼ同程度であったが、そのうちSTZを投与した2群では、糖尿病発症のために有意に血糖値の上昇が誘導された。しかし、この2群間において紅茶投与により血糖値の上昇は有意に抑制されており、また飼育日数の経過につれてコントロールレベルにまで低下した。その一方、STZを投与していないコントロール群では紅茶投与もしくは水投与による変化はみられなかった(図4)。
【0047】
(3.OGTTにおける血糖値変化)
糖尿病を発症した2群ともに、糖負荷後より急激に血糖値が上昇し、0、15、30分値において紅茶投与群は水投与群に比べ有意に低値を示した。しかし、その後は2群間に有意な差はみられなかった。一方、コントロール群においては水投与、紅茶投与の両群間での有意な差はみられなかった(図5)。
【0048】
(4.紅茶のフルクトサミン量へ及ぼす影響)
血中において糖化したタンパクであるフルクトサミン量は、糖尿病群ではコントロール群と比較して有意に増加していた。しかし、その増加が紅茶投与により有意に抑制されていた。コントロール群においては水投与、紅茶投与による差はほとんどみられなかった(図6)。
【0049】
(5.臓器重量の変化)
肝臓、腎臓、膵臓、精巣上体脂肪組織の各組織が体重に占める割合は、コントロール群(表2のNon-Diabeticに相当)では水投与もしくは紅茶投与による両群間での差はみられなかった。一方、糖尿病群(表2のDiabeticに相当)は、コントロール群に比べ、肝臓及び腎臓において有意に高値を示し、脂肪組織においては低値を示した。しかし、紅茶投与群では、水投与群と比較して糖尿病による肝臓、腎臓の臓器重量割合の上昇は有意に抑制された(表2参照)。
【0050】
【表2】
【0051】
(6.3−OMG取込み)
インスリン感受性組織である筋肉と脂肪組織の3−OMG取込み活性を測定した。
コントロールの紅茶投与群と水投与群と比較すると脂肪組織で有意な差は観察されなかったが(図8)、筋肉組織では紅茶投与により有意に取込み量が上昇していた(図7)。
一方、糖尿病の2群間には差がみられなかった。また、コントロール群と比較して糖尿病群が高値を示した(図7−8)。
【0052】
(7.紅茶のTBARS量に及ぼす影響)
糖尿病群の過酸化脂質量をコントロール群と比較した場合、肝臓と腎臓とでは差がみられなかったが、血清では増加し、膵臓では減少した。ところが、この糖尿病群における血清の過酸化脂質量の増加は紅茶投与により有意に減少した。コントロールの水投与群、紅茶投与群との間では血清及び各臓器における過酸化脂質量の有意な差は認められなかった(表3)。
【0053】
【表3】
【0054】
(8.紅茶のインスリン量へ及ぼす影響)
体内で唯一血糖値を下げる機能を持つホルモンであるインスリンの量は、コントロール群と比較して糖尿病群では有意に低値を示した。この糖尿病群でのインスリンの低下は、紅茶投与により有意に抑制され、インスリン量は高値を示した。更にコントロール群においても、水投与の場合と比較して紅茶投与は約3倍のインスリン量を示した(図9)。
【0055】
(9.小腸二糖類加水分解酵素活性)
スクラーゼ活性は、コントロール群と比較して糖尿病群が有意に活性が上昇しており、また糖尿病の場合、紅茶投与によりその活性は有意に低下することがわかった。一方、コントロールの水投与群、紅茶投与群の2群間では差はみられなかった(図10)。
マルターゼ活性では、糖尿病群、コントロール群のどちらでも紅茶投与により有意に活性の低下がみられた。また糖尿病の紅茶投与群の活性は、コントロールの水投与群と比較しても低値を示した(図11)。
【0056】
(10.血清中脂質)
遊離脂肪酸量(NEFA)は、糖尿病群、コントロール群のどちらでも紅茶投与により有意に低値を示した。コントロールの水投与群と比較して、糖尿病の水投与群は有意に高値を示したが、糖尿病の紅茶投与群は有意に低値を示し、コントロールの紅茶投与群と同程度であった。
中性脂肪(Triacylglycerol)は、コントロール群と比較して糖尿病群で有意に高値を示し、糖尿病の紅茶投与群は水投与群の約3分の1と有意に低値を示した。一方、コントロールの水投与群、紅茶投与群の2群間では差はみられなかった。
総コレステロールは、コントロール群と比較して糖尿病群で有意に高値を示した。各群での水投与、紅茶投与による変化はみられなかった。
遊離コレステロールは、コントロール群と比較して糖尿病群で有意に高値を示した。糖尿病の水投与群、紅茶投与群の間には有意な差はみられなかったが、コントロール群では水投与と比較して紅茶投与により有意に上昇した。
HDLコレステロールは、コントロールの水投与群、紅茶投与群の2群間で差はみられず、糖尿病の紅茶投与群とほぼ同程度であった。一方、糖尿病の水投与群はコントロール群と比較して有意に低値を示した。
LDLコレステロールは、コントロール群と比較して糖尿病群で有意に高値を示したが、両群において水投与、紅茶投与による変化はみられなかった(表4)。
【0057】
【表4】
【0058】
<試験2>
本試験では、高脂肪食或いは普通食で飼育したラットが紅茶抽出成分又は緑茶抽出成分を自由摂取した時の効果を調べるため、それぞれの血中コレステロール、血糖値、脂肪細胞及び筋肉細胞におけるグルコースの取込み活性、血中におけるレプチン・アディポネクチンの測定し比較検討した。
【0059】
[試験計画]
4週齢の雄性C57BL/6Jマウスを日本エスエルシー社より購入した。飼育環境を23±3℃とし、照明時間を9時−21時とした。1週間の予備飼育後、高脂肪食飼育の水飲み群(HF−W)、緑茶飲み群(HF−G)、及び紅茶飲み群(HF−B)と、普通食飼育の水飲み群(C−W)、緑茶飲み群(C−G)及び紅茶飲み群(C−B)との6群に分け、さらにそれぞれ5匹ずつの6群を7週間と14週間の計12群で飼育した。なお、体重がそれぞれ同等になるように群分けし、下記表5の組成で飼料を与えた。
飼育期間最終日には心臓採血により屠殺し、筋肉、脂肪、肝臓、血清を回収した。
【0060】
【表5】
【0061】
(緑茶抽出成分)
緑茶(品種:静岡産本山茶)の茶葉を20g/L、95℃のイオン交換水で2分間抽出し、得られた抽出液をネル濾布にて濾して緑茶抽出液(以下単に「緑茶」という)とし、これを緑茶飲み群(HF−G)及び緑茶飲み群(C−G)に摂取させた。
【0062】
(紅茶抽出成分)
紅茶(品種:ウバ)の茶葉を20g/L、95℃のイオン交換水で2分間抽出し、得られた抽出液をネル濾布にて濾して紅茶抽出液(以下単に「紅茶」という)とし、これを紅茶飲み群(HF−B)及び紅茶飲み群(C−B)に摂取させた。
【0063】
[実験方法]
(血糖・血中成分測定)
飼育開始後1、5、7、10、12及び14週目の絶食時血糖を市販のキットで測定した。
耐糖能試験は18時間絶食後、2g/kg・体重で糖負荷をして、0、15、30、60及び120分における血糖値を市販のキットで測定した。
血中脂質成分(T−コレステロール、F-コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセリド)も同様に市販のキットを用いて測定した。
LDL-コレステロールはFriedewald法により算出した。
マウスは飼育開始後7週目と14週目に心臓採血により屠殺し、摘出した脂肪と筋肉を用いてグルコースの取り込み活性を測定した。
【0064】
なお、グルコースの取り込み活性測定は、摘出した筋肉と脂肪を約15mgの切片にして、それぞれの組織をクレブス・リンガー・HEPES緩衝液(KRH:50mM HEPES、pH7.4、137mM NaCl、4.8mM KCl、1.85mM CaCl2、1.3mM MgSO4)1ml中で10分間、37℃でインキュベートした。次いで、ここに3-0-メチル-[3H]-D-グルコース (3−OMG)を6.5mM、0.5μCiとなるように加えて2分間作用させた。取り込みを停止するために、直ちに反応混液を吸引除去し、組織を氷冷したKRHで速やかに6回洗浄した後、濾紙で水分をふき取り、NCSIIで組織を可溶化した。可溶化液にシンチレーションカクテルを加えて取り込まれた3−OMGの放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。非特異的な取り込み量は、グルコーストランスポーターの阻害剤である20μMサイトカラシンBを組織に処理し、上記と同様の方法で取り込み活性を測定することで求めた。
【0065】
[結果]
(体重変化)
図12及び図13より、高脂肪食摂取時の緑茶抽出成分、紅茶抽出成分の長期摂取は体重の増加を抑制したことが確認された。
普通食では、水、緑茶、紅茶のいずれの摂取群においても体重に差は見られなかった。一方、高脂肪食においては、紅茶摂取群では7週目より有意に差が見られ、8週目には緑茶においても差が見られるようになった。
なお、図12及び図13中の「a」と「b」は、それぞれの水摂取群に対し緑茶摂取群と紅茶摂取群でStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0066】
(組織重量)
下記表6及び表7より、緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取は脂肪重量を減少させたことが確認された。すなわち、飼育開始7週目では、普通食において緑茶や紅茶の摂取は、脂肪重量の増加を有意に抑制しており、高脂肪食におけるそれは総脂肪重量だけでなく、各脂肪部位における増加を普通食レベルまで抑制していた。また、14週目では、普通食、高脂肪食の両群とも緑茶、紅茶の摂取が脂肪重量の増加を抑制し、その割合は7週目よりさらに顕著であった。
なお、下記表における「*」は、水摂取群に対しStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
(空腹時血糖の継時的変化)
図14及び図15より、緑茶抽出成分、紅茶抽出成分の摂取によって血糖値の上昇が抑制されることが確認された。すなわち、空腹時血糖は、1、5、7、11、14週目に尾静脈より血液を搾取し、その血清を用いて、市販のキットで測定した。
緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取は、高脂肪食、普通食のいずれにおいても血糖値を下げる傾向が見られた。緑茶飲み群(HF−G)と紅茶飲み群(C−B)においては5週目及び11週目に有意な減少が認められた。
なお、図14及び図15中の「a」と「b」は、それぞれの水摂取群に対し緑茶摂取群と紅茶摂取群でStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0070】
(血清脂質成分測定)
表8より、緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取は、血中のコレステロール量を有意に減少させ、長期の摂取によってトリグリセリドも減少させることが確認された。すなわち、飼育7週目と14週目に得た血清を用いて、市販のキットで総コレステロール(T−CHO)、遊離コレステロール(F−CHO)、HDL-コレステロール(HDL−CHO)、トリグリセリド(TG)を測定したところ、高脂肪食では、緑茶や紅茶の摂取が総コレステロール(T−CHO)、HDL-コレステロール(HDL−CHO)及びLDL−CHO量を有意に減少させた。また、長期摂取(14週)は高脂肪食においてトリグリセリド(TG)も減少させた。これらのことから、緑茶抽出成分および紅茶抽出成分の摂取は、血清中の脂質成分調節作用を有することから、脂質代謝改善効果が確認できた。
なお、下記表における「*」「**」は、水摂取群に対しそれぞれStudent's t-testにより、危険率5%未満で有意差があることを示す。
【0071】
【表8】
【0072】
(耐糖能試験)
図16(A)−(D)より、耐糖能試験において、緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取はより血糖値の効果を促進することが確認された。
図16(A)−(D)について説明すると、(A)及び(C)(白抜きのシンボル)は普通食摂取群、(B)及び(D)(黒埋めのシンボル)は高脂肪食摂取群の結果を示し、(A)及び(B)は飼育5週目、(C)及び(D)は12週目の結果を示す。また、それぞれ丸が水摂取群、四角が緑茶摂取群で、三角が紅茶摂取群である。
なお、図中の「a」「b」はそれぞれの水摂取群に対し緑茶摂取群と紅茶摂取群でStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0073】
飼育5週目の高脂肪食摂取群において、緑茶抽出成分及び紅茶抽出成分の摂取は最高血糖値を抑制し、速やかな血糖値の降下が認められた。また、普通食摂取群においても、60分と120分で有意な血糖値の効果が認められた。飼育12週目においては同様に60分と120分で有意な血糖値の効果が認められた。このことから、緑茶抽出成分及び紅茶抽出成分の摂取は、耐糖能異常の改善に寄与することが推測される。
【0074】
(組織におけるグルコースの取り込み活性測定)
図17(A)(B)より、グルコースの取り込み活性測定において、緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取は脂肪でその活性を抑制し、筋肉でその活性を促進させたことを確認できた。なお、図17(A)(B)において、「*」はそれぞれの水摂取群に対してStudent's t-testにより危険率5%未満で有意差があることを示す。
【0075】
脂肪組織では、紅茶抽出成分及び緑茶抽出成分の摂取によりグルコースの取り込み活性を抑制し、筋肉では、特に高脂肪食摂取群において有意にグルコースの取り込み活性を上昇させた。そこで、紅茶抽出成分及び緑茶抽出成分の摂取は、脂肪組織では血糖の取り込みを抑制することで脂肪細胞の肥大化を抑制し、逆に体内最大の組織である筋肉では血糖を取り込むことで、高血糖を抑制したと考えられた。
【0076】
脂肪細胞と筋肉細胞におけるグルコースの取り込みは、その殆どがGLUT4を介することが知られており、上記のように特に高脂肪食での紅茶抽出成分の効果が優れていることを考えると、紅茶抽出成分の摂取により、脂肪細胞に存在するGLUT4のトランスロケーションが抑制されたことが示唆される。
【0077】
(血中アディポサイトカイン量の測定)
本測定では、脂肪細胞が分泌するレプチンとアディポネクチンについてそれらの血清中での量を市販のELISAキットで測定し、結果を図18(A)〜(D)に示した。
これらの図において、「*」と「**」は、それぞれ普通食と高脂肪食の水摂取群に対してStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0078】
それぞれのアディポサイトカインの血清中での量について、7週目における普通食の水摂取群での値を基準にして考えると、水摂取群では14週目の普通食、7週目と14週目の高脂肪食のいずれにおいてもレプチンとアディポネクチンは増加が認められた。
一方、緑茶抽出成分及び紅茶抽出成分の摂取群においては、14週目の普通食においても、7週目と14週目の高脂肪食においても変化認められなかった。
これらの結果から、飼育期間の延長や高脂肪食摂取による脂肪細胞の増加に伴ったレプチンとアディポネクチンの分泌亢進に対して、緑茶及び紅茶の摂取は抑制効果を示すことが認められた。
【0079】
<試験3>
本試験では、紅茶抽出成分のインスリン感受性組織における糖代謝、脂質代謝におよぼす影響について検討した。
【0080】
[実験方法]
(実験動物)
生後6週齢Wistar/ST雄性ラット(日本エスエルシー(株))を用いて試験を
実施した。
ラットを7日間の順化後、水投与のみ(C−W)群、紅茶投与のみ(C−B)群、STZ+水投与(S−W)群、STZ+紅茶投与(S−B)群の5群(各群6匹)に分けた。
C−W群とS−W群には蒸留水を、C−B群とS−B群には紅茶を、それぞれ給水ビンに入れて飼育開始日より屠殺するまでの35日間自由摂取させた。この間、水、紅茶ともに連日交換し、飼料は市販の固形飼料を与えた。
【0081】
(紅茶抽出成分)
紅茶葉(品種:ウバ)20gに対し、95℃のイオン交換水1Lで2分間抽出し、茶葉をネル濾布にて濾した液を紅茶抽出液(以下単に「紅茶」という)として給水ビンに入れて投与した。
【0082】
(STZの投与)
紅茶投与開始7日目に(飼育開始0日目とする)、S−W群とS−B群に0.05Mのクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン(STZ、和光純薬工業(株))を40mg/kg・体重になるように、C−W群とC−B群にはその対照としてクエン酸緩衝液のみを尾静脈より投与し、I型糖尿病の発症を誘導した。
その後、屠殺までの間に1週間に2回、計8回にわたり12時間絶食後の血中グルコース濃度を測定し定常時血糖値の推移を観察した。飼育開始31日目には、D-グルコースを2g/kg・体重になるように経口負荷し、耐糖能試験(Oral Glucose Tolerance Test :OGTT)を行い、飼育最終日である28日目に同じくグルコースを経口負荷し、その30分後に心臓採血により屠殺し、以下の実験に供した。
【0083】
(血中インスリン、レプチン、アディポネクチン量の測定)
血清中のインスリン量はMercodia Rat Insulin ELISAキット(フナコシ(株))
、レプチン量はモリナガラットレプチン測定キット((株)森永生科学研究所)、アディ
ポネクチン量をマウス/ラットアディポネクチンELISAキット(大塚製薬(株))を
用いてそれぞれ測定した。
【0084】
(脂肪、筋肉、肝臓の細胞抽出液の調製)
各組織のホモジネートに等量のRIPA緩衝液(100mM Tris−HCl,pH8.0,300mM NaCl、2.0% (v/v) Nonidet-P40(登録商標)(和光純薬工業(株))、1.0%(w/v) デオキシコール酸ナトリウム(和光純薬工業(株))、0.2%(w/v) SDS、2mM PMSF、20mg/mlロイペプチン(和光純薬工業(株))、2mM Na3VO4 、100mM NaF)を加え、氷上で時折混和しながら2時間可溶化した。その後、4℃、19000×gで20分間遠心分離し、その上清を細胞抽出液とした。
この抽出液のタンパク質量をLowry法で定量後、タンパク質量が等量になるように調製してSDS化し、7.5%ポリアクリルアミドゲルを用いSDS−PAGEに供した。SDS−PAGEで分離したタンパク質はPVDF膜に転写した。それぞれ、筋肉組織はAMPK−α(5´-AMP-activated protein kinase-α)、phospho-AMPK−α、GLUT4(glucose transporter 4)、PPAR−α(peroxisome proliferator-activated receptorα)の検出に、脂肪組織はSREBP−1(sterol regulatory binding protein-1)の検出に、肝臓組織はAMPK−α、phospho-AMPK−α、PPAR−α、SREBP−1の検出に用いた。
【0085】
(筋肉組織からの細胞膜画分の調製)
筋肉のホモジネートに2倍量の0.1%(v/v) Nonidet-P40(登録商標)含有細胞膜溶解緩衝液 (10mM Tris−HCl,pH7.9,10mM KCl, 1.5mM MgCl2・6H2O,1mM PMSF,0.5mM DTT,10mg/mlロイペプチン,5mg/mlアプロチニン)を加え、氷上で時折混和しながら10分間可溶化した。その後、900×g、10分間4℃で遠心分離して得た沈殿にNonidet-P40(登録商標)を含まない緩衝液を加えてよく混和し、再び900×g、10分間4℃で遠心分離して沈殿を得た。そこへ1%(v/v) Nonidet-P40(登録商標)を含む緩衝液を加えてよく混和し、氷上で20分間放置した後に19000×gで20分間遠心分離して得た上清を筋肉細胞膜抽出液とした。
この抽出液のタンパク質量をLowry法で定量し、タンパク質量が等量になるように調製してSDS化し、7.5%ポリアクリルアミドゲルを用いSDS−PAGEに供した。SDS−PAGEで分離したタンパク質はPVDF膜 (Hybond-P; Amersham Biosciences Ltd.) に転写し、そのPVDF膜をGLUT4、IR−β (insulin receptorβ)の検出に用いた。
【0086】
(ウエスタンブロット法によるタンパク質発現の検出)
タンパク質を転写したPVDF膜を1%(w/v) のスキムミルクを含むTBST緩衝液(10mM Tris−HCl,pH8.0,150mM NaCl,0.06% (v/v) Tween-20)で30分間ブロッキングした。TBST緩衝液でPVDF膜を5分間計4回インキュベートして洗浄を行った後、1%のスキムミルクを含むTBST緩衝液に希釈した一次抗体(抗GLUT4抗体1:1000、抗IR−b抗体1:1000、抗SREBP−1抗体1:1000、抗PPAR−α抗体1:1000(Santa Cruz Biotechnology Inc.社製)、抗AMPK−α抗体1:1000、抗phospho-AMPK−α抗体1:1000(Cell Signaling Technology, Inc.社製)を室温で1時間反応させた。再びPVDF膜をTBST緩衝液で5分間計4回インキュベートして洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼで標識した二次抗体を0.5%のスキムミルクを含むTBST緩衝液に希釈し、それを30分間反応させた。PVDF膜をTBST緩衝液で再度同様に洗浄した後、膜上の抗原抗体反応をECL plus(Amersham Biosciences Ltd.社製)用いて発光させ、それを露光させたX線フィルムを現像することでタンパク質の発現を検出した。
【0087】
[実験結果]
(血清中のアディポネクチン量とレプチン量に及ぼす影響)
脂肪細胞から分泌され、糖尿病の病態に深く関与するとされているアディポネクチン(図19)とレプチン(図20)の血中濃度を測定した。これらの図において、「N.D.」は測定不能(not detectable)を示し、「白色棒」は水摂取群を示し、「黒色棒」は紅茶摂取群を示している。
アディポネクチン量は、STZ投与の2群は、その対照と比べて有意に減少していた。しかし、対照の2群間とSTZ投与の2群間とのいずれの群内においても、紅茶投与によりアディポネクチン量が有意に高値を示した。また、レプチン量は、STZ投与の2群はともに検出限界以下であった。対照の2群間では、紅茶を投与したC−B群が、C−W群と比較してレプチン量が有意に高値を示した。
【0088】
(筋肉と肝臓組織におけるAMPK−α、およびその活性型phospho-AMPK−αの発現量)
肝臓と筋肉組織のどちらにおいても、常在的に存在するAMPK−αの発現量は4群間に差異は認められなかった(図21(A)(B))。AMPK−αはリン酸化されて活性型となるが、そのリン酸化したAMPK−α(phospho-AMPK-α)の発現量を検出したところ(図21(A)(B))、phospho-AMPK−αの発現量は筋肉、肝臓どちらの組織においてもC−B群で増加しており、C−W群と比較して顕著な増加であった。STZ投与の2群間で比較すると、筋肉におけるphospho-AMPK−αの発現量は紅茶投与により大幅に減少しており、また肝臓においてもわずかに減少傾向を示した。
【0089】
この結果、紅茶抽出成分の摂取により、筋肉のAMPK−αが活性化することが判明した。筋肉では、運動によりAMPK−αがリン酸化(活性化)してGLUT4のトランスロケーションが促進することが知られている。また、上記のアディポネクチンやレプチンもAMPK−αを活性化する因子であることが示されている。したがって、正常動物の水摂取群(C−W群)ではアディポサイトカインの分泌亢進がAMPK−α活性化を促進してGLUT4のトランスロケーションに繋がる可能性もあると考えられる。STZを投与したラットでは、水摂取群(S−W群)で正常動物の水摂取群(C−W群)と比べて増加したことは、AMPK−αが燃料センサーとして機能することから、この活性化は危機的状況に対応した活性化であり、糖尿病―紅茶摂取群(S−B群)では水摂取群(S−W群)ほどエネルギー供給が危機的ではない可能性を示唆している。実際、S−W群では血漿の遊離脂肪酸が高値を示したことから、糖に変わる代替エネルギーとして脂質の酸化が亢進していることが伺える。
総括的に見ると、正常(健康な動物)では、紅茶抽出成分の摂取がアディポサイトカインの分泌バランスを良好に保持し、脂肪酸の燃焼(β酸化)を促進することで血漿遊離脂肪酸含量を低下させることが確認され、一方、STZによる糖尿病誘発ラットでは糖代謝―脂質代謝の生理的パラメーター全てがエネルギー消費側に傾いており、紅茶抽出成分はSTZによる変調を正常化する方向へ導くことが確認された。
【0090】
(筋肉と肝臓組織におけるPPAR−αの発現量)
インスリン感受性組織である肝臓と筋肉におけるPPAR−αのタンパク質発現量を検出したところ、筋肉におけるPPAR−αの発現量は、C−W群と比較するとC−B群は明らかに増加していた(図22(A)(B))。S−W群は4群間において最も発現量が増加していたが、S−B群はC−B群と同程度であった。肝臓におけるPPAR−αの発現量は、C−W群とC−B群とではほぼ同程度であったが、STZ投与の2群は増加していた(図22(A)(B))。S−W群では発現量が著しく増加していた。
【0091】
上記のアディポネクチンはAMPK−αの活性化だけでなく、PPAR−αの活性化を介しても脂肪酸酸化を誘導することが知られている。PPAR−αはRXRとヘテロ二量体を形成し転写因子として働く。ここでは、脂肪酸β酸化に関わる筋肉と脂肪組織で発現しているα型を調べた(脂肪ではγ型)。
正常動物の場合、紅茶摂取群(C−B群)では水摂取群(C−W群)と比べて筋肉で明らかにPPAR−α発現量が増加し、アディポネクチンによりこの発現が誘導されてβ酸化亢進につながったことが考えられた。
糖尿病動物の場合、上記で記したようにSTZ投与により、AMPK−αと同様にインスリン感受性組織へのグルコースによるエネルギー供給が不足しているために脂肪酸酸化を介して代替エネルギーを供給しようとしてβ酸化に関わる諸酵素の発現を支配しているPPAR−αのたんぱく質発現が増加し、紅茶摂取群(S−B群)ではこの作用が緩和されていたことになる。
【0092】
(細胞とその細胞膜へ移行したGLUT4の発現量への影響)
筋肉細胞中に常在的に存在するGLUT4の発現量は4群間に差異は認められなかった(図23(A))。そこで、グルコースを細胞内へ取り込む能力を有する細胞膜上に移行したGLUT4の発現量を4群間で検証したところ、STZを投与した2群では対照群と比較してGLUT4の細胞膜への移行がほとんど認められなかった(図23(B))。STZ投与の2群間で比較すると、ほとんど検出できなかったS−W群に比べ、S−B群においては細胞膜への移行がわずかに認められた。さらに対照の2群を比較するとC−B群がC−W群よりもGLUT4の細胞膜への移行が亢進していることがわかった。その一方、細胞膜上に存在するインスリンレセプター(IR−β)の発現量は4群間に差異はなかった(図23(B))。これらのことから、対照群とSTZ群どちらにおいても紅茶投与により、細胞内の小胞体から細胞膜への移行したGLUT4の発現量が増加していた。
【0093】
(脂肪と肝臓組織におけるSREBP−1の発現量)
脂質合成能を有する臓器である脂肪組織と肝臓におけるSREBP−1のタンパク質発現量を検出した(図24(A)(B))。
脂肪組織におけるSREBP−1の発現量は、C−W群と比較するとC−B群では減少しており、S−W群では顕著に増加していた(図24(A))。S−B群もC−W群と比べて増加傾向がみられた。STZ投与の2群間で比較するとS−B群はS−W群と比較して明らかな発現量の低下がみられた。
肝臓におけるSREBP−1の発現量は、C−W群と比較するとC−B群は発現量のわずかな減少が確認でき、S−W群とS−B群の発現量は増加していた(図24(B))。特にS−W群での増加は顕著であったが、S−B群ではS−W群と比べこの発現の減少が認められた。
【0094】
肝臓や脂肪組織などの脂肪酸合成系を有する組織では、糖質由来のエネルギーの過剰供給に対して脂肪酸合成系酵素の活性が上昇して脂肪酸を合成することでエネルギーをトリグリセリドに変換して蓄積することが知られている。SREBPsは脂肪酸(SREBP−1)やコレステロール(SREBP−2)の合成を制御している。
上記のように、正常動物の場合は、紅茶摂取群(C−B群)と水摂取群(C−W群)では大きな変化はないが、特に脂肪組織で発現量が減少傾向にあった。これは、脂肪組織への糖の流入が減少したことに起因する可能性がある。
糖尿病動物の場合は、水摂取群(S−W群)で正常動物(C−W群)と比べて顕著に増加した。すでにSTZによりインスリン分泌能が極端に低下した動物の肝臓では、高血糖による糖質の急激な流入に対してSREBP−1の発現が誘導されることと、グルコースが発現誘導に関わることを効力すると、12時間の絶食後の急激なグルコースの流入による高血糖がSREBP−1発現に関わったと推測される。
【0095】
[まとめ]
紅茶抽出成分を投与すると、糖尿病モデルラットにおいて、STZによるインスリンの分泌低下を軽減することが示唆された。このことは、紅茶摂取群において、インスリンの刺激により細胞膜へ移行したGLUT4が検出できたことと、脂肪組織の減少を軽減して脂肪細胞からレプチンとアディポネクチンの分泌を維持したことから検証できた。さらに、紅茶投与によりリン酸化型AMPK−aとPPAR−αとSREBP−1の発現の低下が認められたことから、インスリン不足から生じる組織でのエネルギー不足が抑制されていたと考えられた。
他方、糖尿病を誘導していないコントロールラットにおいては、紅茶投与によりリン酸化型AMPK−αの発現が増加して、結果として細胞膜へ移行したGLUT4の増加と、SREBP−1の減少が誘導されたことが考えられ、脂肪酸のβ酸化の促進と合成の低下が示唆された。
【0096】
<試験4>
本試験では、紅茶抽出成分が小腸からの糖吸収におよぼす影響について検討した。
【0097】
[実験方法]
(実験動物)
生後6週齢Wistar/SD雄性ラット(日本エスエルシー(株))を用い、上記試
験2と同様の条件で飼育し、飼育期間中は水、餌ともに自由摂取とした。飲用水は連日交換し、飼料は市販の固形飼料を与えた。
【0098】
(紅茶抽出成分)
上記試験3と同じ紅茶抽出液を以下の実験に用いた。
【0099】
(耐糖能試験)
ラットを12時間絶食状態にし、紅茶抽出液1mlを各種糖を負荷する5分前にゾンデ針で経口投与した。対照としては、同様に蒸留水を経口投与した。
紅茶若しくは水を投与した5分後にグルコース、スクロース、あるいはマルトース水溶液を2g/kg・体重/1mlになるようにゾンデ針を用いて経口投与した。糖負荷前(0分)、負荷後15、30、60、90、120、180分後における血糖値をグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業(株))を用いて測定した。
【0100】
[実験結果]
図25−26において、各図(A)中の○は水摂取群示し、●は紅茶摂取群を示しており、各図(B)中の「白色棒」は水摂取群を示し、「黒色棒」は紅茶摂取群を示している。
【0101】
(グルコース経口負荷による耐糖能試験)
ラットに水若しくは紅茶抽出液を、グルコースを経口負荷する5分前に投与した場合、120分間の血糖値に2群間の変化は認められず、糖代謝へおよぼす影響は認められなかった(図25(A))。また、血糖値のグラフの線下面積も2群間に差異は認められなかった(図25(B))。
【0102】
(スクロース経口負荷による耐糖能試験)
ラットにスクロースを経口負荷する5分前に水若しくは紅茶抽出液を投与した場合、紅茶を事前に投与することにより血糖値の上昇が抑制される傾向が認められた(図26(A))。血糖値のグラフの線下面積を棒グラフに表した(図26(B))。120分間にわたる血糖値の変化に水投与と紅茶投与による影響は認められなかった。
【0103】
(マルトース経口負荷による耐糖能試験)
マルトースを経口負荷する5分前に水若しくは紅茶抽出液を投与した場合も、紅茶を事前に投与することにより血糖値の上昇が抑制される傾向が認められた(図27(A))。特に、30分値以降にその傾向が認められた。血糖値のグラフの線下面積を棒グラフに表したところ、水投与と比較して紅茶投与により120分間にわたる血糖値が有意に抑制された(図27(B))。
【0104】
[まとめ]
単糖であるグルコースの腸管からの吸収や糖代謝には、紅茶抽出成分は影響をおよぼさなかった。スクロースやフルクトースなどの二糖類は小腸で酵素により加水分解され、単糖として吸収される。二糖類を経口投与する前に紅茶抽出成分を投与することで、血中のグルコース濃度の上昇が抑制される傾向が認められた。特に、グルコース2分子から成るマルトースを経口投与した場合では、投与後120分間の血糖値が有意に抑制された。このことから、紅茶抽出成分は緩やかな効果ではあるが、小腸の二糖類加水分解酵素の活性を阻害することが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】試験1における紅茶摂取開始後のラットの体重の変化を経時的に示したグラフである。
【図2】試験1における紅茶摂取開始後のラットの摂食量の変化を経時的に示したグラフである。
【図3】試験1における紅茶摂取開始後のラットの摂水量の変化を経時的に示したグラフである。
【図4】試験1におけるラットの定常時血糖値の変化を経時的に示したグラフである。
【図5】試験1において、OGTTにおける血糖値の変化を経時的に示したグラフである。
【図6】試験1終了時における血中フラクトサミン量を示したグラフである。
【図7】試験1における筋肉組織での3−OMG取込み量を示したグラフである。
【図8】試験1における脂肪組織での3−OMG取込み量を示したグラフである。
【図9】試験1における血清中インスリン量を示したグラフである。
【図10】試験1において紅茶抽出成分が小腸におけるスクラーゼの加水分解活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図11】試験1において紅茶抽出成分が小腸におけるマルターゼの加水分解活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図12】試験2において、高脂肪食飼育ラットの体重変化を経時的に示したグラフである。
【図13】試験2において、普通食飼育ラットの体重変化を経時的に示したグラフである。
【図14】試験2において、高脂肪食飼育ラットの空腹時血糖の経時的に示したグラフである。
【図15】試験2において、普通食飼育ラットの空腹時血糖の経時的に示したグラフである。
【図16】試験2における耐糖能試験の結果を示したグラフであり、(A)は、飼育5週目の普通食飼育の耐糖能試験結果を、(B)は、飼育5週目の高脂肪食飼育の耐糖能試験結果を、(C)は、飼育12週目の普通食飼育の耐糖能試験結果を、(D)は、飼育12週目の高脂肪食飼育の耐糖能試験結果を示している。
【図17】試験2において、組織におけるグルコースの取り込み活性を測定した結果を示すグラフであり、(A)は、脂肪細胞組織におけるグルコースの取り込み活性を、(B)は、筋肉細胞組織におけるグルコースの取り込み活性を示している。
【図18】試験2において、血清中アディポサイトカイン量を測定した結果を示すグラフであり、(A)は、飼育7週目における血清中レプチン量を、普通食群と高脂肪食群に分けて示したグラフであり、(B)は、飼育14週目における血清中レプチン量を、普通食群と高脂肪食群に分けて示したグラフであり、(C)は、飼育7週目における血清中アディポネクチン量を、普通食群と高脂肪食群に分けて示したグラフであり、(D)は、飼育14週目における血清中アディポネクチン量を、普通食群と高脂肪食群に分けて示したグラフである。
【図19】試験3において、血清中のアディポネクチン量を測定した結果を示すグラフである。
【図20】試験3において、血清中のレプチン量を測定した結果を示すグラフである。
【図21】試験3において、肝臓又は筋肉組織におけるAMPK−aの発現量を測定した結果を示すスペクトル図であり、(A)は筋肉組織、(B)は肝臓の結果である。
【図22】試験3において、肝臓又は筋肉組織におけるPPAR−αの発現量を測定した結果を示すスペクトル図であり、(A)は筋肉組織、(B)は肝臓の結果である。
【図23】試験3において、筋肉組織におけるGLUT4の発現量を測定した結果を示すスペクトル図であり、(A)は筋肉細胞中に常在的に存在するGLUT4の発現量を示し、(B)は細胞膜上に移行したGLUT4の発現量を示す。
【図24】試験3において、肝臓又は筋肉組織におけるSREBP−1のタンパク質発現量を測定した結果を示すスペクトル図であり、(A)は脂肪組織におけるSREBP−1のタンパク質発現量を示し、(B)は肝臓におけるSREBP−1のタンパク質発現量を示す。
【図25】試験4において、グルコース経口負荷による耐糖能試験の結果を示したグラフであり、(B)は、血糖値のグラフの線下面積を棒グラフで示したものである。
【図26】試験4において、スクロース経口負荷による耐糖能試験の結果を示したグラフであり、(B)は、血糖値のグラフの線下面積を棒グラフで示したものである。
【図27】試験4において、マルトース経口負荷による耐糖能試験の結果を示したグラフであり、(B)は、血糖値のグラフの線下面積を棒グラフで示したものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶抽出成分の新たな用途、中でも肥満や糖尿病に関係する新たな用途に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活が豊かになるにつれ、「肥満」は現代人が抱える最も深刻な悩みの一つとなっている。肥満は、美容的に好ましくないばかりか、糖尿病、動脈硬化、高トリアシルグリセロール血症、高コレステロール血症、血栓症等疾患などの様々な疾病を引き起こすことが知られている。
肥満は、脂肪細胞の分化・肥大、或いは脂肪細胞数そのものの増加により生じるが、いずれの場合にも“グルコースの取込み”が深く関与している。
グルコースは極性物質であるため、血中から各細胞にグルコースが取り込まれるには輸送担体(glucose transporter:GLUT)が必要である。現在9種類以上のGLUTがクローニングされており、その中で生体内の糖・脂質代謝に大きく関与する脂肪細胞には主にGLUT1及びGLUT4が発現している。その中でも特にGLUT4は脂肪細胞の膜上におけるグルコースの取込み活性に主要な役割を果たしていることが知られている。
GLUT4は、インスリン感受型GLUTと呼ばれ、通常は脂肪細胞及び筋肉細胞における細胞内小胞に存在し、インスリンの刺激を受けると細胞膜上に移行(トランスロケーション)し、グルコースを取り込める状態とする。GLUT4のトランスロケーションは、インスリンが受容体に結合し、受容体のβサブユニットが自己リン酸化することが情報伝達の開始となり、その後インスリン受容体基質(IRS)のリン酸化、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の活性化、Akt/Protein Kinase Bの活性化という経路を介して細胞内の小胞体から細胞膜へのエキソサイトーシスにより、移行が完了する。また、GLUT4は、筋肉細胞内により多くのグルコースを移動させる働きを為し、運動選手は一般の人よりもGLUT4が多いことなども報告されている(「炭水化物ローディングの最新知見」慶応義塾大学スポーツ医学研究センター紀要 1996)。
【0003】
肥満の増加を反映して、糖尿病患者数が増える傾向にある。糖尿病は、いったん発症するとなかなか完治しづらいばかりか、合併症を発症し易いやっかいな疾病である。
糖尿病患者に特異的に発症する合併症として、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などあり、糖尿病三大合併症とも呼ばれている。これらの合併症は、細かい血管の病変に基づく細小血管障害に因ると考えられている。具体的には、プロテインキナーゼC等の酵素の働きが異常に亢進して細胞機能が低下したり、高血糖の持続により酵素などの蛋白質にグルコースが化学結合して酵素機能が低下したり、高血糖による代謝障害のためにソルビトール(糖アルコール)が細胞内に蓄積して細胞障害を起こしたりして、これが原因で細小血管の細胞や血液細胞に異常が生じ合併症を発症すると考えられている。
【0004】
従来、このような肥満や糖尿病に対する茶抽出物やその抽出成分の影響について、次のような様々な提案や報告が為されている。
【0005】
例えば特許文献1(特開平06−80580号)には、茶葉に含まれる多糖類(リボース,アラビノース及びグルコース)を有効成分とする血漿コレステロール低下剤が開示され、
特許文献2(特開平10−158181号)には、茶より抽出した植物エキスを含有する脂肪分解促進剤が、全身あるいは局所の脂肪組織の減少を促進して肥満体質の改善、肥満の抑制・防止に効果を発揮する旨が開示され、
特許文献3(特開平11−302168号)には、茶抽出物中のエピカテキンガレートを有効成分として含有するグルコース吸収阻害剤が、腸管でのグルコース吸収を抑制し、肥満や糖尿病などの治療等に有効である旨が開示され、
特許文献4(特開2003−81825号)には、カテキン類からなるグルコーストランスポーター4発現促進剤及び糖尿病予防・改善用容器詰飲料が開示され、
特許文献5(特開2003−95942号)には、カテキンガレート、ガレートエステルを備えたカテキン、茶抽出物のいずれかを有効成分とする脂肪細胞におけるグルコース取込阻害剤、インスリン刺激応答性グルコース取込阻害剤、GLUT4トランスロケーション抑制剤及び脂肪軽減飲食物が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平06−80580号公報
【特許文献2】特開平10−158181号公報
【特許文献3】特開平11−302168号公報
【特許文献4】特開2003−81825号公報
【特許文献5】特開2003−95942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、紅茶抽出成分が肥満や糖尿病に与える影響について鋭意研究し、その結果得られた様々な知見に基づいて、紅茶抽出成分の新たな用途、特に肥満や糖尿病に関係する新たな用途を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤又は糖尿病合併症予防剤、並びに、これらのいずれか含有してなる飲食物を提案するものであり、前記の紅茶抽出成分とは、テアフラビン(TF)、テアフラビン−3−ガレート(TF3−G)、テアフラビン−3'−ガレート(TF3´−G)及びテアフラビン−3,3’−ジガレート(TF3,3´−G)の混合成分であるテアフラビン類を含有する点に特徴を有している。
また、本発明において、飲食物とは、飲料と食品の両方を包含する意である。
【0009】
本発明の有効成分を摂取すれば、脂肪細胞におけるグルコースの取込み、特にインスリン刺激によって高まるグルコース取込みを抑制することができ、脂肪細胞量を軽減することができる。これによって、脂肪過剰状態すなわち肥満、並びに肥満に伴う糖尿病、動脈硬化、高トリアシルグリセロール血症、高コレステロール血症、血栓症等疾患などの様々な疾病の治療及び予防を図ることができる。
脂肪細胞においてグルコース取込み活性を阻害する機序としては、脂肪細胞に存在するGLUT4のトランスロケーションの抑制、或いはインスリンレセプターへの結合など様々な機構が考えられるが、本発明者らは、本発明の有効成分はGLUT4のトランスロケーションを特異的に抑制することを解明し、かかる知見に基づき、紅茶抽出成分を有効成分とする、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤及びこれを含有する飲食物を想到したものである。
【0010】
本発明の有効成分は、脂肪細胞におけるグルコース取込みを抑制するだけでなく、筋肉細胞におけるグルコース取込みを逆に活性化させ、過剰なグルコースを筋肉細胞に取り込ませて消費させることができる。すなわち、本発明は、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤及び糖尿病合併症予防剤の群からなる2種類以上の組合わせからなる用途を備えた薬剤としても提供することができる。よって、本発明の有効成分を投与或いは摂取すれば、血中糖濃度を高めることがなく、肥満防止に伴う倦怠感などが無いばかりか、逆に活動力の向上を図ることができる。すなわち、本発明の有効成分を摂取すれば、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーションを活性化し、筋肉細胞におけるグルコースの取込み活性を増大させることができ、その結果、筋肉細胞に多くのエネルギー源を取り込ませ、筋肉細胞量を増大させることができる。よって、筋肉組織の活性化、肉体疲労軽減、運動能力の向上、筋肉組織の増強・増大、引いては体質改造などに効果的に用いることができ、本発明の筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤は、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤、或いは筋肉活性化剤としても利用することができる。
【0011】
また、本研究では、ストレプトゾトシン(STZ)投与により誘導した糖尿病のラットに対する紅茶抽出成分の影響を検討した結果、糖尿病ラットに対して紅茶抽出成分を投与すると、酸化ストレスの軽減や脂肪代謝の改善を図ることができ、これらの機能を介して糖尿病合併症、すなわち糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害を予防することができる旨の知見を得、かかる知見に基づき、紅茶抽出成分を有効成分とする、糖尿病合併症予防剤及びこれを含有する飲食物を提案するものである。
【0012】
さらにまた、紅茶抽出成分は、筋肉におけるAMPKを活性化すること、並びにアディポサイトカインの分泌バランスを良好に保持し、脂肪酸の燃焼(β酸化)を促進することで血漿遊離脂肪酸含量を低下させることが今回新たに確認されており、本発明は、紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉内AMPK活性化剤、アディポサイトカイン分泌バランス調整剤或いは脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤も併せて提案する。
【0013】
なお、本発明の有効成分は、インスリン分泌の前後いずれに摂取しても、効果が得られることを確認している。よって、本発明の有効成分は、食物摂取の前、食物摂取と同時、或いは食物摂取後のいずれに摂取しても効果を得ることができる。
しかも、本発明の有効成分は、古くから日常的に愛飲され、誰でも安心して摂取できる紅茶に由来する成分であるから、長期間無理なくかつ安心して摂取することができ、慢性的な症状及び疾病の根本治療並びに予防、更には体質改善に特に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について説明するが、本発明の実施形態が以下の例に限定されるものではない。
【0015】
本発明の「筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤」、「筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤」、「脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤」、「糖尿病合併症予防剤」、「筋肉内AMPK活性化剤」、「アディポサイトカイン分泌バランス調整剤」及び「脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤」はいずれも、紅茶抽出成分を適宜濃度で配合することによって製造することができる。
【0016】
紅茶とは、茶葉を完全発酵させたいわゆるブラックティー全般を意味し、産地、品種、茶葉の等級などを問わない。例えば、ダージリン種、アッサム種、ニルギリ種、ウバ種、ディンブラ種、ヌアラ種、その他のいずれであってもよいし、リーフグレイド、ブロークングレイド、その他の茶葉等級のいずれであってもよいが、特にウバ種が好ましい。
【0017】
紅茶抽出成分は、採取した紅茶葉をそのまま或いは砕片化して、水、温水又は熱水、好ましくは40℃〜100℃の温熱水、中でも90〜100℃の熱水で抽出して得ることができる。
【0018】
紅茶抽出成分中の成分としては、タンニン(ポリフェノール)、アミノ酸類、カフェイン、糖類、サポニンなどを挙げることができるが、中でもタンニン(ポリフェノール)が主要成分である。
紅茶抽出成分中のポリフェノールは、緑茶抽出物に比べてカテキン類が30〜40%に減少しており、その分、カテキン類の酸化重合物が多いという特徴がある。これは、茶葉の発酵工程で成分が酸化乃至重合しているためであり、カテキン類の酸化重合体であるテアフラビン類(TF(;Theaflavin、下記[化1])、
TF3−G(;Theaflavin-3-gallate、下記[化2])、
TF3´−G(;Theaflavin-3'-gallate、下記[化3])、
TF3,3´−G(;Theaflavin-3',3'-digallate、下記[化4])などを含む)やテアルビジン類、その他のカテキン類の酸化重合物は紅茶抽出成分中のポリフェノールの特徴的な成分であるが、本発明の有効成分としては、TF、TF3−G、TF3´−G及びTF3,3´−Gを含有するテアフラビン類が重要である。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
本発明が有効成分とする紅茶抽出成分は、上記の如く紅茶葉を抽出して得られた紅茶抽出液をそのまま有効成分とすることもできるが、紅茶抽出液を濃縮或いは乾燥させて紅茶抽出エキスとしたもの、特に好ましくはテアフラビン類の濃度をより一層高めた紅茶抽出エキスを有効成分とすることもできる。
【0024】
また、紅茶抽出成分を単独で有効成分とすることもできるが、既に或いは将来的に「筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤」、「筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤」、「脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤」、「糖尿病合併症予防剤」、「筋肉内AMPK活性化剤」、「アディポサイトカイン分泌バランス調整剤」及び「脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤」などの有効成分としての効果が認められた成分、例えば緑茶抽出物、中でもカテキンなどと混合してこの混合成分を有効成分とすることもできる。
【0025】
この際、緑茶抽出物の好ましい例としては、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物を乾燥させてカテキン濃度を約30%とした緑茶エキス(伊藤園社製商品名:テアフラン30A)や、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物をカテキン以外の成分を排除するためにカラム法により処理し乾燥させて、茶ポリフェノール濃度を約85〜95%とした緑茶エキス(伊藤園社製商品名:テアフラン90S)などを例示することができる。
また、カテキンとしては、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレートのいずれか、或いはこれらのいずれかの重合体、或いはこれらのうちの2種類以上の共重合体、或いはこれらのうちの2種類以上の混合物を挙げることができる。
【0026】
紅茶抽出成分を単独で有効成分とする場合、例えば紅茶抽出物を精製水又は生理食塩水などに溶解して薬剤(例えば経口投与剤、腹腔内投与剤、脳内投与剤等)などとして提供することができる。
【0027】
本発明の「筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤」、「筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤」、「脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤」、「糖尿病合併症予防剤」、「筋肉内AMPK活性化剤」、「アディポサイトカイン分泌バランス調整剤」及び「脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤」はいずれも、経口投与剤または非経口投与剤(筋肉注射、静脈注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、経鼻投与など)として使用することができ、それぞれの投与に適した配合及び剤型とするのが好ましい。
剤型については、例えば経口投与剤用としては液剤、錠剤、散剤、顆粒、糖衣錠、カプセル、懸濁液、乳剤、丸剤などの形態に調製することができ、非経口投与剤用としては注射剤、アンプル剤、直腸投与剤、油脂性坐剤、水溶性坐剤などの形態に調製することができる。
配合(製剤)については、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、潤滑剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。また、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどの無毒性の添加剤を配合することも可能である。
【0028】
本発明の「筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤」、「筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤」、「脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤」、「糖尿病合併症予防剤」、「筋肉内AMPK活性化剤」、「アディポサイトカイン分泌バランス調整剤」及び「脂肪酸の燃焼(β酸化)促進剤」はいずれも、医薬品のほか、医薬部外品、薬理効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品、その他ヒト以外の動物に対する薬剤や飼料などとして提供することもできる。
例えば、医薬部外品として調製し、これを瓶ドリンク飲料等の飲用形態、或いはタブレット、カプセル、顆粒等の形態とすることにより、より一層摂取し易くすることができる。
また、薬理効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品とする場合には、例えば本発明の有効成分を、炭酸、賦形剤(造粒剤含む)、希釈剤、或いは更に甘味剤、フレーバー、小麦粉、でんぷん、糖、油脂類等の各種タンパク質、糖質原料やビタミン、ミネラルなどの飲食品材料群から選ばれた1種類或いは2種類以上と混合したり、或いは、現在公知の飲食品、例えばスポーツ飲料、果実飲料、乳飲料、茶飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー、ゼリー飲料、炭酸飲料、チューインガム、チョコレート、キャンディ、ビスケット、スナック、パン、乳製品、魚肉練り製品、畜肉製品、冷菓、乾燥食品、サプリメントなどに添加して製造することができる。
中でも、糖類を多く含んだ飲食物素材に紅茶抽出成分を添加してなる飲食物は、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性効果と脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制効果の両方の効果を備えるため、優れた脂肪軽減飲食物(言い換えればダイエット飲食物)、筋肉活性化飲食物などとして提供することができる。
【0029】
本発明の有効成分である「紅茶抽出成分」の含有量は、使用方法によっても異なるが、医薬品であれば、テアフラビン乾燥重量換算にして0.001〜1重量%、特に0.01〜0.5重量%配合するのが好ましく、飲食品であれば、テアフラビン乾燥重量換算にして0.001〜1重量%、特に0.01〜0.5重量%配合するのが好ましい。
飲食物として調製する場合、紅茶抽出成分を飲食物中に0.001〜1重量%配合し、テアフラビン乾燥重量換算で通常飲用されるお茶の5倍〜500倍の濃度に調製するのが好ましい。
なお、摂取量としては、テアフラビン乾燥重量換算で一日に10〜5000mg、好ましくは100〜1500mg程度が好ましい。
【0030】
<試験1>
本試験では、紅茶抽出成分をラットに自由摂取させた時の糖代謝及び脂質代謝の変化を調べるため、血液成分及び脂肪組織と筋肉組織でのグルコースの取込みの変化を調べた。
【0031】
なお、本試験を含めて試験1〜試験4におけるすべての動物実験は、「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55年3月総理府告示第6号)および「神戸大学における動物実験に関する指針」に従って試験を実施した。
【0032】
(実験動物)
試験には生後6週齢のWistar/ST雄性ラット24匹(日本エスエルシー社製)を使用した。これらを6匹ずつ4群に分け、7日間の順化後、それぞれ(1)紅茶抽出液+ストレプトゾトシン(STZ)投与(T−STZ)、(2)紅茶抽出液のみ投与(T−CON)、(3)水+STZ投与(W−STZ)、(4)水のみ投与(W−CON)を実施した。
(1)(2)のグループには紅茶抽出液を、(3)(4)のグループには対照として蒸留水を、それぞれ給水ビンに入れて、飼育開始日より屠殺するまでの35日間自由摂取させた。この間、水、紅茶ともに連日交換し、飼料は市販の固形飼料を与えた。
【0033】
(紅茶抽出液)
紅茶(品種:ウバ)の茶葉20gを、95℃のイオン交換水1Lで2分間抽出し、得られた抽出液をネル濾布にて濾して紅茶抽出液(以下単に「紅茶」という)とした。
得られた紅茶抽出液中のテアフラビン類(TFs)量を高速液体クロマトグラフィ法により測定し、下記表1に示した。なお、表1に示した各値は3回の測定結果の平均値である。
【0034】
【表1】
【0035】
(実験操作)
飼育開始7日目にT−STZ群とW−STZ群に0.05Mのクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン(STZ;和光純薬工業社製)を40mg/kg・体重になるように、T−CON群とW−CONにはその対照としてクエン酸緩衝液のみを尾静脈より投与し、I型糖尿病の発症を誘導した。その後、屠殺までの間に1週間に2回、計8回にわたり12時間絶食後の血中グルコース濃度を測定し、定常時血糖値の推移を観察した。
飼育開始31日目には、D−グルコースを2g/kg・体重になるように経口負荷し、耐糖能試験(Oral Glucose Tolerance Test:OGTT)を行い、飼育最終日である35日目に同じくグルコースを経口負荷し、その30分後に心臓採血により屠殺し、肝臓、腎臓、膵臓、大腿筋、精巣上体脂肪組織を摘出し、小腸から上皮細胞を採取した。
【0036】
(測定)
(1.定常時血糖値の測定)
STZ投与前(0日目)、投与後3、7、10、14、17、20、24、28日目における空腹時の血糖値を測定し、飼育期間中の血糖調節を観察した。測定には血糖測定機器であるデキスターZII(三共社製)を用い、12時間絶食状態にしたラットの尾静脈血中のグルコース濃度を測定し、結果を図4に示した。
【0037】
(2.OGTTの測定)
飼育開始31日目に、12時間絶食状態にしたラットにD−グルコース水溶液を2 g/kg・体重になるようにゾンデ針を用いて経口投与し、糖負荷前(0分)、負荷後15、30、60、90、120、180分後にラットの尾先端より採血し、エッペンドルフチューブに回収した。回収した血液から血清を調製し、血清中グルコース濃度をグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いて測定し、結果を図5に示した。
【0038】
(3.3−O[メチル−3H]−D−グルコース(3−OMG)取込み活性の測定)
屠殺後速やかに筋肉、脂肪組織を採取し、各組織を約50mgになるように切り取った。その後クレブス−リンガー−HEPES緩衝液(KRH:50mM HEPES(シグマアルドリッチジャパン社製)、pH7.4、137mM NaCl、4.8mM KCl、1.85mM CaCl2、1.3mM MgSO4)に浸漬し、37℃で5分間インキュベート後、3−OMG(Moravek Biochemicals, Inc社製)を終濃度6.5mM、0.5μCiになるように添加した。その2分後に各組織をKRHで6回洗浄し、バイアル内でNCS II Tissue Solubilizer(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて可溶化し、クリアゾルIを添加後液体シンチレーションカウンターで3−OMGの組織への取込み量を測定し、筋肉組織における取込み量を図7に示し、脂肪組織における取込み量を図8に示した。
【0039】
(4.過酸化脂質の測定)
血清、肝臓、腎臓、膵臓中のチオバルビツール酸反応物質(TBARS)を測定し評価した。
各臓器を重量の4倍容のリン酸緩衝液(PBS(−):10mM Na phosphate、pH7.4、0.9% NaCl)とともに、ポリトロンホモジナイザーを用いて氷冷下でホモジナイズした。臓器ホモジネート及び血清に0.8% 2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)酢酸溶液、8.1% ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、20% 酢酸溶液(pH3.5)、0.8% 2−チオバルビツール水溶液(TBA試薬)を添加後5℃で60分間静置した。更に沸騰浴中で60分間インキュベート後、室温まで冷却したところへ、水、ブタノール・ピリジン混合溶液(15:1、v/v)を添加し攪拌後、反応混液を3000rpmで5分間遠心分離し、その上清の蛍光強度(Ex535nm−Em553nm)を測定した。過酸化脂質の標準物質にはテトラエトキシプロパンを用いた。
臓器ホモジネートは、bovine serum albumin(BSA;ウシ血清アルブミン)を標準物質としてタンパク質量をLowry法により求め、TBARS量をタンパク質量で除してマロンジアルデヒド当量として求めた。
【0040】
(5.血清中脂質の測定)
屠殺時に心臓より採血した血清中のトリグリセリド量、総コレステロール量、遊離コレステロール量、遊離脂肪酸量、HDL−コレステロール量はそれぞれトリグリセリドG−テストワコー、コレステロールE−テストワコー、NEFA C−テストワコー、HDL−コレステロールテストワコー、遊離コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いて測定した。LDL−コレステロール量は超遠心分画法を用いて分画し、その分画物をコレステロールE−テストワコーで測定して求めた。
【0041】
(6.小腸二糖類加水分解酵素活性の測定)
採取した小腸細胞塊に重量の7倍容の1.15%KClを加え、氷冷下でホモジナイズした。スクロース、マルトースは0.1Mになるようにマレイン酸緩衝液(50mM、pH6.0)に溶解し、それぞれスクロース溶液、マルトース溶液とした。調製したホモジネートにスクロース溶液を添加し、0、10、20、40分間にわたり37℃の温浴中においてスクロース分解酵素であるスクラーゼを反応させた。またマルトース溶液も同様にして、0、5、10、20分間の各時間でマルターゼを反応させた。その後、沸騰浴中で5分間インキュベートして酵素反応を停止させ、室温になるまで冷却した後3000rpmで10分間遠心分離し、回収した上清中のグルコース量はグルコースCII−テストワコーを用いて測定した。ホモジネート中のタンパク質量をLowry法により求め、グルコース量をタンパク質量で除して1分間当たりのスクラーゼ活性、マルターゼ活性を求め、結果をそれぞれ図10、図11に示した。
【0042】
(7.フルクトサミンの測定)
nitroblue tetrazolium(NBT)を0.48mMになるように炭酸ナトリウム緩衝液(200mM、pH10.3)に溶解しNBT溶液とした。屠殺時に採取した血清にウリカーゼ(和光純薬工業社製)を2.5kU/Lになるように溶解したNBT溶液を添加して37℃で反応させた。反応開始10分後と15分後の530nmにおける吸光度の差から、フルクトサミンの標準物質としてフルクトサミンキャリブレーター(シグマ ディアグノスティック社製)を用いてフルクトサミン量を求め、結果を図6に示した。
【0043】
(8.インスリンの測定)
12時間絶食状態にしたラットに、D−グルコース水溶液を2g/kg・体重になるようにゾンデ針を用いて経口投与し、糖負荷30分後に心臓採血により得た血清中のインスリン量をMercodia Rat Insulin ELISAキット(フナコシ社製)を用いて測定し、結果を図9に示した。
【0044】
(統計分析)
Student's t-testを用いて実験結果を比較し、p値が0.05以下になった場合を有意とみなした。
【0045】
(結果及び考察)
(1.体重、摂食量、摂水量の変化)
飼育開始時点での4群間の体重は、ほぼ差がなく同程度であった。その後、飼育7日目にSTZを投与した2群では、直後から体重減少、摂食量増加、摂水量増加といった糖尿病発症の特徴的な症状がみられた(図1−図3)。これらより、この2群はSTZの投与がI型糖尿病の発症を誘導したことを示している。更にこの2群を比較すると、水投与群では紅茶投与群に比べ、これら3つの症状が顕著であった。一方で、STZを投与しなかった2群間では、紅茶投与、水投与による差は観察されず、ともに飼育期間を通して順調な体重増加を示した。
【0046】
(2.定常時血糖値の推移)
STZ投与日(図4の0日目に相当する)には4群間の血糖値はほぼ同程度であったが、そのうちSTZを投与した2群では、糖尿病発症のために有意に血糖値の上昇が誘導された。しかし、この2群間において紅茶投与により血糖値の上昇は有意に抑制されており、また飼育日数の経過につれてコントロールレベルにまで低下した。その一方、STZを投与していないコントロール群では紅茶投与もしくは水投与による変化はみられなかった(図4)。
【0047】
(3.OGTTにおける血糖値変化)
糖尿病を発症した2群ともに、糖負荷後より急激に血糖値が上昇し、0、15、30分値において紅茶投与群は水投与群に比べ有意に低値を示した。しかし、その後は2群間に有意な差はみられなかった。一方、コントロール群においては水投与、紅茶投与の両群間での有意な差はみられなかった(図5)。
【0048】
(4.紅茶のフルクトサミン量へ及ぼす影響)
血中において糖化したタンパクであるフルクトサミン量は、糖尿病群ではコントロール群と比較して有意に増加していた。しかし、その増加が紅茶投与により有意に抑制されていた。コントロール群においては水投与、紅茶投与による差はほとんどみられなかった(図6)。
【0049】
(5.臓器重量の変化)
肝臓、腎臓、膵臓、精巣上体脂肪組織の各組織が体重に占める割合は、コントロール群(表2のNon-Diabeticに相当)では水投与もしくは紅茶投与による両群間での差はみられなかった。一方、糖尿病群(表2のDiabeticに相当)は、コントロール群に比べ、肝臓及び腎臓において有意に高値を示し、脂肪組織においては低値を示した。しかし、紅茶投与群では、水投与群と比較して糖尿病による肝臓、腎臓の臓器重量割合の上昇は有意に抑制された(表2参照)。
【0050】
【表2】
【0051】
(6.3−OMG取込み)
インスリン感受性組織である筋肉と脂肪組織の3−OMG取込み活性を測定した。
コントロールの紅茶投与群と水投与群と比較すると脂肪組織で有意な差は観察されなかったが(図8)、筋肉組織では紅茶投与により有意に取込み量が上昇していた(図7)。
一方、糖尿病の2群間には差がみられなかった。また、コントロール群と比較して糖尿病群が高値を示した(図7−8)。
【0052】
(7.紅茶のTBARS量に及ぼす影響)
糖尿病群の過酸化脂質量をコントロール群と比較した場合、肝臓と腎臓とでは差がみられなかったが、血清では増加し、膵臓では減少した。ところが、この糖尿病群における血清の過酸化脂質量の増加は紅茶投与により有意に減少した。コントロールの水投与群、紅茶投与群との間では血清及び各臓器における過酸化脂質量の有意な差は認められなかった(表3)。
【0053】
【表3】
【0054】
(8.紅茶のインスリン量へ及ぼす影響)
体内で唯一血糖値を下げる機能を持つホルモンであるインスリンの量は、コントロール群と比較して糖尿病群では有意に低値を示した。この糖尿病群でのインスリンの低下は、紅茶投与により有意に抑制され、インスリン量は高値を示した。更にコントロール群においても、水投与の場合と比較して紅茶投与は約3倍のインスリン量を示した(図9)。
【0055】
(9.小腸二糖類加水分解酵素活性)
スクラーゼ活性は、コントロール群と比較して糖尿病群が有意に活性が上昇しており、また糖尿病の場合、紅茶投与によりその活性は有意に低下することがわかった。一方、コントロールの水投与群、紅茶投与群の2群間では差はみられなかった(図10)。
マルターゼ活性では、糖尿病群、コントロール群のどちらでも紅茶投与により有意に活性の低下がみられた。また糖尿病の紅茶投与群の活性は、コントロールの水投与群と比較しても低値を示した(図11)。
【0056】
(10.血清中脂質)
遊離脂肪酸量(NEFA)は、糖尿病群、コントロール群のどちらでも紅茶投与により有意に低値を示した。コントロールの水投与群と比較して、糖尿病の水投与群は有意に高値を示したが、糖尿病の紅茶投与群は有意に低値を示し、コントロールの紅茶投与群と同程度であった。
中性脂肪(Triacylglycerol)は、コントロール群と比較して糖尿病群で有意に高値を示し、糖尿病の紅茶投与群は水投与群の約3分の1と有意に低値を示した。一方、コントロールの水投与群、紅茶投与群の2群間では差はみられなかった。
総コレステロールは、コントロール群と比較して糖尿病群で有意に高値を示した。各群での水投与、紅茶投与による変化はみられなかった。
遊離コレステロールは、コントロール群と比較して糖尿病群で有意に高値を示した。糖尿病の水投与群、紅茶投与群の間には有意な差はみられなかったが、コントロール群では水投与と比較して紅茶投与により有意に上昇した。
HDLコレステロールは、コントロールの水投与群、紅茶投与群の2群間で差はみられず、糖尿病の紅茶投与群とほぼ同程度であった。一方、糖尿病の水投与群はコントロール群と比較して有意に低値を示した。
LDLコレステロールは、コントロール群と比較して糖尿病群で有意に高値を示したが、両群において水投与、紅茶投与による変化はみられなかった(表4)。
【0057】
【表4】
【0058】
<試験2>
本試験では、高脂肪食或いは普通食で飼育したラットが紅茶抽出成分又は緑茶抽出成分を自由摂取した時の効果を調べるため、それぞれの血中コレステロール、血糖値、脂肪細胞及び筋肉細胞におけるグルコースの取込み活性、血中におけるレプチン・アディポネクチンの測定し比較検討した。
【0059】
[試験計画]
4週齢の雄性C57BL/6Jマウスを日本エスエルシー社より購入した。飼育環境を23±3℃とし、照明時間を9時−21時とした。1週間の予備飼育後、高脂肪食飼育の水飲み群(HF−W)、緑茶飲み群(HF−G)、及び紅茶飲み群(HF−B)と、普通食飼育の水飲み群(C−W)、緑茶飲み群(C−G)及び紅茶飲み群(C−B)との6群に分け、さらにそれぞれ5匹ずつの6群を7週間と14週間の計12群で飼育した。なお、体重がそれぞれ同等になるように群分けし、下記表5の組成で飼料を与えた。
飼育期間最終日には心臓採血により屠殺し、筋肉、脂肪、肝臓、血清を回収した。
【0060】
【表5】
【0061】
(緑茶抽出成分)
緑茶(品種:静岡産本山茶)の茶葉を20g/L、95℃のイオン交換水で2分間抽出し、得られた抽出液をネル濾布にて濾して緑茶抽出液(以下単に「緑茶」という)とし、これを緑茶飲み群(HF−G)及び緑茶飲み群(C−G)に摂取させた。
【0062】
(紅茶抽出成分)
紅茶(品種:ウバ)の茶葉を20g/L、95℃のイオン交換水で2分間抽出し、得られた抽出液をネル濾布にて濾して紅茶抽出液(以下単に「紅茶」という)とし、これを紅茶飲み群(HF−B)及び紅茶飲み群(C−B)に摂取させた。
【0063】
[実験方法]
(血糖・血中成分測定)
飼育開始後1、5、7、10、12及び14週目の絶食時血糖を市販のキットで測定した。
耐糖能試験は18時間絶食後、2g/kg・体重で糖負荷をして、0、15、30、60及び120分における血糖値を市販のキットで測定した。
血中脂質成分(T−コレステロール、F-コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセリド)も同様に市販のキットを用いて測定した。
LDL-コレステロールはFriedewald法により算出した。
マウスは飼育開始後7週目と14週目に心臓採血により屠殺し、摘出した脂肪と筋肉を用いてグルコースの取り込み活性を測定した。
【0064】
なお、グルコースの取り込み活性測定は、摘出した筋肉と脂肪を約15mgの切片にして、それぞれの組織をクレブス・リンガー・HEPES緩衝液(KRH:50mM HEPES、pH7.4、137mM NaCl、4.8mM KCl、1.85mM CaCl2、1.3mM MgSO4)1ml中で10分間、37℃でインキュベートした。次いで、ここに3-0-メチル-[3H]-D-グルコース (3−OMG)を6.5mM、0.5μCiとなるように加えて2分間作用させた。取り込みを停止するために、直ちに反応混液を吸引除去し、組織を氷冷したKRHで速やかに6回洗浄した後、濾紙で水分をふき取り、NCSIIで組織を可溶化した。可溶化液にシンチレーションカクテルを加えて取り込まれた3−OMGの放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。非特異的な取り込み量は、グルコーストランスポーターの阻害剤である20μMサイトカラシンBを組織に処理し、上記と同様の方法で取り込み活性を測定することで求めた。
【0065】
[結果]
(体重変化)
図12及び図13より、高脂肪食摂取時の緑茶抽出成分、紅茶抽出成分の長期摂取は体重の増加を抑制したことが確認された。
普通食では、水、緑茶、紅茶のいずれの摂取群においても体重に差は見られなかった。一方、高脂肪食においては、紅茶摂取群では7週目より有意に差が見られ、8週目には緑茶においても差が見られるようになった。
なお、図12及び図13中の「a」と「b」は、それぞれの水摂取群に対し緑茶摂取群と紅茶摂取群でStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0066】
(組織重量)
下記表6及び表7より、緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取は脂肪重量を減少させたことが確認された。すなわち、飼育開始7週目では、普通食において緑茶や紅茶の摂取は、脂肪重量の増加を有意に抑制しており、高脂肪食におけるそれは総脂肪重量だけでなく、各脂肪部位における増加を普通食レベルまで抑制していた。また、14週目では、普通食、高脂肪食の両群とも緑茶、紅茶の摂取が脂肪重量の増加を抑制し、その割合は7週目よりさらに顕著であった。
なお、下記表における「*」は、水摂取群に対しStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
(空腹時血糖の継時的変化)
図14及び図15より、緑茶抽出成分、紅茶抽出成分の摂取によって血糖値の上昇が抑制されることが確認された。すなわち、空腹時血糖は、1、5、7、11、14週目に尾静脈より血液を搾取し、その血清を用いて、市販のキットで測定した。
緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取は、高脂肪食、普通食のいずれにおいても血糖値を下げる傾向が見られた。緑茶飲み群(HF−G)と紅茶飲み群(C−B)においては5週目及び11週目に有意な減少が認められた。
なお、図14及び図15中の「a」と「b」は、それぞれの水摂取群に対し緑茶摂取群と紅茶摂取群でStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0070】
(血清脂質成分測定)
表8より、緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取は、血中のコレステロール量を有意に減少させ、長期の摂取によってトリグリセリドも減少させることが確認された。すなわち、飼育7週目と14週目に得た血清を用いて、市販のキットで総コレステロール(T−CHO)、遊離コレステロール(F−CHO)、HDL-コレステロール(HDL−CHO)、トリグリセリド(TG)を測定したところ、高脂肪食では、緑茶や紅茶の摂取が総コレステロール(T−CHO)、HDL-コレステロール(HDL−CHO)及びLDL−CHO量を有意に減少させた。また、長期摂取(14週)は高脂肪食においてトリグリセリド(TG)も減少させた。これらのことから、緑茶抽出成分および紅茶抽出成分の摂取は、血清中の脂質成分調節作用を有することから、脂質代謝改善効果が確認できた。
なお、下記表における「*」「**」は、水摂取群に対しそれぞれStudent's t-testにより、危険率5%未満で有意差があることを示す。
【0071】
【表8】
【0072】
(耐糖能試験)
図16(A)−(D)より、耐糖能試験において、緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取はより血糖値の効果を促進することが確認された。
図16(A)−(D)について説明すると、(A)及び(C)(白抜きのシンボル)は普通食摂取群、(B)及び(D)(黒埋めのシンボル)は高脂肪食摂取群の結果を示し、(A)及び(B)は飼育5週目、(C)及び(D)は12週目の結果を示す。また、それぞれ丸が水摂取群、四角が緑茶摂取群で、三角が紅茶摂取群である。
なお、図中の「a」「b」はそれぞれの水摂取群に対し緑茶摂取群と紅茶摂取群でStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0073】
飼育5週目の高脂肪食摂取群において、緑茶抽出成分及び紅茶抽出成分の摂取は最高血糖値を抑制し、速やかな血糖値の降下が認められた。また、普通食摂取群においても、60分と120分で有意な血糖値の効果が認められた。飼育12週目においては同様に60分と120分で有意な血糖値の効果が認められた。このことから、緑茶抽出成分及び紅茶抽出成分の摂取は、耐糖能異常の改善に寄与することが推測される。
【0074】
(組織におけるグルコースの取り込み活性測定)
図17(A)(B)より、グルコースの取り込み活性測定において、緑茶抽出成分や紅茶抽出成分の摂取は脂肪でその活性を抑制し、筋肉でその活性を促進させたことを確認できた。なお、図17(A)(B)において、「*」はそれぞれの水摂取群に対してStudent's t-testにより危険率5%未満で有意差があることを示す。
【0075】
脂肪組織では、紅茶抽出成分及び緑茶抽出成分の摂取によりグルコースの取り込み活性を抑制し、筋肉では、特に高脂肪食摂取群において有意にグルコースの取り込み活性を上昇させた。そこで、紅茶抽出成分及び緑茶抽出成分の摂取は、脂肪組織では血糖の取り込みを抑制することで脂肪細胞の肥大化を抑制し、逆に体内最大の組織である筋肉では血糖を取り込むことで、高血糖を抑制したと考えられた。
【0076】
脂肪細胞と筋肉細胞におけるグルコースの取り込みは、その殆どがGLUT4を介することが知られており、上記のように特に高脂肪食での紅茶抽出成分の効果が優れていることを考えると、紅茶抽出成分の摂取により、脂肪細胞に存在するGLUT4のトランスロケーションが抑制されたことが示唆される。
【0077】
(血中アディポサイトカイン量の測定)
本測定では、脂肪細胞が分泌するレプチンとアディポネクチンについてそれらの血清中での量を市販のELISAキットで測定し、結果を図18(A)〜(D)に示した。
これらの図において、「*」と「**」は、それぞれ普通食と高脂肪食の水摂取群に対してStudent's t-testにより5%未満で有意差があることを示す。
【0078】
それぞれのアディポサイトカインの血清中での量について、7週目における普通食の水摂取群での値を基準にして考えると、水摂取群では14週目の普通食、7週目と14週目の高脂肪食のいずれにおいてもレプチンとアディポネクチンは増加が認められた。
一方、緑茶抽出成分及び紅茶抽出成分の摂取群においては、14週目の普通食においても、7週目と14週目の高脂肪食においても変化認められなかった。
これらの結果から、飼育期間の延長や高脂肪食摂取による脂肪細胞の増加に伴ったレプチンとアディポネクチンの分泌亢進に対して、緑茶及び紅茶の摂取は抑制効果を示すことが認められた。
【0079】
<試験3>
本試験では、紅茶抽出成分のインスリン感受性組織における糖代謝、脂質代謝におよぼす影響について検討した。
【0080】
[実験方法]
(実験動物)
生後6週齢Wistar/ST雄性ラット(日本エスエルシー(株))を用いて試験を
実施した。
ラットを7日間の順化後、水投与のみ(C−W)群、紅茶投与のみ(C−B)群、STZ+水投与(S−W)群、STZ+紅茶投与(S−B)群の5群(各群6匹)に分けた。
C−W群とS−W群には蒸留水を、C−B群とS−B群には紅茶を、それぞれ給水ビンに入れて飼育開始日より屠殺するまでの35日間自由摂取させた。この間、水、紅茶ともに連日交換し、飼料は市販の固形飼料を与えた。
【0081】
(紅茶抽出成分)
紅茶葉(品種:ウバ)20gに対し、95℃のイオン交換水1Lで2分間抽出し、茶葉をネル濾布にて濾した液を紅茶抽出液(以下単に「紅茶」という)として給水ビンに入れて投与した。
【0082】
(STZの投与)
紅茶投与開始7日目に(飼育開始0日目とする)、S−W群とS−B群に0.05Mのクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン(STZ、和光純薬工業(株))を40mg/kg・体重になるように、C−W群とC−B群にはその対照としてクエン酸緩衝液のみを尾静脈より投与し、I型糖尿病の発症を誘導した。
その後、屠殺までの間に1週間に2回、計8回にわたり12時間絶食後の血中グルコース濃度を測定し定常時血糖値の推移を観察した。飼育開始31日目には、D-グルコースを2g/kg・体重になるように経口負荷し、耐糖能試験(Oral Glucose Tolerance Test :OGTT)を行い、飼育最終日である28日目に同じくグルコースを経口負荷し、その30分後に心臓採血により屠殺し、以下の実験に供した。
【0083】
(血中インスリン、レプチン、アディポネクチン量の測定)
血清中のインスリン量はMercodia Rat Insulin ELISAキット(フナコシ(株))
、レプチン量はモリナガラットレプチン測定キット((株)森永生科学研究所)、アディ
ポネクチン量をマウス/ラットアディポネクチンELISAキット(大塚製薬(株))を
用いてそれぞれ測定した。
【0084】
(脂肪、筋肉、肝臓の細胞抽出液の調製)
各組織のホモジネートに等量のRIPA緩衝液(100mM Tris−HCl,pH8.0,300mM NaCl、2.0% (v/v) Nonidet-P40(登録商標)(和光純薬工業(株))、1.0%(w/v) デオキシコール酸ナトリウム(和光純薬工業(株))、0.2%(w/v) SDS、2mM PMSF、20mg/mlロイペプチン(和光純薬工業(株))、2mM Na3VO4 、100mM NaF)を加え、氷上で時折混和しながら2時間可溶化した。その後、4℃、19000×gで20分間遠心分離し、その上清を細胞抽出液とした。
この抽出液のタンパク質量をLowry法で定量後、タンパク質量が等量になるように調製してSDS化し、7.5%ポリアクリルアミドゲルを用いSDS−PAGEに供した。SDS−PAGEで分離したタンパク質はPVDF膜に転写した。それぞれ、筋肉組織はAMPK−α(5´-AMP-activated protein kinase-α)、phospho-AMPK−α、GLUT4(glucose transporter 4)、PPAR−α(peroxisome proliferator-activated receptorα)の検出に、脂肪組織はSREBP−1(sterol regulatory binding protein-1)の検出に、肝臓組織はAMPK−α、phospho-AMPK−α、PPAR−α、SREBP−1の検出に用いた。
【0085】
(筋肉組織からの細胞膜画分の調製)
筋肉のホモジネートに2倍量の0.1%(v/v) Nonidet-P40(登録商標)含有細胞膜溶解緩衝液 (10mM Tris−HCl,pH7.9,10mM KCl, 1.5mM MgCl2・6H2O,1mM PMSF,0.5mM DTT,10mg/mlロイペプチン,5mg/mlアプロチニン)を加え、氷上で時折混和しながら10分間可溶化した。その後、900×g、10分間4℃で遠心分離して得た沈殿にNonidet-P40(登録商標)を含まない緩衝液を加えてよく混和し、再び900×g、10分間4℃で遠心分離して沈殿を得た。そこへ1%(v/v) Nonidet-P40(登録商標)を含む緩衝液を加えてよく混和し、氷上で20分間放置した後に19000×gで20分間遠心分離して得た上清を筋肉細胞膜抽出液とした。
この抽出液のタンパク質量をLowry法で定量し、タンパク質量が等量になるように調製してSDS化し、7.5%ポリアクリルアミドゲルを用いSDS−PAGEに供した。SDS−PAGEで分離したタンパク質はPVDF膜 (Hybond-P; Amersham Biosciences Ltd.) に転写し、そのPVDF膜をGLUT4、IR−β (insulin receptorβ)の検出に用いた。
【0086】
(ウエスタンブロット法によるタンパク質発現の検出)
タンパク質を転写したPVDF膜を1%(w/v) のスキムミルクを含むTBST緩衝液(10mM Tris−HCl,pH8.0,150mM NaCl,0.06% (v/v) Tween-20)で30分間ブロッキングした。TBST緩衝液でPVDF膜を5分間計4回インキュベートして洗浄を行った後、1%のスキムミルクを含むTBST緩衝液に希釈した一次抗体(抗GLUT4抗体1:1000、抗IR−b抗体1:1000、抗SREBP−1抗体1:1000、抗PPAR−α抗体1:1000(Santa Cruz Biotechnology Inc.社製)、抗AMPK−α抗体1:1000、抗phospho-AMPK−α抗体1:1000(Cell Signaling Technology, Inc.社製)を室温で1時間反応させた。再びPVDF膜をTBST緩衝液で5分間計4回インキュベートして洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼで標識した二次抗体を0.5%のスキムミルクを含むTBST緩衝液に希釈し、それを30分間反応させた。PVDF膜をTBST緩衝液で再度同様に洗浄した後、膜上の抗原抗体反応をECL plus(Amersham Biosciences Ltd.社製)用いて発光させ、それを露光させたX線フィルムを現像することでタンパク質の発現を検出した。
【0087】
[実験結果]
(血清中のアディポネクチン量とレプチン量に及ぼす影響)
脂肪細胞から分泌され、糖尿病の病態に深く関与するとされているアディポネクチン(図19)とレプチン(図20)の血中濃度を測定した。これらの図において、「N.D.」は測定不能(not detectable)を示し、「白色棒」は水摂取群を示し、「黒色棒」は紅茶摂取群を示している。
アディポネクチン量は、STZ投与の2群は、その対照と比べて有意に減少していた。しかし、対照の2群間とSTZ投与の2群間とのいずれの群内においても、紅茶投与によりアディポネクチン量が有意に高値を示した。また、レプチン量は、STZ投与の2群はともに検出限界以下であった。対照の2群間では、紅茶を投与したC−B群が、C−W群と比較してレプチン量が有意に高値を示した。
【0088】
(筋肉と肝臓組織におけるAMPK−α、およびその活性型phospho-AMPK−αの発現量)
肝臓と筋肉組織のどちらにおいても、常在的に存在するAMPK−αの発現量は4群間に差異は認められなかった(図21(A)(B))。AMPK−αはリン酸化されて活性型となるが、そのリン酸化したAMPK−α(phospho-AMPK-α)の発現量を検出したところ(図21(A)(B))、phospho-AMPK−αの発現量は筋肉、肝臓どちらの組織においてもC−B群で増加しており、C−W群と比較して顕著な増加であった。STZ投与の2群間で比較すると、筋肉におけるphospho-AMPK−αの発現量は紅茶投与により大幅に減少しており、また肝臓においてもわずかに減少傾向を示した。
【0089】
この結果、紅茶抽出成分の摂取により、筋肉のAMPK−αが活性化することが判明した。筋肉では、運動によりAMPK−αがリン酸化(活性化)してGLUT4のトランスロケーションが促進することが知られている。また、上記のアディポネクチンやレプチンもAMPK−αを活性化する因子であることが示されている。したがって、正常動物の水摂取群(C−W群)ではアディポサイトカインの分泌亢進がAMPK−α活性化を促進してGLUT4のトランスロケーションに繋がる可能性もあると考えられる。STZを投与したラットでは、水摂取群(S−W群)で正常動物の水摂取群(C−W群)と比べて増加したことは、AMPK−αが燃料センサーとして機能することから、この活性化は危機的状況に対応した活性化であり、糖尿病―紅茶摂取群(S−B群)では水摂取群(S−W群)ほどエネルギー供給が危機的ではない可能性を示唆している。実際、S−W群では血漿の遊離脂肪酸が高値を示したことから、糖に変わる代替エネルギーとして脂質の酸化が亢進していることが伺える。
総括的に見ると、正常(健康な動物)では、紅茶抽出成分の摂取がアディポサイトカインの分泌バランスを良好に保持し、脂肪酸の燃焼(β酸化)を促進することで血漿遊離脂肪酸含量を低下させることが確認され、一方、STZによる糖尿病誘発ラットでは糖代謝―脂質代謝の生理的パラメーター全てがエネルギー消費側に傾いており、紅茶抽出成分はSTZによる変調を正常化する方向へ導くことが確認された。
【0090】
(筋肉と肝臓組織におけるPPAR−αの発現量)
インスリン感受性組織である肝臓と筋肉におけるPPAR−αのタンパク質発現量を検出したところ、筋肉におけるPPAR−αの発現量は、C−W群と比較するとC−B群は明らかに増加していた(図22(A)(B))。S−W群は4群間において最も発現量が増加していたが、S−B群はC−B群と同程度であった。肝臓におけるPPAR−αの発現量は、C−W群とC−B群とではほぼ同程度であったが、STZ投与の2群は増加していた(図22(A)(B))。S−W群では発現量が著しく増加していた。
【0091】
上記のアディポネクチンはAMPK−αの活性化だけでなく、PPAR−αの活性化を介しても脂肪酸酸化を誘導することが知られている。PPAR−αはRXRとヘテロ二量体を形成し転写因子として働く。ここでは、脂肪酸β酸化に関わる筋肉と脂肪組織で発現しているα型を調べた(脂肪ではγ型)。
正常動物の場合、紅茶摂取群(C−B群)では水摂取群(C−W群)と比べて筋肉で明らかにPPAR−α発現量が増加し、アディポネクチンによりこの発現が誘導されてβ酸化亢進につながったことが考えられた。
糖尿病動物の場合、上記で記したようにSTZ投与により、AMPK−αと同様にインスリン感受性組織へのグルコースによるエネルギー供給が不足しているために脂肪酸酸化を介して代替エネルギーを供給しようとしてβ酸化に関わる諸酵素の発現を支配しているPPAR−αのたんぱく質発現が増加し、紅茶摂取群(S−B群)ではこの作用が緩和されていたことになる。
【0092】
(細胞とその細胞膜へ移行したGLUT4の発現量への影響)
筋肉細胞中に常在的に存在するGLUT4の発現量は4群間に差異は認められなかった(図23(A))。そこで、グルコースを細胞内へ取り込む能力を有する細胞膜上に移行したGLUT4の発現量を4群間で検証したところ、STZを投与した2群では対照群と比較してGLUT4の細胞膜への移行がほとんど認められなかった(図23(B))。STZ投与の2群間で比較すると、ほとんど検出できなかったS−W群に比べ、S−B群においては細胞膜への移行がわずかに認められた。さらに対照の2群を比較するとC−B群がC−W群よりもGLUT4の細胞膜への移行が亢進していることがわかった。その一方、細胞膜上に存在するインスリンレセプター(IR−β)の発現量は4群間に差異はなかった(図23(B))。これらのことから、対照群とSTZ群どちらにおいても紅茶投与により、細胞内の小胞体から細胞膜への移行したGLUT4の発現量が増加していた。
【0093】
(脂肪と肝臓組織におけるSREBP−1の発現量)
脂質合成能を有する臓器である脂肪組織と肝臓におけるSREBP−1のタンパク質発現量を検出した(図24(A)(B))。
脂肪組織におけるSREBP−1の発現量は、C−W群と比較するとC−B群では減少しており、S−W群では顕著に増加していた(図24(A))。S−B群もC−W群と比べて増加傾向がみられた。STZ投与の2群間で比較するとS−B群はS−W群と比較して明らかな発現量の低下がみられた。
肝臓におけるSREBP−1の発現量は、C−W群と比較するとC−B群は発現量のわずかな減少が確認でき、S−W群とS−B群の発現量は増加していた(図24(B))。特にS−W群での増加は顕著であったが、S−B群ではS−W群と比べこの発現の減少が認められた。
【0094】
肝臓や脂肪組織などの脂肪酸合成系を有する組織では、糖質由来のエネルギーの過剰供給に対して脂肪酸合成系酵素の活性が上昇して脂肪酸を合成することでエネルギーをトリグリセリドに変換して蓄積することが知られている。SREBPsは脂肪酸(SREBP−1)やコレステロール(SREBP−2)の合成を制御している。
上記のように、正常動物の場合は、紅茶摂取群(C−B群)と水摂取群(C−W群)では大きな変化はないが、特に脂肪組織で発現量が減少傾向にあった。これは、脂肪組織への糖の流入が減少したことに起因する可能性がある。
糖尿病動物の場合は、水摂取群(S−W群)で正常動物(C−W群)と比べて顕著に増加した。すでにSTZによりインスリン分泌能が極端に低下した動物の肝臓では、高血糖による糖質の急激な流入に対してSREBP−1の発現が誘導されることと、グルコースが発現誘導に関わることを効力すると、12時間の絶食後の急激なグルコースの流入による高血糖がSREBP−1発現に関わったと推測される。
【0095】
[まとめ]
紅茶抽出成分を投与すると、糖尿病モデルラットにおいて、STZによるインスリンの分泌低下を軽減することが示唆された。このことは、紅茶摂取群において、インスリンの刺激により細胞膜へ移行したGLUT4が検出できたことと、脂肪組織の減少を軽減して脂肪細胞からレプチンとアディポネクチンの分泌を維持したことから検証できた。さらに、紅茶投与によりリン酸化型AMPK−aとPPAR−αとSREBP−1の発現の低下が認められたことから、インスリン不足から生じる組織でのエネルギー不足が抑制されていたと考えられた。
他方、糖尿病を誘導していないコントロールラットにおいては、紅茶投与によりリン酸化型AMPK−αの発現が増加して、結果として細胞膜へ移行したGLUT4の増加と、SREBP−1の減少が誘導されたことが考えられ、脂肪酸のβ酸化の促進と合成の低下が示唆された。
【0096】
<試験4>
本試験では、紅茶抽出成分が小腸からの糖吸収におよぼす影響について検討した。
【0097】
[実験方法]
(実験動物)
生後6週齢Wistar/SD雄性ラット(日本エスエルシー(株))を用い、上記試
験2と同様の条件で飼育し、飼育期間中は水、餌ともに自由摂取とした。飲用水は連日交換し、飼料は市販の固形飼料を与えた。
【0098】
(紅茶抽出成分)
上記試験3と同じ紅茶抽出液を以下の実験に用いた。
【0099】
(耐糖能試験)
ラットを12時間絶食状態にし、紅茶抽出液1mlを各種糖を負荷する5分前にゾンデ針で経口投与した。対照としては、同様に蒸留水を経口投与した。
紅茶若しくは水を投与した5分後にグルコース、スクロース、あるいはマルトース水溶液を2g/kg・体重/1mlになるようにゾンデ針を用いて経口投与した。糖負荷前(0分)、負荷後15、30、60、90、120、180分後における血糖値をグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業(株))を用いて測定した。
【0100】
[実験結果]
図25−26において、各図(A)中の○は水摂取群示し、●は紅茶摂取群を示しており、各図(B)中の「白色棒」は水摂取群を示し、「黒色棒」は紅茶摂取群を示している。
【0101】
(グルコース経口負荷による耐糖能試験)
ラットに水若しくは紅茶抽出液を、グルコースを経口負荷する5分前に投与した場合、120分間の血糖値に2群間の変化は認められず、糖代謝へおよぼす影響は認められなかった(図25(A))。また、血糖値のグラフの線下面積も2群間に差異は認められなかった(図25(B))。
【0102】
(スクロース経口負荷による耐糖能試験)
ラットにスクロースを経口負荷する5分前に水若しくは紅茶抽出液を投与した場合、紅茶を事前に投与することにより血糖値の上昇が抑制される傾向が認められた(図26(A))。血糖値のグラフの線下面積を棒グラフに表した(図26(B))。120分間にわたる血糖値の変化に水投与と紅茶投与による影響は認められなかった。
【0103】
(マルトース経口負荷による耐糖能試験)
マルトースを経口負荷する5分前に水若しくは紅茶抽出液を投与した場合も、紅茶を事前に投与することにより血糖値の上昇が抑制される傾向が認められた(図27(A))。特に、30分値以降にその傾向が認められた。血糖値のグラフの線下面積を棒グラフに表したところ、水投与と比較して紅茶投与により120分間にわたる血糖値が有意に抑制された(図27(B))。
【0104】
[まとめ]
単糖であるグルコースの腸管からの吸収や糖代謝には、紅茶抽出成分は影響をおよぼさなかった。スクロースやフルクトースなどの二糖類は小腸で酵素により加水分解され、単糖として吸収される。二糖類を経口投与する前に紅茶抽出成分を投与することで、血中のグルコース濃度の上昇が抑制される傾向が認められた。特に、グルコース2分子から成るマルトースを経口投与した場合では、投与後120分間の血糖値が有意に抑制された。このことから、紅茶抽出成分は緩やかな効果ではあるが、小腸の二糖類加水分解酵素の活性を阻害することが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】試験1における紅茶摂取開始後のラットの体重の変化を経時的に示したグラフである。
【図2】試験1における紅茶摂取開始後のラットの摂食量の変化を経時的に示したグラフである。
【図3】試験1における紅茶摂取開始後のラットの摂水量の変化を経時的に示したグラフである。
【図4】試験1におけるラットの定常時血糖値の変化を経時的に示したグラフである。
【図5】試験1において、OGTTにおける血糖値の変化を経時的に示したグラフである。
【図6】試験1終了時における血中フラクトサミン量を示したグラフである。
【図7】試験1における筋肉組織での3−OMG取込み量を示したグラフである。
【図8】試験1における脂肪組織での3−OMG取込み量を示したグラフである。
【図9】試験1における血清中インスリン量を示したグラフである。
【図10】試験1において紅茶抽出成分が小腸におけるスクラーゼの加水分解活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図11】試験1において紅茶抽出成分が小腸におけるマルターゼの加水分解活性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図12】試験2において、高脂肪食飼育ラットの体重変化を経時的に示したグラフである。
【図13】試験2において、普通食飼育ラットの体重変化を経時的に示したグラフである。
【図14】試験2において、高脂肪食飼育ラットの空腹時血糖の経時的に示したグラフである。
【図15】試験2において、普通食飼育ラットの空腹時血糖の経時的に示したグラフである。
【図16】試験2における耐糖能試験の結果を示したグラフであり、(A)は、飼育5週目の普通食飼育の耐糖能試験結果を、(B)は、飼育5週目の高脂肪食飼育の耐糖能試験結果を、(C)は、飼育12週目の普通食飼育の耐糖能試験結果を、(D)は、飼育12週目の高脂肪食飼育の耐糖能試験結果を示している。
【図17】試験2において、組織におけるグルコースの取り込み活性を測定した結果を示すグラフであり、(A)は、脂肪細胞組織におけるグルコースの取り込み活性を、(B)は、筋肉細胞組織におけるグルコースの取り込み活性を示している。
【図18】試験2において、血清中アディポサイトカイン量を測定した結果を示すグラフであり、(A)は、飼育7週目における血清中レプチン量を、普通食群と高脂肪食群に分けて示したグラフであり、(B)は、飼育14週目における血清中レプチン量を、普通食群と高脂肪食群に分けて示したグラフであり、(C)は、飼育7週目における血清中アディポネクチン量を、普通食群と高脂肪食群に分けて示したグラフであり、(D)は、飼育14週目における血清中アディポネクチン量を、普通食群と高脂肪食群に分けて示したグラフである。
【図19】試験3において、血清中のアディポネクチン量を測定した結果を示すグラフである。
【図20】試験3において、血清中のレプチン量を測定した結果を示すグラフである。
【図21】試験3において、肝臓又は筋肉組織におけるAMPK−aの発現量を測定した結果を示すスペクトル図であり、(A)は筋肉組織、(B)は肝臓の結果である。
【図22】試験3において、肝臓又は筋肉組織におけるPPAR−αの発現量を測定した結果を示すスペクトル図であり、(A)は筋肉組織、(B)は肝臓の結果である。
【図23】試験3において、筋肉組織におけるGLUT4の発現量を測定した結果を示すスペクトル図であり、(A)は筋肉細胞中に常在的に存在するGLUT4の発現量を示し、(B)は細胞膜上に移行したGLUT4の発現量を示す。
【図24】試験3において、肝臓又は筋肉組織におけるSREBP−1のタンパク質発現量を測定した結果を示すスペクトル図であり、(A)は脂肪組織におけるSREBP−1のタンパク質発現量を示し、(B)は肝臓におけるSREBP−1のタンパク質発現量を示す。
【図25】試験4において、グルコース経口負荷による耐糖能試験の結果を示したグラフであり、(B)は、血糖値のグラフの線下面積を棒グラフで示したものである。
【図26】試験4において、スクロース経口負荷による耐糖能試験の結果を示したグラフであり、(B)は、血糖値のグラフの線下面積を棒グラフで示したものである。
【図27】試験4において、マルトース経口負荷による耐糖能試験の結果を示したグラフであり、(B)は、血糖値のグラフの線下面積を棒グラフで示したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3'−ガレート及びテアフラビン−3,3'−ジガレートの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤。
【請求項2】
テアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3'−ガレート及びテアフラビン−3,3'−ジガレートの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤。
【請求項3】
テアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3'−ガレート及びテアフラビン−3,3'−ジガレートの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤。
【請求項4】
テアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3'−ガレート及びテアフラビン−3,3'−ジガレートの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、糖尿病合併症予防剤。
【請求項5】
請求項1のグルコース取込み活性化剤、請求項2のGLUT4トランスロケーション活性化剤、請求項3のGLUT4トランスロケーション抑制剤、請求項4の糖尿病合併症予防剤のいずれかを含有してなる飲食物。
【請求項1】
テアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3'−ガレート及びテアフラビン−3,3'−ジガレートの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉細胞におけるグルコース取込み活性化剤。
【請求項2】
テアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3'−ガレート及びテアフラビン−3,3'−ジガレートの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、筋肉細胞におけるGLUT4トランスロケーション活性化剤。
【請求項3】
テアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3'−ガレート及びテアフラビン−3,3'−ジガレートの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、脂肪細胞におけるGLUT4トランスロケーション抑制剤。
【請求項4】
テアフラビン、テアフラビン−3−ガレート、テアフラビン−3'−ガレート及びテアフラビン−3,3'−ジガレートの混合成分であるテアフラビン類を含有する紅茶抽出成分を有効成分とする、糖尿病合併症予防剤。
【請求項5】
請求項1のグルコース取込み活性化剤、請求項2のGLUT4トランスロケーション活性化剤、請求項3のGLUT4トランスロケーション抑制剤、請求項4の糖尿病合併症予防剤のいずれかを含有してなる飲食物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図25】
【図26】
【図27】
【図17】
【図18】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図20】
【図25】
【図26】
【図27】
【図17】
【図18】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−1929(P2006−1929A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147552(P2005−147552)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年4月1日 日本栄養・食糧学会発行の「第58回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集」に発表
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年4月1日 日本栄養・食糧学会発行の「第58回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集」に発表
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】
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