説明

筐体用プレコートアルミニウム合金板

【課題】ノートパソコン等の筐体として好適に用いることができるプレコートアルミニウム合金板を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金板の両面に形成した化成皮膜と、前記化成皮膜の少なくとも一方の上に樹脂皮膜Aとその上に着色樹脂皮膜Bを有するプレコートアルミニウム合金板において、樹脂皮膜Aと着色樹脂皮膜Bのいずれか、あるいは両方が、粒径が最大長径で5μm〜70μmの範囲にあるガラスビーズを塗装方向に対して直角方向5mm間に15個〜150個含有し、皮膜厚さが7μm〜20μmの範囲にある様にする。また、着色樹脂皮膜Bの動摩擦係数が0.03〜0.20の範囲にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートパソコン等の電気電子機器等の筐体に用いられるプレコートアルミニウム合金板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体装置のような電子機器を収納する外殻筐体としては、熱可塑性樹脂を射出成形で製造したものが多く使用されてきた。
【0003】
最近、携帯型ノートパソコンのような電子機器の市場が拡大しつつあるが、このような用途においては、小型化・軽量化・薄型化が飛躍的に進んでおり、従来の成形樹脂筐体では対応できなくなってきている。何故なら、従来の樹脂筐体では、肉厚を薄くすると、強度が弱いからである。そこで、電磁シールド性や放熱性等の要求を満足することが可能なマグネシウムやアルミニウム等の金属製筐体が増えている。金属製筐体は材料のリサイクルが容易であるという利点もある。
【0004】
金属製筐体にアルミニウムを用いる場合、アルミニウム板をプレス成形により成形するが、その外面にアルマイトまたは鉛筆硬度で2H〜7Hの塗料で被覆する方法が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−335644号
【0005】
これらの皮膜は硬質なものであり、皮膜に傷が付き難くすることを意図したものである。
通常、これらの皮膜はプレス成形後に形成されるが、生産性が低いために、コストが高くなるという問題があった。これに対し、プレス成形前に塗装する方法、すなわち、プレコートを用いる方法が望まれている。
耐摩耗性を有するプレコート金属板は、特許文献2や特許文献3に開示されている。
【特許文献2】特開平7−256821
【特許文献3】特開2002−178447
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に開示された発明では、ノートパソコン筐体外面に要求される耐摩耗性を十分に満足できないという不都合があった。
本発明は、ノートパソコン筐体用として好適に用いることができるプレコートアルミニウム合金板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、アルミニウム合金板の両面に形成した化成皮膜と、前記化成皮膜の少なくとも一方の上に樹脂皮膜Aとその上に着色樹脂皮膜Bを有するプレコートアルミニウム合金板において、樹脂皮膜Aと着色樹脂皮膜Bのいずれか、あるいは両方が、粒径が最大長径で5μm〜70μmの範囲にあるガラスビーズを塗装方向に対して直角方向5mm間に15個〜150個含有し、皮膜厚さが7μm〜20μmの範囲にあることを特徴とする筐体用プレコートアルミニウム合金板である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、樹脂皮膜Aと着色樹脂皮膜Bの両方にガラスビーズを含有する場合に、樹脂皮膜Bに含有されるガラスビーズが塗装方向に対して直角方向5mm間に60個〜70個の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の筐体用プレコートアルミニウム合金板である。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、着色樹脂皮膜Bの動摩擦係数が0.03〜0.20の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体用プレコートアルミニウム合金板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のノートパソコン筐体用プレコートアルミニウム合金板は、樹脂皮膜Aまたは着色樹脂皮膜Bにガラスビーズを含有し、ガラスビーズの粒径を所定の範囲とし、皮膜厚さを所定の範囲とし、ガラスビーズの密度を所定の範囲とすることによって、樹脂皮膜全体の硬度を高くできるので、耐摩耗性を向上することができる。また、着色樹脂皮膜Bの潤滑性が所定の範囲にあるので、適度な潤滑性が付与され、耐摩耗性を向上することができる。これらの樹脂皮膜Aの適度な硬度と着色樹脂皮膜Bの潤滑性による相乗効果により、ノートパソコン筐体外面に要求される耐摩耗性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
A.アルミニウム合金板
本発明において用いるアルミニウム合金は、耐デント性が良好で、ノートパソコン筐体を形成するのに十分な成形加工性を有するものであれば、特に限定されるものではない。ここで、耐デント性とは、材料に局所的な力が加えられたときのくぼみ(圧痕)の残留しにくさのことである。特に、JIS 5000系アルミニウム合金が好ましい。
【0012】
B.化成皮膜
化成皮膜は、アルミニウム合金板の表面と塗膜との間に介在して両者の密着性を高めるものであれば特に限定されるものでない。例えば、アルミニウム合金には、安価で浴液管理が容易なリン酸クロメート処理液で形成される化成皮膜や、処理液成分の変化が無く水洗を必要としない塗布型ジルコニウム処理で形成される化成皮膜を用いることができる。このような化成処理は、アルミニウム合金板に所定の化成処理液をスプレーしたり、アルミニウム合金板を処理液中に所定の温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。
なお、化成処理を行なう前に、アルミニウム合金板表面の汚れを除去したり表面性状を調整したりするために、アルミニウム合金板を、硫酸、硝酸、リン酸等による酸処理(洗浄)、或いは、カセイソーダ、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等によるアルカリ処理(洗浄)を行なうのが望ましい。このような洗浄による表面処理も、アルミニウム合金板に所定の表面処理液をスプレーしたり、アルミニウム合金板を処理液中に所定温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。
【0013】
C.樹脂皮膜A
次いで、前記化成皮膜上に樹脂皮膜層Aが形成される。樹脂皮膜Aは、熱硬化性樹脂を適当な溶剤に溶解又は分散した塗料を焼付け塗装して形成される。
【0014】
C−1.樹脂皮膜Aの皮膜厚さ
樹脂皮膜Aの皮膜厚さは、7μm〜20μmとなるようにした。7μm未満であると、樹脂皮膜Aのクッション効果が得られず、耐摩耗性が劣る。一方、20μmを超えると、曲げ加工に対して皮膜が追随できず、曲げ加工性が劣る。
【0015】
C−2.ガラスビーズ
ガラスビーズの粒径は最大長径で5μm〜70μmの範囲とした。粒径は顕微鏡法により測定することできる。5μm未満であると、耐摩耗性が劣る。一方、70μmを超えると、曲げ加工に対して皮膜が追随できず、曲げ加工性が劣る。
【0016】
ガラスビーズは塗装方向に対して直角方向5mm間に15個〜150個存在するようにした。任意に選んだ塗装方向に対して直角な方向における塗膜断面を光学顕微鏡で観察し、任意の距離間に存在するガラスビーズの個数を計測し、塗装方向に対して直角方向5mm間に存在するガラスビーズの個数を算出する方法により求めることができる。樹脂皮膜A中にガラスビーズを含有させることにより、樹脂皮膜Aは硬質になるために耐摩耗性を向上することができる。15個未満であると、ビーズの存在しない部分の占有面積が大きくなるために耐摩耗性が劣る。一方、150個を超えると、曲げ加工時に皮膜割れの起点となるために曲げ加工性が劣る。
【0017】
ガラスビーズの添加量は樹脂固形分に対して2%〜20%とすることが好ましい。2%未満では、樹脂皮膜Aの硬さが不十分であるために耐摩耗性が劣る。20%を超えると、曲げ加工時に皮膜割れの起点となるために曲げ加工性が劣る。
【0018】
C−3.使用樹脂
樹脂皮膜Aに使用する樹脂には熱硬化性樹脂を用いる。
熱硬化性樹脂には特に制限はなく、例えば、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いることができる。中でも、プレス加工等の加工時に塗膜割れが起こり難く、塗装時の作業性が良好で、コスト的にも有利なポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
ポリエステル樹脂はジカルボン酸とジオールを化合させた樹脂である。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の炭素数2〜22の脂肪酸ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。これらのジカルボン酸は1種類のみを用いても2種類以上を組み合わせて用いても良い。
ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ペンタンジオール等の炭素数2〜22の脂肪酸ジオール等を挙げることができる。これらのジオールは1種類のみを用いても2種類以上を組み合わせて用いても良い。
ジカルボン酸とジオールの構成単位からなる線状ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸とジオールを重縮合することにより得られる線状ポリエステル樹脂、ジカルボン酸無水和物とジオールの付加反応により得られる線状ポリエステル樹脂、さらにエステル交換反応により得られる線状ポリエステル樹脂等を挙げることができ、原料がジカルボン酸とジオールである線状ポリエステル樹脂のみをいうのでははく、線状ポリエステル樹脂における構成単位がジカルボン酸から誘導される構成単位とジオールから誘導される構成単位と同じ構造であるものも含まれる。
硬化剤は特に制限はないが、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、イソシアネート樹脂を用いることが好ましい。
ポリエステル樹脂、硬化剤の他にエポキシ樹脂やアクリル樹脂を混合させても良い。
【0019】
C−4.添加剤
また、本発明で用いる塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般的性能を確保するために通常の塗料において用いられる、顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤等を適宜添加してもよい。
【0020】
C−5.塗膜形成
熱硬化性樹脂を必須成分とし、これに上記ガラスビーズ、添加剤を適宜加え、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を、ロールコーターによって化成皮膜上に直接塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。なお、ロールコーターに代えてエアスプレーやバーコーター等によって塗料を塗布してもよい。
【0021】
D.着色樹脂皮膜B
前記樹脂皮膜Aの上に、さらに着色樹脂皮膜Bが形成される。着色樹脂皮膜Bは熱硬化性樹脂に顔料、潤滑剤を必須成分として含有させ、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を焼付け塗装して形成される。
【0022】
D−1.動摩擦係数
動摩擦係数は0.03〜0.20の範囲とした。皮膜表面に潤滑性を付与することにより、耐摩耗性を向上させることができる。0.03未満であると、皮膜表面の滑り性が良すぎてコイルアップすることができない。0.20を超えると、耐摩耗性が劣る。
【0023】
D−2.着色樹脂皮膜Bの皮膜厚さ
着色樹脂皮膜Bの皮膜厚さは、7μm〜20μmとなるようにした。7μm未満であると、着色樹脂皮膜Bのクッション効果が得られず、耐摩耗性が劣る。一方、20μmを超えると、曲げ加工に対して皮膜が追随できず、曲げ加工性が劣る。
【0024】
D−3.熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂には特に制限はなく、樹脂皮膜Aに用いられる熱硬化性樹脂と同様に、例えば、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いることができる。中でも、プレス加工等の加工時に塗膜割れが起こり難く、塗装時の作業性が良好で、コスト的にも有利なポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。特に、ポリエステル樹脂に硬化剤としてメチル化メラミン樹脂を用いたものは皮膜を硬くすることができるので、良好な加工性を維持しつつ、耐汚染性を比較的良好にすることができるので好ましい。
【0025】
D−4.顔料
着色樹脂皮膜Bには着色のため顔料を含有させることが好ましい。顔料の種類には特に制限はない。例えば、アルミニウム顔料を含有させることが好ましい。アルミニウム顔料には特に制限はなく、光輝性アルミニウム顔料や着色アルミニウム顔料を用いることができる。光輝性アルミニウム顔料の形状は粒子の形状が不均一なCORN FLAKEタイプとエッジ部分が滑らかな円盤形状/コイン状のSILVER DOLLARタイプの何れも用いることができる。着色アルミニウム顔料には顔料着色アルミニウム顔料や無機皮膜による着色アルミニウム顔料があるが、何れも用いることができる。
【0026】
D−5.潤滑剤
前記着色樹脂皮膜Bにポリテトラフルオロエチレンとポリエチレンワックスを含有させることが好ましい。ポリエチレンワックスは、分子量が600〜1200であり70〜140℃の融点を有するものが用いられる。
これらの潤滑剤b2は、塗膜表面に潤滑性を付与するとともに、耐磨耗性を向上する。
潤滑剤の含有量は合計で1%〜5%混合することが好ましい。1%未満であると、潤滑性が劣り、塗膜に傷が付き易くなり、耐磨耗性が劣る。5%を超えると、塗料の状態で泡立ちが酷く、塗料化することができない。
【0027】
D−6.ガラスビーズ
着色樹脂皮膜Bにガラスビーズを含有させることにより、皮膜が硬質になるために、耐磨耗性をさらに向上させることができる。ガラスビーズの粒径、添加量は樹脂皮膜Aと同様の範囲とすることが好ましい。
【0028】
D−7.添加剤
また、本発明で用いる塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般的性能を確保するために通常の塗料において用いられる、レベリング剤、ワキ防止剤、安定化剤、沈降防止剤等を適宜添加してもよい。
【0029】
D−8.着色樹脂皮膜Bの形成
熱硬化性樹脂、顔料、潤滑剤を必須成分とし、これに上記ガラスビーズ、添加剤を適宜加え、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を、ロールコーターによって化成皮膜上に直接塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。また、ロールコーターに代えて、エアスプレー、バーコーター等によって化成皮膜上に直接塗布しても良い。
【実施例1】
【0030】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0031】
発明例1〜20
金属板にアルミニウム合金板を用いた。アルミニウム合金板(材質:JIS A5182、板厚:0.8mm)の両面を、市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗後に、市販のリン酸クロメート処理液により両面を化成処理した。次いで、一方の化成処理面に表1に示す塗料A(ポリエステル系樹脂を使用)を、バーコーターで塗装し、焼付けした。その上に、塗料B(ポリエステル系樹脂にアルミニウム顔料を添加したものを使用)をバーコーターで塗装し、焼付けした。焼付け温度は、最高到達板温度(PMT)230℃であった。発明例1〜20の試料の作製条件を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
比較例1〜22
発明例1〜20と同様にして表2の作製条件に基づいて、比較例1〜22の試料を作製した。
【0034】
【表2】

【0035】
上述した方法で得られた化成皮膜の皮膜量を蛍光X線分析装置により測定した結果、クロム量は、30mg/mであった。
発明例1〜22及び比較例1〜20で作製したプレコートアルミニウム合金板試料について、樹脂皮膜A及び着色樹脂皮膜B断面のガラスビーズの密度、着色樹脂皮膜B表面の動摩擦係数、耐摩耗性、曲げ加工性、鉛筆引っ掻き値を下記の方法にて評価した。○、○△、△を合格とし、×を不合格とした。
【0036】
<ガラスビーズの密度>
ガラスビーズの密度はプレコートアルミニウム合金板を塗装方向に対して直角方向に切断し、樹脂に埋め込み、硬化後に断面を研磨して、光学顕微鏡(100倍)で観察し、ガラスビーズの個数を計測し、5mmあたりのガラスビーズの個数を算出した。
【0037】
<動摩擦係数>
バウデン式摩擦試験を用いて動摩擦係数を測定した。
【0038】
<耐摩耗性>
PLUS製AIR−INプラスチック消しゴムを用いて、荷重500g/cmの条件で、2000回往復させて擦り、樹脂皮膜の状態を観察した。
○ :異常なし
○△:着色樹脂皮膜Bが僅かに剥離した跡が認められる
△ :着色樹脂皮膜Bが剥離し、樹脂皮膜Aが露出する
× :樹脂皮膜Aが剥離した跡が認められる
【0039】
<曲げ加工性>
曲げ加工性は、JIS Z2248に準拠して、プレコートアルミニウム合金板の皮膜面を外側にして素板を3枚挟んで(合計厚さ2.4mm)180度曲げを行い、目視で曲げ部外観を観察した。
○ :塗膜割れなし
× :塗膜割れあり
【0040】
<鉛筆引っ掻き値>
鉛筆引っ掻き値は、JIS H4001に準拠して、測定した。判定は傷判定で実施した。
○ :2H以上
× :H以下
【0041】
発明例1〜20及び比較例1〜22の上記試験結果を表3及び表4に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
発明例1〜8のプレコートアルミニウム合金板の皮膜面は、ガラスビーズを含有する樹脂皮膜Aとその上に着色樹脂皮膜Bを有し、樹脂皮膜Aにおいて、ガラスビーズの粒径が最大長径で5μm〜70μmの範囲にあり、皮膜厚さが7μm〜20μmの範囲にあり、塗装方向に対して直角方向5mm間に存在するガラスビーズの個数が15個〜150個の範囲にあり、着色樹脂皮膜Bの動摩擦係数が0.03〜0.20の範囲にある皮膜を用いた結果を示す。これらのプレコートアルミニウム合金板では、良好な耐摩耗性、曲げ加工性、鉛筆引っ掻き値が得られた。
【0045】
発明例9〜14のプレコートアルミニウム合金板の皮膜面は、さらに、着色樹脂皮膜Bにおいて、ガラスビーズを含有する皮膜を用いた結果を示す。これらのプレコートアルミニウム合金板では、良好な耐摩耗性、曲げ加工性、鉛筆引っ掻き値が得られた。
【0046】
発明例15〜20のプレコートアルミニウム合金板の皮膜面は、樹脂皮膜Aとガラスビーズを含有する着色樹脂皮膜Bを有し、ガラスビーズの粒径が最大長径で5μm〜70μmの範囲にあり、皮膜厚さが7μm〜20μmの範囲にあり、塗装方向に対して直角方向5mm間に存在するガラスビーズの個数が15個〜150個の範囲にある皮膜を用いた結果を示す。これらのプレコートアルミニウム合金板では、良好な耐摩耗性、曲げ加工性、鉛筆引っ掻き値が得られた。
【0047】
一方、比較例1は、樹脂皮膜Aに含まれるガラスビーズの粒径が5μm未満であるために、耐摩耗性と鉛筆引っ掻き値が劣っていた。
【0048】
比較例2は、樹脂皮膜Aに含まれるガラスビーズの粒径が70μmを超えるために、曲げ加工性が劣っていた。
【0049】
比較例3は、樹脂皮膜Aの皮膜厚さが7μm未満であるために、耐摩耗性と鉛筆引っ掻き値が劣っていた。
【0050】
比較例4は、樹脂皮膜Aの皮膜厚さが20μmを超えるために、曲げ加工性が劣っていた。
【0051】
比較例5は、樹脂皮膜Aに含まれるガラスビーズの密度が15個/mm未満であるために耐摩耗性と鉛筆引っ掻き値が劣っていた。
【0052】
比較例6は、樹脂皮膜Aに含まれるガラスビーズの密度が150個/mmを超えるために曲げ加工性が劣っていた。
【0053】
比較例7は、着色樹脂皮膜B表面の動摩擦係数が0.20を超えるために耐摩耗性が劣っていた。
【0054】
比較例8は、着色樹脂皮膜Bに含まれるガラスビーズの粒径が5μm未満であるために、耐摩耗性が劣っていた。
【0055】
比較例9は、着色樹脂皮膜Bに含まれるガラスビーズの粒径が70μmを超えるために、曲げ加工性が劣っていた。
【0056】
比較例10は、着色樹脂皮膜Bの皮膜厚さが7μm未満であるために、耐摩耗性が劣っていた。
【0057】
比較例11は、着色樹脂皮膜Bの皮膜厚さが20μmを超えるために、曲げ加工性が劣っていた。
【0058】
比較例12は、着色樹脂皮膜Bに含まれるガラスビーズの密度が15個/mm未満であるために耐摩耗性が劣っていた。
【0059】
比較例13は、着色樹脂皮膜Bに含まれるガラスビーズの密度が150個/mmを超えるために曲げ加工性が劣っていた。
【0060】
比較例14は、樹脂皮膜Aに含まれるガラスビーズの粒径が5μm未満であるために、耐摩耗性が劣っていた。
【0061】
比較例15は、樹脂皮膜Aに含まれるガラスビーズの粒径が70μmを超えるために、曲げ加工性が劣っていた。
【0062】
比較例16は、樹脂皮膜Aの皮膜厚さが7μm未満であるために、耐摩耗性が劣っていた。
【0063】
比較例17は、樹脂皮膜Aの皮膜厚さが20μmを超えるために、曲げ加工性が劣っていた。
【0064】
比較例18は、樹脂皮膜Aに含まれるガラスビーズの密度が15個/mm未満であるために耐摩耗性が劣っていた。
【0065】
比較例19は、樹脂皮膜Aに含まれるガラスビーズの密度が150個/mmを超えるために曲げ加工性が劣っていた。
【0066】
比較例20〜22は、樹脂皮膜A及び着色樹脂皮膜Bにガラスビーズを添加していないので、耐摩耗性及び鉛筆引っ掻き値が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金板の両面に形成した化成皮膜と、前記化成皮膜の少なくとも一方の上に樹脂皮膜Aとその上に着色樹脂皮膜Bを有するプレコートアルミニウム合金板において、樹脂皮膜Aと着色樹脂皮膜Bのいずれか、あるいは両方が、粒径が最大長径で5μm〜70μmの範囲にあるガラスビーズを塗装方向に対して直角方向5mm間に15個〜150個含有し、皮膜厚さが7μm〜20μmの範囲にあることを特徴とする筐体用プレコートアルミニウム合金板。
【請求項2】
樹脂皮膜Aと着色樹脂皮膜Bの両方にガラスビーズを含有する場合に、樹脂皮膜Bに含有されるガラスビーズが塗装方向に対して直角方向5mm間に60個〜70個の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の筐体用プレコートアルミニウム合金板。
【請求項3】
着色樹脂皮膜Bの動摩擦係数が0.03〜0.20の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体用プレコートアルミニウム合金板。

【公開番号】特開2008−114194(P2008−114194A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302172(P2006−302172)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】